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技術 内部細胞塊から腔再形成胚を作製する方法および腔再形成胚を用いたウシ個体の作出方法

出願人 国立大学法人北海道大学
発明者 川原学郡七海高橋昌志唄花子
出願日 2019年9月24日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-172732
公開日 2021年4月1日 (3ヶ月経過) 公開番号 2021-048782
状態 未査定
技術分野 微生物、その培養処理 動物の育種及び生殖細胞操作による繁殖 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 成績評価 妊娠診断 ウシ胎盤 同期化処理 細胞情報 凍結精液 SOX ジノプロスト
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図面 (8)

課題

ウシ胚盤胞より単離し内部細胞塊から機能的な腔再形成胚を作製する方法の提供を課題とする。

解決手段

ウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔形成胚を作製する方法であって、(a)受精6.0〜8.0日後のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程と、(b)単離した内部細胞塊を、胚発生培地を用いて培養する工程であって、内部細胞塊より胞胚腔を再形成した胚盤胞期胚を作製する工程とを含む、作製方法を提供する。

概要

背景

哺乳類における初期胚発生精子卵子の融合による受精卵の形成から始まり、数回の卵割を繰り返し細胞数が一定以上に達すると、内に液で満たされた腔所である胞胚腔を形成する。この発生ステージ胚盤胞期と呼ばれ、割球が将来胎子を形成する内部細胞塊(inner cell mass:ICM)と胎盤を形成する栄養外胚葉(trophectoderm:TE)とに分化する。初期胚発生機構の研究がもっとも進んでいる実験動物マウスにおいて、単離した内部細胞塊の発生能力が検証されてきたが、これまで内部細胞塊のみから個体作出成功した例はない。例えば非特許文献1は、体内由来のマウス内部細胞塊を単離および培養後、母体移植してその発生能力を観察していたことが記載されている。ただし妊娠満期までの発生能力は検証されていない。また非特許文献2は、マウスの8細胞期胚を体外培養して胚盤胞期胚を得た後、初期中期、および後期の胚盤胞期胚を用いて内部細胞塊を単離し、分化の可塑性の検証について記載する。非特許文献2は、初期の胚盤胞期胚で栄養外胚葉を再出現させることができると記載しているが、個体までの発生能力は確かめられていない。

ウシとマウスでは発生スピードに顕著な違いがあり、マウス胚胚盤胞形成より間もなくの受精約5日後で子宮着床するのに対し、ウシでは受精から胚盤胞形成までに6.5から8日間、胚盤胞形成から着床まではさらに2週間の期間を要する。これに伴い、胚盤胞期における内部細胞塊と栄養外胚葉の分化はマウスでは迅速、不可逆的であるのに対し、ウシでは緩慢で、可塑性を残している。つまり、同じ胚盤胞期であっても、ウシ内部細胞塊はマウス内部細胞塊と比べ分化の完了度が低いために、単離した内部細胞塊から再び栄養外胚葉への分化が起こり、個体発生を完了できる可能性がある。
非特許文献3は、体外受精により作出したウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊を単離して、胚性幹細胞樹立に用いるフィーダー細胞共培養することでその多能性および分化能の検証していたことが記載されている。非特許文献3には、フィーダー細胞との継代培養中に残存する栄養外胚葉の除去を行っており、培養後の単離内部細胞塊の形態は内部細胞塊単離前の胚盤胞期胚とは大きく異なる。また移植試験による個体発生能の検証が行われていない。
このように、マウス以外の種においても単離した内部細胞塊から個体発生可能であることを示す報告はこれまでに一切ない。

単離した内部細胞塊によるウシの個体生産技術育種選抜への応用が期待される。現在、育種選抜技術の一つとしてDNA配列の違いを用いるゲノミック選抜が注目されており、育種選抜の所要年数を大幅に短縮できると考えられている。さらに、受精卵の段階で遺伝的成績評価ができれば事前能力を知ったあとにウシを生産できる。過去に、ウシ胚盤胞期胚における栄養外胚葉の一部をバイオプシーとして採取した少量の栄養外胚葉細胞からDNA配列の検出に使用する研究が報告されているが、この方法により供試できる細胞数は少ないため、DNA配列の違いを検出することが困難となる。また、少量のDNAを増幅する技術と組み合わせることも構想されているが、増幅過程においてDNA塩基配列誤りが必ず生じるため、信頼性が低下するという問題点がある。
非特許文献4は、胚盤胞期よりも後の発生ステージである伸長期のウシ胚の一部の細胞を用いてDNA配列の検出を行い、栄養外胚葉を採取した伸長期胚による個体生産を行っていたことを記載している。しかしながら、現在の技術ではウシ胚を伸長期まで体外培養によって発生させることができない。

概要

ウシ胚盤胞期胚より単離し内部細胞塊から機能的な腔再形成胚を作製する方法の提供を課題とする。 ウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔形成胚を作製する方法であって、(a)受精6.0〜8.0日後のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程と、(b)単離した内部細胞塊を、胚発生培地を用いて培養する工程であって、内部細胞塊より胞胚腔を再形成した胚盤胞期胚を作製する工程とを含む、作製方法を提供する。

目的

ウシ胚盤胞期の栄養外胚葉の細胞数は100程度であるため、細胞情報としてDNAの塩基配列情報を得る場合であっても核酸増幅を行うことなく塩基配列の違いを検出するのに十分な量を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

ウシ胚盤胞由来内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法であって、前記方法は、(a)受精6.0〜8.0日後のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程と(b)単離した内部細胞塊を、胚発生培地を用いて培養する工程であって、前記内部細胞塊より腔再形成胚を作製する工程とを含む、作製方法

請求項2

請求項1に記載の作製方法であって、前記工程(a)における前記ウシ胚盤胞期胚が脱出胚盤胞期より前の胚盤胞期胚である、作製方法。

請求項3

請求項1に記載の作製方法であって、前記工程(a)における前記ウシ胚盤胞期胚が拡張胚盤胞期より前の初期胚盤胞期胚である、作製方法。

請求項4

請求項1〜3のいずれか一項に記載の作製方法であって、前記工程(b)の培養がフィーダー細胞非存在下において行われる、作製方法。

請求項5

請求項1〜4のいずれか一項に記載の作製方法であって、前記工程(b)の培養が未分化維持因子の非存在下において行われる、作製方法。

請求項6

請求項1〜5のいずれか一項に記載の作製方法であって、前記工程(b)における培養を18〜48時間行う、作製方法。

請求項7

請求項1〜6のいずれか一項に記載の作製方法であって、前記工程(a)の単離工程が、前記ウシ胚盤胞期胚を高分子化合物の存在下、界面活性剤により処理する工程を含む、作製方法。

