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技術 低リン鋼の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 中瀬憲治山田令中井由枝菊池直樹
出願日 2019年6月25日 (2年4ヶ月経過) 出願番号 2019-117202
公開日 2021年1月14日 (9ヶ月経過) 公開番号 2021-004380
状態 未査定
技術分野 銑鉄の精製;鋳鉄の製造;転炉法以外の製鋼 鉄の製造 金属の製造または精製 炭素鋼又は鋳鋼の製造
主要キーワード 予備処理段階 含ニッケル 鉄鋼会社 リン含有物質 COガス量 分解溶出 メートル法 粉塵飛散
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図面 (13)

課題

鉄鋼製造プロセス原料として用いられる塊鉱石であるリン含有物質中のリンを、予め脱リン処理して除去してから該プロセスのいずれか少なくとも1以上の段階で用いることで、低リン鋼を有利に製造する方法を提案する。

解決手段

鉄鋼製造プロセス用原料(塊鉱石)のうちのリン含有物質を、当該リン含有物質の融解温度未満の温度にて窒素含有ガスと反応させることにより、該リン含有物質中のリンの少なくとも一部をPNガスとして除去して低リン含有物質とする脱リン処理を施した後、得られた該低リン含有物質を該鉄鋼製造プロセスのいずれか1以上の段階で用いる低リン鋼の製造方法。

概要

背景

高炉で溶製される溶銑は、鉄鉱石等の製鉄原料成分(固体酸化物)に由来するリン(P)を不可避に含んでいるのが普通である。そのリンは、鋼材にとっては有害成分であると考えられている。このことから、鉄鋼製品材料特性を向上させるために、一般には、製銑から製鋼段階にかけて脱リン処理するのが普通である。例えば、その脱リン処理としては、溶銑中あるいは溶鋼中のリンを、酸素ガス酸化鉄などの酸素源によって酸化させてP2O5とし、その後、このP2O5をCaOを主成分とするスラグ中移行させることによって除去する方法である。なお、溶銑中あるいは溶鋼中のリンは、酸素ガスなどによって酸化されてスラグ中に移行するが、その際、鉄もまた酸化されることから、該スラグ中には鉄も酸化鉄の形態で移行することになる。

近年、環境対策および省資源の観点から、製鋼スラグリサイクル使用を含めて、製鋼スラグの発生量を削減する試みがある。例えば、溶銑予備脱リン)処理(溶銑を転炉にて脱炭精錬する前に、該溶銑中のリンを予め除去する処理)した溶銑の脱炭精錬時に発生するスラグ転炉スラグ)というのは、造滓剤CaO源鉄源として用いる他、焼結原料として用いることで高炉にリサイクルすること、あるいは溶銑予備処理工程のCaO源としてリサイクルする試みがある。

脱リンのための溶銑予備処理をした溶銑(以下、「脱リン溶銑」という)、特に鉄鋼製品のリン濃度ベルまで脱リンした脱リン溶銑は、これを転炉で脱炭精錬した場合、このときに発生する転炉スラグは、リンをほとんど含有していないものになる。従って、このような転炉スラグを高炉へリサイクルさせたとしても、溶銑のリン濃度の増加(ピックアップ)を危惧する必要はない。しかしながら、予備脱リン処理時に発生したスラグ、または予備脱リン処理されていない溶銑(通常溶銑)、あるいは予備脱リン処理されていても脱リン処理後のリン濃度が鉄鋼製品のリン濃度レベルまで低下していないような脱リン溶銑(転炉で脱炭精錬したときに発生するリン含有量の多い転炉スラグ)の場合、これを高炉に酸化物の形態でリサイクルすると、そのリンが、高炉内還元されることから、溶銑中のリン含有量が増加し、溶銑脱リンの負荷が却って増加するという問題が起こる。

このように、製鉄プロセスで用いられる主原料あるいは副原料中には、一般に、多くのリンが含まれており、こうしたリン含有物質に含まれるリン濃度やその使用量によっては、最終的に得られる鉄鋼製品中のリンの含有量が多くなることが知られている。即ち、リンは、鉄鋼製品としての品質に悪影響を及ぼすため、リンの含有量を抑制することが求められる。そのためには、リン含有量の低い主原料あるいは副原料の使用が求められる。ただし、そうした原料を用いるためにはコスト増を招く。そこで、従来、製鉄用主原料あるいは副原料からなるリン含有物質から、リンを事前に除去する技術が提案されている。

例えば、特許文献1では、CaO含有量が25mass%以下かつCaO/(SiO2+Al2O3)比が5以下の鉄鉱石、含チタン鉄鉱石、含ニッケル鉱石含クロム鉱石、あるいはこれらの鉱石を主成分とする混合物に対し、Ar,He,N2,CO,H2,炭化水素一種もしくはこれらの混合ガスを1600℃以上で接触させることにより、リンを除去する方法を提案している。

また、特許文献2には、リン含有量の高い鉄鉱石を0.5mm以下に粉砕し、これに水を加えてパルプ濃度を35mass%前後とし、溶剤にH2SO4またはHClを添加してpH2.0以下で反応させることにより、リン鉱物分解溶出すると共に、ついで磁力選別により磁鉄鉱等の磁着物採取し、非磁着物たるSiO2やAl2O3等をスライムとして沈降分離すると共に、このとき液中溶出したPを消石灰または生石灰を添加してpH5.0〜10.0の範囲内で中和することにより、リン酸カルシウムとして分離回収するという方法が開示されている。

また、特許文献3には、微生物アスペルギルスエスピーKSC−1004株あるいは微生物フザリウムエスピー KSC−1005株を用いることにより鉄鉱石の脱リンを行う方法が開示されている。

さらに、非特許文献1では、水蒸気圧を制御した水素水蒸気混合ガスによる高リン鉄鉱石の還元についての研究報告がなされており、鉄鉱石から直接的に脱リンする方法が提案されている。

