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課題
解決手段
概要
背景
プラズマエッチング装置、プラズマCVD装置等のプラズマを用いた半導体製造装置においては、載置面に簡単にウエハを取付け、固定するとともに、ウエハを所望の温度に維持する装置として静電チャック装置が使用されている。静電チャック装置としては、載置面を含む静電チャック部と、静電チャック部を冷却するベース部と、静電チャック部とベース部とを接合する接合部(接合膜)とを有する構成が知られている。
近年、半導体を用いたデバイスは高集積化される傾向にある。そのため、デバイスの製造時には、配線の微細加工技術や三次元実装技術が必要とされている。このような加工技術を実施するにあたり、半導体製造装置には、ウエハの面内の温度分布(温度差)を低減させることが求められる。
なお、本明細書においては、「載置面に載置したウエハの面内温度分布(温度差)の度合い」のことを「均熱性」と称することがある。「均熱性が高い」とは、ウエハの面内温度分布が小さいことを意味する。
ウエハの面内温度分布を低減する方法として、接合膜の材料や構造を調整することで、静電チャック部からベース部への熱伝達を調整する方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
概要
耐電圧の低下を抑制した新規な静電チャック装置を提供する。セラミックス焼結体を形成材料とする静電チャック部2と、静電チャック部2を冷却するベース部3と、静電チャック部2とベース部3との間に設けられた接合部4と、を有し、接合部4は、複数の凹部51と、接合部4の法線方向から見て凹部51の周囲を囲む凸状部52と、を有する接合層5を含み、接合層5は、ベース部3から、接合部4および静電チャック部2の厚み方向に延びる貫通孔の外周部並びに静電チャック部2の外周部において複数の凹部51を有さず、複数の凹部51は、接合層5において、静電チャック部2に面する第1面と、ベース部3に面する第2面と、の両面の全面に設けられている静電チャック装置1A。
目的
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、耐電圧の低下を抑制した新規な静電チャック装置を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
請求項1
セラミックス焼結体を形成材料とする静電チャック部と、前記静電チャック部を冷却するベース部と、前記静電チャック部と前記ベース部との間に設けられた接合部と、を有し、前記接合部は、複数の凹部と、前記接合部の法線方向から見て前記凹部の周囲を囲む凸状部と、を有する接合層を含み、前記接合層は、前記ベース部から、前記接合部および前記静電チャック部の厚み方向に延びる貫通孔の外周部並びに前記静電チャック部の外周部において前記複数の凹部を有さず、前記複数の凹部は、前記接合層において、前記静電チャック部に面する第1面と、前記ベース部に面する第2面と、の両面の全面に設けられている静電チャック装置。
請求項2
前記接合層は、前記貫通孔の外周部に絶縁層を有する請求項1に記載の静電チャック装置。
請求項3
前記絶縁層の幅は、0.3mm以上かつ3.0mm以下である請求項2に記載の静電チャック装置。
請求項4
前記第1面において、前記接合層に対向する部材と前記接合層との接触面積は、前記部材と前記接合層とで囲まれた空気層の前記部材に対する投影面積よりも大きい請求項1から3のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
請求項5
前記第2面において、前記接合層に対向する部材と前記接合層との接触面積は、前記部材と前記接合層とで囲まれた空気層の前記部材に対する投影面積よりも大きい請求項1から4のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
請求項6
前記接合部は、前記静電チャック部と前記接合層との間に、第1接着剤を形成材料とする第1接着剤層を有し、前記第1接着剤は、前記第1面に設けられた前記複数の凹部に充填されている請求項1から5のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
請求項7
前記第1接着剤の熱伝導率は、前記接合層の形成材料の熱伝導率よりも大きい請求項6に記載の静電チャック装置。
請求項8
前記接合層の厚みは、前記第1接着剤層の厚みよりも大きい請求項6または7に記載の静電チャック装置。
請求項9
前記接合部は、前記静電チャック部と前記接合層との間に、第2接着剤を形成材料とする第2接着剤層を有し、前記第2接着剤は、前記第2面に設けられた前記複数の凹部に充填されている請求項1から8のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
請求項10
前記第2接着剤の熱伝導率は、前記接合層の形成材料の熱伝導率よりも大きい請求項9に記載の静電チャック装置。
請求項11
前記接合層の厚みは、前記第2接着剤層の厚みよりも大きい請求項9または10に記載の静電チャック装置。
請求項12
前記凹部の深さは、0.05μm以上かつ1.0μm以下である請求項1から11のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
請求項13
前記複数の凹部は、規則的に配列されている請求項1から12のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
技術分野
0001
本発明は、静電チャック装置に関する。
背景技術
0002
プラズマエッチング装置、プラズマCVD装置等のプラズマを用いた半導体製造装置においては、載置面に簡単にウエハを取付け、固定するとともに、ウエハを所望の温度に維持する装置として静電チャック装置が使用されている。静電チャック装置としては、載置面を含む静電チャック部と、静電チャック部を冷却するベース部と、静電チャック部とベース部とを接合する接合部(接合膜)とを有する構成が知られている。
0003
近年、半導体を用いたデバイスは高集積化される傾向にある。そのため、デバイスの製造時には、配線の微細加工技術や三次元実装技術が必要とされている。このような加工技術を実施するにあたり、半導体製造装置には、ウエハの面内の温度分布(温度差)を低減させることが求められる。
0005
