図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
概要
EGR弁の差圧センサを含むエンジンの制御方法等において、差圧センサの異常判定を精度良く行うと共に、差圧センサの異常時における燃費悪化を適切に抑制する。エンジンの制御方法は、EGRガスを含む燃焼室17内の全ガス量と燃料量との割合であるガス空燃比G/Fが理論空燃比よりも大きい状態において、混合気を自着火により圧縮着火燃焼させる第1燃焼モードを行うステップと、混合気を火花点火によって火花点火燃焼させる第2燃焼モードを行うステップと、差圧センサSW15の異常判定時に、EGR弁54の上流側と下流側との差圧が所定圧力以上に維持されるように、スロットル弁43を閉側に制御するステップと、差圧センサSW15の異常であると判定されたときに、EGRガスの還流を停止すると共に、第1燃焼モードを第2燃焼モードへと切り替える制御を行うステップと、を有する。
目的
本発明は、EGR弁の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサを含むエンジンの制御方法及び制御システムにおいて、差圧センサの異常判定を精度良く行うと共に、差圧センサの異常時における燃費悪化を適切に抑制することを目的とする
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
- 過給機
- 内燃機関燃焼法
- 排気還流装置
- 機関出力の制御及び特殊形式機関の制御
- 内燃機関に供給する空気・燃料の電気的制御
- 内燃機関の複合的制御
請求項1
エンジンの制御方法であって、前記エンジンのEGR通路上に設けられたEGR弁の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサの出力値に基づき、前記EGR弁の開度を制御するステップと、前記EGR弁の開度の制御により、前記EGR通路からのEGRガスを含む燃焼室内の全ガス量と燃料量との割合であるガス空燃比G/Fが理論空燃比よりも大きい状態において、前記エンジンの燃焼室内の混合気を自着火により圧縮着火燃焼させる第1燃焼モードを実行するステップと、前記第1燃焼モードを実行する代わりに、前記エンジンの燃焼室内の混合気を火花点火によって火花点火燃焼させる第2燃焼モードを実行するステップと、前記差圧センサの出力値に基づき、当該差圧センサの異常を判定するステップと、前記差圧センサの異常を判定するときに、前記EGR弁の上流側と下流側との差圧が所定圧力以上に維持されるように、前記エンジンのスロットル弁を閉側に制御するステップと、前記差圧センサが異常であると判定されたときに、前記EGR弁を閉じる制御を行って、前記EGR通路から前記エンジンの吸気通路へのEGRガスの還流を停止すると共に、前記第1燃焼モードが実行されている場合には、この第1燃焼モードを前記第2燃焼モードへと切り替える制御を行うステップと、を有する、ことを特徴とするエンジンの制御方法。
請求項2
前記第1燃焼モードから前記第2燃焼モードへ切り替えるときに、前記エンジンの有効圧縮比を低下させるべく、前記エンジンの吸気弁の閉弁時期を遅らせるように、前記吸気弁の開閉時期を調整可能な吸気動弁機構を制御するステップを更に有する、請求項1に記載のエンジンの制御方法。
請求項3
前記吸気弁の閉弁時期を遅らせるように前記吸気動弁機構を制御するときに、前記エンジンの点火時期を遅角させる制御を行うステップを更に有する、請求項2に記載のエンジンの制御方法。
請求項4
前記エンジンは、前記ガス空燃比G/Fが理論空燃比よりも大きく且つ燃焼室内の空気量と燃料量との割合である空燃比A/Fが理論空燃比に略一致する状態において前記第1燃焼モードを行い、前記空燃比A/Fが理論空燃比よりも大きい状態において前記圧縮着火燃焼を行う第3燃焼モードを更に有し、前記差圧センサが異常であると判定されたときに、前記第1燃焼モードの実行を禁止する一方で、前記第3燃焼モードの実行を許可するステップを更に有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエンジンの制御方法。
請求項5
前記エンジンは、負荷が所定負荷未満で且つ回転数が所定回転数未満である低負荷低回転領域においては、前記第3燃焼モードを行い、前記低負荷低回転領域以外の領域においては、前記第2燃焼モードを行う、請求項4に記載のエンジンの制御方法。
請求項6
前記エンジンには、当該エンジンに供給する吸気を過給する過給機と、この過給機をバイパスして吸気を流すバイパス通路と、このバイパス通路上に設けられたバイパス弁と、が設けられており、前記過給機による目標過給圧を設定し、この目標過給圧が実現されるように前記バイパス弁の開度を制御するステップを更に有し、このバイパス弁を制御するステップでは、前記差圧センサの異常を判定するために前記EGR弁の上流側と下流側との差圧が前記所定圧力以上に維持されるように前記スロットル弁が制御されたときに、このスロットル弁の制御による過給圧の変動を補償するように、前記目標過給圧に基づき前記バイパス弁の開度をフィードバック制御する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエンジンの制御方法。
請求項7
前記過給機は、前記エンジンによって駆動される機械式の過給機である、請求項6に記載のエンジンの制御方法。
請求項8
前記差圧センサの異常を判定するステップでは、前記差圧センサの出力値に対応する差圧と、前記EGR弁の下流側に設けられた圧力センサの出力値に対応する圧力と大気圧センサの出力値に対応する圧力との差圧と、の差が所定の判定閾値以上である場合に、前記差圧センサが異常であると判定する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエンジンの制御方法。
請求項9
前記エンジンの回転数が高くなるほど、前記判定閾値を高い値に設定するステップを更に有する、請求項8に記載のエンジンの制御方法。
請求項10
前記エンジンの回転数が所定回転数以上のときに、前記差圧センサの異常判定の実行を禁止する一方で、前記エンジンの回転数が前記所定回転数未満のときに、前記差圧センサの異常判定の実行を許可するステップを更に有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のエンジンの制御方法。
請求項11
エンジンの制御システムであって、エンジンと、前記エンジンの排気ガスを吸気通路に還流させるEGR通路、このEGR通路上に設けられたEGR弁、及び、このEGR弁の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサと、回路により構成されており、少なくとも前記エンジンを制御するように構成された制御器と、を有し、前記制御器は、前記差圧センサの出力値に基づき、前記EGR弁の開度を制御し、前記EGR弁の開度の制御により、前記EGR通路からのEGRガスを含む燃焼室内の全ガス量と燃料量との割合であるガス空燃比G/Fが理論空燃比よりも大きい状態において、前記エンジンの燃焼室内の混合気を自着火により圧縮着火燃焼させる第1燃焼モードを実行し、前記第1燃焼モードを実行する代わりに、前記エンジンの燃焼室内の混合気を火花点火によって火花点火燃焼させる第2燃焼モードを実行し、前記差圧センサの出力値に基づき、当該差圧センサの異常を判定し、前記差圧センサの異常を判定するときに、前記EGR弁の上流側と下流側との差圧が所定圧力以上に維持されるように、前記エンジンのスロットル弁を閉側に制御し、前記差圧センサが異常であると判定されたときに、前記EGR弁を閉じる制御を行って、前記EGR通路から前記エンジンの吸気通路へのEGRガスの還流を停止すると共に、前記第1燃焼モードが実行されている場合には、この第1燃焼モードを前記第2燃焼モードへと切り替える制御を行う、ように構成されている、ことを特徴とするエンジンの制御システム。
技術分野
背景技術
0002
従来から、エンジンのEGR通路上に設けられたEGR弁の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサを用いた異常判定が行われている。例えば、特許文献1には、排気通路と吸気通路とを繋ぐEGR通路と、このEGR通路を流れるEGRガスの流量を調整するEGR弁と、EGR弁の排気通路側のEGRガスと吸気通路側のEGRガスとの差圧を検出する差圧センサと、を備えたEGRシステムの故障診断装置において、EGR弁の閉弁時における排気通路側のEGRガスの排気圧力と、差圧センサによって検出された差圧とに基づいてEGRシステムの故障を診断する技術が提案されている。
先行技術
0003
特開2013−144961号公報
発明が解決しようとする課題
0004
ところで、近年、EGRガスをエンジンに導入した状態において、燃焼室内の混合気を自着火させる圧縮着火燃焼に関する技術が提案されている。この場合、圧縮着火燃焼を適切に生じさせるための環境(エンジンの燃焼室の温度など)を形成するために、圧縮着火燃焼時にEGRガスを導入している。典型的には、EGRガスを含む燃焼室内の全ガス量と燃料量との割合であるガス空燃比G/Fが理論空燃比よりも大きい状態において、圧縮着火燃焼(例えば一部の混合気を火花点火によって火花点火燃焼させた後に残りの混合気を自着火により圧縮着火燃焼させるような部分圧縮着火燃焼)が行われている。このような圧縮着火燃焼を行うことで、燃費向上や出力向上を図ることができる。
0005
他方で、圧縮着火燃焼を適切なタイミングで行わせるには、EGR弁の制御性を確保することが重要である。一般的に、EGR弁の制御は、差圧センサによって検出された差圧に基づき行われる。そのため、EGR制御性を確保するには、差圧センサの異常判定を精度良く行うことが望ましい。ここで、排気系においては排気脈動が発生するが、この排気脈動は、差圧センサの異常判定の精度を低下させる要因となる。これは、排気脈動によって、差圧センサにより検出される圧力が比較的大きく変動するからである、換言すると排気脈動分のノイズが差圧センサの検出値に現れるからである。
