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課題

上述の問題を軽減し、小規模原子炉構築を可能にする溶融塩炉(MSR)の減速材を提供する。

解決手段

核分裂によってエネルギーを生成するのに適合された装置であって、前記装置は、炉心容器材料からなる炉心容器を備え、前記炉心容器は、内側管材料からなる内側管囲み、前記内側管及び/又は前記炉心容器は、入口と出口とを有し、前記装置は、核分裂性物質を含む溶融燃料塩と、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを備える溶融減速材塩と、前記内側管材料の、又は前記内側管材料及び前記炉心容器材料の還元電位よりも大きい還元電位を有する酸化還元元素と、をさらに備え、前記溶融減速材塩は、前記炉心容器内に設けられ、前記溶融燃料塩は、前記内側管内に設けられ、又は、前記溶融燃料塩は、前記炉心容器内に設けられ、前記溶融減速材塩は、前記内側管に設けられている。本発明は、前記装置を使用して核分裂プロセスを制御する方法、及び、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを備える溶融塩と酸化還元元素の、核分裂反応プロセスで生成される核分裂中性子減速のための使用にも関する。

概要

背景

核分裂は、通常エネルギー範囲が100keVから2MeVの高エネルギー中性子を生成する。核分裂イベントが発生する確率は、中性子のエネルギーに依存する。いわゆる高速炉では、核分裂から生成された減速されていない中性子が他の原子核と直接相互作用する。熱及び熱外核分裂炉は、エネルギーを減少させ核分裂の確率を高めるための減速材に依拠している。したがって、核分裂炉は、2つの異なる原理、すなわち高速炉と、熱及び熱外原子炉とによって運転することができる。

高速炉において、高エネルギー中性子は、核分裂性物質と直接相互作用して、エネルギー、核分裂生成物、及び高エネルギー中性子を生成する。高速炉は、減速材を持つことに依拠していないため、この特許では考慮されない。

熱及び熱外原子炉において、核分裂によって生成された高エネルギー中性子は、減速材とエネルギーを交換し、最終的に核分裂性物質と相互作用して、エネルギー、核分裂生成物、及びより高エネルギーの中性子を生成する。第2世代及び第3世代の軽水炉LWR)は、このような原子炉の典型的な例であり、商用原子炉一団の主力製品である。水冷式原子炉には、合理的な高い動作温度に達するために冷却水を非常に高い圧力に保たなければならないという事実に固有の欠点がある。このような構造におけるさまざまな故障の結果としての蒸爆発は、原子力産業で最も深刻なインシデントのいくつかをもたらした。減速材として使用される水に対しても同様の欠点が生じる。

核分裂性燃料に関して、どの設計選択が行われたとしても、高エネルギー中性子は、熱及び熱外核分裂炉の減速材と相互作用することにより、減速されなければならない。第2及び第3世代の原子炉の場合、核分裂性物質は、中空管内の金属又は金属酸化物の混合物として、固体の形で核分裂性キャリアに保持される。核分裂性物質は常に固体状態であり、したがって安定している。より新しい第3世代及び第4世代の核分裂炉は、通常、固体のセラミック酸化物燃料に基づいているが、核分裂性物質が、固体で安定しているか(例えばペブルベッド型原子炉)、液体で安定しているか(安定塩炉)、又は液体で循環しているか(溶融塩炉)の新しい設計も含む。

燃料に関連して行われた設計選択に関係なく、適切な減速材物質は、一般に、中性子と核分裂性原子間の相互作用に対して、次の特性を提示する必要がある。
散乱による相互作用の高い確率を提示する必要がある。これは、相互作用間の中性子の短い平均自由行程に相当し、減速材のサイズ炉心に影響する。
・軽量の減速材原子で構成される必要がある。散乱イベントでは、中性子は、エネルギーを減速材に伝達し、減速される。原子が軽いほど、相互作用あたりに伝達されるエネルギーが多くなる。
中性子吸収の低い確率を提示する必要がある。減速材における吸収は、核分裂に利用可能な中性子束を減少させ、物質の放射化の過酷さを増加させる。したがって、通常、減速材での吸収が低いことが望ましい。

理想的な減速材は、多くの追加の特性を提示する必要がある。
動作条件下では液体状態である必要がある。液相の減速材の使用は、個体状態の減速材の使用では得られない冷却の可能性を提供する。また、中性子照射下での寿命を改善し、化学的再処理を可能にする。
高温で動作可能である必要がある。炉心の動作温度が高いと、外側の冷却ループとより多くのエネルギーを交換できる可能性があるため、より高い原子炉効率を持つ可能性を生む。また、より高い温度は、より高いタービン効率つながり、さまざまな産業プロセスのための熱生成を可能にする。
・低い動作圧力許容する必要がある。低い動作圧力は、インシデントに起因するリスクを軽減するために必要な安全装置の複雑さを軽減する。また、構造及び工学への要求を軽減する。
・減速材物質は、世界市場で十分な量で、安定した供給で、予測可能価格レベル入手可能である必要がある。
・使用される材料は、さらなる化学的又は環境的リスクをもたらさない必要がある。

上記の要件は、選択肢水素重水素リチウムベリリウム、及び炭素の軽い元素に制限する一方、これらのうち単一の元素で上記のすべての要件を満たすものはない。

下の表1は、さまざまな先行技術の減速材物質の減速特性をまとめたものである。ζは、高エネルギーの中性子を熱エネルギーベル下げるのに必要な散乱イベントの平均数MFPはcmで測定された弾性散乱の平均自由行程、Σabsはメートルあたりに吸収される中性子の数の測定値である。

上記の表1の情報から、次の結論が導き出される。水(H2O)は、とてもコンパクトな減速材である。重水(D2O)、ベリリウム(Be)、及びグラファイト(C)は、低中性子吸収の観点から非常に優れた減速材である。これは、商用及び研究用原子炉における現在の使用に反映されているため、驚くことではない。さらに、純粋なリチウム(Li)は、大きな減速材サイズが要求されるため、不適切である。純粋なナトリウム(Na)は、実用的な意味で減速しない。化学量論化合物2 7LiF:1 BeF2は、優れた減速材である。酸化マグネシウム(MgO)は、減速しない。MgOは、セラミック材料の例として含まれる。7LiOHは、コンパクトな減速材であり、吸収が低い。

溶融塩炉は、溶融塩に溶解した核分裂性物質の臨界濃度に基づく。溶融塩は、核分裂性元素フッ化物塩を含有する7LiFのベース、及び他の成分を有していてもよい。これは、一般に燃料塩と呼ばれる。MSRは、1950年代及び1960年代にとりわけオークリッジ国立研究所において研究されたが、成功裏に商用化されなかった。MSRには、現在商用利用されているものを含め、他の原子炉の型と比較していくつかの利点がある。MSRは、トリウムから核分裂性233Uを増殖させ、ウラン/プルトニウム原子炉よりもはるかに低いレベルの超ウランアクチニド廃棄物を生成し、高温で動作し、揮発性放射性核分裂生成物の固体燃料棒への蓄積を回避し、従来の原子炉で可能な量よりも大量の核分裂性物質を燃焼させる能力がある。

1950年代及び1960年代に遭遇したいくつかの不利益は、MSRを商用化させなかった。不利益の1つは、開発されたほとんどのタイプのMSRが中性子減速材としてグラファイトを使用していることにある。

グラファイトは六方格子に配置された炭素原子で構成され、少なくとも3つの理由で中性子減速材として使用される。第一に、12u(統一原子質量単位)の質量のを持つ炭素原子は、1uの重さがある中性子と比較して極めて軽い。この結果、衝突する中性子は、炭素原子との各弾性散乱イベントにおいて、かなりの量のエネルギーを失うことができる。さらに、グラファイトは、極めて高密度であり、炭素の散乱断面積許容範囲内にあるため衝突は頻繁である。減速材の密度と減速効率の双方を含むメリット値は、減速能DPであり、




と定義される。ここで、ζは高速中性子熱化するのに必要な散乱イベントの平均数、Nは原子密度、σsは微視的弾性散乱断面積である。グラファイトでは、SDPは、0.060である。SDPは、高いほど良いことに注意が必要である。第二に、天然炭素の微視的吸収断面積は非常に低い。第三に、グラファイトは豊富で、極めて安価で、原子炉で使用するのに好ましい熱的及び構造的特性を有している。

ただし、減速材として、グラファイトには以下を含むいくつかの欠点がある。
‐中性子減速の望ましいレベルを得るには、多量のグラファイトが必要であり、大きな炉心をもたらす。
‐高エネルギー中性子がグラファイトの結晶構造に衝突して損傷を与えるため、固体グラファイトは、中性子照射から損傷を受ける。これは、構造材料腐食とともに、現在の黒鉛減速炉心の制限寿命因子を表している。
‐十分な純度均質性、及び密度の原子炉グレードのグラファイトの製造に関与してかなりの困難があり、したがってコストもかかる。
‐MSRの炉心のグラファイトは、高エネルギーの中性子によって放射化され、半減期が5730年の14Cを生成する。廃棄されたグラファイトは、高レベル核廃棄物としてかなりの期間、保管される必要がある。
‐高温では、グラファイトは空気と接触すると燃焼し、さらに複雑な温度膨張反応係数を有する。これは方向に依存し、グラファイトの照射によって変化する。

純粋に原子炉の物理的な観点からは、ZrHxは、非常に優れた減速材である。ジルコニウム成分は、極めて小さい(トータルの)微視的断面積を有するため、ZrHxの減速特性は、水素原子核を構成する孤立したプロトンによって支配される。原子質量が1uの水素は、入射中性子と交換可能なエネルギーを最大化する。その結果、そしてZrHxの密度が5g/cm3を超えるため、xの値が低くても水素の密度は非常に高くなる。このため、ZrHxは、優れた減速能を示す。例えば、x=1.8の水素分率の場合、ZrHxは、2.91の減速能を有する。MSRにおける減速材としてのZrHxの使用は、近年、US2013/083878(WO 2013/077941 A2)に開示されている。

しかしながら、その優れた減速特性にもかかわらず、ZrHxは、原子炉適用の広範な使用にはたどり着いていない。これは、いくつかの理由による。第一に、ZrHxには、水素含有量と温度の双方に依存する複雑な構造的挙動がある。溶融塩炉の通常の運転空間内の温度にさらされたときに、ZrHxが相変化を経験しない領域は、おおよそx=1.6の小さな領域しかないことは、よく知られている。第二に、ZrHxの水素含有量は、温度にも依存する。したがって、定常状態での動作では、中性子とガンマ線の加熱により減速材内に温度勾配が存在すると、ZrHx内に水素勾配が存在し、その構造的挙動の予測がさらに複雑になる。負荷追従又は偶発的なシナリオによる大きな温度変動の下で、水素は、減速材内で再配置し、表面で放出又は潜在的に吸収され、再びZrHxの水素の量が変化する。

減速材としてのZrHxに関連するさらなる欠点は、以下を含む。
‐ZrHxは、空気の存在下では、高温で燃焼する。
‐ZrHxは、溶融塩と接触すると発熱的に反応し、可燃性水素ガスを放出する可能性がある。
‐ZrHxは、高温で水と接触すると、可燃性の水素及び酸素ガスを生成する。
‐ZrHxを溶融塩から分離するには、i)高い信頼性、ii)低い浸透性、を有し、iii)潜在的に水素ガスの放出よる高い背圧を維持できる、エキゾチック被覆材が要求される。
‐ZrHxは、非常に高価であり、少なくともグラファイトよりも高価である。これは、核グレードジルコニウムを製造する際のジルコニウムとハフニウムのコストのかかる分離プロセスによって部分的に引き起こされており、これは、ハフニウムが大きな中性子捕獲断面積を有しているために必要である。
‐ZrHx減速材内の水素の再配置を最小化するためには、常に温度を制御するための非常に高度な冷却方式が要求される。

したがって、当技術分野では、代替の減速材物質をMSRに提供するという一般的な要求がある。

C.E. Teeter et al.: “The Catalog of nuclear reactor concepts”, Argonne National Library, USA, 1965,(Teeterら)は、1965年まで科学的に調査された多数の異なる溶融塩炉のコンセプトを開示している。減速材としてグラファイト又はZrHxを使用する種々のコンセプトに加えて、Teeterらは、水酸化ナトリウム(NaOH)、7LiOH、及び7LiODを、さまざまな輸送手段、特に飛行機及び潜水艦推進力を対象とした懸濁原子炉、及び循環する減速材を有するすべての複合減速材及び冷却剤として使用することを開示している。なお、移動装置の推進力に使用される原子炉では、しばしば急速な及び/又は突然の動きで移動されており、十分な冷却を提供して炉心の過熱を回避するために減速材の強制循環が必要であることに注意する。Teeterらは、また、減速材としての水酸化物、特にNaOHに関するいくつかの落胆的な問題についても言及している。ウラン化合物をNaOHに溶解することは非常に難しく、水酸化物は非常に小さい変換率の原因となるため、小さな臨界質量が要求される場合、内部増殖は実行不可能であると述べられている。最も重要なことには、水酸化物と重水酸化物、特にNaODが非常に腐食性であり、特に循環する水酸化物と重水酸化物、特にNaODの置換が腐食の問題につながることも述べられている。

G.P. Smith: “Corrosion of materials in fused hydroxides”, Oak Ridge National Laboratory, USA, 1956,(G.P. Smith)も、水酸化物、特にNaOHで直面する腐食の問題を強調しており、それらはヒドロキシルイオン及び/又はアルカリ金属イオンによって引き起こされると言及している。また、G.P. Smithは、不純物が存在する場合、腐食は特に大きいと述べている。さらに、G.P. Smithは、少なくとも31種類の元素金属と65種類の合金について研究が行われており、すべてが溶融水酸化物にさらされると腐食を示すと述べている。

したがって、これら2つの文書は、金属水酸化物をMSRにおける中性子減速材として使用することに反対して直接教えている。言い換えれば、当技術分野において、核分裂反応器、特に溶融塩炉の減速材として、一般に金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムと水酸化リチウムを使用しないように教示する明らかな偏見がある。

