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課題・解決手段

TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体;又はWUCAM又はVstm3)に特異的に結合し、免疫細胞におけるTIGIT媒介性細胞シグナル伝達及び活動を阻害する抗体が提供される。癌、感染症、又はTIGIT媒介性機能によって調節されうる他の病理学的障害治療又は診断するために、抗TIGIT抗体を用いることができる。

概要

背景

TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)は、1型膜貫通タンパク質であり、抗腫瘍免疫においてT細胞及びNK細胞媒介性機能活性阻害する重要な役割を果たすタンパク質のCD28ファミリーメンバーである(Boles KS, et al., 2009 Eur J Immunol, 39:695-703;Stanietsky N, et al., 2009 PNAS 106:17858-63;Yu X, et al. 2009 Nat. Immunol, 10:48-57)。

TIGITをコードする遺伝子及びcDNAは、マウス及びヒトでクローン化され、特徴付けられた。全長ヒトTIGITは、長さ244アミノ酸の配列(配列番号1)を有し、その最初の21アミノ酸はシグナルペプチドである。成熟したヒトTIGITのアミノ酸配列は、223アミノ酸(aa)残基(NCBIアクセッション番号:NM_173799)を含む。成熟したヒトTIGITの細胞外ドメイン(ECD)は、120アミノ酸残基(配列番号2:配列番号1の22位〜141位のアミノ酸に対応)と、VタイプのIg様ドメイン(配列番号1の39位〜127位のアミノ酸に対応)と、続いて21アミノ酸膜貫通配列と、82アミノ酸細胞質ドメインと、免疫受容体チロシン抑制性モチーフ(ITIM)で構成されている(Yu X, et al. 2009 Nat. Immunol, 10:48-57;Stengel KF, et al. 2012 PNAS 109:5399-04)。ECD内で、ヒトTIGITは、マウス及びカニクイザルとそれぞれ59%及び87%のアミノ酸配列同一性共有する。

TIGITは、T細胞(活性化T細胞メモリT細胞、制御性T(Treg)細胞、濾胞性ヘルパー(Tfh)細胞)上に、及びNK細胞上に発現される(Boles KS, et al., 2009 Eur J Immunol, 39:695-703;Joller N, et al., 2014 Immunity 40:569-81;Levin SD, et al., 2011 Eur J Immunol, 41:902-15;Stanietsky N, et al., 2009 PNAS 106:17858-63;Yu X, et al. 2009 Nat. Immunol, 10:48-57)。

これまで、2つのTIGITリガンド、CD155(ポリオウイルス受容体又はPVRとしても知られている)及びCD112(ポリオウイルス受容体関連2、PVRL2又はネクチン−2としても知られている)が特定されている。これらのリガンドは、主にAPC樹状細胞マクロファージ等)上に、及び腫瘍細胞上に発現される(CasadoJG, et al., 2009 Cancer Immunol Immunother58:1517-26;Levin SD, et al., 2011 Eur J Immunol, 41:902-15;Mendelsohn CL et al., 1989 56:855-65;Stanietsky N, et al., 2009 PNAS 106:17858-63;Yu X, et al. 2009 Nat. Immunol, 10:48-57)。免疫「チェックポイント分子として、TIGITは、そのリガンドのCD155及びCD112で結合されると、免疫細胞内で抑制性シグナル伝達を引き起こす。TIGITのCD155への結合親和性(Kd:約1nM)は、CD112への結合親和性よりも非常に高い。TIGIT:CD112の相互作用が抑制性シグナルの仲介に機能的に関係するかは、まだ確定されていない。共刺激性受容体であるCD226(DNAM−1)は、低い親和性(Kd:約100nM)で同じリガンドに結合するが、陽性シグナルを提供する(Bottino C, et al., 2003 J Exp Med 198:557-67)。加えて、「TIGIT様」受容体であるCD96(Tactile)も、同じ経路で同様の抑制性の役割を果たす(Chan CJ, et al., 2014 Nat. Immunol 15:431-8)。

TIGITは、異なるメカニズムを介して免疫応答を阻害することができる。第1に、樹状細胞(DC)上でのTIGITとPVRの相互作用によって、DC内で「リバースシグナル伝達」が提供され、IL−10のアップレギュレーションとIL−12分泌の減少がもたらされ、それによってT細胞の活性化が抑制される(Yu X, et al. Nat Immunol. 2009 10:48-57)。第2に、TIGITがより高い親和性でCD155に結合し、それによってDNAM−1−CD155の相互作用を外して競合する。第3に、T細胞上へのTIGITの直接の連結がTCR媒介性活性化をダウンレギュレーションすることができ、それに続くNK細胞上でのTIGITの増殖と会合がNK細胞の細胞毒性を阻止することができる(Joller N, et al. 2011 186: 1338-42;Stanietsky N, et al., 2009 PNAS 106:17858-63)。第4に、Treg細胞上のTIGIT発現が、腫瘍組織での高度に活性化された抑制性の表現型と関連付けられ、Treg細胞内のTIGITシグナル伝達がTreg細胞の安定性好都合でありうる(Joller N, et al. Immunity 2014 40:569-81;Kurtulus S, et al. J Clin Invest. 2015 125: 4053-4062)。

TIGITは、免疫グロブリンテールチロシン(ITT)様のモチーフに続いて、その細胞質テイル内の免疫受容体チロシン抑制性モチーフ(ITIM)を有する(Yu X, et al. Nat Immunol. 2009 10:48-57;Engels N, et al. Curr Opin Immunol 2011 23: 324-329)。これらのモチーフは、ホスファターゼHIP−1とβ−アレスチン2の補充を仲介することができ(Li M, et al. J Biol Chem. 2014 289:17647-17657;Liu S, et al. Cell death and differentiation 2013 20: 456-464)、それによって、TIGITが本質的に抑制性シグナルを提供して活性化シグナルを弱めるメカニズムを提供する。

腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と末梢血単核細胞(PBMC)におけるTIGIT発現のアップレギュレーションは、肺癌(Tassi, et al., Cancer Res. 2017 77: 851-861)、食道癌(Xie J, et al., Oncotarget 2016 7:63669-63678)、乳癌(Gil Del Alcazar CR, et al. 2017 Cancer Discov.)、急性骨髄性白血病(AML)(Kong Y et al., Clin Cancer Res. 2016 22:3057-66)と黒色腫(Chauvin JM, et al., J Clin Invest. 2015 125:2046-2058)等の多種類の癌で報告されている。AMLでのTIGITの発現増加は、患者生存成績の予後不良に関連する(Kong Y et al., Clin Cancer Res. 2016 22:3057-66)。TIGITシグナル伝達のアップレギュレーションは、癌に対する免疫寛容だけでなく、慢性ウイルス感染に対する免疫寛容にも、重要な役割を果たす。HIV感染の間、T細胞上でのTIGITの発現は、著しく高く、ウイルス量及び疾患の進行と正の相関があった(ChewGM, et al., 2016PLoS Pathog. 12:e1005349)。更に、TIGIT受容体を単独で又は他の遮断と組み合わせて遮断することによって、インビトロ及びインビボの両方で機能的に「使い果たされた」T細胞を救済することができる(Chauvin JM, et al., J Clin Invest. 2015 125:2046-2058;Chew GM, et al., 2016 PLoS Pathog. 12:e1005349;Johnston RJ, et al. Cancer Cell 2014 26:923-937)。癌及びウイルス感染の場合、TIGITシグナル伝達の活性化は免疫細胞の機能不全を促進し、癌の増殖又はウイルス感染の拡大を引き起こす。治療剤によるTIGIT媒介性抑制性シグナル伝達の阻害は、T細胞、NK細胞及び樹状細胞(DC)を含む免疫細胞の機能的な活性を回復させ、従って、癌又は慢性ウイルス感染に対する免疫を増強させることができる。

従って、拮抗分子によるTIGITシグナル伝達の調節によって、免疫細胞が寛容から救われ、腫瘍又は慢性ウイルス感染を根絶するための効率的な免疫応答が誘発されうる。

概要

TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体;又はWUCAM又はVstm3)に特異的に結合し、免疫細胞におけるTIGIT媒介性細胞シグナル伝達及び活動を阻害する抗体が提供される。癌、感染症、又はTIGIT媒介性機能によって調節されうる他の病理学的障害治療又は診断するために、抗TIGIT抗体を用いることができる。なし

目的

共刺激性受容体であるCD226(DNAM−1)は、低い親和性(Kd:約100nM)で同じリガンドに結合するが、陽性シグナルを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

(a)配列番号3、4、5及び13から選択される1つ、2つ若しくは3つのCDRアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は(b)配列番号6、7及び8から選択される1つ、2つ又は3つのCDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、ヒトTIGITに結合することができる抗体又はその抗原結合フラグメント

請求項2

(a)配列番号3のVH−CDRアミノ酸配列、配列番号4のVH−CDR2アミノ酸配列、及び配列番号5のVH−CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号6のVL−CDR1アミノ酸配列、配列番号7のVL−CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8のVL−CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、又は(b)配列番号3のVH−CDR1アミノ酸配列、配列番号13のVH−CDR2アミノ酸配列、及び配列番号5のVH−CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号6のVL−CDR1アミノ酸配列、配列番号7のVL−CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8のVL−CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。

