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※この項目の情報は公開日時点(2020年10月29日)のものです。
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課題
解決手段
技術分野
背景技術
0002
ポリアミド樹脂は、エンジニアリングプラスチックの中でも汎用性が高く、自動車部材、家電、電子部品、スポーツ用品、建材等様々な分野で使用されている。ポリアミドはUL規格でV−2程度の自己消化性の性質を持っているが、更にV−0クラスの高い難燃性を付与するためには、例えばリン酸エステル等の難燃剤や無機充填剤を多量に添加する必要がある。このことによりポリアミドの優れた機械的性質が損なわれてしまう。これを避けるためにはハロゲン系難燃剤を使用する必要があった。
先行技術
0003
特開2016−089178号公報
特開2010−222570号公報
特開2017−002146号公報
発明が解決しようとする課題
0004
本発明は、ハロゲンフリーで環境に優しくなおかつ機械的強度及び耐熱性に優れたポリアミド系の難燃性樹脂組成物、その成形体及び樹脂繊維を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0005
本発明者等は、鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂とリグノフェノールからなる熱可塑性樹脂組成物と非ハロゲン系難燃剤を配合することにより、高い機械的強度及び耐熱性を維持しながら難燃性に優れるハロゲンフリーの難燃性樹脂組成物、その成形体及び樹脂繊維を得られることを見出した。
0006
すなわち本発明は、(a1)ポリアミド樹脂97〜40質量%、(a2)リグノフェノール3〜60質量%からなる(A)熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、(B)非ハロゲン系難燃剤を1〜40質量部含むことを特徴とする難燃性樹脂組成物、その成形体及び樹脂繊維に関する。さらに、(B)非ハロゲン系難燃剤は窒素系難燃剤であることが好ましく、メラミンシアヌレートであることがより好ましい。
発明の効果
0007
本発明の難燃性樹脂組成物、成形体および樹脂繊維は、ハロゲンフリーで環境に優しく、機械的強度及び耐熱性に優れるという効果を奏する。
0008
本発明の難燃性樹脂組成物は、(a1)ポリアミド樹脂97〜40質量%、(a2)リグノフェノール3〜60質量%からなる(A)熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、
(B)非ハロゲン系難燃剤を1〜40質量部含むことを特徴とする。以下、各成分について、詳細に説明する。
0009
本発明の(a1)ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611及びナイロン612等の脂肪族ポリアミド、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタラミド)及びポリ(m−キシリレンアジバミド)等の芳香族環を含むポリアミド、ナイロン6/66、ナイロン6/6T、ナイロン66/6T等のポリアミド系コポリマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられ、これらを単独で、または併用して用いることができる。本発明の(a1)ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66が物性のバランス等を考慮すると好ましい。
0010
本発明の(a2)リグノフェノールは、特に限定されるものではなく公知の方法で製造することができる。例えば、植物資源である木材資源に酸とフェノール誘導体を添加し、木材資源中のセルロース、ヘミセルロースを加水分解させて、木材資源中のリグニンをフェノール誘導体により安定化してリグノフェノールを製造する。木材資源に酸とフェノール誘導体を添加する方法としては、木材資源にフェノール誘導体を添加して含浸させた後、酸を添加し、系の粘度が低下したら、後述する疎水性の溶剤を添加し、さらに撹拌を行う方法が挙げられる。このようにすることで、セルロース及びヘミセルロース由来の糖成分と酸からなる層と、リグノフェノール、フェノール誘導体及び疎水性の溶剤からなる層に分離することが可能となる。
0011
本発明において使用する木材資源は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンなどから構成されるものであり、例えば、木粉、木質チップなどを挙げることができる。また、使用する木材としては、針葉樹、広葉樹など任意の種類のものを使用することができる。
0012
木材資源に添加する酸としては、無機酸、有機酸のいずれも用いることが可能である。酸は、セルロース及びヘミセルロースを加水分解するための触媒としてだけでなく、木材資源を構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの結合を解く役割も果たす。無機酸としては、硫酸、リン酸、塩酸などのいずれかを使用することができる。酸の濃度は、60〜90質量%が望ましい。酸の濃度が60質量%より低いと、セルロースとリグニンの解緩反応が進行せず、酸の濃度が90質量%より高いとリグニン及び添加剤であるフェノール誘導体のベンゼン骨格がスルホン化されやすくなり、不具合が生じる傾向にある。酸の中では、濃度が60質量%以上90質量%以下の硫酸が好ましい。有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを使用することができる。
