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技術 厚鋼板およびその製造方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 名古秀徳
出願日 2020年1月21日 (1年0ヶ月経過) 出願番号 2020-007626
公開日 2020年10月29日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-176329
状態 未査定
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード ラウンド型 総パス数 転位組織 圧延幅方向 所定温度域 JIS規格 LPGタンク 圧延前加熱温度
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年10月29日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (2)

課題

板厚が厚くとも鋼板の内部にわたって、優れた強度−靭性バランスを発揮、特には、高強度と従来よりも低温での優れた靭性とを示す厚鋼板、およびその製造方法を提供する。

解決手段

本発明の厚鋼板は、所定の成分組成を満たすと共に、下記式(1)から求められるDi+10Nb:1.20〜2.50を満たし、結晶方位差15°以上の大角粒界に囲まれる結晶粒のうち、円相当直径が7.5μm以下の結晶粒の合計面積分率SAが、t/4位置で34%以上、かつt/2位置で27%以上である厚鋼板である。Di=1.16×([C]/10)0.5×(0.7×[Si]+1)×(5.1×([Mn]−1.2)+5)×(0.35×[Cu]+1)×(0.36×[Ni]+1)×(2.16×[Cr]+1)×(3×[Mo]+1)×(1.75×[V]+1)×(200×[B]+1)・・・(1)

概要

背景

例えばLPGタンク等の大型化に伴い、高強度かつ、母材低温靭性HAZの低温靭性を兼備した厚鋼板需要が高まりつつある。

HAZ靭性に優れた高強度鋼として、例えば特許文献1には、所定の成分を満たし、鋼板中心偏析部の平均化学分析値のC濃度が、鋼材平均C濃度の1.2倍以下、JIS規格で測定される介在物清浄度が0.03%以下、かつ鋼板断面で観察される平均直径10μm以上の酸化物系介在物個数が1個以下/1mm2、0.05〜5μmの酸化物及び窒化物析出物の個数が100個以上/1mm2を満たす鋼が示されている。

特許文献2では、所定の化学成分を満たし、アシキュラーフェライト組織分率が50%以上で、さらに平均円相当径で1〜5μmの島状マルテンサイト(MA)組織分率が3〜10%を満たすようにすることによって、母材低温靭性およびHAZ低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板が得られている。

特許文献3では、所定の成分組成を満たし、ミクロ組織ベイナイト組織であり、降伏強度500N/mm2以上かつ引張強度610N/mm2以上である鋼材が開示されている。また該鋼材は、溶接後の残留応力除去のための焼鈍熱処理を必須とせず、LPGアンモニア運搬船用タンクの製造に適していることが示されている。

特許文献4では、所定の成分組成を満たし、かつパラメータである、9×Ceq+4×P≧4.8と、[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])が0.6〜1.7の鋼を、1100〜1300℃の温度に加熱し、750℃以上の圧延終了温度熱間圧延した後、20℃/s以上の冷却速度で400℃未満の温度まで加速冷却を行い、その後直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で550〜700℃まで再加熱を行なうことを特徴とする耐SR(Stress Relief)特性に優れた高強度鋼板の製造方法が示されている。

概要

板厚が厚くとも鋼板の内部にわたって、優れた強度−靭性バランスを発揮、特には、高強度と従来よりも低温での優れた靭性とを示す厚鋼板、およびその製造方法を提供する。本発明の厚鋼板は、所定の成分組成を満たすと共に、下記式(1)から求められるDi+10Nb:1.20〜2.50を満たし、結晶方位差15°以上の大角粒界に囲まれる結晶粒のうち、円相当直径が7.5μm以下の結晶粒の合計面積分率SAが、t/4位置で34%以上、かつt/2位置で27%以上である厚鋼板である。Di=1.16×([C]/10)0.5×(0.7×[Si]+1)×(5.1×([Mn]−1.2)+5)×(0.35×[Cu]+1)×(0.36×[Ni]+1)×(2.16×[Cr]+1)×(3×[Mo]+1)×(1.75×[V]+1)×(200×[B]+1)・・・(1)

目的

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、板厚が厚くとも鋼板の内部にわたって、優れた強度−靭性バランスを発揮、特には、高強度と従来よりも低温での優れた靭性とを示す厚鋼板、および該厚鋼板の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

成分組成が、C:0.02質量%〜0.070質量%、Si:0質量%超、0.40質量%以下、Mn:1.30質量%〜1.95質量%、P:0質量%超、0.015質量%以下、S:0質量%超、0.005質量%以下、Al:0.005質量%〜0.070質量%、Nb:0.015質量%〜0.048質量%、Ti:0.005質量%〜0.024質量%、N:0.0030質量%〜0.0080質量%、およびCa:0質量%超、0.0040質量%以下を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなり、下記式(1)から求められるDi+10Nb:1.20〜2.50を満たし、結晶方位差15°以上の大角粒界に囲まれる結晶粒のうち、円相当直径が7.5μm以下の結晶粒の合計面積分率SAが、板厚の1/4位置で34%以上、かつ板厚の1/2位置で27%以上である厚鋼板。Di=1.16×([C]/10)0.5×(0.7×[Si]+1)×(5.1×([Mn]−1.2)+5)×(0.35×[Cu]+1)×(0.36×[Ni]+1)×(2.16×[Cr]+1)×(3×[Mo]+1)×(1.75×[V]+1)×(200×[B]+1)・・・(1)式(1)において、[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]および[B]は、それぞれ、質量%で示したC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、VおよびBの含有量を示し、含まない元素はゼロとする。

