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課題
解決手段
概要
背景
一般に、電力系統の品質は、電圧一定と周波数一定により保たれている。この中で、本発明に関する電圧面(電圧・無効電力制御)の技術背景について、以下に記載する。
電圧・無効電力制御の目的は、基幹系統では、無効電力バランス維持、送電損失低減、電圧安定性維持である。一つ目の無効電力バランス維持では、無効電力のバランスを適正に調整する。二つ目の送電損失低減では、無効電力を供給する機器を無効電力需要の近傍に設置し、送電線の無効電力潮流を減少させることで送電損失を低減する。尚、送電損失は電流の2乗、すなわち有効電力と無効電力の2乗和に比例して増加する。三つ目の電圧安定性維持では、電圧・無効電力を制御する同期調相機や静止型無効電力補償装置を設置し、電圧安定性を維持する。電源の遠隔化や偏在化による長距離にわたる大電力送電と無効電力損失の増加及び、負荷特性の変化(定電力負荷の増加)等により、電圧安定性が問題となる。
また、ローカル系統における電圧・無効電力制御の目的は、電圧・無効電力の適正維持である。系統の主要箇所に基準電圧を定めた上で、電圧を制約条件内に収めるように制御する。
電圧・無効電力制御機器は、発電機の機器と電力輸送設備の機器の二つに分けられる。
一つ目が発電機の電圧・無効電力制御機器である。発電機は有効電力の供給に加えて、励磁電流を調整することにより、無効電力を調整することができる。発電機の無効電力制御モードとしては、AVR(励磁電流調整により端子電圧一定制御)、APFR(発電機出力に応じて力率一定制御)、AQR(発電機出力に応じて無効電力一定制御)、AVQC(昇圧用変圧器タップ調整により端子電圧を一定にしながら無効電力制御)等がある。
二つ目が、電力輸送設備の電圧・無効電力制御機器である。電力輸送設備の電圧・無効電力制御機器は、さらに二つに大別され、一つは無効電力を発生あるいは吸収する機器である調相設備で、並列コンデンサ(SC)、分路リアクトル(ShR)、静止型無効電力補償装置(SVC)、同期調相機(RC)等がある。調相設備の設置箇所は、適正電圧維持、送電損失低減、設置コスト、単一設備事故時の電圧維持等を考慮し決定される。調相設備の設備容量は、適切な無効電力バランス、と適正電圧が維持できると共に、単一設備事故時にも適正電圧維持ができるように必要調相設備容量が決定される。併せて重負荷期に電圧安定性が維持できるように考慮されている。単機容量は、調相設備投入・開放時における電圧変動が系統に影響を与えないように考慮して決定されている。
電力輸送設備の電圧・無効電力制御機器のもう一つは、電圧比を変化させる設備であり、負荷時タップ切替装置(LTC)等がある。LTCは、上位系の電圧変動に対して下位系電圧を適正値に維持するために必要な調整幅があること、1タップ切替時の電圧変動が許容値以内であること等を考慮し採用されている。
現在、系統電圧の適正維持、運用者の負担軽減、電力設備の不要動作低減、送電損失低減等を導入目的として、電圧・無効電力制御システム(VQC)が導入されている。
VQC導入の背景には、無効電力調整能力の大きな火力機の系統導入、発変電所無人化や集中制御化に伴う制御所への収集情報量拡大、大量情報を収集可能なディジタル伝送方式の採用、計算機発展による系統解析技術のオンライン適用、運用者の電圧調整業務量の増加等の項目が挙げられる。
VQC方式には「中央制御方式」と「個別制御方式」がある。このうち中央制御方式は、複数の電気所情報(有効電力P、無効電力Q、電圧V等)を中央装置に集め、中央装置で定めた判断結果を複数の個別の電圧・無効電力制御機器に与えて、電力系統各所を制御することによる協調制御を実施している。電力系統の電圧・無効電力を1か所または階層型の制御システムによって制御している。また、個別制御方式はタイムスケジュール運転と個別VQC方式に分けられる。個別制御方式は、それぞれの電気所において、予め与えられた基準電圧を維持するよう自主的かつ個別的に電圧・無効電力制御機器を制御している。
電圧・無効電力制御システムVQCの制御目標は次の通りである。500kV系統においては、他者との連系点の基準電圧を定め、両端母線電圧維持、設備分界点での無効電力を極力0にすることを目標に制御する。275以下kV系統においては、負荷供給系統の適正電圧維持・変動抑制、無効電力バランス適正化、送電損失低減(運用上下限電圧以内での電圧高め設定)を目標に制御する。
