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技術 ラインパイプ用電縫鋼管及びラインパイプ用電縫鋼管の製造方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 福士孝聡長谷川昇吉村仁秀田島健三長井健介
出願日 2019年12月18日 (1年10ヶ月経過) 出願番号 2019-228469
公開日 2021年6月24日 (3ヶ月経過) 公開番号 2021-095617
状態 未査定
技術分野 物品の熱処理 管の製造;マンドレル
主要キーワード 下まわり 上まわり 適用範囲外 溶接したままの 最低強度 ノルマ 組織測定 Ni添加量
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2021年6月24日)のものです。
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図面 (3)

課題

低温の状況(−40℃〜−80℃)での使用が可能な溶接部靭性に優れるラインパイプ用鋼管を提供すること。

解決手段

所定の化学組成を有し、下記式(1)で示すAr3パラメーターが760〜790、溶接部平均フェライト粒径が6μm以下、溶接部のポリゴナルフェライト組織面積率が80面積%以上、パーライト面積率が2〜10%、かつパーライト最大サイズが4.5μm以下、ベイナイト+マルテンサイトの面積率が10%以下であり、引張強度が400〜700MPaであり、溶接部の平均転位密度が8×10−14(m−2)以下であることを特徴とするラインパイプ電縫鋼管とする。Ar3=868−396×[C]+25×[Si]‐68×[Mn]−21×[Cu]−36×[Ni]−25×[Cr]−30×[Mo]・・・(1)(ただし、[元素記号]は、各元素の質量%の値)

概要

背景

特許文献1に記載されているように、ラインパイプ用鋼管では低温靭性が求められている。従来、フェライト-パーライト組織、フェライト-ベイナイト組織微細化し靭性を向上させている例は多数あるが、せいぜい平均粒径10μm以下を狙うのが限界であった。また、破壊の起点となるパーライト粒径については、微細化するための検討が十分になされていなかった。また、溶接部については、溶接したままの組織では靭性が優れないため、溶接後熱処理(以下、シームノルマと記す。)により組織を造り直す必要があるが、熱延のように圧下が出来ないため、粒径の微細化にも限界があった。これらの事情から従来、溶接部は−20℃〜−40℃程度までの低温靭性を確保するのが限界であった。

概要

低温の状況(−40℃〜−80℃)での使用が可能な溶接部靭性に優れるラインパイプ用鋼管を提供すること。所定の化学組成を有し、下記式(1)で示すAr3パラメーターが760〜790、溶接部の平均フェライト粒径が6μm以下、溶接部のポリゴナルフェライト組織面積率が80面積%以上、パーライト面積率が2〜10%、かつパーライト最大サイズが4.5μm以下、ベイナイト+マルテンサイトの面積率が10%以下であり、引張強度が400〜700MPaであり、溶接部の平均転位密度が8×10−14(m−2)以下であることを特徴とするラインパイプ電縫鋼管とする。Ar3=868−396×[C]+25×[Si]‐68×[Mn]−21×[Cu]−36×[Ni]−25×[Cr]−30×[Mo]・・・(1)(ただし、[元素記号]は、各元素の質量%の値)

目的

本発明は、このような背景でなされた発明であり、本発明が解決しようとする課題は、低温の状況(−40℃〜−80℃)での使用が可能な溶接部靭性に優れるラインパイプ用鋼管を提供できるようにすることである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.03〜0.06%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.20〜1.59%、P:0.030%以下、S:0.005%以下、Ti:0.010〜0.030%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.010〜0.050%、N:0.006%以下、Ca:0.0001〜0.0200%、Ni:0.300〜2.000%、であり、残部にFeおよび不純物を備えた化学組成を有し、下記式(1)で示すAr3パラメーターが760〜790、溶接部平均フェライト粒径が6μm以下、溶接部のポリゴナルフェライト組織面積率が80面積%以上、パーライト面積率が2〜10%、かつパーライト最大サイズが4.5μm以下、ベイナイト+マルテンサイトの面積率が10%以下であり、引張強度が400〜700MPaであり、溶接部の平均転位密度が8×10−14(m−2)以下であることを特徴とするラインパイプ電縫鋼管。 Ar3=868−396×[C]+25×[Si]‐68×[Mn]−21×[Cu]−36×[Ni]−25×[Cr]−30×[Mo]・・・(1)(ただし、[元素記号]は、各元素の質量%の値)