概要

鉄鋼製造プロセス用原料として用いられる塊鉱石であるリン含有物質中のリンを、予め脱リン処理して除去してから該プロセスのいずれか少なくとも1以上の段階で用いることで、低リン鋼を有利に製造する方法を提案する。鉄鋼製造プロセス用原料(塊鉱石)のうちのリン含有物質を、当該リン含有物質の融解温度未満の温度にて窒素含有ガスと反応させることにより、該リン含有物質中のリンの少なくとも一部をPNガスとして除去して低リン含有物質とする脱リン処理を施した後、得られた該低リン含有物質を該鉄鋼製造プロセスのいずれか1以上の段階で用いる低リン鋼の製造方法。

目的

本発明は、従来技術が抱えている前述の課題を解決するために開発した方法であり、その目的とする

効果

実績

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請求項1

鉄鋼製造プロセス原料のうちの塊鉱石であるリン含有物質を、当該リン含有物質の融解温度未満の温度にて窒素含有ガスと反応させることにより、該リン含有物質中のリンの少なくとも一部をPNガスとして除去して低リン含有物質とする脱リン処理を施した後、得られた該低リン含有物質を該鉄鋼製造プロセスのいずれか1以上の段階で用いることを特徴とする、低リン鋼の製造方法。

請求項2

前記リン含有物質は、粒径が10mm以上の大きさの塊鉱石であることを特徴とする、請求項1に記載の低リン鋼の製造方法。

請求項3

前記低リン含有物質中のPの含有量が0.005mass%以上0.05mass%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の低リン鋼の製造方法。

請求項4

前記窒素含有ガスによる脱リン処理は、処理雰囲気中における窒素分圧PN2を0.2〜0.9atmに保持して行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の低リン鋼の製造方法。

請求項5

前記鉄鋼製造プロセスが、高炉製錬溶銑予備処理転炉による予備脱リン処理、転炉による脱炭処理のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の低リン鋼の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、鉄鋼製造プロセス原料として用いられるリン含有物質を、この物質中のリンを予め低減させたものについて、各プロセスでの処理において用いることで、低リン鋼の製造を行う方法に関する。

0002

[定義]
以下、この明細書中において、「P」「P2O5」などアルファベットで記した場合はその化学式の物質を表し、「リン」とカナで記した場合は、形態を問わずその物質に含まれるリンを表す。

0003

また、この明細書中で気体体積を「リットル」の単位で表す場合は、温度273K、雰囲気圧力が1atmの標準状態換算して示す。また、圧力の単位atmは、1.01325×106Paである。そして、物質中のP含有量をmass%で表す場合には、形態を問わずその物質に含まれるリンの含有率を示した。また、質量の単位tはメートル法による。

背景技術

0004

高炉で溶製される溶銑は、鉄鉱石等の製鉄原料成分(固体酸化物)に由来するリン(P)を不可避に含んでいるのが普通である。そのリンは、鋼材にとっては有害成分であると考えられている。このことから、鉄鋼製品材料特性を向上させるために、一般には、製銑から製鋼段階にかけて脱リン処理するのが普通である。例えば、その脱リン処理としては、溶銑中あるいは溶鋼中のリンを、酸素ガス酸化鉄などの酸素源によって酸化させてP2O5とし、その後、このP2O5をCaOを主成分とするスラグ中移行させることによって除去する方法である。なお、溶銑中あるいは溶鋼中のリンは、酸素ガスなどによって酸化されてスラグ中に移行するが、その際、鉄もまた酸化されることから、該スラグ中には鉄も酸化鉄の形態で移行することになる。

0005

近年、環境対策および省資源の観点から、製鋼スラグリサイクル使用を含めて、製鋼スラグの発生量を削減する試みがある。例えば、溶銑予備脱リン)処理(溶銑を転炉にて脱炭精錬する前に、該溶銑中のリンを予め除去する処理)した溶銑の脱炭精錬時に発生するスラグ転炉スラグ)というのは、造滓剤CaO源鉄源として用いる他、焼結原料として用いることで高炉にリサイクルすること、あるいは溶銑予備処理工程のCaO源としてリサイクルする試みがある。

0006

脱リンのための溶銑予備処理をした溶銑(以下、「脱リン溶銑」という)、特に鉄鋼製品のリン濃度ベルまで脱リンした脱リン溶銑は、これを転炉で脱炭精錬した場合、このときに発生する転炉スラグは、リンをほとんど含有していないものになる。従って、このような転炉スラグを高炉へリサイクルさせたとしても、溶銑のリン濃度の増加(ピックアップ)を危惧する必要はない。しかしながら、予備脱リン処理時に発生したスラグ、または予備脱リン処理されていない溶銑(通常溶銑)、あるいは予備脱リン処理されていても脱リン処理後のリン濃度が鉄鋼製品のリン濃度レベルまで低下していないような脱リン溶銑(転炉で脱炭精錬したときに発生するリン含有量の多い転炉スラグ)の場合、これを高炉に酸化物の形態でリサイクルすると、そのリンが、高炉内還元されることから、溶銑中のリン含有量が増加し、溶銑脱リンの負荷が却って増加するという問題が起こる。

0007

このように、製鉄プロセスで用いられる主原料あるいは副原料中には、一般に、多くのリンが含まれており、こうしたリン含有物質に含まれるリン濃度やその使用量によっては、最終的に得られる鉄鋼製品中のリンの含有量が多くなることが知られている。即ち、リンは、鉄鋼製品としての品質に悪影響を及ぼすため、リンの含有量を抑制することが求められる。そのためには、リン含有量の低い主原料あるいは副原料の使用が求められる。ただし、そうした原料を用いるためにはコスト増を招く。そこで、従来、製鉄用主原料あるいは副原料からなるリン含有物質から、リンを事前に除去する技術が提案されている。

0008

例えば、特許文献1では、CaO含有量が25mass%以下かつCaO/(SiO2+Al2O3)比が5以下の鉄鉱石、含チタン鉄鉱石、含ニッケル鉱石含クロム鉱石、あるいはこれらの鉱石を主成分とする混合物に対し、Ar,He,N2,CO,H2,炭化水素一種もしくはこれらの混合ガスを1600℃以上で接触させることにより、リンを除去する方法を提案している。