電圧・無効電力制御システムVQCに用いられるアルゴリズムは、中央制御方式では、一般的に複数監視点における目標値に対する電圧偏差を一つの評価関数に纏め、これを最小化するための機器制御量を算出し、制御を行う方式が採用されている。評価関数としては、監視点の電圧偏差と監視送電線の送電損失最小化を採用することが多い。個別制御方式では一次、二次母線電圧、変圧器無効電力を適正に保つため、V−V制御方式を採用することが多い。
送電損失低減の機能は電圧・無効電力制御システムVQCに組み込まれ、多くの会社で導入されている。その中には、オンラインで送電損失を計算し、その送電損失を最小にするように電圧・無効電力制御機器を制御したり、無効電力の消費箇所で無効電力を補償し、系統に余分な無効電力を流さないようにしたりする機能がある。しかし、各電気所の母線電圧を適正範囲に維持する制御が優先されるため、送電損失の低減機能が適正に機能していないのが実状である。この機能は、電力コスト低減という観点から重要であり、適正電圧維持と送電損失低減を双方満たす制御アルゴリズムの開発が望まれている。
次に、近年環境保護の点から注目されている風力発電機の技術背景について、以下に記載する。今後の説明では、発電機と述べるものは風力発電機を意味するが、本発明の対象が風力発電機のみに限定されるものでないことに注意されたい。
風力発電機は電力系統に連系しており、発電した電力を電力系統に供給する。集合型風力発電機、つまりウィンドファーム(WF)を系統に接続する際には、電圧変動を常時電圧の2%以内(電圧規定値)に抑制する必要がある。
電圧を調整するために、系統接続箇所に無効電力を調整可能な調相設備を設置することが一般的である。
また、風力発電機自身も無効電力を調整することで、電圧を調整できる。そのため、調相設備の状態を考慮した上で、風力発電機による電圧・無効電力制御を実施することは非常に重要となっている。
本技術分野において、特許文献1の系統電圧制御状態決定装置が知られている。特許文献1によると、分散型電源の出力を制御することにより、電圧変動を抑制すると記載されている。
また、本技術分野において、特許文献2の分散型電源群の制御方法及びシステムが知られている。特許文献2によると、各分散型電源の出力電圧値と出力電力値から各分散型電源を協調制御して有効電力及び無効電力を適正に配分することで、風力発電機群全体の有効電力変動を最小化すると記載されている。
また、本技術分野において、特許文献3の自然エネルギー発電システムが知られている。特許文献3によると、送電線に接続した制御装置でウィンドファームWF内の情報に基づき、ウィンドファームWFの電圧が予め定められた値より小さい場合、同期調相機がウィンドファームWF内に出力する無効電力を制御すると記載されている。
概要
風況によっては調相設備に余力(調相設備の無効電力補償量における現在値と上下限値の差分)があるため、調相設備と風力発電機の協調制御によって、電圧状態を満たしつつ、調相設備の容量制約内でウィンドファームWF内の有効電力損失を小さくすることを目的とする。調相設備と発電機を含み連係点で電力系統に接続された電気所における発電機の制御状態決定装置であって、少なくとも調相設備における無効電力補償量と、発電機における電圧制御状態を入力し、電気所内の有効電力送電損失を求め、調相設備の余力と発電機の電圧制御状態を参照し、繰り返し潮流計算により有効電力損失の小さい電圧制御状態を決定する電圧制御状態決定部を備えることを特徴とする。
目的
この機能は、電力コスト低減という観点から重要であり、適正電圧維持と送電損失低減を双方満たす制御アルゴリズムの開発が望まれている
効果
実績
- 技術文献被引用数
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- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
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請求項1
調相設備と発電機を含み連係点で電力系統に接続された電気所における発電機の制御状態決定装置であって、少なくとも前記調相設備における無効電力補償量と、前記発電機における電圧制御状態を入力し、電気所内の有効電力送電損失を求め、前記調相設備の余力と前記発電機の電圧制御状態を参照し、繰り返し潮流計算により有効電力損失の小さい電圧制御状態を決定する電圧制御状態決定部を備えることを特徴とする発電機の制御状態決定装置。
請求項2
請求項3
請求項2に記載の発電機の制御状態決定装置であって、前記発電機における電圧制御状態に優先順位を付与し、優先順位の高い発電機から電圧制御状態決定部の処理を実行することを特徴とする発電機の制御状態決定装置。
請求項4