0006
本発明者は、EGR弁の上流側と下流側との差圧が大きいと排気脈動の影響が小さくなることを見出し、この差圧が大きい状態において差圧センサの異常判定を行うのが良いと考えた。しかしながら、そのような差圧が大きい状態でのみ異常判定を行うとすると、異常判定の実行頻度が低下してしまう。よって、本発明者は、差圧センサの異常判定を行うときに、EGR弁の上流側と下流側との差圧を大きくするように、吸気通路上のスロットル弁を閉じ側に制御することを考えた。そのようにスロットル弁を閉じ側に制御すると、燃費が悪化する傾向にあるが(例えば、過給機が設けられたエンジンでは、スロットル弁の閉じ分に応じた過給圧の増加により燃費が悪化することがある)、この燃費の悪化は、上述した圧縮着火燃焼の実施に起因する燃費改善効果により十分補うことができると考えられる。これは、EGR弁の上流側と下流側との差圧が大きいと、EGR弁の制御性が確保されるので、圧縮着火燃焼を安定化できるからである。
0007
しかしながら、差圧センサが異常である場合には、この差圧センサの出力値を用いたEGR弁の制御性が悪化する。このときに、EGR弁の制御性を改善すべく、EGR弁の上流側と下流側との差圧を更に大きくすることが考えられるが、そうすると燃費が大きく悪化する傾向にある。この燃費の悪化は、上述したような圧縮着火燃焼の安定化によって十分に補うことはできないと考えられる。
0008
したがって、本発明は、EGR弁の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサを含むエンジンの制御方法及び制御システムにおいて、差圧センサの異常判定を精度良く行うと共に、差圧センサの異常時における燃費悪化を適切に抑制することを目的とする。
課題を解決するための手段
0009
上記の目的を達成するために、本発明は、エンジンの制御方法であって、エンジンのEGR通路上に設けられたEGR弁の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサの出力値に基づき、EGR弁の開度を制御するステップと、EGR弁の開度の制御により、EGR通路からのEGRガスを含む燃焼室内の全ガス量と燃料量との割合であるガス空燃比G/Fが理論空燃比よりも大きい状態において、エンジンの燃焼室内の混合気を自着火により圧縮着火燃焼させる第1燃焼モードを実行するステップと、第1燃焼モードを実行する代わりに、エンジンの燃焼室内の混合気を火花点火によって火花点火燃焼させる第2燃焼モードを実行するステップと、差圧センサの出力値に基づき、当該差圧センサの異常を判定するステップと、差圧センサの異常を判定するときに、EGR弁の上流側と下流側との差圧が所定圧力以上に維持されるように、エンジンのスロットル弁を閉側に制御するステップと、差圧センサが異常であると判定されたときに、EGR弁を閉じる制御を行って、EGR通路からエンジンの吸気通路へのEGRガスの還流を停止すると共に、第1燃焼モードが実行されている場合には、この第1燃焼モードを第2燃焼モードへと切り替える制御を行うステップと、を有する、ことを特徴とする。
0010
このように構成された本発明によれば、差圧センサの異常判定を行うときに、EGR弁の上流側と下流側との差圧が所定圧力以上に維持されるようにスロットル弁を閉側に制御するので、異常判定の実行頻度を確保しつつ、異常判定を精度良く行うことができる。また、このように差圧を所定圧力以上に維持することで、排気脈動によるEGR制御性の悪化を抑制でき、燃費を確保することができる。
また、本発明によれば、差圧センサが異常であるときに、EGRガスの還流を停止すると共に、ガス空燃比G/Fがリーンの状態(比較的多量のEGRガスが導入される状態)で混合気を自着火により圧縮着火燃焼させる第1燃焼モードを、混合気を火花点火によって火花点火燃焼させる第2燃焼モードへと切り替える。これにより、差圧センサが異常であるときに、EGRガスを利用する第1燃焼モードの実施を維持するために、EGR制御性を改善するようにEGR弁の上流側と下流側との差圧を更に大きくすることにより、燃費が悪化してしまうことを適切に抑制できる。すなわち、本発明によれば、差圧センサが異常であるときに、第1燃焼モードを維持するよう制御することに起因する燃費の悪化を確実に抑制することができ、また、この第1燃焼モードを第2燃焼モードへと切り替えることで、エンジンの燃焼安定性を確保することができる。
0011
本発明において、好ましくは、第1燃焼モードから第2燃焼モードへ切り替えるときに、エンジンの有効圧縮比を低下させるべく、エンジンの吸気弁の閉弁時期を遅らせるように、吸気弁の開閉時期を調整可能な吸気動弁機構を制御するステップを更に有する。
このように構成された本発明によれば、第1燃焼モードから第2燃焼モードへの切り替え時に、エンジンの有効圧縮比を低下させて、ノッキングを適切に抑制することができる。
0012
本発明において、好ましくは、吸気弁の閉弁時期を遅らせるように吸気動弁機構を制御するときに、エンジンの点火時期を遅角させる制御を行うステップを更に有する。
このように構成された本発明では、第1燃焼モードから第2燃焼モードへの切り替え時に、ノッキングをより効果的に抑制することができる。
0013
本発明において、好ましくは、エンジンは、ガス空燃比G/Fが理論空燃比よりも大きく且つ燃焼室内の空気量と燃料量との割合である空燃比A/Fが理論空燃比に略一致する状態において第1燃焼モードを行い、空燃比A/Fが理論空燃比よりも大きい状態において圧縮着火燃焼を行う第3燃焼モードを更に有し、差圧センサが異常であると判定されたときに、第1燃焼モードの実行を禁止する一方で、第3燃焼モードの実行を許可するステップを更に有する。
このように構成された本発明では、差圧センサが異常であると判定されたときに、第1燃焼モードを禁止する一方で、空燃比A/Fがリーンの状態において混合気を自着火により圧縮着火燃焼させる第3燃焼モードを許可する。これにより、差圧センサの異常によりEGR制御性が確保されない状態において、EGRガスを利用する第1燃焼モードを確実に禁止することができ、また、こうして第1燃焼モードを禁止する一方で第3燃焼モードについては許可するので、圧縮着火燃焼による燃費の改善及びNOxの低減を適切に確保することができる。
0014
本発明において、好ましくは、エンジンは、負荷が所定負荷未満で且つ回転数が所定回転数未満である低負荷低回転領域においては、第3燃焼モードを行い、低負荷低回転領域以外の領域においては、第2燃焼モードを行う。
このように構成された本発明では、低負荷低回転領域では圧縮着火燃焼による第3燃焼モードを行い、この低負荷低回転領域以外の領域では火花点火燃焼による第2燃焼モードを行うので、エンジンの全運転領域において適切な燃焼を実現することができる。
0015
本発明において、好ましくは、エンジンには、当該エンジンに供給する吸気を過給する過給機と、この過給機をバイパスして吸気を流すバイパス通路と、このバイパス通路上に設けられたバイパス弁と、が設けられており、過給機による目標過給圧を設定し、この目標過給圧が実現されるようにバイパス弁の開度を制御するステップを更に有し、このバイパス弁を制御するステップでは、差圧センサの異常を判定するためにEGR弁の上流側と下流側との差圧が所定圧力以上に維持されるようにスロットル弁が制御されたときに、このスロットル弁の制御による過給圧の変動を補償するように、目標過給圧に基づきバイパス弁の開度をフィードバック制御する。
このように構成された本発明では、過給機の上流側の圧力(詳しくはスロットル弁の下流側且つ過給機の上流側の圧力、換言するとEGR弁の差圧を規定するEGR弁の下流側の圧力)と、過給機の上流側の圧力(過給圧)の両方を、所望の圧力に適切に設定することができる。
0016
本発明において、好ましくは、過給機は、エンジンによって駆動される機械式の過給機である。
このような過給機では、当該過給機に対する直接的な制御によって過給圧を調整できないが、上述したようにバイパス弁を制御することで、目標過給圧を適切に実現することができる。
0017
本発明において、好ましくは、差圧センサの異常を判定するステップでは、差圧センサの出力値に対応する差圧と、EGR弁の下流側に設けられた圧力センサの出力値に対応する圧力と大気圧センサの出力値に対応する圧力との差圧と、の差が所定の判定閾値以上である場合に、差圧センサが異常であると判定する。
このように構成された本発明によれば、差圧センサの異常を正確に判定することができる。
0018
本発明において、好ましくは、エンジンの回転数が高くなるほど、判定閾値を高い値に設定するステップを更に有する。
このように構成された本発明によれば、エンジン回転数が上昇したときの排気圧の影響を適切に排除して、異常判定の精度を効果的に確保することができる。
0019
本発明において、好ましくは、エンジンの回転数が所定回転数以上のときに、差圧センサの異常判定の実行を禁止する一方で、エンジンの回転数が所定回転数未満のときに、差圧センサの異常判定の実行を許可するステップを更に有する。
このように構成された本発明によれば、エンジン回転数が所定回転数未満のときのみ、つまり低回転領域においてのみ、差圧センサの異常判定を実行することとし、排気流量が多く脈動の影響が大きい高回転領域においては異常判定の実行を禁止するので、異常判定の精度を適切に確保することができる。
0020