0009

また、特許文献2には、リン含有量の高い鉄鉱石を0.5mm以下に粉砕し、これに水を加えてパルプ濃度を35mass%前後とし、溶剤にH2SO4またはHClを添加してpH2.0以下で反応させることにより、リン鉱物分解溶出すると共に、ついで磁力選別により磁鉄鉱等の磁着物採取し、非磁着物たるSiO2やAl2O3等をスライムとして沈降分離すると共に、このとき液中溶出したPを消石灰または生石灰を添加してpH5.0〜10.0の範囲内で中和することにより、リン酸カルシウムとして分離回収するという方法が開示されている。

0010

また、特許文献3には、微生物アスペルギルスエスピーKSC−1004株あるいは微生物フザリウムエスピー KSC−1005株を用いることにより鉄鉱石の脱リンを行う方法が開示されている。

0011

さらに、非特許文献1では、水蒸気圧を制御した水素水蒸気混合ガスによる高リン鉄鉱石の還元についての研究報告がなされており、鉄鉱石から直接的に脱リンする方法が提案されている。

0012

特開昭54−83603号公報
特開昭60−261501号公報
特開2000−119759号公報

先行技術

0013

鉄と鋼Vol.100(2014), No.2, p.325

発明が解決しようとする課題

0014

しかしながら、上記各従来技術には以下に述べるような、解決しなければならない幾つかの課題がある。即ち、特許文献1に開示の方法は、処理温度が1600℃以上と高温であり、多くのエネルギーを要するという課題がある。さらに、この方法は、鉱石を溶融状態で処理するため、容器損耗や高温融体の取扱いが困難であるという課題もある。次に、特許文献2に開示の方法は、酸を用いた湿式処理であり、回収した磁着物を主原料として利用するための乾燥に時間とコストがかかるという課題がある。さらに、この方法は、事前に0.5mm以下に粉砕するのに時間とコストを要するという課題もある。また、特許文献3の方法は、特許文献2の方法と同様に湿式処理のため、リン除去後の鉱石を主原料として利用するための乾燥に時間とコストを要するという課題がある。さらに、非特許文献1は、鉱石中のリン除去率が最大で13%と低いという課題を抱えている。しかも、この方法は、反応ガスとして水素を利用するため、工業規模で安全に処理する設備等についての検討が必要であるところ、それがなされていないという課題もある。

0015

そこで、本発明は、従来技術が抱えている前述の課題を解決するために開発した方法であり、その目的とするところは、鉄鋼製造プロセス用原料として用いられるリン含有物質中のリンを、予め脱リン処理してから該プロセスのいずれか少なくとも1以上の段階で用いるようにすることで、低リン鋼を有利に製造する方法を提案することにある。

課題を解決するための手段

0016

従来技術が抱えている前述の課題を解決するために開発した本発明は、鉄鋼製造プロセス用原料のうちの塊鉱石であるリン含有物質を、当該リン含有物質の融解温度未満の温度にて窒素含有ガスと反応させることにより、該リン含有物質中のリンの少なくとも一部をPNガスとして除去して低リン含有物質とする脱リン処理を施した後、得られた該低リン含有物質を該鉄鋼製造プロセスのいずれか1以上の段階で用いることを特徴とする、低リン鋼の製造方法である。

0017

なお、本発明においては、
(1)前記リン含有物質は、粒径が10mm以上の大きさの塊鉱石であること、
(2)前記低リン含有物質中のPの含有量が0.005mass%以上0.05mass%以下であること、
(3)前記窒素含有ガスによる脱リン処理は、処理雰囲気中における窒素分圧PN2を0.2〜0.9atmに保持して行うこと、
(4)前記鉄鋼製造プロセスが、高炉の製錬、溶銑の予備処理、転炉による予備脱リン処理、転炉による脱炭処理のいずれかであること、
がより好ましい実施形態である

発明の効果

0018

本発明によれば、鉄鋼製造プロセス用原料として用いられる塊鉱石であるリン含有物質を、高炉での製錬、混銑車による溶銑予備処理、あるいは転炉などによる製鋼精錬などの各プロセス処理に先立って予め脱リン処理した原料、即ち該リン含有物質をそれの融解温度(融点)未満の温度に加熱して窒素含有ガスと反応させることにより、該リン含有物質中のリンを窒化リン(PN)のガスとして予め除去した原料(塊鉄鉱石)を用いることで、低リン鋼を安価な原料から製造することができる。
特に、本発明によれば、予備的に脱リンした原料を用いること、即ち、その原料を鉄鋼製造プロセスの上記のいずれか1以上の段階(プロセス)で用いることで、低リン鋼を容易にかつ確実に製造することができる。
しかも、本発明によれば、安価なリン含有物質の原料の使用量を増加させることができると共に、鉄鋼製造プロセスにおけるリン除去に要する精錬剤の使用量を削減することができるようになり、ひいてはスラグ発生量の低減を通じて鉄ロス量の低減をも図ることができる。

図面の簡単な説明

0019

化学式(1)の反応(a)と化学式(3)の反応(c)の平衡が成り立つときの温度と酸素分圧との関係を示す図である。
窒素分圧とリン除去率との関係を示す図である。
窒化脱リン処理の温度とリン除去率との関係を示す図である。
窒化脱リン処理の温度と酸素分圧との関係を示す図である。
脱リン処理塊鉱石の配合割合と溶銑中のP濃度との関係を示す図である。
実施例3における、塊鉱石添加量(t)と予備脱リン処理前後のP濃度(ΔP)との関係を示す図である。
実施例4における、塊鉱石添加量(t)と生銑を用いたときの予備脱リン処理前後のP濃度変化量(ΔP濃度)との関係を示す図である。
実施例4における、塊鉱石添加量(t)と予備処理銑を用いたときの予備脱リン処理前後のP濃度変化量(ΔP濃度)との関係を示す図である。
実施例5(トピードカー)における、予備脱リン処理塊鉱石の配合割合(%)と予備脱リン処理前後のP濃度変化量(ΔP濃度)との関係を示す図である。
実施例6における、転炉で予備脱リン処理する際の塊鉱石添加量(t)と予備脱リン処理前後のP濃度変化量(ΔP濃度)との関係を示す図である。
実施例7における、転炉での予備脱リン処理する際の塊鉱石添加量(t)と予備脱リン処理前後のP濃度変化量(ΔP濃度)との関係を示す図である。
実施例7における、転炉での脱炭処理時における予備脱リン処理塊鉱石の添加量(t)と予備脱リン処理前後のP濃度変化量(ΔP濃度)との関係を示す図である。

