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技術 in vitroでT細胞中のターゲット遺伝子をノックアウトするための方法及び前記方法で使用されるcrRNA

出願人 ジエンスヘンルイメデイシンカンパニーリミテッドシャンハイヘンルイファーマスーティカルカンパニーリミテッド
発明者 ペンツオハンシェンリャンユンタオウェイカン
出願日 2018年6月19日 (2年7ヶ月経過) 出願番号 2019-570534
公開日 2020年10月1日 (4ヶ月経過) 公開番号 2020-528738
状態 未査定
技術分野 突然変異または遺伝子工学 微生物、その培養処理
主要キーワード ヒンジ部構造 フローチューブ SPRシステム 対応量 検出チャンネル ストーム オリゴデオキシリボ核酸 参照レベル
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (9)

課題・解決手段

CRISPR-Cas9システムに基づく、in vitroでT細胞中ターゲット遺伝子ノックアウトする方法が提供される。又、ターゲット遺伝子TRAC、B2M及びPD1をターゲットとするcrRNA、並びに前記crRNAとCas9タンパク質に対応するtracrRNAとを連結することによって形成されるsgRNA、前記Cas9タンパク質、オリゴデオキシリボ核酸(N-オリゴ)又は魚精DNAフラグメントを含むキットも提供される。前記キットは、T細胞中のTCR、B2M及び/又はPD1遺伝子をノックアウトするために使用される。又、本発明の方法により得られる遺伝子をノックアウトしたT細胞及びその使用も提供される。

概要

背景

ex vivoで産生された、自己抗原に特異的なT細胞移植等を含む養子細胞療法(Adoptive cell therapy (ACT))は、ウイルス感染及びがん治療のための有望なストラテジーである。養子細胞療法において使用されるT細胞は、抗原特異的T細胞増幅させることによって、又は遺伝子工学的に設計されたT細胞のリダイレクションによって生成され得る(Park, Rosenberg et al. TrendsBiotechnol. 2011, 29(11): 550-557)。

CARTは、キメラ抗原レセプター(chimeric antigen receptor (CAR))を、単離したT細胞に遺伝子工学的に挿入することによって得られ、T細胞のターゲティング、殺傷活性及び持続性を増強する。そして、その腫瘍細胞表面抗原に対する認識は、MHCによる制限とは無関係である。CARは、T細胞レセプター(CD3ζ及び共刺激分子など)の細胞外抗原結合領域膜貫通領域、及び細胞内シグナル伝達領域からなる。前記細胞外の抗原結合領域は、ヒンジを介してモノクローナル抗体重鎖可変領域(VH)と連結した軽鎖可変領域(VL)から構成され、特異的な腫瘍抗原を認識することができる一本鎖可変フラグメント(scFv)を形成する。関連する臨床試験によって、CARが他の治療に反応しないリンパ腫患者において、より良好な治療効果を有することが示されてきている。ペンシルニア大学のCarl June氏が実施したCART-19に関する研究では、75人の白血病患者(成人及び小児を含む)のうち45人で、CART細胞を使った治療後に完全寛解が得られたことが示された。

しかしながら、既存のCART療法は、典型的には腫瘍患者由来自己リンパ球を利用する。このようなリンパ球は、in vitroで改変され、培養され、活性化され、そして増殖され、次いで前記患者に戻される。サイトカインストーム等のような副作用に加えて、3つの大きな問題がある:第1に、CART治療は、リンパ球の数がより少ない又は質がより低い進行した患者には適用できない;第2に、おそらく免疫抑制チェックポイントシグナル経路の影響によって、腫瘍組織においては、免疫細胞生存率がより低い及び免疫細胞の活性がより低いために、固形腫瘍におけるCART治療の有効性は依然として有意ではない;最後に、コストが高いので、前記患者への負担が増加する、なぜなら、CARTは、個別化された治療であるからである。従って、同種起源に由来する汎用CAR-T細胞(UCART)を開発することによって、その適用は促進されるであろう。

初期の段階では、相同組換えを介したターゲティング・ベクターにより、又はRNAi技術により、遺伝子ノックアウトを行ったが、いずれも操作が煩わしく、能率が悪いなどの問題があった。Cellectis社は、TALEN技術により開発された同種CAR-T療法UCART19を用いて、TCRα遺伝子(GVHDを減少させる)及びCD52遺伝子(Alemtuzumabに耐性のある細胞を生じさせる)を一方向性にノックアウトすることにより、再発性急性リンパ球白血病(ALL)に罹患した何人かの小児患者治癒させることに成功した。しかし、Cellectisが提案するTALENによってTCRをノックアウトする場合、煩わしい構築及び大規模配列決定プロセスが必要とされる。現在、クラスター化された規則的に間隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し(clustered regularly interspaced short palindromic repeat (CRISPR-associated、CRISPR-Cas9))によって、特異的なDNA配列を認識することによる遺伝子編集が可能になり、これはTALENよりも簡単で効率的である。

現在、CN104395463A、CN105518146A及びCN106191062Aに記載されているような、CRISPR/Cas9システムに基づく遺伝子ノックアウトの例がある。しかし、ターゲット遺伝子のノックアウト率が低いこと、何回かのトランスフェクション又は形質変態のプロセスを必要とすること、操作が煩わしいこと、T細胞に大きなダメージがあること、又はオフターゲットの割合が高いこと等、解決すべきいくつかの問題が依然として存在する。従って、CRISPR/Cas9システムに基いたTCR遺伝子ノックアウト法、及びより高い精度を有するcrRNA、を最適化することが依然として必要とされている。

概要

CRISPR-Cas9システムに基づく、in vitroでT細胞中のターゲット遺伝子をノックアウトする方法が提供される。又、ターゲット遺伝子TRAC、B2M及びPD1をターゲットとするcrRNA、並びに前記crRNAとCas9タンパク質に対応するtracrRNAとを連結することによって形成されるsgRNA、前記Cas9タンパク質、オリゴデオキシリボ核酸(N-オリゴ)又は魚精DNAフラグメントを含むキットも提供される。前記キットは、T細胞中のTCR、B2M及び/又はPD1遺伝子をノックアウトするために使用される。又、本発明の方法により得られる遺伝子をノックアウトしたT細胞及びその使用も提供される。

目的

本発明の目的は、先行技術の免疫療法に存在する問題を解決し、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を用いてTCRをノックアウトすることによりTCR-ネガティブT細胞を構築する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

以下の工程を含む、in vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子ノックアウトする方法:1)タンパク質-RNA複合体を形成させるために、前記T細胞内の1種以上のターゲット遺伝子をターゲティングするsgRNAとCas9タンパク質を、それぞれ接触させる工程;2)前記タンパク質-RNA複合体をオリゴデオキシリボ核酸又は魚精DNAフラグメントと混合する工程;及びこの得られた混合物をT細胞の中に形質転換する工程、ここで、前記sgRNAは、前記Cas9タンパク質を前記ターゲット遺伝子の対応するターゲット配列に導いて、前記ターゲット配列とハイブリダイズさせ、それによって前記ターゲット遺伝子が切断され、前記ターゲット遺伝子の切断効率が75%を超える。

請求項2

前記ターゲット遺伝子がTRAC、TRBC、B2M及びPD1遺伝子からなる群より選択される1種以上であり、及び前記sgRNAが前記ターゲット遺伝子のコーディング配列ターゲットとする又は前記ターゲット遺伝子の発現のための調節配列をターゲットとする、請求項1に記載のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法。

請求項3

前記sgRNAが、5’から3’に向かって、前記ターゲット遺伝子をターゲットとする長さ17〜20塩基のcrRNA、これと連結した前記Cas9タンパク質に対応するtracrRNA、からなる、請求項1又は2に記載のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法。

請求項4

前記オリゴデオキシリボ核酸が、100〜250塩基対の長さを有する二本鎖DNA又は100〜250塩基の長さを有する一本鎖DNAである、請求項1〜3の何れか一項に記載のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法。