請求項3

抗体がヒト化抗体分子である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。

請求項4

配列番号9、14又は19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。

請求項5

配列番号11、16又は21のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。

請求項6

(a)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(b)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(c)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(d)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(e)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(f)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(g)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(h)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、又は(i)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。

請求項7

(a)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、(b)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、又は(c)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、及び配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。

請求項8

(a)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は(c)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。

請求項9

抗体が(a)〜(c)の1つ以上を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント:(a)配列番号14の24位にスレオニンからアラニンへの変異を有する重鎖、(b)配列番号14の37位にイソロイシンからバリンへの変異を有する重鎖、(c)配列番号16の58位にバリンからイソロイシンへの変異を有する軽鎖

請求項10

抗原結合フラグメントがFab、F(ab’)2、Fv又は単鎖Fv(ScFv)である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。

請求項11

IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4のサブクラス重鎖定常領域又はその変異体、及びκタイプ若しくはλタイプの軽鎖定常領域又はその変異体を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。

請求項12

請求項1〜11のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、及び薬学上許容される賦形剤を含む、医薬組成物

請求項13

更に第2の治療剤を含む、請求項12に記載の医薬組成物。

請求項14

免疫応答刺激に有効な量の請求項1〜11のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを、それを必要とする対象に投与することを含む、対象の免疫応答を刺激する方法。

請求項15

癌又は腫瘍治療に有効な量の請求項1〜11のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを、それを必要とする対象に投与することを含む、癌又は腫瘍を治療する方法。

請求項16

第2の治療剤又は処置との組み合わせて抗体又はその抗原結合フラグメントが投与され、前記第2の治療剤又は処置が化学療法、標的療法、腫瘍溶解薬細胞傷害剤免疫療法サイトカイン外科的処置放射線処置共刺激性分子活性化剤阻害性分子の阻害剤ワクチン、又は細胞性免疫療法から選択される、請求項15に記載の方法。

請求項17

感染症の治療に有効な量の請求項1に記載の抗体を、それを必要とする対象に投与することを含む、感染症を治療する方法。

請求項18

感染症がウイルス性感染症である、請求項17に記載の方法。

請求項19

癌、腫瘍又は感染症を治療のための医薬の製造における、請求項1〜11のいずれかに記載の抗TIGIT抗体分子の使用。

技術分野

0001

関連出願
本出願は、2017年12月30日に出願された特許出願番号PCT/CN2017/120392の優先権を主張する。前記特許出願のすべての内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。

0002

発明の分野
本出願は、TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)に特異的に結合する抗体、及びその使用に関する。

背景技術

0003

TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)は、1型膜貫通タンパク質であり、抗腫瘍免疫においてT細胞及びNK細胞媒介性機能活性阻害する重要な役割を果たすタンパク質のCD28ファミリーメンバーである(Boles KS, et al., 2009 Eur J Immunol, 39:695-703;Stanietsky N, et al., 2009 PNAS 106:17858-63;Yu X, et al. 2009 Nat. Immunol, 10:48-57)。

0004

TIGITをコードする遺伝子及びcDNAは、マウス及びヒトでクローン化され、特徴付けられた。全長ヒトTIGITは、長さ244アミノ酸の配列(配列番号1)を有し、その最初の21アミノ酸はシグナルペプチドである。成熟したヒトTIGITのアミノ酸配列は、223アミノ酸(aa)残基(NCBIアクセッション番号:NM_173799)を含む。成熟したヒトTIGITの細胞外ドメイン(ECD)は、120アミノ酸残基(配列番号2:配列番号1の22位〜141位のアミノ酸に対応)と、VタイプのIg様ドメイン(配列番号1の39位〜127位のアミノ酸に対応)と、続いて21アミノ酸膜貫通配列と、82アミノ酸細胞質ドメインと、免疫受容体チロシン抑制性モチーフ(ITIM)で構成されている(Yu X, et al. 2009 Nat. Immunol, 10:48-57;Stengel KF, et al. 2012 PNAS 109:5399-04)。ECD内で、ヒトTIGITは、マウス及びカニクイザルとそれぞれ59%及び87%のアミノ酸配列同一性共有する。

0005

TIGITは、T細胞(活性化T細胞メモリT細胞、制御性T(Treg)細胞、濾胞性ヘルパー(Tfh)細胞)上に、及びNK細胞上に発現される(Boles KS, et al., 2009 Eur J Immunol, 39:695-703;Joller N, et al., 2014 Immunity 40:569-81;Levin SD, et al., 2011 Eur J Immunol, 41:902-15;Stanietsky N, et al., 2009 PNAS 106:17858-63;Yu X, et al. 2009 Nat. Immunol, 10:48-57)。

0006

これまで、2つのTIGITリガンド、CD155(ポリオウイルス受容体又はPVRとしても知られている)及びCD112(ポリオウイルス受容体関連2、PVRL2又はネクチン−2としても知られている)が特定されている。これらのリガンドは、主にAPC樹状細胞マクロファージ等)上に、及び腫瘍細胞上に発現される(CasadoJG, et al., 2009 Cancer Immunol Immunother58:1517-26;Levin SD, et al., 2011 Eur J Immunol, 41:902-15;Mendelsohn CL et al., 1989 56:855-65;Stanietsky N, et al., 2009 PNAS 106:17858-63;Yu X, et al. 2009 Nat. Immunol, 10:48-57)。免疫「チェックポイント分子として、TIGITは、そのリガンドのCD155及びCD112で結合されると、免疫細胞内で抑制性シグナル伝達を引き起こす。TIGITのCD155への結合親和性(Kd:約1nM)は、CD112への結合親和性よりも非常に高い。TIGIT:CD112の相互作用が抑制性シグナルの仲介に機能的に関係するかは、まだ確定されていない。共刺激性受容体であるCD226(DNAM−1)は、低い親和性(Kd:約100nM)で同じリガンドに結合するが、陽性シグナルを提供する(Bottino C, et al., 2003 J Exp Med 198:557-67)。加えて、「TIGIT様」受容体であるCD96(Tactile)も、同じ経路で同様の抑制性の役割を果たす(Chan CJ, et al., 2014 Nat. Immunol 15:431-8)。

0007

TIGITは、異なるメカニズムを介して免疫応答を阻害することができる。第1に、樹状細胞(DC)上でのTIGITとPVRの相互作用によって、DC内で「リバースシグナル伝達」が提供され、IL−10のアップレギュレーションとIL−12分泌の減少がもたらされ、それによってT細胞の活性化が抑制される(Yu X, et al. Nat Immunol. 2009 10:48-57)。第2に、TIGITがより高い親和性でCD155に結合し、それによってDNAM−1−CD155の相互作用を外して競合する。第3に、T細胞上へのTIGITの直接の連結がTCR媒介性活性化をダウンレギュレーションすることができ、それに続くNK細胞上でのTIGITの増殖と会合がNK細胞の細胞毒性を阻止することができる(Joller N, et al. 2011 186: 1338-42;Stanietsky N, et al., 2009 PNAS 106:17858-63)。第4に、Treg細胞上のTIGIT発現が、腫瘍組織での高度に活性化された抑制性の表現型と関連付けられ、Treg細胞内のTIGITシグナル伝達がTreg細胞の安定性好都合でありうる(Joller N, et al. Immunity 2014 40:569-81;Kurtulus S, et al. J Clin Invest. 2015 125: 4053-4062)。

0008

TIGITは、免疫グロブリンテールチロシン(ITT)様のモチーフに続いて、その細胞質テイル内の免疫受容体チロシン抑制性モチーフ(ITIM)を有する(Yu X, et al. Nat Immunol. 2009 10:48-57;Engels N, et al. Curr Opin Immunol 2011 23: 324-329)。これらのモチーフは、ホスファターゼHIP−1とβ−アレスチン2の補充を仲介することができ(Li M, et al. J Biol Chem. 2014 289:17647-17657;Liu S, et al. Cell death and differentiation 2013 20: 456-464)、それによって、TIGITが本質的に抑制性シグナルを提供して活性化シグナルを弱めるメカニズムを提供する。

