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図面 (6)

課題

治療用化合物の眼への送達を増強する方法の提供。

解決手段

治療剤の対象の眼への送達を増強する方法であって、プラスミンまたはその誘導体および該治療剤を該眼に投与する段階を含む、方法。治療剤は、核酸、低分子、抗体、またはペプチド等から選択される。

概要

背景

発明の背景
眼は、光を検出し、その光を一連電気信号に変換し、かつこれらの信号を脳に伝達して、最終的に我々の世界の表現を生成する、複合光学系である。眼の疾患および障害は、視力減弱光感受性の減弱、および失明を引き起こす可能性がある。

網膜などの、眼の疾患または障害によって影響を受けた特異的な眼の組織への治療用化合物送達は、難題である。硝子体内注射または埋め込み薬物送達装置などの現在の方法は、依然として送達の有効性が限定されている。具体的には、治療剤は多くの場合、送達部位の周囲の隣接領域にのみ局在化し、介在眼構造を超えてまたは標的眼組織を通して浸透または拡散することができず、それによってそのような治療法の有効性を大きく限定する。したがって、治療用化合物の眼への送達を増強する方法については長年にわたる必要がある。

概要

治療用化合物の眼への送達を増強する方法の提供。治療剤の対象の眼への送達を増強する方法であって、プラスミンまたはその誘導体および該治療剤を該眼に投与する段階を含む、方法。治療剤は、核酸、低分子、抗体、またはペプチド等から選択される。

目的

本発明は、治療用化合物の眼への送達を増強または改善する方法についての長年にわたる必要に対して、解決策を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

治療剤の対象の眼への送達を増強する方法であって、プラスミンまたはその誘導体および該治療剤を該眼に投与する段階を含む、方法。

請求項2

プラスミンまたはその誘導体が、ミニプラスミンまたはマイクロプラスミン(オクリプラスミン)である、請求項1記載の方法。

請求項3

治療剤が、核酸、低分子、抗体、またはペプチドから選択される、請求項1記載の方法。

請求項4

核酸が、核酸発現ベクタープラスミド、またはsiRNAである、請求項3記載の方法。

請求項5

核酸発現ベクターが、導入遺伝子を含むウイルスベクターである、請求項4記載の方法。

請求項6

導入遺伝子がオプシンである、請求項5記載の方法。

請求項7

オプシンが、チャネルロドプシンハロロドプシンメラノプシン松果体オプシン、バクテリオロドプシン、およびプロテオロドプシン、またはその機能的バリアントからなる群より選択される、請求項6記載の方法。

請求項8

前記導入遺伝子が、細胞特異的プロモーターに機能的に連結されている、請求項4〜7のいずれか一項記載の方法。

請求項9

治療剤が、ナノ粒子ポリマー、またはリポソームの中にカプセル化されている、前記請求項のいずれか一項記載の方法。

請求項10

治療剤が、ラニビズマブ抗体FAB(Lucentis)、VEGF Trap融合分子(VEGF Trap-Eye)、macugenペグポリペプチド(ペガプタニブ)、およびベバシズマブ(Avastin)からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。

請求項11

対象が眼の疾患または障害を患っている、請求項1記載の方法。

請求項12

プラスミンまたはその誘導体および治療剤が、同時にまたは逐次的に送達される、請求項1記載の方法。

請求項13

治療剤が網膜細胞に送達される、請求項1記載の方法。

請求項14

網膜細胞が、網膜神経節細胞網膜双極細胞、網膜水平細胞無軸索細胞光受容細胞ミュラーグリア細胞、または網膜色素上皮細胞である、請求項13記載の方法。

請求項15

投与が眼の硝子体に対してである、請求項1記載の方法。

請求項16

対象において光感受性を増大させるか、または視力を改善もしくは回復させる方法であって、プラスミンまたはその誘導体およびオプシンをコードするウイルスベクターを眼の硝子体に投与する段階を含む、方法。

請求項17

前記オプシンが、チャネルロドプシン、ハロロドプシン、メラノプシン、松果体オプシン、バクテリオロドプシン、およびプロテオロドプシン、またはその機能的バリアントからなる群より選択される、請求項16記載の方法。

請求項18

対象が眼の疾患または障害を有する、請求項16〜17のいずれか一項記載の方法。

技術分野

0001

関連出願
本出願は、2013年3月14日に出願された米国特許仮出願第61/785,015号に基づく優先権およびその恩典を主張し;該出願の内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。

0002

政府支援
本発明は、National Institutes of Health/National Eye Instituteの助成金NIH EY 17130の下、米国政府の支援で行われた。政府は、本発明においてある一定の権利を有する。

0003

発明の分野
本発明は、概して、治療用化合物の眼への送達を増強する方法に関する。

背景技術

0004

発明の背景
眼は、光を検出し、その光を一連電気信号に変換し、かつこれらの信号を脳に伝達して、最終的に我々の世界の表現を生成する、複合光学系である。眼の疾患および障害は、視力減弱光感受性の減弱、および失明を引き起こす可能性がある。

0005

網膜などの、眼の疾患または障害によって影響を受けた特異的な眼の組織への治療用化合物の送達は、難題である。硝子体内注射または埋め込み薬物送達装置などの現在の方法は、依然として送達の有効性が限定されている。具体的には、治療剤は多くの場合、送達部位の周囲の隣接領域にのみ局在化し、介在眼構造を超えてまたは標的眼組織を通して浸透または拡散することができず、それによってそのような治療法の有効性を大きく限定する。したがって、治療用化合物の眼への送達を増強する方法については長年にわたる必要がある。

0006

本発明は、治療用化合物の眼への送達を増強または改善する方法についての長年にわたる必要に対して、解決策を提供する。

0007

本発明は、治療剤の対象の眼への送達を増強する、プラスミンまたはその誘導体および該治療剤を該眼に投与する段階による方法を特徴とする。本発明はまた、治療剤の送達を増強するための、対象の眼への送達用のプラスミンまたはその誘導体を含む組成物の使用を特徴とする。

0008

1つの局面において、プラスミンまたはその誘導体は、ミニプラスミンまたはマイクロプラスミン(オクリプラスミン)である。本発明に包含されるプラスミンまたはその誘導体は、アミノ酸配列SEQID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、またはその機能的バリアントもしくは断片を含む。

0009

1つの局面において、治療剤は、低分子核酸、抗体、またはペプチドから選択される。核酸は、核酸発現ベクター(すなわち、ウイルスベクター)、プラスミド、またはsiRNAである。例えば、ウイルスベクターは、導入遺伝子をコードするAAVウイルスベクター(すなわち、組み換えAAVまたはrAAV)である。好ましくは、導入遺伝子は、光感受性を増大もしくは回復させる、光検出を増大させる、感光性を増大させる、視覚誘発電位を増大させる、または盲人に視力を回復させる遺伝子産物をコードする。より好ましくは、導入遺伝子はオプシン遺伝子である。オプシン遺伝子の例は、チャネルロドプシン(すなわち、チャネルロドプシン-1、チャネルロドプシン-2、ボルボックスカルテリ(Volvox carteri)チャネルロドプシン1もしくは2)、メラノプシン松果体オプシン、フォトプシンハロロドプシンバクテリオロドプシンプロテオロドプシン、またはその任意の機能的バリアントもしくは断片を含むが、これらに限定されない。

0010

治療剤の他の例は、ラニビズマブ抗体FAB(Lucentis)、VEGF Trap融合分子(VEGF Trap-Eye)、macugenペグポリペプチド(ペガプタニブ)、およびベバシズマブ(Avastin)を含むが、これらに限定されない。本発明において使用される治療剤のいずれも、ナノ粒子ポリマー、またはリポソームの中にカプセル化されてもよい。

0011

1つの局面において、プラスミンまたはその誘導体および治療剤は、同時にまたは逐次的に送達される。

0012

本発明は、治療剤が網膜細胞に送達される方法を提供する。網膜細胞は、網膜神経節細胞、網膜水平細胞、網膜双極細胞無軸索細胞光受容細胞ミュラーグリア細胞、または網膜色素上皮細胞である。