他の観点では、上記の目的を達成するために、本発明は、エンジンの制御システムであって、エンジンと、エンジンの排気ガスを吸気通路に還流させるEGR通路、このEGR通路上に設けられたEGR弁、及び、このEGR弁の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサと、回路により構成されており、少なくともエンジンを制御するように構成された制御器と、を有し、制御器は、差圧センサの出力値に基づき、EGR弁の開度を制御し、EGR弁の開度の制御により、EGR通路からのEGRガスを含む燃焼室内の全ガス量と燃料量との割合であるガス空燃比G/Fが理論空燃比よりも大きい状態において、エンジンの燃焼室内の混合気を自着火により圧縮着火燃焼させる第1燃焼モードを実行し、第1燃焼モードを実行する代わりに、エンジンの燃焼室内の混合気を火花点火によって火花点火燃焼させる第2燃焼モードを実行し、差圧センサの出力値に基づき、当該差圧センサの異常を判定し、差圧センサの異常を判定するときに、EGR弁の上流側と下流側との差圧が所定圧力以上に維持されるように、エンジンのスロットル弁を閉側に制御し、差圧センサが異常であると判定されたときに、EGR弁を閉じる制御を行って、EGR通路からエンジンの吸気通路へのEGRガスの還流を停止すると共に、第1燃焼モードが実行されている場合には、この第1燃焼モードを第2燃焼モードへと切り替える制御を行う、ように構成されている。
このように構成された本発明によっても、差圧センサの異常判定を精度良く行うと共に、差圧センサの異常時における燃費悪化を適切に抑制することができる。
発明の効果
0021
本発明によれば、EGR弁の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサを有するエンジンの制御方法及び制御システムにおいて、差圧センサの異常判定を精度良く行うと共に、差圧センサの異常時における燃費悪化を適切に抑制することができる。
図面の簡単な説明
0022
本発明の実施形態による圧縮着火式エンジンの概略構成図である。
本発明の実施形態による圧縮着火式エンジンの燃焼室の断面図である。
本発明の実施形態による圧縮着火式エンジンの制御系統を示すブロック図である。
本発明の実施形態によるエンジンの運転領域についての説明図である。
EGR弁の上流側と下流側との圧力比と流量関数値との関係についての説明図である。
差圧センサによる圧力検出誤差と流量推定誤差との関係についての説明図である。
本発明の実施形態によるスロットル弁及びエアバイパス弁の制御処理を示すフローチャートである。
本発明の実施形態による差圧センサの異常判定処理を示すフローチャートである。
エンジン回転数に対して設定すべき判定閾値を規定したマップである。
本発明の実施形態による差圧センサの異常判定を行った場合の結果を示すタイムチャートである。
本発明の実施形態による差圧センサの異常判定時におけるエンジン制御を行った場合の結果を示すタイムチャートである。
実施例
0023
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの制御方法及び制御システムについて説明する。
0024
<装置構成>
まず、図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの制御方法及び制御システムの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態による圧縮着火式エンジンの構成を例示する図である。図2は、本発明の実施形態による圧縮着火式エンジンの燃焼室の構成を例示する断面図である。なお、図1における吸気側は紙面左側であり、排気側は紙面右側である。図2における吸気側は紙面右側であり、排気側は紙面左側である。図3は、本発明の実施形態による圧縮着火式エンジンの制御系統を示すブロック図である。
0025
本実施形態において、エンジン1は、四輪の自動車に搭載された部分圧縮着火燃焼(SPark Controlled CompressionIgnition:SPCCI)を行うガソリンエンジンである。具体的には、エンジン1は、シリンダブロック12と、その上に載置されるシリンダヘッド13とを備えている。シリンダブロック12の内部に複数のシリンダ11が形成されている。図1及び図2では、1つのシリンダ11のみを示すが、本実施形態においてエンジン1は、多気筒エンジンである。
0026
各シリンダ11内には、ピストン3が摺動自在に内挿されている。ピストン3は、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト15に連結されている。ピストン3は、シリンダ11及びシリンダヘッド13と共に燃焼室17を区画する。なお、「燃焼室」は、ピストン3が圧縮上死点に至ったときに形成される空間の意味に限定されない。「燃焼室」の語は広義で用いる場合がある。つまり、「燃焼室」は、ピストン3の位置に関わらず、ピストン3、シリンダ11及びシリンダヘッド13によって形成される空間を意味する場合がある。
0027
図2に示すように、ピストン3の上面は平坦面である。ピストン3の上面には、キャビティ31が形成されている。キャビティ31は、ピストン3の上面から凹陥している。キャビティ31は、浅皿形状を有している。キャビティ31は、ピストン3が圧縮上死点付近に位置するときに、後述するインジェクタ6に向かい合う。
0028
キャビティ31は、凸部31aを有している。凸部31aは、シリンダ11のほぼ中心に設けられている。凸部31aは、略円錐状であり、キャビティ31の底部から、シリンダ11の中心軸Xに沿って上向きに伸びている。凸部31aの上端は、キャビティ31の上面とほぼ同じ高さである。キャビティ31はまた、凸部31aの周囲に設けられた凹陥部31bを有している。
0029
シリンダヘッド13の下面、つまり、燃焼室17の天井面は、図2に示すように、傾斜面13aと、傾斜面13bとによって構成されている。傾斜面13aは、吸気側から軸Xに向かって上り勾配となっている。傾斜面13bは、排気側から軸Xに向かって上り勾配となっている。燃焼室17の天井面は、いわゆるペントルーフ形状である。
なお、燃焼室17の形状は、図2に例示する形状に限定されるものではない。例えばキャビティ31の形状、ピストン3の上面の形状、及び、燃焼室17の天井面の形状等は、適宜変更することが可能である。
0030
エンジン1の幾何学的圧縮比は、理論熱効率の向上や、後述するCI(CompressionIgnition)燃焼の安定化を目的として高く設定されている。具体的に、エンジン1の幾何学的圧縮比は、17以上である。幾何学的圧縮比は、例えば18としてもよい。幾何学的圧縮比は、17以上20以下の範囲で、適宜設定すればよい。
0031
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、2つの吸気ポート18(図1)が形成されている。吸気ポート18は、燃焼室17に連通している。吸気ポート18には、吸気弁21が配設されている。吸気弁21は、燃焼室17と吸気ポート18との間を開閉する。吸気弁21は、可変動弁機構である吸気VVT(Variable Valve Timing)23(図3)によって、所定のタイミングで開閉する。吸気VVT23は、吸気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更するよう構成されている。それによって、吸気弁21の開弁時期及び閉弁時期を、連続的に変化させることができる。なお、吸気VVT23は、電動式又は液圧式に駆動されるよう構成される。
0032
シリンダヘッド13にはまた、シリンダ11毎に、2つの排気ポート19(図1)が形成されている。排気ポート19は、燃焼室17に連通している。排気ポート19には、排気弁22が配設されている。排気弁22は、燃焼室17と排気ポート19との間を開閉する。排気弁22は、可変動弁機構である排気電動VVT24(図3)によって、所定のタイミングで開閉する。排気VVT24は、排気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更するよう構成されている。それによって、排気弁22の開弁時期及び閉弁時期を、連続的に変化させることができる。なお、排気VVT24は、電動式又は液圧式に駆動されるよう構成される。
0033
詳細は後述するが、本実施形態において、エンジン1は、吸気VVT23及び排気VVT24によって、吸気弁21の開弁と排気弁22の開弁とに係るオーバーラップ期間の長さを調整することができる。これにより、燃焼室17の中の残留ガスを掃気したり、燃焼室17の中に熱い既燃ガスを閉じ込めたり(つまり、内部EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスを燃焼室17の中に導入)することができる。なお、このような内部EGRガスの導入をVVTによって実現することに限定はされない。
0034
図2に示すように、シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、インジェクタ6が取り付けられている。インジェクタ6は、燃焼室17の中に燃料を直接噴射するよう構成されている。インジェクタ6は、吸気側の傾斜面13aと排気側の傾斜面13bとが交差するペントルーフの谷部に配設されている。また、インジェクタ6は、その噴射軸心が、シリンダ11の中心軸Xに沿うように配設されている。インジェクタ6の噴射軸心と、キャビティ31の凸部31aの位置とはほぼ一致している。インジェクタ6は、キャビティ31に対向している。なお、インジェクタ6の噴射軸心は、シリンダ11の中心軸Xと一致していなくてもよい。その場合も、インジェクタ6の噴射軸心と、キャビティ31の凸部31aの位置とは一致していることが望ましい。
0035
インジェクタ6は、詳細な図示は省略するが、複数の噴口を有する多噴口型の燃料噴射弁によって構成されている。インジェクタ6は、図2に矢印で示すように、燃料噴霧が、燃焼室17の中央から放射状に広がるように燃料を噴射する。
0036
後述するように、インジェクタ6は、ピストン3が圧縮上死点付近に位置するタイミングで燃料を噴射する場合がある。その場合、インジェクタ6が燃料を噴射すると、燃料噴霧は、新気と混ざり合いながら、キャビティ31の凸部31aに沿って下向きに流れると共に、凹陥部31bの底面及び周側面に沿って、燃焼室17の中央から、径方向の外方に放射状に広がって流れる。その後、混合気はキャビティ31の開口に至り、吸気側の傾斜面13a、及び、排気側の傾斜面13bに沿って、径方向の外方から、燃焼室17の中央に向かって流れる。
