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課題
解決手段
ガス吹込みノズルを構成するガス吹込みノズル用耐火物が、金属細管が埋設された中心部耐火物aとその外側の外周部耐火物bとからなり、中心部耐火物aは、金属細管が配置された中心領域の半径Rに対してR+r(r=10〜150mm)の半径を有し、中心部耐火物aはC含有量が40〜80質量%であって、金属Alを3〜8質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30〜1.0倍含有するMgO−C質れんがで構成され、外周部耐火物bはC含有量が10〜25質量%のMgO−C質れんがで構成される。外周部耐火物bは、通常のC含有量であるため所定の耐摩耗性、耐溶損性を有する。中心部耐火物aは、C含有量が高いため熱衝撃による亀裂の発生を抑制できるとともに、高熱伝導率であるために金属細管を流れるガスより冷却されることで稼働面側にスラグや金属の凝固膜(保護膜)が形成され、この凝固膜により摩耗や溶損による損耗が抑制される。
概要
背景
転炉や電気炉などでは、精錬効率や合金歩留まりの向上を目的として、炉底から撹拌ガス(通常、窒素やArなどの不活性ガス)や精錬ガスを溶湯内に吹込む、いわゆる底吹きが行われる。この底吹きの方式としては、(1)内管から脱炭を目的とした酸素を、外管から溶鋼接触部位の冷却を目的とした炭化水素ガス(プロパンなど)をそれぞれ吹込む二重管方式、(2)金属管と煉瓦の隙間にスリット状の開孔を設け、その開孔から不活性ガスを吹込む方式(スリット方式)、(3)炭素含有煉瓦に複数本(数本〜数百本)の金属細管を埋設し、煉瓦の底部からガス導入管とガス溜まりを介して不活性ガスを金属細管に供給し、この金属細管から不活性ガスを吹込む方式、などがある。
これらのうち(1)、(2)の方式では、羽口用煉瓦を予め定法により製造し、二重管やスリットを形成する金属管の設置部分を加工したり、2分割ないし4分割とすることで金属管を設置する空間を形成し、施工時にはガスを吹込む金属管を予めセットし、その周囲に羽口用煉瓦を施工するのが一般的である。
一方、(3)の方式で用いられるガス吹込み用プラグ(ノズル)は、マルチプル・ホール・プラグ(以下、MHPという)と呼ばれる。例えば、特許文献1(特開昭59−31810号公報)では、このMHPでは1〜20倍のガス流量(0.01〜0.20Nm3/min)が制御可能とされている。このため、MHPは二重管方式やスリット方式に比べて採用が容易である。
MHPは、ガス溜まりに接続された複数本の金属細管がマグネシア−カーボン煉瓦などの炭素含有耐火物に埋め込まれた構造であるため、その製造は、二重管方式やスリット方式のノズルとは異なり、以下のような方法が採られる。
すなわち、マグネシア原料などの骨材に鱗状黒鉛などの炭素源、ピッチや金属種、フェノール樹脂などのバインダーを加えた原料を、分散性能の高いハイスピードミキサーなどの混練手段を用いて混練し、金属細管を埋設する炭素含有耐火物を構成すべき混練物を得る。そして、この混練物の上に金属細管を敷設しながら積層状に金属細管を埋設した上で、プレス機により所定の圧力で成形を行い、その後、所定の乾燥・焼成などの加熱処理を行う方法(金属細管は、その後、ガス溜まり用の部材に溶接で接合する)、或いは、予めガス溜まり用の部材に金属細管を溶接で接合しておき、その周囲の混練物を充填した上で、プレス機により所定の圧力で成形を行い、その後、所定の乾燥を行う方法、などによりMHPが製造される。
底吹きノズルは炉壁などの耐火物に比べて損傷量(損耗量)が大きく、炉寿命を左右する重要な部材であるため、従来、損傷抑制のための様々な提案がなされており、MHPについても、例えば、以下のような改善が提案されている。
特許文献2(特開昭63−24008号公報)では、MHPのガス吹込みノズル部分と周囲羽口を一体化させ、目地部からの先行溶損、磨耗の低減が図られている。しかし、この技術では効果が小さく、有効な対策とはなり得ない。
