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技術 ハイポイドギヤの製造方法

出願人 マツダ株式会社
発明者 野口慈仁高津凌上田伊佐矛坂東武夫
出願日 2019年4月23日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-081547
公開日 2020年10月29日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-175496
状態 未査定
技術分野 歯車・カム 歯車加工 鋼の加工熱処理 砥粒による吹付け加工の細部 物品の熱処理
主要キーワード ギヤ軸方向 環状カッタ 粗面仕上げ 軸心方向視 円錐台面 工程設定 ソーダ石鹸 非平行状態
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (17)

課題

生産性動力伝達効率両立できるハイポイドギヤの製造方法を提供すること。

解決手段

円錐台状のピニオンギヤリングギヤを有するハイポイドギヤの製造方法は、歯切り工程で円錐台側面の円錐面部に捩じれた複数の歯を形成し、表面処理工程で歯の表面に硬化層を形成し、ラッピング工程で歯の表面を研磨し、ショットピーニング工程において、側面視にて円錐台軸心を含む平面が円錐面部に交差する母線に直交又は略直交する角度の投射軸であって、リングギヤに対してはその軸心方向視にて、該母線側で該平面に平行且つ該平面から歯の捩じれ方向側に円錐台の大径側半径の半分だけ離れた円錐面部の母線方向幅の中央を通る投射軸、ピニオンギヤに対してはその軸心方向視にて、該母線側で該平面に平行且つ該平面から歯の捩じれ方向と反対側に円錐台の大径側半径の半分だけ離れた円錐面部の母線方向幅の中央を通る前記投射軸、に沿って投射材を投射する。

概要

背景

従来より、ハイポイドギヤは、耐久性が高く、歯当り音が小さいという優位性を有するため、動力伝達を行う車両用差動装置の主要構成部品として広く実用に供されている。このハイポイドギヤは、回転駆動時、複数の歯が同時に噛み合うため、各々の歯に入力される負荷を複数の歯に分散することが可能である。その反面、ピニオンギヤリングギヤとの接触部分(歯当り位置)が相対的に滑ることから、摺動抵抗の増加に伴ってエネルギー損失が増大し、動力伝達機構としての機械効率が低下するという特性を有している。それ故、ハイポイドギヤには、ギヤ表面に潤滑用被膜が形成されている。

例えば図16に示すように、ハイポイドギヤは、捩じれを有する歯形状を加工する歯切り工程S11と、歯の表面に硬化層を形成するための熱処理工程S12及びショットピーニング工程S13と、#320(粒径40μm)の砥粒を用いて加工するラッピング工程S14と、歯の表面に潤滑用被膜を形成するリューブライト処理工程S15によって製造されている。リューブライト処理工程S15では、対象ワークリン酸塩液に浸漬して表面にリン酸塩皮膜を形成し、このリン酸塩皮膜とリューベ(脂肪酸ソーダ石鹸)を反応させて潤滑性を備えた金属石鹸を生成している。

また、歯の疲労強度の向上を図る技術も提案されている。例えば特許文献1の歯車製造法は、真空浸炭焼入れ処理の後、ショットピーニング加工を行っている。このショットピーニング加工では、炭素濃度が高い歯幅方向外側端部の歯面及び歯底に対して投射材投射するようにショットピーニングを行って疲労強度を向上させている。

概要

生産性動力伝達効率両立できるハイポイドギヤの製造方法を提供すること。円錐台状のピニオンギヤとリングギヤを有するハイポイドギヤの製造方法は、歯切り工程で円錐台側面の円錐面部に捩じれた複数の歯を形成し、表面処理工程で歯の表面に硬化層を形成し、ラッピング工程で歯の表面を研磨し、ショットピーニング工程において、側面視にて円錐台軸心を含む平面が円錐面部に交差する母線に直交又は略直交する角度の投射軸であって、リングギヤに対してはその軸心方向視にて、該母線側で該平面に平行且つ該平面から歯の捩じれ方向側に円錐台の大径側半径の半分だけ離れた円錐面部の母線方向幅の中央を通る投射軸、ピニオンギヤに対してはその軸心方向視にて、該母線側で該平面に平行且つ該平面から歯の捩じれ方向と反対側に円錐台の大径側半径の半分だけ離れた円錐面部の母線方向幅の中央を通る前記投射軸、に沿って投射材を投射する。

