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課題

金クラスター及び金クラスター含有物質医薬品使用、並びにそれらの製造方法及び使用を提供する。

解決手段

AuCとAuCの外側を覆うリガンドYとを含む、AuC含有物質であって、AuCの金コア直径は、3nm未満、好ましくは0.5nm〜2.6nmであり、リガンドYは、例えば、L(D)−システイン及びその誘導体、システイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体、並びにその他のチオール含有化合物の1つ以上を含む、AuC含有物質である。開示されたAuC及びAuC含有物質は、Aβ及びα−synの凝集阻害することができ、細胞モデル及び動物モデルのレベルで優れた効果を有し、かつアルツハイマー病及び/又はパーキンソン病を予防及び治療するための薬物を製造するために使用することができる。

概要

背景

神経変性疾患は、ヒトの健康への大きな脅威の1つである。それらの共通した病理学的特徴は、タンパク質の異常な絡み合い及び神経細胞におけるそのアミロイドーシス、並びに関連する神経細胞アポトーシス及び神経学的障害である。アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)は、その中でも最も典型的な2つである。ADの臨床徴候は、記憶機能障害及び認知機能障害並びに人格及び行動の変化を特徴とする一方で、PDの臨床徴候は、主として振戦運動緩慢筋硬直起立性歩行障害、及びその他の運動障害を含む。AD及びPDは両方とも主として高齢者の間で起こり、年齢と共に罹患率は高まる。ADを例にとると、65を超えた人達の間での罹患率は5%であるが、80歳を超えた人達の間では30%を上回る。したがって、これらの2つの疾患を患う患者の数は、寿命延長して人口の高齢化が高まるにつれ絶え間なく増加している。特に群を抜いてADには4千万人を超える患者が罹患しており、2050年には1億5千万人に達すると考えられる。米国だけでも、年間に癌の2倍にあたる2000億米ドル超がAD患者治療に費やされており、それは世界で最も費用のかかる疾患となっている。世界のPD患者の数は、控えめに見積もっても1000万人を超えている。しかしながら、これらの2つの疾患の病因は未だに知られていない。臨床的治療に関しては、軽度及び中等度のAD又はPDの治療のために幾つかの薬物が米国FDAにより承認されているが、これらの薬物は、患者の認知機能又は運動機能を一時的にしか改善し得ない神経伝達物質調節薬である。それらの薬物を中断するとすぐに症状が元に戻ることとなる。今までのところ、これらの2つの疾患の病理学的過程終結又は回復させることができる薬物は存在しない。したがって、AD又はPDの治療のための新たな薬物を開発することは極めて意義のあることである。

研究により、AD患者の脳内のアミロイドタンパク質は、主としてβ−アミロイド(Aβ)タンパク質及びタウタンパク質、並びに少量のα−シヌクレイン(α−syn)であり、初期発症部位は、脳内の記憶及び学習並びに空間定位の機能を発揮する海馬であることが分かっている。PD患者の脳損傷は、体性運動機能に役割を担う黒質から始まる。初期発症部位の違いがこれらの2つの疾患を伴う患者の異なる症状を決定づける。しかしながら研究により、AD患者の半分より多くが後期段階に運動障害を伴い、殆どのPD患者も後期段階にAD患者と同じ症状を共有することが指摘されている。これらの現象は、上記2つの疾患が発症原因及び疾患進行固有相関があることを示唆している。

脳内の老人斑の形成は、ADの基本的な病理学的特徴の1つである。老人斑における主要構成物質として、Aβは36個〜43個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、該ポリペプチドはアミロイド前駆体タンパク質APP)の加水分解産物であり、その際、Aβ(1−40)の含量はAβの全体量の90%超を占めている。最近の研究により、Aβは正常な生理学的機能を有し、コリンエステラーゼ触媒活性の調節によりシナプス間のアセチルコリン作動性シグナル伝達を調節することができるが、脳内のAβの過剰な凝集及び線維化は、シナプス機能不全と、引き続いての二次的な炎症応答とを引き起こす場合があり、こうしてニューロン機能の喪失及びニューロン死がもたらされることが明らかになった。したがって、Aβの凝集及び線維化を阻害し得るとともに、その神経毒性遮断し得る物質の開発は、AD医薬の研究及び開発のための重要なアプローチの1つである。

PDの病理学的特徴は、レビー小体の生成を伴って、主として黒質線条体系におけるドーパミン(DA)作動性ニューロンの進行性消失として現れる。レビー小体は、主として変性されたα−synの凝集により形成される中空放射状のアミロイド線維を含む。α−synは、ニューロンのシナプス前膜終末に位置し、上記小体中での自然状態は、可溶性の未フォールディング状態である。α−synのミスフォールディング病理学的状態のもとに起こり、それによりβ−シート構造物が生じ、該構造物が更に凝集され、フィブリル化されることで、レビー小体病変が形成される。研究により、α−synのアミロイドーシスは、該疾患の病理学的過程に主要な役割を担うことが指摘されている。したがって、α−synの凝集及び線維化の阻害は、PDの予防及び治療のための医薬の研究及び開発におけるアプローチの1つとなっている。他方で、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)は神経毒である。MPTP自体は毒性ではないが、脳に入った後にその代謝から生成される1−メチル−4−フェニルピリジンカチオン(MPP+)が黒質中のDA作動性ニューロンを破壊し得る。同時にMPP+は、ミトコンドリア代謝の呼吸鎖における重要な物質であるNADHデヒドロゲナーゼを妨害し得るため、それにより細胞死及びフリーラジカル蓄積が引き起こされる。この過程により引き起こされるDA作動性ニューロンの大量死は、大脳皮質運動制御に重大な影響を及ぼすため、PDと同様の症状がもたらされる。したがって、MPTP及びMPP+は、PD関連動モデル及び細胞モデル樹立、並びにPD医薬の研究及び開発において広く使用される。

金ナノ粒子ナノスケール金粒子である(研究で使用される金ナノ粒子の金コアの直径は、一般的に3nmより大きい)。独特光学的特性及び電気的特性、良好な生体適合性、並びに簡便な表面修飾のため、金ナノ粒子は、生物学及び関連の医療分野、例えばバイオセンサ医用イメージング、及び腫瘍検出において広く使用される。化学的不活性及び大きな比表面積及び低濃度での血液−脳関門透過能力により、金ナノ粒子は、薬物の指向性輸送及び制御可能放出等の研究における薬物担体としても使用される。近年では、金ナノ粒子と、線維性タンパク質の凝集を阻害する特定のリガンド(例えば、ヘテロポリ酸及び特定の配列のポリペプチド)との結合について研究がなされ、in vitroでのタンパク質線維化阻害実験において一定の効果を上げている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。しかしながら、細胞モデルの結果により、金ナノ粒子(金コアサイズは5nm超である)が、フィブリン損傷細胞に対して保護効果を有する化合物一緒に使用される場合に、細胞生存性相乗効果が見られるが(非特許文献4)、それらが単独で使用される場合にはその効果は明白ではないことが示されている。動物モデルのレベルでのAD実験は、まだ報告されていない。さらに、これらの研究では、金ナノ粒子は、主として有効成分としてではなく薬物担体として使用された。

金クラスター(AuC)は、金コアの直径が3nm未満である超微細な金ナノ粒子である。それは数個だけの金原子ないし数百個の金原子を含み、従来の金ナノ粒子中の金原子の面心立方充填構造崩壊及びエネルギー準位分裂が引き起こされ、こうして3nmを上回る従来の金ナノ粒子とは全く異なる分子様の特性を示す。一方で、エネルギー準位の分裂のため、AuCは、表面プラズモン効果及び従来の金ナノ粒子で得られる光学的特性を有さずに、半導体量子ドットと類似した優れた蛍光発光特性を示す。他方ではAuCの紫外可視吸収スペクトルにおいて、520±20nmでのプラズモン共鳴ピークが消失し、その一方で1つ以上の新たな吸収ピークが560nmより高いところで現れるが、そのような吸収ピークは、従来の金ナノ粒子では観察することができない。したがって、紫外−可視吸収スペクトルにおけるプラズモン共鳴吸収ピーク(520±20nm)の消失及び560nmより高いところでの新たな吸収ピークの出現は、AuCの製造に成功したかどうかを判断するための重要な指標である(非特許文献5)。AuCはまた、従来の金ナノ粒子とは大幅に異なる磁気的特性、電気的特性、及び触媒的特性、並びに光熱効果を有するため、AuCは、単分子光電子工学分子触媒作用、及び光熱変換の分野において
広い応用の見通しがある。

さらに、AuCはまた、それらの優れた蛍光発光特性のためバイオプローブ及び医用イメージングの分野においても使用されている。例えば、Sandeep Vermaのチームは、核イ
メージングのための緑色蛍光プローブとしてプリン修飾されたAuCを使用している(非特許文献6)。この種類の文献は、AuCの蛍光特性を利用するものであり、AuC自体の医薬活性を必要とするものではない。

概要

金クラスター及び金クラスター含有物質の医薬品使用、並びにそれらの製造方法及び使用を提供する。AuCとAuCの外側を覆うリガンドYとを含む、AuC含有物質であって、AuCの金コア直径は、3nm未満、好ましくは0.5nm〜2.6nmであり、リガンドYは、例えば、L(D)−システイン及びその誘導体、システイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体、並びにその他のチオール含有化合物の1つ以上を含む、AuC含有物質である。開示されたAuC及びAuC含有物質は、Aβ及びα−synの凝集を阻害することができ、細胞モデル及び動物モデルのレベルで優れた効果を有し、かつアルツハイマー病及び/又はパーキンソン病を予防及び治療するための薬物を製造するために使用することができる。

目的

本発明は、AuCとAuCの外側を覆うリガンドYとを含む医薬活性を有するAuC含有物質を提供する

効果

実績

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請求項1

AuCとAuCの外側を覆うリガンドYとを含む、AuC含有物質

請求項2

前記AuCの金コア直径は、3nm未満、好ましくは0.5nm〜2.6nmである、請求項1に記載の物質

請求項3

前記リガンドYは、限定されるものではないが、L(D)−システイン及びその誘導体、システイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体、並びにその他のチオール含有化合物の1つ以上を含む、請求項1又は2に記載の物質。

請求項4

前記L(D)−システイン及びその誘導体は、好ましくはL(D)−システイン、N−イソブチリル−L(D)−システイン(L(D)−NIBC)、又はN−アセチル−L(D)−システイン(L(D)−NAC)等である、請求項3に記載の物質。

請求項5

前記システイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体は、好ましくはシステイン含有ジペプチド、システイン含有トリペプチド、又はシステイン含有テトラペプチドである、請求項3に記載の物質。

請求項6

前記システイン含有ジペプチドは、好ましくはL−システイン−L−アルギニンジペプチド(CR)、L−アルギニン−L−システインジペプチド(RC)、L−ヒスチジン−L−システインジペプチド(HC)、又はL−システイン−L−ヒスチジンジペプチド(CH)等である、請求項5に記載の物質。

請求項7

前記システイン含有トリペプチドは、好ましくはグリシン−L−システイン−L−アルギニントリペプチド(GCR)、L−プロリン−L−システイン−L−アルギニントリペプチド(PCR)、L−リジン−L−システイン−L−プロリントリペプチド(KCP)、又はL−グルタチオン(GSH)等である、請求項5に記載の物質。

請求項8

前記システイン含有テトラペプチドは、好ましくはグリシン−L−セリン−L−システイン−L−アルギニンテトラペプチド(GSCR)、又はグリシン−L−システイン−L−セリン−L−アルギニンテトラペプチド(GCSR)等である、請求項5に記載の物質。

請求項9

前記その他のチオール含有化合物は、好ましくは1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン、チオグリコール酸メルカプトエタノールチオフェノール、D−3−トロボール、N−(2−メルカプトプロピオニル)−グリシン、又はドデシルメルカプタン等である、請求項3に記載の物質。

請求項10

前記物質は、粉末又は綿状である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の物質。

請求項11

請求項1〜10のいずれか一項に記載のAuC含有物質の製造方法であって、以下の工程:(1)HAuCl4をメタノール、水、エタノールn−プロパノール、及び酢酸エチルの1つに溶解させることで、HAuCl4の濃度が0.01M〜0.03Mである溶液Aを得る工程と、(2)リガンドYを溶剤中に溶解させることで、リガンドYの濃度が0.01M〜0.18Mである溶液Bを得る工程と、(3)工程(1)における溶液Aと工程(2)における溶液Bとを、HAuCl4とリガンドYとの間のモル比1:(0.01〜100)(好ましくは1:(0.1〜10)、より好ましくは1:(1〜10))で混合し、その混合物氷浴中で0.1時間〜48時間(好ましくは0.1時間〜24時間、より好ましくは0.5時間〜2時間)にわたり撹拌し、0.025M〜0.8MのNaBH4溶液(好ましくはNaBH4の水溶液、NaBH4のエタノール溶液、又はNaBH4のメタノール溶液)を添加し、次いでその反応系を、氷浴中で0.1時間〜12時間(好ましくは0.1時間〜2時間、より好ましくは1時間〜2時間)にわたりNaBH4とリガンドYとのモル比1:(0.01〜100)(好ましくは1:(0.1〜8)、より好ましくは1:(1〜8))で撹拌する工程と、(4)工程(3)における反応溶液を8000回転/分〜17500回転/分で10分間〜100分間にわたり遠心分離することで、種々の平均粒度を有するAuC沈降物を得る工程、好ましくはMWCOが3K〜30Kのチューブ型限外濾過器を使用して、工程(3)における反応溶液を8000回転/分〜17500回転/分で10分間〜100分間にわたり勾配により遠心分離することで、種々の平均粒度を有するAuCを得る工程と、(5)工程(4)において得られた種々の平均粒度を有するAuC沈降物を水中に溶解させ、それを透析バッグに入れて、水中にて室温で1日間〜7日間にわたり透析する工程と、(6)前記透析バッグ中のAuC溶液を12時間〜24時間にわたり凍結乾燥させ、AuC含有物質を得る工程と、を含む、方法。

請求項12

工程(2)における溶剤は、メタノール、酢酸エチル、水、エタノール、n−プロパノール、ペンタンギ酸酢酸ジエチルエーテルアセトンアニソール1−プロパノール2−プロパノール、1−ブタノール2−ブタノールペンタノール、エタノール、酢酸ブチルトリブチルメチルエーテル酢酸イソプロピルジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ギ酸エチル酢酸イソブチル酢酸メチル2−メチル−1−プロパノール、及び酢酸プロピルの1つ以上である、請求項11に記載の方法。

請求項13

触媒製造又は分子触媒作用、キラル認識、分子検出、生物医学的検出、及びイメージングの分野における近赤外蛍光プローブへの請求項1〜10のいずれか一項に記載のAuC含有物質の使用。

請求項14

Aβの凝集及び線維化、及び/又はα−synの凝集及び線維化と関連する疾患のための医薬の製造における請求項1〜10のいずれか一項に記載のAuC含有物質の使用。

請求項15

ADの予防及び治療のための医薬の製造における請求項1〜10のいずれか一項に記載のAuC含有物質の使用。

請求項16

PDの予防及び治療のための医薬の製造における請求項1〜10のいずれか一項に記載のAuC含有物質の使用。

請求項17

Aβの凝集及び線維化と関連する疾患のための医薬の製造におけるAuCの使用。

請求項18

前記Aβの凝集及び線維化と関連する疾患は、ADである、請求項17に記載の使用。

請求項19

前記AuCは、L−グルタチオン(GSH)、N−アセチル−L(D)−システイン(L(D)−NAC)、N−イソブチリル−L(D)−システイン(L(D)−NIBC)、L−システイン−L−アルギニンジペプチド(CR)、L−アルギニン−L−システインジペプチド(RC)、1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン(Cap)、又はL(D)−システイン(L(D)−Cys)等で修飾されている、請求項17又は18に記載の使用。

請求項20

α−synの凝集及び線維化と関連する疾患のための医薬の製造における、AuCの使用。

請求項21

前記Aβの凝集及び線維化と関連する疾患は、PDである、請求項20に記載の使用。

請求項22

前記AuCは、L−グルタチオン(GSH)、N−アセチル−L(D)−システイン(L(D)−NAC)、N−イソブチリル−L(D)−システイン(L(D)−NIBC)、L−システイン−L−アルギニンジペプチド(CR)、L−アルギニン−L−システインジペプチド(RC)、1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン(Cap)、又はL(D)−システイン(L(D)−Cys)等で修飾されている、請求項20又は21に記載の使用。

