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技術 摺動部材

出願人 株式会社リケン
発明者 高橋育朗
出願日 2019年4月18日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-079130
公開日 2020年10月29日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-176550
状態 特許登録済
技術分野 弁装置又は配列 内燃機関の潤滑
主要キーワード 対数螺旋 硬質メッキ グラファイトカソード 中央領 高強度樹脂 非晶質硬質炭素 カムフォロア部材 磁気フィルター
関連する未来課題
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図面 (11)

課題

低粘度の潤滑油を用いた場合であっても、摺動面における十分に低い摩擦損失を達成できる摺動部材を提供する。

解決手段

本発明に係る摺動部材は、カム外表面が当接する摺動面と、摺動面に設けられている渦巻き状又は複数の円環状の溝とを備え、摺動面は、当該摺動面の中心を含む円形中央領域と、中央領域よりも外側に位置する第1の環状領域とを有し、中央領域における溝のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RCが第1の環状領域における溝のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RO1よりも大きい。

概要

背景

内燃機関が備えるバルブ駆動機構において、バルブリフタ等の摺動部材が用いられている。バルブリフタは、カムシャフトカム外周面に対して摺接し、カムシャフトの回転をバルブ開閉に作用させる。摺動部材における摩擦損失を低減するため、従来、摺動面での潤滑油保持性を高める技術が検討されている(特許文献1〜3参照)。

概要

低粘度の潤滑油を用いた場合であっても、摺動面における十分に低い摩擦損失を達成できる摺動部材を提供する。本発明に係る摺動部材は、カムの外表面が当接する摺動面と、摺動面に設けられている渦巻き状又は複数の円環状の溝とを備え、摺動面は、当該摺動面の中心を含む円形中央領域と、中央領域よりも外側に位置する第1の環状領域とを有し、中央領域における溝のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RCが第1の環状領域における溝のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RO1よりも大きい。

目的

本発明は、低粘度の潤滑油を用いた場合であっても、摺動面における十分に低い摩擦損失を達成できる摺動部材を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

カム外表面が当接する摺動面と、前記摺動面に設けられている渦巻き状又は複数の円環状の溝と、を備え、前記摺動面は、当該摺動面の中心を含む円形中央領域と、前記中央領域よりも外側に位置する第1の環状領域とを有し、前記中央領域における前記溝のピッチL1に対する前記溝の幅L2の比率RCが前記第1の環状領域における前記溝のピッチL1に対する前記溝の幅L2の比率RO1よりも大きい、摺動部材

請求項2

前記溝は、前記摺動面の中心側から外側に向けて、ピッチL1に対する幅L2の比率が段階的又は連続的に小さくなるように形成されている、請求項1に記載の摺動部材。

請求項3

前記溝は、前記摺動面の中心側から外側に向けて、ピッチL1が段階的又は連続的に大きくなるように形成されている、請求項1又は2に記載の摺動部材。

請求項4

比率RCが0.2以上であり0.8以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動部材。

請求項5

比率RO1が0.1以上であり0.6以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の摺動部材。

請求項6

比率RC/RO1が1を超え8以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の摺動部材。

請求項7

前記溝が渦巻き状であり、当該渦巻き状の溝は一方の端部から他方の端部まで連続的又は断続的に形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の摺動部材。

請求項8

前記溝が複数の円環状であり、それぞれの当該円環状の溝は周方向に連続的又は断続的に形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の摺動部材。

請求項9

前記溝の深さが100〜400nmである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の摺動部材。

請求項10

前記摺動面が硬質皮膜で構成されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の摺動部材。

請求項11

前記硬質皮膜が非晶質硬質炭素膜である、請求項10に記載の摺動部材。

請求項12

前記摺動面は、前記第1の環状領域よりも外側に位置し且つ当該摺動面の周縁に沿った第2の環状領域を更に有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の摺動部材。

請求項13

前記第2の環状領域における前記溝のピッチL1に対する前記溝の幅L2の比率RO2が前記第1の環状領域における前記溝のピッチL1に対する前記溝の幅L2の比率RO1よりも小さい、請求項12に記載の摺動部材。