請求項5

請求項1〜4の何れか一項に記載のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法:ここで、前記TRAC遺伝子をターゲットとするcrRNAは配列番号(SEQID NOs):1〜12で示されるcrRNAからなる群から選択される任意の1種以上である、前記B2M遺伝子をターゲットとするcrRNAは配列番号(SEQ ID NO):13で示される、及び前記PD1遺伝子をターゲットとするcrRNAは配列番号(SEQ ID NOs):14〜16で示されるcrRNAからなる群から選択される任意の1種以上である。

請求項6

前記Cas9タンパク質が、配列番号(SEQID NO):18のアミノ酸配列を有する、化膿連鎖球菌由来のCas9タンパク質である、請求項1〜5の何れか一項に記載のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法。

請求項7

前記Cas9タンパク質に対応するtracrRNAの配列が配列番号(SEQID NO):17で示される、請求項1〜6の何れか一項に記載のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法。

請求項8

前記T細胞が、ヘルパーT細胞細胞傷害性T細胞メモリーT細胞、調節性T細胞ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、CAR-T細胞及びTCR-T細胞からなる群より選択される、請求項1〜7の何れか一項に記載のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法。

請求項9

ターゲット遺伝子をノックアウトしたT細胞、ここで前記T細胞は請求項1〜8の何れか一項に記載の方法によって得られる。

請求項10

ターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのcrRNA、ここで前記crRNAは配列番号(SEQID NOs):1〜16からなる群から選択される1種以上の配列を含む。

請求項11

請求項10に記載のターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのcrRNA、ここで前記ターゲット遺伝子はTRAC、TRBC、B2M及びPD1遺伝子からなる群から選択される1種以上である。

請求項12

請求項10又は11に記載のターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのcrRNA、ここで前記ターゲット遺伝子はTRAC遺伝子であり、前記crRNAは配列番号(SEQID NOs):1〜12で示されるものからなる群から選択される1種以上である。

請求項13

請求項10又は11に記載のターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのcrRNA、ここで前記ターゲット遺伝子はB2M遺伝子であり、前記crRNAの配列は配列番号(SEQID NO):13で示される。

請求項14

請求項10又は11に記載のターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのcrRNA、ここで前記ターゲット遺伝子はPD1遺伝子であり、前記crRNAは配列番号(SEQID NOs):14〜16で示されるものからなる群から選択される1種以上である。

請求項15

ターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNA、ここで前記sgRNAがCas9タンパク質に対応するtracrRNAに連結されたcrRNAからなり、ここで前記crRNAが、配列番号(SEQID NOs):1〜16からなる群より選択される1種以上の配列を含む。

請求項16

請求項15に記載のターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNA、ここで前記ターゲット遺伝子が、TRAC、TRBC、B2M及びPD1遺伝子からなる群から選択される1種以上である。

請求項17

請求項15又は16に記載のターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNA、ここで前記ターゲット遺伝子がTRAC遺伝子であり、及び前記crRNAが配列番号(SEQID NOs):1〜12で示されるものからなる群から選択される1種以上である。

請求項18

請求項15又は16に記載のターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNA、ここで前記ターゲット遺伝子がB2M遺伝子であり、及び前記crRNAが配列番号(SEQID NO):13で示される。

請求項19

請求項15又は16に記載のターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNA、ここで前記ターゲット遺伝子がPD1遺伝子であり、及び前記crRNAが配列番号(SEQID NOs):14〜16で示されるものからなる群から選択される1種以上である。

請求項20

請求項15に記載のターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNA、ここで前記Cas9タンパク質が、配列番号(SEQID NO):18のアミノ酸配列を有する化膿連鎖球菌由来のCas9タンパク質である。

請求項21

請求項15に記載のターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNA、ここで前記Cas9タンパク質に対応するtracrRNAの配列は配列番号(SEQID NO):17で示される。

請求項22

遺伝子ノックアウトに使用するためのキット、ここで前記キットは以下を含む;a:請求項9〜14の何れか一項に記載の1種以上のcrRNA、又は請求項15〜21の何れか一項に記載の1種以上のsgRNA;b:Cas9タンパク質;c:オリゴデオキシリボ核酸又は魚精子DNAフラグメント。

請求項23

請求項22に記載の遺伝子ノックアウトに使用するためのキット、ここで前記オリゴデオキシリボ核酸は、100〜250塩基対の長さを有する二本鎖DNA又は100〜250塩基の長さを有する一本鎖DNAである。

請求項24

請求項22に記載の遺伝子ノックアウトに使用するためのキット、ここで前記Cas9タンパク質は、配列番号(SEQID NO):18のアミノ酸配列を有する、化膿連鎖球菌由来のCas9タンパク質である。

請求項25

抗腫瘍薬を調製するための、請求項9に記載のターゲット遺伝子をノックアウトしたT細胞の使用。

請求項26

ウィルス又はバクテリアによって引き起こされる感染性疾患を予防又は治療するための薬剤を調製するための、請求項9に記載のターゲット遺伝子をノックアウトしたT細胞の使用。

技術分野

0001

本発明は、生物医学の分野に属する。特に、本発明は、in vitroでT細胞中ターゲット遺伝子ノックアウトするための方法、前記方法で使用されるcrRNA、前記方法によって得られるT細胞、及びそれらの使用に関する。

背景技術

0002

ex vivoで産生された、自己抗原に特異的なT細胞の移植等を含む養子細胞療法(Adoptive cell therapy (ACT))は、ウイルス感染及びがん治療のための有望なストラテジーである。養子細胞療法において使用されるT細胞は、抗原特異的T細胞増幅させることによって、又は遺伝子工学的に設計されたT細胞のリダイレクションによって生成され得る(Park, Rosenberg et al. TrendsBiotechnol. 2011, 29(11): 550-557)。

0003

CARTは、キメラ抗原レセプター(chimeric antigen receptor (CAR))を、単離したT細胞に遺伝子工学的に挿入することによって得られ、T細胞のターゲティング、殺傷活性及び持続性を増強する。そして、その腫瘍細胞表面抗原に対する認識は、MHCによる制限とは無関係である。CARは、T細胞レセプター(CD3ζ及び共刺激分子など)の細胞外抗原結合領域膜貫通領域、及び細胞内シグナル伝達領域からなる。前記細胞外の抗原結合領域は、ヒンジを介してモノクローナル抗体重鎖可変領域(VH)と連結した軽鎖可変領域(VL)から構成され、特異的な腫瘍抗原を認識することができる一本鎖可変フラグメント(scFv)を形成する。関連する臨床試験によって、CARが他の治療に反応しないリンパ腫患者において、より良好な治療効果を有することが示されてきている。ペンシルニア大学のCarl June氏が実施したCART-19に関する研究では、75人の白血病患者(成人及び小児を含む)のうち45人で、CART細胞を使った治療後に完全寛解が得られたことが示された。

0004

しかしながら、既存のCART療法は、典型的には腫瘍患者由来自己リンパ球を利用する。このようなリンパ球は、in vitroで改変され、培養され、活性化され、そして増殖され、次いで前記患者に戻される。サイトカインストーム等のような副作用に加えて、3つの大きな問題がある:第1に、CART治療は、リンパ球の数がより少ない又は質がより低い進行した患者には適用できない;第2に、おそらく免疫抑制チェックポイントシグナル経路の影響によって、腫瘍組織においては、免疫細胞生存率がより低い及び免疫細胞の活性がより低いために、固形腫瘍におけるCART治療の有効性は依然として有意ではない;最後に、コストが高いので、前記患者への負担が増加する、なぜなら、CARTは、個別化された治療であるからである。従って、同種起源に由来する汎用CAR-T細胞(UCART)を開発することによって、その適用は促進されるであろう。

0005

初期の段階では、相同組換えを介したターゲティング・ベクターにより、又はRNAi技術により、遺伝子ノックアウトを行ったが、いずれも操作が煩わしく、能率が悪いなどの問題があった。Cellectis社は、TALEN技術により開発された同種CAR-T療法UCART19を用いて、TCRα遺伝子(GVHDを減少させる)及びCD52遺伝子(Alemtuzumabに耐性のある細胞を生じさせる)を一方向性にノックアウトすることにより、再発性急性リンパ球白血病(ALL)に罹患した何人かの小児患者治癒させることに成功した。しかし、Cellectisが提案するTALENによってTCRをノックアウトする場合、煩わしい構築及び大規模配列決定プロセスが必要とされる。現在、クラスター化された規則的に間隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し(clustered regularly interspaced short palindromic repeat (CRISPR-associated、CRISPR-Cas9))によって、特異的なDNA配列を認識することによる遺伝子編集が可能になり、これはTALENよりも簡単で効率的である。

