図面 (/)

この項目の情報は公開日時点(2020年10月29日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (13)

課題・解決手段

本発明は、主要組織適合性複合体MHC)関連ウイルスペプチドエピトープに特異的なT細胞受容体(TCR)に由来する結合領域と、前記細胞表面抗原に特異的に結合するヒト免疫エフェクター細胞動員できる抗体に由来する結合領域とを提供する、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含んでなる二重特異性ポリペプチド分子、ならびに二重特異性ポリペプチド分子を製造する方法、およびその使用に関する。

概要

背景

分子クローニング技術の開発および抗体工学の深い理解により、最適な生物学的活性および臨床目的を達成するために、多様な二重特異性抗体フォーマット(「二重特異性」)が選択される。がん治療では、腫瘍細胞上のエピトープに特異的な第1の結合ドメインおよび免疫エフェクター細胞上のエピトープに特異的な第2の結合ドメインを通じて、免疫エフェクター細胞の活性腫瘍部位に向け直す目的で、二重特異性抗体が開発されている。免疫エフェクター細胞の再標的化のための二重特異性抗体は、結晶形成フラグメント(Fc)領域のないフォーマットや、対称または非対称設計を有するIgG由来フォーマットなどの異なるフォーマットで開発されている。がんの部位へのエフェクター細胞の再標的化に加えて、二重特異性抗体のための新たな用途が確立された。固有のまたは獲得性耐性を克服し、より効率的な血管形成阻害剤であるために、同時に2つの相関したシグナル伝達分子阻害し得る二重特異性が開発され得る。さらに、二重特異性抗体は、がんのような様々な疾患を治療するための有望な免疫賦活剤として使用され得る。二重特異性抗体はまた、第VIII因子の機能を模倣することによって、血友病Aを治療するために使用され得る。二重特異性抗体はまた、骨障害および感染症ならびに中枢神経系の疾患における広範な適用の見込みも有する(Yang F.et al.Bispecific Antibodies as a Development Platform for New Concepts and Treatment Strategies.Int J Mol Sci.2016 Dec 28;18(1)で概説される)。

細胞は、抗原特異的免疫応答誘導できるT細胞受容体(TCR)複合体を発現する。標的細胞上の抗原ペプチド主要組織適合複合体MHCクラスIとTCRとの結合は、免疫シナプスの形成を誘導し、TCRシグナル伝達複合体の構成要素であるCD3共受容体を通じたシグナル伝達をもたらす。このシグナル伝達カスケードは、T細胞から標的細胞へのグランザイムおよびパーフォリンの放出および伝達を通じて、抗原を発現する細胞のT細胞媒介死滅を誘導する。

歴史的には、抗体の一本鎖連結可ドメイン(scFv、Bird et al.1988に記載)の発見および生成が、二重特異性抗体の開発の主要な動機となった。この概念は最終的に、BiTE分子の作製および白血病の治療のための強力な薬物としての臨床的検証をもたらした(Baeuerle,P.A.;Reinhardt,C.Bispecific T−cell engaging antibodies for cancer therapy.Cancer Res.2009,69,4941−4944)。がんにおいて、CD3εサブユニットと腫瘍細胞上の表面抗原とに同時係合する二重特異性抗体は、抗原と複合体形成したTCRおよびMHCクラスIの直接的相互作用に対する必要性を回避しながら、腫瘍細胞のT細胞媒介死滅を始動する。これは、腫瘍を認識し、エフェクター細胞として作用できるT細胞のレパートリーを拡大する(Baeuerle,P.A.;Reinhardt,C.Bispecific T−cell engaging antibodies for cancer therapy.Cancer Res.2009,69,4941−4944)。

Stieglmaier J.,et al.(in:Utilizing the BiTE(bispecific T−cell engager)platform for immunotherapy of cancer.Expert Opin Biol Ther.2015;15(8):1093−9)は、T細胞ベースのがん免疫療法の様々なアプローチが現在検討中であり、これらのうちには独特の設計および作用機序を有するBiTE(登録商標)(二重特異性T細胞エンゲージャー)抗体コンストラクトが含まれると記載する。それらは、腫瘍関連表面抗原およびT細胞受容体関連分子CD3のモノクローナル抗体の最小結合ドメインを、単一のポリペプチド鎖上に遺伝的に連結することによって構築される。標的細胞抗原とCD3の同時係合は、ポリクローナル細胞傷害性T細胞の活性化につながり、標的細胞溶解をもたらす。CD19を標的化するBiTE(登録商標)であるブリツモマブは、広範なB細胞悪性病変において研究されており、米国では米国FDAによって、BLNCYTO(商標)の商品名の下に、フィラデルフィア染色体陰性再発性難治性急性リンパ芽球性白血病のために最近認可されている。BiTE(登録商標)プラットフォームは、臨床的に最も進行したT細胞免疫療法選択肢の1つである。

しかし、BiTE(登録商標)のような小型二重特異性分子の欠点は、低い生産収率、困難な精製プロセス凝集傾向、および非常に短い血清半減期であることが判明している。このクラスの分子の固有の限界を克服するために、Morrisonらが、可撓性リンカーペプチドをIgGの重鎖C末端に融合させ、続いて異なる結合特異性を有する一本鎖可変ドメインを融合させた、20年以上前考案された組換え二重特異性プロトタイプ免疫グロブリンIg)G様抗体の概念から出発して、ヒトIgGベースの様々な二重特異性フォーマットが開発された(Coloma,M.J.and Morrison,S.L.(1997)Design and production of novel tetravalent bispecific antibodies.Nat.Biotechnol.15,159−163)。分子は二重の官能基を有するため、「正常」抗体と区別され得た。技術的なハードルは当初、さらなる開発を妨げ、二重特異性抗体(bsAb)は、主に学術的および生命工学環境における、研究開発テーマとして残された。しかし、組換えタンパク質誘導体の操作、製造、開発を可能にした急速に進歩する技術は、製薬産業からの新たな関心と相まって、bsAb研究分野を活性化させた。今日、治療用タンパク質の開発に適した、多くの異なるbsAbフォーマットが利用可能である(レビューについては、Gramer,mAbs.2013;5(6):962−973,Weidle,Cancer Genomics Proteomics.2013 Nov−Dec;10(6):239−50,Brinkmann,MAbs.2017 Feb/Mar;9(2):182−212を参照されたい)。要約すると、CH2ドメインおよびCH3ドメインからなるFc(結晶形成フラグメント)部分の組み入れにより、生産性が上昇し、精製プロセスが簡素化され、安定性が向上した。さらに、このようなIgGベースの薬物の血清半減期は、i)サイズの増加、およびii)Fc部分とヒトFc受容体FcRnとの相互作用により延長された。

IgGベースの二重特異性フォーマットの開発は、2つの異なるCH3ドメインのヘテロ二量体化を促進し、それによって2つの異なるポリペプチド鎖を連結する、操作された変異体出現および組み込みによってさらに活発化された。基本的な概念は、ヘテロ二量体化のために抗体重鎖ホモ二量体を操作するための新しくかつ効果的な設計ストラテジーとして「ノブインホール」アプローチを開示した、RidgwayJB,et al.(in:’Knobs−into−holes’ engineering of antibody CH3 domains for heavy chain heterodimerization.Protein Eng.1996 Jul;9(7):617−21)によって導入された。このアプローチでは、最初にCD4−IgGイムノアドヘシンのCH3ドメイン中の小型アミノ酸をより大きなもので置換することによって、「ノブ」変異型:T366Yが得られた。ノブは、大型残基をより小さなもので賢明に置換することによって作製されたヒト化抗CD3抗体のCH3ドメインの「ホール」:Y407Tに、挿入されるように設計された。抗CD3/CD4−IgGハイブリッドは、これらの2つの異なる重鎖の同時発現に続いて、抗CD3軽鎖と共に、プロテインA精製タンパク質プールの92%までに相当する。対照的に、抗CD3/CD4−IgGハイブリッドの最大57%のみが、重鎖が野生型CH3ドメインを含有する同時発現に続いて回収される。したがって、ノブ・イン・ホール操作は、抗体/イムノアドヘシンハイブリッド、そしておそらく二重特異性イムノアドヘシンおよび二重特異性抗体を含むその他のFc含有二官能性治療薬の構築を容易にする。Atwell et al,1997,J Mol Biol(Stable heterodimers from remodeling the domain interface of a homodimer using a phage display library)は、改善されたヘテロ二量体化のためのFcドメインのCH3ドメインにおけるノブ・イン・ホール変異(ノブ:T366W/ホール:T366S+L368A+Y407V)を開示する。Merchant et al.1998,Nature Biotechnology(An Efficient Route to Human Bispecific IgG)によって記載されたように、この概念は、ヘテロ二量体CH3ドメインの間に安定化ジスルフィド結合を形成するシステイン残基の追加的な導入によってさらに改善された。

ヘテロ二量体分子を製造するためのさらなる概念は、Muda et al.2011,PEDS(Therapeutic assessment ofSEED:a new engineered antibody platform designed to generate mono−and bispecific antibodies);Gunasekaran et al.2010,J Biol Chem(Enhancing antibody Fc heterodimer formation through electrostatic steering effects:applications to bispecific molecules and monovalentIgG);Moore et al.2011,MAbs(A novel bispecific antibody format enables simultaneous bivalent and monovalent co−engagement of distinct target antigens);Von Kreudenstein et al.2013,MAbs(Improving biophysical properties of a bispecific antibody scaffold to aid developability:quality by molecular design.)によって開示された。これらの概念は、Ha et al.2016,Front Immunol(Immunoglobulin Fc Heterodimer Platform Technology:From Design to Application in Therapeutic Antibodies and Proteins)およびLiu et al.2017,Front Immunol(Fc Engineering for DevelopingTherapeutic Bispecific Antibodies and Novel scaffolds)によって要約され概説された。

ヒンジ、CH2およびCH3ドメインまたはその部分からなるFc部分を二重特異性分子に含めることにより、Fc:Fcγ受容体(FcgR)相互作用によって誘導される、これらの分子の非特異的固定化の問題が生じた。FcgRは、IgG分子のFc部分によって提示されるエピトープとは異なる親和性で結合する、異なる細胞表面分子(FcgRI、FcgRIIa、FcgRIIb、FcgRIII)から構成される。このような非特異的な(すなわち、二重特異性分子の2つの結合ドメインのどちらによっても誘導されない)固定化は、i)分子の薬物動態への影響、およびii)免疫エフェクター細胞のオフターゲット活性化のために好ましくないので、FcgR結合を取り除くための様々なFc変異型および変異が同定されている。

Morgan et al.1995,Immunology(The N−terminal end of the CH2 domain of chimeric humanIgG1 anti−HLA−DR is necessary for C1q,FcyRIand FcyRIII binding)は、FcgRI結合の消失、C1q結合の消失、およびFcgRIII結合の減少をもたらす、ヒトIgG2からの対応する配列による、ヒトIgG1の残基233〜236の交換を開示する。

欧州特許第1075496号明細書は、Fc領域多様性(233P、234V、235A、236位に残基は存在せずまたはGであり、327G、330S、および331S)を有する抗体およびその他のFc含有分子を開示し、その中で組換え抗体は、標的の顕著な補体依存性溶解または細胞媒介性破壊を始動させることなく、標的分子に結合できる。

二重親和性再標的化(DART)分子は、例えば、B細胞リンパ腫の最適な再誘導T細胞殺傷を達成するために使用される。元のDART技術は、Moore et al.(in:Application of dual affinity retargeting molecules to achieve optimal redirected T−cell killing of B−cell lymphoma,Blood.2011 Apr 28;117(17):4542−51)に記載される。同一のCD19およびCD3抗体Fv配列を保有する一本鎖二重特異性抗体との比較は、DART分子が、B細胞溶解の誘導においてより強力であることを明らかにした。DART技術のさらなる進展は、Root et al,2016 antibodies(Development of PF−06671008,a Highly Potent Anti−P−cadherin/Anti−CD3 Bispecific DART Molecule with Extended Half−Life for the Treatment of Cancer)に記載されるように、DART−Fc分子によって達成された。この分子は、DARTの高い効力と、その他の好ましい特性の中でも特に、Fcベースの分子の延長された血清半減期とを組み合わせた。

αβTCR(TCR)は、MHCによって提示される抗原性ペプチドを認識し、T細胞の特異性に関与する。TCRのαおよびβ鎖はどちらも、可変ドメイン(V)および定常ドメインを保有する。Vドメインは抗原性ペプチドの結合に関与し、定常ドメインはT細胞膜横断する。ペプチドMHC複合体に結合したTCRの結晶構造分析から、VαおよびVβ鎖の双方の相補性決定領域(CDR)3は、好ましくはペプチドと相互作用する一方で、CDR1および2はMHCと相互作用する。しかし、CDR1によるペプチドの認識およびCDR3によるMHCの認識も記載される(Piepenbrink et al,The basis for limited specificity and MHC restriction in a T cell receptor interface,Nat Commun,2013;4,1948)。TCRαβヘテロ二量体は、CD3タンパク質、CD4またはCD8、およびその他の接着およびシグナル伝達タンパク質と密接に関連している。TCR V領域による抗原性ペプチドの結合は、CD3およびCD4またはCD8細胞質タンパク質を介したTCR定常ドメインを介したシグナル伝達によって、T細胞活性化を引き起こす。

一本鎖TCR(scTCR)は、完全長TCR形態と対比して、遺伝子操作可溶性タンパク質発現、および臨床的可能性に有意な利点をもたらす。可溶性タンパク質発現(すなわち、製造)の観点から、scTCRは単一ポリペプチドとして製造され、各TCR鎖を個々のポリペプチドとして製造する必要性が回避され、そのペプチドMHCリガンドに結合するより大量の適切に構築されたscTCRの製造が可能になる。この特徴により、臨床使用に必要な生産収率が可能になる。最後に、臨床的観点から、V領域(scTv)のみからなるscTCRは、scFv断片に類似した治療薬または診断試薬としてフォーマットされ得る。

米国特許出願第2006−0166875号明細書は、TCRα鎖定常領域細胞外配列のN末端に融合したTCRα鎖可変領域配列によって構成されるセグメント、TCRβ鎖定常領域細胞外配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域によって構成されるβセグメント、およびセグメントのC末端とβセグメントのN末端とをまたはその逆を連結するリンカー配列を含んでなり、αおよびβセグメントの定常領域細胞外配列がジスルフィド結合によって連結され、リンカー配列の長さおよびジスルフィド結合の位置が、αおよびβセグメントの可変領域配列が天然α/βT細胞受容体と同様に実質的に相互に配向するようなものである、一本鎖T細胞受容体(scTCR)を開示する。このようなscTCRの2つ以上の複合体、および治療および様々なスクリーニング用途におけるscTCRの使用もまた開示される。米国特許出願第2006−0166875号明細書に記載されるscTCRとは対照的に、米国特許出願第2012−0252742号明細書は、がん、ウイルス性疾患、および自己免疫疾患の治療などの多数の目的のために有用な、TCR(scTv)の可変断片のみからなる定常ドメインのない可溶性ヒト一本鎖TCRを開示する。