技術分野

0001

本発明は、ナノメートルナノ薬物の技術分野に関し、特に金クラスター(AuC)含有物質、並びにその製造方法及びその使用に関する。

背景技術

0002

神経変性疾患は、ヒトの健康への大きな脅威の1つである。それらの共通した病理学的特徴は、タンパク質の異常な絡み合い及び神経細胞におけるそのアミロイドーシス、並びに関連する神経細胞アポトーシス及び神経学的障害である。アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)は、その中でも最も典型的な2つである。ADの臨床徴候は、記憶機能障害及び認知機能障害並びに人格及び行動の変化を特徴とする一方で、PDの臨床徴候は、主として振戦運動緩慢筋硬直起立性歩行障害、及びその他の運動障害を含む。AD及びPDは両方とも主として高齢者の間で起こり、年齢と共に罹患率は高まる。ADを例にとると、65を超えた人達の間での罹患率は5%であるが、80歳を超えた人達の間では30%を上回る。したがって、これらの2つの疾患を患う患者の数は、寿命延長して人口の高齢化が高まるにつれ絶え間なく増加している。特に群を抜いてADには4千万人を超える患者が罹患しており、2050年には1億5千万人に達すると考えられる。米国だけでも、年間に癌の2倍にあたる2000億米ドル超がAD患者治療に費やされており、それは世界で最も費用のかかる疾患となっている。世界のPD患者の数は、控えめに見積もっても1000万人を超えている。しかしながら、これらの2つの疾患の病因は未だに知られていない。臨床的治療に関しては、軽度及び中等度のAD又はPDの治療のために幾つかの薬物が米国FDAにより承認されているが、これらの薬物は、患者の認知機能又は運動機能を一時的にしか改善し得ない神経伝達物質調節薬である。それらの薬物を中断するとすぐに症状が元に戻ることとなる。今までのところ、これらの2つの疾患の病理学的過程終結又は回復させることができる薬物は存在しない。したがって、AD又はPDの治療のための新たな薬物を開発することは極めて意義のあることである。

0003

研究により、AD患者の脳内のアミロイドタンパク質は、主としてβ−アミロイド(Aβ)タンパク質及びタウタンパク質、並びに少量のα−シヌクレイン(α−syn)であり、初期発症部位は、脳内の記憶及び学習並びに空間定位の機能を発揮する海馬であることが分かっている。PD患者の脳損傷は、体性運動機能に役割を担う黒質から始まる。初期発症部位の違いがこれらの2つの疾患を伴う患者の異なる症状を決定づける。しかしながら研究により、AD患者の半分より多くが後期段階に運動障害を伴い、殆どのPD患者も後期段階にAD患者と同じ症状を共有することが指摘されている。これらの現象は、上記2つの疾患が発症原因及び疾患進行固有相関があることを示唆している。

0004

脳内の老人斑の形成は、ADの基本的な病理学的特徴の1つである。老人斑における主要構成物質として、Aβは36個〜43個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、該ポリペプチドはアミロイド前駆体タンパク質APP)の加水分解産物であり、その際、Aβ(1−40)の含量はAβの全体量の90%超を占めている。最近の研究により、Aβは正常な生理学的機能を有し、コリンエステラーゼ触媒活性の調節によりシナプス間のアセチルコリン作動性シグナル伝達を調節することができるが、脳内のAβの過剰な凝集及び線維化は、シナプス機能不全と、引き続いての二次的な炎症応答とを引き起こす場合があり、こうしてニューロン機能の喪失及びニューロン死がもたらされることが明らかになった。したがって、Aβの凝集及び線維化を阻害し得るとともに、その神経毒性遮断し得る物質の開発は、AD医薬の研究及び開発のための重要なアプローチの1つである。

0005

PDの病理学的特徴は、レビー小体の生成を伴って、主として黒質線条体系におけるドーパミン(DA)作動性ニューロンの進行性消失として現れる。レビー小体は、主として変性されたα−synの凝集により形成される中空放射状のアミロイド線維を含む。α−synは、ニューロンのシナプス前膜終末に位置し、上記小体中での自然状態は、可溶性の未フォールディング状態である。α−synのミスフォールディング病理学的状態のもとに起こり、それによりβ−シート構造物が生じ、該構造物が更に凝集され、フィブリル化されることで、レビー小体病変が形成される。研究により、α−synのアミロイドーシスは、該疾患の病理学的過程に主要な役割を担うことが指摘されている。したがって、α−synの凝集及び線維化の阻害は、PDの予防及び治療のための医薬の研究及び開発におけるアプローチの1つとなっている。他方で、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)は神経毒である。MPTP自体は毒性ではないが、脳に入った後にその代謝から生成される1−メチル−4−フェニルピリジンカチオン(MPP+)が黒質中のDA作動性ニューロンを破壊し得る。同時にMPP+は、ミトコンドリア代謝の呼吸鎖における重要な物質であるNADHデヒドロゲナーゼを妨害し得るため、それにより細胞死及びフリーラジカル蓄積が引き起こされる。この過程により引き起こされるDA作動性ニューロンの大量死は、大脳皮質運動制御に重大な影響を及ぼすため、PDと同様の症状がもたらされる。したがって、MPTP及びMPP+は、PD関連動モデル及び細胞モデル樹立、並びにPD医薬の研究及び開発において広く使用される。

0006

金ナノ粒子ナノスケール金粒子である(研究で使用される金ナノ粒子の金コアの直径は、一般的に3nmより大きい)。独特光学的特性及び電気的特性、良好な生体適合性、並びに簡便な表面修飾のため、金ナノ粒子は、生物学及び関連の医療分野、例えばバイオセンサ医用イメージング、及び腫瘍検出において広く使用される。化学的不活性及び大きな比表面積及び低濃度での血液−脳関門透過能力により、金ナノ粒子は、薬物の指向性輸送及び制御可能放出等の研究における薬物担体としても使用される。近年では、金ナノ粒子と、線維性タンパク質の凝集を阻害する特定のリガンド(例えば、ヘテロポリ酸及び特定の配列のポリペプチド)との結合について研究がなされ、in vitroでのタンパク質線維化阻害実験において一定の効果を上げている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。しかしながら、細胞モデルの結果により、金ナノ粒子(金コアサイズは5nm超である)が、フィブリン損傷細胞に対して保護効果を有する化合物一緒に使用される場合に、細胞生存性相乗効果が見られるが(非特許文献4)、それらが単独で使用される場合にはその効果は明白ではないことが示されている。動物モデルのレベルでのAD実験は、まだ報告されていない。さらに、これらの研究では、金ナノ粒子は、主として有効成分としてではなく薬物担体として使用された。

0007

金クラスター(AuC)は、金コアの直径が3nm未満である超微細な金ナノ粒子である。それは数個だけの金原子ないし数百個の金原子を含み、従来の金ナノ粒子中の金原子の面心立方充填構造崩壊及びエネルギー準位分裂が引き起こされ、こうして3nmを上回る従来の金ナノ粒子とは全く異なる分子様の特性を示す。一方で、エネルギー準位の分裂のため、AuCは、表面プラズモン効果及び従来の金ナノ粒子で得られる光学的特性を有さずに、半導体量子ドットと類似した優れた蛍光発光特性を示す。他方ではAuCの紫外可視吸収スペクトルにおいて、520±20nmでのプラズモン共鳴ピークが消失し、その一方で1つ以上の新たな吸収ピークが560nmより高いところで現れるが、そのような吸収ピークは、従来の金ナノ粒子では観察することができない。したがって、紫外−可視吸収スペクトルにおけるプラズモン共鳴吸収ピーク(520±20nm)の消失及び560nmより高いところでの新たな吸収ピークの出現は、AuCの製造に成功したかどうかを判断するための重要な指標である(非特許文献5)。AuCはまた、従来の金ナノ粒子とは大幅に異なる磁気的特性、電気的特性、及び触媒的特性、並びに光熱効果を有するため、AuCは、単分子光電子工学分子触媒作用、及び光熱変換の分野において
広い応用の見通しがある。

0008

さらに、AuCはまた、それらの優れた蛍光発光特性のためバイオプローブ及び医用イメージングの分野においても使用されている。例えば、Sandeep Vermaのチームは、核イ
メージングのための緑色蛍光プローブとしてプリン修飾されたAuCを使用している(非特許文献6)。この種類の文献は、AuCの蛍光特性を利用するものであり、AuC自体の医薬活性を必要とするものではない。

先行技術

0009

Y. H. Liao, Y. J. Chang, Y. Yoshiike, Y. C. Chang, Y. R. Chen, Small 2012, 8, 3631
Y. D. Alvarez, J. A. Fauerbach, J. V. Pellegrotti, T. M. Jovin, E. A. Jares-Erijman, F. D. Stefani, Nano Letters 2013, 13, 6156
S. Hsieh, C. W. Chang, H. H. Chou, Colloidsand Surfaces B: Biointerfaces, 2013, 112, 525
N. Gao, H. Sun, K. Dong, J. Ren, X. Qu, Chemistry-A European Journal 2015, 21, 829
H.F. Qian, M.Z. Zhu, Z.K. Wu, R.C. Jin, Accounts of Chemical Research 2012, 45, 1470
J. R. Wallbank, D. Ghazaryan, A. Misra, Y. Cao, J. S. Tu, B. A. Piot, M. Potemski, S.Wiedmann, U. Zeitler, T. L. M. Lane, S.V. Morozov, M. T. Greenaway, L. Evaes, A. K. Geim, V. I. Falko, K. S. Novoselov, A. Mishchenko, ACS Applied Materials & Interfaces 2014, 6, 2185

発明が解決しようとする課題

0010

本発明の目的は、従来技術における技術的不利点に取り組むことである。

課題を解決するための手段

0011

第1の態様においては、本発明は、AuCとAuCの外側を覆うリガンドYとを含む医薬活性を有するAuC含有物質を提供する。

0012

上記AuCの金コア直径は、3nm未満、好ましくは0.5nm〜2.6nmである。

0013

リガンドYには、限定されるものではないが、L(D)−システイン及びその誘導体、システイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体、並びにその他のチオール含有化合物の1つ以上が含まれる。

0014

上記L(D)−システイン及びその誘導体は、好ましくはL(D)−システイン、N−イソブチリル−L(D)−システイン(L(D)−NIBC)、又はN−アセチル−L(D)−システイン(L(D)−NAC)である。

0015

上記システイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体は、好ましくはシステイン含有ジペプチド、システイン含有トリペプチド、又はシステイン含有テトラペプチドである。

0016

上記システイン含有ジペプチドは、好ましくはL−システイン−L−アルギニンジペプチド(CR)、L−アルギニン−L−システインジペプチド(RC)、L−ヒスチジン−L−システインジペプチド(HC)、又はL−システイン−L−ヒスチジンジペプチド(CH)である。

0017

上記システイン含有トリペプチドは、好ましくはグリシン−L−システイン−L−アルギニントリペプチド(GCR)、L−プロリン−L−システイン−L−アルギニントリペプチド(PCR)、L−リジン−L−システイン−L−プロリントリペプチド(KCP)、又はL−グルタチオン(GSH)である。

0018

上記システイン含有テトラペプチドは、好ましくはグリシン−L−セリン−L−システイン−L−アルギニンテトラペプチド(GSCR)、又はグリシン−L−システイン−L−セリン−L−アルギニンテトラペプチド(GCSR)である。

0019

その他のチオール含有化合物は、好ましくは1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン、チオグリコール酸メルカプトエタノールチオフェノール、D−3−トロボール、N−(2−メルカプトプロピオニル)−グリシン、又はドデシルメルカプタンである。

0020

上記物質は、粉末又は綿状である。

0021

第2の態様においては、本発明は、AuC含有物質を製造する方法であって、以下の工程:
(1)HAuCl4をメタノール、水、エタノールn−プロパノール、及び酢酸エチルの1つに溶解させることで、HAuCl4の濃度が0.01M〜0.03Mである溶液Aを得る工程と、
(2)リガンドYを溶剤中に溶解させることで、リガンドYの濃度が0.01M〜0.18Mである溶液Bを得る工程と、
(3)工程(1)における溶液Aと工程(2)における溶液Bとを、HAuCl4とリガンドYとの間のモル比1:(0.01〜100)(好ましくは1:(0.1〜10)、より好ましくは1:(1〜10))で混合し、それらを氷浴中で0.1時間〜48時間(好ましくは0.1時間〜24時間、より好ましくは0.5時間〜2時間)にわたり撹拌し、0.025M〜0.8MのNaBH4溶液(好ましくはNaBH4の水溶液、NaBH4のエタノール溶液、又はNaBH4のメタノール溶液)を添加し、次いで氷水浴中で0.1時間〜12時間(好ましくは0.1時間〜2時間、より好ましくは1時間〜2時間)にわたりNaBH4とリガンドYとの間のモル比1:(0.01〜100)(好ましくは1:(0.1〜8)、より好ましくは1:(1〜8))で撹拌し続ける工程と、
(4)工程(3)における反応溶液を8000回転/分〜17500回転/分で10分間〜100分間にわたり遠心分離することで、AuC沈降物を種々の平均粒度で得る工程、好ましくはMWCOが3K〜30Kの限外濾過チューブを使用して、工程(3)における反応溶液を8000回転/分〜17500回転/分で10分間〜100分間にわたり勾配により遠心分離することで、AuCを種々の平均粒度で得る工程と、
(5)工程(4)において得られた種々の平均粒度のAuC沈降物を水中に溶解させ、それを透析バッグに入れて、水中にて室温で1日間〜7日間にわたり透析する工程と、
(6)上記透析バッグ中のAuC溶液を12時間〜24時間にわたり凍結乾燥させることで、AuC含有物質を得る工程と、
を含む、方法を提供する。

0022

工程(2)における溶剤は、メタノール、酢酸エチル、水、エタノール、n−プロパノール、ペンタンギ酸酢酸ジエチルエーテルアセトンアニソール1−プロパノール2−プロパノール、1−ブタノール2−ブタノールペンタノール、エタノール、酢酸ブチルトリブチルメチルエーテル酢酸イソプロピルジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ギ酸エチル酢酸イソブチル酢酸メチル2−メチル−1−プロパノール、及び酢酸プロピルの1つ以上である。

0023

第3の態様においては、本発明は、触媒製造又は分子触媒作用、キラル認識、分子検出、生物医学的検出、及びイメージングの分野における近赤外蛍光プローブへのAuC含有物質の使用を提供する。

0024

第4の態様においては、本発明は、Aβの凝集及び線維化と関連する疾患、並びにα−synの凝集及び線維化と関連する疾患のための薬物の製造における上記AuC含有物質の使用を提供する。

0025

第5の態様においては、本発明は、ADの予防及び治療のための薬物の製造におけるAuC含有物質の使用を提供する。

0026

第6の態様においては、本発明は、PDの予防及び治療のための薬物の製造におけるAuC含有物質の使用を提供する。

0027

第7の態様においては、本発明は、Aβの凝集及び線維化と関連する疾患のための薬物の製造におけるAuCの使用を提供する。

0028

上記Aβの凝集及び線維化と関連する疾患は、ADである。

0029

上記AuCは、L−グルタチオン(GSH)、N−アセチル−L(D)−システイン(L(D)−NAC)、N−イソブチリル−L(D)−システイン(L(D)−NIBC)、L−システイン−L−アルギニンジペプチド(CR)、L−アルギニン−L−システインジペプチド(RC)、1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン(Cap)、又はL(D)−システイン(L(D)−Cys)で修飾されている。

0030

第8の態様においては、本発明は、α−synの凝集及び線維化と関連する疾患のための医薬の製造におけるAuCの使用を提供する。

0031

上記Aβの凝集及び線維化と関連する疾患は、PDである。

0032

上記AuCは、L−グルタチオン(GSH)、N−アセチル−L(D)−システイン(L(D)−NAC)、N−イソブチリル−L(D)−システイン(L(D)−NIBC)、L−システイン−L−アルギニンジペプチド(CR)、L−アルギニン−L−システインジペプチド(RC)、1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン(Cap)、又はL(D)−システイン(L(D)−Cys)で修飾されている。

0033

本発明により提供されるAuC含有物質は、Aβ及びα−synの凝集の阻害のためのin vitro実験においてAβ及びα−synの凝集の阻害に対して優れた効果を示し、そしてAβ誘導された細胞ADモデル及びMPP+誘導された細胞PDモデルの実験において細胞生存性の改善に対して優れた効果を示す。ADのトランスジェニックマウスモデルにおいて、上記AuC含有物質は、病気マウス認知行動能力を大幅に改善することができ、マウスの海馬及び大脳皮質におけるAβ(1−40)及びAβ(1−42)斑の形成の阻害に大きな役割を担う。MPTP誘導されたPDマウスモデルにおいて、上記AuC含有物質は、MPTP病変モデルマウスの運動異常障害を大幅に改善及び治療し、病気のマウスの運動能力を改善し、そしてマウスの黒質及び線条体のDA作動性ニューロンのMPTP誘導された特異的アポトーシスを本質的に阻害することができる。そしてまた上記AuC含有物質は、細胞レベル及び動物レベルで良好なバイオセーフティを有
する。上記結果は、本発明により提供されるAuC含有物質が、線維性タンパク質の凝集及び線維化に影響を及ぼすだけでなく、より深いレベルで神経変性疾患の過程にも、例えば神経細胞のエネルギー代謝及び神経伝達物質代謝に関連するシグナル伝達機能にも影響することを指摘している。したがって、本発明により提供されるAuC含有物質は、神経変性疾患、例えばAD及び/又はPDのための新たな医薬の研究及び開発のために重要である。

