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図面 (15)

課題

炎症性腸疾患に対する、新規且つ有効な予防又は治療手段等を提供する。

解決手段

クロドロン酸またはその塩等の小胞型核酸トランスポーター(VNUT阻害作用を有する化合物を含有してなる、炎症性腸疾患の予防又は治療用医薬組成物による。

概要

背景

炎症性腸疾患(IBD)は主に潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)に大別され、どちらも腸管の炎症を主徴とする難治性の疾患で、UCは1975年、CDは1976年から厚生労働省指定の特定疾患治療研究対象に指定されている。患者数は常に増加の一途をたどり、現在国内にはUCが約17万人、CDが約4万人の患者が特定疾患医療受給者証の交付を受けている(非特許文献1)。

IBDは遺伝要因環境要因・免疫要因が複雑に関与する多因子疾患である。疾患関連遺伝子として現在では160以上の遺伝子が同定されている(非特許文献2)。UC、CDに共通する疾患関連遺伝子としては「IL23シグナル」に関連する遺伝子、CDに特異的な関連遺伝子としては主に「細胞内細菌処理」に関わる遺伝子、UCに特異的な遺伝子としては「消化管上皮バリア異常」に関与する遺伝子群などが多く同定されている。

環境要因として、食事衛生状態・薬物など腸管が曝露される様々な因子リスクとなっているが、現在特に注目されているのが腸内細菌との関連である。この点に着目したIBDへの治療アプローチとして抗生物質プロバイオティクスなどが試みられている。

このような背景を持つ疾患の治療として、これまでは抗炎症剤(5−ASA製剤、ステロイド)、免疫抑制剤などが使用されてきた。また、日本ではエレタールなどの栄養剤を使った栄養療法血球成分除去療法なども選択されている。近年では抗TNFα抗体製剤が効果を上げているが、依然としてIBDを完治させる治療法確立されていない。IBDは直接死に至る疾患ではないが、寛解再燃を繰り返す特徴を持つ。その過程手術に至るような穿孔出血、癌の合併が起こるなど患者のQOLを著しく低下させる。現在、長期にわたって寛解維持をするための治療法が求められている。

非特許文献3には、リポソームマクロファージ特異的に取り込まれることが報告されており、クロドロン酸封入されたリポソームの投与により、マクロファージ特異的に細胞死誘導できることが報告されている。また、同文献には、クロドロン酸がリポソームに封入されていない場合は、マクロファージの細胞死が誘導されないことが記載されている。非特許文献4には、IBDを自然発症するインターロイキン10欠損マウスに、クロドロン酸が封入されたリポソームを投与してマクロファージを殺傷することにより、該マウスの炎症を緩和させたことが報告されている。一方で、IBDの発症前からクロドロン酸が封入されたリポソームを投与すると、IBDの発症が早まり、悪化を促進することが報告されている(非特許文献5)。

ところで、小胞型核酸トランスポーター(VNUT;vesicular nucleotide transporter)は細胞内の分泌小胞ATPを能動的に取り込むトランスポーターとして2008年に岡山大の澤田らによって同定された。ATPはエネルギー通貨としての役割だけではなく、細胞間のシグナル伝達物質として作用し、痛みの伝達・尿意の伝達・インスリン分泌シグナルの伝達など多岐にわたる生理機能に関与している。このATPはVNUTによって細胞内の小胞に蓄えられ、細胞にATP放出刺激が加わると、開口放出によって分泌されることが知られている。しかしながら、VNUTと炎症性腸疾患との関係はこれまで全く知られていなかった。

概要

炎症性腸疾患に対する、新規且つ有効な予防又は治療手段等を提供する。クロドロン酸またはその塩等の小胞型核酸トランスポーター(VNUT)阻害作用を有する化合物を含有してなる、炎症性腸疾患の予防又は治療用医薬組成物による。

目的

本発明の目的は、炎症性腸疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

請求項2

該疾患の寛解期における投与用である、請求項1に記載の医薬組成物

請求項3

VNUT阻害活性を有する化合物が、クロドロン酸又はその塩である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。

請求項4

炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。

請求項5

予防上又は治療上有効量のVNUT阻害活性を有する化合物を、その投与が必要な対象に投与することを含む、炎症性腸疾患の予防又は治療方法

請求項6

該疾患の寛解期に投与することを特徴とする、請求項5に記載の予防又は治療方法。

請求項7

VNUT阻害活性を有する化合物が、クロドロン酸又はその塩である、請求項5又は6に記載の予防又は治療方法。

請求項8

炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の予防又は治療方法。

技術分野

0001

本発明は、炎症性腸疾患の予防用又は治療用医薬組成物に関する。より詳細には、本発明はクロドロン酸等の小胞型核酸トランスポーター(VNUT)を含む、炎症性腸疾患の予防用又は治療用医薬組成物に関する。

背景技術

0002

炎症性腸疾患(IBD)は主に潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)に大別され、どちらも腸管の炎症を主徴とする難治性の疾患で、UCは1975年、CDは1976年から厚生労働省指定の特定疾患治療研究対象に指定されている。患者数は常に増加の一途をたどり、現在国内にはUCが約17万人、CDが約4万人の患者が特定疾患医療受給者証の交付を受けている(非特許文献1)。

0003

IBDは遺伝要因環境要因・免疫要因が複雑に関与する多因子疾患である。疾患関連遺伝子として現在では160以上の遺伝子が同定されている(非特許文献2)。UC、CDに共通する疾患関連遺伝子としては「IL23シグナル」に関連する遺伝子、CDに特異的な関連遺伝子としては主に「細胞内細菌処理」に関わる遺伝子、UCに特異的な遺伝子としては「消化管上皮バリア異常」に関与する遺伝子群などが多く同定されている。

0004

環境要因として、食事衛生状態・薬物など腸管が曝露される様々な因子リスクとなっているが、現在特に注目されているのが腸内細菌との関連である。この点に着目したIBDへの治療アプローチとして抗生物質プロバイオティクスなどが試みられている。

0005

このような背景を持つ疾患の治療として、これまでは抗炎症剤(5−ASA製剤、ステロイド)、免疫抑制剤などが使用されてきた。また、日本ではエレタールなどの栄養剤を使った栄養療法血球成分除去療法なども選択されている。近年では抗TNFα抗体製剤が効果を上げているが、依然としてIBDを完治させる治療法確立されていない。IBDは直接死に至る疾患ではないが、寛解再燃を繰り返す特徴を持つ。その過程手術に至るような穿孔出血、癌の合併が起こるなど患者のQOLを著しく低下させる。現在、長期にわたって寛解維持をするための治療法が求められている。

0006

非特許文献3には、リポソームマクロファージ特異的に取り込まれることが報告されており、クロドロン酸が封入されたリポソームの投与により、マクロファージ特異的に細胞死誘導できることが報告されている。また、同文献には、クロドロン酸がリポソームに封入されていない場合は、マクロファージの細胞死が誘導されないことが記載されている。非特許文献4には、IBDを自然発症するインターロイキン10欠損マウスに、クロドロン酸が封入されたリポソームを投与してマクロファージを殺傷することにより、該マウスの炎症を緩和させたことが報告されている。一方で、IBDの発症前からクロドロン酸が封入されたリポソームを投与すると、IBDの発症が早まり、悪化を促進することが報告されている(非特許文献5)。

0007

ところで、小胞型核酸トランスポーター(VNUT;vesicular nucleotide transporter)は細胞内の分泌小胞ATPを能動的に取り込むトランスポーターとして2008年に岡山大の澤田らによって同定された。ATPはエネルギー通貨としての役割だけではなく、細胞間のシグナル伝達物質として作用し、痛みの伝達・尿意の伝達・インスリン分泌シグナルの伝達など多岐にわたる生理機能に関与している。このATPはVNUTによって細胞内の小胞に蓄えられ、細胞にATP放出刺激が加わると、開口放出によって分泌されることが知られている。しかしながら、VNUTと炎症性腸疾患との関係はこれまで全く知られていなかった。

先行技術

0008

渡辺守著「IBD炎症性腸疾患を究める」メジカルビュー社、2011年10月21日
Jostins, L., et al., Host-microbe interactions have shaped the genetic architecture of inflammatory bowel disease. Nature, 2012. 491(7422):p.119-24
Naito, M., et al., J Leukoc Biol. 1996 Sep;60(3):337-44.
Watanabe, N., et al., Dig Dis Sci. 2003 Feb;48(2):408-14.
Qualls JE, et al., J Leukoc Biol. 2006 Oct;80(4):802-15.

発明が解決しようとする課題

0009

本発明の目的は、炎症性腸疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供することであり、それを用いた炎症性腸疾患の予防又は治療方法を提供することである。炎症性腸疾患は、寛解と再燃を繰り返す難治性の疾患であり、その根本的な治療法は現在までのところ知られておらず、再発性の炎症性腸疾患に対する効果的な予防薬及び治療薬の開発が求められている。従って、本発明の目的は、炎症性腸疾患の予防又は治療用の医薬組成物を提供することであり、それを用いた炎症性腸疾患の予防又は治療方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行う過程で、炎症性腸疾患患者大腸に小胞型核酸トランスポーター(VNUT)が強く発現することを見出し、さらに、活動期のみならず寛解期においても、炎症性腸疾患患者の病変部でのVNUTの発現が亢進していることを見出した。また本発明者らは、クロドロン酸が高い選択性をもってVNUTを阻害する活性を有する化合物であることを見出した。クロドロン酸の塩の形態であるクロドロネートは、第一世代ビスホスホネート系の骨粗鬆症治療薬として欧米で上市されていたものであるが、現在はさらに効果の強い第二、第三世代のビスホスホネートに置き換わっている。さらに、本発明者らは、VNUT阻害活性を有する化合物を投与することによって、炎症性腸疾患を治療することができることを見出し、本発明を完成するに至った。

0011

すなわち、本発明は以下の通りのものである。
(1)小胞型核酸トランスポーター(VNUT)阻害活性を有する化合物を含有してなる、炎症性腸疾患の予防又は治療用医薬組成物。
(2)該疾患の寛解期における投与用である、(1)に記載の医薬組成物。
(3)VNUT阻害活性を有する化合物が、クロドロン酸又はその塩である、(1)又は(2)に記載の医薬組成物。
(4)炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病である、(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5)予防上又は治療上有効量のVNUT阻害活性を有する化合物を、その投与が必要な対象に投与することを含む、炎症性腸疾患の予防又は治療方法。
(6)該疾患の寛解期に投与することを特徴とする、(5)に記載の予防又は治療方法。
(7)VNUT阻害活性を有する化合物が、クロドロン酸又はその塩である、(5)又は(6)に記載の予防又は治療方法。
(8)炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病である、(5)〜(7)のいずれかに記載の予防又は治療方法。
(9)被検物質が、VNUTを阻害し得るか否かを評価する工程を含む、炎症性腸疾患の予防剤又は治療剤スクリーニング方法
(10)クロドロン酸又はその塩を有効成分として含有するVNUT阻害剤

発明の効果

0012

本発明によれば、これまで効果的な予防又は治療薬が存在しなかった、再発性の炎症性腸疾患に対する予防又は治療が可能となる。
また、本発明によれば、VNUTの阻害という新たなメカニズムに基づく炎症性腸疾患の予防又は治療に有用な医薬スクリーニングが可能となる。