目的

本発明の目的は、生産性と動力伝達効率を両立できるハイポイドギヤの製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

円錐台状のピニオンギヤリングギヤを有するハイポイドギヤの製造方法において、前記円錐台の側面部である円錐面部に捩じれ形状の複数の歯を形成する歯切り工程と、前記歯の表面に硬化層を形成する表面処理工程と、前記歯の表面を研磨するラッピング工程と、ショットピーニング工程を有し、前記ショットピーニング工程において、前記円錐台の側面視にて前記円錐台の軸心を含む平面が前記円錐面部に交差する母線に直交又は略直交する角度に設定された投射材投射軸であって、前記リングギヤに対しては、その軸心方向視にて、前記母線側で前記平面に平行且つ前記平面から前記リングギヤの歯の捩じれ方向側に前記円錐台の大径側半径の半分だけ離れた前記円錐面部の母線方向幅の中央を通る前記投射軸に沿って投射材を投射し、前記ピニオンギヤに対しては、その軸心方向視にて、前記母線側で前記平面に平行且つ前記平面から前記ピニオンギヤの歯の捩じれ方向と反対側に前記円錐台の大径側半径の半分だけ離れた前記円錐面部の母線方向幅の中央を通る前記投射軸に沿って投射材を投射することを特徴とするハイポイドギヤの製造方法。

請求項2

前記ショットピーニング工程において、前記ピニオンギヤ及び前記リングギヤをそれらの軸心周りに回転させながら投射材を夫々投射し、投射材の投射範囲に、前記ピニオンギヤ又は前記リングギヤの前記円錐面部の母線方向幅が収まるように投射距離が設定されたことを特徴とする請求項1に記載のハイポイドギヤの製造方法。

請求項3

前記ラッピング工程において、粒径が14μmの砥粒を用いて前記ピニオンギヤと前記リングギヤを噛合させた状態で前記ピニオンギヤをその軸心周りに回転させて互いの歯の表面を研磨し、前記ショットピーニング工程において、直径が160μmの投射材を投射することを特徴とする請求項1又は2に記載のハイポイドギヤの製造方法。

請求項4

前記ラッピング工程における前記ピニオンギヤの回転速度を2400rpmとしたことを特徴とする請求項3に記載のハイポイドギヤの製造方法。

請求項5

前記ハイポイドギヤは、車両の差動装置に組み込まれることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のハイポイドギヤの製造方法。

技術分野

0001

本発明は、ハイポイドギヤの製造方法に関し、特にラッピング工程とショットピーニング工程とを有するハイポイドギヤの製造方法に関する。

背景技術

0002

従来より、ハイポイドギヤは、耐久性が高く、歯当り音が小さいという優位性を有するため、動力伝達を行う車両用差動装置の主要構成部品として広く実用に供されている。このハイポイドギヤは、回転駆動時、複数の歯が同時に噛み合うため、各々の歯に入力される負荷を複数の歯に分散することが可能である。その反面、ピニオンギヤリングギヤとの接触部分(歯当り位置)が相対的に滑ることから、摺動抵抗の増加に伴ってエネルギー損失が増大し、動力伝達機構としての機械効率が低下するという特性を有している。それ故、ハイポイドギヤには、ギヤ表面に潤滑用被膜が形成されている。