また、1964年6月17日に公開されたGB 960,720 Aは、高温(1000−2000℃)でも固体のままである中性子減速材として使用可能な多くのセラミック物質を開示している。その物質の中で、CaZrO2H1.8、LiZr0.2O0.5H2/3、CeO3/4H1.5がGB 960,720 Aで提案されている。これらの物質はすべて、水素化された金属酸化物である。つまり、水素が結晶格子に吸収されている。しかしながら、固体の減速材は、このような減速材の中性子放射化から生じる廃棄物の懸念と同様、中性子照射からの構造劣化のためMSRには好ましくない。また、固体減速材冷却効果は低いか、又は無視できるほど小さいため、別の冷却システムの必要性を引き起こし、今度は大きな炉心をもたらす。

MSRが商用化されたことがないことの一因となる2番目の欠点は、不溶性の核分裂生成物がMSRのポンプ熱交換器を詰まらせることにある。したがって、溶融塩炉の性能が最も引き出された設計は、燃料塩から核分裂生成物を継続的に除去するための付属再処理プラントを要求する。これにより、MSRは複雑で高価になり、広範囲に及ぶ開発作業が必要になる。

3番目の欠点は、MSRが商用化されたことがないことの一因となる欠点の中でおそらく最も決定的なものであり、溶融塩が非常に腐食性であることである。これは、耐食性金属合金の開発に関する広範な研究を引き起こした。ニッケルベース超合金など、いくつかの適切な金属合金が実際に開発されているが、これらの合金は非常に高価であり、それにもかかわらず、通常は長期間後に腐食が発生する。

炭素及び/又は炭化物に基づく新しい複合材料、例えば炭化ケイ素は、原理的には、溶融塩に耐える耐薬品性を備えているが、そのような材料から複雑な構造を構築することは非常に困難であり、非常に高価である。

少なくとも上記の理由により、1960年代後半には、ナトリウム塩高速炉又は今日一般的に使用されているタイプの伝統的な核分裂炉を支持して、溶融塩炉の研究は一般に放棄された。

それ以来、核分裂炉の減速材としてのグラファイトと水への排他的な集中があった。

最近、MSRは、新たな注目を享受している。ただし、これらの新しい試みにおいて、減速材に関しては、減速材としての水素化物、特にZrHxの使用が提案されている上記のUS 2013/083878を除き、ほとんど独占的にグラファイトのみに焦点が当てられている。

MSRのさらなる例は、US 2015/243376及びUS 2016/005497に開示されている。US 2015/243376は、溶融塩と燃料との結合体を収容するベッセルを備える炉心原子炉容器を有するモジュール式核分裂炉を開示している。ベッセルハウジングは、ベッセルハウジングの内部を覆う保護層を含む。保護層は、グラファイト又はコーティングされたセラミック材料を含んでもよい。

US 2016/005497は、各々が1つ以上の核分裂性同位体の溶融塩を含む中空燃料管の配列を備えた炉心を有する核分裂炉を開示している。燃料管の配列は、冷却液プールに浸されている。各燃料管内の溶融塩から管の外側への熱伝達は、自然対流機械的攪拌振動溶融塩の流れ、又は溶融塩の沸騰によって達成される。耐食合金、例えばニッケル合金は、冷却剤塩にジルコニウム金属のサンプルを含めることが提唱されているが、一般的に腐食からの保護に関して信頼されている。

したがって、今日まで、グラファイト及びZrHxだけでなく、水の使用に関する欠点を軽減する代替の減速材物質をMSRに提供するという当技術分野の要望が残っている。減速材としての水には欠点があり、最も重要なことには、燃料の塩を溶融状態に保つのに必要な温度と比較して非常に低い融点である。

概要

上述の問題を軽減し、小規模原子炉の構築を可能にする溶融塩炉(MSR)の減速材を提供する。核分裂によってエネルギーを生成するのに適合された装置であって、前記装置は、炉心容器材料からなる炉心容器を備え、前記炉心容器は、内側管材料からなる内側管囲み、前記内側管及び/又は前記炉心容器は、入口と出口とを有し、前記装置は、核分裂性物質を含む溶融燃料塩と、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを備える溶融減速材塩と、前記内側管材料の、又は前記内側管材料及び前記炉心容器材料の還元電位よりも大きい還元電位を有する酸化還元元素と、をさらに備え、前記溶融減速材塩は、前記炉心容器内に設けられ、前記溶融燃料塩は、前記内側管内に設けられ、又は、前記溶融燃料塩は、前記炉心容器内に設けられ、前記溶融減速材塩は、前記内側管に設けられている。本発明は、前記装置を使用して核分裂プロセスを制御する方法、及び、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを備える溶融塩と酸化還元元素の、核分裂反応プロセスで生成される核分裂中性子の減速のための使用にも関する。

目的

液相の減速材の使用は、個体状態の減速材の使用では得られない冷却の可能性を提供する

効果

実績

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請求項1

核分裂によってエネルギーを生成するのに適合された装置であって、前記装置は、炉心容器材料からなる炉心容器を備え、前記炉心容器は、内側管材料からなる内側管囲み、前記内側管及び/又は前記炉心容器は、入口と出口とを有し、前記装置は、核分裂性物質を含む溶融燃料塩、溶融減速材塩、及び酸化還元元素をさらに備え、前記溶融減速材塩は、前記炉心容器内に設けられ、前記溶融燃料塩は、前記内側管内に設けられ、又は、前記溶融燃料塩は、前記炉心容器内に設けられ、前記溶融減速材塩は、前記内側管内に設けられ、前記溶融減速材塩は、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを備えていること、及び、前記酸化還元元素は、前記内側管材料の、又は前記内側管材料及び前記炉心容器材料の還元電位よりも大きい還元電位を有していることを特徴とする、装置。

請求項2

前記酸化還元元素は、前記内側管材料の表面、又は前記内側管材料及び前記炉心容器材料の表面に設けられた犠牲材料である、請求項1に記載の装置。

請求項3

前記内側管は、前記溶融減速材塩を囲むために前記入口又は前記出口を備えていない、請求項1又は2に記載の装置。

請求項4

少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせ、及びSr、Ca、Li、Rb、K、Ba、Li2C2、Na、Mg、Th、U、Be、Al、又はZr、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される酸化還元元素を備える溶融塩を、核分裂性物質を含む炉心で生じる核分裂反応プロセスで生成された核分裂中性子減速するために、使用すること。

請求項5

少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせ、及び酸化還元元素を備える溶融塩を、金属部分を有し核分裂性物質を含む炉心で生じる核分裂反応プロセスで生成された核分裂中性子を減速するために、使用することであり、前記酸化還元元素は、前記炉心の前記金属部分の電気陰性度よりも低いポーリングスケールによる電気陰性度を有する金属である。

請求項6

核分裂プロセスを制御する方法であり、前記方法は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置を提供するステップと、前記内側管に溶融減速材塩及び酸化還元元素を注入するステップと、前記炉心容器に、アルカリ金属フッ化物を備える溶融燃料塩と、核分裂性元素とを注入するステップと、熱交換ループ循環する前記溶融塩から熱を除去するための前記熱交換ループを画定するように、前記入口及び前記出口と流体連通した熱交換器を提供するステップと、前記炉心容器内の前記燃料塩の温度を制御するように前記熱交換ループ内の前記溶融塩を循環させるステップと、を備え、前記溶融減速材塩は、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを備えること、及び前記酸化還元元素は、前記内側管材料の還元電位よりも大きい還元電位を有していることを特徴とする。

請求項7

核分裂プロセスを制御する方法であり、前記方法は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置を提供するステップであって、前記内側管は、入口と出口とを有する、ステップと、溶融燃料塩を前記内側管に注入するステップであって、前記溶融燃料塩は、アルカリ金属のフッ化物と核分裂性元素とを含む、ステップと、前記炉心容器に溶融減速材塩と酸化還元元素とを注入するステップと、熱交換ループを循環する前記溶融燃料塩から熱を除去するための前記熱交換ループを画定するように、前記入口及び前記出口と流体連通した熱交換器を提供するステップと、前記内側管内の前記燃料塩の温度を制御するように前記熱交換ループ内の前記燃料塩を循環させるステップと、を備え、前記溶融減速材塩は、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを備えること、及び前記酸化還元元素は、前記内側管材料の、又は前記内側管及び前記炉心容器材料の還元電位よりも大きい還元電位を有していることを特徴とする。

請求項8

前記入口の温度は、400℃から800℃までの範囲であり、前記出口の温度は、600℃から1000℃までの範囲である、請求項6又は7に記載の方法。

請求項9

前記燃料塩は、共晶塩である、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の方法。

請求項10

前記燃料塩は、トリウムを備える、請求項6乃至9のいずれか1項に記載の方法。

請求項11

前記酸化還元元素の濃度は、前記減速材塩に前記酸化還元元素を補充することにより維持される、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の方法。

請求項12

溶融減速材塩を介して及び/又は溶融燃料塩を介してガス泡立てるステップをさらに沿備える、請求項6乃至11のいずれか1項に記載の方法。

請求項13

前記少なくとも1つの金属水酸化物、及び/又は前記少なくとも1つの金属重水素化物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアルカリ金属とアルカリ土類金属との組み合わせを含む金属の群から選択される金属を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置、請求項4又は5に記載の使用、又は請求項6乃至16のいずれか1項に記載の方法。

請求項14

前記酸化還元元素の濃度は、前記溶融減速材塩の1g/kgから100g/kgまでの範囲のである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置、請求項4又は5に記載の使用、又は請求項6乃至16のいずれか1項に記載の方法。

請求項15

前記酸化還元元素は、前記溶融塩の融点よりも高い融点を有し、前記酸化還元元素は、0.1mmから11mmの範囲のサイズを有する粒子の懸濁液として存在する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置、請求項4又は5に記載の使用、又は請求項6乃至16のいずれか1項に記載の方法。

請求項16

前記溶融減速材塩は、最大10%(w/w)の水分を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置、請求項4又は5に記載の使用、又は請求項6乃至16のいずれか1項に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、核分裂性物質を含む溶融燃料塩、中性子減速用減速材物質を含む溶融減速材塩、を備える炉心を備える溶融塩核分裂炉に関する。以下では、このような原子炉を、単に溶融塩炉、又はMSRと称す。また、本発明は、核分裂原子炉における溶融減速材塩を用いた核分裂プロセスを制御する方法に関する。

0002

本発明は、より詳細には、MSR用の減速材物質、MSRを減速する方法、及びMSRにおける減速材物質の使用に関する。

背景技術

0003

核分裂は、通常エネルギー範囲が100keVから2MeVの高エネルギーの中性子を生成する。核分裂イベントが発生する確率は、中性子のエネルギーに依存する。いわゆる高速炉では、核分裂から生成された減速されていない中性子が他の原子核と直接相互作用する。熱及び熱外核分裂炉は、エネルギーを減少させ核分裂の確率を高めるための減速材に依拠している。したがって、核分裂炉は、2つの異なる原理、すなわち高速炉と、熱及び熱外原子炉とによって運転することができる。

0004

高速炉において、高エネルギー中性子は、核分裂性物質と直接相互作用して、エネルギー、核分裂生成物、及び高エネルギー中性子を生成する。高速炉は、減速材を持つことに依拠していないため、この特許では考慮されない。

0005

熱及び熱外原子炉において、核分裂によって生成された高エネルギー中性子は、減速材とエネルギーを交換し、最終的に核分裂性物質と相互作用して、エネルギー、核分裂生成物、及びより高エネルギーの中性子を生成する。第2世代及び第3世代の軽水炉LWR)は、このような原子炉の典型的な例であり、商用原子炉一団の主力製品である。水冷式原子炉には、合理的な高い動作温度に達するために冷却水を非常に高い圧力に保たなければならないという事実に固有の欠点がある。このような構造におけるさまざまな故障の結果としての蒸爆発は、原子力産業で最も深刻なインシデントのいくつかをもたらした。減速材として使用される水に対しても同様の欠点が生じる。

0006

核分裂性燃料に関して、どの設計選択が行われたとしても、高エネルギー中性子は、熱及び熱外核分裂炉の減速材と相互作用することにより、減速されなければならない。第2及び第3世代の原子炉の場合、核分裂性物質は、中空管内の金属又は金属酸化物の混合物として、固体の形で核分裂性キャリアに保持される。核分裂性物質は常に固体状態であり、したがって安定している。より新しい第3世代及び第4世代の核分裂炉は、通常、固体のセラミック酸化物燃料に基づいているが、核分裂性物質が、固体で安定しているか(例えばペブルベッド型原子炉)、液体で安定しているか(安定塩炉)、又は液体で循環しているか(溶融塩炉)の新しい設計も含む。

0007

燃料に関連して行われた設計選択に関係なく、適切な減速材物質は、一般に、中性子と核分裂性原子間の相互作用に対して、次の特性を提示する必要がある。
散乱による相互作用の高い確率を提示する必要がある。これは、相互作用間の中性子の短い平均自由行程に相当し、減速材のサイズ炉心に影響する。
・軽量の減速材原子で構成される必要がある。散乱イベントでは、中性子は、エネルギーを減速材に伝達し、減速される。原子が軽いほど、相互作用あたりに伝達されるエネルギーが多くなる。
中性子吸収の低い確率を提示する必要がある。減速材における吸収は、核分裂に利用可能な中性子束を減少させ、物質の放射化の過酷さを増加させる。したがって、通常、減速材での吸収が低いことが望ましい。

0008

理想的な減速材は、多くの追加の特性を提示する必要がある。
動作条件下では液体状態である必要がある。液相の減速材の使用は、個体状態の減速材の使用では得られない冷却の可能性を提供する。また、中性子照射下での寿命を改善し、化学的再処理を可能にする。
高温で動作可能である必要がある。炉心の動作温度が高いと、外側の冷却ループとより多くのエネルギーを交換できる可能性があるため、より高い原子炉効率を持つ可能性を生む。また、より高い温度は、より高いタービン効率つながり、さまざまな産業プロセスのための熱生成を可能にする。
・低い動作圧力許容する必要がある。低い動作圧力は、インシデントに起因するリスクを軽減するために必要な安全装置の複雑さを軽減する。また、構造及び工学への要求を軽減する。
・減速材物質は、世界市場で十分な量で、安定した供給で、予測可能価格レベル入手可能である必要がある。
・使用される材料は、さらなる化学的又は環境的リスクをもたらさない必要がある。

0009

上記の要件は、選択肢水素重水素リチウムベリリウム、及び炭素の軽い元素に制限する一方、これらのうち単一の元素で上記のすべての要件を満たすものはない。

0010

下の表1は、さまざまな先行技術の減速材物質の減速特性をまとめたものである。ζは、高エネルギーの中性子を熱エネルギーベル下げるのに必要な散乱イベントの平均数MFPはcmで測定された弾性散乱の平均自由行程、Σabsはメートルあたりに吸収される中性子の数の測定値である。