なお、インジェクタ6は、多噴口型のインジェクタに限らない。インジェクタ6は、外開弁タイプのインジェクタを採用してもよい。
0037
図1に示すように、インジェクタ6には、燃料供給システム61が接続されている。燃料供給システム61は、燃料を貯留するよう構成された燃料タンク63と、燃料タンク63とインジェクタ6とを互いに連結する燃料供給路62とを備えている。燃料供給路62には、燃料ポンプ65とコモンレール64とが設けられている。燃料ポンプ65は、コモンレール64に燃料を圧送するように構成されている。燃料ポンプ65は、本実施形態においては、クランクシャフト15によって駆動されるプランジャー式のポンプである。コモンレール64は、燃料ポンプ65から圧送された燃料を、高い燃料圧力で蓄えるよう構成されている。インジェクタ6が開弁すると、コモンレール64に蓄えられていた燃料が、インジェクタ6の噴口から燃焼室17の中に噴射される。燃料供給システム61は、30MPa以上の高い圧力の燃料を、インジェクタ6に供給することが可能に構成されている。燃料供給システム61の最高燃料圧力は、例えば120MPa程度にしてもよい。インジェクタ6に供給する燃料の圧力は、エンジン1の運転状態に応じて変更してもよい。なお、燃料供給システム61の構成は、前記の構成に限定されない。
0038
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、点火プラグ25が取り付けられている。点火プラグ25は、燃焼室17の中の混合気に強制的に点火をする。図2に示すように、点火プラグ25は、本実施形態においては、シリンダ11の中心軸Xを挟んだ吸気側に配設されている。また、点火プラグ25は、2つの吸気ポート18の間に位置している。点火プラグ25は、上方から下方に向かって、燃焼室17の中央に近づく方向に傾いて、シリンダヘッド13に取り付けられている。点火プラグ25の電極は、燃焼室17の中に臨んでかつ、燃焼室17の天井面の付近に位置している。
0039
図1に示すように、エンジン1の一側面には吸気通路40が接続されている。吸気通路40は、各シリンダ11の吸気ポート18に連通している。吸気通路40は、燃焼室17に導入するガスが流れる通路である。吸気通路40の上流端部には、新気を濾過するエアクリーナー41が配設されている。吸気通路40の下流端近傍には、サージタンク42が配設されている。サージタンク42よりも下流の吸気通路40は、詳細な図示は省略するが、シリンダ11毎に分岐する独立通路を構成している。独立通路の下流端が、各シリンダ11の吸気ポート18に接続されている。
0040
吸気通路40におけるエアクリーナー41とサージタンク42との間には、スロットル弁43が配設されている。スロットル弁43は、弁の開度を調整することによって、燃焼室17の中への新気の導入量を調整するよう構成されている。
0041
吸気通路40にはまた、スロットル弁43の下流に、過給機44が配設されている。過給機44は、燃焼室17に導入するガスを過給するよう構成されている。本実施形態において、過給機44は、エンジン1によって駆動される機械式の過給機である。機械式の過給機44は、例えばルーツ式としてもよい。機械式の過給機44の構成はどのような構成であってもよい。機械式の過給機44は、リショルム式や遠心式であってもよい。
0042
過給機44とエンジン1の出力軸との間には、電磁クラッチ45が介設している。電磁クラッチ45は、過給機44とエンジン1との間で、エンジン1から過給機44へ駆動力を伝達したり、駆動力の伝達を遮断したりする。後述するように、ECU10(図3)が電磁クラッチ45の接続状態と非接続状態を切り替えることによって、過給機44はオンとオフとが切り替わる。つまり、このエンジン1は、過給機44が、燃焼室17に導入するガスを過給することと、過給機44が、燃焼室17に導入するガスを過給しないこととを切り替えることができるよう構成されている。
0043
吸気通路40における過給機44の下流には、インタークーラー46が配設されている。インタークーラー46は、過給機44において圧縮されたガスを冷却するよう構成されている。インタークーラー46は、例えば水冷式に構成すればよい。
0044
吸気通路40には、バイパス通路47が接続されている。バイパス通路47は、過給機44及びインタークーラー46をバイパスするよう、吸気通路40における過給機44の上流部とインタークーラー46の下流部とを互いに接続する。バイパス通路47には、バイパス制御弁であるエアバイパス弁48が配設されている。エアバイパス弁48は、バイパス通路47を流れるガスの流量を調整する。
0045
過給機44をオフにしたとき(つまり、電磁クラッチ45を遮断したとき)には、エアバイパス弁48を全開にする。これにより、吸気通路40を流れるガスは、過給機44をバイパスして、エンジン1の燃焼室17に導入される。エンジン1は、非過給、つまり自然吸気の状態で運転する。
過給機44をオンにしたとき(つまり、電磁クラッチ45を接続したとき)には、過給機44を通過したガスの一部は、バイパス通路47を通って過給機の上流に逆流する。エアバイパス弁48の開度を調整することによって、逆流量を調整することができるから、燃焼室17に導入するガスの過給圧を調整することができる。この構成例においては、過給機44とバイパス通路47とエアバイパス弁48とによって、過給システム49が構成されている。
0046
エンジン1の他側面には、排気通路50が接続されている。排気通路50は、各シリンダ11の排気ポート19に連通している。排気通路50は、燃焼室17から排出された排気ガスが流れる通路である。排気通路50の上流部分は、詳細な図示は省略するが、シリンダ11毎に分岐する独立通路を構成している。独立通路の上流端が、各シリンダ11の排気ポート19に接続されている。排気通路50には、1つ以上の触媒コンバーター51を有する排気ガス浄化システムが配設されている。触媒コンバーター51は、三元触媒を含んで構成されている。なお、排気ガス浄化システムは、三元触媒のみを含むものに限らない。
0047
吸気通路40と排気通路50との間には、外部EGRシステムを構成するEGR通路52が接続されている。EGR通路52は、既燃ガスの一部を吸気通路40に還流させるための通路である。EGR通路52の上流端は、排気通路50における触媒コンバーター51の下流に接続されている。EGR通路52の下流端は、吸気通路40における過給機44の上流に接続されている。
0048
EGR通路52には、水冷式のEGRクーラー53が配設されている。EGRクーラー53は、既燃ガスを冷却するよう構成されている。EGR通路52にはまた、EGR弁54が配設されている。EGR弁54は、EGR通路52を流れる既燃ガスの流量を調整するよう構成されている。EGR弁54の開度を調整することによって、冷却した既燃ガス、つまり外部EGRガスの還流量を調整することができる。
0049
本実施形態において、EGRシステム55は、EGR通路52及びEGR弁54を含んで構成されている外部EGRシステムと、前述した吸気VVT23及び排気VVT24を含んで構成されている内部EGRシステムとによって構成されている。EGR弁54はまた、状態量設定デバイスの一つを構成している。
0050
図3に示すように、エンジン1は、これを運転するためのECU(Electronic Control Unit)10を備えている。ECU10は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)としてのマイクロプロセッサ10aと、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてプログラム及びデータを格納するメモリ10bと、電気信号の入出力をする入出力バス等を備えている。ECU10は、制御器の一例である。
0052
すなわち、吸気通路40におけるエアクリーナー41の下流に配置されかつ、吸気通路40を流れる新気の流量を検知するエアフローセンサSW1、及び、新気の温度を検知する第1吸気温度センサSW2、吸気通路40におけるEGR通路52の接続位置よりも下流でかつ、過給機44の上流に配置されかつ、過給機44に流入するガスの圧力(以下では適宜「過給機上流圧」とも呼ぶ。)を検知する第1圧力センサSW3、吸気通路40における過給機44の下流でかつ、バイパス通路47の接続位置よりも上流に配置されかつ、過給機44から流出したガスの温度を検知する第2吸気温度センサSW4、サージタンク42に取り付けられかつ、過給機44の下流のガスの圧力(以下では適宜「過給圧」と呼ぶ。)を検知する第2圧力センサSW5、各シリンダ11に対応してシリンダヘッド13に取り付けられかつ、各燃焼室17内の圧力(筒内圧)を検知する指圧センサSW6、排気通路50に配置されかつ、燃焼室17から排出した排気ガスの温度を検知する排気温度センサSW7、燃焼室17から排出された排気ガスに含まれる酸素濃度を検出するリニアO2センサSW8(リニアA/Fセンサ:LAFS)、エンジン1の出力軸近傍に配置されかつ、出力軸の回転数を検出するエンジン回転数センサSW9、エンジン1に取り付けられかつ、冷却水の温度を検知する水温センサSW10、エンジン1に取り付けられかつ、クランクシャフト15の回転角を検知するクランク角センサSW11、アクセルペダル機構に取り付けられかつ、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を検知するアクセル開度センサSW12、エンジン1に取り付けられかつ、吸気カムシャフトの回転角を検知する吸気カム角センサSW13、エンジン1に取り付けられかつ、排気カムシャフトの回転角を検知する排気カム角センサSW14、EGR通路52に配置されかつ、EGR弁54の上流及び下流の差圧を検知するEGR差圧センサSW15、燃料供給システム61のコモンレール64に取り付けられかつ、インジェクタ6に供給する燃料の圧力を検知する燃圧センサSW16、並びに、大気圧を検知する大気圧センサSW17(典型的にはECU10内に設けられる)である。
0053