0034

他方で、リガンド分子は、Aβの凝集のin vitro阻害のための動態実験、及びAβ病変AD細胞モデル試験において全く阻害効果を示さず、又はAβ病変細胞ADモデル及びMPP+病変PD細胞モデルにおいて全く細胞生存性の増加を示さないので、AD及びPDへの効力がリガンドではなくAuCに起因することが示唆される。AuC自体の医薬活性に基づいて、競争力のある新たな医薬の開発が期待される。

図面の簡単な説明

0035

種々の粒度を有するリガンドL−NIBC修飾された金ナノ粒子の紫外−可視(UV)スペクトル透過型電子顕微鏡TEM)像、及び粒度分布図を示す。
種々の粒度を有するリガンドL−NIBC修飾されたAuCの紫外−可視スペクトルTEM像、及び粒度分布図を示す。
種々の粒度を有するリガンドL−NIBC修飾されたAuCの赤外スペクトルを示す。
Aβ(1−40)とリガンドL−NIBC修飾された金ナノ粒子又はAuCとを一緒に48時間にわたりインキュベートした後のAFトポグラフィーを示す。
種々の粒度及び種々の濃度のリガンドL−NIBC修飾された金ナノ粒子及びAuCのAβ線維化の動態曲線を示す。
種々の粒度及び種々の濃度のリガンドL−NIBC修飾された金ナノ粒子又はAuCの、Aβ誘導されたAD細胞モデルの細胞生存性に対する効果を示している図を示す。
リガンドCRで修飾されたAuC(CR−AuC)のUV、赤外、TEM、及び粒度分布図を示す。
リガンドRCで修飾されたAuC(RC−AuC)のUV、赤外、TEM、及び粒度分布図を示す。
1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン(すなわち、Cap)で修飾されたAuCのUV、赤外、TEM、及び粒度分布図を示す。
リガンドGSHで修飾されたAuC(GSH−AuC)のUV、赤外、TEM、及び粒度分布図を示す。
リガンドD−NIBCで修飾されたAuC(D−NIBC−AuC)のUV、赤外、TEM、及び粒度分布図を示す。
種々のリガンドで修飾されたAuCの、Aβ(1−40)の凝集及び線維化に対する阻害効果の曲線を示す。
実施形態5における水迷路実験装置の概略図を示す。
AuC含有物質の、APP/PS1二重トランスジニックC57BL/6マウスモデルの認知行動(投与150日目)に対する効果を示している図を示す。
AuC含有物質の、APP/PS1二重トランスジェニックC57BL/6マウスモデルにおけるマウスの海馬及び大脳皮質中でのAβ(1−40)の発現(投与100日目)に対する効果を示している図を示す。
AuC含有物質の、APP/PS1二重トランスジェニックC57BL/6マウスモデルにおけるマウスの海馬及び大脳皮質中でのAβ(1−42)の発現(投与100日目)に対する効果を示している図を示す。
AuC含有物質の、APP/PS1二重トランスジェニックC57BL/6マウスモデルにおけるマウスの海馬及び大脳皮質中でのAβ(1−40)の発現(投与150日目)に対する効果を示している図を示す。
AuC含有物質の、APP/PS1二重トランスジェニックC57BL/6マウスモデルにおけるマウスの海馬及び大脳皮質中でのAβ(1−42)の発現(投与150日目)に対する効果を示している図を示す。
AuC含有物質のα−syn線維化の動態に対する効果を示している図である。
AuC含有物質の、MPP+病変PD細胞(SH−sy5y)モデルの細胞生存性に対する効果を示している図を示す。
AuC含有物質の、MPP+誘導されたPD細胞(PC12)モデルの細胞アポトーシスに対する効果を示している図を示す。
AuC含有物質の、MPTP病変モデルマウスの自発運動に対する効果を示している図を示す。
AuC含有物質の、MPTP病変モデルマウスの遊泳能力に対する効果を示している図を示す。
AuC含有物質の、MPTP病変モデルマウスのロータロッド行動に対する効果を示している図を示す。
AuC含有物質の、MPTP病変モデルマウスの黒質及び線条体におけるDA作動性ニューロンに対する効果を示している図を示す。
種々の粒度及び種々の濃度のAuC含有物質の、SH−sy5y神経芽腫細胞生存性に対する効果を示している図を示す。

実施例

0036

一定のリガンドを有する金ナノ粒子のAβの凝集に対する効果を研究することにより、本発明者らは、金ナノ粒子の金コア直径を大きいものから小さいものへと変更した場合に、同じリガンドで表面が修飾された金ナノ粒子のAβの凝集に対する促進効果は、阻害効果へと切り替わり、その粒度がAuCとなるのに十分に小さい場合に、Aβの凝集の完全な阻害が達成され得ることを見出した。さらに、AuCがα−synに対する完全な阻害効果を有することも判明した。この効果においては、リガンドではなくAuC自体が阻害の役割を担う。

0037

一般的に、上記研究で使用される金ナノ粒子の金コア直径は、3nmより大きく、該金コアの直径が3nmより小さい場合に、金ナノ粒子はAuCと呼ばれる。紫外−可視吸収スペクトルにおけるプラズモン共鳴吸収ピーク(520±20nm)の消失及び560nmより高いところでの新たな吸収ピークの出現は、AuCの製造に成功したことを示している。リガンドを有しないと、AuCは溶液中で安定に存在することができない。AuCがチオール含有リガンドと結合することで、リガンド修飾されたAuC(又はAuCと呼ばれる)がAu−S結合を介して形成される。

0038

文献に開示される現存のリガンド修飾されたAuCには、L−グルタチオン(GSH)、N−アセチル−L(D)−システイン(L(D)−NAC)、N−イソブチリル−L(D)−システイン(L(D)−NIBC)等で修飾されたAuCが含まれる。製造方法は、文献(H. F. Qian, M. Z. Zhu, Z. K. Wu, R. C. Jin, Accounts of Chemical Research 2012, 45, 1470、C. Gautier, T. Buergi, Journal of the American Chemical Society 2006, 128,11079)に示されており、それらは、主として触媒作用、キラル認識、分子
検出、バイオセンシング薬物送達、及びバイオイメージングの分野において適用される(G. Li, R. C. Jin, Accounts of Chemical Research 2013, 46, 1749、H. F. Qian, M.
Z. Zhu, Z. K. Wu, R. C. Jin, Accounts of Chemical Research 2012, 45, 1470、J. F. Parker, C. A. Fields-Zinna, R. W. Murray, Accounts of Chemical Research 2010, 43, 1289、S. H. Yau, O. Varnavski, T. Goodson, Accounts of Chemical Research 201
3, 46, 1506)。

0039

本発明では、AuCのAD及び/又はPDに対する効果が調査され、最初に、種々のリガンド(Aβの凝集に対して阻害効果を有しないリガンド)を含む種々のサイズのAuCを研究対象として使用することを少なくとも含む。Aβの凝集及びα−synの凝集の阻害についてのin vitro実験と、Aβ誘導されたAD細胞モデル及びMPP+誘導されたPD細胞モデルの実験と、ADトランスジェニックマウスモデル及びMPTP誘導されたPDマウスモデルの実験とを含む3段階の実験での研究、そしてAuC細胞毒性を考慮してマウスにおける急性毒性実験、マウスにおけるin vivo分布実験等によって、リガンド修飾されたAuCが提供され、AD及びPDを治療する薬物の製造におけるそれらの用途が見出され、そしてそれらの結果を、金ナノ粒子の実験結果と比較することで、3nmより大きい直径を有する金ナノ粒子は、この目的のために望ましい効果を有さず、AD又はPDを治療する薬物の製造に使用することができないが、その一方でリガンド修飾されたAuCは、AD及び/又はPDを治療する薬物の製造に使用することができることが示された。

0040

以下で、本発明を更に実施形態において詳説するが、それらの実施形態は、本発明に何らかの限定を行うものと解釈されるべきではない。

0041

以下の実施形態で使用される原材料純度は、化学的純度又はそれより高いものとする。それらは全て市場から購入することができる。

0042

実施形態1:リガンド修飾されたAuCの製造
この実施形態は、リガンド修飾されたAuCを製造する方法であって、以下の工程:
(1)HAuCl4をメタノール、水、エタノール、n−プロパノール、及び酢酸エチルの1つに溶解させることで、HAuCl4の濃度が0.01M〜0.03Mである溶液Aを得る工程と、
(2)リガンドYを溶剤中に溶解させることで、リガンドYの濃度が0.01M〜0.18Mである溶液Bを得る工程と、
リガンドYには、限定されるものではないが、L(D)−システイン及びその他のシステイン誘導体、例えばN−イソブチリル−L−システイン(L−NIBC)、N−イソブチリル−D−システイン(D−NIBC)、N−アセチル−L−システイン及びN−アセチル−D−システイン、限定されるものではないが、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド及びその他のシステイン含有ペプチドを含むシステイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体、例えばL−システイン−L−アルギニンジペプチド(CR)、L−アルギニン−L−システインジペプチド(RC)、L−システイン−L−ヒスチジン(CH)、グリシン−L−システイン−L−アルギニントリペプチド(GCR)、L−プロリン−L−システイン−L−アルギニントリペプチド(PCR)、L−グルタチオン(GSH)、グリシン−L−セリン−L−システイン−L−アルギニンテトラペプチド(GSCR)及びグリシン−L−システイン−L−セリン−L−アルギニンテトラペプチド(GCSR)並びにその他のチオール含有化合物、例えば1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D−3−トロロボール及びドデシルメルカプタンの1つ以上が含まれ、上記溶剤は、メタノール、酢酸エチル、水、エタノール、n−プロパノール、ペンタン、ギ酸、酢酸、ジエチルエーテル、アセトン、アニソール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、エタノール、酢酸ブチル、トリブチルメチルエーテル、酢酸イソプロピル、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ギ酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸メチル、2−メチル−1−プロパノール及び酢酸プロピルの1つ以上である;
(3)溶液Aと溶液Bとを、HAuCl4とリガンドYとの間のモル比が1:(0.01
〜100)であるように混合し、それらを氷浴中で0.1時間〜48時間にわたり撹拌し、0.025M〜0.8MのNaBH4の水溶液、エタノール溶液、又はメタノール溶液を添加し、氷水浴中で撹拌し続けて、0.1時間〜12時間にわたり反応させる工程と、
NaBH4とリガンドYとの間のモル比は1:(0.01〜100)である;
(4)MWCOが3K〜30Kの限外濾過チューブを使用して、上記反応溶液を8000回転/分〜17500回転/分で反応完了後10分間〜100分間にわたり勾配により遠心分離することで、リガンド修飾されたAuC沈降物を種々の平均粒度で得る工程(具体的な勾配遠心分離は、実施形態2の(4)に記載される通りである。種々のMWCOの限外濾過チューブのための濾過膜の開口が、その膜を通過し得るAuCのサイズを直接的に決定する)と、
この工程は省くことができる。言い換えれば、工程(3)の完了後に、工程(5)を直接開始することで、混合されたAuCが種々のサイズで得られる;
(5)工程(4)において得られた種々の平均粒度のAuC沈降物を水中に溶解させ、それを透析バッグに入れて、水中にて室温で1日間〜7日間にわたり透析する工程と、
(6)AuCを透析後12時間〜24時間にわたり凍結乾燥させることで、粉末状物質又は綿状物質、すなわちリガンド修飾されたAuCを得る工程と、
を含む、方法を開示している。

0043

検出されるように(具体的な検出方法は、実施形態2に示されている)、上記方法により得られた粉末状物質又は綿状物質の粒度は、3nmより小さい(一般的に0.5nm〜2.6nmに分布している)。紫外−可視吸収スペクトルは、560nmより高いところで1つ以上の吸収ピークを有し、520nmには明らかな吸収ピークを有しない。得られた粉末状物又は綿状物がAuCであることが決定づけられる。

0044

実施形態2:種々のリガンドで修飾されたAuCの製造及び確認
リガンドL−NIBCを例にとって、リガンドL−NIBCで修飾されたAuCの製造及び確認を詳説する。
(1)1.00gのHAuCl4を量し、それを100mLのメタノール中に溶解させることで、0.03Mの溶液Aを得る。
(2)0.57gのL−NIBCを秤量し、それを100mLの氷酢酸(酢酸)中に溶解させることで、0.03Mの溶液Bを得る。
(3)1mLの溶液Aを計量し、それをそれぞれ0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mLの溶液B(すなわち、HAuCl4とL−NIBCとの間のモル比はそれぞれ1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5である)と混合し、氷浴中で撹拌しながら2時間にわたり反応させ、溶液が山吹色から無色に変わったら1mLの新たに調製した0.03M(11.3mgのNaBH4を秤量し、それを10mLのエタノール中に溶解させることにより調製される)のNaBH4水溶液を素早く添加し、溶液が暗褐色に変わった後30分間にわたりその反応を継続させ、そして10mLのアセトンを添加することで、その反応を止める。
(4)上記反応後に、その反応溶液を勾配遠心分離にかけることで、種々の粒度を有するL−NIBC修飾されたAuC粉末が得られる。具体的な方法:上記反応が完了した後に、その反応溶液を、MWCOが30Kの50mLの容量を有する限外濾過チューブに移し、10000回転/分で20分間にわたり遠心分離し、内側チューブ中の保持液超純水中に溶解させることで、約2.6nmの粒度を有する粉末が得られる。次いで、外側チューブ中の混合された溶液を50mLの容量を有するMWCOが10Kの限外濾過チューブに移し、13000回転/分で30分間にわたり遠心分離する。その内側チューブ中の保持液を超純水中に溶解させることで、約1.8nmの粒度を有する粉末が得られる。次いで、外側チューブ中の混合された溶液を50mLの容量を有するMWCOが3Kの限外濾過チューブに移し、17500回転/分で40分間にわたり遠心分離する。その内側チューブ中の保持液を超純水中に溶解させることで、約1.1nmの粒度を有する粉末が得ら
れる。
(5)勾配遠心分離により得られた3つの異なる粒度の粉末を沈降させ、それぞれ溶剤を除去し、粗生成物をN2で風乾させ、それを5mLの超純水中で溶解させ、それを透析バッグ(MWCOは3KDaである)中に入れ、それを2Lの超純水中に入れ、1日おきに水を交換し、7日間にわたり透析させ、それを凍結乾燥させ、後で使用するために保持する。

0045

特性評価実験は、上記で得られた粉末(リガンドL−NIBC修飾されたAuC)について実施した。一方で、リガンドL−NIBC修飾された金ナノ粒子がコントロールとして使用される。L−NIBCであるリガンドを有する金ナノ粒子の製造方法は、参考文献(W. Yan, L. Xu, C. Xu, W. Ma, H. Kuang, L. Wang and N. A. Kotov, Journal of the
American Chemical Society 2012, 134, 15114、X. Yuan, B. Zhang, Z. Luo, Q. Yao, D. T. Leong, N. Yan and J. Xie, Angewandte Chemie International Edition 2014, 53, 4623)を参照する。

0046

1.透過型電子顕微鏡(TEM)による形態の観察
試験粉末(実施形態2で製造されたL−NIBC修飾されたAuC試料及びL−NIBC修飾された金ナノ粒子試料)を、試料として超純水中に溶解させて2mg/Lとし、次いで試験試料ハンギングドロップ法によって製造した。具体的な方法:5μLの試料を超薄カーボンフィルム上に滴り落とし、水滴が消えるまで自然に蒸発させ、次いで該試料の形態を、JEM−2100F STEM/EDS電界放出型高分解能TEMにより観察した。

0047

リガンドL−NIBC修飾された金ナノ粒子の4つのTEM像は、図1パネルB、パネルE、パネルH、及びパネルKに示されており、リガンドL−NIBC修飾されたAuCの3つのTEM像は、図2のパネルB、パネルE、及びパネルHに示されている。

0048

図2における画像は、L−NIBC修飾されたAuC試料が均一な粒度及び良好な分散性を有し、かつL−NIBC修飾されたAuCの平均直径(金コアの直径を指す)がそれぞれ1.1nm、1.8nm、及び2.6nmであることを示しており、図2のパネルC、パネルF、及びパネルIにおける結果とよく合致している。比較すると、リガンドL−NIBC修飾された金ナノ粒子試料は、より大きな粒度を有する。それらの平均直径(金コアの直径を指す)は、それぞれ3.6nm、6.0nm、10.1nm、及び18.2nmであり、図1のパネルC、パネルF、パネルI、及びパネルLにおける結果とよく合致している。

0049

2.紫外(UV)−可視(vis)吸収スペクトル
試験粉末を、濃度が10mg・L−1になるまで超純水中に溶解させ、室温でUV−vis吸収スペクトルにより測定した。スキャン範囲は、190nm〜1100nmであり、試料セルは、1cmの光路を有する標準的な石英キュベットであり、参照セルは、超純水で満たした。