McCormack E,et al(in:Bi−specific TCR−anti CD3 redirected T−cell targeting of NY−ESO−1−and LAGE−1−positive tumors.Cancer Immunol Immunother.2013 Apr;62(4):773−85)は、NY−ESO−1およびLAGE−1が、多数のがん型における上方制御と正常組織における高度に制限された発現とを組み合わせ、共通HLA−A*0201エピトープである157〜165を共有する、腫瘍免疫療法のための理想的なプロファイルを有する、がん精巣抗原であることを開示する。彼らは、抗CD3scFvに融合したNY−ESO−1157−165に特異的な可溶性高親和性T細胞受容体(TCR)を含んでなる、二官能性ImmTACの特異性および抗腫瘍活性描写するデータを提示する。この試薬ImmTAC−NYEは、HLA−A2、抗原陽性腫瘍細胞株、および新たに単離されたHLA−A2−およびLAGE−1陽性NSCLC細胞を死滅させることが示されている。生体内光学イメージングを用いた結果は、異種移植マウスにおいて、蛍光標識高親和性NYESO特異的TCRが、HLA−A2−、NY−ESO−1157−165陽性腫瘍を生体内標的化することを示す。生体内ImmTAC−NYEの有効性は、ヒトリンパ球が、腫瘍異種移植片を保有する免疫不全NSGマウスに安定して同時移植された腫瘍モデルにおいて試験され;有効性は、GFP蛍光読み取りを用いて、腫瘍予防および確立された腫瘍モデルの双方で観察された。定量的RTPCRを用いて、15の正常組織、5のがん細胞株、10のNSCLC、および10の卵巣がんサンプルにおいて、NY−ESO−1およびLAGE−1抗原の双方の発現が分析された。全体的に、LAGE−1RNAは、腫瘍サンプル中のNY−ESO−1よりも大きな出現頻度およびより高いレベルで発現された。ImmTACは、TCRのαまたはβ鎖のCまたはN末端に共有結合する抗CD3抗体UCHT−1に由来する、一本鎖Fvを含んでなる。

欧州特許第1868650号明細書は、二特異性抗体分子と、免疫学的障害、感染症、中毒症、およびがんなどの様々な疾患および障害および治療におけるその使用とに関する。二特異性抗体は2つのポリペプチド鎖を含んでなり、それは結合して、同一または異なる抗原上の同一または異なるエピトープを認識してもよい、少なくとも2つのエピトープ結合部位を形成する。さらに、抗原は、同一または異なる分子に由来してもよい。二特異性抗体分子の個々のポリペプチド鎖は、各ポリペプチド鎖内に位置するシステイン残基のジスルフィド結合などであるが、これに限定されるものではない、非ペプチド結合共有結合を介して共有結合してもよい。特定の実施形態では、二特異性抗体分子は、分子中で抗体様特性の操作(例えば、長い半減期)ができるようにする、本明細書で開示されるFc領域をさらに含んでなる。欧州特許第1868650号明細書は、免疫グロブリンの軽鎖または重鎖可変ドメインの結合領域の存在を必要とし、機能的Fc受容体結合体について広範に議論している。

国際公開第2016/184592A1号パンフレットは、一方の特異性がTCRによって寄与され、他方がリンパ球の表面の抗原またはエピトープを対象とする抗体によって寄与される、二重特異性分子を開示するが、本明細書に開示されるTCRおよび抗体可変領域の要素の特定の配置は開示しない。

欧州特許第2258720A1号明細書は、少なくとも1つのMHC提示エピトープを認識して結合し、抗原を認識して結合する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、機能性T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)を対象とする。

免疫系は、交差提示XPT)と称されるプロセスを通じて、MHCI上の細胞外環境から抗原をサンプリングして提示するために、樹状細胞およびその他の貪食細胞機序進化させた。この経路は、特定の感染、特にウイルス感染に対する免疫応答において重要な役割を果たす。

例えば、早期感染時には、生体内でのHIV複製を制限するために、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に特異的なCD8+T細胞が重要である。長期的な非進行性患者は、進行性患者からのものよりも優れた機能性プロファイルがある、HIV特異的CD8+T細胞を維持する。したがって、T細胞がウイルスエスケープ変異型を認識できず、漸進的に枯渇して、最終的にHIVに対する機能障害性免疫応答を維持するので、進行性の慢性HIV感染中には、最初は堅牢であったCD8+T細胞の細胞溶解およびサイトカイン産生漸減する。HIV特異的CD8+T細胞の効力を維持することで、ウイルス感染細胞の除去が促進され、ウイルス血症緩和され、疾患進行が遅くなる。

モノクローナル抗体(mAbs)の受動的投与は、ウイルス感染の治療のための有望な治療プラットフォームである。ウイルス免疫療法では、二重特異性抗体工学は、例えば、提案された作用機序と一致するように多機能分子を調節して、ウイルス及び宿主構成要素の双方を同時に標的化する機会を提供する。

概要

本発明は、主要組織適合性複合体(MHC)関連ウイルスペプチドエピトープに特異的なT細胞受容体(TCR)に由来する結合領域と、前記細胞の表面抗原に特異的に結合するヒト免疫エフェクター細胞動員できる抗体に由来する結合領域とを提供する、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含んでなる二重特異性ポリペプチド分子、ならびに二重特異性ポリペプチド分子を製造する方法、およびその使用に関する。

目的

本発明は、主要組織適合性複合体(MHC)関連ウイルスペプチドエピトープに特異的なT細胞受容体(TCR)に由来する結合領域と、前記細胞の表面抗原に特異的に結合するヒト免疫エフェクター細胞を動員できる抗体に由来する結合領域とを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含んでなる分子の群から選択される、二重特異性ポリペプチド分子であって、前記第1のポリペプチド鎖が、ヒト免疫エフェクター細胞細胞表面抗原に特異的に結合する抗体の可変ドメイン(VD1)の第1の結合領域を含んでなり、TCRの可変ドメイン(VR1)の第1の結合領域がMHC関連ウイルスペプチドエピトープに特異的に結合し、第1のリンカー(LINK1)が前記ドメインを連結し;前記第2のポリペプチド鎖が、MHC関連ウイルスペプチドエピトープに特異的に結合するTCRの可変ドメイン(VR2)の第2の結合領域を含んでなり、抗体の可変ドメイン(VD2)の第2の結合領域がヒト免疫エフェクター細胞の細胞表面抗原に特異的に結合し、第2のリンカー(LINK2)が前記ドメインを連結し;前記第1の結合領域(VD1)および前記第2の結合領域(VD2)が結合して、ヒト免疫エフェクター細胞の細胞表面抗原に結合する第1の結合部位(VD1)(VD2)を形成し;前記第1の結合領域(VR1)および前記第2の結合領域(VR2)が結合して、前記MHC関連ウイルスペプチドエピトープに結合する第2の結合部位(VR1)(VR2)を形成し;前記2つのポリペプチド鎖が、ヒトIgGヒンジドメインおよび/またはヒトIgGFcドメインまたはその二量体化部分に融合し;前記2つのポリペプチド鎖が、前記ヒンジドメインおよび/またはFc−ドメイン間の共有結合および/または非共有結合によって連結され;前記二重特異性ポリペプチド分子が、前記細胞表面分子および前記MHC関連ウイルスペプチドエピトープに同時に結合でき、二重特異性ポリペプチド分子中で、前記2つのポリペプチド鎖中の前記結合領域の順序が、VD1−VR1およびVR2−VD2またはVD1−VR2およびVR1−VD2、またはVD2−VR1およびVR2−VD1またはVD2−VR2およびVR1−VD1から選択され、前記ドメインがLINK1またはLINK2のどちらかによって連結される、二重特異性ポリペプチド分子。

請求項2

前記ポリペプチド鎖中の前記結合領域の順序がVD1−VR1およびVD2−VR2から選択され;前記ドメインがそれぞれLINK1またはLINK2によって連結される、請求項1に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項3

前記リンカー配列LINK1および/またはLINK2が、GGGS、GGGGS、TVLRT、TVSSAS、およびTVLSSASから選択される、少なくとも1つの配列モチーフを含有する、請求項1に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項4

前記第1および第2のポリペプチド鎖が、ヒトIgG1、IgG2またはIgG4由来のヒンジドメインおよびFcドメインまたはその部分を少なくともさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項5

前記Fcドメインが、233、234、235、236、297、および331位から選択される残基に少なくとも1つのエフェクター機能サイレンシング変異を含んでなり、好ましくは前記エフェクター機能サイレンシング変異が、233、234、235、236、および331位の少なくとも1つの残基をIgG2またはIgG4由来の対応する残基で置換することによって生成される、請求項4に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項6

前記Fcドメインが、ヘテロ二量体の形成を促進する少なくとも1つの変異を含んでなるCH3ドメインを含んでなる、請求項3〜5のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項7

前記変異が366、368、405、および407から選択される任意の位置にあり、好ましくは前記変異がノブインホール変異としてT366WおよびT366’S、L368A’およびY407’Vを含んでなる、請求項6に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項8

前記Fcドメインが、例えば、S354CおよびY349CまたはL242CおよびK334Cなどの少なくとも2つの追加的なシステイン残基を含んでなるCH2およびCH3ドメインを含んでなる、請求項3〜7のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項9

前記抗体由来ドメインVD1およびVD2が、VD1およびVD2の間に共有結合を導入する操作されたジスルフィド架橋提示し、前記システインが、VLの場合はフレームワーク領域(FR)4に、VHの場合はフレームワーク領域2に導入される、請求項1〜の8いずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項10

前記細胞表面分子が、免疫細胞活性化を誘導することが知られており、またはCD3γ、CD3δ、およびCD3ε鎖などのCD3、CD4、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD18、CD22、CD25、CD28、CD32a、CD32b、CD33、CD41、CD41b、CD42a、CD42b、CD44、CD45RA、CD49、CD55、CD56、CD61、CD64、CD68、CD94、CD90、CD117、CD123、CD125、CD134、CD137、CD152、CD163、CD193、CD203c、CD235a、CD278、CD279、CD287、Nkp46、NKG2D、GITR、FcεRI、TCRα/βおよびTCRγ/δ、HLA−DRなどの免疫応答関連分子からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項11

前記第1のポリペプチド鎖中の前記領域が、VD1では配列番号28、VR1では配列番号29、LINK1では配列番号30を含んでなり;前記第2のポリペプチド鎖中の前記領域が、VD2では配列番号31、VR2では配列番号32、LINK2では配列番号30を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項12

前記第1のポリペプチド鎖中の前記Fc領域が、配列番号26または配列番号47(Fc1)を含んでなり、前記第2のポリペプチド鎖中の前記Fc領域が、配列番号27または配列番号48(Fc2)を含んでなる、請求項3〜11のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項13

配列番号16または配列番号43または配列番号45または配列番号51、53、55、または57を含んでなる第1のポリペプチド鎖と、配列番号17または配列番号44または配列番号46または配列番号52、54、56、または58を含んでなる第2のポリペプチド鎖とを含んでなる、二重特異性ポリペプチド分子。

請求項14

前記分子が検出可能な標識を保有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項15

前記免疫細胞の細胞表面抗原に結合する前記第1の結合部位(VD1)(VD2)がヒト化され;および/または前記MHC関連ウイルスペプチドエピトープに結合する前記第2の結合部位(VR1)(VR2)が成熟してより高い親和性および/または安定性を達成する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子。

請求項16

請求項1〜15のいずれか一項に記載の前記第1のポリペプチド鎖および/または前記第2のポリペプチド鎖をコードする核酸、または前記核酸の少なくとも1つを含んでなる発現ベクター

請求項17

請求項16に記載のベクターを含んでなり、任意選択的にそれを発現する、宿主細胞

請求項18

1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共に、請求項1〜15のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子、請求項16に記載の核酸または発現ベクター、または請求項17に記載の細胞を含んでなる、医薬組成物

請求項19

医療で使用するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子、請求項16に記載の核酸または発現ベクター、請求項17に記載の細胞、または請求項18に記載の医薬品組成物

請求項20

感染性疾患から選択される疾患または障害の予防または治療で使用するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子、請求項16に記載の核酸または発現ベクター、請求項17に記載の細胞、または請求項18に記載の医薬品組成物。

請求項21

請求項1〜15のいずれか一項に記載の二重特異性ポリペプチド分子、請求項16に記載の核酸または発現ベクター、請求項17に記載の細胞、または請求項18に記載の医薬品組成物の治療的有効量を投与するステップを含んでなる、疾患または障害を治療する方法。

技術分野

0001

本発明は、主要組織適合性複合体MHC)関連ウイルスペプチドエピトープに特異的なT細胞受容体(TCR)に由来する結合領域と、前記細胞表面抗原に特異的に結合するヒト免疫エフェクター細胞動員できる抗体に由来する結合領域とを提供する、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含んでなる二重特異性ポリペプチド分子、ならびに二重特異性ポリペプチド分子を製造する方法、およびその使用に関する。

背景技術

0002

分子クローニング技術の開発および抗体工学の深い理解により、最適な生物学的活性および臨床目的を達成するために、多様な二重特異性抗体フォーマット(「二重特異性」)が選択される。がん治療では、腫瘍細胞上のエピトープに特異的な第1の結合ドメインおよび免疫エフェクター細胞上のエピトープに特異的な第2の結合ドメインを通じて、免疫エフェクター細胞の活性腫瘍部位に向け直す目的で、二重特異性抗体が開発されている。免疫エフェクター細胞の再標的化のための二重特異性抗体は、結晶形成フラグメント(Fc)領域のないフォーマットや、対称または非対称設計を有するIgG由来フォーマットなどの異なるフォーマットで開発されている。がんの部位へのエフェクター細胞の再標的化に加えて、二重特異性抗体のための新たな用途が確立された。固有のまたは獲得性耐性を克服し、より効率的な血管形成阻害剤であるために、同時に2つの相関したシグナル伝達分子阻害し得る二重特異性が開発され得る。さらに、二重特異性抗体は、がんのような様々な疾患を治療するための有望な免疫賦活剤として使用され得る。二重特異性抗体はまた、第VIII因子の機能を模倣することによって、血友病Aを治療するために使用され得る。二重特異性抗体はまた、骨障害および感染症ならびに中枢神経系の疾患における広範な適用の見込みも有する(Yang F.et al.Bispecific Antibodies as a Development Platform for New Concepts and Treatment Strategies.Int J Mol Sci.2016 Dec 28;18(1)で概説される)。

0003

T細胞は、抗原特異的免疫応答誘導できるT細胞受容体(TCR)複合体を発現する。標的細胞上の抗原ペプチド主要組織適合複合体(MHC)クラスIとTCRとの結合は、免疫シナプスの形成を誘導し、TCRシグナル伝達複合体の構成要素であるCD3共受容体を通じたシグナル伝達をもたらす。このシグナル伝達カスケードは、T細胞から標的細胞へのグランザイムおよびパーフォリンの放出および伝達を通じて、抗原を発現する細胞のT細胞媒介死滅を誘導する。

0004

歴史的には、抗体の一本鎖連結可ドメイン(scFv、Bird et al.1988に記載)の発見および生成が、二重特異性抗体の開発の主要な動機となった。この概念は最終的に、BiTE分子の作製および白血病の治療のための強力な薬物としての臨床的検証をもたらした(Baeuerle,P.A.;Reinhardt,C.Bispecific T−cell engaging antibodies for cancer therapy.Cancer Res.2009,69,4941−4944)。がんにおいて、CD3εサブユニットと腫瘍細胞上の表面抗原とに同時係合する二重特異性抗体は、抗原と複合体形成したTCRおよびMHCクラスIの直接的相互作用に対する必要性を回避しながら、腫瘍細胞のT細胞媒介死滅を始動する。これは、腫瘍を認識し、エフェクター細胞として作用できるT細胞のレパートリーを拡大する(Baeuerle,P.A.;Reinhardt,C.Bispecific T−cell engaging antibodies for cancer therapy.Cancer Res.2009,69,4941−4944)。

0005

Stieglmaier J.,et al.(in:Utilizing the BiTE(bispecific T−cell engager)platform for immunotherapy of cancer.Expert Opin Biol Ther.2015;15(8):1093−9)は、T細胞ベースのがん免疫療法の様々なアプローチが現在検討中であり、これらのうちには独特の設計および作用機序を有するBiTE(登録商標)(二重特異性T細胞エンゲージャー)抗体コンストラクトが含まれると記載する。それらは、腫瘍関連表面抗原およびT細胞受容体関連分子CD3のモノクローナル抗体の最小結合ドメインを、単一のポリペプチド鎖上に遺伝的に連結することによって構築される。標的細胞抗原とCD3の同時係合は、ポリクローナル細胞傷害性T細胞の活性化につながり、標的細胞溶解をもたらす。CD19を標的化するBiTE(登録商標)であるブリツモマブは、広範なB細胞悪性病変において研究されており、米国では米国FDAによって、BLNCYTO(商標)の商品名の下に、フィラデルフィア染色体陰性再発性難治性急性リンパ芽球性白血病のために最近認可されている。BiTE(登録商標)プラットフォームは、臨床的に最も進行したT細胞免疫療法選択肢の1つである。

