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課題
解決手段
概要
背景
従来、トンネル切羽の前方地山の地質を把握する手法として、反射法弾性波探査が知られている。この探査方法では、トンネル内において弾性波を発生させ、物性の異なる地質境界面(反射面)において反射された反射波を測定して、反射面の位置を特定する。そして、反射面を、地山に存在する何らかの不連続面(地質境界や断層)と判定する。
そこで、トンネルの掘削予定領域における反射面の位置を用いて、トンネル切羽前方の地山の地質構造を評価する技術が開示されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。特許文献1に記載の技術では、地山内で反射してきた反射波を地震計の観測波形から取り出し、これら反射波データと基準弾性波速度とを用いて地盤内の反射強度分布を作成する。そして、この反射強度分布を、反射強度の大きな地点が密に分布する不均質ゾーンとそうでない均質ゾーンとに区分し、これらの境界における反射強度を算出し、この反射強度に基づいて算出した各ゾーンにおける修正弾性波速度を用いてトンネル軸線上での各境界の位置を修正する。
非特許文献1には、トンネル切羽前方の地質不連続帯(破砕帯・帯水層等)を探査するトンネル切羽前方探査機が記載されている。この探査機の測定では、トンネル坑内の孔壁内に設置した発振孔内で少量の火薬を発破することにより弾性波を発生させる。そして、切羽前方の地質不連続帯から反射する反射波を坑内の孔壁内に設置した複数の3成分レシーバーで受振して記録する。その後、取得した反射波形を解析して、地中の反射面(主に、速度や密度が変化する地層境界面)を含む切羽前方の弾性波速度分布図を出力する。
概要
地山の地質構造を、より的確に評価することができる地質構造評価方法、地質構造評価システム及び地質構造評価プログラムを提供する。評価装置20は、制御部21、弾性波速度分布を記憶している弾性波速度分布記憶部22及び地質構造情報記憶部23を備える。制御部21は、弾性波速度分布記憶部22に記憶されている3次元速度分布から作成した2次元断面において対象エリアを特定する。制御部21は、特定した対象エリア毎に、低速度部を特定し、低速度部の周囲の速度コンターの間隔及び形状を用いて、低速度部から伸長する谷部の伸長方向を特定する。制御部21は、谷部の伸長方向を用いて、複数の低速度領域が連続していると判定される場合には、対象エリアにおける軟質部として特定して、この軟質部の位置(座標)を地質構造情報記憶部23に記憶する。
目的
効果
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請求項1
弾性波速度分布図を用いて地質構造を評価する地質構造評価方法であって、対象エリアにおける弾性波速度分布図において低速度部を特定し、前記低速度部の周囲の速度コンターの間隔及び形状を用いて、前記低速度部から伸長する谷部の伸長方向を特定し、前記谷部の伸長方向を用いて、複数の低速度領域が連続していると判定される場合には、前記対象エリアにおける軟質部として特定することを特徴とする地質構造評価方法。
請求項2
前記弾性波速度分布図は、弾性波速度の3次元分布であって、前記弾性波速度分布図から、トンネルの掘削予定領域を含む2次元断面図を生成し、前記2次元断面図におけるコンター数に基づいて、複数の対象エリアに分割し、分割した前記対象エリア毎に、低速度部を特定して、複数の低速度領域が連続しているか否かの判定処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の地質構造評価方法。
請求項3
前記谷部の端部において、他の谷部の端部が所定距離内で近接し、かつ前記谷部の伸長方向のずれが許容範囲内の場合には、前記谷部と前記他の谷部とを連続させた位置を、前記軟質部として特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の地質構造評価方法。
請求項4
前記谷部と他の谷部とを連続させる伸長方向が、前記谷部を含む地質の性質に応じて特定される地質の延在方向に位置する場合には、前記谷部と前記他の谷部とを連続させた位置を、前記軟質部として特定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の地質構造評価方法。
