図面 (/)

技術 疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材及びその製造方法

出願人 ポスコ
発明者 イ,イル-チョルゾ,ジェ-ヨンカン,サン-ドク
出願日 2018年11月23日 (2年10ヶ月経過) 出願番号 2020-535189
公開日 2021年3月18日 (7ヶ月経過) 公開番号 2021-509144
状態 未査定
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 超大型化 疲労亀裂進展 最小応力 温度区間 高強度性 進展方向 疲労亀裂進展速度 冷却直後
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2021年3月18日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (5)

課題

疲労亀裂伝播抑制特性及び高強度性を効果的に確保した構造用鋼材及びその製造方法を提供する。

解決手段

本発明の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材は、重量%で、C:0.02〜0.12%、Mn:1.7〜2.5%、Si:0.01〜0.8%、Al:0.005〜0.5%、残部Fe及び不可避不純物を含み、厚さ方向に沿って外側の表層部と内側の中心部に微細組織が区分され、表層部は焼戻しベイナイト基地組織として含み、フレッシュマルテンサイトを第2組織として含み、オーステナイト残留組織として含み、中心部はラスベイナイトを含む。

概要

背景

建築物橋梁などの構造物に用いられる構造用鋼材は、その使用環境の特性上、繰り返される応力が継続的に加わることから、構造物の全体的な安定性を確保するためには、素材耐疲労特性を確保することが非常に重要である。特に、最近の構造物が超大型化するにつれて、構造物の軽量化及び剛性の確保の要求が増加する傾向にあり、それに応じて、高強度素材の使用が増加するのが実情である。但し、素材の強度が増加するほど、素材に発生した亀裂の周囲に集中する応力も同時に増加することから、素材の亀裂伝播速度が増加するという問題が存在する。

鋼材疲労破壊は、鋼材の応力集中部で発生した疲労亀裂が鋼材に沿って伝播するため発生する。特に、構造物に提供される構造用鋼材の場合には、必須的に溶接部を備えており、溶接部内には多数の欠陥部が存在するため疲労亀裂の発生自体を防止することは実際に不可能である。そのため、構造物に提供される鋼材の疲労寿命を向上させるためには、疲労亀裂自体の発生を防止することよりは、すでに疲労亀裂が溶接部に存在している状態から他の部分への疲労亀裂の伝播速度を遅らせることが重要である。

鋼材の疲労亀裂進展速度を遅らせる技術に関連し、特許文献1では、フェライト結晶の(100)面が鋼板表面に垂直な方向(ND)及び平行な方向を有する結晶粒と、フェライト結晶の(111)面が鋼板表面に垂直な方向及び平行な方位を有する結晶粒の間の境界が亀裂の進展方向に沿って少なくとも30μm当たりに1ヶ所以上横切るか、又は鋼板表面と平行な測定面においてフェライトの(111)面の分率と(100)面の分率の比を1.25〜2.0に制限することにより、疲労亀裂進展抑制特性が改善された鋼板を提案する。但し、特許文献1には、フェライトを主体とすることから、引張強度500MPa以下のレベルである鋼材のみに対応できるという技術的欠点が存在する。

耐疲労特性と直接関連しているわけではないが、特許文献2では、脆性亀裂伝播停止特性を向上させるために、鋼材の表層領域組織改質する技術を提案する。特に、特許文献2には、表層領域が細粒化された等軸フェライト結晶粒及び伸長フェライト結晶粒を主体とし、(100)面の強度比が1.5〜4.0を有するようにすることで、脆性亀裂伝播停止特性を確保する技術を提案する。但し、特許文献2にも、伸長フェライトを主体とすることから、700MPa以上の高強度鋼材への適用が不可能であり、組織を微細化するために、表層部が復熱を介して加熱される間に圧延を必須に行う必要があることから、圧延工程中の精密な温度が不可能であるという技術的難点が存在する。

概要

疲労亀裂伝播抑制特性及び高強度性を効果的に確保した構造用鋼材及びその製造方法を提供する。 本発明の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材は、重量%で、C:0.02〜0.12%、Mn:1.7〜2.5%、Si:0.01〜0.8%、Al:0.005〜0.5%、残部Fe及び不可避不純物を含み、厚さ方向に沿って外側の表層部と内側の中心部に微細組織が区分され、表層部は焼戻しベイナイト基地組織として含み、フレッシュマルテンサイトを第2組織として含み、オーステナイト残留組織として含み、中心部はラスベイナイトを含む。

目的

本発明の課題は、疲労亀裂伝播抑制特性及び高強度性を効果的に確保した構造用鋼材及びその製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

重量%で、C:0.02〜0.12%、Mn:1.7〜2.5%、Si:0.01〜0.8%、Al:0.005〜0.5%、残部Fe及び不可避不純物からなり、厚さ方向に沿って外側の表層部と内側の中心部に微細組織が区分され、前記表層部は、焼戻しベイナイト基地組織として含み、フレッシュマルテンサイトを第2組織として含み、オーステナイト残留組織として含み、前記中心部はラスベイナイトを含むことを特徴とする疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材

請求項2

前記表層部は、上部側の上部表層部と下部側の下部表層部に区分され、前記上部表層部及び前記下部表層部はそれぞれ、前記鋼材の厚さに対して3〜10%の厚さで備えられることを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材。

請求項3

前記基地組織及び前記第2組織は、前記表層部に95%以上の体積分率で含まれることを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材。

請求項4

前記残留組織は、前記表層部に5%以下の体積分率で含まれることを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材。

請求項5

前記焼戻しベイナイトの平均粒径は3μm以下(0μmを除く)であることを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材。