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発電機の制御状態決定装置であって、前記電圧制御状態決定部は、発電機予測値による予測処理により有効電力損失の小さい電圧制御状態を決定することを特徴とする発電機の制御状態決定装置。
請求項5
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発電機の制御状態決定装置であって、前記電圧制御状態決定部は、系統状態を入力として更新周期変更を実施し、有効電力損失の小さい電圧制御状態を決定することを特徴とする発電機の制御状態決定装置。
請求項6
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発電機の制御状態決定装置であって、前記電圧制御状態決定部は、繰り返し潮流計算により求めた有効電力損失の小さい電圧制御状態を電圧制御状態指令値として前記発電機に与え、これを制御することを特徴とする発電機の制御状態決定装置。
請求項7
調相設備と発電機を含み連係点で電力系統に接続された電気所における発電機の制御状態決定方法であって、少なくとも前記調相設備における無効電力補償量と、前記発電機における電圧制御状態と、電気所内の有効電力送電損失を得、前記調相設備の余力と前記発電機の電圧制御状態を参照し、有効電力損失の小さい電圧制御状態を決定することを特徴とする発電機の制御状態決定方法。
技術分野
背景技術
0003
電圧・無効電力制御の目的は、基幹系統では、無効電力バランス維持、送電損失低減、電圧安定性維持である。一つ目の無効電力バランス維持では、無効電力のバランスを適正に調整する。二つ目の送電損失低減では、無効電力を供給する機器を無効電力需要の近傍に設置し、送電線の無効電力潮流を減少させることで送電損失を低減する。尚、送電損失は電流の2乗、すなわち有効電力と無効電力の2乗和に比例して増加する。三つ目の電圧安定性維持では、電圧・無効電力を制御する同期調相機や静止型無効電力補償装置を設置し、電圧安定性を維持する。電源の遠隔化や偏在化による長距離にわたる大電力送電と無効電力損失の増加及び、負荷特性の変化(定電力負荷の増加)等により、電圧安定性が問題となる。
0005
電圧・無効電力制御機器は、発電機の機器と電力輸送設備の機器の二つに分けられる。
0006
一つ目が発電機の電圧・無効電力制御機器である。発電機は有効電力の供給に加えて、励磁電流を調整することにより、無効電力を調整することができる。発電機の無効電力制御モードとしては、AVR(励磁電流調整により端子電圧一定制御)、APFR(発電機出力に応じて力率一定制御)、AQR(発電機出力に応じて無効電力一定制御)、AVQC(昇圧用変圧器タップ調整により端子電圧を一定にしながら無効電力制御)等がある。
0007
二つ目が、電力輸送設備の電圧・無効電力制御機器である。電力輸送設備の電圧・無効電力制御機器は、さらに二つに大別され、一つは無効電力を発生あるいは吸収する機器である調相設備で、並列コンデンサ(SC)、分路リアクトル(ShR)、静止型無効電力補償装置(SVC)、同期調相機(RC)等がある。調相設備の設置箇所は、適正電圧維持、送電損失低減、設置コスト、単一設備事故時の電圧維持等を考慮し決定される。調相設備の設備容量は、適切な無効電力バランス、と適正電圧が維持できると共に、単一設備事故時にも適正電圧維持ができるように必要調相設備容量が決定される。併せて重負荷期に電圧安定性が維持できるように考慮されている。単機容量は、調相設備投入・開放時における電圧変動が系統に影響を与えないように考慮して決定されている。
0008
電力輸送設備の電圧・無効電力制御機器のもう一つは、電圧比を変化させる設備であり、負荷時タップ切替装置(LTC)等がある。LTCは、上位系の電圧変動に対して下位系電圧を適正値に維持するために必要な調整幅があること、1タップ切替時の電圧変動が許容値以内であること等を考慮し採用されている。
0010
VQC導入の背景には、無効電力調整能力の大きな火力機の系統導入、発変電所無人化や集中制御化に伴う制御所への収集情報量拡大、大量情報を収集可能なディジタル伝送方式の採用、計算機発展による系統解析技術のオンライン適用、運用者の電圧調整業務量の増加等の項目が挙げられる。
0011
VQC方式には「中央制御方式」と「個別制御方式」がある。このうち中央制御方式は、複数の電気所情報(有効電力P、無効電力Q、電圧V等)を中央装置に集め、中央装置で定めた判断結果を複数の個別の電圧・無効電力制御機器に与えて、電力系統各所を制御することによる協調制御を実施している。電力系統の電圧・無効電力を1か所または階層型の制御システムによって制御している。また、個別制御方式はタイムスケジュール運転と個別VQC方式に分けられる。個別制御方式は、それぞれの電気所において、予め与えられた基準電圧を維持するよう自主的かつ個別的に電圧・無効電力制御機器を制御している。