ウエハの面内温度分布を低減する方法として、接合膜の材料や構造を調整することで、静電チャック部からベース部への熱伝達を調整する方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
先行技術
0006
特開2009−267256号公報
特開2017−143182号公報
特開2017−152469号公報
発明が解決しようとする課題
0007
特許文献1〜3に記載の構成では、ウエハの面内温度分布を所望の温度差にまで低減させることができないことがあり、改善が求められていた。このような課題を解決するために、本発明者等は、静電チャック部とベース部との間に設けられた接合部を、複数の凹部と、接合部の法線方向から見て凹部の周囲を囲む凸状部と、を有する接合層を含むものとし、かつ、複数の凹部が、接合層において、静電チャック部に面する第1面と、ベース部に面する第2面と、の両面の全面に設けられているものとする方法を検討している。
0008
しかしながら、上記の方法では、ベース部、接合部および静電チャック部を厚み方向に貫通する冷却ガス導入孔、ピン挿通孔、ベース部および接合部を貫通し、給電部に接合する給電用電極が挿通される貫通孔、静電チャック部の外周部等の凹部を形成する樹脂が徐々に変質し、その部分における耐電圧が低下することがあった。
課題を解決するための手段
0010
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、セラミックス焼結体を形成材料とする静電チャック部と、前記静電チャック部を冷却するベース部と、前記静電チャック部と前記ベース部との間に設けられた接合部と、を有し、前記接合部は、複数の凹部と、前記接合部の法線方向から見て前記凹部の周囲を囲む凸状部と、を有する接合層を含み、前記接合層は、前記ベース部から、前記接合部および前記静電チャック部の厚み方向に延びる貫通孔の外周部並びに前記静電チャック部の外周部において前記複数の凹部を有さず、前記複数の凹部は、前記接合層において、前記静電チャック部に面する第1面と、前記ベース部に面する第2面と、の両面の全面に設けられている静電チャック装置を提供する。
0011
本発明の一態様においては、前記接合層は、前記貫通孔の外周部に絶縁層を有する構成としてもよい。
0012
本発明の一態様においては、前記絶縁層の幅は、0.3mm以上かつ3.0mm以下である構成としてもよい。
0013
本発明の一態様においては、前記第1面において、前記接合層に対向する部材と前記接合層との接触面積は、前記部材と前記接合層とで囲まれた空気層の前記部材に対する投影面積よりも大きい構成としてもよい。
0014
本発明の一態様においては、前記第2面において、前記接合層に対向する部材と前記接合層との接触面積は、前記部材と前記接合層とで囲まれた空気層の前記部材に対する投影面積よりも大きい構成としてもよい。
0015
本発明の一態様においては、前記接合部は、前記静電チャック部と前記接合層との間に、第1接着剤を形成材料とする第1接着剤層を有し、前記第1接着剤は、前記第1面に設けられた前記複数の凹部に充填されている構成としてもよい。
0016
本発明の一態様においては、前記第1接着剤の熱伝導率は、前記接合層の形成材料の熱伝導率よりも大きい構成としてもよい。
0017
本発明の一態様においては、前記接合層の厚みは、前記第1接着剤層の厚みよりも大きい構成としてもよい。
0018
本発明の一態様においては、前記接合部は、前記静電チャック部と前記接合層との間に、第2接着剤を形成材料とする第2接着剤層を有し、前記第2接着剤は、前記第2面に設けられた前記複数の凹部に充填されている構成としてもよい。
0019
本発明の一態様においては、前記第2接着剤の熱伝導率は、前記接合層の形成材料の熱伝導率よりも大きい構成としてもよい。
0020
本発明の一態様においては、前記接合層の厚みは、前記第2接着剤層の厚みよりも大きい構成としてもよい。
0021
本発明の一態様においては、前記凹部の深さは、0.05μm以上かつ1.0μm以下である構成としてもよい。
0022
本発明の一態様においては、前記複数の凹部は、規則的に配列されている構成としてもよい。
発明の効果
0023
本発明によれば、耐電圧の低下を抑制した新規な静電チャック装置を提供することができる。
図面の簡単な説明
0024
本実施形態の静電チャック装置1Aを示す断面図である。
接合層5の平面図である。
図2の線分IIA−IIAにおける矢視断面図である。
接合層5の平面図である。
図4の線分IIB−IIBにおける矢視断面図である。
第2面5b側の様子を示す概略断面図である。
本実施形態の変形例に係る静電チャック装置1Bの概略断面図である。
0026
図1は、本実施形態の静電チャック装置1Aを示す断面図である。
静電チャック装置1Aは、円板状の静電チャック部2と、静電チャック部2の温度を調整する温度調整用ベース部(ベース部)3と、静電チャック部2とベース部3との間に設けられ、静電チャック部2とベース部3とを接合する接合部4と、静電チャック部2に給電する給電部8と、有する。
0028
これら載置板11、支持板12および内部電極13には、その厚み方向に貫通する冷却ガス導入孔17が中心軸に対して回転対称となる位置に計4個形成されている。冷却ガス導入孔17を介して、載置板11の載置面11aと突起頂面に載置された板状試料Wとの隙間に、冷却ガスが供給されるようになっている。
0030
載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円形の部材である。載置板11および支持板12は、機械的な強度を有し、腐食性ガスおよび腐食性ガスのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体(誘電体材料)を形成材料とする。
0031
載置板11および支持板12の形成材料としては、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al2O3−SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al2O3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体を挙げることができる。
0033