0011

0012

上記の表1の情報から、次の結論が導き出される。水(H2O)は、とてもコンパクトな減速材である。重水(D2O)、ベリリウム(Be)、及びグラファイト(C)は、低中性子吸収の観点から非常に優れた減速材である。これは、商用及び研究用原子炉における現在の使用に反映されているため、驚くことではない。さらに、純粋なリチウム(Li)は、大きな減速材サイズが要求されるため、不適切である。純粋なナトリウム(Na)は、実用的な意味で減速しない。化学量論化合物2 7LiF:1 BeF2は、優れた減速材である。酸化マグネシウム(MgO)は、減速しない。MgOは、セラミック材料の例として含まれる。7LiOHは、コンパクトな減速材であり、吸収が低い。

0013

溶融塩炉は、溶融塩に溶解した核分裂性物質の臨界濃度に基づく。溶融塩は、核分裂性元素フッ化物塩を含有する7LiFのベース、及び他の成分を有していてもよい。これは、一般に燃料塩と呼ばれる。MSRは、1950年代及び1960年代にとりわけオークリッジ国立研究所において研究されたが、成功裏に商用化されなかった。MSRには、現在商用利用されているものを含め、他の原子炉の型と比較していくつかの利点がある。MSRは、トリウムから核分裂性233Uを増殖させ、ウラン/プルトニウム原子炉よりもはるかに低いレベルの超ウランアクチニド廃棄物を生成し、高温で動作し、揮発性放射性核分裂生成物の固体燃料棒への蓄積を回避し、従来の原子炉で可能な量よりも大量の核分裂性物質を燃焼させる能力がある。

0014

1950年代及び1960年代に遭遇したいくつかの不利益は、MSRを商用化させなかった。不利益の1つは、開発されたほとんどのタイプのMSRが中性子減速材としてグラファイトを使用していることにある。

0015

グラファイトは六方格子に配置された炭素原子で構成され、少なくとも3つの理由で中性子減速材として使用される。第一に、12u(統一原子質量単位)の質量のを持つ炭素原子は、1uの重さがある中性子と比較して極めて軽い。この結果、衝突する中性子は、炭素原子との各弾性散乱イベントにおいて、かなりの量のエネルギーを失うことができる。さらに、グラファイトは、極めて高密度であり、炭素の散乱断面積許容範囲内にあるため衝突は頻繁である。減速材の密度と減速効率の双方を含むメリット値は、減速能DPであり、




と定義される。ここで、ζは高速中性子熱化するのに必要な散乱イベントの平均数、Nは原子密度、σsは微視的弾性散乱断面積である。グラファイトでは、SDPは、0.060である。SDPは、高いほど良いことに注意が必要である。第二に、天然炭素の微視的吸収断面積は非常に低い。第三に、グラファイトは豊富で、極めて安価で、原子炉で使用するのに好ましい熱的及び構造的特性を有している。

0016

ただし、減速材として、グラファイトには以下を含むいくつかの欠点がある。
‐中性子減速の望ましいレベルを得るには、多量のグラファイトが必要であり、大きな炉心をもたらす。
‐高エネルギー中性子がグラファイトの結晶構造に衝突して損傷を与えるため、固体グラファイトは、中性子照射から損傷を受ける。これは、構造材料腐食とともに、現在の黒鉛減速炉心の制限寿命因子を表している。
‐十分な純度均質性、及び密度の原子炉グレードのグラファイトの製造に関与してかなりの困難があり、したがってコストもかかる。
‐MSRの炉心のグラファイトは、高エネルギーの中性子によって放射化され、半減期が5730年の14Cを生成する。廃棄されたグラファイトは、高レベル核廃棄物としてかなりの期間、保管される必要がある。
‐高温では、グラファイトは空気と接触すると燃焼し、さらに複雑な温度膨張反応係数を有する。これは方向に依存し、グラファイトの照射によって変化する。

0017

純粋に原子炉の物理的な観点からは、ZrHxは、非常に優れた減速材である。ジルコニウム成分は、極めて小さい(トータルの)微視的断面積を有するため、ZrHxの減速特性は、水素原子核を構成する孤立したプロトンによって支配される。原子質量が1uの水素は、入射中性子と交換可能なエネルギーを最大化する。その結果、そしてZrHxの密度が5g/cm3を超えるため、xの値が低くても水素の密度は非常に高くなる。このため、ZrHxは、優れた減速能を示す。例えば、x=1.8の水素分率の場合、ZrHxは、2.91の減速能を有する。MSRにおける減速材としてのZrHxの使用は、近年、US2013/083878(WO 2013/077941 A2)に開示されている。

0018

しかしながら、その優れた減速特性にもかかわらず、ZrHxは、原子炉適用の広範な使用にはたどり着いていない。これは、いくつかの理由による。第一に、ZrHxには、水素含有量と温度の双方に依存する複雑な構造的挙動がある。溶融塩炉の通常の運転空間内の温度にさらされたときに、ZrHxが相変化を経験しない領域は、おおよそx=1.6の小さな領域しかないことは、よく知られている。第二に、ZrHxの水素含有量は、温度にも依存する。したがって、定常状態での動作では、中性子とガンマ線の加熱により減速材内に温度勾配が存在すると、ZrHx内に水素勾配が存在し、その構造的挙動の予測がさらに複雑になる。負荷追従又は偶発的なシナリオによる大きな温度変動の下で、水素は、減速材内で再配置し、表面で放出又は潜在的に吸収され、再びZrHxの水素の量が変化する。

0019

減速材としてのZrHxに関連するさらなる欠点は、以下を含む。
‐ZrHxは、空気の存在下では、高温で燃焼する。
‐ZrHxは、溶融塩と接触すると発熱的に反応し、可燃性水素ガスを放出する可能性がある。
‐ZrHxは、高温で水と接触すると、可燃性の水素及び酸素ガスを生成する。
‐ZrHxを溶融塩から分離するには、i)高い信頼性、ii)低い浸透性、を有し、iii)潜在的に水素ガスの放出よる高い背圧を維持できる、エキゾチック被覆材が要求される。
‐ZrHxは、非常に高価であり、少なくともグラファイトよりも高価である。これは、核グレードジルコニウムを製造する際のジルコニウムとハフニウムのコストのかかる分離プロセスによって部分的に引き起こされており、これは、ハフニウムが大きな中性子捕獲断面積を有しているために必要である。
‐ZrHx減速材内の水素の再配置を最小化するためには、常に温度を制御するための非常に高度な冷却方式が要求される。

0020

したがって、当技術分野では、代替の減速材物質をMSRに提供するという一般的な要求がある。

0021

C.E. Teeter et al.: “The Catalog of nuclear reactor concepts”, Argonne National Library, USA, 1965,(Teeterら)は、1965年まで科学的に調査された多数の異なる溶融塩炉のコンセプトを開示している。減速材としてグラファイト又はZrHxを使用する種々のコンセプトに加えて、Teeterらは、水酸化ナトリウム(NaOH)、7LiOH、及び7LiODを、さまざまな輸送手段、特に飛行機及び潜水艦推進力を対象とした懸濁原子炉、及び循環する減速材を有するすべての複合減速材及び冷却剤として使用することを開示している。なお、移動装置の推進力に使用される原子炉では、しばしば急速な及び/又は突然の動きで移動されており、十分な冷却を提供して炉心の過熱を回避するために減速材の強制循環が必要であることに注意する。Teeterらは、また、減速材としての水酸化物、特にNaOHに関するいくつかの落胆的な問題についても言及している。ウラン化合物をNaOHに溶解することは非常に難しく、水酸化物は非常に小さい変換率の原因となるため、小さな臨界質量が要求される場合、内部増殖は実行不可能であると述べられている。最も重要なことには、水酸化物と重水酸化物、特にNaODが非常に腐食性であり、特に循環する水酸化物と重水酸化物、特にNaODの置換が腐食の問題につながることも述べられている。

0022

G.P. Smith: “Corrosion of materials in fused hydroxides”, Oak Ridge National Laboratory, USA, 1956,(G.P. Smith)も、水酸化物、特にNaOHで直面する腐食の問題を強調しており、それらはヒドロキシルイオン及び/又はアルカリ金属イオンによって引き起こされると言及している。また、G.P. Smithは、不純物が存在する場合、腐食は特に大きいと述べている。さらに、G.P. Smithは、少なくとも31種類の元素金属と65種類の合金について研究が行われており、すべてが溶融水酸化物にさらされると腐食を示すと述べている。

0023

したがって、これら2つの文書は、金属水酸化物をMSRにおける中性子減速材として使用することに反対して直接教えている。言い換えれば、当技術分野において、核分裂反応器、特に溶融塩炉の減速材として、一般に金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムと水酸化リチウムを使用しないように教示する明らかな偏見がある。

0024

また、1964年6月17日に公開されたGB 960,720 Aは、高温(1000−2000℃)でも固体のままである中性子減速材として使用可能な多くのセラミック物質を開示している。その物質の中で、CaZrO2H1.8、LiZr0.2O0.5H2/3、CeO3/4H1.5がGB 960,720 Aで提案されている。これらの物質はすべて、水素化された金属酸化物である。つまり、水素が結晶格子に吸収されている。しかしながら、固体の減速材は、このような減速材の中性子放射化から生じる廃棄物の懸念と同様、中性子照射からの構造劣化のためMSRには好ましくない。また、固体減速材冷却効果は低いか、又は無視できるほど小さいため、別の冷却システムの必要性を引き起こし、今度は大きな炉心をもたらす。

0025

MSRが商用化されたことがないことの一因となる2番目の欠点は、不溶性の核分裂生成物がMSRのポンプ熱交換器を詰まらせることにある。したがって、溶融塩炉の性能が最も引き出された設計は、燃料塩から核分裂生成物を継続的に除去するための付属再処理プラントを要求する。これにより、MSRは複雑で高価になり、広範囲に及ぶ開発作業が必要になる。

0026

3番目の欠点は、MSRが商用化されたことがないことの一因となる欠点の中でおそらく最も決定的なものであり、溶融塩が非常に腐食性であることである。これは、耐食性金属合金の開発に関する広範な研究を引き起こした。ニッケルベース超合金など、いくつかの適切な金属合金が実際に開発されているが、これらの合金は非常に高価であり、それにもかかわらず、通常は長期間後に腐食が発生する。

0027

炭素及び/又は炭化物に基づく新しい複合材料、例えば炭化ケイ素は、原理的には、溶融塩に耐える耐薬品性を備えているが、そのような材料から複雑な構造を構築することは非常に困難であり、非常に高価である。

0028

少なくとも上記の理由により、1960年代後半には、ナトリウム塩高速炉又は今日一般的に使用されているタイプの伝統的な核分裂炉を支持して、溶融塩炉の研究は一般に放棄された。

0029

それ以来、核分裂炉の減速材としてのグラファイトと水への排他的な集中があった。

0030

最近、MSRは、新たな注目を享受している。ただし、これらの新しい試みにおいて、減速材に関しては、減速材としての水素化物、特にZrHxの使用が提案されている上記のUS 2013/083878を除き、ほとんど独占的にグラファイトのみに焦点が当てられている。

0031

MSRのさらなる例は、US 2015/243376及びUS 2016/005497に開示されている。US 2015/243376は、溶融塩と燃料との結合体を収容するベッセルを備える炉心原子炉容器を有するモジュール式核分裂炉を開示している。ベッセルハウジングは、ベッセルハウジングの内部を覆う保護層を含む。保護層は、グラファイト又はコーティングされたセラミック材料を含んでもよい。

0032

US 2016/005497は、各々が1つ以上の核分裂性同位体の溶融塩を含む中空燃料管の配列を備えた炉心を有する核分裂炉を開示している。燃料管の配列は、冷却液プールに浸されている。各燃料管内の溶融塩から管の外側への熱伝達は、自然対流機械的攪拌振動溶融塩の流れ、又は溶融塩の沸騰によって達成される。耐食合金、例えばニッケル合金は、冷却剤塩にジルコニウム金属のサンプルを含めることが提唱されているが、一般的に腐食からの保護に関して信頼されている。

0033

したがって、今日まで、グラファイト及びZrHxだけでなく、水の使用に関する欠点を軽減する代替の減速材物質をMSRに提供するという当技術分野の要望が残っている。減速材としての水には欠点があり、最も重要なことには、燃料の塩を溶融状態に保つのに必要な温度と比較して非常に低い融点である。

0034

米国特許出願公開第2013/083878号明細書
米国特許出願公開第2015/243376号明細書
米国特許出願公開第2016/005497号明細書

先行技術

0035

C.E. Teeter et al.: “The Catalog of nuclear reactor concepts”, Argonne National Library, USA, 1965.
G.P. Smith: “Corrosion of materials in fused hydroxides”, Oak Ridge National Laboratory, USA, 1956.