0009

腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と末梢血単核細胞(PBMC)におけるTIGIT発現のアップレギュレーションは、肺癌(Tassi, et al., Cancer Res. 2017 77: 851-861)、食道癌(Xie J, et al., Oncotarget 2016 7:63669-63678)、乳癌(Gil Del Alcazar CR, et al. 2017 Cancer Discov.)、急性骨髄性白血病(AML)(Kong Y et al., Clin Cancer Res. 2016 22:3057-66)と黒色腫(Chauvin JM, et al., J Clin Invest. 2015 125:2046-2058)等の多種類の癌で報告されている。AMLでのTIGITの発現増加は、患者生存成績の予後不良に関連する(Kong Y et al., Clin Cancer Res. 2016 22:3057-66)。TIGITシグナル伝達のアップレギュレーションは、癌に対する免疫寛容だけでなく、慢性ウイルス感染に対する免疫寛容にも、重要な役割を果たす。HIV感染の間、T細胞上でのTIGITの発現は、著しく高く、ウイルス量及び疾患の進行と正の相関があった(ChewGM, et al., 2016PLoS Pathog. 12:e1005349)。更に、TIGIT受容体を単独で又は他の遮断と組み合わせて遮断することによって、インビトロ及びインビボの両方で機能的に「使い果たされた」T細胞を救済することができる(Chauvin JM, et al., J Clin Invest. 2015 125:2046-2058;Chew GM, et al., 2016 PLoS Pathog. 12:e1005349;Johnston RJ, et al. Cancer Cell 2014 26:923-937)。癌及びウイルス感染の場合、TIGITシグナル伝達の活性化は免疫細胞の機能不全を促進し、癌の増殖又はウイルス感染の拡大を引き起こす。治療剤によるTIGIT媒介性抑制性シグナル伝達の阻害は、T細胞、NK細胞及び樹状細胞(DC)を含む免疫細胞の機能的な活性を回復させ、従って、癌又は慢性ウイルス感染に対する免疫を増強させることができる。

0010

従って、拮抗分子によるTIGITシグナル伝達の調節によって、免疫細胞が寛容から救われ、腫瘍又は慢性ウイルス感染を根絶するための効率的な免疫応答が誘発されうる。

課題を解決するための手段

0011

本発明は、少なくとも一部は、免疫細胞内のTIGIT媒介性細胞内シグナル伝達を阻害し、免疫細胞を再活性化し、特異的にTIGITに結合することで免疫を高めるモノクローナル抗体(mAb)のセットの発見に基づく。従って、最初の側面において、本出願は、ヒトTIGIT(配列番号1)に結合することができる抗TIGIT抗体及びその抗原結合フラグメントに関する。本発明はまた、最初の側面の抗TIGIT mAbのヒト化型に関する。

0012

特別の態様において、本出願の抗体は、配列番号3、4、5及び13又は1つ以上の保存的置換(例えば、配列番号3、4、5又は13のアミノ酸配列の1つ又は2つの保存的置換)を含むそれらの変異体から選択されるアミノ酸配列を有する、1つ、2つ若しくは3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH);及び/又は、配列番号6、7及び8又は1つ以上の保存的置換(例えば、配列番号6、7又は8アミノ酸配列の1つ又は2つの保存的置換)を含むそれらの変異体から選択されるアミノ酸配列を有する、1つ、2つ又は3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)を含む。

0013

より具体的な態様において、本出願の抗体は、配列番号3又は1つ以上の保存的置換(例えば、1つ又は2つの保存的置換)を含むその変異体のアミノ酸配列を有するVH−CDR1、配列番号4若しくは配列番号13又は1つ以上の保存的置換(例えば、1つ又は2つの保存的置換)を含むそれらの変異体のアミノ酸配列を有するVH−CDR2、及び配列番号5又は1つ以上の保存的置換(例えば、1つ又は2つの保存的置換)を含むその変異体のアミノ酸配列を有するVH−CDR3を含む重鎖可変領域(VH);及び/又は、配列番号6又は1つ以上の保存的置換(例えば、1つ又は2つの保存的置換)を含むその変異体のアミノ酸配列を有するVL−CDR1、配列番号7又は1つ以上の保存的置換(例えば、1つ又は2つの保存的置換)を含むその変異体のアミノ酸配列を有するVL−CDR2、及び配列番号8又は1つ以上の保存的置換(例えば、1つ又は2つの保存的置換)を含むその変異体のアミノ酸配列を有するVL−CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。

0014

本出願の抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトTIGITに結合することができ、配列番号9、14及び19から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号9、14若しくは19と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。1つの態様において、配列の相違フレームワーク領域にある。1つの態様において、本抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号10、15及び20、又はその変異体から選択されるヌクレオチド配列でコードされる重鎖可変領域を含む。

0015

本出願の抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトTIGITに結合することができ、配列番号11、16、21及び24から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号11、16、21若しくは24と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。1つの態様において、配列の相違はフレームワーク領域にある。1つの態様において、本抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号12、17及び22、又はその変異体から選択されるヌクレオチド配列でコードされる重鎖可変領域を含む。

0016

1つの態様において、本抗体又はその抗原結合フラグメントは、約1×10−9M〜約1×10−12MのKd値でヒトTIGITに結合することができる。例えば、本抗体又は抗原結合そのフラグメントは、約1×10−9M未満、約1×10−10M未満、約1×10−11M未満、又は約1×10−12M未満のKd値でヒトTIGITに結合することができる。

0017

1つの態様において、本抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4のサブクラス重鎖定常領域又はその変異体、及びκタイプ若しくはλタイプの軽鎖定常領域又はその変異体を含む。より具体的な態様において、本抗体のFc領域は、ヒトIgG1 Fc又はその変異体、例えば、配列番号18のFc領域である。

0018

1つの態様において、本抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗原特異的T細胞によるIFN−γの生成を促進する。より具体的な態様において、本抗体又は抗原結合フラグメントは、用量依存的に抗原特異的T細胞によるIFN−γの生成を促進する。

0019

より具体的な態様において、本出願の抗体は、FcγR媒介性トロサイトーシス、特にFcγRIIB媒介性トロゴサイトーシスを介して、TIGIT受容体の表面発現を低下させる。

0020

1つの態様において、本出願の抗体はpH依存的な抗原結合を示し、本抗体は、生理学的pH(例えばpH7.4)でのヒトTIGITへの結合と比較すると、腫瘍の微小環境での穏やかな酸性pH(例えばpH6.0)でヒトTIGITに対してより強い結合を示す。より具体的な態様において、本出願の抗体は、表面プラズモン共鳴(Biacore)又は類似の技術で測定した際、(1)2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上よりも大きいpH7.4/pH6.0のKD比、及び/又は(2)pH7.4でのRmax(RU)値よりも、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍高いpH6.0でのRmax(RU)値を有する。

0021

本明細書に開示される抗TIGIT mAbは、癌の治療、ウイルス感染、及び免疫寛容又は「疲弊」に機構的に関与する他のヒトの疾患をの制御する潜在的な治療用途を有する。従って、更なる態様において、本出願の抗TIGIT抗体は、癌の治療に使用するためのものである。別の具体的な態様において、本出願の抗TIGIT抗体は、感染の治療、感染症の治療、及び/又はウイルス感染の制御に使用するためのものである。別の具体的な態様において、本出願の抗TIGIT抗体は、免疫寛容に関連する、若しくは免疫寛容によって引き起こされる他のヒトの疾患の治療、又は免疫細胞の活性化を上昇させることで改善することができる疾患の治療に使用するためのものである。

0022

更なる側面において、本出願は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合フラグメント、及び、薬学上許容される賦形剤を含む、組成物に関する。

図面の簡単な説明

0023

TIGIT−mIgG2a(上段)とTIGIT−huIgG1(下段)の概略図である。TIGIT ECD:TIGIT細胞外ドメイン。N:N末端。C:C末端
抗TIGIT抗体Vh領域の系統樹である。候補の抗TIGIT抗体のVh配列は、DNASTARのMegalignソフトウェアを用いて整列された。配列相同性が系統樹に示される。
抗TIGIT抗体Vκ領域の系統樹である。候補の抗TIGIT抗体のVκ配列は、DNASTARのMegalignソフトウェアを用いて整列された。配列相同性が系統樹に示される。
表面プラズモン共鳴(SPR)による精製されたネズミ抗TIGIT抗体の親和性の決定を示す。
フローサイトメトリーによるTIGIT結合の決定を示す。
図5Aは、抗TIGIT mAbによるTIGITリガンドの相互作用の阻害を示す概略図である。図5Bは、TIGITリガンド発現HEK293細胞(HEK293/PVR又はHEK293/PVR−L2)への可溶性TIGIT(TIGIT−huIgG1融合タンパク質)の結合を、フローサイトメトリーで決定した。TIGIT−リガンドの相互作用の遮断を、連続希釈された抗TIGIT抗体を加えることで定量的に測定した。その結果をデュプリケートの平均±SDで示した。
抗TIGIT mAbによるCMV特異的ヒトT細胞の活性化を示す。ヒトCMVペプチドNLPMVATV,495〜503)で感作されたHLA−A2.1+ PBMC(4×104)を、抗TIGIT抗体の存在下、CMVペプチドでパルスされた標的細胞であるHCT116細胞(104)で一晩刺激した。培養上清中のIFN−γをELISAで決定した。すべての条件はトリプリケートで実行された。その結果を平均±SDで示した。
抗TIGIT mAbは、NK細胞媒介性細胞毒性を促進する。図7Aは、設計されたNK92MI/TIGIT−DNAM−1安定細胞株上のTIGIT及びDNAM−1の発現を示す。図7Bでは、hu1217−2−2/IgG1mf(0.007〜30μg/ml)の存在下でのSK−MES−1/PVR細胞に対するNK92MI/TIGIT−DNAM−1細胞の死滅を、実施例8に記載されたLDH乳酸脱水素酵素)放出アッセイで決定した。その結果をトリプリケートの平均±SDで示した。
抗TIGIT mAb hu1217−2−2/IgG1wtは、FcγR媒介性トロゴサイトーシスを介して、TIGIT受容体の表面発現を低下させる。Jurkat/TIGIT細胞を、完全培地中、ビオチン標識抗TIGIT mAbの存在下、FcγR発現HEK293細胞と共に、一晩、インキュベートした。一部のケースでは、10%のヒトAB血清を加え、トロゴサイトーシスに対する大量のヒトIgGの影響を決定した。TIGIT受容体の表面発現を、SA−APC(Biolegend)で染色することで決定した。MFIをフローサイトメトリーで決定した。すべてのデータポイントはデュプリケートであった。その結果を平均値±SDで示した。
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)に対する抗TIGIT mAbのADCC効果を示す。図9Aにおいて、健康なドナーからのPHA刺激PBMCのTIGIT発現を、フローサイトメトリーで決定した。CD4+(CD4+ Foxp3−)エフェクターT細胞、CD8+エフェクターT細胞、及び制御性T細胞(Tregs細胞、CD4+ Foxp3+)はすべて、有意なレベル(18〜41%)のTIGITを発現した。示されたデータは、3人の健康なドナーからの代表的な結果である。図9Bにおいて、TIGIT mAb(30μg/mL)又はコントロール抗体(陽性コントロールとして5μg/mlのOKT3、及び陰性コントロールとして30μg/mlのhuIgG)の存在下、42時間、エフェクター細胞としてCD16+ヒトNK細胞株NK92MI/CD16V、及び標的細胞としてPHA刺激PBMCを用いて、ADCCアッセイを行った。CD3+T細胞、CD8+T細胞及びTreg細胞の割合は、フローサイトメトリーで決定した。
ヒトPBMCに対する抗TIGIT mAbのCDC効果を示す。標的細胞としてPHA刺激PBMCを用い、補体ソースとして自己血清を用いて、CDCアッセイを行った。15%の最終濃度自家血清中、抗TIGIT mAb(0.01〜100μg/ml)と共に事前活性化されたPBMCを3日間共培養した後、CDC(y軸)の百分率をcell−titer growアッセイで測定し、実施例11の記載に従って計算した。ドナーAとBからのデータを示す。huIgGを陰性コントロールとして用い、抗MHC−A、B、Cを陽性コントロールとして用いた。