0013

1つの局面において、プラスミンまたはその誘導体および治療剤は、眼の硝子体に投与される。

0014

本発明はさらに、対象において光感受性を増大または回復させる方法であって、プラスミンまたはその誘導体およびオプシンをコードするウイルスベクターを眼の硝子体に投与する段階を含む方法を提供する。本発明はまた、対象において視力を改善または回復させる方法であって、プラスミンまたはその誘導体およびオプシンをコードするウイルスベクターを眼の硝子体に投与する段階を含む方法を提供する。

0015

対象において眼の疾患または障害を処置するためのプラスミンまたはその誘導体を含む組成物の使用もまた、本明細書において提供される。

0016

対象は、眼の疾患または障害を患っている。好ましくは、眼の疾患または障害は、光受容体変性と関連している。

0017

別の方法で定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料が、本発明の実施において使用されうるが、適した方法および材料が、以下に記載される。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献は、その全体が参照により明白に組み入れられる。矛盾する場合は、本明細書が、定義を含んで支配することとなる。さらに、本明細書に記載される材料、方法、および実施例は、例証となるだけであり、限定するようには意図されない。

0018

[本発明1001]
治療剤の対象の眼への送達を増強する方法であって、プラスミンまたはその誘導体および該治療剤を該眼に投与する段階を含む、方法。
[本発明1002]
プラスミンまたはその誘導体が、ミニプラスミンまたはマイクロプラスミン(オクリプラスミン)である、本発明1001の方法。
[本発明1003]
治療剤が、核酸、低分子、抗体、またはペプチドから選択される、本発明1001の方法。
[本発明1004]
核酸が、核酸発現ベクター、プラスミド、またはsiRNAである、本発明1003の方法。
[本発明1005]
核酸発現ベクターが、導入遺伝子を含むウイルスベクターである、本発明1004の方法。
[本発明1006]
導入遺伝子がオプシンである、本発明1005の方法。
[本発明1007]
オプシンが、チャネルロドプシン、ハロロドプシン、メラノプシン、松果体オプシン、バクテリオロドプシン、およびプロテオロドプシン、またはその機能的バリアントからなる群より選択される、本発明1006の方法。
[本発明1008]
前記導入遺伝子が、細胞特異的プロモーターに機能的に連結されている、本発明1004〜1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
治療剤が、ナノ粒子、ポリマー、またはリポソームの中にカプセル化されている、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1010]
治療剤が、ラニビズマブ抗体FAB(Lucentis)、VEGF Trap融合分子(VEGF Trap-Eye)、macugenペグ化ポリペプチド(ペガプタニブ)、およびベバシズマブ(Avastin)からなる群より選択される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1011]
対象が眼の疾患または障害を患っている、本発明1001の方法。
[本発明1012]
プラスミンまたはその誘導体および治療剤が、同時にまたは逐次的に送達される、本発明1001の方法。
[本発明1013]
治療剤が網膜細胞に送達される、本発明1001の方法。
[本発明1014]
網膜細胞が、網膜神経節細胞、網膜双極細胞、網膜水平細胞、無軸索細胞、光受容細胞、ミュラーグリア細胞、または網膜色素上皮細胞である、本発明1013の方法。
[本発明1015]
投与が眼の硝子体に対してである、本発明1001の方法。
[本発明1016]
対象において光感受性を増大させるか、または視力を改善もしくは回復させる方法であって、プラスミンまたはその誘導体およびオプシンをコードするウイルスベクターを眼の硝子体に投与する段階を含む、方法。
[本発明1017]
前記オプシンが、チャネルロドプシン、ハロロドプシン、メラノプシン、松果体オプシン、バクテリオロドプシン、およびプロテオロドプシン、またはその機能的バリアントからなる群より選択される、本発明1016の方法。
[本発明1018]
対象が眼の疾患または障害を有する、本発明1016〜1017のいずれかの方法。
本発明の他の特性および利点が、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであると考えられ、かつそれらによって包含される。

図面の簡単な説明

0019

AAV2ベクター(6×1012 vg/ml)、AAV2/2-ChR2-GFP-WPRE-hGHpAの、対照(A、B)またはプラスミン(0.025IU/眼)との同時注射(C、D)における硝子体内注射後の、網膜垂直切片の一連の代表的なGFP蛍光画像である。ベクターを、およそ1か月齢成体C56BL/6Jマウス硝子体腔中に、プラスミンと共に同時注射した。形質導入効率を、ウイルス注射の1か月後に、免疫染色および細胞計数によって評定した。
網膜神経節細胞におけるAAV媒介性の形質導入効率および潜在的神経毒性に対するプラスミンの効果を実証する、一連の代表的なGFP蛍光およびDAPI染色の画像である。AAV2ベクター(2×1012 vg/ml)のAAV2/2-ChR2-GFP-WPRE-hGHpAを、対照において注射し(A、E)、または、(B、F)低濃度(L: 0.005 IU)、(C、G)中間濃度(M: 0.025IU)、および(D、H)高濃度(H: 0.100IUプラスミン/眼)で同時注射した。網膜神経節細胞は、DAPIによって染色した(A〜D)。
網膜神経節細胞における(A)AAV媒介性の形質導入効率および(B)プラスミンの潜在的神経毒性に対するプラスミンの効果の定量的評価を示す、2種のグラフである。低濃度(L: 0.005 IU)、中間濃度(M: 0.025IU)、および高濃度(H: 0.100IUプラスミン/眼)でのプラスミンの同時注射は、網膜神経節細胞におけるAAV媒介性の形質導入効率を有意に増大させた(A)。プラスミンの同時注射は、網膜神経節細胞に対していかなる有意な神経毒性も示さなかった。神経節細胞数は、223μm×167μmの複数単位面積から評価した。*p<0.05;**p<0.005。
網膜全載(retinal whole-mount)におけるmCherryを発現する網膜双極細胞の一連の代表的な蛍光画像である。mGluR6プロモーターの制御下にmCherryを保有する、Y444Fキャプシド変異を伴うAAV2ベクター(2×1012 vg/ml)を、およそ1か月齢の成体C56BL/6Jマウスの硝子体腔中に、3種の用量(L: 0.005 IU、M: 0.025 IU、およびH: 0.100 IU/眼)のプラスミンと共に同時注射した。形質導入効率を、ウイルス注射の1か月後に、免疫染色および細胞計数によって評定した。
網膜双極細胞におけるAAV媒介性の形質導入効率に対するプラスミンの効果についての定量データを示す、3種のグラフである。A)中心;B)中間領域;およびC)周辺。mCherryを発現する網膜双極細胞の数を、223μm×167μmの複数単位面積から評価した。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。

0020

詳細な説明
本発明は、治療用化合物または治療剤の対象の眼への送達の増強のための、プラスミンまたはその誘導体および該治療剤を該眼に投与する段階による方法を提供する。いくつかの態様において、プラスミンまたはその誘導体および治療剤は、網膜および網膜細胞への送達の増強のために、硝子体に送達されてもよい。網膜細胞は、例えば、光受容細胞(例えば、桿状体錘状体、および感光性網膜神経節細胞)、水平細胞、網膜双極細胞、無軸索細胞、網膜神経節細胞、ミュラーグリア細胞、ならびに網膜色素上皮細胞を含む。他の態様において、プラスミンまたはその誘導体および治療剤は、例えば、後区前区強膜脈絡膜結膜虹彩水晶体、または角膜に送達されてもよい。

0021

網膜は、桿状体および錘状体と呼ばれる特殊化した光受容細胞を含有する眼の後部における複合組織である。光受容体は、視覚情報局所処理のために神経細胞ネットワークに接続する。この情報が、視像への復号のために脳に送られる。網膜は、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、網膜色素変性症(RP)、緑内障、および他の遺伝性網膜変性症ブドウ膜炎網膜剥離、ならびに眼の癌(眼内黒色腫および網膜芽腫)を含む、さまざまな疾患の影響を受けやすい。これらの各々は、視力喪失または完全な失明をもたらす可能性がある。

0022

治療用化合物の網膜への送達は、眼の複雑な構造のために難題である。硝子体内注射および硝子体送達装置が、治療用化合物を網膜に送達するために頻繁に使用されるが、しかし送達の効率は、網膜の内境界膜ILM)および多層の細胞によって損なわれる。

