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課題
解決手段
概要
背景
車両の乗員に快適な移動を提供する従来の自動運転車両としては、例えば、特許文献1が知られている。この文献の要約書には、「搭乗者の車酔い状態に対応した運転制御を行うことにより、車両の搭乗者の車酔いを低減、防止して快適に乗車できる自動運転車両を提供する」ための解決手段として、「予め設定された走行計画に従って自動運転走行可能な自動運転車両1であって、車両の搭乗者の車酔い状態を検出し、その搭乗者の車酔い状態に応じて自動運転制御を実行する。これにより、車両の搭乗者の車酔いの低減、防止が行える。」との記載がある。すなわち、特許文献1では、搭乗者の車酔い状態に応じた自動運転により、乗員の車酔いを低減している。
概要
本発明は、乗員の行動に応じて自動運転の制御態様を変更することで、乗員の行動に応じた快適性の高い自動運転を実現できる車両制御システムを提供することを目的とする。 車両を自動走行させる車両制御システムであって、車両内情報に基づき乗員の位置情報及び行動情報を検出する乗員情報検出部と、該乗員情報検出部が検出した前記位置情報及び前記行動情報に基づき車両運動許容値を算出する許容値算出部と、該許容値算出部が算出した前記車両運動許容値に基づき走行予定の経路及び時間を含んだ軌道情報を生成する軌道生成部と、該軌道生成部で生成した前記軌道情報に応じて前記車両のアクチュエータに送る制御指令値を生成する自動走行制御部と、を備える車両制御システム。
目的
この文献の要約書には、「搭乗者の車酔い状態に対応した運転制御を行うことにより、車両の搭乗者の車酔いを低減、防止して快適に乗車できる自動運転車両を提供する
効果
実績
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この技術が所属する分野
請求項1
車両を自動走行させる車両制御システムであって、車両内情報に基づき乗員の位置情報及び行動情報を検出する乗員情報検出部と、該乗員情報検出部が検出した前記位置情報及び前記行動情報に基づき車両運動許容値を算出する許容値算出部と、該許容値算出部が算出した前記車両運動許容値に基づき走行予定の経路及び時間を含んだ軌道情報を生成する軌道生成部と、該軌道生成部で生成した前記軌道情報に応じて前記車両のアクチュエータに送る制御指令値を生成する自動走行制御部と、を備える車両制御システム。
請求項2
前記軌道生成部は、前記車両の前後加速度、横加速度、上下加速度、ヨーレイト、ロールレイト、ピッチレイトの少なくとも一つに関する前記車両運動許容値に基づき、前記軌道情報を生成することを特徴とする、請求項1に記載の車両制御システム。
請求項3
前記アクチュエータは、前輪操舵機構、後輪操舵機構、駆動機構、制動機構、または、サスペンション機構であり、前記自動走行制御部は、前記前輪操舵機構の前輪操舵角、前記後輪操舵機構の後輪操舵角、前記駆動機構の駆動力、前記制動機構の制動力、前記サスペンション機構の減衰力またはストローク量の少なくとも一つの制御指令値を生成することを特徴とする、請求項1に記載の車両制御システム。
請求項4
前記乗員情報検出部は、前記乗員の視線方向に関する視線情報を取得または検出し、該視線情報に基づいて前記乗員の視認対象が車両外に存在するか車両内に存在するかを推定し、前記許容値算出部は、視認対象が車両内に存在すると推定された場合には、前記視認対象が車両外に存在すると推定された場合に比べ、前記車両運動許容値を小さくすることを特徴とする、請求項1に記載の車両制御システム。
請求項5
前記乗員情報検出部は、前記視認対象が車両内に存在する映像である場合、該映像が静止画であるか動画であるかを検出または取得し、前記許容値算出部は、前記映像が静止画である場合には、前記映像が動画である場合に比べ、前記車両運動許容値を小さくすることを特徴とする、請求項4に記載の車両制御システム。
請求項6
前記乗員情報検出部は、前記動画の移動方向に基づき基準ヨーレイトを算出し、前記許容値算出部は、前記基準ヨーレイトと前記車両のヨーレイトの差が小さくなるように、前記ヨーレイトの車両運動許容値を小さくすることを特徴とする、請求項5に記載の車両制御システム。
請求項7
前記乗員情報検出部は、前記視認対象が車両内に存在する場合、前記乗員が前記視認対象を把持しているかを推定し、前記許容値算出部は、前記乗員が前記視認対象を把持している場合には、前記視認対象を把持していない場合に比べ、前記車両運動許容値を小さくすることを特徴とする、請求項4に記載の車両制御システム。
請求項8
