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図面 (11)

課題

圧電片の一面側の励振電極上層側に、フッ素シランカップリング剤被覆層を形成することにより、前記圧電片の一面側の状態の変化について、安定した計測を行うこと。

解決手段

発振回路と接続される励振電極が、圧電片を挟んだ一面側と他面側とに形成され、圧電片の一面側の状態の変化を発振周波数の変化として検知する圧電センサにおいて、前記圧電片の一面側の励振電極の上層側に、フッ素シランカップリング剤の被覆層を形成しているので、前記圧電片の一面側の状態の変化について、安定した計測を行うことができる。

概要

背景

試料溶液中感知対象物感知する方法として、QCM(Quartz Crystal Microbalance)を利用した感知センサが知られている。QCMは励振電極の表面に、例えば感知対象物と結合する膜が設けられた水晶振動子を用い、試料溶液中の感知対象物の吸着による質量負荷を、水晶振動子の周波数の変化として捉えて、感知対象物の有無や定量を行うものである。

QCMは、従来から、例えば生体試料中核酸、ぺプチド、タンパク質糖鎖脂質単分子膜等を感知するバイオセンサとして利用されている。QCMセンサは、周波数安定性経時変化の安定性に優れ、微量な成分を高精度に感知できることから、本発明者は、例えば有機溶剤無機溶剤などの薬液中に含まれる成分の検出や、腐食モニタリングに利用することを検討している。この場合、センサ使用条件によっては、センサが腐食性溶液に曝されて正確な計測ができなくなり、センサを頻繁に交換する必要が生じるなどの懸念がある。

特許文献1には、QCMを利用した、液体の粘度を測定するためのセンサにおいて、振動子の表面に、汚れをはじく性質を有する被覆体を備える構成が記載されている。この技術は、振動子の表面に、ポリシロキサンフッ素樹脂主体としたエピラム処理剤からなる層を設けるものであるが、液体が腐食性である場合については言及されておらず、特許文献1には、上記の問題を解決する技術は開示されていない。

概要

圧電片の一面側の励振電極の上層側に、フッ素シランカップリング剤被覆層を形成することにより、前記圧電片の一面側の状態の変化について、安定した計測を行うこと。発振回路と接続される励振電極が、圧電片を挟んだ一面側と他面側とに形成され、圧電片の一面側の状態の変化を発振周波数の変化として検知する圧電センサにおいて、前記圧電片の一面側の励振電極の上層側に、フッ素シランカップリング剤の被覆層を形成しているので、前記圧電片の一面側の状態の変化について、安定した計測を行うことができる。

目的

本発明はこのような事情の下になされたものであり、圧電センサを構成する圧電片の一面側の励振電極の上層側に、フッ素シランカップリング剤の被覆層を形成することにより、前記圧電片の一面側の状態の変化について、安定した計測を行うことができる技術を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

発振回路と接続される励振電極が、圧電片を挟んだ一面側と他面側とに形成され、前記圧電片の一面側の状態の変化を発振周波数周波数変化として検知する圧電振動子を備え、前記一面側の励振電極の上層側には、フッ素シランカップリング剤被覆層が形成されていることを特徴とする圧電センサ

請求項2

前記被覆層は、前記圧電振動子の一面側に供給される腐食性流体から、当該被覆層の下層側の部材を保護する保護層としての機能を有することを特徴とする請求項1に記載の圧電センサ。

請求項3

前記被覆層は、前記圧電振動子の一面側に供給される流体中に含まれる感知対象物を透過させ、前記励振電極側にて吸着させることにより、前記状態の変化を生じさせる透過層としての機能を有することを特徴とする請求項2に記載の圧電センサ。

請求項4

前記被覆層は、前記圧電振動子の一面側に供給される流体中に含まれる感知対象物を吸着することにより、前記状態の変化を生じさせる吸着層としての機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の圧電センサ。