0003

例えば図16に示すように、ハイポイドギヤは、捩じれを有する歯形状を加工する歯切り工程S11と、歯の表面に硬化層を形成するための熱処理工程S12及びショットピーニング工程S13と、#320(粒径40μm)の砥粒を用いて加工するラッピング工程S14と、歯の表面に潤滑用被膜を形成するリューブライト処理工程S15によって製造されている。リューブライト処理工程S15では、対象ワークリン酸塩液に浸漬して表面にリン酸塩皮膜を形成し、このリン酸塩皮膜とリューベ(脂肪酸ソーダ石鹸)を反応させて潤滑性を備えた金属石鹸を生成している。

0004

また、歯の疲労強度の向上を図る技術も提案されている。例えば特許文献1の歯車製造法は、真空浸炭焼入れ処理の後、ショットピーニング加工を行っている。このショットピーニング加工では、炭素濃度が高い歯幅方向外側端部の歯面及び歯底に対して投射材投射するようにショットピーニングを行って疲労強度を向上させている。

先行技術

0005

特開2007−51354号公報

発明が解決しようとする課題

0006

一般に、研磨加工法の一種であるラッピング加工は、粗研磨区分され、粗面仕上げが要求されている場合や仕上げ研磨の前工程として実施される。このようなラッピング加工は、一定の圧力下において砥粒と加工液から構成されたラップ剤混合スラリー)を間に介在させて硬質工具とワークとを相対移動させることにより、ワークの表面を砥粒で微小切削して工具形状ワーク表面転写する遊離砥粒方式砥粒加工法である。

0007

ワークがハイポイドギヤの場合、ピニオンギヤとリングギヤを噛合させた状態でピニオンギヤをその軸心周りに回転させてラッピング加工を行う。それ故、ラッピング加工後、ハイポイドギヤの歯筋方向に砥粒の圧着に伴う筋目状の加工痕が形成され、ハイポイドギヤの歯面粗さの悪化を招く。また、筋目状の加工痕が歯筋方向に連続的に形成されているため、ハイポイドギヤの回転駆動時、潤滑油が加工痕を伝って外部に排出され、結果的に歯面に油膜破断が生じ、十分な動力伝達効率を発揮できない虞がある。

0008

ラッピング加工による加工痕を除去するために、ラッピング加工の後、粒径を段階的に小さくした多段階のショットピーニング工程を複数工程設定することも考えられる。しかし、粒径が異なるショットピーニング工程を複数工程設定した場合、工程数が増加して製造設備が大掛かりになると共に、生産に係るサイクルタイムの長期化を招くことから、量産設備としては現実的ではない。即ち、生産性と動力伝達効率とを両立させるハイポイドギヤの製造方法は未だ確立されていない。

0009

本発明の目的は、生産性と動力伝達効率を両立できるハイポイドギヤの製造方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0010

請求項1の発明のハイポイドギヤの製造方法は、円錐台状のピニオンギヤとリングギヤを有するハイポイドギヤの製造方法において、前記円錐台の側面部である円錐面部に捩じれ形状の複数の歯を形成する歯切り工程と、前記歯の表面に硬化層を形成する表面処理工程と、前記歯の表面を研磨するラッピング工程と、ショットピーニング工程を有し、前記ショットピーニング工程において、前記円錐台の側面視にて前記円錐台の軸心を含む平面が前記円錐面部に交差する母線に直交又は略直交する角度に設定された投射材の投射軸であって、前記リングギヤに対しては、その軸心方向視にて、前記母線側で前記平面に平行且つ前記平面から前記リングギヤの歯の捩じれ方向側に前記円錐台の大径側半径の半分だけ離れた前記円錐面部の母線方向幅の中央を通る前記投射軸に沿って投射材を投射し、 前記ピニオンギヤに対しては、その軸心方向視にて、前記母線側で前記平面に平行且つ前記平面から前記ピニオンギヤの歯の捩じれ方向と反対側に前記円錐台の大径側半径の半分だけ離れた前記円錐面部の母線方向幅の中央を通る前記投射軸に沿って投射材を投射することを特徴としている。

