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技術 筋機能低下の抑制又は回復用組成物、筋量減少の抑制又は回復用組成物及び筋質低下の抑制又は回復用組成物

出願人 サントリーホールディングス株式会社国立大学法人徳島大学
発明者 野中裕司石川康子
出願日 2019年4月22日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-081279
公開日 2020年10月29日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-176103
状態 未査定
技術分野 医薬品製剤 蛋白脂質酵素含有:その他の医薬 化合物または医薬の治療活性 ペプチド又は蛋白質 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 転倒リスク 関連法令 ジャージー種 半流動 ハイポーラスポリマー 管理法 シーメンス アドリブ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (1)

課題

筋機能低下を抑制又は回復させることができる、新規な筋機能低下の抑制又は回復用組成物、筋量減少を抑制又は回復させることができる、新規な筋量減少の抑制又は回復用組成物、及び、筋質低下を抑制又は回復させることができる、新規な筋質低下の抑制又は回復用組成物を提供すること。

解決手段

C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する筋機能低下の抑制又は回復用組成物。

概要

背景

日本のような人口構成における高齢者比率が高い国では、健康寿命延長日常生活の質(QOL)の向上が課題となっている。健康寿命の短縮の要因の一つとして、加齢に伴う筋量(筋肉量)や筋質筋肉の質)の低下が挙げられる。筋量や筋質の低下は筋機能の低下の原因となり、転倒リスク上昇、怪我、長期臥床等を招く。怪我、病気等によって高齢者の活動量が減少すると、筋機能が更に低下するという悪循環を招く。

また、交通手段発達等による運動不足や、手術後、病気の療養等において長期間安静が必要とされる場合等にも、筋機能が低下する。治癒後により早く日常生活に復帰するためには、筋機能低下を抑制することが望まれる。

筋機能低下を抑制又は回復するためには、筋量や筋質の低下を抑制又は回復することが重要であり、そのための手段の一つとして、リハビリテーション等の運動療法が行われている。一方、栄養学的観点からも筋量等を改善し得る成分の研究が行われている。特許文献1には、少なくとも1種のチロシン化合物、並びにロイシン及びイソロイシンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸、を有効成分とする筋量改善剤が記載されている。

概要

筋機能低下を抑制又は回復させることができる、新規な筋機能低下の抑制又は回復用組成物、筋量減少を抑制又は回復させることができる、新規な筋量減少の抑制又は回復用組成物、及び、筋質低下を抑制又は回復させることができる、新規な筋質低下の抑制又は回復用組成物を提供すること。C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する筋機能低下の抑制又は回復用組成物。なし

目的

本発明は、筋機能低下を抑制又は回復させることができる、新規な筋機能低下の抑制又は回復用組成物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する筋機能低下の抑制又は回復組成物

請求項2

筋機能低下が、加齢による筋機能低下である請求項1に記載の筋機能低下の抑制又は回復用組成物。

請求項3

C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する筋量減少の抑制又は回復用組成物。

請求項4

筋量減少が、加齢による筋量減少である請求項3に記載の筋量減少の抑制又は回復用組成物。

請求項5

C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する筋質低下の抑制又は回復用組成物。

請求項6

筋質低下が、加齢による筋質低下である請求項5に記載の筋質低下の抑制又は回復用組成物。

請求項7

筋質低下が、筋細胞間の接着の低下である請求項5又は6に記載の筋質低下の抑制又は回復用組成物。

請求項8

前記C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、下記(a)〜(c)のいずれかのペプチドである請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。(a)X1−His−Lys(X1は、存在しないか、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のn1〜58番目(n1は、1〜58のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す)で示されるアミノ酸配列からなるペプチド(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1〜58番目の領域中に1〜9個のアミノ酸欠失置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるペプチド(c)前記(b)のペプチドの部分配列からなるペプチドであって、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド

請求項9

前記C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、X2−His−Lys(X2は、存在しないか、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列のn2〜18番目(n2は、1〜18のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す)で示されるアミノ酸配列からなるペプチドである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。

請求項10

前記C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、His−Lys、Leu−His−Lys又はLeu−Leu−His−Lys(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチドである請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。

請求項11

経口用組成物である請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。

技術分野

0001

本発明は、筋機能低下の抑制又は回復組成物に関する。また、本発明は、筋量減少の抑制又は回復用組成物、筋質低下の抑制又は回復用組成物に関する。

背景技術

0002

日本のような人口構成における高齢者比率が高い国では、健康寿命延長日常生活の質(QOL)の向上が課題となっている。健康寿命の短縮の要因の一つとして、加齢に伴う筋量(筋肉量)や筋質(筋肉の質)の低下が挙げられる。筋量や筋質の低下は筋機能の低下の原因となり、転倒リスク上昇、怪我、長期臥床等を招く。怪我、病気等によって高齢者の活動量が減少すると、筋機能が更に低下するという悪循環を招く。