0023

プラスミン
プラスミンは、フィブリン血餅および他の血漿タンパク質を分解する、血液中に存在するセリンプロテアーゼである。具体的には、プラスミンは、フィブリンフィブロネクチントロンボスポンジンラミニンプロアクセレリン、およびフォンウィルブランド因子(VWF)を可溶性産物に切断する。プラスミンは、トリプシンよりも高い選択性で、リジン残基およびアルギニン残基カルボキシル側で優先的な切断を示す。

0024

具体的には、プラスミンは、プラスミノーゲンPLG)と呼ばれる酵素前駆体、すなわち不活性前駆タンパク質から生じる。プラスミノーゲンのアミノ酸配列、例えばGenbankアクセッション番号NP_000292が、当技術分野において公知であり、以下に列挙される。

0025

プラスミノーゲンの核酸、例えばGenbankアクセッション番号NM_000301が、当技術分野において公知であり、以下に列挙される通りである。

0026

プラスミノーゲンのシグナルペプチド配列は、19アミノ酸の長さである。したがって、シグナルペプチドを含まないプラスミノーゲン配列は、プラスミノーゲン配列の20〜810位のアミノ酸を包含する。シグナルペプチド配列は、以下の通りである。

0027

プラスミン重鎖Aは、561アミノ酸であり、以下に提供されるアミノ酸配列を含む。

0028

プラスミン重鎖Aの短い型は、483アミノ酸である。プラスミン重鎖Aの短い型のアミノ酸配列は、以下の通りである。

0029

活性化ペプチドのアミノ酸配列は、以下のアミノ酸配列を含む。

0030

プラスミン軽鎖Bは、230アミノ酸である。プラスミン軽鎖Bのアミノ酸配列は、以下の通りである。

0031

いくつかの好ましい態様において、プラスミンは、ミニプラスミンまたはマイクロプラスミンまたはその誘導体であることができる。ミニプラスミンおよびマイクロプラスミンは、ミニプラスミノーゲンおよびマイクロプラスミノーゲンの活性化時に、ストレプトキナーゼスタフィロキナーゼ組織型プラスミノーゲンアクチベーター、またはウロキナーゼなどであるがこれらに限定されないプラスミノーゲンアクチベーターによって、産生される。ミニプラスミノーゲンおよびマイクロプラスミノーゲンは、哺乳動物血液の重要な構成要素である一本鎖糖タンパク質である、プラスミノーゲンに由来する。ヒトプラスミノーゲンは、N末端活性化前(pre-activation)ドメイン、各々が約80アミノ酸である5個の相同クリングルドメイン、セリンプロテアーゼ触媒ドメイン、およびドメイン間接続配列から構成される、791残基の多ドメインタンパク質(SEQID NO:1)である。プラスミンまたはプラスミノーゲンアクチベーターは、ヒトプラスミノーゲンのN末端のArg-68とMet-69との間、またはLys-77とLys-78との間、またはLys-78とVal-79との間のペプチド結合を切断し、Lys-プラスミノーゲンと呼ばれるより短いプロ酵素(例えば、アミノ酸69〜791または78〜791または79〜791からなるタンパク質)を結果としてもたらす。酵素エラスターゼによるさらなる切断が最初の4個のクリングルドメインを除去して、プロ酵素であるミニプラスミノーゲン(典型的にはアミノ酸442〜791)を産生する。5番目クリングルのさらなる切断によって、プロ酵素であるマイクロプラスミノーゲン(典型的にはアミノ酸543〜791)が生じる。プラスミノーゲンのクリングルは、フィブリンなどの基質に対するプラスミノーゲンの特異的結合を媒介する、リジン結合部位を含有する。プラスミノーゲンのプロ酵素型は、Arg-561とVal-562との間のペプチド結合の切断によって酵素学的に活性を有する型へと活性化され、対応するタンパク質のジスルフィド結合二重鎖型を生じる。プラスミノーゲンタンパク質の活性化の産物は、プラスミンと呼ばれる。したがって、Lys-プラスミノーゲン活性化の産物は、Lys-プラスミンと呼ばれ、他方で、ミニプラスミノーゲンおよびマイクロプラスミノーゲンの活性化の産物は、それぞれミニプラスミンおよびマイクロプラスミンと称される。ミニプラスミンおよびマイクロプラスミンは、プラスミンと同様に、触媒活性を有する。プラスミンを上回るミニプラスミンおよびマイクロプラスミンの利点は、プラスミンと比較してより小さいサイズである。したがって、マイクロプラスミンおよびミニプラスミンは両方とも、硝子体においてプラスミンよりも速い拡散速度を有すると期待される。

0032

本発明のプラスミンは、本明細書に記載されるプラスミノーゲン関連配列のいずれか1つ、例えば、SEQID NO: 1および3〜7、またはその機能的断片もしくはバリアントのいずれか1つを含んでもよい。

0033

プラスミンはまた、オクリプラスミン(JETREA(登録商標))またはそのバリアントもしくは誘導体であってもよい。オクリプラスミンは、ピキアパストリス(Pichia pastoris)発現系において組み換えDNA技術により産生されるヒトプラスミンの組み換え切断型である。オクリプラスミンは、27.2 kDaの分子量を有する249アミノ酸で構成されているタンパク質であり、2本のペプチド鎖を有する。切断型重鎖のアミノ酸配列は、以下の通りである。

軽鎖のアミノ酸配列は、以下の通りである。

本発明はさらに、オクリプラスミンのバリアントおよび誘導体を包含する。

0034

プラスミンを、公知の単離技術を用いて血液から単離してもよい。あるいは、プラスミノーゲンを、公知の単離技術を用いて血液から単離して、次にプラミノーゲンを切断して活性プラスミンにするプロテアーゼインキュベーションし、本明細書に記載される方法における使用に適した精製または単離されたプラスミンを産生してもよい。

0035

プラスミンを、市販されているペプチド合成機を用いて化学的に合成して、本明細書に記載される方法における使用に適した精製または単離されたプラスミンを産生してもよい。ペプチドおよびタンパク質の化学合成を、D-アミノ酸および他の有機低分子を含む修飾アミノ酸または非天然アミノ酸の組み込みのために使用することができる。ペプチドまたはタンパク質中の1個または複数のL-アミノ酸の対応するD-アミノ酸アイソフォームでの置換を、酵素加水分解に対する耐性を増大させるため、および生物学的活性の1つまたは複数の特性、すなわち、機能的能力または作用の持続期間を増強するために、使用することができる。プラスミンに対する他の修飾、例えば、コンフォメーションを変化させてプラスミンの能力、選択性、または安定性を変更するための架橋を、導入することができる。

0036

例えば、プラスミンを、Sigma Aldrich、カタログ番号P1867などの市販業者から購入してもよい。本発明はまた、Sigma Aldrich(カタログ番号P1867)によって供給されるプラスミンのバリアントまたは誘導体も包含する。

0037

プラスミンは、組み換えタンパク質の発現および精製のための当技術分野において周知の方法によって取得される組み換えプラスミンであってもよい。プラスミンまたはそのバリアントもしくは類似体をコードするDNA分子は、公知のDNA配列から、または、公知のコドン使用頻度に基づいてアミノ酸配列から核酸配列推定することによって生成することができる。プラスミンをコードするDNA分子は、当技術分野において公知の方法論のいずれかによって、クローニングベクターまたは発現ベクターなどの適したベクター中にクローニングすることができる。クローニングベクターまたは発現ベクターは、制限酵素部位などのプラスミンDNAのさらなるクローニングのために必要とされる構成要素、または、宿主特異的プロモーターおよび任意でエンハンサー配列などのプラスミンの発現のために必要とされる構成要素のすべてを含有する。発現ベクターを、宿主細胞に導入して、発現させることができる。宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であることができる。例えば、プラスミンを、細菌細胞(すなわち、大腸菌(E.coli))、酵母昆虫細胞(すなわち、Sf9)、または哺乳動物細胞において発現させることができる。他の適した宿主細胞が、当業者に公知である。宿主細胞を使用して、培養においてプラスミン、そのバリアントまたは誘導体を産生または過剰発現することができる。次に、生物学的に発現させたプラスミン、そのバリアントまたは誘導体を、親和性クロマトグラフィーなどの公知の精製技術を用いて精製して、本明細書に記載される方法における使用に適した精製または単離されたプラスミンを産生してもよい。

