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課題・解決手段
概要
背景
共役生体分子は、少なくとも1つは生体系に由来する複数の前駆体分子を含む多種多様な物質である。生体由来の成分は、ほとんどの場合、組換えDNA技術を用いて生成されている。医薬業界では、共役生体分子は様々な医学的状態の治療法として研究されている。これらの場合、コンジュゲートは、2つ以上の前駆体分子の有用な特性を単一の実体に組み合わせることによって、多くの治療上の恩恵を提供することができる。
医薬バイオコンジュゲートの1つの特に成功したクラスは、抗体−薬物コンジュゲートとも呼ばれる抗体コンジュゲートである。これらの分子は、一般的には哺乳動物細胞培養物に由来する抗体と、生物学的又は薬理学的活性を有する合成分子とからなる。いくつかの抗体−薬物コンジュゲートが癌治療として承認されており、さらに多くが臨床及び前臨床開発中である。今日までに承認されている抗体−薬物コンジュゲートは全て、コンジュゲート分子の混合物を生成する非特異的化学を用いて製造されている。
部位特異的抗体コンジュゲートに基づく医薬は合成分子が抗体分子中の規定の部位に結合されており、治療の恩恵並びに良好な品質管理及び/又は貯蔵寿命を提供することができる。したがって、抗体の部位特異的コンジュゲートを生成する方法を開発するために、多くの努力がなされてきた。部位特異的コンジュゲーションに対する一般的なアプローチは、新しいシステインアミノ酸を抗体の一次構造に導入するシステイン変異抗体(Cys−mAb又はThiomab)の使用である。この操作されたシステインは、合成分子をコンジュゲートするための部位として使用され得る。
Cys−mAbタンパク質との部位特異的コンジュゲーションには、還元チオール形態の操作されたシステイン側鎖を必要とする。しかし、抗体が哺乳動物細胞培養物から単離されるとき、操作されたシステインは一般に、グルタチオンなどの細胞質チオールとの混合ジスルフィドとして「キャップ」される。したがって、反応性合成分子を直接添加しても、操作されたシステインの側鎖は反応に利用できないので、コンジュゲートは生成されない。
キャップを除去するために単一工程の選択的還元が非常に望ましいが、抗体中の混合ジスルフィドと構造ジスルフィドとの間の化学的類似性のために、今のところ、実現不可能である。還元剤をCys−mAbに加えてキャップを撤去すると、抗体中の他のジスルフィドの一部も還元され、その結果、望ましくない場所で反応してコンジュゲートを形成するチオールを生じ得る。
したがって、高収率及び均一な生成物品質を提供するシステイン操作抗体のコンジュゲートを製造するための効率的で堅固な方法が依然として必要とされている。
概要
本開示は、後続の共役反応に均質な材料を提供するため、cys−mAbをキャッピングし、還元し、酸化する方法に関する。本方法は、高収率及び均一な生成物品質を提供するシステイン操作抗体のコンジュゲートを製造するための堅固な方法を示す。
目的
これらの場合、コンジュゲートは、2つ以上の前駆体分子の有用な特性を単一の実体に組み合わせることによって、多くの治療上の恩恵を提供する
効果
実績
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請求項1
抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートを調製する方法であって、a)抗体又は抗体断片を含む組成物を得る工程;b)前記抗体又は抗体断片をシステインブロッキング剤に曝露する工程(ここで、前記システインブロッキング剤は前記抗体又は抗体断片の少なくとも1つのシステイン残基と安定な混合ジスルフィドを形成する);c)還元剤を前記組成物に添加して還元混合物を形成し、前記還元混合物が還元抗体又は還元抗体断片を含むように還元反応を生じさせる工程;d)酸化剤を前記還元混合物に添加して酸化混合物を形成し、前記酸化混合物が酸化抗体又は酸化抗体断片を含むように酸化反応を生じさせる工程;及びe)活性化学部分を前記酸化混合物に添加してコンジュゲーション混合物を形成し、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートが形成されるように共役反応を生じさせる工程を含む方法。
請求項2
請求項3
請求項4
工程b)の後及び工程c)の前に、カチオン交換クロマトグラフィーを行って、過剰のシステインブロッキング剤を除去する、請求項1に記載の方法。
請求項5
前記還元剤は、トリフェニルホスフィン−3,3’,3”−トリスルホネート(「TPPTS」)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(「TCEP」)、及びトリフェニルホスフィン−3,3’−ジスルホネート(「TPPDS」)からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
請求項6
請求項7
請求項8
請求項9
前記酸化剤はデヒドロアスコルビン酸(「DHAA」)である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
請求項10
酸化剤対抗体又は抗体断片の比は3〜6:1(モル/モル)である、請求項9に記載の方法。
請求項11
請求項12
活性化学部分対抗体又は抗体断片の比は2〜3:1(モル/モル)である、請求項11に記載の方法。
請求項13
工程e)に続いて、精製工程を行って、前記活性化学部分を除去する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
請求項14
前記精製工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)、限外濾過/透析濾過、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)後に限外濾過/透析濾過を含む、請求項13に記載の方法。
請求項15
抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートを調製する方法であって、a)抗体又は抗体断片を含む混合ジスルフィドを含む組成物を得る工程;b)前記組成物に還元剤を添加して還元混合物を形成し、前記還元混合物が還元抗体又は還元抗体断片を含むように還元反応を生じさせる工程;c)酸化剤を前記還元混合物に添加して酸化混合物を形成し、前記酸化混合物が酸化抗体又は酸化抗体断片を含むように酸化反応を生じさせる工程;及びd)活性化学部分を前記酸化混合物に添加してコンジュゲーション混合物を形成し、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートが形成されるように共役反応を生じさせる工程を含む方法。
請求項16
前記混合ジスルフィドは、キャップされた遊離システインを有する抗体又は抗体断片である、請求項15に記載の方法。
請求項17
キャップされた遊離システインを有する前記抗体又は抗体断片は、システイン、システアミン、シスタミン、及びグルタチオンからなる群から選択されるキャップを含む、請求項16に記載の方法。
請求項18
工程a)の後及び工程b)の前に、カチオン交換クロマトグラフィーを行って、過剰のシステインブロッキング剤を除去する、請求項15に記載の方法。
請求項19
前記還元剤は、トリフェニルホスフィン−3,3’,3”−トリスルホネート(「TPPTS」)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(「TCEP」)、及びトリフェニルホスフィン−3,3’−ジスルホネート(「TPPDS」)からなる群から選択される、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
請求項20
還元剤対抗体又は抗体断片の比は2〜4:1(モル/モル)である、請求項19に記載の方法。
請求項21
工程b)の後及び工程c)の前に、緩衝液交換工程を行って前記還元剤を除去する、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
請求項22
前記緩衝液交換工程は、限外濾過/透析濾過である、請求項21に記載の方法。
請求項23
前記酸化剤はデヒドロアスコルビン酸(「DHAA」)である、請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法。
請求項24
酸化剤対抗体又は抗体断片の比は3〜6:1(モル/モル)である、請求項23に記載の方法。
請求項25
前記活性化学部分は、ハロゲンを含むペプチドであり、前記ハロゲンはBr、I、及びClからなる群から選択される、請求項15〜24のいずれか一項に記載の方法。
請求項26
活性化学部分対抗体又は抗体断片の比は2〜3:1(モル/モル)である、請求項25に記載の方法。
請求項27
工程d)に続いて、精製工程を行って、前記活性化学部分を除去する、請求項15〜26のいずれか一項に記載の方法。
請求項28
前記精製工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)、限外濾過/透析濾過、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)後に限外濾過/透析濾過を含む、請求項27に記載の方法。
請求項29
抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートを調製する方法であって、a)還元抗体又は還元抗体断片を含む還元混合物を含む組成物を得る工程;b)酸化剤を前記還元混合物に添加して酸化混合物を形成し、前記酸化混合物が酸化抗体又は酸化抗体断片を含むように酸化反応を生じさせる工程;及びc)活性化学部分を前記酸化混合物に添加してコンジュゲーション混合物を形成し、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートが形成されるように共役反応を生じさせる工程を含む方法。
請求項30
前記還元剤は、トリフェニルホスフィン−3,3’,3”−トリスルホネート(「TPPTS」)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(「TCEP」)、及びトリフェニルホスフィン−3,3’−ジスルホネート(「TPPDS」)からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
請求項31
還元剤対抗体又は抗体断片の比は2〜4:1(モル/モル)である、請求項30に記載の方法。
請求項32
工程a)の後及び工程b)の前に、緩衝液交換工程を行って前記還元剤を除去する、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法。
請求項33
前記緩衝液交換工程は、限外濾過/透析濾過である、請求項32に記載の方法。
請求項34
前記酸化剤はデヒドロアスコルビン酸(「DHAA」)である、請求項29〜33のいずれか一項に記載の方法。
請求項35
酸化剤対抗体又は抗体断片の比は3〜6:1(モル/モル)である、請求項34に記載の方法。
請求項36
前記活性化学部分は、ハロゲンを含むペプチドであり、前記ハロゲンはBr、I、及びClからなる群から選択される、請求項29〜35のいずれか一項に記載の方法。
請求項37
活性化学部分対抗体又は抗体断片の比は2〜3:1(モル/モル)である、請求項36に記載の方法。
請求項38
工程c)に続いて、精製工程を行って、前記活性化学部分を除去する、請求項29〜37のいずれか一項に記載の方法。
請求項39
前記精製工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)、限外濾過/透析濾過、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)後に限外濾過/透析濾過を含む、請求項38に記載の方法。
請求項40
技術分野
背景技術
0002
共役生体分子は、少なくとも1つは生体系に由来する複数の前駆体分子を含む多種多様な物質である。生体由来の成分は、ほとんどの場合、組換えDNA技術を用いて生成されている。医薬業界では、共役生体分子は様々な医学的状態の治療法として研究されている。これらの場合、コンジュゲートは、2つ以上の前駆体分子の有用な特性を単一の実体に組み合わせることによって、多くの治療上の恩恵を提供することができる。
0003
医薬バイオコンジュゲートの1つの特に成功したクラスは、抗体−薬物コンジュゲートとも呼ばれる抗体コンジュゲートである。これらの分子は、一般的には哺乳動物細胞培養物に由来する抗体と、生物学的又は薬理学的活性を有する合成分子とからなる。いくつかの抗体−薬物コンジュゲートが癌治療として承認されており、さらに多くが臨床及び前臨床開発中である。今日までに承認されている抗体−薬物コンジュゲートは全て、コンジュゲート分子の混合物を生成する非特異的化学を用いて製造されている。
0004
部位特異的抗体コンジュゲートに基づく医薬は合成分子が抗体分子中の規定の部位に結合されており、治療の恩恵並びに良好な品質管理及び/又は貯蔵寿命を提供することができる。したがって、抗体の部位特異的コンジュゲートを生成する方法を開発するために、多くの努力がなされてきた。部位特異的コンジュゲーションに対する一般的なアプローチは、新しいシステインアミノ酸を抗体の一次構造に導入するシステイン変異抗体(Cys−mAb又はThiomab)の使用である。この操作されたシステインは、合成分子をコンジュゲートするための部位として使用され得る。
0005
Cys−mAbタンパク質との部位特異的コンジュゲーションには、還元チオール形態の操作されたシステイン側鎖を必要とする。しかし、抗体が哺乳動物細胞培養物から単離されるとき、操作されたシステインは一般に、グルタチオンなどの細胞質チオールとの混合ジスルフィドとして「キャップ」される。したがって、反応性合成分子を直接添加しても、操作されたシステインの側鎖は反応に利用できないので、コンジュゲートは生成されない。
0006
キャップを除去するために単一工程の選択的還元が非常に望ましいが、抗体中の混合ジスルフィドと構造ジスルフィドとの間の化学的類似性のために、今のところ、実現不可能である。還元剤をCys−mAbに加えてキャップを撤去すると、抗体中の他のジスルフィドの一部も還元され、その結果、望ましくない場所で反応してコンジュゲートを形成するチオールを生じ得る。
課題を解決するための手段
0008
一態様では、本開示は、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートを調製する方法であって、a)抗体又は抗体断片を含む組成物を得る工程;b)抗体又は抗体断片をシステインブロッキング剤に曝露する工程(ここで、システインブロッキング剤は抗体又は抗体断片の少なくとも1つのシステイン残基と安定な混合ジスルフィドを形成する);c)還元剤を組成物に添加して還元混合物を形成し、還元混合物が還元抗体又は還元抗体断片を含むように還元反応を生じさせる工程;d)酸化剤を還元混合物に添加して酸化混合物を形成し、酸化混合物が酸化抗体又は酸化抗体断片を含むように酸化反応を生じさせる工程;及びe)活性化学部分を酸化混合物に添加してコンジュゲーション混合物を形成し、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートが形成されるように共役反応を生じさせる工程を含む方法を提供する。
0009
一態様では、工程b)の後で工程c)の前に、カチオン交換クロマトグラフィーを行って過剰のシステインブロッキング剤を除去する。一態様では、工程c)の後で工程d)の前に、緩衝液交換工程を行って還元剤を除去する。一実施形態では、緩衝液交換工程は、限外濾過/透析濾過である。一態様では、工程e)に続いて、精製工程を行って、活性化学部分を除去する。一実施形態では、精製工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)、限外濾過/透析濾過、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)後に限外濾過/透析濾過を含む。
0010
別の態様では、本開示は、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートを調製する方法であって、a)抗体又は抗体断片を含む混合ジスルフィドを含む組成物を得る工程;b)組成物に還元剤を添加して還元混合物を形成し、還元混合物が還元抗体又は還元抗体断片を含むように還元反応を生じさせる工程;c)酸化剤を還元混合物に添加して酸化混合物を形成し、酸化混合物が酸化抗体又は酸化抗体断片を含むように酸化反応を生じさせる工程;及びd)活性化学部分を酸化混合物に添加してコンジュゲーション混合物を形成し、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートが形成されるように共役反応を生じさせる工程を含む方法を提供する。
0011
一態様では、工程a)の後で工程b)の前に、カチオン交換クロマトグラフィーを行って、過剰のシステインブロッキング剤を除去する。一態様では、工程b)の後で工程c)の前に、緩衝液交換工程を行って還元剤を除去する。一実施形態では、緩衝液交換工程は、限外濾過/透析濾過である。一態様では、工程d)に続いて、精製工程を行って、活性化学部分を除去する。一実施形態では、精製工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)、限外濾過/透析濾過、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)後に限外濾過/透析濾過を含む。