前記乗員情報検出部は、前記乗員の身体の向きに関する乗員方向情報を取得または推定し、前記許容値算出部は、前記乗員方向情報が前記車両の進行方向情報と異なる場合には、略一致する場合に比べ、前記車両運動許容値を小さくすることを特徴とする、請求項1に記載の車両制御システム。
請求項9
前記軌道生成部は、前記横加速度の許容値が小さい場合、前記横加速度を発生させず、前記ヨーレイトのみ発生させ、前記車両をその場で回転させる前記軌道情報を生成することを特徴とする、請求項2に記載の車両制御システム。
請求項10
請求項11
前記乗員情報検出部は、乗員を特定し、前記許容値算出部は、特定した乗員に応じて、前記車両運動許容値を変更することを特徴とする、請求項1に記載の車両制御システム。
技術分野
背景技術
0002
車両の乗員に快適な移動を提供する従来の自動運転車両としては、例えば、特許文献1が知られている。この文献の要約書には、「搭乗者の車酔い状態に対応した運転制御を行うことにより、車両の搭乗者の車酔いを低減、防止して快適に乗車できる自動運転車両を提供する」ための解決手段として、「予め設定された走行計画に従って自動運転走行可能な自動運転車両1であって、車両の搭乗者の車酔い状態を検出し、その搭乗者の車酔い状態に応じて自動運転制御を実行する。これにより、車両の搭乗者の車酔いの低減、防止が行える。」との記載がある。すなわち、特許文献1では、搭乗者の車酔い状態に応じた自動運転により、乗員の車酔いを低減している。
先行技術
0003
特開2012−59274号公報
発明が解決しようとする課題
0004
車両の自動運転中は、乗員による車両運転が不要なため、運転席の乗員であっても車外前方を見ているとは限らず、読書や動画閲覧等の様々な活動を行っている可能性がある。このため、乗員の活動内容に応じて自動運転の制御態様を変更できれば、乗員の快適性を更に高めることができる。
0005
しかしながら、特許文献1は、車酔い発生後の車酔い低減を目的としたものであるため、乗員が読書等をしている場合であっても、車酔いが発生しない限り自動運転の制御態様は一様であり、乗員の行動(動画閲覧、読書等)によっては、快適な自動運転とは言えない場合もあった。
0006
そこで、本発明は、乗員の行動に応じて自動運転の制御態様を変更することで、乗員の行動に応じた快適性の高い自動運転を実現できる車両制御システムを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0007
上記課題を解決するため、本発明の車両制御性ステムは、車両を自動走行させるシステムであって、車両内情報に基づき乗員の位置情報及び行動情報を検出する乗員情報検出部と、該乗員情報検出部が検出した前記位置情報及び前記行動情報に基づき車両運動許容値を算出する許容値算出部と、該許容値算出部が算出した前記車両運動許容値に基づき走行予定の経路及び時間を含んだ軌道情報を生成する軌道生成部と、該軌道生成部で生成した前記軌道情報に応じて前記車両のアクチュエータに送る制御指令値を生成する自動走行制御部と、を備えるシステムとした。
発明の効果
0008
本発明の自動運転システムによれば、乗員の行動に応じて自動運転の制御態様を変更することで、乗員の行動に応じた快適性の高い自動運転を実現することができる。
図面の簡単な説明
0009
実施例1が適用される車両の概略構成図。
実施例1による車両制御システムの動作説明に供されるブロック図。
実施例1による乗員情報検出部の動作説明に供されるブロック図。
実施例1による乗員の視認対象が車両外に存在する場合の動作例に供される図。
実施例1による乗員の視認対象が車両内に存在する場合の動作例に供される図。
実施例1による車両進行方向と乗員方向が異なる際の動作例に供される図。
実施例1による軌道の定義を説明するのに供される図。
実施例1による自動走行制御部の動作説明に供されるブロック図。
実施例1による制御目標値の時間推移を説明するのに供される図。
実施例2の形態が適用される車両の概略構成図。
実施例2による生成軌道の動作説明に供される図。
実施例2による自動走行制御部の動作説明に供されるブロック図。
実施例3による車両制御システムの動作説明に供されるブロック図。
実施例3による基準ヨーレイト算出部の動作説明に供されるブロック図。
実施例3による車両運動制御値算出部の動作説明に供されるブロック図。
実施例4が適用される車両の概略構成図。
実施例4による車両制御システムの動作説明に供されるブロック図。
実施例4による軌道生成部の動作説明に供されるブロック図。
実施例5による車両制御システム一部の動作説明に供されるブロック図。
0010
以下、本発明の実施例について、図面を用いて説明する。