請求項5

前記励振電極が設けられた領域を第1の励振領域としたとき、前記圧電振動子には、前記第1の励振領域とは異なる領域の前記圧電片を挟んだ一面側と他面側とに、前記発振回路とは異なる発振回路と接続される他の励振電極が形成された第2の励振領域が設けられていることと、前記第2の励振領域の前記一面側の励振電極の上層側には、前記被覆層が形成されず、当該第2の励振領域は、前記圧電振動子の一面側に供給される腐食性の流体との接触に伴う前記一面側の質量変化を発振周波数の周波数変化として検知することが可能であることと、前記被覆層が形成された励振電極を含む前記第1の励振領域は、腐食性の流体とのとの接触に伴う質量変化以外の前記一面側の状態の変化を発振周波数の周波数変化として検知する参照用の励振領域を構成することと、を特徴とする請求項1に記載の圧電センサ。

請求項6

前記第2の励振領域における前記一面側の前記励振電極の上層側には、前記腐食性の流体との接触に伴う腐食により、質量が変化する金属材料金属層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電センサ。

技術分野

0001

本発明は、圧電振動子発振周波数に基づいて、圧電片の一面側の状態の変化を検知する圧電センサに関する。

背景技術

0002

試料溶液中感知対象物感知する方法として、QCM(Quartz Crystal Microbalance)を利用した感知センサが知られている。QCMは励振電極の表面に、例えば感知対象物と結合する膜が設けられた水晶振動子を用い、試料溶液中の感知対象物の吸着による質量負荷を、水晶振動子の周波数の変化として捉えて、感知対象物の有無や定量を行うものである。

0003

QCMは、従来から、例えば生体試料中核酸、ぺプチド、タンパク質糖鎖脂質単分子膜等を感知するバイオセンサとして利用されている。QCMセンサは、周波数安定性経時変化の安定性に優れ、微量な成分を高精度に感知できることから、本発明者は、例えば有機溶剤無機溶剤などの薬液中に含まれる成分の検出や、腐食モニタリングに利用することを検討している。この場合、センサ使用条件によっては、センサが腐食性溶液に曝されて正確な計測ができなくなり、センサを頻繁に交換する必要が生じるなどの懸念がある。

0004

特許文献1には、QCMを利用した、液体の粘度を測定するためのセンサにおいて、振動子の表面に、汚れをはじく性質を有する被覆体を備える構成が記載されている。この技術は、振動子の表面に、ポリシロキサンフッ素樹脂主体としたエピラム処理剤からなる層を設けるものであるが、液体が腐食性である場合については言及されておらず、特許文献1には、上記の問題を解決する技術は開示されていない。

先行技術

0005

特表2004−519695号公報

発明が解決しようとする課題

0006

本発明はこのような事情の下になされたものであり、圧電センサを構成する圧電片の一面側の励振電極の上層側に、フッ素シランカップリング剤被覆層を形成することにより、前記圧電片の一面側の状態の変化について、安定した計測を行うことができる技術を提供する。

課題を解決するための手段

0007

本発明は、発振回路と接続される励振電極が、圧電片を挟んだ一面側と他面側とに形成され、前記圧電片の一面側の状態の変化を発振周波数の周波数変化として検知する圧電振動子を備え、
前記一面側の励振電極の上層側には、フッ素シランカップリング剤の被覆層が形成されていることを特徴とする。

発明の効果

0008

本発明によれば、発振回路と接続される励振電極が、圧電片を挟んだ一面側と他面側とに形成され、圧電片の一面側の状態の変化を発振周波数の変化として検知する圧電センサにおいて、前記圧電片の一面側の励振電極の上層側に、フッ素シランカップリング剤の被覆層を形成しているので、前記圧電片の一面側の状態の変化について、安定した計測を行うことができる。

図面の簡単な説明

0009

本発明の一実施形態の圧電センサを備えた感知装置を示す斜視図である。
圧電センサの一例を示す分解斜視図である。
圧電センサの一例を示す縦断側面図である。
圧電センサに設けられた圧電振動子の一例を示す縦断側面図である。
圧電センサに設けられた被覆層の分子構造を模式的に示す説明図である。
圧電センサに設けられた被覆層の作用を説明する縦断側面図である。
本発明の圧電センサの他の適用例を示す斜視図である。
圧電センサに設けられた被覆層の作用を説明する縦断側面図である。
本発明の圧電センサのさらに他の適用例を示す斜視図である。
圧電センサに設けられた圧電振動子の他の例を示す縦断側面図である。