請求項8

請求項1〜7のいずれか一項に記載の作製方法であって、前記工程(a)の前に、前記ウシ胚盤胞期胚の透明帯を除去する工程を含む、作製方法。

請求項9

請求項1〜8のいずれか一項に記載の作製方法であって、前記工程(b)において作製された胚盤胞期胚が、培養前の前記単離した内部細胞塊と比較して増加した細胞数を有する、作製方法。

請求項10

請求項1〜9のいずれか一項に記載の作製方法であって、前記工程(b)において作製された胚盤胞期胚に含まれる総細胞数に対するCDX2陽性細胞数が40%〜50%の範囲内である、作製方法。

請求項11

請求項1〜10のいずれか一項に記載の作製方法であって、前記工程(b)において作製された胚盤胞期胚が、CDX2、GATA2、DLX4、ATF3、SCUBE2、CTGF、およびGATA3からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子を発現するものである、作製方法。

請求項12

請求項1〜11のいずれか一項に記載の作製方法であって、前記工程(b)において作製された胚盤胞期胚が、CDX2、GATA2、DLX4、ATF3、SCUBE2、CTGF、およびGATA3の全ての遺伝子を発現するものである、作製方法。

請求項13

請求項1〜12のいずれか一項に記載の作製方法であって、(c)前記工程(a)のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程において得られた栄養外胚葉から細胞情報を取得する工程をさらに含む、作製方法。

請求項14

請求項1〜13のいずれか一項に記載の作製方法により得られた、胚盤胞期胚。

請求項15

ウシ作出する方法であって、請求項1〜13のいずれか一項に記載の作製方法により得られた胚盤胞期胚を受胎移植する工程を含む、作出方法

請求項16

請求項15に記載の作出方法により得られたウシ。

技術分野

0001

本発明は、内部細胞塊から腔再形成を作製する方法および腔再形成胚を用いたウシ個体作出方法に関する。

背景技術

0002

哺乳類における初期胚発生精子卵子の融合による受精卵の形成から始まり、数回の卵割を繰り返し細胞数が一定以上に達すると、胚内に液で満たされた腔所である胞胚腔を形成する。この発生ステージ胚盤胞期と呼ばれ、割球が将来胎子を形成する内部細胞塊(inner cell mass:ICM)と胎盤を形成する栄養外胚葉(trophectoderm:TE)とに分化する。初期胚発生機構の研究がもっとも進んでいる実験動物マウスにおいて、単離した内部細胞塊の発生能力が検証されてきたが、これまで内部細胞塊のみから個体作出成功した例はない。例えば非特許文献1は、体内由来のマウス内部細胞塊を単離および培養後、母体移植してその発生能力を観察していたことが記載されている。ただし妊娠満期までの発生能力は検証されていない。また非特許文献2は、マウスの8細胞期胚を体外培養して胚盤胞期胚を得た後、初期中期、および後期の胚盤胞期胚を用いて内部細胞塊を単離し、分化の可塑性の検証について記載する。非特許文献2は、初期の胚盤胞期胚で栄養外胚葉を再出現させることができると記載しているが、個体までの発生能力は確かめられていない。

0003

ウシとマウスでは発生スピードに顕著な違いがあり、マウス胚胚盤胞形成より間もなくの受精約5日後で子宮着床するのに対し、ウシでは受精から胚盤胞形成までに6.5から8日間、胚盤胞形成から着床まではさらに2週間の期間を要する。これに伴い、胚盤胞期における内部細胞塊と栄養外胚葉の分化はマウスでは迅速、不可逆的であるのに対し、ウシでは緩慢で、可塑性を残している。つまり、同じ胚盤胞期であっても、ウシ内部細胞塊はマウス内部細胞塊と比べ分化の完了度が低いために、単離した内部細胞塊から再び栄養外胚葉への分化が起こり、個体発生を完了できる可能性がある。
非特許文献3は、体外受精により作出したウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊を単離して、胚性幹細胞樹立に用いるフィーダー細胞共培養することでその多能性および分化能の検証していたことが記載されている。非特許文献3には、フィーダー細胞との継代培養中に残存する栄養外胚葉の除去を行っており、培養後の単離内部細胞塊の形態は内部細胞塊単離前の胚盤胞期胚とは大きく異なる。また移植試験による個体発生能の検証が行われていない。
このように、マウス以外の種においても単離した内部細胞塊から個体発生可能であることを示す報告はこれまでに一切ない。

0004

単離した内部細胞塊によるウシの個体生産技術育種選抜への応用が期待される。現在、育種選抜技術の一つとしてDNA配列の違いを用いるゲノミック選抜が注目されており、育種選抜の所要年数を大幅に短縮できると考えられている。さらに、受精卵の段階で遺伝的成績評価ができれば事前能力を知ったあとにウシを生産できる。過去に、ウシ胚盤胞期胚における栄養外胚葉の一部をバイオプシーとして採取した少量の栄養外胚葉細胞からDNA配列の検出に使用する研究が報告されているが、この方法により供試できる細胞数は少ないため、DNA配列の違いを検出することが困難となる。また、少量のDNAを増幅する技術と組み合わせることも構想されているが、増幅過程においてDNA塩基配列誤りが必ず生じるため、信頼性が低下するという問題点がある。
非特許文献4は、胚盤胞期よりも後の発生ステージである伸長期のウシ胚の一部の細胞を用いてDNA配列の検出を行い、栄養外胚葉を採取した伸長期胚による個体生産を行っていたことを記載している。しかしながら、現在の技術ではウシ胚を伸長期まで体外培養によって発生させることができない。

先行技術

0005

Rossant J and Lis WT., “Potential of isolated mouse inner cell masses to form trophectoderm derivatives in vivo”, Dev Biol. 1979; 70: 255-61
Wigger M et al., “Plasticity of the inner cell mass in mouse blastocyst is restricted by the activity of FGF/MAPK pathway”, Sci Rep 2017; 7: 15136
Kyle B. Dobbs et al., “Regulation of Pluripotency of Inner Cell Mass and Growth and Differentiation of Trophectoderm of the Bovine Embryo by Colony Stimulating Factor 2”, Biology of Reproduction. 2013; 89(6): 141, 1-10
Fujii T et al., “Production of calves by the transfer of cryopreserved bovine elongating conceptuses and possible application for preimplantation genomic selection”, J Reprod Dev. 2017 Oct 18; 63(5):497-504