請求項5
弾性波速度分布図を記憶している弾性波速度分布図記憶部に接続された制御部を備え、地質構造を評価する地質構造評価システムであって、前記制御部は、対象エリアにおける弾性波速度分布図において低速度部を特定し、前記低速度部の周囲の速度コンターの間隔及び形状を用いて、前記低速度部から伸長する谷部の伸長方向を特定し、前記谷部の伸長方向を用いて、複数の低速度領域が連続していると判定される場合には、前記対象エリアにおける軟質部として特定することを特徴とする地質構造評価システム。
請求項6
技術分野
背景技術
0002
従来、トンネル切羽の前方地山の地質を把握する手法として、反射法弾性波探査が知られている。この探査方法では、トンネル内において弾性波を発生させ、物性の異なる地質境界面(反射面)において反射された反射波を測定して、反射面の位置を特定する。そして、反射面を、地山に存在する何らかの不連続面(地質境界や断層)と判定する。
0003
そこで、トンネルの掘削予定領域における反射面の位置を用いて、トンネル切羽前方の地山の地質構造を評価する技術が開示されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。特許文献1に記載の技術では、地山内で反射してきた反射波を地震計の観測波形から取り出し、これら反射波データと基準弾性波速度とを用いて地盤内の反射強度分布を作成する。そして、この反射強度分布を、反射強度の大きな地点が密に分布する不均質ゾーンとそうでない均質ゾーンとに区分し、これらの境界における反射強度を算出し、この反射強度に基づいて算出した各ゾーンにおける修正弾性波速度を用いてトンネル軸線上での各境界の位置を修正する。
0004
非特許文献1には、トンネル切羽前方の地質不連続帯(破砕帯・帯水層等)を探査するトンネル切羽前方探査機が記載されている。この探査機の測定では、トンネル坑内の孔壁内に設置した発振孔内で少量の火薬を発破することにより弾性波を発生させる。そして、切羽前方の地質不連続帯から反射する反射波を坑内の孔壁内に設置した複数の3成分レシーバーで受振して記録する。その後、取得した反射波形を解析して、地中の反射面(主に、速度や密度が変化する地層境界面)を含む切羽前方の弾性波速度分布図を出力する。
0005
特開2016−95140号公報
先行技術
0006
エフティーエス株式会社 「製品情報:前方探査『トンネル切羽前方探査機』TSP303」、[online]、[平成31年3月18日検索]、インターネット〈URL:http://www.fts-web.jp/products/?id=1449404839-259243&mca=5&ca=&sk=〉
発明が解決しようとする課題
0007
反射波は、地質の性質が明確に異なる面で生じるため、反射法弾性波探査では、地質境界が短い範囲で繰り返されている構成や軟質部の検出を正確に行なうことは難しかった。また、通常、低速度部は軟質部であると判断される。しかしながら、非特許文献1の探査機で出力された弾性波速度分布図における低速度部の位置は、反射面から推定される低速度部の位置とは必ずしも一致していないため、この弾性波速度分布図の低速度部の位置の信頼性が低く、地質構造を的確に評価できていなかった。
課題を解決するための手段
0008
上記課題を解決する地質構造評価方法は、弾性波速度分布図を用いて地質構造を評価する地質構造評価方法であって、対象エリアにおける弾性波速度分布図において低速度部を特定し、前記低速度部の周囲の速度コンターの間隔及び形状を用いて、前記低速度部から伸長する谷部の伸長方向を特定し、前記谷部の伸長方向を用いて、複数の低速度領域が連続していると判定される場合には、前記対象エリアにおける軟質部として特定する。
発明の効果
0009
本発明によれば、地山の地質構造を、的確に評価することができる。
図面の簡単な説明
0010
実施形態における地質構造評価システムの構成を説明する概略構成図。
実施形態におけるハードウェア構成の説明図。
実施形態における地質構造評価処理の処理手順を説明する流れ図。
実施形態における3次元弾性波速度分布図を説明する説明図。