また、耐火物内に埋設した金属細管の浸炭による低融点化(金属細管の先行損傷)の対策として、以下のような提案がなされている。
特許文献3(特開2000−212634号公報)には、マグカーボンなどの炭素含有耐火物に埋設されたステンレス製の金属細管の浸炭を抑制するために、金属細管表面に溶射によって酸化物層を形成することが提案されている。しかし、転炉などのように長期間使用される精錬炉(例えば2ヶ月〜半年の使用期間)では、酸化物層の膜厚が十分ではなく、浸炭抑制効果が小さいという問題がある。
また、特許文献4(特開2003−231912号公報)には、金属細管の浸炭を抑制するために、金属細管と炭素含有耐火物との間に耐火性焼結体を配設することが提案されている。しかし、この技術は、浸炭の抑制効果は認められるものの、多数本の金属細管を埋設するノズルでは、金属細管の間隔が狭いため耐火性焼結体を配設することが困難であり、実用化は難しい。
一方、炭素含有耐火物を一旦還元焼成した後、有機物を含浸する方法を採用したものとして、以下のような提案がある。
特許文献5(特開昭58−015072号公報)では、金属Al粉末を添加したマグカーボン煉瓦を500〜1000℃で焼成加熱し、その後、炭化収率25%以上の有機物を煉瓦気孔内に含浸させる処理を行い、熱間強度の向上とともに耐食性の向上を図っている。また、特許文献6(特許第3201678号公報)では、仮焼無煙炭を0.5〜10重量%添加したマグカーボン煉瓦を600〜1500℃にて還元焼成することで、弾性率の低減による耐熱スポール性の改善が図られるとしている。さらに、焼成後にタールを含浸してもよく、この含浸により気孔の密封、強度アップ、耐消化性の向上が図られるとしている。しかし、これらの技術では効果が少なく、有効な対策とはなり得ない。
概要
ガス吹込みノズルが高い耐用性を有する精錬容器を提供する。ガス吹込みノズルを構成するガス吹込みノズル用耐火物が、金属細管が埋設された中心部耐火物aとその外側の外周部耐火物bとからなり、中心部耐火物aは、金属細管が配置された中心領域の半径Rに対してR+r(r=10〜150mm)の半径を有し、中心部耐火物aはC含有量が40〜80質量%であって、金属Alを3〜8質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30〜1.0倍含有するMgO−C質れんがで構成され、外周部耐火物bはC含有量が10〜25質量%のMgO−C質れんがで構成される。外周部耐火物bは、通常のC含有量であるため所定の耐摩耗性、耐溶損性を有する。中心部耐火物aは、C含有量が高いため熱衝撃による亀裂の発生を抑制できるとともに、高熱伝導率であるために金属細管を流れるガスより冷却されることで稼働面側にスラグや金属の凝固膜(保護膜)が形成され、この凝固膜により摩耗や溶損による損耗が抑制される。
目的
この底吹きの方式としては、(1)内管から脱炭を目的とした酸素を、外管から溶鋼接触部位の冷却を目的とした
効果
実績
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請求項1
炭素含有耐火物にガス吹込み用の金属細管が1本以上埋設されたガス吹込みノズル用耐火物で構成されるガス吹込みノズルを備えた精錬容器において、前記ガス吹込みノズル用耐火物は、金属細管が埋設された中心部耐火物(a)と、該中心部耐火物(a)の外周を囲む外周部耐火物(b)とからなり、ガス吹込みノズル用耐火物の平面において、埋設された全部の金属細管を包含する最小半径の仮想円(x)の半径をR(mm)としたとき、中心部耐火物(a)の外形は、仮想円(x)と同心であって半径がR+10mm〜R+150mmの円であり、中心部耐火物(a)は、炭素含有量が40〜80質量%であって、金属Alを3〜8質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30〜1.0倍含有するMgO−C質れんがで構成され、外周部耐火物(b)は、炭素含有量が10〜25質量%のMgO−C質れんがで構成されることを特徴とする高温溶融物の精錬容器。
請求項2