0003

また、交通手段発達等による運動不足や、手術後、病気の療養等において長期間安静が必要とされる場合等にも、筋機能が低下する。治癒後により早く日常生活に復帰するためには、筋機能低下を抑制することが望まれる。

0004

筋機能低下を抑制又は回復するためには、筋量や筋質の低下を抑制又は回復することが重要であり、そのための手段の一つとして、リハビリテーション等の運動療法が行われている。一方、栄養学的観点からも筋量等を改善し得る成分の研究が行われている。特許文献1には、少なくとも1種のチロシン化合物、並びにロイシン及びイソロイシンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸、を有効成分とする筋量改善剤が記載されている。

先行技術

0005

特開2016−14007号公報

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、筋機能低下を抑制又は回復させることができる、新規な筋機能低下の抑制又は回復用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、筋量減少を抑制又は回復させることができる、新規な筋量減少の抑制又は回復用組成物を提供することを目的とする。また本発明は、筋質低下を抑制又は回復させることができる、新規な筋質低下の抑制又は回復用組成物を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究したところ、C末端にHis−Lys(ヒスチジンリジン)のアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩が、筋量減少や筋質低下を抑制又は回復させる作用を有し、筋機能の低下を抑制又は回復させるために有用であることを見出した。

0008

すなわち本発明は、以下の筋機能低下の抑制又は回復用組成物、筋量減少の抑制又は回復用組成物、筋質低下の抑制又は回復用組成物を提供する。
〔1〕C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する筋機能低下の抑制又は回復用組成物。
〔2〕筋機能低下が、加齢による筋機能低下である上記〔1〕に記載の筋機能低下の抑制又は回復用組成物。
〔3〕C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する筋量減少の抑制又は回復用組成物。
〔4〕筋量減少が、加齢による筋量減少である上記〔3〕に記載の筋量減少の抑制又は回復用組成物。
〔5〕C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する筋質低下の抑制又は回復用組成物。
〔6〕筋質低下が、加齢による筋質低下である上記〔5〕に記載の筋質低下の抑制又は回復用組成物。
〔7〕筋質低下が、筋細胞間の接着の低下である上記〔5〕又は〔6〕に記載の筋質低下の抑制又は回復用組成物。
〔8〕上記C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、下記(a)〜(c)のいずれかのペプチドである上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の組成物。
(a)X1−His−Lys(X1は、存在しないか、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のn1〜58番目(n1は、1〜58のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す)で示されるアミノ酸配列からなるペプチド
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1〜58番目の領域中に1〜9個のアミノ酸が欠失置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるペプチド
(c)上記(b)のペプチドの部分配列からなるペプチドであって、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド
〔9〕上記C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、X2−His−Lys(X2は、存在しないか、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列のn2〜18番目(n2は、1〜18のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す)で示されるアミノ酸配列からなるペプチドである、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の組成物。
〔10〕上記C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、His−Lys、Leu−His−Lys又はLeu−Leu−His−Lys(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチドである上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の組成物。
〔11〕経口用組成物である上記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の組成物。

発明の効果

0009

本発明によれば、筋機能低下を抑制又は回復させることができる、新規な筋機能低下の抑制又は回復用組成物が提供される。また、本発明によれば、筋量減少を抑制又は回復させることができる、新規な筋量減少の抑制又は回復用組成物が提供される。本発明によれば、筋質低下を抑制又は回復させることができる、新規な筋質低下の抑制又は回復用組成物が提供される。

図面の簡単な説明

0010

図1A〜Eは、HE染色したラット骨格筋顕微鏡写真である(スケールバー:50μm)。

0011

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物は、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する。
本発明の筋量減少の抑制又は回復用組成物は、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する。
本発明の筋質低下の抑制又は回復用組成物は、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を有効成分として含有する。

0012

明細書中、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドを、HK含有ペプチドとも記載する。HK含有ペプチド又はその塩は、1種用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
ペプチドの塩としては、薬理学的に許容される塩であれば特に限定されず、酸性塩及び塩基性塩のいずれであってもよい。酸性塩として、例えば、塩酸塩硫酸塩、硝酸塩リン酸塩等の無機酸塩酢酸塩クエン酸塩マレイン酸塩リンゴ酸塩シュウ酸塩乳酸塩コハク酸塩フマル酸塩プロピオン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。塩基性塩として、例えば、ナトリウム塩カリウム塩等のアルカリ金属塩カルシウム塩マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。

0013

C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドのアミノ酸残基数は、例えば、2〜100であってよい。C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、His−Lysのアミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。
C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドとして、下記(a)〜(c)のペプチドが好ましい。
(a)X1−His−Lys(X1は、存在しないか、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のn1〜58番目(n1は、1〜58のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す)で示されるアミノ酸配列からなるペプチド
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1〜58番目の領域中に1〜9個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるペプチド
(c)上記(b)のペプチドの部分配列からなるペプチドであって、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド
配列番号1に示すアミノ酸配列は、ジャージー種のβ−ラクトグロブリンCのアミノ末端から1〜60番目のアミノ酸配列である。