0012
電圧・無効電力制御システムVQCの制御目標は次の通りである。500kV系統においては、他者との連系点の基準電圧を定め、両端母線電圧維持、設備分界点での無効電力を極力0にすることを目標に制御する。275以下kV系統においては、負荷供給系統の適正電圧維持・変動抑制、無効電力バランス適正化、送電損失低減(運用上下限電圧以内での電圧高め設定)を目標に制御する。
0013
電圧・無効電力制御システムVQCに用いられるアルゴリズムは、中央制御方式では、一般的に複数監視点における目標値に対する電圧偏差を一つの評価関数に纏め、これを最小化するための機器制御量を算出し、制御を行う方式が採用されている。評価関数としては、監視点の電圧偏差と監視送電線の送電損失最小化を採用することが多い。個別制御方式では一次、二次母線電圧、変圧器無効電力を適正に保つため、V−V制御方式を採用することが多い。
0014
送電損失低減の機能は電圧・無効電力制御システムVQCに組み込まれ、多くの会社で導入されている。その中には、オンラインで送電損失を計算し、その送電損失を最小にするように電圧・無効電力制御機器を制御したり、無効電力の消費箇所で無効電力を補償し、系統に余分な無効電力を流さないようにしたりする機能がある。しかし、各電気所の母線電圧を適正範囲に維持する制御が優先されるため、送電損失の低減機能が適正に機能していないのが実状である。この機能は、電力コスト低減という観点から重要であり、適正電圧維持と送電損失低減を双方満たす制御アルゴリズムの開発が望まれている。
0015
次に、近年環境保護の点から注目されている風力発電機の技術背景について、以下に記載する。今後の説明では、発電機と述べるものは風力発電機を意味するが、本発明の対象が風力発電機のみに限定されるものでないことに注意されたい。
0016
風力発電機は電力系統に連系しており、発電した電力を電力系統に供給する。集合型風力発電機、つまりウィンドファーム(WF)を系統に接続する際には、電圧変動を常時電圧の2%以内(電圧規定値)に抑制する必要がある。
0017
電圧を調整するために、系統接続箇所に無効電力を調整可能な調相設備を設置することが一般的である。
0018
また、風力発電機自身も無効電力を調整することで、電圧を調整できる。そのため、調相設備の状態を考慮した上で、風力発電機による電圧・無効電力制御を実施することは非常に重要となっている。
0020
また、本技術分野において、特許文献2の分散型電源群の制御方法及びシステムが知られている。特許文献2によると、各分散型電源の出力電圧値と出力電力値から各分散型電源を協調制御して有効電力及び無効電力を適正に配分することで、風力発電機群全体の有効電力変動を最小化すると記載されている。
0021
また、本技術分野において、特許文献3の自然エネルギー発電システムが知られている。特許文献3によると、送電線に接続した制御装置でウィンドファームWF内の情報に基づき、ウィンドファームWFの電圧が予め定められた値より小さい場合、同期調相機がウィンドファームWF内に出力する無効電力を制御すると記載されている。
先行技術
0022
特許第6416064号
特開2009−239990号公報
特開2013−198201号公報
発明が解決しようとする課題
0023
しかし、特許文献1の系統電圧制御状態決定装置、特許文献2の分散型電源群の制御方法及びシステム、特許文献3の自然エネルギー発電システムでは、電圧一定制御AVRや力率一定制御APFRのパラメータが無数に存在するため、ウィンドファームWF内の有効電力損失を小さくする制御状態を決定することが難しい。
0024
そこで、本発明は、風況によっては調相設備に余力(調相設備の無効電力補償量における現在値と上下限値の差分)があるため、調相設備と風力発電機の協調制御によって、電圧状態を満たしつつ、調相設備の容量制約内でウィンドファームWF内の有効電力損失を小さくすることを目的とする。
課題を解決するための手段
0025
上記課題を解決する為に本発明は、調相設備と発電機を含み連係点で電力系統に接続された電気所における発電機の制御状態決定装置であって、少なくとも調相設備における無効電力補償量と、発電機における電圧制御状態を入力し、電気所内の有効電力送電損失を求め、調相設備の余力と発電機の電圧制御状態を参照し、繰り返し潮流計算により有効電力損失の小さい電圧制御状態を決定する電圧制御状態決定部を備えることを特徴とする。
