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課題・解決手段
概要
背景
リチウム金属バッテリ内でのポリマー電解質の使用を提案する、Armand(米国第4,303,748号)の初期の先駆的研究以降、1980年代には、膨大な試みが、ポリエーテルベースの固体ポリマー電解質リチウム蓄電池の開発に費やされてきた。Li+FSI−およびLi+TFSI−等のリチウム塩の開発は、非晶質ポリマーホストとともに、固体電解質とのより良好な伝導性を取得することを可能にした(Gauthier, M. et al. J. of Power Sources 54.1(1995):163−169)。しかしながら、1990年代初期には、リチウムイオンバッテリが、電気デバイスの安全性を改良するために開発された。しかしながら、エネルギー密度の観点から、全固体リチウム蓄電池は、依然として、非常に魅力的である(Hovington, P. et al. Nano letters 15.4(2015):2671−2678)。
リチウム金属は、その非常に高理論的比容量(3860mAh.g−1)、低密度(0.53g.cm−3)に起因して、かつリチウムが、最低電気化学電位(−3.04V対SHE)を有するため、再充電可能バッテリのための理想的アノード材料として説明される(Xu,W., et al. Energy & Environ. Sci. 7.2(2014):513−537)。全固体リチウム蓄電池は、従来の液体電解質バッテリに優る多数の利点を有する。これらの利点は、概して、より低い重量および有意により高い電力密度および比エネルギーを含む。加えて、これらのバッテリは、毒性液体電解質が環境中に漏出するリスクを排除するであろうため、より環境に優しいと考えられる。
しかしながら、リチウムは、空気中の湿気と非常に高反応性を有することに加え、不良な機械的性質を有し、材料の大部分に接着する顕著な傾向を有する、金属である。(米国第5,528,920号および米国第2017/0179491A1号)。これらは全て、特に、200μm未満の厚さが取得されるべきである場合、圧延によって、薄リチウム箔を取得することを困難にする要因である。さらに、いくつかの重要な問題は、従来のリチウム金属アノードの使用と関連付けられる。例えば、保護課題、特に、低減されたクーロン効率につながり、それによって、システムの再充電能力および性能に影響を及ぼす、繰り返されるサイクルの間のデンドライト構造の形成に関連する問題である。リチウム金属の負電極の使用に固有の別の問題は、その低融点(180.6℃)であって、これは、本融点を下回る温度における電気化学セルの使用を限定する(米国第5,705,293号)。
アノードは、概して、リチウム金属、アルミニウム−リチウム合金、または同等物等のアルカリ金属に基づく、軽金属箔から作製される。純粋または低重量パーセンテージの付加的合金化金属を含有する、固体リチウムは、容易に切断され、室温で加工され得るほど、非常に延性である。薄リチウム金属フィルムの生産は、通常、押出成形によって行われる(米国第7,194,884号の図1参照)。リチウム金属が、ダイを通して流動し、金属流動をその最終的な所望の形状へと徐々に低減させる。リチウムアノードの場合、150〜300ミクロンの厚さを有する、薄リチウム金属箔が、直接、押出成形によって取得されることができる。薄箔は、さらに積層(圧延)され、極薄リチウムフィルム(15〜50μm)を取得する(米国第5,528,920号の図1参照)。
アルミニウムまたはマグネシウムの添加は、成形プロセスの間、リチウムのレオロジーを改良する(米国第7,194,884号)。アルミニウムまたはマグネシウム含有合金(米国第5,102,475号)はまた、積層ローラの表面に殆ど接着しない。これらのリチウム合金は、極薄箔の成形の間、リチウムのレオロジーを改良する。Li−Mg合金はまた、融点を上昇させ、アノードがより高い温度に耐え、したがって、拡張された温度範囲にわたるバッテリの使用を可能にすることができる(米国第5,705,293号)。しかしながら、これらは、バッテリ寿命サイクルを有意に改良しない。本性質は、主に、リチウムと固体電解質の界面の安定性によって制御される。
リチウム金属アノードの使用を限定する、主要要因は、電極表面上のデンドライトの形成である(Xu, W. et al.Energy Environ. Sci. 7.2(2014):513−537、Steiger, P. et al. J. Power Sources 261(2014):112−119、およびJana, A. et al. J. Power Sources 275(2015):912−921)。概して、デンドライトの存在は、充電および放電サイクルの間、徐々に増加し、電極間の電気短絡またはリチウムの接続解除および電気絶縁を頻繁にもたらす。デンドライトの形成は、低速充電レート、固体電解質の使用、およびバッテリ上への一定圧縮力の印加によって、最小限にされることができる(Li, Z. et al. J. power sources 254(2014):168−182、Yang, H. et al. J. Power Sources 272(2014):900−908、およびDevaux, D. et al. J. Electrochem. Soc. 162.7(2015):A1301−A1309)。電解質、例えば、アルカリ金属イオン(K+、Na+、Rb+、Cs+)に添加される、いくつかの添加剤が、可能性として、電着に対して安定化効果を有し、デンドライトリチウム成長を低減させると説明されている(Watarai, A. et al. J. Power Sources 183(2008)724−729、Vega, J. A. et al. J. Electrochem. Soc. 156(2009)A253−A259、Stark, J.K. et al. J. Electrochem. Soc. 158(2011):A1100−A1105、Ding, F. et al. J. Am. Chem. Soc. 135(2013)4450−4456、Stark, J.K. et al.J. Electrochem. Soc. 160(2013)D337−D342、およびGoodman, J.K.S. et al. J. Electrochem. Soc. 161(2014)D418−D424)。しかしながら、電解質へのこれらのイオンの添加は、それら(MTFSI等)を含む塩の事前調製を要求し、生産コストにおける実質的増加につながる。
その結果、従来のリチウム金属アノードと比較して、以下の利点、すなわち、改良された保存性、レオロジー、電気化学性質、粒度、リチウム拡散率、より安定した不動態化層の取得、デンドライト成長の低減、アノードの融点の上昇、またはリチウム蓄電池の固有の安全性の改良のうちの少なくとも1つを提供するであろう、合金形態における電極材料の必要性が増加している。また、以下の利点、すなわち、直接単一ステップ積層(圧延)プロセス、より良好な表面仕上げ、または低減された製造コストのうちの少なくとも1つを提供する、電極材料を生産するための方法の必要がある。