0006

現在、CN104395463A、CN105518146A及びCN106191062Aに記載されているような、CRISPR/Cas9システムに基づく遺伝子ノックアウトの例がある。しかし、ターゲット遺伝子のノックアウト率が低いこと、何回かのトランスフェクション又は形質変態のプロセスを必要とすること、操作が煩わしいこと、T細胞に大きなダメージがあること、又はオフターゲットの割合が高いこと等、解決すべきいくつかの問題が依然として存在する。従って、CRISPR/Cas9システムに基いたTCR遺伝子ノックアウト法、及びより高い精度を有するcrRNA、を最適化することが依然として必要とされている。

発明が解決しようとする課題

0007

本発明の目的は、先行技術の免疫療法に存在する問題を解決し、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を用いてTCRをノックアウトすることによりTCR-ネガティブT細胞を構築する方法を提供すること、並びに前記方法により得られるTCR-ネガティブT細胞を提供すること、である。

0008

本発明の1つの目的は、TCR-及びPD1-(又はB2M-)ダブル・ネガティブT細胞を提供すること、並びに同細胞を構築するための方法を提供すること、である。

0009

本発明の他の目的はTCR-、B2M-、及びPD1-トリプル・ネガティブT細胞を提供すること、並びに同細胞を構築するための方法を提供すること、である。

0010

また、上記TCR-ネガティブT細胞、TCR-及びPD-1-(又はB2M-)ダブル・ネガティブT細胞並びにTCR/B2M/PD1トリプル・ネガティブT細胞を磁気ビーズを用いて選別し、腫瘍等の養子細胞免疫療法に用いる。

0011

第1の実施形態では、以下のステップを含む、in vitroのT細胞で1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法:
1)タンパク質-RNA複合体(RNP)を形成させるために、前記T細胞内の1種以上のターゲット遺伝子をターゲティングするsgRNAとCas9タンパク質を、それぞれ接触させる工程;
2) 前記RNPをオリゴデオキシリボ核酸(N-オリゴ)又は魚精DNAフラグメントと混合する工程、及びこの得られた混合物をT細胞の中に形質転換する工程、ここで、前記sgRNAは、前記Cas9タンパク質を前記ターゲット遺伝子の対応するターゲット配列に導いて、前記ターゲット配列とハイブリダイズさせ、それによって前記ターゲット遺伝子が切断され、前記ターゲット遺伝子の切断効率が75%以上である、
が提供される.

0012

好ましい実施形態では、本発明のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法において、前記ターゲット遺伝子がTRAC、TRBC、B2M及びPD1遺伝子からなる群より選択される1種以上であり、及び前記sgRNAが前記ターゲット遺伝子のコーディング配列ターゲットとする又は前記ターゲット遺伝子の発現のための調節配列をターゲットとする。

0013

更に、本発明のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法において、前記sgRNAが、5’から3’に向かって、前記ターゲット遺伝子をターゲットとする長さ17〜20塩基のcrRNA、これと連結した前記Cas9タンパク質に対応するtracrRNA、からなり、前記crRNAは好ましくは17塩基の長さである。

0014

好ましい実施形態では、本発明のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法において、前記オリゴデオキシリボ核酸が、100〜250塩基対の長さを有する二本鎖DNA又は100〜250塩基の長さを有する一本鎖DNAである。

0015

好ましい実施形態では、本発明のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法において、前記TRAC遺伝子をターゲットとするcrRNAは配列番号(SEQID NOs):1〜12で示されるcrRNAからなる群から選択される任意の1種以上である、前記B2M遺伝子をターゲットとするcrRNAの配列は配列番号(SEQ ID NO):13である、及び前記PD1遺伝子をターゲットとするcrRNAは配列番号(SEQ ID NOs):14〜16で示されるcrRNAからなる群から選択される任意の1種以上である。

0016

好ましい実施形態では、本発明のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法において、前記Cas9タンパク質が、化膿連鎖球菌由来のCas9タンパク質であり、及びその配列は配列番号(SEQID NO):18で示される。

0017

好ましい実施形態では、本発明のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法において、前記Cas9タンパク質が、化膿連鎖球菌由来のCas9タンパク質であり、及び前記Cas9タンパク質に対応するtracrRNAの配列は配列番号(SEQID NO):17で示される。

0018

好ましい実施形態では、本発明のin vitroでT細胞中の1種以上のターゲット遺伝子をノックアウトする方法において、前記T細胞が、ヘルパーT細胞細胞傷害性T細胞メモリーT細胞、調節性T細胞ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、CAR-T細胞及びTCR-T細胞からなる群より選択される。

0019

別の態様では、本発明は、ターゲット遺伝子をノックアウトしたT細胞を更に提供し、ここで、前記T細胞は、上記の方法によって得られる。

0020

別の態様では、本発明は、ターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのcrRNAを更に提供する、ここで前記crRNAは配列番号(SEQID NOs):1〜16からなる群から選択される1種以上の配列を含む、。

0021

好ましい実施形態では、本発明において、ターゲット遺伝子をノックアウトするために使用されるcrRNAは、前記ターゲット遺伝子のコーディング配列をターゲットとする又は前記ターゲット遺伝子の発現のための調節配列をターゲットとし、ここで、前記ターゲット遺伝子は、TRAC、TRBC、B2M及びPD1遺伝子からなる群より選択される1種以上である。

0022

好ましい実施形態では、本発明において、ターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのcrRNAが提供される、ここで前記ターゲット遺伝子はTRAC遺伝子であり、前記crRNAは配列番号(SEQID NOs):1〜12で示されるものからなる群から選択される1種以上である。

0023

好ましい実施形態では、本発明において、ターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのcrRNAが提供される、ここで前記ターゲット遺伝子はB2M遺伝子であり、前記crRNAの配列は配列番号(SEQID NO):13で示される。

0024

好ましい実施形態では、本発明において、ターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのcrRNAが提供される、ここで前記ターゲット遺伝子はPD1遺伝子であり、前記crRNAは配列番号(SEQID NOs):14〜16で示されるものからなる群から選択される1種以上である。

0025

別の態様では、本発明はまた、ターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNAを提供し、前記sgRNAがCas9タンパク質に対応するtracrRNAに連結されたcrRNAからなり、ここで前記crRNAが、配列番号(SEQID NOs):1〜16からなる群より選択される1種以上の配列を含む。

0026

好ましい実施形態では、本発明によれば、ターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNAが提供される、ここで前記ターゲット遺伝子が、TRAC、TRBC、B2M及びPD1遺伝子からなる群から選択される1種以上である。

0027

好ましい実施形態では、本発明によれば、ターゲット遺伝子TRACをノックアウトする際に使用するためのsgRNAが提供される、ここで前記sgRNAがCas9タンパク質に対応するtracrRNAに連結されたcrRNAからなり、及び前記crRNAが配列番号(SEQID NOs):1〜12で示されるものからなる群より選択される1種以上である。

0028

好ましい実施形態では、本発明によれば、ターゲット遺伝子B2Mをノックアウトする際に使用するためのsgRNAが提供される、ここで前記sgRNAがCas9タンパク質に対応するtracrRNAに連結されたcrRNAからなり、及び前記crRNAが配列番号(SEQID NO):13で示される。

0029

好ましい実施形態では、本発明によれば、ターゲット遺伝子PD-1をノックアウトする際に使用するためのsgRNAが提供される、ここで前記sgRNAがCas9タンパク質に対応するtracrRNAに連結されたcrRNAからなり、及び前記crRNAが配列番号(SEQID NOs):14〜16で示されるものからなる群より選択される1種以上である。

0030

好ましい実施形態では、本発明によれば、ターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNAが提供される、ここで前記Cas9タンパク質が、配列番号(SEQID NO):18のアミノ酸配列を有する化膿連鎖球菌由来のCas9タンパク質である。