請求項14

比率RO2が0.05以上であり0.4以下である、請求項13に記載の摺動部材。

請求項15

比率RO1/RO2が1を超え12以下である、請求項13又は14に記載の摺動部材。

請求項16

前記第2の環状領域には溝が形成されていない、請求項15に記載の摺動部材。

請求項17

バルブリフタ又はシムである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の摺動部材。

技術分野

0001

本発明は、相手部材摺接する摺動部材に関する。

背景技術

0002

内燃機関が備えるバルブ駆動機構において、バルブリフタ等の摺動部材が用いられている。バルブリフタは、カムシャフトカム外周面に対して摺接し、カムシャフトの回転をバルブ開閉に作用させる。摺動部材における摩擦損失を低減するため、従来、摺動面での潤滑油保持性を高める技術が検討されている(特許文献1〜3参照)。

先行技術

0003

実開昭51−68904号公報
特開平11−157954号公報
特開2007−46660号公報

発明が解決しようとする課題

0004

近年、更なる低摩擦化又は燃費の向上等を目的として、潤滑油の低粘度化が進められている。従来と比較して低粘度の潤滑油が使用される場合、摺動面における低い摩擦損失を維持するには、従来のバルブリフタ等の摺動面の構成を更に改良する余地がある。

0005

本発明は、低粘度の潤滑油を用いた場合であっても、摺動面における十分に低い摩擦損失を達成できる摺動部材を提供する。

課題を解決するための手段

0006

本発明の一側面に係る摺動部材は、カムの外表面が当接する摺動面と、摺動面に設けられている渦巻き状又は複数の円環状の溝とを備え、摺動面は、当該摺動面の中心を含む円形中央領域と、中央領域よりも外側に位置する第1の環状領域とを有し、中央領域における溝のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RCが第1の環状領域における溝のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RO1よりも大きい。摺動面は、例えば、非晶質硬質炭素膜などの硬質皮膜で構成されている。

0007

上述のとおり、摺動面の中央領域及び第1の環状領域には、渦巻き状又は複数の円環状の溝が形成されている。中央領域における比率RCが第1の環状領域における比率RO1よりも大きいということは、相対的に、中央領域には溝が密に形成されており、他方、第1の環状領域には溝が疎に形成されていることを意味する。かかる構成を採用したことにより、本発明に係る摺動部材によれば、低粘度の潤滑油を用いた場合であっても、摺動面における十分に低い摩擦損失を達成できる。すなわち、カムから比較的強い押圧力を受ける中央領域に密に溝を形成することで、十分な量の潤滑油を中央領域に保持することができ、摩擦抵抗を十分に小さくできる。他方、第1の環状領域は、カムから受ける押圧力が中央領域よりも弱いため、中央領域よりも溝が疎に形成されていても、摩擦抵抗が十分に小さい状態を維持できる。仮に、第1の環状領域に対し、中央領域と同程度に密に溝を形成するとかえって摩擦抵抗が大きくなり得る。

0008

溝は、摺動面の中心側から外側に向けて、ピッチL1に対する幅L2の比率が段階的に小さくなるように形成されていてもよいし、連続的に小さくなるように形成されていてもよい。すなわち、摺動面は、中心側から外側に向けて、溝が密に形成された領域(中央領域)から疎に形成された領域(第1の領域)に段階的に移行していてもよいし、連続的に移行していてもよい。例えば、溝の幅L2を実質的に一定とした場合、摺動面の中心側から外側に向けて、ピッチL1が段階的又は連続的に大きくなるように溝を形成すればよい。

0009

溝が渦巻き状である場合、渦巻き状の溝は一方の端部から他方の端部まで連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。溝が複数の円環状である場合、それぞれの円環状の溝は周方向に連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。

0010

摺動面は、第1の環状領域よりも外側に位置し且つ当該摺動面の周縁に沿った第2の環状領域を更に有してもよい。第2の環状領域には、第1の環状領域よりも疎に溝が形成されていてもよい。この態様の場合、第2の環状領域における溝のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RO2が第1の環状領域における溝のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RO1よりも小さい。あるいは、第2の環状領域には溝が形成されていなくてもよい。

発明の効果

0011

本発明によれば、低粘度の潤滑油を用いた場合であっても、摺動面における十分に低い摩擦損失を達成できる摺動部材が提供される。

図面の簡単な説明

0012

図1(A)及び図1(B)は、本発明の一実施形態に係る摺動部材が適用される内燃機関の動弁機構の一部を示す断面図である。
図2は、図1に示すバルブリフタを示す断面図である。
図3は、バルブリフタの摺動面に形成された溝の一態様を模式的に示す上面図である。
図4(a)〜図4(c)は、摺動面に形成された溝を拡大して模式的に示す断面図である。
図5は、溝の他の態様を模式的に示すバルブリフタの上面図である。
図6は、溝の他の態様を模式的に示すバルブリフタの上面図である。
図7は、溝の他の態様を模式的に示すバルブリフタの上面図である。
図8(a)及び図8(b)は溝の変形例を模式的に示すバルブリフタの上面図である。
図9は、溝の他の態様を模式的に示すバルブリフタの上面図である。
図10は、実施例及び比較例の結果を示すグラフである。