図面の簡単な説明

0013

図1は、潰瘍性大腸炎(UC)患者での、インターロイキン17a(IL−17a)(a)、VNUT(b)、及びCD11b(Mac−1)(c)の発現を示す図である。***P<0.001
図2は、各種のビスホスホネートのVNUTに対する阻害効果を示す図である。精製VNUTを含むプロテオリポソームによるΔψ依存的なATP取り込みに対する、2分間でのビスホスホネートの阻害効果を、10mM Cl−の存在下で分析し、50%阻害に必要な濃度として示す。ビスホスホネートとしては、第一世代ビスホスホネート(クロドロン酸、エチドロン酸チルドロン酸、メドロン酸、ジフルオロメチレンジホスホン酸)、第二世代ビスホスホネート(パミドロン酸アレンドロン酸ネリドロン酸、イバンドロン酸)、第三世代ビスホスホネート(リセドロン酸ミノドロン酸ゾレドロン酸)、その他(メチレンビスホスホン酸ジクロライドピロリン酸)を用いた。n=3〜13。これまでの報告に基づく、各種ビスホスホネートの骨粗鬆症阻害効果(骨吸収阻害効果)の程度を次のように示す;−、無し;+、弱い;++、中程度;+++、強い;++++、非常に強い。NT試験されていない。
図3aは、小胞型核酸トランスポーター(VNUT)、小胞型グルタミン酸トランスポーター1(VGLUT1)、VGLUT2、VGLUT3、小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT)、小胞型抑制性アミノ酸トランスポーター(VIAAT)、小胞型モノアミントランスポーター2(VMAT2)及びNa+−リン酸共輸送体1(NPT1)の精製の程度を示す図である。各精製タンパク質(5μg)を10%SDS−PAGEし、CBB染色により可視化した。図3bは、VNUT、VGLUT1、VGLUT2、VGLUT3、VEAT、VIAAT、VMAT2及びNPT1に対する、クロドロン酸又はエチドロン酸の阻害効果を示す図である。
図4は、クロドロン酸投与条件下又は非投与条件下における、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS大腸炎マウスの体重変化率を示す図である。投与1日目の体重を100とした時の体重の値を示した。DSS摂取により6日間で約7%の体重減少がみられたが、クロドロン酸投与により体重減少が抑制された。
図5は、クロドロン酸投与条件下又は非投与条件下における、DSS大腸炎マウスの下痢(左)・血便(右)スコアを示す図である。DSS摂取により下痢が誘発されたが、クロドロン酸投与により症状が抑制された。
図6は、クロドロン酸投与条件下又は非投与条件下における、DSS大腸炎マウスの大腸の長さ(cm)を示す図である。DSS摂取により大腸長の短縮がみられたが、クロドロン酸投与により短縮が抑制された。
図7は、クロドロン酸投与条件下又は非投与条件下における、DSS大腸炎マウスのDisease Activity Index(DAI)を示す図である。DSS摂取によりDAIが高値となったが、クロドロン酸投与により抑制された。*P<0.05
図8は、クロドロン酸投与条件下又は非投与条件下における、2%DSS投与大腸炎マウスのクリプト構造の欠損率を示す図である。DSS摂取によりクリプト構造欠損率が増加したが、クロドロン酸投与により抑制された。
図9は、クロドロン酸投与条件下又は非投与条件下における、DSS大腸炎マウスの筋層肥厚(mm)(大腸の上部)を示す図である。DSS摂取により筋層の肥厚がみられたが、クロドロン酸投与により抑制された。
図10は、クロドロン酸投与条件下又は非投与条件下における、DSS大腸炎マウスの筋層の肥厚(mm)(大腸の下部)を示す図である。DSS摂取により筋層の肥厚がみられたが、クロドロン酸投与により抑制された。
図11は、クロドロン酸投与条件下又は非投与条件下における、DSS大腸炎マウスの大腸長の比較を示す図である。DSS摂取により大腸長の短縮がみられ、ポジティブコントロール薬効があることが知られている薬剤)として用いたシクロスポリンAの投与、及びクロドロン酸の投与により抑制がみられた。**P<0.01
図12は、クロドロン酸投与条件下又は非投与条件下における、DSS大腸炎マウスの大腸長の比較を示す図である。DSS誘発マウス急性大腸炎モデル及び再燃モデルにおいて、クロドロン酸の投与により大腸長の短縮が抑制された。**P<0.01、***P<0.001
図13は、クロドロン酸の皮下若しくは経口投与抗腫瘍壊死因子(TNF)α抗体の腹腔内投与又は5−アミノサリチル酸(5−ASA)経口投与による、大腸炎抑制効果の比較を示す図である。クロドロン酸の経口投与は、特に高い大腸炎抑制効果を示した。**: P<0.01、***: P<0.001、#: P<0.1
図14は、Cl−との競合を介して、クロドロン酸がVNUTを可逆的に阻害することを示す図である。(a)高濃度のクロドロン酸を添加しても、Δψは影響を受けない。100μMクロドロン酸の非存在下(コントロール塗りつぶされたバー)又は存在下(灰色バー)における、バリノマイシン誘発Δψ形成を、2分において、Δψの指標であるオキソノール蛍光クエンチングにより測定した。コントロールの活性は、カルボニルシアニド−m−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)存在下における値を差し引いた。(b)100nMクロドロン酸の存在下(白三角)若しくは非存在下(黒丸)又はバリノマイシンの非存在下(白丸)、1分での、様々な[Cl−]におけるΔψ依存的なATPの取り込み。(c)100nMクロドロン酸の存在下(白三角)又は非存在下(黒丸)での、ATPの取り込みのHillプロット。データは図14bから得た。(d)表示の濃度の化合物の存在下又は非存在下での、UV照射時の20μMビオチン−11−ATPを用いたVNUTタンパク質(4μgタンパク質)の光親和性標識(上)。それぞれの精製タンパク質(4μgタンパク質)を、10%SDS/PAGEにより解析し、クマシーブリリアンブルー染色により可視化した(下)。マーカータンパク質の位置を左側に示した。(e)1μMクロドロン酸による阻害は、プロテオリポソームのウオッシュにより完全に覆された。データは平均±SE、n=3〜9、**P<0.01;NS、有意差なし(Student’st検定)。

0014

以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常に用いられる意味を有する。

0015

本発明者らは、寛解期及び活動期のいずれにおいても、炎症性腸疾患患者の病変部での小胞型核酸トランスポーター(VNUT;vesicular nucleotide transporter又はSLC17A9;solute carrier family 17,member 9とも呼ばれる)の発現が亢進していることを見出し、該疾患を有する動物に、VNUT阻害活性を有する化合物を投与することによって炎症性腸疾患を治療することができることを見出した。

0016

より詳細には、本発明者らは、潰瘍性大腸炎患者の病変部において、炎症時にVNUT発現量が亢進し、この亢進したVNUTの発現量が寛解期においても高いまま維持されることを見出した。さらに、本発明者は、クロドロン酸がVNUT選択的な抑制作用を有することを見出し、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の飲水投与により作製した潰瘍性大腸炎モデルマウスに対し、クロドロン酸を投与することにより、該疾患の予防又は治療を行うことを試みた。その結果、1)体重の減少、2)大腸の長さの短縮、3)Disease Activity Index(DAI)の上昇、4)下痢・血便の発生等の潰瘍性大腸炎の症状を緩和させることに成功した。さらに、DSSの繰り返し投与により作製した再燃モデルにおいても、大腸の長さの短縮等の症状の増悪を緩和させ再燃を抑制させることに成功した。

0017

1.小胞型核酸トランスポーター(VNUT)阻害活性を有する化合物を含有してなる、炎症性腸疾患の予防又は治療用医薬組成物(本明細書中、本発明の医薬組成物とも称する。)

0018

本発明は、小胞型核酸トランスポーター(VNUT)阻害活性を有する化合物を含有してなる、炎症性腸疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。

0019

VNUTは、細胞内の分泌小胞内に能動的にアデノシン三リン酸(ATP)を取り込む作用を有するトランスポーターであり、ATPの分泌小胞内への蓄積及びATPの細胞外への放出にも不可欠な役割を担っていることが報告されている。

0020

VNUTのヌクレオチド配列アミノ酸配列は公知である。ヒト及びマウスのVNUTの代表的なヌクレオチド配列及びアミノ酸配列が、NCBIに以下の通りに登録されている。
ヒトVNUT(アイソフォーム1)ヌクレオチド配列(cDNA配列):アクセッション番号NM_022082.3、アミノ酸配列:アクセッション番号NP_071365.3
ヒトVNUT(アイソフォーム2)ヌクレオチド配列(cDNA配列):アクセッション番号NM_001302643.1、アミノ酸配列:アクセッション番号:NP_001289572.1
マウスVNUTヌクレオチド配列(cDNA配列):アクセッション番号NM_183161.3、アミノ酸配列:アクセッション番号NP_898984.3

0021

本明細書中、VNUT阻害活性を有する化合物とは、VNUTの機能を阻害する化合物をいう。具体的には、「VNUTの機能」とは、細胞内分泌小胞へのATPの取り込みや細胞外へのATPの放出等が挙げられ、「VNUTの機能を阻害する」とは、例えば、VNUTによる小胞へのATPの取り込みを阻害する、VNUTによる小胞性ATPの細胞外への放出を阻害する等を指し、例えば、「VNUTの発現を抑制する」ことも結果としてVNUTによるATPの取り込みを阻害するため、VNUTの機能を阻害することに含まれる。
本明細書中、「VNUT阻害活性を有する化合物」とは、例えば、VNUTによるATPの取り込みを阻害する効果を有する化合物、VNUTにより細胞外へのATPの放出を阻害する効果を有する化合物等を指し、具体的には、VNUTとCl−との結合を阻害する化合物、ATPアナログなどのVNUTと結合しVNUTとATPとの結合を阻害する化合物、VNUTの発現を特異的に抑制する核酸等のVNUTの発現を特異的に抑制する化合物などが挙げられる。
VNUTに対するアンチセンス核酸等のVNUTの発現を特異的に抑制する核酸、又はこれらの核酸を発現し得るベクターも、VNUTの発現を抑制することにより結果としてVNUTによるATPの取り込みを阻害するため、VNUT阻害活性を有する化合物に含まれ得る。VNUT阻害活性を有する化合物としては、VNUTの機能を阻害する限り特に限定されることではないが、例えば、アセト酢酸3−ヒドロキシ酪酸等のケトン体グリオキシル酸、クロドロン酸、及びVNUTの発現を特異的に抑制する核酸又はこれらの核酸を発現し得るベクター等が挙げられる。
好ましくは、VNUT阻害活性を有する化合物は、アセト酢酸及び3−ヒドロキシ酪酸等のケトン体、グリオキシル酸、又はクロドロン酸であり、より好ましくはアセト酢酸、グリオキシル酸、3−ヒドロキシ酪酸及びクロドロン酸からなる群より選択されるVNUT阻害活性を有する化合物であり、さらに好ましくは、クロドロン酸である。

0022

本発明に用いられるVNUT阻害活性を有する化合物は、VNUT阻害活性を有する限り特に限定されず、無機塩基有機塩基無機酸、有機酸等との塩の形態であってもよい。上記無機塩基との塩の例としては、例えばナトリウム塩カリウム塩などのアルカリ金属塩カルシウム塩マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ならびにアルミニウム塩アンモニウム塩などが挙げられる。上記有機塩基との塩の例としては、例えばトリメチルアミントリエチルアミンピリジンピコリンエタノールアミンジエタノールアミントリエタノールアミンジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンとの塩が挙げられる。上記無機酸との塩の例としては、例えば塩酸臭化水素酸硝酸硫酸、リン酸との塩が挙げられる。上記有機酸との塩の例としては、例えばギ酸酢酸トリフルオロ酢酸フマル酸シュウ酸酒石酸マレイン酸クエン酸コハク酸リンゴ酸メタンスルホン酸ベンゼンスルホン酸p−トルエンスルホン酸との塩が挙げられる。これらの塩のなかでも、薬理学的に許容される塩が好ましい。

0023

本発明に用いられるVNUT阻害活性を有する化合物は、結晶であっても非結晶であってもよく、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、いずれもVNUT阻害活性を有する化合物に包含される。

0024

本発明に用いられるVNUT阻害活性を有する化合物は、同位元素(例、3H,14C,35S等)等で標識されていてもよい。

0025

クロドロン酸(CAS:10596−23−3)は、ジクロロメチレンビス(ホスホン酸)とも呼ばれる化合物であり、その塩であるクロドロネートはビスホスホネートの一種として知られている。ビスホスホネートは、破骨細胞枯渇させ骨吸収を阻害することが知られており、クロドロネートも、骨粗鬆症等の骨疾患の治療剤として、従来より使用されている(商品名:BONEFOS(Bayer)等)。また、特開2001−131073には、クロドロン酸の疼痛治療剤としての使用が教示されている。

0026

本発明に用いられるクロドロン酸は、J.Org.Chem.32 4111(1967)記載の方法等により製造することもできる。また、クロドロン酸は、既に骨粗鬆症の骨疾患治療剤として販売されているため、これらの市販薬を用いてもよく、東京化成工業株式会社、Sigma−Aldrich社などから販売されている試薬を用いてもよい。