0026
また本発明は、調相設備と発電機を含み連係点で電力系統に接続された電気所における発電機の制御状態決定方法であって、少なくとも調相設備における無効電力補償量と、発電機における電圧制御状態と、電気所内の有効電力送電損失を得、調相設備の余力と発電機の電圧制御状態を参照し、有効電力損失の小さい電圧制御状態を決定することを特徴とする。
発明の効果
0027
本発明によれば、調相設備の余力と風力発電機の電圧制御状態を参照し、有効電力損失の減少方向にのみ制御状態を変更しながら潮流計算を繰返すことで、有効電力損失の小さい電圧制御状態を決定できる。
図面の簡単な説明
0028
本発明の実施例1に係る発電機の制御状態決定装置10と、これを適用した電力系統のハード構成例を示す概念図。
実施例1に係る発電機の制御状態決定装置の機能構成例を示す図。
発電機の制御状態決定装置の処理を示すフローチャートを示す図。
発電機の制御状態決定装置の表示部での表示例を示す図。
実施例2に係る発電機の制御状態決定装置の機能構成例を示す図。
実施例2に係る発電機の制御状態決定装置の処理を示すフローチャート。
発電機の制御状態決定装置の電圧調整優先順位の例を示す図。
実施例3に係る発電機の制御状態決定装置の機能構成例を示す図。
実施例3に係る発電機の制御状態決定装置の処理を示すフローチャート。
実施例4に係る発電機の制御状態決定装置の機能構成例を示す図。
実施例4に係る発電機の制御状態決定装置の処理を示すフローチャート。
実施例5に係る発電機の制御状態決定装置の機能構成例を示す図。
実施例5に係る発電機の制御状態決定装置の処理を示すフローチャート。
0029
以下、本発明の実施に好適な実施例について説明する。尚、下記はあくまでも実施例に過ぎず、下記具体的内容に発明自体が限定されることを意図するものではない。
0031
図1は、本実施例に係る発電機の制御状態決定装置10と、これを適用した電力系統のハード構成例を示す概念図である。図1上部は電力系統の構成例、図1下部は発電機の制御状態決定装置10の構成例を示している。
0032
図1上部に例示した電力系統は、無限大系統(巨大系統)100、ノード(母線)110、変圧器120、複数の発電機130、送電線路140、負荷150を備える。図1では、ノード110にノード番号(N1からN6、N100からN400)を適宜付与している。ノード110には、電力系統の保護、制御、監視などの目的に応じた各種の計測器(図示しない)が適宜設置されている。これらの計測器は、電力系統における状態量の計測器ばかりではなく、発電機における状態量や制御状態の計測器を含むものである。複数の発電機130と負荷150は、ノード110、変圧器120、送電線路140等を介して相互に連系されている。
0033
図1の電力系統において、本発明が制御の対象とするのは発電機130であり、これらの発電機は図示を省略しているがノード110に調相設備160が設置されている。なおウィンドファームWFの場合には、ノード110に調相設備160が設置されているが、本発明は調相設備と発電機が併用されるものであれば適用が可能である。別な言い方をすると本発明は、調相設備と発電機を含み連係点で電力系統に接続された電気所に適用可能ということができる。以下の事例では電気所がウィンドファームWFである場合を想定している。
0034
通信ネットワーク300は、電力系統の各部と図1下部に例示した発電機の制御状態決定装置10とを接続する。例えば、電力系統のノード110に設置された計測器で計測された計測データは、信号に変換され、通信ネットワーク300を介して後述する発電機の制御状態決定装置10の通信部23に送られる。かくして、計測器からは当該ノードにおける電力系統及び背後電源における各種の状態量が発電機の制御状態決定装置10に時系列的に収集されている。
0035
発電機の制御状態決定装置10は計算機システムで構成されており、ディスプレイ装置等の表示部21、キーボードやマウス等の入力部22、通信部23、プロセッサ24、メモリ25、および各種データベースDBがバス線26に接続されている。
0039
プロセッサ24は、計算プログラムを実行して表示すべき画像データの指示や、各種データベース内のデータの検索等を行う。一つまたは複数の半導体チップとして構成してもよいし、または、計算サーバのようなコンピュータ装置として構成してもよい。
0040
メモリ25は、例えば、RAMとして構成され、コンピュータプログラムを記憶したり、各処理に必要な計算結果データ及び画像データ等を記憶したりする。メモリ25に格納された画面データは、表示部21に送られて表示される。