0020

本発明の開発にあたり、発明者らは、鉄鋼製造プロセス用原料として、リン濃度が高く安価な鉄鉱石に着目し、そうした鉄鉱石のうち塊鉄鋼石(以下、単に「塊鉱石」という)を高炉での製錬、トピードカーによる溶銑予備処理、あるいは製鋼炉(転炉等)による予備処理、脱炭精錬用の原料として使用できるようにするために、該塊鉄鉱石から予めリンを除去した塊鉱石(以下、脱リン塊鉱石を粉砕してなる精錬剤(副原料)などとして使う場合を含める)を使用する方法についての研究を進めた。

0021

鉄鋼製造時の製錬段階や製鋼精錬段階で用いられる鉄鉱石の多くは、海外、例えばオーストラリアブラジルなどから輸入されることが多い。これらの国々の鉄鉱石鉱山では、採掘に大型の重機が用いられ、鉄道トラック船舶などにより我国鉄鋼会社工場まで運搬される。そして、各工場内の原料使用設備までの運搬は、アンローダーや重機、コンベアー、ガスなどを使って搬送されている。このような採掘から運搬までの過程で、原料は不可避に破砕されて広い粒度分布を持つようになる。その内、10mm以上の鉄鉱石を塊鉱石、10mm未満の鉄鉱石を粉鉱石と称している。また、必要に応じて、ジョークラッシャーロッドミルなどの破砕設備による粒度調整と、い器を用いた分級処理も行われる。

0022

鉄鉱石の運搬方法と諸設備への供給方法は、鉄鉱石等の粒度や強度などの性状と使用する設備により異なっている。例えば、10mm以上の塊鉱石については、コンベアーなどで連続的に運搬が可能な一方で、ガスによる搬送は困難である。また、塊鉱石の添加方法自重による自然落下によることが多く、高炉や転炉ではそれぞれの上部からコンベアー等を用いて直接装入するか、あるいはこれらの上部に設けたホッパー等の貯蔵設備にコンベアー等を用いて貯蔵し、必要な時に必要量を切出して装入することとしている。

0023

なお、粒径(JIS−Z−8801−1で提案された公称目開きの篩を使って篩い分けされた大きさ)が10mm未満の大きさの粉鉱石については、ガスによる搬送が可能な一方で、コンベアーなどでの運搬では目詰まりを起こし、運搬効率が低下する。また、その粉鉱石については、これを自重により自然落下させると、製錬・精錬設備内での粉塵飛散による目詰まりや、ホッパー等の貯蔵設備内での吊り現象の発生を招き、添加した粉鉱石が集塵されて添加歩留りの低下を招くなどの問題が生じる。

0024

この点、発明者らの研究によると、安価だがリン含有量の高い塊鉱石を用いた溶銑の製錬や鋼の精錬に際しては、これらの処理に先立って、リンを予め窒化処理によって除去した塊鉱石(粒径:10mm以上の大きさのリン含有物質)を用いることが推奨される。下記表1は、塊鉱石の成分組成の一例を示す。

0025

0026

なお、表1では、該塊鉱石の鉄含有量を表すためにT.Feの濃度で記載したが、実際にはほぼ全てがFe2O3の形態で存在する。また、リンは、珪素(Si)およびアルミニウム(Al)に比較すると酸素との親和力が弱いことから、リン含有物質を、炭素や珪素、アルミニウムなどで還元すれば、リン含有物質中のP2O5は容易に還元されることが知られている。一方で、鉄酸化物Fe2O3は酸素との親和力がリンと同等であることから、リン含有物質を、炭素や珪素、アルミニウムなどで還元すると、同時にFe2O3も還元されることになる。

0027

ただし、リンは鉄中への溶解度が高く、とくに還元によって生成したリンは、同時に還元により生成する鉄の中に迅速に溶解して、高リン含有鉄となる。このように、還元によるリンの除去方法は、リンの除去率が低く有効な方法ではない。

0028

そこで、発明者らは、この問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、リンは、一窒化リン(PN)の気体として除去すれば、金属鉄が生成しない温度および酸素分圧での処理が可能となり、リンの鉄への吸着を抑制して低リン含有物質にすることが可能になることを見出した。

0029

即ち、発明者らは、リン含有物質中にP2O5として存在するリンを、所定の温度と雰囲気中で処理することにより、一窒化リン(PN)の気体として除去する下記の化学式1に示す反応(a)が、リン含有物質に含まれる鉄酸化物が還元されて金属鉄となる下記の化学式2に示す反応(b)よりも安定であることを熱力学検討によって知見した。

0030

0031

0032

化学式1として示す上記反応について、平衡が成り立つときの温度と酸素分圧の関係を図1に示す。そして、この図1には、比較のために、固体炭素一酸化炭素ガスの平衡(化学式3に示す反応)により達成可能な温度と酸素分圧の関係を併せて示した。ここで、P2O5活量は0.001とし、N2分圧は0.9atmとし、PN分圧は0.001atmとして、C活量は1とし、CO分圧は1atmと仮定した。

0033

0034

図1において、化学式1の反応(a)、化学式3の反応(c)は、それぞれの線より下側の温度と酸素分圧の領域において、反応(a)、反応(c)はそれぞれ右側に進行する。即ち、反応(a)によるリンの窒化除去を生じさせるためには、800℃では酸素分圧を2.2×10−19atm以下、1000℃では1.45×10−14atm以下、1200℃では4.66×10−11atm以下の酸素分圧とすることが必要である。