0012
別の態様では、本開示は、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートを調製する方法であって、a)抗体又は抗体断片を含む混合ジスルフィドを含む組成物を得る工程;b)組成物に還元剤を添加して還元混合物を形成し、還元混合物が還元抗体又は還元抗体断片を含むように還元反応を生じさせる工程;c)酸化剤を還元混合物に添加して酸化混合物を形成し、酸化混合物が酸化抗体又は酸化抗体断片を含むように酸化反応を生じさせる工程;及びd)活性化学部分を酸化混合物に添加してコンジュゲーション混合物を形成し、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートが形成されるように共役反応を生じさせる工程を含む方法を提供する。
0013
一態様では、工程a)の後で工程b)の前に、緩衝液交換工程を行って還元剤を除去する。一態様では、工程c)に続いて、精製工程を行って、活性化学部分を除去する。一実施形態では、緩衝液交換工程は、限外濾過/透析濾過である。一実施形態では、精製工程は、ステップが疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)、限外濾過/透析濾過、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)後に限外濾過/透析濾過を含む。
0014
一実施形態では、混合ジスルフィドはキャップされた遊離システインを有する抗体又は抗体断片である。一実施形態では、キャップされた遊離システインを有する抗体又は抗体断片は、システイン、システアミン、シスタミン、及びグルタチオンからなる群から選択されるキャップを含む。一実施形態では、還元剤は、トリフェニルホスフィン−3,3’,3”−トリスルホネート(「TPPTS」)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(「TCEP」)、及びトリフェニルホスフィン−3,3’−ジスルホネート(「TPPDS」)からなる群から選択される。一実施形態では、還元剤対抗体又は抗体断片の比は2〜4:1(モル/モル)である。”)。一実施形態では、酸化剤はデヒドロアスコルビン酸(「DHAA」)である。”)。一実施形態では、酸化剤対抗体又は抗体断片の比は3〜6:1(モル/モル)である。”)。一実施形態では、活性化学部分は、ハロゲンを含むペプチドであり、ハロゲンはBr、I、及びClからなる群から選択される。”)。一実施形態では、活性化学部分対抗体又は抗体断片の比は2〜3:1(モル/モル)である。
0015
一実施形態では、抗体又は抗体断片は、参照配列(配列番号7)に対する抗体軽鎖のD70、参照配列(配列番号8)に対する抗体重鎖のE276、及び参照配列(配列番号8)に対する抗体重鎖のT363からなる群から選択される位置にシステイン残基を含む。
図面の簡単な説明
0016
16の天然ジスルフィド結合(緑色で示す)によって結合された4本のポリペプチド鎖(2本の軽鎖、2本の重鎖)からなる典型的なCys mAb(IgG1)。抗体に操作により導入されたさらなるシステインは、2つのさらなるジスルフィド(橙色で示す)を有する。他の16の天然ジスルフィドの存在下での操作されたジスルフィドが選択的に還元されることが非常に望ましいが、(単一工程では)可能ではない。
最終的な選択的還元は、2工程で実施することができる。(1)還元工程は、操作ジスルフィドを確実に完全な「無キャッピング」とし、いくつかの天然ジスルフィド結合もまた切断される。(2)酸化工程は、IgG1の天然構造に戻す。「再キャッピング」を防止するために、酸化に先立って、還元工程(R−SH)で解放されたチオールのUF/DFによるクリアランスが必要である。
「無キャップ」Cys mAbは、アルキル化剤(例えば、ペプチドブロモアセトアミド誘導体)により容易に部位選択的にコンジュゲートされる。
マッチドペア(CA+TCEP)及びミスマッチドペア(MES+TCEP)の還元性能の直接比較。
「無キャップ」Cys mAbの経時形成。反応条件:pH5.0の特定の緩衝液中、10g/LのシステアミンキャップCys mAb、3.5当量のホスフィン(TPPTS、TPPDS、又はTCEP)、室温。反応混合物をカチオン交換クロマトグラフィーでモニターし、280nmで定量した。この図では、「無キャップ」Cys mAbのみがプロットされている。
システアミンベースのコンジュゲーションプロセスでは、ほぼ化学量論量の還元、酸化、及びアルキル化のための試薬で、均一なPAR2含有量(例えば、≧95%)を有するmAb−ペプチドコンジュゲートが得られる。
0017
本開示は、後続の共役反応に均質な材料を提供するため、cys−mAbをキャッピングし、還元し、酸化する方法を提供する。本方法は、高収率及び均一な生成物品質を提供するシステイン操作抗体のコンジュゲートを製造するための堅固な方法を示す。
0018
「遊離システイン」は、種々の特性改変基のコンジュゲーションに好適な結合点であることがわかってきた。本明細書中の遊離システインとは、1つ又は2つのポリペプチドの2つのシステイン間の通常のジスルフィド結合に関与していないシステイン残基をいう。通常、遊離システインは、部位選択的変異誘発によって目的のポリペプチド配列に導入されたシステインであるが、タンパク質のなかにはその代わりに適切な位置にシステインを含み得るものもある。背景技術に記載のように、添加されたシステインは、タンパク質に対する特性改変基の好適な結合点であり得る。システイン残基を導入することによって、ジスルフィド結合を形成するためのパートナーがタンパク質中に存在しないので、遊離システインが、通常、得られる。
0019
一態様では、本開示は、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートを調製する方法であって、a)抗体又は抗体断片を含む組成物を得る工程;b)抗体又は抗体断片をシステインブロッキング剤に曝露する工程(ここで、システインブロッキング剤は抗体又は抗体断片の少なくとも1つのシステイン残基と安定な混合ジスルフィドを形成する);c)還元剤を組成物に添加して還元混合物を形成し、還元混合物が還元抗体又は還元抗体断片を含むように還元反応を生じさせる工程;d)酸化剤を還元混合物に添加して酸化混合物を形成し、酸化混合物が酸化抗体又は酸化抗体断片を含むように酸化反応を生じさせる工程;及びe)活性化学部分を酸化混合物に添加してコンジュゲーション混合物を形成し、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートが形成されるように共役反応を生じさせる工程を含む方法を提供する。
0020
一態様では、工程b)の後で工程c)の前に、カチオン交換クロマトグラフィーを行って、抗体の均質性を高め、且つ過剰のシステインブロッキング剤を除去する。一態様では、工程c)の後で工程d)の前に、緩衝液交換工程を行って、放出されたキャップ(チオール)を除去し、且つ還元剤を除去する。一実施形態では、緩衝液交換工程は、限外濾過/透析濾過である。一態様では、工程e)に続いて、精製工程を行って、過剰の活性化学部分を除去し、抗体又は抗体断片コンジュゲートの純度を高める。一実施形態では、精製工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)、限外濾過/透析濾過、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)後に限外濾過/透析濾過を含む。
0021
別の態様では、本開示は、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートを調製する方法であって、a)抗体又は抗体断片を含む混合ジスルフィドを含む組成物を得る工程;b)組成物に還元剤を添加して還元混合物を形成し、還元混合物が還元抗体又は還元抗体断片を含むように還元反応を生じさせる工程;c)酸化剤を還元混合物に添加して酸化混合物を形成し、酸化混合物が酸化抗体又は酸化抗体断片を含むように酸化反応を生じさせる工程;及びd)活性化学部分を酸化混合物に添加してコンジュゲーション混合物を形成し、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートが形成されるように共役反応を生じさせる工程を含む方法を提供する。
0022
一態様では、工程a)の後で工程b)の前に、カチオン交換クロマトグラフィーを行って、過剰のシステインブロッキング剤を除去する。一態様では、工程b)の後で工程c)の前に、緩衝液交換工程を行って、キャップを除去し、且つ過剰の還元剤を除去する。一実施形態では、緩衝液交換工程は、限外濾過/透析濾過である。一態様では、工程d)に続いて、精製工程を行って、活性化学部分を除去する。一実施形態では、精製工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)、限外濾過/透析濾過、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)後に限外濾過/透析濾過を含む。
0023
別の態様では、本開示は、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートを調製する方法であって、a)抗体又は抗体断片を含む混合ジスルフィドを含む組成物を得る工程;b)組成物に還元剤を添加して還元混合物を形成し、還元混合物が還元抗体又は還元抗体断片を含むように還元反応を生じさせる工程;c)酸化剤を還元混合物に添加して酸化混合物を形成し、酸化混合物が酸化抗体又は酸化抗体断片を含むように酸化反応を生じさせる工程;及びd)活性化学部分を酸化混合物に添加してコンジュゲーション混合物を形成し、抗体コンジュゲート又は抗体断片コンジュゲートが形成されるように共役反応を生じさせる工程を含む方法を提供する。
0024
一態様では、工程a)の後で工程b)の前に、緩衝液交換工程を行って還元剤を除去する。一態様では、工程c)に続いて、精製工程を行って、活性化学部分を除去する。一実施形態では、緩衝液交換工程は、限外濾過/透析濾過である。一実施形態では、精製工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)、限外濾過/透析濾過、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)後に限外濾過/透析濾過を含む。
0025
一実施形態では、混合ジスルフィドはキャップされた遊離システインを有する抗体又は抗体断片である。一実施形態では、キャップされた遊離システインを有する抗体又は抗体断片は、システイン、システアミン、シスタミン、及びグルタチオンからなる群から選択されるキャップを含む。一実施形態では、還元剤は、トリフェニルホスフィン−3,3’,3”−トリスルホネート(「TPPTS」)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(「TCEP」)、及びトリフェニルホスフィン−3,3’−ジスルホネート(「TPPDS」)からなる群から選択される。一実施形態では、還元剤対抗体又は抗体断片の比は2〜4:1(モル/モル)である。”)。一実施形態では、酸化剤はデヒドロアスコルビン酸(「DHAA」)である。”)。一実施形態では、酸化剤対抗体又は抗体断片の比は3〜6:1(モル/モル)である。”)。一実施形態では、活性化学部分は、ハロゲンを含むペプチドであり、ハロゲンはBr、I、及びClからなる群から選択される。”)。一実施形態では、活性化学部分対抗体又は抗体断片の比は2〜3:1(モル/モル)である。
0026
一実施形態では、抗体又は抗体断片は、参照配列(配列番号7)に対する抗体軽鎖のD70、参照配列(配列番号8)に対する抗体重鎖のE276、及び参照配列(配列番号8)に対する抗体重鎖のT363からなる群から選択される位置にシステイン残基を含む。
0027
「コンジュゲーションに適用可能な」コンジュゲーション部位とは、選択されたコンジュゲーション部位におけるアミノ酸残基の側鎖が、所定の化学条件下で、目的の追加の機能性部分(又は追加の機能性部分に共有結合したリンカー)と反応し、主要な反応生成物として、追加の機能性部分の側鎖との共有結合(直接又はリンカーを介して)を生じさせることを意味する。
0029
共役反応の有効な標的であるためには、遊離システインは還元型でなければならない。遊離システインを有するタンパク質は同じ理由で製造が困難であり得、したがって、しばしば小さな有機部分を含む混合ジスルフィドとして得られる。混合ジスルフィドは、それぞれポリペプチド配列(同じであっても同じでなくてもよい)に含まれる2つのシステインアミノ酸残基間のジスルフィド結合に類似したジスルフィドを含む分子である。小さな有機部分は本明細書ではCapと呼ばれ、したがって混合ジスルフィドはタンパク質−S−S−Cap分子である。本願において、用語「混合ジスルフィド」は両方のポリペプチドではない2つの異なる実体を連結するジスルフィド結合を含む分子について使用されるが、分子は混合ジスルフィドに加えて「通常の」ジスルフィド結合をさらに含み得る。
0030
一実施形態では、本発明の方法は、コンジュゲーションを受けるタンパク質がタンパク質−S−S−Cap分子の組成物の形態で得られるので、タンパク質−S−S−Cap分子を還元する工程を含む。
0031
上記のように、Capは、通常、混合ジスルフィドのジスルフィド結合の一部である少なくとも1個の硫黄原子を含む小さな有機部分に由来する。このような有機部分は、還元形態のモノマーとして、又は酸化形態のダイマーとして存在し得る。したがって、混合ジスルフィドにおいては、−S−Capは、モノマー又はダイマーの半分の酸化形態である。一実施形態では、−S−Capは、システイン/シスチン、システアミン/シスタミン(これは脱カルボキシル化シスチンである)又はグルタチオン(G−SH)/グルタチオンジスルフィド(GS−SG)に由来し、したがって、混合ジスルフィドは、一実施形態では、タンパク質−S−S−cys、タンパク質−S−S−cyst、又はタンパク質−S−S−Gから選択される(ここで、cysはシスチンの半分を指し、cystはシスタミンの半分を指し、Gはグルタチオンジスルフィドの半分を指す。換言すれば、一実施形態において、タンパク質−S−S−CapのCapは、システイン、システアミン又はグルタチオンに由来する。
0032
特定の実施形態では、capは
からなる群から選択される。
0033
上記のように、還元の目的は共役反応において反応性のある遊離還元システイン(−SH)を有する分子を得ることである。
0034
一実施形態では、混合ジスルフィドはタンパク質−S−S−Cap分子である(ここで、タンパク質−Sは遊離システインを含むタンパク質に由来する)。
0035
反応性硫黄原子をもつタンパク質を得るために、還元剤を混合ジスルフィド組成物に加え、この混合物をインキュベートして還元し、例えば、タンパク質−S−Hの形態の還元されたタンパク質を得る。ここで述べる工程は、a)タンパク質を含む混合ジスルフィドの組成物を得る工程、b)前記タンパク質組成物に還元剤を加える工程、c)還元させて、還元タンパク質(P−SH)を含む溶液を得る工程である。
0036
還元剤は、複数の利用可能な還元剤から選択することができ、本明細書ではほんの少数の還元剤のみに言及するが、当業者であれば還元剤の非常に大きなレパートリーから選択することができることは知られている。
0037
一実施形態において、還元剤は、グルタチオン、ガンマ−グリタミルシステイン、システイングリシン、システイン、N−アセチルシステイン、システアミン及びリパミドの群から選択されるレドックス緩衝剤である。一実施形態では、グルタレドキシンなどの酵素などのチオールジスルフィドレドックス触媒が含まれる。一実施形態では、還元剤がDTTなどの小分子還元剤から選択される。一実施形態では、還元剤は、ホスフィン、例えば芳香族ホスフィン、例えばトリアリールホスフィン、例えばトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(「TCEP」)などの置換トリアリールホスフィン、トリフェニルホスフィン−3,3’,3”−トリスルホン酸三ナトリウム(TPPTS)、又はトリフェニルホスフィン−3,3’−ジスルホン酸二ナトリウム(TPPDS)である。
0038
混合ジスルフィドが還元されると、還元タンパク質(P−SH)を含む溶液が得られる。その後のコンジュゲーションの前に、還元剤及び/又は放出されたCap分子を除去することが有益であり得る。一実施形態では、還元タンパク質(P−SH)を含む溶液から、分子量が10kDa未満である分子などの小分子を除去する任意選択のステップを含めることができる。一実施形態では、10kDa未満の分子量を有する分子は、透析濾過によって還元タンパク質を含む溶液から除去される。
0039
共役反応では、化学部分が還元タンパク質(タンパク質−SH)の遊離システインの硫黄原子に共有結合される。化学部分は、特性改変部分などの、タンパク質へのコンジュゲーションに好適な部分であり得る。特性改変部分は、目的タンパク質の1つ以上の特徴を改変可能な化学部分であり得る。一実施形態では、化学部分は、タンパク質の安定化、循環半減期の長期化、又は効力の増大を図ることができる化学部分などの特性改変基である。一実施形態では、化学部分は延長剤である。コンジュゲーションを効果的に起こすために、化学部分は、活性化された形態の化学部分が使用され得る。上記の本明細書に記載の本発明による方法においては、活性型化学部分が還元タンパク質を含む溶液に添加され、化学部分の還元タンパク質へのコンジュゲーションによって、コンジュゲートされたタンパク質が調製される。したがって、本発明による方法には、還元タンパク質を含む溶液に活性型化学部分を添加し、共役反応を起こさせ、前記コンジュゲートタンパク質の調製物を得るさらなる工程が含まれる。