ガス吹込みノズル用耐火物の平面において、中心部耐火物(a)の外形は、仮想円(x)と同心であって半径がR+40mm〜R+70mmの円であることを特徴とする請求項1に記載の高温溶融物の精錬容器。
請求項3
中心部耐火物(a)は、炭素含有量が40〜80質量%であって、金属Alを5〜7質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30〜1.0倍含有するMgO−C質れんがで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温溶融物の精錬容器。
請求項4
炉底部にガス吹込みノズルを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高温溶融物の精錬容器。
技術分野
背景技術
0002
転炉や電気炉などでは、精錬効率や合金歩留まりの向上を目的として、炉底から撹拌ガス(通常、窒素やArなどの不活性ガス)や精錬ガスを溶湯内に吹込む、いわゆる底吹きが行われる。この底吹きの方式としては、(1)内管から脱炭を目的とした酸素を、外管から溶鋼接触部位の冷却を目的とした炭化水素ガス(プロパンなど)をそれぞれ吹込む二重管方式、(2)金属管と煉瓦の隙間にスリット状の開孔を設け、その開孔から不活性ガスを吹込む方式(スリット方式)、(3)炭素含有煉瓦に複数本(数本〜数百本)の金属細管を埋設し、煉瓦の底部からガス導入管とガス溜まりを介して不活性ガスを金属細管に供給し、この金属細管から不活性ガスを吹込む方式、などがある。
0003
これらのうち(1)、(2)の方式では、羽口用煉瓦を予め定法により製造し、二重管やスリットを形成する金属管の設置部分を加工したり、2分割ないし4分割とすることで金属管を設置する空間を形成し、施工時にはガスを吹込む金属管を予めセットし、その周囲に羽口用煉瓦を施工するのが一般的である。
一方、(3)の方式で用いられるガス吹込み用プラグ(ノズル)は、マルチプル・ホール・プラグ(以下、MHPという)と呼ばれる。例えば、特許文献1(特開昭59−31810号公報)では、このMHPでは1〜20倍のガス流量(0.01〜0.20Nm3/min)が制御可能とされている。このため、MHPは二重管方式やスリット方式に比べて採用が容易である。
0004
MHPは、ガス溜まりに接続された複数本の金属細管がマグネシア−カーボン煉瓦などの炭素含有耐火物に埋め込まれた構造であるため、その製造は、二重管方式やスリット方式のノズルとは異なり、以下のような方法が採られる。
すなわち、マグネシア原料などの骨材に鱗状黒鉛などの炭素源、ピッチや金属種、フェノール樹脂などのバインダーを加えた原料を、分散性能の高いハイスピードミキサーなどの混練手段を用いて混練し、金属細管を埋設する炭素含有耐火物を構成すべき混練物を得る。そして、この混練物の上に金属細管を敷設しながら積層状に金属細管を埋設した上で、プレス機により所定の圧力で成形を行い、その後、所定の乾燥・焼成などの加熱処理を行う方法(金属細管は、その後、ガス溜まり用の部材に溶接で接合する)、或いは、予めガス溜まり用の部材に金属細管を溶接で接合しておき、その周囲の混練物を充填した上で、プレス機により所定の圧力で成形を行い、その後、所定の乾燥を行う方法、などによりMHPが製造される。
0005
底吹きノズルは炉壁などの耐火物に比べて損傷量(損耗量)が大きく、炉寿命を左右する重要な部材であるため、従来、損傷抑制のための様々な提案がなされており、MHPについても、例えば、以下のような改善が提案されている。
特許文献2(特開昭63−24008号公報)では、MHPのガス吹込みノズル部分と周囲羽口を一体化させ、目地部からの先行溶損、磨耗の低減が図られている。しかし、この技術では効果が小さく、有効な対策とはなり得ない。
0006
また、耐火物内に埋設した金属細管の浸炭による低融点化(金属細管の先行損傷)の対策として、以下のような提案がなされている。