0013

以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。

0014

<動弁機構>
図1は、本発明の一形態に係る摺動部材が適用される内燃機関の動弁機構の一部を示している。図1(A)は、バルブリフタが上昇しバルブが閉じた状態の断面であり、図1(B)は、バルブリフタが降下してバルブが開いた状態の断面図である。

0015

図1(A)に示すバルブリフタ10は、本実施形態に係る摺動部材に対応するものであって、シリンダヘッド20のボア22内に設けられている。バルブリフタ10の摺動面11と摺動するカム24は、カムシャフトに取り付けられ、駆動系等によるカムシャフトの回転に伴って回転する。カム24は回転の中心から外周摺動面までの距離が一定でないカムプロフィールを有するため、カム24の回転によってバルブリフタ10の摺動面11を押す力が変化する。図1(A)及び図1(B)に示すように、カム24の回転に伴って、バルブリフタ10がボア22内を移動して、バルブリフタ10に対して接続されるバルブ26の開閉操作が行われる。バルブ26は、外周に配置されたバルブスプリング28によって図示の上方(カム側)に常時付勢されている。バルブ26の開動作図1(B)参照)は、カム24の突出部が、摺動面11を押圧したときに行われる。カムシャフト側に設けられる潤滑油供給手段(不図示)から潤滑油が供給されて、カム24及びバルブリフタ10が潤滑される。カム24がバルブリフタ10を押圧する力は、摺動面11の中心領域近傍にカム24の突出先端部(カムノーズ)が到達したときに最大となる。なお、カムシャフトの回転数が高くなると、バルブリフタ10との摺動速度も高まる。

0016

<バルブリフタ>
図2は、バルブリフタ10の断面図であり、図3は、バルブリフタ10の上面図である。これらの図に示すように、バルブリフタ10は、一方が開口した円筒形をしており、具体的には、円筒形のスカート部12と、スカート部12の中心軸線X方向の一端側である上端部にスカート部12に対して一体的に形成された冠部13と、冠部13の上面(スカート部12側とは逆側の端面)上に設けられた非晶質硬質炭素膜15とを有する。冠部13の下面(スカート部12側の主面)の中央付近に、円形状のボス部14が設けられている。ボス部14はバルブ26の上端(バルブステム)に対して当接する。スカート部12と摺動面11の境界には、テーパ状の面取り部が形成されている。

0017

摺動面11は、図3に示すように円形状であり、そのうちの一部の領域(図3破線で示す摺動範囲Sa)をカム24が図3に示す矢印Sの方向に摺動する。すなわち、矢印Sはカム24の摺動方向を示したものであり、一方向に回転するカム24と摺動面11との接点は、矢印Sに沿った方向に往復動する。破線で示した摺動範囲Saは矢印Sに沿って摺動するカム24の移動範囲を示したものである。カム24との摺動時に、バルブリフタ10をボア22内でその中心軸に回転させる目的で、カム幅の中央位置をバルブリフタ冠面の中心軸から外周側に若干オフセットした位置とすることがあり、カムの摺動範囲Saは、オフセットを考慮してカム幅よりも若干大きくしてよい。

0018

本実施形態における摺動面11は物理的蒸着法PVD)や化学的蒸着法CVD)による金属の窒化物炭化物炭窒化物および硼化物や、硬質メッキ、非晶質硬質炭素膜などの硬質皮膜により構成されている。摺動面11は、非晶質硬質炭素膜15によって構成されているとよい。バルブリフタ10の本体部(スカート部12、冠部13及びボス部14)の材質には、JIS規格によるSCM材を浸炭処理したものを用いることができ、これ以外の鋼材鋳物鉄系合金チタン合金アルミ合金及び高強度樹脂等を用いてもよい。