0006

しかし、BiTE(登録商標)のような小型二重特異性分子の欠点は、低い生産収率、困難な精製プロセス凝集傾向、および非常に短い血清半減期であることが判明している。このクラスの分子の固有の限界を克服するために、Morrisonらが、可撓性リンカーペプチドをIgGの重鎖C末端に融合させ、続いて異なる結合特異性を有する一本鎖可変ドメインを融合させた、20年以上前考案された組換え二重特異性プロトタイプ免疫グロブリンIg)G様抗体の概念から出発して、ヒトIgGベースの様々な二重特異性フォーマットが開発された(Coloma,M.J.and Morrison,S.L.(1997)Design and production of novel tetravalent bispecific antibodies.Nat.Biotechnol.15,159−163)。分子は二重の官能基を有するため、「正常」抗体と区別され得た。技術的なハードルは当初、さらなる開発を妨げ、二重特異性抗体(bsAb)は、主に学術的および生命工学環境における、研究開発テーマとして残された。しかし、組換えタンパク質誘導体の操作、製造、開発を可能にした急速に進歩する技術は、製薬産業からの新たな関心と相まって、bsAb研究分野を活性化させた。今日、治療用タンパク質の開発に適した、多くの異なるbsAbフォーマットが利用可能である(レビューについては、Gramer,mAbs.2013;5(6):962−973,Weidle,Cancer Genomics Proteomics.2013 Nov−Dec;10(6):239−50,Brinkmann,MAbs.2017 Feb/Mar;9(2):182−212を参照されたい)。要約すると、CH2ドメインおよびCH3ドメインからなるFc(結晶形成フラグメント)部分の組み入れにより、生産性が上昇し、精製プロセスが簡素化され、安定性が向上した。さらに、このようなIgGベースの薬物の血清半減期は、i)サイズの増加、およびii)Fc部分とヒトFc受容体FcRnとの相互作用により延長された。

0007

IgGベースの二重特異性フォーマットの開発は、2つの異なるCH3ドメインのヘテロ二量体化を促進し、それによって2つの異なるポリペプチド鎖を連結する、操作された変異体出現および組み込みによってさらに活発化された。基本的な概念は、ヘテロ二量体化のために抗体重鎖ホモ二量体を操作するための新しくかつ効果的な設計ストラテジーとして「ノブインホール」アプローチを開示した、RidgwayJB,et al.(in:’Knobs−into−holes’ engineering of antibody CH3 domains for heavy chain heterodimerization.Protein Eng.1996 Jul;9(7):617−21)によって導入された。このアプローチでは、最初にCD4−IgGイムノアドヘシンのCH3ドメイン中の小型アミノ酸をより大きなもので置換することによって、「ノブ」変異型:T366Yが得られた。ノブは、大型残基をより小さなもので賢明に置換することによって作製されたヒト化抗CD3抗体のCH3ドメインの「ホール」:Y407Tに、挿入されるように設計された。抗CD3/CD4−IgGハイブリッドは、これらの2つの異なる重鎖の同時発現に続いて、抗CD3軽鎖と共に、プロテインA精製タンパク質プールの92%までに相当する。対照的に、抗CD3/CD4−IgGハイブリッドの最大57%のみが、重鎖が野生型CH3ドメインを含有する同時発現に続いて回収される。したがって、ノブ・イン・ホール操作は、抗体/イムノアドヘシンハイブリッド、そしておそらく二重特異性イムノアドヘシンおよび二重特異性抗体を含むその他のFc含有二官能性治療薬の構築を容易にする。Atwell et al,1997,J Mol Biol(Stable heterodimers from remodeling the domain interface of a homodimer using a phage display library)は、改善されたヘテロ二量体化のためのFcドメインのCH3ドメインにおけるノブ・イン・ホール変異(ノブ:T366W/ホール:T366S+L368A+Y407V)を開示する。Merchant et al.1998,Nature Biotechnology(An Efficient Route to Human Bispecific IgG)によって記載されたように、この概念は、ヘテロ二量体CH3ドメインの間に安定化ジスルフィド結合を形成するシステイン残基の追加的な導入によってさらに改善された。

0008

ヘテロ二量体分子を製造するためのさらなる概念は、Muda et al.2011,PEDS(Therapeutic assessment ofSEED:a new engineered antibody platform designed to generate mono−and bispecific antibodies);Gunasekaran et al.2010,J Biol Chem(Enhancing antibody Fc heterodimer formation through electrostatic steering effects:applications to bispecific molecules and monovalentIgG);Moore et al.2011,MAbs(A novel bispecific antibody format enables simultaneous bivalent and monovalent co−engagement of distinct target antigens);Von Kreudenstein et al.2013,MAbs(Improving biophysical properties of a bispecific antibody scaffold to aid developability:quality by molecular design.)によって開示された。これらの概念は、Ha et al.2016,Front Immunol(Immunoglobulin Fc Heterodimer Platform Technology:From Design to Application in Therapeutic Antibodies and Proteins)およびLiu et al.2017,Front Immunol(Fc Engineering for DevelopingTherapeutic Bispecific Antibodies and Novel scaffolds)によって要約され概説された。

0009

ヒンジ、CH2およびCH3ドメインまたはその部分からなるFc部分を二重特異性分子に含めることにより、Fc:Fcγ受容体(FcgR)相互作用によって誘導される、これらの分子の非特異的固定化の問題が生じた。FcgRは、IgG分子のFc部分によって提示されるエピトープとは異なる親和性で結合する、異なる細胞表面分子(FcgRI、FcgRIIa、FcgRIIb、FcgRIII)から構成される。このような非特異的な(すなわち、二重特異性分子の2つの結合ドメインのどちらによっても誘導されない)固定化は、i)分子の薬物動態への影響、およびii)免疫エフェクター細胞のオフターゲット活性化のために好ましくないので、FcgR結合を取り除くための様々なFc変異型および変異が同定されている。

0010

Morgan et al.1995,Immunology(The N−terminal end of the CH2 domain of chimeric humanIgG1 anti−HLA−DR is necessary for C1q,FcyRIand FcyRIII binding)は、FcgRI結合の消失、C1q結合の消失、およびFcgRIII結合の減少をもたらす、ヒトIgG2からの対応する配列による、ヒトIgG1の残基233〜236の交換を開示する。

0011

欧州特許第1075496号明細書は、Fc領域多様性(233P、234V、235A、236位に残基は存在せずまたはGであり、327G、330S、および331S)を有する抗体およびその他のFc含有分子を開示し、その中で組換え抗体は、標的の顕著な補体依存性溶解または細胞媒介性破壊を始動させることなく、標的分子に結合できる。

0012

二重親和性再標的化(DART)分子は、例えば、B細胞リンパ腫の最適な再誘導T細胞殺傷を達成するために使用される。元のDART技術は、Moore et al.(in:Application of dual affinity retargeting molecules to achieve optimal redirected T−cell killing of B−cell lymphoma,Blood.2011 Apr 28;117(17):4542−51)に記載される。同一のCD19およびCD3抗体Fv配列を保有する一本鎖二重特異性抗体との比較は、DART分子が、B細胞溶解の誘導においてより強力であることを明らかにした。DART技術のさらなる進展は、Root et al,2016 antibodies(Development of PF−06671008,a Highly Potent Anti−P−cadherin/Anti−CD3 Bispecific DART Molecule with Extended Half−Life for the Treatment of Cancer)に記載されるように、DART−Fc分子によって達成された。この分子は、DARTの高い効力と、その他の好ましい特性の中でも特に、Fcベースの分子の延長された血清半減期とを組み合わせた。

0013

αβTCR(TCR)は、MHCによって提示される抗原性ペプチドを認識し、T細胞の特異性に関与する。TCRのαおよびβ鎖はどちらも、可変ドメイン(V)および定常ドメインを保有する。Vドメインは抗原性ペプチドの結合に関与し、定常ドメインはT細胞膜横断する。ペプチドMHC複合体に結合したTCRの結晶構造分析から、VαおよびVβ鎖の双方の相補性決定領域(CDR)3は、好ましくはペプチドと相互作用する一方で、CDR1および2はMHCと相互作用する。しかし、CDR1によるペプチドの認識およびCDR3によるMHCの認識も記載される(Piepenbrink et al,The basis for limited specificity and MHC restriction in a T cell receptor interface,Nat Commun,2013;4,1948)。TCRαβヘテロ二量体は、CD3タンパク質、CD4またはCD8、およびその他の接着およびシグナル伝達タンパク質と密接に関連している。TCR V領域による抗原性ペプチドの結合は、CD3およびCD4またはCD8細胞質タンパク質を介したTCR定常ドメインを介したシグナル伝達によって、T細胞活性化を引き起こす。

0014

一本鎖TCR(scTCR)は、完全長TCR形態と対比して、遺伝子操作可溶性タンパク質発現、および臨床的可能性に有意な利点をもたらす。可溶性タンパク質発現(すなわち、製造)の観点から、scTCRは単一ポリペプチドとして製造され、各TCR鎖を個々のポリペプチドとして製造する必要性が回避され、そのペプチドMHCリガンドに結合するより大量の適切に構築されたscTCRの製造が可能になる。この特徴により、臨床使用に必要な生産収率が可能になる。最後に、臨床的観点から、V領域(scTv)のみからなるscTCRは、scFv断片に類似した治療薬または診断試薬としてフォーマットされ得る。

0015

米国特許出願第2006−0166875号明細書は、TCRα鎖定常領域細胞外配列のN末端に融合したTCRα鎖可変領域配列によって構成されるセグメント、TCRβ鎖定常領域細胞外配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域によって構成されるβセグメント、およびセグメントのC末端とβセグメントのN末端とをまたはその逆を連結するリンカー配列を含んでなり、αおよびβセグメントの定常領域細胞外配列がジスルフィド結合によって連結され、リンカー配列の長さおよびジスルフィド結合の位置が、αおよびβセグメントの可変領域配列が天然α/βT細胞受容体と同様に実質的に相互に配向するようなものである、一本鎖T細胞受容体(scTCR)を開示する。このようなscTCRの2つ以上の複合体、および治療および様々なスクリーニング用途におけるscTCRの使用もまた開示される。米国特許出願第2006−0166875号明細書に記載されるscTCRとは対照的に、米国特許出願第2012−0252742号明細書は、がん、ウイルス性疾患、および自己免疫疾患の治療などの多数の目的のために有用な、TCR(scTv)の可変断片のみからなる定常ドメインのない可溶性ヒト一本鎖TCRを開示する。

0016

McCormack E,et al(in:Bi−specific TCR−anti CD3 redirected T−cell targeting of NY−ESO−1−and LAGE−1−positive tumors.Cancer Immunol Immunother.2013 Apr;62(4):773−85)は、NY−ESO−1およびLAGE−1が、多数のがん型における上方制御と正常組織における高度に制限された発現とを組み合わせ、共通HLA−A*0201エピトープである157〜165を共有する、腫瘍免疫療法のための理想的なプロファイルを有する、がん精巣抗原であることを開示する。彼らは、抗CD3scFvに融合したNY−ESO−1157−165に特異的な可溶性高親和性T細胞受容体(TCR)を含んでなる、二官能性ImmTACの特異性および抗腫瘍活性描写するデータを提示する。この試薬ImmTAC−NYEは、HLA−A2、抗原陽性腫瘍細胞株、および新たに単離されたHLA−A2−およびLAGE−1陽性NSCLC細胞を死滅させることが示されている。生体内光学イメージングを用いた結果は、異種移植マウスにおいて、蛍光標識高親和性NYESO特異的TCRが、HLA−A2−、NY−ESO−1157−165陽性腫瘍を生体内標的化することを示す。生体内ImmTAC−NYEの有効性は、ヒトリンパ球が、腫瘍異種移植片を保有する免疫不全NSGマウスに安定して同時移植された腫瘍モデルにおいて試験され;有効性は、GFP蛍光読み取りを用いて、腫瘍予防および確立された腫瘍モデルの双方で観察された。定量的RTPCRを用いて、15の正常組織、5のがん細胞株、10のNSCLC、および10の卵巣がんサンプルにおいて、NY−ESO−1およびLAGE−1抗原の双方の発現が分析された。全体的に、LAGE−1RNAは、腫瘍サンプル中のNY−ESO−1よりも大きな出現頻度およびより高いレベルで発現された。ImmTACは、TCRのαまたはβ鎖のCまたはN末端に共有結合する抗CD3抗体UCHT−1に由来する、一本鎖Fvを含んでなる。

0017

欧州特許第1868650号明細書は、二特異性抗体分子と、免疫学的障害、感染症、中毒症、およびがんなどの様々な疾患および障害および治療におけるその使用とに関する。二特異性抗体は2つのポリペプチド鎖を含んでなり、それは結合して、同一または異なる抗原上の同一または異なるエピトープを認識してもよい、少なくとも2つのエピトープ結合部位を形成する。さらに、抗原は、同一または異なる分子に由来してもよい。二特異性抗体分子の個々のポリペプチド鎖は、各ポリペプチド鎖内に位置するシステイン残基のジスルフィド結合などであるが、これに限定されるものではない、非ペプチド結合共有結合を介して共有結合してもよい。特定の実施形態では、二特異性抗体分子は、分子中で抗体様特性の操作(例えば、長い半減期)ができるようにする、本明細書で開示されるFc領域をさらに含んでなる。欧州特許第1868650号明細書は、免疫グロブリンの軽鎖または重鎖可変ドメインの結合領域の存在を必要とし、機能的Fc受容体結合体について広範に議論している。

0018

国際公開第2016/184592A1号パンフレットは、一方の特異性がTCRによって寄与され、他方がリンパ球の表面の抗原またはエピトープを対象とする抗体によって寄与される、二重特異性分子を開示するが、本明細書に開示されるTCRおよび抗体可変領域の要素の特定の配置は開示しない。

0019

欧州特許第2258720A1号明細書は、少なくとも1つのMHC提示エピトープを認識して結合し、抗原を認識して結合する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、機能性T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)を対象とする。

0020

免疫系は、交差提示XPT)と称されるプロセスを通じて、MHCI上の細胞外環境から抗原をサンプリングして提示するために、樹状細胞およびその他の貪食細胞機序進化させた。この経路は、特定の感染、特にウイルス感染に対する免疫応答において重要な役割を果たす。

0021

例えば、早期感染時には、生体内でのHIV複製を制限するために、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に特異的なCD8+T細胞が重要である。長期的な非進行性患者は、進行性患者からのものよりも優れた機能性プロファイルがある、HIV特異的CD8+T細胞を維持する。したがって、T細胞がウイルスエスケープ変異型を認識できず、漸進的に枯渇して、最終的にHIVに対する機能障害性免疫応答を維持するので、進行性の慢性HIV感染中には、最初は堅牢であったCD8+T細胞の細胞溶解およびサイトカイン産生漸減する。HIV特異的CD8+T細胞の効力を維持することで、ウイルス感染細胞の除去が促進され、ウイルス血症緩和され、疾患進行が遅くなる。

0022

モノクローナル抗体(mAbs)の受動的投与は、ウイルス感染の治療のための有望な治療プラットフォームである。ウイルス免疫療法では、二重特異性抗体工学は、例えば、提案された作用機序と一致するように多機能分子を調節して、ウイルス及び宿主構成要素の双方を同時に標的化する機会を提供する。

発明が解決しようとする課題

0023

本発明の目的は、ウイルスペプチドMHC複合体を標的化でき、容易に製造され得て、高い安定性を示し、それぞれの抗原エピトープに結合した際に高い効力を与える、改善された二重特異性分子を提供することである。本発明のその他の目的および利点は、以下の説明およびその好ましい実施形態、ならびにそれぞれの実施例を検討すれば明らかになるであろう。