0027

本発明に用いられるクロドロン酸は、無機塩基、有機塩基、無機酸、有機酸等との塩の形態であってもよい。上記無機塩基との塩の例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。上記有機塩基との塩の例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンとの塩が挙げられる。上記無機酸との塩の例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸との塩が挙げられる。上記有機酸との塩の例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸との塩が挙げられるが、これらに限定されない。これらの塩のなかでも、薬理学的に許容される塩が好ましい。
好ましくは二ナトリウム塩が挙げられる。
一態様として、クロドロン酸は、クロドロン酸の二ナトリウム塩四水和物である。
尚、本明細書中、クロドロン酸の塩の形態であるクロドロネートについても、便宜上、その遊離形態である「クロドロン酸」と記載する場合がある。クロドロネート以外の各種ビスホスホネートに関しても同様に、塩の形態であっても、その遊離形態の名称を用いて記載する場合がある。

0028

VNUTの発現を特異的に抑制する核酸としては、VNUTに対するRNA干渉誘導性RNA又はアンチセンス核酸等が挙げられる。「VNUTの発現を特異的に抑制する」とは、標的となるVNUTの発現をそれ以外の遺伝子の発現よりも強く抑制することを意味する。

0029

VNUTに対するRNA干渉誘導性RNAとしては、例えば(A)VNUTをコードするmRNAのヌクレオチド配列又は18塩基以上のその部分配列相補的なヌクレオチド配列を含む1本鎖又は2本鎖のRNA、及び(B)VNUTをコードするmRNA(成熟mRNA又は初期転写産物)と投与対象哺乳動物(例えばヒト等の霊長類やマウス等のげっ歯類)の細胞内でハイブリダイズし得る18塩基以上のヌクレオチド配列を含み、且つハイブリダイズすることにより当該VNUTのRNA干渉を誘導する1本鎖又は2本鎖のRNAを挙げることができる。

0030

RNA干渉誘導性RNAの例としては、VNUTをコードするmRNAのヌクレオチド配列又はその部分配列(以下、標的ヌクレオチド配列)と相補的な配列を有するRNAとその相補鎖からなる2本鎖オリゴRNAが挙げられる。また、ヘアピンループ部分を介して、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列(第1の配列)と、その相補配列(第2の配列)とが連結された一本鎖RNAであって、ヘアピンループ型の構造をとることにより、第1の配列が第2の配列と2本鎖構造を形成するRNA(small hairpin RNA:shRNA)もRNA干渉誘導性RNAの好ましい態様の1つである。

0031

RNA干渉誘導性RNAに含まれる、標的ヌクレオチド配列と相補的な部分の長さは、通常、約18塩基以上、好ましくは約19塩基以上、より好ましくは約21塩基以上の長さであるが、VNUTの発現を特異的に抑制可能である限り、特に限定されない。RNA干渉誘導性RNAが23塩基よりも長い場合には、該RNA干渉誘導性RNAは細胞内で分解されて、約20塩基前後のsiRNAを生じ得るので、理論的には標的ヌクレオチド配列と相補的な部分の長さの上限は、VNUTをコードするmRNA(成熟mRNAもしくは初期転写産物)のヌクレオチド配列の全長である。しかし、インターフェロン誘導の回避、合成の容易さ、抗原性の問題等を考慮すると、該相補部分の長さは、例えば約50塩基以下、好ましくは約25塩基以下、最も好ましくは約23塩基以下である。即ち、該相補部分の長さは、通常、約18〜50塩基、好ましくは約19〜約25塩基、より好ましくは約21〜約23塩基である。

0032

また、RNA干渉誘導性RNAを構成する各RNA鎖の長さも、通常、約18塩基以上、好ましくは約19塩基以上、より好ましくは約21塩基以上の長さであるが、VNUTの発現を特異的に抑制可能である限り、特に限定されず、理論的には各RNA鎖の長さの上限はない。しかし、インターフェロン誘導の回避、合成の容易さ、抗原性の問題等を考慮すると、RNA干渉誘導性RNAを構成する各RNA鎖の長さは、例えば約50塩基以下、好ましくは約25塩基以下、最も好ましくは約23塩基以下である。即ち、各RNA鎖の長さは、例えば通常、約18〜50塩基、好ましくは約19〜約25塩基、より好ましくは約21〜約23塩基である。なお、shRNAの長さは、2本鎖構造をとった場合の2本鎖部分の長さとして示すものとする。

0033

尚、本明細書において、全長が23塩基以下の2本鎖のRNA干渉誘導性RNAをsiRNAという。

0034

標的ヌクレオチド配列と、RNA干渉誘導性RNAに含まれるそれに相補的な配列とは、完全に相補的であることが好ましい。しかし、当該相補配列の中央から外れた位置についての塩基の変異(少なくとも90%以上、好ましくは95%以上の同一性の範囲内であり得る)については、完全にRNA干渉による切断活性がなくなるのではなく、部分的な活性が残存し得る。他方、相補配列の中央部の塩基の変異は影響が大きく、RNA干渉によるmRNAの切断活性が極度に低下し得る。

0035

RNA干渉誘導性RNAは、5’及び/又は3’末端塩基対を形成しない、付加的な塩基を有していてもよい。該付加的塩基の長さは、RNA干渉誘導性RNAがVNUTの発現を特異的に抑制可能である限り特に限定されないが、通常5塩基以下、例えば2〜4塩基である。該付加的塩基は、DNAでもRNAでもよいが、DNAを用いるとsiRNAの安定性を向上させることができる。このような付加的塩基の配列としては、例えばug−3’、uu−3’、tg−3’、tt−3’、ggg−3’、guuu−3’、gttt−3’、ttttt−3’、uuuuu−3’などの配列が挙げられるが、これに限定されるものではない。

0036

shRNAのヘアピンループのループ部分の長さは、VNUTの発現を特異的に抑制可能である限り、特に限定されないが、通常、5〜25塩基程度である。該ループ部分のヌクレオチド配列は、ループを形成することができ、且つ、shRNAがVNUTの発現を特異的に抑制可能である限り、特に限定されない。

0037

「アンチセンス核酸」とは、標的mRNA(成熟mRNA又は初期転写産物)を発現する細胞内の生理的条件下で該標的mRNAとハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を含み、且つハイブリダイズした状態で該標的mRNAにコードされるポリペプチド翻訳を阻害し得る核酸をいう。アンチセンス核酸の種類はDNAであってもRNAであってもよいし、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。

0038

VNUTの発現を特異的に抑制し得るアンチセンス核酸としては、例えば
(A)VNUTをコードするmRNA(成熟mRNA又は初期転写産物)のヌクレオチド配列又は12塩基以上のその部分配列に相補的なヌクレオチド配列を含む核酸、及び
(B)VNUTをコードするmRNA(成熟mRNA又は初期転写産物)と治療対象動物(好ましくはヒト)の細胞内でハイブリダイズし得る12塩基以上のヌクレオチド配列を含み、且つハイブリダイズした状態で当該VNUTへの翻訳を阻害し得る核酸等を挙げることが出来る。

0039

アンチセンス核酸中の標的mRNAとハイブリダイズする部分の長さは、VNUTの発現を特異的に抑制する限り特に制限はなく、通常、約12塩基以上であり、長いものでmRNA(成熟mRNA又は初期転写産物)の全長配列と同一の長さである。ハイブリダイゼーション特異性を考慮すると、該長さは好ましくは約15塩基以上、より好ましくは約18塩基以上である。また、合成の容易さや抗原性の問題等を考慮すると、標的mRNAとハイブリダイズする部分の長さは、通常、約200塩基以下、好ましくは約50塩基以下、より好ましくは約30塩基以下である。即ち、標的mRNAとハイブリダイズする部分の長さは、例えば約12〜約200塩基、好ましくは約15〜約50塩基、より好ましくは約18〜約30塩基である。

0040

アンチセンス核酸の標的ヌクレオチド配列は、VNUTの発現を特異的に抑制可能であれば特に制限はなく、VNUTをコードするmRNA(成熟mRNA又は初期転写産物)の全長配列であっても部分配列(例えば約12塩基以上、好ましくは約15塩基以上、より好ましくは約18塩基以上)であってもよいし、あるいは初期転写産物のイントロン部分であってもよいが、好ましくは、標的配列はVNUTをコードするmRNAの5’末端からコード領域のC末端までに位置することが望ましい。

0041

アンチセンス核酸中の標的mRNAとハイブリダイズする部分のヌクレオチド配列は、標的配列の塩基組成によっても異なるが、生理的条件下でVNUTをコードするmRNAとハイブリダイズし得るために、標的配列の相補配列に対して通常約90%以上(好ましくは95%以上、最も好ましくは100%)の同一性を有するものである。

0042

アンチセンス核酸の大きさは、通常約12塩基以上、好ましくは約15塩基以上、より好ましくは約18塩基以上である。該大きさは、合成の容易さや抗原性の問題等から、通常約200塩基以下、好ましくは約50塩基以下、より好ましくは約30塩基以下である。

0043

VNUTの発現を特異的に抑制する核酸としては、ヌクレオチド又は該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子重合した分子であればいかなる分子であってもよく、例えばリボヌクレオチド重合体であるRNA、デオキシリボヌクレオチドの重合体であるDNA、RNAとDNAとからなるキメラ核酸、およびこれらの核酸の少なくとも一つのヌクレオチドが該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子で置換されたヌクレオチド重合体があげられる。また、これらの核酸内にヌクレオチドと同等の機能を有する分子を少なくとも一つ含む誘導体も、VNUTの発現を特異的に抑制する核酸に含まれる。またウラシル(U)は、チミン(T)に一義的に読み替えることができる。

0044

ヌクレオチドと同等の機能を有する分子としては、例えばヌクレオチド誘導体等があげられる。ヌクレオチド誘導体としては、ヌクレオチドに修飾を施した分子であればいかなる分子であってもよいが、例えばRNA又はDNAと比較して、ヌクレアーゼ耐性の向上もしくは安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーをあげるため、細胞透過性をあげるため、又は可視化させるために、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドに修飾を施した分子等が好適に用いられる。

0045

ヌクレオチドに修飾を施した分子としては、例えば糖部修飾ヌクレオチドリン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド、塩基修飾ヌクレオチド、ならびに糖部、リン酸ジエステル結合および塩基の少なくとも一つが修飾されたヌクレオチド等があげられる。

0046

糖部修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドの糖の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、又は任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよいが、2’−修飾ヌクレオチドが好ましく用いられる。

0047

2’−修飾ヌクレオチドとしては、例えばリボースの2’−OH基がH、OR、R、R’OR、SH、SR、NH2、NHR、NR2、N3、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群(Rはアルキル又はアリール、好ましくは炭素数1〜6のアルキルであり、R’はアルキレン、好ましくは炭素数1〜6のアルキレンである)から選択される置換基で置換されたヌクレオチド、好ましくは2’−OH基がH、F又はメトキシ基で置換されたヌクレオチド、より好ましくは2’−OH基がF又はメトキシ基で置換されたヌクレオチドがあげられる。また、2’−OH基が2−(methoxy)ethoxy基、3−aminopropoxy基、2−[(N,N−dimethylamino)oxy]ethoxy基、3−(N,N−dimethylamino)propoxy基、2−[2−(N,N−dimethylamino)ethoxy]ethoxy基、2−(methylamino)−2−oxoethoxy基、2−(N−methylcarbamoyl)ethoxy基および2−cyanoethoxy基からなる群から選択される置換基で置換されたヌクレオチド等もあげられる。

0048

糖部修飾ヌクレオチドとしては、糖部に架橋構造を導入することにより2つの環状構造を有する架橋構造型人工核酸(Bridged Nucleic Acid)(BNA)があげられ、具体的には、2’位の酸素原子と4’位の炭素原子メチレンを介して架橋したロックト人工核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA)、エチレン架橋構造型人工核酸(Ethylene bridged nucleic acid)(ENA)[Nucleic Acid Research,32,e175(2004)]等があげられ、さらにペプチド核酸(PNA)[Acc.Chem.Res.,32,624(1999)]、オキシペプチド核酸(OPNA)[J.Am.Chem.Soc.,123,4653(2001)]、ペプチドリボ核酸(PRNA)[J.Am.Chem.Soc.,122,6900(2000)]等もあげられる。