内部電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料を固定する、すなわち静電吸着用の静電チャック用電極として用いられる。内部電極13は、載置板11と支持板12との間に設けられている。内部電極13は、形状や、大きさを適宜調整することができる。
0034
内部電極13は、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al2O3−Ta4C5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al2O3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al2O3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、またはタングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属を形成材料とする。なお、上記複合焼結体については、所望の導電性が得られるように組成、製造条件等を調節して得られた焼結体を用いる。
0035
内部電極13の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上かつ100μm以下であることが好ましく、5μm以上かつ20μm以下であることがより好ましい。内部電極13の厚みが0.1μmを上回ると、充分な導電性を確保することができる。内部電極13の厚みが100μm以下であると、載置板11と支持板12との接合界面において、載置板11および支持板12と内部電極13との熱膨張率差に起因したクラックが入り難い。
0037
絶縁材層14は、載置面11aの法線方向から見て、内部電極13の周囲(外周)を取り囲む。
絶縁材層14は、腐食性ガスおよび腐食ガスのプラズマから内部電極13を保護するとともに、載置板11と支持板12との境界部、すなわち内部電極13以外の外周部領域を接合一体化する。
0039
給電用端子10は、支持板12を貫通するようにして設けられ、支持板12と接合一体化している。また、給電用端子10は、内部電極13に電気的に接続している。給電用端子10の形成材料は、耐熱性に優れた材料であれば特に制限されないが、熱膨張係数が支持板12の形成材料の熱膨張係数、および内部電極13の形成材料の熱膨張係数に近似した材料が好ましい。このような材料として、例えば、Al2O3−TaCなどの導電性セラミック材料を挙げることができる。
0040
なお、静電チャック部2には、内部または支持板12側の下面に、ヒータ電極を設けてもよい。ヒータ電極を有する静電チャック部2においては、ヒータ電極に通電して加熱し、載置面の温度調節に利用することができる。
0041
(温度調整用ベース部(ベース部))
ベース部3は、静電チャック部2を所望の温度に調整するための部材である。ベース部3は、静電チャック部2と同様に、載置面11aの法線方向から見て円形を呈する。ベース部3は、内部に冷媒を循環させる流路3Aが形成された構成を採用することができ、流路3Aを形成可能な程度の厚みを有することが好ましい。
0042
ベース部3の形成材料としては、熱伝導性、導電性に優れ、加工し易い金属、またはこのような金属を含む複合材であれば特に制限がない。ベース部3の形成材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等が好適に用いられる。ベース部3において、少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、アルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
0043
載置板11、支持板12および内部電極13には、その厚み方向に貫通し、リフトピン21を挿通する収容孔(貫通孔)22が中心軸に対して回転対称となる位置に、例えば、計4個形成されている。冷却ガス導入孔17を介して、載置板11の載置面11aと突起頂面に載置された板状試料Wとの隙間に、冷却ガスが供給されるようになっている。
0044
リフトピン21は、板状試料Wを載置板11の載置面11aから離脱させるために複数設けられている。リフトピン21は、載置板11の載置面11aから伸長し板状試料Wを支持する。収容孔22の内周面には、碍子23が設けられている。碍子23は、収容孔22の冷却ベース部3を貫通する部分から接合部4を貫通する部分の中程に亘って設けられている。碍子23は、リフトピン21と冷却ベース部3とが電気的に接続されることを防止する。
0045
リフトピン21の下端には、リフトピン動作機構(図示せず)が設けられている。リフトピン動作機構は、板状試料Wを載置板11の載置面11aから離脱させるタイミングでリフトピン21を上方に移動させて伸長させる。
0046
リフトピン21の外周面と収容孔22の内周面との間には、隙間が設けられている。
0047
(接合部)
接合部4は、静電チャック部2とベース部3との間に配置され、静電チャック部2とベース部3とを接合する。接合部4が、接合層5と、第1接着剤層6と、第2接着剤層7とを有する。
0048
(接合層)
接合層5は、静電チャック部2とベース部3との間を絶縁する機能を有する。
0049
図2〜図4は、接合層5を示す説明図である。図5は、静電チャック装置1Aを示す説明図である。
図2は、接合層5の平面図、すなわち接合層5の法線方向から見た図である。図3は、図2の線分IIA−IIAにおける矢視断面図である。図4は、接合層5の平面図、すなわち接合層5の法線方向から見た図である。図5は、図4の線分IIB−IIBにおける矢視断面図である。
0050
図に示すように、接合層5は、複数の凹部51と、接合層5の法線方向から見て凹部51の周囲を囲む凸状部52と、を有する。また、複数の凹部51と凸状部52とは、静電チャック部2に面する第1面5aと、ベース部3に面する第2面5bとの両面全面に設けられている。
0051
図1〜図3に示すように、接合層5は、ベース部3から、ベース部3、接合部4および静電チャック部2の厚み方向に延びる冷却ガス導入孔17、すなわち、ベース部3、接合部4および静電チャック部2を、その厚み方向に貫通する冷却ガス導入孔17の外周部において、複数の凹部51を有さない。また、ベース部3における冷却ガス導入孔17の内周面には、筒状の碍子(図示せず)を設けてもよい。また、接合層5は、ベース部3および接合部4を厚み方向に貫通し、給電部8を挿通する貫通孔16の外周部において、複数の凹部51を有さない。また、接合層5は、ベース部3および接合部4を厚み方向に貫通し、リフトピン21を挿通する収容孔22の外周部において、複数の凹部51を有さない。さらに、図1〜図3に示すように、接合層5は、静電チャック部2の外周部において、複数の凹部51を有さない。