請求項2

前記化学組成が、質量%で、Ni:0.001〜0.300%、Cu:0.005〜1.000%、Cr:0.030〜1.000%、Mo:0.10〜0.50%、V:0.001〜0.200%、W:0.001〜0.100%、B:0.0005〜0.0050%、Mg:0.0001〜0.020%、Zr:0.0001〜0.020%、REM:0.0001〜0.02%、から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載のラインパイプ用電縫鋼管。

請求項3

鋼をコイルとした後に電縫溶接して鋼管とし、その後、溶接部を900〜1050℃の温度に加熱し、当該加熱後、冷却速度40〜100℃/sで400℃以下まで冷却し、その後加熱を行わず、サイザー工程での絞り率を1%以内とするラインパイプ用電縫鋼管の製造方法であって、下記式(2)を満足することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載するラインパイプ用電縫鋼管の製造方法。 205≦Ar3×[C]×加熱温度(℃)/冷却速度(℃/s)−80×[Ni]≦700・・・(2)(ただし、[元素記号]は各元素の質量%の値、加熱温度はシームノルマ時の加熱温度、冷却速度は冷却段階における800℃〜500℃間の平均冷却速度

技術分野

0001

本発明は、ラインパイプ電縫鋼管及びラインパイプ用電縫鋼管の製造方法に関する。

背景技術

0002

特許文献1に記載されているように、ラインパイプ用鋼管では低温靭性が求められている。従来、フェライト-パーライト組織、フェライト-ベイナイト組織微細化し靭性を向上させている例は多数あるが、せいぜい平均粒径10μm以下を狙うのが限界であった。また、破壊の起点となるパーライト粒径については、微細化するための検討が十分になされていなかった。また、溶接部については、溶接したままの組織では靭性が優れないため、溶接後熱処理(以下、シームノルマと記す。)により組織を造り直す必要があるが、熱延のように圧下が出来ないため、粒径の微細化にも限界があった。これらの事情から従来、溶接部は−20℃〜−40℃程度までの低温靭性を確保するのが限界であった。

0003

特許第5708723号公報

先行技術

0004

一方、ラインパイプ用鋼管としては、従来よりも低温の状況に耐えることが求められるようにもなってきた。

発明が解決しようとする課題

0005

本発明は、このような背景でなされた発明であり、本発明が解決しようとする課題は、低温の状況(−40℃〜−80℃)での使用が可能な溶接部靭性に優れるラインパイプ用鋼管を提供できるようにすることである。

課題を解決するための手段

0006

上記課題を解決するため、質量%で、C:0.03〜0.06%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.20〜1.59%、P:0.030%以下、S:0.005%以下、Ti:0.010〜0.030%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.010〜0.050%、N:0.006%以下、Ca:0.0001〜0.0200%、Ni:0.300〜2.000%であり、残部にFeおよび不純物を備えた化学組成を有し、
下記式(1)で示すAr3パラメーターが760〜790、溶接部の平均フェライト粒径が6μm以下、溶接部のポリゴナルフェライト組織面積率が80面積%以上、パーライト面積率が2〜10%、かつパーライト最大サイズが4.5μm以下、ベイナイト+マルテンサイトの面積率が10%以下であり、引張強度が400〜700MPaであり、溶接部の平均転位密度が8×10−14(m−2)以下であることを特徴とするラインパイプ用電縫鋼管とする。

Ar3=868−396×[C]+25×[Si]‐68×[Mn]−21×[Cu]
−36×[Ni]−25×[Cr]−30×[Mo]・・・(1)
(ただし、[元素記号]は、各元素の質量%の値)

0007

また、前記化学組成が、質量%で、Ni:0.001〜0.300%、Cu:0.005〜1.000%、Cr:0.030〜1.000%、Mo:0.10〜0.50%、V:0.001〜0.200%、W:0.001〜0.100%、B:0.0005〜0.0050%、Mg:0.0001〜0.020%、Zr:0.0001〜0.020%、REM:0.0001〜0.02%、から選択される1種以上を含有するものとすることが好ましい。

0008

また、上記ラインパイプ用電縫鋼管を製造する製造方法としては、鋼をコイルとした後に電縫溶接して鋼管とし、その後、溶接部を900〜1050℃の温度に加熱し、当該加熱後、冷却速度40〜100℃/sで400℃以下まで冷却し、その後加熱を行わず、サイザー工程での絞り率を1%以内とするものであることを前提に、下記式(2)を満足させるようにすることが好ましい。