0038

いくつかの態様において、プラスミンのバリアント、誘導体、または類似体が好ましい場合がある。プラスミンのバリアント、誘導体、および類似体は、当業者が同定または生成することができる。プラスミンバリアント、誘導体、および類似体は、例えば、本明細書に記載される組み換え法または合成の方法を用いることによって、生成することができる。当技術分野において公知のプラスミン誘導体は、ミニプラスミンおよびマイクロプラスミンを含み、それらはまた本明細書に開示される方法における使用に適している。

0039

本明細書において使用される際、「誘導体」および「バリアント」という用語は、互換的に使用されてもよく、天然に存在するプラスミンとは異なるが、その本質的な特性を保持するプラスミンを指す。例えば、プラスミン誘導体は、プラスミンの生物学的活性断片、例えば切断型プラスミンであってもよい。生物学的活性断片は、プラスミンの触媒ドメインを含有し、セリンプロテアーゼ触媒活性を有する。あるいは、プラスミン誘導体は、少なくとも1アミノ酸、少なくとも2アミノ酸、少なくとも3アミノ酸、少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも7アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも9アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、少なくとも30アミノ酸、少なくとも40アミノ酸、または少なくとも50アミノ酸が野生型プラスミンから変異した、変異プラスミンであってもよい。変異プラスミンは、依然として機能的に同等の分子を結果としてもたらす、置換、付加、または欠失によって変更された配列を有してもよい。1つの態様において、プラスミン誘導体は、野生型プラスミンと約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、または約50%同一である。いくつかの場合に、変異は、プラスミンの能力(プロテアーゼ活性)、安定性、または標的の数を増大させてもよい。別の局面において、変異は、プラスミンの能力、安定性、または標的の数を減少させてもよい。変異は、保存的アミノ酸置換であってもよい。あるいは、変異は、非保存的アミノ酸置換であってもよい。別の態様において、プラスミン誘導体は、例えば、活性または安定性を変更する化学的部分の付加によって化学的に修飾されてもよい。

0040

2つまたはそれより多い核酸またはポリペプチド配列文脈における「%同一」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを用いてまたは目視検査によって測定した際に、最大対応について比較およびアラインメントした場合、同じであるか、または同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの特定のパーセンテージを有する、2つまたはそれより多い配列またはサブ配列に言及する。例えば、%同一は、比較される配列のコード領域の長さ全体に関係する。

0041

列比較のためには、典型的に、1つの配列が参照配列として働き、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる際は、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合には、サブ配列座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。配列比較アルゴリズムが次に、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を算出する。パーセント同一性は、BLASTおよびPSI-BLASTなどの検索アルゴリズムを用いて判定される(Altschul et al., 1990, J Mol Biol 215:3, 403-410;Altschul et al., 1997, Nucleic AcidsRes 25:17, 3389-402)。

0042

本明細書において使用される「類似体」という用語は、プラスミンの本質的なプロテアーゼ活性を保持する化合物またはペプチドを指す。例えば、類似体は、天然に存在するプラスミンに対していくらかのアミノ酸配列類似性を有していてもよいし、または配列類似性を有していなくてもよい。しかしながら、すべてのプラスミン類似体は、プラスミンの標的(すなわち、ラミニン、フィブリン)のいずれか1つのプロテアーゼ切断の機能的能力、ならびに/またはリジン残基およびアルギニン残基のカルボキシル側での優先的な切断を保持する。

0043

プラスミンの誘導体および類似体は、プラスミンの変異体コンビナトリアルライブラリー、または一般的な治療用化合物もしくは薬学的化合物スクリーニングすることによって、当業者が特定することができる。

0044

使用の方法
本発明は、治療剤の眼への送達を増強するための方法を提供する。本発明の方法は、プラスミンおよび治療剤を眼に投与する段階を含む。治療剤は、当技術分野において公知の任意の方法によって眼に送達されてもよい。投与の経路は、硝子体内前房内、結膜下テノン嚢下、眼球後、後強膜近傍(posterior juxtascleral)、または局所を含むが、これらに限定されない。送達方法は、例えば、注射器による注射、および、埋め込み硝子体送達装置(すなわち、VITRASERT(登録商標))などの薬物送達装置を含む。

0045

好ましくは、治療剤は、治療剤の網膜への送達のための硝子体内注射によって硝子体に投与される。いくつかの態様において、本発明の方法は、網膜の細胞への送達の増強を提供する。例示的な網膜細胞は、光受容細胞(例えば、桿状体、錘状体、および感光性網膜神経節細胞)、水平細胞、双極細胞、無軸索細胞、網膜神経節細胞、ミュラーグリア細胞、および網膜色素上皮細胞を含むが、これらに限定されない。

0046

1つの態様において、プラスミンまたはその誘導体は、治療剤と同時にまたは逐次的に投与される。同時投与のために、プラスミンまたはその誘導体を、当技術分野において公知の方法によって、送達、例えば注射に適した単一組成物において、治療剤と共に製剤化することができる。あるいは、プラスミンまたはその誘導体を、同時にまたは逐次的に、別々の組成物において注射することができる。好ましい態様において、プラスミンは、治療剤の投与の前に投与されてもよい。

0047

そのような製剤は、生理学的pHを維持するための緩衝生理食塩水または他の緩衝液、例えばHEPESなどの、薬学的におよび/または生理学的に許容される媒体希釈剤担体または賦形剤を含む。そのような構成要素およびその製剤の考察については、概して、Gennaro,AE., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins Publishers;2003年版または最新版を参照されたい。また、国際公開公報第00/15822号も参照されたい。調製物が長い期間保存されるべき場合は、例えば、グリセロールの存在下で凍結されてもよい。

0048

投与されるプラスミンまたはその誘導体の投薬量は、当業者が最適化することができる。ある特定の標的眼組織への送達は、標的組織の場所、介在眼構造、および標的組織に浸透する剤の能力に応じて、より低い用量のプラスミンまたはより高い用量のプラスミンを必要としうる。好ましくは、投与されるプラスミンの用量は、眼当たり約0.001 UI(酵素単位)、眼当たり0.025 UI、眼当たり約0.05 UI、眼当たり約0.075 UI、眼当たり約0.100 UI、眼当たり約0.150 UI、または眼当たり約0.200 UIである。

0049

いくつかの態様において、本明細書において開示される送達の増強のための方法は、治療剤の有効性の増大を提供しうる。治療剤の有効性の増大は、治療剤の治療効果を測定することによって判定することができる。処置は、対象における症状の緩和などの、臨床的恩恵をもたらす場合に、有効である。例えば、網膜色素変性症などの変性網膜疾患において、処置は、光感受性または視力の別の局面が改善または回復された場合に有効である。処置が予防的に適用される場合、「有効である」とは、処置が、眼の疾患もしくは障害を遅らせるもしくは阻止するか、または眼の疾患もしくは障害の臨床症状のうちの1つの症状を阻止するもしくは緩和することを意味する。効き目は、特定の眼の疾患または障害を診断または処置するための任意の公知の方法に関連して、判定する。

0050

いくつかの態様において、治療剤は、核酸または治療用導入遺伝子をコードする核酸発現ベクター(すなわち、ウイルスベクター)またはsiRNA種(すなわち、短ヘアピンまたはマイクロRNA)である。そのような治療剤に関して、本明細書において開示される方法によって提供される治療剤の送達の増強は、形質導入効率の増大を結果としてもたらしうる。形質導入効率の増大は、ウイルスベクターによって導入された導入遺伝子の発現のレベルを測定することによって、判定することができる。

0051

治療剤
本明細書に記載される方法によって眼に送達される治療剤は、眼の疾患、眼の障害、または眼の状態の症状を処置、緩和、低減、または阻止するための、当技術分野において公知の任意の治療剤である。治療剤は、低分子、核酸、抗体、またはペプチドであってもよい。

0052

本明細書に記載される方法における使用に適した低分子の例は、チロシンキナーゼ阻害剤抗生物質抗炎症剤グルココルチコイドオピオイドアンタゴニスト、および他の酵素阻害剤を含むが、これらに限定されない。

0053

本明細書に記載される方法における使用に適した核酸の例は、治療用導入遺伝子(すなわち、チャネルオプシン、またはハロロドプシン)をコードするウイルスベクター、RNA干渉分子(すなわち、短ヘアピン、siRNA、またはマイクロRNA)を含むが、これらに限定されない。特に好ましい態様において、治療剤は、遺伝子治療用の導入遺伝子をコードするウイルスベクターである。特に好ましいウイルスベクターは、光感受性を回復させるための網膜における発現用の、チャネルオプシンまたはハロロドプシンをコードするrAAVベクターである。