実施形態における2次元速度分布断面図を説明する説明図であって、(a)は2次元垂直断面図、(b)は2次元水平断面図を示す。
実施形態における対象エリア毎の処理を説明する説明図であって、(a)は低速度部を特定した状態、(b)は谷部の伸長方向を特定した状態、(c)は連続する低速度領域を判定した状態、(d)は軟質部の位置を特定した状態を示す。
実施形態において軟質部の位置を説明する説明図であって、(a)は2次元垂直断面図、(b)は2次元水平断面図を示す。
変更例を説明するための2次元水平断面図。
実施例
0011
以下、図1〜図7を用いて、地質構造評価方法、地質構造評価システム及び地質構造評価プログラムを具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態では、地質構造評価システムとしての評価装置20を用いる。
0012
(ハードウェア構成)
図2を用いて、評価装置20を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
0013
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードや無線インタフェース等である。記憶部H14は、評価装置20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
0014
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、評価装置20における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各サービスのための各種プロセスを実行する。
0015
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
0016
(システム構成)
次に、図1を用いて、評価装置20の機能を説明する。
評価装置20は、地質構造の評価を実行するコンピュータシステムである。この評価装置20には、入力装置15、表示装置16が接続される。入力装置15は、キーボードやポインティングデバイス等であり、各種情報を入力するために用いられる。表示装置16は、各種情報を表示するディスプレイ等である。本実施形態では、3次元弾性波速度分布図や2次元速度分布断面図、軟質部の位置等を表示する。
0017
入力装置15は、測定装置10から3次元弾性波(P波)速度分布図を取得して評価装置20に供給する。本実施形態では、測定装置10として、「Amberg Technology社」製のトンネル切羽前方探査機「TSP303」を用いる。
0018
測定装置10は、トンネル坑内の孔壁内において発生された弾性波が切羽前方の地質不連続帯において反射した反射波を、坑内に設置した複数の3成分レシーバーで受振して記録する。そして、この測定装置10は、取得した反射波形を解析し、評価対象領域を構成する3次元の各グリッド(座標)における弾性波速度を算出し、3次元弾性波速度分布図を生成して記憶する。更に、測定装置10は、この弾性波速度分布図に、トンネル切羽前方における反射面の位置(座標)を含める。
0019
評価装置20は、制御部21、弾性波速度分布図記憶部22及び地質構造情報記憶部23を備える。
制御部21は、地質構造の評価処理を実行する。この制御部21は、後述する処理(断面図作成段階、エリア特定段階、軟質部特定段階等を含む処理)を行なう。このための地質構造評価プログラムを実行することにより、制御部21は、断面図作成部211、エリア特定部212及び軟質部特定部213として機能する。
0020
断面図作成部211は、3次元弾性波速度分布図から、2次元断面図を生成する処理を実行する。本実施形態では、断面図作成部211が、水平断面図と、これに直交する垂直断面図とを生成する場合を想定する。ここで、水平断面図及び垂直断面図は、その中心軸を、トンネル及びトンネル切羽前方の中心軸とした断面図である。
0021