発明が解決しようとする課題

0006

単離したウシ内部細胞塊から個体を作出する技術が確立できれば、これを用いて個体発生には参加しない単離した全栄養外胚葉細胞から細胞情報を得ることが可能となり、例えばDNAを抽出しゲノミック選抜が可能となる。ウシ胚盤胞期の栄養外胚葉の細胞数は100程度であるため、細胞情報としてDNAの塩基配列情報を得る場合であっても核酸増幅を行うことなく塩基配列の違いを検出するのに十分な量を提供することができる。これにより、サンプル量の不足や増幅に起因するエラーを回避し、正確なゲノミック選抜が可能になると考えられる。
すなわち本発明の課題は、ウシ胚盤胞期胚より単離した内部細胞塊から個体発生可能な胞胚腔を有する腔再形成胚の作製方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

本発明者らは上記課題を解決するため、特定のステージにおけるウシ胚盤胞期胚よりマイルドな条件で内部細胞塊を単離して培養したところ、胚盤腔を有する腔再形成胚を得ることに成功した。また、得られた腔再形成胚を受胎に移植したところ正常な産仔を得ることに成功した。
本発明は上記知見により完成したものであり、以下の態様を含む。
本発明は、一態様において、
〔1〕ウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法であって、前記方法は、
(a)受精6.0〜8.0日後のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程と
(b)単離した内部細胞塊を、胚発生培地を用いて培養する工程であって、前記内部細胞塊より腔再形成胚を作製する工程と
を含む、作製方法に関する。
ここで、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法は一実施の形態において、
〔2〕上記〔1〕に記載の作製方法であって、
前記工程(a)における前記ウシ胚盤胞期胚が脱出胚盤胞期より前の胚盤胞期胚であることを特徴とする。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法は一実施の形態において、
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の作製方法であって、
前記工程(a)における前記ウシ胚盤胞期胚が拡張胚盤胞期より前の初期胚盤胞期胚であることを特徴とする。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法は一実施の形態において、
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の作製方法であって、
前記工程(b)の培養がフィーダー細胞の非存在下において行われることを特徴とする。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法は一実施の形態において、
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の作製方法であって、
前記工程(b)の培養が未分化維持因子の非存在下において行われることを特徴とする。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法は一実施の形態において、
〔6〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の作製方法であって、
前記工程(b)における培養を18~48時間行うことを特徴とする。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法は一実施の形態において、
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の作製方法であって、
前記工程(a)の単離工程が、前記ウシ胚盤胞期胚を高分子化合物の存在下、界面活性剤により処理する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法は一実施の形態において、
〔8〕上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の作製方法であって、
前記工程(a)の前に、前記ウシ胚盤胞期胚の透明帯を除去する工程を含む、作製方法。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法は一実施の形態において、
〔9〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の作製方法であって、
前記工程(b)において作製された胚盤胞期胚が、培養前の前記単離した内部細胞塊と比較して増加した細胞数を有すことを特徴とする。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法は一実施の形態において、
〔10〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の作製方法であって、
前記工程(b)において作製された胚盤胞期胚に含まれる総細胞数に対するCDX2陽性細胞数が40%〜50%の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より胞胚腔を有する機能的な胚盤胞期胚の作製方法は一実施の形態において、
〔11〕上記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の作製方法であって、
前記工程(b)において作製された胚盤胞期胚が、CDX2、GATA2、DLX4、ATF3、SCUBE2、CTGF、およびGATA3からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子を発現するものであることを特徴とする。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より胞胚腔を有する機能的な胚盤胞期胚の作製方法は一実施の形態において、
〔12〕上記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の作製方法であって、
前記工程(b)において作製された胚盤胞期胚が、CDX2、GATA2、DLX4、ATF3、SCUBE2、CTGF、およびGATA3の全ての遺伝子を発現するものであることを特徴とする。
また、本発明に係るウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法は一実施の形態において、
〔13〕上記〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の作製方法であって、
(c)前記工程(a)のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程において得られた栄養外胚葉から細胞情報を取得する工程をさらに含むことを特徴とする。

0008

また、本発明は別の態様において、
〔14〕上記〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載の作製方法により得られた、胚盤胞期胚に関する。
また、本発明は別の態様において、
〔15〕ウシを作出する方法であって、
上記〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載の作製方法により得られた胚盤胞期胚を受胎牛へ移植する工程を含む、作出方法に関する。
また、本発明は別の態様において、
〔16〕上記〔15〕に記載の作出方法により得られたウシに関する。

発明の効果

0009

本発明の方法によれば、ウシ胚盤胞期胚より単離した内部細胞塊から個体発生可能な胞胚腔を有する胚盤胞期胚の作製を可能とする。また、内部細胞塊単離時に得られる栄養外胚葉由来のDNAを利用することにより、増幅工程を経ることなくDNA塩基配列の解析を可能とする試料を提供することができる。

図面の簡単な説明

0010

図1は、本発明に係る腔再形成胚の作製方法の一実施の形態を示す概要図である。
図2は、培養6.5日胚または培養8.0日胚の胚盤胞期胚、当該胚盤胞期胚より単離した内部細胞塊、および、当該内部細胞塊より形成した腔再形成胚の光学顕微鏡下で撮像した写真図である。
図3は、培養6.5日胚、培養6.5日胚より単離した内部細胞塊、および、培養6.5日胚より単離した内部細胞塊由来腔再形成胚における細胞数を示すグラフである。
図4は、培養6.5日胚、培養6.5日胚より単離した内部細胞塊、および、培養6.5日胚より単離した内部細胞塊由来腔再形成胚を抗CDX2抗体およびHoechstで染色した画像を示す。
図5は、培養6.5日胚、または、培養6.5日胚より単離した内部細胞塊由来腔再形成胚における総細胞数に対するCDX2陽性細胞数を示すグラフである。
図6は、培養6.5日胚、培養6.5日胚より単離した内部細胞塊、および、培養6.5日胚より単離した内部細胞塊由来腔再形成胚における栄養外胚葉マーカー遺伝子の発現をRT-PCR法により解析した結果を示す。
図7Aは、培養6.5日胚より単離した内部細胞塊由来腔再形成胚の受胎牛への移植により得られた産仔を示す。図7Bは、後産の胎盤および阜を示す画像である。