ECU10は、これらの検知信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判断すると共に、各デバイスの制御量を計算する。ECU10は、計算をした制御量に係る制御信号を、インジェクタ6、点火プラグ25、吸気VVT23、排気VVT24、燃料供給システム61、スロットル弁43、EGR弁54、過給機44の電磁クラッチ45、及び、エアバイパス弁48に出力して、エンジン1を制御する。例えば、ECU10は、第1圧力センサSW3及び第2圧力センサSW5の検知信号から得られる過給機44の前後差圧に基づいてエアバイパス弁48の開度を調整することにより、過給圧を調整する。また、ECU10は、EGR差圧センサSW15(以下では単に「差圧センサSW15」とも呼ぶ。)の検知信号から得られるEGR弁54の前後差圧に基づいてEGR弁54の開度を調整することにより、燃焼室17の中に導入する外部EGRガス量を調整する。
0054
<運転領域>
次に、図4を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの運転領域について説明する。図4(A)〜(C)は、エンジン1の暖機の進行度合いとエンジン1の回転速度/負荷とに応じた制御の相違を説明するための運転マップである。本実施形態では、エンジン1の暖機が完了した温間時(例えば「エンジン水温≧80℃」又は「吸気温≧50℃」のとき)と、エンジン1の暖機が途中まで進行した半暖機時(例えば「30℃≦エンジン水温<80℃」且つ「25℃≦吸気温<50℃」のとき)と、エンジン1が未暖機である冷間時(例えば「エンジン水温<30℃」且つ「吸気温<25℃」のとき)と、の3つの段階に対応して、それぞれ異なる運転マップが用意されている。
0055
まず、図4(A)を参照して、エンジン1の冷間時の燃焼制御について説明する。冷間時には、エンジン1の運転領域のほぼ全体に対応する領域R1において、比較的オーソドックスなSI(SparkIgnition)燃焼が実行される。SI燃焼とは、点火プラグ25を用いた火花点火により混合気に点火し、その点火点から周囲へと燃焼領域を拡げていく火炎伝播により混合気を強制的に燃焼させる形態のことである。なお、SI燃焼は、エンジン1の「第2燃焼モード」に相当する。
0056
このようなSI燃焼の実現のために、エンジン1の主な構成部は、ECU10によって次のように制御される。インジェクタ6は、少なくとも吸気行程と重複する所定の期間にわたって噴射を噴射する。例えば、インジェクタ6は、吸気行程から圧縮行程にかけた一連の期間にわたって燃料を噴射する。また、点火プラグ25は、圧縮上死点の近傍で混合気に点火する。例えば、点火プラグ25は、圧縮上死点よりもやや進角側のタイミングで混合気に点火する。そして、この点火をきっかけにSI燃焼が開始され、燃焼室17内の混合気の全てが火炎伝播により燃焼する。EGR弁54は、燃焼室17内の空気量と燃料量との割合である空燃比A/Fがほぼ理論空燃比(14.7)となるように、その開度が制御される。
0057
次に、図4(B)を参照して、エンジン1の半暖機時の燃焼制御について説明する。半暖機時には、領域R2において、冷間時の領域R1と同様に、SI燃焼が実行される。一方、領域R3では、SI燃焼とCI燃焼とをミックスした部分圧縮着火燃焼(SPCCI燃焼)が実行される。CI燃焼とは、ピストン3の圧縮により高温・高圧化された環境下で混合気を自着火により燃焼させる形態のことである。そして、SI燃焼とCI燃焼とをミックスしたSPCCI燃焼とは、混合気が自着火する寸前の環境下で行われる火花点火により燃焼室17内の混合気の一部をSI燃焼させ、当該SI燃焼の後に(SI燃焼に伴うさらなる高温・高圧化により)燃焼室17内の残りの混合気を自着火によりCI燃焼させる、という燃焼形態のことである。
0058
SPCCI燃焼は、SI燃焼時の熱発生よりもCI燃焼時の熱発生の方が急峻になるという性質がある。例えば、SPCCI燃焼による熱発生率の波形は、SI燃焼に対応する燃焼初期の立ち上がりの傾きが、その後のCI燃焼に対応して生じる立ち上がりの傾きよりも小さくなる。言い換えると、SPCCI燃焼時の熱発生率の波形は、SI燃焼によって形成された相対的に立ち上がりの傾きが小さい熱発生率部と、CI燃焼によって形成された相対的に立ち上がりの傾きが大きい熱発生部とが、この順に連続するように形成される。また、このような熱発生率の傾向に対応して、SPCCI燃焼では、SI燃焼時に生じる燃焼室17内の圧力上昇率(dp/dθ)がCI燃焼時のそれよりも小さくなる。
0059
SI燃焼によって、燃焼室17内の温度及び圧力が高まると、これに伴い未燃混合気が自着火し、CI燃焼が開始される。この自着火のタイミング(つまりCI燃焼が開始するタイミング)で、熱発生率の波形の傾きが小から大へと変化する。すなわち、SPCCI燃焼における熱発生率の波形は、CI燃焼が開始するタイミングで現れる変曲点を有している。
0060
CI燃焼の開始後は、SI燃焼とCI燃焼とが並行して行われる。CI燃焼は、SI燃焼よりも混合気の燃焼速度が速いため、熱発生率は相対的に大きくなる。ただし、CI燃焼は、圧縮上死点の後に行われるため、熱発生率の波形の傾きが過大になることはない。すなわち、圧縮上死点を過ぎるとピストン3の下降によりモータリング圧力が低下するので、このことが熱発生率の上昇を抑制する結果、CI燃焼時のdp/dθが過大になることが回避される。このように、SPCCI燃焼では、SI燃焼の後にCI燃焼が行われるという性質上、燃焼騒音の指標となるdp/dθが過大になり難く、単純なCI燃焼(全ての燃料をCI燃焼させた場合)に比べて燃焼騒音を抑制することができる。
0061
CI燃焼の終了に伴いSPCCI燃焼も終了する。CI燃焼はSI燃焼に比べて燃焼速度が速いので、単純なSI燃焼(全ての燃料をSI燃焼させた場合)に比べて燃焼終了時期を早めることができる。言い換えると、SPCCI燃焼では、燃焼終了時期を膨張行程内において圧縮上死点に近づけることができる。これにより、SPCCI燃焼では、単純なSI燃焼に比べて燃費性能を向上させることができる。
0062
特に、図4(B)に示す領域R3では、燃焼室17内の空燃比をほぼ理論空燃比(14.7)に設定して、SPCCI燃焼(以下では適宜「第1SPCCI燃焼」と呼ぶ。この第1SPCCI燃焼は、エンジン1の「第1燃焼モード」に相当する。)が行われる。言い換えると、領域R3では、空気過剰率λ(実空燃比を理論空燃比で割った値)が1もしくはその近傍となるストイキ環境下(λ≒1)でSPCCI燃焼が行われる。
0063
このような領域R3では、エンジン1の主な構成部は、ECU10によって次のように制御される。インジェクタ6は、少なくとも一部の燃料の噴射時期を吸気行程にまで早める。例えば、インジェクタ6は、1回目の燃料噴射を吸気行程中に実行するとともに、2回目の燃料噴射を圧縮行程中に実行する。点火プラグ25は、圧縮上死点の近傍で混合気に点火する。例えば、点火プラグ25は、圧縮上死点よりもやや進角側のタイミングで混合気に点火する。また、点火プラグ25は、上記したSI燃焼よりも進角側のタイミングで混合気に点火する。そして、この点火をきっかけにSPCCI燃焼が開始され、燃焼室17内の一部の混合気が火炎伝播により燃焼(SI燃焼)し、その後に残りの混合気が自着火により燃焼(CI燃焼)する。
0064
吸気VVT23及び排気VVT24は、吸気弁21及び排気弁22のバルブタイミングを、内部EGRを行うためのタイミング、つまり、吸気弁21及び排気弁22の双方が排気上死点を跨いで開弁されるバルブオーバーラップ期間が十分に形成されるようなタイミングに設定する。これにより、燃焼室17に既燃ガスを残留させる内部EGRが実現され、燃焼室17の温度(圧縮前の初期温度)が高められる。具体的には、領域R3では、吸気VVT23は、SI燃焼よりも早いタイミングで吸気弁21を閉じ、排気VVT24は、SI燃焼よりも遅いタイミングで排気弁22を閉じる。スロットル弁43は、所定の中間開度まで閉じられ、燃焼室17内の全体の空燃比A/Fがほぼ理論空燃比に設定される。
0065
EGR弁54は、燃焼室17内の全体の空燃比が目標空燃比となるように、その開度が制御される。基本的には、EGR弁54は、燃焼室17に導入される全ガス量から、目標空燃比(A/F≒14.7)に相当する空気量と、内部EGRにより燃焼室17に残留させられる既燃ガスの量とを除いた分のガスが、外部EGRガスとしてEGR通路52から燃焼室17に還流されるように、EGR通路52内の流量を調整する。ここで、領域R3では、上記のように空燃比(A/F)がほぼ理論空燃比に設定される上に、燃焼室17にEGRガス(外部EGRガス及び内部EGRガス)が導入されるので、EGRガスを含む燃焼室17内の全ガス量と燃料量との割合であるガス空燃比G/Fは、理論空燃比よりも大きいリーン(14.7を超える値であり、例えば35〜45)となる。
0066
次に、図4(C)を参照して、エンジン1の温間時の燃焼制御について説明する。温間時には、領域R4において、冷間時の領域R1及び半暖機時の領域R2と同様に、SI燃焼が実行され、領域R5において、半暖機時の領域R3と同様に、SPCCI燃焼が実行される。但し、領域R5では、ガス空燃比G/Fは、領域R3のようなリーンに設定されない。一方、領域R6では、領域R3や領域R5と異なり、燃焼室17内の空燃比A/Fを理論空燃比(14.7)よりも大きい値に設定して、SPCCI燃焼(以下では「第2SPCCI燃焼」と呼ぶ。この第2SPCCI燃焼は、エンジン1の「第3燃焼モード」に相当する。)が行われる。言い換えると、領域R6では、空気過剰率λが1より大きくなる空燃比リーンな環境下(λ>1)でSPCCI燃焼が行われる。1つの例では、空気過剰率λが2以上に設定される。
0067