0019

摺動面11には、図3に示すように、摺動面11の中心軸線X(以下、単に「軸線X」という。)を中心とする渦巻状の溝16が形成されている。溝16は、摺動面11の外周側の端部から中央部(軸線X付近)の端部まで連続的に形成されている。溝16は、非晶質硬質炭素膜15に対してレーザ照射する手法によって形成することができる。例えば、溝16を形成前のバルブリフタを、軸線Xを中心として回転させた状態で、摺動面11の外周側から中心部に向けて径方向にレーザを照射する。このとき、バルブリフタの回転速度、レーザの移動速度及びレーザの照射強度等を制御することで、図3に示す溝16を形成することができる。使用し得るレーザとして、超短パルスレーザ及び直線偏光レーザが挙げられる。これらのうち、溝16を形成するレーザとしてパルス間隔ピコ秒からフェムト秒の超短パルスレーザを採用することが好ましい。

0020

摺動面11は、溝16の態様に応じて中央部から周縁部に向けて、例えば、三つの領域に分かれている。すなわち、摺動面11は、摺動面11の中心を含む円形の中央領域Acと、中央領域Acよりも外側に位置する第1の環状領域A1と、第1の環状領域A1よりも外側に位置する第2の環状領域A2とを有する。中央領域Acは、円形であり、カムの摺動範囲Saの幅(図3における幅W)に応じた直径を有することが好ましい。すなわち、中央領域Acの直径は幅Wと同じであるか、それ以上であることが好ましい。第1の環状領域A1は中央領域Acと第2の環状領域A2との間の領域である。第2の環状領域A2は、摺動面11の周縁に沿った領域である。

0021

図3に示すとおり、中央領域Acには第1の環状領域A1よりも密に溝16が形成されている。すなわち、図4(a)及び図4(b)に示すように、中央領域Acにおける溝16のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RCは第1の環状領域A1における溝のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RO1よりも大きい。本実施形態においては、溝16の幅L2は実質的に一定であり、中央領域Acにおける溝16のピッチL1は第1の環状領域A1における溝のピッチL1よりも小さく設定されている。溝16の幅L2は、例えば、20〜200μmであり、50〜160μm又は80〜120μmであってもよい。溝16の深さは、低回転域フリクション低減の観点から、100〜400nmであることが好ましく、100〜300nm又は150〜250nmであってもよい。

0022

中央領域Acにおける溝16の比率RCは、例えば、0.2以上0.8以下であり、0.3〜0.7又は0.4〜0.6であってもよい。中央領域Acの比率RCが0.2以上であることで、中央領域Acに潤滑油を保持しやすく、他方、0.8以下であることで、過剰な潤滑油に起因する摺動抵抗の上昇を抑制できる。

0023

第1の環状領域A1における溝16の比率RO1は、上述の比率RCよりも小さい。第1の環状領域A1の比率RO1は、例えば、0.1以上0.6以下であり、0.1〜0.5又は0.2〜0.4であってもよい。第1の環状領域A1の比率RO1が0.1以上であることで、第1の環状領域A1に潤滑油を保持しやすく、他方、0.6以下であることで、過剰な潤滑油に起因する摺動抵抗の上昇を抑制できる。比率RC/RO1は、例えば、1を超え8以下であり、1.1〜3であってもよい。

0024

図4(b)及び図4(c)に示すように、第1の環状領域A1における溝16のピッチL1に対する溝の幅L2の比率R01は第2の環状領域A2における溝のピッチL1に対する溝の幅L2の比率RO2よりも大きい。上述のとおり、溝16の幅L2は実質的に一定であり、第1の環状領域A1における溝16のピッチL1は第2の環状領域A2における溝のピッチL1よりも小さく設定されている。第2の環状領域A2の比率RO2は、例えば、0.05以上0.4以下であり、0.1〜0.4又は0.2〜0.3であってもよい。第2の環状領域A2の比率RO2が0.4以下であることで、過剰な潤滑油に起因する摺動抵抗の上昇を抑制できる。比率RO1/RO2は、例えば、1を超え12以下であり、1.1〜3であってもよい。

0025

溝16の断面形状は特に限定されない。例えば、図4(a)〜図4(c)に示すように、側面及び底面が曲面状に連続した形状であってもよいし、側面と底面とが明確に区別されるような形状であってもよい。更に、溝16内が二面で形成される所謂V溝状であってもよい。