0040
化学部分は、特性改変部分などの、タンパク質へのコンジュゲーションに好適な部分であり得る。特性改変部分は、目的タンパク質の1つ以上の特徴を改変可能な化学部分であり得る。一実施形態では、化学部分は、リンカー配列を有するか又は有さないペプチド及び/又はリガンドである。一実施形態では、化学部分は、タンパク質の安定化、循環半減期の長期化、又は効力の増大を図ることができる化学部分などの特性改変基である。一実施形態では、化学部分はアルブミン結合剤である。コンジュゲーションを効果的に起こさせるために、活性化された形態の化学部分が使用され得る。上記の本明細書に記載の本発明による方法においては、活性型化学部分が還元タンパク質と混合され、化学部分の還元タンパク質へのコンジュゲーションによって、硫黄原子を介してコンジュゲートされたタンパク質が調製される。
0041
化学部分は活性型化学部分であることが好ましく、この活性型化学部分は、タンパク質−SHと反応してタンパク質−S−化学部分分子を形成することができる部分を意味する。このような活性型化学部分としては、マレイミド基又はハロアセチル基を含む軟求電子性アルキル化試薬を挙げることができ、これらは当該分野で知られている。
0043
一実施形態では、活性型化学部分は、ハロゲン化アルブミン結合剤(AB−ハロ)である。
0044
混合ジスルフィドを効果的に還元するために、通常、モル濃度で過剰な還元剤が適用される。混合ジスルフィドの組成物に還元剤を添加することにより、還元混合物が得られる。還元剤の量は混合ジスルフィドの量の当量で表すことができ、還元剤の量が混合ジスルフィドの量の1当量である場合、混合物中の混合ジスルフィド及び還元剤のモル濃度は等しい。
0046
抗体又は抗体断片の過剰還元の量を減少させるために、必要な量を減少させることが有利であり、これは、本明細書に記載するように、プロセス工程が最適化されれば可能である。より少量の還元剤を使用して有効な還元反応を行わせるには、本発明によって提供されるように、残りの反応条件を慎重に選択する必要がある。
0047
混合ジスルフィドの還元には、条件に応じて、数分から数時間を要する。当業者は条件の相異により異なる効果がもたらされることを知っており、したがって、混合ジスルフィドを完全に又はほぼ完全に還元させるのに必要な時間及び条件を、以下の実施例でより詳細に記載する。
0048
還元剤は、混合ジスルフィド組成物に濃縮物として添加してもよいし、薬剤を固体粉末として単に添加することによって添加してもよい。還元剤を混合ジスルフィド組成物と混合して還元を開始する。この混合物を還元混合物と呼ぶことができる。
0049
十分に有効なプロセスとするために、還元は、混合ジスルフィドの総量の少なくとも80%の還元、例えば少なくとも90%の還元をもたらすべきである。混合ジスルフィドの量が、還元混合物中の混合ジスルフィドの量の多くとも20%、例えば多くとも10%である場合、還元は満足のいくものと考えられる。好ましい実施形態では、還元タンパク質を含む溶液中に約5%の非還元混合ジスルフィドを残し、混合ジスルフィドの約95%の還元を得ることができる。さらなる実施形態では、効率的なプロセスが好適な時間で残す混合ジスルフィドは多くとも2%である。
0050
還元は、少なくとも15分間、例えば少なくとも30分間、又は例えば少なくとも1時間の間に起こり得る。一実施形態では、還元混合物は、還元剤の添加後、2〜10時間、例えば3〜6時間又は約3〜4時間置かれる。
0051
一実施形態では、還元は、最大24時間、例えば最大12時間、例えば最大8時間、例えば最大6時間、例えば最大4時間行われる。
0053
コンジュゲーション工程を進める前に、還元タンパク質は、還元混合物から、例えば、過剰の還元剤及び/又は混合ジスルフィドの小有機分子、例えばキャップされた遊離システインを有するタンパク質のH−S−Capから分離することができる。この任意選択の工程は、10kDa未満の分子量を有する分子などの低分子量を有する分子を除去する工程であり得る。
0054
当業者であれば、好適な膜を使用する濾過によるなどの、分子量の小さい化合物を除去するための種々の方法を知っているであろう。一実施形態では、この方法は、緩衝液交換(限外濾過/透析濾過)の工程を含む。
0055
透析濾過工程の有効性、例えば除去される小分子及び賦形剤の量は、生成される濾液容量に関係し、保持液容量に関係する。また、この文脈における「除去する」という用語は、低分子量分子の残留量として「濃度を低下させる」と解釈されるべきであり、賦形剤は通常、低分子量の分子を「除去する」透析濾過工程(又は代替のプロセス工程)の後に存在することになることにも留意されたい。
0056
コンジュゲーション工程を進める前に、還元タンパク質は、過剰に還元された抗体又は抗体断片の量を減少させるために酸化される。
0057
過剰に還元された抗体又は抗体断片を有効に酸化させるために、モル濃度の過剰の酸化剤が通常適用される。過剰に還元された抗体又は抗体断片の組成物に酸化剤を添加することにより、酸化混合物が得られる。酸化剤の量は過剰に還元された抗体又は抗体断片の量の当量で表すことができ、酸化剤の量が混合ジスルフィドの量の1当量である場合、混合物中の混合ジスルフィド及び還元剤のモル濃度は等しい。
0058
一実施形態では、酸化剤の添加量は過剰に還元された抗体又は抗体断片のモル量の約3モル当量〜約6モル当量である。
0059
過剰に還元された抗体又は抗体断片の酸化は、条件に応じて、数分又は数時間を要し得る。当業者は条件の相異により異なる効果がもたらされることを知っており、したがって、過剰に還元された抗体又は抗体断片を完全に又はほぼ完全に酸化させるのに必要な時間及び条件を、以下の実施例でより詳細に記載する。
0060
酸化剤は、過剰に還元された抗体又は抗体断片組成物に濃縮物として添加してもよいし、薬剤を固体粉末として単に添加することによって添加してもよい。酸化剤を過剰に還元された抗体又は抗体断片組成物と混合して酸化を開始する。この混合物を酸化混合物と呼ぶことができる。
0061
十分に有効なプロセスとするために、酸化は、過剰に還元された抗体又は抗体断片の総量の少なくとも80%の酸化、例えば少なくとも90%の酸化をもたらすべきである。過剰に還元された抗体又は抗体断片の量が、酸化混合物中の過剰に還元された抗体又は抗体断片の量の多くとも20%、例えば多くとも10%である場合、酸化は満足のいくものと考えられる。好ましい実施形態では、酸化タンパク質を含む溶液中に約5%の過剰に還元された還元抗体又は抗体断片を残し、過剰に還元された抗体又は抗体断片の約95%の酸化を得ることができる。さらなる実施形態では、効率的なプロセスが好適な時間で残す過剰に還元された還元抗体又は抗体断片は多くとも2%である。
0062
酸化は、少なくとも15分間、例えば少なくとも30分間、又は例えば少なくとも1時間の間に起こり得る。一実施形態では、酸化混合物は、酸化剤の添加後、2〜10時間、例えば3〜6時間又は約3〜4時間放置される。
0063
一実施形態では、酸化は、最大24時間、例えば最大12時間、例えば最大8時間、例えば最大6時間、例えば最大4時間行われる。
0064
一実施形態では、酸化は、1〜50℃で、例えば室温で、例えば18〜25℃で行うことができる。代替の実施形態では、還元は、より低温で、例えば10℃未満で、例えば約2〜8℃で行うことができる。一実施形態では、酸化剤はデヒドロアスコルビン酸である。
0065
上記のように、本方法によれば、コンジュゲーションは、還元されたタンパク質を含む溶液に活性型化学部分を添加することによって行われる。
0066
事前の還元が完全でない場合、還元タンパク質の混合ジスルフィドに対する比は、高収率の共役反応を妨げ得る。さらに、過剰の還元剤及び放出されたCap分子の存在は、共役反応を妨害し得る。
0068
一実施形態では、活性型化学部分のモル濃度は、コンジュゲートすべきタンパク質のモル濃度と少なくとも等しいか、又は2倍であり得る。これはまた当量で表すことができ、例えば、コンジュゲートすべきタンパク質に対して少なくとも10、例えば8、例えば6、例えば4、例えば2、又は例えば1当量が使用され得る。活性型化学部分は高価な資源であり得るので、必要とされる量を減少させることが有利であり、これは、本明細書に記載されるように、前の工程が最適化されれば可能である。少ない量の活性型化学部分を使用して有効な共役反応を行うには、本発明によって提供されるように、残りの反応条件を慎重に選択する必要がある。一実施形態では、活性型化学部分の量はタンパク質の多くとも8当量、例えば、結合すべきタンパク質の多くとも6当量、例えば多くとも4当量、例えば多くとも3当量、例えば多くとも2.5当量、例えば多くとも2当量、例えば多くとも1.5当量である。
0069
酸化タンパク質と化学部分との結合は、条件に応じて、数分又は数時間を要し得る。当業者は、条件の相異により異なる効果がもたらされ、したがって、完全に又はほぼ完全にコンジュゲーションさせるのに必要な時間が条件に基づいて変化することを知っており、本明細書中、以下に条件をより詳細に記載する。本発明の方法によれば、共役反応は、出発物質、例えば還元タンパク質の量が10%以下、例えば5%以下、好ましくは2%以下に達した場合に満足のいくものと考えられる。
0070
活性型化学部分は、酸化タンパク質を含む溶液に濃縮物として添加してもよいし、薬剤を固形粉末として単に添加することによって添加してもよい。一実施形態では、酸化タンパク質を含む溶液に活性型化学部分を添加する前に、好適な溶液に活性型化学部分を溶解する。また、共役反応の前に、化学部分を溶液中で活性化することもできる。
0071
用語「半減期延長部分」は、薬学的に許容される部分、ドメイン、又はFcドメイン及び/若しくは薬学的に活性な部分に共有結合若しくはコンジュゲートした「ビヒクル」を指し、これは、コンジュゲートされていない形態の薬学的に活性な部分と比較して、薬学的に活性な部分のインビボにおけるタンパク質の分解若しくは他の活性を低下させる化学的改変を防止若しくは低減し、半減期、若しくは吸収速度の増大など(これに限定されない)の他の薬物動態特性を向上させ、毒性を減少させ、溶解性を改善し、目的標的に対する薬学的に活性な部分の生物学的活性及び/若しくは標的選択性を高め、製造性を増加させ、且つ/又は薬学的に活性な部分(例えば、ペプチド若しくは非ペプチド部分)の免疫原性を低下させる。ポリエチレングリコール(PEG)は、有用な半減期延長部分の例である。本発明による半減期延長部分の他の例としては、エチレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(例えば、ポリリシン)、デキストランn−ビニルピロリドン、ポリn−ビニルピロリドン、プロピレングリコールホモポリマー、プロピレノキシドポリマー、エチレンオキシドポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、直鎖状又は分岐状グリコシル化鎖、ポリアセタール、長鎖脂肪酸、長鎖疎水性脂肪族基、免疫グロブリンFcドメイン(例えば、Feige et al.,Modified peptides as therapeutic agents、米国特許第6,660,843号明細書を参照)、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン;例えば、Rosen et al.,Albumin fusion proteins、米国特許第6,926,898号明細書及び米国特許出願公開第2005/0054051号明細書;Bridon et al.,Protection of endogenous therapeutic peptides from peptidase activity through conjugation to blood components、米国特許第6,887,470号明細書を参照)、トランスサイレチン(TTR;例えば、Walker et al.,Use of transthyretin peptide/protein fusions to increase the serum half−life of pharmacologically active peptides/proteins、米国特許出願公開第2003/0195154A1号明細書;同第2003/0191056A1号明細書を参照)、又はチロキシン結合グロブリン(TBG)が挙げられる。
0072
本発明による有用な半減期延長部分の他の実施形態には、温度、pH、及びイオン強度の生理学的条件下で、長半減期血清タンパク質に対する結合親和性を有するペプチドリガンド又は小(非ペプチド有機)分子リガンドが含まれる。例としては、アルブミン結合ペプチド若しくは小分子リガンド、トランスサイレチン結合ペプチド若しくは小分子リガンド、チロキシン結合グロブリン結合ペプチド若しくは小分子リガンド、抗体結合ペプチド若しくは小分子リガンド、又は長半減期血清タンパク質に対して親和性を有する別のペプチド若しくは小分子が挙げられる。(例えば、Blaney et al.,Method and compositions for increasing the serum half−life of pharmacologically active agents by binding to transthyretin− selective ligands、米国特許第5,714,142号明細書;Sato et al.,Serum albumin binding moieties、米国特許出願公開第2003/0069395A1号明細書;Jones et al.,Pharmaceutical active conjugates、米国特許第6,342,225号明細書を参照)。「長半減期血清タンパク質」は、いわゆる「担体タンパク質」(例えば、アルブミン、トランスフェリン及びハプトグロビン)、フィブリノーゲン及び他の血液凝固因子、補体成分、免疫グロブリン、酵素阻害剤、アンギオテンシン及びブラジキニンなどの物質の前駆体、並びに多くの他の種類のタンパク質を含む、哺乳動物血漿中に溶解した数百の種々のタンパク質のうちの1つである。本発明は薬学的に許容される半減期延長部分(例えば、本明細書中に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない)の任意の単一の種の使用、又は2つ以上の異なる半減期延長部分の組み合わせの使用を包含する。
0073
実施例を含む、本明細書中で使用される組換えポリペプチド及び核酸方法は、一般に、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)又はCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,Green Publishers Inc. and Wiley and Sons 1994)に記載されるものであり、これらはいずれも任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
0075
本明細書では、別段の定義がない限り、本願と関連して使用される科学用語及び専門用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
0076
一般に、本明細書に記載の細胞及び組織の培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸の化学、並びにハイブリダイゼーションと関連して使用される命名法、及びそれらの手法は、よく知られているものであり、当該技術分野において一般に使用されるものである。別段の記載がない限り、本願の方法及び手法は、一般に、当該技術分野においてよく知られる通常の方法に従って実施され、こうした方法及び手法は、本明細書を通して引用及び議論される様々な一般の参考文献及び特定性の高い参考文献に記載されるものである。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、及びHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)(これらは参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。酵素反応及び精製手法は、製造者の説明に従って実施されるか、当該技術分野において一般に達成されるように実施されるか、又は本明細書に記載のように実施される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、並びに医薬品化学及び製薬化学と関連して使用される専門用語、並びにそれらの実験室的な手順及び手法は、当該技術分野においてよく知られ、且つ一般に使用されているものである。化学合成、化学分析、医薬調製、製剤化、及び送達、並びに患者の治療には、標準的な手法が使用され得る。
0077
本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール及び試薬等に限定されず、したがって、変わり得るものであると理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態の説明を目的としているにすぎず、開示の範囲を限定することを意図するものではなく、開示の範囲は特許請求の範囲のみによって定義される。
0078
実施例又は別の形で記載される場合を除き、本明細書で使用される成分又は反応条件の量を示す数はすべて、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。「約」という用語は、割合と関連して使用されるとき、±1%を意味し得る。