請求項6

前記フレッシュマルテンサイトの平均粒径は3μm以下(0μmを除く)であることを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材。

請求項7

前記鋼材は、重量%で、Nb:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.1%、P:0.02%以下、B:0.004%以下、N:0.015%以下、S:0.01%以下、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、Cr:0.05〜1.0%、V:0.01〜0.4%、Ca:0.006%以下のうち1種又は2種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材。

請求項8

前記鋼材の降伏強度は690MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材。

請求項9

前記鋼材の引張強度は800MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材。

請求項10

前記表層部の高傾角粒界分率は45%以上であることを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材。

請求項11

前記鋼材の疲労亀裂進展速度は2.5x10−5mm/cycle以下であることを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材。

請求項12

重量%で、C:0.02〜0.12%、Mn:1.7〜2.5%、Si:0.01〜0.8%、Al:0.005〜0.5%、残部Fe及び不可避不純物からなるスラブを1050〜1250℃の温度範囲再加熱し、前記スラブをTnr〜1150℃の温度範囲で粗圧延し、前記粗圧延された鋼材の表層部の温度を基準に、5℃/s以上の冷却速度でMs〜Bs℃の温度範囲まで前記粗圧延された鋼材を第1冷却し、前記第1冷却された鋼材の表層部が復熱を介して再加熱されるように維持して復熱処理し、且つ前記鋼材の表層部を(Ac1+40℃)〜(Ac3−5℃)の温度範囲で再加熱し、前記復熱処理された鋼材をBs〜Tnr℃の温度範囲で仕上げ圧延し、前記仕上げ圧延された鋼材を5℃/s以上の冷却速度で250〜500℃の温度範囲まで第2冷却することを特徴とする疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材の製造方法。

請求項13

前記スラブは、重量%で、Nb:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.1%、P:0.02%以下、B:0.004%以下、N:0.015%以下、S:0.01%以下、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、Cr:0.05〜1.0%、V:0.01〜0.4%、Ca:0.006%以下のうち1種又は2種以上をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材の製造方法。

請求項14

前記表層部は、前記鋼材の外側表面から前記鋼材の中心側に向かって、前記鋼材の厚さに対する3〜10%の深さまでの領域であることを特徴とする請求項12に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材の製造方法。

請求項15

前記第1冷却は前記粗圧延直後に行われることを特徴とする請求項12に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材の製造方法。

請求項16

前記第1冷却の開始温度は、前記鋼材の表層部の温度を基準にAe3+100℃以下であることを特徴とする請求項12に記載の疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、建築物橋梁などの構造物に用いられる構造用鋼材及びその製造方法に関し、詳細には、鋼組成微細組織、及び製造工程を最適化することにより、疲労亀裂伝播抑制特性及び高強度性を効果的に確保した構造用鋼材及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

建築物や橋梁などの構造物に用いられる構造用鋼材は、その使用環境の特性上、繰り返される応力が継続的に加わることから、構造物の全体的な安定性を確保するためには、素材耐疲労特性を確保することが非常に重要である。特に、最近の構造物が超大型化するにつれて、構造物の軽量化及び剛性の確保の要求が増加する傾向にあり、それに応じて、高強度素材の使用が増加するのが実情である。但し、素材の強度が増加するほど、素材に発生した亀裂の周囲に集中する応力も同時に増加することから、素材の亀裂伝播速度が増加するという問題が存在する。

0003

鋼材疲労破壊は、鋼材の応力集中部で発生した疲労亀裂が鋼材に沿って伝播するため発生する。特に、構造物に提供される構造用鋼材の場合には、必須的に溶接部を備えており、溶接部内には多数の欠陥部が存在するため疲労亀裂の発生自体を防止することは実際に不可能である。そのため、構造物に提供される鋼材の疲労寿命を向上させるためには、疲労亀裂自体の発生を防止することよりは、すでに疲労亀裂が溶接部に存在している状態から他の部分への疲労亀裂の伝播速度を遅らせることが重要である。

0004

鋼材の疲労亀裂進展速度を遅らせる技術に関連し、特許文献1では、フェライト結晶の(100)面が鋼板表面に垂直な方向(ND)及び平行な方向を有する結晶粒と、フェライト結晶の(111)面が鋼板表面に垂直な方向及び平行な方位を有する結晶粒の間の境界が亀裂の進展方向に沿って少なくとも30μm当たりに1ヶ所以上横切るか、又は鋼板表面と平行な測定面においてフェライトの(111)面の分率と(100)面の分率の比を1.25〜2.0に制限することにより、疲労亀裂進展抑制特性が改善された鋼板を提案する。但し、特許文献1には、フェライトを主体とすることから、引張強度500MPa以下のレベルである鋼材のみに対応できるという技術的欠点が存在する。

0005

耐疲労特性と直接関連しているわけではないが、特許文献2では、脆性亀裂伝播停止特性を向上させるために、鋼材の表層領域組織改質する技術を提案する。特に、特許文献2には、表層領域が細粒化された等軸フェライト結晶粒及び伸長フェライト結晶粒を主体とし、(100)面の強度比が1.5〜4.0を有するようにすることで、脆性亀裂伝播停止特性を確保する技術を提案する。但し、特許文献2にも、伸長フェライトを主体とすることから、700MPa以上の高強度鋼材への適用が不可能であり、組織を微細化するために、表層部が復熱を介して加熱される間に圧延を必須に行う必要があることから、圧延工程中の精密な温度が不可能であるという技術的難点が存在する。

先行技術

0006

特開2000−017379号公報(2000.01.18.公開
特開2002−020835号公報(2002.01.23.公開)