0011

1.定義
胚盤胞期胚とは、胚内に液で満たされた腔所である胞胚腔を形成し、将来胎仔を形成する内部細胞塊と胎盤を形成する栄養外胚葉とに分化した状態にある胚をいう。通常、ウシ胚盤胞期胚は生体内において受精約6.0日後以降に発生する。ウシ胚盤胞期胚は発生ステージの経過に伴いそのサイズを増し、いずれは透明帯から脱出し(脱出胚盤胞期胚)、その後反動物特有の胚の伸長(elongation)が生じる。通常、脱出胚盤胞期胚は受精約8.0日後以後に発生し、胚の伸長は受精約17日後以後に生じる。ウシの成熟卵子と精子を用いて体外受精を行い、受精卵を体外培養する手法が公知である。以下に限定されないが、例えば、合成卵管液 (SOF) を用いた5% CO2、5% O2、および湿度100%の 条件下で受精卵を体外培養することができ、このとき体外受精約6.0日後以降に胚盤胞期胚を形成し、体外受精約8.0日後以後に脱出胚盤胞期胚を形成するが、体外培養環境下では胚の伸長は起きない。
なお例えば受精1日後とは、精子および卵子の共培養を開始した日から1日経過した時点をいう。また例えば培養6.5日胚(D6.5胚)というとき、精子および卵子の共培養を開始した日から6.5日経過した時点の胚を意味する。
本発明に用いることのできるウシ胚盤胞期胚は生体由来であっても、生体より得られた卵子を体外にて成熟・受精させて発生させたもの、または、幹細胞始原生殖細胞多能性幹細胞人工多能性幹細胞iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、始原生殖細胞に由来する胚性生殖細胞(EG細胞)、精巣組織からのGS細胞の樹立培養過程で単離されるmultipotent germline stem細胞(mGS細胞)、骨髄間葉系細胞から単離されるMuse細胞など))より分化させた卵子または精子を体外にて成熟・受精させて発生させたものでもよい。ウシ生体からの卵子および精子の取得、体外成熟培養、体外受精、ならびに、受精卵の体外培養方法は公知であり、例えばNagatomo H et al, 2013, Biol. Reprod.を参考にして実施することができる。

0012

またウシ胚盤胞期胚は、遺伝子工学の手法を用いて遺伝子が改変されていてもよい。遺伝子を改変する方法としては、公知の方法を用いて目的とする核酸ベクターなどの導入を行うことができ、例えば、顕微注入法マイクロインジェクション)、エレクトロポーレーションリポフェクション法、ウイルスベクターを用いた核酸導入法、ゲノム編集法などを挙げることができる。また、外来遺伝子外来核酸フラグメント外来タンパク質の導入法は、遺伝子改変された生殖細胞由来のウシ胚盤胞期胚が本発明の方法により機能的な腔再形成胚を形成できる限りにおいて、上記に列挙した方法に限定されない。ウシ卵母細胞への遺伝子改変技術は、例えば、Kuroiwa Y et al, 2004, Nat. Genet.を参考にして行うことができる。

0013

内部細胞塊とは、胚盤胞期胚の内側に存在して将来胎仔を形成する細胞集団を意味する。内部細胞塊の存在は、SOX2などの内部細胞塊における特異的マーカーの発現を調べることにより確認することができる。
栄養外胚葉とは、胚盤胞期胚の外側に存在して将来胎盤を形成する細胞集団を意味する。栄養外胚葉の存在は、CDX2などの栄養外胚葉における特異的マーカーの発現を調べることにより確認することができる。
胞胚腔とは、胚内で形成される液で満たされた腔所を意味する。胞胚腔の存在は、光学顕微鏡下で胚内の腔所を容易に視認できる。また、胞胚腔を確認したときに内部細胞塊と栄養外胚葉も形態的に観察可能である。

0014

本明細書において「腔再形成胚」とは、ウシ胚盤胞期胚より単離した内部細胞塊を培養することで得られる胞胚腔を再度形成した胚をいう。また本明細書において「機能的な腔再形成胚」とは、腔再形成胚を得るために用いたウシ胚盤胞期胚と同じ機能を有することをいう。由来するウシ胚盤胞期胚と同じ機能を有するか否かを確認する手法は、注目する機能ごとに異なり胚の発生や分化能の観察、遺伝子発現の解析など公知の手法を用いて確認することができる。以下に限定されないが、例えばCDX2陽性細胞の存在の確認、総細胞数に対するCDX2陽性細胞の割合の確認、内部細胞塊の遺伝子マーカー発現解析、栄養外胚葉の遺伝子マーカーの発現解析などを挙げることができる。
また例えば、正常な産仔まで発生する機能を有するウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離し、当該内部細胞塊から得られた腔再形成は由来するウシ胚盤胞期胚と同様に産仔まで発生する機能を有する。好ましい一実施の形態において、機能的な腔再形成胚とは産仔まで発生する機能を有する腔再形成胚である。

0015

本発明の一態様は、ウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊より機能的な腔再形成胚を作製する方法に関し、当該方法は、
(a)受精6.0〜8.0日後のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程と
(b)単離した内部細胞塊を、胚発生培地を用いて培養する工程であって、前記内部細胞塊より腔再形成胚を作製する工程と
を含む。

0016

2.(a)受精6.0〜8.0日後のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程
内部細胞塊単離のために用いるウシ胚盤胞期胚は、受精6.0〜8.0日後の時期にある胚盤胞期胚を用いる。好ましい実施の形態において、内部細胞塊を単離するウシ胚盤胞期胚は、受精6.0日後〜受精7.0日後の時期にある胚盤胞期胚であり、より好ましい実施の形態においては受精6.5日後の時期にある胚盤胞期胚である。この時期にある胚盤胞期胚由来の内部細胞塊を用いることで、機能的な胚盤胞期胚の作出を可能とする。なお受精6.0日後より前の時期にある胚盤胞期胚は、作出できる割合が低率となり好ましくない。また受精8.0日後を超えた時期にある胚盤胞期胚は、腔再形成胚の作出効率が低率となり好ましくない。
また本発明に用いる内部細胞塊の単離に用いるウシ胚盤胞期胚は、ハッチング前の胚(脱出胚盤胞期胚形成前の胚盤胞期胚)であることが好ましい。よって一実施の形態において、工程(a)におけるウシ胚盤胞期胚は、ハッチング前の胚(脱出胚盤胞期胚形成前の胚盤胞期胚)である。さらに好ましい実施形態においては、ウシ胚盤胞期胚は拡張を生じる前の初期胚盤胞期胚(拡張胚盤胞期胚形成前の初期胚盤胞期胚)である。よって一実施の形態において、工程(a)におけるウシ胚盤胚は、ウシ胚盤胞期胚は拡張を生じる前の初期胚盤胞期胚(拡張胚盤胞期胚形成前の初期胚盤胞期胚)である。