0035

ここで、酸素分圧を低減させるためには、酸化物として安定な元素、例えばCaやMg、Al、Ti、Si、Cなどの単体共存させることが有効であるが、金属元素の単体は高価である。そこで、本発明では、処理コスト低減の観点から、炭素(C)による酸素分圧の低減を図ることが好ましい。それは、図1の記載から分るように、724℃以上の温度において、固体炭素により達成される酸素分圧は、リンの窒化除去反応(a)を進行させるのに十分な値となることからもわかる。

0036

次に、上述した検討結果を踏まえ、リンの窒化除去の可否を確認する実験を行った。この実験では、リン含有物質として、とりあえず1〜3mmの粒径に調整した鉄鉱石10gを用い、固体炭素として試薬カーボン(粒径:0.25mm未満)5gを用い、それぞれ別のアルミナボート上に乗せて、小型の電気抵抗炉内に静置した。その炉内にArガスを1リットル/minで供給しながら所定温度(600〜1400℃)まで加熱した後、Arガスの供給を停止し、そのArガスに代え一酸化炭素(CO)と窒素(N2)との混合ガス3リットル/minを供給し、60分間一定の温度に保持した。なお、一酸化炭素と窒素の混合ガスの比率は、窒素分圧PN2が0〜1atmの範囲となるように変化させた。所定の時間経過後、一酸化炭素と窒素の混合ガスの供給を停止してArガス1リットル/minに切り替え、室温まで降温させた後に前記粉鉄鉱石を回収した。また、この実験では、試薬カーボンを静置した側が上流となるようにガスを供給し、一酸化炭素ガスと試薬カーボンが先に反応するようにした。

0037

図2は、前記処理を1000℃にて実施した前後の鉄鉱石の組成分析結果から求めたリン除去率(ΔP={(実験前P濃度)−(実験後P濃度)}/(実験前P濃度))(%)と窒素分圧(PN2)(atm)の関係を示すものである。この図2からわかるように、窒素分圧(PN2)が0および1atmの場合を除き、リン含有物質からはリンが除去されており、特に、窒素分圧(PN2)が0.2〜0.9atmのときに60%以上という高いリン除去率が得られている。なお、窒素分圧0.2atm未満でリン除去率が低い理由としては、窒素分圧が低すぎて所定の処理時間内では反応(a)によるリン除去が十分に進行しなかったためだと考えられる。また、窒素分圧0.9atm超えでは、COガス供給量が少なく、鉄鉱石中の酸化鉄の熱分解により発生する酸素により酸素分圧が上昇し、リンの窒化除去反応(a)が抑制されたためだと考えられる。このことは、100%窒素ガス(PN2=1atm)の供給では、リンが除去できていないことからも理解できる。

0038

次に、図3は、前記処理をCO=10vol%(PCO=0.1atm)、N2=90vol%(PN2=0.9atm)の混合ガスにて実施した実験前後の鉄鉱石の組成分析結果から求めたリン除去率(ΔP%)と処理温度(T℃)の関係を示す。この図3からわかるように、750〜1300℃の温度域において、高いリン除去率が得られており、リンの窒化除去に好ましいことがわかる。なお、750℃未満でリン除去率が低い理由としては、図1に示したように、724℃以下ではリン窒化除去に必要な酸素分圧を固体炭素で達成できなかったことが一因と考えられる。また、1350℃および1400℃においては、鉄鉱石が半溶融〜溶融して、回収した試料一体化しており、その結果、鉄鉱石粒の隙間や気孔が消失し、ガスと接触する界面積が大幅に減少したのが原因と考えられる。この点について、示差熱分析法により測定した鉄鉱石の融点(Tm)は1370℃であり、その0.95倍の1300℃では高いリン除去率が得られたため、「0.95×Tm(℃)」以下とすることがリン除去のための反応界面積確保の上で好ましいと考えられる。

0039

以上説明したように、リン含有物質である塊鉱石中のリンを脱リン窒化処理して低リン含有物質である低リン塊鉱石を得るためには、所定の温度での処理と窒素分圧PN2で規定される低酸素分圧環境となる窒素供給が必要と考えられる。このような処理をするための設備としては、電気炉回転炉床炉キルン炉流動層型加熱炉などの原料予備処理設備において温度と雰囲気(窒素分圧)の制御が可能な設備であればよい。

0040

また、本発明において、原料としての高いリン含有物質である塊鉱石中のリンを除去(低減)させて低リン含有物質である塊鉱石にする窒化脱リン処理を施すに当たり、酸素分圧を低減させて、所定の窒素分圧PN2として脱リンを図る方法としては、
(1)固体還元剤と窒素ガスとを高温で接触させる、
(2)一酸化炭素、水素、炭化水素等の還元性ガスを窒素ガスに混合する、
(3)電圧印加した固体電解質に窒素ガスを導入して酸素を除去する、
などの方法を採用することが好ましい。

0041

なお、前記塊鉱石などのリン含有物質は、前述した窒化脱リン処理によって、Pの含有量を、0.005mass%以上0.05mass%以下の低リン含有物質にすることがより好ましい。その理由は、前記処理に得られる該低リン含有物質中のPの含有量を0.005mass%未満にすることは95%以上の高いリン除去率が必要となり、処理時間・処理コストが増大するという課題があり、一方でその量が0.05mass%超では同程度のリン濃度の原料(粉鉱石)の購入価格と比べて処理コストの方が高くなるからである。原料(粉鉱石)の予備処理段階での脱リン処理によって得られるより好ましいPの含有量は、0.02mass%〜0.04mass%である。

0042

本発明において、鉄鋼製造プロセス用原料であるリン含有物質の予備的に行われる窒化脱リン処理は、少なくとも高炉に装入する前までに、例えば、各種竪形炉、ロータリーキルン、回転炉床炉などを用いて予備処理することが好ましい。そして、得られた脱リン塊鉱石はそのまま高炉装入原料として使用する他、例えば転炉やトピードカーでの溶銑予備処理や転炉の製錬で用いる場合は予め脱リン窒化処理した塊鉱石を、その後粉砕して粉・粒状とした上で使用することができる。なお、これらによる処理によって、使用に供される塊鉱石(低リン含有物質)(P:0.005−0.05mass%)は、鉄鋼製造プロセスの各段階で使用される。