発明が解決しようとする課題

0007

本発明の課題は、疲労亀裂伝播抑制特性及び高強度性を効果的に確保した構造用鋼材及びその製造方法を提供することである。

0008

本発明の課題は上述した内容に限定されない。通常の技術者であれば、本明細書の全般的な内容から、本発明の追加的な課題を理解するのに困難がない。

課題を解決するための手段

0009

本発明による疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材は、重量%で、C:0.02〜0.12%、Mn:1.7〜2.5%、Si:0.01〜0.8%、Al:0.005〜0.5%、残部Fe及び不可避不純物からなり、厚さ方向に沿って外側の表層部と内側の中心部に微細組織が区分され、前記表層部は、焼戻しベイナイト基地組織として含み、フレッシュマルテンサイトを第2組織として含み、オーステナイト残留組織として含み、前記中心部はラスベイナイトを含むことを特徴とする。

0010

前記表層部は、上部側の上部表層部と下部側の下部表層部に区分され、前記上部表層部及び前記下部表層部はそれぞれ、前記鋼材の厚さに対して3〜10%の厚さで備えられることができる。

0011

前記基地組織及び前記第2組織は、表層部に95%以上の体積分率で含まれることができる。

0012

前記残留組織は、表層部に5%以下の体積分率で含まれることができる。

0013

前記焼戻しベイナイトの平均粒径は、3μm以下(0μmを除く)であることができる。

0014

前記フレッシュマルテンサイトの平均粒径は、3μm以下(0μmを除く)であることができる。

0015

前記鋼材は、重量%で、Nb:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.1%、P:0.02%以下、B:0.004%以下、N:0.015%以下、S:0.01%以下、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、Cr:0.05〜1.0%、V:0.01〜0.4%、Ca:0.006%以下のうち1種又は2種以上をさらに含むことができる。

0016

前記鋼材の降伏強度は690MPa以上であることができる。

0017

前記鋼材の引張強度は800MPa以上であることができる。

0018

前記表層部の高傾角粒界分率は45%以上であることができる。

0019

前記鋼材の疲労亀裂進展速度は2.5x10−5mm/cycle以下であることができる。

0020

本発明による疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材の製造方法は、重量%で、C:0.02〜0.12%、Mn:1.7〜2.5%、Si:0.01〜0.8%、Al:0.005〜0.5%、残部Fe及び不可避不純物からなるスラブを1050〜1250℃の温度範囲再加熱し、前記スラブをTnr〜1150℃の温度範囲で粗圧延し、前記粗圧延された鋼材の表層部の温度を基準に、5℃/s以上の冷却速度でMs〜Bs℃の温度範囲まで前記粗圧延された鋼材を第1冷却し、前記第1冷却された鋼材の表層部が復熱を介して再加熱されるように維持して復熱処理し、且つ前記鋼材の表層部を(Ac1+40℃)〜(Ac3−5℃)の温度範囲で再加熱し、前記復熱処理された鋼材をBs〜Tnr℃の温度範囲で仕上げ圧延し、前記仕上げ圧延された鋼材を5℃/s以上の冷却速度で250〜500℃の温度範囲まで第2冷却して製造することを特徴とする。

0021

前記スラブは、重量%で、Nb:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.1%、P:0.02%以下、B:0.004%以下、N:0.015%以下、S:0.01%以下、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、Cr:0.05〜1.0%、V:0.01〜0.4%、Ca:0.006%以下のうち1種又は2種以上をさらに含むことができる。

0022

前記表層部は、前記鋼材の外側表面から前記鋼材の中心側に向かって、前記鋼材の厚さに対する3〜10%の深さまでの領域であることができる。

0023

前記第1冷却は前記粗圧延直後に行われることができる。

0024

前記第1冷却の開始温度は、前記鋼材の表層部の温度を基準にAe3+100℃以下であることができる。

発明の効果

0025

本発明によると、復熱処理を介して鋼材表層部の組織を微細化し、復熱処理温度を制限して表層部の高傾角粒界分率を増加させることから、耐疲労特性を効果的に改善させた構造用高強度鋼材及びその製造方法を提供することができる。

0026

また、本発明によると、鋼成分、微細組織、及び工程条件を最適化することにより、疲労亀裂伝播抑制特性を確保するとともに、800MPa級以上の引張強度を有する高強度構造用鋼材及びその製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0027

本発明の一実施例で疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材の試験片の微細組織を観察した写真である。
本発明の製造方法を実現する設備の一例を概略的に示す図である。
本発明の復熱処理による表層部の微細組織の変化を概略的に示す概念図である。
復熱温度と高傾角粒界分率及び疲労亀裂進展速度の関係を示すグラフである。

実施例

0028

本発明は、疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材及びその製造方法に関する。以下、本発明の好ましい実施例を説明する。本発明の実施例は、様々な形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明される実施例に限定されると解釈されるものではない。本実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提供されるものである。

0029

以下、本発明の鋼組成についてより詳細に説明する。以下、特に異ならせて示さない限り、各元素含有量を示す%は重量を基準とする。

0030

本発明による疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材は、重量%で、炭素(C):0.02〜0.12%、マンガン(Mn):1.7〜2.5%、シリコン(Si):0.01〜0.8%、アルミニウム(Al):0.005〜0.5%、残部Fe及び不可避不純物を含むことができる。