エリア特定部212は、2次元断面図において、対象エリアに分割する処理を実行する。本実施形態では、最大コンター数より少ない速度コンター数を含む対象エリア毎に分割する。この場合、エリア特定部212は、速度変化が緩やかな部分(速度コンターの密度が低い領域)を境として対象エリアを分割する。このため、エリア特定部212は、最大コンター数と、速度変化が緩やかな分割面を特定する基準コンター密度とを記憶している。基準コンター密度は、トンネル掘削方向の所定距離(例えば数m)の領域内に含まれるコンター数により算出する。
0022
軟質部特定部213は、各対象エリアにおける軟質部の位置(座標)を特定する処理を実行する。この軟質部特定部213は、速度コンターを用いて、低速度領域の範囲を特定することにより、軟質部の位置を特定する。軟質部特定部213は、低速度領域の範囲を特定するために、複数の低速度領域が連続していると判定するための連続条件に関するデータを記録している。この連続条件には、近隣の谷部の端部との距離(近接距離)と、両谷部の伸長方向のずれの許容範囲(連結角度範囲)が含まれる。そして、軟質部特定部213は、連続条件を満たした近隣の谷部を接続した部分を、軟質部として特定し、地質構造情報記憶部23に記録する。
0023
弾性波速度分布図記憶部22は、測定装置10から取得した3次元弾性波速度分布図を記憶する。この3次元弾性波速度分布図は、測定装置10から取得した場合に記憶される。この弾性波速度分布図には、評価対象領域を構成する各グリッド(3次元座標)において弾性波速度が記録されている。本実施形態のグリッドは、トンネルの進行方向に1000等分、縦横方向に200等分したそれぞれの位置に配置される。更に、弾性波速度分布図には、測定装置10が特定した反射面の位置(座標)が含まれる。
0025
地質構造情報記憶部23は、評価装置20によって軟質部の位置を特定した地質構造情報を記憶する。この地質構造情報は、後述する地質構造評価処理を実行した場合に記憶される。本実施形態では、地質構造情報として、水平方向及び垂直方向における2次元速度分布断面図における軟質部の位置(2次元断面における座標)が記憶される。
0026
(地質構造評価処理)
次に、図3〜図7を用いて、地質構造評価処理について説明する。
まず、評価装置20の制御部21は、3次元弾性波速度分布図の取得処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、制御部21の断面図作成部211は、弾性波速度分布図記憶部22から3次元弾性波速度分布図を取得する。
0027
次に、評価装置20の制御部21は、2次元速度分布断面図の作成処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、制御部21の断面図作成部211は、3次元弾性波速度分布図において、トンネル30及び切羽前方の掘削予定領域31を特定する。そして、断面図作成部211は、掘削予定領域31を含む垂直面及び水平面において、垂直断面図及び水平断面図を切り出す。
0028
図4に示すように、3次元弾性波速度分布図から、垂直面に含まれる速度コンターを抽出した垂直断面図VP1、水平面に含まれる速度コンターを抽出した水平断面図HP1を切り出す。図において、各断面図(VP1、HP1)中における曲線は、速度コンターを示している。更に、斜線網掛け領域は、測定装置10が特定した反射面RS1である。
0029
図5(a)は、切り出した垂直面における2次元速度分布断面図(垂直断面図VP1)であり、図5(b)には、切り出した水平面における2次元速度分布断面図(水平断面図HP1)である。垂直断面図VP1及び水平断面図HP1の中心には、トンネル30の領域と、この切羽面30fから先の掘削予定領域31が位置する。なお、図5(a)及び(b)では、掘削予定領域31を、ハッチング領域で示す。
0030
次に、評価装置20の制御部21は、対象エリアの分割処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、制御部21のエリア特定部212は、単位距離毎にコンター密度を算出し、基準コンター密度と比較して、コンター密度が基準コンター密度以下となる複数の分割候補位置を特定する。更に、エリア特定部212は、分割開始位置から特定した分割候補位置までの距離に応じて、この距離内に含まれるコンター数を算出し、最大コンター数と比較する。
0031