発明が解決しようとする課題

0036

したがって、本発明の目的は、上述の問題を軽減し、小規模原子炉の構築を可能にする溶融塩炉(MSR)の減速材を提供することである。

0037

本発明のさらなる目的は、溶融塩炉における腐食に関する上述の問題を同時に解決することである。

課題を解決するための手段

0038

本発明の第1の態様によれば、これら及び他の目的は、核分裂によってエネルギーを生成するように適合された装置によって達成され、この装置は、炉心容器材料からなる炉心容器を備え、炉心容器は、内側管材料からなる内側管囲み、内側管及び/又は炉心容器は、入口と出口とを有する。この装置は、さらに、核分裂性材料を含む溶融燃料塩と、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを含む溶融減速材塩と、内側管材料、又は内側管材料及び炉心容器材料の還元電位よりも大きい還元電位を有する酸化還元元素と、を備えている。溶融減速材塩は、炉心容器内に配置され、溶融燃料塩は、内側管内に配置されている。あるいは、溶融燃料塩は、炉心容器内に配置され、溶融減速材塩は、内側管内に配置されている。減速材物質は、炉心で生じる核分裂反応プロセスで生成される核分裂中性子を減速するように配置及び適合され、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを含む。したがって、減速材は、金属水酸化物及び/又は金属重水素化物であり得る。本発明の文脈において、「水酸化物」又は「重水酸化物」が単独で言及される場合、特に化学反応の文脈において、「水酸化物及び/又は重水酸化物」と解釈されるように、2つの用語は交換可能に使用され得る。

0039

一実施形態において、少なくとも1つの金属水酸化物及び/又は少なくとも1つの金属重水素化物は、アルカリ金属アルカリ土類金属、又はアルカリ金属とアルカリ土類金属の組み合わせを含む金属の群から選択される金属を含む。関連するアルカリ金属は、リチウム(Li)、特に7Li、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)を含む。同様に、関連するアルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)を含む。本発明で減速材として使用される水酸化物は液体、すなわち溶融塩であり、したがって中性子照射による構造的損傷を被らない。水酸化物、特にNaOHの場合、中性子捕獲から生成される同位体のほとんどは、安定(例えば2H、又は「D」、17Oなど)か、急速に崩壊して安定した形(例えば24Naなど)である。したがって、廃炉措置に関連する懸念はない。

0040

また、水酸化物、特にNaOHは、沸点まで安定であり、他の化合物に分解しない。

0041

さらに、水酸化物の構造的挙動は、特に液体の場合、(固体の)ZrHxの構造的挙動よりもはるかに予測可能である。相変化は固体NaOH内で発生する場合があるが、溶融NaOHでは発生しない。最後に、水酸化物は安価に製造でき、複雑な又は非常に高度な冷却方式を必要としない。

0042

さらに、特にグラファイトとZrHxの上記の欠点を念頭に置いて、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを含む減速材の提供には、さらに次の利点がある:散乱は、主に比較的高密度で分布する水素原子で発生するため、水酸化物はグラファイトよりも効率的に減速する。例えば、NaOHは、0.67の減速能を示し、これはグラファイトの約10倍以上である。したがって、水酸化物ベースの減速材を使用したMSRは、グラファイト減速材よりもコンパクトに構築でき、炉心の全体サイズを縮小できる。同様の所見は、他の水酸化物、特に金属がアルカリ金属又はアルカリ土類金属である他の水酸化物にも関連している。

0043

したがって、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせを含む減速材を提供することにより、従来技術の減速材物質に関連する問題が軽減され、製造が簡単で安価で、非常にコンパクトに作ることができ、したがって小規模展開の新たな可能性を開き、MSRを解体するときに廃棄する必要のある材料が少なくなる、MSRが提供される。

0044

減速材物質は、さらに酸化還元元素を含む。特に、溶融減速材塩は、内側管材料と接触しており、酸化還元元素も、例えば直接又は溶融減速材塩を介して、内側管材料と接触していてもよい。酸化還元元素は、炉心容器材料と接触していてもよい。酸化還元元素は、必要に応じて、内側管材料及び/又は炉心容器材料よりも大きな還元電位を持つ。還元電位の決定は、当業者に周知である。しかしながら、本発明者らは、溶融塩における、すなわち本発明に関連する条件下での還元電位は、標準電極電位から容易に推定できることを発見した。例えば、標準電極電位は、298.15Kの温度、各水溶種又は水銀アマルガム中の種に対して1mol/lの有効濃度気体試薬に対して101.325kPa(絶対)の分圧(1atm、1.01325bar)、及び各純粋な固体、純粋な液体、又は水(溶媒)に対する統一活量で、推定することができる。

0045

本発明者らはさらに、還元電位が、酸化還元元素と、内側管及び/又は炉心容器材料の材料との電気陰性度からも推定できることを発見した。例えば、特定の実施形態では、内側管材料は、金属を含み、酸化還元元素は、内側管材料の金属及び/又は炉心容器材料金属の電気陰性度よりも低いポーリングスケールによる電気陰性度を有する金属である。この実施形態の文脈では、酸化還元元素は、一般に、その金属形態の、すなわち酸化レベル0の金属である。さらに、本発明の文脈では、酸化還元元素のそれぞれの値と、内側管及び/又は炉心容器の材料との関係の十分な考慮とともに、用語「還元電位」及び「電気陰性度」は、互いに容易に置き換えることができる。一般に、少なくとも内側管材料は、溶融減速材塩と接触し、この実施形態では、内側管材料は、金属、例えば金属合金を含む、例を挙げると、金属、例えば金属合金から作られる。内側管材料が金属を「含む」場合、内側管は、一般に、必要に応じて他の金属又は材料の部分を含む金属から作られると理解されるべきである。この実施形態の内側管材料が合金を備える場合、合金の電気陰性度は、合金が基にする金属、すなわち、合金の少なくとも50%(w/w)を構成する金属の電気陰性度であると理解されるべきである。しかしながら、合金は、また、他の金属、例えば合金の卑金属よりも低い電気陰性度を有する金属を含んでもよい。例えば、合金は、銅、コバルトクロム、鉄、マンガンなどの含有量を有するニッケルを基にしていてもよい。同様に、酸化還元元素は、単一元素に限定されず、金属の混合物であってもよい。

0046

酸化還元元素は、金属元素に限定されないが、酸化還元元素は、固体材料、又は溶融塩、例えば溶融減速塩と接触、直接接触、又は物理的に接触している材料、の還元電位より大きい還元電位を提供する必要がある。任意の適切な元素又は材料が酸化還元元素として使用されてもよい。特定の実施形態において、酸化還元元素は、Sr、Ca、Li、Rb、K、Ba、Li2C2、Na、Mg、Th、U、Be、Al又はZr、又はそれらの組み合わせのいずれか1つを備えるか、又はそれである。本発明の文脈において、元素がそれらの1つ又は2つの文字記号によって単独で記載される場合、それらは酸化レベル0にあると一般に理解されるべきである。したがって、金属が酸化還元元素として使用されるとき、それはその金属形態にあり、すなわち酸化レベルゼロであると理解されるべきである。ただし、元素が特定の同位体、例えば232Th、233U、として示されている場合、これらは任意の酸化レベルであり得、特にそれらは塩の一部であり得る。

0047

別の態様において、本発明は、核分裂性物質を含む炉心で生じる核分裂反応プロセスで生成された核分裂中性子を減速するために、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素化物、又はそれらの組み合わせ、及びSr、Ca、Li、Rb、K、Ba、Li2C2、Na、Mg、Th、U、Be、Al、又はZr、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される酸化還元元素を含む溶融塩を使用することに関する。さらに別の態様では、本発明は、金属部分を有し核分裂性物質を含む炉心で生じる核分裂反応プロセスで生成された核分裂中性子を減速するために、少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水素酸化物、又はそれらの組み合わせ、及び酸化還元元素、を含む溶融塩を使用すること関する。ここで、酸化還元元素は、ポーリングスケールによる電気陰性度を有する金属であり、炉心の金属部分の電気陰性度よりも低い。

0048

さらなる態様において、本発明は、本発明の装置における核分裂プロセスを制御する方法に関する。したがって、この方法は、本発明に係る装置を提供するステップを備え、さらに、
アルカリ金属及び核分裂性元素のフッ化物を備える溶融燃料塩を内側管内に注入するステップと、
少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水酸化物、又はそれらの組み合わせを備える溶融減速材塩と、内側菅材料、又は内側管材料及び炉心容器材料の還元電位よりも大きい還元電位を有する酸化還元元素とを、炉心容器内に注入するステップと、
熱交換ループ内で循環する溶融燃料塩から熱を除去するための熱交換ループを画定するために、内側菅の入口及び出口と流体連通している熱交換器を提供するステップと、
内側管内の燃料塩の温度を制御するために、熱交換ループ内で燃料塩を循環させるステップと
を備えてよい。溶融燃料塩が内側管内に注入される場合、内側菅は、入口及び出口を有する必要がある。

0049

別の態様において、この方法はさらに、
少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水酸化物、又はそれらの組み合わせを備える溶融減速材塩と、内側菅材料の還元電位よりも大きい還元電位を有する酸化還元元素とを内側管内に注入するステップと、
アルカリ金属のフッ化物を備える溶融燃料塩と、核分裂性元素とを炉心容器内に注入するステップと、
熱交換ループ内で循環する溶融塩から熱を除去するための熱交換ループを画定するために、入口及び出口と流体連通している熱交換器を提供するステップと、
炉心容器内の燃料塩の温度を制御するために、熱交換ループ内で溶融塩を循環させるステップと
を備える。この態様は、本発明の装置の任意の実施形態を利用してよい。特に、内側菅は、入口及び出口を必要としないので、減速材塩が内側管内で安定する。酸化還元元素が内側菅材料の表面、又は内側菅材料及び炉心容器材料の表面に存在する犠牲材料である本発明の装置において、本発明のいずれかの方法を実行することも可能であり、この場合、酸化還元元素が装置内に存在するため、溶融減速材塩は、懸濁液として、又は溶解又は溶融形態で酸化還元元素を含む必要がない。ただし、装置は、懸濁液として、又は融解又は溶融形態で存在する酸化還元元素を有する溶融減速材塩を適用するとともに、表面に配置された犠牲材料として酸化還元元素を有することも可能である。

0050

2つの方法態様のいずれかの実施形態は一般に、本発明の装置の任意の実施形態において起こり得る。同様に、本発明の使用態様の任意の実施形態は、本発明の装置の任意の実施形態において実行され得る。ただし、使用態様は、本発明の装置に限定されず、この使用は、所望に応じて任意の適当な原子炉において実行されてよい。

0051

MSRは通常、溶融塩より上、例えば溶融燃料塩より上及び/又は溶融減速材塩より上に、カバーガスを含む。カバーガスは、化学的に不活性である必要があり、好適なカバーガスは、貴ガス、例えばアルゴンを含むが、カバーガスは、例えばH2O、H2、HFなど、融解物の還元電位及び/又はオキソ酸性度を制御する化学種を含んでよい。例えば、カバーガスの組成は、対応する実施形態及び態様における溶融減速材塩及び/又は溶融燃料塩を通して、ガス、例えばH2Oを泡立てることと共に、修正及び制御され得る。

0052

本発明の装置は、溶融燃料塩及び溶融減速材塩を有する。ただし、装置は、様々な機能を有するさらなる溶融塩も備えてよい。例えば装置は、溶融冷却剤塩を備えてよい。本発明において、任意の燃料塩組成が用いられ得る。例えば、溶融燃料塩は、任意の核分裂可能元素、例えば核分裂性アクチノイド、又は核分裂性元素に変換され得る元素、例えばトリウムを備えてよい。好適な実施形態において、燃料塩は、例えばリチウム、トリウムなどのアルカリ金属のフッ化物の基材と、核分裂性元素、例えば核分裂性元素のフッ化物塩の及びトリウム、及び任意選択的に他の成分を含有する7LiFとを有する。燃料塩は好適には、共晶組成、例えば、78モル%の7LiF、及びLiFAnFn組成のアクチノイド塩で補充された22モル%のThF4の基材を有し、ここで、Anは核分裂性アクチノイドであり、nは3又は4である。

0053

燃料塩が、燃料含有率に関して説明され得る。本発明の文脈において、「燃料含有率」は、核分裂性アクチノイド分率の「cmol%」単位で表されるカチオンモル分率、すなわち、燃料塩のアクチノイド全ての和で割算した核分裂性アクチノイド、例えば233U、235U、239PU、及び241PUの和である。したがって燃料塩は、




という式によって表されてよく、ここで、Naは任意のアルカリ金属を表し、Anは1又は複数のアクチノイドを表し、a=22%かつb=78%である場合、この混合物は共晶である。特に、AnF4のAnは、トリウム及び核分裂性元素の両方を備えてよく、ここで核分裂性元素、特に233U、235U、239PU、及び241PUのモル含有率が燃料含有率であり、好適には、アクチノイド、すなわちAnの2cmol%〜10cmol%の範囲内である。

0054

燃料塩は好適には、トリウムを備え、核分裂性アクチノイド、例えば233U、235U、及び239PUの核分裂中に生成された中性子は、非核分裂性232Thを核分裂性233Uに変換する。「燃料含有率」という用語が用いられる場合、これは一般に、核分裂反応が開始した時の組成に言及する。酸化還元元素によってもたらされる改善された耐食性は、装置のより長い寿命を可能にし、これにより、核分裂性トリウムベースの原子炉が本発明によって提供される。耐食性がない場合、溶融塩は、生成された233Uに基づく動作が可能であるより先に、装置を劣化させることが予想される。

0055

装置の燃料塩は、核分裂可能物質を備える。本発明の文脈において、「核分裂可能物質」は、熱中性子からの核分裂を経得る物質、例えば「核分裂性」物質、又は、例えば中性子の吸収によって、核分裂性物質に変換され得る物質である。したがって、例えば235U、239PU、及び232Thは、核分裂可能物質であり、233U、235U、239PU及び233Uは、核分裂性物質である。

0056

本発明の装置は、溶融減速材塩内に減速材物質を備える。同様に、本発明は、減速材とともに溶融塩を使用することに関し、これは、本発明の方法においても用いられる。減速材物質は、金属水酸化物、金属重水酸化物、又は金属水酸化物と金属重水酸化物との組み合わせであり、又はこれを備える。減速材は、本発明の装置内に注入される際に適した任意の形態を有してよい。例えば減速材は溶融塩であってよく、又は減速材は固体状態であってよい。溶融水酸化物及び重水酸化物塩は、極めて腐食性が高く、そうである限り、それらを核分裂反応における減速材として使用することは実用的ではない。酸化還元電位を操作し、溶融塩によって招かれる腐食を低減するために、溶融塩に金属成分を添加することが知られている。例えば、MSRの文脈において、酸化還元電位を低くし、腐食をほぼなくすために、溶融フッ素−リチウム−ベリリウム(FLiBe)に金属ベリリウムが添加された。ただし、溶融塩内の水酸化物は、大抵の金属と反応し、反応(A)に従って水酸化物をH2に低減することが確信される。

0057

生成された水素は溶融塩から拡散するので、水素は消失し、その結果、緩和効果も失われる。ニッケル、コバルト、銅、及びそれらの合金は、さらなる追加の反応に関与し、又はそれらをもたらすことが観察された(Williams et al., 1956, Naval Research Laboratory, 78: 5150-5155)。