0014

本明細書中、アミノ酸配列において、1〜9個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたとは、同一配列中の任意かつ1〜9のアミノ酸配列中の位置において、1〜9個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加があることを意味し、欠失、置換及び付加のうち2以上が同時に生じていてもよい。

0015

上記(b)のペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1〜58番目の領域中に好ましくは1〜8個(より好ましくは1〜7個、1〜6個、1〜5個又は1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、1〜2個又は1個)のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列からなる。
上記(c)のペプチドは、上記(b)に記載のペプチドの部分配列からなり、かつ、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドである。

0016

C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドとして、上記(a)のペプチドがより好ましい。
一態様において、(a)のペプチドとして、X2−His−Lys(X2は、存在しないか、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列のn2〜18番目(n2は、1〜18のいずれかの整数を表す)のアミノ酸配列を表す)で示されるアミノ酸配列からなるペプチドが好ましい。配列番号2に示すアミノ酸配列は、配列番号1に示すアミノ酸配列の41〜60番目のアミノ酸配列((a)のペプチドにおいて、n1が41〜58のいずれかの整数を表すペプチド)である。

0017

C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドとして、His−Lys、Leu−His−Lys、Leu−Leu−His−Lys(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチドがさらに好ましい。これらのペプチド又はその塩は、筋機能低下の抑制又は回復作用、筋量減少の抑制又は回復作用、筋質低下の抑制又は回復作用の観点から好ましい。C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩として、His−Lys、Leu−His−Lys若しくはLeu−Leu−His−Lys(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩がさらに好ましく、Leu−His−Lysのアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩が特に好ましい。

0018

C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の製造方法は特に限定されない。HK含有ペプチドは、例えば、公知のペプチド合成方法によって製造することができる。化学合成によってHK含有ペプチドを得る場合は、固相法又は液相法のいずれの方法でも合成することができる。合成によって得られたペプチドは、逆相高速液体クロマトグラフィーイオン交換樹脂ハイポーラスポリマー樹脂を用いたクロマトグラフィーアフィニティークロマトグラフィー等を用いた通常の精製方法で精製することができる。また、例えば、His−Lys、Leu−His−Lys及び配列番号3に示されるアミノ酸配列(Leu−Leu−His−Lys)は、ジャージー種の牛の乳に含まれるβ−ラクトグロブリンCに含まれる配列であり、β−ラクトグロブリンCを酵素等で分解することによって製造することもできる。C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドは、微生物を用いて生合成することもできる。微生物を用いて生合成する場合は、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドをコードする遺伝子を導入した発現ベクターを作製して、該発現ベクターを宿主微生物に導入して形質転換体を得る。形質転換体を培養し、培養物からC末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチドを精製することができる。宿主微生物は特に限定されず、例えば、大腸菌酵母等を使用することができる。培養物からの分離精製は、通常の精製方法で行うことができる。
ペプチドの塩は、当該分野で公知の任意の方法により、当業者によって容易に調製され得る。

0019

本明細書において、筋機能低下の抑制又は回復は、筋機能の低下を抑制すること又は低下した筋機能を回復させることを指す。筋機能は、筋力弾性力持久力などを含む概念である。筋機能低下は、加齢による筋機能低下であってよい。
筋量減少の抑制又は回復は、筋量の減少を抑制すること又は減少した筋量を回復させることを指す。筋量減少の抑制は、筋量増加を含む概念である。筋量減少は、加齢による筋量減少であってよい。
筋質低下の抑制又は回復は、筋質(筋肉の状態)の低下を抑制すること又は低下した筋質を回復させることを指す。筋質低下は、加齢による筋質低下であってよい。筋質低下として、筋細胞間の接着の低下等が挙げられる。筋細胞間の接着が低下すると、筋機能が低下する。
筋細胞間の接着の低下の抑制又は回復は、筋細胞間の接着の低下を抑制すること又は低下した筋細胞間の接着を回復させることを指す。筋細胞間の接着の低下の抑制は、筋細胞間の接着の強化を含む概念である。
ヒト等の動物の筋量は、例えば、マイクロPET/CT(陽電子ポジトロン放射断層撮影コンピュータ断層撮影、INVEON、シーメンス、米国)により測定することができる。

0020

後記の実施例に示されるように、若齢のラットと比較して、老齢ラットでは、骨格筋における筋細胞間の接着が低下していた。老齢ラットにC末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を摂取させると、コントロールの老齢ラットと比較して筋細胞が増加し、筋細胞間の接着が強固になっていることが示唆された。また、His−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を摂取させたラットは、摂取させなかったラットと比較して、骨格筋量が多かった。したがってC末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩は、筋量減少の抑制又は回復に有用である。また、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩は、筋細胞間の接着低下を抑制又は回復させたことから、筋質低下の抑制又は回復のために有用である。筋量減少の抑制又は回復や、筋質低下の抑制又は回復により、筋機能低下の抑制又は回復が可能となる。一態様において、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩は、筋量減少及び/又は筋質低下を抑制又は回復させることにより、筋機能低下を抑制又は回復させるために好適に使用され得る。