そして、エリア特定部212は、分割候補位置のうち、算出したコンター数が、最大コンター数以下の分割候補位置を、分割終了位置として特定する。エリア特定部212は、この分割終了位置で、分割開始位置からの一つの対象エリアとして区切る。次に、エリア特定部212は、この対象エリアの分割終了位置を分割開始位置として、再度、コンター密度及びコンター数の算出と分割終了位置の特定とを繰り返して、次の対象エリアを区切る。この処理を、掘削予定領域全体について繰り返す。
0032
そして、分割した対象エリア毎に、以下の処理を繰り返して実行する。
以下の処理では、分割した1つの対象エリアとして、図5(a)に示す領域A1を用いて説明する。
0033
まず、評価装置20の制御部21は、低速度部の特定処理を実行する(ステップS1−4)。具体的には、制御部21の軟質部特定部213は、対象エリアにおいて、弾性波速度が、その周囲よりも最も低い速度となっている閉図形を特定する。
例えば、図6(a)において、領域A1において、弾性波の速度が極小値の閉図形(低速度部LS1)を特定する。
0034
次に、評価装置20の制御部21は、低速度部から谷部の伸長方向の特定処理を実行する(ステップS1−5)。具体的には、制御部21の軟質部特定部213は、低速度部LS1の外周において曲率が小さい形状の部分(突出部)を特定する。次に、軟質部特定部213は、低速度部LS1の周囲で、次の速度コンターで構成される等速度領域を特定し、速度コンターの間隔と等速度領域の曲率とを用いて、この速度コンターにおける突出部を特定する。この突出部の特定を繰り返し、特定した突出部を繋げることにより谷部の伸長方向を特定する。なお、谷部の特定は、速度コンターにおいて、速度傾向が反転する位置で終了させる。
0035
図6(b)では、4つの低速度部LS1から、谷部において速度が上昇する方向(谷部の伸長方向)を矢印で示している。ここで、低速度部LS1から延びる谷部では、更に速度上昇を示す速度コンターがなく、又は突出部がない部分が端部になる。
0036
次に、評価装置20の制御部21は、連続する低速度領域があるか否かの判定処理を実行する(ステップS1−6)。具体的には、制御部21の軟質部特定部213は、特定した各谷部の端部において、連続条件を満たす他の谷部の端部があるか否かを判定する。ここでは、軟質部特定部213は、両谷部の端部の距離が近接距離内にあるか否かを判定する。軟質部特定部213は、両谷部の端部の距離が近接距離内にある場合には、両谷部の端部における谷部の伸長方向のずれ、又は低速度部から谷部の端部までの平均的な伸長方向のずれが、許容範囲内か否かを判定する。そして、軟質部特定部213は、伸長方向のずれが許容範囲内にある場合には、連続条件を満たすと判定する。
0037
図6(c)において〇印で囲んだ部分C1では、連続条件を満たすため、2つの谷部を含む低速度領域は連続すると判定する。また、×印の部分では、連続条件を満たさないため、2つの谷部を含む低速度領域は連続しないと判定する。
0038
ここで、連続する低速度領域があると判定した場合(ステップS1−6において「YES」の場合)には、評価装置20の制御部21は、連続させた低速度領域を軟質部とした記録処理を実行する(ステップS1−7)。具体的には、制御部21の軟質部特定部213は、2つの谷部を含む低速度領域を谷部の伸長方向に連結した平滑線を生成する。そして、この平滑線の座標を、軟質部として、地質構造情報記憶部23に記録する。
図6(d)において、2つの谷部の伸長方向に低速度領域を結んだ平滑線SP1を生成し、平滑線SP1の位置(座標)を地質構造情報記憶部23に記憶する。
0039
一方、連続する低速度領域がないと判定した場合(ステップS1−6において「NO」の場合)には、評価装置20の制御部21は、連続した低速度領域を軟質部として特定した記録処理(ステップS1−7)をスキップする。
0040
そして、分割した対象エリアのすべてについて、ステップS1−4〜S1−7を繰り返して実行した場合には、地質構造評価処理を終了する。
例えば、図7(a)の垂直断面図VP1及び図7(b)の水平断面図HP1では、破線の座標を軟質部として特定し、地質構造情報記憶部23に記録する。
0041
(特定した軟質部の検証)
実際の現場において、トンネル切羽前方の掘削予定領域を掘り進めたところ、掘削予定領域において実際に出現した軟質部と、掘削予定領域31において図7に破線で示した軟質部の位置とが、ほぼ一致することが判明した。