このような領域R6では、エンジン1の主な構成部は、ECU10によって次のように制御される。インジェクタ6は、1サイクル中に噴射すべき燃料の全量または大半を圧縮行程中に噴射する。例えば、インジェクタ6は、圧縮行程の中期から後期にかけた2回に分けて燃料を噴射する。点火プラグ25は、圧縮上死点の近傍で混合気に点火する。例えば、点火プラグ25は、圧縮上死点よりもやや進角側のタイミング(SI燃焼よりも進角側のタイミング)で混合気に点火する。そして、この点火をきっかけにSPCCI燃焼が開始され、燃焼室17内の一部の混合気が火炎伝播により燃焼(SI燃焼)し、その後に残りの混合気が自着火により燃焼(CI燃焼)する。
0068
吸気VVT23及び排気VVT24は、吸気弁21及び排気弁22のバルブタイミングを内部EGRを行うためのタイミング、つまり、吸気弁21及び排気弁22の双方が排気上死点を跨いで開弁されるバルブオーバーラップ期間が十分に形成されるようなタイミングに設定する。これにより、燃焼室17に既燃ガスを残留させる内部EGRが実現され、燃焼室17の温度(圧縮前の初期温度)が高められる。具体的には、領域R6では、吸気VVT23は、SI燃焼よりも早いタイミングで吸気弁21を閉じ、排気VVT24は、SI燃焼よりも遅いタイミングで排気弁22を閉じる。スロットル弁43は、全開相当の開度まで開かれ、燃焼室17内の全体の空燃比(A/F)が30〜40に設定される。
0069
<差圧センサの異常判定>
以下では、本発明の実施形態による差圧センサ(EGR差圧センサ)SW15の異常判定方法及びこの異常判定に関連するエンジン1の制御方法について説明する。
0070
まず、図5及び図6を参照して、本発明の実施形態による差圧センサSW15の異常判定方法の基本概念について説明する。図5の横軸は、EGR弁54の上流側の圧力と下流側の圧力との比率(圧力比)を示している。この圧力比は、EGR弁54の下流側の圧力がEGR弁54の上流側の圧力に対して低くなるほど(つまり負圧が大きくなるほど)、その値が小さくなる。また、図5の縦軸は、EGR弁54の上流側と下流側との圧力比などに応じて規定され、EGR弁54を流れる流量(つまりEGR通路52から吸気通路40に還流されるEGRガスの流量)を表す示す指標である流量関数の値を示している。EGR弁54を流れる流量は、この流量関数に比例したものとなる。また、図5において、実線は排気脈動がない場合のグラフを示し、破線は±2.5kPa程度の排気脈動がある場合のグラフを示し、一点鎖線は±5kPa程度の排気脈動がある場合のグラフを示している。
0071
更に、図6は、横軸に、差圧センサSW15による圧力検出誤差[%]を示し、縦軸に、上記の流量関数を用いてEGR弁54を流れる流量を推定したときの誤差[%](流量推定誤差)を示している。図6において、実線は負圧が5kPaである場合のグラフを示し、破線は負圧が2kPaである場合のグラフを示している。なお、ここでいう負圧とは、基本的には、EGR弁54の上流側と下流側との差圧と同義である。すなわち、当該負圧は、EGR通路52の上流端の圧力(触媒コンバーター51の下流側の排気通路50の圧力であり、基本的には大気圧に概ね一致する)に対する、EGR通路52の下流端の圧力(スロットル弁43の下流側で且つ過給機44の上流側の吸気通路40の圧力である)の差を意味するものとする。
0072
図5に示すように、負圧が2kPaの場合には(この場合、大気圧が100kPaとすると圧力比が0.98となる)、EGRガスの流量に対して排気脈動が与える影響の大きさが40%程度となるのに対して(矢印A1参照)、負圧が5kPaの場合には(この場合、大気圧が100kPaとすると圧力比が0.95となる)、EGRガスの流量に対して排気脈動が与える影響の大きさが8%程度となる。つまり、負圧が5kPaの場合には、負圧が2kPaの場合と比べて、排気脈動の影響をほとんど受けなくなる。また、図6に示すように、差圧センサSW15による圧力検出誤差が1kPaの場合を例に挙げると、負圧が2kPaの場合には流量推定誤差が30%程度となるのに対して、負圧が5kPaの場合には流量推定誤差が10%程度となる。つまり、負圧が5kPaの場合には、負圧が2kPaの場合と比べて、圧力検出誤差が流量推定に与える影響がかなり小さくなる。これは、負圧が大きいほど流量関数の絶対値が大きく、流量関数の傾きも緩やかになるため、圧力検出誤差の影響も小さくなるからである。
0073
以上のことから、EGR弁54の上流側と下流側との差圧が比較的大きい場合、具体的には当該差圧が5kPa以上である場合には、排気脈動の影響が小さくなると言える。このように排気脈動の影響が小さくなると、差圧センサSW15の異常判定の精度を確保することができるので、本実施形態では、EGR弁54の上流側と下流側との差圧が比較的大きいときに差圧センサSW15の異常判定を行うこととした。ここで、エンジン1の運転状態に応じて成り行きで差圧が大きくなった状況でのみ異常判定を行うこととすると、異常判定の実行頻度が低下してしまう。よって、差圧センサSW15の異常判定を行うときに、EGR弁54の上流側と下流側との間に大きな差圧を生成するようにすればよいが、この差圧を大きくし過ぎると燃費が悪化する傾向にある。
0074
したがって、本実施形態では、ECU10は、差圧センサSW15の異常判定を行うときに、EGR弁54の上流側と下流側との間に5kPaの差圧を生成するための制御を行うこととした。具体的には、ECU10は、EGR弁54の上流側と下流側との差圧を5kPaに維持すべく(以下ではこのような差圧を適宜「目標差圧」と呼ぶ。)、少なくともスロットル弁43を閉じ側に制御する。詳しくは、ECU10は、目標差圧を実現するために必要な、スロットル弁43の下流側で且つ過給機44の上流側の吸気通路40の圧力(以下では適宜「目標過給機上流圧」と呼ぶ。)を設定し、この目標過給機上流圧に基づきスロットル弁43の開度をフィードバック制御する。
0075
次に、図7を参照して、本発明の実施形態において、差圧センサSW15の異常判定を行うときのスロットル弁43及びエアバイパス弁48の制御について具体的に説明する。図7は、本発明の実施形態によるスロットル弁43及びエアバイパス弁48の制御処理を示すフローチャートである。このフローチャートに係る処理は、差圧センサSW15の異常判定の実行要求が発せられているときに、ECU10によって所定の周期で繰り返し実行される。
0076
まず、ステップS11において、ECU10は、上述したセンサSW1〜SW17(図1及び図3参照)から各種情報を取得する。代表的には、ECU10は、第1圧力センサSW3によって検出された過給機上流圧、第2圧力センサSW5によって検出された過給圧、及び大気圧センサSW17によって検出された大気圧を取得する。
0077
次いで、ステップS12において、ECU10は、過給機44により設定すべき目標過給圧を求める。基本的には、ECU10は、エンジン1の現在の空気量と、ドライバからの要求(アクセルペダル操作)などに応じてエンジン1に供給すべき目標空気量と、第2圧力センサSW5によって検出された現在の過給圧とに基づき、目標過給圧を設定する。具体的には、ECU10は、目標空気量をエンジン1に供給するために必要な目標過給圧を、現在の空気量及び現在の過給圧から求める。また、ECU10は、現在のEGRガス量も考慮して目標過給圧を設定する。例えば、ECU10は、EGRガス量が増えた場合には、空気量を一定にするよう制御された結果、過給圧が上昇するので、その分だけ目標空気量に対する目標過給圧を調整するようにする。
0078
次いで、ステップS13において、ECU10は、ステップS12において設定された目標過給圧を実現するようにエアバイパス弁48を制御する。具体的には、ECU10は、第2圧力センサSW5によって検出された現在の過給圧(実過給圧)と目標過給圧とを比較して、実過給圧が目標過給圧に一致するように、エアバイパス弁48の開度をフィードバック制御する。
0079
他方で、上記のステップS12及びS13の処理と並行して、ECU10は、ステップS14及びS15の処理を行う。まず、ステップS14において、ECU10は、EGR弁54の上流側と下流側との差圧を目標差圧(5kPa)に設定するために必要な過給機上流圧(目標過給機上流圧)を求める。具体的には、ECU10は、大気圧センサSW17によって検出された大気圧(100kpa程度)をEGR弁54の上流側の圧力として用い、この大気圧とEGR弁54の下流側の圧力である過給機上流圧との差が5kPaになればよいので、ECU10は、大気圧から5kPaを減算した圧力を目標過給機上流圧として設定する。
0080
次いで、ステップS15において、ECU10は、ステップS14において設定された目標過給機上流圧を実現するようにスロットル弁43を制御する。具体的には、ECU10は、第1圧力センサSW3によって検出された現在の過給機上流圧(実過給機上流圧)と目標過給機上流圧とを比較して、実過給機上流圧が目標過給機上流圧に一致するように、スロットル弁43の開度をフィードバック制御する。
0081
ここで、ステップS14及びS15において、目標差圧が実現されるようにスロットル弁43が制御されると、過給機上流圧が変化することで、その下流の過給圧も変化する傾向にある。この場合、ステップS14及びS15と並行したステップS12及びS13において、スロットル弁43の制御とは独立して、目標過給圧が実現されるようにエアバイパス弁48がフィードバック制御されるので、過給圧がほぼ一定に維持されることとなる。つまり、スロットル弁43の制御による過給圧の変動が補償されるように、エアバイパス弁48のフィードバック制御が行われることとなる。典型的には、ECU10は、5kPaの目標差圧を実現するために、つまり5kPa相当の負圧をスロットル弁43下流に生成するために、スロットル弁43を閉じ側に制御する一方で、このスロットル弁43の制御による空気の減少を補償するように、エアバイパス弁48を閉じ側に制御する。このように、スロットル弁43のフィードバック制御とエアバイパス弁48のフィードバック制御とが別個独立して並行して行われることで、過給機44の上流側及び下流側の両方とも所望の圧力(目標過給機上流圧及び目標過給圧)に適切に設定できるようになる。
0082