請求項2

更に、Cu:0質量%超、0.75質量%以下、およびNi:0質量%超、1.4質量%以下よりなる群から選択される1種以上の元素を含む請求項1に記載の厚鋼板。

請求項3

更に、Mo:0質量%超、0.50質量%以下、V:0質量%超、0.060質量%以下、Cr:0質量%超、0.8質量%以下、およびB:0質量%超、0.0007質量%以下よりなる群から選択される1種以上の元素を含む請求項1または2に記載の厚鋼板。

請求項4

更に、REM:0質量%超、0.0060質量%以下、およびZr:0質量%超、0.0050質量%以下よりなる群から選択される1種以上の元素を含む請求項1〜3のいずれかに記載の厚鋼板。

請求項5

請求項1〜4のいずれかに記載の厚鋼板を製造する方法であって、請求項1〜4のいずれかに記載の成分組成を有する鋼片を、1020℃超、1200℃未満に加熱する工程と、前記加熱後の熱間圧延工程とを含み、前記熱間圧延工程は、圧延パス数を3パス以上とし、かつ下記(a)〜(d)の条件を全て満たすように、熱間圧延と該熱間圧延後の冷却を行う厚鋼板の製造方法。(a)850℃以下の温度域での累積圧下率が40%以上(b)最終3パス圧延平均圧下率が5.5%以上(c)仕上圧延温度が720〜830℃(d)熱間圧延後、仕上圧延温度〜690℃の冷却開始温度から、320〜550℃の冷却停止温度までを、平均冷却速度0.5〜20℃/sで冷却する。

技術分野

0001

本発明は厚鋼板およびその製造方法に関する。特には、母材靭性に優れた高強度の厚鋼板と、該厚鋼板の製造方法に関する。

背景技術

0002

例えばLPGタンク等の大型化に伴い、高強度かつ、母材低温靭性HAZの低温靭性を兼備した厚鋼板の需要が高まりつつある。

0003

HAZ靭性に優れた高強度鋼として、例えば特許文献1には、所定の成分を満たし、鋼板中心偏析部の平均化学分析値のC濃度が、鋼材平均C濃度の1.2倍以下、JIS規格で測定される介在物清浄度が0.03%以下、かつ鋼板断面で観察される平均直径10μm以上の酸化物系介在物個数が1個以下/1mm2、0.05〜5μmの酸化物及び窒化物析出物の個数が100個以上/1mm2を満たす鋼が示されている。

0004

特許文献2では、所定の化学成分を満たし、アシキュラーフェライト組織分率が50%以上で、さらに平均円相当径で1〜5μmの島状マルテンサイト(MA)組織分率が3〜10%を満たすようにすることによって、母材低温靭性およびHAZ低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板が得られている。

0005

特許文献3では、所定の成分組成を満たし、ミクロ組織ベイナイト組織であり、降伏強度500N/mm2以上かつ引張強度610N/mm2以上である鋼材が開示されている。また該鋼材は、溶接後の残留応力除去のための焼鈍熱処理を必須とせず、LPGアンモニア運搬船用タンクの製造に適していることが示されている。

0006

特許文献4では、所定の成分組成を満たし、かつパラメータである、9×Ceq+4×P≧4.8と、[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])が0.6〜1.7の鋼を、1100〜1300℃の温度に加熱し、750℃以上の圧延終了温度熱間圧延した後、20℃/s以上の冷却速度で400℃未満の温度まで加速冷却を行い、その後直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で550〜700℃まで再加熱を行なうことを特徴とする耐SR(Stress Relief)特性に優れた高強度鋼板の製造方法が示されている。

先行技術

0007

特開平8−158006号公報
特開2009−127065号公報
特開2008−025014号公報
特開2007−270194号公報

発明が解決しようとする課題

0008

特許文献1では、良好な強度と靭性のバランスが得られているものの、実施例では40mm以下の板厚しか考慮されておらず、より厚めの鋼板を考慮した技術は提案されていない。特許文献2では、母材およびHAZの低温靭性と強度との両立を図っているが、低温靭性は−60℃で評価されており、より低温での優れた靭性を実現するには更なる検討が必要であると考える。特許文献3では、板厚t/4位置でしか機械的特性を評価しておらず、更に鋼板内部の機械的特性までは考慮されていない。特許文献4では、SR後も良好な機械的特性を有する厚鋼板の製造方法が開示されているが、靭性の評価温度は−10℃にすぎず、より低温での靭性までは検討されていない。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、板厚が厚くとも鋼板の内部にわたって、優れた強度−靭性バランスを発揮、特には、高強度と従来よりも低温での優れた靭性とを示す厚鋼板、および該厚鋼板の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0009

本発明の態様1は、
成分組成が、
C :0.02質量%〜0.070質量%、
Si:0質量%超、0.40質量%以下、
Mn:1.30質量%〜1.95質量%、
P :0質量%超、0.015質量%以下、
S :0質量%超、0.005質量%以下、
Al:0.005質量%〜0.070質量%、
Nb:0.015質量%〜0.048質量%、
Ti:0.005質量%〜0.024質量%、
N :0.0030質量%〜0.0080質量%、および
Ca:0質量%超、0.0040質量%以下
を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
下記式(1)から求められるDi+10Nb:1.20〜2.50を満たし、
結晶方位差15°以上の大角粒界に囲まれる結晶粒のうち、円相当直径が7.5μm以下の結晶粒の合計面積分率SAが、板厚の1/4位置で34%以上、かつ板厚の1/2位置で27%以上である厚鋼板である。
Di=1.16×([C]/10)0.5×(0.7×[Si]+1)×(5.1×([Mn]−1.2)+5)×(0.35×[Cu]+1)×(0.36×[Ni]+1)×(2.16×[Cr]+1)×(3×[Mo]+1)×(1.75×[V]+1)×(200×[B]+1)・・・(1)
式(1)において、[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]および[B]は、それぞれ、質量%で示したC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、VおよびBの含有量を示し、含まない元素はゼロとする。