0052
また、図4および図5に示すように、接合層5は、冷却ガス導入孔17の外周部に絶縁層55を有していることが好ましい。言い換えれば、接合層5は、冷却ガス導入孔17の外周部が絶縁層55からなることが好ましい。また、接合層5は、例えば、貫通孔16の外周部に絶縁層55を有していることが好ましい。言い換えれば、接合層5は、貫通孔16の外周部が絶縁層55からなることが好ましい。また、接合層5は、例えば、収容孔22の外周部に絶縁層55を有していることが好ましい。言い換えれば、接合層5は、収容孔22の外周部が絶縁層55からなることが好ましい。また、絶縁層55の厚みは、後述する接合層5の厚みと等しいことが好ましい。
0053
絶縁層55の幅、すなわち、絶縁層55を、接合層5第1面5a側または第2面5b側から見た平面視において、0.3mm以上かつ3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上かつ2.8mm以下であることがより好ましい。
絶縁層55の幅が0.3mm以上であれば、長時間、高電圧を印加し続けても、絶縁層55の劣化が小さく、長期に高い耐電圧を維持することができる。一方、絶縁層55の幅が3.0mm以下であれば、載置板11の載置面11aの面内温度均一性を保つことができる。
0055
また、接合層5は、シリコン樹脂と熱硬化性樹脂との混合物を用いることもできる。このような混合物において、シリコン樹脂の含有量は、5体積%以上かつ90体積%以下である。接合層5のショアA硬度は、静電チャック部2とベース部3との温度差により生じる応力を緩和しやすいため、20から80であることが好ましい。
0056
上記混合物において、シリコン樹脂ゴムと混合する熱硬化性樹脂としては、アクリル系、メタクリル系、エポキシ系、ウレタン系、イミド系樹脂等があげられるが、これら1種もしくは2種以上使用してもよいし、これ以外の樹脂を用いてもよい。
0057
接合層5の平均厚みは、10μm以上かつ500μm以下であり、30μm以上かつ500μm以下であることが好ましい。接合層5の平均厚みが10μm以上であれば、静電チャック部2とベース部3との間で良好に熱を伝達することができる。また、接合層5の平均厚みが10μm以上であれば、静電チャック部2が加熱され膨張したとしても、十分に内部応力を緩和することができる。接合層5の平均厚みが500μm以下であれば、熱伝導性を確保できる。
0058
なお、「接合層5の厚み」は、接合層5の第1面5a側に形成された凸状部52と、第2面5b側に形成された凸状部52と、が平面的に重なる位置で測定される厚みであり、第1面5a側に形成された凸状部52の頂部から、第2面5b側に形成された凸状部52の頂部までの最短距離を指す。
0060
接合層5の厚みのばらつきは10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。接合層5の厚みばらつきが10μmより小さいと、接合層5において載置面11aの面方向に熱が拡散し難く、載置面11aの温度分布のばらつきを小さくし易くなる。また、接合層5の厚みばらつきが10μmより小さいと、厚みの大小により温度分布に高低の差が生じ難く、接合層5の厚み調整による温度制御に悪影響を及ぼし難い。
0062
第1面5aおよび第2面5bにおいて、複数の凹部51は、規則的に配列していることが好ましい。「規則的に配列」とは、例えば、第1面5aの中心または第2面5bの中心から放射状や、らせん状に配列していることを含む。
0063
第1面5aに設けられた複数の凹部51と、第2面5bに設けられた複数の凹部51とは、平面視で重なっていてもよく、重なっていなくてもよい。
0064
図に示す接合層5において、複数の凹部51は、第1面5aおよび第2面5bにて、規則的に格子状に配列している。詳しくは、複数の凹部51は、一方向に設定された第1配列軸5xに沿って配列し、第1配列軸5xに交差する方向に設定された第2配列軸に沿って配列している。
0065
凹部51の平面視形状は、特に制限がなく、円形、楕円形、多角形などとすることができる。複数の凹部51は、平面視形状が互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。図では、凹部51の平面視形状を正方形としている。これにより、凸状部52の平面視形状は、格子状となっている。
0067
凹部51の深さは、0.05μm以上かつ1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上かつ0.8μm以下であることがより好ましい。
0068
複数の凹部51は、同じ平面視形状および同じ深さであると好ましい。
0069
接合層5は、第1面5aおよび第2面5bの算術平均高さSaが0.05以上かつ1.0以下であることが好ましい。算術平均高さSaは、各測定面の平均面に対する各点の高さを求めるとき、各点の高さの差の絶対値についての平均値として求められる。
0071
絶縁層55の形成材料は、接合層55と同様であることが好ましい。
0072
絶縁層55は、接合層5と一体に形成されていてもよく、接合層5と別体に形成されていてもよい。絶縁層55が、接合層5と別体に形成されている場合、接合層5にシート状またはフィルム状の樹脂部材を貼着して絶縁層55を形成してもよく、接合層5に硬化性の樹脂を塗布して、その樹脂を硬化することにより絶縁層55を形成してもよい。
0073
(第1接着剤層、第2接着剤層)
第1接着剤層6は、接合層5を静電チャック部2に固定するジェル状、シート状またはフィルム状の接着材である。第1接着剤層6は、静電チャック部2と接合層5との間に配置され、静電チャック部2と接合層5とを接着している。
0074
第1接着剤層6は、耐熱性および絶縁性を有する接着剤(第1接着剤)を形成材料とすることが好ましい。第1接着剤は、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなる接着剤、またはこれらの樹脂に絶縁性の窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)等の熱伝導性フイラーを添加した複合樹脂等からなる接着剤が好ましい。
0075