0021

C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩は、筋機能低下の抑制又は回復のため、筋量減少の抑制又は回復のため、筋質低下の抑制又は回復のために有用である。C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩は、骨格筋の筋機能低下の抑制又は回復のため、骨格筋の筋量減少の抑制又は回復のため、骨格筋の筋質低下の抑制又は回復のために有用である。本発明の一態様において、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩は、加齢による筋機能低下の抑制又は回復のため、加齢による筋量減少の抑制又は回復のため、加齢による筋質低下の抑制又は回復のために好適に使用される。
上記のペプチド又はその塩の使用は、治療的使用であってもよく、非治療的使用であってもよい。「非治療的」とは、医療行為、すなわち手術、治療又は診断を含まない概念である。

0022

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物、筋量減少の抑制又は回復用組成物及び筋質低下の抑制又は回復用組成物を、以下ではまとめて筋機能低下の抑制又は回復用組成物等ともいう。
本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、例えば、飲食品飲食品組成物)、医薬品(医薬組成物)、飼料飼料組成物)等の形態で提供することができるが、これらに限定されるものではない。本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、それ自体が飲食品、医薬品、飼料等であってもよく、これらに使用される添加剤等の製剤、素材であってもよい。一態様において、本発明の効果をより充分に発揮できる観点から、筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、経口用組成物であることが好ましく、飲食品又は経口用医薬品であることがより好ましく、飲食品であることがさらに好ましい。

0023

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、本発明の効果を損なわない限り、有効成分として使用されるHK含有ペプチド又はその塩の他に、任意の添加剤、任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び成分としては、一般的に飲食品、医薬品、飼料等に使用可能なものが使用できる。
本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、又は、当該剤を含む組成物として提供することもできる。

0024

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等を飲食品とする場合、HK含有ペプチド又はその塩に、飲食品に使用可能な成分(例えば、飲食品素材、必要に応じて使用される食品添加物等)を配合して、種々の飲食品とすることができる。飲食品は特に限定されず、例えば、一般的な飲食品、健康食品、これらの原料等が挙げられる。飲食品の形態も特に限定されず、固形状、半流動状、流動状などを挙げることができる。飲食品は、錠剤被覆錠剤細粒剤顆粒剤散剤丸薬カプセル剤ドライシロップ剤チュアブル剤等の経口用固形製剤内服液剤シロップ剤等の経口用液体製剤の各種製剤形態とすることもできる。

0025

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等を医薬品とする場合、HK含有ペプチド又はその塩に、薬理学的に許容される賦形剤等を配合して、各種剤形の医薬品とすることができる。医薬品の投与形態は特に限定されず、経口投与でもよく、非経口投与でもよい。本発明の効果をより充分に得る観点から、医薬品の投与形態は、経口投与が好ましい。医薬品の剤形は、投与形態に適した剤形とすればよい。経口用医薬品の剤形として、例えば、錠剤、被覆錠剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、丸薬、カプセル剤、ドライシロップ剤、チュアブル剤等の経口用固形製剤;内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤が挙げられる。非経口投与用医薬の剤形として、注射剤点滴剤軟膏剤ローション剤貼付剤坐剤経鼻剤、経剤(吸入剤)等が挙げられる。医薬品は、非ヒト動物用医薬であってもよい。

0026

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等を飼料とする場合、HK含有ペプチド又はその塩に、飼料に使用可能な成分を配合して飼料とすることができる。飼料としては、例えば、ウシブタニワトリヒツジウマ等に用いる家畜用飼料ウサギモルモット、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料;イヌネコ小鳥等に用いるペットフードなどが挙げられる。
本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等を、飲食品、医薬品、飼料等とする場合、その製造方法は特に限定されない。例えば、有効成分として使用されるHK含有ペプチド又はその塩を用いて、一般的な方法により製造することができる。

0027

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等中のHK含有ペプチド又はその塩の含有量は特に限定されず、その形態等に応じて適宜設定することができる。例えば、筋機能低下の抑制又は回復用組成物等を飲食品、医薬品、飼料等とする場合、いずれの形態の場合でも、HK含有ペプチド又はその塩の総含有量(HK含有ペプチド及びその塩の合計含有量)が、例えば、組成物中に0.001重量%以上であってよく、0.01重量%以上が好ましく、また、90重量%以下であってよく、80重量%以下が好ましい。一態様において、HK含有ペプチド又はその塩の総含有量は、筋機能低下の抑制又は回復用組成物等中に、例えば、0.001〜90重量%であってよく、好ましくは0.01〜80重量%とすることができる。