0041
データベースDBとしては、調相設備無効電力補償量データベースDB1、電圧制御状態現在値データベースDB2、系統状態データベースDB3、有効電力損失データベースDB4、電圧制御状態データベースDB5を備える。これらのデータベースDBに格納されたデータは、ノードに設置された計測器から直接得られた状態量であり、さらには状態量を用いた推定処理により二次的に得られた状態量であり、さらには発電機の制御状態決定装置10での処理における中間生成物としての状態量であり、さらには発電機の制御状態決定装置10での処理における最終生成物としての状態量である。
0042
図2は、実施例1に係る発電機の制御状態決定装置10の機能構成例を示す概念図である。発電機の制御状態決定装置10は、調相設備無効電力補償量データベースDB1、電圧制御状態現在値データベースDB2、系統状態データベースDB3、有効電力損失データベースDB4、電圧制御状態データベースDB5、電圧制御状態決定部11、潮流計算部12を備える。
0043
背景技術の説明において、電圧・無効電力制御機器は、発電機の機器と電力輸送設備の機器の二つに分けられ、かつ電力輸送設備の機器には調相設備を含むことについて述べたが、上記のデータベースDBの構成から明らかなように、本発明においては発電機についての電圧制御状態現在値データベースDB2と、調相設備についての調相設備無効電力補償量データベースDB1を、系統状態についての系統状態データベースDB3により関連付けて入力するシステム構成を採用する。
0044
これにより、背後電源を有するノードにおける発電機と調相設備による、無効電力の調整可能量が系統状態とともに把握できる。これらのデータは、例えば発電機と調相設備を備えたウィンドファームのノードにおいて計測したデータ群を備えたものである。なお、複数のウィンドファームを管理する場合には、ウィンドファームごとにこれらのデータ群が準備されることになる。
0045
電圧・無効電力制御機器として調相設備に着目した時の、調相設備無効電力補償量データベースDB1には、電力系統に設置された調相設備における無効電力補償量が格納されている。例えば発電機が風力発電機である場合に、その発電機には多くの場合に調相設備160を付属するが、調相設備の設備容量、現在時点における設備使用容量などが、格納記憶されている。なお無効電力補償量は、その調相設備における現在の運用状態の場合に、進み、あるいは遅れ方向の無効電力をどれだけ供給可能な量であるか、補償できるかを示している。
0046
電圧・無効電力制御機器として発電機に着目した時の、電圧制御状態現在値データベースDB2には、風力発電機の制御モードとそのパラメータの現在値が格納されている。背景技術の説明によれば、風力発電機の制御モードとしては、AVR(励磁電流調整により端子電圧一定制御)、APFR(発電機出力に応じて力率一定制御)、AQR(発電機出力に応じて無効電力一定制御)、AVQC(昇圧用変圧器タップ調整により端子電圧を一定にしながら無効電力制御)等が例示されており、電力系統の発電機ごとにこれらの区別とパラメータの現在値が格納されることになる。
0047
系統状態データベースDB3には、電力系統の各ノードにおける有効電力P、無効電力Q、電圧V等の系統監視情報が格納されている。なお上記データベースDB1、DB2、DB3に格納されるデータは、ノードに設置した計測器から直接あるいは間接的に取り込んだ入力データである。
0048
有効電力損失データベースDB4には、電力系統の送電線における有効電力損失が格納されている。この有効電力損失は、発電機の制御状態決定装置10での処理における中間生成物あるいは最終生成物としての状態量に位置付けられる。なおこの場合に、電力系統の送電線における有効電力損失とは、ウィンドファーム内の発電機と電力系統への連系点の間での有効電力損失を意味している。
0049
電圧制御状態データベースDB5には、風力発電機の制御モード(電圧一定制御AVRモード等)とそのパラメータの現在値が格納されている。この制御モードとそのパラメータの現在値は、発電機の制御状態決定装置10での処理における最終生成物としての状態量に位置付けられる。
0050
電圧制御状態決定部11では、調相設備無効電力補償量と、電圧制御状態と、有効電力送電損失を入力して、電圧制御状態の最適値を決定し、有効電力損失と、電圧制御状態の最適値を出力する。
0051
潮流計算部12では、系統状態と、電圧制御状態を入力して、潮流計算を実施し、有効電力送電損失と、無効電力補償量を出力する。
0052