0013
木材資源に添加する酸の添加量としては、木材資源100質量部に対して、好ましくは200〜3000質量部、より好ましくは1000〜2000質量部である。酸の添加量が少ないと、木材原料は膨潤するだけで液状にならず、撹拌が困難になり、新しいタイプの押出混練機が必要となる。また、酸の添加量が多すぎると、酸の回収系への負担が増え、経済性が損なわれる。
0014
リグニンを構成するフェニルプロパン単位のα炭素は化学的に不安定であるが、フェノール誘導体を添加することで、成形体などの種々の用途に活用できるリグノフェノールを得ることができる。ここで、リグノフェノールとは、下記一般式(1)で表す構造単位を含む重合体をいう。
0015
一般式(1)中、R1は、メトキシ基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコシキ基、または炭素数6〜8のアリール基であり、R3は水酸基である。mは0〜4の整数、nは0〜4の整数、pは1〜4の整数であり、n+p≦5である。
0016
リグノフェノールは、リグニン中のp−クマリルアルコール、シナピルアルコール、コニフェリルアルコール等のフェニルプロパン単位のα炭素にフェノール誘導体が結合したジフェニルプロパン単位を含む重合体である。例えば、リグニンを構成するフェニルプロパン単位の一種である一般式(2)で表されるコニフェリルアルコールを、フェノール誘導体であるp−クレゾールでマスキングをした場合、一般式(3)で表されるリグノフェノール単量体が形成される。p−クマリルアルコール、シナピルアルコール等についても、同様にフェノール誘導体が結合して、α炭素が安定化したリグノフェノール単量体が得られる。
0017
0018
0019
フェノール誘導体としては、1価のフェノール誘導体、2価のフェノール誘導体または3価のフェノール誘導体などが挙げられる。1価のフェノール誘導体としては、フェノール、ナフトール、アントロール、アントロキオールなどが挙げられる。これらの1価のフェノール誘導体はさらに1以上の置換基を有していてもよい。2価のフェノール誘導体としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどが挙げられる。これらの2価のフェノール誘導体は、さらに1以上の置換基を有していてもよい。3価のフェノール誘導体としては、ピロガロールなどが挙げられる。ピロガロールはさらに1以上の置換基を有していてもよい。これらの1価から3価のフェノール誘導体が有する置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよい。電子吸引性の基(ハロゲン原子など)以外の基であり、例えば、低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)、アリール基(フェニル基など)などが挙げられる。また、リグニンを構成するフェニルプロパン単位のα炭素との反応性の点から、フェノール誘導体上のフェノール性水酸基の2つあるオルト位のうちの少なくとも片方は無置換であることが好ましい。
0020
フェノール誘導体の好ましい例としては、p−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、2−メトキシフェノール(Guaiacol)、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールなどが挙げられ、中でもp−クレゾールが好ましい。フェノール誘導体の添加量としては、木材資源100質量部に対して、好ましくは200〜3000質量部、より好ましくは500〜2000質量部である。フェノール誘導体は、リグニンのα−炭素をマスキングするのに必要な化学量論的な量以上を添加しなければならず、また相分離に必要な抽出剤としての量も加味して添加しなければならない。
0021
木材資源に酸とフェノール誘導体を添加することで、主に酸とセルロース及びヘミセルロース由来の糖液とから構成される水層と、リグノフェノールとフェノール誘導体とから構成される油層に分離させる。より短時間で二層に分離させるために疎水性の溶剤をさらに添加することが好ましい。分離された油層は、濾過機にて固液分離され、固体のリグノフェノールと、液体のp−クレゾールと疎水性の溶剤に分離される。固液分離はフィルタープレス等を用いて行うことができ、リグノフェノールはケーク状で得られる。得られたリグノフェノールは、乾燥機にて乾燥される。
0022
本発明で使用するリグノフェノールの重量平均分子量は、特に限定されないが、300〜8000であることが好ましく、500〜6000であることがより好ましく、1800〜4000であることがさらに好ましい。リグノフェノールの重量平均分子量が8000を超えると、リグノフェノールのアルカリ性水溶液に対する溶解性が低下する傾向にある。また、リグノフェノールの重量平均分子量が300未満であると、得られる難燃性樹脂組成物の機械的強度が低下する傾向にある。リグノフェノールの分子量がこの範囲であることで、難燃性樹脂組成物の機械的強度及び耐熱性を維持しながら難燃性を向上することができる。なお、本発明における重量平均分子量は、測定装置(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)を使用し、リグノフェノールをテトラヒドロフランに溶解させ、濾過し、その濾液をGPCで測定した。