特に、シリコン樹脂を成分とする接着剤は、200℃までの耐熱性を有し、他の耐熱性接着剤であるエポキシ樹脂やポリイミド樹脂を成分とする接着剤と比較して伸びが大きい。第1接着剤層6がこのようなシリコン樹脂を成分とする場合、静電チャック部2とベース部3との間の応力を緩和することができ、しかも熱伝導率が高いため、好ましい。
0076
第2接着剤層7は、接合層5をベース部3に固定するジェル状、シート状またはフィルム状の接着材である。第2接着剤層7は、ベース部3と接合層5との間に配置され、ベース部3と接合層5とを接着している。
0077
第2接着剤層7は、耐熱性および絶縁性を有する接着剤(第2接着剤)を形成材料とすることが好ましい。第2接着剤は、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなる接着剤が好ましい。
0078
特に、シリコン樹脂を成分とする接着剤は、200℃までの耐熱性を有し、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂を成分とする接着剤と比較して伸びが大きい。第2接着剤層7がこのようなシリコン樹脂を成分とする場合、静電チャック部2とベース部3との間の応力を緩和することができ、しかも熱伝達が高いため、好ましい。
0079
第1接着剤の熱伝導率は、接合層5の形成材料の熱伝導率よりも大きいことが好ましい。第1接着剤層6を構成する第1接着剤の熱伝導率が、接合層5の形成材料の熱伝導率よりも大きいことにより、接合層5、第1接着剤層6を含む接合部4の熱伝導率のばらつきが小さくなる。
0080
また、第2接着剤の熱伝導率は、接合層5の形成材料の熱伝導率よりも大きいことが好ましい。第2接着剤層7を構成する第2接着剤の熱伝導率が、接合層5の形成材料の熱伝導率よりも大きいことにより、接合層5、第2接着剤層7を含む接合部4の熱伝導率のばらつきが小さくなる。
0081
これらにより、静電チャック部2とベース部3との間の熱伝達が均一となり、静電チャック部2の載置面11aにおける温度分布を容易に小さくすることができる。
0082
第1接着剤層6が、シート状またはフィルム状の接着剤により構成される場合、第1接着剤層6の厚みを精度良くかつ容易に制御することが可能となる。
0083
また、第1接着剤層6がジェル状の接着剤により構成される場合、第1接着剤層6がシート状またはフィルム状の接着剤である場合と比べ、第1接着剤層6の厚みを薄くすることができる。
0084
さらに、第2接着剤層7がシート状またはフィルム状の接着剤により構成される場合、ジェル状の接着剤により構成される場合にも、同様の効果が得られる。
0085
第1接着剤層6および第2接着剤層7の材料として適切な性質の接着剤を選択することにより、静電チャック部2とベース部3との間の熱伝達をさらに精度良くかつ容易に制御することが可能となる。その結果、静電チャック部2の載置面11aにおける温度差をさらに小さくすることが可能となる。
0086
第1接着剤層6および第2接着剤層7の厚みは、それぞれ接合層5よりも小さいことが好ましい。第1接着剤層6および第2接着剤層7の厚みは、それぞれ2μm以上かつ50μm以下であり、3μm以上かつ30μm以下であることが好ましい。
0087
第1接着剤層6の厚みが2μm以上であれば、静電チャック部2と接合層5との接着力を強く保つことができる。第1接着剤層6の厚みが50μm以下であれば、載置面11aの面内の温度差を小さくすることができる。
0088
第2接着剤層7の厚みが2μm以上であれば、ベース部3と接合層5との接着力を強く保つことができる。第2接着剤層7の厚みが50μm以下であれば、載置面11aの面内の温度差を小さくすることができる。
0089
第1接着剤層6および第2接着剤層7の厚みが上述の範囲内であることにより、載置面11aの温度差を小さくすることが可能となる。第1接着剤層6および第2接着剤層7の厚みについて、最大値と最小値とは任意に組み合わせることができる。
0090
第1接着剤層6の厚みと第2接着剤層7の厚みとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
0091
図1に示すように、第1接着剤層6は、第1接着剤層6の厚みに応じて、接合層5の第1面5aに設けられた複数の凹部51に充填されていることとしてもよい。
同様に、第2接着剤層7は、第2接着剤層7の厚みに応じて、接合層5の第2面5bに設けられた複数の凹部51に充填されていることとしてもよい。
0093
この意味において、「凹部51に充填」とは、図1に示すように凹部51が完全に第1接着剤層6や第2接着剤層7で埋まっている状態であってもよい。
0094
また、「凹部51に充填」とは、凹部51の一部に第1接着剤層6や第2接着剤層7が侵入する状態であってもよい。図6は、第2面5b側の様子を示す概略断面図である。図に示すように、第2面5b側の第2接着剤層7の一部が第2面5bの凹部51内に侵入し、さらに凹部51内には第2接着剤層7と接合層5とで囲まれた空気層Aが残存している。
0095
第1面5a側においても同様に、第1面5aの凹部51に第1接着剤の一部が侵入し凹部51内に第1接着剤層6と接合層5とで囲まれた空気層が残存していてもよい。
0096
上述のように、本実施形態の静電チャック装置1Aでは、接合層5が複数の凹部51を有しているため、第1接着剤層6および第2接着剤層7を用いて接着する際、凹部に空気層Aが形成されることがある。接合層5においては、凹部51が第1面5aと第2面5bとの両面全面に形成されている。そのため、第1面5aまたは第2面5bにおいて空気層Aは、面内全面に均一に形成されると考えられる。
0097
このように、静電チャック装置1Aにおいて、空気層Aが接合層5の面内全面に形成されると、空気層Aが面内で局在化する場合と比べ、面方向の熱伝導のばらつきを小さくすることができる。その結果、静電チャック部2の載置面の温度差を小さくすることが可能となる。
0098
静電チャック装置1Aが空気層Aを有する場合、第1面5aにおいて、接合層5に対向する部材である第1接着剤層6と接合層5との接触面積は、第1接着剤層6に対する空気層Aの投影面積よりも大きいことが好ましい。
0099
また、静電チャック装置1Aが空気層Aを有する場合、第2面5bにおいて、接合層5に対向する部材である第2接着剤層7と接合層5との接触面積は、第2接着剤層7に対する空気層Aの投影面積よりも大きいことが好ましい。
0100