0017

ウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する手法は、単離後の内部細胞塊が胞胚腔を有する機能的な腔再形成胚を再形成できる限りにおいて制限されないが、好ましくは界面活性剤を用いて内部細胞塊を単離する方法である。すなわち、工程(a)における内部細胞塊を単離する工程は、一実施の形態において、受精6.0〜8.0日後のウシ胚盤胞期胚を界面活性剤で処理する工程を含む。内部細胞塊の単離に用いることのできる界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えばTriton X-100、Tween 20などを挙げることができる。胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する方法は、内部細胞塊単離後に栄養外胚葉をバイオプシーとして利用可能な方法であることが好ましく、界面活性剤の処理はマイルドな条件で行うことが好ましい。界面活性剤としてTriton X-100を用いる場合、Triton X-100の濃度は0.1〜0.2%とすることが好ましく、0.2%とすることがより好ましい。Triton X-100の濃度が0.2%を超えると内部細胞塊まで損傷を受ける可能性があり好ましくない。Triton X-100は、PBSなどのウシ胚盤胞期胚を操作する際に一般に用いることのできる公知の緩衝液リン酸緩衝液など)に溶解させて用いることができる。ウシ胚盤胞期胚の界面活性剤を用いた処理は20〜22℃において数秒(例えば、3〜10秒間程度)処理し、反応の様子を実体顕微鏡かで確認しながら個々の胚で反応時間を調整することが好ましい。本発明において、界面活性剤処理は例えば1分を超えるような時間を要しないため、細胞に対するダメージを低減できる。界面活性剤により処理したウシ胚盤胞期胚は、界面活性剤を含まない胚操作培地(例えば、PB1)に移して栄養外胚葉を除去する。ここで、界面活性剤処理したウシ胚盤胞期胚は新しい胚操作培地などに1回または複数回移して洗浄することが好ましい。
界面活性剤により処理したウシ胚盤胞期胚は、栄養外胚葉の細胞同士の結合が崩壊しており物理的な操作によりウシ胚盤胞期胚から栄養外胚葉を除去することができる。物理的な操作は以下に限定されないが、好ましくはピペッティングを用いた除去操作である。穏やかにピペッティング操作を行うことより栄養外胚葉を容易に除去することができる。よって工程(a)における内部細胞塊を単離する工程は、一実施の形態において、ウシ胚盤胞期胚を界面活性剤で処理した後に、物理的操作によりウシ胚盤胞期胚から栄養外胚葉を除去する工程を含む。
このような界面活性剤を用いて栄養外胚葉を除去する方法は、非特許文献3に開示されるような補体による免疫学的な手法で栄養外胚葉細胞を破壊する方法等と比較して、反応時間が短く細胞へのダメージを低減でき、かつ、操作が格段に容易である点で好ましい。
この際、界面活性剤処理直後では胚が崩壊しやすいため、界面活性剤処理後は胚操作培地で静置したのちにピペッティング操作を行うことが望ましい。このとき静置する時間や温度は、栄養外胚葉除去のための物理的な操作から胚の崩壊を防ぐことができる程度の時間であれば限定されない。例えば胚操作に適した温度(例えば、約37℃)において約10〜20分程度(好ましくは約15分)静置することが好ましい。よって工程(a)における内部細胞塊を単離する工程は、一実施の形態において、ウシ胚盤胞期胚を界面活性剤で処理した後であって、物理的操作によりウシ胚盤胞期胚から栄養外胚葉を除去する前に、ウシ胚盤胞期胚を培地中で静置する工程を含む。このような静置工程は、界面活性剤処理後の洗浄工程の代わりとしても実施することができ、静置工程を含む場合には洗浄工程を省略することができる。
上記操作によりこれによりウシ胚盤胞期胚より内部細胞塊および栄養外胚葉を単離することができる。

0018

ここで上記工程(a)受精6.0〜8.0日後のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程は、一実施の形態として、ウシ胚盤胞期胚を高分子化合物の存在下、界面活性剤により処理する工程とすることができる。高分子化合物の存在下で界面活性剤による処理を行うことで、ガラスピペットへの胚の付着を防止でき、胚操作の際のウシ胚盤胞期胚へのダメージを低減することができ好ましい。
「高分子化合物」とは、分子量が数万〜数百万の有機物質であり、天然高分子生体高分子など)及び合成高分子のいずれをも含む。本発明において用いる「高分子化合物」は、特に、水に溶解しやすいこと、細胞毒性が極めて低いこと、培養中に培養液のpH等を不安定にさせる性質を有さないこと、また、その他にも初期の特性が長期間安定して維持されること、などの条件を満たすものが好ましい。例えば本発明において使用される高分子化合物としては、例えば合成ポリマーであるポリビニルピロリドンPVP;分子量約36万)、ポリビニルアルコール(PVA;分子量約7万〜10万)などが挙げられる。好ましくは、ポリビニルアルコールである。
これらの高分子化合物の一つまたは複数を、界面活性剤を含有する緩衝液に添加して用いることができる。ガラスピペットへの胚の付着を防止でき、かつ、単離内部細胞塊が腔再形成胚を形成できる限りにおいて緩衝液に添加する高分子化合物の濃度は限定されず、当業者は適宜設定することができる。例えば高分子化合物としてPVAを用いる場合には、0.1〜0.2% (w/v)の濃度となるように添加することが好ましい。