0079
別段の記載がない限り、本明細書で使用される「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、慣例に従い、「1つ又は複数」を意味する。
0080
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」及び「残基」という用語は、互換的に使用され、ペプチド又はポリペプチドとの関連で使用されるとき、天然起源のアミノ酸と合成のアミノ酸との両方、並びに天然起源のアミノ酸と化学的に類似したアミノ酸類似体、アミノ酸模倣体及び非天然起源のアミノ酸を指す。
0081
「天然起源のアミノ酸」は、遺伝コードによってコードされるアミノ酸、並びに遺伝コードによってコードされ、合成された後に修飾されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート及びO−ホスホセリン)である。アミノ酸類似体は、天然起源のアミノ酸と同一の基本化学構造、すなわち水素に結合したα炭素、カルボキシル基、アミノ基及びR基を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチルメチオニンスルホニウムである。そのような類似体は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)又は改変されたペプチド骨格を有し得るが、天然起源のアミノ酸と同一の基本化学構造を保持するであろう。
0082
「アミノ酸模倣体」は、アミノ酸の一般化学構造と異なる構造を有するが、天然起源のアミノ酸と類似の様式で機能する化学化合物である。例としては、アミドのメタクリロイル誘導体又はアクリロイル誘導体、β−イミノ酸、γ−イミノ酸、δ−イミノ酸(ピペリジン−4−カルボン酸など)などが挙げられる。
0083
「非天然起源のアミノ酸」は、天然起源のアミノ酸と同一の基本化学構造を有するが、翻訳複合体によって伸長ポリペプチド鎖に組み込まれない化合物である。「非天然起源のアミノ酸」には、限定はされないが、天然にコードされるアミノ酸(限定はされないが、20の一般的なアミノ酸を含む)が修飾(例えば、翻訳後修飾)されることによって生じるが、翻訳複合体によって伸長ポリペプチド鎖にそれ自体が天然に組み込まれることのないアミノ酸も含まれる。ポリペプチド配列に挿入することができる、又はポリペプチド配列における野生型残基の代わりに使用することができる非天然起源のアミノ酸の例のリストには、限定はされないが、β−アミノ酸、ホモアミノ酸、環状アミノ酸及び側鎖が誘導体化されたアミノ酸が含まれる。例としては、シトルリン(Cit)、ホモシトルリン(hCit)、Nα−メチルシトルリン(NMeCit)、Nα−メチルホモシトルリン(Nα−MeHoCit)、オルニチン(Orn)、Nα−メチルオルニチン(Nα−MeOrn又はNMeOrn)、サルコシン(Sar)、ホモリシン(hLys又はhK)、ホモアルギニン(hArg又はhR)、ホモグルタミン(hQ)、Nα−メチルアルギニン(NMeR)、Nα−メチルロイシン(Nα−MeL又はNMeL)、N−メチルホモリシン(NMeHoK)、Nα−メチルグルタミン(NMeQ)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(Tic)、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸(Oic)、3−(1−ナフチル)アラニン(1−Nal)、3−(2−ナフチル)アラニン(2−Nal)、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(Tic)、2−インダニルグリシン(IgI)、パラ−ヨードフェニルアラニン(pI−Phe)、パラ−アミノフェニルアラニン(4AmP又は4−アミノ−Phe)、4−グアニジノフェニルアラニン(Guf)、グリシルリシン(「K(Nε−グリシル)」又は「K(グリシル)」又は「K(gly)」と略される)、ニトロフェニルアラニン(ニトロphe)、アミノフェニルアラニン(アミノphe又はアミノ−Phe)、ベンジルフェニルアラニン(ベンジルphe)、γ−カルボキシグルタミン酸(γ−カルボキシglu)、ヒドロキシプロリン(ヒドロキシpro)、p−カルボキシル−フェニルアラニン(Cpa)、α−アミノアジピン酸(Aad)、Nα−メチルバリン(NMeVal)、N−α−メチルロイシン(NMeLeu)、Nα−メチルノルロイシン(NMeNle)、シクロペンチルグリシン(Cpg)、シクロヘキシルグリシン(Chg)、アセチルアルギニン(アセチルarg)、α,β−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、α,γ−ジアミノ酪酸(Dab)、ジアミノプロピオン酸(Dap)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、4−メチル−フェニルアラニン(MePhe)、β,β−ジフェニル−アラニン(BiPhA)、アミノ酪酸(Abu)、4−フェニル−フェニルアラニン(又はビフェニルアラニン、4Bip)、α−アミノ−イソ酪酸(Aib)、ベータ−アラニン、ベータ−アミノプロピオン酸、ピペリジン酸、アミノカプロン酸、アミノヘプタン酸、アミノピメリン酸、デスモシン、ジアミノピメリン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリシン、アロ−ヒドロキシリシン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、4−ヒドロキシプロリン(Hyp)、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、ω−メチルアルギニン、4−アミノ−O−フタル酸(4APA)及び他の類似アミノ酸、並びに具体的に記載のもののいずれかの誘導体化形態が挙げられ、これらのものは、L−形態又はD−形態をとり、括弧内は略語である。
0084
「単離された核酸分子」という用語は、5’末端から3’末端へと読まれるデオキシリボヌクレオチド塩基若しくはリボヌクレオチド塩基の一本鎖若しくは二本鎖のポリマー又はその類似体であって、細胞源から全核酸が単離されるときにその核酸と共に天然に見出されるポリペプチド、ペプチド、脂質、糖質、ポリヌクレオチド、又は他の物質の少なくとも約50パーセントが取り除かれているものを指す。好ましくは、単離された核酸分子は、その核酸の天然環境において見出され、ポリペプチド生成におけるその使用、又はその治療的、診断的、予防的、若しくは研究的な使用を妨害すると想定される任意の他の混入核酸分子又は他の分子を実質的に含まない。
0085
「単離されたポリペプチド」という用語は、ポリペプチド、ペプチド、脂質、炭水化物、ポリヌクレオチド、又は供給源細胞から単離された場合にポリペプチドが天然に見出される他の物質の少なくとも約50パーセントから分離されたポリペプチドをいう。単離されたポリペプチドは、その天然環境において見出され、その治療的、診断的、予防的、又は研究的な使用を妨害すると想定される任意の他の汚染性ポリペプチド又は他の汚染物質を実質的に含まないことが好ましい。
0086
リンカー部分を介して別の抗体又は抗体断片に直接又は間接的に連結、付着、又は結合した薬物又はペプチドを含む本発明の組成物は、「コンジュゲート」又は「コンジュゲートされた」分子である。
0087
「コードする」という用語は、1つ又は複数のアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列を指す。用語は、開始コドン又は終始コドンを必要としない。
0088
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列と関連する「同一の」及び「同一性」パーセントという用語は、同一である2つ以上の配列又は部分配列を指す。「同一性パーセント」は、比較分子におけるアミノ酸又はヌクレオチドの間で残基が同一であるパーセントを意味し、比較される分子の中で最小のもののサイズに基づいて計算される。こうした計算では、アライメントにおけるギャップ(存在する場合)は、特定の数学モデル又はコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)により対処することができる。アラインした核酸又はポリペプチドの同一性を計算するために使用し得る方法には、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.),(1988)New York:Oxford University Press;Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,D.W.,ed.),1993,New York:Academic Press;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.),1994,New Jersey:Humana Press;von Heinje,G.,(1987)Sequence Analysis in Molecular Biology,New York:Academic Press;Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.),1991,New York:M.Stockton Press;及びCarillo et al.,(1988)SIAM J.Applied Math.48:1073に記載されるものが含まれる。
0089
同一性パーセントを計算する際には、比較する配列を、配列間の最大の一致を与えるような方法でアラインする。同一性パーセントを決定するために使用されるコンピュータプログラムは、GAPを含むGCGプログラムパッケージである(Devereux et al.,(1984)Nucl.Acid Res.12:387;Genetics Computer Group、University of Wisconsin、Madison、WI)。コンピュータアルゴリズムGAPは、配列同一性パーセントを決定する2つのポリペプチド又はポリヌクレオチドをアラインさせるために使用される。配列は、それらのそれぞれのアミノ酸又はヌクレオチドが最適に一致するようにアラインされる(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)。ギャップ開始ペナルティ(3×平均対角として計算される。ここで、「平均対角」は使用される比較マトリックスの対角の平均であり、「対角」は特定の比較マトリックスによってそれぞれの完全アミノ酸一致に割り当てられるスコア又は数である)及びギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップ開始ペナルティの1/10倍である)、並びにPAM 250又はBLOSUM 62などの比較マトリックスが、アルゴリズムと共に使用される。特定の実施形態では、標準比較マトリックス(PAM 250比較マトリックスについては、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345−352を参照;BLOSUM 62比較マトリックスについては、Henikoff et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915−10919を参照)もまたアルゴリズムによって使用される。
0090
GAPプログラムを使用し、ポリペプチド又はヌクレオチド配列の同一性パーセントを決定するために推奨されるパラメータには、以下のものがある。
アルゴリズム:Needleman et al.,1970,J.Mol.Biol.48:443−453;
比較マトリックス:Henikoff et al.,1992(上記)のBLOSUM 62;
ギャップペナルティー:12(ただし、エンドギャップに対するペナルティなし)
ギャップ長ペナルティ:4
類似性の閾値:0
0091
2つのアミノ酸配列をアラインするための特定のアライメントスキームを用いると、2つの配列において短い領域のみが一致する可能性があり、アラインされたこの短い領域は、2つの全長配列の間に顕著な関連性が存在せずとも非常に高い配列同一性を有する可能性がある。したがって、所望するならば、標的ポリペプチドの少なくとも50の連続するアミノ酸にまたがるアライメントが得られるように、選択したアライメント法(例えば、GAPプログラム)を調整することができる。
0092
本明細書で使用される「抗原結合タンパク質」は、特定の標的抗原に特異的に結合する任意のタンパク質を意味する。この用語は、少なくとも2本の全長重鎖及び2本の全長軽鎖を含むインタクトな抗体、並びにその誘導体、多様体、断片及び変異物を包含する。抗体断片の例には、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片及びFv断片が含まれる。抗原結合タンパク質には、以下にさらに記載されるnanobodies及びscFvなどのドメイン抗体も含まれる。
0093
一般に、抗原結合タンパク質は、その抗原結合タンパク質が非標的分子に対して本質的にバックグラウンドの結合を示すとき、その標的抗原に「特異的に結合する」と言われる。しかしながら、標的に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、異なる種に由来する標的抗原と交差反応し得る。典型的には、抗原結合タンパク質は、表面プラズマ共鳴手法(例えば、BIACore,GE−Healthcare Uppsala,Sweden)又は結合平衡除外法(KinExA,Sapidyne,Boise,Idaho)によって測定される解離定数(KD)が≦10−7Mであると標的に特異的に結合する。抗原結合タンパク質は、記載の方法を使用して測定されるKDが≦5×10−9Mであるとき、「高い親和性」で標的に特異的に結合し、記載の方法を使用して測定されるKDが≦5×10−10Mであるとき、「非常に高い親和性」で標的に特異的に結合する。
0094
「抗原結合領域」は、特定の抗原に特異的に結合するタンパク質又はタンパク質の一部を意味する。例えば、抗原と相互作用し、抗原に対するその特異性及び親和性を抗原結合タンパク質に与えるアミノ酸残基を含む抗原結合タンパク質のその部分は、「抗原結合領域」と称される。抗原結合領域は、典型的には、免疫グロブリン、一本鎖免疫グロブリン、又はラクダ科の動物の抗体の「相補的結合領域」(「CDR」)を1つ又は複数含む。特定の抗原結合領域は、1つ又は複数の「フレームワーク」領域も含む。「CDR」は、抗原結合の特異性及び親和性に寄与するアミノ酸配列である。「フレームワーク」領域は、CDRの適切な立体構造の維持に役立つことで、抗原結合領域と抗原との間の結合を促進することができる。
0095
「組換えタンパク質」は組換え手法を用いて、すなわち、本明細書に記載されるような組換え核酸の発現によって作製されるタンパク質である。組換えタンパク質の生成方法及び生成手法は、当該技術分野においてよく知られている。
0096
「抗体」という用語は、任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリン、又は標的抗原への特異的結合についてインタクトな抗体と競合することができるその断片を指し、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体及び二重特異性抗体を含む。したがって、「抗体」は、抗原結合タンパク質の一種である。インタクトな抗体は、一般に、少なくとも2本の全長重鎖及び2本の全長軽鎖を含む。抗体は、単一の供給源のみに由来するか、又は「キメラ」、すなわち、以下にさらに記載されるように、その抗体の異なる部分が、2つの異なる抗体に由来し得るものであり得る。抗原結合タンパク質、抗体、又は結合断片は、ハイブリドーマにおいて、組換えDNA手法により又はインタクトな抗体の酵素的若しくは化学的な切断により生成され得る。
0097
抗体又はその断片に関して使用される「軽鎖」という用語は、全長軽鎖、及び結合特異性を与えるために十分な可変領域配列を有するその断片を含む。全長軽鎖は、可変領域ドメイン(VL)及び定常領域ドメイン(CL)を含む。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。軽鎖には、カッパ鎖及びラムダ鎖が含まれる。
0098
抗体又はその断片に関して使用される「重鎖」という用語は、全長重鎖、及び結合特異性を与えるために十分な可変領域配列を有するその断片を含む。全長重鎖は、可変領域ドメイン(VH)並びに3つの定常領域ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を含む。VHドメインは、ポリペプチドのアミノ末端に位置し、CHドメインは、カルボキシル末端に位置し、CH3が、ポリペプチドのカルボキシ末端に最も近い位置に存在する。重鎖は、IgG(IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプ及びIgG4サブタイプを含む)、IgA(IgA1サブタイプ及びIgA2サブタイプを含む)、IgM、並びにIgEを含む、任意のアイソタイプのものであり得る。
0099