概要
説明される本技術は、リチウム蓄電池内のアノードの生産のために使用されるリチウムベースの合金電極材料と、それを取得するためのプロセスとに関する。合金は、金属リチウムと、マグネシウムおよびアルミニウムから選択される、金属成分X1と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、ジルコニウム、銅、銀、ビスマス、コバルト、亜鉛、アルミニウム、シリコン、スズ、アンチモン、カドミウム、水銀、鉛、マンガン、ホウ素、インジウム、タリウム、ニッケル、ゲルマニウム、モリブデン、および鉄から選択される、金属成分X2を含む。そのように取得される電極材料を調製するためのプロセスおよびその使用もまた、説明される。
目的
その結果、従来のリチウム金属アノードと比較して、以下の利点、すなわち、改良された保存性、レオロジー、電気化学性質、粒度、リチウム拡散率、より安定した不動態化層の取得、デンドライト成長の低減、アノードの融点の上昇、またはリチウム蓄電池の固有の安全性の改良のうちの少なくとも1つを提供する
効果
実績
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請求項1
電極材料であって、合金の形態において、金属リチウムと、マグネシウムおよびアルミニウムから選択される金属成分X1と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、ジルコニウム、銅、銀、マンガン、亜鉛、アルミニウム、シリコン、スズ、モリブデン、および鉄から選択される金属成分X2とを含み、前記金属成分X2は、前記金属成分X1と異なり、金属リチウムとも異なり、前記金属リチウムは、少なくとも65重量%の濃度で存在し、前記金属成分X1は、0.1〜30重量%の濃度で存在し、前記成分X2は、0.1〜5重量%の濃度で存在し、前記材料中の成分の濃度[X1+X2]は、0.2%〜35%であり、[Li]>[X1]>[X2]である、電極材料。
請求項2
電極材料であって、合金の形態において、金属リチウムと、マグネシウムおよびアルミニウムから選択される金属成分X1と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、ジルコニウム、銅、銀、ビスマス、コバルト、亜鉛、アルミニウム、シリコン、スズ、アンチモン、カドミウム、水銀、鉛、マンガン、ホウ素、インジウム、タリウム、ニッケル、およびゲルマニウムから選択される金属成分X2とを含み、前記金属成分X2は、前記金属成分X1と異なり、金属リチウムとも異なり、前記金属リチウムは、少なくとも65重量%の濃度で存在し、前記金属成分X1は、0.1〜30重量%の濃度で存在し、前記成分X2は、0.05〜5重量%の濃度で存在し、前記材料中の前記成分の濃度[X1+X2]は、0.15%〜35%である、電極材料。
請求項3
前記金属成分X1は、マグネシウムである、請求項1または2に記載の電極材料。
請求項4
前記金属成分X1は、アルミニウムである、請求項1または2に記載の電極材料。
請求項5
前記金属成分X2は、Na、K、Zr、および希土類から選択される、請求項1−4のいずれか1項に記載の電極材料。
請求項6
前記金属成分X2は、Na、K、Rb、およびCsから選択されるアルカリ金属である、請求項1−4のいずれか1項に記載の電極材料。
請求項7
前記金属成分X2は、Mg、Ca、Sr、およびBaから選択されるアルカリ土類金属である、請求項1−4のいずれか1項に記載の電極材料。
請求項8
前記金属成分X2は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Tm、Yb、Lu、およびその混合物(ミッシュメタル等)から選択される希土類である、請求項1−3のいずれか1項に記載の電極材料。
請求項9
前記金属成分X2は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびその混合物(ミッシュメタル等)から選択される希土類である、請求項2−4のいずれか1項に記載の電極材料。
請求項10
前記金属成分X2は、Zr、Cu、Ag、Mn、Zn、Al、Si、Sn、Mo、またはFeから選択される、請求項1−4のいずれか1項に記載の電極材料。
請求項11
前記金属成分X2は、Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、またはGeから選択される、請求項2−4のいずれか1項に記載の電極材料。
請求項12
前記電極材料は、15〜300μmの厚さを有する薄箔である、請求項1−11のいずれか1項に記載の電極材料。
請求項13
前記厚さは、15〜200μmである、請求項12に記載の電極材料。
請求項14
前記厚さは、15〜100μmである、請求項12に記載の電極材料。
請求項15
前記厚さは、15〜50μmである、請求項12に記載の電極材料。
請求項16
請求項1−15のいずれか1項に規定されるような電極材料を調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、a.前記金属リチウムを前記金属成分X1とともに溶融合金槽内で溶融させることによって、合金化させるステップと、b.前記金属成分X2を前記溶融合金槽に添加するステップと、c.鋼片の形態等の押出成形に好適な形態において、(b)において取得された合金を恒久的金型内で固化させるステップとを含む、プロセス。
請求項17
請求項18
d.前記固体鋼片を圧延に好適な薄箔(100〜300μm)に変形させるステップと、e.単一ステップにおける積層によって、前記薄箔を極薄箔(15〜50μm)に変形させるステップとをさらに含む、請求項16に記載のプロセス。
請求項19
請求項20
請求項21
集電器上に適用される請求項17または18に規定されるようなプロセスのステップ(e)で取得された極薄箔を含む、アノード。
請求項22
請求項23
カソードと、電解質と、請求項20または21に規定されるようなアノードとを含む、電気化学セル。
請求項24
カソードと、電解質と、請求項16−19のいずれか1項に規定されるようなプロセスによって取得される電極材料を含むアノードとを含む、電気化学セル。
請求項25
請求項22−24のいずれか1項に規定されるような電気化学セルを含む、リチウム蓄電池。
技術分野
0001
(関連出願)
本願は、適用法令下、その内容が、あらゆる目的のために、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、2017年8月15日に出願された、カナダ特許出願第2,976,241号の優先権を主張する。
0002
本願は、電気化学セルの分野に関する。本技術は、より具体的には、リチウムベースの合金の形態における電極材料を生産するための方法と、そのように取得された合金および電極材料と、例えば、リチウムバッテリ内のアノードとしてのその使用とに関する。