特許文献3(特開2000−212634号公報)には、マグカーボンなどの炭素含有耐火物に埋設されたステンレス製の金属細管の浸炭を抑制するために、金属細管表面に溶射によって酸化物層を形成することが提案されている。しかし、転炉などのように長期間使用される精錬炉(例えば2ヶ月〜半年の使用期間)では、酸化物層の膜厚が十分ではなく、浸炭抑制効果が小さいという問題がある。
0007
また、特許文献4(特開2003−231912号公報)には、金属細管の浸炭を抑制するために、金属細管と炭素含有耐火物との間に耐火性焼結体を配設することが提案されている。しかし、この技術は、浸炭の抑制効果は認められるものの、多数本の金属細管を埋設するノズルでは、金属細管の間隔が狭いため耐火性焼結体を配設することが困難であり、実用化は難しい。
0008
一方、炭素含有耐火物を一旦還元焼成した後、有機物を含浸する方法を採用したものとして、以下のような提案がある。
特許文献5(特開昭58−015072号公報)では、金属Al粉末を添加したマグカーボン煉瓦を500〜1000℃で焼成加熱し、その後、炭化収率25%以上の有機物を煉瓦気孔内に含浸させる処理を行い、熱間強度の向上とともに耐食性の向上を図っている。また、特許文献6(特許第3201678号公報)では、仮焼無煙炭を0.5〜10重量%添加したマグカーボン煉瓦を600〜1500℃にて還元焼成することで、弾性率の低減による耐熱スポール性の改善が図られるとしている。さらに、焼成後にタールを含浸してもよく、この含浸により気孔の密封、強度アップ、耐消化性の向上が図られるとしている。しかし、これらの技術では効果が少なく、有効な対策とはなり得ない。
先行技術
0009
特開昭59−31810号公報
特開昭63−24008号公報
特開2000−212634号公報
特開2003−231912号公報
特開昭58−15072号公報
特許第3201678号公報
発明が解決しようとする課題
0010
以上のように、炭素含有耐火物に金属細管を埋設するタイプのガス吹きノズル(MHPなど)について、耐用性を高めるために耐火物材質や構造について種々検討がなされているが、十分な改善効果が得られていないのが現状である。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、炭素含有耐火物にガス吹込み用の金属細管が1本以上埋設されたガス吹込みノズルを備えた高温溶融物の精錬容器であって、ガス吹込みノズルが高い耐用性を有する精錬容器を提供することにある。
課題を解決するための手段
0011
転炉や電気炉で用いられるMHPの損傷の原因については、これまで、金属細管から勢いよくガスが吹き込まれることから、ノズル稼働面近傍での溶鋼流による溶損、磨耗が主体と考えられてきた。特許文献2の対策はこの考え方に立つものである。また、浸炭などにより金属細管が先に消耗することで、損傷が大きくなるとの考え方もあり、特許文献3や特許文献4のような手法で金属細管への浸炭を防止してきた。一方、吹錬時は不活性ガスを勢いよく吹き込むために耐火物が冷却され、吹錬時と非吹錬時の間の温度差によってスポーリング損傷するのではないかという考え方、さらには、炭素含有耐火物は600℃付近で強度が最低になるので、その部分で稼働面に亀裂が入り、損傷するのではないか、などのような様々な考え方があり、結論が出ていなかった。その結果、十分な対策が行われず、上記のように必ずしも満足する耐用性が得られていないのが現状である。
0012
そこで、本発明者らは、MHPの真の損傷原因を探るため、実炉で使用された使用後品(MHP)を回収し、ノズル稼働面近傍の耐火物組織について詳細に調査した。その結果、稼働面から深さ10〜20mm程度の耐火物内部で500〜600℃という非常に大きな温度変化が発生していることが判明し、さらにこの部位に稼働面と平行な亀裂を確認することができた。このような実炉使用後品の稼動面近傍の詳細な調査を重ねた結果から、MHPの損傷形態は、溶損や磨耗による損傷ではなく、稼働面近傍で生じている急激な温度勾配に起因した熱衝撃による損傷が主体であるとの結論が得られた。
0013