本明細書で使用される、抗体又は免疫グロブリンの鎖(重鎖又は軽鎖)の「免疫学的に機能性の断片」(又は単に「断片」)という用語は、全長鎖に存在するアミノ酸の少なくともいくつかを欠いているが、抗原に特異的に結合する能力を有する抗体の一部(その部分がどのように得られるか、又は合成されるかは問われない)を含む抗原結合タンパク質である。そのような断片は、それが標的抗原に特異的に結合するという点で生物学的に活性であり、所与のエピトープへの特異的に結合について、インタクトな抗体を含む、他の抗原結合タンパク質と競合することができる。
0100
こうした生物学的に活性な断片は、組換えDNA手法によって生成され得、又はインタクトな抗体を含む、抗原結合タンパク質の酵素的若しくは化学的な切断によって生成され得る。免疫学的に機能性の免疫グロブリン断片には、限定はされないが、Fab断片、Fab’断片及びF(ab’)2断片が含まれる。
0101
別の実施形態では、Fv、ドメイン抗体及びscFvであり、これらは、本発明の抗体に由来し得る。
0102
例えば、1つ又は複数のCDRなど、本明細書に開示の抗原結合タンパク質の機能性部分は、第2のタンパク質又は小分子に共有結合させることで、体における特定の標的を対象とする治療剤を創出し、二機能性の治療特性を持たせるか、又は血清半減期を延長できることがさらに企図される。
0103
「Fab断片」は、1つの軽鎖と、1つの重鎖のCH1及び可変領域とから構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
0104
「Fc」領域は、抗体のCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む2つの重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合及びCH3ドメインの疎水性相互作用によってまとめられる。
0105
「Fab’断片」は、1つの軽鎖と、VHドメイン及びCH1ドメインに加えてCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域も含む1つの重鎖の一部とを含み、その結果、2つのFab’断片の2つの重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成することでF(ab’)2分子を形成することができる。
0106
「F(ab’)2断片」は、2つの軽鎖と、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域の一部を含む2つの重鎖とを含み、その結果、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖の間に形成される。したがって、F(ab’)2断片は、2つの重鎖の間のジスルフィド結合によってまとめられた2つのFab’断片から構成される。
0107
「Fv領域」は、重鎖と軽鎖との両方に由来する可変領域を含むが、定常領域を欠いている。
0108
「一本鎖抗体」又は「scFv」は、重鎖及び軽鎖可変領域が抗原結合領域を形成する単一のポリペプチド鎖を形成するために、可撓性リンカーによって連結されているFv分子である。scFvについては、国際公開第88/01649号パンフレット、並びに米国特許第4,946,778号明細書及び同第5,260,203号明細書に詳細に論じられており、これらの開示は、参照により組み込まれる。
0109
「ドメイン抗体」又は「一本鎖免疫グロブリン」は、重鎖の可変領域又は軽鎖の可変領域のみを含む免疫学的に機能性の免疫グロブリン断片である。ドメイン抗体の例には、Nanobodies(登録商標)が含まれる。いくつかの場合、2つ以上のVH領域が、ペプチドリンカーを介して共有結合で連結されることで二価のドメイン抗体が創出される。二価のドメイン抗体の2つのVH領域は、同一又は異なる抗原を標的とし得る。
0110
「二価の抗原結合タンパク質」又は「二価の抗体」は、2つの抗原結合領域を含む。いくつかの場合、2つの結合領域は、同一の抗原特異性を有する。二価の抗原結合タンパク質及び二価の抗体は、二重特異性であり得、これについては以下を参照されたい。
0112
「二重特異性(bispecific)」、「二重特異性(dual−specific)」又は「二重特異性(bifunctional)」の抗原結合タンパク質又は抗体は、それぞれハイブリッドの抗原結合タンパク質又は抗体であり、2つの異なる抗原結合部位を有する。二重特異性の抗原結合タンパク質及び抗体は、多特異性抗原結合タンパク質又は多特異性抗体の一種であり、限定はされないが、ハイブリドーマの融合又はFab’断片の連結を含む、様々な方法によって生成され得る。例えば、Songsivilai and Lachmann,1990,Clin.Exp.Immunol.79:315−321、Kostelny et al.,1992,J.Immunol.148:1547−1553を参照されたい。二重特異性の抗原結合タンパク質又は抗体の2つの結合部位は、2つの異なるエピトープに結合し、こうした2つの異なるエピトープは、同一又は異なるタンパク質標的に存在し得る。
0113
抗原結合タンパク質(例えば、抗体)との関連において使用されるとき、「競合する」という用語は、抗原結合タンパク質間の競合が、共通の抗原への参照抗原結合タンパク質の特異的結合を抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はその免疫学的に機能性の断片)が試験下で阻止又は阻害するアッセイによって決定されることを意味する。多くの種類の競合結合アッセイを使用することができ、それには、例えば、固相直接又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接又は間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al.,1983,Methodsin Enzymology 9:242−253を参照)、固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Kirkland et al.,1986,J.Immunol.137:3614−3619を参照)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane、1988,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Pressを参照)、I−125標識を用いた固相直接標識RIA(例えば、Morel et al.,1988,Molec.Immunol.25:7−15を参照)、固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Cheung,et al.,1990,Virology 176:546−552を参照)、及び直接標識RIA(Moldenhauer et al.,1990,Scand.J.Immunol.32:77−82)が含まれる。典型的には、このようなアッセイでは、固体表面に結合した精製抗原又はこうした抗原のいずれかを有する細胞、非標識試験抗原結合タンパク質及び標識参照抗原結合タンパク質が使用される。競合的阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で固体表面又は細胞に結合した標識の量を決定することによって測定される。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合的結合を決定するための方法に関するさらなる詳細は、本明細書の実施例において提供される。通常、競合する抗原結合タンパク質が過剰に存在すると、競合する抗原結合タンパク質は、共通の抗原への参照抗原結合タンパク質の特異的結合が少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%阻害する。いくつかの場合、結合は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも97%以上阻害される。
0114
「抗原」という用語は、抗原結合タンパク質(例えば、抗体を含む)などの選択的結合剤による結合を受ける能力を有し、さらに、その抗原に結合する能力を有する抗体を生成するために動物において使用することが可能な分子又は分子の一部を指す。抗原は、異なる抗原結合タンパク質、例えば、抗体と相互作用する能力を有する1つ又は複数のエピトープを有し得る。
0115
「エピトープ」という用語は、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)により結合される分子の一部である。この用語は、抗体などの抗原結合タンパク質に特異的に結合する能力を有する任意の決定基を含む。エピトープは、連続的又は非連続的(不連続的)(例えば、ポリペプチドでは、そのポリペプチド配列では互いに連続的ではないが、その分子の中で結び付きを有するアミノ酸残基は、抗原結合タンパク質による結合を受ける)であり得る。立体構造エピトープは、活性タンパク質の立体構造には存在するが、変性タンパク質には存在しないエピトープである。特定の実施形態では、エピトープは、抗原結合タンパク質を生成するために使用されるエピトープと類似した三次元構造をそれが含むが、抗原結合タンパク質を生成するために使用されるそのエピトープにおいて見られるアミノ酸残基をそれが含まないか、又はそのいくつかのみを含むという点で模倣的であり得る。エピトープは、タンパク質に存在することが最も多いが、場合により、核酸などの他の種類の分子に存在し得る。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、リン酸基又はスルホニル基などの化学的に活性な表面分類の分子を含み得、特定の三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有し得る。一般に、特定の標的抗原に特異的な抗原結合タンパク質は、タンパク質及び/又は巨大分子の複合混合物において標的抗原に存在するエピトープを優先的に認識する。
0116
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋な」は、記載された分子種が、存在する優勢な種であること、すなわちモル基準で同じ混合物中の任意の他の個々の種よりも豊富であることを意味する。特定の実施形態では、実質的に純粋な分子は、対象種が存在するすべての巨大分子種の少なくとも50%(モル基準で)を含む組成物である。他の実施形態では、実質的に純粋な組成物は、組成物に存在するすべての巨大分子種の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%を構成する。他の実施形態では、対象種は、実質的な均一性を有するまで精製され、通常の検出方法によって組成物中に混入種を検出することはできず、したがって組成物は、単一の検出可能な巨大分子種からなる。
0117
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、一本鎖のヌクレオチドポリマーと二本鎖のヌクレオチドポリマーとの両方を含む。ポリヌクレオチドを構成するヌクレオチドは、リボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチド、又はいずれかの型のヌクレオチドの改変形態であり得る。改変には、ブロモウリジン及びイノシン誘導体などの塩基改変、2’,3’−ジデオキシリボースなどのリボース改変、並びにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニラダート(phoshoraniladate)及びホスホロアミダートなどのヌクレオチド間結合の改変が含まれる。
0118
「オリゴヌクレオチド」という用語は、200以下のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを意味する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、10〜60の塩基長である。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20〜40のヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドは、例えば、変異遺伝子の構築において使用するための一本鎖又は二本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、検出アッセイのための放射標識、蛍光標識、ハプテン、又は抗原性標識を含む、標識を含み得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、PCRプライマー、クローニングプライマー、又はハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。
0119
「単離された核酸分子」は、ゲノム、mRNA、cDNA、若しくは合成を起源とするか、又はそれらの何らかの組み合わせであるDNA又はRNAであって、単離されたポリヌクレオチドが天然に見出されるポリヌクレオチドのすべて若しくは一部を伴わないか、又はそれが天然では連結されないポリヌクレオチドに連結されているDNA又はRNAを意味する。本開示の目的では、特定のヌクレオチド配列を「含む核酸分子」は、インタクトな染色体を包含しないと理解されるべきである。特定の核酸配列を「含む」単離された核酸分子は、その特定の配列に加えて、最大で10若しくはさらに最大で20に及ぶ数の他のタンパク質若しくはその一部をコードする配列を含み得、又は記載の核酸配列のコード領域の発現を制御する作動可能に連結された調節配列を含み得、且つ/又はベクター配列を含み得る。
0120
別段の記載がない限り、本明細書で議論される任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は、5’方向と称される。新生RNA転写物が5’から3’へと付加される方向は、転写方向と称される。RNA転写物と同一の配列を有するDNA鎖に存在し、RNA転写物の5’末端に対して5’側に位置する配列領域は、「上流配列」と称される。RNA転写物と同一の配列を有するDNA鎖に存在し、RNA転写物の3’末端に対して3’側に位置する配列領域は、「下流配列」と称される。
0121
「制御配列」という用語は、それが連結されるコード配列の発現及びプロセシングに影響を与えることができるポリヌクレオチド配列を指す。そのような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態では、原核生物向けの制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列を含み得る。例えば、真核生物向けの制御配列は、転写因子のための認識部位を1つ又は複数含むプロモーター、転写エンハンサー配列及び転写終結配列を含み得る。「制御配列」は、リーダー配列及び/又は融合パートナー配列を含み得る。
0123
「発現ベクター」又は「発現コンストラクト」という用語は、宿主細胞の形質転換に適しており、そこに作動可能に連結される1つ又は複数の異種性コード領域の発現を(宿主細胞と協同して)誘導及び/又は制御する核酸配列を含むベクターを指す。発現コンストラクトは、限定はされないが、転写、翻訳に影響するか、又はそれを制御し、イントロンが存在するのであれば、そこに作動可能に連結されるコード領域のRNAスプライシングに影響する配列を含み得る。
0124
本明細書で使用される「作動可能に連結される」は、この用語が適用される構成要素が、適切な条件下でそれがその固有機能を実施することが可能になる関係にあることを意味する。例えば、ベクターにおいてタンパク質コード配列に「作動可能に連結」制御配列は、制御配列の転写活性と適合する条件下でタンパク質コード配列の発現が達成されるようにそこに連結される。
0125
「宿主細胞」という用語は、核酸配列で形質転換されており、それによって目的とする遺伝子を発現する細胞を意味する。この用語には、目的遺伝子が存在する限り、子孫の形態又は遺伝的構成が元の親細胞と同一であるか否かにかかわらず、親細胞の子孫が含まれる。
0126
「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。この用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然起源のアミノ酸の類似体又は模倣体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然起源のアミノ酸ポリマーにも適用される。この用語はまた、例えば、糖タンパク質を形成するための糖質残基の付加、又はリン酸化によって修飾されたアミノ酸ポリマーを包含し得る。ポリペプチド及びタンパク質は、天然起源及び非組換え細胞によって産生し得るか、又は遺伝子操作若しくは組換えられた細胞によって産生され、天然のタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、或いは天然の配列からの1つ又は複数のアミノ酸の欠失、それへの付加及び/又はその置換を有する分子を含む。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、具体的には、抗原結合タンパク質、抗体、或いは抗原結合タンパク質からの1つ又は複数のアミノ酸の欠失、それへの付加及び/又はその置換を有する配列を包含する。「ポリペプチド断片」という用語は、全長タンパク質と比較して、アミノ末端の欠失、カルボキシル末端の欠失及び/又は内部の欠失を有するポリペプチドを指す。そのような断片は、全長タンパク質と比較して改変されたアミノ酸も含み得る。特定の実施形態では、断片は、約5〜500のアミノ酸長である。例えば、断片は、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも14、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも70、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、又は少なくとも450のアミノ酸長であり得る。有用なポリペプチド断片には、結合ドメインを含む、抗体の免疫学的に機能性の断片が含まれる。