0013
この車両20の前後左右には、外界を認識する車載センサ22〜25が設置されている。これらの車載センサ22〜25は、例えば180゜視野角を持った魚眼カメラであり、これらを車両20の前後左右に設置することで、車両20の周囲に存在する他車両、自転車、歩行者、障害物等との相対距離や相対速度を検出できる。これらの車載センサは、超音波センサ、ステレオカメラ、赤外線カメラに置換しても良く、また、周囲360゜をセンシング可能なレーザレーダを車両20の天井に搭載することで、前後左右のセンサに代える構成としても良い。
0014
また、車両20内には、車両内を認識する車内センサ21が設置されている。この車内センサ21は、例えばカメラであり、車両20に乗車している乗員の位置や行動を検出できる。カメラは例えば、車両20のフロントガラスの裏側に乗員に向けて設置されている。この車内センサは、レーザレーダ、サーモグラフィカメラ、乗員に取り付けられたセンサ、座席に取り付けられたセンサに置換しても良い。
0015
内部センサ34は、車両20の走行状態を検出する検出機器である。内部センサ34は、車速センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等のセンサを含む。車速センサは車両20の速度を検出する検出器である。車速センサとしては、例えば、各車輪FL〜RRまたは車輪と一体に回転するドライブシャフト等に対して設けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ31FL〜31RRが用いられる。加速度センサは、車両20の加速度を検出する検出器である。加速度センサは、例えば、車両20の前後加速度Axを検出する前後加速度センサ、車両20の横加速度Ayを検出する横加速度センサ、車両20の上下加速度Azを検出する上下加速度センサを含んでいる。ジャイロセンサは、車両20の角速度を検出する検出器である。ジャイロセンサは、例えば、車両20のヨーレイトRy(車両上下方向を軸に回転する際の角速度)を検出するヨーレイトセンサ、車両20のロールレイトRr(車両前後方向を軸に回転する際の角速度)を検出するロールレイトセンサ、車両20のピッチレイトRp(車両横方向を軸に回転する際の角速度)を検出するピッチレイトセンサを含んでいる。
0016
車両制御システム1は、車内センサ21や車載センサ22〜25等のセンサから信号が入力され、ブレーキ制御装置26、駆動制御装置27、操舵制御装置28、サスペンション制御装置29、車載通信装置43、表示装置44に指令信号を出力するものであり、自動運転を行うシステムである。
0017
ここで、ブレーキ制御装置26は、車両制御システム1の指令信号に基づきブレーキ機構33を制御し、各輪のホイールシリンダ36FL〜36RRを通して制動力配分を調整するものである。駆動制御装置27は、車両制御システム1の指令信号に基づき駆動機構40を制御し、エンジンやモータ等の駆動用アクチュエータのトルク出力を調整するものである。操舵制御装置28は、車両制御システム1の指令信号に基づき前輪操舵機構30を制御し、車両20の進行方向を制御するものである。サスペンション制御装置29は、車両制御システム1の指令信号に基づきサスペンション機構37(前輪のサスペンション機構の図示は省略)を制御し、車両20の上下運動を制御するものである。
0018
また、車載通信装置43は、路車間または車車間の通信を行うものであるが、これに代え、記憶媒体(USBメモリ、SDカード、HDD等)の記録再生装置から必要な情報を取得する構成としても良い。表示装置44は、車両20の走行計画や動画等を表示するものであり、乗員が直接操作できるようにタッチパネル式ディスプレイ等を用いることが望ましい。
0019
図2は、車両制御システム1の要部を示すブロック図である。ここに示すように、車両制御システム1は、主に、乗員情報検出部10、許容値算出部11、軌道生成部12、自動走行制御部13を備えており、車内センサ21等から取得した車両内情報と、車載センサ22〜25等から取得した外界情報に基づいて、アクチュエータ2(具体的には、前輪操舵機構30、ブレーキ機構33、駆動機構40等)への制御指令値を生成するものである。
0020
この車両制御システム1は、実際には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、補助記憶装置、および、通信装置などのハードウェアを備えた計算機である。そして、補助記憶装置に記録されたデータベースを参照しながら、主記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、後述する各機能を実現するが、以下では、このような計算機分野での周知技術を適宜省略しながら説明する。なお、車両制御システム1は、必ずしも車両20に搭載されている必要はなく、クラウド上で制御指令値を生成するものであってもよく、また、乗員個人のスマートフォンにインストールしたアプリケーションで制御指令値を生成するものであってもよい。