背景技術
0003
リチウム金属バッテリ内でのポリマー電解質の使用を提案する、Armand(米国第4,303,748号)の初期の先駆的研究以降、1980年代には、膨大な試みが、ポリエーテルベースの固体ポリマー電解質リチウム蓄電池の開発に費やされてきた。Li+FSI−およびLi+TFSI−等のリチウム塩の開発は、非晶質ポリマーホストとともに、固体電解質とのより良好な伝導性を取得することを可能にした(Gauthier, M. et al. J. of Power Sources 54.1(1995):163−169)。しかしながら、1990年代初期には、リチウムイオンバッテリが、電気デバイスの安全性を改良するために開発された。しかしながら、エネルギー密度の観点から、全固体リチウム蓄電池は、依然として、非常に魅力的である(Hovington, P. et al. Nano letters 15.4(2015):2671−2678)。
0004
リチウム金属は、その非常に高理論的比容量(3860mAh.g−1)、低密度(0.53g.cm−3)に起因して、かつリチウムが、最低電気化学電位(−3.04V対SHE)を有するため、再充電可能バッテリのための理想的アノード材料として説明される(Xu,W., et al. Energy & Environ. Sci. 7.2(2014):513−537)。全固体リチウム蓄電池は、従来の液体電解質バッテリに優る多数の利点を有する。これらの利点は、概して、より低い重量および有意により高い電力密度および比エネルギーを含む。加えて、これらのバッテリは、毒性液体電解質が環境中に漏出するリスクを排除するであろうため、より環境に優しいと考えられる。
0005
しかしながら、リチウムは、空気中の湿気と非常に高反応性を有することに加え、不良な機械的性質を有し、材料の大部分に接着する顕著な傾向を有する、金属である。(米国第5,528,920号および米国第2017/0179491A1号)。これらは全て、特に、200μm未満の厚さが取得されるべきである場合、圧延によって、薄リチウム箔を取得することを困難にする要因である。さらに、いくつかの重要な問題は、従来のリチウム金属アノードの使用と関連付けられる。例えば、保護課題、特に、低減されたクーロン効率につながり、それによって、システムの再充電能力および性能に影響を及ぼす、繰り返されるサイクルの間のデンドライト構造の形成に関連する問題である。リチウム金属の負電極の使用に固有の別の問題は、その低融点(180.6℃)であって、これは、本融点を下回る温度における電気化学セルの使用を限定する(米国第5,705,293号)。
0006
アノードは、概して、リチウム金属、アルミニウム−リチウム合金、または同等物等のアルカリ金属に基づく、軽金属箔から作製される。純粋または低重量パーセンテージの付加的合金化金属を含有する、固体リチウムは、容易に切断され、室温で加工され得るほど、非常に延性である。薄リチウム金属フィルムの生産は、通常、押出成形によって行われる(米国第7,194,884号の図1参照)。リチウム金属が、ダイを通して流動し、金属流動をその最終的な所望の形状へと徐々に低減させる。リチウムアノードの場合、150〜300ミクロンの厚さを有する、薄リチウム金属箔が、直接、押出成形によって取得されることができる。薄箔は、さらに積層(圧延)され、極薄リチウムフィルム(15〜50μm)を取得する(米国第5,528,920号の図1参照)。
0007
アルミニウムまたはマグネシウムの添加は、成形プロセスの間、リチウムのレオロジーを改良する(米国第7,194,884号)。アルミニウムまたはマグネシウム含有合金(米国第5,102,475号)はまた、積層ローラの表面に殆ど接着しない。これらのリチウム合金は、極薄箔の成形の間、リチウムのレオロジーを改良する。Li−Mg合金はまた、融点を上昇させ、アノードがより高い温度に耐え、したがって、拡張された温度範囲にわたるバッテリの使用を可能にすることができる(米国第5,705,293号)。しかしながら、これらは、バッテリ寿命サイクルを有意に改良しない。本性質は、主に、リチウムと固体電解質の界面の安定性によって制御される。
0008
リチウム金属アノードの使用を限定する、主要要因は、電極表面上のデンドライトの形成である(Xu, W. et al.Energy Environ. Sci. 7.2(2014):513−537、Steiger, P. et al. J. Power Sources 261(2014):112−119、およびJana, A. et al. J. Power Sources 275(2015):912−921)。概して、デンドライトの存在は、充電および放電サイクルの間、徐々に増加し、電極間の電気短絡またはリチウムの接続解除および電気絶縁を頻繁にもたらす。デンドライトの形成は、低速充電レート、固体電解質の使用、およびバッテリ上への一定圧縮力の印加によって、最小限にされることができる(Li, Z. et al. J. power sources 254(2014):168−182、Yang, H. et al. J. Power Sources 272(2014):900−908、およびDevaux, D. et al. J. Electrochem. Soc. 162.7(2015):A1301−A1309)。電解質、例えば、アルカリ金属イオン(K+、Na+、Rb+、Cs+)に添加される、いくつかの添加剤が、可能性として、電着に対して安定化効果を有し、デンドライトリチウム成長を低減させると説明されている(Watarai, A. et al. J. Power Sources 183(2008)724−729、Vega, J. A. et al. J. Electrochem. Soc. 156(2009)A253−A259、Stark, J.K. et al. J. Electrochem. Soc. 158(2011):A1100−A1105、Ding, F. et al. J. Am. Chem. Soc. 135(2013)4450−4456、Stark, J.K. et al.J. Electrochem. Soc. 160(2013)D337−D342、およびGoodman, J.K.S. et al. J. Electrochem. Soc. 161(2014)D418−D424)。しかしながら、電解質へのこれらのイオンの添加は、それら(MTFSI等)を含む塩の事前調製を要求し、生産コストにおける実質的増加につながる。
0009
その結果、従来のリチウム金属アノードと比較して、以下の利点、すなわち、改良された保存性、レオロジー、電気化学性質、粒度、リチウム拡散率、より安定した不動態化層の取得、デンドライト成長の低減、アノードの融点の上昇、またはリチウム蓄電池の固有の安全性の改良のうちの少なくとも1つを提供するであろう、合金形態における電極材料の必要性が増加している。また、以下の利点、すなわち、直接単一ステップ積層(圧延)プロセス、より良好な表面仕上げ、または低減された製造コストのうちの少なくとも1つを提供する、電極材料を生産するための方法の必要がある。