0127
「単離されたタンパク質」という用語は、対象タンパク質が、(1)それと共に通常見られると想定される他のタンパク質を少なくともいくつかは含まないか、(2)例えば、同一種などの同一源に由来する他のタンパク質を実質的に含まないか、(3)異なる種に由来する細胞によって発現するか、(4)天然ではそれに付随するポリヌクレオチド、脂質、糖質、若しくは他の物質の少なくとも約50パーセントが取り除かれているか、(5)天然ではそれに付随しないポリペプチドと(共有結合的若しくは非共有結合的な相互作用によって)作動可能に結び付いているか、又は(6)天然には生じないことを意味する。一般的には、「単離されたタンパク質」は、所与の試料の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、又は少なくとも約50%を構成する。ゲノムDNA、cDNA、mRNA、若しくは合成起源の他のRNA、又はそれらの任意の組み合わせにより、そのような単離されたタンパク質はコードされ得る。単離されたタンパク質は、その天然環境において見出され、その治療、診断、予防、研究又は他の使用を妨害すると想定されるタンパク質若しくはポリペプチド又は他の汚染物質を実質的に含まないことが好ましい。
0128
ポリペプチド(例えば、抗体などの抗原結合タンパク質)の「多様体」は、別のポリペプチド配列と比較して、アミノ酸配列に1つ又は複数のアミノ酸残基の挿入、欠失及び/又は置換が生じたアミノ酸配列を含む。多様体には、融合タンパク質が含まれる。
0129
ポリペプチドの「誘導体」は、例えば、別の化学部分へのコンジュゲーションによって、挿入、欠失、又は置換による多様体と異なる何らかの様式で化学的に改変されたポリペプチド(例えば、抗体などの抗原結合タンパク質)である。
0130
ポリペプチド、核酸、宿主細胞などの生物学的物質に関連して本明細書を通して使用される「天然起源」という用語は、天然に見出される物質を指す。
0131
本明細書で使用される「対象」又は「患者」は、任意の哺乳類であり得る。典型的な実施形態では、対象又は患者は、ヒトである。
0132
「保存的アミノ酸置換」は、天然のアミノ酸残基(すなわち野生型ポリペプチド配列の所与の位置に存在する残基)の、非天然の残基(すなわち野生型ポリペプチド配列の所与の位置に存在しない残基)による置換を含み得、置換の結果、その位置のアミノ酸残基の極性又は電荷に対する影響はほとんどないか又は全くない。保存的アミノ酸置換はまた、典型的には、生物学的な系における合成によってではなく、化学的なペプチド合成によって組み込まれる非天然起源のアミノ酸残基を包含する。こうしたものには、ペプチド模倣体及びアミノ酸部分が逆転又は反転した他の形態が含まれる。
0133
天然起源の残基は、下記の共通の側鎖特性に基づくクラスに分類することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
0134
アミノ酸のさらなるグループもまた、例えば、Creighton(1984)PROTEINS:STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES(2d Ed.1993),W.H.Freeman and Companyに記載されている原理により明確に説明し得る。いくつかの場合、そのような特性の2つ以上に基づいて置換をさらに特徴付けることが有用であり得る(例えば、Thr残基などの「極性の小さい」残基での置換は、適切な状況では高度に保存的な置換となり得る)。
0136
上記の分類のものと類似の生理化学的特性を有することが知られる合成アミノ酸残基、希少アミノ酸残基、又は改変アミノ酸残基を、配列における特定のアミノ酸残基を「保存的」に置換するものとして使用することができる。例えば、D−Arg残基は、典型的なL−Arg残基を置換するものとして働き得る。2つ以上の上記のクラスに関して特定の置換を説明することができる場合もあり得る(例えば、小さい疎水性の残基での置換は、上記のクラスの両方に見られる残基、又は両方の定義を満たすそのような残基と類似の生理化学的特性を有することが当該技術分野において知られる他の合成残基、希少残基、若しくは改変残基での1つのアミノ酸の置換を意味する)。
0137
「ベクター」は、(a)ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を促進する送達媒体、(b)そこからのポリペプチドの生成を促進する送達媒体、(c)それを用いる標的細胞の遺伝子導入/形質転換を促進する送達媒体、(d)核酸配列の複製を促進する送達媒体、(e)核酸の安定性を促進する送達媒体、(f)核酸及び/又は形質転換/遺伝子導入細胞の検出を促進する送達媒体、並びに/又は(g)ポリペプチドをコードする核酸に対して有利な生物学的機能及び/若しくは生理化学的機能を別の形で付与する送達媒体を指す。ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクター及び合成核酸ベクター(適切な一連の発現制御要素を含む核酸配列)を含む、任意の適切なベクターであり得る。このようなベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組み合わせに由来するベクター、及びウイルス核酸(RNA又はDNA)ベクターが挙げられる。
0138
組換え発現ベクターは、原核細胞(例えば、E.コリ(E.coli))又は真核細胞(例えば、バキュロウイルス発現ベクターを使用する昆虫細胞、酵母細胞、若しくは哺乳類細胞)においてタンパク質が発現するように設計することができる。1つの実施形態では、宿主細胞は、哺乳類の非ヒト宿主細胞である。代表的な宿主細胞には、典型的にはクローニング及び発現に使用される宿主が含まれ、こうした宿主には、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)株であるTOP10F’、TOP10、DH10B、DH5a、HB101、W3110、BL21(DE3)及びBL21(DE3)pLysS、BLUESCRIPT(Stratagene)、哺乳類細胞株であるCHO、CHO−K1、HEK293、293−EBNApINベクター(Van Heeke & Schuster,J.Biol.Chem.264:5503−5509(1989)、pETベクター(Novagen,Madison Wis.)が含まれる。或いは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼ及びインビトロの翻訳システムを使用し、インビトロで転写及び翻訳することができる。ベクターは、ポリペプチドをコードする核酸配列を含むクローニング部位の上流にプロモーターを含むことが好ましい。スイッチのオンオフが切り替え可能なプロモーターの例としては、lacプロモーター、T7プロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター及びtrpプロモーターが挙げられる。
0139
様々な実施形態において、ベクターは、標的ポリペプチドの発現を調節する作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む。ベクターは、任意の好適なプロモーター、エンハンサー及び他の発現促進要素を含むか、又はそれと結び付けられ得る。そのような要素の例としては、強力な発現プロモーター(例えば、ヒトCMVIEプロモーター/エンハンサー、RSVプロモーター、SV40プロモーター、SL3−3プロモーター、MMTVプロモーター、若しくはHIVLTRプロモーター、EF1アルファプロモーター、CAGプロモーター)、有効なポリ(A)終結配列、E,コリ(E.coli)におけるプラスミド産物のための複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子及び/又は簡便なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)が挙げられる。ベクターはまた、CMVIEなどの構成的プロモーターとは対照的な誘導性プロモーターを含み得る。1つの態様では、肝臓組織又は膵臓組織などの代謝に関連する組織における配列の発現を促進する組織特異的プロモーターに作動可能に連結された標的ポリペプチドをコードする配列を含む核酸が提供される。
0140
本開示の別の態様では、本明細書に開示の核酸及びベクターを含む宿主細胞が提供される。様々な実施形態において、ベクター又は核酸は、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、他の実施形態では、ベクター又は核酸は、染色体外に存在する。
0141
そのような核酸、ベクター、又はそれらのいずれか若しくは両方の組み合わせを含む酵母細胞、細菌細胞(例えば、E.コリ(E.coli))及び哺乳類細胞(例えば、不死化哺乳類細胞)などの組換え細胞が提供される。様々な実施形態において、標的ポリペプチドの発現をコードする配列を含む、プラスミド、コスミド、ファージミド、又は直鎖発現要素などの非組み込み核酸を含む細胞が提供される。
0142
本明細書で提供される標的ポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターは、形質転換又は遺伝子導入によって宿主細胞に導入することができる。細胞を発現ベクターで形質転換する方法はよく知られている。
0143
標的をコードする核酸は、ウイルスベクターにより宿主細胞又は宿主動物に配置及び/又は送達することができる。この能力を有する任意の好適なウイルスベクターを使用することができる。ウイルスベクターは、任意の数のウイルスポリヌクレオチドを、単独で、或いは所望の宿主細胞における本発明の核酸の送達、複製及び/又は発現を促進する1つ又は複数のウイルスタンパク質と組み合わせて含み得る。ウイルスベクターは、ウイルスゲノムのすべて若しくは一部を含むポリヌクレオチド、ウイルスタンパク質/核酸複合体、ウイルス様粒子(VLP)、又はウイルス核酸及びポリペプチドをコードする核酸を含むインタクトなウイルス粒子であり得る。ウイルス粒子であるウイルスベクターは、野生型ウイルス粒子又は改変ウイルス粒子を含み得る。ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターアンプリコンなど、複製及び/又は発現のための別のベクター又は野生型ウイルスが存在する必要があるベクターであり得る(例えば、ウイルスベクターは、ヘルパー依存性ウイルスであり得る)。典型的には、そのようなウイルスベクターは、野生型ウイルス粒子からなるか、或いは導入遺伝子容量が増えるか、又は核酸の遺伝子導入及び/又は発現に役立つようにそのタンパク質及び/又は核酸含量が改変されたウイルス粒子からなる(そのようなベクターの例としては、ヘルペスウイルス/AAVアンプリコンが挙げられる)。典型的には、ウイルスベクターは、通常はヒトに感染するウイルスと類似のもの及び/又はそれに由来するものである。この点に関して好適なウイルスベクター粒子としては、例えば、アデノウイルスベクター粒子(アデノウイルス科(adenoviridae)の任意のウイルス又はアデノウイルス科(adenoviridae)のウイルスに由来する任意のウイルスを含む)、アデノ随伴ウイルスベクター粒子(AAVベクター粒子)又は他のパルボウイルス及びパルボウイルスベクター粒子、パピローマウイルスベクター粒子、フラビウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)が挙げられる。
0144
本明細書に記載されるように発現する標的ポリペプチドは、標準的なタンパク質精製方法を使用して単離することができる。標的ポリペプチドは、それを自然に発現する細胞から単離することができ、又は例えば、標的ポリペプチドを自然には発現しない細胞など、標的ポリペプチドを発現するように操作された細胞から単離することができる。
0145
標的ポリペプチドを単離するために用いることができるタンパク質精製方法、並びに関連する材料及び試薬は、当該技術分野において知られている。標的ポリペプチドを単離するために有用であり得るさらなる精製方法は、BootcovMR,1997,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11514−9,Fairlie WD,2000,Gene 254:67−76などの参考文献に見出すことができる。
0146
提供される抗原結合タンパク質は、本明細書に記載の相補性決定領域(CDR)が1つ又は複数組み込まれ且つ/又は連結されるポリペプチドである。いくつかの抗原結合タンパク質では、CDRは、「フレームワーク」領域に組み込まれ、この領域によってCDRの方向が整えられ、その結果、CDRの適切な抗原結合特性が達成される。本明細書に記載の特定の抗原結合タンパク質は、抗体であるか、又は抗体に由来する。他の抗原結合タンパク質では、CDR配列は、異なる型のタンパク質骨格に組み込まれる。
0147
一般に、提供される抗原結合タンパク質は、典型的には、本明細書に記載のCDRを1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ)含む。いくつかの場合、抗原結合タンパク質は、(a)ポリペプチド構造と、(b)ポリペプチド構造に挿入及び/又は連結される1つ又は複数のCDRとを含む。ポリペプチド構造は、様々な異なる形態をとり得る。例えば、ポリペプチド構造は、天然起源の抗体又はその断片若しくは多様体のフレームワークであり得るか、又はそれを含み得、或いは本質的に完全に合成のものであり得る。様々なポリペプチド構造の例が以下にさらに記載される。
0148
特定の実施形態では、抗原結合タンパク質のポリペプチド構造は、抗体であるか、又は抗体に由来する。したがって、提供される特定の抗原結合タンパク質の例には、限定はされないが、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、Nanobodies(登録商標)などのドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣体」と称されることがある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合体、及びそれぞれのその一部又は断片が含まれる。いくつかの場合、抗原結合タンパク質は、完全抗体の免疫学的断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2)である。他の場合、抗原結合タンパク質は、本発明の抗体に由来するCDRを使用するscFvである。
0149
別の態様では、インビトロ又はインビボ(例えば、ヒト対象に投与された場合)の半減期が少なくとも1日である抗原結合タンパク質が提供される。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、少なくとも3日の半減期を有する。様々な他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、15日、20日、25日、30日、40日、50日、又は60日以上の半減期を有する。別の実施形態では、抗原結合タンパク質は、非誘導体化抗体又は非改変抗体と比較してその半減期が長くなるように誘導体化又は改変される。別の実施形態では、血清半減期を増加させるために抗原結合タンパク質は点変異を含む。そのような変異体及び誘導体化形態に関する詳細は、以下にさらに提供される。
0150
提供される抗原結合タンパク質のいくつかは、典型的には、天然起源の抗体と関連する構造を有する。こうした抗体の構造単位は、典型的には、1つ又は複数の四量体を含み、四量体はそれぞれ、ポリペプチド鎖の2つの同一のカプレットから構成されるが、哺乳類のいくつかの種は、単一の重鎖のみを有する抗体も産生する。典型的な抗体では、それぞれの対又はカプレットは、1つの全長「軽」鎖(特定の実施形態では、約25kDa)と、1つの全長「重」鎖(特定の実施形態では、約50〜70kDa)とを含む。個々の免疫グロブリン鎖はそれぞれ、いくつかの「免疫グロブリンドメイン」から構成され、「免疫グロブリンドメイン」はそれぞれ、およそ90〜110のアミノ酸からなり、特徴的なフォールディングパターンを示す。これらのドメインは、抗体ポリペプチドを構成する基本単位である。それぞれの鎖のアミノ末端部分は、典型的には、抗原認識を担う可変ドメインを含む。カルボキシ末端部分は、鎖のもう一方の末端と比較して進化的に保存度が高く、「定常領域」又は「C領域」と称される。ヒト軽鎖は、一般に、カッパー軽鎖及びラムダ軽鎖に分類され、こうした軽鎖はそれぞれ、1つの可変ドメイン及び1つの定常ドメインを含む。重鎖は、典型的には、ミュー鎖、デルタ鎖、ガンマ鎖、アルファ鎖、又はイプシロン鎖に分類され、こうした鎖は、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEに抗体のアイソタイプを定義する。IgGは、限定はされないが、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む、いくつかのサブタイプを有する。IgMサブタイプには、IgM及びIgM2が含まれる。IgAサブタイプには、IgA1及びIgA2が含まれる。ヒトでは、IgA及びIgDアイソタイプは、4本の重鎖及び4本の軽鎖を含み、IgG及びIgEアイソタイプは、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含み、且つIgMアイソタイプは、5本の重鎖及び5本の軽鎖を含む。重鎖のC領域は、典型的には、エフェクター機能を担い得るドメインを1つ又は複数含む。重鎖定常領域ドメインの数は、アイソタイプに依存する。IgGの重鎖は、例えば、重鎖のそれぞれが、CH1、CH2及びCH3として知られる3つのC領域ドメインを含む。提供される抗体は、これらのアイソタイプ及びサブタイプのいずれかを有することができる。特定の実施形態では、抗体は、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、又はIgG4サブタイプのものである。