0031

好ましい実施形態では、本発明によれば、ターゲット遺伝子をノックアウトする際に使用するためのsgRNAが提供される、ここで前記Cas9タンパク質に対応するtracrRNAの配列は配列番号(SEQID NO):17で示される。

0032

別の態様では、本発明は、遺伝子ノックアウト・キットを提供し、ここで前記キットは以下を含む;
a:上記の1種以上のcrRNA、又は上記の1種以上のsgRNA;
b:Cas9タンパク質;
c:オリゴデオキシリボ核酸又は魚精子DNAフラグメント。

0033

好ましい実施形態では、遺伝子をノックアウトするために使用されるキットにおいて、前記オリゴデオキシリボ核酸は、100〜250塩基対の長さを有する二本鎖DNA又は100〜250塩基の長さを有する一本鎖DNAである。

0034

好ましい実施形態では、遺伝子をノックアウトするために使用されるキットにおいて、前記Cas9タンパク質は化膿連鎖球菌に由来するCas9タンパク質であり、及び前記Cas9タンパク質に対応するtracrRNAの配列は、配列番号(SEQID NO):17で示される。

0035

ある実施形態では、本発明は、抗腫瘍薬を調製するための、本発明のノックアウトされた遺伝子を含むT細胞の使用を提供する。

0036

ある実施形態では、本発明はまた、ウイルス又はバクテリアによって引き起こされる感染性疾患を予防又は治療するための薬剤を調製するための、本発明のノックアウトされた遺伝子を含むT細胞の使用を提供する。

0037

ある実施形態では、TCR、B2M又はPD1は、設計されたcrRNA及び前記方法を使用することによって効果的にノックアウトされる。TCR及びB2M及び/又はPD1遺伝子がノックアウトされたCART細胞のin vitroでの殺傷活性は、TCR、B2M及び/又はPD1遺伝子がノックアウトされたことによって影響を受けない。

図面の簡単な説明

0038

図1:種々のデリバリー・システムのノックアウト効率の比較。本結果は、RNPデリバリー・モードがJurkat細胞中の遺伝子をノックアウトするのに最も高い効率を有することを示す。
図2A‐2B:T細胞中の遺伝子をノックアウトする際における、CRISPR-Cas9に基づいたシステムの効率に与えるN-オリゴの影響。図2AはT細胞中の遺伝子をノックアウトする際における効率の比較を示し、図2Bは、CART細胞中の遺伝子をノックアウトする際における効率の比較を示す。
図3:T細胞中の遺伝子ノックアウトの効率に与える魚精子DNAフラグメントの影響。
図4:B2M遺伝子ノックアウトにおける効率の検出。
図5:PD1遺伝子ノックアウトに与える、スクリーニングされてきたcrRNAの効果の検出。
図6A〜6B:RNP及びN-オリゴ又は魚精子DNAによって引き起こされる遺伝子変異解析図6AはTRACについての解析結果を示し、図6BはB2Mについての解析結果を示す。
図7A〜7C:RNPオフターゲットの割合の解析。図7AはTRAC遺伝子のオフターゲットの割合の解析結果を示し;図7BはB2M遺伝子のオフターゲットの割合の解析結果を示し;及び図7CはPD1遺伝子のオフターゲットの割合の解析結果を示す。
図8A〜8B:TRAC遺伝子がノックアウトされたT細胞中のCD25及びCD69の活性化の解析。図8AはCD69活性化の比較を示し;及び図8BはCD25活性化の比較を示す。

0039

発明の詳細な説明
ある態様では、本発明は、細胞中のターゲット遺伝子を改変するための方法を提供する。

0040

本明細書に記載の研究は、CRISPR/Casシステムによる対立遺伝子ターゲティング・アプローチを使用すると、80%の効率で突然変異細胞を産生することを実証する。特に、本明細書中に記載される研究によって、有用なRNAガイド配列、並びに特定の遺伝子(例えば、TRAC、TRBC、B2M、PD1)をターゲティングするのに適した特定のガイド配列を、具体的に同定するための方法を提供する多重ガイド戦略が、驚くべきことに、そして予想外に、実証される。

0041

CRISPRシステムが、本発明によって提供される方法及び組成物のために使用され、このようなシステムはまた、国際公開番号WO 2013142578 A1及びWO 2013098244 A1に記載されるものを含み、これらは、本明細書中に参照により取り込まれる。

0042

細胞中のターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列を改変するための例示的なある方法は、ポリヌクレオチド配列をCRISPR(クラスター化された規則的に間隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats))配列‐関連タンパク質(Cas)及び1種又は2種のリボ核酸と接触させることを含み、それによってRNPが形成される。ここで、前記リボ核酸は前記ターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列のターゲット・モチーフに前記Casタンパク質を導き、前記ターゲット・モチーフとハイブリダイズする。ここで、前記ターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列は切断され、前記RNPで形質転換された細胞の改変効率は75%以上である。

0043

ターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列を改変するための任意の方法が本発明において意図され、前記方法は、本発明のCRISPR/Casシステムを使用することによって、当業者に容易に利用可能である。細胞中のターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列を改変することができる任意のCRISPR/Casシステムを使用することができる。このようなCRISPR/Casシステムは種々のCasタンパク質を用いることがある(Haft et al.PLoS Comput Biol. 2005; 1(6) e60)。このようなCasタンパク質によって、前記CRISPR/Casシステムは、細胞中のターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列を改変すること、が可能になり、RNA結合タンパク質、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼヘリカーゼ、並びにポリメラーゼ等を含む、細胞中のターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列を改変すること、が可能になる。ある実施形態では、前記CRISPR/Casシステムは、CRISPRタイプIシステムである。ある実施形態では、前記CRISPR/Casシステムは、CRISPRタイプIIシステムである。

0044

本発明のCRISPR/Casシステムを、細胞中のターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列を改変するために使用することがある。本発明は、任意の目的のために、細胞中のターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列を改変することを意図する。ある実施形態では、細胞中のターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列が改変され、変異細胞を産生する。

0045

本明細書における例示的なCas9タンパク質は、化膿連鎖球菌Cas9タンパク質又はその機能的な部分であることがある。ある実施形態では、前記Cas9タンパク質は、任意のバクテリア種に由来するCas9タンパク質又はその機能的な部分である。前記Cas9タンパク質は、典型的には、トランスコード化された低分子RNA(trans-encoded small RNA (tracrRNA))、内因性リボヌクレアーゼ3(rnc)、及びCas9タンパク質を含むタイプII CRISPRシステム、のメンバーである。

0046

CrRNA(CRISPR由来RNA)及びtracrRNA(トランス活性化RNA)を遺伝子工学的に操作し、一緒に連結してsgRNA(単一ガイドRNA (single giude RNA))を得る。最後に、sgRNA-発現配列により複合体が形成され、Cas9を細胞内に形質転換することにより、ターゲット遺伝子をノックアウトすることができる。

0047

ある実施形態では、このような改変は、前記ターゲット遺伝子のいくつかの望ましくないポリヌクレオチド配列を所望の配列に訂正する。本発明のCRISPR/Casシステムは、ターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列における任意の型の変異又はエラーを訂正するために使用されることがある。例えば、本発明のCRISPR/Casシステムは、欠失のためにターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列から失われたヌクレオチド配列を挿入するために使用されることがある。いくつかの例において、本発明のCRISPR/Casシステムはまた、ターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列の挿入突然変異によって引き起こされるいくつかのヌクレオチド配列を欠失又は切除するために使用されることもある。ある実施形態では、本発明のCRISPR/Casシステムは、誤ったヌクレオチド配列を正確なヌクレオチド配列で置換するために(例えば、ターゲット遺伝子のポリヌクレオチド配列の機能的変異、即ちSNP、に起因する機能障害回復するために)使用されることがある。

0048

本発明のCRISPR/Casシステムは、従来のCRISPR/Casシステムと比較した場合、高効率でターゲット遺伝子を意外と切断することができる。ある特定の実施形態では、前記ターゲット遺伝子の切断効率は、少なくとも約5%である。ある特定の実施形態では、前記ターゲット遺伝子の切断効率は、少なくとも約10%である。ある特定の実施形態では、前記ターゲット遺伝子の切断効率は、約10%〜約80%である。ある特定の実施形態では、前記ターゲット遺伝子の切断効率は、約30%〜約80%である。ある特定の実施形態では、前記ターゲット遺伝子の切断効率は、約50%〜約80%である。ある実施形態では、前記ターゲット遺伝子の切断効率は、約75%以上、又は約80%以上である。