0010
米国特許第4,303,748号明細書
先行技術
0011
Gauthier, M. et al. J. of Power Sources 54.1(1995):163−169
Hovington, P. et al. Nano letters 15.4(2015):2671−2678
課題を解決するための手段
0012
一側面によると、本技術は、電極材料に関し、該電極材料は、合金の形態において、
金属リチウムと、
マグネシウムおよびアルミニウムから選択される、金属成分X1と、
0014
金属成分X2は、金属成分X1と異なり、金属リチウムとも異なり、
0015
金属リチウムは、少なくとも65重量%の濃度で存在し、金属成分X1は、0.1〜30重量%の濃度で存在し、成分X2は、0.1〜5重量%の濃度で存在し、材料中の成分の濃度[X1+X2]は、0.2%〜35%であって、[Li]>[X1]>[X2]である。
別の側面によると、本技術は、電極材料に関し、該電極材料は、合金の形態において、
0016
金属リチウムと、
0017
マグネシウムおよびアルミニウムから選択される、金属成分X1と、
0018
アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、Geから選択される、金属成分X2と、
を含み、
0019
金属成分X2は、金属成分X1と異なり、金属リチウムとも異なり、
0020
金属リチウムは、少なくとも65重量%の濃度で存在し、金属成分X1は、0.1〜30重量%の濃度で存在し、成分X2は、0.05〜5重量%の濃度で存在し、材料中の成分の濃度[X1+X2]は、0.15%〜35%である。
0021
一実施形態によると、金属成分X1は、マグネシウムである。別の実施形態によると、金属成分X1は、アルミニウムである。
0022
一実施形態では、金属成分X2は、Na、K、Zr、および希土類から選択される。別の実施形態では、金属成分X2は、Na、K、Rb、およびCsから選択される、アルカリ金属である。ある実施形態では、金属成分X2は、Mg、Ca、Sr、およびBaから選択される、アルカリ土類金属である。別の実施形態では、金属成分X2は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびその混合物(ミッシュメタル等)から選択される、希土類群からの金属である。別の実施形態では、金属成分X2は、Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Ti、Ni、またはGeから選択される。
0023
実施例によると、電極材料は、15〜300μmの厚さを有する、極薄箔である。例えば、厚さは、15〜200μm、または15〜100μmである、または厚さは、15〜50μmである。
別の側面によると、本技術は、本明細書に定義されるような電極材料を調製するためのプロセスに関し、該プロセスは、以下のステップ、すなわち、
0025
b.金属成分X2を溶融合金槽に添加するステップと、
0027
d.固体鋼片を圧延に好適な薄箔(100〜300μm)に変形させるステップと、
0028
e.圧延によって、薄箔を極薄箔(15〜50μm)に変形させるステップと、
を含む。
0029
別の実施形態では、合金固化ステップは、恒久的金型内においてある制御されたレートで実施される。
0030
別の側面によると、本技術は、集電器上に適用される、本明細書に定義されるような電極材料を含む、アノードに関する。例えば、本技術は、集電器上に適用される、上記に定義されるようなプロセスのステップ(e)で取得されるような極薄箔を含む、アノードに関する。
0031
さらに別の側面によると、本技術は、カソードと、電解質と、アノードとを含む、電気化学セルに関し、アノードは、本明細書に定義されるような電極材料を含む。例えば、電気化学セルは、カソードと、電解質と、前段落において定義されるようなアノードとを含む。別の実施例によると、電気化学セルは、カソードと、電解質と、本明細書に定義されるようなプロセスによって取得される電極材料を含む、アノードとを備える。
0032
最後の側面によると、本技術は、本明細書に定義されるような電気化学セルを備える、リチウム蓄電池に関する。
図面の簡単な説明
0035
図3は、実施例5のセル1上で記録される電気化学インピーダンス測定値を示す。
0037
図5は、0.6mA/cm2、0.7mA/cm2、および0.8mA/cm2の電流密度における、実施例5のセル1(塗り潰された円形マーカを伴う線)、セル2(塗り潰されていない円形マーカを伴う線)、セル3(塗り潰された正方形マーカを伴う線)、およびセル4(塗り潰されていない正方形マーカを伴う線)に関する短絡時間の結果を示す。
実施例
0038
本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語および表現は、本技術に関連する当業者によって一般に理解されるものと同一定義を有する。なお、使用されるいくつかの用語および表現の定義は、下記に提供される。
0039
本書において使用されるような用語「約」は、それに近似的である、その領域内にある、またはその周囲であることを意味する。用語「約」が、数値に関連して使用されるとき、これは、その公称値を10%上回るおよび下回る変動だけ修飾する。本用語はまた、例えば、測定装置の実験誤差または丸め操作を考慮し得る。
0040
値の範囲が、本願に述べられるとき、範囲の下限および上限が、別様に示されない限り、常時、定義内に含まれる。
0041
本書において使用されるような表現「リチウムと親和性がある」は、リチウムとの化学反応の不在、または電気化学セルのリチウム/電解質界面における電気化学交換に有害ではない不動態化フィルムの形成につながる、限定された化学反応を意味する。用語「リチウムと親和性がある」が、カソード材料を参照して使用されるとき、これは、電気化学的に親和性があって、アノードのものと反対極性である、カソード材料を指す。
0042
本願は、金属リチウムと、少なくとも2つの付加的金属成分X1およびX2とを含む、電極材料を説明する。金属成分X1は、マグネシウムまたはアルミニウム(MgまたはAl)である。金属成分X2は、アルカリ金属(X2=Na、K、Rb、またはCs)、アルカリ土類金属(X2=Mg、Ca、Sr、またはBa)、希土類(X2=Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、またはその混合物、例えば、ミッシュメタル)、および遷移金属(X2=Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、Ge、Mo、またはFe)から選択され、金属成分X2は、金属リチウムおよび金属成分X1と異なる。例えば、成分X1は、マグネシウムであって、成分X2は、Na、K、Zr、Al、および希土類から選択される。別の実施例では、成分X1は、アルミニウムであって、成分X2は、Na、K、Mg、Zr、および希土類から選択される。別の実施例によると、成分X2は、Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、およびGeから選択される。