0019

本発明に係る胚盤胞期胚の作製方法は一実施の形態において、上記工程(a)の前に、ウシ胚盤胞期胚の透明帯を除去する工程を含む。ウシ胚盤胞期胚の透明帯を予め除去することにより、内部細胞塊単離のための栄養外胚葉除去の処理(例えば、上記の界面活性剤処理)をマイルドな条件で行うことができ、結果として内部細胞塊および栄養外胚葉を構成する細胞へのダメージを低減できる(例えば、界面活性剤処理後の洗浄操作が確実になる)ので好ましい。
ウシ胚盤胞期胚の透明帯を除去する方法は、ウシ胚盤胞期胚の細胞へダメージがない、または、少ない条件で透明帯を除去できる方法であれば限定されず公知の手法を用いることができる。好ましい実施の形態において、透明帯を除去する手法はプロナーゼを用いた処理方法である。プロナーゼは、胚操作培地であるPB1に溶解させ、胚を浸漬および静置するようにしてウシ胚盤胞期胚に作用させる。このときプロナーゼの濃度は0.05〜0.5%とすることが好ましく、0.05%とすることがより好ましい。プロナーゼによる処理は37℃において30秒〜5分処理し、実体顕微鏡下で反応の進行を確認しながら胚ごとに注意深く見守りながら行うことが好ましい。

0020

3.(b)単離した内部細胞塊を、胚発生培地を用いて培養する工程であって、前記内部細胞塊より腔再形成胚を作製する工程
上記工程(a)においてウシ胚盤胞期胚より内部細胞塊を単離した後、胚発生培地を用いて当該内部細胞塊を培養する。当該培養により、内部細胞塊に胞胚腔が再形成し、機能的な腔再形成胚を得ることができる。また工程(a)において単離した内部細胞塊は一つの細胞塊として単離することができ、当該一つの細胞塊のまま工程(b)の培養に用いることができる。しかしながら、単離した内部細胞塊が腔再形成胚を形成できる限りにおいて、一つの細胞塊として胚盤胞期胚から単離された内部細胞塊の一部を工程(b)の培養に用いてもよい。
ここで「胚発生培地」とは、単離した内部細胞塊を培養して機能的な腔再形成腔を再形成させるために用いる培地であり、ウシ胚盤胞期胚を発生させる際に通常用いる公知の培養液を用いることができる。胚発生培地としては、以下に限定されないが、例えばウシ初期胚培養に一般的に用いられるmSOFai培地、CR1aa培地、KSOMaa培地などを挙げることができる。胚発生培地には、さらにインスリンを含んでもよい。

0021

なおCR1aa培地およびKSOMaa培地としては、例えば下記組成のものを使用できる。

0022

胚発生培地を用いた培養は、適当なウェル内に胚発生培地を満たし、当該ウェルへ単離した内部細胞塊を移して培養する。培養条件CO2濃度、O2濃度、温度、湿度条件)は単離した内部細胞塊が機能的な腔再形成胚を得ることができる限りにおいて制限されず適宜設定することができる。以下に限定されないが例えば、5% CO2、5% O2、90%N2、38.0〜38.5℃(好ましくは38.5℃)、および、湿度100%の条件で行うことができる。また培養時間は胞胚腔が再形成され機能的な腔再形成胚が得られる限りにおいて限定されないが、18〜48時間の間継続培養とすることが好ましい。培養時間は24時間以上とすることがより好ましく、最も好ましくは約24時間の継続培養である。培養時間が18時間未満であると腔形成が未発達な腔再形成胚となり好ましくなく、一方で48時間を超えるとウシ胚の培養限界時間を超えて胚の死滅を招き好ましくない。
培養に用いる培養容器は、例えば底面コートをしていない円形ディッシュ、4穴ディッシュなどを用いることができる。

0023

また、上記工程(b)単離した内部細胞塊を、胚発生培地を用いて培養する工程であって、前記内部細胞塊より腔再形成胚を作製する工程は、一実施の形態において、フィーダー細胞の非存在下(フィーダーフリー)において培養を行う。
本明細書において「フィーダー細胞」とは、単離した内部細胞塊を培養するときに共存させる当該内部細胞塊以外の細胞のことである。フィーダー細胞としては、例えば、マウス線維芽細胞(MEF等)、ヒト線維芽細胞等が挙げられる。フィーダー細胞は、増殖抑制処理されたフィーダー細胞も含み、増殖抑制処理としては、増殖抑制剤(例えば、マイトマイシンC)処理又はガンマ線照射もしくはUV照射等による処理が挙げられる。
本明細書において、フィーダー細胞非存在下とは、フィーダー細胞非存在下にて培養することである。フィーダー細胞非存在下とは、例えば、前記のようなフィーダー細胞を添加していない条件、または、フィーダー細胞を実質的に含まない(例えば、全細胞数に対するフィーダー細胞数の割合が3%以下、好ましくは0.5%以下)の条件が挙げられる。

0024

また、上記工程(b)単離した内部細胞塊を、胚発生培地を用いて培養する工程であって、前記内部細胞塊より腔再形成胚を作製する工程は、一実施の形態において、未分化維持因子の非存在下において培養を行う。
本明細書において「未分化維持因子」とはウシ胚盤胞期胚の分化を抑制する作用を有する物質をいう。「未分化維持因子」としては、以下に限定されないが例えば、GSK3B阻害剤、CHIR99021、MEK1阻害剤(PD0325901など)を挙げることができる。未分化維持因子が由来する動物種は限定されず、通常、哺乳動物由来の未分化維持因子をいう。
未分化維持因子の非存在下とは、例えば、前記のような未分化維持因子を胚発生培地に添加していない条件、または、胚発生培地中に未分化維持因子を実質的に含まない(実質的に含まないとは、各未分化維持因子が分化抑制の作用を生じない程度の濃度でしか含まれないことを意味する)の条件が挙げられる。

0025

本発明に係る上記方法により作製された胚盤胞期胚は、好ましい一実施の形態において、胚盤胞期胚に含まれる総細胞数に対するCDX2陽性細胞数の比が、内部細胞塊単離前のウシ胚盤胞期胚における胚盤胞期胚に含まれる総細胞数に対するCDX2陽性細胞数の比と同程度である。より具体的には、単離した内部細胞塊より再形成された胚盤胞期胚に含まれる総細胞数に対するCDX2陽性細胞数の比が40%〜60%、より好ましくは45%〜55%の範囲内となる。当該比が40%〜60%の範囲内であることにより内部細胞塊単離前の胚盤胞期胚と同程度の割合となり好ましい。
「CDX2陽性細胞」とは、栄養外胚葉マーカーであるCDX2を発現している細胞を意味する。CDX2を発現している細胞は、下記実施例に示すようにCDX2に対する抗体を用いた免疫染色により確認することができ、当該方法は当業者に公知である。また胚盤胞期胚に含まれる細胞数は、核特異的な染色試薬であるHoechstを用いた計測により行うことができ、この方法は当業者に公知である。