205≦Ar3×[C]×加熱温度(℃)/冷却速度(℃/s)−80×[Ni]≦700・・・(2)
(ただし、[元素記号]は各元素の質量%の値、加熱温度はシームノルマ時の加熱温度、冷却速度は冷却段階における800℃〜500℃間の平均冷却速度

発明の効果

0009

本発明を用いると、低温の状況(−40℃〜−80℃)での使用が可能な溶接部靭性に優れるラインパイプ用鋼管を提供することができる。

図面の簡単な説明

0010

「Ar3×[C]×加熱温度(℃)/冷却速度(℃/s)」と最大パーライトサイズの関係を表した図である。
最大パーライトサイズと‐80℃における吸収エネルギーの関係を表した図である。

0011

以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態のラインパイプ用電縫鋼管は、質量%で、C:0.03〜0.06%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.20〜1.59%、P:0.030%以下、S:0.005%以下、Ti:0.010〜0.030%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.010〜0.050%、N:0.006%以下、Ca:0.0001〜0.0200%、Ni:0.300〜2.000%であり、残部にFeおよび不純物を備えた化学組成を有し、下記式(1)で示すAr3パラメーターが760〜790、溶接部の平均フェライト粒径が6μm以下、溶接部のポリゴナルフェライト組織の面積率が80面積%以上、パーライト面積率が2〜10%、かつパーライトの最大サイズが4.5μm以下、ベイナイト+マルテンサイトの面積率が10%以下であり、引張強度が400〜700MPaであり、溶接部の平均転位密度が8×10−14(m−2)以下である。

Ar3=868−396×[C]+25×[Si]‐68×[Mn]−21×[Cu]−36×[Ni]−25×[Cr]−30×[Mo]・・・(1)
(ただし、[元素記号]は、各元素の質量%の値)

このため、低温の状況(−40℃〜−80℃)での使用が可能な溶接部靭性に優れるラインパイプ用鋼管を提供することが可能となる。

0012

なお、Ar3パラメーターなどの数値範囲の意味を以下に示す。

0013

Ar3パラメーター760〜790
フェライト粒径およびパーライト粒径を微細化するために重要なパラメーターである。変態温度を低くし粒径を微細化するために790以下とする必要がある。一方で値が小さすぎると変態温度が下がりすぎベイナイトおよびマルテンサイト主体の組織となってしまうために、760以上とする必要がある。

0014

平均フェライト粒径6μm以下
優れた低温靭性を有するために重要なパラメーターである。そのためには6μm以下とする必要がある。これを超えるとフェライト粒脆性破壊応力が下がるため靭性が劣化する。

0015

ポリゴナルフェライト組織の面積率80%以上
優れた低温靭性を有するために重要なパラメーターである。そのためには80%以上とする必要がある。これより少ないと硬質相の割合が多いため靭性が劣化する。

0016

パーライト面積率2〜10%
優れた低温靭性を有するために重要なパラメーターである。そのためには10%以下とする必要がある。これを超えると硬質相が多すぎるために靭性が劣化する。一方でラインパイプとしての強度を確保するためにはフェライト相のみでは不十分であり、2%以上のパーライト相が必要である。

0017

最大パーライトサイズ 4.5μm以下
優れた低温靭性を有するために、最も重要なパラメーターである。そのためには4.5μm以下とする必要がある。これを超えると脆性破壊の起点となりやすく十分な低温靭性が得られなくなる。小さければ小さい程良いが、工業的には1μm程度が限界である。

0018

ベイナイト+マルテンサイトの面積率10%以下
優れた低温靭性を有するために重要なパラメーターである。そのためには10%以下とする必要がある。これを超えると硬質相の割合が多いため、靭性が劣化する。なお、本願発明のような低C材では、ベイナイト組織およびマルテンサイト組織は隣接する粒の方位差がつきにくいため、結晶粒が粗大化しがちである。そのため硬質相はパーライト組織とするのが望ましく、ベイナイト及びマルテンサイトを足し合わせた面積率は0でも構わない。

0019

引張強度400〜700MPa
ラインパイプの母材最低強度として400MPa以上が必要である。一方で強度が高すぎると靭性が確保できないため、700MPa以下とする必要がある。