0043
一実施形態では、材料は、三元合金から成り、有意な濃度における任意の付加的元素の存在を除外することを意味する。一実施例によると、三元合金は、0.1%以上の濃度における付加的元素を含まず、好ましくは、三元合金は、0.05%以上の濃度における付加的元素を含まない。
0044
本願はまた、本明細書に定義されるように、合金の形態において、金属リチウムと、金属成分X1(X1=MgまたはAl)と、金属リチウムおよび金属成分X1と異なり、アルカリ金属(X2=Na、K、Rb、またはCs)、アルカリ土類金属(X2=Mg、Ca、Sr、またはBa)、希土類(X2=Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、またはミッシュメタル)、および遷移金属(X2=Zr、Cu、Ag、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、Ge、Mo、またはFe)から選択される、電気化学セル内のアノードとしての使用のための金属成分X2とを含む電極材料を生産するためのプロセスを提案する。
第1の実施形態によると、本願は、以下のステップ、すなわち、
0045
a.金属リチウムを金属成分X1とともに溶融槽内で溶融させることによって、組み合わせ、合金を形成するステップと、
0046
b.金属成分X2を溶融合金槽に添加するステップと、
0047
c.恒久的金型内において、鋼片の形態で合金を制御固化させるステップ(合金化元素の隔離を回避するため)と、
0048
d.随意に、鋼片を室温で押出成形し、薄箔(100〜600μm、または100〜500μm、または100〜400μm、またはさらに100〜300μm)を取得するステップと、
0049
e.随意に、例えば、単一ステップにおいて、薄箔を室温で圧延し、15〜200ミクロン、または15〜150ミクロン、または15〜100ミクロン、またはさらに15〜50ミクロンの厚さを有する、極薄箔を取得するステップと、
0050
f.随意に、極薄箔をリチウム蓄電池内のアノードとして使用するステップと、
を含む、リチウムベースの合金の形態における、電極材料を生産するためのプロセスを説明する。
I.溶融による組み合わせプロセス
0051
一実施形態によると、金属リチウムと、マグネシウムまたはアルミニウムと、金属成分X2とを含む合金が、180℃を上回る温度で溶融させることによって調製され、従来の冶金技法を使用し、リチウムの製造に関する通常の注意事項を配慮しながら、鋳造される。組成物は、商業的に純粋な材料から作製される。本溶融は、1つ以上のステップにおいて実施されてもよい。例えば、リチウムは、ともにまたは別個に添加され得る、他の金属成分を添加する前に、最初に、溶融されてもよい。例えば、金属リチウムが、最初に、溶融され、次いで、成分X1が、添加され、第1の二元合金を形成し、成分X2が、次いで、添加され、三元溶融合金を形成する。
II.固化プロセス
0052
合金固化は、制御様式において温度を低下させることによって実施される。固化は、恒久的金型内において遂行され、固化の間の隔離現象を防止する。したがって、液体金属混合物の温度は、液相温度の近傍に低下され、次いで、流率を調節し、最小量の液体合金を恒久的金型内に維持することによって、固相温度を下回って急速に低下される(相図計算に関しては、Bale, C. W. et al. Calphad 33.2(2009):295−311参照)。恒久的金型の形状は、押出成形に好適な鋼片形状を取得するように選択される。一実施例によると、金型の形状は、6インチの直径の円筒形電極材料鋼片を取得することを可能にする。
III.電極材料組成物
0053
ある側面によると、合金は、金属リチウムと、金属成分X1(X1=MgまたはAl)と、金属成分X2とを含む。例えば、金属成分X2は、アルカリ金属(Na、K、Rb、またはCs等)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、またはBa等)、希土類(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、またはそれらの混合物、例えば、ミッシュメタル等)、および遷移金属(Zr、Cu、Ag、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、Ge、Mo、またはFe等)から選択される。金属成分X2は、金属リチウムおよび金属成分X1と異なる、すなわち、X1が、アルミニウムである場合、X2は、アルミニウムと異なり、X1が、マグネシウムである場合、X2は、マグネシウムと異なる。例えば、成分X1は、マグネシウムであって、成分X2は、Na、K、Zr、Al、および希土類から選択される。別の実施例では、成分X1は、アルミニウムであって、成分X2は、Na、K、Mg、Zr、および希土類から選択される。金属リチウム、金属成分X1および金属成分X2は全て、商業的に純粋である(≧99.9%)。
0054
合金は、金属成分X1([Li]>[X1])およびX2([Li]>[X2])の濃度を上回る濃度における、金属リチウムを含む。一実施例によると、合金は、金属成分X1(それ自体は、金属成分X2の濃度を上回る)のものを上回る濃度における、金属リチウムを含む([Li]>[X1]>[X2])。リチウムは、65〜99.8重量%、例えば、65〜98重量%、または例えば、70〜98重量%、または65〜80重量%、65〜90重量%、または75〜98重量%、または75〜95重量%、または80〜98重量%等の濃度において、合金内に存在する。金属成分X1は、0.1〜30重量%、例えば、1〜30重量%、または例えば、1〜25重量%、または1〜15重量%、または5〜20重量%、または5〜15重量%、または10〜30重量%、または10〜20重量%の濃度を有する。金属成分X2(例えば、X2=Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタル、Zr、Cu、Ag、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、Ge、Mo、またはFe)は、0.05〜5重量%、例えば、0.1〜5重量%、0.5〜5重量%、または例えば、1〜5重量%、または2〜5重量%、または0.05〜3重量%、または0.1〜3重量%、または0.5〜3重量%の濃度で存在する。合金材料中の添加剤の濃度[X1+X2]は、リチウムの濃度未満、例えば、0.15%〜35重量%、例えば、0.2%〜35重量%、または2%〜35重量%、または2〜30重量%、10〜35重量%、20〜35重量%、2〜25重量%、5〜25重量%、または2〜20重量%である。一実施例によると、合金の総組成物は、[Li]+[X1]+[X2]=100%になるようなものである。本総100%はまた、3つの元素の相対的純度(それぞれ、実質的に純粋、すなわち、商業的に純粋である)を考慮してもよい。