そこで、本発明者らは、羽口用耐火物に発生する熱応力を小さくする材質改善について鋭意検討を重ねた結果、C含有量を高くした高熱伝導率(高熱伝導率により温度勾配が小さくなる)、低熱膨張率の耐火物が有効であることが判った。しかし、C含有量を高くすると耐摩耗性、耐溶損性の低下が著しくなり、摩耗や溶融金属による溶損によって寿命が著しく低下する。そこで、さらに検討を進めた結果、最も冷却されている金属細管周辺部(所定範囲の中心部)に高C含有量のMgO−C材を配し、その周囲(外周部)は通常のC含有量のMgO−C材とした構造とすることで、問題を解決できることを見出した。すなわち、外周部については通常のC含有量の耐火物(MgO−C材)とすることで耐摩耗性、耐溶損性の低下を抑えることができ、一方、金属細管周辺部については、C含有量を高くした高熱伝導率、低熱膨張率の耐火物(MgO−C材)とすることにより、熱衝撃による亀裂の発生を抑制できるとともに、高熱伝導率であるために金属細管を流れるガスにより冷却されることで、稼働面側にスラグや金属の凝固層又は凝固体(一般にマッシュルームと呼ばれているので、以下の説明でも「マッシュルーム」という。)が形成され、このマッシュルームにより溶鋼から耐火物表面が遮断(保護)され、摩耗や溶損による損耗を抑制する効果が得られることを見出した。
0014
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]炭素含有耐火物にガス吹込み用の金属細管が1本以上埋設されたガス吹込みノズル用耐火物で構成されるガス吹込みノズルを備えた精錬容器において、
前記ガス吹込みノズル用耐火物は、金属細管が埋設された中心部耐火物(a)と、該中心部耐火物(a)の外周を囲む外周部耐火物(b)とからなり、
ガス吹込みノズル用耐火物の平面において、埋設された全部の金属細管を包含する最小半径の仮想円(x)の半径をR(mm)としたとき、中心部耐火物(a)の外形は、仮想円(x)と同心であって半径がR+10mm〜R+150mmの円であり、
中心部耐火物(a)は、炭素含有量が40〜80質量%であって、金属Alを3〜8質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30〜1.0倍含有するMgO−C質れんがで構成され、外周部耐火物(b)は、炭素含有量が10〜25質量%のMgO−C質れんがで構成されることを特徴とする高温溶融物の精錬容器。
0015
[2]上記[1]の精錬容器において、ガス吹込みノズル用耐火物の平面において、中心部耐火物(a)の外形は、仮想円(x)と同心であって半径がR+40mm〜R+70mmの円であることを特徴とする高温溶融物の精錬容器。
[3]上記[1]又は[2]の精錬容器において、中心部耐火物(a)は、炭素含有量が40〜80質量%であって、金属Alを5〜7質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30〜1.0倍含有するMgO−C質れんがで構成されることを特徴とする高温溶融物の精錬容器。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの精錬容器において、炉底部にガス吹込みノズルを備えることを特徴とする高温溶融物の精錬容器。
発明の効果
0016
本発明の精錬容器は、ガス吹込みノズルが、熱衝撃による亀裂の発生が抑制されるため高い耐用性を有する。このため長寿命の精錬容器とすることができる。
図面の簡単な説明
0017
本発明の精錬容器が備えるガス吹込みノズルを構成するガス吹込みノズル用耐火物の一実施形態を示す平面図
0018
本発明の精錬容器は、炭素含有耐火物にガス吹込み用の金属細管が1本以上埋設されたガス吹込みノズル用耐火物で構成されるガス吹込みノズルを備えるものであり、前記ガス吹込みノズル用耐火物は、金属細管が埋設された中心部耐火物aと、この中心部耐火物aの外周を囲む外周部耐火物bとからなる。