0058

反応(B)、反応(C)、及び反応(D)は、ニッケルベースの合金が、溶融NaOHによる劣化に対しある程度の固有耐性を有する理由を説明するものとして解釈された。しかし、ニッケル、銅、又はコバルト以外の金属の添加によるさらなる保護は、単に反応(A)に従って水素ガスの生成をもたらすのみであることが予想される。したがって、(金属)水酸化物又は重水酸化物の溶融塩に金属を添加することによって、溶融塩の緩和効果が失われることが予想される。本発明者らは、驚くべきことに、上で定義したように溶融減速材塩が酸化還元元素を有する場合、酸化還元元素は、緩和効果を失わせることなく、容器材料に所望の腐食からの保護を提供することを発見した。本発明者らは、理論に縛られることなく、例えば金属水酸化物及び酸化還元元素の合計の最大10%(w/w)の酸化還元元素量で、酸化還元元素を添加すると、拡散による水素の消失を有利に防ぐ、反応(A)〜反応(D)における平衡の形成がもたらされることを確信する。本発明者らはさらに、生成された任意のH2は、それぞれの容器材料に存在する金属との水素化物も生成し、緩和効果の保持をさらにもたらすことを確信する。この効果は特に、存在する任意の金属にH2が「押し込まれる」と考えられる、高温の溶融塩で促進されることが確信される。本発明者らは、水素化物が、炉心容器材料、内側菅材料、又は炉心容器材料及び内側菅材料の両方のいずれかにおいて生じ得ることを確信する。特に、溶融減速材塩は、内側菅内又は内側菅が配置された炉心容器内のいずれかに存在するので、水素化物は内側菅材料内に存在してよく、ここから緩和効果がもたらされ得る。したがって本発明は、核分裂プロセスを制御するために、水酸化物及び/又は重水酸化物に基づく減速材塩を可能にする。酸化還元元素を添加する効果は、特に、内側菅材料及び炉心容器材料が、ニッケル、銅、コバルト、及びそれらの混合物に基づく合金を備える、例えばそれで作られた場合に顕著であり、これは、これらの金属が反応(B)、反応(C)、及び反応(D)を促進するためである。したがって、好適な実施形態において、内側菅材料は、及び任意選択的に炉心容器材料もまた、ニッケルベースの合金、例えばハステロイである。本発明の文脈において、ニッケルベースの合金は、50%以上のニッケルを有する合金である。これは、コバルト及び銅ベースの合金の場合にも当てはまる

0059

特定の実施形態において、内側菅材料と酸化還元元素とのポーリング電気陰性度の差は、0.8〜1.2の範囲内であり、例えば、内側菅材料はニッケルに基づき、酸化還元元素はアルカリ金属又はアルカリ土類金属に基づく。別の実施形態において、内側菅材料と酸化還元元素とのポーリング電気陰性度の差は、0.3〜0.8の範囲内である。また別の実施形態において、内側菅材料と酸化還元元素とのポーリング電気陰性度の差は、0.3以下であり、例えば内側菅材料はニッケルに基づき、酸化還元元素は遷移金属である。本発明者らは、驚くべきことに、ポーリング電気陰性度における差が低い、例えば0.3以下である場合、これは腐食保護を提供するために十分であり、さらに、より大きい電気陰性度の差が用いられる場合と比べて、溶融減速材塩内に生成される全体としてより少ないH2を有利にもたらすことを観察した。

0060

本発明は、溶融減速材塩において酸化還元元素を用いることに限定されるものではなく、溶融燃料塩もまた酸化還元元素を備えてよい。溶融減速材塩に関して説明される任意の酸化還元元素は、溶融燃料塩において用いられてよい。本発明の装置の炉心はさらに、上述したような酸化還元元素を備える。酸化還元元素は、装置とともに用いられる任意の溶融塩、例えば燃料塩、溶融塩としての減速材、又は存在する場合、冷却剤塩に存在してよい。2より多い数の溶融塩が用いられる場合、各溶融塩は、同じ又は異なる酸化還元元素を有してよい。

0061

本発明者らは、水酸化物又は重水酸化物に基づく減速材塩が最大10%(w/w)の酸化還元元素を備える場合、水酸化物又は重水酸化物の緩和効果が保持され得ることを観察した(例えば図6を参照)。したがって、特定の実施形態において、酸化還元元素の濃度は、酸化還元元素を含む溶融減速材塩の総重量の1g/kg〜100g/kgの範囲内である。濃度が100g/kgを超える場合、十分な緩和効果が得られず、すなわち、水素/重水素の量が極端に低い。特に、濃度が100g/kgを超える場合、水素が酸化還元元素と反応し、残りの塩に対する酸化還元元素の濃度を減少させる。ただし、酸化還元元素の量が減少しても、緩和効果が再び得られることはない。

0062

核分裂原子炉は、核分裂及び放射性崩壊に起因する単位体積時間当たりの炉心内燃料塩において生成される熱の(平均)量に言及するパワー密度(P)に関して説明され得る。原子炉内中性子密度が1つの世代から次の世代まで安定を保つ(失われた数と同じ数の新たな中性子を生成する)場合、分裂連鎖反応自己持続型であり、原子炉の状態は「臨界」と称される。MSRにおける熱生成は連鎖反応駆動型であり、炉心に固体燃料は存在しないため、パワー密度における理論上の上限は非常に高く、通常動作中に望まれるものよりも大幅に高い。したがって、パワー密度は、設計特徴ではなく設計選択肢であると考えられ得る。炉心パワー密度は、燃料塩の循環時間滞留分率、物理特性に依存し、最終的に、入口/出口温度差に依存する。MSRにおける燃料塩パワー密度の性能指数は、




によって求められ、ここで、fは燃料滞留時間分率であり、τcは循環時間であり、cfuel及びpfuelは、それぞれ溶融燃料塩の比熱容量及び密度であり、ΔTは、入口温度と出口温度との差である。

0063

通則として、パワー密度が高いほど、小さな炉心容積が可能である。ただし、所与パワー出力及び炉心容積に関して、崩壊生成物による残留熱生成ならびに原子炉の寿命を縮める炉心への放射線損傷を低減するために、パワー密度は可能な限り小さく保たれる必要がある。したがって、特定の燃料パワー密度への決定は、炉心容積を最小限にすることと、原子炉の制御性及び寿命を最大限にすることとのトレードオフである。

0064

炉心容積は、原子炉形状因子Fに依存する。形状因子は、炉心容積のうちのどの程度が燃料を構成するか、それによって炉心容積のうちのどの程度が熱生成に寄与するかの基準である。熱原子炉において、形状因子は、減速材の有効性の性能指数である。一般に、緩和が良好であるほど形状因子は小さく、したがって、本発明は、酸化還元元素によって付与された腐食保護により、水酸化物/重水酸化物ベースの減速材をMSR内で利用可能にするので、例えばグラファイトなどの他の減速材を用いるMSRと比べて、形状因子を大幅に改善することが可能である。以下では、一般の熱原子炉に関する形状因子を、全体炉心容積と炉心内燃料塩体積との比、




として定義し、ここで、Vcoreは炉心容器の全容積であり、Vcore,fuelは燃料の体積、例えば、溶融燃料塩の位置に依存して、内側菅の容積、又は炉心容器の容積引く内側菅の容積である。したがって、炉心内容積減速材対燃料比は、R=F−1(クラッド材を考慮しない)を通して形状因子に関連する。一実施形態において、円筒形であってよい炉心容器が溶融減速材塩を包含し、溶融燃料塩は、例えば図3に示すように亀甲パターンに配置された、この実施形態において「燃料ピン」と称される管を備える内側菅内に包含され、形状因子Fは、




に従って推定することができ、ここで、1は、隣接ピン間の距離の半分であり、δは、燃料ピンのクラッド材厚さ、すなわち内側菅材料の厚さであり、rpinは、燃料ピンの半径である。

0065

炉心の(燃料ブランケット及び遮蔽物を含まない)全容積は、一般のMSRに有効な以下のメリット値、




によって求められ、ここで、fは燃料滞留時間分率であり、τcは循環時間であり、csalt及びpsaltは、それぞれ溶融燃料塩の比熱容量及び密度である。したがって、形状因子が小さいほど、所与のパワー密度及びパワーに関する炉心体積が小さい。よって、本発明の装置は、水酸化物/重水酸化物を減速材として用いることで大幅に小さい形状因子が利用可能であるため、従来技術のMSRと比べて、高いパワーを維持しながら、小さく作られ得る。これは、酸化還元元素が用いられる場合、又は溶融塩に電流印加される場合にも当てはまる。

0066

燃料塩及び減速材は一般に、互いに分離しているが、それらが互いに混合され得ることも考えられる。一般に、溶融塩、例えば燃料塩及び/又は減速材物質は、容器に包含され、例えば封入される。例えば減速材は、炉心容器内又は内側菅内に存在してよい。いずれの容器に関しても、任意の適当な材料が選択され得る。ただし、炉心容器材料及び/又は内側菅材料は、金属を備え、又は金属性であることが好ましい。例えば一実施形態において、装置は、例えばハステロイなどのニッケルベースの合金といった1又は複数の耐食性金属又は合金で作られた炉心容器を有する。一般に、装置の任意の材料は、耐食性金属、例えばハステロイで作られ得る。同じ合金が、内側菅にも同等に関連する。酸化還元元素を有する溶融減速材塩に面する容器の金属部分は、上述した水素化物ベースの効果に貢献することが確信されており、金属は、容器のための材料として好適である。

0067

腐食保護は、溶融塩、例えば溶融減速材塩及び/又は溶融燃料塩に、電流、例えば直流電流又は交流電流を印加することによって得られ得ることも考えられる。例えば、内側菅材料及び/又は炉心容器材料は金属を備えてよく、又は金属性であってよく、内側菅材料がアノードとして用いられ、炉心容器材料がカソードとして用いられてよく、逆も然りである。また、溶融塩に金属アノード及びカソードを挿入することも可能である。そのようなアノードは、例えば、金又は白金で作られ、又はコーティングされ得るが、他の金属も考えられる。

0068

一般に、核分裂原子炉内の減速材は、通常、例えば溶融塩としての核分裂性物質よりも大きい体積が必要とされ、さらに、核分裂性物質、例えば溶融燃料塩は、減速材が核分裂プロセスを維持、すなわち緩和するために、減速材内で可能な限り均一に分布する必要がある。これはさらに、溶融減速材塩が溶融燃料塩と混合されない限り、溶融減速材塩は必然的に、それを封入する容器との大きな接触面を有することを意味する。大きな接触面は、水酸化物又は重水酸化物によって容器材料の腐食を増加させる。しかし、溶融減速材塩に酸化還元元素を添加することで腐食の影響は低減され、その結果もたらされる大きな表面積可用性は、上述した水素化物保持効果を最大限にする。

0069

一実施形態において、酸化還元元素はアルカリ金属である。アルカリ金属は、溶融塩内で必然的に融解し、また溶解してもよく、その結果、酸化還元元素のより良い混合を確実にする。酸化還元元素が減速材塩に効率的に混合されるので、改善された混合は、腐食保護において有利である。特定の実施形態において、減速材物質は、アルカリ酸化物又は重水酸化物塩であり、酸化還元元素は、同じアルカリ金属である。例えば、減速材がNaOH/NaODであり酸化還元元素がNa、又は、減速材がKOH/KODであり酸化還元元素がKなどであってよい。様々なアルカリ金属を含む金属水酸化物/重水酸化物の混合物も可能である。減速材塩が、特定の金属イオン、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムを含む場合、金属形態である、すなわち酸化還元元素としての特定の金属は、酸化還元元素としての機能を保持しながら、有利に溶融塩に溶解し得る。その結果、より良い混合が確実である。

0070

酸化還元元素は溶融減速材塩内に分布してよく、又は、酸化還元元素は内側菅材料及び/又は炉心容器材料の表面に付着し、又はその一部であってよい。したがって、酸化還元元素は、減速材塩の融点よりも低い融点を有してよく、例えば酸化還元元素はアルカリ金属であってよく、この酸化還元元素は、溶融減速材塩内で溶融、例えば溶解する。酸化還元元素は、溶融塩の温度、例えば融点よりも高い融点を有してもよく、特定の物質の懸濁液として溶融塩内に存在してよい。例えば、粒子は、0.1mm〜10mmの範囲内のサイズを有してよい。溶融塩内の特定の物質の懸濁液として、又は溶融塩内で溶融又は溶解した物質として用いられる酸化還元元素は、酸化還元元素を含む溶融減速材塩の1g/kg溶融塩〜100g/kg溶融塩の範囲内の量だけ存在してよい。特定の酸化還元元素は、溶融塩内の酸化還元元素が混合され、その結果、腐食から保護される表面に到達することを可能にするため、有利である。さらに、追加の酸化還元元素の添加は、酸化還元元素が特定の形態である場合、単純化される。酸化還元元素が0.1mm〜10mmの範囲内、特に0.5mm〜2mmの範囲内のサイズの粒子を備える場合、酸化還元元素粒子は、反応(A)〜反応(D)に従う反応を制御するために最適な溶融減速材塩との接触表面積をもたらし、H2生成を最小限にしながら十分な腐食保護をもたらす。特定の実施形態において、酸化還元元素は、溶融減速材塩、例えばアルカリ土類金属、遷移金属、ランタニド、及び/又はアクチノイドよりも高い融点を有する物質として存在し、酸化還元元素を含む溶融減速材塩の総重量の1g/kg〜100g/kgの範囲内の濃度で、0.1mm〜10mmの範囲内、特に0.5mm〜2mmの範囲内のサイズを有する粒子として存在する。さらなる特定の実施形態において、この酸化還元元素は、ニッケルベースの合金に基づく内側菅材料とともに用いられる。

0071

本発明の装置の一実施形態において、酸化還元元素は、表面に付着し、又は表面の一部である。これは一般に、犠牲材料と称される。ただし、犠牲材料は、犠牲アノード又はガルバニックカソード防食系とも称され得る。本発明の文脈において、「犠牲材料」、「犠牲アノード」、及び「ガルバニックカソード防食系」という用語は、交換可能に使用されてよく、一般に、材料、例えば内側菅材料又は炉心容器材料の表面に配置され、それぞれの材料に溶融塩からの腐食保護をもたらす固体構造を表す。これらの実施形態において、酸化還元元素は、溶融減速材塩の温度を超える融点を有する。したがって、酸化還元元素は、Sr、Ca、Ba、Li2C2、Mg、Th、U、Be、Al、又はZrのいずれか1つ、又はこれらの組み合わせを備えてよく、又はそれらであってよい。犠牲材料、犠牲アノード、又はガルバニックカソード防食系は、例えば保護される表面に位置するブロック又はシートなどのように、所望に応じて任意の形状を有してよい。ブロック又はシートの厚さは、通常、最大10mm又はそれ以上であってよい。特定の実施形態において、溶融炭酸塩に面する内側菅材料又は炉心容器材料の表面は、面積の10%〜90%の範囲内の表面部分にわたり酸化還元元素を備える。酸化還元元素は、通常、0.5mm〜5mmの範囲内の厚さを有する。