0049

リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、又は任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、リン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がホスホジチオエート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がアルキルホスホネート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がホスホロアデート結合に置換されたヌクレオチド等があげられる。

0050

塩基修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドの塩基の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、又は任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、塩基内の酸素原子が硫黄原子で置換されたもの、水素原子が炭素数1〜6のアルキル基(例、メチル基エチル基プロピル基)、ハロゲン(例、塩素臭素フッ素ヨウ素)等で置換されたもの、メチル基が水素ヒドロキシメチル、炭素数2〜6(例、エチル基、プロピル基、ブチル基)のアルキル基等で置換されたもの、アミノ基が炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルカノイル基(例、アセチル基プロピオニル基ブチリル基)、オキソ基ヒドロキシ基等に置換されたものがあげられる。

0051

ヌクレオチド誘導体としては、ヌクレオチド又は糖部、リン酸ジエステル結合もしくは塩基の少なくとも一つが修飾されたヌクレオチド誘導体に、ペプチド、蛋白質、糖、脂質、リン脂質フェナジンフォレートフェナントリジンアントラキノンアクリジンフルオレセインローダミンクマリン色素など、別の化学物質を、直接又はリンカーを介して付加したものもあげられ、具体的には、5’−ポリアミン付加ヌクレオチド誘導体、コレステロール付加ヌクレオチド誘導体、ステロイド付加ヌクレオチド誘導体、胆汁酸付加ヌクレオチド誘導体、ビタミン付加ヌクレオチド誘導体、Cy5付加ヌクレオチド誘導体、Cy3付加ヌクレオチド誘導体、6−FAM付加ヌクレオチド誘導体、およびビオチン付加ヌクレオチド誘導体等があげられる。
ヌクレオチド誘導体は、核酸内の他のヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体とアルキレン構造ペプチド構造ヌクレオチド構造エーテル構造エステル構造、およびこれらの少なくとも一つを組み合わせた構造等の架橋構造を形成してもよい。

0052

VNUTの発現を特異的に抑制する核酸は、核酸の分子中の一部あるいは全部の原子が質量数の異なる原子(同位体)で置換されたものも包含する。

0053

VNUTの発現を特異的に抑制する核酸は、標的とするVNUTをコードするmRNA配列染色体DNA配列に基づいて標的配列を決定し、市販の核酸自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的なヌクレオチド配列を有する核酸を合成することにより調製できる。2本鎖のRNA干渉誘導性RNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖を核酸自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製できる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼライゲーションすることにより、より長い2本鎖ポリヌクレオチドを調製できる。

0054

VNUTの発現を特異的に抑制する核酸を発現し得る発現ベクターにおいては、投与対象である哺乳動物(例えばヒト等の霊長類、マウス等のげっ歯類)の細胞(好ましくは、標的とするVNUTを発現している細胞(例えば、杯細胞等))内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターの下流に、上述のRNA干渉誘導性RNA又はアンチセンス核酸或いはそれらをコードする核酸(好ましくはDNA)が機能的に連結されている。

0055

使用されるプロモーターは、投与対象である哺乳動物(例えばヒト等の霊長類、マウス等のげっ歯類)の細胞(好ましくは、標的とするVNUTを発現している細胞(例えば、杯細胞等))内で機能し得るものであれば特に制限はない。プロモーターとしては、polI系プロモーター、polII系プロモーター、polIII系プロモーター等を使用することができる。具体的には、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR等のウイルスプロモーター、β−アクチン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝子プロモーター、並びにtRNAプロモーター等のRNAプロモーター等が用いられる。

0056

RNA干渉誘導性RNAの発現を意図する場合には、プロモーターとしてpolIII系プロモーターを使用することが好ましい。polIII系プロモーターとしては、例えば、U6プロモーター、H1プロモーター、tRNAプロモーター等を挙げることができる。

0057

上記発現ベクターは、好ましくはVNUTの発現を特異的に抑制する核酸或いはそれらをコードする核酸の下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有する。さらに、上記発現ベクターは、形質転換細胞選択のための選択マーカー遺伝子テトラサイクリンアンピシリンカナマイシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含有することもできる。上記発現ベクターは、所望によりエンハンサースプライシングシグナル、ポリ付加シグナル、SV40複製オリジンなどを、それぞれ機能可能な態様で含有していてもよい。

0058

発現ベクターに使用されるベクターの種類は特に制限されないが、哺乳動物への投与に好適なベクターとしては、プラスミドベクターレトロウイルスアデノウイルスアデノ随伴ウイルス等のウイルスベクターが挙げられる。

0059

本明細書中、用語「治療」は、炎症性腸疾患の症状のうち1以上を除去する、重症度を弱める、及び増悪を抑制すること、活動期(例、再燃期、急性期)から寛解期に移行させること、炎症性腸疾患の再燃を抑制すること、再燃を遅延させること、寛解期を延長すること、並びに、炎症性腸疾患の活動期(例、再燃期、急性期)の期間を短縮することを包含する。
本明細書中、用語「予防」とは、炎症性腸疾患の発病を抑制すること、炎症性腸疾患の発病を遅らせること、又は炎症性腸疾患の発病の可能性を弱めることを包含する。

0060

ヒトの炎症性腸疾患の症状としては、
1)下痢・血便の発生
2)下痢や出血、狭窄などに伴う腹痛の発生
3)腸管の出血などに伴う貧血の発生
4)発熱
5)体重減少
6)大腸粘膜の出血、びらん及び/又は潰瘍
等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明の医薬組成物をヒトに用いる場合、本発明の医薬組成物は、上記1)〜6)からなる群より選択される少なくとも1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、さらにより好ましくは5以上、最も好ましくは6全ての症状を予防又は治療する効果を有する。

0061

ヒト以外の哺乳動物(非ヒト哺乳動物)の炎症性腸疾患の症状としては、
1)体重の減少
2)大腸の長さの短縮
3)Disease Activity Index(DAI)の上昇
4)下痢・血便の発生
5)病理学所見の変化(筋層の肥厚、好中球浸潤及び/又はクリプト構造の脱落)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明の医薬組成物を、非ヒト哺乳動物に用いる場合、本発明の医薬組成物は、上記1)〜5)からなる群より選択される少なくとも1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、最も好ましくは5の症状を予防又は治療する効果を有する。
DAIの評価は、実施例に記載の方法に準じて行うことができる。

0062

本発明の医薬組成物の投与対象となる炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性結腸炎、空置結腸炎、ベーチェット症候群感染性大腸炎(infective colitis)、および分類不能大腸炎からなる群より選択される1種以上の疾患である。本発明の医薬組成物の投与対象となる好ましい炎症性腸疾患としては、潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)が挙げられ、どちらも腸管の炎症を主徴とする難治性の疾患である。潰瘍性大腸炎は、大腸に限局した炎症性疾患で原因が不明である。クローン病は、口から肛門にかけて起こる慢性の炎症を特徴とする原因不明腸疾患であり、寛解と再燃を繰り返す難治性の疾患である。
本発明の医薬組成物は、炎症性腸疾患の予防又は治療用であり、好ましくは潰瘍性大腸炎又はクローン病の予防又は治療用であり、さらに好ましくは、潰瘍性大腸炎の予防又は治療用である。
本発明の医薬組成物は、炎症性腸疾患の再発を抑制する効果を有するため、再発性の炎症性腸疾患にも有用である。

0063

本発明の医薬組成物は、ヒト、イヌウシウマカンガルーブタヒツジヤギネコ、マウス、ウサギラット等の哺乳動物に好適に用いることができる。好ましい態様として、本発明の医薬組成物はヒト用である。
本発明の医薬組成物は、炎症性腸疾患を有するヒト又は炎症性腸疾患の罹患の可能性の高いヒト用であることが好ましい。
本発明の医薬組成物は、非病変部と比較して病変部においてVNUTの発現量が亢進していることにより特徴付けられる炎症性腸疾患患者に好適に用いられる。

0064

非病変部と比較して病変部においてVNUTの発現量が亢進しているか否かは、例えば、非病変部の組織及び病変部の組織をそれぞれ採取し、VNUTの発現量を測定し、比較することにより検証できる。VNUTの発現量は、自体公知の方法によって測定することができる。例えば、VNUTの発現量は、VNUTをコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸又はそれと相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸(DNA)を用いて、VNUT遺伝子のmRNAを検出することにより、RNAレベルで測定することができる。あるいは、VNUTの発現量は、VNUTに対する抗体を用いて、VNUTタンパク質を検出することにより、タンパク質レベルで測定することもできる。

0065

ストリンジェントな条件とは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,6.3.1−6.3.6,1999に記載される条件、例えば、6×SSC(塩化ナトリウムクエン酸ナトリウム)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1%SDS/50〜65℃での一回以上の洗浄等が挙げられるが、当業者であれば、これと同等のストリンジェンシーを与えるハイブリダイゼーションの条件を適宜選択することができる。

0066

本発明の医薬組成物に用いられるVNUT阻害活性を有する化合物は、そのままあるいは自体公知の方法に従って、医薬的に許容し得る担体とともに混合した医薬組成物として、経口又は非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、坐薬注腸軟膏、貼布、下、点眼吸入等のルート)により投与することもできる。上記目的のために用いる投与量は、有効成分であるVNUT阻害活性を有する化合物の種類、目的とする治療効果投与方法、治療期間、年齢、体重等により決定されるが、経口もしくは非経口のルートにより、通常成人一日あたりの投与量として経口投与の場合で1μg〜20g、非経口投与の場合で1μg〜20gを用い、1日1回〜数回投与する。また、上記医薬組成物中のVNUT阻害活性を有する化合物の含有量は、組成物全体の約0.01重量%〜100重量%である。
しかしながら、これらの投与量、投与回数、投与期間及び投与方法等は、種々の条件により変化する。
好ましくは、本発明の医薬組成物は経口投与又は皮下投与される。
本発明の医薬組成物にVNUT阻害活性を有する化合物としてクロドロン酸を用いる場合、本発明の医薬組成物は、好ましくは経口投与又は皮下投与、より好ましくは経口投与される。
一態様において、本発明の医薬組成物は、投与対象の体重(kg)に対して有効成分が30mgとなるように、経口投与される。
クロドロン酸は、既に医薬品として上市されており、安全性についての知見が蓄積されているため、これらの情報を考慮し、製剤化及び投与方法等を検討することができる。

0067

本発明の医薬組成物は、活動期(例、急性期、再燃期)及び寛解期のいずれの期間においても、投与することができる。
急性期とは、症状が急激に現れる時期のことを指す。寛解期とは、症状が一時的に軽くなったり、消えたりしている時期のことを指す。寛解期は必ずしも完治した状態ではなく、病気が再発する可能性もある。再燃期とは、寛解期後に症状が再発する時期のことを指す。本発明の医薬組成物は、再燃抑制等の作用を有するため、寛解期での投与用としても有用である。

0068

炎症性腸疾患患者が、活動期又は寛解期のいずれであるかは、臨床症状や内視鏡検査等により判定することができる。

0069

炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎の場合、寛解の判定は、例えばUC−DAI(ulcerative colitis−disease activity index)スコアを用いて行うことができる(Sutherland LR et al.,Gastroenterology.1987 Jun;92(6):1894−8)。UC−DAIスコアは、排便回数、血便、大腸内視鏡検査による粘膜所見、医師全般的評価の4項目点数化した合計点により算出されるスコアである。患者のUC−DAIスコアが2以下かつ血便スコアが0である場合、該患者は寛解期の状態にあると判定される。患者のUC−DAIスコアが3以上かつ血便スコアが1以上である場合、該患者は活動期の状態にあると判定される。

0070

炎症性腸疾患がクローン病の場合、寛解の判定は、例えばCDAI(Crohn’s Disease Activity Index)スコアを用いて行うことができる(Best WR,et al.,Gastroenterology.1976 Mar;70(3):439−44.)。患者のCDAI スコアが150点未満の場合、該患者は寛解期の状態にあると判定される。患者のCDAIスコアが150点以上である場合、該患者は活動期の状態にあると判定される。CDAIスコアが150点以上220点未満の場合、軽症と診断され、220点以上450点未満の場合、中等症、450点以上の場合、重症と診断される。