0050

異なるサイズを有する4つのリガンドL−NIBC修飾された金ナノ粒子試料のUV−vis吸収スペクトルは、図1のパネルA、パネルD、パネルG、及びパネルJに示されており、粒度の統計分布は、図1のパネルC、パネルF、パネルI、及びパネルLに示されており、異なるサイズを有する3つのリガンドL−NIBC修飾されたAuC試料のUV−vis吸収スペクトルは、図2のパネルA、パネルD、及びパネルGに示されており、かつ粒度の統計分布は、図2のパネルC、パネルF、及びパネルIに示されている。

0051

図1は、表面プラズモン効果により、リガンドL−NIBC修飾された金ナノ粒子が、
約520nmに吸収ピークを有したことを示している。その吸収ピークの位置は、粒度と関連している。粒度が3.6nmである場合に、UV吸収ピークは516nmに現れ、粒度が6.0nmである場合に、UV吸収ピークは517nmに現れ、粒度が10.1nmである場合に、UV吸収ピークは520nmに現れ、そして粒度が18.2nmである場合に、その吸収ピークは523nmに現れる。上記4つの試料のいずれも、560nmより高いところに吸収ピークを一切有しない。

0052

図2は、実施形態2における異なる粒度を有する3つのリガンドL−NIBC修飾されたAuC試料のUV吸収スペクトルにおいて、520nmでの表面プラズモン効果の吸収ピークが消失し、2つの明らかな吸収ピークが560nmより高いところに出現し、吸収ピークの位置は、AuCの粒度と共に僅かに変化したことを示している。この理由は、AuCが面心立方構造の崩壊のため分子様の特性を示し、それによりAuCの状態の密度不連続性がもたらされ、エネルギー準位が分裂し、プラズモン共鳴効果が消失し、長波長方向に新たな吸収ピークが現れるからである。実施形態2において得られた異なる粒度における3つの粉末試料は、全てリガンド修飾されたAuCであると結論付けることができた。

0053

3.フーリエ変換赤外分光分析法
赤外スペクトルは、Bruker社により製造されたVERTEX80Vフーリエ変換赤外分光計において固体粉末高真空全反射モードで測定した。スキャン範囲は4000cm−1〜400cm−1であり、スキャン数は64である。実施形態2において製造されたL−NIBC修飾されたAuC試料を例にとると、該試験試料は、3つの異なる粒度を有するL−NIBC修飾されたAuC乾燥粉末であり、コントロール試料は、純粋なL−NIBC粉末であった。それらの結果を図3に示す。

0054

図3は、種々の粒度を有するL−NIBC修飾されたAuCの赤外スペクトルを示す。純粋なL−NIBC(先頭の曲線)と比較すると、種々の粒度を有するL−NIBC修飾されたAuCのS−H伸縮振動の全ては2500cm−1〜2600cm−1で完全に消失したが、一方で、L−NIBCのその他の特徴的なピークは依然として観察されるため、L−NIBC分子は、Au−S結合を介してAuCの表面にうまくつながっていることが分かる。その図は、リガンド修飾されたAuCの赤外スペクトルがそのサイズと無関係であることも示している。

0055

その他のリガンドYにより修飾されたAuCを、上記方法と同様であるが、但し、溶液Bの溶剤、HAuCl4とリガンドYとの間の供給比、反応時間、及び添加されるNaBH4の量が僅かに調節された方法により製造した。例えば、L−システイン、D−システイン、N−イソブチリル−L−システイン(L−NIBC)又はN−イソブチリル−D−システイン(D−NIBC)がリガンドYとして使用される場合に、溶剤として酢酸が選択され、ジペプチドCR、ジペプチドRC又は1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリンがリガンドYとして使用される場合に、溶剤として水が選択される等であり、その他の工程は同様であるため、それらは本明細書では詳細に記載しないものとする。

0056

本発明では、上記方法により一連のリガンド修飾されたAuCが製造及び取得された。リガンド及び製造方法のパラメータを、表1に示す。

0057

0058

表1に列挙される実施形態における試料は、上記方法により確認される。図7図11は、リガンドCR、RC、1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン(略語:Cap)、GSH、及びD−NIBCで修飾されたAuCのUVスペクトル図7図11におけるパネルA)、赤外スペクトル(図7図11におけるパネルB)、透過型電子顕微鏡(TEM)像(図7図11におけるパネルC)、及び粒度分布図7図11におけるパネルD)である。

0059

それらの結果は、表1から得られる種々のリガンドで修飾されたAuCの直径が全て3nmより小さいことを示している。紫外スペクトルはまた520±20nmでのピークの
消失と、560nmより高いところでの吸収ピークの出現を示す。この吸収ピークの位置は、リガンド及び粒度とともに僅かに変化するにすぎない。一方で、フーリエ変換赤外スペクトルはまた、リガンドのチオールの赤外吸収ピーク図7図11のパネルBにおける点線の間)の消失を示すが、一方でその他の赤外の特徴的なピークは全て維持されるので、全てのリガンド分子はAuCの表面にうまくつながっており、かつ本発明では、表1中に列挙されるリガンドで修飾されたAuCを得ることに成功したことが示唆される。

0060

実施形態3:in vitroでのAβの凝集動態実験
この実施形態は、Aβの凝集動態のin vitro実験によりリガンド修飾されたAuCの機能を確認し、リガンド修飾された金ナノ粒子及びリガンド分子の独立した使用によるAβの凝集動態に対する効果を比較することで、その機能がリガンドではなくAuCに起因するものであることが分かった。それらの実験では、Aβ(1−40)の凝集及び線維化の動態を特性評価するためにThT蛍光標識法が使用された。

0061

チオフラビンT略記:ThT)は、アミロイド線維を特異的に染色するための色素である。ThTをポリペプチド又はタンパク質の単量体と一緒にインキュベートする場合に、その蛍光はほぼ変化しない。ThTが線維構造を有するアミロイドポリペプチド又はタンパク質に出くわすと、そのアミロイドポリペプチド又はタンパク質と直ちに結合し、その蛍光強度指数関数的に増加することとなる。まさにこの特性のため、ThTは、ペプチド又はタンパク質のアミロイドーシスをモニタリングするためのマーカーとして広く使用されている。Aβ(1−40)の線維化過程はまた、核形成に制御される重合過程でもある。したがって、ThT蛍光標識法により測定されるAβ(1−40)線維の成長曲線は、主として3つの段階、すなわち初期段階成長段階、及びプラットフォーム段階に分けられる。初期段階は、主としてAβ(1−40)がコンフォメーション遷移を受けることでミスフォールディングが形成され、その後に凝集及び核形成する段階である。成長段階は、Aβ(1−40)単量体がオリゴマーのコア上に軸方向に沿って蓄積することで、線維を形成し、素早く成長する段階である。プラットフォーム段階は、全てのAβ(1−40)分子が完全な長い線維を形成している段階、すなわち線維がもはや成長しない段階である。ThT蛍光標識法は、Aβ(1−40)分子の線維性凝集の動態的過程を簡便にモニタリングすることができる。

0062

1)Aβ(1−40)単量体の前処理
アミロイドポリペプチドAβ(1−40)の凍結乾燥粉末(Invitrogen Corp.社)を、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中に溶解させることで、1g/LのAβ(1−40)溶液を得て、その溶液を、密封後に室温で2時間〜4時間にわたりインキュベートし、次いでHFIPを、高純度窒素(N2、99.9%)を用いて適切な流速ドラフトチャンバ内にて風乾(約1時間にわたり)させた。最後に、乾燥されたAβ(1−40)を200μLのDMSO中に溶解させ、密封後にその溶液を、後に使用するために1週間以内にわたり冷凍機中で−20℃に保った。使用前に、アミロイドポリペプチドのDMSO溶液を、Aβ(1−40)の濃度が20μMに達するまで、大量のリン酸緩衝溶液PBS、10mM、pH=7.4)で希釈することで、Aβ(1−40)PBS溶液を得た。実験のための全てのAβ(1−40)PBS溶液は新たに調製された。

0063

2)試料の調製及び検出
リガンド修飾されたAuC及び金ナノ粒子を、それぞれ20μMのAβ(1−40)PBSに添加することで、種々の濃度及び種々の粒度の、種々のリガンドで修飾されたAuCの試料を形成し、相応して種々のリガンドで修飾された金ナノ粒子の試料を形成した。それらの試料を、96ウェルプレート中で37℃においてThT蛍光標識法によって連続的にインキュベートし、蛍光強度をマイクロプレートリーダにより10分毎に1回モニタリングした。Aβ(1−40)凝集の動態過程を、ThTの蛍光強度の変化によって特性
評価した。

0064

実施形態2においてそれぞれ製造された2.6nm、1.8nm、及び1.1nmの粒度を有する3つのサイズのL−NIBC修飾されたAuCを、実験群として使用した。それぞれ18.2nm、10.1nm、6.0nm、及び3.6nmの粒度を有する4つのサイズのL−NIBC修飾された金ナノ粒子、並びにAuC又は金ナノ粒子と結合されていないL−NIBC分子を、コントロール群として使用した。全てのサイズのAuC又は金ナノ粒子は、それぞれ6つの濃度で存在し、それぞれ0ppm(ブランクコントロールとしてAuC、金ナノ粒子、又はL−NIBCを含有していない)、0.1ppm、1.0ppm、5.0ppm、10.0ppm、及び20.0ppmであった。それぞれ1.0ppm及び10.0ppmである2つの濃度でL−NIBC分子を使用した。

0065

それらの結果を図4及び図5に示す。

0066

図4は、それぞれの実験群及びコントロール群を48時間にわたり同時インキュベートした後のAβ(1−40)のAFMトポグラフィーを示す。パネルAは、Aβ(1−40)を単独で48時間にわたりインキュベートした後のAFMトポグラフィーである。パネルBは、Aβ(1−40)をL−NIBCと一緒に48時間にわたり同時インキュベートした後のAFMトポグラフィーである。パネルC及びパネルDは、Aβ(1−40)をそれぞれ6.0nm及び3.6nmの平均粒度を有する金ナノ粒子(L−NIBC修飾されている)と一緒に48時間にわたり同時インキュベートした後のAFMトポグラフィーである。そして、パネルEは、Aβ(1−40)を1.8nmの平均粒度におけるAuC(L−NIBC修飾されている)と一緒に48時間にわたり同時インキュベートした後のAFMトポグラフィーである。

0067

図5において、L−NIBCの種々の濃度におけるAβ(1−40)のアミロイドーシス動態曲線がパネルAに示されている。それぞれ18.2nm、10.1nm、6.0nm、及び3.6nmのサイズを有する金ナノ粒子の種々の濃度におけるAβ(1−40)のアミロイドーシス動態曲線がパネルB〜パネルEに示されている。それぞれ2.6nm、1.8nm、及び1.1nmのサイズを有するAuCの種々の濃度におけるAβ(1−40)のアミロイドーシス動態曲線がパネルF〜パネルHに示されている。パネルA〜パネルHにおけるAβのアミロイドーシス動態曲線は、Aβ(1−40)を種々の濃度において金ナノ粒子又はAuCと同時インキュベートした場合の曲線であり、□は0ppm(すなわち、金ナノ粒子及びAuCなし)を表し、○は0.1ppmを表し、△は1ppmを表し、▽は5ppmを表し、◇は10ppmを表し、☆は20ppmを表した。

0068

図4から、コントロールとしてAβ線維がパネルA中に張り巡らされており、パネルBも同じであり、線維が或る程度は減少したが、長い線維は依然としてパネルC中に見ることができ、長い線維は存在しないが、多くのAβの短い線維が依然としてパネルD中に存在することが見て取れる。L−NIBCはAβ(1−40)線維の形成に対して明らかな効果を有しないことが示された。L−NIBC修飾された小さなサイズの金ナノ粒子の添加は、Aβ(1−40)のアミロイドーシス過程を遅延させ得るが、完全に阻害し得なかった。それというのも、上記短い線維は、更なる時間後に長い線維へと成長し続けることとなるからである。図4のパネルEには、長い線維も短い線維も存在しないので、L−NIBC修飾されたAuCはAβ(1−40)のアミロイドーシス過程を完全に阻害し得ることが示唆される。

0069

図4は、定性的実験であるが、図5は、定量的実験である。図5の結果は、L−NIBCの添加が、Aβ(1−40)アミロイドーシスの動態に明らかな効果を有さず(図5のパネルA)、粒子直径が10.1nm以上である場合の金ナノ粒子については、L−NI
BC修飾された金ナノ粒子の添加がAβの凝集動態の成長段階及びプラットフォーム段階の両方を前倒すので(金ナノ粒子の濃度が20ppmである場合に、Aβの凝集動態の成長段階は第12時間目まで前倒され、そしてプラットフォーム段階は第16時間目まで前倒された)、L−NIBC修飾された金ナノ粒子はAβの凝集を加速させ得ることが示唆され(図5のパネルB及びパネルC)、金ナノ粒子の直径が6.0nm以下である場合には(図5のパネルD及びパネルE)、Aβの凝集の開始時間が遅延され得るので(L−NIBC修飾された金ナノ粒子の濃度が20ppmである場合に、Aβの凝集動態の成長段階は第54時間目まで遅延された)、金ナノ粒子はAβの凝集に対して阻害効果を有することが示唆されることを示している。しかしながら、図5は、上記濃度が非常に高い(20.0ppm)としても、L−NIBC修飾された金ナノ粒子の添加は完全に阻害する(すなわち、成長段階は現れず、蛍光曲線は完全に平坦にする)ことができなかったことを示している。他方で、L−NIBC修飾された金ナノ粒子の添加後に、ThTの蛍光発光ピークは515nmに位置している一方で、L−NIBC修飾された金ナノ粒子のプラズモン共鳴吸収ピークは520nm近くに位置するので、ここで観察されたThT蛍光強度の減少は、該金ナノ粒子のThT蛍光に対するプラズモン共鳴効果の部分的クエンチングであり、L−NIBC修飾された金ナノ粒子のAβ(1−40)凝集に対する阻害効果によるものではないはずである。

0070

図5のパネルF〜パネルHは、全てのL−NIBC修飾されたAuCが、Aβの凝集を大幅に阻害し得た(成長段階の開始時間が延期された。L−NIBC修飾されたAuCの濃度が5ppmである場合に、20μMのAβの凝集動態における成長段階の開始時間が、50時間より後に遅延され得た)ことを示している。L−NIBC修飾されたAuCの濃度が10ppm以上である場合に、Aβの凝集は、完全に阻害され得た(成長段階は現れず、蛍光曲線は完全に平坦であった)。完全な阻害のために必要とされるL−NIBC修飾されたAuCの最小濃度は、リガンド型及びAuCの直径に関連している。1.1nm、1.8nm、及び2.6nmのサイズを有するL−NIBC修飾されたAuCの最小濃度は、それぞれ5.0ppm、5.0ppm、及び10.0ppmであった。さらに、L−NIBC修飾されたAuCはプラズモン共鳴効果を有しないので、それらはThT蛍光に対してクエンチング効果を有しない。したがって、ここで観察される蛍光強度における減少は、もっぱらL−NIBC修飾されたAuCのAβ(1−40)凝集に対する阻害効果によるものであった。図5定量的結果は、図4の定性的結果とよく合致している。

0071

この実験は、L−NIBC修飾された金ナノ粒子のサイズが6.0nm以下である場合に、該金ナノ粒子は、Aβの凝集及び線維化に対して一定の阻害効果を有するが、それは限定的であり、またL−NIBC修飾されたAuCは、Aβの凝集及び線維化を完全に阻害する機能を有することを示している。L−NIBC分子自体はAβの凝集及び線維化に影響を及ぼし得ないので(図4のパネルB及び図5のパネルAの点からみて)、この機能はAuCに起因するものであり、L−NIBCリガンドに起因するものではない。このことは、本発明により定義されるAuC含有物質として分類することができる、Aβの凝集及び線維化に関連する疾患のための医薬を形作るための基礎を成す。

0072

また、この実施形態により、表1に列挙されるその他のリガンドで修飾されたAuCの機能が確認される。例えば、図12のパネルA〜パネルHは、CR、N−アセチル−L−システイン(L−NAC)、GSH、1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン(Cap)、D−NIBC、RC又はL−システイン及びD−システインで修飾されたAuC(用量は10ppmである)の、Aβ(1−40)の凝集及び線維化に対する阻害効果を示している。同様の現象が、種々のリガンドで修飾されたAuCについて観察され、同じ結論となり得る。これらのリガンド自体は、Aβの凝集及び線維化に影響を及ぼすことができず、3nmより大きいサイズを有するリガンド修飾された金ナノ粒子は、Aβの凝集及び線維化に対して限られた阻害効果しか有さず、
そしてより大きい金ナノ粒子は、Aβの凝集及び線維化の促進さえもするが、しかしながら、リガンド修飾されたAuCは、Aβの凝集及び線維化に対して優れた阻害効果を有し、かつその濃度が5ppm〜10ppmを上回る場合に、完全な阻害のために必要とされる最小濃度は、リガンド及びAuCの粒度に伴い僅かに変動するが、完全な阻害効果が達成され得る。同様に、これらのリガンド修飾されたAuCは、本発明において定義されるAuC含有物質に分類される。