0010

本発明の態様2は、更に、
Cu:0質量%超、0.75質量%以下、および
Ni:0質量%超、1.4質量%以下
よりなる群から選択される1種以上の元素を含む態様1に記載の厚鋼板である。

0011

本発明の態様3は、更に、
Mo:0質量%超、0.50質量%以下、
V :0質量%超、0.060質量%以下、
Cr:0質量%超、0.8質量%以下、および
B :0質量%超、0.0007質量%以下
よりなる群から選択される1種以上の元素を含む態様1または2に記載の厚鋼板である。

0012

本発明の態様4は、更に、
REM:0質量%超、0.0060質量%以下、および
Zr:0質量%超、0.0050質量%以下
よりなる群から選択される1種以上の元素を含む態様1〜3のいずれかに記載の厚鋼板である。

0013

本発明の態様5は、
態様1〜4のいずれかに記載の厚鋼板を製造する方法であって、
態様1〜4のいずれかに記載の成分組成を有する鋼片を、1020℃超、1200℃未満に加熱する工程と、前記加熱後の熱間圧延工程とを含み、
前記熱間圧延工程は、圧延パス数を3パス以上とし、かつ下記(a)〜(d)の条件を全て満たすように、熱間圧延と該熱間圧延後の冷却を行う厚鋼板の製造方法。
(a)850℃以下の温度域での累積圧下率が40%以上
(b)最終3パス圧延平均圧下率が5.5%以上
(c)仕上圧延温度が720〜830℃
(d)熱間圧延後、仕上圧延温度〜690℃の冷却開始温度から、320〜550℃の冷却停止温度までを、平均冷却速度0.5〜20℃/sで冷却する。

発明の効果

0014

本発明によれば、板厚が厚くとも鋼板の内部にわたって、優れた強度−靭性バランスを発揮、特には、高強度と従来よりも低温での優れた靭性とを示す厚鋼板、およびその製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0015

図1は、結晶方位差15°以上の大角粒界に囲まれる結晶粒のうち、円相当直径が7.5μm以下の結晶粒の合計面積分率SAと、Y値との関係を示すグラフである。

0016

本発明では、SR前の状態すなわち熱間圧延ままの状態で、強度と従来よりも低温での靭性とのバランスの改善された厚鋼板を得るべく鋭意研究を行った。特に、板厚が厚くとも板厚の1/4位置および1/2位置において、強度−靭性バランスに優れている、具体的には本発明で定める強度−靭性バランスに関するパラメータY=20×vTrs−7×YPが、十分低い鋼板を得るべく鋭意研究を行った。

0017

その結果、成分組成を制御すると共に、板厚の1/4位置および1/2位置において、微細アシキュラーフェライト組織を所定量確保、より具体的には、後述する方法で測定された円相当直径7.5μm以下のアシキュラーフェライトを所定量確保すれば、上記良好な特性が得られることを見出した。以下では、板厚の1/4位置を「t/4位置」、板厚の1/2位置を「t/2位置」ということがある。

0018

また、上記微細なアシキュラーフェライト組織を所定量形成するには、下記(A)〜(C)の全てを実施することが有効であることを見出した。上記アシキュラーフェライトは、以下では「AF」ということがある。
(A)オーステナイト相からフェライト相への変態前に、熱間圧延によりオーステナイト相に十分な加工歪を加える。この加工により導入された転位組織変形帯を核にAF結晶粒が生成することで、微細組織が実現される。
(B)熱間での未再結晶域圧延前に、固溶Nbを確保する。そうすることで、変態に先立つ加工歪が得られやすくなり、上述の通り微細なAF結晶粒が生成しやすい。前記固溶Nbの確保は、後述する通り、圧延前加熱温度を1020℃超とし、かつ850℃以上の圧延での圧下率下げることが有効である。
(C)フェライト相への変態温度を適切に制御する。フェライト相への変態温度が高いとAF生成に先立ち粒界フェライト組織が形成され、AF量が減少する。逆に、フェライト相への変態温度が低いと、AF組織が形成されないままマルテンサイト組織が生成する。フェライト相への変態温度を適切に制御するには、成分組成におけるC、Mn、CuとNiの少なくともいずれかを含む場合にはこれらの含有量、およびDi+10Nbの各範囲を制御すると共に、後述する通り、熱間圧延後の所定温度域の平均冷却速度を0.5℃/s以上とするのがよい。

0019

以下では、本発明の厚鋼板の鋼組織と成分組成、特性および製造方法について順に説明する。

0020

1.鋼組織
以下に本発明の厚鋼板の鋼組織について詳述する。以下の鋼組織の説明では、そのような組織を有することにより各種の特性を向上できるメカニズムについて説明している場合がある。これらは本発明者らが現時点で得られている知見により考えたメカニズムであるが、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに留意されたい。

0021

本発明では、結晶方位差15°以上の大角粒界に囲まれる結晶粒のうち、円相当直径が7.5μm以下の結晶粒を、微細なアシキュラーフェライト(AF)組織と定義する。本発明において「微細なアシキュラーフェライト(AF)組織を所定量形成させる」とは、この結晶方位差15°以上の大角粒界に囲まれる結晶粒であって、円相当直径が7.5μm以下の結晶粒を、下記に示す通り、t/4位置において34%以上、かつt/2位置において27%以上確保することをいう。