0011

上記構成によれば、ハイポイドギヤの円錐台状のピニオンギヤとリングギヤについて、歯切り工程で捩じれ形状の複数の歯を円錐面部に夫々形成し、表面処理工程とラッピング工程とショットピーニング工程で歯面に強度と平滑性を付与する。ショットピーニング工程では、投射材を衝突させることにより歯の表面の加工痕を除去して平滑化すると共に、圧縮残留応力による歯面強度の向上を図りながら潤滑油を歯面上に保持可能なディンプルを歯面上に形成する。このショットピーニングのとき、円錐台の側面視にて円錐台の母線に直交又は略直交するように投射材の投射軸の角度を設定する。これと同時に円錐台の軸心方向視にて、投射軸が直交するように設定した母線側で、その母線と円錐台の軸心を含む平面に平行であって、リングギヤに対してはその平面から歯の捩じれ方向側にその円錐台の大径側半径の半分だけ離れた円錐面部の母線方向幅の中央を通るように、ピニオンギヤに対してはその平面から歯の捩じれ方向と反対側にその円錐台の大径側半径の半分だけ離れた円錐面部の母線方向幅の中央を通るように、投射材の投射軸を設定する。捩じれ方向は、歯筋に沿って小径側から大径側に向かうときに円錐面部の母線から離れていく方向であり、歯筋が母線から時計回り方向に離れる場合を右捩じれ、反時計回り方向に離れる場合を左捩じれと言う。このように設定された投射軸に沿って投射材を投射する。これにより、捩じれ形状の複数の歯を有するピニオンギヤとリングギヤの噛合う歯面、即ちピニオンギヤの凹歯面及びリングギヤの凸歯面に効率的に投射材を衝突させてその表面平滑性の向上と歯面強度の向上を図り、ディンプルを形成することができる。従って、効率的に表面平滑性を向上させてハイポイドギヤにおける機械抵抗を低減し、駆動力伝達ロスが低減されるので、生産性と動力伝達効率を両立することができる。

0012

請求項2の発明のハイポイドギヤの製造方法は、請求項1の発明において、前記ショットピーニング工程において、前記ピニオンギヤ及び前記リングギヤをそれらの軸心周りに回転させながら投射材を夫々投射し、投射材の投射範囲に前記ピニオンギヤ又は前記リングギヤの前記円錐面部の母線方向幅が収まるように投射距離が夫々設定されたことを特徴としている。
上記構成によれば、ピニオンギヤ及びリングギヤを夫々軸心周りに回転させた状態で投射材を夫々投射することにより、全ての歯の噛合う歯面に対して一様に投射材を投射することができ、効率的に表面平滑性の向上を図ることができる。

0013

請求項3の発明のハイポイドギヤの製造方法は、請求項1又は2の発明において、前記ラッピング工程において、粒径が14μmの砥粒を用いて前記ピニオンギヤと前記リングギヤを噛合させた状態で前記ピニオンギヤをその軸心周りに回転させて互いの歯の表面を研磨し、前記ショットピーニング工程において、直径が160μmの投射材を投射することを特徴としている。
上記構成によれば、ラッピング工程で粒径が14μmの砥粒でピニオンギヤとリングギヤの噛合する歯面を研磨して、表面処理工程で生じた歯の形状歪を除去すると共に噛合する歯面における歯面粗さを改善することができる。またラッピング工程で生じた筋目状の加工痕を直径が160μmの投射材のショットピーニングによって除去して歯面粗さを改善することができると共に、歯面上に潤滑油を保持可能なディンプルを形成し且つその圧縮残留応力による歯面強度の向上を図ることができる。

0014

請求項4の発明のハイポイドギヤの製造方法は、請求項3の発明において、前記ラッピング工程における前記ピニオンギヤの回転速度を2400rpmとしたことを特徴としている。
上記構成によれば、粒径が14μmの細かい砥粒であっても十分に研磨できる加工性と生産性を両立できる処理時間で、表面処理工程により生じた歯の形状歪を除去すると共に噛合する歯面における歯面粗さを改善することができる。