接合層5と各接着剤層との接触面積と、空気層Aの投影面積との大小関係が上述のような関係であると、第1面5aまたは第2面5bにおける接着強度を十分に確保し、第1面5aまたは第2面5bにおいて剥離しにくくなる。
0102
接合層5の凸状部52の頂部の面積を広げると、接合層5と各接着剤層との接触面積が拡大する傾向にある。
0104
接合層5の形成材料として、静電チャック装置1Aの製造時の加工条件で熱変形しやすいものを選択すると、静電チャック装置1Aの製造時に接合層5が変形して凹部51がつぶれやすくなり、接合層5と各接着剤層との接触面積が拡大する傾向にある。
0105
(給電部)
給電部8は、給電用端子10を介して、内部電極13に直流電圧を印加するために設けられた給電用部材である。給電部8は、棒状の給電用電極9と、給電用電極9の周囲を囲む筒状の碍子9aとを有する。碍子9aは、給電用電極9とベース部3とを絶縁している。
0106
給電部8は、ベース部3、接合部4を厚み方向に貫通する貫通孔16の内部に挿通されている。
0107
給電用電極9の形成材料は、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではない。給電用電極9の形成材料としては、熱膨張係数が支持板12の形成材料の熱膨張係数、および内部電極13の形成材料の熱膨張係数に近似した材料が好ましい。
0108
このような材料として、例えば、内部電極13を構成している導電性セラミックスと同じ材料、またはタングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料が好適に用いられる。
0109
(フォーカスリング)
静電チャック装置1は、フォーカスリング19を有することが好ましい。
フォーカスリング19は、ベース部3の周縁部に載置される平面視円環状の部材である。フォーカスリング19は、例えば、載置面に載置されるウエハと同等の電気伝導性を有する材料を形成材料としている。このようなフォーカスリング19を配置することにより、ウエハの周縁部においては、プラズマに対する電気的な環境をウエハと略一致させることができ、ウエハの中央部と周縁部とでプラズマ処理の差や偏りを生じにくくすることができる。
0110
静電チャック部2の下面側には、ヒータエレメントが設けられていてもよい。ヒータエレメントは、一例として、厚みが0.2mm以下、好ましくは0.1mm程度の一定の厚みを有する非磁性金属薄板、例えば、チタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等をフォトリソグラフィー法やレーザー加工により所望のヒータ形状、例えば帯状の導電薄板を蛇行させた形状の全体輪郭を円環状に加工することで得られる。
静電チャック装置1Aは、以上のような構成となっている。
0111
(静電チャック装置の製造方法)
次に、静電チャック装置1Aの製造方法の一例について説明する。以下の説明では、載置板11および支持板12の形成材料が酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al2O3−SiC)複合焼結体であることとする。
まず、Al2O3−SiC複合焼結体により板状の載置板11および支持板12を作製する。この場合、炭化ケイ素粉末および酸化アルミニウム粉末を含む混合粉末を所望の形状に成形し、その後、例えば1600℃〜2000℃の温度、非酸化性雰囲気、好ましくは不活性雰囲気下にて所定時間、焼成することにより、載置板11および支持板12を得ることができる。
0112
得られた支持板12の一面に、導電性セラミックスなどの導電材料の分散液を塗布し、導電材料の塗膜を形成する。また、上記導電材料の塗膜を形成した領域以外に載置板11および支持板12と同一組成または主成分が同一の粉末材料を含む分散液を塗布し、塗膜を形成する。
0113
次いで、支持板12上の塗膜および絶縁材層の上に載置板11を重ね合わせ、高温、高圧下にてホットプレスして一体化する。このホットプレスにおける雰囲気は、真空、あるいはAr、He、N2等の不活性雰囲気が好ましい。また、圧力は5MPa〜10MPaであることが好ましく、温度は1600℃〜1850℃であることが好ましい。
0114
このホットプレスにより、塗膜は焼成されて内部電極13となる。同時に、支持板12および載置板11は、絶縁材層14を介して接合一体化される。
0115
その他、給電用端子10や、冷却ガス導入孔17、貫通孔16、収容孔22などを、通常知られた方法で適宜加工して設け、静電チャック部2とする。
0116
一方、所望の凹部51を有する接合層5を用意する。一例としては、接合層5は、作製する接合層5の凹部51と相補的な複数の凸部が形成された樹脂シート(例えば、PETシート)に、接合層5の形成材料の前駆体である液状組成物を塗布し、硬化させることで形成することができる。得られる接合層5には、樹脂シートと接する面に、樹脂シートが有する凸部の形状が転写される。その結果、複数の凹部51を有する接合層5が形成される。
また、接合層5が、冷却ガス導入孔17の外周部において複数の凹部51を有さないようにする場合には、接合層5における冷却ガス導入孔17の外周部となる領域に対応する凹部51と相補的な複数の凸部が形成されていない樹脂シートを用いる。また、接合層5が、貫通孔16の外周部において複数の凹部51を有さないようにする場合には、接合層5における貫通孔16の外周部となる領域に対応する凹部51と相補的な複数の凸部が形成されていない樹脂シートを用いる。また、接合層5が、収容孔22の外周部において複数の凹部51を有さないようにする場合には、接合層5における貫通孔16の外周部となる領域に対応する凹部51と相補的な複数の凸部が形成されていない樹脂シートを用いる。さらに、接合層5が、静電チャック部2の外周部において複数の凹部51を有さないようにする場合には、接合層5における静電チャック部2の外周部と対向する領域に対応する凹部51と相補的な複数の凸部が形成されていない樹脂シートを用いる。
0117