0055
金属成分X1およびX2の濃度は、積層(圧延)の間のリチウム合金のレオロジー挙動または電気化学サイクル結果(不動態化層の安定性およびデンドライト成長)のいずれかを最適化するために選択される。
0058
金属成分X2は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムまたはルテチウム、およびミッシュメタルを含む、希土類から選択されてもよい。
0059
最後に、金属成分X2は、Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、Ge、Mo、またはFeから選択されてもよい。金属成分X2は、金属成分X1と異なる。
IV.押出成形プロセス
0060
一実施形態によると、電極材料から作製される、鋼片が、従来の様式において、例えば、油圧プレスを使用して押出成形され、約100〜300ミクロンの厚さを有する、薄箔を取得する。合金鋳塊に印加される圧力は、明らかに、合金の可塑性に依存するが、6インチの直径の鋼片に関して、通常、100〜500トンで変動する(米国第7,194,884号)。押出成形の間の鋼片の実質的変形は、合金の化学均質性を改良する。
V.積層(圧延)プロセス
0061
箔の厚さは、室温および乾燥空気下で積層(圧延)し、極薄箔を取得することによって低減される。積層は、従来の方法を使用して、例えば、2つの作業ロール間において、十分な圧力、速度、および角度下において実施され、フィルムの厚さを低減させ、例えば、約15μm〜50μmの厚さを有する、極薄箔を取得する。本実施形態による積層は、単一連続ステップにおいて、最大50m/分、好ましくは、最大20m/分の圧延速度で実施されてもよい(米国第5,528,920号)。箔の厚さの著しい低減は、合金を加熱させ、その構造の歪み硬化および再結晶化によって均質化を可能にする。積層ステップはまた、箔の表面仕上げおよびその結晶性構造の粒度に有意に影響を及ぼす。
VI.対称および電気化学セル
0062
本明細書で生産されるような電極材料から作製される、合金の極薄箔は、電気化学セルの製造のために有用である。例えば、電気化学セルは、少なくとも1つのカソードと、本技術の電極材料(例えば、極薄箔の形態における)を含む、1つのアノードと、カソードとアノードとの間に位置する、電解質とを備える。
a.カソード
0063
本願は、デンドライト成長に対する種々のリチウム合金の性能を査定するための対称セル、すなわち、リチウム合金アノード(およびカソード)の使用を説明する。代替として、本願は、電気化学的に活性のカソード材料としてのリン酸鉄リチウム(LFP)と組み合わせた極薄リチウムベースの合金箔(アノード)の使用を説明する。
0064
しかしながら、説明されるアノードは、リチウムと親和性がある任意の活性材料を有する、電気化学バッテリにおいて使用され得る。電気化学的に活性なカソード材料の非限定的実施例は、金属リン酸塩およびリチウム金属リン酸塩(例えば、LiM’PO4およびM’PO4であって、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはそれらの組み合わせである)、酸化バナジウム(例えば、LiV3O8、V2O5F、LiV2O5、および同等物)、およびLiMn2O4、LiM’’O2(M’’は、Mn、Co、Ni、またはそれらの組み合わせである)、Li(NiM’’’)O2(M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、および同等物またはそれらの組み合わせである)等の他のリチウム金属酸化物、または相互およびリチウムアノードと親和性があるとき、上記の材料の2つ以上のものの組み合わせを含む。例えば、カソード活性材料は、リン酸鉄リチウム(LFP)である。カソード活性材料はまた、随意に、例えば、有機前駆体の熱分解によって取得される、炭素でコーティングされた粒子の形態であってもよい。
0065
カソードの電気化学的に活性な材料はまたさらに、電子伝導性材料、例えば、カーボンブラック、Ketjen(登録商標)ブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンファイバ、カーボンナノファイバ(例えば、VGCF)、またはカーボンナノチューブ等の炭素源を含んでもよい。例えば、活性材料は、アセチレンブラックおよびVGCFを含む。
0067
本願は、電気化学セルまたはリチウムバッテリ、例えば、全固体リチウム蓄電池内の固体ポリマー電解質と併用され得る、リチウムフィルムを説明する。しかしながら、これは、純粋リチウム電極の使用または本願のリチウム合金と親和性があることを前提として、任意の液体、ゲルポリマー、または固体ポリマー電解質と併用されてもよい。
0068
固体ポリマー電解質の非限定的実施例は、1つ以上の随意に架橋結合された極性固体ポリマーと、少なくとも1つの塩、例えば、LiTFSI、LiPF6、LiDCTA、LiBETI、LiFSI、LiBF4、LiBOB等のリチウム塩とを含んでもよい。ポリ(エチレンオキシド)(PEO)に基づくもの等のポリエーテルタイプポリマーが、使用されてもよいが、いくつかの他のリチウム親和性ポリマーもまた、固体ポリマー電解質を生産するために公知である。
0069
親和性がある液体電解質は、限定ではないが、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、炭酸ビニル(VC)、およびそれらの混合物等の極性非プロトン性溶媒と、リチウム塩とを含む有機液体電解質を含む。親和性がある液体電解質の他の実施例は、LiCl、LiBr、LiF、およびそれらを含む組成物等のリチウム塩、または有機塩を含む、溶融塩電解質を含む。
0070
親和性があるゲル型ポリマー電解質は、必要に応じて、例えば、ポリマー前駆体およびリチウム塩、非プロトン性極性溶媒、および重合/架橋結合開始剤を含んでもよい。そのようなゲル電解質の実施例は、限定ではないが、第WO2009/111860A1号および第WO2004/068610A2号に説明される、ゲル電解質を含む。液体電解質のようなゲル電解質は、ポリマーセパレータ等のセパレータを含浸させることができる。
0072
別の側面によると、アノードは、好ましくは、集電器上に適用される、薄または極薄箔の形態における、本明細書に定義されるような材料を含む。集電器の実施例は、銅またはニッケルを含む。しかしながら、金属リチウムまたは本願の合金と親和性がある、他のタイプの集電器もまた、使用され得る。
0073
一実施例によると、本願の電気化学セルは、パウチ型セルであって、以下の要素、すなわち、可塑化およびアルミ被覆されたパウチと、接続のための2つの端子タブと、2つの集電器と、カソードと、画定されたサイズを有するマスクと、電解質と、リチウム合金アノードとを備える。パウチ型セルアセンブリの概略は、図1に示される。代替として、本願のセルは、図2に説明されるように、パウチ型対称セルであって、以下の要素、すなわち、可塑化およびアルミ被覆されたパウチと、接続のための2つの端子タブと、2つの集電器と、画定されたサイズを有するマスクと、電解質と、2つのリチウム合金電極とを備える。