0043

以下、本発明の実施形態について、回転炉床炉による塊鉱石の窒化脱リン処理によって低リン塊鉱石を得る例(実施例1)、そして得られた低リン塊鉱石を用いて、高炉や転炉、トピードカーを使って鉄鋼を製造する例(実施例2〜7)について説明する。

0044

(塊鉱石の窒化脱リン処理)
5t/hr規模の回転炉床炉に塊鉱石を装入し、加熱バーナーに供給する燃料と酸素の量とその比率、さらに窒素ガスの供給量を調整して、処理温度、酸素分圧、窒素分圧を制御した窒化脱リン処理を施した。この設備(回転炉床炉)では装入から排出までの時間が30分となるように操業条件を設定し、炉内を移動する塊鉱石が15分時点まで移動した場所の雰囲気温度の測定とガス組成分析を行った。炉内ガスについては、一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)の濃度を赤外線ガス分析装置により測定し、その残りを窒素ガスとして扱った。また、酸素分圧については、CO/CO2比測定値から、以下の式より算出した。

0045

0046

この回転炉床炉を使った塊鉱石の窒化脱リン処理の条件および実施結果について、窒素分圧ごとに表2〜表6に示した。それぞれの窒素分圧は0.2atm(表2)、0.5atm(表3)、0.9atm(表4)、0.15atm(表5)、0.95atm(表6)とした。

0047

0048

0049

0050

0051

0052

上記の表2〜6のうち、とくに表5から明らかなように、窒素分圧PN2が0.15atmにおいては、リン除去率は最大でも30%(比較例 NO.43〜48)であった。このことはつまり、窒素分圧PN2が0.15atmにおいては、雰囲気ガス中の窒素の供給が不十分であり、リンの窒化反応(a)の進行が遅く今回の処理時間の30分程度では十分にリンが除去されないことを意味している。

0053

また、表6から明らかなように、窒素分圧PN2が0.95atmにおいては、リンの除去は全く確認されなかった。その理由としては、雰囲気中のCOガス量が十分でなく、鉄鉱石の熱分解により生じる酸素、および鉄鉱石の装入口や装置の隙間から巻き込まれる空気に含まれる酸素を除去しきれなかった結果、窒化脱リン処理に必要な酸素分圧を確保できなかったためと考えられる。このことは、ガス分析においてCOガスがほとんど検出されていないことからもわかる。

0054

一方で、表2〜4に示す本発明例1〜30においては、リン除去率が60%以上と高くなっている。このことから、高いリン除去率を得るためには、窒素分圧PN2(atm)は下記式(1)の関係を満たす必要があることがわかる。
(式1)

0055

次に、表2に示す処理温度と酸素分圧の関係を図4に示す。ここで、リン除去率が60%以上を示した例(本発明例1〜10)を○で、リン除去率が10%未満の例(比較例1〜11)を×でプロットした。

0056

図4から明らかなように、処理温度と酸素分圧との関係では、下記式(2)、(3)を満たす時に高いリン除去率が得られていることがわかる。ここで、Tは処理温度(℃)、Tmは試料の融点(鉄鉱石:1370℃)である。
(式2)

(式3)

0057

上記式(2)、(3)の条件を外れた場合において、リン除去率が低い原因としては、以下の理由が考えられる。即ち、比較例1〜3は、700℃以下での処理であり、CO−CO2平衡から決まる酸素分圧では、リンの窒化除去に必要な低酸素分圧を達成できなかったと考えられる。また、比較例9〜11は、1400℃での処理であり、試料鉄鉱石の融点1370℃以上での処理であったため、試料が溶融して内部の気孔や粒間の隙間が消失した結果、界面積が大幅に低減したと考えられる。なお、比較例4〜8は、(2)式の温度範囲を満たすが、酸素分圧が(3)式を満たさず、リンの窒化除去に必要な低酸素分圧を達成できなかったためと考えられる。

0058

なお、同じ評価を表3、表4に記載の発明例11〜30、比較例12〜33に対して行うと、上記同様の結果となっており、上記式(2)および上記式(3)の条件を満たす時に60%以上の高いリン除去率が得られることがわかる。同様の設備を用い、処理時間を変更した場合にも、上記式(1)〜(3)の条件を満たす時に、高いリン除去率が得られる。

0059

(窒化脱リン処理塊鉱石を用いた高炉の操業
内容積5,000m3の高炉を用い、窒化脱リン処理を施した塊鉱石の内、10mm以上の篩い上の塊鉱石を装入原料として用いた高炉操業を行った(本発明例31〜40)。高炉装入原料の20mass%を本発明に適合する処理を施した塊鉱石、75mass%を焼結鉱、5mass%をペレットとし、還元剤比が495kg/t−溶銑となるようにコークスを装入した。高炉に装入した窒化脱リン処理済み塊鉱石と未処理の塊鉱石、焼結鉱、ペレットのそれぞれの成分組成を表7に示す。高炉装入原料およびコークスは、コンベアーによって高炉上部まで運搬し、旋回シュートを介して高炉内に落下させることで装入した。出銑比が2.0t−溶銑/m3/日となるように熱風炉を介して1,120℃の空気を供給した。比較例として、本発明に適合する窒化脱リン処理をしていない塊鉱石の内、10mm以上の篩い上のみの塊鉱石を用いた操業を行った(比較例76)。

0060

なお、塊鉱石の窒化脱リン処理としては、CO=10vol%(PCO=0.1atm)、N2=90vol%(PN2=0.9atm)の混合ガスを100リットル/分で供給し、1,000℃で1時間の処理を実施して窒化脱リン処理済みの塊鉱石とした。また、装入した塊鉱石のうちの窒化脱リン処理済み塊鉱石および未処理の塊鉱石の割合を表8に示す。

0061

0062

0063

表8に示した、溶銑P濃度と窒化脱リン処理済みの塊鉱石との配合割合との関係を図5に示す。この図5より明らかなように、窒化脱リン処理を施した塊鉱石を多く使用することで溶銑中のP濃度が低下し、その使用割合が多いほど溶銑P濃度の低下が大きかった。