0071

本発明の医薬組成物における医薬的に許容し得る担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が挙げられ、例えば、固形製剤における賦形剤滑沢剤結合剤崩壊剤水溶性高分子塩基性無機塩液状製剤における溶剤溶解補助剤懸濁化剤等張化剤緩衝剤無痛化剤等があげられる。また、必要に応じて、通常の防腐剤抗酸化剤着色剤甘味剤酸味剤発泡剤香料等の添加物を用いることもできる。

0072

本発明の医薬組成物は、例えば、錠剤散剤丸剤顆粒剤カプセル剤坐剤液剤糖衣剤、デポー剤シロップ剤懸濁剤乳剤トローチ剤、舌下剤貼付剤口腔内崩壊剤(錠)、吸入剤、注腸剤、軟膏剤、貼付剤、テープ剤点眼剤等の剤形にしてよく、必要に応じて製剤助剤を用い、常法に従って製造することができる。

0073

本発明の医薬組成物は、製剤技術分野において慣用の方法、例えば日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。以下に、製剤の具体的な製造法について詳述する。
例えば、本発明の医薬組成物を経口用製剤として調製する場合には賦形剤、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤等を加えた後、常法により例えば錠剤、散剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、溶液剤、糖衣剤、デポー剤、又はシロップ剤等とする。賦形剤としては、例えば乳糖コーンスターチ白糖ブトウ糖、ソルビット結晶セルロース等が、結合剤としては例えば、ポリビニルアルコールポリビニルエーテルエチルセルロースメチルセルロースアラビアゴムトラガカントゼラチンシェラックヒドロキシプロピルセルロースヒドロキシプロピルスターチポリビニルピロリドン等が、崩壊剤としては例えばデンプン寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム炭酸水素ナトリウムクエン酸カルシウムデキストランペクチン等が、滑沢剤としては例えば、ステアリン酸マグネシウムタルクポリエチレングリコールシリカ硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、ココア末ハッカ脳芳香酸、ハッカ油竜脳桂皮末等が用いられる。これらの錠剤又は顆粒剤には、糖衣、ゼラチン衣、その他必要により適宜コーティングすることはもちろん差しつかえない。

0074

注射剤を調製する場合には必要によりpH調整剤、緩衝剤、安定化剤保存剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内、静脈内注射剤とすることができる。

0075

本発明の医薬組成物を細胞内に運搬しやすくするために、必要に応じ、適切な粒子径や構成成分を有するリポソームに封入することもできる。本明細書中「リポソーム」とは、一つの分子上に親水性部分と疎水性部分とを持つ分子から作られる、少なくとも1つの二重膜を有する小胞を指す。好ましいリポソームは、正電荷リポソーム、正電荷コレステロール、膜透過性ペプチド結合リポソームなどである(中西守ら、タンパク質核酸酵素、44:1590−1596(1999)、二木史朗、化学生物、43:649−653(2005)、Clinical Cancer Research 59:4325−4333(1999)など)。一方で、リポソームに封入されていないVNUT阻害活性を有する化合物もまた好ましい態様である。VNUT阻害活性を有する化合物がクロドロン酸である場合、マクロファージへの影響を排除できるため、リポソームに封入されていないクロドロン酸を用いることが好ましい。

0076

本発明の医薬組成物は、VNUT阻害活性を有する化合物との配合により好ましくない相互作用を生じない限り、他の活性成分、例えば、5−ASA製剤(例えばメサラジン)、ステロイド、免疫調節薬(例えばAZA等)、免疫抑制剤(例えばCsAなど)、抗炎症薬、抗TNFα抗体(例えばインフリキシマブ等)、抗ヒスタミン成分局所麻酔薬成分、ビタミン成分、有効アミノ酸以外のアミノ酸成分(例:バリンロイシンイソロイシンセリンスレオニンメチオニンプロリンフェニルアラニンチロシントリプトファンアスパラギン酸グルタミン酸リジンヒスチジンシトルリンオルニチンシスチンタウリングリシン)、食物繊維、炎症性腸疾患でみられる低栄養の原因となる栄養素などをさらに含有していてもよい。そのような他の活性成分としては、自体公知の各種薬剤を適宜使用することができる。また、他の活性成分は、本発明の剤とは別個に製剤化し、同一対象に対して、同時又は時間差をおいて、また、同一経路又は別経路で投与してもよい。炎症性腸疾患でみられる低栄養の原因となる栄養素としては、ビタミンA、D、E、K、C、B12、葉酸、銅、カルシウムマグネシウム、鉄、セレン亜鉛などが挙げられる。

0077

2.予防上又は治療上有効量のVNUT阻害活性を有する化合物を投与することを特徴とする炎症性腸疾患の予防又は治療方法
本発明は、予防上又は治療上有効量のVNUT阻害活性を有する化合物を投与することを特徴とする炎症性腸疾患の予防又は治療方法(本発明の治療方法)を提供する。本発明の治療方法の好ましい態様としては、予防上又は治療上有効量の本発明の医薬組成物を投与することを特徴とする。
好ましい一態様において、本発明の治療方法は、炎症性腸疾患の寛解期にあると診断されたヒトに対し、予防上又は治療上有効量のVNUT阻害活性を有する化合物を投与する工程を含む。別の好ましい態様において、本発明の治療方法は、炎症性腸疾患に罹患しているか罹患の可能性が高いと診断されたヒトに対し、予防上又は治療上有効量のクロドロン酸(但しクロドロン酸はリポソームに封入されていない)を投与する工程を含む。より好ましい態様において、本発明の治療方法は、炎症性腸疾患の寛解期にあると診断されたヒトに対し、予防上又は治療上有効量のクロドロン酸(但しクロドロン酸はリポソームに封入されていない)を投与する工程を含む。

0078

本明細書中、「有効量」とは、所望の効果を生み出す活性成分の量を意味する。
本明細書中使用される「治療上有効量」とは、対象に投与される時、所望の治療効果(例、炎症性腸疾患の症状のうち1以上を除去する、重症度を弱める、及び増悪を抑制すること、活動期(例、再燃期、急性期)から寛解期に移行させること、炎症性腸疾患の再燃を抑制又は遅延させること、寛解期を延長すること、又は、炎症性腸疾患の活動期(例、再燃期、急性期)の期間を短縮すること等)をもたらす活性成分の量を意味する。治療上有効量は、一度に投与されてもよく、複数回に分けて投与されてもよい。
本明細書中使用される「予防上有効量」とは、対象に投与される時、所望の予防効果(例、炎症性腸疾患の発病を抑制すること、炎症性腸疾患の発病を遅らせること、又は炎症性腸疾患の発病の可能性を弱めること)をもたらす活性成分の量を意味する。予防上有効量は、一度に投与されてもよく、複数回に分けて投与されてもよい。

0079

本発明の治療方法は、例えば、前記本発明の医薬組成物の投与方法、用量、調製方法等を援用できる。

0080

3.VNUTへの阻害活性を指標とする炎症性腸疾患の予防剤又は治療剤の探索方法
本発明はさらに、被検物質が、VNUTを阻害し得るか否かを評価する工程を含む、炎症性腸疾患の予防剤又は治療剤のスクリーニング方法(本発明のスクリーニング方法)を提供する。後述の実施例に示されるように、VNUTの働きを阻害すると、炎症性腸疾患の症状が軽減されるので、VNUTの阻害活性を指標として、炎症性腸疾患(好ましくは潰瘍性大腸炎又はクローン病、より好ましくは潰瘍性大腸炎)の予防剤又は治療剤をスクリーニングすることが可能である。

0081

本発明のスクリーニング方法は、被検物質が、VNUTを阻害し得るか否かを評価する工程を含む。VNUTを阻害し得るか否かを評価する工程は、具体的には、被検物質の存在下及び非存在下でのVNUTの活性を測定し両者を比較することによって実施される。VNUTの活性の測定は、通常、インビトロにおいて行われる。
本発明のスクリーニング方法は、具体的には、以下の工程を含む:
(1)被検物質の存在下において、VNUTの活性を測定する工程;
(2)当該被検物質の非存在下において、VNUTの活性を測定する工程;
(3)当該被検物質の存在下における当該VNUTの活性を、当該被検物質の非存在下における当該VNUTの活性と比較する工程;及び
(4)比較の結果、当該被検物質の非存在下におけるVNUTの活性と比較して、当該被検物質の存在下におけるVNUTの活性が低い被検物質を、炎症性腸疾患の予防剤又は治療剤の候補物質として選択する工程。

0082

本発明のスクリーニング方法に供される被検物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリーランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物動植物海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。

0083

一実施態様として、VNUTの活性の測定は、例えば、Juge,N.et al.Neuron 68,99−112.(2010)に記載の方法、本願明細書の実施例1に記載の方法等に準じて、VNUTを介したATPのとりこみを測定することにより測定することができる。例えば、精製したVNUTタンパク質が組込まれたプロテオリポソームを、標識したATP(例えば、[3H]−ATP等の放射性同位元素で標識されたATP等)を含む測定溶液中でインキュベートし、リポソーム内に取り込まれたATP量を測定することにより(例えば、標識したATPとして放射性同位元素で標識されたATPを用いる場合、液体シンチレーションカウンターを用いて測定する等)、VNUTの活性を測定することができるが、これに限定されない。VNUTが組込まれたプロテオリポソームは、例えば、実施例1に記載するように、精製したVNUTタンパク質とリポソームとを混合し、凍結させた後に溶解をし、再構成バッファーに溶解することにより作製することができる。このプロテオリポソームを、Δψを付与する物質(例、バリノマイシン等)、Cl−(例、KCl等)及び標識したATP(例、[3H]−ATP)を含む溶液中で、一定時間インキュベートし、遠心カラムを用いてプロテオリポソームを外部培地から分離することにより輸送終結させ、液体シンチレーションカウンターにより得られた溶出物中の放射線を測定し取り込まれたATP量を計算することにより、VNUTの活性を測定することができる。
また別の態様として、VNUTの活性の測定は、VNUT依存的にATPを細胞外に放出し得る細胞を用い、ATP放出刺激に対して、細胞外に放出されるATP量を測定することにより測定することができる。VNUT依存的にATPを細胞外に放出し得る細胞を用いたVNUTの活性の測定は、例えば、Juge,N.et al.,Neuron 68,99−112.(2010)に記載の方法、Sakamoto,S.et al.,Sci.Rep.4,1−10(2014)に記載の方法、Hiasa,M.et al.Physiol.Rep.2,e12034(2014)に記載の方法等に準じて行うことができる。VNUT依存的にATPを細胞外に放出し得る細胞としては、海馬神経初代培養等の神経細胞血小板などが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、VNUTの活性の測定は、VNUT依存的にATPを細胞外に放出し得る細胞に被検物質を接触させた後、該細胞にVNUT依存的なATP放出刺激を与え、細胞外に放出されるATP量を測定することにより、測定することができる。大腸においては、内在性のVNUTの発現が杯細胞において観察されることから、VNUTの活性の測定は、杯細胞を用いて行うことも好ましい。杯細胞としては、VNUT依存的にATPを放出する限り特に限定されるものではないが、例えば、生体内の杯細胞、LS174T細胞等の培養杯細胞モデル、多能性幹細胞等の未分化細胞から分化誘導された大腸杯細胞などが挙げられる。

0084

工程(1)及び(2)は、同時に行ってもよく、別々に行ってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に行うことが好ましい。

0085

VNUTの活性の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれ得る。なお、被検物質の非存在下におけるVNUTの活性は、被検物質の存在下におけるVNUTの活性の測定に対し、事前に測定した値であっても、同時に測定した値であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した値であることが好ましい。

0086

尚、被検物質の存在下におけるVNUTの活性測定についての試験条件(リポソームの作製方法、用いる細胞の種類及び培養条件等)は、被検物質が存在する点を除き、被検物質の非存在下で行うVNUTの活性測定と同一であることが好ましい。