0024

定義
アミノ酸の保存的アミノ酸置換は、当技術分野で一般に知られている。下表に例示的に示す。一般に、保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似する側鎖を有する別のアミノ酸残基で置き換えられることを意味する。

0025

0026

本明細書の他の箇所で具体的に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味を有する。

0027

本明細書の記載が明確に指定しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いられる「a」、「an」及び「the」等の単数形の単語は、それらの対応する複数のものも含む。

0028

本明細書の記載が明確に指定しない限り、用語「又は」は、用語「及び/又は」を意味するように用いられ、それと互換的に用いられる。

0029

本明細書の記載が明確に指定しない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形は、記載されたアミノ酸配列、DNA配列、工程、又はその群を包含することを意味し、他のアミノ酸配列、DNA配列、工程を排除することを意味しないと理解される。本明細書で用いられる場合、用語「含んでいる(comprising)」は、用語「含んでいる(containing)」、「含んでいる(including)」、又は「有している(having)」で置き換えることができる。

0030

用語「TIGIT」は、多様な哺乳類アイソフォーム、例えば、ヒトTIGIT、ヒトTIGITの種相同体、及びTIGIT内の少なくとも1つのエピトープを含む類似体を含む。そして、ヒトTIGIT等のTIGITのアミノ酸配列、及びそれをコードするヌクレオチド配列は、当技術分野で公知である。

0031

本明細書で用いられる用語「投与」、「投与する」、「治療する」及び「治療」は、動物、ヒト、実験の対象、細胞、組織臓器、又は生物学的流体に適用される場合、外因性医薬、治療剤、診断剤又は組成物の、その動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器、又は生物学的流体への接触を意味する。細胞の治療は、試薬のその細胞への接触、及び試薬のその細胞が接触している流体への接触を含む。用語「投与」又は「治療」はまた、例えば、試薬、診断化合物結合化合物、又は他の細胞によるインビトロ及びエクソビボの治療を含む。本明細書における用語「対象」は、全ての生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳類(例えば、ラット、マウス、イヌネコウサギ)、最も好ましくはヒトを意味する。

0032

抗体又は抗体分子
本明細書には、高い親和性及び特異性でTIGITに結合する抗体分子が開示される。

0033

いくつかの態様において、抗TIGIT抗体は、ヒトTIGITに結合し、配列番号3、4、5、13又は配列番号6、7、8のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの相補性決定領域(CDR)を含む。特別な態様において、本出願の抗体は、配列番号3、4、5及び13又は1つ以上の保存的置換を含むそれらの変異体から選択されるアミノ酸配列を有する、1つ、2つ若しくは3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH);及び/又は、配列番号6、7及び8又は1つ以上の保存的置換を含むそれらの変異体から選択されるアミノ酸配列を有する、1つ、2つ又は3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)を含む。

0034

いくつかの態様において、抗TIGITは、単離された抗体、ヒト化抗体キメラ抗体、又は組換え抗体である。

0035

いくつかの態様において、抗TIGIT抗体は、少なくとも1つの抗原結合部位、又は少なくとも可変領域を含む。いくつかの態様において、抗TIGIT抗体は、本明細書に記載の抗体に由来する抗原結合フラグメントを含む。

0036

本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味で用いられ、具体的には抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、及びTIGIT等の抗原を認識する抗体フラグメントを含む。抗体は、通常、単一特異的であるが、特定抗原特異的(idiospecific)、異種特異的、又は多重特異的として記載されてもよい。抗体分子は、特定の結合部位によって、特定の抗原決定基又は抗原のエピトープに結合する。

0037

本明細書における用語「モノクローナル抗体」、「mAb」又は「Mab」は、実質的に同種の抗体の集団を意味する。すなわち、その集団に含まれる抗体分子は、少量存在しうる天然に存在する可能性がある突然変異を除いて、アミノ酸配列が同一である。一方、従来の(ポリクローナル抗体調製物は、通常、異なるエピトープに対してしばしば特異的である、それらの可変領域が、特にそれらの相補性決定領域(CDR)が異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含む。修飾語モノクローナル」は、抗体の実質的に同種の集団から得られるという抗体の特徴を示し、いずれか特定の方法による抗体の製造を必要とすると解釈されるべきではない。モノクローナル抗体(mAb)は当業者に周知の方法によって取得することができる。参照、例えば、Kohler G et al., Nature 1975 256:495-497;US4376110;AusubelFMet al., CURRENTPROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY 1992;Harlow E et al., ANTIBODIES: A LABORATORYMANUAL, Cold spring Harbor Laboratory 1988;及びColligan JE et al., CURRENT PROTOCOLS INIMMUNOLOGY 1993。本明細書に開示されたmAbは、IgG、IgMIgDIgEIgA、及びそれらのいずれかのサブクラスを含む、いかなる免疫グロブリンクラスのものであってもよい。mAbを製造するハイブリドーマを、インビトロ又はインビボで培養してもよい。個々のハイブリドーマからの細胞をプリスティプライム化Balb/cマウス等のマウスに腹腔内注射し、高濃度で所望のmAbを含む腹水液を製造するインビボの製造によって、高い力価のmAbを取得することができる。当業者に周知のカラムクロマトグラフィー法を用いて、上記の腹水液又は培養物上清から、アイソタイプIgM又はIgGのMAbを精製することができる。

0038

一般に、基本的な抗体構造単位は四量体を含む。各四量体はポリペプチド鎖の2つの同一の組を含み、各組は1つの「軽鎖」(約25kDa)及び1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部は、抗原認識に本質的に関与する約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部は、エフェクター機能に本質的に関与する定常領域を規定してもよい。通常、ヒト軽鎖はκ軽鎖及びλ軽鎖として分類される。さらに、ヒト重鎖は、一般にα、δ、ε、γ又はμとして分類され、それぞれ、抗体のアイソタイプがIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMとして定義される。軽鎖及び重鎖内で、可変領域及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖は更に約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。

0039

各重鎖/軽鎖(VL/VH)の組の可変領域は抗体結合部位を形成する。従って、一般に、完全な状態の抗体は2つの結合部位を有する。二官能性抗体又は二重特異性抗体を除くと、上記の2つの結合部位は通常、同一である。

0040

通常、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域は、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の間に配置される「相補性決定領域(CDR)」とも呼ばれる3つの超可変領域を含む。CDRは、通常、フレームワーク領域によって整列され、特定のエピトープへの結合を可能にする。一般に、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、N末端からC末端に向かって、順次、FR−1(又はFR1)、CDR−1(又はCDR1)、FR−2(FR2)、CDR−2(CDR2)、FR−3(又はFR3)、CDR−3(CDR3)、及びFR−4(又はFR4)を含む。一般に、各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Sequences of Proteins of Immunological Interest, Kabat, et al., National Institutes of Health, Bethesda, Md., 5th ed., NIH Publ. No. 91-3242 (1991);Kabat (1978) Adv. Prot. Chem. 32: 1-75;Kabat, et al., (1977) J. Biol. Chem. 252:6609-6616;Chothia, et al, (1987) J Mol. Biol. 196:901-917;又はChothia, et al, (1989) Nature 342:878-883の定義に従っている。