0151
全長の軽鎖及び重鎖では、可変領域及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖は、約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。例えば、Fundamental Immunology,2nd ed.,Ch.7(Paul,W.,ed.)1989,New York:Raven Press(あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、典型的には、抗原結合部位を形成する。
0152
本明細書で提供される抗体では、免疫グロブリン鎖の可変領域は、一般に、3つの超可変領域(「相補性決定領域」又はCDRと呼ばれることの方が多い)によって連結された相対的に保存されたフレームワーク領域(FR)を含む同一の全体構造を示す。上述のそれぞれの重鎖/軽鎖対の2つの鎖に由来するCDRは、典型的には、フレームワーク領域によって整列されることで、抗原の特定のエピトープと特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端まで、天然起源の軽鎖及び重鎖の可変領域は両方とも、典型的には、これらの要素が以下の順序に従う:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4。これらのドメインの各々に位置を占めるアミノ酸に番号を割り当てるための番号付けシステムが考案されている。この番号付けシステムは、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(1987及び1991,NIH,Bethesda,Md.)又はChothia & Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−917;Chothia et al.,1989,Nature 342:878−883に定義されている。
0153
本発明は、少なくとも1つのコンジュゲーション部位を有する抗原結合タンパク質を含む組成物に関する。コンジュゲーション部位は、コンジュゲーション部位でのアミノ酸残基の側鎖を通した規定コンジュゲーション化学によって付加する機能性部分(例えば、薬物、リガンド又はペプチド)のコンジュゲーションに適用可能でなければならない。本発明に従って抗原結合タンパク質に対し高い選択性の部位特異的コンジュゲーションを達成するには、多様な設計基準の考察を必要とする。第一に、好ましいコンジュゲーション又は結合化学が定義又は規定されなければならない。機能性部分は、当該技術分野で知られる様々なコンジュゲーション化学を組み合わせることによって、抗原結合タンパク質の選択されたコンジュゲーション部位にコンジュゲート又は結合させることができる。例えば、抗原結合タンパク質上の接近可能なシステインチオールを標的とするマレイミド活性化コンジュゲーションパートナーは、1つの実施形態であるが、抗原結合タンパク質配列内の標準的又は非標準的な、例えば非天然のアミノ酸の側鎖を標的とする多くのコンジュゲーション化学反応又は結合化学反応を本発明に従って使用することができる。
0154
化学選択的コンジュゲーションのための化学反応としては、銅(I)触媒アジド−アルキン[3+2]二極性付加環化、シュタウディンガーライゲーション、他のアシル転移プロセス(S→N;X→N)、オキシム化、ヒドラゾン結合形成及び他の適切な有機化学反応、例えば水溶性パラジウム触媒を使用するクロスカップリングなどが挙げられる。(例えば、Bong et al.,Chemoselective Pd(0)−catalyzed peptide coupling in water,Organic Letters 3(16):2509−11(2001);Dibowski et al.,Bioconjugation of peptides by palladium−catalyzed C−C cross−coupling in water,Angew.Chem.Int.Ed.37(4):476−78(1998);DeVasher et al.,Aqueous−phase,palladium−catalyzed cross−coupling of aryl bromides under mild conditions,using water−soluble,sterically demanding alkylphosphines,J.Org.Chem.69:7919−27(2004);Shaugnessy et al.,J.Org.Chem,2003,68,6767−6774;Prescher,JA and Bertozzi CR,Chemistry in living system,Nature Chemical Biology 1(1);13−21(2005))。
0155
上述したように、抗原結合タンパク質へのコンジュゲーション(又は共有結合)は、コンジュゲーション部位でのアミノ酸残基、例えばシステイニル残基(これに限定されない)側鎖によって行われる。選択される内部コンジュゲーション部位でのアミノ酸残基、例えばシステイニル残基は、天然Fcドメイン配列内の同一アミノ酸残基位置を占めるアミノ酸残基であるか、又は置換若しくは挿入によってFcドメイン配列内へ操作され得る。
0156
全抗原結合タンパク質内のコンジュゲーション部位の配置の選択は、本発明に従って内部コンジュゲーション部位を選択することの別の重要な局面である。抗原結合タンパク質上の露出したアミノ酸残基のいずれも、強力に有用なコンジュゲーション部位であり得、抗原結合タンパク質配列の選択されたコンジュゲーション部位に前に存在していない場合、部位選択的結合のためにシステイン又は何らかの他の反応性アミノ酸に変異させることができる。しかし、このアプローチは、コンジュゲートパートナーの活性を攪乱させるか、又は操作された変異の反応性を制限する可能性がある潜在的立体障害を考慮に入れていない。
0157
一実施形態では、抗原結合タンパク質は、抗体又はその機能的断片である。一実施形態では、抗体又はその機能的断片は、参照配列(配列番号7)に対する抗体軽鎖のD70、参照配列(配列番号8)に対する抗体重鎖のE276、及び参照配列(配列番号8)に対する抗体重鎖のT363からなる群から選択される1つ又は複数のコンジュゲーション部位にシステイン又は非標準的なアミノ酸アミノ酸置換を含む。明快にするために、「参照配列(配列番号7)に対する抗体軽鎖のD70」は、抗体5G12.006の軽鎖のAHo位置D88及び抗体5G12.006の軽鎖のカバット位置D70と同じ置換部位であり、「参照配列(配列番号8)に対する抗体重鎖のE276」は、抗体5G12.006の重鎖のAHo位置E384及び抗体5G12.006の重鎖のカバット位置E285と同じ置換部位であり、「参照配列(配列番号8)に対する抗体重鎖のT363」は、抗体5G12.006の重鎖のAHo位置T487及び抗体5G12.006の重鎖のカバット位置T382と同じ置換部位である。
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所与の抗体の相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)は、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,US Dept.of Health and Human Services,PHS,NIH,NIH Publication no.91−3242,1991中、Kabat et al.によって記載されるシステムを使用して特定することができる。本明細書に開示の特定の抗体は、表4A及び表4Bに示されるCDRの1つ又は複数のアミノ酸配列と同一であるか、又はそれとの実質的な配列同一性を有する1つ又は複数のアミノ酸配列を含む。こうしたCDRでは、上記のKabat et al.によって記載されるシステムが使用される。
0167
天然起源の抗体に含まれるCDRの構造及び特性は上述されている。簡潔に記すと、従来の抗体では、CDRは、それらが抗原の結合及び認識を担う領域を構成する重鎖及び軽鎖の可変領域のフレームワーク内に組み込まれている。可変領域は、少なくとも3つの重鎖又は軽鎖CDR(上記を参照(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,MD;Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877−883もまた参照されたい))を、フレームワーク領域(前出のKabat et al.,1991によってフレームワーク領域1〜4(FR1、FR2、FR3及びFR4)と命名されている;前出のChothia and Lesk,1987もまた参照されたい)内に含む。しかしながら、本明細書で提供されるCDRは、従来の抗体構造の抗原結合ドメインを定義するために使用されるだけでなく、本明細書に記載の様々な他のポリペプチド構造に組み込むことができる。
0168
提供される抗原結合タンパク質には、モノクローナル抗体が含まれる。モノクローナル抗体は、当該技術分野で知られた任意の手法を用いて、例えば免疫スケジュールの完了後にトランスジェニック動物から採取した脾臓細胞を不死化することによって生成され得る。脾臓細胞は、当該技術分野で知られた任意の手法を用いて、例えばそれらを骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを生成することによって不死化し得る。ハイブリドーマ生成融合手順に使用するための骨髄腫細胞は、好ましくは、非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、且つ所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する特定の選択培地においてそれらを増殖不可能にする酵素欠損を有する。マウス融合における使用に好適な細胞株の例としては、Sp−20、P3−X63/Ag8、P3−X63−Ag8.653、NS1/1.Ag4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG1.7及びS194/5XXO Bulが挙げられ、ラット融合において使用される細胞株の例としては、R210.RCY3、Y3−Ag1.2.3、IR983F及び4B210が挙げられる。細胞融合に有用な他の細胞株は、U−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2及びUC729−6である。
0169
いくつかの場合、免疫原で動物(例えば、ヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)を免疫化し、免疫化した動物から脾臓細胞を収集し、収集した脾臓細胞を骨髄腫細胞株へ融合し、それによってハイブリドーマ細胞を生成し、ハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を確立し、標的ポリペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することによってハイブリドーマ細胞株が生成される。このようなハイブリドーマ細胞株、及びそれが産生するモノクローナル抗体は、本願の態様である。
0170
ハイブリドーマ細胞株によって分泌されるモノクローナル抗体は、当該技術分野において知られる任意の手法を使用して精製することができる。ハイブリドーマ又はmAbをさらにスクリーニングして、特定の特性を有するmAbを同定することができる。
0171
前述の配列に基づくキメラ抗体及びヒト化抗体も提供される。治療剤として使用するためのモノクローナル抗体は、使用前に様々な方法で改変してもよい。1つの例は、キメラ抗体であり、キメラ抗体は、機能性の免疫グロブリン軽鎖若しくは免疫グロブリン重鎖又はその免疫学的に機能性の部分を生成するために共有結合で連結される異なる抗体に由来するタンパク質セグメントからなる抗体である。一般に、重鎖及び/又は軽鎖の一部は、特定の種に由来する、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、一方、鎖の残りは、別の種に由来する、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である。キメラ抗体に関する方法は、例えば、米国特許第4,816,567号明細書、及びMorrison et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855を参照されたい。これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。CDR移植については、例えば、米国特許第6,180,370号明細書、同第5,693,762号明細書、同第5,693,761号明細書、同第5,585,089号明細書及び同第5,530,101号明細書に記載されている。
0172
一般に、キメラ抗体を作製する目標は、意図される患者種に由来するアミノ酸の数が最大化したキメラを創出することである。1つの例は、「CDR移植」抗体であり、この抗体は、特定の種に由来する、又は特定の抗体クラス若しくは抗体サブクラスに属する相補性決定領域(CDR)を1つ又は複数含む一方、抗体鎖の残部は、別の種に由来する、又は別の抗体クラス若しくは抗体サブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である。ヒトにおける使用では、げっ歯類抗体に由来する可変領域又は選択されるCDRがヒト抗体に移植されることが多く、これによりヒト抗体の天然起源の可変領域又はCDRが交換される。
0173
キメラ抗体の1つの有用な型は、「ヒト化」抗体である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト動物で最初に産生したモノクローナル抗体から生成される。通常、抗体の非抗原認識部分に由来する、このモノクローナル抗体の特定のアミノ酸残基は、対応するアイソタイプのヒト抗体における対応する残基に相同であるように改変される。ヒト化は、例えば、ヒト抗体の対応領域をげっ歯類可変領域の少なくとも一部で置換することによる様々な方法を使用して実施することができる(例えば、米国特許第5,585,089号明細書及び同第5,693,762号明細書、Jones et al.,1986,Nature 321:522−525、Riechmann et al.,1988,Nature 332:323−27、Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534−1536を参照)。
0174
一態様では、本明細書で提供される抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のCDRは、同一又は異なる系統種に由来する抗体に由来するフレームワーク領域(FR)に移植される。例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域であるVH1、VH2、VH3、VH4、VH5、VH6、VH7、VH8、VH9、VH10、VH11、VH12並びに/又はVL1及びVL2のCDRをコンセンサスヒトFRに移植することができる。コンセンサスヒトFRを作製するために、いくつかのヒト重鎖又は軽鎖アミノ酸配列由来のFRをアラインさせて、コンセンサスアミノ酸配列を同定し得る。他の実施形態では、本明細書に開示の重鎖又は軽鎖のFRは、異なる重鎖又は軽鎖に由来するFRと交換される。一態様では、抗体の重鎖及び軽鎖のFRにおける希少アミノ酸は交換されず、残りのFRアミノ酸が交換される。「希少アミノ酸」は、FRにおいて通常ではそれが見出されない位置に存在する特定のアミノ酸である。或いは、1つの重鎖又は軽鎖由来の移植可変領域は、本明細書に開示する特定の重鎖又は軽鎖の定常領域とは異なる定常領域とともに使用され得る。他の実施形態では、移植可変領域は一本鎖Fv抗体の一部である。
0176
完全ヒト抗体もまた提供される。抗原にヒトを曝露することなく所与の抗原に特異的な完全ヒト抗体(「完全ヒト抗体」)を作製するための方法が利用可能である。完全ヒト抗体の生成を実行するために提供される特定の手段の1つは、マウス体液性免疫系の「ヒト化」である。内因性Ig遺伝子が不活性化されたマウスへのヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座の導入は、任意の所望の抗原で免疫化され得る動物であるマウスにおいて完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)を生成する1つの手段である。完全ヒト抗体を使用することにより、マウス又はマウス由来のmAbを治療剤としてヒトに投与することによって引き起こされることがある免疫原性及びアレルギー反応を最小限に抑えることができる。