0022

本発明では、板厚が厚くとも優れた強度−靭性バランスを示す厚鋼板を得るべく、結晶方位差15°以上の大角粒界に囲まれる結晶粒のうち、円相当直径が7.5μm以下の結晶粒の合計面積分率SA、つまり微細なアシキュラーフェライト(AF)組織の面積分率を、t/4位置とt/2位置の両方で規定する。詳細には、上記合計面積分率SAが、t/4位置で34%以上、かつt/2位置で27%以上を満たすようにする。t/4位置の上記合計面積分率SAは、好ましくは35%以上、より好ましくは36%以上である。またt/2位置の上記合計面積分率SAは、好ましくは28%以上、より好ましくは30%以上である。なお、優れた強度−靭性バランスを得る観点から、t/4位置とt/2位置の各位置の上記合計面積分率SAの上限は特に限定されない。本発明の厚鋼板の製造条件を考慮すると、t/4位置の合計面積分率SAの上限は、80%程度、t/2位置の合計面積分率SAの上限は、70%程度となる。

0023

上記微細なアシキュラーフェライト以外の組織として、ベイナイトフェライトセメンタイト残留オーステナイトマルテンサイト等が挙げられる。上記合計面積分率SAが本発明で規定する範囲内にある限り、上記円相当直径が7.5μm超のアシキュラーフェライトが存在していてもよい。

0024

2.組成
以下に本発明に係る厚鋼板の組成について説明する。

0025

C:0.02質量%〜0.070質量%
Cは、フェライト変態温度を適切に制御し、脆性破壊起点として作用し強度−靭性バランス劣化の原因となる粒界フェライトが、AF生成前に生成するのを抑制する効果を有する。該効果を発揮させる観点から、C量は、0.02質量%以上、好ましくは0.023質量%以上、より好ましくは0.030質量%以上である。一方、C量が過剰であると、硬質なマルテンサイト組織が生成し、脆性破壊起点として作用することで強度−靭性バランスが劣化する。よって、C量は0.070質量%以下とする。C量は、好ましくは0.065質量%以下、より好ましくは0.060質量%以下である。

0026

Si:0質量%超、0.40質量%以下
Siは脱酸元素であり、その含有量は0質量%超である。Si量は、0.05質量%以上であってもよく、更に0.10質量%以上であってもよい。一方、Si量が過剰であると、硬質なマルテンサイト組織が生成し、脆性破壊起点として作用することで強度−靭性バランスが劣化する。よって、Si量は、0.40質量%以下、好ましくは0.38質量%以下、より好ましくは0.35質量%以下である。

0027

Mn:1.30質量%〜1.95質量%
Mnは、フェライト変態温度を適切に制御し、脆性破壊起点として作用し強度−靭性バランス劣化の原因となる粒界フェライトが、AF生成前に生成するのを抑制する効果を有する。該効果を発揮させる観点から、Mn量は、1.30質量%以上、好ましくは1.40質量%以上、より好ましくは1.45質量%以上である。一方、Mn量が過剰であると、硬質なマルテンサイト組織が生成し、脆性破壊起点として作用することで強度−靭性バランスが劣化する。よってMn量は、1.95質量%以下、好ましくは1.90質量%以下、より好ましくは1.80質量%以下である。

0028

P:0質量%超、0.015質量%以下
Pは、不純物元素であり、過剰に含まれると粒界が脆化して強度−靭性バランスが劣化する。よってP量は、0.015質量%以下とする。P量は、好ましくは0.008質量%以下、より好ましくは0.007質量%以下である。一方、工業上、P量を0質量%にすることは困難であることから、P量の下限は0質量%超である。

0029

S:0質量%超、0.005質量%以下
Sは、不純物元素であり、過剰に含まれると粒界が脆化して強度−靭性バランスが劣化する。よってS量は、0.005質量%以下とする。S量は、好ましくは0.004質量%以下、より好ましくは0.003質量%以下である。一方、工業上、S量を0質量%にすることは困難であることから、S量の下限は0質量%超である。

0030

Al:0.005質量%〜0.070質量%
Alは、脱酸元素である。十分な脱酸を行って鋼中酸素を低減し、酸化物による強度−靭性バランスの劣化を抑制するため、Al量は0.005質量%以上とする。Al量は、好ましくは0.010質量%以上、より好ましくは0.015質量%以上である。一方、Al量が過剰であると、粗大酸化物が形成されて、強度−靭性バランスが劣化する。よって、Al量は0.070質量%以下、好ましくは0.050質量%以下、より好ましくは0.045質量%以下である。

0031

Nb:0.015質量%〜0.048質量%
Nbは、AFの生成を促進させる元素である。微細なAF組織を十分に生成させて良好な強度−靭性バランスを得るため、Nb量は、0.015質量%以上、好ましくは0.016質量%以上、より好ましくは0.018質量%以上とする。一方、Nb量が過剰であると、硬質なマルテンサイト組織が生成し、この組織が脆性破壊起点として作用することで強度−靭性バランスが劣化する。よって、Nb量は0.048質量%以下、好ましくは0.045質量%以下、より好ましくは0.040質量%以下である。

0032

Ti:0.005質量%〜0.024質量%
Tiは、TiN形成によりHAZ靭性向上に寄与する元素である。該効果を発揮させる観点から、Ti量は、0.005質量%以上、好ましくは0.007質量%以上、より好ましくは0.009質量%以上である。一方、Ti量が過剰であると、粗大な晶出TiNが生成し、強度−靭性バランスが劣化する。よってTi量は、0.024質量%以下、好ましくは0.022質量%以下、より好ましくは0.020質量%以下である。