上述のとおり、MHP羽口の損耗の主因は熱衝撃である。特に、MHP羽口の金属細管周辺部は、金属細管を流れるガスによって冷却されるため、熱応力も大きくなる。熱衝撃や熱応力を抑制するためには、MgO−C質れんがのC含有量を高くすることが有効であるが、一方で、C含有量を高くすると溶鋼に対して溶解しやすくなり、耐摩耗性、耐溶損性が低下することが知られている。この点に関して、本発明者らは、C含有量を高くした金属細管周辺部は、高熱伝導率であるために金属細管を流れるガスにより冷却され、その結果、稼働面側にスラグや金属のマッシュルームが形成され、このマッシュルームにより溶鋼から耐火物表面が保護され、摩耗や溶損による損耗を抑制する効果が得られることを見出した。このため本発明では、精錬容器のガス吹込みノズルを構成するガス吹込みノズル用耐火物を、金属細管が埋設された中心部耐火物aと、この中心部耐火物aの外周を囲む外周部耐火物bで構成し、中心部耐火物aを高C含有量のMgO−C質れんがで構成する。しかし、様々な鋼種を製造する転炉においては、例えば高温出鋼材の生産が続いた場合など、しばしばマッシュルームの縮小、消失が起こる。この場合、溶鋼と羽口中心部の接触が発生する。このような場合にも損耗速度の低下が起こらないようにする対策について検討した結果、通常は酸化防止剤として1.5質量%以下(最大でも2.5質量%以下)の範囲で添加される金属Alを3質量%以上添加し、さらに消化防止のために金属Siを質量比で金属Alの0.30〜1.0倍添加することにより、耐溶鋼性が著しく向上し、消化も防げることを見出した。
0019
ここで、高C含有量のMgO−C質れんがで構成する中心部耐火物aは、上述したような効果を得るために、以下に示すような所定の大きさ(外形)にする必要がある。図1に示すように、ガス吹込みノズル用耐火物の平面(稼働面)において(すなわち平面として見た場合において)、埋設された全部の金属細管を包含する最小半径の仮想円xの半径をR(mm)としたとき、中心部耐火物aの外形は、仮想円xと同心であって半径がR+10mm〜R+150mmの円とする。すなわち、図1において、中心部耐火物aの外形をなす円は、半径がR+rであってr=10〜150mmである。中心部耐火物aの外形をなす円の半径がR+10mm未満では、金属細管が外周部耐火物bとの境界に近すぎるため、耐火物成型時に金属細管の変形等が生じるおそれがあり、一方、中心部耐火物aの外形をなす円の半径がR+150mmを超えると、中心部耐火物aの稼働面にマッシュルームに覆われない部分が生じ、溶鋼との接触による損傷が生じる。
以上の観点からより好ましい条件としては、中心部耐火物aの外形を、仮想円xと同心であって半径がR+40mm〜R+70mmの円とすること、すなわち、図1において、中心部耐火物aの外形をなす円の半径がR+rであってr=40〜70mmであることが好ましい。
0020
中心部耐火物aは、炭素含有量が40〜80質量%であって、金属Alを3〜8質量%、好ましくは5〜7質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30〜1.0倍含有するMgO−C質れんがで構成される。このMgO−C質れんがの炭素含有量が40質量%未満では耐熱衝撃性が十分ではなく、一方、80質量%を超えると溶鋼に対する耐食性が劣り、信頼性に欠ける。さらに、金属Alの含有量が3質量%未満では、溶鋼に対する耐食性が劣り、一方、8質量%を超えてもその効果は変わらないため、コスト及び安全面からこの範囲で十分である。また、金属Siが質量比で金属Alの0.30倍未満では耐消化性に劣り、一方、1.0倍を超えると耐食性が悪化する。また、溶鋼に対する耐食性は、金属Alの含有量を5〜7質量%とすることによりさらに向上する。
0021
一方、外周部耐火物bは、炭素含有量が10〜25質量%、好ましくは15〜25質量%のMgO−C質れんがで構成される。このMgO−C質れんがの炭素含有量が10質量%未満では、熱衝撃による損傷が大きくなり、一方、25質量%を超えると耐摩耗性や耐溶損性に劣るため、満足する耐用性が得られない。
0022