0028

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、その形態に応じた適当な方法で投与又は摂取することができ、好ましくは経口で投与又は摂取される。
本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等の摂取量(投与量ということもできる)は特に限定されず、筋量減少の抑制又は回復効果、筋質低下の抑制又は回復効果、筋機能低下の抑制又は回復効果が得られるような量(有効量)であればよく、投与形態、投与方法等に応じて適宜設定すればよい。一態様において、ヒト(成人)を対象に経口で投与する又は摂取させる場合、HK含有ペプチド又はその塩の総摂取量(HK含有ペプチド及びその塩の合計摂取量)は、HK含有ペプチドのC末端のHis−Lysの重量に換算して、例えば、1日あたり体重50kgで、0.1mg以上が好ましく、1.0mg以上がより好ましく、2.5mg以上がさらに好ましく、10mg以上が特に好ましく、また、2.5g以下が好ましく、1000mg以下がより好ましく、500mg以下がさらに好ましく、100mg以下が特に好ましい。一態様において、ヒト(成人)の場合のHK含有ペプチド又はその塩の総摂取量は、1日あたり体重50kgで、HK含有ペプチドのC末端のHis−Lysの重量に換算して、0.1mg〜2.5gが好ましく、1.0〜1000mgがより好ましく、2.5〜500mgがさらに好ましく、10〜500mgがさらにより好ましく、10〜100mgが特に好ましい。上記量を、例えば1日1回で又は複数回(例えば、2〜3回)に分けて経口投与又は摂取させることが好ましい。HK含有ペプチド又はその塩の摂取量が上記範囲となるように、本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等を対象に投与する又は摂取させることが好ましい。本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、ヒトに、体重50kgあたり、1日あたり上記量のHK含有ペプチド又はその塩を投与する又は摂取させるための経口用組成物であってよい。

0029

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、継続して摂取(投与)されるものであることが好ましい。HK含有ペプチド又はその塩は、継続的に摂取されることによって、筋機能低下の抑制又は回復効果、筋量減少の抑制又は回復効果、筋質低下の抑制又は回復効果が高まる。本発明の一実施態様において、筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、2週間以上継続して摂取されることが好ましく、4週間以上継続して摂取されることがより好ましい。

0030

HK含有ペプチド又はその塩は、上記のように筋機能低下の抑制又は回復作用、筋量減少の抑制又は回復作用、筋質低下の抑制又は回復作用を有する。このためにHK含有ペプチド又はその塩は、筋機能低下、筋量減少又は筋質低下に起因する状態又は疾患を予防又は改善するために有用である。
筋機能低下、筋量減少又は筋質低下に起因する状態又は疾患として、サルコペニア寝たきり転倒疲労感、QOLの低下等が挙げられる。一態様において、本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、上記の状態又は疾患の予防又は改善のために使用することができる。予防は、発症の防止、発症の遅延発症率の低下を包含する。改善は、症状の軽快、症状の進行抑制、症状の治癒を包含する。

0031

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等を投与又は摂取させる対象(以下、単に投与対象ともいう)は、ヒト、ヒト以外の動物が好ましく、ヒト又は非ヒト哺乳動物がより好ましく、ヒトがさらに好ましい。非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、サル等が挙げられる。また、筋機能低下の抑制又は回復用組成物等の投与対象として、筋機能低下の抑制又は回復を必要又は希望とする対象、筋量減少の抑制又は回復を必要又は希望する対象、筋質低下の抑制又は回復を必要又は希望する対象が好ましい。例えば、上記の筋機能低下、筋量減少又は筋質低下に起因する状態又は疾患の予防又は改善を希望する対象等が挙げられる。
筋機能、筋量、筋質は加齢により低下することから、本発明における好ましい投与対象の一例として、加齢による筋機能、筋量又は筋質の低下の抑制又は回復を必要又は希望する対象が挙げられる。一態様において、投与対象として、高齢者が好ましい。

0032

本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等には、包装容器又は説明書に用途、有効成分の種類、上述した効果、使用方法(例えば、摂取方法、投与方法)等の1又は2以上を表示してもよい。本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等には、筋機能低下、筋量減少、筋質低下を抑制又は回復させる作用、又は、この作用に基づく作用を有する旨の表示が付されていてもよい。

0033

一態様において、本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等には、「歩行能力(機能)の維持」、「歩行機能の維持」、「筋肉量の維持」、「筋肉量の改善」、「筋力の低下抑制」「筋肉を作る力をサポート」等の1又は2以上の表示が付されていてもよい。本発明の一実施態様において、本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等は、上記の機能の表示が付された飲食品であることが好ましい。また上記表示は、上記の機能を得るために用いる旨の表示であってもよい。