0023
本発明の難燃性樹脂組成物において、(A)熱可塑性樹脂組成物中に含まれる(a2)リグノフェノールは3〜60質量%である。3質量%未満であれば、難燃性樹脂組成物の難燃性及び耐熱性が不十分である。60質量%を超えると難燃性樹脂組成物の成形加工性が悪くなる。リグノフェノールの好ましい添加量は5〜30質量%である。
0024
本発明の(B)非ハロゲン系難燃剤としては、特に限定されるものではなく公知の技術を用いることができる。例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ホスホン酸エステル、赤リン等のリン系難燃剤、ホスホン酸アルミニウム、ホスホン酸カルシウム、ホスホン酸亜鉛等の金属ホスホン酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の水和金属化合物、ホウ酸亜鉛、ホウ酸等のホウ素化合物、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、ヒンダードアミン化合物、メラミン、メラミン樹脂等のメラミン誘導体、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンポリ(リン酸アルミニウム)、メラミンポリ(リン酸亜鉛)等のメラミン塩の様な窒素系難燃剤等を単独でまたは2種類以上を併用することができる。
本発明の(B)非ハロゲン系難燃剤としては、窒素系難燃剤が好ましく、メラミンシアヌレートが特に好ましい。
0025
本発明の(B)非ハロゲン系難燃剤は、(A)熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して1〜40質量部添加される。(B)非ハロゲン系難燃剤の添加量が1質量部未満では難燃性が不十分であり、40質量部を超えると難燃性樹脂組成物の機械的物性や耐熱性が低下してしまう。より好ましい添加量は3〜20質量部である。
0026
本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じてガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム等の無機充填剤、顔料、酸化防止剤、滑材、紫外線吸収剤等を使用することができる。
0027
本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリフェニレンサルファイド、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、テトラフルオロエチレンポリマー等の樹脂を添加することが可能である。
特にテトラフルオロエチレンポリマーは成形体が燃焼した際の滴下防止の目的で好適に使用される。
0028
本発明の難燃性樹脂組成物は、原料となる(a1)ポリアミド樹脂、(a2)リグノフェノールおよび(B)非ハロゲン系難燃剤を公知の溶融混練装置に供給して溶融混練して製造することができる。使用できる溶融混練装置としては、例えば、押出機、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、コニーダー、ロール等を使用することができる。この中で二軸押出機が均一混合や操作性の点で好ましい。
0031
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
0033
使用した材料
(1)ナイロン6(アラミンCM1017、東レ(株)製)
(2)リグノフェノール
杉の木粉をp−クレゾールを含むアセトン溶液に浸漬して、木粉にp−クレゾールを吸着させた後、72質量%の硫酸を添加して激しく撹拌した。撹拌後の液に、ヘキサンを加え、更に撹拌した後に水を加え放置し、上澄みである水層、および油層を除去し、残った固形物を水洗し、メタノールに溶解させた。固形分を分離した後、得られたメタノール溶液に、塩を溶かした水を加えて水晶析してリグノフェノールを析出させた。析出したリグノフェノールを分離し、重曹水を用いて洗浄・ろ過を繰り返した。固形分を水に分散させたときのpHが中性になるまで重曹水での洗浄を繰り返した後、固形分を乾燥したものを使用した。
(3)メラミンシアヌレート(MC−4000、日産化学(株)製)
(4)ポリリン酸メラミン(ホスメル200、日産化学(株)製)
(5)トリフェニルホスフェート(TPP、大八化学工業(株)製)
0034
下記表1に示す処方にて各材料を配合し、二軸混練押出機(東芝TEM−35)を使用して、260℃で溶融混練した後、シリンダー温度260℃で押出成形して、実施例1〜5および比較例1、2の評価試料を作製した。表1中のメラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミンおよびトリフェニルホスフェートの配合量(質量部)は、ナイロン6とリグノフェノールからなる熱可塑性樹脂組成物(リグノフェノールが配合されない場合はナイロン6のみ)100質量部に対する配合量で示している。作製した試料について、機械特性および難燃性について評価した。結果を表1に示す。
0035
実施例
0036
表1の実施例1〜5に示すように、本発明のポリアミド樹脂を主成分とする難燃性樹脂組成物は、リグノフェノールを配合することにより、高い機械的強度を有するとともに、ハロゲン系の難燃剤を使用することなく、高い難燃性(V−0またはV−1)を示すことがわかる。