金属細管の材質は特には限定されないが、融点が1300℃以上の金属材料を用いることが好ましい。例えば、鉄、クロム、コバルト、ニッケルの1種以上を含む金属材料(金属単体又は合金)が挙げられ、なかでも特に、ステンレス鋼(フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト系)、普通鋼、耐熱鋼などが一般的である。金属細管は、通常、内径が1〜4mm程度、管厚が1〜2mm程度である。金属管の内径が1mm未満では、炉内の溶融金属の撹拌に十分なガスの供給が困難となるおそれがあり、4mmを超えると金属細管内に溶融金属が流入して閉塞するおそれがある。
炭素含有耐火物内に埋設される金属細管の本数は特に制限はなく、必要とされるガス吹き流量や稼働部の面積によって適宜選択される。転炉などの高流量が必要とされるものでは、一般に60〜250本程度の金属細管が埋設される。また、電気炉や取鍋のようにガス吹き流量が小さい場合には、一般に1本〜数10本程度の金属細管が埋設される。
0023
次に、本発明の精錬容器が備えるガス吹込みノズルを構成するガス吹き込みノズル用耐火物の製造方法について説明する。
炭素含有耐火物(中央部耐火物a、外周部耐火物b)の主たる原料は、骨材と炭素源、金属Al、金属Siであるが、その他の添加材料及びバインダーなどを含む場合がある。
炭素含有耐火物の骨材には、マグネシア、アルミナ、ドロマイト、ジルコニア、クロミア、スピネル(アルミナ−マグネシア、クロミア−マグネシア)などが適用できるが、本発明では、溶融金属や溶融スラグに対する耐食性の観点から主たる骨材としてマグネシアを用いる。
0024
また、炭素含有耐火物の炭素源は特には限定されず、鱗状黒鉛、膨張黒鉛、土壌黒鉛、仮焼無煙炭、石油系ピッチ、カーボンブラックなど一般的に使用されるものが適用可能である。炭素源の添加量は、上述した中心部耐火物aと外周部耐火物bの各炭素含有量に応じて決められる。
上述した骨材と炭素源、金属Al、金属Si以外の添加材料としては、例えば、Al−Mg合金などの金属種、SiC、B4Cなどの炭化物が挙げられ、これらを1種以上を含む場合がある。これら添加材料の配合量は、通常3.0質量%以下である。
炭素含有耐火物の原料は、一般にバインダーを含む。バインダーには、フェノール樹脂、液状ピッチなど、一般的に定形耐火物のバインダーとして適用できるものが使用できる。バインダーの配合量は、通常1〜5質量%(外掛け質量%)程度である。
0025
ガス吹込みノズル用耐火物の製造には既知の製法が適用でき、その一例を以下に挙げるが、これに限定されるものではない。
まず、中心部耐火物a用と外周部耐火物b用の各耐火物原料をそれぞれ混合し、ミキサーで混練して混練物とする。金属細管を中心部耐火物a用の混練物内の所定の位置に配置した後、一軸プレスにて成形し、金属細管が埋設された中心部耐火物aを製作する。さらに、この中心部耐火物aの周囲に外周部耐火物b用の混練物を充填した上で、等方静圧成形(コールド・アイソスタティック・プレス。以下「CIP成形」という。)により一体化し、ガス吹込みノズル用耐火物となる母材を成形する。その後、その母材に定法により乾燥などの所定の加熱処理を施す。また、必要に応じて、外形を整えるための加工などを適宜行ってもよい。
0026
中心部耐火物aの加圧成形方法としては、成形枠内に初めに少量の混練物を充填して加圧後、金属細管を所定の位置に配置した上で、所定量の混練物を充填して加圧することを繰り返し行う多段加圧成形方式や、金属細管が加圧時の混練物の移動と共に移行するような金属細管両端の保持方法を採用し、全量の混練物とともに1回の加圧で成形する単回加圧成形方式などで行うことができる。
また、金属細管とガス溜まり部との接合は、中心部耐火物aの成形後、母材の成形後、或いは母材の加熱処理後のいずれかの段階で両者を溶接する方法、中心部耐火物aの成形時に、予めガス溜まり部の上面板を溶接した金属細管を中心部耐火物a用の混練物内に配置する方法などを適宜選択することができる。
0027
炭素含有耐火物の原料の混練方法には特に制限はなく、ハイスピードミキサー、タイヤミキサー(コナーミキサー)、アイリッヒミキサーなど、定形耐火物の混練設備として用いられる混練手段を用いればよい。