0073

実施形態4:Aβ誘導されたAD細胞モデルの実験
細胞生存性を、この実施形態の実験における指標として使用した。CCK−8法の試験結果により、リガンド修飾されたAuC又は金ナノ粒子試料のAβ(1−40)の毒性に対する効果を反映し、リガンド修飾されたAuC又は金ナノ粒子が、アミロイドタンパク質のミスフォールディングの病因に対する神経保護効果を有するかどうかが示された。その実験で使用される細胞は、SH−SY5Y神経芽腫細胞系統であった。Aβ誘導されたAD細胞モデルは、文献(R. Liu, H. Barkhordarian, S. Emadi, C. B. Park, M. R. Sierks, Neurobiology of Disease 2005, 20, 74)での記載に従って樹立した。具体的な方法:
1)対数増殖期におけるSH−sy5y細胞(細胞は6世代まで継代培養した)を、完全培地MEM+10%FBS+1%ペニシリンストレプトマイシン)で希釈して、5×104/mLの密度で細胞懸濁液を得た。その懸濁液を96ウェルプレートに1ウェル当たり200μLで接種し、5%CO2を有するインキュベーター中にて37℃で培養した。細胞がウェルに接着されたときに、試料を添加した。

0074

2)それぞれ種々の粒度並びに0.04ppm、0.4ppm、4ppm、20ppm、40ppm及び80ppmの濃度の、維持培地(MEM+2%FBS+1%ペニシリン−ストレプトマイシン)により溶解された100μLのリガンド修飾されたAuC試料又はリガンド修飾された金ナノ粒子試料を、工程1)から得られたインキュベートされた懸濁液中に添加した。インキュベーター中で2時間にわたりインキュベートした後に、100μLの80μMのAβ(1−40)を添加し、次いでその混合物をインキュベーター中で24時間にわたりインキュベートした。こうしてリガンド修飾されたAuC又はリガンド修飾された金ナノ粒子の最終濃度は、それぞれ0.01ppm、0.1ppm、1ppm、5ppm、10ppm、及び20ppmであったが、Aβ(1−40)の最終濃度は、20μMであった。一方で、以下の群が存在した:ブランクコントロール群は、SH−sy5y細胞を含まず、ネガティブコントロール群はSH−sy5y細胞を含むが、リガンド修飾されたAuC又はリガンド修飾された金ナノ粒子及びAβ(1−40)を含まず、細胞モデルコントロール群はSH−sy5y細胞及びAβ(1−40)(最終濃度は20μMであった)だけを含み、そしてリガンドコントロール群はSH−sy5y細胞、Aβ(1−40)(最終濃度は20μMであった)及びL−NIBC(最終濃度は20ppmであった)を含んだ。培養培地を除去し、10%CCK−8を含有する維持培地(MEM)を100μL/ウェルで添加し、4時間にわたりインキュベートし、それぞれのウェルの450nmでの吸光度を測定することで、リガンド修飾されたAuCのAβ(1−40)病変の予防効果及び治療効果が反映された。

0075

実施形態2におけるL−NIBC修飾されたAuCを例にとり、L−NIBC修飾された金ナノ粒子をAuCと比較した。それらの結果を図6に示す。

0076

図6のパネルA〜パネルCはそれぞれ、1.1nm、1.8nm、又は2.6nmの粒度を有するL−NIBC修飾されたAuCの、種々の濃度でのAβ誘導されたAD細胞モデルにおける細胞生存性に対する効果を示し、パネルD〜パネルFはそれぞれ、3.6nm、6.0nm、又は10.1nmの粒度を有するL−NIBC修飾された金ナノ粒子の、種々の濃度でのAβ誘導されたAD細胞モデルの細胞生存性に対する効果を示す。

0077

図6に示されるように、L−NIBC単独の添加は、細胞生存性を改善しなかった。種々のサイズ(平均サイズは、それぞれ1.1nm、1.8nm、及び2.6nmであった)を有するL−NIBC修飾されたAuCは、Aβ誘導AD細胞モデルにおいて、非常に低い用量(例えば0.1ppm〜1ppm)でさえも、細胞生存性をほぼ60%から95%超へと高めた(図6のパネルA〜パネルCにおいて、P値は全て0.05未満であった)。3.6nmの平均直径におけるL−NIBC修飾された金ナノ粒子は、AD細胞モデルにおいて濃度の増加に伴い或る程度は細胞生存性を高めたが(図6のパネルD)、明白には高めなかった(P>0.05)。それぞれ6.0nm及び10.1nmの平均直径におけるL−NIBC修飾された金ナノ粒子は、細胞生存性に対する効果を有しなかった(図6のパネルE及びパネルF)。上記結果により、L−NIBC修飾されたAuCは、Aβ誘導されたAD細胞モデルにおいて顕著な薬効を有するが、L−NIBC修飾された金ナノ粒子は、明らかな効力を有しないことが示された。

0078

様々なサイズにおける表1に列挙されるその他のリガンドで修飾されたAuCでの実験を、この実施形態において実施した。それらの結果によっても、リガンド修飾されたAuCが、Aβ誘導されたAD細胞モデルにおいて細胞生存性を大幅に改善することが示された。種々のリガンドで修飾されたAuCは、少なくとも細胞モデルのレベルでADに対して優れた治療効果を有し、それは本発明において定義されるAuC含有物質に分類することができ、そしてAD治療のために使用することができることが示された。

0079

実施形態5:ADトランスジェニックマウスモデルの実験
実験1:
1)表1に列挙されるリガンドで修飾されたAuCをそれぞれ1.0g秤量し、水100mL中にストック溶液として溶解させ、後で使用するために4℃で貯蔵した。小容量のストック溶液を取り、使用前に水中で希釈した。

0080

2)180匹のB6/J−Tg(APPswe,PSEN1de9)85Dbo/MmNju系統のトランスジェニックマウス(南京大学のモデル動物研究センターから購入)を、コントロール群、低用量群、及び高用量群を含む3つの群に1群当たり60匹のマウスで無作為に分けた。マウスが100日齢となったときに、コントロール群内のマウスには通常通りに毎日給餌し、低用量群内のマウスには1日につき水中の0.5g/LのAuCを200μLで経口投与し、そして高用量群内のマウスには1日につき水中の2g/LのAuCを200μLで経口投与した。

0081

3)コントロール群内、低用量群内、及び高用量群内のマウスをそれぞれ7つの集団に無作為に分けた。マウスがそれぞれ140日齢、160日齢、180日齢、200日齢、230日齢、260日齢、及び290日齢となったときに、迷路実験、オープンフィールド実験、及び新奇物体認識実験を、マウスの学習行動及び記憶行動における変化を研究するために採用した。最初の4つの集団においては、各群のマウスは6匹であり、最後の3つの集団においては、各群のマウスは6匹〜8匹である(マウスの給餌過程で一定の死亡率があることを考慮して、以下同様)。

0082

4)上記の各々の集団のマウスの行動研究の後に、血中のAβの含量を検出した。血液は眼窩静脈叢から採取し、Aβの含量及びAβの凝集を、血清Elisa法により検出した。

0083

5)上記各々の集団のマウスの血中のAβの含量を検出した後に、海馬内に分布しているAβアミロイド沈着を検出した。上記マウスを、眼血を得た後に麻酔し、心臓灌流を介して固定した。マウスの全脳採集し、スクロース中で勾配により沈降させた。次いで脳
凍結させ、切片にした。海馬内のAβアミロイド沈着の分布を、免疫組織化学法により調べた。

0084

それらの結果により、本発明において提供されるリガンド修飾されたAuCが、ADトランスジェニックマウスの認知行動を大幅に改善することができ、脳内の老人斑の形成及び疾患の発生を抑え得るため、それはADを治療するためにAuC含有物質として使用され得ることが示された。

0085

実験2:
1. 表1に列挙されるリガンドで修飾されたAuCをそれぞれ1.0g秤量し、水100mL中にストック溶液として溶解させ、後で使用するために4℃で貯蔵した。小容量のストック溶液を取り、使用前に水中で希釈した。該ストック溶液は、2週間に1回調製した。

0086

2. 90匹のB6/J−Tg(APPswe,PSEN1de9)85Dbo/MmNju系統のトランスジェニックマウス(南京大学のモデル動物研究センターから購入)を、3つの群、すなわちモデルコントロール群、低用量群、及び高用量群に1群につき30匹のマウスで無作為に分けた(この系統のトランスジェニックマウスは給餌過程において約30%の死亡率を有することを考慮して、この実験の終わりに十分なマウスを保証するために、この実験の終わりよりも多くのマウスが初期に存在した)。マウスが100日齢になったときに、モデルコントロール群内のマウスには通常通りに毎日給餌し、低用量群内及び高用量群内のマウスには2日に1回で腹腔内注射により、それぞれ5mg/体重kg及び20mg/体重kgの用量でAuC溶液を経口投与した。

0087

3.マウスの認知行動を、水迷路実験を使用して試験した。モリス水迷路(MWM)実験は、試験される動物を泳がせて、水中に隠れたプラットフォームを見つけるように学習させるものである。MWMは主として、試験される動物の空間位置及び方向知覚学習能力及び記憶能力を試験するために使用され、AD医薬の開発及び評価の研究において広く採用されている。逃避潜時がより短いこと、プラットフォームの除去後にそこを横切る回数がより多いこと、対象となる四分円中での遊泳距離がより長いこと、そしてマウスが対象となる四分円中に留まる時間がより長いことは、該マウスが空間位置及び方向知覚のより良い記憶能力を有することを意味する。投与から150日後に、それぞれのマウスの行動を、モリス水迷路実験で試験した。この実験方法は、文献(C. V. Vorhees, M. T. Williams, Nature Protocols 2006, 1, 848)を参照している。詳細は以下の通りであった。

0088

(1)位置付けナビゲーション実験(Positioning navigation experiment):MWM
試験システムは、円形プール及び自動型ビデオ及び分析ステムからなっていた。プールの上方にあるカメラは、コンピュータに接続されていた(図13に示される)。水迷路は、直径120cm及び高さ60cmの円形プール、並びに直径9cmのプラットフォームからなっていた。液体水準はプラットフォームより0.5cm高く、水温は22±0.5℃であった。白色色素を使用して、水を乳白色に染めた。該位置付け実験を使用することで、水迷路中のマウスの学習能力及び記憶能力を測定し、それを4日間にわたり継続した。図13に示されるように、水迷路を東(E)、西(W)、(S)及び(N)の4つの方向で十字形として4つの四分円に分けた。プラットフォームは、SW四分円の真ん中に位置しており、その位置は実験を通して固定した。トレーニング中に、マウスは、頭をプール壁に向けて内壁の近くで、異なる四分円において1/2ラジアンから優しく水中に入れた。マウスが隠れたプラットフォームに登るのに費やした時間(逃避潜時)を、カメラ追跡システムにより記録するか、又は記録時間が60秒間に達したら実験を止めた。マウスは、プラットフォーム上に登った後30秒間にわたりそのプラットフォーム上で
留まらせた。マウスが60秒間以内にプラットフォームを見つけられなかった場合に(この場合に逃避潜時は60秒として記録した)、実験者はそのマウスをプラットフォームに登るよう誘導し、30秒間にわたりプラットフォーム上で留まらせるものとする。実験後に、全てのマウスを取り出し、優しくぬぐって乾かした。それぞれのマウスは、4連日にわたり1日に4回、トレーニング期間の合間に15分〜20分の間隔を設けてトレーニングした。

0089

(2)空間探索試験:第4日目のトレーニングが完了した後に、第5日目にプラットフォームを除去し、マウスを、プール壁に向け、NE円弧中点(プラットフォームから最も遠い地点)から優しく水中に入れ、マウスの60秒間の運動軌道をカメラにより記録し、そしてマウスがプラットフォームを横切る回数、対象となる四分円中に留まる時間、及び対象となる四分円中での遊泳距離を、ソフトウェアにより分析した。

0090

4.免疫組織化学実験を使用して、海馬及び大脳皮質中のAβ(1−40)及びAβ(1−42)のアミロイド沈着の分布を検出した。大脳皮質及び海馬におけるニューロンの外側のAβの病理学的沈着は、ADの主要な病理学的特徴である。なかでも、Aβ(1−40)及びAβ(1−42)は、脳内の老人斑の重要な成分であり、それらは神経毒性であり、進行性認知機能不全及び記憶喪失を引き起こし得る。この実験において、海馬及び大脳皮質におけるAβ(1−40)斑及びAβ(1−42)斑の形成の変化は、免疫組織化学法により調査した。

0091

具体的な方法:マウスに100日間及び150日間にわたり連続的に投与した後に、10匹〜12匹のマウスを各々の群から取り出して、海馬及び大脳皮質の免疫組織学法を行った。ここで、150日間の投与を行ったマウスは、MWM実験を終えたマウスであった。該マウスに、5%の抱水クロラール(10μL/g)の腹腔内注射により麻酔をし、四肢実験台上で固定し、開胸することで、心臓を完全に露出させた。開胸術の間に肝臓を切らないように注意する。左心室を、まずは50mLの0.1mol/LのPBSで5分間にわたり洗浄して血液を除去し、次いで4%のパラホルムアルデヒドを含む0.1mol/LのPBSを使用して、6分間にわたり灌流固定した。灌流固定の後に、脳を取り出し、それを4℃で4%のパラホルムアルデヒド中に入れ、一晩固定した。それらの組織を、10%、20%、及び30%のスクロース溶液を勾配により順番に用いて脱水し、後で使用するために−80℃で貯蔵した。それらの組織をパラフィン包埋した。中脳、海馬、及び大脳皮質(8μm厚)を、マウスの脳マップを参照してスライスし、それを免疫組織化学染色のために使用した。該工程は以下の通りである。凍結した8μm厚のスライスを30分間にわたり室温に保ち、4℃のアセトン中で20分間にわたり固定し、PBSで3回(毎回5分間)にわたり洗浄し、次いでペルオキシダーゼ活性を無くすために3%のH2O2中で10分間にわたりインキュベートした。PBSで3回(1回につき5分間)洗浄した後に、それらのスライスを、10%の正常ヤギ血清を用いて室温で40分間にわたりブロッキングした(Aβ(1−42)免疫組織化学法のために使用されるスライスは、ブロッキング前に10%のギ酸中で10分間にわたりインキュベートして、抗原活性を回復させた)。その血清を捨て、抗Aβ(1−40)(ab20068、1:20希釈)又は抗Aβ(1−42)作業液(ab12267、1:200希釈)を、上記スライスへと添加し、それらを室温で2時間にわたりインキュベートし、PBSで3回(1回につき5分間)洗浄した。セイヨウワサビ酵素標識されたストレプトアビジン(PBSで希釈)を、二次抗体作業溶液滴加し、室温で1時間にわたりインキュベートした。PBSで3回(1回につき5分間)洗浄した後に、硫酸ニッケル増感されたDAB青色反応法を、発色のために10分間にわたり採用した。陽性生成物が暗青色で、バックグラウンド澄明となったら、それを蒸留水で3回にわたりすすいで、発色を止めた。ヘマトキシリンで1分間にわたり対比染色した後に、それを水道水すすぎ換気された場所で乾燥させ、中性ガムを用いて封止した。全海馬及び大脳皮質中のAβ斑の数を観察し、共焦点顕微
鏡により計数した。各々の試料は、左心室及び右心室の両方を含む2つのスライスを並行試料として含んでいた。統計分析のために平均値を計算した。全てのデータをSPSSソフトウェア(SPSS 21)により処理し、それらのt検定又は1元配置分散分析を行った。P<0.05が、統計学的に有意差があることを意味した。

0092

実施形態2における1.8nmの平均サイズを有するL−NIBC修飾されたAuCを例にとり、投与から150日後の水迷路実験の結果を図14に示した。それらの結果により、モデルコントロール群並びに高用量群及び低用量群におけるマウス間で、位置付けナビゲーション試験の1日目〜2日目に逃避潜時における統計的な差がないことが示された(P>0.05、n=10匹〜12匹/群)(図14のパネルA)。トレーニング時間が増えると、高用量群におけるマウスの逃避潜時は、3日目及び4日目にモデル群における逃避潜時よりも明らかに短くなり(P<0.01及びP<0.05)、そして低用量群における逃避潜時は、モデル群における逃避潜時より短くなったが、統計学的な差はなかった(P>0.05、図14のパネルAを参照)。マウスの位置付けナビゲーション実験の完了後に、プラットフォームを取り除き、空間探索実験(space search experiment)を
開始した。それらの結果により、モデルコントロール群内のマウスと比較して、高用量群内のマウスが、プラットフォームを横切る回数及び対象となる四分円中での遊泳距離において大幅な増加を示し(P<0.05)、そして対象となる四分円内に留まる時間もまた大幅な増加を示す(P=0.05)ことが示された。モデルコントロール群内のマウスと比較して、低用量群内のマウスは、プラットフォームを横切る回数、対象となる四分円中での遊泳距離、及び対象となる四分円内に留まる時間において増加を示したが、有意差はなかった(P>0.05)(図14のパネルB〜パネルD)。上記結果により、AuCの150日間の投与後に、AuCは、APP/PS1マウスが空間位置及び方向知覚を学習及び記憶する能力を大幅に改善することが示された。そしてこの効果は用量依存的であった。