0087

そして、比較の結果、VNUTの活性を抑制した被検物質を、炎症性腸疾患を予防又は治療する作用を有する物質の候補物質として選択することが出来る。

0088

このようにして選択された候補物質が、実際に炎症性腸疾患の予防又は治療作用を有するか確認する試験を引き続き行ってもよい。具体的には、本発明のスクリーニング方法は、さらに下記の(5)〜(7)の工程を含み得る;
(5)炎症性腸疾患モデル非ヒト哺乳動物に工程(4)で選択した候補物質を投与すること;
(6)該非ヒト哺乳動物における炎症性腸疾患の症状を評価すること;
(7)候補物質を投与した非ヒト哺乳動物における炎症性腸疾患の症状を、候補物質を投与していない対照非ヒト哺乳動物における炎症性腸疾患の症状と比較すること。

0089

炎症性腸疾患モデル非ヒト哺乳動物の作製方法は、当業者に周知であり、例えば、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を飲水投与する方法(Gastroenterology.1990 Mar;98(3):694−702)、及び2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を注腸する方法(Gastroenterology.1989 Mar;96(3):795−803)、インターロイキン10ノックアウトマウスに自然に発症させる方法(J Clin Invest.1996 Aug 15;98(4):1010−20)、SCIDマウスにCD4+CD45high細胞を移入する方法(Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2009 Feb;296(2):G135−46)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の飲水投与は、急性大腸炎の確立されたマウス炎症性損傷モデルである。DSSの飲水投与によって腸粘膜上皮細胞障害を誘導し、下痢、下血、体重減少など潰瘍性大腸炎と類似の症状を引き起こすことが知られている。

0090

非ヒト哺乳動物における炎症性腸疾患の症状の評価は、当業者に周知のパラメーター、例えば、1)体重(体重の減少が症状の悪化を意味する)、2)大腸の長さ(大腸の長さの短縮が症状の悪化を意味する)、3)Disease Activity Index(DAI)(DAIの上昇が症状の悪化を意味する)、4)下痢・血便の有無(下痢・血便の発生が症状の悪化を意味する)、5)病理学的所見の変化(筋層の肥厚、好中球の浸潤又はクリプト構造の脱落などが症状の悪化を意味する)等に基づき行われる。

0091

尚、対照非ヒト哺乳動物についての試験条件(動物の種類、炎症性腸疾患モデルの種類等)は、候補物質を投与しない点を除き、候補物質を投与する非ヒト哺乳動物と同一であることが好ましい。

0092

そして、候補物質を投与した非ヒト哺乳動物における炎症性腸疾患の症状が、候補物質を投与していない対照非ヒト哺乳動物における炎症性腸疾患の症状よりも有意に軽減されている場合には、当該候補物質を、炎症性腸疾患を予防又は治療する活性を有する物質として得ることが出来る。

0093

本明細書中、VNUTは、通常、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、カンガルー、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット等の哺乳動物由来のものを意味する。本明細書中、VNUTが哺乳動物由来であるとは、VNUTのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列が、哺乳動物のものであることを意味する。

0094

4.クロドロン酸又はその塩を有効成分とする、VNUT阻害剤
本発明者らは、クロドロン酸又はその塩を有効成分として含有するVNUT阻害剤(以下、本発明のVNUT阻害剤とも称する)を提供する。
クロドロン酸は、後述の実施例に記載するように、小胞型グルタミン酸トランスポーター2(VGLUT2/SLC17A6)、VGLUT3(SLC17A8)、VGLUT1(SLC17A7)、小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT)、小胞型抑制性アミノ酸トランスポーター(VIAAT/SLC32A1)、小胞型モノアミントランスポーター2(VMAT2/SLC18A2)及びNa+−リン酸共輸送体1(NPT1/SLC17A1)と比較して、VNUTに対して強力な阻害作用を有する。従って、本発明のVNUT阻害剤は、選択性の高いVNUT阻害剤として機能する。

0095

一態様において、本発明のクロドロン酸又はその塩を有効成分として含有するVNUT阻害剤の、VNUTが媒介するATPの取り込みに対するIC50値は、100nM以下、より好ましくは50nM以下、さらに好ましくは20nM以下である。さらに好ましい態様においては、本発明のクロドロン酸又はその塩を有効成分として含有するVNUT阻害剤は、小胞型グルタミン酸トランスポーター2(VGLUT2/SLC17A6)依存的なグルタミン酸の取り込み、VGLUT3(SLC17A8)依存的なグルタミン酸の取り込み、VGLUT1(SLC17A7)依存的なグルタミン酸の取り込み、小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT)依存的なアスパラギン酸の取り込み、小胞型抑制性アミノ酸トランスポーター(VIAAT/SLC32A1)依存的な4−アミノ酪酸GABA)の取り込み、小胞型モノアミントランスポーター2(VMAT2/SLC18A2)依存的なセロトニンの取り込み及びNa+−リン酸共輸送体1(NPT1/SLC17A1)依存的なパラアミノ馬尿酸(PAH)の取り込みからなる群から選ばれる1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、さらにより好ましくは5以上、特に好ましくは6以上、最も好ましくは7に対して、IC50値が1μM以上であり、かつ、VNUTが媒介するATPの取り込みに対するIC50値が100nM以下、より好ましくは50nM以下、さらにより好ましくは20nM以下である。

0096

クロドロン酸は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、サル、ヒト等、好ましくはヒト)に対して、優れたVNUT阻害活性を有しているので、VNUT阻害剤として有用である。

0097

本発明のVNUT阻害剤は、VNUTが関与する疾患の予防又は治療に有用であり、当該疾患の予防又は治療用の医薬として製剤化することができる。
VNUTは、糖尿病などに関与することが知られている。

0098

本発明のVNUT阻害剤を、VNUTが関与する疾患の予防又は治療に用いる場合、本発明のVNUT阻害剤は、上述の本発明の医薬組成物の製剤化方法に準じて製剤化することができる。

0099

以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。

0100

試験例:大腸でのVNUTの発現
NCBI GEOに登録されているマイクロアレイデータベース(Intestinal mucosa response to active and inactive ulcerative colitis:colon biopsies)を用い、潰瘍性大腸炎(UC)患者の病理検査サンプルの遺伝子発現量を比較した(図1)。
潰瘍性大腸炎(UC)患者の病理検査サンプルの遺伝子発現量を比較したところ、UC患者の病変部において、炎症時に亢進したVNUTの発現が、寛解期も高いまま保たれることを見出した(図1(b))。一方、炎症性サイトカインであるインターロイキン−17aは、活動期病変部と比較して、寛解期病変部では発現量が低下していた(図1(a))。
また、骨髄球(マクロファージ及び顆粒球等)のマーカーであるCD11b(Mac−1)は、活動期病変部では高い発現がみとめられたが、寛解期病変部では健常なヒトと同程度まで発現量が低下していた(図1(c))。急性期では病変部にマクロファージが集積するが、炎症が治まるとマクロファージが減少し、寛解期では健常なヒトとほぼ同じ程度までに戻ることが示された。

0101

実施例1:クロドロン酸の小胞型核酸トランスポーター阻害効果評価
VNUTに対する、ビスホスホネートの阻害作用を検証するため、図2に記載の各種ビスホスホネート(クロドロン酸、エチドロン酸、チルドロン酸、メドロン酸、ジフルオロメチレン−ジホスホン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、ネリドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸、ゾレドロン酸、メチレンビスホスホン酸ジクロライド)を用いて、VNUTのATP取り込みを観察した。ピロリン酸については、Liu,Y et al.,Neuron Nov 4;68(3):543−56(2010)に記載の値を参考にした。
また、様々な小胞型神経伝達物質トランスポーター(VNUT)、小胞型グルタミン酸トランスポーター2(VGLUT2/SLC17A6)、VGLUT3(SLC17A8)、VGLUT1(SLC17A7)、小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT)、小胞型抑制性アミノ酸トランスポーター(VIAAT/SLC32A1)、小胞型モノアミントランスポーター2(VMAT2/SLC18A2)及びNa+−リン酸共輸送体1(NPT1/SLC17A1)を用いて、それぞれのトランスポーターに対するクロドロン酸又はエチドロン酸の阻害効果を検証した。

0102

大腸菌を用いた小胞型神経伝達物質トランスポーターの発現と精製は、Leviatan,S et al.,J.Biol.Chem.285,23548−23556(2010)に記載の方法に準じて行った。
VNUT、小胞型グルタミン酸トランスポーター2(VGLUT2/SLC17A6)、VGLUT3(SLC17A8)、小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT/SLC17A5)及びNa+−リン酸共輸送体1(NPT1/SLC17A1)のcDNAを、両末端のHisタグ及び可溶性αリックスタンパク質と共に、大腸菌発現ベクタークローニングし、大腸菌に過剰発現させた。さらに、VGLUT1(SLC17A7)、小胞型抑制性アミノ酸トランスポーター(VIAAT/SLC32A1)及び小胞型モノアミントランスポーター2(VMAT2/SLC18A2)のcDNAをバキュロウイルス発現ベクターにクローニングし、昆虫細胞に過剰発現させた。昆虫細胞を用いた小胞型神経伝達物質トランスポーターの発現と精製は、Juge,N et al.Neuron 68,99−112.(2010)に記載の方法に準じて行った。Juge,N et al.Neuron 68,99−112.(2010)、およびLeviatan,S et al.,J.Biol.Chem.285,23548−23556(2010)に記載の方法に準じ、これらの膜画分可溶化させ、Ni−NTAアフィニティカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製したタンパク質は電気泳動し、クマシーブリリアントブルーで染色して、予想されるサイズに、主要なバンドが存在するのを確認した。
次に、精製したタンパク質をプロテオリポソームに組込み、鎮痛効果を有する第一世代ビスホスホネートとして知られるクロドロン酸及びエチドロン酸が、これらのトランスポーターを阻害するのか否かを検証した。

0103

(方法)
〈cDNA〉
マウスVNUT(Accession No.NM183161)、ラットVGLUT1(Accession No.NM053859.2)、ラットVGLUT2(Accession No.NM053427.1)、ヒトVGLUT3(Accession No.NM001138760.1)、マウスVEAT(Accession No.NM172773)、マウスVIAAT(Accession No.BC052020)、ラットVMAT2(Accession No.NM013031.1)及びマウスNPT1(Accession No.NM001170638.1)のcDNAをPCRによってクローニングした。

0104

〈化学物質〉
クロドロン酸(Clodronate)、エチドロン酸(etidronate)、チルドロン酸(tiludronate)、メドロン酸(medronate)、パミドロン酸(pamidronate)、ネリドロン酸(neridronate)、イバンドロン酸(ibandronate)、ゾレドロン酸(zoledronate)、及びメチレンビスホスホン酸ジクロライド(methylene bis−phosphonic dichloride)はSigma Aldrichから購入した。ジフルオロメチレンジホスホン酸(Difluoromethylene−diphosphonic acid)はToronto Research Chemicals Inc.から購入した。アレンドロン酸(Alendronate)及びリセドロン酸(risedronate)は、LKT Laboratories,Inc.から購入した。ミノドロン酸(minodronate)はTokyo Chemical Industry Co.,Ltd.から購入した。化合物は、それぞれ蒸留水に溶解した。

0105

再構成系〉
精製タンパク質20μgを、リポソーム550μgと−80℃で少なくとも15分間混合させた。サンプルチューブを手で握ることにより混合物を素早く溶解させ、20mM MOPS−Tris(pH7.0)、150mM酢酸ナトリウム及び5mM酢酸マグネシウムを含む再構成バッファーで60倍に希釈した。バッファー組成は、必要に応じて変化させた。再構成したプロテオリポソームは、4℃、200,000g、1時間の遠心によりペレットにし、0.2mLの再構成バッファーに懸濁した。アゾレクチンリポソームは、Juge,N.et al.Neuron 68,99−112.(2010)に記載のとおり準備した。大豆レクチン(10mg/mL;Sigma Type IIS)を、20mM MOPS−NaOH(pH7.0)及び1mMジチオトレイトール(dithiothreitol)を含むバッファーに懸濁した。バス型ソニケーター中で、混合物が透き通るまでソニケーションを行い、使用まで−80℃で保存した。いくつかの実験において、精製したVMAT2はリポソームと共に再構成を行った。簡潔に、20μg VMAT2をリポソーム(脂質550μg)と混合し、−80℃で凍結させ、この温度で少なくとも15分間放置した。混合物を、40mM MES−Tris(pH5.7)、150mM酢酸カリウム及び5mM酢酸マグネシウムを含む再構成バッファーで60倍に希釈した。再構成させたプロテオリポソームは、200,000g、1時間、4℃の遠心によりペレットにし、0.2mLの共再構成バッファーに懸濁した。