0049

ある実施形態では、前記ターゲット遺伝子はゲノムである。ある実施形態では、前記ターゲット遺伝子はヒト・ゲノムである。ある実施形態では、前記ターゲット遺伝子は哺乳動物のゲノムである。ある実施形態では、前記ターゲット遺伝子は脊椎動物のゲノムである。

0050

本発明のCRISPR/Casシステムを、前記ターゲット遺伝子中のポリヌクレオチド配列又はその一部をノックアウトするための様々な用途に適用することがある。例えば、細胞中のターゲット遺伝子ポリヌクレオチド配列をノックアウトすることを、研究目的のためにin vitroで実施することがある。ex vivoの目的においては、細胞中のターゲット遺伝子ポリヌクレオチド配列をノックアウトすることを、前記ターゲット遺伝子ポリヌクレオチド配列の発現に関連した障害を治療又は予防するために、適用することが可能である(例えば、ex vivoで細胞中の突然変異対立遺伝子をノックアウトすること;及び突然変異対立遺伝子がノックアウトされた細胞をその被検体に導入すること)。

0051

別の態様では、本発明は、被検体中のポリヌクレオチド配列の発現に関連した障害を治療又は予防するための一方法を提供する。

0052

本発明を容易に理解するために、ある特定の技術用語及び科学用語を以下で具体的に定義する。本明細書で使用される他の技術用語及び科学用語の全ては、本明細書で明示的に定義されない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。

0053

I. 用語
本明細書中で使用される場合、用語「接触させる」(即ち、ポリヌクレオチド配列を、クラスター化された規則的に間隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し−関連(Cas)タンパク質及び/又はリボ核酸と接触させる)は、in vitroの細胞中で、Casタンパク質及び/又はリボ核酸を一緒にインキュベートすること(例えば、培養中の細胞に、Casタンパク質又はCasタンパク質をコードする核酸を添加すること)、又はex vivoで細胞を接触させることを含むことが意図される。ターゲット遺伝子ポリヌクレオチド配列を、本明細書中で開示されるCasタンパク質及び/又はリボ核酸と接触させる工程を、任意の好適な様式で行うことがある。例えば、前記細胞を、接着培養又は懸濁培養において処置することがある。本明細書中で開示されるように、Casタンパク質及び/又はリボ核酸と接触させた細胞を、増殖因子若しくは他の分化因子又は環境のような別の因子と、同時に又はその後に続いて接触させて、前記細胞を更に安定化させる又は分化させることもある、と理解される。

0054

単離した細胞に使う場合、用語「処置する(treating)」等は、前記細胞を任意の種類のプロセス又は条件に供すること、又は前記細胞に対して任意の種類の操作又は手順を行うこと、を含む。被検体に使う場合、前記用語は、本明細書中に記載される方法に従って、ターゲット遺伝子ポリヌクレオチド配列をex vivoで改変した細胞を、個体に提供することをいう。前記個体は、典型的には疾患又は損傷を患っているか、又はその集団の平均的なメンバーと比較して、疾患を患っているリスクが高く、そのような世話ケア又は管理を必要としている。

0055

本明細書中で使用される場合、用語「処置する(treating)」は、本明細書中に記載される方法に従って、ex vivoで改変したターゲット・ポリヌクレオチド配列を有する細胞の有効量を被検体に投与することをいい、その結果、前記被検体では、前記疾患の少なくとも1つの症状が減少する、又は前記疾患が改善する(例えば、有益な又は所望の臨床結果が得られる)。本発明の目的として、有益な又は所望の臨床結果は、限定されるものではないが、検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず、1つ以上の症状が軽減すること、前記疾患の程度が減少すること、前記疾患の症状が安定化すること(即ち、悪化していない)、前記疾患の進行が遅延する又はゆっくりになること、前記疾患の症状が改善する又は緩和する、及び寛解すること(部分的又は全体的であるかにかかわらず)、を含む。処置は、処置が無い場合に予想される生存と比較して、生存を延長することをいうことがある。従って、当業者のある者は、処置によって疾患状態が改善することがあるが、前記疾患を完全には治癒しないかもしれないことを認識する。本明細書中で使用される場合、用語「処置(treatment)」は、予防を包含する。或いは、疾患の進行が減少する又は停止する場合、処置は「有効」であると考えられる。「処置」はまた、処置が無い場合に予想される生存と比較して、生存を延長させることをいうこともある。処置を必要とするものには、ポリヌクレオチド配列の発現に関連した障害と既に診断されているもの、並びに遺伝的感受性又は他の因子に起因してこのような障害を発症する可能性が高いものが含まれる。

0056

本明細書で使用される場合、「突然変異細胞(mutant cell)」とは、元の遺伝子型とは異なる遺伝子型が生じている細胞をいう。いくつかの例において、「突然変異細胞」は、例えば、本発明のCRISPR/Casシステムを用いて正常に機能する遺伝子を改変した場合に、突然変異表現型を示す。他の例において、「突然変異細胞」は、例えば、本発明のCRISPR/Casシステムを用いて突然変異遺伝子型を訂正した場合には、野生型の表現型を示す。ある実施形態では、細胞中のターゲット・ポリヌクレオチド配列を改変して、遺伝子変異を訂正又は修復する(例えば、細胞の正常な遺伝子型を回復する)。ある実施形態では、細胞中のターゲット遺伝子ポリヌクレオチド配列を改変し、遺伝子変異を誘導する(例えば、遺伝子又はゲノム要素の機能を破壊する)。

0057

ある実施形態では、前記改変はインデルである。本明細書で使用される「インデル(Indel)」とは、挿入、欠失又はそれらの組み合わせから生じる変異をいう。当業者が理解するように、ゲノム配列コーディング領域にインデルが存在すると、インデルの長さが3の倍数でない場合、フレームシフト変異が生じる。ある実施形態的では、前記改変は点変異である。本明細書で使用される場合、「点変異」とは、1つの核酸が置換されることをいう。本発明のCRISPR/Casシステムを、ターゲット・ポリヌクレオチド配列中に、任意の長さのインデル又は点変異を誘導するために使用することがある。

0058

「オリゴデオキシリボ核酸」又は「N-オリゴ」とは、RNPデリバリー・システムを用いて遺伝子をノックアウトするときに、RNPとともに細胞に形質転換する、ランダムな配列をもったデオキシリボ核酸フラグメントをいう。好ましくは、長さ100〜250塩基対の二本鎖DNA、又は長さ100〜250塩基の一本鎖DNAである。

0059

「魚精子DNAフラグメント」とは、サケ精子DNAを含む溶液機械的にせん断加工することによって魚精子DNAを切断することによって得られる低分子フラグメントをいう。例えば、1%サケ精子DNA溶液を、7ゲージ針で繰り返し叩解してDNAを低分子に切断し、等分して、保存する。

0060

本明細書中で使用される「ノックアウト」は、前記ターゲット・ポリヌクレオチド配列の機能を妨害する様式で、前記ターゲット・ポリヌクレオチドの全部又は一部を欠失させることを包含する。例えば、ノックアウトは、ターゲット・ポリヌクレオチド配列の機能的ドメイン(例えば、DNA結合ドメイン)の中にインデルを誘導することによって、ターゲット遺伝子ポリヌクレオチド配列を改変することによって、可能になることがある。本明細書中に記載される詳細に基づいて、当業者は、前記ターゲット・ポリヌクレオチド又はその一部をノックアウトするために、本発明のCRISPR/Casシステムをどのように使用するかを容易に理解する。

0061

ある実施形態では、前記ターゲット遺伝子の切断は、ターゲット遺伝子の発現の減少をもたらす。用語「減少した」は、本明細書では、統計的に有意な減少量を意味するために広く使用する。しかし、誤解を避けるために、「減少した」とは参照レベルと比較して少なくとも10%減少したことを意味し、例えば、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約75%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%、若しくは100%まで減少したこと(即ち、参照サンプルと比較して、存在しないレベルであること)、又は参照レベルと比較して10%と100%との間であらゆる減少したことを意味する。