0033

N:0.0030質量%〜0.0080質量%
Nは、TiN形成によりHAZ靭性向上に寄与する元素である。該効果を発揮させる観点から、N量は0.0030質量%以上、好ましくは0.0032質量%以上、より好ましくは0.0035質量%以上である。一方、N量が過剰であると、固溶Nが増加し、強度−靭性バランスが劣化する。よってN量は、0.0080質量%以下、好ましくは0.0075質量%以下、より好ましくは0.0070質量%以下である。

0034

Ca:0質量%超、0.0040質量%以下
Caは脱酸元素であり、その含有量は0質量%超である。また、鋼中Mn量が多い場合、t/2位置では鋳造時のMn濃化により粗大なMnSが生成しやすくなり、t/2位置の靭性が低下しやすいと考えられる。このMnSの形成抑制のために、Ca量を0質量%超とすることが好ましく、0.0008質量%以上とすることがより好ましく、更に好ましくは0.0010質量%以上である。一方、Ca量が過剰であると、粗大酸化物が形成されて、強度−靭性バランスが劣化する。よって、Ca量は0.0040質量%以下、好ましくは0.0028質量%以下、より好ましくは0.0025質量%以下である。

0035

残部は、Feおよび不可避不純物である。不可避不純物としては、原料資材製造設備等の状況によって持ち込まれる例えば、As、Sb、Snなどの微量元素混入許容される。なお、例えばPおよびSのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」とは、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。

0036

本発明の厚鋼板は、成分組成において、上記元素を含んでいればよい。下記に述べる選択元素は、含まれていなくてもよいが、上記元素と共に必要に応じて含有させることにより、高強度等をより容易に達成させることができる。また、所望の組織をより容易に確保でき、本発明で求める強度−靭性バランスをより容易に達成することができる。以下、選択元素について述べる。

0037

Cu:0質量%超、0.75質量%以下、およびNi:0質量%超、1.4質量%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
これらの元素は、フェライト変態温度を適切に制御し、脆性破壊起点として作用し強度−靭性バランス劣化の原因となる粒界フェライトが、AF生成前に生成するのを抑制する効果を有する。該効果を発揮させる観点から、Cuを含有させる場合には、0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、より更に好ましくは0.15質量%以上である。Niを含有させる場合には、0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上、より更に好ましくは0.20質量%以上である。一方、これらの元素が過剰であると、硬質なマルテンサイト組織が生成し、該組織が、脆性破壊起点として作用し、強度−靭性バランスの劣化を招く。よって、Cu量は、0.75質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.70質量%以下、更に好ましくは0.68質量%以下である。Ni量は、1.4質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.2質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。

0038

Mo:0質量%超、0.50質量%以下、V:0質量%超、0.060質量%以下、Cr:0質量%超、0.8質量%以下、およびB:0質量%超、0.0030質量%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
これらの元素は、強度向上に有効な元素である。該効果を発揮させる観点から、Moを含有させる場合は、0質量%超であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上である。Vを含有させる場合は、0質量%超であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上である。Crを含有させる場合は、0質量%超であることが好ましく、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上である。Bを含有させる場合は、0質量%超であることが好ましく、より好ましくは0.0003質量%以上である。

0039

一方、これらの元素の含有量が過剰であると、硬質なマルテンサイト組織が生成し、該組織が脆性破壊起点として作用し、強度−靭性バランスの劣化を招く。よって、Mo量は、0.50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.45質量%以下、更に好ましくは0.40質量%以下である。V量は、0.060質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.050質量%以下、更に好ましくは0.045質量%以下である。Cr量は、0.8質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.70質量%以下、更に好ましくは0.60質量%以下である。B量は、0.0007質量%以下であることが好ましく、より好ましく0.0006質量%以下である。

0040

REM:0質量%超、0.0060質量%以下、およびZr:0質量%超、0.0050質量%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
これらの元素は脱酸元素である。該効果を発揮させるには、REMを含有させる場合、0質量%超であることが好ましく、より好ましくは0.0010質量%以上、更に好ましくは0.0015質量%以上である。Zrを含有させる場合、0質量%超であることが好ましく、より好ましくは0.0010質量%以上、更に好ましくは0.0012質量%以上である。一方、これらの元素が過剰であると、粗大酸化物が形成され、強度−靭性バランスが劣化する。よってREM量は、0.0060質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.0050質量%以下、更に好ましくは0.0045質量%以下である。Zr量は、0.0050質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.0045質量%以下、更に好ましくは0.0040質量%以下である。前記REMとは、ランタノイド元素(LaからLuまでの15元素)、Sc(スカンジウム)およびY(イットリウム)を含む意味である。

0041

Di+10Nb:1.20〜2.50(Diは下記式(1)から求められる)
Di=1.16×([C]/10)0.5×(0.7×[Si]+1)×(5.1×([Mn]−1.2)+5)×(0.35×[Cu]+1)×(0.36×[Ni]+1)×(2.16×[Cr]+1)×(3×[Mo]+1)×(1.75×[V]+1)×(200×[B]+1)・・・(1)
式(1)において、[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]および[B]は、それぞれ、質量%で示したC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、VおよびBの含有量を示し、含まない元素はゼロとする。

0042

Di+10Nbは、フェライト変態温度に影響を及ぼすパラメータである。フェライト変態温度を適切に制御することで、AF生成前の粒界フェライトの生成を抑制し、またAF以外のパーライト組織やマルテンサイト組織の過剰な生成を抑制し、AF生成を促進させることができる。これらの観点から、本発明ではDi+10Nbを1.20〜2.50の範囲内とした。Di+10Nbの値が小さすぎると、粒界フェライトとともにパーライト組織が生成し、強度−靭性バランスが劣化する。よってDi+10Nbは、1.20以上とする。Di+10Nbは、好ましくは1.25以上、より好ましくは1.30以上である。一方、Di+10Nbの値が大きすぎると、硬質なマルテンサイト組織が生成し、脆性破壊起点として作用することで強度−靭性バランス劣化する。よってDi+10Nbは、2.50以下とする。Di+10Nbは、好ましくは2.20以下、より好ましくは2.00以下である。