0177
完全ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(通常、マウス)を免疫化することによって生成することができる。この目的のための抗原は、通常、6個以上の連続するアミノ酸を有し、任意選択によりハプテンなどのキャリアにコンジュゲートされる。例えば、Jakobovits et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551−2555、Jakobovits et al.,1993,Nature 362:255−258、及びBruggermann et al.,1993,Year in Immunol.7:33を参照されたい。このような方法の一例では、トランスジェニック動物は、マウスの免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖をコードする内因性マウス免疫グロブリン遺伝子座を無能力化し、マウスのゲノム中に、ヒトの重鎖及び軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を含むヒトゲノムDNAの大きい断片を挿入することによって生産される。次いで、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の完全相補体より少ない相補体を有する部分的に改変された動物を交雑して、所望の免疫系を全て改変した動物を得る。免疫原を投与すると、これらのトランスジェニック動物は、免疫原に対して免疫特異的であるが、マウスでなくヒトの、可変領域を含むアミノ酸配列を有する抗体を産生する。このような方法のさらなる詳細については、例えば、国際公開第96/33735号パンフレット及び国際公開第94/02602号パンフレットを参照されたい。ヒト抗体の作製するためのトランスジェニックマウスに関するさらなる方法は、米国特許第5,545,807号明細書、同第6,713,610号明細書、同第6,673,986号明細書、同第6,162,963号明細書、同第5,545,807号明細書、同第6,300,129号明細書、同第6,255,458号明細書、同第5,877,397号明細書、同第5,874,299号明細書及び同第5,545,806号明細書、PCT公開国際公開第91/10741号パンフレット、国際公開第90/04036号パンフレット、並びに欧州特許第546073B1号明細書及び欧州特許出願公開第546073A1号明細書に記載されている。
0178
上記のトランスジェニックマウスは、本明細書では「HuMab」マウスと称し、内因性の[ミュー]鎖及び[カッパー]鎖の遺伝子座を不活性化する標的化変異と共に、ヒトの重鎖([ミュー]及び[ガンマ])並びに[カッパー]軽鎖の非再編成免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子の小遺伝子座(minilocus)を含む(Lonberg et al.,1994,Nature 368:856−859)。したがって、マウスは、マウスIgM又は[カッパー]の発現の減少を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチ及び体細胞変異を受けて、高親和性ヒトIgG[カッパー]モノクローナル抗体を生成する(Lonberg et al.,上記;Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65−93;Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536−546)。HuMabマウスの作製は、Taylor et al.,1992,Nucleic AcidsResearch 20:6287−6295;Chen et al.,1993,International Immunology 5:647−656;Tuaillon et al.,1994,J.Immunol.152:2912−2920;Lonberg et al.,1994,Nature 368:856−859;Lonberg,1994,Handbook of Exp.Pharmacology 113:49−101;Taylor et al.,1994,International Immunology 6:579−591;Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65−93;Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536−546;Fishwild et al.,1996,Nature Biotechnology 14:845−851に詳細に記載されており、これらの文献はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、米国特許第5,545,806号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,625,126号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,789,650号明細書、同第5,877,397号明細書、同第5,661,016号明細書、同第5,814,318号明細書、同第5,874,299号明細書及び同第5,770,429号明細書並びに米国特許第5,545,807号明細書、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22646号パンフレット及び国際公開第92/03918号パンフレットを参照されたい。これらすべての文献の開示内容は、参照によってそれらの全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。これらのトランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成するために利用される技術はまた、国際公開第98/24893号パンフレット、及びMendez et al.,1997,Nature Genetics 15:146−156(これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。例えば、標的抗原に対するヒトモノクローナル抗体を生成するためにHCo7及びHCo12のトランスジェニックマウス系統を使用することができる。トランスジェニックマウスを使用するヒト抗体の産生に関する詳細は、以下にさらに提供する。
0179
ハイブリドーマ技術を使用することで、上記のものなどのトランスジェニックマウスから所望の特異性を有する抗原特異的ヒトmAbを生成及び選択することができる。そのような抗体は、適切なベクター及び宿主細胞を使用してクローニング及び発現させてよく、或いは、抗体は、培養したハイブリドーマ細胞から収集することができる。
0180
完全ヒト抗体はまた、(Hoogenboom et al.,1991,J.Mol.Biol.227:381;及びMarks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581に開示されるような)ファージディスプレイライブラリーに由来し得る。ファージディスプレイ手法は、糸状バクテリオファージの表面での抗体レパートリーのディスプレイと、選択される抗原に対するその結合によるファージのその後の選択とを介して免疫選択を模倣している。そのような手法の1つは、国際公開第99/10494号パンフレット(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。
0181
本明細書に記載の抗原結合タンパク質の誘導体も提供される。誘導体化された抗原結合タンパク質は、抗体又は断片に対して特定用途における半減期の増加などの所望の特性を付与する任意の分子又は物質を含み得る。誘導体化された抗原結合タンパク質は、例えば、検出可能(又は標識)部分(例えば、放射性分子、比色分析分子、抗原性分子、若しくは酵素分子、検出可能なビーズ(磁性若しくは高電子密度の(例えば、金)ビーズなど)、又は別の分子に結合する分子(例えば、ビオチン若しくはストレプトアビジン))、治療的又は診断的な部分(例えば、放射性部分、細胞傷害性部分、又は医薬的に活性な部分)、或いは特定用途(例えば、ヒト対象などの対象への投与、又は他のインビボ若しくはインビトロでの使用)のための抗原結合タンパク質の安定性を向上させる分子を含み得る。抗原結合タンパク質の誘導化に使用することができる分子の例には、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。抗原結合タンパク質のアルブミン連結誘導体及びPEG化誘導体は、当該技術分野においてよく知られる手法を使用して調製することができる。特定の抗原結合タンパク質には、peg化された本明細書に記載の一本鎖ポリペプチドが含まれる。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、トランスサイレチン(TTR)又はTTR多様体にコンジュゲート又は連結される。TTR又はTTR多様体は、例えば、デキストラン、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコール(propropylene glycol)ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール及びポリビニルアルコールからなる群から選択される化学物質で化学的に改変することができる。
0182
他の誘導体としては、抗原結合タンパク質のN末端又はC末端に融合した異種性ポリペプチド含む組換え融合タンパク質の発現によるなどの、抗原結合タンパク質と他のタンパク質又はポリペプチドとの共有結合性又は集合性のコンジュゲートが挙げられる。例えば、コンジュゲートされるペプチドは、例えば、酵母アルファ因子リーダーなどの異種性のシグナル(若しくはリーダー)ポリペプチド、又はエピトープタグなどのペプチドであり得る。抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質は、抗原結合タンパク質の精製又は同定を容易にするために付加されたペプチド(例えば、ポリ−His)を含み得る。抗原結合タンパク質はまた、Hopp et al.,1988,Bio/Technology 6:1204及び米国特許第5,011,912号明細書に記載のFLAGペプチドに連結することができる。FLAGペプチドは、抗原性が高く、特異的なモノクローナル抗体(mAb)が可逆的に結合するエピトープを提供することで迅速なアッセイを可能にすると共に、発現する組換えタンパク質の精製を容易にする。所与のポリペプチドにFLAGペプチドが融合した融合タンパク質の調製に有用な試薬は市販されている(Sigma,St.Louis,MO)。
0183
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、1つ又は複数の標識を含む。「標識基」又は「標識」という用語は、任意の検出可能な標識を意味する。好適な標識基としては、限定はされないが、下記のものが挙げられる:放射性同位体若しくは放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチン基、又は二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体向けの結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態では、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合タンパク質にカップリングされる。タンパク質の標識方法は、当該技術分野において様々なものが知られており、そうしたものを適切となるように使用してよい。
0184
「エフェクター基」という用語は、抗原結合タンパク質にカップリングされ、細胞傷害性物質として作用する任意の基を意味する。好適なエフェクター基の例は、放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)である。他の適切な基としては、毒素、治療基、又は化学療法基が挙げられる。適切な基の例としては、カリチアマイシン、アウリスタチン、ゲルダナマイシン及びマイタンシンが挙げられる。いくつかの実施形態では、エフェクター基は、潜在的な立体障害を低減するために様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合タンパク質にカップリングされる。
0185
一般に、標識は、それが検出されることになるアッセイに応じて様々なクラスに分類される:a)同位体標識(放射性又は重同位体であり得る)、b)磁性標識(例えば、磁性粒子)、c)酸化還元活性部分、d)光学色素;酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、e)ビオチン化された基、及びf)二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体向けの結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)。いくつかの実施形態では、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合タンパク質にカップリングされる。タンパク質の標識方法は、当該技術分野において様々なものが知られている。
0186
特定の標識としては、光学色素が挙げられ、こうした光学色素には、限定はされないが、発色団、リン光体及びフルオロフォアが挙げられ、後者は多くの場合に特異的である。フルオロフォアは、「小分子」蛍光体又はタンパク質性蛍光体であり得る。
0187
「蛍光標識」は、その固有の蛍光特性によって検出され得る任意の分子を意味する。好適な蛍光標識としては、限定はされないが、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル−クマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、Cascade BlueJ、Texas Red、IAEDANS、EDANS、BODIPYFL、LC Red640、Cy5、Cy5.5、LC Red705、Oregon green、Alexa−Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor488、Alexa Fluor546、Alexa Fluor568、Alexa Fluor594、Alexa Fluor633、Alexa Fluor660、Alexa Fluor680)、Cascade Blue、Cascade Yellow及びR−フィコエリトリン(PE)(Molecular Probes、Eugene、OR)、FITC、ローダミン、並びにTexas Red(Pierce、Rockford、IL)、Cy5、Cy5.5、Cy7(Amersham Life Science、Pittsburgh、PA)が挙げられる。フルオロフォアを含む、好適な光学色素については、Molecular Probes Handbook by Richard P.Hauglandに記載されており、この文献は参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
0188
好適なタンパク質性蛍光標識としてはまた、以下に限定はされないが、レニラ(Renilla)種、プチロサルカス(Ptilosarcus)種又はエクオレア(Aequorea)種のGFP(Chalfie et al.,1994,Science 263:802−805)、EGFP(Clontech Laboratories,Inc.,Genbankアクセッション番号U55762)を含む緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質(BFP,Quantum Biotechnologies,Inc.,Quebec,Canada;Stauber,1998,Biotechniques 24:462−471;Heim et al.,1996,Curr.Biol.6:178−182)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP、Clontech Laboratories,Inc.)、ルシフェラーゼ(Ichiki et al.,1993,J.Immunol.150:5408−5417)、βガラクトシダーゼ(Nolan et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2603−2607)及びレニラ(国際公開第92/15673号パンフレット、国際公開第95/07463号パンフレット、国際公開第98/14605号パンフレット、国際公開第98/26277号パンフレット、国際公開第99/49019号パンフレット、米国特許第5292658号明細書、同第5418155号明細書、同第5683888号明細書、同第5741668号明細書、同第5777079号明細書、同第5804387号明細書、同第5874304号明細書、同第5876995号明細書、同第5925558号明細書)が挙げられる。