0026

また、本発明に係る上記方法により作製された胚盤胞期胚は、好ましい一実施の形態において、CDX2、GATA2、DLX4、ATF3、SCUBE2、CTGF、およびGATA3からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子を発現している。より好ましい実施の形態において、上記方法により作製された胚盤胞期胚は、CDX2、GATA2、DLX4、ATF3、SCUBE2、CTGF、およびGATA3からなる群より選択される二以上、三以上、四以上、五以上、六以上の遺伝子を発現しており、最も好ましい実施の形態においてはCDX2、GATA2、DLX4、ATF3、SCUBE2、CTGF、およびGATA3の全ての遺伝子を発現している。
CDX2、GATA2、DLX4、ATF3、SCUBE2、CTGF、およびGATA3は、栄養外胚葉を特徴づけるマーカー遺伝子であり、上記方法により作製された胚盤胞期胚におけるこれらの遺伝子の発現は、栄養外胚葉の特徴を示し好ましい。栄養外胚葉の特徴の一つとしては、上記のように胎盤形成能を有することを挙げることができる。胚盤胞期胚においてCDX2、GATA2、DLX4、ATF3、SCUBE2、CTGF、およびGATA3の発現は、下記実施例に示すようにRT-PCR法により測定することができる。

0027

4.(c)工程(a)のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程において得られた栄養外胚葉から細胞情報を取得する工程
本発明に係る胚盤胞期胚の作製方法は一実施の形態において、(c)上記胚盤胞期胚の作製方法における工程(a)のウシ胚盤胞期胚から内部細胞塊を単離する工程において得られた栄養外胚葉から細胞情報を取得する工程を含むことができる。
本明細書において細胞情報とは、例えば、遺伝子情報(DNA塩基配列など)、遺伝子1次転写物(mRNAなど)情報(トランスクリプトーム)、タンパク質翻訳量やリン酸化酸化糖化等の修飾情報プロテオーム)、代謝産物情報(メタボローム)などを含み、好ましくはDNA塩基配列により特定される遺伝子情報である。よって栄養外胚葉から細胞情報を取得する工程における好ましい実施の形態としては、栄養外胚葉から遺伝子情報を取得する工程である。細胞よりDNAを抽出し、当該DNAの配列情報を取得および解析する手法は公知であり、市販の試薬またはキットを用いて実施することができる。ウシ胚盤胞期胚より単離した栄養外胚葉由来のDNAの配列情報を取得および解析する手法も公知であり、例えば、上記非特許文献3(Fujii T et al., J Reprod Dev. 2017 Oct 18;63(5):497-504)を参考にして行うことができる。

0028

本発明は別の態様において、ウシを作出する方法であって、上記作製方法により得られた胚盤胞期胚を受胎牛へ移植する工程を含む、作出方法を提供する。
受胎牛としては、一般的に胚移植時に実施するホルモンによる発情同期化処理を行っている牛であれば良く、例えば、品種ホルスタイン種黒毛和種などを挙げることができる。
受胎牛への胚移植は公知であり、例えば片らの方法 (Katagiri, S. & Takahashi, Y., 2006, Anim. Reprod.)に従って行うことができる。受胎牛である雌ウシに対してプロジェステロン放出装置(intravaginal progesterone releasing device ;CIDR, InterAg, Hamilton, NZ)を装着して約7日間処理する。CIDRの装着および取り外しの際に、安息香酸エストラジオールおよびプロスタグランジンF2α製剤(PG;例えばジノプロスト)を投与(例えば、筋肉注射により投与)する。ウシ胚移植に際した受胎牛に対するプロジェステロン、安息香酸エストラジオール、および、プロスタグランジンF2α製剤の投与による処置は公知であり、当業者であれば適宜投与量を調整することができる。CIDRを取り外した後、排卵超音波装置((5MHz, HS101V, Honda Electronics, Tokyo, Japan) により確認し、例えば排卵6日目の受胎牛に対して腔再形成胚の移植を行う。移植後は再びCIDRを約2週間装着し適宜妊娠診断を行う(例えば、排卵日より約26日後)。その後、通常のウシ妊娠期間(約280日)を待って産仔を得る。

0029

以下、具体的な本願発明の実施例を示すが、本願発明に包含される実施の形態は下記実施例に限定されない。

0030

(実施例1.ウシ胚盤胞期胚の作出)
ウシ胚盤胞期胚は長友らの方法 (Nagatomo, et al., 2013, Biol. Reprod.) に従って卵母細胞の体外成熟(in vitro maturation; IVM)、受精(in vitro fertilization; IVF)、および培養 (in vitro culture; IVC) により作出した。屠殺場由来の卵巣から採取した卵丘卵母細胞複合体 (cumulus-oocyte complexes; COCs)を0.01 AUFSHを含むTCM-199培地(Thermo Fisher Scientific, Inc., Waltham, MA, USA)に移して5% CO2、38.5℃、および、湿度100% の条件で22〜24時間体外成熟のための培養を行った。IVM後のCOCsを2.5 mMテオフィリン(Wako Pure Chemical Industries, Ltd., Osaka, Japan) および 7.5 μg/mLヘパリンナトリウム塩 (Nacalai Tesque, Inc., Kyoto, Japan) を添加したBrackett and Oliphant (B.O.) 培地 (Brackett BG & Oliphant, 1975, Biol. Reprod.) に移した。続いて、融解した凍結精液をB.O.培地に浮遊させて600 gで遠心洗浄し、濃度が5 x 106 個/mLの精子をCOCsと共に5% CO2、38.5℃、および、湿度100% の条件で培養した。培養18時間後に卵丘細胞をピペッティング操作により除去し、mSOFai培地 (Aono et al., 2013, Theriogenology.) に受精卵を移して5% CO2、5% O2、38.5℃、および、湿度100%の条件で体外培養し、体外受精6.5日後(D6.5) および8.0日後(D8.0) における胚盤胞期胚を作出した。
本実施例及び以下の実施例で用いたFSH含有TCM-199培地、mSOFai培地の組成を下記に示す。