0031

炭素(C):0.02〜0.12%
炭素(C)は、本発明において、基地にベイナイトを形成させ、強度を決定する最も重要な元素であるため、適切な範囲内で鋼中に含有される必要がある。炭素(C)の含有量が一定レベル未満の場合には、焼入性が低下し、ベイナイトの形成が抑制されることから、鋼材の強度が低下するという問題が発生しうる。本発明は、鋼材の強度を確保するために、炭素(C)の含有量の下限を0.02%に制限することができる。これに対し、炭素(C)の含有量が一定レベルを超えると、鋼材の低温靭性が低下する可能性があることから、本発明は、炭素(C)の含有量の上限を0.12%に制限することができる。したがって、本発明の炭素(C)の含有量は0.02〜0.12%の範囲であることができ、溶接用鋼構造物として用いられる鋼材の場合には、溶接性を確保するために、炭素(C)の含有量を0.03〜0.08%の範囲に制限することができる。

0032

マンガン(Mn):1.7〜2.5%
マンガン(Mn)は、焼入性を向上させる元素であり、固溶強化により強度を向上させる有用な元素である。また、マンガン(Mn)の含有量が一定レベル以下の場合には、フェライトが簡単に形成されて、本発明が目的とする表層部の組織を得ることができなくなる。本発明は、この効果を達成するために、マンガン(Mn)の含有量の下限を1.7%に制限することができる。但し、マンガン(Mn)が過度に添加される場合には、硬化能の過度な増加により、溶接部の靭性が大きく低下するおそれがあることから、本発明は、マンガン(Mn)の含有量の上限を2.5%に制限することができる。したがって、本発明のマンガン(Mn)の含有量は1.7〜2.5%の範囲であることができ、より好ましいマンガン(Mn)の含有量は1.8〜2.3%の範囲であることができる。

0033

シリコン(Si):0.01〜0.8%
シリコン(Si)は、脱酸剤として用いられる元素であり、固溶強化による強度向上効果に寄与する元素である。本発明は、この効果を達成するために、シリコン(Si)の含有量の下限を0.01%に制限することができる。但し、シリコン(Si)が過多に添加される場合には、溶接部は言うまでもなく、母材の低温靭性を低下させる可能性があることから、本発明は、シリコン(Si)の含有量の上限を0.8%に制限することができる。したがって、本発明のシリコン(Si)の含有量は0.01〜0.8%の範囲であることができ、より好ましいシリコン(Si)の含有量は0.05〜0.5%の範囲であることができる。

0034

アルミニウム(Al):0.005〜0.5%
アルミニウム(Al)は、代表的な脱酸剤であり、強度向上に寄与する元素でもある。本発明は、この効果を達成するために、アルミニウム(Al)の含有量の下限を0.005%に制限することができる。但し、アルミニウム(Al)が過多に添加される場合には、連続鋳造時における連続鋳造ノズル詰まりの原因となる可能性があることから、本発明は、アルミニウム(Al)の含有量の上限を0.5%に制限することができる。したがって、本発明のアルミニウム(Al)の含有量は0.005〜0.5%の範囲であることができ、より好ましいアルミニウム(Al)の含有量は0.01〜0.3%の範囲であることができる。

0035

本発明による疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材は、重量%で、ニオブ(Nb):0.005〜0.1%、チタン(Ti):0.005〜0.1%、リン(P):0.02%以下、ボロン(B):0.004%以下、窒素(N):0.015%以下、硫黄(S):0.01%以下、銅(Cu):0.01〜1.0%、ニッケル(Ni):0.01〜2.0%、モリブデン(Mo):0.01〜1.0%、クロム(Cr):0.05〜1.0%、バナジウム(V):0.01〜0.4%、カルシウム(Ca):0.006%以下のうち1種又は2種以上をさらに含むことができる。

0036

ニオブ(Nb):0.005〜0.1%
ニオブ(Nb)は、TMCP鋼の製造において最も重要な役割を果たす元素のうちの1つであり、炭化物又は窒化物の形で析出し、母材及び溶接部の強度向上に大きく寄与する元素でもある。また、スラブの再加熱時に固溶されたニオブ(Nb)は、オーステナイトの再結晶を抑制し、表層部のニオブ(Nb)は粗圧延後のスラブ冷却時におけるベイナイトの形成に寄与する。したがって、本発明は、かかる効果の達成のために、ニオブ(Nb)の含有量の下限を0.005%に制限することができる。但し、ニオブ(Nb)が過多に添加される場合には、粗大な析出物が生成され、鋼材の端に脆性クラックを発生させる可能性があることから、本発明は、ニオブ(Nb)の含有量の上限を0.1%に限定することができる。したがって、本発明のニオブ(Nb)の含有量は0.005〜0.1%の範囲であることができ、より好ましいニオブ(Nb)の含有量は0.01〜0.05%の範囲であることができる。

0037

チタン(Ti):0.005〜0.1%
チタン(Ti)は、焼入性の向上に重要な元素であるボロン(B)の添加効果最大化する元素である。すなわち、チタン(Ti)は、鋼中の窒素(N)と結合してTiNを形成することからBNの形成を抑制することができ、それに応じて、固溶ボロン(B)の含有量を増加させることができる。また、TiN析出物は、オーステナイト結晶粒を固定(pinning)させて結晶粒粗大化を抑制させることから低温靭性を大幅に向上させることができる。したがって、本発明は、かかる効果を達成するために、チタン(Ti)の含有量の下限を0.005%に制限することができる。これに対し、チタン(Ti)が過多に添加される場合には、連続鋳造時における連続鋳造ノズルの詰まりを誘発するか、又はスラブの中心部に晶出されて低温靭性の低下を誘発する可能性があることから、本発明は、チタン(Ti)の含有量の上限を0.1%に制限することができる。したがって、本発明のチタン(Ti)の含有量は0.005〜0.1%の範囲であることができ、より好ましいチタン(Ti)の含有量は0.01〜0.05%の範囲であることができる。