0054

本明細書に記載される方法における使用に適した抗体の例は、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、VEGF抗体(Eylea(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、インフリキシマブエタネルセプト、およびアダリムマブを含むが、これらに限定されない。

0055

本明細書に記載される方法における使用に適したタンパク質またはペプチドの例は、マイクロプラスミン(オクリプラスミン、Jetrea(登録商標))、macugenペグ化ポリペプチド(ペガプタニブ)、およびインテグリンペプチドを含むが、これらに限定されない。いくつかの局面において、ペプチド治療剤は、2種またはそれより多いペプチドを含有する、ペプチドの収集物である。

0056

本明細書に記載される治療剤のいずれも、任意で、ナノ粒子、ポリマー、またはリポソームなどの担体の中にカプセル化されてもよい。これらの担体剤は、治療剤の眼への送達をさらに増強するように働きうる。いくつかの局面において、担体剤は、安定性(寿命)を増大させる、または治療剤に徐放特性を提供するなど、治療剤の特性を変更しうる。あるいは、担体は、送達のために同じ組成物において製剤化された場合に、プラスミンのタンパク質分解活性から治療剤を保護しうる。

0057

遺伝子治療
多数の眼の疾患および障害は、さまざまな眼組織における異常な遺伝子発現に起因するため、遺伝子治療は、有効な療法として増大する可能性を有する。しかしながら、眼における遺伝子治療の有効性は、任意の眼組織全体にわたる治療用ウイルスベクターの有効な送達および形質導入の課題のために、限定されている。

0058

したがって、本発明は、眼の疾患もしくは障害を処置するため、または視力を回復もしくは改善するために、導入遺伝子の眼への送達の効率の増大のための方法を提供する。感光性または視力の回復のための特定の関心対象の導入遺伝子は、オプシン遺伝子またはロドプシン遺伝子などの感光性タンパク質を含む。本明細書において使用される際、「導入遺伝子」とは、関心対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、遺伝子治療に適した核酸発現ベクター(例えば、AAVなどのウイルスベクター)に存在するポリヌクレオチドを指す。

0059

以前の研究によって、チャネルオプシン-2などの導入遺伝子をコードする組み換えアデノ随伴ウイルスベクターの注射は、網膜内層細胞、特に双極細胞において、ベクターの不十分な送達およびChop2の低い発現を結果としてもたらすことが、示されている。非ヒト霊長類において、AAV媒介性の遺伝子トランスフェクションは、周辺網膜中心窩において、および血管に沿ってより効率的であることが見出されており、網膜と硝子体腔との間の境界である内境界膜(ILM)が主要な障壁であることを示唆している(Ivanova et al., 2010)。

0060

本発明は、ラミニンおよびフィブロネクチンなどのILMの構成要素を溶解するためにプラスミンまたはその誘導体を用いることによって、この問題に対する解決策を提供する。したがって、治療剤は、網膜、具体的には、網膜双極細胞、網膜神経節細胞、ミュラーグリア細胞、および網膜色素上皮細胞などの網膜内層の細胞に対して、より大きな到達性を有することになる。本明細書に記載される方法は、治療用ウイルスベクターなどの治療用化合物の送達の増強を提供する。ウイルスベクターの送達の増強は、治療用化合物の形質導入効率の増大、治療用導入遺伝子(すなわち、Chop2)の発現の増大、および治療用化合物の有効性の増大(すなわち、光感受性の増大または視力の回復)によって実証される。

0061

遺伝子治療における使用に適した核酸発現ベクターは、当技術分野において公知である。例えば、核酸発現ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターアデノウイルスベクターアデノ随伴ベクター(AAV)、もしくはレンチウイルスベクター、または当技術分野において公知の任意の工学操作もしくは組み換えウイルスベクターであることができる。特に好ましいウイルスベクターは、アデノ随伴ベクター、例えば、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、または当技術分野において公知の任意の工学操作もしくは組み換えAAVである。特に好ましい態様において、ベクターは、組み換えAAV-2(rAAV2)である。

0062

いくつかの態様において、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターは、ベクターが、標的細胞、例えば、網膜双極細胞(例えば、オン型またはオフ型網膜双極細胞;桿状体および錘状体双極細胞)の改善された形質導入効率を有することを可能にする、変異したチロシン残基を伴うキャプシドタンパク質を含む。いくつかの場合、rAAVは、標的細胞において関心対象のタンパク質の発現を駆動することができるプロモーター(例えば、mGluR6またはその断片)をさらに含む。

0063

1つの態様において、変異は、AAV1〜12またはハイブリッドAAVのキャプシドタンパク質の任意の1つまたは複数のチロシン残基において起こってもよい。具体的態様において、これらは表面に曝露されたチロシン残基である。関連した態様において、チロシン残基は、VP1、VP2、またはVP3キャプシドタンパク質の一部である。例示的態様において、変異は、AAV-VP3キャプシドタンパク質の以下のアミノ酸残基のうちの1つまたは複数で起こってもよい:Tyr252、Tyr272、Tyr444、Tyr500、Tyr700、Tyr704、Tyr730;Tyr275、Tyr281、Tyr508、Tyr576、Tyr612、Tyr673、またはTyr720。例示的な変異は、Y252F、Y272F、Y444F、Y500F、Y700F、Y704F、Y730F、Y275F、Y281F、Y508F、Y576F、Y612G、Y673F、およびY720Fを含むがこれらに限定されない、チロシンからフェニルアラニンへの変異である。具体的態様において、これらの変異は、AAV2血清型において起きる。いくつかの場合、AAV2血清型はY444F変異を含み、および/または、AAV8血清型はY733F変異を含んで、444および733は、ウイルスキャプシドのチロシン点変異の場所を示す。さらなる態様において、そのような変異したAAV2およびAAV8血清型は、光感受性タンパク質をコードし、そのような光感受性タンパク質の発現を駆動するように修飾されたmGluR6プロモーターもまた含む。そのようなAAVベクターは、例えば、Petrs-Silva et al., Mol Ther., 2011 19:293-301に記載されている。

0064

いくつかの態様において、治療用導入遺伝子の発現は、構成性プロモーター、すなわち、CAGプロモーター、CMVプロモーター、LTRによって駆動される。他の態様において、プロモーターは、誘導性または細胞特異的プロモーターである。細胞の特異的亜集団、すなわち、網膜ニューロン細胞または変性細胞において導入遺伝子発現を可能にする、細胞型特異的プロモーターが好ましい場合がある。これらの細胞は、網膜神経節細胞、光受容細胞、双極細胞、桿状体双極細胞、オン型錘状体双極細胞、網膜神経節細胞、感光性網膜神経節細胞、水平細胞、無軸索細胞、AII無軸索細胞、または網膜色素上皮細胞を含みうるが、これらに限定されない。細胞型特異的プロモーターは、当技術分野において周知である。特に好ましい細胞型特異的プロモーターは、mGluR6、NK-3、およびPcp2(L7)を含むが、これらに限定されない。発現の効率および選択的標的化を増大させるために当技術分野において公知の組み換えDNA技術を用いて修飾された細胞型特異的プロモーターもまた、本発明に包含される。例えば、修飾されたmGluR6プロモーターは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許仮出願第61/951,360号に記載されているように、mGluR6遺伝子由来の調節要素の組み合わせを含有する。

0065

本発明の1つの態様において、治療用導入遺伝子は、任意の光感受性オプシンであることができる。遺伝子のオプシンファミリーは、脊椎動物動物)および無脊椎動物のオプシンを含む。動物のオプシンは、イオンチャネルの活性を調節する、7回膜貫通ヘリックスを有するGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。無脊椎動物のロドプシンは、通常GPCRではないが、光感受性または光活性化イオンポンプまたはイオンチャネルである。