0034

本発明は、以下の方法も包含する。
C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を、対象に投与することを含む、筋機能低下を抑制又は回復させる方法。
C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を、対象に投与することを含む、筋量減少を抑制又は回復させる方法。
C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩を対象に投与することを含む、筋質低下を抑制又は回復させる方法。
C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド(HK含有ペプチド)又はその塩、投与対象、投与方法、投与量及びそれらの好ましい態様等は、上述した筋機能低下の抑制又は回復用組成物等と同じである。HK含有ペプチド又はその塩の投与量は、筋機能低下の抑制又は回復作用、筋量減少の抑制又は回復作用、筋質低下の抑制又は回復作用が得られる量、すなわち有効量であればよく、特に限定されない。例えば上述した摂取量を投与することが好ましい。HK含有ペプチド又はその塩は、そのまま投与してもよいし、HK含有ペプチド又はその塩を含有する組成物として投与してもよい。例えば、上述した本発明の筋機能低下の抑制又は回復用組成物等を投与することができる。本発明によれば、筋量減少、筋質低下を抑制又は回復させることができる。また、筋機能低下を抑制又は回復させることができる。また、筋機能低下、筋量減少又は筋質低下に起因する状態又は疾患を予防又は改善することが可能となる。上記方法は、治療的な方法であってもよく、非治療的な方法であってもよい。一態様において、筋機能低下は、加齢による筋機能低下であってよい。筋量減少は、加齢による筋量減少であってよい。筋質低下は、加齢による筋質低下であってよい。

0035

本発明は、以下の使用も包含する。
筋機能低下を抑制又は回復させるための、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の使用。
筋量減少を抑制又は回復させるための、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の使用。
筋質低下を抑制又は回復させるための、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の使用。
上記の使用は、ヒト又は非ヒト動物における使用であり、好ましくはヒトにおける使用である。使用は、治療的使用であってもよく、非治療的使用であってもよい。HK含有ペプチド又はその塩、対象、投与方法、投与量及びそれらの好ましい態様等は、上述した筋機能低下の抑制又は回復用組成物等におけるものと同じである。

0036

本発明は、筋機能低下の抑制又は回復用組成物を製造するための、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の使用;筋量減少の抑制又は回復用組成物を製造するための、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の使用;筋質低下の抑制又は回復用組成物を製造するための、C末端にHis−Lysのアミノ酸配列を含むペプチド又はその塩の使用も包含する。筋機能低下の抑制又は回復用組成物、筋量減少の抑制又は回復用組成物、筋質低下の抑制又は回復用組成物及びこれらの好ましい態様等は、上記と同じである。

0037

以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。

0038

一連動物実験は、動物愛護管理法関連法令遵守し、社内及び学内動物実験委員会審査を経て機関の長が承認した計画に基づき実施した。

0039

<実施例1>
実験方法
1.実験動物
老齢ラットは、ウィスター系雄ラットを(日本エスエルシー株式会社)5ケ月齢購入し、17ケ月齢で実験に供した。若齢ラットは、2ケ月齢で購入し、3ケ月齢で使用した。

0040

2.被験物質
以下の被験物質を使用した。
Leu−Leu−His−Lys(配列番号3)のアミノ酸配列からなるテトラペプチドの酢酸塩(以下、LLHKという)
Leu−His−Lysのアミノ酸配列からなるトリペプチドの酢酸塩(以下、LHKという)
His−Lysのアミノ酸配列からなるジペプチドの塩(以下、HKという)
LLHK(酢酸塩)、LHK(酢酸塩)の合成は、株式会社ペプチド研究所(箕面市)に依頼した。

0041

3.被験物質の飲用
LLHKは30mg/30mL、LHKは23mg/30mL、HKは16mg/30mLとなるように水道水に溶解させてラットに飲用させた。HK水溶液中のHis−Lys濃度は、12mg/30mLであった。
17ケ月齢ラットに、水道水(水飲用群、老齢コントロール)、LLHK(LLHK飲用群)、LHK(LHK飲用群)又はHK(HK飲用群)をアドリブに飲用させて、1ケ月間飼育した(各群n=2)。3ケ月齢ラット(若齢コントロール)には水道水を飲用させて、1ケ月間飼育した(n=2)。なおこの実験中、被験物質(LLHK、LHK又はHK)飲用群、水飲用群(コントロール)及び若齢コントロール群には、いずれも同じ固形飼料商品MFオリエンタル酵母(株)製)を自由に摂取させた。ラットは、1日に上記の被験物質水溶液を約22mL摂取した。
上記の飼育後(実験終了後)、各群のラットの体重を測定した。その後、下記の試験を行った。

0042

4.筋重量の測定及び組織像解析
LLHK飲用群、HK飲用群及び若齢コントロール群については、ラットの骨格筋(ヒラメ筋)を摘出し、直ちに10%中性緩衝ホルムアルデヒド溶液ナカライテスク株式会社製)で固定後、5mmの切片を作製した。ヘマトキシレンエオジンで染色(HE染色)後、光学顕微鏡オリンパス株式会社製、BX53)で観察した(倍率10×20)。
水飲用群及びLHK飲用群については、ラットの骨格筋(ヒラメ筋)を摘出し、直ちに重量を測定した。重量測定後、上記と同じ方法で骨格筋を固定して、光学顕微鏡で観察した。