また、接合層5が、冷却ガス導入孔17の外周部に絶縁層55を有している場合、接合層5における冷却ガス導入孔17の外周部となる領域に対応する凹部51と相補的な複数の凸部が形成されていない樹脂シートを用いる。あるいは、接合層5における冷却ガス導入孔17の外周部となる領域に、シート状またはフィルム状の樹脂部材を貼着して絶縁層55を形成するか、硬化性の樹脂を塗布して、その樹脂を硬化することにより絶縁層55を形成する。また、接合層5が、貫通孔16の外周部に絶縁層55を有している場合、接合層5における貫通孔16の外周部となる領域に対応する凹部51と相補的な複数の凸部が形成されていない樹脂シートを用いる。あるいは、接合層5における貫通孔16の外周部となる領域に、シート状またはフィルム状の樹脂部材を貼着して絶縁層55を形成するか、硬化性の樹脂を塗布して、その樹脂を硬化することにより絶縁層55を形成する。また、接合層5が、収容孔22の外周部に絶縁層55を有している場合、接合層5における収容孔22の外周部となる領域に対応する凹部51と相補的な複数の凸部が形成されていない樹脂シートを用いる。あるいは、接合層5における収容孔22の外周部となる領域に、シート状またはフィルム状の樹脂部材を貼着して絶縁層55を形成するか、硬化性の樹脂を塗布して、その樹脂を硬化することにより絶縁層55を形成する。
0118
接合層5の凹部51の形状、大きさ、配列は、上記樹脂シートに形成された凸部の形状、大きさ、配列を調整することで制御可能である。
0119
ベース部3の上面を、例えばアセトンを用いて脱脂、洗浄し、この面上の所定位置において、例えば、シート状の第2接着剤層7と、接合層5とを順次重ね合わせる。その際、接合層5は第2面5bに複数の凹部51が存在するため、第2面5bの摩擦力が小さくなる。そのため、第2接着剤層7と接合層5とを重ね合わせる際の位置合わせ(位置の調整)が容易となり、作業性が向上し、スループットが向上する。
0120
次いで、接合層5の上に、例えばシート状の第1接着剤層6と静電チャック部2とを順次重ね合わせる。その際、接合層5は第1面5aに複数の凹部51が存在するため、第1面5aの摩擦力が小さくなる。そのため、第1接着剤層6と接合層5とを重ね合わせる際の位置合わせ(位置の調整)が容易となり、作業性が向上し、スループットが向上する。
0121
重ね合わせた後、プレス加工にて任意の圧力のもと、120℃で接着する。このときの圧力は選択した接着層に合わせて変更する。圧力としては、例えば、0.3MPa以上かつ5MPa以下が挙げられる。
0122
以上により、静電チャック部2およびベース部3は、接合部4(第1接着剤層6、接合層5および第2接着剤層7)を介して接合一体化され、本実施形態の静電チャック装置1Aが得られる。
0123
以上のような静電チャック装置1Aによれば、耐電圧の低下を抑制した新規な静電チャック装置を提供することができる。すなわち、ショートし難い新規な静電チャック装置を提供することができる。また、静電チャック装置1Aによれば、均熱性が高い静電チャック装置を提供することができる。
0124
なお、本実施形態においては、接合部4には第1接着剤層6および第2接着剤層7を含むこととしたが、これに限らない。本発明においては、第1接着剤層6と第2接着剤層7とのいずれか一方または両方がない構成も採用することができる。
0126
例えば、接合層5がタック性(粘着性)を有する場合、第1接着剤層6および第2接着剤層7を用いなくても、接合層5により静電チャック部2とベース部3とを接合することができる。この場合、接合層5の凹部51内を充填する樹脂(接着剤)が存在しないため、接合層5と静電チャック部2との界面、接合層5とベース部3との界面には、それぞれ面内に一様に空気層Aが形成される。
0127
空気層Aが接合層5の面内に一様に形成されることにより、静電チャック装置1Bにおいては、熱伝導率の面内の偏りが生じ難く、面内の温度差を小さくすることができる。
0128
静電チャック装置1Bは、接合層5の第1面5aにおいて、接合層5に対向する部材である静電チャック部2と接合層5との接触面積が、静電チャック部2に対する空気層Aの投影面積よりも大きいことが好ましい。
0129
また、静電チャック装置1Bは、第2面5bにおいて、接合層5に対向する部材であるベース部3と接合層5との接触面積が、ベース部3に対する空気層Aの投影面積よりも大きいことが好ましい。
0130
接合層5と静電チャック部2との接触面積または接合層5とベース部3との接触面積と、空気層Aの投影面積との大小関係が上述のような関係であると、第1面5aまたは第2面5bにおける接着強度を十分に確保し、第1面5aまたは第2面5bにおいて剥離し難くなる。
0131
接合層5の凸状部52の頂部の面積を広げると、接合層5と静電チャック部2との接触面積または接合層5とベース部3との接触面積が拡大する傾向にある。
0132
接合層5の形成材料として、静電チャック装置1Bの製造時の加工条件で熱変形し易いものを選択すると、静電チャック装置1Bの製造時に接合層5が変形して凹部51がつぶれ易くなる。これにより、接合層5と静電チャック部2との接触面積または接合層5とベース部3との接触面積が拡大する傾向にある。
0133
このような構成の静電チャック装置1Bにおいても、耐電圧の低下を抑制した新規な静電チャック装置を提供することができる。すなわち、ショートし難い新規な静電チャック装置を提供することができる。また、静電チャック装置1Bにおいても、均熱性が高い静電チャック装置を提供することができる。
0134
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
0135
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
0136
以下の方法で、各実施例および比較例の静電チャック装置を作製した。以下の説明においては、上述の実施形態で用いた符号を示し、各構成を説明することがある。
0137
(実施例1)
平均粒子径0.06μmの炭化ケイ素粒子をプラズマCVD法により気相合成した。得られた炭化ケイ素粒子と、平均粒子径0.15μmの酸化アルミニウム粉末とを、炭化ケイ素粒子/酸化アルミニウム粉末が質量比で9/91となるように秤量し、均一に混合した。
0138
得られた混合粉末を、粉末成形機を用いて円板状に成形し、アルゴン雰囲気中、1800℃の温度で4時間、40MPaに加圧しながら焼成し、直径320mm、厚み5mmの円板状の複合焼結体を2枚作製した。
0139
得られた2枚の複合焼結体のうち、一方複合焼結体の表面を中心線平均粗さRaが0.3μmとなるように研磨して平坦面とし、載置板11とした。Raは、JISB0601に準拠した方法で測定した値を採用した。
0140
得られた2枚の複合焼結体のうち、他方の複合焼結体を厚み4mmに加工した。また機械加工にて、給電用端子10を挿通する貫通孔を形成し、支持板12とした。