混練物の成形には、油圧式プレス、フリクションプレスなどの一軸成形機やCIP成形機など、耐火物の成形に使用される一般的なプレス機が使用できる。
成形した炭素含有耐火物は、乾燥温度180〜350℃、乾燥時間5〜30時間程度で乾燥させればよい。
以上のようにして製造されるガス吹込みノズル用耐火物は、転炉や電気炉などの精錬容器に取り付けられ、ガス吹込みノズルが構成される。ガス吹込みノズルの位置は一般に炉底部であるが、これに限定されない。炉底部の場合、底吹き羽口周辺の炉底煉瓦としてガス吹込みノズル用耐火物が取り付けられ、ガス吹込みノズルが構成される。
0028
[実施例1]
本発明の精錬容器において、ガス吹込みノズルを構成するガス吹込みノズル用耐火物の中心部耐火物(a)に用いるMgO−C質れんがについて、その耐溶鋼性を評価するため、表1及び表2に示す原料配合で30mm角×160mm長さの耐火物試料(本発明相当材、比較材)を作成し、これら耐火物試料を高周波偏芯炉を用いて1650℃の溶鋼(SS400)中に30分浸漬した後の残厚を測定し、試験前の厚さとの差から損耗量を求めた。同じく耐消化性を評価するため、表1及び表2に示す原料配合で25mm×25mm×25mmの耐火物試料(本発明相当材、比較材)を作成し、これら耐火物試料をコークス粉中で1000℃×3時間熱処理後、100℃の水蒸気雰囲気で3時間処理した後の耐火物試料の亀裂の有無を調査した。亀裂の有無の判断は、目視による外観観察により行った。
0029
それらの結果を表1及び表2に併せて示す。これによれば、比較例3〜5と比較例9を比べると分かるように、本発明相当材(本発明の中心部耐火物(a)の条件を満たすMgO−C質れんが)は、金属Alの添加により耐溶鋼性の著しい改善がみられる。また、本発明相当材は耐消化性にも優れており、通常羽口れんがに使用される耐火物(比較例1、2)と同様、亀裂の発生がないことが確認できる。
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[実施例2]
図1に示すように同心円状に81本の金属細管を配置したガス吹込みノズル用耐火物を表3〜表6に示す条件で製造した。
ガス吹込みノズル用耐火物の平面において、埋設された全部の金属細管を包含する最小半径の仮想円xの半径Rは50mmであり、r=8〜200mmの範囲で中心部耐火物aの半径R+rを変化させた。
炭素含有耐火物に埋設する金属細管としては、普通鋼又はステンレス鋼(SUS304)製の外径3.5mm、内径2.0mmのものを用いた。
各耐火物原料を表3〜表6に示す割合でそれぞれ混合し、ミキサーで混練した。金属細管を中心部耐火物a用の混練物内に配置して一軸プレスにて中心部耐火物aを成形した。さらに、その中心部耐火物aの周囲に外周部耐火物b用の混練物を充填した上で、CIP成形により母材を成形した。その後、その母材を定法により乾燥処理し、製品とした。
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製造されたガス吹込みノズル用耐火物を250トン転炉の底吹き羽口周辺の炉底煉瓦に使用してガス吹込みノズルを構成し、発明例と比較例の精錬容器とした。それぞれ2500〜2800ch使用後、れんがの残厚から損耗速度(mm/ch)を求め、比較例1の損耗速度を“1”とした損耗速度比(指数)を求めた。また、耐消化性は、使用後1週間放置した後の亀裂の有無を目視による外観観察により調べ、判定を行った。
それらの結果を表3〜表6に併せて示す。これによれば、本発明例のガス吹込みノズルは、損耗速度が小さく、優れた耐用性を有していることが判る。また、本発明例のなかでも、中心部耐火物aの半径がR+40mm〜R+70mmのガス吹込みノズルを備えたものは、特に優れた耐用性を有している。
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実施例
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a 中心部耐火物
b 外周部耐火物
x 仮想円