0062

用語「統計的に有意である」又は「有意である」は統計的に有意なことを指し、マーカの正常値より2倍標準偏差(2SD)小さいか又は低いを、広く意味する。前記用語は、差があることの統計的な証拠を指す。これは、帰無仮説が実際に真である場合に帰無仮説を棄却する決定を下す確率として定義される。前記決定は、しばしばp値を使用して行われる。

0063

ある実施形態では、前記ターゲット遺伝子の切断は、ホモ接合性ターゲット遺伝子の切断である。ある実施形態では、前記ターゲット遺伝子の切断は、ハイブリッド・ターゲット遺伝子の切断である。

0064

Cas9タンパク質(CRISPR−関連エンドヌクレアーゼCas9/Csn1としても知られる)は、1368アミノ酸を含むポリぺプチドである。Cas9タンパク質の例示的なアミノ酸配列を配列番号(SEQID NO):18に示す。Cas9は、crRNAに相補的でないターゲットDNAを切断するRuvC様ドメイン(残基7-22、759-766、及び982-989);及びcrRNAに相補的なターゲットDNAを切断するHNHヌクレアーゼドメイン(残基810-872) 等を含む、2つのエンドヌクレアーゼ・ドメインを含む。

0065

T細胞レセプター(TCR)は、主要組織適合複合体(MHC)上に特異的抗原ペプチド提示するヘテロダイマーのタンパク質レセプターである。その免疫系において、抗原特異的TCRがpMHC複合体に結合すると、T細胞と抗原提示細胞(APCs)との間の直接的な物理的接触が誘導される。次いで、T細胞上の他の細胞膜表面の分子は、APC上の細胞膜表面の分子と相互作用する。これによって、一連の、その後の細胞シグナル伝達及び他の生理学的応答をもたらされ、種々の抗原特異的T細胞がそれらのターゲット細胞免疫的な効果を及ぼすことが可能となる。

0066

TCRは、アルファ鎖ベータ鎖又はガンマ鎖/デルタ鎖ヘテロダイマーの様式で細胞膜表面上に存在する糖タンパク質である。95%のT細胞中のTCRヘテロダイマーはアルファ鎖及びベータ鎖からなり、5%のT細胞はガンマ鎖及びデルタ鎖からなるTCRを有する。天然のαβヘテロダイマーTCRはアルファ鎖及びベータ鎖を有し、前記アルファ鎖及び前記ベータ鎖は、αβヘテロダイマーTCRのサブユニットを構成する。概して、アルファ鎖及びベータ鎖の各々は可変領域、結合領域、及び定常領域を含み、典型的なベータ鎖は前記可変領域と前記結合領域との間に短い多様性領域も含む。但し、前記多様性領域はしばしば、前記結合領域の一部と見なされる。それぞれの可変領域は、3つのCDR(相補性決定領域、complementarity determining region)、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、これらは骨格領域の中に散在する。前記CDR領域は、前記TCRが前記pMHC複合体に結合することを決定するが、ここで、前記CDR3は、前記可変領域及び前記結合領域によって組換え的に形成され、超可変領域と呼ばれる。TCRのアルファ鎖とベータ鎖は、一般に2つの「ドメイン」、即ち可変ドメイン定常ドメインを有し、前記可変ドメインは前記結合領域に連結した可変領域からなると考えられている。前記TCRの定常ドメイン配列は、国際免疫遺伝学情報システム(International Immunogenetics Information System:IMGT)の公開データベースの中で見つけることができる。例えば、前記TCR分子α鎖の定常ドメイン配列は「TRAC*01」であり、前記TCR分子のβ鎖の定常ドメイン配列は「TRBC1* 01」又は「TRBC2*01」である。更に、TCRのアルファ鎖及びベータ鎖はまた、膜貫通領域及び細胞質領域も含み、ここで前記細胞質領域は非常に短い。

0067

ベータ-2ミクログロブリンとしても知られるB2Mは、MHCクラスI分子の軽鎖であり、従って、MHCの必須部分である。ヒトでは、B2Mは15番染色体上に位置するb2m遺伝子によってコードされ、6番染色体上に位置する遺伝子のクラスターとしての他のMHC遺伝子と向き合う。ヒト由来のタンパク質は119アミノ酸からなり、分子量は11,800ダルトンである。Β-2ミクログロブリンを欠損するマウスモデルによって、B2Mが、細胞表面上でMHCクラスIを発現し、ペプチド結合の溝を安定するのに、必要であることが示された。

0068

「PD-1」又は「PD1」は50〜55 kDaのタイプI膜貫通レセプターであり、これは、活性化誘導アポトーシスを起こしているT細胞において最初に同定された。PD-1は、T細胞、B細胞及びマクロファージ上で発現している。PD-1のリガンドは、B7ファミリーのメンバー、PD-L1(B7-H1)及びPD-L2(B7-DC)、である。

0069

PD-1は免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーであり、その細胞外領域に単一のIgV様ドメインを含む。PD-1細胞質ドメインは2つのチロシンを含み、細胞膜に近い方のチロシン(マウスPD-1のVAYEEL)はITIM内に位置する(免疫受容体阻害モチーフのチロシン)。PD-1にあるITIMは、この分子が細胞質ホスファターゼ動員して抗原レセプターのシグナル伝達減弱させることによって作用することを予測する。ヒト及びマウスのPD-1タンパク質は約60%のアミノ酸同一性共有し、4つの潜在的に保存されたN-グリコシル化部位、及びIg-Vドメインを規定する残基を有する。カルボキシル末端のチロシン(ヒト及びマウスにおけるTEYATI)周辺の細胞質ITIM及びITIM様モチーフもまた、ヒト及びマウスのオルソログ間でも保存されている。

0070

II.実施例及び試験
本発明を、以下の実施例において更に記載するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定することを意図しない。

0071

本発明の実施例又は試験例において、具体的な条件が特に示されていない実験方法は、一般に、従来の条件に従って、又は製造業者によって推奨される条件に従って実施された。供給元を具体的に示していない試薬は、通常、市販されている。

0072

実施例1: PBMC摘出
風邪及び発熱症状を伴わない健常なボランティア募集し、インフォームドコンセント署名してもらった。医療専門家が、100mlの血液を静脈からBD抗凝固チューブ採取した。その血液を等量のPBSバッファー(2%ウシ胎仔血清を含む)と混合した。15mLのフィコール・バッファー(GEヘルスケア)をPBMC分液管Sepmate-50(STEMCELLTechnology)に添加した後、前記の血液とPBSの混合液を添加した。遠心分離後、ペレットをPBSに再懸濁した。再懸濁した細胞を計数し、10 μlの懸濁液に10 μlの0.1%トリパンブルー添加し、混合し;細胞数及び生存率を計数した。

0073

実施例2: T細胞の精製
PBMCを300 gで5分間遠心分離し、その上清廃棄した。対応量のPBSバッファー(2 mMEDTA及び1%ウシ胎児血清を含む)を加え、細胞を再懸濁し、細胞密度を5×107/mlに調整した。ヒトT細胞を、STEMCELLTechnologyから入手可能なEasySep登録商標Human T Cell Enrichment Kitを用いて精製した。まず、50μl/mlのカクテルを先のPBMC懸濁液に添加し、よく混合し、室温で10分間置いた。次に、50μl/mlのEasySep登録商標 D Magnetite Particlesを添加し、十分に混合し、室温で5分間置いた。この細胞懸濁液を5 mlフローチューブに添加し、磁極に5分間置いた。この細胞懸濁液を素早くデカントし、PBSバッファーを前記フローチューブに添加し、再懸濁し、これを3回繰り返した。得られた細胞懸濁液を300 gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。細胞ペレットをLONZAから入手可能なVIVO-15培地に再懸濁し、密度を1×106/mlに調整し、rIL-2(R&D)を加えて濃度を100 IU/mlとした。そして、37℃の細胞培養インキュベーターで培養した。