0020

溶接部の平均転位密度8×10−14(m−2)以下
-80℃の環境で溶接部の低温靭性を確保するために、低温での転位易動度を上げるべくNiを添加するが、その効果を得るためには溶接部の平均転位密度を8×10-14(m-2)以下に抑えておく必要がある。これを超えると、過剰に導入された転位自身が転位の移動に対する障害となり、脆性破壊が起こり易くなる。一方でこの値が低すぎても構わないが、工業的には1×10-15(m-2)程度が限界である。

0021

ここで、発明の経緯を説明する。発明者らは溶接部について、溶接後のシームノルマ中の粒径変化のメカニズム調査を行った。この調査において、フェライト-パーライト組織を微細化するように特定した条件の範囲内で合金元素を添加することで低温でも溶接部靭性が向上することを知見した。以下では、その知見内容について説明する。

0022

発明者らが鋭意検討した結果、シームノルマ後の結晶粒径を微細化するには、Ar3変態点を算出するAr3パラメーターを十分に小さくし、変態開始温度を低下させて、フェライトの核生成サイトを増加させることが重要であることを知見した。結晶粒径を微細化する程、破面遷移温度が低下し、低温での吸収エネルギーが高く靭性に優れるものになる。しかしながら変態点を下げすぎると、上部ベイナイト域となり粗大な粒が出るだけでなく、粒界に粗大なセメンタイト析出してしまうため、靭性は劣化する。したがって、低温靭性を最も高めるためには、成分のバランスが必要であることを知見した。

0023

上記知見を基にした、低温靭性を高めるための条件が以下に示すようなものである。「1. Ar3=868−396×[C]+25×[Si]‐68×[Mn]−21×[Cu]−36×[Ni]−25×[Cr]−30×[Mo]で表されるAr3パラメーターが760〜790」(ただし、[元素記号]で表されている部分には、当該元素の質量%の値が入れられる。)、「2.溶接部の平均粒径が6μm以下」、「3. 溶接部のポリゴナルフェライト分率が80%以上」、「4. 溶接部のパーライト分率が2〜10%、最大パーライトサイズが4.5μm以下」、「5. 溶接部のベイナイト+マルテンサイトの分率が10%以下」、「6.母材部の引張強度(TS)が400〜700MPa」、「7.溶接部の平均転位密度が8×10−14(m−2)以下」。

0024

なお、溶接部のフェライトおよびパーライト組織を微細化するためには、「Ar3が760〜790(1.の条件)」、「C量が0.03〜0.06質量%」、「シームノルマ時の加熱温度が900〜1050℃」、「800℃〜500℃間の平均冷却速度が40〜100℃/s」、「前記冷却後に加熱が行わず、サイザー工程での絞り率を1%以内とする」(絞り率は、「絞り前後での外周長の変化分」/「絞り前の外周長」×100で計算)という条件で製造することが考えられる。

0025

「Ar3が760〜790」とするのは、変態温度を低くし、フェライト-パーライトを微細化するためのものである。「C量が0.03〜0.06質量%」とするのは、パーライト分率を少なくしパーライトサイズを小さくするためのものである。

0026

「シームノルマ時の加熱温度が900〜1050℃」とするのは、フェライト-パーライト組織の微細化のために加熱γ粒径を小さくするためのものである。なお、加熱温度はAc3以上で極力低い温度であることが重要である。温度が高いとγ粒径が粗大化し、変態後のフェライト組織やパーライト組織も粗大化してしまう。より詳しくは、シームノルマ時の加熱温度は、溶接凝固組織を造り変え靭性を改善するためにγ単相域まで加熱する必要があるため、900℃以上とする。一方で加熱温度を高くしすぎるとγ粒径が粗大化し、変態後のフェライト粒径およびパーライト粒径の粗大化を招くために1050℃以下とする。

0027

「800℃〜500℃間の平均冷却速度が40〜100℃/s」とするのは、変態温度を低くし、フェライト-パーライトを微細化するためのものである。なお、冷却速度はフェライト粒径およびパーライト粒径を微細化するために重要である。また、冷却速度は速いことが重要である。変態温度を低下させ過冷度を大きくすることで核生成サイトを増やし、フェライト組織やパーライト組織を微細化する効果がある。より詳しくは、変態温度を低くし核生成サイトを増やすために、冷却速度を40℃/s以上とする。一方で100℃/sを超えると、変態温度が下がりすぎパーライトが生じずにベイナイト組織およびマルテンサイト組織が主体となってしまう。したがって、冷却速度の上限は100℃/sである。