0038

リン(P):0.02%以下
リン(P)は、強度向上及び耐食性に有利な元素であるものの、衝撃靭性を大きく阻害する元素であるため、できる限り低くすることが有利である。したがって、本発明は、リン(P)の含有量の上限を0.02%に制限することができる。但し、リン(P)は、製鋼工程において不可避に流入される不純物であるため、0.001%未満のレベルに制御することは、経済的な面から好ましくない。したがって、本発明のリン(P)の含有量は0.001〜0.02%の範囲であることができ、より好ましいリン(P)の含有量は0.001〜0.01%の範囲であることができる。

0039

ボロン(B):0.004%以下
ボロン(B)は、比較的低価の元素である一方で、少量の添加でも硬化能を効果的に高めることができる有益な元素である。また、ボロン(B)は、粗圧延後の冷却時に表層部のベイナイト形成に大きく寄与する元素でもある。但し、Bが過度に添加される場合には、Fe23(CB)6を形成して硬化能が逆に低下し、低温靭性も大幅に低下する可能性がある。したがって、本発明は、ボロン(B)の含有量の上限を0.004%に制限することができる。但し、強度上昇及び表層部のベイナイト形成などの効果を考慮するとき、本発明の好ましいボロン(B)の含有量は0.0005〜0.004%の範囲であることができる。

0040

窒素(N):0.015%以下
窒素(N)は、鋼材の強度向上に寄与する元素である。しかし、その添加量が過多な場合には、鋼材の靭性が大きく減少することから、本発明は、窒素(N)の含有量の上限を0.015%に制限することができる。但し、窒素(N)も、製鋼工程において不可避に流入される不純物であって、窒素(N)の含有量を0.0015%未満のレベルに制御することは、経済的な面から好ましくない。したがって、本発明のリン(P)の含有量は0.0015〜0.015%の範囲であることができ、より好ましいリン(P)の含有量は0.0015〜0.01%の範囲であることができる。

0041

硫黄(S):0.01%以下
硫黄(S)は、MnSなどのような非金属介在物を形成して衝撃靭性を大きく阻害する元素であるため、できる限り低く制御することが有利である。したがって、本発明は、硫黄(S)の含有量の上限を0.01%に制限することができる。但し、硫黄(S)も、製鋼工程において不可避に流入される不純物であって、0.001%未満のレベルに制御することは経済的な面から好ましくない。したがって、本発明の硫黄(S)の含有量は0.001〜0.01%の範囲であることができ、より好ましい硫黄(S)の含有量は0.001〜0.005%の範囲であることができる。

0042

銅(Cu):0.01〜1.0%
銅(Cu)は、母材の靭性の低下を最小限にするとともに、強度を高めることができる元素である。したがって、本発明は、かかる効果の達成のために、銅(Cu)の含有量の下限を0.01%に制限することができる。但し、銅(Cu)の添加量が過多な場合には、最終製品表面品質が低下する可能性が高くなることから、本発明は、銅(Cu)の含有量の上限を1.0%に制限することができる。したがって、本発明の銅(Cu)の含有量は0.01〜1.0%の範囲であることができ、より好ましい銅(Cu)の含有量は0.01〜0.5%であることができる。

0043

ニッケル(Ni):0.01〜2.0%
ニッケル(Ni)は、母材の強度及び靭性をともに向上させることができる元素であることから、本発明は、強度及び靭性の確保のために、ニッケル(Ni)の含有量の下限を0.01%に制限することができる。但し、ニッケル(Ni)は、高価な元素であって、過度な添加は経済性の面から好ましくなく、ニッケル(Ni)の添加量が過度な場合には溶接性が劣化する可能性があることから、本発明は、ニッケル(Ni)の含有量の上限を2.0%に制限することができる。したがって、本発明のニッケル(Ni)の含有量は0.01〜2.0%の範囲であることができ、より好ましいニッケル(Ni)の含有量は0.1〜1.0%の範囲であることができる。

0044

モリブデン(Mo):0.01〜1.0%
モリブデン(Mo)は、少量の添加だけでも硬化能を大きく向上させることから、フェライトの生成を抑制することができ、それに応じて、鋼材の強度を大幅に向上させることができる元素である。したがって、本発明は、強度の確保の面からモリブデン(Mo)の含有量の下限を0.01%に制限することができる。但し、モリブデン(Mo)の添加量が過多な場合には、溶接部の硬度が過度に増加して母材の靭性が阻害されるおそれがあることから、本発明は、モリブデン(Mo)の含有量の上限を1.0%に制限することができる。したがって、本発明のモリブデン(Mo)の含有量は0.01〜1.0%の範囲であることができ、より好ましいモリブデン(Mo)の含有量は0.1〜0.5%の範囲であることができる。

0045

クロム(Cr):0.05〜1.0%
クロム(Cr)は、硬化能を増加させて強度の増加に効果的に寄与する元素であるため、本発明は、強度確保のためにクロム(Cr)の含有量の下限を0.05%に制限することができる。但し、クロム(Cr)の添加量が過多な場合には、溶接性が大きく低下することから、本発明は、クロム(Cr)の含有量の上限を1.0%に制限することができる。したがって、本発明のクロム(Cr)の含有量は0.05〜1.0%の範囲であることができ、より好ましいクロム(Cr)の含有量は0.1〜0.5%の範囲であることができる。