0072

酸化還元元素が犠牲材料、犠牲アノード、又はガルバニックカソード防食系である場合、酸化還元元素の質量は限定されず、金属水酸化物及び酸化還元元素の結合質量のより高い割合を構成してよい。ただし、犠牲材料、犠牲アノード、又はガルバニックカソード防食系としての酸化還元元素の体積分率は、溶融減速材塩と酸化還元元素との結合体積の1%(V/V)〜20%(V/V)の範囲内であることが好ましい。

0073

犠牲材料及び犠牲アノードは、炉心内で限られた量の空間しか占めず、単純で、非常に安価かつ交換が非常に容易であるという利点を有する。ガルバニックカソード防食系は、そのようなシステムのほとんど又は全ての元素が炉心の外側に位置し得るため、犠牲素子と比べて、炉心内でさらに小さな空間量しか占めないという追加の利点を有する。

0074

酸化還元元素は、溶融塩を引き付け、溶融塩と化学反応することにより、保護される材料に先んじて酸化還元元素の腐食をもたらし、その結果、他の元素、特に炉心内で溶融塩と接触している元素を腐食から保護する。さらに、そのような防食系は、非常に小型の炉心構造を有するMSRを提供することを可能にし続けるように、炉心の寸法に適合する寸法であってよい。

0075

酸化還元元素は、保護される材料に先んじて劣化し、例えば反応(A)〜反応(D)に貢献するため、徐々に使い果たされ得る。したがって、状況に応じて溶融燃料塩からの保護も望まれる場合、酸化還元元素は、溶融塩の金属成分、例えば金属水酸化物又は金属重水酸化物の金属成分、又は燃料塩の金属成分と同じ金属であることが好ましい。金属成分は、金属部分と称されてもよく、2つの用語は交換可能に使用され得る。理解すべき点として、これらの金属成分は、酸化形態、例えば塩形態である。これにより、酸化還元元素の劣化によって塩にさらなる元素が添加されることがないため、それぞれの塩の後続処理が単純化される。

0076

溶融水酸化物は、部分的に水と酸素とに分離し、これらの種の相対濃度は、融解物の「オキソ酸性度」を定義する。オキソ酸性度の概念は、水がヒドロニウムイオン水酸化物イオンとに分離する、水溶液内の酸性度と類似している。

0077

融解物内の水の濃度が高いほど、そのオキソ酸性度は高い。水におけるpHスケールと同様の概念である、pO2−又はpH2Oを用いて、融解物の酸性度及び塩基性度が定義される。

0078

溶融水酸化物における腐食は、融解物の酸化還元電位及びオキソ酸性度を、容器材料の限られた溶解しか発生しない特定の値の範囲に維持することによって、制御され得る。ニッケルベースの合金を含む多くの金属及び合金に関して、これは一般に、還元性電位を有する酸性融解物である(すなわち、溶融水酸化物の還元電位は、溶融水酸化物と接触している材料の還元電位よりも低い)が、水素又は水素化物を生成するほど還元性ではない。227℃のNaOH−KOH共晶物内のニッケルに関する電位−オキソ酸性度の図は、図7(J. Goret and B. Tremillon, Electrochim. Acta. 12 (1967) 1065-1083)に示され、この図から、可溶性ニッケレートアニオン、NiO22−の生成は、十分に低い電位で及び/又は酸融解物(すなわち、低い値のpH2O)の使用によって回避され得ることが分かる。本発明者らは、理論に縛られることなく、溶融塩内の電位が、相対的な量の多価可用性化合物によって制御され得ること、及び、オキソ酸性度が、塩を通してガス(例えば、水酸化物の場合、H2O)を泡立てることによって、又は固定量強酸ドナー(例えばNa2O)を添加することによって制御され得ることを確信する。さらに、オキソ酸性度は、カバーガスの組成を制御することによって制御され得ること、例えばH2Oの分圧が制御され得ることも考えられる。本発明の文脈において、本発明者らはさらに、酸化還元元素を、例えば上述した方法によって溶融水酸化物の酸化還元電位及び/又は溶融水酸化物のオキソ酸性度を制御し得る化学種として定義する。

0079

一実施形態において、酸化還元元素は、経時的に、例えば装置の寿命にわたり、それぞれの溶融塩に添加される。例えば、装置に関して交換率が定義され得る。交換率は、存在する酸化還元元素又は溶融減速材塩の量に対する、添加される酸化還元元素の量を表し得るので、例えば年−1、月−1など、時間−1の単位を有する。

0080

さらなる実施形態において、減速材物質は、95%を超える、あるいは98%をも超える純度で提供される。その結果、減速材物質の腐食特性を高め得る不純物の存在は、最小限にされ、あるいは完全に回避される。

0081

本発明の装置内で用いられる塩には水分がなく、例えば、塩は無水であってよい。ただし、塩は、不可避の不純物として水分を含有し得る。本発明の文脈において、不可避の不純物である水分のみを含む塩は、「融解塩」、例えば融解水酸化物又は融解重水酸化物と称される。一実施形態において、炉心内、例えば炉心容器内又は内側ループ内に水は存在しない。例えばナトリウム及びカリウムなど、金属、例えばアルカリ金属の水酸化物塩は、多量の結晶水とともに利用可能であり、特定の実施形態において、減速材塩は、最大10%(w/w)の水分、例えば5%(w/w)の水分を有する減速材塩を提供するために、無水塩と結晶水を有する塩との混合物である。本発明者らはさらに、理論に縛られることなく、水分、すなわち最大5%(w/w)の水分の添加は、上述したように、酸化還元元素の添加によって得られる効果を増強することを確信する。塩に水分が存在する場合、緩和効果はさらに高まってよく、本発明者らは、金属水酸化物の量に対する低い、すなわち最大5%(w/w)の水分含有率と、酸化還元元素の存在との組み合わせは、溶融減速材塩内での使用に対応できるものであり、無水塩と比べて増加した減速材効果をもたらすことを観察した。さらに、塩における水分の存在は、上述したようにオキソ酸性度に寄与するので、塩が水分を含む場合、腐食からのさらなる保護が得られる。

0082

さらなる実施形態において、本発明の方法は、溶融塩を通して、例えば溶融減速材塩及び/又は溶融燃料塩を通して、ガスを泡立てるステップを備える。例えば、H2Oは、溶融減速材塩の体積に対して毎時0%(V/V)〜5%(V/V)の範囲内の量で、溶融減速材塩を通して泡立てられ得る。他のガス量、例えばH2O量は、毎時0.01%(V/V)〜1%(V/V)、例えば毎時0.1%(V/V)〜0.5%(V/V)の範囲内であってよい。H2Oの体積は、周囲圧力及び温度に正常化される。実際に必要なH2O量は、腐食から保護される材料に依存し、当業者によって、例えばB.L. Tremillon, Chemistry in Non-Aqueous Solvents, Springer Netherlands, Dordrecht, 1974. doi:10.1007/978-94-010-2123-4によって決定され得る。溶融塩を通して泡立てられたガスは、純ガス、例えばH2Oであってよいが、搬送ガス、特に不活性搬送ガス、例えばアルゴンなどの貴ガスを含有してもよい。活性ガス、例えばH2Oの量は、自由に選択され得るが、一般に、1%(V/V)〜50%(V/V)の範囲内である。特定の実施形態において、ガスは、溶融塩、すなわち溶融減速材塩及び/又は溶融燃料塩を通して泡立てられ、カバーガスの分圧及び組成が同時に制御される。例えば、カバーガスと同じ組成の、ガス、例えば搬送ガスを有するガスが、溶融塩を通して泡立てられ得る。またさらなる実施形態において、オキソ酸性度は、カバーガスの組成及び圧力を制御することによって制御される。特に、オキソ酸性度は、カバーガス内のH2Oの分圧を制御することによって制御され得る。分圧が制御されると、H2Oは、カバーガス内の貴ガス、例えばアルゴンと混合され得る。溶融減速材塩を通して泡立てられた水の量もまた、時間当たり、溶融減速材塩の体積当たりの質量の単位で表されてよく、この量は、0g/L/時間〜100g/L/時間、例えば0.01g/L/時間〜10g/L/時間、又は0.1g/L/時間〜1g/L/時間の範囲内であってよい。ガス、例えばH2Oは、同じ量が関連するものとして、溶融燃料塩を通して泡立てられてもよい。

0083

本発明者らは、驚くべきことに、溶融塩、すなわち溶融減速材塩及び/又は溶融燃料塩を通して、ガス、特にH2Oを泡立たてることによってオキソ酸性度が制御される場合、腐食からの保護は、上で定義したように酸化還元元素を必要としないことを発見した。それに応じて、オキソ酸性度は、酸化還元元素を必要とせず、例えば貴ガス内のH2Oの分圧に関して組成を制御することによって、腐食からの保護をもたらすように制御され得る。カバーガス内のH2Oの分圧は、0バール〜0.1バール、例えば0.01バール〜0.05バールの範囲内である必要がある。特定の実施形態において、オキソ酸性度は、例えばカバーガス内のH2Oの分圧に関して、カバーガスの組成を制御することと共に、溶融塩(複数も可)を通してガスを泡立たてることによって制御される。カバーガスの制御は、溶融燃料塩が本発明の装置の内側菅内にある場合、特に関連性を持つ。したがって、本発明のさらなる態様は、核分裂プロセスを制御する方法に関し、この方法は、
核分裂によってエネルギーを生成するために適合された装置を提供するステップであって、装置は炉心容器材料の炉心容器を備え、炉心容器は内側菅材料の内側菅を囲い、内側菅及び/又は炉心容器は入口及び出口を有する、ステップと、
アルカリ金属及び核分裂性元素のフッ化物を備える溶融燃料塩を内側菅内に注入するステップと、
少なくとも1つの金属水酸化物、少なくとも1つの金属重水酸化物、又はそれらの組み合わせを備える溶融減速材塩を炉心容器内に注入するステップと、
熱交換ループ内で循環する溶融燃料塩から熱を除去するための熱交換ループを画定するために、内側菅の入口及び出口と流体連通している熱交換器を提供するステップと、
内側菅内の燃料塩の温度を制御するために、熱交換ループ内で燃料塩を循環させるステップと、
減速材塩を通して、ガス、例えばH2Oを泡立てるステップと
を備える。あるいは、ガスは、燃料塩を通して泡立てられる。腐食からの保護をもたらすためにガスが燃料塩を通して泡立てられる場合、ガスの組成は、燃料塩の組成、例えばフッ化物の含有率を考慮して選択される。

0084

またさらなる態様において、本発明は、核分裂プロセスを制御する方法に関し、この方法は、
核分裂によってエネルギーを生成するために適合された装置を提供するステップであって、装置は炉心容器材料の炉心容器を備え、炉心容器は内側菅材料の内側菅を囲い、内側菅及び/又は炉心容器は入口及び出口を有する、ステップと、
少なくとも1つの金属水素化物、少なくとも1つの金属重水酸化物、又はそれらの組み合わせを備える溶融減速材塩を内側菅内に注入するステップと、
アルカリ金属のフッ化物を備える溶融燃料塩と、核分裂性元素とを炉心容器内に注入するステップと、
熱交換ループ内で循環する溶融塩から熱を除去するための熱交換ループを画定するために、入口及び出口と流体連通している熱交換器を提供するステップと、
炉心容器内の燃料塩の温度を制御するために、熱交換ループ内で溶融塩を循環させるステップと、
減速材塩を通して、ガス、例えばH2Oを泡立てるステップと
を備える。あるいは、ガスは、燃料塩を通して泡立てられる。腐食からの保護をもたらすためにガスが燃料塩を通して泡立てられる場合、ガスの組成は、燃料塩の組成、例えばフッ化物の含有率を考慮して選択される。

0085

酸化還元元素に依拠しない2つの態様において、他の特徴は全て、酸化還元元素を用いる態様と同様であってよい。MSRは通常、カバーガス、例えばアルゴンを備え、MSRは、カバーガスの圧力が制御され得ることを可能にする、カバーガスと流体連通している弁を含むことが好ましい。弁は、カバーガスが追加の不活性ガス、例えばアルゴンを補充されることも可能にし得る。さらに、弁は、カバーガスへのH2O、例えば気体H2Oの添加も可能にし得る。これら2つの態様に関して、本発明者らは、驚くべきことに、H2Oが、溶融減速材塩及び/又は酸化還元元素を備えない燃料塩を通して泡立てられる場合、容器材料は、溶融塩によって腐食から保護されることを発見した。これは、腐食性水酸化物/重水酸化物塩に特に関連性を持つ。一般に、H2Oは、溶融減速材塩又は溶融燃料塩の体積に対し、毎時0%(V/V)〜5%(V/V)、例えば0.01%(V/V)〜1%(V/V)、又は0.1%(V/V)〜0.5%(V/V)の範囲内の量だけ、溶融減速材塩を通して泡立てられる。

0086

MSRに、酸化還元元素を備える炉心をさらに提供することによって、減速材物質及び溶融塩の少なくとも1つに由来する腐食に関連する問題が軽減されたMSRが提供される。その結果、腐食に起因する炉心からのあらゆる漏洩を防ぐという観点から、MSRの寿命及びMSRの安全性の両方が著しく向上する。

0087

一実施形態において、装置は、溶融減速材塩を封入するために入口及び出口を備えない内側菅を有する。減速材塩は、内側ループにおける任意の適当なポートを用いて内側ループ内に注入されてよく、このポートはその後、減速材塩が内側ループから出られないように、かつ、さらなる減速材塩が追加されることができないように閉じる。その結果、減速材物質は安定する。すなわち、この実施形態における減速材物質は、強制的な循環を一切受けないという意味で非循環性であるが、受動的、又は対流循環を経ることがある。特に、内側菅は、燃料塩を保持する炉心容器内に挿入される個別ユニットであってよい。したがって、特に、減速材物質を循環させるための例えばポンプ及び関連配管などの要素が省略され得るという理由で、非常に単純な炉心構造を有するMSRが提供される。この実施形態において、減速材塩を有する内側菅は、予め定められた寿命を有するように設計され得る。寿命が終わりに近付くと、内側菅は、単純に燃料塩から引き上げられることができ、減速材塩を有する新たな交換用内側菅が、燃料塩内に導入され得る。内側菅が取り外されると即、緩和効果も失われ、核分裂プロセスが中断する。交換用内側菅が導入されると、核分裂プロセスは再開され得る。減速材塩の水酸化物は、例えば内側菅材料及び/又は酸化還元元素と反応し得るので、H2が生成され得る。ただし、本発明者らは、理論に縛られることなく、高温の溶融塩において、気体H2は全て、水素化物として、内側菅材料の金属及び/又は酸化還元元素へ運び込まれることを確信する。その結果、過剰な圧力上昇が防がれ、破裂などが回避されるため、内側菅の保全性保証される。ただし、任意の実施形態において、内側菅が、内側菅内での気体の増大を解放するための圧力解放弁を有することも可能である。