課題を解決するための手段

0024

本発明の第1の態様では、上記の目的は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含む分子の群から選択される二重特異性ポリペプチド分子を提供することによって解決され、
第1のポリペプチド鎖は、ヒト免疫エフェクター細胞の細胞表面抗原に特異的に結合する抗体の可変ドメイン(VD1)の第1の結合領域を含んでなり、TCRの可変ドメイン(VR1)の第1の結合領域は、MHC関連ウイルスペプチドエピトープに特異的に結合し、第1のリンカー(LINK1)は前記ドメインを連結し;
第2のポリペプチド鎖は、MHC関連ウイルスペプチドエピトープに特異的に結合するTCRの可変ドメイン(VR2)の第2の結合領域を含んでなり、抗体の可変ドメイン(VD2)の第2の結合領域は、ヒト免疫エフェクター細胞の細胞表面抗原に特異的に結合し、第2のリンカー(LINK2)は前記ドメインを連結し;
前記第1の結合領域(VD1)および前記第2の結合領域(VD2)は結合して、細胞表面分子のエピトープに結合する第1の結合部位(VD1)(VD2)を形成し;
前記第1の結合領域(VR1)および前記第2の結合領域(VR2)は結合して、前記MHC関連ウイルスペプチドエピトープに結合する第2の結合部位(VR1)(VR2)を形成し;
前記2つのポリペプチド鎖は、ヒトIgGヒンジドメインおよび/またはヒトIgGFcドメインまたはその二量体化部分に融合し;前記2つのポリペプチド鎖は、前記ヒンジドメインおよび/またはFcドメイン間の共有結合および/または非共有結合によって連結され;
前記二重特異性ポリペプチド分子は、細胞表面分子およびMHC関連ウイルスペプチドエピトープに同時に結合でき、二重特異性ポリペプチド分子中では、ポリペプチド鎖中の結合領域の順序が、VD1−VR1;VD1−VR2;VD2−VR1;VD2−VR2;VR1−VD1;VR1−VD2;VR2−VD1;VR2−VD2から選択され、ドメインはLINK1またはLINK2のどちらかによって連結され、好ましくは、2つのポリペプチド鎖中の結合領域の順序は、VD1−VR1およびVR2−VD2またはVD1−VR2およびVR1−VD2、またはVD2−VR1およびVR2−VD1またはVD2−VR2およびVR1−VD1から選択され、ドメインは、LINK1またはLINK2のどちらかによって連結される。

0025

第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含んでなる、二重特異性ポリペプチド分子が好ましく、第1のポリペプチド鎖は、前記細胞の表面抗原に特異的に結合することによってヒト免疫エフェクター細胞を動員できる抗体に由来する、第1の結合領域の可変ドメイン(VD1)、およびMHC関連ウイルスペプチドエピトープに特異的なTCRに由来する、可変ドメイン(VR1)の第1の結合領域、および2つのドメインを連結する第1のリンカー部分(LINK1)を含んでなり;第2のポリペプチド鎖は、MHC関連ウイルスペプチドエピトープに特異的なTCRに由来する、可変ドメイン(VR2)の第2の結合領域、および前記細胞の表面抗原に特異的に結合することによってヒト免疫エフェクター細胞動員できる抗体に由来する、第2の結合領域の可変ドメイン(VD2)、および2つのドメインを連結する第2のリンカー部分(LINK2)を含んでなり;前記第1の結合領域(VD1)および前記第2の結合領域(VD2)は結合して、細胞表面分子のエピトープに結合する第1の結合部位(VD1)(VD2)を形成し;前記第1の結合領域(VR1)および前記第2の結合領域(VR2)は結合して、前記MHC関連ペプチドエピトープに結合する第2の結合部位(VR1)(VR2)を形成し;前記ポリペプチド鎖の少なくとも1つは、そのC末端で、ヒトIgG由来のヒンジ領域、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメインまたはその部分に結合され;前記二重特異性ポリペプチド分子は、免疫エフェクター細胞抗原とMHC関連ペプチドエピトープとに同時に結合できる。

0026

好ましくは、本発明による二重特異性ポリペプチド分子は、ペプチドMHC複合体として提示される、免疫エフェクター細胞抗原および特異的抗原エピトープの双方に、例えば、実施例6に記載されるようなバイオレイヤー干渉法による測定で、またはフローサイトメトリーによる判定で、例えば、約100nM以下、約30nM以下、約10nM以下、約3nM以下、約1nM以下の結合親和性(KD)などの高い特異性で結合する。

0027

本発明による二重特異性ポリペプチド分子は、配列番号16または配列番号43または配列番号45または配列番号51、53、55、または57を含んでなる第1のポリペプチド鎖と配列番号17または配列番号44または配列番号46または配列番号52、54、56、または58を含んでなる第2のポリペプチド鎖とを含んでなる、二重特異性ポリペプチド分子によって、本明細書で例示される。

0028

本発明の第2の態様では、上記の目的は、本明細書で開示されるような第1のポリペプチド鎖および/または第2のポリペプチド鎖をコードする核酸、またはこのような核酸を含んでなる発現ベクターを提供することによって解決される。本発明の第3の態様では、上記の目的は、本明細書で定義されるようなベクターを含んでなる宿主細胞を提供することによって解決される。

0029

本発明の第4番の態様では、上記の目的は、開示されるような適切な宿主細胞内における核酸を含んでなる前記発現ベクターの適切な発現、および細胞および/またはその培地からの分子の適切な精製を含んでなる、本発明による二重特異性ポリペプチド分子を製造する方法を提供することによって解決される。

0030

本発明の第5の態様では,上記の目的は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共に、本発明による二重特異性ポリペプチド分子、本発明による核酸または発現ベクター、または本発明による細胞を含んでなる医薬組成物を提供することによって解決される。

0031

本発明の第6の態様では、本発明は、医療で使用するための、本発明による二重特異性ポリペプチド分子、本発明による核酸または発現ベクター、本発明による細胞、または本発明による医薬組成物に関する。

0032

本発明の第7の態様では、本発明は、本明細書で開示されるような、特にがんおよび感染性疾患から選択される疾患または障害の治療で使用するための、本発明による二重特異性ポリペプチド分子、本発明による核酸または発現ベクター、本発明による細胞、または本発明による医薬組成物に関する。

0033

本発明の第8の態様では、本発明は、本発明による二重特異性ポリペプチド分子、本発明による核酸または発現ベクター、本発明による細胞、または本発明による医薬組成物の治療的有効量を投与するステップを含んでなる、疾患または障害を治療する方法に関する。

0034

本発明の第9の態様では、本発明は、本発明による二重特異性ポリペプチド分子または本発明による医薬組成物の治療的有効量を投与するステップを含んでなる、患者または対象において免疫応答を引き起こす方法に関する。

0035

第の10の態様では、本発明は、本発明による二重特異性ポリペプチド分子の有効量を患者に投与するステップを含んでなる、患者または対象において標的細胞を死滅させる方法に関する。

0036

上述したように、本発明は、新規かつ改善された二重特異性ポリペプチド分子を提供する。分子は、一般に第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含んでなり、鎖は、共同して、免疫エフェクター細胞表面抗原のエピトープに特異的な抗体の可変領域と、例えば、HIVなどのウイルス感染症などのMHC関連ペプチドエピトープに特異的なTCRの可変領域とを提供する。抗体およびTCR由来可変ドメインは、双方のポリペプチド鎖上に位置するFc部分またはその部分の間に形成される共有結合および非共有結合によって安定化される。次に、二重特異性ポリペプチド分子は、細胞受容体およびMHC関連ペプチドエピトープに同時に結合できる。

0037

本発明の文脈では、可変ドメイン(VD1)および(VD2)は、前記エフェクター細胞の表面抗原に特異的に結合する、ヒト免疫エフェクター細胞を動員できる抗体に由来する。特定の一実施形態では、前記抗体は、ペプチド鎖TCRα、TCRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、およびCD3ζを含んでなる、ヒトT細胞のTCR−CD3複合体のエピトープに特異的に結合する。

0038

本発明による二重特異性ポリペプチド分子は、前記細胞の表面抗原に特異的に結合することによってヒト免疫エフェクター細胞を動員できる抗体に由来する、可変ドメインの第1の(VD1)および第2の(VD2)結合領域をそれぞれ提供する、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチド鎖を含んでなる。この第1の結合領域(VD1)および前記第2の結合領域(VD2)は結合して、免疫エフェクター細胞表面抗原のエピトープに結合する、第1の結合部位(VD1)(VD2)を形成する。さらに、ポリペプチド分子の第1および第2のポリペプチド鎖は、MHC関連ウイルスペプチドエピトープに特異的なTCRに由来する、可変ドメインの第1の(VR1)および第2の(VR2)結合領域をそれぞれ含んでなる。前記第1の結合領域(VR1)および前記第2の結合領域(VR2)は結合して、前記MHC関連ペプチドエピトープに結合する第2の結合部位(VR1)(VR2)を形成する。本発明による二重特異性ポリペプチド分子の一実施形態では、第1のポリペプチド鎖中の領域の順序/配向は、VD1−LINK1−VR1およびVR1−LINK1−VD1から選択され;別の実施形態では、第2のポリペプチド鎖中の領域の順序/配向は、VD2−LINK2−VR2およびVR2−LINK−VD2から選択され、すなわち、結合部位の配置は、「左回り」または「右回り」分子に再配置され得る(例えば、図5を参照されたい)。さらに、TCR関連部分のαおよびβ鎖の立体配置切り替え得る。

0039

本発明の文脈では、本発明による二重親和性ポリペプチド分子は、ペプチドMHC複合体として提示される場合、HIV由来SLYNTVATLペプチド(配列番号7)に結合するコンストラクトによって例示される。それにもかかわらず、本発明の概念は、明らかにこの特定のペプチドに限定されず、MHC分子との関連で提示される任意のイルス感染症または障害関連エピトープを基本的に含む。この提示は、MHCクラスIまたはII関連の双方であり得る。主要組織適合性複合体クラスI(MHC−I)分子は、全ての有核細胞の表面に存在し、CD8+T細胞レパートリーによる監視のために、大規模一連ペプチドエピトープを提示する。CD8+T細胞応答は、ウイルス感染症の制御およびクリアランスに、ならびに形質転換および腫瘍形成細胞の排除に必須である。認識される好ましいペプチドエピトープの例は、それぞれの文献に見いだされ得て、特に、国際公開第2016/170139号パンフレットの表1〜5;国際公開第2016/102272号パンフレットの表1〜5;国際公開第2016/156202号パンフレットの表1または2;国際公開第2016/146751号パンフレットの表1〜4;国際公開第2011/113819号パンフレットの表2;国際公開第2016/156230号パンフレットの表1〜4b;国際公開第2016/177784号パンフレットの表1〜4b;国際公開第2016/202963号パンフレットの表1〜4;国際公開第2016/207164号パンフレットの表1および2;国際公開第2017/001491号パンフレットの表1〜4;国際公開第2017/005733号パンフレットの表1〜4;国際公開第2017/021527号パンフレットの表1〜8;国際公開第2017/036936号パンフレットの表1〜3;がん治療のためのPCT/EP出願第2016/073416号明細書の表1〜4、米国特許出願公開第2016−0187351号明細書、米国特許出願公開第2017−0165335号明細書、米国特許出願公開第2017−0035807号明細書、米国特許出願公開第2016−0280759号明細書、米国特許出願公開第2016−0287687号明細書、米国特許出願公開第2016−0346371号明細書、米国特許出願公開第2016−0368965号明細書、米国特許出願公開第2017−0022251号明細書、米国特許出願公開第2017−0002055号明細書、米国特許出願公開第2017−0029486号明細書、米国特許出願公開第2017−0037089号明細書、米国特許出願公開第2017−0136108号明細書、米国特許出願公開第2017−0101473号明細書、米国特許出願公開第2017−0096461号明細書、米国特許出願公開第2017−0165337号明細書、米国特許出願公開第2017−0189505号明細書、米国特許出願公開第2017−0173132号明細書、米国特許出願公開第2017−0296640号明細書、米国特許出願公開第2017−0253633号明細書、および米国特許出願公開第2017−0260249号明細書で開示されるようなペプチドが挙げられ、これらの出願のそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の態様では、本発明による二重親和性ポリペプチド分子は、前述の特許出願に記載されるペプチドのいずれかからなるペプチドを認識する。

実施例

0040

一態様では、本発明による二重親和性ポリペプチド分子は、8〜100アミノ酸、8〜30アミノ酸、8〜16アミノ酸、好ましくは8〜14アミノ酸の全長、すなわち8、9、10、11、12、13、14アミノ酸を有する、1つまたは複数のウイルスペプチドに結合し、または特異的に認識され/結合でき、伸長されたクラスII結合ペプチドの場合、長さはまた、15、16、17、18、19、20、21または22アミノ酸であり得る。さらに別の態様では、本発明による二重親和性ポリペプチド分子は、8〜12アミノ酸、8〜10アミノ酸、9〜15アミノ酸、9〜14アミノ酸、9〜13アミノ酸、9〜12アミノ酸、9〜11アミノ酸;10〜15アミノ酸、10〜14アミノ酸、10〜13アミノ酸、または10〜12アミノ酸の全長のもう1つのウイルスペプチドに結合し、または特異的に認識し/結合できる。

0041

その他の適切なエピトープは、例えば、免疫エピトープデータベース(www.iedb.orgで利用できる)などのデータベースから同定され得る。本発明のコンストラクトによって標的化されるウイルスペプチドは、HIV、HCVHBVヘルペス、HPVEBVなどのMHCによるこのようなペプチドの提示をもたらす、任意のウイルス感染に由来し得る。

0042

「ヒト免疫エフェクター細胞」という用語は、活性化された場合、標的細胞の生存率の変化をもたらすことができる、ヒト免疫系における細胞の天然レパートリー内の細胞を指す。「標的細胞の生存能力」という用語は、本発明の範囲内で、生存し、増殖しおよび/またはその他の細胞と相互作用する、標的細胞の能力を指してもよい。このような相互作用は、例えば、標的細胞が別の細胞に接触する場合は、直接的であってもよく、または、例えば、標的細胞が別の遠位の細胞の機能に影響を及ぼす物質分泌する場合は、間接的であってもよい。標的細胞は、ヒトにとって天然または外来性のどちらであってもよい。細胞がヒトに天然である場合、標的細胞は、有利には、悪性細胞になるように形質転換された細胞である。天然細胞はさらに、例えば、ウイルス、プラスモジウムまたは細菌などの生物に感染した天然細胞などの病的に改変された天然細胞であってもよい。細胞がヒトにとって外来性である場合、標的細胞は、有利には、例えば、侵入細菌またはプラスモジウムなどの侵入病原体である。

0043

本発明による二重特異性ポリペプチド分子は、前記第1および第2のポリペプチド鎖が、少なくとも1つのヒンジドメインおよび/またはFcドメインまたはその一部をさらに含んでなることが好ましい。抗体において、「ヒンジ」または「ヒンジ領域」または「ヒンジドメイン」は、CH1ドメインとCH2ドメインとの間に位置する重鎖の可撓性の部分を指す。それは約25アミノ酸長であり、「上部ヒンジ」、「中部ヒンジ」または「コアヒンジ」および「下部ヒンジ」に分けられる。「ヒンジサブドメイン」は、上部ヒンジ、中部(またはコア)ヒンジまたは下部ヒンジを指す。IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4分子のヒンジのアミノ酸配列は、次のとおりである(EU番号が示される):
IgG1:E216PKSCDKTHTCPPCPAPELLG(配列番号1)
IgG2:E216RKCCVECPPCPAPPVAGP(配列番号2)
IgG3:ELKTPGDTTHTCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPE216PKSCDTPPPCPRCPAPELLG(配列番号3)
IgG4:E216SKYGPPCPSCPAPFLG(配列番号4)。
コアヒンジ領域は、通常、2つの重鎖を連結する少なくとも1つのシステイン架橋を含有する。さらに、望ましくない抗体依存性細胞媒介性細胞傷害ADCC)を改善するために、下部ヒンジ領域に変異を作製し得る。