実施例

0010

図1図6に本発明の圧電センサをなす水晶センサの第1の実施形態を示す。この実施形態は、水晶センサ1を配管13内に設置し、配管13内を通流する液体である溶液中に含まれる感知対象物を感知する構成例である。この例では、水晶センサ1は、例えば同軸ケーブル12によって本体部11に接続され、水晶センサ1と本体部11とにより感知装置10を構成している。

0011

水晶センサ1の構成例について、図2図4を用いて説明する。図2図4中、符号20は例えば円形板状の圧電片をなす水晶片である。この水晶片20の一面側及び他面側には、夫々励振電極21、22が貼着され、圧電振動子をなす水晶振動子を構成している。励振電極21、22は、夫々水晶片20よりも小径円形状に形成され、一面側の励振電極21の上層側には、後述する被覆層3が形成される。

0012

一面側の励振電極21には、例えば励振電極21から水晶片20の周縁に向かい、水晶片20の周縁に沿って円弧状に広がるように形成された導出電極23が接続されている。この導出電極23の他端側は、例えば水晶片20の端面に沿って屈曲され、水晶片20の他面の周縁に沿って円弧状に広がる形状に形成されている。同様に、水晶片20の他面側には、導出電極24が、例えば一面側の導出電極23と同様のレイアウトで励振電極22に接続するように形成され、この導出電極24の他端側は水晶片20の端面に沿って屈曲し、水晶片20の一面側に回り込むように形成されている。

0013

励振電極21、22及び導出電極23、24は例えば箔状の金属膜により形成され、電極材料としては、金(Au)あるいは銀(Ag)などが好適であるが、流体中での周波数安定性の高さと、電極表面の酸化に強いことから金により構成することが好ましい。水晶片20の一面側における、導出電極23及び導出電極24には、外部との間で電気信号入出力をするための信号線であると共に水晶片20を保持する、一対の支持線部材25、26が夫々固着されている。図2中、符号27は支持線部材25、26の保持部材である。

0014

水晶片20は、例えば樹脂からなる矩形板状のベース体4に収容される。ベース体4の例えば3辺に沿って設けられた枠部41の内側には、水晶片20の収容領域40が区画形成され、収容領域40の底面42の中央部には、円形状の凹部43が形成されている。この凹部43は、水晶片20の他面側に形成された励振電極22の外径よりも大きくかつ水晶片20の外径よりも小さく形成される。

0015

図2、3中、符号44は、保持部材27を収容するための受け部44であり、符号45は、支持線部材25、26の末端部を収めるための切り欠き部45である。水晶片20を収容領域40内に位置させると、枠部41と受け部44との位置規制により、励振電極22が凹部43内に位置するようになっている。図3に示すように、例えば水晶片20とベース体4とは、これらに跨るように、水晶片20の全周に亘って、例えばシリコン製のケース体5により覆われており、ケース体5とベース体4とは、これらの間からの液体の侵入を抑制するように互いに固着されている。ケース体5における、水晶片20の一面側の励振電極21に対応する領域は開口部51として開口しており、これにより水晶片20の一面側は露出しつつ、凹部43が気密な空間になる。

0016

このように、水晶片20における一面側の励振電極21の周囲は、ケース体5により覆われた構造である。このため、配管13を流れる液体中に水晶センサ1を浸漬しても支持線部材25、26の末端部と同軸ケーブル12との接続部までは液体を進入させずに、溶液中で水晶センサ1を使用することが可能である。この例では、水晶センサ1は、配管13の内壁131に取り付けられており、このため、例えばベース体4はサポート部材46にて支持されて、前記内壁131に固定される。

0017

図4に示すように、水晶片20の一面側の励振電極21の上層には、フッ素シラン化合物であるフッ素シランカップリング剤の被覆層3が形成されている。この例の被覆層3は、トリエトキシ-1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルシラン(以下、POTSと言う)等のフッ素シランカップリング剤から得られたポリマー(以下、単に「フッ素シランポリマー」ともいう)により構成されている。この被覆層3は、水晶片20に一対の励振電極21、22を形成した後、一面側の励振電極21の上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法や、LPD(Liquid Phase Deposition)法を用いて成膜される。CVD法は、真空条件下にてPOTSのガス成分を励振電極21の上に堆積させる手法であり、LPD法は、一対の励振電極21、22が形成された水晶片20をフッ素シランポリマー液に浸漬して、励振電極21上にPOTSを析出させる手法である。