0043

本発明の厚鋼板の板厚は、16mm以上であることが好ましく、より好ましくは30mm以上、更に好ましくは40mm以上、特に好ましくは40mm超である。なお、板厚の上限は特に限定されず、例えば80mm以下であることが好ましい。

0044

本発明の厚鋼板は、下記の特性を有しており、例えば大型のLPGタンク、船舶等の製造に適している。

0045

3.特性
本発明において、強度と従来よりも低い温度での靭性とのバランスの評価に、下記式(2)で示されるパラメータであるY値を用いる。Y値は、下記式(2)に示される通り、降伏強度YP、脆性延性遷移温度vTrsを含んでいる。なお、下記式(2)における降伏強度YPとして、SSカーブ(「応力−ひずみ線図」ともいう)が、降伏点の明らかでないラウンド型の場合は0.2%耐力(0.2YS)を使用し、降伏点を有する場合はYPを使用する。

0046

本発明の厚鋼板は、熱間圧延ままであって、圧延方向に対して直角なC方向において、t/4位置のYが−5200未満、かつt/2位置のYが−4700未満を満たす場合を、強度−靭性バランスに優れていると評価する。
Y=20×vTrs−7×YP・・・(2)

0047

上記t/4位置におけるY値は、好ましくは−5300以下、より好ましくは−5400以下であり、また、上記t/2位置におけるY値は、好ましくは−4800以下、より好ましくは−5000以下である。これらの値が低いほど、強度−靭性バランスに優れることを意味する。

0048

本発明は、特性として上記パラメータを達成すればよい。降伏強度YP、脆性延性遷移温度vTrsのそれぞれについては、上記パラメータを達成することを前提に、例えば降伏強度YPが好ましくは350〜550MPaの範囲、脆性延性遷移温度vTrsが好ましくは−70℃未満の範囲、より好ましくは−80℃未満の範囲とすることが挙げられる。また測定位置別に、t/4位置では、上記パラメータを達成することを前提に、例えば、降伏強度YPは410MPa以上であることが好ましく、より好ましくは430MPa以上、更に好ましくは460MPa以上、より更に好ましくは480MPa以上、特には500MPa以上であり、脆性延性遷移温度vTrsは、−90℃以下であることが好ましく、−95℃以下であることがより好ましく、−100℃以下であることが更に好ましく、より更に好ましくは−110℃以下である。またt/2位置では、上記パラメータを達成することを前提に、例えば、降伏強度YPは400MPa以上であることが好ましく、より好ましくは430MPa以上、更に好ましくは460MPa以上、より更に好ましくは480MPa以上、特には500MPa以上であり、脆性延性遷移温度vTrsは、−80℃以下であることが好ましく、−90℃以下であることがより好ましく、−95℃以下であることが更に好ましく、−100℃以下であることがより更に好ましい。

0049

4.製造方法
本発明に係る厚鋼板の製造方法は、前記成分組成を有する鋼片を、1020℃超、1200℃未満に加熱する工程と、前記加熱後の熱間圧延工程とを含み、前記熱間圧延工程は、圧延パス数を3パス以上とし、かつ下記(a)〜(d)の条件を全て満たすように、熱間圧延と該熱間圧延後の冷却を行う厚鋼板の製造方法。
(a)850℃以下の温度域での累積圧下率が40%以上
(b)最終3パスの圧延の平均圧下率が5.5%以上
(c)仕上圧延温度が720〜830℃
(d)熱間圧延後、仕上圧延温度〜690℃の冷却開始温度から、320〜550℃の冷却停止温度までを、平均冷却速度0.5〜20℃/sで冷却する。
以下、各製造条件について詳述する。

0050

[前記成分組成を有する鋼片を、1020℃超、1200℃未満に加熱する工程]
熱間圧延の加熱において、加熱温度が1020℃以下であると、鋳造時に生成したNbCが十分に固溶せず、固溶NbによるAF生成の促進効果が得られなくなる。よって加熱温度は、1020℃超、好ましくは1040℃以上、より好ましくは1050℃以上、更に好ましくは1060℃以上とする。一方、加熱温度が1200℃以上であると、オーステナイト粒が粗大化し、組織が全般的に粗大化する。よって加熱温度は、1200℃未満、好ましくは1180℃以下、より好ましくは1150℃以下とする。

0051

[前記加熱後の熱間圧延工程]
本発明は、後述する通り、最終3パスの圧延の平均圧下率を制御するところに特徴があり、前記加熱後は、圧延パスが3パス以上の熱間圧延を行うが、総パス数(圧延パスの回数)は組織と特性に影響を及ぼすものでなく限定されない。前記圧延パスは、更には7パス以上、より更には10パス以上であって、生産性の観点から60パス以下とすることができる。

0052

本発明では、下記(a)〜(d)の条件を全て満たすように前記熱間圧延を行い、かつ熱間圧延後の冷却を行う。

0053

(a)850℃以下の温度域での累積圧下率:40%以上
十分なAF組織を得ることを目的に、オーステナイト相に十分な加工歪を導入するには、熱間圧延における850℃以下の温度域での累積圧下率(「総圧下率」ともいう)を40%以上とする必要がある。ところで850℃以上の圧延での圧下率が増加すると、圧延中にNbCが析出し、固溶Nbが減少すると考えられる。この850℃以上の圧延での累積圧下率を抑える観点からも、上記850℃以下の温度域での累積圧下率を40%以上とする。前記累積圧下率は、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上である。前記累積圧下率の上限は生産性の観点から80%程度である。