0026

摺動面11を構成する硬質皮膜は、物理的蒸着法(PVD)や化学的蒸着法(CVD)によるTiやCrなど金属の窒化物、炭化物、炭窒化物およびBNなどの硼化物や、硬質Crメッキ、非晶質硬質炭素膜などを適用でき、特に非晶質硬質炭素膜によって構成されているとよい。非晶質硬質炭素は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、水素アモルファスカーボン(a−c:H)、i−カーボン、又は、ダイヤモンド状炭素などと呼ばれ、構造的炭素の結合がダイヤモンド構造の結合(sp3型結合)とグラファイト構造の結合(sp2型結合)とが混在したものである。摺動面11が非晶質硬質炭素膜15で構成されていることで、カム24との摺動に伴う摺動面11の摩耗等が抑制され、バルブリフタ10の性能低下を防ぐことができ、バルブリフタ10の高寿命化が可能となる。

0027

非晶質硬質炭素膜15の厚さは、例えば、0.4〜10μmである。非晶質硬質炭素膜15の厚さが0.4μm以上であればバルブリフタ10が十分な耐久性を有する。他方、非晶質硬質炭素膜15の厚さが10μm以下であれば膜中の内部応力過度に大きくなることを抑制でき、欠け及び剥離の発生を抑制しやすい。バルブリフタ10の生産性の観点から、非晶質硬質炭素膜15の厚さは0.7〜2.0μmであってもよい。なお、摺動面に設けられる溝の深さは、非晶質硬質炭素膜の厚さよりも小さく設定される。

0028

非晶質硬質炭素膜15は、例えば、蒸発源グラファイトカソードを備えたアークイオンプレーティング装置を用いて形成することができる。この装置によれば、真空雰囲気中、グラファイトカソードとアノードとの間で真空アーク放電を発生させ、炭素カソード表面から炭素材料蒸発イオン化し、負のバイアス電圧印加した冠部13の上面上に炭素イオン堆積させる工程を経て非晶質硬質炭素膜15を形成することができる。

0029

非晶質硬質炭素膜15は、水素を含有しても含有しなくてもよいが、低摩擦係数を達成する観点から水素を実質的に含有しないこと(水素含有量が5原子%未満)が好ましい。具体的には、非晶質硬質炭素膜15の水素含有量は好ましくは5原子%未満であり、より好ましくは3原子%未満であり、更に好ましくは2原子%未満であり、特に好ましくは1原子%未満である。非晶質硬質炭素膜15が水素を実質的に含有しないものであれば、非晶質硬質炭素膜15の表面炭素原子のダングリングボンドが水素で終端されないため、潤滑油中OH基をもつ油性剤構成分子が非晶質硬質炭素膜15の表面に吸着しやすく、これにより極めて低い摩擦係数を示すことが確認されている。また、水素を実質的に含有しない非晶質硬質炭素は優れた熱伝導特性を有する。非晶質硬質炭素膜15の水素含有量は、ラザフォード後方散乱分光法(Rutherford Backscattering Spectrometry、RBS)、水素前方散乱分光法(Hydrogen Forward Scattering、HFS)によって測定することができる。

0030

水素を実質的に含まない非晶質硬質炭素膜15を形成するには、炭素系ガスを導入せずに成膜すればよい。なお、装置内の壁面に残存する水分により、水素が5原子%未満で含有されることがある。アークイオンプレーティングにおいて特徴的に形成されるドロプレットは非晶質硬質炭素膜15に取り込まれて膜強度を低下させる。磁気フィルター装備したフィルタードアーク方式による装置を用いることで、ドロップレットを低減することができる。この装置を用いて形成された非晶質硬質炭素膜15は、ドロップレットが十分に少なく十分に均質であり、優れた耐摩耗性を有する。

0031

以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、一方の端部から他方の端部まで連続的に形成されている渦巻き状の溝16を例示したが、溝16は断続的に形成されていてもよい。また、溝の態様は渦巻き状でなくてもよく、図5に示すように、渦巻き状の溝16の代わりに、同心円の複数の溝17を摺動面11に形成してもよい。複数の円環状の溝17もそれぞれの周方向に連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。

0032

上記実施形態においては、第2の環状領域A2に第1の環状領域A1よりも疎に溝16が形成されている態様を例示したが、第2の環状領域A2には溝が形成されていなくてもよいし(図6参照)、第1の環状領域A1よりも溝16が連続的に疎に形成されていてもよい(図7参照)。第2の環状領域A2の態様は潤滑油の種類及び粘度等に応じて適宜選択すればよい。