0031

(実施例2.内部細胞塊の単離および継続培養)
内部細胞塊の単離は下記のようにして行った。0.05% (w/v)プロナーゼ(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.) により上記実施例1で作製した拡張する前のD6.5胚盤胞期胚および拡張した後のD8.0胚盤胞期胚の透明帯を除去した。0.2% (v/v) Triton X-100 (Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)および0.2% (v/w) polyvinyl alcohol (PVA) (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA) を含むPBSに胚を常温で5〜10秒間浸漬した後、PB1に移し、優しくピペッティングして栄養外胚葉を除去し、内部細胞塊を単離した。単離内部細胞塊をmSOFai培地に移して5% CO2、5% O2、38.5℃、および、湿度100%の条件で24時間継続培養した。培養後に胞胚腔が認められた単離内部細胞塊を腔再形成胚とした。内部細胞塊の単離および継続培養の概要を図1に示す。
腔再形成胚はD8.0胚由来の単離内部細胞塊よりもD6.5胚由来の単離内部細胞塊から形成した腔再形成胚の方が、胞胚腔が発達していた(図2)。また単離内部細胞塊を24時間培養した際の腔再形成率はD6.5胚由来の単離内部細胞塊が90%以上であり、D8.0胚由来の単離内部細胞塊は50%程度であった。D6.5胚由来の単離内部細胞塊から形成した腔再形成胚について核特異的な染色試薬であるHoechstを用いて細胞数の計測を行ったところ、内部細胞塊単離前のD6.5胚と比べて細胞数が減少していたものの、単離内部細胞塊と比べると増加していた(図3)。
本実施例及び以下の実施例で用いたPB1培地の組成を下記に示す。

0032

(実施例3.免疫染色およびRT-PCR
腔再形成胚において胎盤を形成するために必要な栄養外胚葉の再出現を検証するために、栄養外胚葉マーカーであるCDX2について免疫染色を行った。具体的には、D6.0胚の内部細胞塊由来腔再形成胚を固定、透過処理、およびブロッキングし、300倍希釈したanti-CDX2 (ab76541, rabbit monoclonal, Abcam, Cambridge, UK) を37°Cの一晩で反応させた。続いて、400倍希釈したAlexa Fluor 555 goat anti-rabbitIgG(A21428, polyclonal, Invitrogen, Carlsbad, USA) を20-22°Cの30分間で反応させた。DNAを染色するために、25 μg/mL Hoechst 33342 (Sigma-Aldrich) を用い、常温、5分間で反応させた。蛍光シグナルはLAS X withDMi8蛍光顕微鏡(Leica, Tokyo, Japan) を用いて検出された。取得画像を用いてCDX2陽性細胞数および総細胞数を手動で計測した。
その結果、D6.5胚の内部細胞塊由来腔再形成胚にCDX2陽性細胞が認められた(図4)。D6.5胚の内部細胞塊由来腔再形成胚において、総細胞数に対するCDX2陽性細胞数の割合はD6.5胚と同様に50%程度であった(図5)。
さらに、栄養外胚葉マーカー遺伝子の発現を確認するためRT-PCR法を用いて解析を行った。具体的には、D6.5胚の内部細胞塊由来腔再形成胚を10個で1サンプルとして供試した。RNA抽出にはReliaPrepTM RNA Cell Miniprep System (Promega, Madison, USA) を、cDNA合成にはReverTra Ace qPCR RT Master Mix (Toyobo, Osaka, Japan) を用い、キット推奨プロトコールに従った。PCR反応液にはGoTaq(登録商標) Green Master Mix (Promega) および1μMのフォワードおよびリバースプライマー(表6)を用いた。

0033

PCR反応は94℃で5分間の初期変性を1サイクルに続いて、94℃で30秒、58~62℃で30秒、72℃で1分間の31-36サイクルの条件で行われた。
その結果、D6.5胚の内部細胞塊由来腔再形成胚において、D6.5胚と同様に、栄養外胚葉マーカー遺伝子であるCDX2、GATA2、DLX4、ATF3、SCUBE2、CTGF、およびGATA3の発現を検出した(図6)。
このように、胚盤胞期胚より単離した内部細胞塊由来の腔再形成胚は、栄養外胚葉を再形成していることが確認された。

0034

(実施例4.DNA抽出)
内部細胞塊を単離後に得られた栄養外胚葉から解析に十分な量のDNAが得られるかどうか検証するために、分光光度計を用いて抽出したDNA量を測定した。
具体的には、上記実施例2において内部細胞塊単離のためにD6.5の胚盤胞期胚より除去した栄養外胚葉についてDNA抽出を行った。0.5% (v/v) Tween 20および0.02% (v/w)プロナーゼにより栄養外胚葉細胞を溶出し、95℃、2時間でヒートブロックすることでDNAを抽出した。DNA量測定にはNanoDrop (Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いた。
その結果、270 ng以上のDNAが得られ、この量は過去の知見で報告されているデータ (J. Reprod. Dev. 63(5): 497−504, 2017) からDNA配列の検出に利用できると考えられた。

実施例

0035

(実施例5.受胎牛への胚移植)
胚移植は片桐らの方法 (Katagiri, S. & Takahashi, Y., 2006, Anim. Reprod. Sci., 2006 Sep;95(1-2):54-66.)に従って行われた。北海道大学で飼養されている雌ウシに対して膣内プロジェステロン放出装置(intravaginal progesterone releasing device ;CIDR, InterAg, Hamilton, NZ) で7日間処理し、CIDRの装着および取り外しの際に、2 mg安息香酸エストラジオール、および25 mgジノプロストで処理した。CIDRを取り外した後、排卵を超音波装置((5MHz, HS101V, Honda Electronics, Tokyo, Japan) により確認した。排卵6日目の受胎牛に対して2個の腔再形成胚の移植を行った。移植後にCIDRを2週間装着し、排卵約26日後に妊娠診断を行った。その後、妊娠282日目である2018年6月24日に産仔が得られた(図7A)。さらに、後産の宮阜の数を計測したところ92個であり一般的なウシ胎盤の宮阜数と同等であった(図7B)。出生個体は2019年4月現在、健康面に関して異常が認められることなく生存し続けている。

0036

これまでに報告された研究において、ウシ胚盤胞期胚由来の内部細胞塊を培養して母体への移植後、妊娠満期の個体発生能力を検証した例はなく、ウシ内部細胞塊が栄養外胚葉を再出現させることを証明しつつ個体発生能を有していることを示した初めての例である。また、これまでの着床前胚における遺伝子診断ではバイオプシーにより採取された高々数個の細胞が解析に用いられてきたが、本発明では単離した全栄養外胚葉細胞を用いることにより数十個の細胞を供試することが可能となり、実際に抽出されたDNAの総量も270 ng以上と増幅無しでDNA塩基配列の違いを検出するのに十分な量である。

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