0018

この成膜反応においては、成膜原料であるフッ素シランカップリング剤(本例では既述のPOTS)は、加水分解反応を介して、励振電極21の表面に形成されたヒドロキシ基(−OH)と結合し、さらに縮合反応を起こす。この結果、図5に模式的に示すように、励振電極21の表面上で、強固な共有結合(M−O−Si)を介して励振電極21の表面に密着し、POTSのフッ素シランポリマー層を形成すると推察される。この被覆層3は、末端フッ素(F)を含む疎水性鎖状分子構造を有し、これにより被覆層3は、液体の透過を阻止する強い疎水性表面を形成するため、高い撥水性耐環境性を提供するものとなる。

0019

図5に示す被覆層3(フッ素シランポリマー層)中、シラン(Si)に結合する、フッ素を含む分子構造部分疎水性分子構造31と呼ぶことにする。また、前記溶液は、極性溶媒プロトン性非プロトン性のいずれであってもよい)に、疎水基を持つ分子が感知対象物として溶解しているものとする。感知対象物は、親水基も備えていることにより、極性溶媒に溶解可能であってもよいし、界面活性剤を介して極性溶媒に溶解していてもよい。

0020

被覆層3内において、ある疎水性分子構造31と、隣接する他の疎水性分子構造31との間には隙間32が形成されるが、当該隙間32には溶媒である極性溶媒分子は殆ど透過しない。一方、当該溶媒中に溶解している感知対象物は、疎水基を持っているため、上述の疎水性分子構造31同士の隙間32に進入可能な大きさとなっていれば、疎水性相互作用により隙間32を透過させることができる。上述の各特性に基づき、本例の被覆層3は、疎水基を持つ感知対象物を含んだ溶液から、感知対象物のみを透過させる機能を有する。

0021

図4に戻って説明を続けると、一面側の励振電極21と他面側の励振電極22とは、支持線部材25、26により、図4中に図示していない同軸ケーブル12を介して、例えばコルピッツ回路により構成された発振回路14に電気的に接続される。そして、測定時には、同軸ケーブル12にて水晶センサ1と本体部11とを接続することにより、励振電極21、22と発振回路14とを電気的に接続し、励振電極21、22にて形成される励振領域発振させる。なお図3中、符号121は、水晶センサ1の支持線部材25、26の端部と同軸ケーブル12との接続部121である。

0022

本体部11における発振回路14の後段側には、図示しない周波数測定部及びデータ処理部が設けられており、周波数測定部にて、入力信号である周波数信号ディジタル処理が行われ、データ処理部に入力される。データ処理部はコンピュータからなり、各種演算を行うCPUと、プログラムメモリとを備え、計測された周波数の時系列データを記憶したり、各種演算処理を行ったり、当該時系列データを表示したりする部位である。プログラムは、周波数測定部で測定された周波数信号のディジタル値に基づいて、感知対象物の感知や定量の演算処理を行うように構成されている。

0023

続いて、この感知装置10を用いて行われる、水晶片20の一面側の状態の変化の検知について、図6も参照しながら説明する。この例の水晶センサ1は、配管13内を通流する試料流体61に含まれる感知対象物62を検知するものである。前記試料流体61は、例えば工場で使用される、水溶液アルコール溶液等が例示される。また、感知対象物62は、試料流体中の疎水基を持つ分子であり、試料流体61の水やアルコール中に含まれる不純物である。

0024

測定時、水晶センサ1を発振回路14に接続すると、水晶センサ1は、一面側の被覆層3を備えた励振電極21が露出しているので、配管13中を通流する試料流体が、水晶振動子の一面側に供給されて、被覆層3に接触する。このとき、被覆層3を構成する既述の疎水性分子構造31により、試料流体61中の極性溶媒は被覆層3を殆ど透過しない。

0025

一方、試料流体6中の感知対象物62である疎水基を持つ分子は、図6に示すように、被覆層3を構成する疎水性分子構造31との間に働く疎水性相互作用により、隙間32に進入し、当該疎水性分子構造31に吸着される。なお、隙間32を透過しない大きさの感知対象物62が被覆層3の表面(上面)に吸着される場合もある。従って、被覆層3は感知対象物62を吸着させる吸着層としての機能を有することになる。