0021
以下、本実施例の、乗員情報検出部10、許容値算出部11、軌道生成部12、自動走行制御部13を、順次詳細に説明する。
<乗員情報検出部10>
乗員情報検出部10は、カメラ等の車内センサ21から取得した車両内情報に基づいて、乗員の乗車位置や行動、乗員の身体が向いている方向(乗員方向DH)等を推定し、車両制御システム1の記憶装置に記憶する。乗員行動の具体例として、睡眠、読書、動画閲覧等が挙げられる。
0024
視認対象推定部10bは、視線情報推定部10aより出力される視線情報に基づいて、乗員の視認対象及び乗員の行動を検出または推定する。ここではまず、視線情報に基づいて、乗員の視認対象が車両外か車両内か判別する。
0026
一方、乗員の視認対象が車両内と推定された場合であれば、視認対象および乗員行動の詳細な判別を行う。視認対象として、例えば、本、書類、ディスプレイ、会話相手などが挙げられる。視認対象の判別方法としては、乗員視線の先にある対象物をデータベースから推定する手法や学習モデル(画像情報を入力とした深層学習等)から推定する手法が挙げられる。同時に、乗員が視認対象を把持しているか否かも判定する。また、視線情報および視認対象情報に基づいて乗員行動を推定する。これは、直接乗員行動を推定する学習モデルから乗員行動を推定してもよい。
0027
乗員方向推定部10cは、車内センサ21から得られた車両内情報に基づいて、乗員の身体がどちらの方向に向いているか(車両の進行方向DCに対する相対的な乗員方向DH)を推定する。
<許容値算出部11>
許容値算出部11は、乗員情報検出部10から取得した乗員情報(視認対象、乗員行動、乗員方向等)に基づいて、乗員に不快感を抱かせないために許容される車両運動制御値(以下、「車両運動許容値C」と称する)を決定する。この車両運動許容値Cは、具体的には、車両運動情報を表す物理量である前後加速度Ax、横加速度Ay、上下加速度Az、ヨーレイトRy、ロールレイトRr、ピッチレイトRp等の夫々についての許容値である。
0028
例えば、図4に示すように、乗員の視認対象(図中では星印で表示)が車両外に存在する場合には、乗員の乗車位置が運転席であるか後部座席であるかによらず、車両運動許容値C1〜Cnを基準値S1〜Snに設定する。基準値Sは、一般的に乗員が不快に感じる物理量の閾値であり、例えば前後加速度Axであれば±0.2Gである。なお、図4に示すように、基準値Sは低速時には車速に比例して大きくなるが、所定の速度に達した以降は、一定となるように設定されている。
0029
一方、図5に示すように、乗員の視認対象(星印)が車両内に存在する場合には、車両運動許容値Cを基準値Sより小さい抑制値S’とする。すなわち、基準値S1〜Snよりも小さい抑制値S’1〜S’nを車両運動許容値C1〜Cnに設定する。
0030
例えば、視認対象の物体が乗員により把持されている場合、前後加速度Axおよび上下加速度Azが生じることで視線のブレが生じてしまい、違和感の発生や、乗員の車酔いを誘発する可能性がある。そこで、視認対象の物体が乗員により把持されている場合(例えば読書中)においては、車両の前後加速度許容値CAx、上下加速度許容値CAzを、それぞれの基準値Sよりも小さい抑制値S’に変更する。
0031
一方、視認対象の物体が乗員により把持されていない場合、すなわち車両内に配置されているディスプレイ等を視認している場合においては、視聴するコンテンツの種類に応じて車両運動許容値Cを変更する。例えば、動画視聴時用と静止画視聴時用の抑制値S’を別個に用意しておくことで、ニュース映像視聴時と比較して、スライドショー映像視聴時には、車両運動許容値Cをより小さくする。
0032
また、図6に示すように、乗員の視認対象が車両内に存在する場合では、乗員方向DHに基づいて車両運動許容値Cを変更する。視認対象や乗員行動が等しい場合においても、進行方向DCと乗員方向DHが略一致している時と比較し、進行方向DCと乗員方向DHが異なる場合における車両運動許容値Cをより小さいものとする。例えば、図6に示すように、車両運動許容値Cの一つである前後加速度許容値CAxと横加速度許容値CAyを、進行方向DCと乗員方向DHが等しい場合の基準値SAx、SAyより小さい抑制値S’Ax、S’Ayに設定する。
<軌道生成部12>