0046

バナジウム(V):0.01〜0.4%
バナジウム(V)は、他の合金組成に比べて固溶される温度が低く、溶接熱影響部から析出して、溶接部の強度低下を防止することができる。したがって、本発明は、この効果を達成するために、バナジウム(V)の含有量の下限を0.01%に制限することができる。但し、バナジウム(V)が過多に添加される場合には、靭性が低下する可能性があることから、本発明では、バナジウム(V)の含有量の上限を0.4%に制限することができる。したがって、本発明のバナジウム(V)の含有量は0.01〜0.4%の範囲であることができ、より好ましいバナジウム(V)の含有量は0.02〜0.2%の範囲であることができる。

0047

カルシウム(Ca):0.006%以下
カルシウム(Ca)は、MnSなどの非金属介在物の形状を制御し、低温靭性を向上させる元素として主に用いられる。但し、カルシウム(Ca)の過度な添加は、多量のCaO−CaSの形成及び結合による粗大な介在物の形成を誘発することから、鋼の清浄度の低下や現場での溶接性の低下などの問題が発生する可能性がある。したがって、本発明は、カルシウム(Ca)の含有量の上限を0.006%に制限することができる。より好ましいカルシウム(Ca)の含有量の上限は0.005%であることができる。

0048

本発明は、上述した鋼組成の他に、残部Fe及び不可避不純物を含むことができる。不可避不純物は、通常の鉄鋼製造工程において意図せずに混入する可能性があるものであって、これを全面的に排除することはできない。通常の鉄鋼製造分野における技術者であればその意味を理解することができる。また、本発明は、上述した鋼組成の他に、他の組成の添加を全面的に排除するものではない。

0049

本発明の一側面による疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは20mm以上の構造用厚物材であることができる。

0050

以下、本発明の微細組織についてより詳細に説明する。

0051

本発明の一側面による疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材は、厚さ方向に沿って外側の表層部と内側の中心部に区分されることができ、表層部及び中心部は微細組織的に区分されることができる。表層部は、鋼材の上部側の上部表層部及び鋼材下部側の下部表層部に区分され、上部表層部及び下部表層部の厚さはそれぞれ、鋼材の厚さに対して3〜10%レベルであることができる。好ましい上部表層部及び下部表層部の厚さはそれぞれ、鋼材の厚さに対して5〜7%のレベルであることができる。

0052

表層部は、焼戻しベイナイトを基地組織として含み、フレッシュマルテンサイトを第2組織として含み、且つオーステナイトを残留組織として含む混合組織で備えられ、中心部はラスベイナイトを含む組織で備えられることができる。したがって、表層部及び中心部は微細組織的に区分されることができる。

0053

表層部内における焼戻しベイナイト組織及びフレッシュマルテンサイト組織の体積分率の合計は95%以上であることができ、表層部内における残留オーステナイトの体積分率は5%以下であることができる。また、表層部内における焼戻しベイナイト組織は85%以上の体積分率で含まれることができ、フレッシュマルテンサイト組織は10%以下で含まれることができる。表層部内における焼戻しベイナイト組織及びフレッシュマルテンサイト組織の体積分率の合計は100%であることもできる。この場合、表層部内における残留オーステナイトの体積分率は0%であってもよい。

0054

中心部におけるラスベイナイト組織は95%以上の体積分率で含まれることができる。

0055

本発明の一側面による疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材は、復熱処理を介して表層部が微細化することから、最終製品の中心部はラス(lath)ベイナイト組織で備えられるのに対し、表層部は焼戻しベイナイト組織及びフレッシュマルテンサイト組織がそれぞれ3μm以下(0μmを除く)の平均粒径を有する微細な組織で備えられることができる。

0056

図1は本発明の一実施例による構造用高強度鋼材の試験片の微細組織を観察した写真である。具体的には、図1(a)は中心部の微細組織を観察した写真、図1(b)は表層部の微細組織を観察した写真である。図1(a)及び(b)に示すように、鋼材の中心部には粗大なラスベイナイト組織が備えられるのに対し、表層部にはそれぞれ3μmの平均粒径を有する焼戻しベイナイト組織、フレッシュマルテンサイト組織、及び残留オーステナイト組織が備えられることが確認できる。したがって、本発明の一実施例による構造用鋼材は、復熱処理を介して鋼材表層部の組織を微細化することにより、脆性亀裂伝播抵抗性を効果的に改善させることができることが確認できる。

0057

本発明の側面による構造用鋼材は、復熱処理を介して表層部の組織が微細化することから、表層部の高傾角粒界分率が45%以上、疲労亀裂進展速度は2.5x10−5mm/cycle以下と優れた疲労亀裂伝播抑制特性を有することができる。

0058

また、本発明による構造用鋼材は、降伏強度690MPa以上、引張強度800MPa以上であることから、構造用素材として適した剛性を確保することができる。

0059

以下、本発明の製造方法についてより詳細に説明する。

0060

本発明による疲労亀裂伝播抑制特性に優れた構造用高強度鋼材は、上述した組成で備えられるスラブを再加熱し、前記スラブを粗圧延し、前記粗圧延された鋼材を第1冷却し、前記第1冷却された鋼材の表層部が復熱を介して再加熱されるように維持して復熱処理し、前記復熱処理された鋼材を仕上げ圧延して製造することができる。

0061

本発明のスラブ合金組成は、上述した鋼材の合金組成に対応することから、本発明のスラブ合金組成についての説明は、上述した鋼材の合金組成についての説明に代替する。

0062

スラブ再加熱
上述した鋼組成で備えられるスラブを再加熱する。鋳造中に形成されたTi及びNbの炭窒化物を十分に固溶させるために、スラブの再加熱温度範囲の下限を1050℃に制限することができる。但し、再加熱温度が過度に高い場合には、オーステナイトが粗大化するおそれがあり、粗圧延後の鋼材の表層部の温度が第1冷却開始温度に達するまで過度な時間がかかることから、再加熱温度の上限を1250℃に制限することができる。したがって、本発明のスラブ再加熱温度は1050〜1250℃の範囲であることができる。