次に、図8を参照して、本発明の実施形態による差圧センサSW15の異常判定について具体的に説明する。図8は、本発明の実施形態による差圧センサSW15の異常判定処理を示すフローチャートである。このフローチャートに係る処理は、差圧センサSW15の異常判定の実行要求が発せられているときに、図7に示したフローチャートに係る処理と並行して、ECU10によって所定の周期で繰り返し実行される。
0083
まず、ステップS21において、ECU10は、上述したセンサSW1〜SW17(図1及び図3参照)から各種情報を取得する。代表的には、ECU10は、第1圧力センサSW3によって検出された過給機上流圧、エンジン回転数センサSW9によって検出されたエンジン回転数、EGR差圧センサSW15によって検出された差圧、及び大気圧センサSW17によって検出された大気圧を取得する。その他にも、ECU10は、センサSW1〜SW17などを含む車両内の種々の電子機器を駆動するためのバッテリの電圧を取得する。
0084
ステップS22において、ECU10は、ステップS21で取得したバッテリ電圧が所定電圧以上であるか否かを判定する。ここでは、差圧センサSW15の異常判定の精度を確保すべく、バッテリ電圧が安定しており、差圧センサSW15が信頼性の高い検知信号を出力可能な状態にあるか否かを判定している。バッテリ電圧が所定電圧以上である場合(ステップS22:Yes)、ECU10は、差圧センサSW15の異常判定を行うべく、ステップS23に進む。これに対して、バッテリ電圧が所定電圧未満である場合(ステップS22:No)、ECU10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。この場合には、ECU10は、差圧センサSW15の異常判定を行わない。
0085
次いで、ステップS23において、ECU10は、ステップS21で取得したエンジン回転数が所定回転数未満であるか否かを判定する。本実施形態では、ECU10は、エンジン回転数が所定回転数未満である場合にのみ、つまり低回転領域においてのみ、差圧センサSW15の異常判定を行うべく、ステップS23のような判定を行っている。こうしているのは、本実施形態では、EGR弁54の差圧を規定する上流側の圧力として大気圧を用いるようにしているが、低回転領域では、EGR弁54の上流側の圧力が大気圧に正確に一致するものとなるからである。また、低回転数領域では、排気脈動の影響が比較的小さいからである。なお、ステップS23の判定で用いられる所定回転数は、つまり低回転領域を判定するための所定回転数は、例えば2000rpm程度に設定される。
0086
ステップS23の結果、エンジン回転数が所定回転数未満である場合(ステップS23:Yes)、ECU10は、差圧センサSW15の異常判定を行うべく、ステップS24に進む。これに対して、エンジン回転数が所定回転数以上である場合(ステップS23:No)、ECU10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。この場合には、ECU10は、差圧センサSW15の異常判定を行わない。
0087
次いで、ステップS24において、ECU10は、ステップS21で取得したエンジン回転数に基づき、差圧センサSW15の異常判定において用いる判定閾値を設定する。具体的には、ECU10は、図9に示すようなマップを参照して、現在のエンジン回転数に対応する判定閾値を設定する。図9は、エンジン回転数(横軸)に対して設定すべき判定閾値(縦軸)を規定したマップである。この判定閾値は、圧力により規定され、差圧センサSW15によって検出された差圧に基づき異常判定を行うときに適用される閾値(詳しくは判定に用いられる値が当該判定閾値以上となったときに差圧センサSW15が異常である判定されるようになっている)である。図9に示すように、エンジン回転数が高くなるほど、設定される判定閾値が大きくなる。こうしているのは、エンジン回転数が高くなるほど、排気圧の影響が大きくなるので、判定閾値を大きくして排気圧の影響を排除するためである。
0088
次いで、ステップS25において、ECU10は、まず、EGR弁54の上流側と下流側との差圧(以下では適宜「差圧算出値」と呼ぶ。)を算出し、この差圧算出値と差圧センサSW15によって検出された差圧(以下では適宜「差圧センサ値」と呼ぶ。)との差(絶対値を用いるものとする)が、ステップS24で設定された判定閾値以上であるか否かを判定する。この場合、ECU10は、大気圧センサSW17によって検出された大気圧と、第1圧力センサSW3によって検出された過給機上流圧とを減算することで、差圧算出値を求める。
0089
ステップS25の結果、差圧センサ値と差圧算出値との差が判定閾値以上である場合(ステップS25:Yes)、ECU10は、ステップS26に進み、差圧センサSW15が異常であると判定し、差圧センサSW15の異常判定フラグをオンにする。他方で、差圧センサ値と差圧算出値との差が判定閾値未満である場合(ステップS25:No)、ECU10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。この場合には、ECU10は、差圧センサSW15が正常であるものと判定し、差圧センサSW15の異常判定フラグをオフにする。
0090
なお、差圧センサ値と差圧算出値との差が判定閾値以上である場合に、差圧センサSW15が異常であると即座に判定することに限定はされず、差圧センサ値と差圧算出値との差が判定閾値以上である状態が所定時間以上継続した場合に、差圧センサSW15が異常であると判定してもよい。この場合、差圧センサ値と差圧算出値との差が判定閾値以上であっても、その状態が所定時間以上継続するまでは、差圧センサSW15に対する判定を待機すればよい。
0091
上記のステップS26の後、ECU10は、ステップS27に進み、EGR弁54を閉じる制御(全閉制御)を行う。こうするのは、差圧センサSW15が異常であるため、差圧センサSW15によって検出された差圧に基づくEGR弁54の制御を適切に行うことができなくなるからである。すなわち、EGR弁54によってEGRガス量を精度良く制御できなくなるので(つまりEGR制御性を確保できなくなるので)、EGR弁54を閉じて、吸気通路40へのEGRガスの還流を停止するようにする。
0092
次いで、ステップS28において、ECU10は、エンジン1が第1SPCCI燃焼を行っている場合には、この第1SPCCI燃焼を禁止して、第1SPCCI燃焼からSI燃焼へと切り替える制御を行う。これは、上述したように第1SPCCI燃焼はEGRガスを還流させた状態において行われるので(詳しくは、第1SPCCI燃焼は、ガス空燃比G/Fがリーンの状態(比較的多量のEGRガスが導入される状態)において行われる)、上記のように差圧センサSW15の異常に起因してEGRガスの還流が停止された場合には、第1SPCCI燃焼を禁止することとしたものである。
0093
具体的には、ECU10は、上記のように第1SPCCI燃焼からSI燃焼へと切り替えるときに、吸気弁21の閉弁タイミングを遅らせるように吸気VVT23を制御する。こうすることで、エンジン1の有効圧縮比を低下させて、ノッキングを抑制するようにしている。また、ECU10は、このような吸気VVT23の制御に加えて、排気弁22の閉弁タイミングを早めるように排気VVT24を制御する。こうすることで、吸気弁21及び排気弁22のオーバーラップ期間を減少させて、燃焼室17に導入される内部EGRガス量を減らして、筒内温度を低下させることで、ノッキングを更に抑制するようにしている。また、ECU10は、ノッキングをより一層抑制すべく、点火時期を遅角させるように点火プラグ25を制御する。
0095
<作用及び効果>
次に、本発明の実施形態によるエンジンの制御方法及び制御システムによる作用及び効果について説明する。
0096
図10は、本発明の実施形態による差圧センサSW15の異常判定を行った場合の結果の一例を示すタイムチャートである。図10は、上から順に、過給圧、スロットル弁43の開度、エアバイパス弁48の開度、本実施形態による差圧センサSW15の差圧センサ値、比較例による差圧センサSW15の差圧センサ値、差圧センサSW15の異常判定フラグを示している。また、図10では、スロットル弁43の開度、エアバイパス弁48の開度、及び差圧センサSW15の異常判定フラグについて、本実施形態による結果を実線により示し、比較例による結果を破線により示している。なお、図10は、本実施形態及び比較例の両方とも、差圧センサSW15が実際には正常である場合の結果を示している。
0097
比較例では、差圧センサSW15の異常判定を行うときに、EGR弁54の上流側と下流側との差圧を積極的に変化させる制御は行われず、差圧が比較的小さい状態(例えば2kpa未満)にあるものとする。一方、本実施形態では、差圧センサSW15の異常判定を行うときに、EGR弁54の上流側と下流側との差圧を比較的大きくするように、具体的には差圧を5kPaに設定するように、スロットル弁43が比較例よりも閉じ側に制御されると共に、このスロットル弁43の制御に応じて、エアバイパス弁48が比較例よりも閉じ側に制御される。なお、図10に示す例では、過給圧が上昇しており、この過給圧の上昇に応じて、本実施形態及び比較例の両方とも、スロットル弁43が徐々に開き側に制御されると共に、エアバイパス弁48が徐々に閉じ側に制御される。このように過給圧が大きくなると、排気脈動も大きくなっていく。
0098
本実施形態及び比較例の両方とも、排気脈動の影響を受けて差圧センサ値が変動し、過給圧が大きくなるにつれて、この差圧センサ値の変動幅が大きくなっていく。また、本実施形態及び比較例の両方とも、差圧センサSW15の異常判定には、差圧センサ値そのものではなく、差圧センサ値の時間的な平均値av1、av2が用いられる。
0099