0054

(b)最終3パスの圧延の平均圧下率:5.5%以上
最終3パスの圧下で導入された転位組織は、比較的回復が進行しないまま冷却工程に移行するため、AF促進効果が大きい。本発明では、上記転位組織導入のためにオーステナイト相に十分な加工歪を導入すべく、最終3パスの圧延における平均圧下率を5.5%以上とする。本発明では、最終3パスの圧延の平均圧下率を制御することによって、鋼板内部、特にはt/2位置においてもAF組織が一定以上の所望の組織が得られる点で、最終3パスの圧延の平均圧下率を制御していない従来の方法と異なる。前記平均圧下率は、好ましくは5.8%以上、より好ましくは6.0%以上である。一方、圧延機負荷の観点から、上記平均圧下率の上限は20%程度となる。

0055

(c)仕上圧延温度(Finishing Rolling Temperature、FRT):720〜830℃
鋼材の温度が850℃を上回ると、最終3パスの圧延を上記平均圧下率で行っても、オーステナイト相に十分な加工歪が導入されず、AF組織量が不足する。本発明では、AF組織量を十分に確保するため、仕上圧延温度を830℃以下とする。仕上圧延温度は、好ましくは820℃以下、より好ましくは810℃以下である。一方、仕上圧延温度が720℃を下回ると、圧延中に粗大なフェライトが形成され、靭性が劣化する。よって仕上圧延温度は、720℃以上、好ましくは750℃以上、より好ましくは760℃以上とする。

0056

(d)熱間圧延後、仕上圧延温度〜690℃の冷却開始温度から、320〜550℃の冷却停止温度までを、平均冷却速度0.5〜20℃/sで冷却する。
一定の温度域を平均冷却速度0.5〜20℃/sで冷却することによって、AF組織を十分に確保することができる。平均冷却速度が20℃/sを上回ると、AF組織が十分に形成されないままマルテンサイト変態が起こるための好ましくない。前記平均冷却速度は、好ましくは15℃/s以下、より好ましくは12℃/s以下である。前述の通り、フェライト相への変態温度を適切に制御し、AF組織を十分に確保するには、成分組成におけるC、Mn、CuとNiの少なくともいずれかを含む場合にはこれらの含有量、およびDi+10Nbの各範囲を制御すると共に、上記平均冷却速度を0.5℃/s以上とする。上記平均冷却速度が0.5℃/sを下回ると、冷却時に粗大な粒界フェライトが生成し、AF組織量が不足する。平均冷却速度は、好ましくは2.0℃/s以上、より好ましくは3.0℃/s以上である。上記平均冷却速度の冷却方法として、例えば水冷が挙げられる。

0057

上記冷却の開始温度は、仕上圧延温度〜690℃における任意の温度とする。鋼材の温度が710℃を下回ると、冷却開始前に粒界フェライトが生成したり、オーステナイト相に導入された加工歪が回復するといった不具合が生じる。その結果、AF組織量が不足する。本発明では、AF組織量を十分に確保するため、上記平均冷却速度での冷却開始温度(Start Cooling Temperature、SCT)を、690℃以上とする。上記冷却開始温度は、好ましくは710℃以上、より好ましくは720℃以上である。

0058

上記冷却の終了温度(Finish Cooling Temperature、FCT)は、320〜550℃における任意の温度とする。上記平均冷却速度での冷却、例えば水冷を、550℃超の温度域で停止すると、水冷停止後の緩冷却時に粒界フェライトが生成し、AF組織を十分に確保することが難しくなる。よって、前記終了温度は550℃以下とする。前記終了温度は、好ましくは500℃以下、より好ましくは480℃以下である。一方、上記平均冷却速度での冷却を、例えば320℃を下回る温度域まで行うと、AF組織が十分に形成されないままマルテンサイト変態が生じる。よって、前記終了温度は320℃以上とする。前記終了温度は、好ましくは340℃以上、より好ましくは360℃以上である。

0059

本発明の製造方法は、上記熱間圧延工程以外は、特に限定されず、通常行われている条件で実施すればよい。

0060

以上に説明した本発明の実施形態に係る高強度鋼板の製造方法に接した当業者であれば、試行錯誤により、上述した製造方法と異なる製造方法により本発明に係る高強度鋼板を得ることができる可能性がある。

0061

以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。

0062

1.サンプル作製
表1に示す成分組成の鋼を150kgVIF(Vacuum Induction Furnace)または実機転炉にて溶製し、鋳造して得られたスラブを、表2に示す種々の条件で熱間圧延して、表2に示す板厚の鋼板を得た。前記熱間圧延において、総パス数(圧延パスの回数)は20回超とした。表1において「−」は意図的に添加していないことを示す。表2において、FRTは仕上圧延温度、SCTは冷却開始温度、FCTは冷却終了温度を示す。前記冷却停止温度FCTは、鋼板表面を長手方向に1〜3点、放射温度計計測し、その平均値を算出した。またFRT、SCTは、放射温度計で鋼材表面の1点を計測して求めた。

0063

0064

0065

2.鋼組織
上記熱間圧延材圧延幅方向に垂直な断面のt/4(t:板厚)およびt/2位置で、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)測定を実施した。測定条件は下記の通りである。
EBSD測定条件
・装置:日本電子製JEOL−5410またはJSM−IT100
観察倍率:400倍
測定面積:200×200μm
・ステップピクセル)サイズ:0.4μm
・考慮する相:フェライト、オーステナイト