軌道生成部12は、車載センサ22〜25から得られた外界情報(障害物情報等)と、車両運動許容値Cに基づいて、車両20が走行する軌道を定義する軌道情報生成する。ここで軌道情報とは、図7に示すように、車両が走行する経路Lと、所定位置における車両の通過時間tを含んだ情報である。なお、軌道情報は、所定位置における通過時間情報で規定するのではなく、所定位置における車速情報を規定するものでも良い。また、経路Lとは、具体的には、目標ルート上に設定された目標縦位置と目標横位置の座標が一定間隔毎に規定されたものである。
0033
許容値算出部11が算出した前後加速度許容値CAxが小さい場合、目標軌道における車両20の目標走行速度を全体的に低くする。これにより、大きな加減速が発生することなく車両20が走行することが可能となる。また、許容値算出部11が算出した横加速度許容値CAyが小さい場合、目標軌道(目標経路)の曲率を小さくする。これにより、大きな横加速度Ayが発生することなく車両20が走行することが可能となる。
0034
同様に、許容値算出部11が算出したヨーレイト許容値CRyが小さい場合、目標軌道(目標経路)の曲率を小さくする。これにより、急激なヨー運動を伴わずに車両20が走行することが可能となる。
<自動走行制御部13>
図8は、自動走行制御部13の要部を示すブロック図である。ここに示すように、自動走行制御部13は、制御目標値算出部13aと、指令値演算部13bを備えている。
0035
制御目標値算出部13aは、軌道生成部12が生成した軌道情報(経路情報、時間情報)に基づいて制御目標値Tを算出する。具体的には、図9に示すように、所望の軌道に沿って自動運転するために必要な、車両20の目標前後加速度TAx、目標横加速度TAy、目標上下加速度TAz、目標ヨーレイトTRy、目標ロールレイトTRr、目標ピッチレイトTRpを算出する。なお、軌道生成部12での軌道生成時に車両運動許容値Cが考慮されていることから、制御目標値Tは車両運動許容値Cを超えることはない。
0036
指令値演算部13bは、制御目標値算出部13aより得られた制御目標値Tに基づいてブレーキ制御装置26、駆動制御装置27、操舵制御装置28、サスペンション制御装置29に出力する制御指令値を算出する。このため、指令値演算部13bは、図8に示すように、操舵制御装置28への制御指令値を演算する前輪操舵角演算部13b1、駆動制御装置27への制御指令値を演算する駆動力演算部13b2、ブレーキ制御装置26への制御指令値を演算する制動力演算部13b3、サスペンション制御装置29への制御指令値を演算する減衰力演算部13b4やストローク量演算部13b5を備えている。
0037
制御目標値算出部13aが算出した目標前後加速度TAxを実現するには、各輪の制動力と駆動力を調整する必要がある。そのため、駆動力演算部13b2では適切な駆動力指令値を演算し、制動力演算部13b3では適切な制動力指令値を演算する。
0038
制御目標値算出部13aが算出した目標横加速度TAyを実現するには、前輪操舵角を調整する必要がある。そのため、前輪操舵角演算部13b1では適切な前輪操舵角指令値を演算し、前輪操舵機構30を動作させて、タイヤに横力を発生させ所望の横運動を実現する。この際、タイヤに発生する横力は前輪操舵角演算部13b1で算出した操舵角に大きく依存するが、ブレーキ機構33やサスペンション機構37を同時に動作させることで横加速度の調整をより精緻に行うことができる。一般的にタイヤに発生する横力は操舵角、車両横滑り角、ヨーレイト、接地加重により決定される。例えば、制動力演算部13b3により各輪の制動力を変更させた場合、各輪にかかる荷重が上手く分配することができる。これにより、各輪で発生する横力が不均一になる車両20の横運動を微調整することが可能である。また、減衰力演算部13b4、ストローク量演算部13b5により各輪の接地加重を調整することで、微調整を行うことが可能である。
0039
制御目標値算出部13aが算出した目標上下加速度TAzを実現するには、減衰力、ストローク量を調整する必要がある。そのため、減衰力演算部13b4では適切な減衰力指令値を演算し、ストローク量演算部13b5では適切なストローク量指令値を演算する。また、駆動力演算部13b2、制動力演算部13b3より車両20の前後加速度を調整することで、車両20の前輪及び後輪にかかる荷重を分配でき、上下加速度Azの調整を行うことも可能である。
0040
制御目標値算出部13aが算出した目標ヨーレイトTRyを実現するには、目標横加速度TAy同様、前輪操舵角を調整する必要がある。また、ブレーキDYC(Direct Yaw Moment Control)に代表されるように、制動力演算部13b3により算出される各輪の制動力を調整することで、車両20のヨー運動を調整することも可能である。