0044

少なくとも1つのIgG結晶形成フラグメント(Fc)ドメイン、すなわち、結晶形成フラグメント領域(Fc領域)、Fc受容体と相互作用する抗体の尾部領域、および補体系のいくつかのタンパク質を含んでなる、本発明による二重特異性ポリペプチド分子が好ましい。Fc領域は、各ポリペプチド鎖中に、2つまたは3つの重鎖定常ドメイン(CHドメイン2、3、および4)を含有する。IgGのFc領域はまた、高度に保存されたNグリコシル化部位も保有する。Fc断片グリコシル化は、Fc受容体媒介性活性にとって必須である。BiTE(登録商標)およびDART(約50kD)のような小さなサイズの二重特異性抗体フォーマットは、迅速なクリアランスおよび短い半減期をもたらし得る。したがって、改善された薬物動態特性のために、scTv細胞受容体(例えば、CD3)二重特異性ポリペプチド分子は、(ヒトIgG1)Fcドメインに融合され得て、それによって分子量が増加される。T250Q/M428LおよびM252Y/S254T/T256E+H433K/N434FなどのCH2とCH3ドメインの境界面にあるいくつかの変異は、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性と、生体内IgG1の半減期とを増加させることが示されている、これによって、Fc含有分子の血清半減期は、さらに延長され得る。

0045

本発明の二重特異性ポリペプチド分子において、前記Fcドメインは、少なくとも1つのエフェクター機能サイレンシング変異を含んでなるCH2ドメインを含んでなり得る。好ましくは、これらの変異体は、エフェクター機能に関連することが知られている、ヒトIgG1のELLGGP(配列番号50)配列(残基233〜238)またはその他のアイソタイプの対応する残基)に導入される。原理的に、IgG2および/またはIgG4由来残基に対応する1つまたは複数の変異が、IgG1 Fcに導入される。E233P、L234V、L235Aであり、236位に残基は存在せずまたはGであることが好ましい。別の変異は、P331Sである。欧州特許第1075496号明細書は、2つ以上のヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインに由来するキメラドメインを含んでなる、組換え抗体を開示し、そのヒト免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、およびIgG4から選択され、キメラドメインは、記載された位置に、EU番号付与体系に従って233P、234V、235A、236位に残基は存在せずまたはGであり、327G、330S、および331Sのアミノ酸ブロックを有する、ヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインであり、前記修飾アミノ酸を有するヒトIgG1、IgG2またはIgG4由来CH2配列(残基231〜340)と、少なくとも98%同一である。

0046

使用される好ましいCH2部分配列の例は、(完全にまたは部分的に)次のようであり得て:
231−APPVA−GPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYQSTYRVVSVLTLHDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEK−334(配列番号5);
および
231−APPVA−GPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEK−334(配列番号6)、変化は下線で強調され、297位に、N(グリコシル化変異型)が、またはA、G、およびQ(脱グリコシル化変異型)の群から選択される残基がある。

0047

本発明の二重特異性ポリペプチド分子において、前記Fcドメインは、ヘテロ二量体の形成を容易にする、少なくとも1つの変異を含んでなるCH3ドメインを含んでなり得る。所望のヘテロ二量体二重特異性Fcタンパク質の収率最大化し、精製を単純化するために、「ノブ・イン・ホール」変異がFcドメインに組み込まれ得る。この設計により、1つの鎖に突出した嵩高い疎水性残基(「ノブ」)を付加し、もう1つの鎖に相補的疎水性ポケット(「ホール」)を作製することによって、Fcドメインは、それらの通常のホモ二量体の代わりにヘテロ二量体を形成することを促される。「ノブ」変異型は、小型残基で大型残基を置換することによって作製された反対側のドメイン中の「ホール」に挿入するために、より大きなアミノ酸で小型アミノ酸を置換することによって得られ得る(Ridgway,J.B.B.;Presta,L.G.;Carter,P.”Knobs−into−holes”engineering of antibody CH3 domains for heavy chain heterodimerization.Protein Eng.1996,9,617−621;国際公開第2002/002781号パンフレット)。

0048

前記ノブ・イン・ホール変異が、CH3ドメイン中でノブとしてのT366Wと、ホールとしてのT366’S、L368’A、およびY407’Vとから選択される、本発明による二重特異性ポリペプチド分子が好ましい(例えば、国際公開第98/50431号パンフレットを参照されたい)。この変異のセットは、Wei et al.(Structural basis of a novel heterodimeric Fc for bispecific antibody production,Oncotarget.2017)によって記載されるように、K409AおよびF405’Kの変異を組み入れることによって、さらに拡張され得る。別のノブはT366Y、ホールはY407’Tであり得る。

0049

本発明の二重特異性ポリペプチド分子は、分子の安定性を改善するために、至適には二価の分子の結合特性干渉することなく、および/または改善されたヘテロ二量体化のために、第1のポリペプチド鎖上の少なくとも1つのシステイン残基と、第2のポリペプチド鎖上の少なくとも1つのシステイン残基との間の人工的に導入されたシステイン架橋をさらに含んでなり得る。安定性を高めるために、ノブ鎖およびホール鎖の双方のCH3ドメインに単一のシステインを付加することによって、ジスルフィド結合が導入され得る。Fcドメインが、例えば、S354Cおよび/またはY349Cなどの少なくとも1つの追加的なシステイン残基を含んでなる、CH3ドメインを含んでなる、本発明による二重特異性ポリペプチド分子が好ましい。

0050

前記CD分子が、CD3γ、CD3δ、およびCD3ε鎖、CD4、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD18、CD22、CD25、CD28、CD32a、CD32b、CD33、CD41、CD41b、CD42a、CD42b、CD44、CD45RA、CD49、CD55、CD56、CD61、CD64、CD68、CD94、CD90、CD117、CD123、CD125、CD134、CD137、CD152、CD163、CD193、CD203c、CD235a、CD278、CD279、CD287、Nkp46、NKG2D、GITR、FcεRI、TCRα/β、TCRγ/δ、およびHLA−DRなどの免疫応答関連CD分子であるCD3の群から選択される、本発明による二重特異性ポリペプチド分子が好ましい。本発明による二重特異性ポリペプチド分子の2つの抗原結合実体組合せ次第で、分子の機能に関する特定の利点、特に活性の増強が達成され得る。

0051

第1のポリペプチド鎖中の前記領域が、VD1では配列番号28、VR1では配列番号29、LINK2では配列番号30を含んでなり;第2のポリペプチド鎖中の前記領域が、VD32では配列番号31、VR2では配列番号32、LINK2では配列番号30を含んでなる、本発明による例示的な二重特異性ポリペプチド分子が好ましい。

0052

第1のポリペプチド鎖中のFc領域が配列番号26(Fc1)を含んでなり、第2のポリペプチド鎖中のFc領域が配列番号27(Fc2)を含んでなる、本発明による例示的な二重特異性ポリペプチド分子もさらに好ましい。

0053

配列番号16(完全分子の鎖1)を含んでなる第1のポリペプチド鎖と、配列番号17(完全分子の鎖2)を含んでなる第2のポリペプチド鎖とを含んでなる、本発明による二重特異性ポリペプチド分子がさらに好ましい。さらに好ましいのは、配列番号51、53、55、または57をを含んでなる第1のポリペプチド鎖(1.完全分子の鎖)と、配列番号52、54、56、または58(2.完全分子の鎖)を含んでなる第2のポリペプチド鎖とを含んでなる、本発明による二重特異性ポリペプチド分子である。

0054

ヒト免疫細胞(例えば、CD3)の表面抗原のエピトープに結合する前記第1の結合部位(VD1)(VD2)がヒト化され;および/または前記MHC関連ウイルスペプチドエピトープに結合する前記第2の結合部位(VR1)(VR2)が親和性成熟している、本発明による例示的な二重特異性ポリペプチド分子がなおさらに好ましい。

0055

ヒト化抗体は、ヒトで天然に産生された抗体変異型との類似性を高めるために、タンパク質配列が修飾されている非ヒト種由来抗体(またはその部分)である。「ヒト化」のプロセスは、通常、ヒトへの投与のために開発されたモノクローナル抗体で用いられる(例えば、抗がん剤として開発された抗体)。ヒト化に適した方法は文献から公知であり、例えば、Olimpieri,Pier Paolo,Paolo Marcatili,and Anna Tramontano.”Tabhu:Tools for Antibody Humanization.”Bioinformatics 31.3(2015):434−435.PMC;Safdari Y,Farajnia S,Asgharzadeh M,Khalili M.Antibody humanization methods−a review and update.Biotechnol Genet Eng Rev.2013;29:175−86;またはAhmadzadeh V,Farajnia S,Feizi MA,Nejad RA.Antibody humanization methods for development of therapeutic applications.Monoclon Antib Immunodiagn Immunother.2014 Apr;33(2):67−73で概説される。

0056

一般に、TCRおよび抗体の生体外親和性成熟は、文献に記載される方法に従って、特に酵母またはファージ表面提示を用いて実施され得る(例えば、Holler PD,et al.In vitro evolution of a T cell receptor with high affinity for peptide/MHC.Proc Natl Acad Sci USA.2000 May 9;97(10):5387−92;Boder ET et al.,Directed evolution of antibody fragments with monovalent femtomolar antigen−binding affinity.Proc Natl Acad Sci USA.2000 Sep 26;97(20):10701−5;および最近の例として、Zhao Q,et al.Affinity maturation of T−cell receptor−like antibodies for Wilms tumor 1 peptide greatly enhances therapeutic potential.Leukemia.2015;29(11):2238−2247に基づいて)。

0057

本明細書の結合部位(VD1)(VD2)および(VR1)(VR2)は、好ましくは、それぞれ、ヒト免疫細胞の表面抗原およびウイルスペプチド−HLA分子複合体に特異的に結合する。本明細書の用法では、本明細書の結合部位に関連して、「特異的結合」およびその文法変種は、ペプチド−HLA分子複合体および/または抗体エピトープに対して、100μM以下の結合親和性(KD)を有する部位を意味するために使用される。本明細書の結合部位(VD1)(VD2)および(VR1)(VR2)は、CD抗体エピトープまたはペプチド−HLA分子複合体に、それぞれ、約100μM以下、約50μM以下、約25μM以下、または約10μM以下の結合親和性(KD)で結合する。約1μM以下、約100nM以下、約50nM以下、約25nM以下、約10nM以下、約5nM以下、約2nM以下、約1nM以下、約500pM以下、約200pM以下、約100pM以下の結合親和性を有する、高親和性結合部位がより好ましい。本発明の結合部位の好ましい結合親和性範囲の非限定的例としては、例えば、実施例6に記載されるようなバイオレイヤー干渉法による測定で、約10pM〜約100pM、100pM〜約1nM、1nM〜約10nM;約10nM〜約20nM;約20nM〜約30nM;約30nM〜約40nM;約40nM〜約50nM;約50nM〜約60nM;約60nM〜約70nM;約70nM〜約80nM;約80nM〜約90nM;および約90nM〜約100nMが挙げられる。一態様では、本開示は、例えば、アミノ酸配列1〜58などの本明細書に記載されるアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを提供する。別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する第1または第2のポリペプチドを提供する。さらに別の態様では、本開示は、本明細書に記載される1つまたは複数のアミノ酸配列と、少なくとも50%の配列同一性、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、二重特異性ポリペプチド分子を提供する。本開示は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性百分率が、例えば、VD1、VR1、Link1、VR2、VD2、Link2、またはヒンジ領域などの図1に記載され、本明細書で開示される配列に記載され、またはその部分であるような構造領域の配列のいずれかに適用される態様をさらに提供する。一態様では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは二重特異性ポリペプチド分子は、アミノ酸置換欠失、切断、および1つまたは複数のアミノ酸の挿入などの様々な様式で改変されてもよい。別の態様では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは二重特異性ポリペプチド分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50以上のアミノ酸置換、欠失または挿入を含んでもよい。さらに別の態様では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは二重特異性ポリペプチド分子は、1〜5、1〜10、1〜20、2〜5、2〜10、5〜20、5〜50、または10〜100アミノ酸置換、欠失または挿入を含んでもよい。一態様では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50以上のアミノ酸置換、欠失または挿入が、例えば、VD1、VR1、Link1、VR2、VD2、Link2、またはヒンジ領域などの図1に記載される構造領域のいずれかに適用される。本開示は、例えば、VD1、VR1、Link1、VR2、VD2、Link2、またはヒンジ領域などの図1に記載され、本明細書で開示される配列に記載され、またはその部分であるような構造領域のいずれかの配列に、1〜5、1〜10、1〜20、2〜5、2〜10、5〜20、5〜50、または10〜100アミノ酸の置換、欠失または挿入が適用される態様をさらに提供する。

0058

一態様では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50またはそれ以上アミノ酸が、例えば、アミノ酸配列1〜58などの本明細書に記載されるポリペプチドまたは二重特異性ポリペプチド分子のN末端またはC末端に付加されてもよい。
一態様では、VD1は、配列番号28のアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有してもよい。

0059

一態様では、VR1は、配列番号29のアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有してもよい。

0060

一態様では、LINK1またはLINK2は、配列番号30のアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有してもよい。

0061

一態様では、VD2は、配列番号31のアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有してもよい。

0062

一態様では、VR2は、配列番号32のアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有してもよい。

0063

一態様では、ヒンジは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4のアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有してもよい。一態様では、CH2ドメインは、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有してもよい。
一態様では、Fc領域は、配列番号26または配列番号6のアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有してもよい。

0064

一態様では、本開示は、配列番号43、44、45、または46のアミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを提供する。
一態様では、本明細書で開示されるようなポリペプチドまたは二重特異性ポリペプチド分子は、ポリペプチド鎖内の異なる、場合により選択的な部位における、1つまたは複数の残基の置換によって修飾され得る。このような置換は、保存的性質であってもよく、例えば、疎水性アミノ酸が別の疎水性アミノ酸によって置換されるなど、構造および特徴の類似したアミノ酸によってアミノ酸が置換される。さらにより保存的な置換は、ロイシンイソロイシンによる置換などの、同一または類似サイズおよび化学的性質のアミノ酸の置換である。天然起源相同タンパク質ファミリーの配列多様性の研究では、特定のアミノ酸置換は、他よりも耐容されることが多く、これらは、元のアミノ酸とその置換物との間のサイズ、電荷極性、および疎水性の類似性との相関を示すことが多く、これが「保存的置換」の定義の基礎である。

0065

本発明による二重特異性ポリペプチド分子の別の好ましい実施形態では、前記分子は、それに結合またはコンジュゲートする、活性薬剤またはその一部を保有する。前記活性薬剤は、検出可能な標識、免疫賦活性分子、および治療剤からなる群から選択され得る。

0066

検出可能な標識は、ビオチンストレプトアビジン酵素またはその触媒活性断片放射性核種ナノ粒子常磁性金属イオン、または蛍光性リン光性、または化学発光分子からなる群から選択され得る。診断目的で検出可能な標識としては、例えば、蛍光標識、放射性標識、酵素、核酸プローブ、およびコントラスト試薬が挙げられる。