0026

こうして、感知対象物61の被覆層3への吸着により、水晶片20の一面側の状態の変化(質量負荷効果)を生じさせ、この変化が発振周波数の周波数変化として検知される。このように、試料流体61中の感知対象物62は、その濃度に応じて水晶センサ1の被覆層3に吸着し、水晶センサ1の発振周波数の低下量が変化する。従って、データ処理部では、この発振周波数の低下分を取得する。そして、例えば前記低下分と試料流体61中の感知対象物62の濃度との関係式を予め取得しておき、当該関係式と測定により得られた発振周波数の低下分とから、 試料流体61中の感知対象物62の濃度を求めるようにしてもよい。こうして、試料流体61中の感知対象物62の存在の有無の感知や、感知対象物62の定量が行われる。

0027

この実施形態では、水晶片20の一面側の励振電極21の上層側に、フッ素シランポリマーの被覆層3を形成しており、この被覆層3は液体を透過しない性質を有するので、感知対象物のみを被覆層3に吸着させることができ、試料流体中の感知対象物の感知に対して、安定した計測を行うことができる。また、比較的簡易な構成で、励振電極21と試料流体との直接的な接触を避け、耐環境性を向上させることができる。さらに例えば、試料流体が励振電極21など、被覆層3の下層側の部材に対して腐食性を有している場合には、被覆層3が保護層としての役割を果たすので、被覆層3の下層側の部材の腐食が抑制され、精度の高い計測を行うことができる。さらにまた、フッ素シランポリマーの被覆層3は、高い撥水性と高い耐環境性を備えるので、腐食性の流体内に水晶センサ1を設置するという過酷な測定環境においても、高い耐久性を確保することができる。

0028

続いて、本発明の第2の実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。この例は、感知装置10を環境大気のモニタリングに用いる構成例であり、試料流体63が環境大気であり、感知対象物64は、大気中の汚染物質である二酸化硫黄(SO2)、一酸化炭素(CO)、二酸化窒素(NO2)等を例示することができる。

0029

感知装置10は第1の実施形態と同様に構成されており、水晶センサ1は、例えば屋外である家屋7の屋根71などに、水晶振動子の一面側が環境大気と接触するように取り付けられる。発振回路等を含む本体部11、同軸ケーブル12は図示を省略するが、雨水等の影響により感知対象物64の計測を妨げない状態で屋内や屋外に設置される。

0030

この例の水晶センサ1は第1の実施形態と同様に構成されており、フッ素シランポリマーの被覆層3は、既述のように液体分子は透過しないが、疎水性分子構造31の間の隙間32に、気体分子を透過させる気体透過性を有する。従って、図8に示すように、試料流体63である環境大気中の感知対象物64である気体分子641は、隙間32を透過して励振電極21に吸着することができる。このように、この例の被覆層3は、感知対象物64である気体分子641を透過させ、励振電極21側に吸着させる透過層としての機能を有すると共に、腐食性の流体例えば雨水(酸性雨など、腐食性の物質を含んでいる場合もある)から、被覆層3の下層側の部材である励振電極21を保護する保護層としての機能を有する。

0031

なお、図8には、励振電極21に対して気体分子641を吸着させる例を示してあるが、感知対象物64(気体分子641)を吸着させる対象はこの例に限定されない。例えば、励振電極21と被覆層3との間に、感知対象物64を吸着させやすい金属からなる吸着層を設け、当該吸着層に感知対象物64が吸着させてもよい。また、図6を用いて説明した例と同様に、被覆層3(疎水性分子構造31)に対して感知対象物64を吸着させることも可能である。

0032

測定時には、図示しない同軸ケーブルにより、水晶センサ1を発振回路に接続して、環境大気中の感知対象物の感知を行う。水晶センサ1の一面側の被覆層3が形成された励振電極21は環境大気と接触するが、被覆層3により、雨水の浸透が抑制される。また、環境大気は、窒素(N2)、酸素(O2)、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)等の大気の成分に、感知対象物である汚染物質が含まれる。被覆層3は気体分子の透過層として機能するため、感知対象物64のみならず大気を構成する気体成分も隙間32を透過し得る。そこで、水晶センサ1には、汚染物質などの感知対象物64を吸着させやすく、他の大気成分との相互作用が小さい(吸着させにくい)励振電極21や被覆層3、吸着層を設けるとよい。