0042
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、評価装置20の制御部21は、低速度部から谷部の伸長方向の特定処理(ステップS1−5)を実行し、連続する低速度領域がある場合(ステップS1−6において「YES」の場合)、連続させた低速度領域を軟質部とした記録処理を実行する(ステップS1−7)。これにより、反射法弾性波探査では検出が難しかった軟質部を、弾性波速度分布図を用いて、的確に評価することができる。
0043
(2)本実施形態では、評価装置20の制御部21は、連続条件を用いて、連続する谷部があるか否かの判定処理(ステップS1−6)を実行する。連続条件には、両谷部の伸長方向のずれが許容範囲であることが含まれる。これにより、地質構造の連続性を考慮して、弾性波速度分布図を用いて、軟質部を、的確に評価することができる。
0044
(3)本実施形態では、評価装置20の制御部21は、対象エリア毎の分割処理(ステップS1−3)を実行し、対象エリア毎に、連続する低速度領域の有無を判定する(ステップS1−6)。トンネル掘削においては、硬い地質に含まれる相対的な軟質部を把握したいことがある。このため、対象エリアに、比較的高速度領域が占める割合が多い領域や低速度領域が占める割合が多い領域が混在する場合にも、各対象エリアにおける軟質部をそれぞれ把握することができる。
0045
(4)本実施形態では、評価装置20の制御部21は、2次元速度分布断面図の作成処理(ステップS1−2)において、垂直断面図VP1及び水平断面図HP1を切り出し、各断面図(VP1,HP1)において軟質部を特定する。これにより、直交する平面方向と高さ方向の2つから軟質部の位置を把握することができる。
0046
(5)本実施形態では、垂直断面図VP1及び水平断面図HP1においては、トンネル30及び掘削予定領域31が中心に位置するように、各対象エリアを分割する。これにより、トンネル周囲の地山の地質構造を評価することができる。
0047
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、連続する低速度領域があるか否かの判定処理(ステップS1−6)において、評価装置20の制御部21は、両谷部の端部の距離及び谷部の伸長方向のずれを用いた。ここで、連続する低速度領域があるか否かの判定処理は、両谷部の端部の距離及び谷部の伸長方向のずれを用いて行なう処理に限られない。例えば、谷部が存在する地質の性質に応じて、地質の延在方向を特定し、この方向を用いて、連続する低速度領域があるか否かの判定処理を実行してもよい。
0048
例えば、図8に示すように、掘削予定領域に、地質としてチャート領域が存在する場合を想定する。このチャート領域では、複数の地質が層状で堆積していることが多い。このため、チャート領域における谷部の端部が、他の端部と離れていても、このチャート領域において既に特定された軟質部の延在方向と、両谷部を連続させた方向とがほぼ平行である場合には、両谷部を含む低速度領域が連続していると判定してもよい。
0049
図8に示すチャート領域に示される破線方向に低速度領域が延在している場合、この低速度領域の方向の許容範囲の角度内にある(低速度領域の方向とほぼ平行な)2つの破線矢印は、距離が遠くても、連続する低速度領域と判定する。
0050
また、低速度部を含む地質が、環状の連続性(延在方向)を有する場合や放射状の連続性を有する場合には、他の低速度部の延在方向や速度コンターの間隔に基づいて、その谷部を含む低速度領域が連続していると判定できる。更に、花崗岩の地質の場合には、方状節理が多いため、離間している2つの谷部を連続させたときの伸長方向が、他の谷部の延長方向に対して直交の所定角度範囲内の場合には、その谷部を含む低速度領域が連続していると判定できる。
0051
・上記実施形態においては、評価装置20の制御部21は、低速度部から谷部の伸長方向の特定処理を実行する。ここで、低速度部として、弾性波の速度が極小値の閉図形を特定した。谷部の伸長方向を特定する方法は、これに限定されない。例えば、最低速度部や等速度領域の曲率(最小曲率部)に基づいて、コンターの間隔や形状を特定し、谷部の伸長方向を特定してもよい。また、谷部の伸長方向を特定することができれば、コンターの間隔や形状は、等速度領域の曲率に基づいて特定する場合に限られず、コンターの曲線の変化量(微分による計算値等)を用いて特定してもよい。