0067

本発明の分子に関連してもよい治療剤としては、免疫修飾物質放射性化合物、酵素(例えば、パーフォリン)、化学療法剤(例えば、シスプラチン)または毒素が挙げられる。その他の適切な治療剤としては、小分子細胞傷害性薬、すなわち哺乳類細胞を死滅させる能力を有する700ダルトン未満の分子量を有する化合物が挙げられる。このような化合物はまた、細胞傷害性効果を有することができる毒性金属を含有し得る。さらに、これらの小分子細胞傷害性薬は、また、プロドラッグ、すなわち崩生理的条件下崩壊しまたは変換されて、細胞傷害性薬を放出する化合物も含むものと理解される。このような薬剤の例としては、シスプラチン、メイタンシン誘導体、ラケルマシンカリケアマイシンドセタキセルエトポシドゲムシタビンイホスファミドイリノテカンメルファランミトキサントロン、ソルフィマーナトリウムフォトフリンIIテモゾロマイドトポテカングルクロン酸トリメトレキサートオーリスタチンビンクリスチン、およびドキソルビシン;ペプチド細胞傷害性薬、すなわち哺乳類細胞を死滅させる能力があるタンパク質またはその断片が挙げられる。例えば、リシンジフテリア毒素シュードモナス細菌外毒素A、DNaseおよびRNase;放射性核種、すなわち、αまたはβ粒子またはγ線の1つまたは複数の同時放出で崩壊する元素不安定同位体。例えば、ヨウ素−131、レニウム−186、インジウム−111、イットリウム−90、ビスマス−210および−213、アクチニウム−225、およびアスタチン−213;これらの放射性核種と分子またはその多量体との会合を容易にするために、キレート剤が使用されてもよい;免疫刺激剤、すなわち、免疫応答を刺激する免疫エフェクター分子。例えば、IL−2およびIFN−γなどのサイトカイン;IL−8、血小板因子4、黒色腫増殖刺激タンパク質などのケモカイン補体活性化因子;または異種タンパク質ドメイン;同種異系タンパク質ドメイン;ウイルス/細菌タンパク質ドメイン;ウイルス/細菌ペプチド

0068

次に、本発明の別の態様は、本明細書に開示される第1のポリペプチド鎖および/または第2のポリペプチド鎖をコードする核酸分子、またはそのような核酸を含んでなる発現ベクターに関する。核酸分子は、DNA、cDNA、PNA、RNA、およびそれらの組み合わせであり得る。特定のペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、天然起源であってもよく、またはそれらは合成的に構築されてもよい。一般に、本発明のペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質をコードするDNA断片は、cDNAフラグメントおよび短いオリゴヌクレオチドリンカーから構築され、またはひと続きオリゴヌクレオチドから構築されて、微生物またはウイルスオペロンに由来する調節因子を含んでなる、組換え転写単位で発現できる合成遺伝子が提供される。「発現産物」という用語は、遺伝子の、そして遺伝コード縮重に起因する同等物をコードし、したがって同一アミノ酸をコードする任意の核酸配列の、天然翻訳産物であるポリペプチドまたはタンパク質を意味する。コード配列に言及する場合、「断片」という用語は、その発現産物が、完全コード領域の発現産物と本質的に同一の生物学的機能または活性を保つ、完全未満のコード領域を含んでなるDNAの部分を意味する。意図される用途に応じて、核酸は、適切な(例えば、微生物)宿主細胞における発現のためにコドン最適化され得る。遺伝コードの重複は、いくつかのアミノ酸が2つ以上のコドンによってコードされるようにするが、特定のコドンは、適合tRNAの相対可用性ならびにその他の要因のために、他のものよりも「最適」でない(Gustafsson et al.,2004)。

0069

核酸は、それがポリペプチド鎖をコードしさえすれば、例えば、一本鎖および/または二本鎖のいずれかのDNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよく、または例えばホスホロチオエート主鎖を有するポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの未変性または安定化形態であってもよく、それはイントロンを含有してもまたはしなくてもよい。

0070

次に、核酸(例えば、DNA)は、本発明のポリペプチド鎖を含んでなるポリペプチドを産生するのに適した宿主に含まれ、および/またはその中で発現されてもよい。したがって、本明細書に含まれる教示を考慮して適切に修正された公知の技術に従って、当該技術分野で公知のように、本発明のポリペプチド鎖をコードする核酸(例えば、DNA)を使用して発現ベクターを構築し、次にそれを使用して、本発明のポリペプチドの発現および産生に適した宿主細胞を形質転換してもよい。本発明の化合物を構成するポリペプチド鎖をコードする核酸(例えば、DNA、またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)は、適切な宿主に導入するために、多種多様なその他の核酸(例えば、DNA)配列に連結されてもよい。コンパニオン核酸は、宿主の性質、DNAの宿主への導入様式、およびエピソームの維持または組み込みが所望されるかどうかに依存する。一般に、核酸は、発現のための適切な方向および正しい読み枠で、プラスミドなどの発現ベクターに挿入される。必要ならば、核酸は、所望の宿主によって認識される適切な転写および翻訳調節制御ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような制御は、一般に発現ベクター中で利用できる。次に、標準的な技術を用いて、ベクターが宿主に導入される。一般に、全ての宿主がベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要になる。一選択技術は、抗生物質耐性などの形質転換細胞内で選択可能な形質をコードする、任意の必要な制御因子を有する核酸配列を発現ベクター内に組み込むことを伴う。代案としては、このような選択可能な形質の遺伝子は、所望の宿主細胞を同時形質転換するのに使用される、別のベクター上にあり得る。次に、本明細書で開示される教示を考慮して、当業者に知られている適切な条件下で十分な時間にわたり、本発明の組換え核酸によって形質転換された宿主細胞が培養されてポリペプチドが発現され、次にそれが回収され得る。

0071

細菌(例えば大腸菌(E.coli)およびバチルスサブチリス(Bacillus subtilis)、酵母(例えばサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌(例えばアスペルギルス属(Aspergillus))、植物細胞動物細胞、および昆虫細胞をはじめとする多数の発現系が知られている。好ましくは、発現系は、ATCCCell Biology Collectionから入手できるCHO細胞などの哺乳類細胞であり得る。

0072

一実施形態では、本明細書は、前記鎖の発現を促進するのに適した条件下で、ポリペプチド鎖を発現できる宿主細胞を培養するステップを含んでなる、本明細書に記載の分子を製造する方法を提供する。

0073

一態様では、本明細書の分子を発現する細胞を得るために、TCR−αおよび/またはTCR−β結合ドメインを含んでなるポリペプチド鎖をコードする核酸が、γレトロウィルスまたはレンチウィルスなどの発現ベクターにクローン化される。別の態様では、本明細書の分子を発現する細胞を得るために、例えば、生体外転写システムなどの当該技術分野で公知の技術によって、RNAが合成される。次に生体外で合成されたRNAは電気穿孔により適切な細胞に導入されて、ポリペプチド鎖が発現される。

0074

発現を増加させるために、本明細書の鎖をコードする核酸は、レトロウイルス末端反復LTR)、サイトメガロウイルス(CMV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)U3、ホスホグリセリン酸キナーゼPGK)、β−アクチンユビキチン、およびシミアンウイルス40SV40)/CD43複合プロモーター伸長因子(EF)−1a、および脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーターなどの強力なプロモーターと作動可能に連結されてもよい。好ましい実施形態では、プロモーターは、発現される核酸に対して異種である。強力なプロモーターに加えて、本明細書の発現カセットは、レンチウイルスコンストラクトの核転座を促進する、中央ポリプリントラクト(cPPT)(Follenzi et al.,2000)、およびRNA安定性を増加させることで導入遺伝子発現のレベルを増加させる、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節因子(wPRE)(Zufferey et al.,1999)をはじめとする導入遺伝子発現を高め得る追加的な要素を含有してもよい。

0075

本発明の分子のαおよびβ結合ドメイン鎖は、別々のベクターにある核酸によってコードされてもよく、または同一ベクターにあるポリヌクレオチドによってコードされてもよい。

0076

一実施形態では、宿主細胞は、本細書の分子を発現するように遺伝子操作される。本明細書の宿主細胞は、治療される患者に関して、同種異系または自己由来であり得る。

0077

本発明のさらに別の態様は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共に、本発明による二重特異性ポリペプチド分子、本発明による核酸または発現ベクター、または本発明による細胞を含んでなる、医薬組成物に関する。本発明の組成物としては、医薬組成物の製造において有用なバルク製剤組成物(例えば、不純または非滅菌組成物)、および単位用量剤形の調製において使用され得る医薬組成物(すなわち、対象または患者への投与に適した組成物)が挙げられる。このような組成物は、本明細書に開示された予防的および/または治療的有効量の予防的および/または治療的二重特異性ポリペプチド分子(薬剤)または薬剤と薬学的に許容可能な担体との組み合わせを含んでなる。好ましくは、本発明の組成物は、本発明の1つまたは複数の分子の予防的または治療的有効量と、薬学的に許容可能な担体とを含んでなる。

0078

医薬組成物は、好ましくは、遊離形態または塩形態のいずれかの分子を含む。好ましくは、塩は、例えば、塩化物塩または酢酸塩トリフルオロ酢酸塩)などの、分子の薬学的に許容可能な塩である。分子は生体内で塩ではないので、本発明による分子の塩は、それらの生体内の状態が分子と実質的に異なることに留意すべきである。

0079

したがって、本発明の実施形態は、薬学的に許容可能な塩として合成的に製造された(例えば、合成された)本発明による非天然分子に関する。ペプチドおよび/またはポリペプチドを合成的に製造する方法は、当該技術分野で周知である。生体内で産生される分子は塩ではないので、本発明による分子の塩は、生体内状態にある分子と実質的に異なる。好ましくは、塩は、分子の薬学的に許容可能な塩である。本発明によるこれらの塩としては、ア二オンとしてのPO43−、SO42−、CH3COO−、Cl−、Br−、NO3−、ClO4−、I−、SCN−およびカチオンとしてのNH4+、Rb+、K+、Na+、Cs+、Li+、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Cu2+、およびBa2+を含んでなるホフマイスター系列塩類などのアルカリ塩およびアルカリ土類塩類が挙げられる。特に塩類は、(NH4)3PO4、(NH4)2HPO4、(NH4)H2PO4、(NH4)2SO4、NH4CH3COO、NH4Cl、NH4Br、NH4NO3、NH4CIO4、NH4I、NH4SCN、Rb3PO4、Rb2HPO4、RbH2PO4、Rb2SO4、Rb4CH3COO、Rb4Cl、Rb4Br、Rb4NO3、Rb4CIO4、Rb4I、Rb4SCN、K3PO4、K2HPO4、KH2PO4、K2SO4、KCH3COO、KCl、KBr、KNO3、KClO4、KI、KSCN、Na3PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、Na2SO4、NaCH3COO、NaCl、NaBr、NaNO3、NaCIO4、NaI、NaSCN、ZnCI2Cs3PO4、Cs2HPO4、CsH2PO4、Cs2SO4、CsCH3COO、CsCl、CsBr、CsNO3、CsCIO4、CsI、CsSCN、Li3PO4、Li2HPO4、LiH2PO4、Li2SO4、LiCH3COO、LiCl、LiBr、LiNO3、LiClO4、LiI、LiSCN、Cu2SO4、Mg3(PO4)2、Mg2HPO4、Mg(H2PO4)2、Mg2SO4、Mg(CH3COO)2、MgCl2、MgBr2、Mg(NO3)2、Mg(ClO4)2、MgI2、Mg(SCN)2、MnCl2、Ca3(PO4),、Ca2HPO4、Ca(H2PO4)2、CaSO4、Ca(CH3COO)2、CaCl2、CaBr2、Ca(NO3)2、Ca(ClO4)2、CaI2、Ca(SCN)2、Ba3(PO4)2、Ba2HPO4、Ba(H2PO4)2、BaSO4、Ba(CH3COO)2、BaCl2、BaBr2、Ba(NO3)2、Ba(ClO4)2、BaI2、およびBa(SCN)2から選択される。例えば、塩化物塩または酢酸塩(トリフルオロ酢酸塩)などのNH酢酸塩、MgCl2、KH2PO4、Na2SO4、KCl、NaCl、およびCaCl2が、特に好ましい。

0080

一態様では、本明細書に記載されるポリペプチドは、薬学的に許容可能な塩の形態である。別の態様では、薬用塩の形態であるポリペプチドは、結晶形態である。

0081

一態様では、本明細書に記載される薬学的に許容可能な塩は、製薬用途に許容される範囲内の毒性プロファイルを有する塩類を指す。

0082

本明細書の用法では、「薬学的に許容可能な塩」は、開示されたペプチドの誘導体を指し、ペプチドは、薬剤の酸性塩または塩基性塩を作製することで修飾される。例えば、適切な酸との反応を伴って、遊離塩基(典型的には中性形態の薬物が中性の−NH2基を有する)から酸性塩が調製される。酸性塩を調製するための適切な酸としては、例えば、酢酸プロピオン酸グリコール酸ピルビン酸シュウ酸リンゴ酸マロン酸コハク酸マレイン酸フマル酸酒石酸クエン酸安息香酸ケイ皮酸マンデル酸メタンスルホン酸エタンスルホン酸p−トルエンスルホン酸サリチル酸などの有機酸、ならびに例えば、塩酸臭化水素酸硫酸硝酸リン酸などの無機酸の双方が挙げられる。逆に、ペプチド上に存在してもよい酸部分の塩基性塩の調製物は、水酸化ナトリウム水酸化カリウム水酸化アンモニウム水酸化カルシウムトリメチルアミンなどの薬学的に許容可能な塩基を使用して調製される。

0083

一態様では、薬学的に許容可能な塩は、本明細書に記載されるペプチドの溶解性および/または安定性を高めてもよい。別の態様では、本明細書に記載の薬用塩類は、例えば、適切な酸または塩基と本明細書に記載のペプチドまたは複合体とを反応させることによって、対応する担体ペプチドまたは複合体から従来の手段によって調製されてもよい。別の態様では、薬学的に許容可能な塩は、結晶形態または半結晶性形態である。さらに別の態様では、薬学的に許容可能な塩としては、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に援用される、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use by P.H.Stahl and C.G.Wermuth(Wiley−VCH 2002)およびL.D.Bighley,S.M.Berge,D.C.Monkhouse,in”Encyclopedia of Pharmaceutical Technology”.Eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,Vol.13,Marcel Dekker,Inc.,New York,Basel,Hong Kong 1995,pp.453−499に記載されるものが挙げられる。

0084

本発明はまた、本発明の二重特異性ポリペプチド分子と、特定のがん抗原に特異的な治療用抗体(例えば、腫瘍特異的モノクローナル抗体)と、薬学的に許容可能な担体とを含んでなる、医薬組成物も包含する。

0085

特定の実施形態では、「薬学的に許容される」という用語は、動物、そしてより特にはヒトで使用するために、連邦または州政府監督官庁によって認可され、または米国薬局方またはその他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療剤がそれと共に投与される希釈剤アジュバント賦形剤、またはビヒクルを指す。このような薬学的担体は、落花生油大豆油鉱物油ゴマ油などの鉱油、動物、植物または合成起源をはじめとする、水および油などの滅菌液体であり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合の好ましい担体である。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液はまた、特に、注射液のための液体担体として用いられ得る。適切な医薬品賦形剤としては、デンプングルコース乳糖スクロースゼラチン麦芽、米、小麦粉白亜シリカゲルステアリン酸ナトリウムモノステアリン酸グリセリン滑石塩化ナトリウムリン酸ナトリウム酢酸ナトリウム、L−ヒスチジン脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、所望ならば、微量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤もまた、含有し得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション錠剤丸薬カプセル粉末持続放出製剤などの形態を取り得る。通常、本発明の組成物の成分は、例えば、活性薬剤の量を表示するアンプルまたは小袋などの密閉容器内の乾燥凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、単位用量剤形で、別々にまたは合わせてのどちらかで提供される。組成物が輸液によって投与される場合、それは滅菌製薬等級水または生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて、調剤され得る。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与に先だって混合されてもよいように、無菌注射用水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。

0086

次に本発明の別の態様は、医療で使用するための、本発明による二重特異性ポリペプチド分子、本発明による核酸または発現ベクター、本発明による細胞、または本発明による医薬組成物に関する。一般に、二重特異性ポリペプチド分子の使用は、下でさらに詳しく説明されるように、前記分子によって認識されるペプチド抗原医学的状況に依存する。