0015

請求項5の発明のハイポイドギヤの製造方法は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記ハイポイドギヤは、車両の差動装置に組み込まれることを特徴としている。
上記構成によれば、車両の動力伝達損失を低減することができ、燃費改善を図ることができる。

発明の効果

0016

本発明のハイポイドギヤの製造方法によれば、効率的に表面平滑性を向上させてハイポイドギヤにおける機械抵抗を低減し、駆動力の伝達ロスを低減できるので、生産性と動力伝達効率を両立することができる。

図面の簡単な説明

0017

実施例に係るハイポイドギヤが組み込まれたRDUを搭載したパワープラントユニットの斜視図である。
RDUの要部破断説明図である。
ハイポイドギヤの製造方法に係る工程ステップチャートである。
(a)は実施例に係る第2ショットピーニング工程におけるピニオンギヤを側面から見た図であり、(b)は実施例に係る第2ショットピーニング工程におけるピニオンギヤを軸心方向から見た図である。
(a)は実施例に係る第2ショットピーニング工程におけるリングギヤを側面から見た図であり、(b)は実施例に係る第2ショットピーニング工程におけるリングギヤを軸心方向から見た図である。
(a)は第1,第2の検証及び第3の検証の条件1に係る第2ショットピーニング工程におけるピニオンギヤを側面から見た図であり、(b)は第1,第2の検証及び第3の検証の条件1に係る第2ショットピーニング工程におけるピニオンギヤを軸心方向から見た図である。
(a)は第1,第2の検証及び第3の検証の条件1に係る第2ショットピーニング工程におけるリングギヤを側面から見た図であり、(b)は第1,第2の検証及び第3の検証の条件1に係る第2ショットピーニング工程におけるリングギヤを軸心方向から見た図である。
第1の検証結果の表である。
第2の検証結果のグラフである。
(a)は第3の検証の条件2に係る第2ショットピーニング工程におけるピニオンギヤを側面から見た図であり、(b)は第3の検証の条件2に係る第2ショットピーニング工程におけるピニオンギヤを軸心方向から見た図である。
(a)は第3の検証の条件2に係る第2ショットピーニング工程におけるリングギヤを側面から見た図であり、(b)は第3の検証の条件2に係る第2ショットピーニング工程におけるリングギヤを軸心方向から見た図である。
第3の検証結果の表である。
(a)は第3の検証の条件1に係る投射軸上からピニオンギヤを見た図であり、(b)は第3の検証の条件1に係る投射軸上からリングギヤを見た図である。
(a)は第3の検証の条件2に係る投射軸上からピニオンギヤを見た図であり、(b)は第3の検証の条件2に係る投射軸上からリングギヤを見た図である。
(a)は実施例に係る投射軸上からピニオンギヤを見た図であり、(b)は実施例に係る投射軸上からリングギヤを見た図である。
従来のハイポイドギヤの製造方法に係る工程ステップチャートである。

0018

以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。

0019

以下、本発明の実施例について図1図5に基づいて説明する。
図1に示すように、ハイポイドギヤ10は、例えば4輪駆動車両のパワープラントユニット1に装備される差動装置、具体的にはFDU(Front Differential Unite)2とRDU(Rear Differential Unite)3に組み込まれる主要な構成部品である。パワープラントユニット1は、エンジン4から出力された駆動力を変速機5によって変速し、変速された駆動力をFDU2及びRDU3を介して前後ドライブシャフト6,7に伝達している。