0041
制御目標値算出部13aが算出した目標ロールレイトTRrを実現するには、前輪操舵角演算部13b1より算出される前輪操舵角を調整する必要がある。また、減衰力演算部13b4、ストローク量演算部13b5により、左右輪の減衰力やストローク量を調整することで車両20のロール運動を調整することも可能である。
0042
制御目標値算出部13aが算出した目標ピッチレイトTRpを実現するには、目標上下加速度TAz同様、減衰力演算部13b4、ストローク量演算部13b5を調整し、車両前方と車両後方での沈み込みを調整する必要がある。また、駆動力演算部13b2、制動力演算部13b3より車両20の前後加速度を調整することにより車両20のピッチ運動を調整することが可能である。
0044
自動走行制御部13より算出された制御指令値がブレーキ制御装置26、駆動制御装置27、操舵制御装置28、サスペンション制御装置29に出力され所望の車両運動に基づいて自動運転が実現され、乗員の行動に適した走行が可能となる。
0045
以上で説明した本実施例の自動運転システムによれば、乗員の視線や行動に応じて自動運転の車両運動許容値Cを変更することで、乗員の行動に応じた快適性の高い自動運転を実現することができる。
0047
図10は、本実施例の車両制御システム1を搭載した車両20の上方から見た全体構成図であり、実施例1の車両20にインホイールモータ機構35FL〜35RRと、後輪操舵機構32を追加したものである。
0048
実施例1のブレーキ制御装置26は、各輪のホイールシリンダ36を通して制動力配分を調整していたが、本実施例のブレーキ制御装置26は、インホイールモータ機構35のモータを使用した回生ブレーキを用いて各輪の制動力配分を調整する。なお、回生ブレーキは、モータを発電機として作動させることで減速させ、その際に発電した電気を再利用することで省エネルギー化に貢献するものである。
0049
また、実施例1の駆動制御装置27は、車両制御システム1の指令信号に基づき駆動機構40(エンジンやモータ)を制御していたが、本実施例の駆動制御装置27は、車両制御システム1の指令信号に基づき各輪のインホイールモータ機構35を制御する。
0050
さらに、実施例1の操舵制御装置28は、車両制御システム1の指令信号に基づき前輪操舵機構30を制御するものであったが、本実施例の操舵制御装置28は、車両制御システム1の指令信号に基づき前輪操舵機構30、後輪操舵機構32を制御し、車両20の進行方向を制御する。なお、前輪操舵機構30及び後輪操舵機構32は左右輪の操舵角を独立に制御することも可能である。
0051
実施例1と同様、本実施例においても、許容値算出部11から出力された車両運動許容値Cに基づいて軌道を生成するが、本実施例では、インホイールモータ機構35と後輪操舵機構32が付加されたことにより生成可能な軌道がより多様化する。具体的には、後輪を前輪と同方向に操舵(同相制御)することで、車両20はヨー運動を伴わずに横運動を行うことができる。例えば、車線変更においては、車両20の姿勢角を維持したまま車線を変更できる。これにより、車両運動許容値Cの一つである横加速度の許容値が小さい場合においても、容易に軌道を生成することが可能となる。
0052
また、各輪を独立に駆動、操舵することで車両20はその場で回転することが可能となる。この際、各輪は双方向に駆動可能であることが前提である。これにより、曲率が連続的に変化する軌道を必ずしも生成する必要がない。例えば、図7に示した滑らかな経路Lだけではなく、図11に示すような、地点Pにおいてその場で回転し、進行方向を略直角に変更する経路L1も生成可能となる。
0053
図12は、本実施例の自動走行制御部13の要部を示すブロック図である。ここに示すように、自動走行制御部13は、制御目標値算出部13a、指令値演算部13bを備えている。
0054
本実施例の制御目標値算出部13aは、実施例1と同等である。一方、本実施例の指令値演算部13bは、実施例1の図8で示した構成に、操舵制御装置28への制御指令値を演算する後輪操舵角演算部13b6が追加されている。
0055
目標前後加速度TAxを調整するには、各輪の制動力と駆動力を調整する必要がある。インホイールモータ機構35を搭載した本実施例の指令値演算部13bでは、駆動力演算部13b2と制動力演算部13b3を一つの指令値演算部として取り扱うことも可能となる。
0056