0043

5.マイクロアレイ解析
摘出した骨格筋を、直ちにRNA later(Ambion, Austin, TX, USA)に入れ、total RNA精製は、RNeasy Fibrous Tissue Mini Kit(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)とQIAcube(Qiagen GmbH)を用いて行った。RNAの純度をNanoDrop 1000 spectrophotometer(Thermo Fisher Scientific Inc., Wilmington, DE, USA)とAgilent2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)を用いて確かめた後、One−Color Low Input Quick Amp Labeling kit(Agilent Technologies, Santa Clara, Ca, USA)を用いてラベル化したcRNAを合成し、フラグメント化した。SurePrint G3 Rat GE ver 2.0(Agilent Technologies)と2545AHybridization Oven(Agilent Technologies)で65℃で17時間ハイブリダイズした。本Arrayは、約30,000個の遺伝子が解析できる。解析には、GeneSpring GX version 14.9(Agilent Technologies)を用いた。

0044

(結果)
得られた値は、平均値±標準誤差で示した。有意差検定は、Excelの分析ツールを用いて、t検定(等分散を仮定した2標本による検定、p値、片側検定)により行った、水飲用群(老齢コントロール)に対する検定結果である(**:p<0.01)。

0045

1.体重への被験物質の影響
実験開始前、及び、被験物質(LLHK、LHK又はHK)又は水を1ケ月飲用後(実験終了後)のラットの体重を表1に示す。体重は、水飲用群(老齢コントロール)、LLHK飲用群、LHK飲用群、HK飲用群のいずれも、老化とともに減少する傾向にあるが、群間で有意の差はなかった(表1)。

0046

0047

2.骨格筋の組織像への被験物質の影響
図1A〜Eは、HE染色したラットの骨格筋の顕微鏡写真である(スケールバー:50μm)。図1A〜Eは、Aが若齢コントロール(水飲用)、Bが老齢コントロール(水飲用)、CがLLHKを飲用したラット、DがLHKを飲用したラット、EがHKを飲用したラットである。若齢動物では、筋細胞がきれいに束をなしている(図1A)。しかし、水飲用の老齢動物では、筋細胞間の結合が崩れバラバラになっていた(図1B)。LLHKを飲用(図1C)、LHKを飲用(図1D)、HKを飲用(図1E)させると、筋細胞は結合力を回復して塊状になり、若齢動物の像(図1A)に近づいた。

0048

3.筋重量への被験物質の影響
LHK又は水を1ケ月飲用後(実験終了後)のラットのヒラメ筋の重量を表2に示す。LHK飲用群では、水飲用群(老齢コントロール)と比較して筋重量が有意に重かった(**:p<0.01、n=2)。

0049

0050

4.骨格筋の遺伝子発現への被験物質の影響
LLHK、LHK又はHKの飲用で水飲用より1.5倍以上上昇した遺伝子と、若齢コントロールの方が老齢コントロールより高かった遺伝子を分析した。LLHK、LHK又はHKの飲用により、1139個のentitiesが共通する遺伝子として上昇していた。LLHK、LHK又はHKの飲用で水飲用より1.5倍以上低下した遺伝子と、若齢コントロールの方が老齢コントロールより低かった遺伝子については、1289個のentitiesが共通する遺伝子として低下していた。

0051

機能別に、遺伝子を検討した(表3〜8)。
表3〜8のカラムAはLLHK飲用老齢動物(LLHK飲用群)の遺伝子発現量(OLLHK)を水飲用老齢動物(老齢コントロール)の遺伝子発現量(OC)で割った値(OLLHK/OC)である。カラムBはLHK飲用老齢動物(LHK飲用群)の遺伝子発現量(OLHK)を水飲用老齢動物の遺伝子発現量(OC)で割った値(OLHK/OC)である。カラムCはHK飲用老齢動物(HK飲用群)の遺伝子発現量(OHK)を水飲用老齢動物の遺伝子発現量(OC)で割った値(OHK/OC)である。カラムDは水飲用若齢動物(若齢コントロール)の遺伝子発現量(YC)を水飲用老齢動物の遺伝子発現量(OC)で割った値(YC/OC)である。
後記の表3〜5及び7〜8において、カラムA、B及びCに示す値の中で、カラムD(YC/OC)の値に最も近いものに下線を付した。この下線を付した数値は、各群の中で、その遺伝子発現が、若齢コントロールの遺伝子発現に最も近いことを意味する。表3〜5及び7〜8に示す結果では、LHKを飲用した動物の遺伝子発現が若齢動物の遺伝子発現に最も近かった。

0052

表3に、筋肉の発達を促す(筋量増加を促進する)遺伝子の発現を調べた結果を示す。LLHK、LHK又はHKにより、筋肉の発達を促す遺伝子として、インシュリン様成長因子の遺伝子(Igf1)、インシュリン様成長因子結合タンパク質の遺伝子(Igf2bp2、Igfbp6、Igfbp4)、インシュリン様成長因子受容体の遺伝子(Igf1r)、転写延長因子(Tceanc2)や細胞膜裏打ちタンパク質であるアンキリン44(Ankdr44)などの発現が上昇した。