0020

図2に示すように、ハイポイドギヤ10は夫々円錐台状のピニオンギヤ11とリングギヤ12を有し、RDU3には、ピニオンギヤ11とリングギヤ12が噛合した状態で組み込まれている。ピニオンギヤ11は、変速機5から出力された駆動力を下流側に伝達するリヤ側駆動軸8の先端(後端)に取り付けられている。リングギヤ12は、RDU3のケース3aの内側に取り付けられている。ピニオンギヤ11とリングギヤ12は、各々の回転の軸心が捩れ位置関係、つまり、相互に交差せず且つ非平行状態で噛合している。即ち、ハイポイドギヤ10は、ピニオンギヤ11とリングギヤ12が噛合された歯車対によって構成されている。FDU2は、RDU3と同様に、ハイポイドギヤを構成するピニオンギヤとリングギヤとを備えている(何れも図示略)。

0021

次に、図3に基づき、ハイポイドギヤ10の製造工程について説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)は工程ステップを表す。また、工程S1〜S4で夫々形成された第1〜第4中間ギヤは、ピニオンギヤ11とリングギヤ12の歯車対の製造途中の中間体を表す。

0022

図3に示すように、ハイポイドギヤ10は、歯切り工程S1、熱処理工程S2、第1ショットピーニング工程S3、ラッピング工程S4、第2ショットピーニング工程S5を経て完成される。ここで、熱処理工程S2と第1ショットピーニング工程S3は、ハイポイドギヤ10の歯の表面に硬化層を形成する表面処理工程に相当し、第2ショットピーニング工程S5がショットピーニング工程に相当する。

0023

歯切り工程S1は、ギヤ素材の円錐面部に捩じれ形状の複数の歯を形成している。ギヤ素材は、焼入合金鋼機械構造用炭素鋼)であり、例えば、球状黒鉛鋳鉄(FCD45)である。歯は、ホブ盤によるホブ切り、或いはピニオンカッタ等を用いた歯切りによって切削加工され、ギヤ素材から第1中間ギヤを形成している。

0024

ホブの回転と共に一定比率でギヤ素材を回転し、同時にホブをギヤ軸方向送り出すことで創成歯切りが行われる。歯筋が捩れた曲線の捩じれ形状の複数の歯を有するハイポイドギヤ10では、環状カッタを用いた創成歯切り、又は円錐ホブを用いた創成歯切りにより歯切り加工されている。

0025

熱処理工程S2は、浸炭焼入れを行う。第1中間ギヤを、例えば900〜950℃の温度範囲に加熱し、1.5〜4時間保持して浸炭及び拡散処理を行う。その後、850℃まで温度を下げて所定時間温度を保持した後、200〜250℃のソルトバスに所定時間浸漬させて焼入れを行って第2中間ギヤを形成する。尚、この焼入れ後、130〜170℃の温度範囲で1〜2時間保持した後、空冷する焼き戻しを行うことで、第2中間ギヤの圧縮残留応力を更に高めることも可能である。

0026

第1ショットピーニング工程S3は、歯面に対する圧縮残留応力の付与によって表面に硬化層形成することを主目的としたショットピーニングを行う。第2中間ギヤの外周位置に、ショットピーニング装置(図示略)を配置している。第2中間ギヤを軸心回りに回転させながら投射材として鋼球粒子を歯及び歯底に向かって投射し、第3中間ギヤを形成する。

0027

投射条件は、例えば、粒径が略同じに揃った鋼球粒子の平均直径が0.1〜1.0mm、鋼球粒子の硬度が600〜800HV投射速度が50〜100m/secに設定されている。鋼球粒子の平均直径が0.1mm未満では圧縮残留応力の付与は僅かであり、1.0mm超では、歯面粗さが大きくなるためである。尚、投射速度を50〜60m/secのコンベンショナルショットと、50〜100m/secのハードショットの2段ショットピーニングにしても良い。

0028

ラッピング工程S4は、ラップ盤(図示略)を用いてラッピング加工を行う。このラッピング工程S4では、粒径が略揃った平均直径が14μm以下の微細砥粒を用いて、浸炭焼入れ後の第3中間ギヤの焼入れ歪を除去すると共に、第3中間ギヤのピニオンギヤ11とリングギヤ12との噛合わせを滑らかにするための精研磨加工を実行し、第4中間ギヤを形成する。平均直径が14μmを超える砥粒を用いる場合、この後の第2ショットピーニング工程S5にて筋目状の加工痕を除去することが難しく、それ故、別途、後工程で精研磨加工が必要になるためである。