0033

こうして、感知対象物64の吸着により、水晶片20の一面側の状態の変化(質量負荷効果)を生じさせ、この変化が発振周波数の周波数変化として検知される。試料流体63中の感知対象物64は、その濃度に応じて水晶センサの被覆層3又は励振電極21に吸着し、その結果、水晶センサ1の発振周波数が低下する。従って、データ処理部において、例えば大気の成分による発振周波数の低下分を予め把握すると共に、感知対象物64に基づく発振周波数の低下分と感知対象物64の濃度との関係式を予め取得しておく。そして、当該関係式と、感知対象物64に基づく発振周波数の低下分とから、感知対象物64の濃度を求めるようにしてもよい。こうして、試料流体63中の感知対象物64の存在の有無の感知や、感知対象物64の定量が行われる。

0034

この実施形態においても、水晶片20の一面側の励振電極21の上層側に、フッ素シランポリマーの被覆層3を形成しているので、雨水やこれに含まれる腐食性物質の影響を抑えて、感知対象物64の感知に対して、安定した計測を行うことができる。また、被覆層3の形成により、水晶センサ1を屋外暴露で使用しても、高い耐環境性及び耐久性を確保しながら、安定した計測を行うことができる。

0035

次いで、本発明の第3の実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。この例は、水晶センサを用いて腐食のモニタリングを行うものである。ここでは、水晶センサを鉄筋コンクリート鉄筋部材金属腐食モニタリングセンサとして利用する場合を例にして説明する。図9は、鉄筋コンクリートの構造体8を示しており、図9中、符号81は鉄筋部材である。鉄筋コンクリートは、例えば直径10mm〜50mmの鉄棒よりなる鉄筋部材81を縦横に組み、これをコンクリートの芯にして補強して構成されている。

0036

鉄筋コンクリートは、塩害中性化等で鉄筋部材81が腐食して錆び、この錆びにより鉄筋部材81が膨張し、このときの膨張圧力でコンクリートを内部から破壊することが知られている。ここでは、水晶センサ9を鉄筋部材81の上に取り付け、埋設センサとしてコンクリート内に埋設された場合において、海水による塩害に基づく金属腐食をモニタリングする例について説明する。

0037

この例の水晶センサ9に設けられる水晶振動子は、例えば図10に示すように、圧電片である水晶片90の両面に、励振電極91(911,912)、92を設けて構成されている。この例では、図10に示すように、一面側の第1の励振電極911と第2の励振電極912とを互いに離間して並ぶように配置すると共に、他面側には前記2つの励振電極911、912に対する励振電極である共通電極92を配置している。こうして、第1の励振電極911と共通電極92とにより第1の励振領域93が形成され、第2の励振電極912と共通電極92とにより第2の励振領域94が形成される。

0038

第1及び第2の励振電極911、912、共通電極92は、例えば金により形成され、例えば第1及び第2の励振電極911、912の上層には、被モニタ用の金属層95が形成されている。この金属層95は、腐食性の流体(例えば既述の海水)との接触に伴う腐食により質量が変化する金属材料、例えば鉄筋部材81と共通の金属材料により形成されたものである。さらに、第1の励振電極911の金属層95の上層には、フッ素シランポリマーの被覆層3が形成されている。この被覆層3は、後述するように保護層として機能するものである。

0039

第1の励振領域93は、導電路931、932、第1の同軸ケーブルを介して第1の発振回路933に接続され、第2の励振領域94は、導電路941、942、第2の同軸ケーブルを介して第2の発振回路943に接続されている。第1の発振回路933及び第2の発振回路943を含む本体部や、第1及び第2の同軸ケーブルは、図10における図示を省略するが、本体部は例えば鉄筋コンクリートの構造体81の外部に設けられる。また、共通電極92はアースに接続される。

0040

モニタリング時、水晶センサ9の第1の励振領域93及び第2の励振領域94は夫々第1の発振回路933及び第2の発振回路943により発振し、その発振周波数が、例えば図示しないスイッチ部の切り替えにより時分割で周波数測定部に取り込まれる。
鉄筋コンクリートに海水による塩害等の影響があるときには、第2の励振領域94の第2の励振電極912の上の金属層95は、腐食性の流体である海水との接触により腐食され、削られていく。従って、第2の励振領域94では、金属層95の腐食の進行により、金属層95の質量が減少し、水晶センサ9の発振周波数が上昇するので、例えばデータ処理部では、第2の励振領域94における発振周波数の変化分Δf2を取得する。