0066

本明細書において言及される際、オプシン遺伝子または光感受性タンパク質は、チャネルロドプシン、つまりチャネルオプシン(すなわち、ChR1、ChR2、ボルボックス・カルテリ由来のvChR1、vChR2、および任意の脊椎動物、無脊椎動物、または微生物から同定された他のバリアント)、ハロロドプシン(NpHR)、メラノプシン、松果体オプシン、フォトプシン、バクテリオロドプシン、プロテオロドプシン、およびその機能的バリアントまたはキメラを含むが、これらに限定されない。本発明の光感受性タンパク質は、植物細胞動物細胞古細菌細胞、藻類細胞、または細菌細胞に天然に存在することができ、あるいは、実験技術を通して作り出すことができる。オプシン遺伝子の例は、下記でさらに詳細に議論される。

0067

本発明における導入遺伝子としての、チャネルロドプシン、つまりチャネルオプシンの例は、チャネルロドプシンChop1(ChR1としても公知である)(GenBankアクセッション番号AB058890/AF385748)およびChop2(ChR2としても公知である)(GenBankアクセッション番号AB058891/AF461397)を含み、これらは、緑藻クラミドモナスレインハーディ(Chlamydomonas reinhardtii)由来の2種のロドプシンである(Nagel, 2002;Nagel, 2003)。チャネルオプシンは、発色団オールトランスレチナールに結合した際に、光により切り替え可能(光感受性)になる7回膜貫通ドメインタンパク質である。チャネルオプシンは、シッフ塩基結合を介してレチナール分子に連結された際に、チャネルロドプシンと呼ばれる、光駆動性(light-gated)で非特異的な内向き整流する陽イオンチャネルを形成する。これらの光感受性チャネルは、神経組織において発現および活性化された際に、細胞が光で刺激された時に脱分極することを可能にする(Boyden, 2005)。Chop2断片(315アミノ酸)は、光受容体変性のマウスモデルにおいて感光性および視力を効率的に増大させることが示されている(Bi et al., Neuron, 2006および米国特許第8,470,790号;これらは両方とも参照により本明細書に組み入れられる)。PCT公報である国際公開公報第2013/134295号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているようなChop2変異体およびバリアントをまた、本明細書に記載されるプロモーターを用いて発現させてもよい。本発明はまた、ボルボックス・カルテリのチャネルロドプシン(すなわち、vChR1およびvChR2)の使用も提供する。

0068

NpHR(ハロロドプシン)(GenBankアクセッション番号EF474018)は、好塩性好アルカリ性(haloalkaliphilic)古細菌ナトロノモナスファラオニス(Natronomonas pharaonis)由来である。ある特定の態様において、NpHRのバリアントを作り出すことができる。具体的態様において、NpHRタンパク質に対する単一または複数の点変異が、NpHRバリアントを結果としてもたらすことができる。具体的態様において、NpHRの哺乳動物コドン最適化版を利用することができる。1つの態様において、NpHRバリアントが利用される。1つの具体的態様において、eNpHR(増強されたNpHR)が利用される。アミノ酸FCYENEVのNpHRC末端への付加が、ニコチン性アセチルコリン受容体のβサブユニット由来のシグナルペプチドのNpHRN末端への付加と共に、eNpHRの構築を結果としてもたらす。

0069

メラノプシン(GenBankアクセッション番号6693702)は、概日リズムの調節、瞳孔対光反射、および光に対する他の非視覚的応答関与する、網膜の特殊化した感光性神経節細胞において見出される光色素である。構造において、メラノプシンは、レチニリデンタンパク質系統のGタンパク質共役型受容体である、オプシンである。メラノプシンは、そのアミノ酸配列および下流のシグナル伝達カスケードを含む多くの点において、無脊椎動物のオプシンに似ている。メラノプシンは、無脊椎動物のオプシンと同様に、内因性フォトイソメラーゼ活性を有する双安定光色素であるように見られる。ある特定の態様において、メラノプシンのバリアントを作り出すことができる。具体的態様において、メラノプシンタンパク質に対する単一または複数の点変異が、メラノプシンバリアントを結果としてもたらすことができる。

0070

光感受性タンパク質はまた、本明細書に記載される光感受性タンパク質(すなわち、ChR1、ChR2、vChR1、vChR2、NpHR、およびメラノプシン)のいずれかと少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%同一であるタンパク質を含んでもよい。本発明の光感受性タンパク質はまた、少なくとも1つの変異を有するタンパク質を含んでもよい。変異は、点変異であってもよい。

0071

いくつかの態様において、光感受性タンパク質は、神経回路内のシグナル伝達を調整することができ、かつ単一ニューロンのレベルでイオン伝導度挙動を双方向に制御することができる。いくつかの態様において、ニューロンは、網膜ニューロン、網膜双極細胞(例えば、オン型またはオフ型網膜双極細胞;桿状体および錘状体双極細胞)、網膜神経節細胞、光受容細胞、または網膜無軸索細胞である。

0072

いくつかの態様において、ポリA鎖を、本発明の発現カセットまたは核酸発現ベクターにおいて導入遺伝子の下流に挿入することができる。適したポリA鎖は、当技術分野において公知であり、例えば、ヒト増殖ホルモンポリA鎖(hGHpA)、ウシ増殖ホルモンポリA鎖(bGHpA)、ウシポリA、SV40ポリA、およびAV40pAを含む。

0073

好ましい用量の光放射による照明時に、ロドプシンタンパク質はチャネルの孔を開放し、それを通してH+、Na+、K+、および/またはCa2+イオン細胞外空間から細胞中へと流入する。ロドプシンチャネルの活性化は、典型的に、チャネルを発現する細胞の脱分極を引き起こす。脱分極した細胞は、ロドプシン発現細胞から網膜または脳の他の細胞へ情報を運んで、光感受性を増大させるかまたは視力を回復させるための、段階的電位およびまたは活動電位を生じる。チャネルオプシン(またはそのバリアント)をコードするベクターの投与によって視力または光感受性を改善する方法は、PCT/US2007/068263号に記載されており、その内容は全体が本明細書に組み入れられる。

0074

したがって、視覚処理および明瞭度に不可欠なオンおよびオフ経路を反復するために、二重ロドプシン系を使用することができる。簡潔に言うと、オンおよびオフ経路を作り出すために、本発明のChop2タンパク質は、オン型網膜ニューロン(すなわち、オン型神経節細胞および/またはオン型双極細胞)を特異的に標的とすることができ、他方、過分極光センサー(すなわち、ハロロドプシンまたは当技術分野において公知の他のクロライドポンプ)は、オフ型網膜ニューロン(すなわち、オフ型神経節細胞および/またはオフ型双極細胞)を標的とすることができる。好ましい細胞亜集団への特異的標的化は、異なる細胞型特異的プロモーターの使用を通して達成することができる。例えば、Chop2発現は、オン型網膜ニューロン(すなわち、オン型神経節細胞および/またはオン型双極細胞)における標的発現のためにmGluR6プロモーターによって駆動されてもよく、他方、ハロロドプシンなどの過分極チャネルは、発現が、オフ型網膜ニューロン(すなわち、オフ型神経節細胞および/またはオフ型双極細胞)における標的発現のためにNK-3プロモーターによって駆動される。

0075

網膜においてオンおよびオフ経路を回復させるための代替的なアプローチは、ChR2などの脱分極光センサーを桿状体双極細胞またはAII無軸索に発現させることによって達成される。このアプローチにおいて、桿状体双極細胞またはAII無軸索細胞の脱分極は、錘状体双極細胞のレベルおよび網膜神経節細胞の下流でオンおよびオフ応答をもたらすことができる。したがって、網膜に固有のオンおよびオフ経路が維持される。

0076

選択されたプロモーター、好ましくは、構成性CMVプロモーターまたはmGluR6などの細胞特異的プロモーターの制御下にロドプシンDNAをコードする核酸配列を保有するrAAVビリオンの有効量は、好ましくは、注射当たり約25〜約800μlの間の容積において約1010〜約1013の間のrAAV感染単位の範囲である。rAAV感染単位は、McLaughlin,SKet al., 1988, J Virol 62:1963にしたがって測定することができる。より好ましくは、有効量は、約1010〜約1012の間のrAAV感染単位であり、注射容積は、好ましくは約50〜約150μlの間である。好ましくはこれらの範囲内であるがことによるとその外側である他の投薬量および容積を、年齢、体重、全身の健康、および特定の眼の障害の性質および重症度を含む、処置される対象(好ましくはヒト)の身体状態を考慮に入れて、処置する専門家が選択してもよい。