0028

「前記冷却後に加熱が行わず、サイザー工程での絞り率を1%以内とする」とするのは、転位密度が高すぎると、転位の易動度が下がりNiの効果だけで低温での脆性破壊を抑制するのは困難であるからである。特に、溶接部の平均転位密度を8×10−14(m−2)以下とする必要があるからである。このためには、造管工程で最も多くの転位が導入されるSZ(サイザー)工程での絞り率(SZ工程前後の外周長の変化率)を1%以内に抑える。

0029

なお、溶接部はSZ工程で組織が造り込まれるため、サイザー工程前では変態によって導入される転位のみであるが、鋼管の形状を整えるSZ工程で多くの転位が導入されることを本発明者らは突き止めた。そして、前記転位密度を満足するにはSZ工程での絞り率(SZ工程前後の外周長の変化率)を1%以内に抑えることが重要であることを知見した。低温靭性の観点では、絞り率の値は低すぎても構わないが、真円度の高い鋼管を工業的に製造する観点から、少なくとも0.2%以上の絞り率とするのが好ましい。

0030

このように、溶接部のフェライトおよびパーライト組織を微細化するためには、上記因子を上記範囲に収まるようにするのが重要であるが、最大パーライトサイズを4.5μm以下とするには、更に、「205≦Ar3×[C]×加熱温度(℃)/冷却速度(℃/s) −80×[Ni]≦700」とするのが重要であることが分かった。以下にその点について詳しく説明する。

0031

発明者が行った試験の結果、「Ar3×[C]×加熱温度(℃)/冷却速度(℃/s)」の値は本発明にとっての重要ポイントである最大パーライトサイズと密接に関連があり、図1のような相関を示すことが分かった。なお、図1は、「Ar3が760〜790」、「C量が0.03〜0.06質量%」、「シームノルマ時の加熱温度が900〜1050℃」、「800℃〜500℃間の平均冷却速度が40〜100℃/s」の範囲内で成分、C量、シームノルマ時の加熱温度、シームノルマ後の冷却速度の各々を変化させており、後述の方法で最大パーライトサイズを測定した結果を表している。

0032

また図2は製造した鋼管の溶接部から、鋼管の周方向を長辺とする方向のフルサイズ(10mm角×55mm長さ)のシャルピー試験片をn=10でそれぞれ作製し、−80℃でシャルピー試験を行った際の吸収エネルギーの平均値と最大パーライトサイズとの関係を示したものである。最大パーライトサイズが大きくなる程、吸収エネルギーの値が劣化し、4.5μmより大きくなると、-80℃では、吸収エネルギーは50Jより小さくなることが分かった。したがって、最大パーライトサイズは4.5μm以下とすべきことが分かる。そして、図1に示される結果と照らしてみると、最大パーライトサイズを4.5μm以下とするためには、「Ar3×[C]×加熱温度(℃)/冷却速度(℃/s)−80×[Ni]」を700以下にすべきことが分かる。

0033

上記したように、変態温度を低くし微細化するためには、「Ar3×[C]×加熱温度(℃)/冷却速度(℃/s)−80×[Ni]」を700以下とする必要がある。一方で値が小さすぎると変態温度が下がりすぎパーライトが生じずにベイナイトおよびマルテンサイト主体の組織となってしまうために、205以上とする必要がある。

0034

また、冷却停止温度は400℃以下とするのが良い。冷却停止温度はフェライト粒径、パーライト粒径と関係する。変態が完了しきらない温度で冷却を停止してしまうと、粒成長し粒径が粗大化する。そのために冷却停止温度は400℃以下とするのが良い。

0035

したがって、ラインパイプ用電縫鋼管の製造方法としては、鋼をコイルとした後に電縫溶接して鋼管とし、その後、溶接部を900〜1050℃の温度に加熱し、当該加熱後、冷却速度40〜100℃/sで400℃以下まで冷却し、その後加熱を行わず、サイザー工程での絞り率を1%以内とすることを前提に、下記式(2)を満足するものとするのが良い。
205≦Ar3×[C]×加熱温度(℃)/冷却速度(℃/s)
−80×[Ni]≦700・・・(2)
(ただし、[元素記号]は各元素の質量%の値、加熱温度はシームノルマ時の加熱温度、冷却速度は冷却段階における800℃〜500℃間の平均冷却速度)