0088

容器、例えば内側菅及び炉心容器は、所望に応じて任意の形状を有してよい。例えば、燃料塩のための容器は、内側菅か炉心容器かにかかわらず、入口から出口への燃料塩の流れを可能にする入口及び出口を有してよい。同様に、減速材物質のための容器、例えば内側菅もまた、入口及び出口を有してよい。別の実施形態において、減速材物質のための容器は、入口及び出口の両方として機能する開口部を有する。

0089

燃料塩における核分裂は熱を生成し、装置は、燃料塩容器から例えば電力生成のためのタービンなどへ熱を輸送するための熱交換システムも備えることが好ましい。特に、溶融燃料塩から熱が除去されると、溶融燃料塩は、核分裂反応が中断する点まで膨張する。したがって、本発明の方法態様において、核分裂プロセスは、それぞれの燃料塩に関する臨界温度範囲内に温度を維持するために内側菅内又は炉心容器内の燃料塩の温度を制御することによって、制御される。任意の熱交換システムが、装置のために選択され得る。一般に、溶融燃料塩の温度は、例えば核反応が起こるために、700℃〜900℃の範囲内であり、冷却剤は、500℃〜1000℃の範囲内又はそれ以上の温度で作用するように選択される。特定の実施形態において、入口における温度は400℃〜800℃の範囲内であり、出口における温度は600℃〜1000℃の範囲内である。明らかに、入口における温度は出口における温度よりも低い。好適な実施形態において、燃料塩は、例えば内側菅から、燃料塩を冷却するための熱交換システムへ循環される。別の実施形態において、溶融減速材塩は内側菅内に配置され、熱交換器へ循環されて、減速材塩が溶融燃料塩を臨界温度範囲内に維持するために冷却する。

0090

またさらなる実施形態において、装置は、溶融冷却剤塩を有する別の冷却ループを備える。また、溶融金属、例えばアルカリ金属が、冷却剤として用いられ得ることも考えられる。したがって熱交換システムは、溶融燃料塩と熱接触している冷却剤ループを備えてよく、燃料塩から冷却剤塩への熱伝達を可能にする。冷却剤塩のために、任意の塩が選択され得る。特定の実施形態において、冷却剤は、46.5%LiF、11.5%NaF、及び42%KFの組成の塩であるが、この組成は変えられてもよい。冷却剤ループは、低温冷却剤のための入口と、加熱された冷却剤のための出口とを有する。

0091

溶融減速材物質は、好適には、燃料塩と分離される。例えば、減速材は、燃料塩を有する炉心容器内に配置された内側菅に包含されてよく、あるいは、溶融減速材塩が炉心容器内にあるように、燃料塩は内側菅内にあってよい。特定の実施形態において、装置は、一方が溶融減速材塩を保持し、他方が溶融燃料塩を保持する、2セットの内側菅を有する。

0092

内側菅は、所望に応じて任意の適当な材料で作られてよく、燃料塩と溶融減速材塩との間の熱伝達は、一般に重要ではない。一般に、内側菅は、例えば燃料塩を有する炉心容器の容積と可能な限り同じ大きさにわたり分布することが望ましいので、炉心容器の容積に対する内側菅の表面積が大きいほど良い。溶融減速材塩、又は溶融減速材塩及び燃料塩の両方における酸化還元元素の存在は、酸化還元元素が腐食を軽減することにより、炉心容器の容積に対する内側菅の表面積を大きくすることを可能にする。同様に、溶融減速材塩が、溶融燃料塩内に配置された内側菅に包含される場合、内側菅の材料は、材料の両側において溶融塩に触れる。したがって、燃料塩及び溶融減速材塩の両方が酸化還元元素を備える場合は、酸化還元元素が用いられない場合よりも、燃料塩の体積に対する内側菅の表面積を大きくすることが可能であるため、特に有利である。

0093

装置が冷却剤ループを備える場合、同様の観察結果が関連性を持つ。燃料塩から冷却剤への熱伝達を最大限にするために、燃料塩の体積に対する冷却剤ループの表面積の比率は、可能な限り大きい必要がある。特に、冷却剤ループの材料は、溶融燃料塩から熱を取り去ることができなければならないので、冷却剤ループの材料として金属が好ましい。特定の実施形態において、それぞれの容器内の溶融燃料塩及び溶融減速材塩は、略円筒形容器に封入され、冷却剤ループは、円筒形容器の外側表面に位置する。したがって、冷却剤物質は一般に、燃料塩内で生成される中性子に干渉することはなく、冷却剤物質は、自由に選択され得る。

0094

炉心容器の全体積は、通常、100MWe当たり1m3〜5m3の範囲内である。酸化還元元素を有する溶融減速材塩を用いることのさらなる利点は、溶融燃料塩を用いること以外の原理に基づく核分裂炉と比べて高いエネルギー密度が可能な点であるが、特に、従来の設計のMSRと比べて高いエネルギー密度も可能である。

0095

Rで表される、溶融減速材塩と溶融燃料塩との体積比は、自由に選択され得る。ただし、この比は、例えば核分裂元素(複数も可)の濃度に関して、燃料塩の組成にある程度依存する。例えば、2cmol%の燃料成分を有する溶融燃料塩の場合、溶融減速材塩と溶融燃料塩との比は、1〜1.5の範囲内であってよい。4cmol%の燃料成分を有する溶融燃料塩の場合、溶融減速材塩と溶融燃料塩との比は、0.5〜2の範囲内であってよい。一般に、塩の体積は、それぞれの容器の容積に基づく定数項で表される。例えば、炉心容器内の内側菅の容積は、炉心容器の容積引く内側菅の容積の0.5〜2倍であってよい。内側菅の容積は、内側菅の径及び長さから計算されてよく、特定の実施形態において、例えば内側菅が溶融燃料塩用である場合、内側菅の長さは、1m〜4mの範囲内であってよい。一実施形態において、内側菅は、0.2cm〜30cmの範囲内の径の管を備える。2cmol%の燃料成分を有する溶融燃料塩の場合、径は通常、1cm〜5cmの範囲内である。4cmol%の燃料成分を有する溶融燃料塩の場合、径は通常、0.3cm〜20cmの範囲内である。内側菅の周囲は通常、円形である。ただし、内側菅は円形であることに限定されず、他の形状も同様に考えられる。内側菅の円形周囲は、この形状が、溶融塩、すなわち内側菅の両側における溶融塩と接触する内側菅の表面積を最小限にするため、好ましい。

0096

内側菅は、望まれる任意の形状を有してよい。特に、内側菅は、所望の長さの内側菅が炉心容器内に適合するために適した角度又は湾曲部を含む。例えば、内側菅は、蛇行構造、例えば単一の入口及び単一の出口を有する蛇行構造を含んでよい。蛇行構造は、平坦であってよく、あるいは3次元に広がってよい。別の実施形態において、内側菅の入口は、入口からの流れを、炉心容器内で離間、例えば規則的に離間し得る複数の管、例えば2〜1000又はそれ以上の管に分割するマニホールドを備える。同様に、内側菅は、複数の管、例えば2〜1000の管からの流れを単一の出口管集結させるマニホールドを備えた出口を有してよい。一実施形態において、内側菅は、単一の入口及び単一の出口を有し、3次元に広がり内側菅のセクション間に一定の距離を設ける蛇行部を形成する。内側菅の設計にかかわらず、内側菅の管又はセクション間の距離は、0.5cm〜10cmの範囲内である。例えば、溶融燃料塩が2cmol%の燃料を有する場合、この距離は、1cm〜3cmの範囲内である。溶融燃料塩が4cmol%の燃料を有する場合、この距離は、0.5cm〜6cmの範囲内である。それに応じて、内側菅間の距離は、0.5cm〜10cmの範囲内である。一般に、溶融燃料塩が内側菅内に包含される場合、この実施形態において「燃料ピン」とも称され得る内側菅の径は、ピン間の距離と相関があり、これは、例えば減速材塩の金属成分と水酸化物/重水酸化物の比率に関する、減速材塩の特定の選択による影響も受ける。燃料ピンの径及び燃料ピン間の距離は、当業者によって計算され得る。

0097

本発明と関連するこれらの金属の各々に関する利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。

0098

実施形態において、少なくとも1つの金属水酸化物は、Xが金属でありnが1以上の整数であるX(OH)n形態の融解金属水酸化物であり、及び/又は、NaOH、LiOH、7LiOH、RbOH、KOH、Be(OH)2、Mg(OH)2、Ca(OH)2、及びAl(OH)3からなる群から選択される。同様の実施形態において、少なくとも1つの金属重水酸化物は、X(OD)n形態の融解金属重水酸化物であり、ここで、Xは金属であり、nは金属の酸化レベルに対応する整数、すなわちnは1以上であり、金属重水酸化物は、7Liに富むLiOD、RbOD、NaOD、Be(OD)2、及びMg(OD)2、を備える群から選択され得る。

0099

一実施形態において、減速材物質は、核分裂可能物質及び溶融塩から分離される。減速材を溶融塩から分離した状態に保つ任意の手段が、本発明において用いられ得る。例えば、減速材は、減速材物質に耐性を持つ材料、特に金属又は合金で作られた、又はそれらでコーティングされた要素によって、溶融塩から分離され得る。

0100

したがって、減速材物質は、炉心のその他の構成要素から、特に炉心のクラッド材の外側にある装置の構成要素から隔離され、そうすることで、特に例えば炉心ベゼル、ポンプ、及び熱交換器などの外側部品への減速材物質のあらゆる腐食効果は、緩和効果が影響を受けないまま、回避される。

0101

これらの実施形態のいずれかによって、減速材物質として選択された水酸化物及び/又は重水酸化物の緩和効果が最適化された装置が提供される。

0102

これらの実施形態のいずれかによって、減速材物質として選択された水酸化物及び/又は重水酸化物の緩和効果が、炉心、例えば炉心容器の容積、及び/又は核分裂可能物質の体積に関して最適化され、その結果、減速材物質の量が最適化されることにより、炉心容器のサイズも最適化された装置が提供される。

0103

さらなる実施形態において、炉心はさらに、減速材物質とは異なる冷却剤及び/又は反射体を備える。好適な反射体材料は、グラファイト又はベリリウムである。その結果、減速材物質が容易に、かつ単純な原子炉構造で安定に保たれ、減速材物質の腐食効果が、単純な原子炉構造で容易に制御され得る装置が提供される。

0104

本発明に係る装置は、溶融塩原子炉である。本発明に係る溶融塩原子炉は、バーナー式の溶融塩原子炉、又は廃棄物バーナー式の溶融塩原子炉であってよい。本発明に係る溶融塩原子炉は、増殖式、増殖及び燃焼式、又はMSR型の溶融塩原子炉であってよい。一実施形態において、溶融塩原子炉は、搬送手段の推進力のためのエネルギー供給用であってよく、例えば、溶融塩原子炉は、に搭載され得る。別の実施形態において、溶融塩原子炉は、固定設備の一部である。

0105

留意すべき点として、本発明は、特許請求の範囲に記載された特徴の全ての可能な組み合わせに関する。特に、本発明の特定の態様の文脈で言及された任意の特徴は、それが明示的に言及された態様と同じ利点を提供する本発明の他の任意の態様にも等しく関連するものである。

図面の簡単な説明

0106

次に、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明のこの態様及び他の態様をより詳細に説明する。

0107

図1は、本発明の装置の側面図を示す。
図2は、本発明の装置の上面図を示す。
図3は、本発明の装置の細部の上面図を示す。
図4は、従来技術の溶融塩炉の細部の上面図を示す。
図5は、燃料とNaOH減速材の原子炉倍増率と熱反応係数の等高線プロットを示す。
図6は、NaOH減速材中のNaの効果を示す。
図7は、NaOH−KOH中のニッケルの潜在的なオキソ酸度図を示す。

0108

図面に示されているように、層及び領域のサイズは、例示目的のために誇張されており、したがって、本発明の実施形態の一般的な構造を示すために提供されている。全体を通して同類の参照番号は同類の要素を指す。

実施例

0109

本発明は、現在本発明のより好ましい実施形態が示されている添付図面を参照して、以下でより完全に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、徹底さ及び完全性のために提供され、本発明の範囲を当業者に完全に伝える。

0110

[望ましい減速材物質]
上述のように、本発明は、減速材物質として水酸化物及び/又は重水素化物を提案する。金属水酸化物がより好ましい。少なくとも1つの金属水酸化物又は重水素酸化物は、例えば、アルカリ金属、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、炭素(C)、シリコン(Si)及びフッ素(F)を含む金属の群から選択される金属を含むことができる。さらに好ましいのは、X(OH)nの形態の融合金属水酸化物、及びX(OD)nの形態の融合金属重水素化物である。溶融金属水酸化物は、一般的にXOH又はX(OH)nと書かれた化合物で、Xはアルカリ又は他の金属で、OHは水酸化物イオンである。整数nは、一価の原子では1に等しく、より高い原子価の原子では1より大きい整数である。溶融金属水酸化物の効果的な減速効果は、化合物中における比較的高い水素の存在にある。溶融金属水酸化物は、広い温度動作ウィンドウ(通常300℃から1300℃の範囲の融点から沸点まで)を有している。液体溶融塩は、大気圧付近ポンプ輸送可能であるため、加圧された封じ込めを必要としない。溶融金属水酸化物減速材は、NaOHなどの単一の化合物、又は2つ以上の金属水酸化物の混合物で構成され、他の流体と混合されるか、固体材料に埋め込まれる。特に有用な金属水酸化物は、LiOH、7LiOH、NaOH、及び水酸化ルビジウム(RbOH)である。同様に、特に有用な重金属酸化物は、LiOD、7LiOD、NaOD、及びRbODである。