電圧制御状態決定部11と潮流計算部12による、これら一連の処理は電気所単位(この事例ではウィンドファームの単位)で実行される。従って、複数のウィンドファームが管理対象とされる場合には、ウィンドファームごとに実施されることになる。
0053
図3は、発電機の制御状態決定装置の処理のフローチャートを示す。
0055
処理ステップS2では、観測値または状態推定結果より、当該ウィンドファームを形成する電力系統の有効電力損失を算出する。有効電力損失を算出するには、ウィンドファームWF連系点(系統接続箇所)の有効電力潮流と風力発電機の合計出力の差分より算出しても良いし、各送電線の有効電力損失の和より算出しても良い。これによりウィンドファーム内の有効電力損失を算出する。これは電気所内の有効電力損失を算出したことを意味する。
0056
処理ステップS3では、当該ウィンドファームにおける調相設備無効電力補償量、電圧制御状態の現在値(観測値)を取得する。調相設備無効電力補償量、電圧制御状態は、適宜調相設備無効電力補償量データベースDB1、電圧制御状態現在値データベースDB2に格納されている。調相設備の無効電力補償量の現在値に対して、最大値及び最小値を比較することで、それぞれの方向にどれだけ余力があるかを確認することができる。例えば調相設備について、それぞれ進み方向及び遅れ方向の無効電力補償量を定める。
0057
処理ステップS4では、当該ウィンドファームにおける発電機について電圧制御状態を選択する。選択の際には、制御モード(電圧一定制御AVRモード等)の切替えと、そのパラメータの変更等を実施する。有効なパラメータを決定する際には、線形に探索しても良いし、ランダムに探索しても良い。
0058
処理ステップS5では、潮流計算により有効電力損失、調相設備無効電力補償量を算出する。この場合の潮流計算は、当該ウィンドファームにおける調相設備無効電力補償量、電圧制御状態の現在値(観測値)を固定値とし、当該ウィンドファームにおける発電機についての電圧制御状態を可変とするものであり、発電機の電圧制御状態ごとの複数の有効電力損失、調相設備無効電力補償量の組み合わせが算出される。
0059
処理ステップS6では、処理ステップS5で求めた発電機の電圧制御状態ごとの複数の有効電力送電損失、調相設備無効電力補償量の組み合わせについて、運用制約違反しているかを判定する。運用制約とは、過負荷や電圧逸脱等のことである。違反している場合、処理ステップS7に進む。違反していない場合は処理ステップS8に進む。
0060
処理ステップS7では、運用制約を解消する。それぞれの運用制約違反について、各種の一般的に知られた方法によって、違反を解消する。解消後、処理ステップS5に進む。
0061
処理ステップS8では、有効電力損失の計算値(今回)<有効電力損失の計算値(最適値)の場合、処理ステップS9に進む。有効電力損失の計算値(今回)<有効電力損失の計算値(最適値)の場合、処理ステップS10に進む。
0063
処理ステップS10では、計算条件を満たした場合、フローを終了する。計算条件を満たさない場合、処理ステップS4に戻る。計算終了条件とは、例えば一定時間の経過と設定し、当時間が経過したタイミングで有効電力損失が最も小さい電圧制御状態を電圧制御状態の最適値として決定する。
0064
上記の一連の処理ステップによれば、調相設備および電圧制御状態が定まった状態で、発電機の運用を可変にした時に、有効電力が最小にできる発電機の運用(電圧制御状態)を定めたものということができる。つまり、調相設備の余力を最大限生かした状態で、かつ有効電力が最小にできる発電機の電圧制御状態をさだめたものである。
0065
図4に、発電機の制御状態決定装置の表示部での表示例を示す。表示部では、当該ウィンドファームについて、前回(最適値)及び、候補における、有効電力損失(風車総出力、連系点潮流値等を含む)、調相設備余力、各風力発電機の制御モードとそのパラメータが表示される。候補における有効電力損失が前回の有効電力損失より小さい場合、自動で候補における風力発電機の制御モードとそのパラメータを採用しても良いし、手動で候補選択ボタンを押すことで変更できるようにしても良い。
0066
実施例1によれば、調相設備の余力(調相設備の無効電力補償量における現在値と上下限値の差分)と風力発電機の電圧制御状態を参照し、有効電力損失の減少方向にのみ制御状態を変更しながら潮流計算を繰返すことで、有効電力損失の小さい電圧制御状態を決定できる。
0068
図5に、本実施例の発電機の制御状態決定装置10を示す。実施例1の発電機の制御状態決定装置との違いは、電圧調整優先順位データベースDB6を更に備える点にある。
0069
電圧調整優先順位データベースDB6には、電圧調整の優先順位が格納されている。