0077

追加用量(「ブースター」)の本核酸またはrAAV組成物を投与することがまた、望ましい場合もある。例えば、標的眼細胞内の導入遺伝子発現の持続期間に応じて、6か月後にまたは年1回、第2の処置が施与されてもよく、かつ同様に繰り返されてもよい。AAVに対する中和抗体は、使用される経路および用量を考慮して生成されるとは予期されず、それによって処置ラウンドを繰り返すことが可能になる。

0078

そのような追加用量についての必要性は、例えば、周知の電気生理学的機能試験ならびに他の網膜および視覚の機能試験、ならびに視覚行動試験を用いて、処置する専門家がモニタリングすることができる。処置する専門家は、当技術分野における従来の技術を適用する、適切な試験を選択することができるであろう。関連する結果パラメータをさらに改善するために、単一用量または複数用量のいずれかでより多い容積の組成物を注射することが望ましい場合もある。

0079

眼の障害
本発明の方法が意図され、かつ1つまたは複数の視力のパラメータを改善するために使用されうる眼の障害は、眼の前区および後区の両方に影響を及ぼす発生上の異常を含むが、これに限定されない。前区の障害は、緑内障、白内障角膜ジストロフィー円錐角膜を含む。後区の障害は、光受容体機能不全によって引き起こされる失明障害、ならびに/または網膜ジストロフィーおよび変性によって引き起こされる死を含む。網膜障害は、先天性停止性夜盲、加齢黄斑変性、先天性錘状体ジストロフィー、および大きな群の網膜色素変性症(RP)関連障害を含む。これらの障害は、さまざまな年齢で起きる、網膜中の光受容細胞、桿状体および錘状体の遺伝学的に素因を有する死を含む。これらの中には、年齢とともに進行し、小児期および成人早期に失明を引き起こすRP自体のサブタイプなどの重症網膜症、ならびに、小児期中、人生の最初の年のような早期に視力の喪失を頻繁にもたらすLCAの遺伝的サブタイプなどのRP関連疾患がある。後者の障害は、光受容細胞、桿状体、および錘状体の重大な低減、多くの場合完全な喪失を、概して特徴とする。本明細書に記載される方法から恩恵を受けうる他の眼の疾患は、網膜芽腫、眼内黒色腫、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症、眼組織の任意の炎症(すなわち、脈絡網膜の炎症、強膜炎角膜炎、ブドウ膜炎など)、または感染症(すなわち、細菌性もしくはウイルス性)を含むが、これらに限定されない。

0080

特に、本発明の方法を用いたロドプシンのウイルス媒介性送達は、対象の眼細胞において、機能の喪失にもかかわらず眼組織構造を長期に保存していること、および、機能喪失と正常遺伝子の欠損または欠如との関連を特徴とする、RPE関連網膜症などの眼の障害のために視力を喪失してしまった対象に対して、処置および/または少なくとも部分的な視力の回復に有用である。小児期発症失明疾患、網膜色素変性症、黄斑変性、および糖尿病性網膜症、ならびに当技術分野において公知の眼の失明疾患などの、さまざまなそのような眼の障害が公知である。これらの他の障害、および、後に上記と同じ説明を特徴とする、現在未知因果関係の失明障害もまた、本明細書に記載される方法によって成功裡に処置されうることが予想される。したがって、本発明によって処置される特定の眼の障害は、上述の障害、およびまだそのように特徴決定されていない多数の疾患を含みうる。

0081

光感受性の回復
本明細書に記載されるこれらの方法は、正常な視力および/または損なわれた視力の対象において使用されてもよい。本明細書に記載されるような治療用化合物の送達の増強は、視力を保存、改善、または回復させうる。本明細書において使用される「視力」という用語は、識別または行動のための刺激として光を有用に検出する、生物の能力として定義される。視力は、以下を包含するように意図される:
1.光の検出または認知‐光が存在するか否かを見分ける能力;
2.光の投射光刺激が来ている方向を見分ける能力;
3.解像格子または文字標的において異なる輝度レベル(すなわち、コントラスト)を検出する能力;および
4.認識‐標的内の異なるコントラストレベルを参照することによって、視覚標的の形状を認識する能力。
したがって、「視力」とは、光の存在を単純に検出する能力を含む。本発明の方法は、視力を改善または回復させるために使用することができ、視力における該改善または回復は、例えば、光の検出または認知の増大、光刺激に応答する光感受性または感光性の増大、光刺激が来ている方向を見分ける能力の増大、異なる輝度レベルを検出する能力の増大、視覚標的の形状を認識する能力の増大、および、視覚誘発電位または網膜から皮質への伝達の増大を含む。そのように、視力の改善または回復は、視界の完全な回復を含んでもよいし、または含まなくてもよく、すなわち、本発明で処置される患者の視力は、冒されていない個体の視力の程度まで回復される。下記の動物研究において記載される視力の回復は、ヒトにとっては、完全な視界を回復させることなく、視力の1つの局面(すなわち、光感受性、または視覚誘発電位)を増大させることによって、視力機能の下端に人間を位置づける可能性がある。それにもかかわらず、これらの個体は、移動においておよび潜在的には低次の解像課題において訓練され得、これは全と比較して大幅に改善されたレベルの視覚独立性を提供すると考えられるため、そのようなレベルでの位置づけは、有意の恩恵となるであろう。基本的な光認知さえも、視覚が損なわれた個体は使用することができ、特定の日々の課題を達成し、かつ全般的な移動、可能性、および生活の質を改善するように、本組成物および方法を用いてその視力が改善される。

0082

視力の回復の程度は、例えば、Chop2またはハロロドプシンまたは両方などの治療用導入遺伝子をコードするDNAを含むベクターを投与する前、および好ましくは後の視力の測定を通して、判定することができる。視力は、当技術分野において周知である多数の方法のいずれか、またはまだ確立されていない方法を用いて、測定することができる。本発明により改善または回復される視力は、以下の視覚応答のいずれかによって測定することができる:
1.光がつけられた際の対象個体による光の大まかな方向における指示または動き信頼できる応答について、証拠が求められる、光刺激への曝露後の対象による光検出応答;
2.光がつけられた際の個体による光の特異的な方向における指示または動きの信頼できる応答について、証拠が求められる、光刺激への曝露後の対象による光投射応答;
3.以下によって証明されるような、明パターン対暗パターン視覚刺激を解像する対象の能力を測定する、明パターン対暗パターンの視覚刺激の対象による光解像:
a.標的の追跡を実証する(上記参照)、実証できて信頼できる視線運動的に生じる眼振様の眼の動きおよび/または関連する頭部もしくは身体の動きの存在、ならびに/または
b.パターン視覚刺激を区別し、かつ、例えば、指差しまたはバーもしくはボタンを押すことを含む、言語手段または非言語手段によるそのような区別を示す、信頼できる能力の存在;または
4.視覚誘発電位(VEP)とも呼ばれる、回復された網膜から視覚皮質への電気的伝達終点である、光フラッシュ刺激またはパターン視覚刺激に対する視覚皮質応答の電気的記録。測定は、視覚皮質の領域の頭皮表面上、皮質表面上の電気的記録、および/または視覚皮質の細胞内の記録によってもよい。

0083

したがって、本発明による視力の改善または回復は、網膜細胞における光刺激に応答する光電流または電気的応答振幅または動態の増大、網膜細胞の光感受性の増大(すなわち、光刺激に応答して光電流または電気的応答を開始するために必要とされる閾値光強度を低下させること、それにより光電流を誘発するためにより少ないかまたはより低い光を必要とすること)、光誘発スパイキングまたはスパイク発火の数または振幅の増大、網膜または網膜細胞から視覚皮質または脳へ伝達される視覚誘発電位の増大を含む、視覚皮質に対する光応答の増大を含むことができるが、これらに限定されない。

0084

本発明の種々のパラメータを評価するために、失明に至るヒトの眼の障害の認識された動物モデルを含む、インビトロおよびインビボの研究の両方が、使用されてもよい。ヒト網膜症、例えば小児期失明の多数の動物モデルが、有用である。本明細書に提供される実施例によって、本方法がある範囲の網膜疾患を処置するのに同様に使用されうると当業者が容易に予測することが可能になる。