0041

用語「超可変領域」は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、「CDR」(すなわち、軽鎖可変ドメイン中のVL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3、並びに重鎖可変ドメイン中のVH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3)からのアミノ酸残基を含む。参照、Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(抗体のCDR領域を配列によって定義)。参照、Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196: 901-917(抗体のCDR領域を構造によって定義)。用語「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書でCDR残基として定義された超可変領域残基以外の可変領域残基を意味する。

0042

特に明示されない限り、「抗体フラグメント」又は「抗原結合フラグメント」は、抗体の抗原結合フラグメント、すなわち、全長抗体によって結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメント、例えば1つ以上のCDR領域を保持するフラグメントを意味する。抗原結合フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント;ダイアボディ線形抗体;単鎖Fv(ScFv)等の単鎖抗体分子;抗体フラグメントから形成されたナノボディ及び多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。

0043

特定の標的タンパク質に特異性を持って結合する抗体はまた、特定の標的タンパク質に特異的に結合するとも記載される。これは、抗体が他のタンパク質に比べて標的タンパク質に優先的に結合を示すことを意味するが、この特異性は絶対的な結合特異性を必要とするものではない。例えば、偽陽性等の望ましくない結果を生じることなく、抗体の結合がサンプル中の標的タンパク質の存在を決定する場合、該抗体はその意図した標的に対して「特異的」であると見なされる。本発明に有用な抗体又はその結合フラグメントは、非標的タンパク質との親和性の少なくとも2倍以上、好ましくは少なくとも10倍以上、より好ましくは少なくとも20倍以上、最も好ましくは少なくとも100倍以上の親和性で標的タンパク質に結合する。本明細書の抗体は、所与のアミノ酸配列、例えば、成熟ヒトTIGIT分子のアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合し、その配列を欠くタンパク質に結合しない場合に、所与のアミノ酸配列、例えば、成熟ヒトTIGIT分子のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合すると記載される。

0044

表現「pH依存的な結合」、「pH依存的な標的結合」、「pH依存的な抗原結合」は、本明細書において交換可能であり、本出願の抗体がその標的/抗原、つまりヒトTIGITにpH依存的に結合することを示す。具体的には、本出願の抗体は、生理学的pH(例えばpH7.4)での結合親和性及び/又は結合シグナルと比較すると、腫瘍の微小環境で通常見られる穏やかな酸性pH(例えばpH6.0)でその抗原に対してより高い結合親和性及び/又は結合シグナルを示す。本出願の抗体の結合親和性及び/又は結合シグナルの強度を決定する方法は、当技術分野でよく知られており、表面プラズモン共鳴(Biacore)又は類似の技術を含むが、これらに限定されない。より具体的には、本出願の抗体は、表面プラズモン共鳴(Biacore)又は類似の技術で測定した際、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上よりも大きいpH7.4/pH6.0のKD比を有する。あるいは、又は更に、本出願の抗体は、表面プラズモン共鳴(Biacore)又は類似の技術で測定した際、pH7.4でのRmax(RU)値よりも、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍高いpH6.0でのRmax(RU)値を有する。抗体の結合親和性は、25℃又は37℃で測定することができる。腫瘍の微小環境が、生理学的な状態又は正常な組織よりも比較的より酸性のpHを示すことが見出された(Zhang et al. Focus on molecular Imaging 2010;Tannock and Rotin et al. Cancer Res 1989)。従って、上記のpH依存的な結合を有する本出願の抗体は、選択性を有し、リンパ球周辺活性化に伴われる毒性がより低い、腫瘍の微小環境内のTIGIT陽性リンパ球を標的化するための抗TIGIT治療剤として有利である。

0045

本明細書における用語「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を意味する。ヒト抗体は、マウス中で、マウス細胞中で、又はマウス細胞に由来するハイブリドーマ中で製造されれば、ネズミ糖鎖を含むことができる。同様に、「マウス抗体」又は「ラット抗体」は、それぞれマウス又はラットの免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を意味する。

0046

用語「ヒト化抗体」は、非ヒト(例えば、ネズミ)抗体からの配列、及びヒト抗体からの配列を含む抗体の形態を意味する。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限度の配列を含む。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変領域の実質的に全てを含む。必要に応じて、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部を含む。ヒト化抗体を親のげっ歯類の抗体と区別するために必要である場合、抗体クローン名称接頭語「hum」、「hu」、「Hu」又は「h」を加える。一般に、げっ歯類の抗体のヒト化形態は、親のげっ歯類の抗体と同一のCDR配列を含むが、親和性を高めるため、ヒト化抗体の安定性を高めるため、又は他の理由のために特定のアミノ酸置換を含んでもよい。

0047

本出願の抗体は、癌の治療に潜在的な治療用途を持っている。本明細書における用語「癌」又は「腫瘍」は、通常、無秩序細胞増殖によって特徴付けられる哺乳類における生理学的状態を意味し又は表現する。癌の例としては、肺癌(小細胞肺癌又は非小細胞肺癌を含む)、副腎癌、肝臓癌胃癌子宮頸癌、黒色腫、腎臓癌、乳癌、大腸癌白血病膀胱癌骨肉腫脳腫瘍子宮内膜癌頭頸部癌リンパ腫卵巣癌皮膚癌甲状腺腫瘍、又は癌の転移性病変が挙げられるが、これらに限定されない。

0048

更に、本出願の抗体は、ウイルス感染、及び免疫寛容又は「疲弊」に機構的に関与する他のヒトの疾患を制御するための潜在的な治療用途を有する。本出願の記載における用語「疲弊」は、長期にわたる慢性的なウイルス感染の間に、感染ウイルスに対する免疫細胞の能力の枯渇が起こるプロセスを意味する。

0049

医薬組成物及びキット
いくつかの側面において、本出願は、組成物、例えば、少なくとも1つの薬学上許容される賦形剤と共に製剤化される、本明細書に記載の抗TIGIT抗体を含む薬学上許容される組成物を提供する。本明細書で用いられる用語「薬学上に許容される賦形剤」は、生理学的に適合性のある全ての溶媒分散媒等張及び吸収遅延剤等を含む。賦形剤は、静脈内投与筋肉内投与皮下投与非経口投与直腸投与脊髄投与、又は経皮投与(注射又は注入等による)に適している。

0050

本明細書の組成物は、多様な形態であることができる。これらの形態は、例えば、液体半固体、及び固体剤の投与形態、例えば、液体溶液(例えば、注射可能な溶液及び点滴溶液)、分散液又は懸濁液、リポソーム、及び坐剤等を含む。適切な形態は、意図した投与の様式及び治療用途によって異なる。典型的な適切な組成物は、注射可能な溶液又は点滴溶液の形態である。1つの適切な投与様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。いくつかの態様において、抗体は、静脈内点滴又は注射によって投与される。特定の態様において、抗体は、筋肉内注射又は皮下注射によって投与される。

0051

本明細書で用いられる用語「治療上有効な量」は、病気若しくは疾患、又は病気若しくは疾患の臨床症状の少なくとも1つを治療するために対象に投与する際、病気、疾患又は症状に対する治療が有効であるのに十分な抗体の量を意味する。「治療上有効な量」は、抗体、病気、疾患、及び/又は、病気若しくは疾患の症状、病気若しくは疾患及び/又は病気若しくは疾患の症状の重症度、治療を受ける対象の年齢、及び/又は治療を受ける対象の体重によって、変更することができる。所与の事例における適切な量は、当業者に明白であるか、又はルーチンの実験で決定することができる。併用療法の場合、「治療上有効な量」は、病気、疾患又は状態の有効な治療のために組合せに含まれる活性成分の総量を意味する。

0052

本明細書で用いられる「対象」は、げっ歯類又は霊長類等の哺乳類、好ましくはヒト等のより高等な霊長類(例えば、本明細書に記載の疾患を有する、又は疾患を有する可能性のある患者)である。

0053

実施例1 抗TIGITモノクローナル抗体の作製
小さな変更を加えた、従来のハイブリドーマ融合技術(de StGroth and Sheidegger, 1980 J Immunol Methods35:1;Mechetner, 2007 Methods Mol Biol 378:1)に基づいて、抗TIGITモノクローナル抗体(mAb)を作製した。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び蛍光活性セルソーティングFACS)アッセイで高い結合活性を有するmAbを選択して、更に特性を調べた。