目標横加速度TAyを調整するには、前輪操舵角および後輪操舵角を調整する必要がある。インホイールモータ機構35を搭載した本実施例の指令値演算部13bでは、減衰力演算部13b4、ストローク量演算部13b5により各輪の接地加重を調整することで、横加速度の微調整を行うことが可能である。
0057
実施例1と同様、目標上下加速度TAzを調整するには、減衰力演算部13b4、ストローク量演算部13b5を調整する必要がある。
0058
また駆動力演算部13b2、制動力演算部13b3より車両20の前後加速度を調整することで、車両20の前輪及び後輪にかかる荷重を分配でき、上下加速度の調整を行うことも可能である。
0059
制御目標値の一つである目標ヨーレイトTRyを調整するには、目標横加速度TAy同様、前輪操舵角演算部13b1および後輪操舵角演算部13b6を調整する必要がある。
0060
制御目標値の一つである目標ロールレイトRrを調整するには、前輪操舵角演算部13b1および後輪操舵角演算部13b6より算出される前輪操舵角を調整する必要がある。
0061
また減衰力演算部13b4、ストローク量演算部13b5により、左右輪の減衰力やストローク量を調整することで車両20のロール運動を調整することも可能である。
0062
制御目標値の一つである目標ピッチレイトTRpを調整するには、目標上下加速度TAz同様、減衰力演算部13b4、ストローク量演算部13b5を調整し、車両前方と車両後方での沈み込みを調整する必要がある。
0063
また駆動力演算部13b2、制動力演算部13b3より車両20の前後加速度を調整することにより車両20のピッチ運動を調整することが可能である。
0064
以上で説明したように、インホイールモータ機構や後輪操舵機構を付加した、本実施例の自動運転システムによっても、乗員の視線や行動に応じて自動運転の車両運動許容値Cを変更することで、乗員の行動に応じた快適性の高い自動運転を実現することができる。
0065
本発明の実施例3に係る車両制御システム1を、図13〜15を用いて説明する。なお、実施例2との共通点は重複説明を省略する。
0066
図13は、本実施例の車両制御システム1の要部を示すブロック図である。ここに示すように、本実施例の車両制御システム1は、実施例2の車両制御システム1に、基準ヨーレイト算出部14と、車両運動制御値算出部15を追加したものである。
0068
視認映像検出・取得部14aでは、車内センサ21が取得した車両内情報に基づいて、車両内で流れている動画の移動方向を検出・取得する。
0069
基準ヨーレイト演算部14bでは、視認映像検出・取得部から出力された映像情報に基づいて基準ヨーレイトを算出する。具体的には、映像の移動方向により、視線情報としてどのようなヨー運動を知覚するか等算出する。
0070
映像の移動方向は、車内センサ21の上方からリアルタイムに取得する場合と視認対象映像が事前に分かっていることから移動方向を事前取得する場合がある。車両20に備え付けのデータベースから映画などの動画を選択したい場合、クラウドから娯楽用コンテンツの動画をダウンロードした場合などは事前に映像の移動方向を取得することができる。
0071
図15は、本実施例に係る車両運動制御値算出部15の要部を示すブロック図である。ここに示すように、車両運動制御値算出部15は、車両運動制御値演算部15a、ヨーレイト差分演算部15b、車両ヨーレイト取得部15cを備えている。
0072
車両ヨーレイト取得部15cでは、内部センサ34、特にジャイロセンサから得られた車両運動情報を取得し、車両ヨーレイトを取得する。この際、ローパスフィルタ等のフィルタを用いることで車両運動情報の値を処理しても良い。
0073
ヨーレイト差分演算部15bでは、車両ヨーレイト取得部15cより出力された車両ヨーレイトと基準ヨーレイト算出部14より出力された基準ヨーレイトの差分を演算する。
0074
車両運動制御値演算部15aでは、乗員情報検出部10より出力された乗員の乗車位置とヨーレイト差分演算部より出力されたヨーレイト差分値に基づいて車両運動制御値を演算する。この際、ヨーレイト差分値が小さくなるよう車両運動を調整することが好ましい。
0075
以上で説明したように、本実施例の車両制御システム1によれば、実施例1や実施例2のように車両運動許容値Cのみを決定するのではなく、視聴映像の移動方向に乗員の車酔い防止のみならず、映像と運動が連動することにより車両内での臨場感を提供できる。
0076
本発明の実施例4に係る車両制御システム1を、図16〜18を用いて説明する。なお、上記した実施例との共通点は重複説明を省略する。
0077
図16は、本実施例の車両制御システム1を搭載した車両20の上方から見た全体構成図である。図1に示した実施例1の車両構成に加え、GPS(Global Positioning System)受信部50、地図データベース51を備えている。