0064

(窒化脱リン処理塊鉱石を用いた転炉による脱リンのための溶銑予備処理)
280t規模の転炉において、溶銑の予備処理脱リンを実施する際の副原料として、窒化脱リン処理を施した塊鉱石の内、10mm以上の篩い上を用いて操業を行った(本発明例41〜43)。溶銑装入量は280tとし、溶銑Si濃度に応じてスラグ塩基度(%CaO/%SiO2)が2.3となるように塊石灰添加量を調整した。ここで、塊鉱石および塊石灰は、転炉上部のホッパーに個別に格納しておき、必要量を切出して自然落下により炉内に装入した。操業は上吹きランスより気体酸素を吹き付け、予備処理後のC濃度が約3.0mass%となるように酸素吹き付け量を制御した。転炉に装入した溶銑成分と温度、予備処理後の溶銑成分と温度、および添加した塊石灰と塊鉱石の重量を表9に示す。使用した塊鉱石は、実施例2と同様のものであり、その成分組成は表7に示したとおりのものである。比較例として、塊鉱石を用いない操業および本発明技術による処理を未実施の塊鉱石の内、10mm以上の篩い上を用いた操業も行った(比較例77〜80)。

0065

0066

塊鉱石の添加量と溶銑予備処理前後のP濃度の変化量(ΔP濃度)の関係を図6に示す。図6から明らかなように、同じ鉄鉱石添加量であって、発明例の方がΔP濃度が大きくなっていることがわかる。これは塊鉱石中のP濃度が低いためだと考えられる。また、塊鉱石を添加していない比較例77と比べて、比較例78〜80でΔP濃度が大きくなっている。これは塊鉱石が還元される際にエネルギーが消費されて溶銑温度の低下を招き、溶銑の脱リン反応が進行しやすい低温条件となったためだと考えられる。

0067

(窒化脱リン処理塊鉱石を用いた転炉による脱炭処理)
280t規模の転炉において、脱炭処理する際の副原料として、実施例1で得られた窒化脱リン塊鉱石の内、10mm以上の篩い上を用いた操業を行った。装入する溶銑は、実施例3で得られた予備処理脱リンは未実施の溶銑(以下、「生銑」とも言う)と予備処理脱リン実施した溶銑(以下、「予備処理銑」とも言う)の2通りとした(生銑:本発明例44〜46、予備処理銑:本発明例47〜49)。溶銑装入量は280tとし、生銑を用いた操業ではスラグ中のSiO2量が12kg/tとなるように溶銑Si濃度に応じて珪石の添加を行った。一方、予備処理銑を用いた操業では、280tの溶銑に対して0.8tの珪石添加を行った。いずれの操業においても、スラグ塩基度(%CaO/%SiO2)が3.0となるように塊石灰添加量を調整した。ここで、塊鉱石、珪石、塊石灰は転炉上部のホッパーに個別に格納しておき、必要量を切出して自然落下により炉内に装入した。

0068

そして、上吹きランスから気体酸素を吹き付け、処理後のC濃度が約0.05mass%となるように酸素の吹き付け量を制御した。転炉に装入した溶銑成分と温度、予備処理後溶銑の成分と温度、および添加した塊石灰と塊鉱石重量を表10、11に示す。使用した塊鉱石は、実施例2と同様のものであり、その成分組成は表7に示したとおりのものである。比較例として、塊鉱石を用いない操業および本発明に係る脱リン処理未実施の塊鉱石の内、10mm以上の篩い上を用いた操業も行った(生銑:比較例81〜84、予備処理銑:85〜88)。

0069

0070

0071

図7図8は、生銑および予備処理銑を転炉で脱炭処理したときにおける、塊鉱石の添加量と予備処理前後のP濃度変化量(ΔP濃度)の関係を、それぞれ示したものである。この図7、8から明らかなように、生銑、予備処理銑のいずれにおいても、同じ鉄鉱石添加量において、本発明例(例44〜46、例47〜49)の方がΔP濃度が大きくなっていることがわかる。これは塊鉱石中のP濃度が低位となっているためだと考えられる。また、塊鉱石を添加していない比較例81、85と比べて、比較例82〜84、86〜88でΔP濃度が大きくなっている。これは塊鉱石が還元される際にエネルギーが消費されて溶銑温度が低下し、溶銑の脱リン反応が進行しやすい低温条件となったためだと考えられる。

0072

(混銑車にて溶銑の予備処理脱リンを行う際に脱リン塊鉱石の篩い上、篩い下の粉状鉱石を用いる例)
300t規模のトピードカー(混銑車とも言う)において、予備処理脱リンを実施する際の副原料として、本発明に適合する窒化脱リン処理を施した塊鉱石の篩い下、または篩い上の鉱石を破砕して10mm未満とした脱リン塊鉱石を破砕して得られた粉状鉱石を用いた予備脱リンの操業を行った(本発明例50〜59)。溶銑装入量は300tとし、粉石灰2.5tと粉状鉱石12.0tを予め混合した精錬剤を、窒素ガスをキャリアガスとして、トピードカー内に挿入したインジェクションランスから供給した。表12は、トピードカーに装入した溶銑の成分と温度、予備処理後の溶銑成分と温度、および添加した精錬剤重量を示したものである。使用した塊鉱石は実施例2と同様の処理を実施したものであり、成分組成は表7に示したとおりのものである。比較例として、本発明に適合する処理を施していない未処理塊鉱石の篩い下、または篩い上を破砕して10mm未満とした粉状鉱石を用いた操業も行った(比較例89)。

0073

0074

表12に示したように、処理後P濃度と処理塊鉱石配合割合の関係を図9に示す。図9より明らかなように、窒化脱リン処理を施した塊鉱石を使用することでΔP濃度が増加し、使用割合が多いほどΔP濃度増加が大きかった。また、処理前後の温度には大きな差は見られなかった。