0054

免疫化及び結合アッセイのためのTIGIT組換えタンパク質
全長ヒトTIGIT(配列番号1)をコードするcDNAは、GenBank配列(アクセッション番号:NM_173799)に基づいて、Sino Biological(京,中国)によって合成され、及びSino Biologicalから購入した。配列番号1のアミノ酸(AA)1〜141に対応する全長ヒトTIGITの細胞外ドメイン(ECD)のコード領域をPCR増幅し、C末端をマウスIgG2aのFcドメイン又はヒトIgG1重鎖のFcドメインに融合させて、pcDNA3.1に基づく発現ベクター(Invitrogen,カールスバッド,CA,米国)にクローン化した。その結果、それぞれ、2つの組換え融合タンパク質発現プラスミドであるTIGIT−mIgG2a及びTIGIT−huIgG1を得た。TIGIT融合タンパク質の概略図を図1に示す。組換え融合タンパク質の製造のために、TIGIT−mIgG2aプラスミド及びTIGIT−huIgG1プラスミドを、293G細胞(社内で開発)に一過性に導入し、回転式撹拌機を備えたCO2インキュベーター中で7日間培養した。組換えタンパク質を含む上清を遠心分離収集し、透明にした。プロテインAカラム(Cat. No.:17127901,GE Life Sciences)を用いて、TIGIT−mIgG2a及びTIGIT−huIgG1を精製した。TIGIT−mIgG2a及びTIGIT−huIgG1の両方のタンパク質をリン酸緩衝生理食塩水DPBS)に対して透析し、アリコートで−80℃の冷凍庫に保存した。

0055

安定な発現細胞株
全長ヒトTIGIT(huTIGIT)又は全長サルTIGIT(mkTIGIT,アクセッション番号:XM_005548101.2)を発現する安定な細胞株を確立するために、TIGIT遺伝子(Genescriptで合成,南京,中国)をレトロウイルスベクターpFB−Neo(Cat. No.:217561,Agilent,米国)にクローン化した。以前のプロトコル(Zhang T, et al. 2005, Blood)に従って、dual−tropicレトロウイルスベクターを作製した。huTIGIT及びmkTIGITを含むベクターを、Jurkat細胞及びNK92MI細胞(ATCC,マナサス,VA,米国)に形質導入して、それぞれJurkat/huTIGIT細胞株及びNK92MI/mkTIGIT細胞株を作製した。G418及びFACS結合アッセイを用いて培地中の培養によって、高発現細胞株を選択した。

0056

免疫化、ハイブリドーマ融合及びクローニング
10μgのTIGIT−mIgG2a及び水溶性アジュバント(Cat. No.:KX0210041,KangBiQuan,北京,中国)を含む100μlの抗原混合物で、8〜12週齢のBalb/cマウス(HFK BIOSCIENCE, Co.Ltd.,北京,中国)を腹腔内(i.p.)で免疫化した。3週間後にこの手順を繰り返した。2回目の免疫から2週間後、マウスの血清を、ELISA及びFACSによってTIGIT結合について評価した。血清スクリーニングから10日後、最も高い抗TIGIT抗体抗体血清力価を有するマウスを、50μgのTIGIT−mIgG2aの腹腔内注射で追加免疫した。追加免疫の3日後、脾臓細胞を単離し、標準的技術(1977 Somat Cell Genet, 3:231)を用いてネズミ骨髄腫細胞株SP2/0細胞(ATCC)に融合させた。

0057

ELISA及びFACSによる抗体のTIGIT結合活性の評価
最初に、いくつかの変更を加えた「Methodsin Molecular Biology (2007) 378:33-52」に記載されたELISAによって、ハイブリドーマクローンの上清をスクリーニングした。簡単に言うと、TIGIT−huIgG1タンパク質を96ウェルプレートコーティングした。HRP結合抗マウスIgG抗体(Cat. No.:7076S,Cell Signaling Technology,米国)及び基質(Cat. No.:00-4201-56,eBioscience,米国)を用いて、450nmの波長で色吸収シグナルを生成させ、これをプレートリーダー(SpectraMax Paradigm,Molecular Device,米国)を用いて測定した。ELISA陽性クローンを、上記のNK92MI/huTIGIT細胞又はNK92mi/mkTIGIT細胞のいずれかを用いて、FACSによって更に検証した。TIGIT発現細胞(105細胞/ウェル)を、ELISA陽性ハイブリドーマ上清と共にインキュベートし、続いてAlexa Fluro−647標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Cat. No.:A0473,Beyotime Bitechonlogy,中国)に結合させた。フローサイトメーター(Guava easyCyte 8HT,Merck-Millipore,米国)を用いて、細胞の蛍光を定量した。

0058

ELISAスクリーニング及びFACSスクリーニングの両方で陽性シグナルを示したハイブリドーマからの調節された培地を、機能的アッセイに付し、ヒト免疫細胞に基づくアッセイ(下記参照)で良好な機能的活性を有する抗体を特定した。望ましい機能的活性を有する抗体を、更にサブクローン化し、特徴付けらた。

0059

ハイブリドーマのサブクローニング及び無血清又は低血清培地への適応
上記のELISA、FACS及び機能的アッセイによる一次スクリーニングの後、限界希釈によって陽性ハイブリドーマクローンをサブクローニングした。各プレートからのELISA及びFACSスクリーニングに基づいて、3つの陽性サブクローンが選択され、機能的アッセイによって特徴付けられた。機能的アッセイで検証された上位の抗体サブクローンは、3%FBSを含むCDM4MAb培地(Cat. No.:SH30801.02,Hyclone,米国)中で増殖のために適応された。

0060

モノクローナル抗体の発現と精製
抗体発現プラスミド(Cat. No.:R79007,1nvitorogen)で一過性に導入したハイブリドーマ細胞又は293G細胞を、CDM4MAb培地(Cat. No.:SH30801.02,Hyclone)中、又はFreestyle(商標)293発現培地(Cat. No.:12338018,Invitorogen)中のいずれかで培養し、37℃で5〜7日間、CO2インキュベーター中でインキュベートした。調節された培地を、遠心分離で収集し、精製前に0.22μmのメンブレンを通過させてろ過した。製造会社の説明書に従って、上澄みを含むネズミ抗体又は組換え抗体を適用し、プロテインAカラム(Cat. No.:17127901,GE Life Sciences)に結合させた。この手順で、通常、純度が90%を超える抗体が得られた。プロテインA親和性精製抗体を、PBSに対して透析したか、又はHiLoad 16/60 Superdex200カラム(Cat. No.:17531801,GE Life Sciences)を用いて更に精製し、凝集体を除去した。280nmでの吸光度を測定することで、タンパク質濃度を決定した。最終の抗体調製物を、アリコートで−80℃の冷凍庫に保存した。

0061

実施例2 TIGIT抗体のクローニング及び配列分析
Ultrapure RNAキット(Cat. No.:74104,QIAGEN,ドイツ)を用いて、製造会社のプロトコルに基づいて、ネズミハイブリドーマクローンを採取し、すべての細胞性RNAを調製した。InvitrogenからのcDNA合成キット(Cat. No.:18080-051)を用いて、1番目ストランドcDNAを合成した。PCRキット(Cat. No.:CW0686,CWBio,北京、中国)を用いて、ネズミmAbの重鎖可変領域(Vh)及びκ鎖可変領域(Vκ)をコードするヌクレオチド配列のPCR増幅を行った。VhとVκの抗体cDNAのクローニングに使用されたオリゴプライマーは、先に報告された配列(Brocks et al. 2001 Mol Med 7:461)に基づいて、Invitrogen(北京、中国)によって合成された。次に、PCR生成物をpEASY−Bluntクローニングベクター(Cat. No.:C B101-02,TransGen,中国)にサブクローン化し、Genewiz(北京,中国)でシークエンスした。Vh領域とVκ領域のアミノ酸配列は、DNA配列の結果から推定されたものである。

0062

ネズミmAbを、配列相同性の比較によって分析し、配列類似性(図2)に基づいてグループ化した。Kabat(Wu and Kabat 1970 J. Exp. Med. 132:211-250)とIMGT(Lefranc 1999 Nucleic AcidsResearch 27:209-212)のシステムに基づいて、配列注釈インターネットに基づく配列分析(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/index.html)によって、相補性決定領域(CDR)を定めた。代表的な上位のクローンのmu1217(Vh及びVκ)のアミノ酸配列を表1(配列番号9及び11)に記す。mu1217のCDR配列を表2(配列番号3〜8)に記す。

0063

0064

0065

実施例3 SPRによる精製されたネズミ抗TIGIT抗体の親和性決定
ELISA及びFACSで高い結合活性と細胞に基づくアッセイ(実施例1及び2で記載)で強力な機能的活性を有するTIGIT抗体を、BIAcore(商標)T−200(GE Life Sciences)を用いるSPRアッセイによって、それらの結合動態学で特徴付けされた。簡単に言うと、抗ヒトIgG抗体を、活性化されたCM5バイオセンサーチップ(Cat. No.:BR100530,GE Life Sciences)上に固定化した。ヒトFcタグ付きTIGITをチップ表面上に流し、抗ヒトIgG抗体に捕捉させた。次に、精製されたネズミ抗体の連続希釈(0.12nM〜10nM)をチップ表面上に流し、表面プラズモン共鳴シグナルの変化を分析して、1:1ラングミュア結合モデル(one to one Langmuir binding model:BIA Evaluation Software,GE Life Sciences)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を計算した。平衡解離定数(KD)を、比率koff/konとして計算した。mu1217、mu1257、mu1226及びmu242を含む上位のmAbの結合親和性プロファイルを、図3及び表3に示す。