0063

粗圧延
スラブの形状を調整し、デンドライトなどの鋳造組織破壊するために、再加熱後に粗圧延を行う。微細組織の制御のために、オーステナイトの再結晶が停止する温度(Tnr)以上で粗圧延を行い、第1冷却開始温度を考慮して粗圧延温度の上限を1150℃に制限することができる。したがって、本発明の粗圧延温度はTnr〜1150℃の範囲であることができる。

0064

第1冷却
粗圧延終了後に、鋼材表層部にラスベイナイトを形成させるために、表層部の温度がMs〜Bs℃の範囲に達するまで第1冷却を行う。第1冷却の冷却速度が5℃/s未満の場合には、ラスベイナイト組織ではなく、ポリゴナルフェライト又はグラニュラーベイナイト組織が表層部に形成されることから、第1冷却の冷却速度は5℃/s以上であることができる。また、第1冷却方式は、特に限定されるものではないが、冷却効率の面から水冷が好ましい。一方、第1冷却の開始温度が高すぎる場合には、第1冷却によって表層部に形成されるラスベイナイト組織が粗大化するおそれがあることから、第1冷却の開始温度はAe3+100℃以下に制限することが好ましい。

0065

復熱処理の効果を極大化するために、本発明の第1冷却は、粗圧延直後に行われることが好ましい。図2は本発明の製造方法を行うための設備1の一例を概略的に示す図である。スラブ5の移動経路に沿って、粗圧延装置10、冷却装置20、復熱処理台30、及び仕上げ圧延装置40が順に配置され、粗圧延装置10及び仕上げ圧延装置40はそれぞれ、粗圧延ローラ12a、12b及び仕上げ圧延ローラ42a、42bを備えてスラブ5の圧延を行う。冷却装置20は、冷却水噴射できるバークーラー(Bar cooler)25及び粗圧延されたスラブ5の移動を案内する補助ローラ22を備えることができる。バークーラー25は、粗圧延装置10の直後方に配置されることが復熱処理効果の最大化という面からより好ましい。冷却装置20の後方には、復熱処理台30が配置され、粗圧延されたスラブ5は、補助ローラ32に沿って移動しながら復熱処理されることができる。復熱処理終了したスラブ5’は、仕上げ圧延装置40に移動し、仕上げ圧延されることができる。このような設備1は、本発明を行うための設備の一例を提示したものに過ぎず、本発明が必ずしも図2に示された設備に限定されると解釈されるものではない。

0066

復熱処理
第1冷却を行った後、鋼材中心部側の高熱によって鋼材表層部側が再加熱されるように待機する復熱処理が行われる。復熱処理は、鋼材の表層部の温度が(Ac1+40℃)〜(Ac3−5℃)の温度範囲に達するまで行われることができる。復熱処理を介した表層部のラスベイナイトは、微細な焼戻しベイナイト及びフレッシュマルテンサイト組織に変形されることができ、表層部のラスベイナイトの一部はオーステナイトに逆変態することができる。

0067

図3は、本発明の復熱処理を介した表層部の微細組織の変化を概略的に示す概念図である。

0068

図3(a)のように、第1冷却直後の表層部の微細組織は、ラスベイナイト組織として備えられることができる。図3(b)に示すように、復熱処理が進行するにつれて、表層部のラスベイナイトは焼戻しベイナイト組織に変形され、表層部のラスベイナイトのうち一部はオーステナイトに逆変態することができる。復熱処理後の仕上り圧延及び第2冷却を行うことにより、図3(c)に示すように、焼戻しベイナイト基地組織及びフレッシュマルテンサイトの2相混合組織が形成されることができ、一部のオーステナイト組織が残留することができる。

0069

復熱処理到達温度と高傾角粒界分率及び疲労亀裂進展速度の関係は、図4に示したとおりである。図4に示すように、表層部の復熱処理到達温度が(Ac1+40℃)未満の場合には、15度以上の高傾角粒界が十分に形成されず、疲労亀裂進展速度が2.5×10−5mm/cycleを超えることが確認できる。したがって、本発明は、表層部の復熱処理到達温度の下限を(Ac1+40℃)に制限することができる。また、表層部の復熱処理到達温度が(Ac3−5℃)を超えると、疲労亀裂進展速度に関する大きい利点がなく、表層部の組織が再び粗大化する可能性が高いため、本発明は、表層部の復熱処理到達温度の上限を(Ac3−5℃)に制限することができる。すなわち、本発明は、表層部の復熱処理到達温度を(Ac1+40℃)〜(Ac3−5℃)の温度範囲に制限することにより、表層部組織の微細化、15度以上の高傾角粒界分率45%以上、疲労亀裂進展速度2.5x10−5mm/cycle以下の物性を効果的に確保することができる。

0070

仕上げ圧延
粗圧延された鋼材のオーステナイト組織に不均一な微細組織を導入するために、仕上げ圧延を行うことができる。仕上げ圧延は、ベイナイト変態開始温度(Bs)以上、オーステナイト再結晶温度(Tnr)以下の温度区間で行われる。