0093

海馬及び大脳皮質中のAβ(1−40)及びAβ(1−42)のアミロイド沈着の分布を検出するための免疫組織化学実験の結果を、図15図18に示す。

0094

図15のパネルA、パネルB、及びパネルCは、投与の第100日目における高用量群、低用量群、及びモデルコントロール群における海馬及び大脳皮質のAβ(1−40)の典型的な免疫組織化学的スライスの結果であった。図15のパネルDは、統計学的結果であった。それらの実験結果により、モデルコントロール群と比較して、高用量群内のマウスが、投与の第100日目に海馬においてAβ(1−40)斑の大幅な減少を伴い(44.6±12.2%、P<0.05)、大脳皮質においてはAβ(1−40)斑の大幅な減少を伴わない(P>0.05)ことが示された。低用量群は、海馬及び大脳皮質におけるAβ(1−40)斑の形成に対して大きな効果を有しなかった(P>0.05)。図16は、Aβ(1−42)の対応する結果を示した。それにより、高用量での投与は、大脳皮質におけるAβ(1−42)斑の形成を大幅に減少させ得るが(61.5±11.4%だけ減少、P<0.05)、海馬においては大幅に減少させない(P>0.05)ことが示された。低用量での投与は、海馬及び大脳皮質におけるAβ(1−42)斑の形成に対して大きな効果を有しない(P>0.05)。これらの結果により、投与の第100日目に、AuCがAβ(1−40)斑及びAβ(1−42)斑の形成に対して大きな阻害効果を示し、この効果は明らかな用量依存的な関係を示すことが示された。

0095

投与時間及びマウスの齢の増加とともに、マウスの海馬及び大脳皮質におけるAβ(1−40)斑及びAβ(1−42)斑の形成は、投与100日と比較して、投与150日でのモデルコントロール群において大幅に増加した。具体的には、Aβ(1−40)は海馬において57.2±7.2%増加し(P<0.05)、大脳皮質において49.1±19.6%増加し(P<0.05)、そしてAβ(1−42)は海馬において74.4±7.
0%増加し(P<0.05)、大脳皮質において65±11.1%増加した(P<0.05)。モデルマウスがより高齢になるほど、記憶機能及び認知機能に対する影響はより大きくなるであろうことが示唆された。図17のパネルA、パネルB、及びパネルCは、それぞれ投与の第150日目における高用量群、低用量群、及びモデルコントロール群における海馬及び大脳皮質のAβ(1−40)の典型的な免疫組織化学的スライスの結果であった。図17のパネルDは、統計学的結果であった。それらの結果により、高用量群においては、Aβ(1−40)は、マウスの海馬及び大脳皮質の両方において明らかに減少し(海馬において59.0±11.1%(P<0.05)だけ減少し、かつ大脳皮質において36.4±4.5%(P<0.05)だけ減少した)、一方で、低用量での投与は、海馬においてAβ(1−40)斑の形成に対して大きな効果を有しなかったが(P>0.05)、大脳皮質においてはAβ(1−40)斑は大幅に減少した(26.9±2.1%(P<0.05)ことが示された。AuCは、第150日目にAβ(1−40)斑の形成に対して大幅な阻害効果を有することが示された。この効果はまた、用量依存的な関係性を示した。さらに、SPSSソフトウェアを使用して、150日目の水迷路実験におけるAβ(1−40)斑の数とプラットフォームを横切る回数との間の相関を分析した。その分析により、海馬及び大脳皮質中のAβ(1−40)斑の数が、プラットフォームを横切る回数と大きな負の相関を有することが明らかになった(海馬:R=−0.848、P<0.01、大脳皮質:R=−0.802、P<0.05)。さらに、この結果により、AuC投与により誘導された海馬及び大脳皮質中のAβ(1−40)斑の減少と、AuC投与により誘導されたマウスの記憶能力及び学習能力の改善との間の相関が確認された。

0096

図18は、150日のAuC投与によるAβ(1−42)の対応する結果を示す。それらの結果により、高用量でのAuC投与は、海馬及び大脳皮質におけるAβ(1−42)斑の形成を明らかに阻害することが示された(海馬において51.1±6.7%(P<0.05)だけ減少させ、大脳皮質において62.8±4.6%(P<0.05)だけ減少させた)。低用量での投与は、マウスの海馬及び大脳皮質におけるAβ(1−42)斑の形成に対して明らかな効果を有しなかった(P>0.05)。AuCは、第150日目にAβ(1−42)斑の形成に対して大きな阻害効果を有することが示された。この効果は、用量依存的な関係性を示した。SPSSによる相関統計分析により、海馬及び大脳皮質中のAβ(1−42)斑の数が、プラットフォームを横切る回数と大きな負の相関を有することが明らかになった(海馬:R=−0.794、P<0.05、大脳皮質:R=−0.802、P<0.05)。さらに、この結果により、AuC投与により誘導された海馬及び大脳皮質中のAβ(1−42)斑の減少と、AuC投与により誘導されたマウスの記憶能力及び学習能力の改善との間の相関が確認された。

0097

まとめると、AuCは、ADモデルマウスの認知行動を大幅に改善し、海馬及び大脳皮質におけるAβ(1−40)斑及びAβ(1−42)斑の形成を阻害することができ、したがってAuCは、病気のマウスの病状の発症を抑え、AuC含有物質としてADの予防及び治療のために使用することができた。

0098

表1に列挙されるその他のリガンドで修飾されたAuCは同様の効果を有するので、それらは本明細書で詳細に記載しなかった。

0099

実施形態6:in vitroでのα−synの凝集動態の実験
この実施形態は、in vitroでのα−synの凝集動態実験によりリガンド修飾されたAuCの機能を確認し、それを、リガンド分子を単独で使用した場合のそのα−synの凝集動態に対する効果と比較し、こうしてその機能がリガンドではなくAuCに起因するものであることが実証された。

0100

チオフラビンT(略記:ThT)は、アミロイド線維を特異的に染色するための色素で
ある。ThTをポリペプチド又はタンパク質の単量体と一緒にインキュベートする場合に、その蛍光はそれほど変化しない。ThTが線維構造を有するアミロイドポリペプチド又はタンパク質に出くわすと、そのアミロイドポリペプチド又はタンパク質と直ちに結合し、その蛍光強度は指数関数的に増加することとなる。この理由のため、ThTは、ペプチド又はタンパク質のアミロイドーシスをモニタリングするためのマーカーとして広く使用されている。この実施形態は、AuCの存在下でのα−synの線維化凝集の動態的過程をモニタリングするためにThT蛍光標識法を利用する。具体的な実験方法は、以下の通りであった。

0101

α−syn単量体の前処理:α−synの凍結乾燥粉末(Bachem Corp.社)をHFIP中に溶解させて、1g/Lのα−syn溶液を得た。その溶液を、密封後に室温で2時間〜4時間にわたりインキュベートし、次いでHFIPを高純度窒素によりドラフトチャンバ内で風乾させた。最後に、乾燥されたα−synを200μLのDMSO中に溶解させ、密封後にその溶液を、後に使用するために1週間以内にわたり冷凍機中で−20℃に保った。使用前に、α−synのDMSO溶液を、α−synの濃度が20μMに達するまで、大量のリン酸緩衝溶液(PBS、10mM、pH=7.4)で希釈することで、α−synのPBS溶液を得た。その実験における全てのα−synのPBS溶液は新たに調製された。

0102

試料の調製及び検出:表1に列挙される種々の濃度におけるリガンド修飾されたAuCを、それぞれ35μMのα−synのPBS溶液に添加し、96ウェルプレート中で37℃においてThT蛍光標識法によって連続的にインキュベートし、蛍光強度をマイクロプレートリーダにより10分毎に1回モニタリングした。α−synの凝集の動態過程を、ThTの蛍光強度の変化によって特性評価した。実施形態2で製造された1.8nmの粒度を有するL−NIBC修飾されたAuCを、例えば実験群とした。AuCと結合されていないL−NIBC分子を、リガンドコントロール群として使用した。それぞれ0ppm(モデルコントロール群として、α−synのみを含み、AuC又はL−NIBCを含まない)、1.0ppm、5.0ppm、及び10.0ppmの4種の濃度のAuCを採用する。それぞれ1.0ppm及び10.0ppmである2つの濃度においてL−NIBC分子を使用した。

0103

それらの結果を図19に示した。それらの結果により、35μMのα−synの37℃でのインキュベート過程において、ThT標識された蛍光強度が第48時間目から迅速に増加することが示された。α−synの凝集及び線維化が起こったことが裏付けられた。これは、文献(V. N. Uversky, J. Li, P. Souillac, I. S. Millett, S. Doniach, R. Jakes, M. Geodert, A. L. Fink, Journal of Biological Chemistry 2002, 277, 11970)に報告される結果と合致していた。リガンドコントロール群の結果により、L−NIBCのみが使用されると、α−synの凝集の動態に対して明らかな効果を有しないことが示された(図19のパネルA)。AuCを低濃度(例えば1.0ppm及び5.0ppm)で添加した実験群において、ThT標識された蛍光強度は、AuCを添加しなかったモデルコントロール群及びリガンドコントロール群と比較して大幅に減少し、開始時間は明らかに遅延した(図19のパネルB)。AuCの添加は、α−synの凝集及び線維化を大幅に阻害し得ることが示唆された。AuC濃度が10ppmに達したときに、ThT標識された蛍光強度は、実験の168時間を通して一切増大することなくベースライン近くに留まった(図19のパネルB)。AuC濃度が十分に高い場合に、α−synの凝集及び線維化は完全に阻害され得ることが示唆された。

0104

この実験において、表1に列挙されるその他の種々のリガンドで修飾されたAuCも研究した。例えば、図19のパネルC〜パネルJでは、D−NIBC、CR、RC、1−[(2S)−2−メチル−3−チオール−1−オキソプロピル]−L−プロリン(Cap)
、GSH、N−アセチル−L−システイン(L−NAC)、L−システイン(L−Cys)及びD−システイン(D−Cys)で修飾されたAuC(用量は全て10ppmであった)の、α−synの凝集及び線維化に対する阻害効果が示された。種々のリガンドで修飾されたAuCについても同様の現象が観察され、同じ結論に達し得た。これらのリガンド自体は、α−synの凝集及び線維化に影響を及ぼし得ないが、リガンド修飾されたAuCは、α−synの凝集及び線維化に対して優れた阻害効果を有した。その濃度が10ppmに達した場合には、完全な阻害効果を全てが達成し得た。完全な阻害のために必要とされる最小濃度は、種々のリガンドで僅かに変動する。同様にこれらのリガンド修飾されたAuCは、本発明において定義されるAuC含有物質に分類された。表1に列挙されるその他のAuCは、同様の効果を有していた。α−synの凝集及び線維化の完全な阻害のために必要とされるAuCの濃度だけは異なっていた。それは詳細に記載しないこととする。

0105

実施形態7:MPP+誘導されたPD細胞(SH−sy5y)モデルの実験
実験1:
この実験は、細胞生存性を指標として使用する。CCK−8法から得られた試験結果は、リガンド修飾されたAuC又は金ナノ粒子の、PDのSH−sy5y神経細胞モデルにおけるMPP+(よく使用される神経毒)の毒性効果に対する抵抗効果を反映し、こうして、それらのPDに対する神経保護効果が裏付けられる。MPP+誘導されたPD細胞モデルは、文献(Cassarino, D S; Fall, C P; Swerdlow, R H; Smith, T S; Halvorsen, E
M; Miller, S W; Parks, J P; Parker, W D Jr; Bennett, J P Jr. Elevated reactive oxygen species and antioxidant enzyme activities in animal and cellular models of Parkinson's disease. Biochimica et biophysica acta.1997.1362.77-86)での記載に従って樹立される。具体的な方法は以下の通りであった。

0106

1)対数増殖期におけるSH−sy5y細胞を、完全培地で希釈して、5×104/mLの細胞密度で細胞懸濁液を得た。その懸濁液を96ウェルプレートに1ウェル当たり200μLで接種し、5%CO2を有するインキュベーター中にて37℃で培養した。細胞がウェルに接着されたときに、試料を添加した。

0107

2)種々の粒度及び種々の濃度を有する、100μLのリガンド修飾されたAuC試料(表1に列挙される)又はリガンド修飾された金ナノ粒子試料を、維持培地中に溶解させ、第1の群として添加して、最終濃度をそれぞれ0.01ppm、0.1ppm、1ppm、5ppm、10ppm、及び20ppmにした。第1の群は、投与群であった。リガンド修飾されたAuC又は金ナノ粒子での前処理の2時間後に、MPP+(最終濃度は1mMであった)を、それぞれ投与群及び細胞コントロール群に同時に添加し、ブランクコントロール群は、SH−sy5y細胞を含まない群であり、ネガティブコントロール群は、SH−sy5y細胞を含むが、AuC又は金ナノ粒子及びMPP+を含まない群であり、細胞コントロール群は、SH−sy5y細胞及び1mMのMPP+のみを含む群であり、そしてリガンドコントロール群は、SH−sy5y細胞及び1mMのMPP+並びに対応するリガンド分子(最終濃度は20ppmであった)を含む群であり、次いで全ての群における試料を、37℃で24時間にわたりインキュベートし、遠心分離することで、培養培地を除去し、10%のCCK−8を含有する100μLの維持培地を各々のウェル中に添加し、4時間にわたりインキュベートし続け、その後に各々のウェルの吸光度を450nmで測定することで、リガンド修飾されたAuCのMPP+病変に対する事前保護効果及び治癒効果が反映された。

0108

種々のリガンドで修飾されたAuC及び金ナノ粒子のための実験を実施するために同じ工程を採用した。それらの結果により、本発明において提供されるリガンド修飾されたAuCがPDに対して神経保護効果を有することが示された。この効果もリガンドではなく
AuCに起因するものであった。それらは、PDを抑えるためにAuC含有物質として使用することができる。

0109

実験2:
この実験は、細胞生存性を指標として使用する。CCK−8法から得られた試験結果は、リガンド修飾されたAuC又は金ナノ粒子の、PDのSH−sy5y神経細胞モデルにおけるMPP+(よく使用される神経毒)の毒性効果に対する抵抗効果を反映し、それらのPDに対する神経保護効果が裏付けられる。MPP+誘導されたPD細胞モデルは、参考文献(D. S. Cassarino, C.P. Fall, R. H. Swerdlow, T. S. Smith, E. M. Halvorsen, S. W. Miller, J. P. Parks, W. D. Jr. Parker, J. P. Jr. Bennett, Biochimica et Biophysica Acta 1997, 1362, 77)での記載に従って樹立される。具体的な方法:
1)対数増殖期におけるSH−sy5y細胞を、完全培地で希釈して、5×104/mLの細胞密度で細胞懸濁液を得た。その懸濁液を96ウェルプレートに1ウェル当たり200μLで接種し、5%CO2を有するインキュベーター中にて37℃で培養した。細胞がウェルに接着されたときに、試料を添加した。

0110

2)種々の粒度及び種々の濃度を有する、100μLのリガンド修飾されたAuC試料(表1に列挙される)又はリガンド修飾された金ナノ粒子試料を、維持培地中に溶解させ、第1の群として添加して、最終濃度をそれぞれ0.01ppm、0.1ppm、1ppm、5ppm、10ppm、及び20ppmにした。第1の群は、投与群であった。リガンド修飾されたAuC又は金ナノ粒子での前処理の2時間後に、MPP+(最終濃度は1mMであった)を、それぞれ投与群及び細胞コントロール群に同時に添加し、ブランクコントロール群は、SH−sy5y細胞を含まない群であり、ネガティブコントロール群は、SH−sy5y細胞を含むが、AuC又は金ナノ粒子及びMPP+を含まない群であり、細胞コントロール群は、SH−sy5y細胞及び1mMのMPP+のみを含む群であり、AuCコントロール群、そしてリガンドコントロール群は、SH−sy5y細胞及び1mMのMPP+並びに対応するリガンド分子(最終濃度は20ppmであった)を含む群であり、次いで全ての群における試料を、37℃で24時間にわたりインキュベートし、遠心分離することで、培養培地を除去し、10%のCCK−8を含有する100μLの維持培地を各々のウェル中に添加し、4時間にわたりインキュベートし続け、その後に各々のウェルの吸光度を450nmで測定することで、リガンド修飾されたAuCのMPP+病変に対する事前保護効果及び治癒効果が反映された。