0106

〈輸送アッセイ
プロテオリポソームに組込んだ0.3μgのタンパク質、20mM MOPS−Tris(pH7.0)、150mM酢酸カリウム、5mM酢酸マグネシウム、10mM KCl及び2μMバリノマイシン、並びに100μM[3H]−ATP(0.5MBq/μmol;PerkinElmer)、100μM[2,3−3H]L−グルタミン酸(0.5MBq/μmol;PerkinElmer)、100μM[2,3−3H]L−アスパラギン酸(0.5MBq/μmol;PerkinElmer)、100μM[2,3−3H]GABA(0.5MBq/μmol;PerkinElmer)又は100μMパラアミノ馬尿酸(0.5MBq/μmol;PerkinElmer)からなる反応混合物(130μL)を27℃でインキュベートした。表示された時点に、Sephadex G−50(fine)を包含する遠心カラムを用いて、プロテオリポソームを外部培地から分離することにより、輸送を終結させた。溶出物中の放射線を、液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer)により測定した。セロトニン輸送のためには、VMAT2(タンパク質0.3μg)を含有するプロテオリポソームを、20mM MOPS−Tris(pH7.5)、140mM 酢酸カリウム、5mM酢酸マグネシウム及び10mMKCl並びに10μM[2−3H]セロトニン(0.5MBq/μmol;PerkinElmer)からなる反応混合物(130μL)を27℃でインキュベートした。表示の時点で、Sephadex G−50(fine)を包含する遠心カラムを用いて、外部培地からプロテオリポソームを分離することにより、輸送を終了させた。溶出物中の放射線を、液体シンチレーションカウンターにより測定した。

0107

データ解析
しない限り、実施例1及び6に関して、全ての数値を平均±標準誤差(n=3〜23)として示す。統計的有意性は、Student’st検定又は分散分析ANOVA)により決定した。有意性は、*P<0.05及び**P<0.01として定義した。

0108

(結果)
VNUTに対する、各種ビスホスホネート(クロドロン酸、エチドロン酸、チルドロン酸、メドロン酸、ジフルオロメチレン−ジホスホン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、ネリドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸、ゾレドロン酸、メチレンビスホスホン酸ジクロライド、ピロリン酸)の、VNUTのATP取り込みに対する阻害作用を図2に示す。エチドロン酸は、IC50 20.8μMを示すわずかな阻害効果を有していた。試験した化合物の中で、クロドロン酸は、VNUTが媒介するATPの取り込み抑制に対しIC50 15.6nMを示す最も強い阻害効果を有した(図2)。
ミノドロン酸は、わずかな阻害効果を示したが、他のいずれのビスホスホネートも、VNUT依存的なATPの取り込みに対する、強力な阻害効果は示さなかった(図2)。
興味深いことに、メドロン酸(ビスホスホネートの基礎骨格)、ジフルオロメチレン−ジホスホン酸(特性基の塩素を、フッ素で置換したクロドロン酸アナログ(類似体))、及びメチレンビスホスホン酸ジクロライド(リン酸基中の水酸基を塩素で置換したクロドロン酸アナログ(類似体))は、VNUT依存的なATPの取り込みに対して、阻害効果が弱かったか又は全く示さなかった(図2)。

0109

各種小胞型神経伝達物質トランスポーターに対するビスホスホネート(クロドロン酸又はエチドロン酸)の阻害効果を図3に示す。各種小胞型神経伝達物質トランスポーターを精製し、最終画分をCBB染色した。各トランスポーターの分子量の位置に単一バンドを検出することで、それぞれのタンパク質が精製できていることを確認した(図3a)。クロドロン酸及びエチドロン酸は、VGLUT1〜3媒介性のグルタミン酸の取り込みに対し阻害効果をわずかに示したが、その効果はクロドロン酸のVNUTに対する阻害効果の1000分の1であった(図3b)。
クロドロン酸及びエチドロン酸のいずれも、VEAT媒介性のアスパラギン酸の取り込み、VIAAT媒介性のGABAの取り込み、又はVMAT2媒介性のセロトニンの取り込みに対して、阻害効果を示さなかった。VEATは、Δψ依存的なアスパラギン酸輸送に加え、H+/シアル酸共輸送機能を有するが、H+/シアル酸共輸送も阻害されなかった。また、腎臓からの尿酸及び薬剤の排出を制御するNPT1−媒介性のパラアミノ馬尿酸(PAH)の取り込みも、阻害されなかった。

0110

従って、クロドロン酸は、ビスホスホネートの中で、VNUTの最も強い阻害剤であることが、シス阻害研究により示された。これらの結果から、クロドロン酸は、小胞型核酸トランスポーターの強力で選択的な阻害剤であることが示された。

0111

[大腸炎モデル]
実施例2:急性モデルに対するクロドロン酸の薬効評価
(方法)
〈動物〉
マウスは日本チャールス・リバー社から購入したC57BL/6Jマウス、8週齢を用いた。SPF環境下にて、固形飼料CRF−1(オリエンタ酵母工業株式会社)、水道水を自由に与え、小ケージ内で個飼いとした。入荷から5日間の馴化期間をおいた後、試験に用いた。
〈試薬の調製〉
・2%DSS溶液
重量の2%量のデキストラン硫酸ナトリウム(Dextran Sodium Sulfate:DSS,MPバイオ)をミリQ水に溶解し、0.22μmフィルターにて滅菌を行った。調製後は4℃で保管した。
・クロドロン酸投与液
クロドロン酸二ナトリウム四水和物(東京化成工業株式会社)を10mg/kg用は2.0mg/ml、30mg/kg用は6.0mg/ml溶液生理食塩水(株式会社大塚製薬工場)で用時調製した。

0112

〈DSS大腸炎〉
マウスを無処置群(n=4)とDSS投与群(n=18)に分け、DSS投与群には2%DSS溶液を飲水として6日間自由摂取させた。無処置群は水道水を自由に飲水させた。この間、体重と下痢、血便のスコア、飲水量毎日観察した。下痢、血便のスコアは下記表1を基準とした。

0113

0114

DSS投与群の18匹はさらに無作為に3群に分け、生理食塩水又はクロドロン酸の投与を行った。クロドロン酸投与群は上記のクロドロン酸投与液(10mg/kg用又は30mg/kg用)を体重1gあたり5μlずつ、DSS投与1日目〜5日目までの間、毎日皮下投与した。生理食塩水群は同量の生理食塩水を同じスケジュールで投与した。群構成は下記に記す。

0115

0116

DSS投与6日目に剖検を行い、大腸の長さを測定し、組織学的解析のためのサンプリングを行った。
〈Disease Activity Index(DAI)〉
DSSを投与している6日間の体重減少、下痢、および血便のスコアの最も高い値を足し合わせた値をDAIとして算出した。
体重減少のスコアは、
0:体重減少率(%)が1%未満;
1:体重減少率(%)が1%以上5%未満;
2:体重減少率(%)が5%以上10%未満;
3:体重減少率(%)が10%以上15%未満;
4:体重減少率(%)が15%以上;
とした。
下痢、および血便のスコアは
0:表1のスコアが0;
2:表1のスコアが1又は2;
4:表1のスコアが3又は4;
とした(Hamamoto,N.,et al.,Clin Exp Immunol 1999;117:462−468)。

0117

[組織学的評価]
上記の大腸炎モデル剖検時に採取した大腸を縦に割き、肛門側を中心に内腔側を内側に巻き、渦巻き状のまま4%パラホルムアルデヒドリン酸緩衝液ナカライテスク)中で1時間固定した。定法に則り、パラフィン置換を行い、5μmの切片を作成した。
PASアルシアンブルー(pH1.0)〉
脱パラフィン後、水洗し1N HClに5分間浸けた。アルシアンブルー液pH1.0(和光純薬)に30分浸け、水洗後、0.5%過ヨウ素酸水溶液(和光純薬)に10分、流水で5分水洗後、DWで水洗し、その後シッフ試薬(和光純薬)に10分間浸し、亜硫酸水に3分x3回浸け、発色させた。核染色のためにヘマトキシリン(和光純薬)に10秒程度浸け、水道水で10分間水洗した。この後定法に則り、脱水透徹、封入を行った。
カメラ付き顕微鏡にて撮影後、筋層の厚さと、クリプト構造が破壊されている割合を画像解析ソフトウェアであるimageJを用いて解析した。さらに、imageJを用いて、大腸全長の病理画像の解析を行った。全体の腸の長さと、クリプトが破壊されている部分の長さを算出し、その割合を計算してクリプト構造の欠損率とした。

0118

(結果)
図4に体重の変化における結果を示す。DSS摂取により6日間で約7%の体重減少がみられたが、クロドロン酸投与により体重減少が抑制された。体重変化率のデータを表3に示す。

0119

0120

図5に下痢及び血便スコアを示した。DSS摂取により下痢が誘発されたが、クロドロン酸投与により症状が抑制された。下痢・血便スコアのデータを表4に示す。

0121

0122

図6に大腸の長さを示した。DSS摂取により大腸長の短縮がみられたが、クロドロン酸投与により短縮が抑制された。大腸の長さデータを表5に示す。

0123

0124

図7にDAIを示した。DSS摂取によりDAIが高値となったが、クロドロン酸投与により抑制された。DAIデータを表6に示す。

0125

0126

図8にクリプト構造の欠損率を示す。DSS摂取によりクリプト構造欠損率が増加したが、クロドロン酸投与により抑制された。表7にクリプト構造の欠損率のデータを示した。

0127

0128

図9に筋層の肥厚(大腸の上部)を、図10に筋層の肥厚(大腸の下部)を示す。DSS摂取により筋層の肥厚がみられたが、クロドロン酸投与により抑制された。表8は、筋層の肥厚(大腸の上部)のデータを示し、表9に筋層の肥厚(大腸の下部)のデータを示した。

0129

0130

0131

実施例3:ビスホスホネート3種の大腸炎モデルに対する薬効評価
(方法)
〈試薬の調製〉
・2.8%DSS溶液
重量の2.8%量のDSSをミリQ水に溶解し、0.22μmフィルターにて滅菌を行った。調製後は4℃で保管した。
・クロドロン酸投与液(Clo)(30mg/kg)
クロドロン酸二ナトリウム四水和物6.0mg/mlを生理食塩水で用時調製した。
・エチドロン酸投与液(Eti)(21mg/kg)
エチドロン酸二ナトリウム水和物(東京化成工業株式会社)4.2mg/mlを生理食塩水で用時調製した。
・アレンドロン酸投与液(Ale)(3.0mg/kg)
アレンドロン酸ナトリウム三水和物(東京化成工業株式会社)0.60mg/mlを生理食塩水で用時調製した。
・シクロスポリンA投与液(CyA)(10mg/kg)
シクロスポリンA(東京化成工業株式会社)2.0mg/mlを生理食塩水で用時調製した。
〈各投与濃度について〉
クロドロン酸については実施例2で効果が高かった30mg/kgの用量を採用した。エチドロン酸の用量はクロドロン酸30mg/kgと等モルとした。アレンドロン酸についてはクロドロン酸と等モル量を投与すると毒性が出現するため、1週間の投与でこれが出現しない用量を選択した。シクロスポリンAについては既報の論文(Sann,H.,et al.,Life Sci,2013.92(12):p.708−18)と事前の検討でDSS大腸炎に効果のある投与量を決定した。

0132

〈DSS大腸炎〉
実施例2の方法と同様に行った。ただしDSS溶液は2.8%とした(DSSのロット間で発症や増悪度に差があるため、最適化を行っている。)。
各群にクロドロン酸投与液、エチドロン酸投与液、アレンドロン酸投与液、又はシクロスポリンA投与液を体重1gあたり5μlずつ、DSS投与1日目〜5日目までの間、毎日皮下投与した。生食群は同量の生理食塩水を同じスケジュールで投与した。群構成は表10に記す。