0066

0067

実施例4ネズミ抗ヒトTIGIT mAb mu1217のヒト化
mAbのヒト化と設計
mu1217のヒト化のために、IMGT(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/index.html)及びNCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast)ウェブサイトのヒト免疫グロブリン遺伝子データベースブラスト(blast)することによって、mu1217可変領域のcDNA配列と高度の相同性を有する配列を求めて、ヒト生殖細胞系IgG遺伝子を検索した。頻度の高いヒト抗体レパートリー(Glanville 2009 PNAS 106:20216-20221)に存在し、mu1217と高い相同性を有するヒトIGVH遺伝子及びヒトIGVκ遺伝子を、ヒト化のためのテンプレートとして選択した。

0068

CDR移植(Methodsin Molecular Biology, Vol 248: Antibody Engineering, Methods and Protocols, Humana Press)によって、ヒト化を行った。また、ヒト化抗体(hu1217)を、社内で開発した発現ベクターを用いて、ヒトIgG1mfのフォーマットとして設計した。ヒト化の最初の段階において、フレームワーク領域内のネズミアミノ酸残基からヒトアミノ酸残基への変異を、シミュレートされた3D構造によって導いた。最初の型のヒト化抗体1217(配列番号3、13、5(重鎖CDR)と配列番号6、7、8(軽鎖CDR)のアミノ酸配列を有する6つのCDRと、配列番号14のアミノ酸配列を有し、配列番号15のヌクレオチド配列でコードされた重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸配列を有し、配列番号17のヌクレオチド配列でコードされた軽鎖可変領域とを有する、hu1217−1−1)の中に、CDRの標準的な構造を維持するために構造的に重要なネズミのフレームワーク残基を維持した。具体的には、mu1217VκのCDR(配列番号6〜8)を、1つのネズミフレームワーク残基(V58)を保持して、ヒト生殖細胞系可変遺伝子IGVκ3−15のフレームワークに移植し、それによって、hu1217−1−1のヒト化Vκ配列(アミノ酸配列の配列番号16、ヌクレオチド配列の配列番号17)を得た。mu1217 VhのH−CDR2(配列番号4)のN末端、H−CDR1(配列番号3)及びH−CDR3(配列番号5)を、2つのネズミフレームワークの残基(配列番号10のT24とI37)を保持して、ヒト生殖細胞系可変遺伝子IGVH3−7のフレームワークに移植した。Kabat H−CDR2のN末端の半分のみがシミュレートされた3D構造による抗原結合に重要であると予測されていたため、hu1217のヒト化変異体において、Kabat H−CDR2のN末端の半分のみが移植された。hu1217−1−1の得られたヒト化Vh配列のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号14及び配列番号15に示される。

0069

IgG1mf(配列番号18)と呼ぶヒトIgG1変異体の定常領域及びκ鎖をそれぞれ含み、容易に適応するサブクローニング部位を有する、社内で開発された発現ベクターを用いて、hu1217−1−1をヒト全長抗体のフォーマットとして構築した。上記の2つの構造物を293G細胞に同時導入し、プロテインAカラム(Cat. No.:17543802,GE Life Sciences)を用いて精製することで、hu1217−1−1抗体の発現及び調製を達成した。精製された抗体をPBS中で0.5〜5mg/mLに濃縮し、アリコートで−80℃の冷凍庫に保存した。

0070

hu1217−1−1のテンプレートに基づいて、Vκのフレームワーク領域中に保持されたネズミの残基を、対応するヒト生殖細胞系の残基に変換するいくつかの単一変異を行った。その単一変異はVκ中のV58I及びVh中のT24AとI37Vを含む。得られたhu1217−2A−1(T24A)、hu1217−2B−1(I37V)及びhu1217−1−2a(V58I)はすべて、hu1217−1−1と同様の結合活性及び機能的活性を有した。すべてのヒト化変異体は、特定の位置の変異を含むプライマーと、部位特異的突然変異誘発キット(Cat. No.:FM111-02,TransGen,北京,中国)を用いて作製された。所望の変異は、配列分析で検証された。これらのhu1217由来変異体抗体を、前記の結合アッセイ及び機能アッセイ試験した。

0071

ヒトの治療用途のための分子的及び生物物理学的特性を改善するために、hu1217抗体は、CDRとフレームワーク領域に変異を導入することで更に設計された。機能的活性を維持しながら、アミノ酸組成熱安定性(Tm)、表面疎水性、及び等電子点(pI)が、考慮事項に含まれた。

0072

まとめると、上記の変異プロセスから、ヒト化モノクローナル抗体の適切に設計された型、hu1217−2−2(配列番号3、5〜8、13及び19〜21)が得られ、詳細に特徴付けられた。その結果、hu1217−2−2及びhu1217−1−1の両方がTIGIT媒介性下流シグナル伝達の抑制等の結合親和性及び機能的活性の点で非常に類似することが示された。

0073

親和性の決定のために、抗体が抗ヒトFc表面で捕捉され、表面プラズモン共鳴(SPR)技術に基づく親和性アッセイに使用された。SPRで決定された抗TIGIT抗体の結合プロファイルの結果を表4にまとめた。hu1217−2−2及びhu1217−1−1は、それぞれ0.415nM及び0.266nMの平均解離定数を有し、非常に類似した結合プロファイルを示した。また、この結合プロファイルはch1217に近い。

0074

0075

0076

上記のすべてのヒト化抗体はまた、健康なドナーから単離された主要なヒト免疫細胞の機能的活性について確認された(実施例7に記載)。

0077

実施例5天然TIGITへの1217の異なる型の結合親和性
生細胞上の天然TIGITに対する抗TIGIT抗体の結合活性を評価するために、ヒトTIGITを過剰発現するようにNK92mi細胞を設計した。生きているNK92mi/TIGIT細胞を96ウェルプレートに播種し、抗TIGIT抗体の連続希釈液とインキュベートした。ヤギ抗ヒトIgGを二次抗体として用いて、細胞表面に結合した抗体を検出した。用量反応データをグラフパッドプリズム(GraphPad Prism)を有する4係数ロジスティックモデル(four-parameter logistic model)に当てはめることで、ヒト天然TIGITへの用量依存的な結合のEC50値を決定した。図4及び表6に示すように、ヒト化1217抗体であるhu1217−1−1及びhu1217−2−2の両方が、生細胞上の天然TIGITに対する良好な結合親和性を示した。

0078

0079

実施例6 抗TIGIT抗体はTIGITとそのリガンドのPVR及びPVR−L2との相互作用を遮断する
TIGITは高い親和性(Kd:約1nM)でPVRに結合する。それによって、CD266−PVRの相互作用と競合することができる(Yu et al., 2009)。

0080

抗TIGIT抗体がTIGIT−PVRの相互作用及びTIGIT−PVR−L2の相互作用を遮断できるか否かを決定するために、高レベルのPVR又はPVR−L2を発現するように、HEK293細胞を設計した。得られた細胞株を、それぞれHEK293/PVR及びHEK293/PVR−L2と名付けた。フローサイトメトリーで、PVR又はPVR−L2への可溶性TIGIT(TIGIT−mIgG2a融合タンパク質)の結合を決定した(図5A)。連続希釈された抗TIGIT抗体を加えることで、TIGIT−リガンド相互作用の遮断を定量的に測定した。図5Bに示すように、hu1217−2−2/IgG1(野生型IgG1Fc領域、及びhu1217−2−2/IgG1mfと同じVH配列及びVL配列を含むヒト化型)及びhu1217−2−2/IgG1mfは、それぞれ0.64μg/mL及び0.55μg/mLのIC50で用量依存的に、PVRへのTIGITの結合を遮断することができた。同様に、TIGIT−PVR−L2の相互作用を遮断する際のhu1217−2−2/IgG1及びhu1217−2−2/IgG1mfのIC50は、それぞれ0.25μg/mL及び0.18μg/mLであった。

0081

実施例7 抗TIGIT抗体によるCMV特異的ヒトT細胞の活性化
ヒトCMV PP65ペプチド(NLVPMVATV,495〜503,HLA−A2.1−restricted)(Boeckh M, Boeckh M and GeballeAP, 2011 J Clin Invest. 121:1673-80)を認識する天然由来のT細胞を用いて、TIGIT抗体の機能的活性を更に評価した。簡単に言うと、10%FBSを有する完全なRPMI中、PP65ペプチド(>98%の純度,GL Biochem,上海が合成)で、1週間、HLA−A2.1+の健康なドナーからのPBMCがシミュレートされた。pp65でプライムされたPBMCを、エフェクター細胞として用いた。アッセイの前に、標的細胞のHCT116細胞(HLA−A2.1+、104)をpp65ペプチド(5μg/mL)で30分間パルスし、抗TIGIT抗体の存在下、若しくは不存在下、又はブランクコントロール(培地のみ)で、96ウェルプレート内で同数のpp65感作PBMCと共に、一晩、共培養した。図6に示すように、hu1217−2−2/IgG1は、両方のドナーで細胞培養上清にIFN−γを用量依存的に分泌するようにpp65特異的T細胞を促進した。