0052
・上記実施形態では、低速度部から谷部の伸長方向の特定処理(ステップS1−5)において、評価装置20の制御部21は、突出部の特定を繰り返し、特定した突出部を繋げることにより谷部の伸長方向を特定する。ここで、谷部を低速度部LS1から多数の谷部の伸長方向を特定できる場合には、このうち主要な伸長方向に限定してもよい。ここで、主要な伸長方向としては、例えば、より低い速度コンターの間隔が広い谷部の伸長方向、他の低速度部の延在方向とほぼ平行となる方向等を用いることができる。そして、その伸長方向の端部において、連続条件が満たされる他の谷部の端部があるか否かにより、連続する低速度領域があるか否かの判定処理を実行してもよい。これにより、谷部が多数あっても、迅速に、軟質部を特定することができる。
0053
・上記実施形態においては、速度変化が緩やかな部分において対象エリアを分割した。評価を行なう対象エリアの分割は、これに限定されない。例えば、所定距離毎に対象エリアを分割してもよい。また、断面図を分割せずに1つの対象エリアとし、等速度を用いて連続している低速度部があるか否かを判定してもよい。また、対象エリアの一部が重複するように対象エリアを分割してもよい。この場合には、軟質部の一部や軟質部の周囲を含む任意の対象エリアに分割して、地質構造を評価することができる。
0054
・上記実施形態においては、3次元弾性波速度分布図において、水平断面図と垂直断面図とを切り出した。3次元弾性波速度分布図において切り出す2次元断面図は、これらの断面図に限られない。例えば、その地山において、水平面や垂直面以外で、把握し易い角度の平面が存在する場合には、その平面における断面図を用いてもよいし、3つ以上の断面図を切り出して用いてもよい。
また、上記実施形態においては、水平断面図と垂直断面図は、その中心軸を、トンネル及びトンネル切羽前方の中心軸とした断面図を用いた。トンネル及びトンネル切羽前方を含む断面図であれば、断面位置は限定されるものではない。例えば、トンネル及びトンネル切羽前方を上や横にずらして、トンネル及びトンネル切羽前方の中心軸と平行な軸を中心とした断面図であってもよい。この場合には、トンネル及びトンネル切羽前方に限らず任意の方向の地質構造をより詳細に把握することができる。
0055
・上記実施形態においては、トンネル切羽前方における反射面の位置(座標)を含めた弾性波速度分布図を用いて、地山の地質構造を評価した。評価する弾性波速度分布図は、これに限られない。例えば、反射面が含まれない3次元速度分布図を用いて、地山の地質構造を評価してもよい。更に、3次元速度分布図に含まれる反射面の位置も用いて、地質構造を評価してもよい。例えば、反射面には、軟質から硬質(低速度から高速度)の反射面と、硬質から軟質(高速度から低速度)の反射面とがある。そこで、反射面の前後において軟質部と判定される領域に、複数の谷部の端部が離間して存在している場合には、これらを連続させた軟質部として特定してもよい。
0056
・上記実施形態においては、評価装置20の制御部21が、連続する低速度領域があると判定した場合には、これら低速度領域を連続させて軟質部の位置を特定した。軟質部の位置の特定は、評価装置20の制御部21が特定する場合に限られず、2次元速度分布断面図を用いて人が判断してもよい。この場合、評価装置20の制御部21は、3次元弾性波速度分布図から2次元断面図を出力してもよいし、これに谷部の伸長方向を含めた2次元断面図を出力してもよい。そして、出力した2次元断面図を用いて、地山の地質構造を評価してもよい。
0057
A1…領域、HP1…水平断面図、H10…情報処理装置、H11…通信装置、H14…記憶部、H15…プロセッサ、LS1…低速度部、RS1…反射面、VP1…垂直断面図、10…測定装置、15…入力装置、16…表示装置、20…評価装置、21…制御部、23…地質構造情報記憶部、30…トンネル、30f…切羽面、31…掘削予定領域、212…エリア特定部、213…軟質部特定部。