0078
地図データベース51は、地図情報を備えたデータベースである。地図データベース51は、例えば、車両20に搭載されたHDD内に形成している。地図データベース51は地図情報を変更することなく所有している場合と、逐次クラウドから地図情報をダウンロードしてくる二つのケースが存在する。地図情報には、例えば、道路の位置情報、道路形状の情報(例えばカーブ、直線部の種別、車線数、カーブの曲率等)、交差点および分岐点の位置情報が含まれる。
0081
図18は、本実施例に係る軌道生成部12の要部を示すブロック図である。ここに示すように、軌道生成部12は、地図情報取得部12a、軌道情報生成部12bを備えている。
0082
地図情報取得部12aでは、車載センサ22〜25で得られた地図情報(例えば点群データにより生成される地図情報)を補完するため、地図データベースから必要な情報を取得する。例えば、渋滞時においては周辺車両が多いことから(死角になる領域が増加する)長い距離の地図を車載センサ22〜25で作成することが困難であることから地図情報取得部12aの役割が重要となる。
0083
軌道情報生成部12bでは、地図情報取得部12aから出力される地図情報と車両運動許容値Cに基づいて軌道が算出される。広範囲で精密な地図情報を用いることによって、車両20が車両運動許容値C内で走行することが可能となる。
0084
軌道が生成された後のシステム動作は、実施例1と同様である。
0085
本発明の実施例5に係る車両制御システム1を、図19を用いて説明する。なお、上記した実施例との共通点は重複説明を省略する。
0086
本実施例の車両制御システム1の大まかな構成は、実施例1と同様であるが、図19に示すように、乗員情報検出部10と許容値算出部11の構成が異なる。すなわち、乗員情報検出部10は、乗員位置情報検出部10d、乗員行動情報検出部10e、個人特定部10fを備えている。
0087
乗員位置情報検出部10dは、入力される車両内情報に基づいて乗員の位置および乗員方向を検出する。
0088
乗員行動情報検出部10eは、入力される車両内情報に基づいて乗員の行動や視認対象を検出、推定する。
0089
個人特定部10fは、入力される車両内情報から乗員が誰であるかを特定し、特定した乗員個人の好みに合った車両運動情報を取得する。個人の特定方法として、カメラによる顔認証、静脈認証などに代表される生体情報による特定方法、乗員のスマートフォンと連携した認証、ユーザによる個人情報の入力等が挙げられる。
0090
個人が特定された後、データベースから個人が好む車両運動を分析し、個人情報として出力する。またデータベースから好みを検出するのではなく、システムが学習して個人情報を形成、乗員自身に好みを入力してもらう手法を用いてもよい。
0091
許容値算出部11では、乗員位置情報検出部10dより出力された乗員位置情報および乗員方向情報、乗員行動情報検出部10eより出力された乗員行動および視認対象、個人特定部10fより出力された個人情報に基づいて許容値Cを演算する。これにより、より個人にあった軌道が車両制御システムから生成され、個々人が快適に車両内で行動を行うことができる。
実施例
0092
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるに限定させるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
0093
1車両制御システム
10乗員情報検出部
10a視線情報推定部
10b視認対象推定部
10c 乗員方向推定部
10d乗員位置情報検出部
10e乗員行動情報検出部
10f個人特定部
11許容値検出部
12軌道生成部
12a地図情報取得部
12b軌道情報生成部
13自動走行制御部
13a制御目標値算出部
13b指令値演算部
13b1前輪操舵角演算部
13b2駆動力演算部
13b3制動力演算部
13b4 減推力演算部
13b5ストローク量演算部
13b6後輪操舵角演算部
14基準ヨーレイト算出部
14a視認映像検出・取得部
14b 基準ヨーレイト演算部
15車両運動制御値算出部
15a 車両運動制御値演算部
15bヨーレイト差分演算部
15c車両ヨーレイト取得部
20 車両
21車内センサ
22〜25車載センサ
26ブレーキ制御装置
27駆動制御装置
28操舵制御装置
29サスペンション制御装置
30前輪操舵機構
32後輪操舵機構
33ブレーキ機構
35インホイールモータ機構
37サスペンション機構
40駆動機構
50GPS受信部
51 地図データベース