0071

第2冷却
仕上げ圧延終了後の鋼材中心部にラスベイナイト組織を形成するために、5℃/s以上の冷却速度で冷却を行う。第2冷却方式は、特に限定されるものではないが、冷却効率の面から水冷が好ましい。第2冷却の冷却終了温度は250〜500℃であることができる。これは、第2冷却の冷却終了温度が鋼材基準500℃を超えると、中心部にラスベイナイト組織が形成されない可能性があり、第2冷却の冷却終了温度が鋼材基準250℃未満の場合には、鋼材にねじれが発生するおそれが存在するためである。

0072

以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、後述する実施例は、本発明を例示してさらに具体化するためのものであって、本発明の権利範囲を制限するためのものではない。

0073

下記表1の組成で備えられるスラブを製造し、下記表2にそれぞれのスラブの変態温度を算出して示した。

0074

0075

0076

表1の組成を有するスラブを、表3の条件で粗圧延、第1冷却、及び復熱処理を行い、表4の条件で仕上げ圧延及び第2冷却を行った。表3及び表4の条件で製造された鋼材の物性測定結果は表5に示した。

0077

それぞれの鋼材に対して、高傾角粒界分率、機械的性質、及び亀裂進展速度を測定した。これらのうち、高傾角粒界分率は、EBSD(Electron Back Scattering Diffraction)法を介して500m×500mの領域を0.5mステップサイズで測定し、隣接する粒子との結晶方位差が15度以上である粒界マップを作成した後、このときの高傾角粒界分率を求めた。降伏強度(YS)及び引張強度(TS)は、3つの試験片を板幅方向に引張試験を行って平均値を求めた。また、疲労亀裂進展試験は、ASTME647の基準に準じて行った。小型引張(Compact Tension)試験片の亀裂進展方向は、圧延方向に直交するようにし、待機状態繰り返し速度25Hz、応力比最小応力最大応力)0.1の条件を用いた。疲労亀裂進展速度は、応力拡大係数範囲(ΔK)が20MPa/m0.5のときを基準にした。

0078

0079

0080

0081

発明鋼A〜Eは、本発明の鋼組成の含有量を満たす鋼材である。このうち、本発明の工程条件を満たす発明例1〜12は、表層部の高傾角粒界分率がすべて45%以上、降伏強度700MPa以上、引張強度800MPa以上、疲労亀裂進展速度2.5x10−5mm/cycle以下を満たすことが確認できる。

0082

本発明の鋼組成の含有量を満たすものの、復熱処理温度が本発明の範囲を超える比較例1、4、6、及び9は、高傾角粒界分率が45%未満、疲労亀裂進展速度2.5x10−5mm/cycleを超えることが確認できる。これは、鋼材の表層部が2相域熱処理温度区間よりも高い温度で加熱されて、表層部の組織がすべてオーステナイトに逆変態した結果、表層部の最終組織がラスベイナイトの組織に形成されたためである。

0083

本発明の鋼組成の含有量を満たすものの、復熱処理温度が本発明の範囲に達しない比較例2、5、7、及び10は、高傾角粒界分率がすべて45%未満、疲労亀裂進展速度2.5x10−5mm/cycleを超えることが確認できる。これは、第1冷却時における鋼材の表層部が過度に冷却されて表層部内の逆変態オーステナイト組織が十分に形成されないためである。

0084

本発明の鋼組成の含有量を満たすものの、第2冷却の終了温度が本発明の範囲を超える比較例3及び8は、中心部に十分なラスベイナイトが形成されず、引張強度及び降伏強度が十分に確保されないことが確認できる。また、本発明の鋼組成の含有量を満たすものの、第2冷却の冷却速度が本発明の範囲に達しない比較例11も、中心部に十分なラスメイナイトが形成されず、一定レベル以上の引張強度及び降伏強度が確保されないことが確認できる。

0085

比較例12〜15は、本発明の工程条件をすべて満たすものの、高強度を実現するためのC、Mn、Nb、及びBなどの含有量が本発明の範囲に達しないため、一定レベル以上の引張強度及び降伏強度を確保できないことが確認できる。

0086

したがって、本発明の一実施例による構造用鋼材及びその製造方法は、合金組成、微細組織、及び工程条件を最適化することにより、疲労亀裂伝播抑制特性を確保するとともに、800MPa級以上の引張強度を有する高強度構造用鋼材及びその製造方法を提供することができる。

0087

以上、実施例を挙げて本発明を詳細に説明したが、これと異なる形態の実施例も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲に記載された技術的思想及び範囲は実施例に限定されない。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 日本製鉄株式会社の「 縦シーム溶接鋼管」が 公開されました。( 2021/08/19)

    【課題】鋼板を溶接入熱15〜110kJ/cmで溶接して鋼管とした場合であっても、低温での溶接金属部の靭性に優れた鋼管を得る。【解決手段】長手方向に内面及び外面が溶接された溶接部を有する縦シーム溶接鋼管... 詳細

  • 日本製鉄株式会社の「 機械部品、及び、機械部品の製造方法」が 公開されました。( 2021/08/19)

    【課題】疲労強度及び被削性に優れた機械部品を提供する。【解決手段】本開示の機械部品は、化学組成が、質量%で、C:0.30〜0.40%、Si:0.30〜1.00%、Mn:1.00〜2.00%、P:0.0... 詳細

  • 鈴木住電ステンレス株式会社の「 鋼線、その製造方法、及びばねまたは医療用線製品の製造方法」が 公開されました。( 2021/08/12)

    【課題・解決手段】本発明は、従来のステンレス鋼線の性能を著しく改善するばねまたは医療用線製品を製造するのに適した鋼線に関する。前記鋼線は(wt.%で):C:0.02〜0.15、Si:0.1〜0.9、M... 詳細

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