0074

実施例3: T細胞の活性化
抗-CD3/抗-CD28磁気ビーズ(ライフテクノロジー)をPBSバッファー(2 mMEDTA及び1%ウシ胎仔血清を含む)に再懸濁し、次いで磁極に2分間置き、次いで前記上清を廃棄した。上記の工程を4回繰り返した。前記磁気ビーズを洗浄した後、1:1の比率で精製したT細胞に添加し、混合し、37℃で3日間培養した。3日後、前記磁気ビーズを除去し、ターゲット細胞をピペッティングより数回再懸濁した。この細胞懸濁液を磁極に置き、2分間置き、管壁上の磁気ビーズを廃棄した。

0075

実施例4: CARウイルスでT細胞を感染させる
CARレンチウイルスプラスミドの構築:
外部から内部にかけてのCD19 CARの構造は、CD19 scFv、ヒンジ部構造、膜貫通構造、4-1BB、及びCD3zである。CD19 CAR及びベクターpHR-CARを用いて発現ベクターを構築した。レンチウイルス・プラスミドpHR-CAR並びに2つのヘルパー・プラスミドdR8.91及びpCMV-VSV-Gを、Tiangenから入手可能なプラスミド抽出マキシ・キットを使用することによって抽出した。

0076

CARレンチウイルスのパッケージングと濃度:
293T細胞(ATCCから購入)を、トランスフェクションの1日前に、75 cm2培養ディッシュ上で過剰増殖させ、そして各々のディッシュについて、15 mLの培養培地を使って、1:3で継代した。トランスフェクションは、Lipo3000の方法に従って行った。トランスフェクション・システムを以下の通りとした:

0077

前記システム1を前記システム2とよく混合し、5分間置き、再び混合し、次いで更に10分間置いた。293T細胞をゆっくりと添加した。6時間後、その培地を新しい培地と交換した。48時間後、この培地を回収し、4℃で保存した。15mLの新しい培地を再度添加し、その上清を24時間後に回収した。得られたウィルス上清を0.45 μmのフィルタを通して濾過し、超遠心管に加えた。このチューブを50000 gで2時間45分4℃で遠心分離し、その上清を注意深く完全に除去し、裸眼見える白色のウイルス・ペレットを、上清体積の1%にあたる体積のPBSバッファーで再懸濁した。この再懸濁したウイルスを4℃で約30分間かけて溶解した。完全に溶解させた後、それを等分し、-80℃の冷蔵庫に保存した。

0078

CARレンチウイルスでT細胞を感染させる:
ヒト初代T細胞を抗-CD3/抗-CD28磁気ビーズで活性化し、1日後、前記細胞を再懸濁し、磁極に2分間置き、この細胞懸濁液を採取し、細胞の計数を行った。約1×107の細胞を300 gで5分間遠心分離し、その培地を廃棄し、1 mlの新しい培地を加えて細胞を再懸濁した。濃縮したレンチウイルスを添加して、MOIを5に調整し、十分に混合した。このチューブを2000 gで90分間、32℃で遠心分離し、その上清を廃棄し、新しい培地(100 IU/ml rIL-2)を加えて、細胞密度を1×106cells/mlに調整し、細胞を再懸濁し、新しく単離した抗-CD3/抗-CD28磁気ビーズを加えた。培養を37℃のインキュベーター中で続けた。CAR-T細胞を得た。

0079

実施例5: TCR、B2M、PD1遺伝子のノックアウト
(1)crRNAの設計
TRAC、B2M及びPD1の塩基配列に基づいて、適切なターゲット部位を選択し、長さ17〜20塩基のcrRNAを設計した。sgRNAを、前記crRNAを本明細書中で使用されるCas9タンパク質に対応するtracrRNAと連結することによって形成した。高いノックアウト効率及び低いオフターゲットの割合を有するcrRNAを実験によりスクリーニングした。選択したcrRNAの配列は、以下の通りであった:

0080

Cas9タンパク質は化膿連鎖球菌(Cas9ヌクレアーゼNLS、化膿連鎖球菌(S. Pyogenes)(BioLabs))に由来し、対応するtracrRNA配列(配列番号(SEQID NO): 17)は、以下であった:

0081

本明細書中で使用されるCas9(NLSを含む)タンパク質のアミノ酸配列(配列番号(SEQID NO): 18):

0082

上記のCas9タンパク質に対応するtracrRNAに連結した表1に示すcrRNAからなるsgRNAを調製した。そこでは、前記crRNAが前記tracrRNAの5'末端に位置する。

0083

(2)sgRNAのin vitro転写
sgRNA鋳型PCR増幅を最初に行った:



その後、PCR生成物を回収した:

0084

レギュラーDNA産物精製キットDP214のマニュアルはTiangenから入手可能であり、参考にした。in vitro sgRNA転写のためのDNAを得た。前記sgRNAを、Ambionから入手可能なin vitro転写キットMEGAshortscript登録商標Kit(カタログ番号AM1354)を使って転写した。Ambion MEGAclear登録商標 Kitカタログ番号AM1908のマニュアルを参考にした。得られたsgRNAを精製し、分光光度計及び変性アガロースゲル電気泳動により検出し、使用するために、それらの全てを評価し、直ちに等分した。

0085

(3)CRISPR-Cas9のエレクトロポレーションを介して、T細胞中で、TRAC遺伝子をノックアウトした:
得られたCAR-T細胞を、主にLONZA 4Dエレクトロポレーション機器を用いて電気的に形質転換した(この手法は初代T細胞のノックアウトにも適用される)。使用したキットはP3初代細胞4D-ヌクレオフェクター登録商標Xキットであった。

0086

最初に、エレクトロポレーション・システムを調製した: 10 μlのヌクレオフェクター・バッファー、30 μgのCas9タンパク質(約9 μg/μl)及び4 μgのsgRNAを混合し、室温で10分間インキュベートした。CAR-T細胞を3日間活性化し、次いで抗-CD3/抗-CD28磁気ビーズを磁極によって除去した。5×106細胞/チューブを採取し、300 gで5分間遠心分離し、その上清を完全に除去した。インキュベートしたエレクトロポレーション・システムを細胞ペレットに添加し、更に72 μlのヌクレオフェクター・バッファー及び18 μlのサプリメント・バッファーを添加し、よく混合し、100 μlのLONZAエレクトロポレーション・キュベットに添加し、これをLONZA-4Dエレクトロポレーション機器に入れ、E0-115法に従ってエレクトロポレーションを行った。前記エレクトロポレーションが完了した後、前記エレクトロポレーション・キュベットを室温で5分間放置した。細胞を前記エレクトロポレーション・キュベットから予め加温したVIVO-15培地に移し、細胞密度を1×106 cells/mlに調整し、37℃で培養した。

0087

実施例6: TCR-ネガティブ細胞のスクリーニング
CRISPR-Cas9を使って、TRACをCAR-T細胞からノックアウトした後、前記CAR-T細胞を10日間培養し、TCR-ネガティブ細胞を濃縮した。最初に、全ての細胞を300gで5分間遠心分離し、PBSバッファー(2 mMEDTA及び1%ウシ胎仔血清を含む)で2回洗浄した。細胞密度を1×107 cells/mlに調整した後、100μl/mlのビオチン-TCR抗体(Miltenyi Biotec社、ドイツ、から購入)を加え、暗所で4℃で10分間インキュベートした。PBSバッファーで1回洗浄した後、細胞密度を1×107 cells/mlに調整し、抗-ビオチン・マイクロビーズを50 μl/mlで添加し、4℃で15分間暗所に保った。PBSバッファーで1回洗った後、前記細胞を500 μLのバッファーに再懸濁した。LD1カラム(Miltenyi Biotecから購入)を磁極に置き、2 mLのPBSバッファーで1回洗浄した。次いで、500 μlの細胞懸濁液を添加し、ターゲット細胞を前記LDカラムに流し、前記LDカラムの底部から回収した。全ての細胞懸濁液が流出したら、2 mLのPBSバッファーを前記LDカラムにロードし、これを2回繰り返した。回収した細胞懸濁液を300 gで5分間遠心分離し、予め温めた培地に再懸濁した。