0085

他者による以前の研究が、網膜変性が遺伝子治療技術によって遅延されうることを実証しているが、本発明は、行動パラメータを含む、視力の種々のパラメータを生成または改善することが期待される、機能の明確な生理学的修復を実証する。

0086

行動の尺度は、公知の動物モデルおよび試験、例えば、視力がさまざまな程度まで保存または回復されている対象が光に向かって泳ぐことになる、水迷路における動作を用いて、取得することができる(Hayes, JM et al., 1993, Behav Genet 23:395-403)。

0087

失明が成人期中に誘導されるか、または先天性の失明が、個体が視力を失う前に経験するほど十分ゆっくり発症するモデルでは、種々の試験において対象の訓練が行われうる。このように、本組成物および方法の有効性をその視力回復効果について試験するために視力喪失後にこれらの試験を再施与する場合、動物は、失明状態の間に新規に課題を学習しなくてもよい。他の行動試験は、学習を必要とせず、ある特定の行動の本能に依拠する。例は、視線運動性眼振試験である(Balkema GW et al., 1984, Invest Ophthalmol Vis Sci. 25:795-800;Mitchiner JC et al., 1976, Vision Res. 16:1169-71)。

0088

本発明はまた、視力を改善または回復させるために、当技術分野において公知である視力治療の他の形態と組み合わせて使用されてもよい。例えば、網膜インプラント、皮質インプラント外側膝状核インプラント、または視神経インプラントを含む、視覚補綴の使用である。したがって、本方法を用いる網膜ニューロンを生存させる遺伝子修飾に加えて、処置される対象には、分子的方法が使用される前、同時、または後に、視覚補綴が提供されてもよい。視覚補綴の有効性は、個体の訓練で改善することができ、したがって、本明細書において企図されるような患者細胞のChop2形質転換の潜在的影響を増強する。訓練法は、(i)さまざまなレベルの光および/もしくはパターン刺激、ならびに/または(ii)当業者によって理解されるであろう一般的な光源または対象物からの環境刺激を認識するように対象を訓練することを特徴とする馴化訓練;ならびに、局所の対象物を視覚的に検出し、訓練していないよりも効率的に該対象物の間を動くように対象を訓練することを特徴とする定位と移動の訓練などである。実際に、低視力リハビリテーションの分野において典型的に使用される任意の視覚刺激技術が、ここで適用可能である。

0089

本明細書において使用される際、「対象」によって個体が意味される。したがって、「対象」とは、飼い慣らされた動物(例えば、ネコイヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマブタヒツジヤギなど)、実験動物(例えば、マウス、ウサギラットモルモットなど)、およびトリを含むことができる。「対象」はまた、霊長類またはヒトなどの哺乳動物を含むことができる。好ましくは、対象はヒトである。「必要とする対象」とは、眼の疾患または障害を患っているか、またはそれを発症するかもしくは患うリスクにある対象である。眼の疾患または障害を発症するかまたは患うリスクにある対象は、当技術分野における日常的な方法を用いて医師または眼の専門家が診断することができる。

0090

実施例1:プラスミンはChop2をコードするAAV2ベクターの網膜への送達を増大させる
機能的GFP-チャネルオプシン-2タンパク質をコードする治療用ウイルス構築物の網膜への送達を、検討した。6×1012 vg/mlのAAV2ベクターAAV2/2-ChR2-GFP-WPRE-hGHpAの対照(図1A)またはプラスミンとの同時注射(図1B)における注射を、1か月齢のC56BL/6Jの眼の硝子体腔中に行った。ベクターと共に注射したプラスミンの濃度は、0.025IU/眼であった。1か月後、マウスの網膜を単離し、網膜垂直切片を調製した。切片を免疫染色して、細胞を計数した。切片の免疫蛍光解析によって、対照と比較して増大した蛍光により証明されるように、プラスミンとの同時注射は、治療用AAV2-ChR2-GFPベクターの形質導入効率を増大させることが示された(図1)。

0091

実施例2:プラスミンは網膜神経節細胞において形質導入効率を増大させる
実施例1におけるものと同じ実験構成を用いて、GFPをコードするベクター(2×1012 vg/ml)を、対照またはさまざまな濃度のプラスミンのいずれかと同時注射した:低(L=0.005 IU/眼)、中間(M=0.025IU/眼)、および高(H=0.100IU/眼)。1か月後、網膜全載を調製して、免疫染色した。各プラスミン濃度および対照についての代表的な画像を、図2に示す。示されるように、プラスミンでの処置はGFP発現を増大させる。

0092

これらの結果をさらに定量化するために、GFP発現網膜神経節細胞を、223μm×167μmの複数単位面積から計数した。結果を図3Aに示す。示されるように、低用量、中間用量、および高用量のプラスミンでの処置は、網膜神経節細胞において統計学的に有意に増大したレベルのGFP発現を結果としてもたらした。

0093

プラスミン注射の結果としての神経毒性もまた、検討した。網膜全載を、細胞計数のためにDAPIで染色した。223μm×167μmの複数単位面積にわたる細胞の数を計数し、対照と、低用量、中間用量、および高用量のプラスミンとの間で比較した。図3Bに示されるように、細胞数は、対照とプラスミン処置網膜との間で有意に異なることが見出されなかった(p=0.74)。そのように、試験した濃度のプラスミンは、網膜神経節細胞にいかなる神経毒性効果も有するとは示されず、それにより、プラスミンは高用量であっても眼における使用に関して安全であることを示した。

0094

実施例3:プラスミンは網膜双極細胞において形質導入効率を増大させる
異なる濃度のプラスミンと同時注射した際のmCherry蛍光タンパク質をコードするウイルスベクターの形質導入効率の比較を、インビボで評価した。具体的には、網膜全体にわたってmCherry発現の全体のレベルおよび局在化を検討した。mGluR6プロモーターの制御下にmCherryを保有する、Y444Fキャプシド変異を伴うAAV2ベクターを、2×1012 vg/mlの濃度で注射した。mGluR6プロモーターは、mCherryの発現を網膜双極細胞に特異的に方向づける

0095

AAV2 mCherryベクターを、高(H=0.100IU/眼)、中間(M=0.025IU/眼)、および低(L=0.005IU/眼)の3種の用量のプラスミンと同時注射した。1か月後、網膜を単離し、網膜全載を調製した。形質導入効率を、免疫蛍光解析のためのmCherryの免疫染色および細胞計数によって評定した。細胞は、223μm×167μmの複数単位面積から計数した。

0096

プラスミンを伴わないベクターの注射は、全網膜にわたって網膜双極細胞における均一のmCherry発現を結果としてもたらさなかった(図4、対照、上のパネル)。形質導入効率は、中心(A)および中間(B)の網膜において低かったが、周辺においては高かった。AAV2 mCherryベクターの増大する投薬量のプラスミンとの同時注射(低、中間、および高、下のパネル)は、用量依存様式において各網膜領域での形質導入効率の増大を結果としてもたらした。

0097

免疫蛍光画像由来の定量結果を、細胞計数によって検証した。プラスミンを伴うかまたは伴わずに同時注射した際、mCherry発現細胞の定量化によって、プラスミンがmCherry発現網膜細胞の密度を有意に増大させることが示された。対照と比較したプラスミンでの形質導入効率の増大は、網膜の中心でプラスミンのすべての3種の用量で統計学的に有意であった。中間用量および高用量のプラスミンは、網膜の中間領域および周辺でmCherry発現の統計学的に有意の増大を結果としてもたらした。これらの結果は、プラスミンが網膜の周辺、中間、および中心領域を含む網膜全体にわたって、形質導入効率を増強することを示す。

0098

他の態様
本発明が、その詳細な説明と共に記載されているが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例証するように意図され、限定するようには意図されない。他の局面、利点、および修飾が、添付の特許請求の範囲の内である。

0099

本明細書において言及される特許および科学文献は、当業者が利用可能である知識を確立する。本明細書において引用されるすべての米国特許および公開または未公開の米国特許出願は、参照により組み入れられる。本明細書において引用されるすべての公開外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用されるすべての他の公開参照文献、文書原稿、および科学文献は、参照により本明細書に組み入れられる。

実施例

0100

本発明が、その好ましい態様に関して特に示され、記載されているが、形態および詳細における種々の変更が、添付の特許請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱することなく、その中でなされてもよいことが、当業者によって理解されるであろう。

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