0111

L−NIBC修飾されたAuC又は金ナノ粒子の実験結果は、例えば図20に示されるように解釈された。それらの結果により、培養の24時間後に、MPP+を有しない100mMのAuCを添加したAuCコントロール群の細胞生存性が、ブランクコントロール群(100%として定める)に対して108.5±7.1%に高まることが示されたので(P<0.01)、AuCは無毒性であることが示唆される。1mMのMPP+を添加したがAuCを有しないモデルコントロール群の細胞生存性は、65.1±4.0%に減少し(ブランクコントロール群に対して、P<0.01)、リガンドコントロール群の細胞生存性は61.5±3.8%であったので(ブランクコントロール群に対して、P<0.01)、リガンド単独は、MPP+誘導された細胞モデルの生存性を高めないことが示唆される。それぞれ1ppm、5ppm、10ppm及び40ppmのAuCを添加した投与群の細胞生存性は、それぞれ97.9±2.8%(モデルコントロール群に対して、P<0.01)、99.7±4.0%(モデルコントロール群に対して、P<0.001)、95.3±1.7%(モデルコントロール群に対して、P<0.01)、及び93.2±0.4%(モデルコントロール群に対して、P<0.01)に増大したので、本発明において提供されるリガンド修飾されたAuCがPDにおいて神経細胞に対して保護効果を有し、この効果もリガンドではなくAuCに起因するものであることが示唆される。他方で、同じリガンドを有する対応する金ナノ粒子は、全ての実験濃度でモデル細胞の生存性
の改善を補助しなかったので、金ナノ粒子は、PDの予防及び治療のための医薬として使用することはできないことが示される。

0112

表1に列挙される種々のリガンドで修飾されたAuCのための実験を実施するために同じ工程を採用した。それらの効果は同様であったので、それは本明細書では詳細に記載しないこととする。

0113

実施形態8:MPP+誘導されたPD細胞(PC12)モデルの実験
PC12細胞のMPP+(100mM)誘導されたアポトーシスのモデルを、フローサイトメトリー技術と組み合わせて使用して、この実験においてAuCのMPP+誘導された細胞の傷害及びアポトーシスに対する保護効果を観察した。具体的な方法:ブランクコントロール群は、MPP+及びAuCを添加しない群であり、MPP+モデル群は、MPP+のみを添加した群であり、AuCコントロール群は、AuCのみを添加した群であり、そして実験群は、MPP+及びAuCの両方を添加した群であった。実験群において、1.8nmの平均粒度を有するL−NIBC修飾されたAuCの溶液を、PC12細胞懸濁液(AuCの最終濃度は20ppmであった)に添加し、半時間後にMPP+を添加し、その混合物を24時間にわたりインキュベートし、Annexin V−FITC/PI細胞アポトーシス検出キット(Roche社から購入)及びFACSCaliburフロー
サイトメーターを使用して、細胞の増殖活性及びアポトーシスを検出し、そのデータを取得し、CellQuest Proにより分析した。

0114

それらの実験結果を図21に示した。細胞サイトメトリー検出結果により、細胞サイトメトリー検出において示されるように、MPP+と一緒に24時間にわたりインキュベートした後に、MPP+を添加しなかったブランクコントロール群の細胞アポトーシスのパーセントは、23.5%±2.8%であることが示された。20ppmのAuC単独を、PC12細胞と一緒に同時インキュベートした場合に、細胞アポトーシスのパーセントは、28.47±3.2%であり、ブランクコントロール群と有意差を示さなかったので、AuCは明らかな細胞毒性作用を有しないことが示唆される。MPP+モデル群の細胞アポトーシスのパーセントは、49.5±10.1%であり、それは、ブランクコントロール群と比較して大幅に増大した(P<0.001)。PC12細胞をAuCと一緒にMPP+の添加前に半時間にわたりインキュベートし、それらを24時間にわたり同時インキュベートした場合に、細胞アポトーシスのパーセントは、MPP+モデル群と比較して35.9±2.2%に減少し、細胞アポトーシスは大幅に減少した(P<0.05)。

0115

表1に列挙される種々のリガンドで修飾されたAuCのための実験を実施するために同じ工程を採用した。それらの効果は同様であったので、それは本明細書では詳細に記載しないこととする。

0116

実施形態7と実施形態8との結果を合わせることで、AuCが細胞生存性を効果的に改善し、MPP+誘導されたPD細胞モデルの細胞アポトーシスを大幅に阻害し得ることが示された。

0117

実施形態9:MPTP誘導されたPDマウスモデルの実験
実験1:
実験動物:8週齢の体重25g〜30gの80匹のC57bl/6雄マウス;各々のケージ中の3匹のマウスを全て、室温22℃〜27℃の環境下で、12時間の概日リズムで、飲食を自由にして飼育し、7日間にわたり馴化させた。

0118

MPTP誘導されたPDマウスモデル:マウスを、ブランクコントロール群、AuC正常コントロール群、MPTPモデル群、及びAuC処置群を含む4つの群に1群当たり2
0匹のマウスで無作為に分けた。MPTPモデル群及びAuC処置群において、20mg/kg(遊離塩基)MPTPを、2時間毎に1回で4回にわたり皮下注射した。ブランクコントロール群においては、20mg/kgの生理食塩水を、2時間毎に1回で4回にわたり皮下注射した。最後の注射より8時間後に、ブランクコントロール群及びMPTPモデル群において、10μLの生理食塩水を毎日静脈注射し、一方で、AuC正常コントロール群及びAuC処置群においては、表1中に列挙されるリガンド修飾されたAuCの10μLの生理食塩溶液(AuC濃度は10g/L)を、それぞれ毎日腹腔内注射した。上記注射は、7日間にわたり継続した。それらの動物を、清浄パディングを有する給餌ボックス中に入れ、水と食料とを自由に与えた。

0119

行動試験:ロータロッド試験、ロータロッド試験は、動物がローラー上でバランスを保ち、動き続けることを必要とする。その試験は、運動協調性を試験するために広く使用される試験である。ローラーの直径は6cmであり、回転速度は20rpmである。動物を5回にわたりローラーに順応させた後に、試験を1分間の間隔で開始した。ロータロッドから落下するまでの潜時を5回にわたり連続的に記録し、それらの平均値を計算した。

0120

神経伝達物質測定:行動試験の後に、それらの動物を屠殺し、マウスの線条体を取り、−80℃で貯蔵した。測定に際してその線条体を10μL/mg(線条体)のホモジェネート(0.1Mの過塩素酸、0.1mMのEDTA−2Na)で処理し、氷浴中で超音波により30分間にわたり破砕し、冷却式遠心分離器中で10000回転/分で10分間にわたり遠心分離した。上清を取り、0.25μmのフィルタ濾過し、HPLC液体クロマトグラフィーカラム中に注入した。線条体中のドーパミン(DA)伝達物質並びにその代謝産物である3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸DOPAC)及びホモバニリン酸HVA)のレベルを、研究室において高性能相システムにより検出した。クロマトグラフィーカラムは、各試験前に2時間にわたり、新たに調製された移動相で維持せねばならない。HPLC条件:流速:1mL/分、カラム温度30℃、蛍光検出器励起波長及び吸収波長は、それぞれ280nm及び330nmであった。

0121

チロシンヒドロキシラーゼの測定:脳組織を取り出し、4重量%PFA+2重量%スクロース中で4時間〜6時間にわたり固定し、次いで30重量%スクロース溶液中に浸漬させ、該組織が底に沈んだ後にOCTで包埋し、凍結スライサーにより連続的な状断面で切片にし、ABC(アビジンビオチンペルオキシダーゼ複合体(Avidibiotin-peroxidase complex))法で染色し、黒質の凍結組織を取り出し、それらを切片にし、TH中で染色し、ジフェニルアミンで発色させ、顕微鏡下で観察し、写真撮影した。

0122

それらの結果により、本発明において提供されるリガンド修飾されたAuCが、MPTP誘導されたPDモデルマウスの運動行動を大幅に改善し、ドーパミン作動性ニューロンの数を増大させ、ドーパミン神経伝達物質の脳内レベルを改善し得ることが示された。それらは、PDを治療するためにAuC含有物質として使用することができた。

0123

実験2:
実験動物:8週齢の体重25g〜30gの80匹のC57bl/6雄マウス;各々のケージ中の3匹のマウスを全て、室温22℃〜27℃の環境下で、12時間の概日リズムで、飲食を自由にして飼育し、7日間にわたり馴化させた。

0124

MPTP誘導されたPDマウスモデル:マウスを、ブランクコントロール群、AuCコントロール群(AuCの用量に基づいて、それらを低用量群及び高用量群に分類した)、MPTPモデル群、AuC処置群(AuCの用量に基づいて、それらを低用量群及び高用量群に分類した)を含む4つの群に1群当たり20匹のマウスで無作為に分けた。MPTPモデル群及びAuC実験群において、30mg/kg(遊離塩基)MPTPを、1日に
1回で7日間にわたりそれぞれ連続的に腹腔内注射した。ブランクコントロール群においては、30mg/kgの生理食塩水を、1日に1回で7日間にわたり連続的に皮下注射した。低用量AuCコントロール群及び低用量AuC処置群においては、1.8nmの平均粒度を有する1g/LのL−NIBC修飾されたAuCの100μLの生理食塩溶液を、それぞれ1日に1回で腹腔内注射し、一方で、高用量AuCコントロール群及び高用量AuC処置群においては、1.8nmの平均粒度を有する4g/LのL−NIBC修飾されたAuCの100μLの生理食塩溶液を、それぞれ1日に1回で7日間にわたり連続的に腹腔内注射した。それらの動物を、清浄なパディングを有する給餌ボックス中に入れ、水と食料とを自由に与えた。

0125

1.行動試験:
(1)自発運動試験:動物をケージから自発運動検出装置に移した。それらの動物を新しい環境に5分間にわたり順応させた後に、それらの自発運動及び変化を5分間内で記録した。それらの動物の5分間内での運動距離及び移動速度を用いて、動物の運動量を測定した。

0126

(2)遊泳試験:ドナン試験法(G. A. Donnan, G. L. Willis, S. J. Kaczmarezyk,
P. Rowe, Journal of the Neurological Science 1987, 77, 185)を参照して、試験マ
ウスをモリスの水槽中に入れた。水の深さは60cmであり、温度は22℃であった。それらの動物の10分間内での遊泳距離及び遊泳時間を記録して、それらの動物の運動量を測定した。

0127

(3)ロータロッド試験:ロータロッド試験は、動物がローラー上でバランスを保ち、動き続けることを必要とする。その試験は、運動協調性を試験するために広く使用される。ローラーの直径は6cmであり、回転速度は20rpmである。動物を5回にわたりローラーに順応させた後に、全ての試験を1分間の間隔で実施した。ロータロッドから落下するまでの潜時を記録した。それらの試験を5回にわたり連続的に行い、それらの平均値を計算した。

0128

2.線条体及び黒質における免疫組織化学的検出
行動試験の後に、各々の群内の5匹のマウスを取り出し、黒質及び線条体における免疫組織化学的検出を行った。1mLの0.5%のペントバルビタールナトリウムにより腹部麻酔をした後に、開胸し、15mLの0.9%の生理食塩水を使用して、最初に大動脈からの血液をすすぎ、次いで4%のパラホルムアルデヒドを含む100mLの0.1mol/Lのリン酸緩衝溶液(PBS、pH7.2)を使用して、灌流(最初は速く、その後ゆっくり)及び固定を1時間にわたり行った。灌流固定の後に脳を取り出し、4%のパラホルムアルデヒド中に入れ、パラフィンで包埋し、マウスの脳マップを参照して黒質及び線条体を冠状断面で切片にした。脳スライスの厚さは、3μm/切片であった。得られた脳スライスを、免疫蛍光による超高感度の2段階免疫組織化学法及びその他の実験において使用した。免疫化学的染色工程は、以下の通りであった。得られた脳スライスを、30分間にわたり0.3%のH2O2メタノール溶液(30%H2O2 1mL+メタノール80mL+PBS 19mL)中に入れ、30分間にわたり0.3%のTriton X−100 PBS中に入れ、マウス抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH)モノクローナル抗体(1:200)又はIBa1(希釈比1:250)中に浸漬させ、48時間(4℃)にわたりインキュベートし、ビオチニル化ウサギ抗マウス二次抗体(1:500)中に浸漬させ、2時間(室温)にわたりインキュベートした。それらを蒸留水で素早くすすぎ、20分間〜30分間にわたる硫酸ニッケルアンモニウムで増感されたDAB青色反応法により発色させた。陽性の生成物が暗青色で、バックグラウンドが澄明となったら、それらの脳スライスを蒸留水で3回にわたりすすいで、発色を止めた。上記工程のそれぞれの後に、上記脳スライスは、0.01mol/LのPBSにより3回にわたり毎回10分間に
わたってすすぐべきである。そしてここで使用された一次抗体は、1%ウシ血清及び0.3%Triton X−100を含むPBSで希釈され、二次抗体及びABCの複合体は、PBSで希釈された。脳スライスの付着、脱水、及び透明な中性ガムでの封止を行った。

0129

3.タンパク質イムノブロッティング(WB)アッセイ
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)は、ドーパミン(DA)の生合成経路における主要な酵素であり、THの免疫組織化学法は、黒質及び線条体中のDA作動性ニューロンにおいて変化を示す(D. Luo, J. Zhao, Y. Cheng, S. M. Lee, J. Rong, Molecular Neurobiology 2017,DOI: 10.1007/s12035-017-0486-6)。行動試験の後に、各々の群から5匹のマウスを取り出し、線条体のWB検出を行い、必要とされる脳組織を上に取り出し、RIPA溶解物中で破砕し、4℃及び12000gで30分間にわたり遠心分離して均質化し、タンパク質を抽出して試料を調製し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を55V〜60Vで4.5時間にわたり行い、そしてタンパク質を、セミドライ法により60mAの一定電流で約1.5時間にわたりメンブレン転写させた。上記メンブレンを、5%のスキムミルクを用いて室温で1時間にわたりブロッキングし、TBST希釈されたウサギTH抗体(希釈比1:300)を添加し、4℃で一晩静置し、抗体を回収し、そのメンブレンをTBSTで3回にわたり毎回10分間洗浄し、TBST希釈されたIRDye
R 680RDヤギ抗ウサギ(希釈比1:3000)を添加し、そのメンブレンをTBSTで3回にわたり毎回10分間洗浄し、タンパク質シグナルを、2色赤外線レーザーイメージングシステムによりスキャンした。

0130

マウスの自発運動の試験結果を図22に示した。MPTPの投与から3分〜5分後に、マウスは、振戦、運動の減少、状に曲がった背中、後脚開放歩行不安定性、垂直に延びた尻尾、及び逆立った毛を示した。個々の癲癇性発作は、約30分〜60分後に起こった。上記症状は徐々に軽減し、マウスは24時間後に通常に戻った。しかしながら、投与回数が増えると、急性期反応和らぐが、それは24時間後であり、運動能力は減少し、歩行の不安定性、及び緩慢な応答は、より明白となった。7日間にわたるMPTPの連続的投与後に、マウスの自発運動距離及び移動速度は、運動緩慢の症状を示すブランクコントロール群のそれよりも大幅に低かった(P<0.01)。AuC単独の投与は、正常なマウスの自発運動距離及び移動速度に対して大きな効果を有しなかった(図22のパネルA及びパネルC)。MPTPモデルのマウスにおけるAuCの併用投与(高用量)は、マウスの自発運動距離及び移動速度を大幅に増大させることができたので(図22のパネルB及びパネルD)、AuCが、MPTPモデルマウスの自発運動の改善に大きな役割を担うことが示唆される。MPTPモデル群と比較して有意差があった(自発運動距離:P<0.05、移動速度:P<0.01)。

0131

マウスの遊泳試験の結果を図23に示した。連続的なMPTP注射の7日後に、マウスを水槽に入れて、遊泳試験を行った。マウスのより長い遊泳時間及びより長い遊泳距離は、そのマウスが四肢のより良好な運動協調性を有することを示す。ブランクコントロール群及びAuCコントロール群は、マウスの遊泳時間及び遊泳距離に対して大きな効果を有しなかった(図23のパネルA及びパネルC)。ブランクコントロール群と比較して、MPTPモデル群は、10分間での遊泳距離の大幅な減少(P<0.05)、水槽における遊泳時間の大幅な減少(P<0.05)を示したので、MPTPがマウスに関する遊泳の運動能力を大幅に減少させることが示唆される。MPTPモデル群と比較して、AuC(高用量)及びMPTPの投与を伴うAuC処置群は、遊泳距離の増加(P<0.05)、及び遊泳時間の大幅な増加(P<0.05)を示したので(図23のパネルB及びパネルD)、AuCがマウスに関する遊泳のMPTP誘導された運動行動障害を大幅に改善することが示唆される。