0074
Brissotの博士論文(Brissot, C. Ecole Polytechnique, Palaiseau, 1998)に説明されるように、デンドライト成長が、カソード関連問題を克服するために、2つのリチウム電極と、ポリマー電解質(PEOおよびLiTFSI)とを備える、図2に示されるような対称セルにおいて研究された。
0075
これらのセルは、数平方センチメートルのオーダーの小表面積上に産業バッテリの幾何学形状を再現する。フィルム形態における要素は、平坦にスタックされ、22.2mmポリプロピレンマスクを介挿され、これは、電解質に暴露される電極の活性表面(3.8cm2)を明確に境界し、電極間の可能性として考えられる内部短絡を防止する。
0077
別の側面によると、本願の電気化学セルは、ハイブリッドまたは電気車両またはポータブル電子デバイスにおいて使用される。
(実施例)
0079
1.8kgのLi−Al0.2ベース合金が、最初に、全ての三元合金融合バッチおよび二元合金基準を行うために調製される。本リチウムベースの合金は、アルミニウム(0.2重量%)が存在する場合、金属リチウム(99.8重量%)と成分X1を組み合わせることによって調製された。
0080
合金は、5.5kWの電力を有し、中心開口部を有する、蓋と、316Lステンレス鋼るつぼと、316L可撤性機械的攪拌器とを装備する、傾動抵抗溶鉱炉から成る、溶融システム内で調製される。溶融システムは、リチウム合金を汚染させ得る任意の反応を回避するために、アルゴン不活性大気下、グローブボックス内に配設される。二元液体混合物の固化は、316Lステンレス鋼から作製され、6インチ内径を有する、恒久的円筒形型金型内で実施される。
0081
1.8kgの純粋リチウム(99.95%Li、FMCLithium(登録商標))が、最初に、るつぼ内に導入され、溶鉱炉蓋が、降下された。固体リチウム装填量が、次いで、溶鉱炉の電力を徐々に増加させることによって溶融され、液体リチウムの温度は、最大300℃まで増加される。機械的攪拌器が、次いで、蓋開口部を通して降下され、液体質量の低速攪拌が、開始される。3.6gの量の粒状アルミニウム(99.9%Al、Aldrich)が、機械的撹拌を維持しながら、蓋開口部を通して、液体槽に添加される。攪拌は、30分の周期にわたって維持され、アルミニウム顆粒を溶解させ、液体混合物の均質化を可能にする。機械的攪拌器は、次いで、除去され、抵抗溶鉱炉が傾動することを可能にする。抵抗溶鉱炉は、徐々に傾動され、溶融金属を金型の中に一定レートで5分の周期にわたって傾注する。恒久的金型の上側開口部は、次いで、熱絶縁体を使用して被覆され、合金は、完全に固化し、室温まで冷却することを可能にされた。
0082
いったん冷却されると、1.8kgの鋼片が、金型から除去され、両端が、帯鋸を用いて切断される。鋼片は、次いで、約300μmの厚さを有する薄箔(米国第7,194,884号)を形成し、三元合金を生産するためのベースとしての役割を果たし得る、均質二元合金を取得するために、500トンの油圧プレスを使用して、無水チャンバ内において室温で押出成形される。
0084
1.8kgの量の二元Li−Mg10ベース合金が、実施例1(a)に説明されるように、溶融システムを使用して調製される。本リチウムベースの合金は、金属リチウム(90重量%)と金属成分X1、この場合、マグネシウム(10重量%)を組み合わせることによって調製された。
0085
1,62kgの純粋リチウム(99.95%Li、FMCLithium(登録商標))が、最初に、るつぼ内に導入され、溶鉱炉蓋が、降下される。固体リチウム装填量が、次いで、溶鉱炉の電力を徐々に増加させることによって溶融され、液体リチウムの温度は、最大300℃まで上昇される。機械的攪拌器は、次いで、蓋開口部を通して降下され、液体質量の低速攪拌が、開始される。180gの量の粒状マグネシウム(99.9%Mg、Aldrich)が、30分の周期にわたって、蓋開口部を通して、液体槽に添加される。いったんマグネシウム添加が、完了されると、合金温度は、300℃まで上昇され、攪拌は、30分の周期にわたって維持され、マグネシウム顆粒を完全に溶解し、液体混合物の均質化を可能にする。機械的攪拌器は、次いで、除去され、抵抗溶鉱炉が傾動することを可能にする。抵抗溶鉱炉は、溶融金属を金型の中に一定レートで5分の周期にわたって傾注するために、徐々に傾動される。恒久的金型の上側開口部は、次いで、熱絶縁体を使用して被覆され、合金は、完全に固化し、室温まで冷却することを可能にされる。
0086
いったん冷却されると、1.8kgの鋼片が、金型から除去され、両端が、帯鋸を用いて切断される。鋼片は、次いで、約300μmの厚さを有する薄箔(米国第7,194,884号)を形成し、三元合金を生産するためのベースとしての役割を果たし得る、均質二元合金を取得するために、500トンの油圧プレスを使用して、無水チャンバ内において室温で押出成形される。
0087
ICP−OESによる化学分析が、二元Li−Mg10合金薄箔上で実施され、10.8重量%のマグネシウム含有量が、取得された。
(実施例2)
三元合金電極材料の調製
(a)三元Li−Al0.2−Na0.2合金
0088
三元合金は、溶融プロセスを介して、実施例1(a)に従って調製された44.8gの二元合金と0.095gの金属成分X2、この場合、ナトリウム(0.2重量%)を組み合わせることによって調製される。
0089
本合金のための溶融システムは、ステンレス鋼304から作製される閉鎖された円筒形るつぼ内に設置される、20kWの電力を有する、抵抗溶鉱炉から成る。閉鎖された円筒形るつぼは、3つの部品、すなわち、2インチの内径を有する中空容器と、平坦蓋と、攪拌器としての役割を果たす十字形ロッドを装備する第2の蓋とから成る。蓋は、容器の両端を銅ガスケットでシールされる。13μm厚の302ステンレス鋼箔(Lyon Industries(登録商標))が、平坦蓋上に設置され、固化の間、合金と蓋の接着を限定する。
0090
円筒体は、ヘリウム不活性大気下、グローブボックスの内側に設置され、リチウム合金を汚染し得る任意の反応を防止する。銅ガスケットは、しっかりと緊締され、液体リチウム漏出の不在を確実にする。アセンブリは、閉鎖されたるつぼが、抵抗溶鉱炉内で転動されることを可能に、したがって、液体金属の断続撹拌を可能にするように設置される。閉鎖されたるつぼは、溶鉱炉内に300℃で3時間にわたってそのままにされる。るつぼは、次いで、溶鉱炉から除去され、円筒形三元リチウム合金鋳塊を固化させるために、平坦蓋側上に堆積される(ステンレス鋼箔側が下向きに面する)。
(b)他の三元合金
0091
いくつかの他の三元Li−X1−X2合金が、実施例2(a)に類似する様式において調製された。表1は、調製および試験された三元合金を要約する。
0092
(実施例3)
押出成形によるリチウムベースの合金薄箔の調製
0093