0033

上記実施形態においては、中央領域Acの中心軸線X付近にまで溝16が形成されている態様(図3及び図6参照)を例示したが、図8(a)及び図8(b)に示すように、中央領域Acの中心軸線X付近に溝の未加工部を部分的に設けてもよい。すなわち、中央領域Acは、溝が形成されていない中央部Axを有してもよい。中央部Axは、溝16又は溝17が形成されていなくても潤滑油が保持されやすいからである。中央部Axに溝16又は溝17を形成しないことで、加工が容易となる。中央部Axの直径の中央領域Acの直径に対する比率は、例えば、0.1〜0.6であり、0.15〜0.5であってもよい。中央領域Acの態様は潤滑油の種類及び粘度等に応じて適宜選択すればよい。

0034

上記実施形態においては、摺動面11が第2の環状領域A2を有する態様を例示したが、摺動面11は第2の環状領域A2を有していなくてもよい。この場合、中央領域Acの周縁から摺動面11の周縁までが第1の環状領域A1である。

0035

図3及び図5〜8に示したように、中央領域Acから第1の環状領域A1に移行するにあたり、溝16のピッチが段階的と言える程度に異なる態様を例示したが、溝16のピッチが広くなる程度は連続的であってもよい(図9参照)。図9に示す溝16が描く曲線として、インボリュート曲線(伸開線)及び対数螺旋が挙げられる。溝16のピッチが連続的に広くなる場合、中央領域Acと第1の環状領域A1の境界は必ずしも明確ではないが、両者の境界はカムの摺動範囲Saの幅(図3における幅W)に基づいて定義することができる。例えば、幅Wと同じ直径の円形領域を中央領域Acと定義することができる。あるいは、ピッチL1に対する幅L2の比率の値に基づいて両者の境界を定義してもよい。例えば、この比率が0.5以上の領域を中央領域Acとし、この比率が0.5未満となる点から外側の領域を第1の環状領域A1としてもよい。

0036

上記実施形態においては、摺動部材としてバルブリフタを例示したが、本発明に係る摺動部材をカムフォロア部材シムタペット等の他の部材に適用してもよい。

0037

以下、本発明について実施例に基づいて説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

0038

<実施例>
摺動面が中央領域及び第1の環状領域からなり、第2の環状領域を有しないことの他は、図3に示した構成と同様のバルブリフタを作製した。本実施例に係るバルブリフタの態様は以下のとおりである。
・摺動面の材質:非晶質硬質炭素膜(水素含有量:5原子%未満)
・摺動面の直径:29mm
・溝の態様:連続した渦巻き状
・溝の深さ:0.2μm
・溝のピッチL1:0.2mm(中央領域)、0.3mm(第1の環状領域)
・溝の幅L2:0.1mm
・中央領域:半径6mmまでの領域
・第1の環状領域:半径6mmから14.5mmまでの領域
・中央領域の比率RC(L2/L1):0.5
・第1の環状領域の比率RO1(L2/L1):0.33
・溝の加工法:レーザ加工

0039

<比較例1>
摺動面に等間隔のピッチで溝を形成したことの他は実施例と同様にしてバルブリフタを作製した。本比較例に係る溝の態様は以下のとおりである。
・溝の態様:連続した渦巻き状
・溝の深さ:0.2μm
・溝のピッチL1:0.2mm
・溝の幅L2:0.1mm
・比率(L2/L1):0.5

0040

<比較例2>
摺動面に溝を形成しなかったことの他は実施例と同様にしてバルブリフタを作製した。

実施例

0041

フリクション低減効果の確認>
比較例2に係るバルブリフタの摺動面に対してカムの外表面を摺動させ、カムシャフトのトルク(Nm)を測定した。カムシャフトの回転速度を200rpmから2500rpmまで段階的に変化させた。これと同様に、実施例及び比較例1に係るバルブリフタをそれぞれ使用してカムシャフトのトルクを測定した。図10は下記式で算出されるフリクション低減率(%)をグラフで示したものである。
フリクション低減率(%)=[(比較例2のトルク)−(実施例又は比較例1のトルク)]/(比較例2のトルク)×100
図10のグラフに示されたとおり、カムシャフトの回転速度を200rpmから2500rpmの全範囲にわたって、比較例1よりも実施例の方が優れたフリクション低減効果が得られた。

0042

11…摺動面、15…非晶質硬質炭素膜、16…渦巻き状の溝、17…円環状の溝、24…カム、Ac…中央領域、A1…第1の環状領域、A2…第2の環状領域

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