0070
図6は、図3の発電機の制御状態決定装置の処理の全体を示すフローチャートのステップS4を後述のステップS4’に変更した、実施例2に係る発電機の制御状態決定装置の処理を示すフローチャートの例を表している。
0071
実施例1との差分である本処理ステップS4’では、電圧優先順位を用いて電圧制御状態を選択する。
0072
図7に電圧調整優先順位の表示例を示す。風力発電機の電圧制御状態を決定する際に、優先順位の高い発電機から制御モード(電圧一定制御AVRモード等)やそのパラメータを選択していく。発電機Aの優先順位が10位、発電機Bの優先順位が1位、発電機Zの優先順位が5位であることを示している。この優先順位は、ある断面を用いた感度解析により作成しても良いし、過去データを用いて作成しても良い。
0073
実施例1では、ウィンドファームに発電機が100台存在する場合に、100台すべてについて、風力発電機の制御モード(電圧一定制御AVRモード等)とそのパラメータを可変とする潮流計算を繰り返し実行することになるが、実施例2では予め優先順位が定められた上位機について実行することができるので、演算負荷軽減、演算時間短縮に貢献できる。
0074
本発明の実施例3に係る発電機の制御状態決定装置を、図8を用いて説明する。尚、実施例1で説明した内容と重複する説明については省略する。
0075
図8に、本実施例の発電機の制御状態決定装置10を示す。実施例1の発電機の制御状態決定装置との違いは、発電機予測値データベースDB7を更に備える点にある。発電機予測値データベースDB7には、発電機予測値が格納されている。
0076
そのうえで潮流計算部12は、潮流計算の際に系統状態の他に発電機予測値を併用し、有効電力送電損失、調相設備無効電力補償量についての近未来の予測値を算出することで、今後の動向を含めた潮流演算を実現する。
0077
図9は、図3の発電機の制御状態決定装置の処理の全体を示すフローチャートのステップS1を系統状態(観測値)、後述の処理ステップS1’に変更した、実施例3に係る発電機の制御状態決定装置の処理を示すフローチャートの例を表している。実施例1との差分である本処理ステップS1’では、系統状態(観測値)、発電機予測値を取得する。
0078
本発明の実施例4に係る発電機の制御状態決定装置を、図10を用いて説明する。尚、実施例1で説明した内容と重複する説明については省略する。
0081
図11は、図3の発電機の制御状態決定装置の処理の全体を示すフローチャートに後述の処理ステップS11を追加した、実施例4に係る発電機の制御状態決定装置の処理を示すフローチャートの例を表している。
0082
実施例1との差分である本処理ステップS11では、更新周期を変更する。
0083
実施例4によれば、更新周期変更をすることで、発電機の制御状態決定装置における演算処理を軽減することができる。
0084
本発明の実施例5に係る発電機の制御装置を、図12を用いて説明する。尚、実施例1で説明した内容と重複する説明については省略する。
0085
図12に、本実施例の発電機の制御状態決定装置10を示す。実施例1の発電機の制御状態決定装置との違いは、電圧制御状態現在値データベースDB2を電圧制御状態指令値データベースDB8に変更し、発電機の制御装置とする点にある。
0086
電圧制御状態指令値データベースDB8には、電圧制御状態指令が格納されている。
0088
実施例1との差分である本処理ステップS12では、電圧制御状態を発電機へ指令する。
実施例
0089
実施例1から実施例4は、発電機の制御状態決定装置をいわゆる支援装置に位置づけ、運用者が表示内容を確認して発電機の調整を行うことを期待する装置構成である。これに対し、実施例5は判断結果を直接の制御に結び付ける制御装置を構成したものということができる。
0090
DB1:調相設備無効電力補償量データベース
DB2:電圧制御状態現在値データベース
DB3:系統状態データベース
DB4:有効電力損失データベース
DB5:電圧制御状態データベース
DB6:電圧調整優先順位データベース
DB7:発電機予測値データベース
DB8:電圧制御状態指令値データベース
10:発電機の制御状態決定装置
11:電圧制御状態決定部
12:潮流計算部
13:更新周期変更部
21:表示部
22:入力部
23:通信部
24:プロセッサ
25:メモリ
26:バス線
100:無限大系統(巨大系統)
110:ノード
120:変圧器
130:発電機
140:送電線路
150:負荷
160:調相設備
300:通信ネットワーク
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