比較例では、EGR弁54の上流側と下流側との差圧が比較的小さいので、値が比較的小さい範囲において差圧センサ値が変動する。そのため、比較例では、差圧センサ値のグラフにおいて破線で示すように、EGR弁54の上流側と下流側との差圧が差圧センサSW15の検知可能な下限値を下回るときがあり、そのときには差圧センサ値が下限値に固定される。よって、比較例では、差圧センサ値の平均値av2がかさ上げされて、実際の差圧に対応する値よりも大きいものとなる。その結果、比較例では、時刻t11において、差圧センサ値の平均値av2が差圧算出値に応じた閾値th2以上となり(この閾値th2は差圧算出値に対して上述した判定閾値を加算した値であり、差圧センサ値の平均値av2が閾値th2以上となることは当該平均値av2と差圧算出値との差が判定閾値以上になることに相当する)、差圧センサSW15の異常判定フラグがオンとなる。この場合、比較例では、差圧センサSW15が異常であると誤判定されてしまう。
0100
一方で、本実施形態では、EGR弁54の上流側と下流側との差圧が比較的大きいので、値が比較的大きい範囲において差圧センサ値が変動する。そのため、本実施形態では、比較例のように、EGR弁54の上流側と下流側との差圧が差圧センサSW15の検知可能な下限値を下回ることはなく、差圧センサ値が下限値を常に超えることとなる。よって、本実施形態では、比較例のように、差圧センサ値の平均値av1がかさ上げされて、実際の差圧に対応する値よりも大きくなることはない。そのため、本実施形態では、差圧センサ値の平均値av1が差圧算出値に応じた閾値th1以上となることはなく(この閾値th1は差圧算出値に対して上述した判定閾値を加算した値であり、差圧センサ値の平均値av1が閾値th1未満であることは当該平均値av1と差圧算出値との差が判定閾値未満であることに相当する)、差圧センサSW15の異常判定フラグがオフに維持される。このようなことから、本実施形態によれば、差圧センサSW15を正確に判定することができると言える。
0101
次に、図11は、本発明の実施形態において差圧センサSW15の異常判定時にエンジン制御を行った場合の結果の一例を示すタイムチャートである。図11は、上から順に、差圧センサSW15の差圧センサ値、差圧センサSW15の異常判定フラグ、EGR弁54の開度、エンジン1の燃焼モード、吸気VVT23の動作(特に吸気VVT23による吸気弁21の閉弁タイミング)、排気VVT24の動作(特に排気VVT24による排気弁22の閉弁タイミング)、点火プラグ25による点火時期、を示している。
0102
図11に示すように、時刻t21において、差圧センサ値の平均値av3が差圧算出値に応じた閾値th3以上となり、差圧センサSW15の異常判定フラグがオンとなる。このときに、吸気通路40へのEGRガスの還流を停止するように、EGR弁54が閉じられる。これに加えて、本実施形態では、エンジン1の燃焼モードが第1SPCCI燃焼からSI燃焼へと切り替えられる(比較例では、破線に示すように、エンジン1の燃焼モードが第1SPCCI燃焼に維持される)。また、本実施形態では、第1SPCCI燃焼からSI燃焼へと切り替えられるときに、エンジン1のノッキングを抑制するように、吸気弁21の閉弁タイミングを遅らせるための吸気VVT23の制御と、排気弁22の閉弁タイミングを早めるための排気VVT24の制御と、点火時期を遅角させるための点火プラグ25の制御と、が実行される。
0103
このあと、時刻t22において、所定の条件が成立することで、エンジン1の燃焼モードがSI燃焼から第2SPCCI燃焼へと切り替えられる。つまり、本実施形態では、差圧センサSW15の異常判定時に、第1SPCCI燃焼は禁止されるが、第2SPCCI燃焼は許可される。例えば、燃焼安定性が確保されており、SPCCI燃焼を行っても燃焼騒音が問題にならないと判定されるような状況において(1つの例では指圧センサSW6により検出された筒内圧などに基づき判定される)、燃焼モードがSI燃焼から第2SPCCI燃焼へと切り替えられる。このようにSI燃焼から第2SPCCI燃焼へと切り替えられるときに、吸気弁21の閉弁タイミングを早めるための吸気VVT23の制御と、排気弁22の閉弁タイミングを遅らせるための排気VVT24の制御と、点火時期を進角させるための点火プラグ25の制御と、が実行される。
0104
以上述べたように、本実施形態によれば、ECU10は、差圧センサSW15の異常判定を行うときに、EGR弁54の上流側と下流側との差圧が所定圧力以上に維持されるようにスロットル弁43を閉側に制御するので、異常判定の実行頻度を確保しつつ、異常判定を精度良く行うことができる。また、このように差圧を所定圧力以上に維持することで、排気脈動によるEGR制御性の悪化を抑制でき、燃費を確保することができる。
0105
また、本実施形態によれば、ECU10は、差圧センサSW15が異常であるときに、EGRガスの還流を停止すると共に、ガス空燃比G/Fがリーンの状態(比較的多量のEGRガスが導入される状態)で燃焼室17内の混合気を自着火により圧縮着火燃焼させる第1SPCCI燃焼を、混合気を火花点火によって火花点火燃焼させるSI燃焼へと切り替える。これにより、差圧センサSW15が異常であるときに、EGRガスを利用する第1SPCCI燃焼の実施を維持するために、EGR制御性を改善するようにEGR弁54の上流側と下流側との差圧を更に大きくすることにより、燃費が悪化してしまうことを適切に抑制できる。すなわち、本実施形態によれば、差圧センサSW15が異常であるときに、第1SPCCI燃焼を維持するよう制御することに起因する燃費の悪化を確実に抑制することができ、また、この第1SPCCI燃焼をSI燃焼へと切り替えることで、エンジン1の燃焼安定性を確保することができる。
0106
また、本実施形態によれば、ECU10は、第1SPCCI燃焼からSI燃焼に切り替えるときに、吸気弁21の閉弁時期を遅らせるように吸気VVT23を制御するので、エンジン1の有効圧縮比を低下させて、ノッキングを適切に抑制することができる。
0107
また、本実施形態によれば、ECU10は、上記のように吸気弁21の閉弁時期を遅らせるように吸気VVT23を制御するときに、点火プラグ25による点火時期を遅角させるので、ノッキングをより効果的に抑制することができる。
0108
また、本実施形態によれば、ECU10は、差圧センサSW15が異常であると判定されたときに、第1SPCCI燃焼を禁止する一方で、空燃比A/Fがリーンの状態において混合気を自着火により圧縮着火燃焼させる第2SPCCI燃焼を許可する。これにより、差圧センサSW15の異常によりEGR制御性が確保されない状態において、EGRガスを利用する第1SPCCI燃焼を確実に禁止することができ、また、こうして第1SPCCI燃焼を禁止する一方で第2SPCCI燃焼については許可するので、SPCCI燃焼による燃費の改善及びNOxの低減を適切に確保することができる。
0109
また、本実施形態では、エンジン1は、低負荷低回転領域では第2SPCCI燃焼を行い、この低負荷低回転領域以外の領域ではSI燃焼を行うので、エンジン1の全運転領域において適切な燃焼を実現することができる。
0110
また、本実施形態によれば、ECU10は、差圧センサSW15の異常を判定するために差圧が所定圧力以上に維持されるようにスロットル弁43を制御したときに、このスロットル弁43の制御による過給圧の変動を補償するように、目標過給圧に基づきエアバイパス弁48をフィードバック制御する。これにより、過給機44の上流側の圧力(詳しくはスロットル弁43の下流側且つ過給機44の上流側の圧力、換言するとEGR弁54の差圧を規定するEGR弁54の下流側の圧力)と、過給機44の上流側の圧力(過給圧)の両方を、所望の圧力に適切に設定することができる。
0111
また、本実施形態では、エンジン1によって駆動される機械式の過給機44が用いられる。この過給機44では、当該過給機44に対する直接的な制御によって過給圧を調整できないが、上述したようにエアバイパス弁48を制御することで、目標過給圧を適切に実現することができる。
0112
また、本実施形態によれば、ECU10は、差圧センサSW15により検出された差圧(差圧センサ値)と、第1圧力センサSW3によって検出された過給機上流圧と大気圧センサSW17によって検出された大気圧との差圧(差圧算出値)との差が判定閾値以上である場合に、差圧センサSW15が異常であると判定する。これにより、差圧センサSW15の異常を正確に判定することができる。
0113
また、本実施形態によれば、ECU10は、エンジン回転数が高くなるほど、判定閾値を高い値に設定するので、エンジン回転数が上昇したときの排気圧の影響を適切に排除して、異常判定の精度を効果的に確保することができる。
0114
また、本実施形態によれば、ECU10は、エンジン回転数が所定回転数未満のときのみ、つまり低回転領域においてのみ、差圧センサSW15の異常判定を実行することとし、排気流量が多く脈動の影響が大きい高回転領域においては異常判定の実行を禁止するので、異常判定の精度を適切に確保することができる。
0115
<変形例>
上述した実施形態では、エンジン1の燃焼モードをSI燃焼とSPCCI燃焼(部分圧縮着火燃焼)との間で切り替えていたが、このように燃焼モードを切り替える構成に本発明を適用することに限定はされない。本発明は、SPCCI燃焼の代わりにCI燃焼を用い、エンジン1の燃焼モードをSI燃焼とCI燃焼との間で切り替える構成にも適用可能である。
0116
上述した実施形態では、エンジン1により機械的に駆動される過給機44を吸気通路40に設けたが、このような機械式の過給機44に代えて、電気モータで駆動される電動過給機や、排気ガスのエネルギーにより駆動されるターボ過給機を設けてもよい。
0117
1エンジン
6インジェクタ
10 ECU
17燃焼室
21吸気弁
22排気弁
23吸気VVT
24排気VVT
25点火プラグ
40吸気通路
43スロットル弁
44過給機
48エアバイパス弁
50排気通路
52EGR通路
54EGR弁
SW3 第1圧力センサ
SW5 第2圧力センサ
SW15EGR差圧センサ
SW17 大気圧センサ
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
- 過給機
- 内燃機関燃焼法
- 排気還流装置
- 機関出力の制御及び特殊形式機関の制御
- 内燃機関に供給する空気・燃料の電気的制御
- 内燃機関の複合的制御