0132

マウスのロータロッド試験の結果を図24に示した。マウスに7日間にわたりMPTPを連続的に注射した後に、それらのマウスにロータロッド試験を行った。生理食塩水が投与されたブランクコントロール群においては、ロータロッドから落下するまでの潜時及びロータロッドから落下するマウスのパーセントは、12.1±4.6分及び33.3±1.5%であった(図24のパネルA及びパネルC)。ブランクコントロール群と比較して、MPTPモデル群におけるマウスのロッド落下潜時は、5.5±3.7分に大幅に短くなり、ロッド落下パーセントは、83.3±3.4%に大幅に増加した。MPTPの投与後に、マウスの運動協調性は減少し、それらのマウスはロッドをしっかり掴むことができず、ロータロッドから落下し易くなることが示された(図24のパネルB及びパネルD)。AuC単独の投与は、マウスの落下潜時に大きな効果を有しなかったが(図24の画像A)、長時間のローラー運動の間に、ロータロッドから落下するマウスのパーセントは大幅に増大した(P<0.001、ブランクコントロール群に対して)。AuCの投与自体は、マウスのローラー行動に対して一定の効果を有することが示された(図24のパネルC)。しかしながら、MPTPモデル群と比較して、MPTP及びAuCの両方を投与したAuC処置群は、ロータロッドから落下するまでの潜時の明らかな増大(低用量群:P<0.01、高用量群:P<0.05)、及びロータロッドから落下するパーセントの大幅な減少(P<0.001、高用量群及び低用量群の両方について)を示した。それらの結果を図24のパネルB及びパネルDに示した。これにより、AuCがMPTP誘導された運動協調性機能障害を改善する効果を有することが示された。

0133

黒質及び線条体における免疫組織化学的検出並びに線条体のWB検出の結果を図25に示した。ブランクコントロール群と比較して、MPTPモデル群は、黒質中のTH免疫陽性ニューロン(すなわち、DA作動性ニューロン)の数の明らかな減少と共に、残りのニューロンの収縮及び神経突起の減少又は消失、並びに線条体中のTH免疫陽性ニューロンの減少及び神経線維密度の減少を示した。WB分析の結果により、線条体中のDA作動性ニューロンが55.8±5.6%(ブランクコントロール群:100%)に減少することが示された(ブランクコントロール群に対して、P<0.01、図25のパネルCを参照)。AuC単独の投与は、黒質及び線条体中のTH免疫陽性ニューロン及び神経線維の密度に対して大きな効果を有しなかった(図25のパネルA及びパネルB)。AuC及びMPTPの併用投与は、黒質及び線条体の細胞及びニューロフィラメント中でのTH免疫陽性発現のMPTP誘導された下方調節を大幅に阻害し得た。WB分析の結果により、低用量AuCが採用された場合に、線条体中のDA作動性ニューロンの比率がブランクコントロール群の65.6±6.3%であり(P<0.01、MPTPモデル群に対して、図25のパネルCを参照)、高用量AuCが採用された場合に、線条体中のDA作動性ニューロンの比率はブランクコントロール群の84.7±4.5%に達することが示された(P<0.001、MPTPモデル群に対して)。それらの結果により、AuCがMPTP細胞毒性への抵抗に対して大きな効果を有し、黒質及び線条体におけるDA作動性ニューロン損失に対して顕著な保護効果を示すことが示される。

0134

表1に列挙される種々のリガンドで修飾されたAuCを使用した実験を実施するためにも同じ工程を採用した。それらの効果は同様であったので、それは本明細書では詳細に記載しないこととする。

0135

上記結果により、本発明において提供されるリガンド修飾されたAuCが、MPTP誘導されたPDモデルマウスの自発運動、運動能力、及び身体協調性能力を大幅に改善することができ、黒質及び線条体におけるDA作動性ニューロン損失に対して大きな保護効果を有することが示されたので、AuC含有物質が、PDの治療のために使用され得ることが示される。

0136

実施形態10:バイオセーフティ評価
1. SH−sy5y細胞系統を、AuC含有物質のバイオセーフティを細胞レベルで評価するために採用した。

0137

具体的な方法:細胞の対数増殖期にあるSH−sy5y細胞(第6代継代の細胞)を収集した。細胞懸濁液の濃度を調節し、それぞれのウェル中に100μLで添加した。それらの細胞を撒いて、細胞密度を1ウェル当たり1000個〜10000個に調節した。細胞培養プレート(96ウェルプレートの縁のウェルを細胞培養培地で満たした)を、細胞インキュベーター中に入れ、細胞が壁部に接着するように5%のCO2中で37℃の環境で24時間にわたりインキュベートした。該96ウェルプレートを取り出し、次いでアルコールによる殺菌後にバイオセーフティキャビネット中に入れた。当初の細胞培養培地を吸い出し、次いで表1に列挙されるリガンド修飾されたAuCの溶液を添加し、それらを細胞培養培地で希釈して、それぞれ1ppm、10ppm、50ppm、100ppm、200ppm、及び500ppmの最終濃度を得た。等容量の新しい細胞培養培地をコントロール群(AuCなし)に添加した。そしてそれを細胞インキュベーター中に入れ、48時間にわたりインキュベートした。実験群及びコントロール群のそれぞれについて、6個の重複ウェルを用意した。48時間のインキュベートの後に、培養培地を遠心分離により除去し、次いでPBSで2回〜3回にわたり洗浄した。100μLの新しい培養培地及び20μLのメチルチアゾリルテトラゾリウムMTT)溶液(5mg/ml、すなわち0.5%のMTT)を各ウェルに添加し、4時間にわたり培養し続けた。培養を止め、96ウェルプレートを取り出し、10分間にわたり遠心分離(1000回転/分)した。上清を吸い出し、200μLのDMSOを各ウェルに添加し、振盪台上に載せ、ウェル中の色が均一になり、結晶が完全に溶解するまで低速で10分間にわたり振動させた。各ウェルの吸光度を、マイクロプレートリーダにより490nmで測定した。上記作業は、滅菌環境で実施せねばならない。検出を除き、全ての工程はバイオセーフティキャビネット中で完結させた。実験用品は、使用前にオートクレーブ中で殺菌せねばならない。

0138

実施形態2におけるL−NIBC修飾されたAuCを例にとり、それらの結果を図26に示した。そこではパネルA〜パネルCは、2.6nm、1.8nm又は1.1nmの粒度を有するAuCの、1ppm、10ppm、50ppm、100ppm、200ppm又は500ppmの最終濃度でのSH−sy5y細胞生存性に対する効果を示した。かなり高い濃度(例えば100ppm)では、L−NIBC修飾されたAuCの添加は、細胞生存性に対して殆ど何ら影響を及ぼさないことが示された。より高い濃度(例えば200ppm及び500ppm)では、L−NIBC修飾されたAuCの添加は、僅かしか細胞の傷害をもたらさないこととなる(細胞死の率は20%未満である)。100ppmはAuCの最小効果濃度(0.1ppm〜1ppm以下)よりもはるかに高いので、L−NIBC修飾されたAuCは、細胞レベルで高い安全性を有すると結論付けることができた。

0139

表1に列挙される種々のサイズを有するその他のリガンド修飾されたAuCはまた、同様の効果を有していた。それらは本明細書では詳細に記載しないこととする。

0140

2. AuC含有物質の急性毒性を評価するためのマウス急性毒性研究の採用
具体的な方法:表1に列挙される種々のリガンド修飾されたAuC(実施形態2における1.8nmの平均直径を有するL−NIBC修飾されたAuCを例にとる)に関して、60匹の成体マウスを選び、各々の群内に15匹のマウスで、1つのコントロール群及び3つの実験群である4つの群に分けた。コントロール群においては、マウスには通常の給餌を行ったが、3つの実験群においては、マウスには、経口投与(強制栄養により)により、それぞれ1日につき0.1g/体重kg、0.3g/体重kg、及び1g/体重kgの用量で通常の食餌条件下で1週間にわたりAuCを供給した。AuCの供給が終わった後に、それらのマウスには30日間にわたり通常の給餌を行った。マウスの異常な応答を観察した。

0141

上記のマウス実験において、種々のサイズを有するAuCの3つの濃度での摂取は、マウスの生存及び活動に影響を及ぼさなかった。1g/体重kgの高用量摂取の場合でさえも、マウスは依然として健康なままであった。

0142

表1に列挙されるその他のリガンド修飾されたAuCはまた、同様の結果を有していた。それらは本明細書では詳細には記載しないこととする。上記結果に基づいてAuCが非常に安全であると結論付けることができた。

0143

実施形態11:マウスにおけるCuC含有物質の組織分布及び代謝分布
実験1:
作業工程:80匹のマウスを、各々の群内に20匹のマウスで4つの群に無作為に分け、表1に列挙されるリガンド修飾されたAuCを経口投与(強制栄養により)により上記群においてそれぞれ100mg/kg、20mg/kg、5mg/kg、及び1mg/kgの用量で供給した。AuCを供給した後で、各々の群内の20匹のマウスを、各小群内に5匹のマウスを有する4つの小群に無作為に分けた。それらのマウスを、供給後のそれぞれ2時間、6時間、24時間、及び48時間の時点で屠殺した。心臓、肝臓、脾臓腎臓、及び脳の組織を別々に採取した。各組織を秤量し、2mLの水を添加して均質化し、次いで2mLの王水を添加し、ボルテックス混合し、振動装置上で72時間にわたり振動させた。2重量%の硝酸溶液を添加して10mLの最終容量にし、15000rpmで15分間にわたり遠心分離した。4mLの上清を吸引し、組織液中の金元素の含量を、原子吸光分光法により測定した。

0144

それらの結果により、AuCが血液−脳関門を通過することができ、脳に到達することが示された。それらは時間の経過と共に体外へ排出され得るので、体内での明らかな蓄積を有しなかった。したがって、本発明において提供されるAuC含有物質は、AD又はPDを治療する医薬を製造する用途において良好な展望を有した。

0145

実験2:
作業工程:80匹のマウスを、各々の群内に20匹のマウスで4つの群に無作為に分け、表1に列挙されるリガンド修飾されたAuCを腹腔内注射した。各群におけるAuCの用量(1.8nmの平均直径を有するL−NIBC修飾されたAuCを例にとる)は、それぞれマウスの体重の100ppm、20ppm、5ppm、及び1ppmであった。AuCを注射した後で、各々の群内の20匹のマウスを、各小群内に5匹のマウスを有する4つの群に無作為に分けた。それらのマウスを、供給後のそれぞれ2時間、6時間、24時間、及び48時間の時点で屠殺した。心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、及び脳の組織を別々に採取した。各組織を秤量し、2mLの水を添加して均質化し、次いで2mLの王水を添加し、ボルテックス混合し、振動装置上で72時間にわたり振動させた。2重量%の硝酸溶液を添加して5mLの最終容量にし、15000rpmで15分間にわたり遠心分離した。1mLの上清を吸引し、組織液中の金元素の含量を、原子吸光分光法により測定した。

0146

表1に列挙されるその他のリガンドで修飾されたAuCについて実験を実施するために上記工程を採用した。

0147

それらの結果により、2時間後に、脳内の金元素の含量が初期濃度の1%〜10%に達することが示された。6時間後に、脳内の含量は同様のレベルで維持され得た。24時間後に、脳内の含量は大きく減少した。48時間の時点で、上記含量は100ppmの用量での検体を除き、検出限界近く又はそれを下回るまで減少した。それらの結果により、AuC含有物質が動物レベルで良好なバイオセーフティを有し、血液−脳関門を通過するこ
とができ、体内での明らかな蓄積を有しないことが示された。

0148

まとめると、上記実験結果は、以下の点を明らかにした(以下に挙げられる「金ナノ粒子」及び「AuC」は全て、リガンド修飾を伴う場合を指す)。

0149

(1)in vitroでのAβの凝集についての実験(実施形態3)において、金ナノ粒子のAβの凝集動態に対する効果が、サイズに関連することが判明した。粒径が10.1nm以上である場合に、金ナノ粒子の添加は、Aβの凝集を促進し得て、粒度が6.0nm以下である場合に、Aβの凝集は阻害されるが、Aβの凝集の完全な阻害は達成され得なかった。しかしながら、AuCが使用される場合に(平均直径は3nm未満である)、全てのAuCは、in vitroでAβの凝集を大幅に阻害し、この効果は、AuCの濃度に関連していた。AuCの濃度が5ppm〜10ppmに達した場合に、Aβの凝集は完全に阻害され得て、完全な阻害のために必要とされる最小濃度は、リガンドの種類及びAuCの直径に関連していた。α−synの凝集の阻害についてのin vitro実験(実施形態6)においては、AuCがα−synの凝集及び線維化の完全な阻害の同じ効果を有することも判明した。

0150

(2)Aβ誘導された細胞ADモデル及びMPP+誘導された細胞PDモデルの実験(実施形態4、実施形態7、及び実施形態8)において、小さい粒度を有する金ナノ粒子(例えば、3.6nm又は6.0nmの平均直径を有する金ナノ粒子)が、Aβ誘導された細胞ADモデル及びMPP+誘導された細胞PDモデルの細胞生存性の改善に大きな効果を有しないことが分かったので、金ナノ粒子は、AD及びPDに対して細胞レベルで明らかな薬効を示さず、そのためそれらはAD又はPDを治療する医薬を製造するために有効成分として直接的に使用することができないことが示唆される。しかしながら、本発明において使用される種々のサイズを有する種々のリガンド修飾されたAuC(平均直径は3nm未満であった)の場合には、非常に低い用量のAuC(例えば0.1ppm〜1ppm)であっても、2つのモデルの細胞生存性を、50%〜65%から95%超まで上昇させ得ることが判明した。細胞レベルでは、AuCの薬効は顕著であることが示された。リガンドはAβの凝集及び2つの細胞モデルの両方に対して効果を有しなかったので(実施形態4、実施形態7、及び実施形態8)、AuCの薬効がAuC自体に起因すると結論付けることができた。これは、AuCの利用のための新しいアプローチを提供した。

0151

(3)さらに、トランスジェニックADマウスモデル及びMPTP誘導されたPDマウスモデル(実施形態5及び実施形態9)を本発明において使用して、さらにAuCの薬効を確かめ、こうしてAuCが、マウスの認知行動能力及び運動行動能力の改善、脳内の老人斑の形成の阻害、並びに黒質及び線条体におけるMPTPにより誘導されたDA作動性ニューロンの特異的なアポトーシスの阻害において大きな役割を担い、かつ関連疾患のための予防医薬又は治療医薬として使用され得ることが示された。

0152

(4)バイオセーフティの更なる評価のための実験において(実施形態10)、100ppm(重量基準)の濃度でのAuCが神経細胞と同時培養された場合に、それらは細胞の生存性に明らかな影響を及ぼさず、その濃度が100ppmを超過した場合に(AuCの最小効果濃度よりはるかに高い)、細胞生存性は僅かに減少した。AuCの最小効果濃度(0.1ppm〜1ppm)は100ppmよりはるかに低いので、AuCが細胞レベルで優れたバイオセーフティを有すると結論付けることができた。マウス急性毒性試験においては、1日1回で7日間にわたり連続的に投与された1g/体重kg(1000ppmに相当)の用量のAuCは、有害作用を及ぼさないことが判明した。マウスにおけるin vivo分布及び薬物動態の研究において(実施形態11)、脳内の金元素の含量が、2時間後に初期濃度の1%〜10%に達した。6時間後に、脳内の含量は、同様のレベルで維持された。24時間後に、脳内の含量は大きく減少した。48時間の時点で、上記
含量は、100ppmの用量での検体を除き、検出限界を下回るまで減少した。上記の結果により、AuC含有物質が動物レベルでも良好なバイオセーフティを有し、血液−脳関門を通過することができ、体内での明らかな蓄積を有しないことが示され、こうしてAD又はPDを治療する医薬の製造での用途において良好な展望を有した。

0153

(5)現行技術と比較して、本発明で使用されるリガンドは、Aβ及びα−synの凝集挙動のために特別に設計されておらず、対比実験により、使用されるリガンドが、Aβ及びα−synの凝集に対して明らかな効果を有しないことが示された(実施形態3)。しかしながら、AuCのサイズはそのタンパク質自体のサイズより小さいので、Aβ及びα−synの凝集は、サイズ効果及び弱い分子相互作用の組み合わせにより大きく阻害され得た。Aβ誘導されたAD細胞モデル及びトランスジェニック動物モデルにおける優れた効力により、さらにADの治療のための医薬の製造におけるAuC含有物質の可能性が確認された。さらに、MPP+誘導されたPD細胞モデル及びMPTP誘導されたPD動物モデルにおけるAuC含有物質の優れた効力により、AuC含有物質がまた、その他の神経変性疾患を治療する医薬の製造において幅広い利用の展望を有することが示された。さらに、MPP+誘導されたPD細胞モデル及びMPTP誘導されたPD動物モデルは、タンパク質線維化を伴わず、エネルギー代謝及び神経細胞の神経伝達物質代謝に関連するシグナル伝達の機能を含むより深い機構に作用するので、AuC含有物質がタンパク質線維化に影響を及ぼすだけでなく、神経変性疾患の過程により深いレベルで影響し得ると推測され得た。AuC含有物質は、神経変性疾患のための新たな医薬の研究及び開発のために非常に重要となる。

0154

本発明において提供されるAuC含有物質は、マウスの認知行動及び運動行動能力を改善し、ADトランスジェニックマウスモデル及びMPTP誘導されたPDマウスモデルにおいて脳内の老人斑の形成を阻害し、動物レベルで良好なバイオセーフティを有し得る。AuC含有物質は、産業上の利用のために適している。

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