実施例1および2の合金毎に、鋳塊を搬送するるつぼの中空容器が、無水室(露点<−40℃)内の押出成形デバイスの中に組み立て直される。鋳塊は、次いで、乾燥空気中の室温で、100トン油圧プレスを使用して、薄リボン形態(約600μm厚および40mm幅)において押出成形される。
(実施例4)
積層によるリチウムベースの合金薄および極薄箔の調製
0094
実施例3から押出成形されたリボンは、次いで、無水チャンバ(露点<−40℃)内で室温で、宝石職人の圧延機を使用して圧延され、単一ステップにおいて、200μmの厚さを有する薄リボンを取得する。例えば、圧延は、リチウムリボンの表面仕上げを有意に改良する(米国第5,528,920号)。
(実施例5)
セルの調製
0095
一実施例によると、実施例4の二元(Li−X1)および三元(Li−X1−X2)合金箔は、パウチ型対称セルの製造において使用される。本実施例の対称セルは、以下の要素、すなわち、可塑化アルミ被覆されたパウチと、接続のための2つのニッケル端子タブと、2つのニッケル集電器と、2つのリチウム合金電極と、画定されたサイズを有するマスクと、固体ポリマー電解質とを備える。対称パウチ型セルアセンブリの概略は、図2に示される(Rosso, M. et al. Electrochim. Acta 51.25(2006):5334−5340)。
(a)電極
0096
電極(正および負)は、ニッケル集電器上に支持される、表1による同一リチウム合金から成る。
(b)電解質
0097
また、セパレータとしての役割も果たす、固体ポリマー電解質は、その中にリチウム塩(CF3SO2)2NLi(またはLiTFSI)が30:1のO:Li比率(Oは、コポリマー中の酸素原子の数である)で溶解される、エチレンオキシドコポリマーから成る。特許(米国第4,578,326号および米国第4,758,483号)は、使用され得る、コポリマーの非限定的実施例を説明する。これらのコポリマーは、要求される場合、当技術分野において公知の任意の方法によって架橋結合されてもよい。電解質はまた、取外可能支持体上へのコーティング後、電極上への輸送が続くことによって取得される。
(c)マスク(または隠蔽体)
0098
28μm厚のポリプロピレンマスクは、7/8インチの直径(22.23mm)の円形開口部を有する。マスクは、したがって、3.879cm2の有効電極表面を暴露させる。
(d)セル
(セル1)
セル1(基準:二元合金)と称される、第1の対称セル実施例は、以下の要素を備える。
Ni/Li−Al0.2(200μm)/電解質(46μm)/Li−Al0.2(200μm)/Ni
(セル2)
セル2(三元合金)と称される、第2の対称セルは、以下の要素を備える。
Ni/Li−Al0.2−Na0.2(200μm)/電解質(46μm)/Li−Al0.2−Na0.2(200μm)/Ni
(セル3)
セル3(基準:二元合金)と称される、第3の対称セル実施例は、以下の要素を備える。
Ni/Li−Mg10(200μm)/電解質(46μm)/Li−Mg10(200μm)/Ni
(セル4)
セル4(三元合金)と称される、第4の対称セルは、以下の要素を備える。
Ni/Li−Mg10−Na0.2(200μm)/電解質(46μm)/Li−Mg10−Na0.2(200μm)/Ni
(実施例6)
対称セルのリチウム電気化学性質
0099
電気化学測定が、80℃の温度で、周波数分析器を装備するVMP−3ポテンショスタット(Biologics)を使用して、実施例5の電気化学セル上で実施された。
(a)ポテンショスタット電気化学インピーダンス分光法(PEIS)
0100
ポテンショスタット電気化学インピーダンス分光法(PEIS)は、正弦波(ΔΕ=5mV)をセルの開回路電位(Eoc)に対して設定された電位(E=0)の周囲に印加することによって、ポテンショスタットモードにおいて、インピーダンス測定を実施する。
0101
接点の「品質を測定する」単純方法は、インピーダンス測定を対称セル上で実施することである。低振幅交流電圧Ε+ΔΕが、ある周波数範囲(1MHz〜1mHz)にわたって回路に印加される。セル内を通過する、電流iの測定は、セルのインピーダンスZを決定し、特に、種々のセル要素の寄与を区別することを可能にする。電解質(Re)および界面(Ri)の抵抗は、ナイキストプロット(−lm(Z)対Re(Z)のグラフ)(図3)から測定される。
0102
対称セルの電気化学インピーダンス測定が、PEISによって、周波数範囲1MHz〜1mHzにわたって、E=0対Eocの電位および5mVの振幅ΔΕを用いて行われた(図3)。8.6オームの界面(Ri)の抵抗が、図3において対称セルに関して取得された。セルアセンブリの品質は、界面抵抗値の再現性によって評価された。
(b)定電流分極
0103
リチウム電鍍の間の電流密度は、デンドライトの形成および成長に有意な影響を及ぼす。概して、より低い電流密度は、比較的に安定したサイクルになり、逆に、高電流密度は、再充電可能Li−金属バッテリの劣化プロセスを加速させる。したがって、対称セルが、一定電流密度(j)を使用して分極されると、2つのタイプの挙動が、観察され得る。
0104
・j>J*の場合、ある時間(Sandの時間)後、発散する。
0106
式中、nは、リチウムの電荷数(n=1)であって、Fは、Faraday定数であって、Cは、電解質中の初期LiTFSI濃度であって、Dは、LiTFSIの両極性拡散係数であって、tcは、Li+のカチオン輸率であって、Lは、電極間距離である(Brissot,C. et al. J. of Power Sources 81−82(1999):925−929)。
0107
印加される電流密度は、イオン濃度勾配につながるため、高電流密度は、負の電極レベルでは、Sandの時間(τs)におけるリチウムデンドライトの形成によって、ほぼゼロイオン濃度になる。
0108
式中、nは、リチウムの電荷数(n=1)であって、Fは、Faraday定数であって、Cは、電解質中の初期LiTFSI濃度であって、Dは、LiTFSIの拡散係数であって、tcは、Li+のカチオン輸率であって、jは、対称セルに印加される電流密度である(Reddy, T.B. Linden’s Handbook of Batteries, 4th Edition, McGraw−Hill Education, 2010)。
0109
低電流密度は、最小限かつ安定したイオン濃度勾配につながり、したがって、リチウムデンドライトは、本条件下では、形成されないはずである。しかしながら、実験結果は、明確に、リチウムデンドライトが依然として存在することを示す(図4)。電位が低下し始めた後の時間、すなわち、短絡時間(tsc)が、記録され得る(Rosso, M. et al. J. of Power Sources 97−98(2001):804−806)。したがって、デンドライト成長に関する新しいものの性能を測定するために、本短絡時間を使用することが可能性として考えられる(図5)。
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