0087

下にも記載されるように、ウイルス感染症から選択される疾患または障害の治療または予防で使用するための、本発明による二重特異性ポリペプチド分子、本発明による核酸または発現ベクター、または本発明による細胞、または本発明による医薬組成物が好ましい。追加的ながんとしては、濾胞性リンパ腫;p53変異を有するがん腫;乳房前立腺、および卵巣ホルモン依存性腫瘍、および家族性腺腫様ポリポーシスなどの前がん性病変;および骨髄異形成症候群が挙げられるが、これに限定されるものではない。特定の実施形態では、卵巣、膀胱、乳房、結腸、皮膚、膵臓、または子宮において、本発明の方法および組成物によって、悪性変化または異常増殖変化(例えば、化生および異形成)または過剰増殖性障害が治療または予防される。別の特定の実施形態では、本発明の方法および組成物によって、肉腫、黒色腫、または白血病が治療または予防される。

0088

本発明は、本発明による二重特異性ポリペプチド分子または本発明による医薬組成物の治療的有効量を投与するステップを含んでなる、患者または対象において免疫応答を引き起こす方法にさらに関する。一態様では、本発明による二重特異性ポリペプチド分子または本発明による医薬組成物の集団が、それを必要とする患者または対象に投与される。

0089

本発明は、本発明による二重特異性ポリペプチド分子の有効量を患者に投与するステップを含んでなる、患者または対象において標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。

0090

本発明はまた、ウイルス疾患に伴う1つまたは複数の症状を予防、治療または管理する方法も提供する。本発明の方法と併用して本発明の分子を用いて治療または予防され得るウイルス性疾患としては、A型肝炎B型肝炎C型肝炎インフルエンザ水痘アデノウイルス単純ヘルペスI型(HSV−I)、単純ヘルペスII型(HSV−II)、牛疫ライノウイルスエコーウイルスロタウイルス呼吸器合胞体ウイルス乳頭腫ウイルスパポバウイルス、サイトメガロウイルス、エコーウイルス、アルボウイルスハンタウイルスコクサッキーウイルスおたふく風邪ウイルス、麻疹ウイルス風疹ウイルスポリオウイルス天然痘エプスタイン・バーウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、およびウイルス髄膜炎脳炎やデングまたは天然痘などのウイルス性疾患の病原体によって引き起こされるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。

0091

次に本発明のさらに別の態様は、本発明による二重特異性ポリペプチド分子、本発明による核酸または発現ベクター、本発明による細胞、または本発明による医薬組成物の治療的有効量を投与するステップを含んでなる、疾患または障害を治療する方法に関する。

0092

本発明の二重特異性ポリペプチド分子は、二重特異性ポリペプチド分子の投与によって改善される疾患または病状を、予防または治療する方法で使用されてもよい。このような治療は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共に、医薬組成物中で提供されてもよい。治療用の二重特異性ポリペプチド分子は、薬学的に許容可能な担体を通常含む滅菌医薬組成物の一部として、通常供給される。この医薬組成物は、(患者に投与する所望の方法に応じて)任意の適切な形態であってもよい。それは、単位用量剤形で提供されてもよく、一般に密閉容器内に提供され、キットの一部として提供されてもよい。このようなキットは、通常(必ずしも必要ではないが)使用説明書を含む。それは、複数の前記単位用量剤形を含んでもよい。医薬組成物は、非経口(皮下、筋肉内、または静脈内をはじめとする)経路などの任意の適切な経路による投与に適合されてもよい。このような組成物は、例えば、滅菌条件下における活性成分と担体または賦形剤との混合などの調剤技術分野で公知の任意の方法によって調製されてもよい。

0093

一態様では、本明細書に記載されるペプチドまたはその他の分子は、水性担体と組み合わされてもよい。一態様では、水性担体は、イオン交換体アルミナステアリン酸アルミニウムステアリン酸マグネシウムレシチンヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質リン酸塩などの緩衝物質グリシンソルビン酸ソルビン酸カリウム飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド合物硫酸プロタミンリン酸水素二ナトリウムリン酸二カルシウムリン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩類または電解質;コロイドシリカ;三ケイ酸マグネシウムポリビニルピロリドン;ポリビニルピロリドン酢酸ビニルセルロースベースの物質(例えば、微結晶セルロースヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸メチルセルロースヒドロキシプロピルヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート);デンプン;乳糖一水和物マンニトールトレハロースラウリル硫酸ナトリウム;およびクロスカルメロースナトリウムポリエチレングリコールナトリウムカルボキシメチルセルロースポリアクリレートポリメタクリレートワックスポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂から選択される。

0094

一態様では、水性担体は、本明細書に記載される構成成分などの非水担体成分と共に、水などの複数の成分を含有する。別の態様では、水性担体は、本明細書に記載されるペプチドまたはその他の分子と組み合わされると、例えば、改善された溶解性、有効性、および/または改善された免疫療法などの改善された特性を与えることができる。さらに組成物は、緩衝液結合剤ブラスチング剤、希釈剤、香料潤滑剤などの賦形剤を含有し得る。「薬学的に許容可能な希釈剤」としては、例えば、生理学的適合性である、溶媒増量剤、安定剤、分散媒コーティング抗菌剤および抗真菌剤等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に許容可能な希釈剤の例としては、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールの1つまたは複数、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。多くの場合、組成物に、例えば、トレハロースおよびスクロースなどの糖、マンニトールおよびソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムなどの1つまたは複数の等張剤を含めることことが好ましい。例えば、湿潤剤または乳化剤、保存料または緩衝剤などの湿潤剤または少量の補助剤などの薬学的に許容可能な物質もまた、本発明の範囲内である。さらに組成物は、緩衝液、結合剤、ブラスチング剤、希釈剤、香料、および潤滑剤などの賦形剤を含有し得る。

0095

本発明の二重特異性ポリペプチド分子の用量は、治療される疾患または障害、治療される個人年齢および病状などに応じて、広い範囲内で変動し得て;例えば、二重特異性ポリペプチド分子の適切な用量範囲は、25ng/kg〜50μg/kgであってもよい。医師が最終的に、使用する適切な用量を決定する。

0096

本発明の医薬組成物、ベクター、核酸、および細胞は、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の純度などの実質的に純粋形態で提供されてもよい。

0097

本発明の各態様の好ましい特徴は、変更すべきところは変更して、その他の各態様に対するものである。本明細書で言及される先行技術文献は、法律で許容される最大範囲に組み込まれる。本発明およびその利点が詳述されているが、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変更、置換、および改変を加え得るものと理解される。例証のみを目的とし、本発明をどのようにも限定することは意図されない以下の実施例によって、本発明をさらに例証する。

図面の簡単な説明

0098

本発明の好ましい実施形態、すなわちヒトIgG1 Fc含有二重特異性ポリペプチド分子の概略図を示す。VD1、VD2=抗体由来可変ドメイン;VR1、VR2=TCR由来可変ドメイン;Link1、Link2=連結リンカー;Cys−Cys=システイン架橋。
本発明の文脈で試験されたIgG Fc含有二重特異性ポリペプチド分子の4つの異なるコンストラクトの概略図を示す。黒色=TCR由来可変ドメイン;淡灰色=抗体由来可変ドメイン;白色=ヒトIgG由来定常ドメイン。ノブ・ホール変異は、円柱によって示される。二重特異性分子IA−IDは、本発明によるものである。
カラム精製プロセスによって精製された、図2に示されるコンストラクトによる分子設計を有する、異なる二重特異性TCR/mAb分子のHPLC−SEC分析を示す。異なる分子の単量体含量は、以下のように判定された。II:93.84%;III:96.54%;IV:98.49%;IA_1:95.48%;IA_3:98.45%;ID_1:95.75%;IC_4:95.22%;IC_5:92.76%;ID_4:99.31%;ID_5:99.44%。
IgG4ベースの分子として設計された異なる二重特異性TCR/mAbコンストラクト(図2に示される)の効力アッセイの結果を示す。Jurkat_NFATRE_luc2細胞は、漸増する濃度の二重特異性TCR(bssTCR)分子の存在下において、HIV−ペプチドSLYNTVATL(配列番号7)負荷T2細胞と共インキュベートされた。二重特異性TCR/mAb二特異性抗体分子IA−IgG4は、2つの代案の二重特異性TCR/mAb分子よりも高い効力を示した。
IgG1ベースの分子として設計された異なる二重特異性TCR/mAbコンストラクト(図2に示される)の効力アッセイの結果を示す。Jurkat_NFATRE_luc2細胞は、漸増する濃度の二重特異性TCR(bssTCR)分子の存在下において、HIV−ペプチドSLYNTVATL(配列番号7)負荷T2細胞と共インキュベートされた。二重特異性TCR/mAb二特異性抗体分子ID_1、IA_3、およびIA1は、3つの代案の二重特異性TCR/mAb分子よりも顕著に高い効力を示した。
どちらもTCR−CD3複合体を標的化する異なる可変抗体ドメインを用いて、異なるIgG1ベース二重特異性TCR/mAbコンストラクト(に示される図2)について行った、効力アッセイの結果を示す。コンストラクトID_1が、UCHT1(V9)抗体標的化CD3の可変ドメインを含んでなるのに対して、コンストラクトID_4およびID_5は、α/βTCR特異的抗体BMA031の可変ドメインを含んでなる。Jurkat_NFATRE_luc2細胞は、漸増する濃度の二重特異性TCR(bssTCR)分子の存在下において、HIV−ペプチドSLYNTVATL(配列番号7)負荷T2細胞と共インキュベートされた。
本発明の分子中のVDおよびVRドメインの可能な配向の概略図を示す。VH:抗体由来VHドメイン、VL:抗体由来VLドメイン;Vα:TCR由来Vα;Vβ:TCR由来Vβ。
IgG1に基づく異なる二重特異性TCR/mAb分子内の凝集体(HMWS−高分子量化学種)のHPLC−SEC分析の結果を示す。凝集物は、それぞれ、精製後に、そして40℃で1週間および2週間の保存後に分析された。
IgG1ベースの異なる二重特異性TCR/mAb分子に対して行った、効力アッセイの結果を示す。効力は、それぞれ、精製後に、そして40℃で1週間および2週間の保存後に分析された。40℃でのストレス保存は、分子の効力の有意な損失をもたらさなかったが、分子IIIおよびIVについて、ジャーカットT細胞の非特異的(すなわち、標的非依存性)活性化の劇的な増加が検出された。
IgG1ベースの分子として設計された異なる二重特異性TCR/mAbコンストラクト(図2に示される)のLDH放出アッセイの結果を示す。健常ドナーから単離されたPBMCは、漸増する濃度の二重特異性TCR(bssTCR)分子の存在下において、HIV−ペプチドSLYNTVATL(配列番号7)負荷T2細胞と共インキュベートされた。二重特異性TCR/mAb二特異性抗体分子IA_3およびID_1は、3つの代案の二重特異性TCR/mAb分子よりも顕著に高い標的細胞の溶解を誘導した。右側のグラフに示されるように、試験した二重特異性TCR/mAbコンストラクトのいずれも、無関係のペプチド(配列番号49)が負荷されされたT2細胞の検出可能な溶解を誘導しなかった。
HLA−A*02上で提示される二重特異性TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトIA_5標的化腫瘍関連ペプチドPRAME−004(配列番号49)のLDH放出アッセイの結果を示す。健常ドナーから単離されたCD8陽性T細胞は、漸増する濃度のTCR/mAb二特異性抗体分子の存在下において、5:1のエフェクター:標的比で、細胞表面で異なる量のPRAME−004:HLA−A*02−1複合体を提示する(細胞当たりコピー数それぞれ約1100、約770、および約240、M/S分析による測定)がん細胞株UACC−257、SW982、およびU2OSと共インキュベートされた。48時間の共培養後、標的細胞溶解は、製造会社の使用説明書(Promega)に従ってLDH放出アッセイを用いて定量された。
HLA−A*02上で提示される腫瘍関連ペプチドPRAME−004(配列番号49)に対する、安定性/親和性成熟TCRおよびその増強バージョンをそれぞれ用いた、二重特異性TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトIA_5およびIA_6のLDH放出アッセイの結果を示す。健常ドナーから単離されたCD8陽性T細胞は、漸増する濃度のTCR/mAb二特異性抗体分子の存在下において、細胞当たり約240のコピー数のPRAME−004:HLA−A*02−1複合体を提示するがん細胞株U2OS、または非負荷T2細胞(5:1のエフェクター:標的比)と共インキュベートされた。48時間の共培養後に、標的細胞溶解は、製造会社の使用説明書(Promega)に従ってLDH放出アッセイを用いて定量された。
HLA−A*02上で提示される腫瘍関連ペプチドPRAME−004(配列番号49)に対する、安定性/親和性成熟TCRおよびその増強バージョンをそれぞれ用いた、TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトIA_5およびIA_6の熱安定性試験の結果を示す。このために、タンパク質は、PBS中に1mg/mLの濃度で配合され、引き続いて40℃で2週間保存された。タンパク質の完全性および回収率は、HPLC−SECを用いて評価された。それによって、主要ピークの前に溶出するピーク面積の百分率に従って、高分子量化学種の量が判定された。単量体タンパク質の回収率は、ストレスのないサンプルとストレスを受けたサンプルの主要ピーク面積を比較することによって計算された。

0099

実施例1
Fc含有二重特異性TCR/mAb二特異性抗体および対照分子の設計
Fc含有二重特異性TCR/mAb二特異性抗体および対照分子(図2に示される)は、ヒトTCR−CD3複合体と、HLA−A2*01に結合したHIV由来ペプチドSLYNTVATL(配列番号7)を含んでなるペプチド:MHC複合体とに、特異的に結合するように設計した。TCR−CD3複合体を標的化するために、Zhu et al.(Identification of heavy chain residues in a humanized anti−CD3 antibody important for efficient antigen binding and T cell activation.J Immunol,1995,155,1903−1910)によって記載された、CD3特異的ヒト化抗体hUCHT1(V9)に由来するVHおよびVLドメイン、またはShearman et al.(Construction,expression and characterization of humanized antibodies directed against the human alpha/beta T cell receptor.J Immunol,1991,147,4366−73)に記載され、ヒト化バージョン変異型10で用いられた(自社内データ)、α/βTCR−特異的抗体BMA031に由来するVHおよびVLドメインを使用した。ペプチド:MHC複合体を標的化するために、Aggen et al.(Identification and engineering of human variable regions that allow expression of stable single−chain T cell receptors.PEDS,2011,24,361−372)によって開示された、前述の安定性および親和性成熟ヒト一本鎖T細胞受容体868Z11のVαおよびVβドメインを使用した。

0100

Fc含有二重特異性TCR/mAb二特異性抗体の場合は、VHおよびVL(それぞれ、VD1およびVD2に対応する)、およびVaおよびVb(それぞれ、VR1およびVR2に対応する)の様々な組み合わせをコードする、ならびにリンカーLink1およびLink2をコードする、DNA配列遺伝子合成によって得た。得られたDNA配列は、ヒトIgG4(受託番号K01316)およびIgG1(受託番号P01857)に由来する、ヒンジ領域、CH2およびCH3ドメインをそれぞれコードする発現ベクターにインフレームでクローン化し、さらに操作した。操作は、Reiter et al.(Stabilization of the Fv Fragments in Recombinant Immunotoxins by Disulfide BondsEngineered into Conserved Framework Regions.Biochemistry,1994,33,5451−5459)によって記載される方法に従って、追加的な鎖間ジスルフィド結合安定化の有無にかかわらず、CH3ドメインへのノブ・イン・ホール変異を組み込むために;CH2中のN−グリコシル化部位を除去するために(例えば、N297Q変異);Fc−サイレンシング変異を導入するために;追加的なジスルフィド結合安定化をVLおよびVHにそれぞれ導入するために実施した。製造された二重特異性TCR/mAb二特異性抗体の概要、変異型、および対応する配列は、表1に列挙される。