0133

0134

DSS投与6日目に剖検を行い、大腸の長さを測定した。

0135

(結果)
図11に大腸長の比較データを、表11に大腸長のデータを示した。DSS摂取により大腸長の短縮がみられ、ポジティブコントロール(薬効があることが知られている薬剤)として用いたシクロスポリンAと、クロドロン酸の投与により抑制がみられた。

0136

0137

実施例4:再燃モデルに対するクロドロン酸の薬効評価
(方法)
〈試薬の調製〉
・OVA含有2.8%DSS溶液
重量の2.8%量のデキストラン硫酸ナトリウム(Dextran Sodium Sulfate:DSS,MPバイオ)をミリQ水に溶解し、卵白アルブミン(OVA;シグマアルドリッチ)を0.14mg/mlとなるように添加、0.22μmフィルターにて滅菌を行った。調製後は4℃で保管した。
・OVA含有2.1%DSS溶液
OVA 0.14mg/ml溶液を調製し、DSS2.8%溶液と1:3で混和することにより調製した。
・クロドロン酸投与液
クロドロン酸二ナトリウム四水和物(東京化成工業株式会社)6.0mg/mlを生理食塩水で用時調製した。

0138

〈DSS大腸炎〉
試験開始日をday0とし、体重により群分けを行い、24時間の絶食をかけた。day1に再摂食させ、同時にOVA含有DSS溶液を水道水の代わりにday6までの5日間自由摂水で与えた。day1から体重、飲水量の測定を行い、糞便について血便、下痢のスコアリングを行った。血便が消失し下痢も軽度になったday44にday0の体重に対する変化率、下痢スコアと、day44までの最大体重減少率によりn=5〜6で3群に分けた。OVA含有DSS溶液の対照としてday1からday44まで水道水を与えたマウスはday44の体重変化率と下痢スコアによりn=3〜4で3群に分けた。day47、day48、day49の3日間、クロドロン酸二ナトリウム四水和物(東京化成工業株式会社)6mg/ml溶液又は生理食塩水を5ml/kgで1日1回皮下投与を行った。また、day48からday49にかけて絶食をかけ、day49に再摂食、同時にOVA0.14mg/ml含有DSS2.1%溶液をday51までの2日間与え、大腸炎の再燃を誘発した。day51に剖検を行い、大腸の長さを測定、評価項目とした。

0139

(結果)
図12に大腸長の比較を、表12に大腸長のデータを示した。

0140

0141

急性期にDSS2.8%+OVAを与えた群では、慢性期にDSS2.1%+OVAを与えることにより、大腸長の有意な短縮がみられた。急性期に水を与えた群では、後にDSS2.1%OVAを与えても大腸長の短縮はみられなかった。また、再燃前のクロドロン酸投与により大腸長の短縮は有意に抑制された。

0142

結論
DSS誘発マウス急性大腸炎モデルおよび再燃モデルにおいて、クロドロン酸二ナトリウムによる大腸炎抑制作用が認められた。
一方、今回の解析では他のビスホスホネートであるエチドロン酸、アレンドロン酸には大腸炎抑制作用は認められなかった。

0143

実施例5:クロドロン酸の経口投与による大腸炎改善効果
(方法)
〈試薬の調製〉
・OVA含有2.8%DSS溶液
重量の2.8%量のデキストラン硫酸ナトリウム(Dextran Sodium Sulfate:DSS,MPバイオ)をミリQ水に溶解し、卵白アルブミン(OVA;シグマアルドリッチ)を0.14mg/mlとなるように添加、0.22μmフィルターにて滅菌を行った。調製後は4℃で保管した。
・OVA含有2.1%DSS溶液
OVA 0.14mg/ml溶液を調製し、DSS2.8%溶液と1:3で混和することにより調製した。
・クロドロン酸投与液(皮下)
クロドロン酸二ナトリウム四水和物(東京化成工業株式会社)6.0mg/mlを生理食塩水で用時調製した。
・クロドロン酸投与液(経口)
クロドロン酸二ナトリウム四水和物(東京化成工業株式会社)10mg/mlをミリQ水で用時調製した。
・5−ASA投与液(経口)
5−アミノサリチル酸(シグマアルドリッチ)5.0mg/mlを注射用水(大塚)で用時調製した。
・抗TNFα抗体投与液(腹腔内)
抗TNFα抗体(BioLegend)原液、0.5mg/mlをそのまま使用した。
〈DSS大腸炎〉
試験開始日をday0とし、体重により群分けを行い、24時間の絶食をかけた。day1に再摂食させ、同時にOVA含有DSS溶液を水道水の代わりにday6までの5日間自由摂水で与えた。day1から体重、飲水量の測定を行い、糞便について血便、下痢のスコアリングを行った。血便が消失し下痢も軽度になったday61に、day0の体重に対する変化率、下痢スコアと、day61までの最大体重減少率により、n=6で7群に分けた。OVA含有DSS溶液の対照としてday1からday61まで水道水を与えたマウスはday61の体重変化率と下痢スコアによりn=6で2群に分けた。
day61、day62、day63の3日間、クロドロン酸皮下投与群ではクロドロン酸二ナトリウム四水和物(東京化成工業株式会社)6mg/ml溶液を体重1グラム当たり、5μlで1日1回皮下投与を行った。対照群では生理食塩水を体重1グラム当たり、5μlで1日1回皮下投与を行った。クロドロン酸経口投与群では体重1グラム当たり、10μlクロドロン酸溶液を経口投与した。5−ASA経口投与群では体重1グラム当たり、10μl 5−ASA溶液を経口投与した。対照群には蒸留水を体重1グラム当たり、10μl経口投与した。
抗TNFα抗体投与群ではday61のみで、抗TNFα抗体投与液を0.2ml腹腔内投与した。
また、day62からday63にかけて絶食をかけ、day63に再摂食、同時にOVA0.14mg/ml含有DSS2.1%溶液をday64までの2日間与え、大腸炎の再燃を誘発した。day65に剖検を行い、大腸の長さを測定、評価項目とした。

0144

(結果)
図13に大腸長の比較を、表13に大腸長のデータを示した。

0145

0146

実施例5で示されたように、急性期にDSS2.8%+OVAを与え、慢性期にDSS2.1%+OVAを与えると、大腸長の短縮が観察された。この短縮は、クロドロン酸の皮下若しくは経口投与、5−ASAの経口投与又は抗TNFα抗体の腹腔内注射により抑制された。クロドロン酸の経口投与は、皮下投与よりも、高い大腸長短縮抑制効果を示した。さらに、クロドロン酸の経口投与は、一般的なIBD治療薬である5−ASA及び抗TNFα抗体よりも、優れた大腸炎改善効果を示した。
結論
DSS誘発マウス大腸炎再燃モデルにおいて、クロドロン酸の経口投与は高い大腸炎抑制作用を示した。

0147

実施例6:クロドロン酸はVNUTのCl−依存のアロステリックモジュレーターである。
次に、クロドロン酸についての薬理作用、その作用機序について検討した。
(方法)
〈蛍光クエンチングとしてのΔψの測定〉
Biol.Pharm.Bull.36,1688−1691(2013)に記載されるように、オキソノールV(Sigma)の蛍光クエンチングを測定することによってΔψ(内側がプラス(positive−inside))を、分析した。プロテオリポソームに組込まれたタンパク質1μg、20mM MOPS−Tris(pH7.0)、150mM酢酸カリウム、5mM酢酸マグネシウム及び1μMオキソノールVからなる反応混合物(450μL)を、27℃で50秒間インキュベートした。記載された阻害剤の存在下又は非存在下で、2μMバリノマイシンの添加により反応を開始させ、2μMカルボニルシアニド−m−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)の添加により反応を終了させた。

0148

〈ATP結合アッセイ
VNUTタンパク質の光親和性標識は、基本的には、FEBSJ.280,1430−1442(2013)に記載されるように行った。20μMの濃度のビオチン−11−ATP(PerkinElmer)は、20mM MOPS−Tris(pH7.4)、50mM酢酸カリウム、2mM酢酸マグネシウム、10mM KCl及び0.1%DTMを含有するバッファー50μL中で、VNUTタンパク質4μgと、暗所上で混合した。氷上で3分間のインキュベーション後、ハンドヘルドUVランプを用いて、254nmで10分間溶液を照射した。照射後、10%SDS、50%グリセロール、0.3%EDTA及び6%Trisを含むサンプルバッファーの添加により架橋結合反応を停止させ、ブロモフェノールブルー及びサンプルを、SDS−PAGEに供し、続いて、抗ストレプトアビジン抗体(Sigma)を用いて、イムノブロッティングを行った。阻害剤はバッファーにVNUTタンパク質を加える前に添加した。

0149

(結果)
クロドロン酸によるVNUT依存的なATPの取り込みの阻害メカニズムの特性をさらに明らかにした。これまで報告されているように、バリノマイシンの添加によって、K+の拡散を通じて、〜90mVのΔψ(内側がプラス(positive−inside))が形成された。高濃度のクロドロン酸の添加でさえ、Δψのインジケーターへの影響はなかった(図14a)。
次に、VNUTによるATP取り込みの、Cl−依存性を分析した。結果は、2mM Cl−までは、ATP輸送活性の上昇が観察されず、3〜7mM Cl−において、ATPの取り込みが極端に増加し、8mM Cl−を過ぎてプラトーに達したことを示した(図14b)。Δψが形成されていない条件下においては、塩素イオンはATPの取り込みに対し何ら影響を示さなかった。特筆すべきは、Cl−依存的なVNUTの活性化は、Cl−に対して〜3のヒル係数を有する、強力かつ類まれなATP輸送の正の共同性を示すことであった(図14c)。並行した実験において、クロドロン酸は、Cl−のより高い濃度側への、Cl−活性化シフトをもたらし、競争的相互作用が示唆された(図14b及びc)。
VNUTのATP結合部位の光親和性標識により、UV照射した際に、VNUTの分子量に対応する部位で強力なシグナルが検出された(図14d)。光親和性標識による基質特異性は、ATP輸送アッセイによるものとほぼ同一である。ATPのVNUTへの結合は、高濃度でのクロドロン酸又はエチドロン酸の添加によっても阻害されなかった(図14d)。一方、Cl−依存的なVGLUT媒介性グルタミン酸輸送を阻害するとして知られる、4,4’−ジイソチオシアノ−2,2’−スチルベンスルホン酸(DIDS)は、ATPのVNUTへの結合を阻害した(図14d)。また、すでに報告されているように、高濃度のアセトアセテート及びグリオキシル酸によっても、ATPのVNUTへの結合は阻害されなかった(図14d)。
クロドロン酸の効果は全体として可逆的であり、調合液から当該化合物をウオッシュアウトすることにより活性が完全に回復した(図14e)。
これらの結果は、クロドロン酸が直接的に、競争的にかつ可逆的にVNUTの結合部位を阻害することを示した。

実施例

0150

実施例7:杯細胞はVNUTを発現する。
VNUTを発現する細胞を明らかにするため、抗VNUT抗体を用いてVNUTを発現する細胞を探索した。
免疫組織化学実験による解析の結果、粘液を排出する役割を担う杯細胞にVNUTが強く発現することが明らかとなった。杯細胞は近年免疫細胞としての機能も注目されており、単に粘液による物理的なバリアだけではなく、インフラマソームによって有害な外来物の除去する役割を担う細胞であることが解明されてきた(Wlodarska,M.,et al.,Cell.156(5):p.1045−59(2014))。この細胞の機能の破綻はIBDの増悪に関わることが明らかとなっており、VNUTがこの細胞でどのような機能を持つか解析することにより、新たなIBD治療ターゲット見出すことが期待される。

0151

VNUT阻害活性を有する化合物は、体重の減少、大腸の長さの短縮、クリプト構造の脱落、筋層の肥厚、下痢・血便の発生等の炎症性腸疾患に起因する症状を抑制又は軽減するなどの優れた炎症性腸疾患抑制効果を奏するので、炎症性腸疾患、特に再発性の炎症性腸疾患に対する有効な予防又は治療手段が提供できる。

0152

本出願は、日本で出願された特願2016−009294(出願日2016年1月20日)及び特願2016−119336(出願日2016年6月15日)を基礎としておりそれらの内容は本明細書に全て包含されるものである。

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