0066

得られたEBSDデータを、株式会社 TSLソリューションズ製解析ソフトIMAnalysisにより解析した。得られたデータにおいて、Confidence Indexが0.100以下の点を除去し、隣接するピクセルとの結晶方位が15°以上の粒界を大角粒界と定義した。この大角粒界で囲まれたユニットのうち、ピクセルサイズが10以上のユニットを大角粒とみなした。また、測定視野の端部にかかる大角粒は解析から除外した。大角粒の平均円相当径を求め、大角粒の合計面積に占める、該平均円相当径が7.5μm以下の大角粒の合計面積分率SAを算出した。

0067

3.機械的特性
(降伏強度YS)
熱間圧延ままの鋼板のt/4位置およびt/2位置において、板幅方向(C方向)に平行に、ASTM丸棒引張り試験片採取し、ASTMの要領引張試験を行って、降伏強度YSを測定した。
(母材の低温靭性)
熱間圧延ままの鋼板のt/4位置およびt/2位置において、板幅方向(C方向)に平行に、Vノッチシャルピー試験片を採取し、ASTMの要領でシャルピー衝撃試験を実施した。そして脆性破面率が50%となる温度vTrsを評価した。

0068

上記測定して得られた降伏強度YP、脆性延性遷移温度vTrsを下記式(2)に代入し、t/4位置、t/2位置それぞれの位置のY値を求めた。その結果を表2に併記する。なお表2において、vTrs>−30℃の場合は、Y値の計算に際しvTrs=−30℃として計算した。またvTrs<−130℃の場合は、Y値の計算に際しvTrs=−130℃として計算した。
Y=20×vTrs−7×YP・・・(2)

0069

表1、2から次のことがわかる。実験No.1〜11は、本発明で規定する成分組成を満たし、かつ規定する条件で厚鋼板を製造したため、得られた厚鋼板は、板厚が厚くとも鋼板の内部にわたって、強度−靭性バランスに優れている。特には、高強度を示すと共に従来よりも低温での靭性に優れている。これに対して実験No.12〜17は、成分組成、製造条件の少なくともいずれかが本発明で規定する範囲内にないため、得られた厚鋼板は、強度−靭性バランスに劣る結果となった。

0070

実験No.12は、成分組成は本発明の範囲内にあるものの、製造条件において、850℃以下の温度域での累積圧下率が不足したため、t/4およびt/2のいずれの位置においてもAF組織が不足し、強度−靭性バランスに劣る結果となった。

0071

実験No.13および14は、成分組成は本発明の範囲内にあるものの、製造条件において、仕上圧延温度が高かったため、t/4およびt/2のいずれの位置においてもAF組織が不足し、強度−靭性バランスに劣る結果となった。

0072

実験No.15は、Di+10Nbが規定の範囲を下回ったため、強度−靭性バランスに劣る結果となった。この実験No.15では、上記Di+10Nbが規定の範囲を下回ったことにより、粒界フェライトとともにパーライト組織が生成したと考えられる。その結果、AF組織が不足して強度−靭性バランスが劣ったと考えられる。

0073

実験No.16および17は、Di+10Nbが規定の範囲を上回ったため、強度−靭性バランスに劣る結果となった。この実験No.16および17では、上記Di+10Nbが規定の範囲を上回ったことにより、硬質なマルテンサイト組織が生成したと考えられる。その結果、この硬質なマルテンサイト組織が脆性破壊起点として作用することで、強度−靭性バランスが劣ったと考えられる。

0074

実験No.18は、成分組成は本発明の範囲内にあるものの、製造条件において、熱間圧延前の加熱温度が低く、かつ仕上圧延温度が高いため、十分なAF組織を確保することができず、強度−靭性バランスに劣る結果となった。

0075

実験No.19は、成分組成は本発明の範囲内にあるものの、製造条件において、熱間圧延前の加熱温度が高いため、微細なAF組織を一定以上確保することができず、強度−靭性バランスに劣る結果となった。

0076

実験No.20は、B量が0.0008%であり、上限の0.0007%を上回っているため、硬質なマルテンサイトが生成して、t/4位置およびt/2位置のSAが不足し、特性が悪くなった。

0077

実験No.21は、成分組成は本発明の範囲内にあるものの、製造条件において、熱間圧延時の最終3パスの圧延の平均圧下率が低すぎたため、微細なAF組織を一定以上確保することができず、強度−靭性バランスに劣る結果となった。

0078

実験No.22は、Nb量が不足しており、かつ製造条件において、850℃以下の温度域での累積圧下率と最終3パスの圧延の平均圧下率も低いため、微細なAF組織を一定以上確保することができず、強度−靭性バランスに劣る結果となった。

0079

図1は、上記実施例をもとに作成した、結晶方位差15°以上の大角粒界に囲まれる結晶粒のうち、円相当直径が7.5μm以下の結晶粒の合計面積分率SAと、Y値の関係を示すグラフである。なお、図1における下向きの矢印は、測定されたvTrsが−130℃よりも低かったため、Y値は、プロットされた値よりも低い値であると推測されることを意味し、上向きの矢印は、測定されたvTrsが−30℃よりも高かったため、Y値は、プロットされた値よりも高い値であると推測されることを意味する。

実施例

0080

この図1から、鋼板におけるt/4位置、t/2位置のいずれにおいても、前記合計面積分率SAとY値との間には相関があり、t/4位置において、Y値を−5200未満とするには、前記合計面積分率SAを34%以上とする必要があり、またt/2位置において、Y値を−4700未満とするには、前記合計面積分率SAを27%以上とする必要があることがわかる。

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