0141
この支持板12の中心から半径145mm内の領域に、スクリーン印刷法により導電性セラミックスの分散液を塗布し、導電材料の塗膜を形成した。
0142
また、支持板12の中心から半径145mm〜149mmの領域に、スクリーン印刷法により酸化アルミニウム粉末を含むペーストを塗布し、塗膜を形成した。
0143
支持板12において塗膜を形成した面と、載置板11の研磨されていない面とを対向させて重ね合わせ、1700℃に加熱しながら10MPaに加圧し、接合体を得た。
0144
得られた接合体を、外周径が298mm、絶縁材層14の幅が0.8mm、載置板11の厚みが0.5mmとなるように機械加工した。さらに、載置板11の表面を、中心線平均粗さRaが0.05μmとなるように研磨して、静電チャック部2を得た。
0146
ベース部3の上面にシート状接着剤(第2接着剤層7)を貼り付け、シート状接着剤の表面にシリコーンシート(接合層5)を配置した。第2接着剤層7に対応するシート状接着剤として、第1接着剤層6と同じ接着剤を用いた。
0147
シリコーンシートとしては、算術平均高さSa=0.78μmの凹凸を両面に有したものを作製して用いた。シリコーンシートは、シリコーンゴムの前駆体を一対のPETシートで挟持した積層体を形成し、積層体を140℃に加熱して前駆体を硬化させて作製した。シリコーンシートの厚みは100μmとなるように調整した。用いたPETシートにおいて前駆体と接する面には、算術平均高さSa=0.78μmの凹凸が設けられていた。
シリコーンシートの表面にPETシートの凹凸を転写することで、表面に凹凸を有するシリコーンシートを作製した。なお、シリコーンシートの表面において、冷却ガス導入孔17の外周部となる領域、貫通孔16の外周部となる領域、収容孔22の外周部となる領域、および、静電チャック部2の外周部と対向する領域には、PETシートの凹凸を転写しなかった。すなわち、PETシートとしては、シリコーンシートにおける冷却ガス導入孔17の外周部となる領域、貫通孔16の外周部となる領域、収容孔22の外周部となる領域、および、静電チャック部2の外周部と対向する領域に凹凸がないものを用いた。なお、凹凸のない領域は、冷却ガス導入孔17となる領域、貫通孔16の外周部となる領域、収容孔22の外周部となる領域、および、静電チャック部2の外周から2.5mmとした。
0148
なお、本実施例において、シリコーンシートの算術平均高さSaは、非接触レーザー顕微鏡(商品名:OLS5000、オリンパス株式会社製)を用いて、シリコーンシートの表面を測定し、得られた値を用いた。
0149
シリコーンシート上に、シート状接着剤を接着した静電チャック部2の接着剤側を重ねて配置し、2MPaに加圧しながら120℃に加熱し、加圧加熱状態を60分間保持することで静電チャック部2とベース部3とを接着して、実施例1の静電チャック装置を作製した。
0150
(実施例2)
算術平均高さSa=0.11μmのシリコーンシート(接合層5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の静電チャック装置を作製した。
0151
(比較例1)
冷却ガス導入孔17の外周部となる領域、貫通孔16の外周部となる領域、収容孔22の外周部となる領域、および、静電チャック部2の外周部と対向する領域にも凹凸が形成されたシリコーンシート(接合層5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の静電チャック装置を作製した。
0152
得られた各静電チャック装置について、以下の測定で評価した。
0153
(温度測定方法)
静電チャック装置の載置板11の上面に直径300mmのシリコンウエハを載置し、内部電極13に通電しながらシリコンウエハを静電吸着させた。このときベース部3の流路3Aに30℃の冷却水を循環させ、表面温度の管理目標値を70℃とした。シリコンウエハの面内の温度分布をサーモグラフィTVS−200EX(日本アビオニクス株式会社製)を用いて測定した。
0154
(耐電圧測定方法)
静電チャック装置にシリコンウエハを載せない状態で、内部電極13に2500Vの電位を印加し、さらに外部のRF電力を印加することで静電チャック装置の吸着面にプラズマを発生させた。プラズマを発生させた状態で2時間保持した。この際、静電チャック装置の温度は、ベース部3の流路3Aに30℃の冷却水を循環させ、表面温度の管理目標値を70℃とした。
0155
プラズマを発生させる雰囲気の条件は、以下のようなものとした。
混合ガス:CF4とH2との1:1混合ガス
混合ガス供給量:流量30sccm、ガス圧5Pa
(「sccm」は、1気圧(1013hPa)、25℃における1分間当たりの流量(cc、cm3)を示す)
PF投入電力:5KW
0156
上記条件にてプラズマ雰囲気を2時間保持した。
0158
次いで、内部電極13への印加電圧を3500Vとし、同条件で10分間保持した。この状態で静電チャック装置の載置面における放電の有無を確認した。
0159
以後同様に、内部電極13への印加電圧を500V間隔で上げ、各印加電圧において10分間保持して、載置面における放電の有無を確認した。載置面での放電が生じるまで試験を実施した。なお、耐電圧の値は、放電が生じない印加電圧のうち最大値(最大電圧値)とした。
0161
0162
表1に示すように、実施例1,2の静電チャック装置は、1000時間実装試験後の面内の温度差の変化が±0.5℃未満と小さく良好であった。また、耐電圧も十分に確保されている結果となった。
0163
対して比較例1では、1000時間実装試験後の面内の温度差の変化が±1.5℃以上と大きい結果となった。また、耐電圧も低くなる結果となった。
実施例
0164
以上の結果より、本発明が有用であることが分かった。
0165
1A,1B・・・静電チャック装置、2・・・静電チャック部、3・・・ベース部、3A・・・流路、4・・・接合部、5・・・接合層、5a・・・第1面、5b・・・第2面、6・・・第1接着剤層、7・・・第2接着剤層、8・・・給電部、9・・・給電用電極、9a・・・碍子、10・・・給電用端子、11・・・載置板、12・・・支持板、13・・・内部電極、14・・・絶縁材層、16・・・貫通孔、17・・・冷却ガス導入孔、19・・・フォーカスリング、21・・・リフトピン、22・・・収容孔、23・・・碍子、51・・・凹部、52・・・凸状部、55・・・絶縁層、A・・・空気層