0053

0054

表4に、細胞接着に関連する遺伝子の発現を調べた結果を示す。LLHK、LHK又はHKにより、細胞接着に関連する遺伝子として、ネクチンの遺伝子(Nectin3、Fndc1)、ヒアルロン酸受容体の遺伝子(Cd44)、インテグリンの遺伝子(Itga2、Itga3、Itgb1、Itgb7、Itfg2)、カドヘリンの遺伝子(Cad4、Pcdha5、Pcdh17)などの発現が上昇した。

0055

0056

表5に、筋修復関与する遺伝子の発現を調べた結果を示す。LLHK、LHK又はHKにより、細胞修復に関与する遺伝子として、ケモカインリガンドの遺伝子(Ccl7、Cxcl9、Cxcl16)、カテニン(Ctnnbip1、Ctnna2)などの発現が上昇した。

0057

0058

表6に、骨格筋細胞への分化を促す遺伝子の発現を調べた結果を示す。LLHK、LHK又はHKにより、骨格筋細胞への分化を促す遺伝子としてPax3の発現が上昇した。骨格筋細胞への分化を促す遺伝子の発現量が多いほど、骨格筋への分化が促進され、骨格筋量が増加する。

0059

0060

表7に、細胞マトリックスリモデリングに関与する遺伝子の発現を調べた結果を示す。LLHK、LHK又はHKにより、細胞マトリックスのリモデリングに関与する遺伝子として、CTGF、Dcnの発現が上昇した。

0061

0062

表8に、骨格筋の成長を促す遺伝子の発現を調べた結果を示す。LLHK、LHK又はHKにより、骨格筋の成長を促す遺伝子として成長因子遺伝子(Ltbp1、Tgfb2、Tgfbi、Ltbp4)などの発現が上昇していた。

0063

0064

図1に示す結果は、LLHK、LHK、HKは、老齢で細胞接着が悪くなりバラバラになった細胞の接着を高め、形態形成を促進したことを示している。図1Bでは筋細胞間の接着が緩く、1個の筋小束中の細胞数図1Aに比し減っているのに対し、図1C〜E(特に図1C及び図1D)では筋細胞間の接着が強くなり、1個の筋小束中の細胞数が図1Bより増えた。筋細胞間の接着が強化されると、筋機能が向上する。LLHK、LHK、HKが細胞の接着性や形態形成を高めることは、表3〜8に示す細胞接着や筋修復(muscle repairing)関連の遺伝子発現の高まりによるものと考えられる。例えば表4に示すように、LHK、LHK、HKによって筋細胞接着に関わる遺伝子の発現が上昇している。LHK、LHK、HKによる筋細胞間の接着の強化は、これらの遺伝子発現に起因すると考えられる。また表2に示されるように、LHKを飲用したラットでは、飲用しないラットと比較して筋重量が有意に重かった。

0065

表3に見られるように、LLHK、LHK、HKの飲用は、種々のインシュリン様成長因子の遺伝子(Igf)発現、インスリン様成長因子結合タンパク質の遺伝子、インスリン様成長因子受容体遺伝子の遺伝子を上昇させた。インスリン様成長因子が、筋量を上昇させるという報告は多くある。例えば、インシュリン/インシュリン様成長因子は、PI(3)K/Aktシグナル伝達系活性化して筋肉タンパク質の合成を高めたり、筋管を太くしたりする(Rommel C. Et al, Nature Cell Biol 3:1009−1013,2001)。
また、表5に示すように、LLHK、LHK、HKにより、カテニン(Ctnna2)の発現が上昇した。カテニンはカドヘリンと複合体を形成し、カドヘリンの細胞接着因子としての機能発揮に必須であるほか、転写制御因子としての機能も有る(Valenta T, et al.,TheEMBO Journal 31(12):2714−36,2012.)。これらの結果から、His−Lys、Leu−His−Lys若しくはLeu−Leu−His−Lys(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩の飲用は、筋量減少の抑制又は回復に有効であるといえる。また、上記ペプチド又はその塩の飲用は、筋質低下の抑制又は回復に有効であるといえる。従って上記ペプチド又はその塩は、サルコペニア(加齢性筋力減少症)等に有効である。

実施例

0066

His−Lys、Leu−His−Lys又はLeu−Leu−His−Lys(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチド等のHK含有ペプチド又はその塩が骨格筋の老性組織変化や老性機能低下の修復に有効であることが判明した。
また、上記のように、HK含有ペプチド又はその塩は、筋細胞間の接着を強化する作用がある。近年、培養による人工肉製造の研究が盛んであり、HK含有ペプチド又はその塩の添加により人工肉形成促進効果も期待できる。特に、Leu−His−Lys又はその塩はバラバラの肉細胞を肉塊にする力を持つ可能性が高い動物由来の肉に頼らず、工場等で人工肉を作る場合に、Leu−His−Lys等のHK含有ペプチド又はその塩は食料供給の重要なツールの一つになることも考えられる。

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