0082

実施例8 抗TIGIT抗体はNK細胞媒介性細胞毒性を増強した
TIGITは比較的高いレベルでナチュラルキラー(NK)細胞上に恒常的に発現することが知られており、TIGITとそのリガンドとの間の相互作用はNK細胞媒介性細胞毒性を阻害する(Wang F, et al. 2015 Eur. J. Immunology 45:2886-97;Stanietsky N et al., 2009 Proc Natl Acad Sci USA 106:17858-63)。

0083

ヒト化抗TIGIT抗体がNK細胞媒介性細胞毒性を促進できるか否かを確認するために、前記のプロトコル(Zhang et al, 2006 Cancer Res. 66: 5927-5933)に従ってレトロウィルス形質導入によって、エフェクター細胞として、TIGIT及びDNAM−1受容体の両方を共発現するように、NK細胞株NK92MI(NK92MI/TIGIT−DNAM−1)を設計した。同様に、標的としてPVR発現肺癌細胞株SK−MES−1/PVRを確立した。

0084

CytoTox96非放射性細胞毒性アッセイキット(Promega,マディソン,WI)を用いるLDH放出アッセイによって、SK−MES−1/PVR細胞に対するNK−MI/TIGIT−DNAM−1細胞の細胞毒性を決定した。簡単に説明すると、96ウェルV底プレート中、抗TIGIT抗体(0.007〜30μg/mL)の存在下、5時間、NK92MI/TIGIT−DNAM−1細胞(8×105)を、SK−MES−1/PVR細胞(2×104)と共培養した。LDH放出アッセイの特異的溶解は、下式を用いて決定された:
特異的溶解の百分率=[(実験的エフェクター自発的−標的自発的)/(標的最大−標的自発的)]×100
その結果、抗TIGIT抗体hu1217−2−2/IgG1mfがNK細胞の死滅を用量依存的に増加させること(EC50:0.185μg/mL)(図7)が示された。

0085

実施例9 抗TIGIT抗体はFcγR媒介性トロゴサイトーシスによってTIGIT受容体の表面発現を低下させることができる
トロゴサイトーシスは、細胞表面分子ドナー細胞からアクセプター細胞に転移する現象である(Joly E, et al. 2003 Nat. Immunol;Machlenkin A, et al. 2008 Cancer Res.;BeumPVet al. 2008 J. Immunol;Rossi EA, et al. 2013 Blood)。Fcγ受容体(FcγR)を介した抗体誘発性トロゴサイトーシスは、細胞表面上の受容体のダウンモジュレーションを引き起こす(Carlsten M, et al. 2016 Clin Cancer Res;Beum PV, et al. 2011 J. Immunology)。従って、トロゴサイトーシスによる標的受容体のダウンレギュレーションは、シグナル伝達の低下を引き起こすことができる。これらの観察結果を考慮すると、hu1217−2−2/IgG1は、FcγR+細胞の存在下、TIGIT受容体のトロゴサイトーシスを誘導し、それによって、より低い表面発現をもたらすことが可能である。この可能性に対処するために、様々なFcγR(FcγRIIAH131、FcγRIIB、FcγRIIIAV158を含む)発現HEK細胞と、ビオチン標識hu1217−2−2/IgG1wt(hu1217−2−2/IgG1mfと同じVL及びVHと野生型IgG1Fc領域とを含むヒト化抗体)又はhu1217−2−2/IgG1mfと共に、一晩、Jurkat/TIGIT細胞を培養した。SA−APC(Biolegend)によって、TIGIT受容体の表面発現が決定された。図8に示すように、hu1217−2−2/IgG1mfではなく、hu1217−2−2/IgG1では、陰性コントロールのヒトIgG処理細胞と比較してTIGIT表面発現が大幅に低下する。このことは、Jurkat/TIGIT細胞上の表面TIGITの低下がFcγR結合に依存的であることを示す。加えて、10%のヒト血清(高レベルの内因性IgGを含む)の存在は、TIGIT受容体のFcγRIIAH131媒介性トロゴサイトーシス又はFcγRIIIAV158媒介性トロゴサイトーシスを部分的に低下させることができるが、FcγRIIB媒介性ロゴサイトーシスを低下させることができない。このことは、FcγRIIBが、インビボで抗TIGIT mAb(例えば、hu1217−2−2/IgG1wt)によるTIGIT表面発現を低下させる重要な役割を果たすことができることを示唆する。これらの観察結果はまた、以前の研究結果(GanesanLP, et al. 2012 J Immunol 189:4981-8; Taylor RP, et al. 2015 Blood 125:762-6)と一致する。

0086

実施例10 抗TIGIT抗体のADCC及びCDCエフェクター機能
ヒトの主要なPBMC中でADCCとCDCを誘導する抗TIGIT抗体の能力を、以下に記載するインビトロアッセイを用いて決定した。

0087

標的細胞としてヒトPBMCを用いるADCC
TIGIT抗体がTIGIT+T細胞のADCCを誘導することができるか否かを決定するために、フローサイトメトリーに基づくADCCアッセイを準備した。CD16V158(V158対立遺伝子)及びFcγRcDNAを含む発現プラスミドを共形質導入することで、NK92MI細胞(ATCC)からアッセイエフェクター細胞株であるNK92MI/CD16V細胞を作製した。健康なドナーからのヒトPBMCをPHA(1μg/ml)で刺激し、TIGIT発現をアップレギュレートさせた。図9に示すように、CD4+エフェクター(CD3+ CD4+ Foxp3−)T細胞、CD8+T細胞、及び制御性T細胞(CD4+ Foxp3+)のすべてを含むT細胞は、多量のTIGITを発現した。これらの活性化PBMC(3つの健康なドナーからのもの)を標的細胞として用いた。TIGIT抗体(hu1217−2−2/IgG1mf又はhu1217−2−2/IgG1wt、30μg/mL)又はコントロール抗体(陽性コントロールの抗CD3抗体OKT3(5μg/ml,Biolegend)又は陰性コントロールのヒトIgG(30μg/mL)の存在下、40時間、蛍光色素FSE標識NK92MI/CD16V細胞(5×104)を同じ数の標的細胞と共培養した。ヒトIgG及びhu1217−2−2/IgG1mfと比較すると、hu1217−2−2/IgG1wtはADCCを介してTreg細胞の適度な低下を導くことができる。しかし、全T細胞及びCD8+T細胞では、有意なADCC効果は観察されなかった(図9)。

0088

標的細胞としてヒトPBMCを用いるCDC
事前に活性化されたヒトPBMC及び健康なドナーからの新鮮な自己血清を用いることで、hu1217−2−2/IgG1mf及びhu1217−2−2/IgG1wtがCDCを誘発するか否かを決定した。CDCによる細胞溶解を、Celltiter gloアッセイキット(Promega,北京,中国)で決定した。簡単に言うと、PBMCをPHA(10μg/mL)で3日間事前活性化し、RPMI1640及び自己血清(15%)及び抗TIGIT抗体又はコントロール抗体(0.01〜100μg/mL)中、37℃で、一晩、インキュベートした。反応終了時の細胞溶解後の生存細胞から放出されるATPの減少によって、CDCによる細胞死を評価した。陽性コントロールとして抗MHC−I A、B、Cを用いた。96ウェルの蛍光光度計(PHERA StarFS,BMG LABTECH)を用いて蛍光読み取りを行い、相対蛍光ユニット(RFU)の読み取り値から下式によってCDC活性を計算した:
%CDC活性=[(RFU試験−RFUバックグラウンド)/(全細胞溶解時のRFU−RFUバックグラウンド)]×100
その実験の結果、hu1217−2−2/IgG1mf及びhu1217−2−2/IgG1wtの両方が、2つの異なるドナーから単離されたPBMCに検知可能なCDCを持たないことが示された。対照的に、陽性コントロール抗体である抗MHC−Iは有意なCDC活性を誘導した(図10)。

0089

実施例11 Hu1217−2−2/IgG1のpH依存的結合親和性
pHがhu1217−2−2/IgG1の結合特性に影響するか否かを調査するため、比較のためにpH7.4及びpH6.0の流動する緩衝液中で標的結合SPR試験を行った。抗体hu1217−2−2/IgG1をCM5チップ(GE)に固定化した。TIGIT−hisの連続希釈液を、pH7.4又はpH6.0の流動する緩衝液HBS中、固定化されたhu1217−2−2/IgG1上に流した。

0090

以下の表7に記載された結果が示すように、hu1217−2−2/IgG1は、pH7.4(生理学的pH)で取得されたデータと比較すると、pH6.0(腫瘍の微小環境のpHと同等の酸性pH)でヒトTIGITに対してより高い結合親和性(KD)及びより強い結合シグナル(Rmax)を示した。これらの結果から、hu1217−2−2/IgG1が、末梢リンパ球の活性化に伴われる潜在的な毒性がより低いまま、より選択的に腫瘍微小環境内のTIGIT陽性リンパ球を標的とすることができるため、腫瘍環境内のTIGIT陽性リンパ球を標的とする治療剤としての抗体の潜在的な利点を示す。

実施例

0091

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