0036

なお、低温の状況(−40℃〜−80℃)での使用が可能な溶接部靭性に優れるラインパイプ用鋼管を提供するために特に重要なのは「Ar3×[C]×加熱温度(℃)/冷却速度(℃/s)」に関係する加熱温度と冷却速度である。具体的には、造管後のシームノルマにおいて、加熱温度900℃〜1050℃とすること、800℃〜500℃間の平均冷却速度を40℃/s以上とすることが重要である。

0037

ここで、組織測定方法について説明する。まず、電縫鋼管の溶接部0°位置の鋼管周方向に平行に切断した断面における肉厚中央部を研磨し、次いでナイター腐食液によってエッチングする。エッチングされた肉厚中央部の金属組織写真を、光学顕微鏡により、倍率1000倍にて撮影する。金属組織写真は、3視野分撮影する(1視野は100μm×100μmの範囲)。得られた3視野分の金属組織写真を画像処理し、フェライト分率(即ち、金属組織全体に占めるフェライトの面積率)を求める。画像処理は、例えば、(株)ニレコ製の小型汎用画像解析装置LUZEXAPを用いて行えばよい。エッチングで白く見える部分をフェライト、黒い塊として見える部分をパーライト、ラス上に見える部分をベイナイトおよびマルテンサイトとして判断して、それぞれの分率を求める。

0038

平均フェライト粒径の測定は、フェライト分率の測定に用いた3視野分の金属組織写真に基づいて行う。これらの金属組織写真から、フェライト粒100個を任意に抽出し、個々のフェライト粒について、円相当径を粒径として求める。得られた100個の測定値(粒径)を算術平均し、得られた算術平均値を、平均フェライト粒径とする。パーライト粒径も同様の写真を用いて求める。3視野分のパーライト(黒いかたまりとして見える部分)の円相当径を算出し、その値が最大であったものを「最大パーライトサイズ」とする。

0039

転位密度の測定方法は、鋼管0°位置のC方向断面(鋼管を輪切りにした断面)の板厚中心位置X線にて、鋼の結晶面(110)(211)(220)の半価幅を測定し、Williamson-Hall法(CAMP-ISIJ VOL.17(2004)-398)にて転位密度を算出する。実際にはバラツキが生じるので、3箇所測定した平均値をここでの転位密度とする。なお、結晶面は、結晶構造をx,y,zの3軸で表した際に、座標x,y,zを法線方向とし、座標(1/x,0,0)(0,1/y,0)(0,0,1/z)の3点を通る面となる。

0040

鋼板の化学組成は、以下に示すものとする。なお、単に%としている値は質量%を意味する。

0041

C:0.03〜0.06%
Cは、鋼の強度を向上させる元素である。かかる効果を得る観点から、C含有量は、0.03%以上である。一方、C含有量が0.06%を超えると、炭化物の生成が促進されてパーライトサイズが大きくなり、靭性が劣化する。従って、C含有量は、0.06%以下である。

0042

Si:0.10〜0.40%
Siは、脱酸元素である。かかる効果を得る観点から、Si含有量は、0.10%以上である。一方、Si含有量が0.40%を超えると、Siの酸化物が多数生じ、靭性が劣化する場合がある。従って、Si含有量は、0.40%以下である。

0043

Mn:0.20〜1.59%
Mnは、鋼の強度を向上させる元素である。また、変態温度を低下させ粒径を微細化する効果がある元素である。かかる効果を得る観点から、Mn含有量は、0.20%以上である。一方、Mn含有量が1.59%を超えると、変態点が下がりすぎベイナイトおよびマルテンサイト主体の組織となってしまう。従って、Mn含有量は、1.60%以下である。

0044

P:0〜0.030%
Pは、不純物元素であり、少ない方が好ましい。P含有量が0.030%を超えると、靭性が劣化する場合がある。従って、P含有量は0.030%以下である。

0045

S:0〜0.005%
Sは、不純物元素であり、少ない方が好ましい。S含有量が0.005%を超えると、圧延方向に伸長した粗大なMnSが生じ、靭性が劣化する場合がある。従って、S含有量は0.005%以下である。