0075

(転炉による予備処理脱リンに際し、脱リン塊鉱石の篩い上・篩い下を用いる例)
280t規模の転炉において、予備処理脱リンを実施する際の副原料として、本発明に係る窒化脱リン処理を施してなる塊鉱石の篩い下または篩い上を破砕して10mm以下とした粉状鉱石を用いた操業を行った(本発明例60〜62)。溶銑装入量は280tとし、溶銑Si濃度に応じてスラグ塩基度(%CaO/%SiO2)が2.3となるように塊石灰添加量を調整した。ここで、前記粉状鉱石は転炉脇のディスペンサータンクに格納されており、ArやN2などの不活性ガスによって搬送して、送酸用の上吹きランスから炉内に投射した。塊石灰は転炉上部のホッパーに格納しておき、必要量を切り出して自然落下により炉内に装入した。上吹きランスから気体酸素を吹き付け、予備処理後のC濃度が約3.0%となるように酸素吹き付け量を制御した。転炉に装入した溶銑成分と温度、予備処理後の溶銑成分と温度、および添加した塊石灰と粉鉱石重量を表13に示す。使用した塊鉱石は実施例2と同様の処理を施したものであり、成分組成は表7に示したとおりのものである。比較として、粉鉱石を用いない操業および本発明に係る脱リン処理未実施の粉鉱石を用いた操業も行った(比較例90〜93)。

0076

0077

図10は、塊鉱石の添加量と予備処理前後のP濃度変化量(ΔP濃度)の関係を示すものである。図10から明らかなように、同じ塊鉄鉱石添加量において、本発明例に適合する例の方がΔP濃度が大きくなっている。これは塊鉱石中のP濃度が低くなっているためだと考えられる。また、塊鉱石を添加していない比較例90と比べて、比較例91〜93でΔP濃度が大きくなっている。これは塊鉱石が還元される際にエネルギーが消費されて溶銑温度が低下し、溶銑の脱リン反応が進行しやすい低温条件となったためだと考えられる。

0078

(転炉による脱炭処理に際し、脱リン塊鉱石の篩い下、篩い上の粉を用いる例)
280t規模の転炉において、脱炭処理(精錬)を施す際の副原料として、本発明に係る窒化脱リン処理を施してなる塊鉱石の篩い下または篩い上を破砕して10mm以下とした粉状鉱石を用いて操業を行った。転炉内に装入する溶銑は、生銑、予備処理銑の2通りとした(生銑:本発明例63〜65、予備処理銑:本発明例66〜68)。溶銑装入量は280tとし、生銑を用いた操業ではスラグ中のSiO2量が12kg/tとなるように溶銑Si濃度に応じて珪石添加を行った。予備処理銑を用いた操業では、280tの溶銑に対して0.8tの珪石の添加を行った。いずれの操業においても、スラグ塩基度(%CaO/%SiO2)が3.0となるように塊石灰添加量を調整した。ここで、前記粉状鉱石は転炉脇のディスペンサータンクに格納しておき、ArやN2などの不活性ガスによって搬送して、送酸用の上吹きランスから炉内に投射した。珪石および塊石灰は転炉上部のホッパーに個別に格納しておき、必要量を切り出して自然落下により炉内に装入した。上吹きランスから気体酸素を吹き付け、処理後のC濃度が約0.05mass%となるように酸素吹き付け量を制御した。

0079

前記転炉内に装入した溶銑成分と温度、脱炭処理後の溶銑・溶鉄の成分と温度、および添加した塊石灰と粉鉱石重量を表14、15に示す。使用した塊鉱石は実施例2と同様の処理を施したものであり、成分組成は表7に示したとおりのものである。比較例として、脱リン粉鉱石を用いない操業および本発明に係る脱リン処理未実施の粉鉱石を用いた操業も行った(生銑:比較例94〜97、予備処理銑:比較例98〜101)。

0080

0081

0082

生銑および予備処理銑の脱炭処理における、鉱石の添加量と処理前後のP濃度変化量(ΔP濃度)の関係を、図11、12にそれぞれ示す。図11、12から明らかなように、生銑、予備処理銑のいずれにおいても、同じ鉄鉱石添加量において、本発明例の方がΔP濃度が大きくなっていることがわかる。これは粉鉱石中のP濃度が低いためだと考えられる。また、粉鉱石を添加していない比較例94、98と比べて、比較例95〜97、99〜101でΔP濃度が大きくなっている。これは粉鉱石が還元される際にエネルギーが消費されて溶銑温度が低下し、溶銑の脱リン反応が進行しやすい低温条件となったためだと考えられる。

0083

以上説明したとおり、鉄鋼の製錬・精錬において、リンを除去しようとすると、精錬剤としてCaOを含有する生石灰や消石灰、ドロマイトなどを添加するために、スラグが不可避に生成するが、その際、脱リン製・精錬は通常は酸化条件下で行われるので、同時に鉄も酸化されるため、スラグ中に鉄もまた不可避に取り込まれ、鉄ロスが生じて歩留りが低下する。また、鉄鋼精錬は1300〜1700℃の高温で行われるので、スラグも同等の温度とする必要があることから、エネルギーロスも発生する。

0084

一般的に、溶銑からP濃度0.001mass%相当のものまでリンを除去するためには、予備処理脱リンにおいては、CaO換算で200〜250g/t−溶銑を添加する必要があり、鉄ロス量は75〜100g/t−溶銑である。一方、転炉脱炭処理においては、CaO換算で約450g/t−溶銑を使用する必要があり、鉄ロス量は200g/t−溶銑になる。

実施例

0085

このように、鉄鋼精錬においてリンを除去するためには多量の副原料添加やエネルギーが必要である。この点、本発明では、鉄鋼製精錬プロセス用原料として用いられるリン含有物質(塊鉱石)を窒素含有ガスと反応させて、該リン含有物質中のリンを窒化除去し、そうした原料を鉄鋼製・精錬プロセスのいずれかの段階において使用することで、リン濃度の効果的な低減がなされ、前述のような多量の副原料添加やエネルギーを必要とすることなく、低リン鋼の製造が可能となる。

0086

本発明に係る技術は、例示した高炉や混銑車、転炉などを使う鉄鋼製造プロセスだけでなく、他の原料処理設備、溶銑製造用竪形炉、製鋼精錬炉などに用いても有効な方法である。

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