0111

水酸化カリウム(KOH)や水酸化セシウム(CsOH)などの金属水酸化物も、KODやCsODなどの重水素酸化物も、その非常に高い中性子吸収のため、溶融金属水酸化物減速材が2つ以上の金属水酸化物及び/又は金属重水素化物の混合物を含む実施形態において、減速材の中性子吸収を調整するために付加して使用される水酸化物又は重水素酸化物として有用である。

0112

ルビジウム(Rb)とナトリウム(Na)は、どちらも自然のままの構造で優れている。7Liにおいて99.95%以上に濃縮されたリチウム(Li)は、Na(高濃縮LiがNaを上回る)に匹敵する中性子工学を有する一方で、カリウム(K)及びセシウム(Cs)は、中性子工学の観点では機能がより悪いが、融点など、混合物の特定の物理的及び化学的特性を変更するために、他のアルカリ水酸化物に追加することができるため興味深い。これらのうち、NaOHは、工業用化学物質として非常によく知られているという利点を有している。

0113

以下の表2は、本発明に従って提案された様々な減速材の減速特性をまとめたものである。

0114

0115

上記の表2の情報は、次の結論を導き出す。NaOHは、コンパクトな減速材であり、その吸収作用はH2O及びポリエチレンに匹敵する。RbOHはコンパクトな減速材であり、極めて低い吸収作用を有する。KOHとCsOHは、高い吸収作用のため、減速材としてはあまり適していない。

0116

一般に灰汁又は苛性ソーダとして知られるNaOH、つまり水酸化ナトリウムは、石鹸食品製造排水管洗浄剤アルミニウム製造など、他にも多く使用されるよく知られた工業製品である。室温及び大気圧では、NaOHは固体であるが、318℃の温度で融解し、1388℃で沸騰する。固体又は液体の状態のどちらでも使用できるため、このことは、非常に柔軟な中性子減速材にしている。さらに、減速材を炉心の所定の位置に維持するために固体NaOHの能動冷却が要求される受動的安全機能を設計することができる。(出力異常上昇又は能動冷却の喪失から)過熱が発生した場合、NaOHは、溶融して炉心から流出し、核分裂連鎖反応を効果的に消滅させる。

0117

上述したように、液体NaOHの腐食特性に基づいて、NaOHの中性子減速材としての使用が過去に拒否されたとしても、上で挙げられた減速材物質としての水酸化物全般に関連する利点は、NaOHとの関連で特に核心を突くものであり、本発明、特に腐食制御及び材料の選択のために提案された手段は、これらの懸念を時代遅れにする。

0118

[望ましい酸化還元元素]
典型的な標準電極電位の例を表3に示す。ここで、標準電極電位は、298.15°Kの温度、各水溶種又は水銀アマルガム中の種に対して1mol/lの有効濃度、気体試薬に対して101.325kPa(絶対)の分圧(1atm、1.01325bar)、及び各純粋な固体、純粋な液体、又は水(溶媒)に対する統一活量におけるものである。標準電極電位のより低い負の値は、本発明の文脈においてより反応性の高い材料に対応すると理解されるべきである。したがって、例えば、内側管材料はニッケルであってもよく、ニッケルの上方の還元剤の列の任意の元素を酸化還元元素として選択することができる。

0119

好ましい実施形態では、内側管材料は金属を含み、酸化還元元素は、内側管材料の金属の電気陰性度よりも低いポーリングスケールによる電気陰性度を有する金属である。さまざまな金属元素のポーリング電気陰性度が表4に提供される。例えば、内側管の金属と、任意で炉心容器の金属も、ハステロイ、つまりニッケル基合金であってもよく、酸化還元元素は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であってもよい。

0120

0121

したがって、表3及び表4に基づいて、反応(A)から反応(D)に照らせば、内側管及び/又は炉心容器の好ましい材料は、ニッケル、銅、及びコバルトを含み、酸化還元元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ランタニド及び/又はアクチニドを含む。

0122

[燃料塩の組成]
燃料塩(FS略記)は、一般に、非アクチニドキャリア部分熱力学的特性から選択される)と、原子炉の臨界性を確保するアクチニド成分で構成される。アクチニド成分Aniは、燃料成分と追加の核分裂性同位体に転換可能な成分にさらに分割されてもよい。燃料塩ベクトルFiは、初期のプルトニウム成分(通常は使用済み核燃料(SNF)、つまり核廃棄物)を追加の成分(一部は化学再処理後に追加)とともに含む既定義の燃料ベクトルによって記述される。追加された(核分裂性同位体に転換可能な)部分は、原子炉燃焼プロセスにおける役割から選択されるベクトルAiによって定義され、通常、追加されたトリウムとウランで構成される。アクチニドの組成は、さまざまな燃料ベクトルによって定義され、次のメリット値によって捕らえられる。

0123

FPu燃料プルトニウム(カチオンモル)の割合;
−ATh追加された(核分裂性同位体に転換可能な)ベクトルのうちの燃料トリウム(カチオンモル)の割合;
−FA追加された(核分裂性同位体に転換可能な)(カチオンモル)割合。
ここで、2つの最初の割合は、それぞれ燃料ベクトルと追加された核分裂性同位体に転換可能なベクトルのカチオンモル分率を指す。燃料塩は、燃料塩に対する次のメリット値とともに、さまざまな燃料ベクトル、キャリア塩ベクトルCSiによって定義される。
−FSPu燃料塩プルトニウム(カチオンモル)の割合;
−FSTh燃料塩トリウム(カチオンモル)の割合;
FSCSキャリア塩(カチオンモル)の割合。

0124

ここで、「割合」とは、組み合わされた燃料塩のカチオンモル分率を指す。これらの定義により、燃料塩ベクトルは、次のように記述できる:(FS)i=FSCS CSi+(1−FSCS)Ani。アクチニドベクトルは、Ani=(1−FA)Fi+FA・Aiに従って分割される。ここで、FiのFPuは、プルトニウム同位体で構成され、AiのAThは、トリウムで構成されている。塩パラメータの間には次の関係が存在することに注意する。

0125

例となる燃料塩は、以下の燃料塩ベクトルを含む:CSi=NaF;Ai=ThF4。この燃料は表5にまとめられている。

0126

0127

[本発明の好ましい装置]
本発明の好ましい装置100が図1に示されており、側面から描かれている。具体的には、図1は、溶融減速材塩2を備えた炉心容器20を有する装置100を示し、炉心容器20は、溶融燃料塩1を備えた内側管を囲む。内側チューブは、入口マニホールド61と流体連通する2つの入口6を有し、次に入口マニホールド61が、燃料ピン10と流体連通している。燃料ピン10は、出口マニホールド62と連通し、出口マニホールド62は、この場合、単一の出口7内の溶融燃料塩1の流れを収集する。流れの方向は、符号「>」で示される。入口6及び出口7は、熱交換ループを提供するために、熱交換器(図示せず)の入口及び出口と流体連通している。内側管材料及び炉心容器材料は、ニッケルベースの合金から作られることが好ましい。装置100は、一般的に使用される従来技術の塩プラグシステムに加えて、オーバーフローシステムを含む追加の安全装置8をさらに含むことができる。この安全システムは、メルトダウンを防ぎ、ヒューマンオペレーターミスによる事故を防ぎ、範囲外の運転条件の場合に自動的にシャットダウンし、操作電源喪失の場合に炉心容器の下方の受動的に冷却され未臨界ダンプタンクに燃料イベントリを流すことができる。

0128

反応器のサイズは、2つの条件;燃料及び減速材双方の循環時間と負の温度フィードバックから決定される。実際には、運転出力密度は、炉心の物理的フィードバック機構を介して調整されることができる。特に、燃料塩と減速材の両方の負の温度フィードバックは、流入する外部エネルギーを調整することで電力密度を制御できることを意味する。炉心循環は遅発中性子を連鎖反応から遠ざける可能性があるため、最適な原子炉制御と安全性の理由から、炉心を通る質量流量率は、一定に保たれる必要がある。内部の炉心流量を変更するよりも、外部の熱交換器システムを通る質量流量を変化させることにより発電を制御することがより望まれる。最大の原子炉制御を達成するために、反応器を通る質量流量率は、循環しない場合と比較した原子炉の反応性の変化が実際的に可能な限り小さくなるように選択される必要がある。このように、ポンプ故障シナリオの場合、炉心内の減衰する先行核の濃度は、通常運転時よりも最小限にしか増加しない。

0129

図2は、図1に示す装置100の一部の上面図を示す。したがって、燃料ピン10は、外部被覆5を備えた円筒形の断面を有する炉心容器内に六角形パターンで分布している。外部被覆は、ブランケット又はシールドと呼ばれることもある。装置100の断面には六角形のパターンが重ねられているが、このパターンは特定の材料を表すことを目的としていない。

0130

図3及び図4は、本発明の好ましい装置(図3)の燃料ピン10のパッキングと、グラファイト3が減速材として使用される従来技術のMSR(図4)とを示し、比較している。重ね合わされた六角形のパターンは、金属水酸化物/重水素酸化物減速材が、いかにしてグラファイト減速MSRで利用可能なものよりもはるかに高密度の燃料ピン10のパッキングを可能にし、したがって、はるかに小さい形状因子Fを提供することを示している。

0131

図5は、燃料塩とNaOH減速材の原子炉増倍率と熱反応係数の等高線プロットをそれぞれ示す。増倍率は、原子炉が臨界に到達できるように、特定のしきい値を超える必要がある。さらに、最適な原子炉制御と(固有の)安全上の理由から、反応係数はわずかに負でなければならない。3つの条件すべてに適合する構成スペース9のゾーンは、原子炉寸法の範囲の決定を可能にする。具体的には、燃料含有量SPuは2cmol%であり、0.5cmから1.5cmの範囲のパラメータlとともに、燃料ピンの半径rpinは1cmから5cmの範囲にであり得る。

0132

図6は、減速材塩としてのNaOH内に溶解した酸化還元元素としてのNaの量の、中性子増倍率(Y軸に表示)への依存性を示す;エラーバーは1つの標準偏差である。具体的には、図6は、NaOHの水素原子をナトリウム原子で置き換え、減速塩を効果的に希釈し、減速能を低下させることによる核分裂連鎖反応への悪影響を示す。明らかに、減速材塩の酸化還元元素の上限は、中性子工学の観点から存在する;実際には、酸化還元元素の量は100g/kgを超えてはならない。酸化還元元素の量が少ないほど、減速効果は向上するが、腐食からの保護を提供するために、減速材は、少なくとも1g/kgの酸化還元元素を含む必要がある。

0133

[従来技術の例]
炭素の減速能は水酸化ナトリウムの減速能よりも小さいため、一般的に、黒鉛減速原子炉は、水酸化ナトリウム減速原子炉よりも大きな形状因子を示す。参考のために、表5と同じ形状と燃料塩組成を備えたシミュレーションされた黒鉛減速原子炉(図4)のいくつかの例を示す。

0134

[小さなピンを持つMSR]
燃料ピン半径rpin=2cm。被覆厚さδは、0.05から0.5cmまでの範囲にあり、パラメータl(隣接するピン間の距離の半分)は、l=3.0から6.0cmまでの範囲にある。これらの範囲内で、形状因子は、おおよその範囲F=5から15にあり、炉心体積は、V=8m3から45m3までの範囲にある。炉心半径及び高さは、H=2.0mから3.6m、R=1.1m3から2.0m3までの範囲で、燃料ピンの総数は、600から800までの範囲である。

0135

[大きなピンを持つMSR]
燃料ピン半径rpin=6cm。被覆厚さδは、0.05から0.5cmまでの範囲にあり、パラメータl(隣接するピン間の距離の半分)は、l=10.0から14.0cmまでの範囲にある。これらの範囲内で、形状因子は、おおよその範囲F=6から10にあり、炉心体積は、V=8m3から32m3までの範囲にある。炉心半径及び高さは、H=2.0mから3.2m、R=1.1m3から2.0m3までの範囲で、燃料ピンの総数は、50から120までの範囲である。

0136

[本発明の例示的な装置]
図1及び図2に示されている形状とSPu=2cmol%のNaOH減速原子炉の最適な構成ゾーン(原子炉の臨界と負の燃料及び減速材の温度フィードバックで定義される)を示す図5について言及する。このプルトニウムの割合について、許容されるピン半径は、おおよその範囲rpin=1から5cmにある。プルトニウムの割合が増えると、この範囲が広がることに注意する。原子炉格子要素の寸法の部分的な範囲を与えるために継続する。炉心の全体的な寸法は、原子炉の出力密度、形状因子、及び総出力に依存する。したがって、炉心寸法に関する範囲を与えるためには、これら3つのパラメータに範囲を割り当てる必要がある。我々は、総出力を300MWとしている。燃料塩の出力密度の合理的な範囲は、P=100から200kW/lであるが、形状因子の範囲は上記の通りである。

0137

[小さなピン]
燃料ピン半径rpin=1cm。被覆厚さδは、0.05cmから0.5cmまでの範囲にあり、パラメータl(隣接するピン間の距離の半分)は、l=0.5から1.5cmまでの範囲にある。これらの範囲内で、形状因子は、おおよその範囲F=2.5から10にあり、炉心体積は、V=4m3から30m3までの範囲にある。炉心半径及び高さは、H=1.5mから3.0m、R=0.9m3から1.8m3までの範囲で、燃料ピンの総数は、8,000から12,000までの範囲である。

0138

[大きなピン]
燃料ピン半径rpin=5cm。被覆厚さδは、0.05cmから0.5cmまでの範囲にあり、パラメータ(隣接するピン間の距離の半分)は、l=1.0から2.5cmまでの範囲にある。これらの範囲内で、形状因子は、おおよその範囲F=1.6から2.5にあり、炉心体積は、V=2m3から8m3までの範囲にある。炉心半径及び高さは、H=1.2mから2.0m、R=0.7m3から1.2m3までの範囲で、燃料ピンの総数は、300から700までの範囲である。

0139

したがって、酸化還元元素とともに金属水酸化物ベースの減速材を使用することにより、はるかに小さく、より効率的なMSRが得られる。腐食防止も得られる溶融減速材塩に電流を印加することにより、同じことが期待される。

0140

当業者は、本発明が上記の好ましい実施形態に決して限定されないことを理解する。それどころか、添付の特許請求の範囲内で多くの修正及び変形が可能である。

0141

さらに、開示された実施形態の変形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、請求された発明を実施する当業者によって理解され達成され得る。特許請求の範囲において、「備える」という語は他の要素又はステップを除外せず、不定詞「a」又は「an」は複数を除外しない。特定の測定値が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの測定値の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。

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