0046

Ti:0.010〜0.03%
Tiは、ピンニング効果によりγ粒径を微細化し、結果フェライト粒径およびパーライト粒径を微細化させるために必要な元素である。かかる効果を得る観点から、Ti含有量は、0.010%以上である。一方、Ti含有量が0.03%を超えると、TiN等の粗大な介在物が生じ靭性が劣化する場合がある。従って、Ti含有量は0.03%以下である。

0047

Al:0.005〜0.050%
Alは、脱酸元素である。かかる効果を得る観点から、Al含有量は0.005%以上である。一方、Al含有量が0.050%を超えると、粗大なAl−Ca系介在物が多数生じて靭性が劣化する。従って、Al含有量は、0.050%以下である。

0048

Nb:0.010〜0.050%
Nbは、ピンニング効果によりγ粒径を微細化し、その結果として、フェライト粒径およびパーライト粒径を微細化させるために必要な元素である。かかる効果を得る観点から、Nb含有量は、0.010%以上である。一方、Nb含有量が0.050%を超えると、粗大なNb炭窒化物が生じ、靭性が劣化する場合がある。従って、Nb含有量は、0.050%以下である。

0049

N:0〜0.006%
Nは、不純物元素であり、少ない方が好ましい。N含有量が0.006%を超えると、粗大な窒化物(例えば、TiN、NbN等)が生じ、靭性が劣化する場合がある。従って、N含有量は、0.006%以下である。N含有量は0%であってもよい。

0050

O:0〜0.004%
Oは、不純物元素であり、少ない方が好ましい。O含有量が0.004%を超えると、酸化物が多く形成され靭性が劣化する場合がある。従って、O含有量は、0.004%以下である。

0051

Ca:0.0001〜0.0200%
Caは、MnSとともに複合介在物を形成し、複合介在物の形態で微細分散化されることにより、介在物を無害化し靭性を向上させる元素である。かかる効果を得る観点から、Ca含有量は、0.0001%以上である。一方、Ca含有量が0.0200%を超えると、粗大なAl−Ca系介在物が生じ、靭性が劣化する場合がある。従って、Ca含有量は、0.0200%以下である。

0052

Ni:0.300〜2.000%
Niは、本願発明で最も重要な必須元素であり、Ni添加により低温靭性がさらに向上する。この原因の一つは、Niを添加すると焼き入れ性の向上によりAr3値が低減し、フェライト粒径およびパーライト粒径をさらに微細化する効果があることにある。また、Niを添加すると、低温で転位の易動度が増し、添加しない場合と比較して公差すべりを起こしやすくなる。このため低温でも塑性変形を起こしやすくなり、脆性破壊に遷移し難くなるため、延性-脆性破面遷移温度をより低温とすることができる。この効果はNi添加量が多い程大きく、−80℃での靭性を確保するためには、0.3%以上の添加が必要である。一方、Ni含有量が2.000%を越えると、コストの上昇を招き、また強度が超過するおそれがある。従って、Ni含有量は、2.000%以下である。

0053

Cu:0.005〜1.000%
Cuは、任意元素である。Cuは、鋼の強度向上に寄与し得る元素である。かかる効果を得る観点から、添加する場合のCu含有量は0.005%以上である。一方、Cu含有量が1.000%を越えると、効果が飽和し、コストの上昇を招くおそれがある。従って、Cu含有量は、1.000%以下である。

0054

Cr:0.030〜1.000%
Crは、任意元素である。Crは、鋼の強度向上に寄与し得る元素である。かかる効果を得る観点から、添加する場合のCr含有量は、0.030%以上である。一方、Cr含有量が1.000%を越えると、効果が飽和し、コストの上昇を招くおそれがある。従って、Cr含有量は、1.000%以下である。

0055

Mo:0.10〜0.50%
Moは、任意元素である。Moは、鋼の強度向上に寄与し得る元素である。かかる効果を得る観点から、添加する場合のMo含有量は、0.10%以上である。一方、Mo含有量が0.50%を越えると、効果が飽和し、コストの上昇を招くおそれがある。従って、Mo含有量は、0.50%以下である。

0056

V:0.001〜0.200%
Vは、任意元素である。Vは、鋼の強度向上に寄与し得る元素である。かかる効果を得る観点から、添加する場合のV含有量は、0.001%以上である。一方、V含有量が0.200%を越えると、効果が飽和し、コストの上昇を招くおそれがある。従って、V含有量は、0.200%以下である。