0029

ラップ盤は、例えば、第3中間ギヤのピニオンギヤ11(ドライブピニオン)を回転自在に保持するピニオンギヤ保持手段と、回転軸が第3中間ギヤのピニオンギヤ11の回転軸に交差するように配置され且つリングギヤを回転自在に保持するリングギヤ保持手段と、基台上においてリングギヤ保持手段を前後上下右方向に移動可能なリングギヤ移動手段と、基台上において揺動中心回りにピニオンギヤ保持手段を水平方向に揺動可能なピニオンギヤ移動手段と、砥粒と加工液から構成されたラップ剤を第3中間ギヤの噛合い歯面に供給する供給手段と、制御手段等を備えている(何れも図示略)。ラップ盤の構成は公知であるため、詳細な説明を省略する。

0030

制御手段は、ピニオンギヤの回転速度(rpm)、伝達トルク揺動幅サイクル数サイクル時間等の加工条件に基づきラッピング加工を実行する。1サイクルは、ラップ盤の動作により第3中間ギヤの歯当りが歯幅全体を歯筋方向に往復移動オシレーション)して元の位置に戻るまでの移動行程であり、サイクル時間は、設定されたサイクル数を実行するために要する時間である。

0031

砥粒の大きさに関わらずラッピング工程S4の要する処理時間を略同等にするため、砥粒の直径をR(μm)、ピニオンギヤの回転速度N(rpm)としたとき、次の(1)式の関係が成立している。
33000≦R×N≦50000 …(1)
33000未満の場合、量産性を確保することができず、50000を超える場合、加工精度を確保することができないためである。本実施例では砥粒の平均直径が14μm、回転速度2400rpm、伝達トルクが1.0kgmに設定され、砥粒の平均直径が40μm、回転速度1200rpm、伝達トルクが1.0kgmを条件としたラッピング加工と略同等の加工量を確保している。

0032

第2ショットピーニング工程S5は、投射材として粒径が略揃った平均直径が160μm以下の鋼球粒子を用いて第4中間ギヤにショットピーニングを行い、ハイポイドギヤ10の完成品を得る。第4中間ギヤには、ラッピング工程S4の砥粒の圧着による歯筋方向に延びる筋目状の加工痕が形成されている。そこで、第2ショットピーニング工程S5では、ラッピング工程S4で生じた加工痕を除去して歯面粗さを改善すると共に、歯面上に潤滑油を保持可能なディンプルを形成し、且つその圧縮残留応力による歯面強度の向上を図ることを目的としている。

0033

平均直径が160μmを超える鋼球粒子を用いた場合、歯面粗さを0.8μmに抑えることが難しく、しかも、ショットピーニングにより形成されたディンプル内に潤滑油を保持する潤滑油保持機能を十分に発揮することができない。本実施例では、鋼球粒子の平均直径を160μmに設定し、第1ショットピーニング工程S3と同様に鋼球粒子の硬度は600〜800HV、投射速度は50〜100m/secであって好ましくは50〜60m/secに設定している。

0034

第2ショットピーニング工程S5における投射装置による投射材の投射軸は、ハイポイドギヤ10の正転時に噛合う歯面、即ちピニオンギヤ11の凹歯面及びリングギヤ12の凸歯面に対して効率的に投射できるように設定している。例えば図4(a),(b)に示すように、ピニオンギヤ11には、その円錐台形状の側面部である円錐面部11aに左捩じれ形状の複数の歯が形成されている。ここで、捩じれ方向は、歯筋に沿って小径側から大径側に向かうときに円錐面部の母線から離れる方向であり、歯筋が母線から時計回り(右回り)方向に離れる場合を右捩じれ、反時計回り(左回り方向)に離れる場合を左捩じれと言う。尚、ピニオンギヤが右捩じれ、リングギヤが左捩じれのハイポイドギヤであってもよい。