0041

一方、第1の励振電極911の上の金属層95の上には被覆層3が形成されているので、この被覆層3により液体(海水)の侵入が妨げられ、金属層95との接触が抑制される。こうして被覆層3は、腐食性の流体である海水から被覆層3の下層側の部材を保護する保護層として機能する。従って、第1の励振領域93では、金属層95が腐食しないため、理論的には第1の励振領域93の発振周波数は変化しないはずであるが、温度変化等の外乱があった場合にはその周波数が変化するので、例えばデータ処理部では、第1の励振領域93における発振周波数の変化分Δf1を取得する。このように、第1の励振電極93はリファレンス電極であり、この場合には、水晶片90の一面側の状態の変化による発振周波数の変化は、周囲の温度変化などの外乱に基づく発振周波数の変化になる。

0042

こうして、データ処理部において、Δf2からΔf1を差し引くことにより、外乱による周波数の変化分がキャンセルされ、腐食量に応じた周波数の変化分が求められる。そして、例えば前記差分と、腐食量との関係式を予め取得しておき、当該関係式と測定により得られた差分とから、腐食量を求めるようにしてもよい。こうして、腐食の有無の感知や、腐食量の定量が行われる。

0043

この実施形態においても、水晶片90の一面側の第1の励振電極911の上層側に、フッ素シランポリマーの被覆層3を形成しているので、被覆層3の下層側の部材には、海水等の液体は透過しない。このため、一面側の水晶片90の状態の変化は、海水等の影響を受けないので、安定した計測を行うことができる。

0044

従来では、鉄筋部材81の腐食による膨張圧力によって、コンクリートが破壊され、コンクリートの表層ひび割れなどの変化が出現して初めて、腐食があることが認められる。これに対して、この実施形態の水晶センサ9は、コンクリート内に埋設された埋設センサとして使用されているので、鉄筋コンクリートの内部の鉄筋部材81の検査非破壊で行うことができ、かつ、コンクリートのひび割れ等を招く前の早期の段階で鉄筋部材81の異常を検知できる。従って、鉄筋部材81の異常が発生した初期のタイミングで対策を講じることができ、鉄筋コンクリートの構造物8の計画的な管理を実行することができるという利点がある。

0045

この実施形態では、第1の励振電極911及び第2の励振電極912の双方の上層側に金属層95を形成したが、金属層95は少なくとも第2の励振電極912の上層側に形成されるものであればよい。

0046

本発明の圧電センサにおいて、被覆層は一面側の励振電極の上層側に設ければよく、励振電極と被覆層との間に、励振電極とは異なる材料の金属層や、被覆層以外の感知対象物の吸着層を形成してもよい。被覆層が、被覆層の下層側の部材を保護する保護層として用いられるときには、圧電振動子の一面側に供給される腐食性の流体は液体でも気体でもよい。

0047

さらに、本発明の圧電センサは、上述の鉄筋コンクリートの腐食状況のモニタリングへの適用例以外に、例えば液体中の溶存ガスガス濃度の検知や腐食性のガスによる腐食のモニタリングに適用可能である。また、上述の腐食モニタリングを行うセンサ以外にも、第2の励振電極に直接または吸着層を介して感知対象物が吸着される場合において、第1の励振電極の上層側に当該第1の励振電極への感知対象物の吸着を妨げる被覆層を形成する。そして、第1の励振電極により参照用の励振領域を形成して、温度や湿度等による発振周波数の変化をキャンセルするように構成してもよい。

0048

この他、上述の各実施形態において、フッ素シランポリマーの被覆層3を構成するために用いることができるフッ素シランカップリング剤は既述のPOTSに限定されない。励振電極21や吸着層、金属層95の表面のヒドロキシ基と結合する加水分解性シリル基と、感知対象物62、64を透過させることが可能な隙間32を形成する疎水性分子構造31となるフッ化炭素鎖とを含む他の構成のフッ素シランカップリング剤を採用することもできる。

0049

1水晶センサ
14発振回路
20水晶片
21、22励振電極
3被覆層
8 感知センサ

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