0088

試験例
試験例1: CRISPR-Cas9ベースでTRACをノックアウトするために、最も最適化されたcrRNAを選択した
実施例5で示したように、TRACのために設計したcrRNA配列を、試験で比較した。in vitro転写後にsgRNAを得、次いでCas9タンパク質を活性化した初代T細胞にエレクトロポレーションした。48時間後、TCRタンパク質の細胞外での発現をフローサイトメーターにより検出した。本結果は、全てのcrRNAがTRAC遺伝子を様々な程度でノックアウトすることができ、中でも、crRNA-11が最も高いノックアウト効率を示す、ことを示した。

0089

試験例2: 種々のデリバリー・システムの比較解析
3つのデリバリー・システムはそれぞれ、プラスミド、mRNA及びRNP(タンパク質-RNA複合体)であり;crRNAを、TRACをターゲットとするように設計し、マキシ・プラスミド抽出を実施例4に従って実施した。Cas9 mRNAにin vitroで転写するために、T7プロモータを含むDNA鋳型を、T7プライマーでPCRすることによって最初に得た;次いで、前記Cas9 mRNAを、Ambionから入手可能なT7 in vitro転写キットを使って、in vitro転写によって得た。sgRNAとCas9タンパク質の複合体を実施例5と同様の方法で得た。5×106個のJurkat細胞を遠心分離し、上清を捨てた。エレクトロポレーションを、Electroporation System Neon MPK5000(Invitrogen)上で、それぞれ3つの異なったデリバリー物質を用いて行った。48時間後、0.5×106細胞を採取し、PBSバッファーで2回洗浄し、100 μlのバッファーで再懸濁した後、10 μl のPE-TCR抗体(eBioscience)を加えてよく混合し、4℃で30分間インキュベートした。PBSバッファーを用いて1回洗った後、細胞を500 μLのバッファーで再懸濁し、フロー・サイトメーターのTCR検出チャンネルにロードした。本結果を図1に示す。

0090

試験例3:ランダムN-オリゴ又は魚精子DNAは、TRACをノックアウトする際におけるCRISPR-Cas9の効率を増加させる
RNPデリバリー・システムを用いて遺伝子をノックアウトした場合、RNPをN-オリゴ(オリゴデオキシリボ核酸)又は魚精子DNAのランダム配列とよく混合し、エレクトロポレーションによって同時に形質転換した。

0091

N-オリゴの例示的な配列:

0092

実施例5(3)に基いて、100〜200 nMのN-オリゴDNAをRNP複合体に更に添加した、ここで、N-オリゴDNAはページ-グレード(Page-grade)とした。TRACをノックアウトする際におけるCRISPR-Cas9の効率に与えるN-オリゴの影響を図2A、図2Bに示した。本結果によれば、N-オリゴが、T細胞及びCAR-T細胞の両方において、TRAC遺伝子をノックアウトする際におけるCRISPR-Cas9の効率を効果的に増大させうることが示された。

0093

実施例5(3)に基いて、100〜200 nMの魚精子DNA断片をRNP複合体に更に添加した、TRACをノックアウトする効率に与える魚精子DNAフラグメントの影響を図3に示した。本結果によれば、魚精子DNAフラグメントが、TRAC遺伝子をノックアウトする効率を増大させ、その効率がN-オリゴの効率より高いこと、が示された。

0094

試験例4: T細胞中のB2M、PD1をノックアウトする際における効率の検出
同様に、多数のcrRNAを設計し、比較する実験をした後、B2M遺伝子をノックアウトするために、最も高いノックアウト効率及び最も低いオフターゲットの割合を有するcrRNAを選択した。B2M及び/又はPD1遺伝子を、実施例5(3)に記載したのと同じ方法に基づいて、RNPデリバリー・システム及びN-オリゴを使用することによって、T細胞からノックアウトした。

0095

B2Mタンパク質に関して、B2M遺伝子の発現は、細胞膜上でHLA-ABCが提示されることと密接に関連していたので、APC-HLA-ABC抗体(eBioscience)を用いて、B2M遺伝子をノックアウトする効率を検出した。本結果(図4に示す)により、B2M遺伝子をノックアウトする際における効率が80%を超えることが示された。

0096

PD1遺伝子に関して、細胞をRNPとN-オリゴの混合液で48時間エレクトロポレーションし、1×106細胞を採取し、PBSバッファーで2回洗浄し、その上清を完全に吸引した。GeneArt登録商標Genomic Cleavage Detection Kit(Thermo Fisher)のマニュアルに従って、T7E1の実験を実施した。本結果(図5に示す)により、PD1のために選択した3つのcrRNAが全て、PD1遺伝子を効果的にノックアウトすることができ、ノックアウト効率が全て80%を超えること、が示された。

0097

試験例5: CRISPR-Cas9によって引き起こされる遺伝子変異の解析
プライマーを、最初に、TRAC、B2M及びPD1遺伝子のターゲット部位付近に対して設計した。RNP+N-オリゴ又は魚精子DNAフラグメントを使用しながら、CRISPR-Cas9システムに基づいて、TRAC、B2M及びPD1をT細胞中でノックアウトした後、正常T細胞及び遺伝子をノックアウトしたT細胞の両方の1×106個から、それぞれ、ゲノムDNAを抽出した。得られたPCR産物DNAフラグメントを、T-平滑末端を有するベクター(pEASY-Blunt Simple Cloning Kit、Beijing TransGen Biotech Co.,Ltd.)に連結し、次いでこの得られたベクターでTOP10コンピテントセル(competent cell)を形質転換し、これをAmp耐性の固形プレート上にプレーティングした。翌日、得られたクローンシークエンシングし、プレート当たり少なくとも30個のクローンをシークエンシングした。得られたシークエンシングの結果を野生型の配列と並べて比較した。本結果(図6A〜図6Bに示す通りである、PD1変異の結果は示していない)によれば、CRISPR-Cas9が、3種の遺伝子中、前記crRNAに対応するゲノムDNAの部位において、遺伝子変異をもたらしたこと、が示された。

0098

試験例6:オフターゲットの解析
設計したcrRNAに基づいて、考えられるオフターゲット部位を、http://crispr.mit.edu/, で予測した。TRAC、B2M及びPD1のそれぞれについて、8個又は9個の可能性があるオフターゲット部位(OT1-OT9)を選択した。これらの可能性が有るオフターゲット部位に関して、PCR増幅及び配列決定のために、プライマーを設計した。細胞内でノックアウトしたゲノムDNAのオフターゲット部位及びコントロール(ターゲット遺伝子TRAC、B2M又はPD1)についてのピークマッピング・シークエンシングの結果を、ウェブサイトhttps://tide.nki.nl/,のTIDEによって並べて比較した。本結果を図7A〜7Cに示した。選択したcrRNA及びそのノックアウト法のオフターゲット割合は極めて低いこと、が示された。

0099

試験例7:細胞のシグナル伝達経路及び殺傷活性の両方に与えるTCRノックアウトの影響の解析
CD3抗体の溶液(5 μg/ml)を調製し、96ウェルプレート上にコーティングした。100 μlの体積を各ウェルに添加し、37℃で2時間コーティングした。このプレートを取り出し、PBSで2回洗浄した。TCR-ネガティブT細胞と正常T細胞をそれぞれ添加し、細胞密度を1×106 細胞/mlとした。37℃で24時間インキュベートした後、前記プレートを取り出し、CD25及びCD69に特異的な抗体で染色した。本結果(図8A及び図8Bに示すように)によれば、TRAC遺伝子がノックアウトされたT細胞は、CD3抗体によって、CD25及びCD69を発現するように誘導できないことが示された。TCR(CD19に対する)ポジティブCAR-T及びTCR-ネガティブ(TRACのノックアウト等)CAR-T細胞の、CD19ポジティブ腫瘍細胞株K562-CD19に対する殺傷効果を比較すると、TCRノックアウトがCAR-Tの殺傷効果に有意には影響を与えないことが示された。

実施例

0100

明確に理解するために、本発明を、図面及び実施例を使いながら、詳細に説明してきた。しかしながら、本説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用された全ての特許及び科学文献の開示は、その全体が参照により明示的に組み込まれる。

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