0101

表1:全ての生成され評価されたFc含有する二重特異性TCR/mAb二特異性抗体の概要:
KiH:ノブ・イン・ホール;K/O:Fc-発現停止;KiH-ds:CH3:CH3'に結合する人工ジスルフィド結合で安定化されたノブ・イン・ホール;ds-hUCHT1(V9):ジスルフィド結合で安定化されたhUCHT1(V9)可変領域;Link1:VR1およびV1Dを連結するリンカー。

0102

上記のように、操作された特徴を含むIgG1またはIgG4由来の定常ドメインと組み合わせた前記VH、VL、Vα、およびVβドメインを用いて、同一特異性を示す様々な対照分子を表2構築した。

0103

表2:全ての生成され評価されたFc含有二重特異性対照分子の概要:

0104

実施例2
Fc含有二重特異性TCR/mAb二特異性抗体の製造および精製
組換えタンパク質の発現のためのベクターは、HCMV由来のプロモーター要素であるpUC19誘導体によって制御される単シストロン性として設計した。プラスミドDNAは、標準的な培養法に従って大腸菌(E.coli)において増幅し、引き続いて商業的に入手できるキット(Macherey & Nagel)を用いて精製した。精製されたプラスミドDNAは、製造業者取扱説明書(ExpiCHO(商標)システム;Thermo Fisher Scientific)に従って、CHO−S細胞の一過性形質移入に使用した。形質移入されたCHO細胞を32℃〜37℃で6〜14日間培養し、ExpiCHO(商標)供給液を1〜2回与えた。

0105

調整細胞上清遠心分離(4000×g;30分間)によって収集し、濾過によって清澄化した(0.22μm)。二重特異性分子は、インラインアフィニティーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを実施するように装備された、Akta Pure 25LFPLCシステム(GE Lifesciences)を用いて精製した。アフィニティークロマトグラフィーは、標準的なアフィニティークロマトグラフィープロトコルに従って、プロテインAカラム(GE Lifesciences)上で実施した。標準プロトコルに従ってSuperdex 200pg 16/600カラム(GE Lifesciences)を用いて、アフィニティーカラムからの溶出(pH2.8)の直後にサイズ排除クロマトグラフィーを実施して、高純度の単量体タンパク質を得た。予測されたタンパク質配列に従って計算された吸光係数を用いて、NanoDropシステム(Thermo Scientific)上でタンパク質濃度を判定した。必要であれば濃縮し、Vivaspin装置(Sartorius)を用いて緩衝液交換を実施した。最後に、精製された分子は、2〜8℃の温度において約1mg/mLの濃度でリン酸緩衝食塩水中で保存した。

0106

治療用タンパク質は、酸性曝露時に妥当な安定性を示して堅固な工業的精製プロセスを容易にするべきなので、プロテインA捕捉カラムからの単量体タンパク質溶出の百分率を評価した(表3)。分子への安定化変異の導入ならびに結合ドメインの明確な配向の選択が、酸性暴露時の安定性に顕著に影響を及ぼすことは明らかである。

0107

表3:捕捉カラムからの酸性溶出後の単量体タンパク質画分:

0108

サイズ排除クロマトグラフィー後に、精製された二重特異性分子は、Agilent 1100システム内で300mMのNaClを含有する50mMのリン酸ナトリウムpH6.8(図3参照)中で実行されたMabPacSEC−1カラム(5μm、7.8×300mm)上のHPLC−SECによる判定で、高純度(>93%の単量体タンパク質)を実証した(図3を参照されたい)。非還元および還元SDS−PAGEは、異なる二重特異性TCR/mAb分子の純度および予想を確認した(データ未掲載)。

0109

実施例3
Fc含有TCR/mAb二重特異性抗体によって誘導される特異的かつ標的細胞依存性のT細胞活性化
T細胞活性化に対するFc含有TCR/mAb二特異性抗体の効力は、細胞活性化生物検定(Promega)を用いて評価した。アッセイは、NFAT応答要素(NFAT−RE)によって駆動されるルシフェラーゼレポーターを発現する、遺伝子操作されたジャーカット細胞株からなる。アッセイは、製造業者に従って実施した。簡潔に述べると、HIV特異的ペプチドSLYNTVATL(配列番号7)が負荷されたT2細胞、またはペプチド負荷のないT2細胞(未負荷対照)を、漸増する濃度の二重特異性TCR/mAb分子の存在下で、Promegaの改変ジャーカット細胞と共に引き続いて共培養した。ジャーカットレポーターT細胞の活性化は、ルミネセンス強度を測定することによって16〜20時間後に分析した。

0110

代表的な効力アッセイ結果を、それぞれIgG4ベース(図4)およびIgG1ベース(図5)の二重特異性TCR/mAb分子について示す。データは、Fc含有TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトIAおよびIDが、使用された定常ドメインのIgGアイソタイプに関わりなく、活性化規模および/または各EC50値によって測定されるように、代案の二重を示特異性TCR/mAbコンストラクトII、III、およびIVと比較して、優れたT細胞活性化したことを示唆する。さらに、未負荷T2細胞に対して誘導されたFc含有TCR/mAb二特異性抗体の非特異的T細胞活性化は低下し、または少なくとも代案の二重特異性TCR/mAbコンストラクトについて観察された非特異的活性化レベルに等しかった。上記の結果によれば、二重特異性TCR/mAb二特異性抗体分子は、高度に標的依存性様式で強力なエフェクターT細胞活性化を誘導するので、治療的介入のための好ましい分子である。

0111

さらに、LDH放出アッセイ(Promega)を用いて、異なる二重特異性TCR/mAb分子によって誘導されたSLYNTVATL(配列番号7)ペプチド負荷T2細胞のPBMC媒介溶解を定量化した(図10)。T細胞活性化生物検定の上記の結果と一致して、標的細胞溶解の絶対レベルの増加と、標的細胞の最大半量(EC50)殺傷率を達成するために必要とされるより低いTCR二重特異性濃とによって示されるように、Fc含有TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトIAおよびIDもまた、二重特異性TCR/mAbコンストラクトII、III、およびIVより優れていた。TCR/mAbコンストラクトII、III、およびIVについては、TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトIAおよびIDは、無関係のペプチド(配列番号49)が負荷されたT2細胞の溶解を誘導せず、T2細胞に対する標的特異的溶解を提供した。

0112

実施例4
分子プラットフォームとしてのFc含有二重特異性TCR/mAb二特異性抗体の開発
Fc含有二重特異性TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトは、分子プラットフォームの役割を果たして、異なるペプチド:MHC複合体およびエフェクター細胞表面抗原をそれぞれ標的化する、異なるTCR由来およびmAb由来可変ドメインにスキャフォールドを提供するように、設計された。プラットフォームとしての適合性を検証するために、mAb由来可変ドメインを第1の分子セットで交換した。hUCHT1(V9)抗CD3抗体の可変ドメインは、同一ドメイン配向(コンストラクトID_4およびID_5)または異なる配向(IC_4、IC_5)を用いて、hBMA031(var10)抗TCR抗体のドメインで交換した。これらの分子の発現、精製、および特性決定は、上述したように実施した。HPLC−SEC分析によれば、最終調製物の純度および完全性は92%を超えた。

0113

効力アッセイ結果は、二抗体可変ドメインhUCHT1(コンストラクトID_1)およびhBMA031(コンストラクトID_4およびID_5)の双方について、標的依存性ジャーカットレポーターT細胞活性化と、未負荷T2細胞に対する最小の非特異的活性とを明らかにし、二重特異性TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトのプラットフォーム適合性を支持した(図6)。注目すべきことに、コンストラクトID_4およびID_5の可変TCRおよびmAbドメインを各ポリペプチド鎖上でスイッチオンした場合、コンストラクトIC_4およびIC_5のT細胞活性化は観察されなかった(データ未掲載)。後者の知見は、二重特異性TCR/mAb二特異性抗体が、異なるTCRおよびmAb可変ドメインを組み込むためのプラットフォームコンストラクトとして使用され得るにもかかわらず、分子の最適な活性を達成するためにドメイン配向の完全な最適化が要求されることを示唆する。

0114

実施例5
Fc含有二重特異性TCR/mAb二特異性抗体の安定性
二重特異性TCR/mAb分子の安定性は、最初に、ProteinThermal Shift Assay(Thermo Fisher Scientific)を使用して、7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosciences)を用いて、製造業者の取扱説明書に従って評価した。簡潔に述べると、精製された分子をPTS緩衝液およびPTS色素と混合し、サンプルの蛍光を絶えずモニタリングしながら、上昇する温度勾配に供した。記録された蛍光シグナルをPTSソフトウェア(Thermo Fisher Scientific)を用いて分析し、融解温度(TM)を微分法によって計算した。

0115

ストレス下の安定性の研究は、PBSに溶解された精製分子を40℃で2週間まで保存することによって行った。サンプルは、HPLC−SECを用いてタンパク質完全性について分析し、上記のようなT細胞活性化アッセイ(Promega)を用いて効力について分析した。

0116

予測されたように、40℃での保存は、HPLC−SEC分析(図8参照)による判定で、凝集体/高分子量化学種の形成を誘導した(図8を参照されたい)。精製後、および40℃でのインキュベーション後のIgG1ベース分子の効力アッセイの結果は、図9に示される。試験された分子は、いずれも40℃での保存後に、効力の有意な低下を示さなかったが、ストレスを受けた分子IIIおよびIVは、相当量の非特異的(すなわち、標的非依存性)ジャーカットT細胞活性化を誘導したことが観察された。対照的に、二重特異性TCR/mAb二特異性抗体は、HPLC−SECで見られるようないくらかの凝集体の存在にもかかわらず、それらの標的依存性効力を保持した。

0117

実施例6
がん標的化二重特異性TCR/mAb二特異性抗体分子の作製
二重特異性TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトのプラットフォーム能力をさらに検証するために、TCR由来可変ドメインを、以前に記載されている方法(Smith et al,2015,T Cell Receptor Engineering and Analysis Using the Yeast Display Platform.MethodsMol Biol.1319:95−141)に従って、酵母ディスプレイによって安定性/親和性成熟された、TCRの可変ドメインで交換した。HLA−A*02の文脈で、HIV由来ペプチドSLYNTVATL(配列番号7)に特異的に結合するTCR可変ドメインを、HLA−A*02に結合した腫瘍関連ペプチドPRAME−004(配列番号49)に特異的に結合するTCR可変ドメインで交換した。さらに、ヒト化T細胞動員抗体hUCHT1(V9)の可変ドメインを、UCHT1抗体の新規ヒト化バージョンであるhUCHT1(Var17)の可変ドメインで交換し、PRAME−004−標的化TCR/mAb二特異性抗体分子IA_5(配列番号43および配列番号44を含んでなる)を得た。この分子の発現、精製、および特性決定は、実施例2に記載したように実施した。HPLC−SEC分析によれば、最終調製物の純度および完全性は96%を超えた。

0118

PRAME−004:HLA−A*02に対する二重特異性TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトの結合親和性は、バイオレイヤー干渉法によって判定した。測定は、Octet RED384システム上で、製造業者が推奨する設定を用いて行った。簡潔に述べると、HLA−A*02/PRAME−004の連続希釈を分析する前に、精製された二重特異性TCR/mAb二特異性抗体分子をバイオセンサーAHC)上に負荷した。

0119

HLA−A*02の文脈で、腫瘍細胞表面に異なるコピー数のPRAME−004ペプチドを提示する(UACC−257−約1100、SW982−約770、U2OS−約240PRAME−004細胞当たりコピー数、定量的M/S分析による判定)ヒトがん細胞株UACC−257、SW982、およびU2OSのヒトCD8陽性T細胞媒介溶解を、LDH放出アッセイによる判定で評価することによって、腫瘍細胞溶解の誘導に関する、このPRAME−004標的化TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトの活性を評価した。

0120

図11に示されるように、PRAME−004標的化TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトIA_5は、PRAME−004陽性腫瘍細胞株の濃度依存性溶解を誘導した。このTCR/mAb二特異性抗体分子によって、腫瘍細胞あたり240のPRAME−004コピー数を発現する腫瘍細胞U2OSでさえも、効率的に溶解された。これらの結果は、TCR/mAb二特異性抗体フォーマットが、異なるTCRの可変ドメインならびに異なるT細胞動員抗体の可変ドメインを導入できるようにする分子プラットフォームとして、適用可能であることをさらに実証する。

0121

実施例7
TCR/mAb二特異性抗体コンストラクトの操作性
コンストラクトIA_5で使用された可変TCRドメインを、PRAME−004に対する親和性およびTCR安定性に関してさらに増強して使用し、TCR/mAb二特異性抗体スキャフォールドに操作して、コンストラクトIA_6(配列番号45および配列番号46を含んでなる)をもたらした。TCR/mAb二特異性抗体分子IA_5およびIA_6の発現、精製、および特性決定は、実施例2に記載のように行った。HPLC−SEC分析によれば、最終調製物の純度および完全性は97%を超えた。

0122

標的細胞として、少量のPRAME−004:HLA−A*02を提示する腫瘍細胞株U2OSまたは非負荷T2細胞、およびエフェクター細胞として、ヒトCD8陽性T細胞を用いた細胞傷害性実験において、PRAME−004に対する、安定性および親和性増強TCR/mAb二特異性抗体変異株IA_6の効力を評価した。

0123

図12に示されるように、本発明者らは、前駆コンストラクトIA_5と比較した場合に、安定性/親和性増強されたTCR変異型の可変ドメインを含んでなるTCR/Ab二特異性抗体分子IA_6の細胞傷害性効力の増加を観察した。IA_5およびIA_6の双方のコンストラクトでは、標的陰性T2細胞の細胞溶解が検出されなかったので、PRAME−004依存性溶解が確認された。

0124

タンパク質コンストラクトは、40℃で2週間までの熱ストレスにさらに供して、PRAME−004特異的TCR/mAb二特異性抗体変異型IA_5およびIA_6の安定性を分析した。熱ストレス後のHPLC−SEC分析は、前駆コンストラクトIA_5(図13参照)と比較した場合に、変異型IA_6の有意に改善された安定性を明らかにした(図13を参照されたい)。コンストラクトの温度誘導性高分子種の増加(すなわち、主要ピーク前の溶出)は、IA_6の方がIA_5よりも顕著ではなかった。この結果と一致して、熱ストレス後の非損傷な単量体タンパク質の回収率は、IA_5およびIA_6について、それぞれ87%および92%であった。

0125

これらの例示的な操作データは、安定性/親和性増強されたTCR可変ドメインを組み込むことによって、非常に強力で安定したTCR/mAb二特異性抗体コンストラクトがさらに改善され得て、優れた特性を有する治療用タンパク質がもたらされることを実証する。

0126

実施例8
好ましいコンストラクトの例
本明細書に記載のHIV特異的TCR二重特異性コンストラクト(配列番号16および配列ID番号17、Dの配向)に加えて、本発明は、試験されたいくつかのその他の例示的なHIV特異的コンストラクトをさらに提供する。これらのコンストラクトは、4つの可能な配向の全て(配列番号51〜配列番号58、配向A〜D)で、本明細書で開示されるようなHIV特異的TCR868と融合された、基礎となるCD3(UCHT1)に対する抗体の改良されたヒト化変異型に基づいている。

0127

UCHT1のヒト化は、重鎖および軽鎖CDRのアクセプターフレームワークとして、それぞれVH−1−46およびVK1−018を使用して行った。選択されたJセグメントは、軽鎖および重鎖についてそれぞれJK1およびJH4であった。

0128

得られた結果は、以下の表4に示される:

0129

0130

表4のデータは、本発明のヒト化が、潜在的に免疫原性がより低い(より低いDRB1スコア)こと;分子がより安定していること(融解温度を約3°C高める);標準(V9)と比較してより効力があること(約8倍低下したEC50)(アッセイについては実施例3を参照されたい)を示す。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