0057

W:0.001〜0.100%
Wは、任意元素である。Wは、鋼の強度向上に寄与し得る元素である。かかる効果を得る観点から、添加する場合のW含有量は、0.001%以上である。一方、W含有量が0.100%を越えると、効果が飽和し、コストの上昇を招くおそれがある。従って、W含有量は、0.100%以下である。

0058

B:0.0005〜0.0050%
Bは、任意元素である。Bは、鋼の強度向上に寄与し得る元素である。かかる効果を得る観点から、添加する場合のB含有量は、0.0005%以上である。一方、B含有量が0.0050%を越えると、効果が飽和し、コストの上昇を招くおそれがある。従って、B含有量は、0.0050%以下である。

0059

Mg:0.0001〜0.0200%
Mgは、任意元素である。Mgは、鋼の強度向上に寄与し得る元素である。かかる効果を得る観点から、添加する場合のMg含有量は、0.0001%以上である。一方、Mg含有量が0.0200%を越えると、効果が飽和し、コストの上昇を招くおそれがある。従って、Mg含有量は、0.0200%以下である。

0060

Zr:0.0001〜0.0200%
Zrは、任意元素である。Zrは、鋼の強度向上に寄与し得る元素である。かかる効果を得る観点から、添加する場合のZr含有量は、0.0001%以上である。一方、Zr含有量が0.0200%を越えると、効果が飽和し、コストの上昇を招くおそれがある。従って、Zr含有量は、0.0200%以下である。

0061

REM:0.0001〜0.0200%
REMは、任意元素である。ここで、「REM」は希土類元素、即ち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を指す。REMは、鋼中の介在物を制御し、鋼の強度向上に寄与し得る元素である。かかる効果を得る観点から、添加する場合のREM含有量は、0.0001%以上である。一方、REM含有量が0.0200%を超えると、粗大な介在物の個数が増え、靭性が劣化する場合がある。従って、REM含有量は0.0200%以下である。

0062

なお、熱延及び造管は通常の条件で実施をすればよいため、本明細書では記載を省略する。

0063

次に、本発明の適用範囲となる場合と適用範囲外になる場合の例を表1(表1−1、表1−2、表1−3、表1−4)に示す。

0064

0065

なお、本発明における条件と比較すると、比較例1では、Ar3が下限値を下まわり、ベイナイト+マルテンサイト面積率が上限値を上まわり、引張強度が上限値を上まわっている。比較例2では、Ar3が上限値を上まわり、平均フェライト粒径が上限値を上まわり、最大パーライトサイズが上限値を上まわっている。比較例3では、式(2)の上限値を上まわり、平均フェライト粒径が上限値を上まわり、最大パーライトサイズが上限値を上まわっている。

0066

また、比較例4では、式(2)の下限値を下まわり、ベイナイト+マルテンサイト面積率が上限値を上まわり、引張強度が上限値を上まわっている。比較例5では、加熱温度が下限値を下まわり、最大パーライトサイズが上限値を上まわっている。比較例6では、加熱温度が上限値を上まわり、平均フェライト粒径が上限値を上まわり、最大パーライトサイズが上限値を上まわっている。

0067

また、比較例7では、冷却速度(冷速)が下限値を下まわり、平均フェライト粒径が上限値を上まわり、最大パーライトサイズが上限値を上まわっている。比較例8では、冷却速度(冷速)が上限値を上まわり、ベイナイト+マルテンサイト面積率が上限値を上まわり、引張強度が上限値を上まわっている。比較例9では、冷却停止温度が上限値を上まわり、平均フェライト粒径が上限値を上まわり、最大パーライトサイズが上限値を上まわっている。

0068

また、比較例10では、サイザー絞り率の上限値を上まわり、平均転位密度の上限値を上まわっている。比較例11では、Niの含有量が下限値を下まわっている。比較例12では、Niの含有量が下限値を上まわり、ベイナイト+マルテンサイト面積率が上限値を上まわり、引張強度が上限値を上まわっている。

0069

表1に示す結果からわかるように、本発明における条件の範囲に収まれば、-80℃におけるシャルピー試験での吸収エネルギーは50J以上となったが、この範囲から外れると、-80℃では、吸収エネルギーは50Jより小さくなった。

実施例

0070

以上、実施形態を中心として本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。

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