0035

ピニオンギヤ11に対しては、ピニオンギヤ11の側面視(円錐台の側面視)にて円錐台の母線GLp(側面視にて投影される円錐面部11aの輪郭線)に直交又は略直交するように投射装置20の投射軸Ppの角度を設定する。これと同時に、ピニオンギヤ11の軸心Apの方向から見て(円錐台の軸心方向視において)、投射軸Ppが直交するように設定した母線GLp側で、その母線GLpとピニオンギヤ11の軸心Ap(円錐台の軸心)を含む平面に平行に、且つその平面から、ピニオンギヤ11の歯の捩じれ方向と反対側にそのピニオンギヤ11の大径側半径Rp(円錐台の大径側半径)の半分(Rp/2)だけ離れた円錐面部11aの母線方向幅(円錐面部11aの幅)の中央CWpを通るように、投射軸Ppを設定する。この設定された投射軸Ppの延長線は、ピニオンギヤ11の軸心方向視にて、母線GLpとピニオンギヤ11の軸心Apを含む平面に直交する方向のピニオンギヤ11の大径側半径Rpの中央を通る。

0036

一方、図5(a),(b)に示すように、リングギヤ12には、その円錐台形状の側面部である円錐面部12aに右捩じれ形状の複数の歯が形成されている。このリングギヤ12に対しては、リングギヤ12の側面視(円錐台の側面視)にて円錐台の母線GLr(側面視にて投影された円錐面部12aの輪郭線)に直交又は略直交するように投射材の投射軸Prの角度を設定する。これと同時に、リングギヤ12の軸心Arから見て(円錐台の軸心方向視において)、投射軸Prが直交するように設定した母線GLr側で、その母線GLrとリングギヤ12の軸心Ar(円錐台の軸心)を含む平面に平行に、且つその平面から、リングギヤ12の歯の捩じれ方向にそのリングギヤ12の大径側半径Rr(円錐台の大径側半径)の半分(Rr/2)だけ離れた円錐面部12aの母線方向幅(円錐面部12aの幅)の中央CWrを通るように、投射軸Prを設定する。この設定された投射軸Prの延長線は、リングギヤ12の軸心方向視にて、母線GLrとリングギヤ12の軸心Arを含む平面に直交する方向のリングギヤ12の大径側半径Rrの中央を通る。

0037

このように夫々設定された投射軸Pp,Prに沿って投射材を夫々投射するときには、ピニオンギヤ11及びリングギヤ12をそれらの軸心Ap,Ar周りに夫々回転させながら投射する。このとき、投射距離が長くなるほど円錐状に広がる投射材の投射範囲に、ピニオンギヤ11の円錐面部11aの母線方向幅が収まるように投射距離Lpを設定し、リングギヤ12の円錐面部12aの母線方向幅が収まるように投射距離Lrを設定する。

0038

次に、上記ハイポイドギヤの製造方法の作用、効果について説明する。作用、効果の説明に当り、第1〜第3の検証を行った。

0039

第1の検証は、ラッピング工程S4で生じた筋目状の加工痕のショットピーニングによる除去について確認した。検証手順は、第3中間ギヤに#320、#500、及び#800の砥粒を用いて夫々ラッピング加工を行った3種類の第4中間ギヤに対して、粒径が異なる4種類(50μm,90μm,160μm,190μm)の鋼球粒子を用いて第2ショットピーニング工程S5を行い、筋目状の加工痕の除去確認を行った。第2ショットピーニング工程S5において、図6(a),(b)、図7(a),(b)のように、第4中間ギヤのピニオンギヤ11、リングギヤ12に対して、軸心Ap,Arに交差し且つ円錐台面の母線に直交する投射軸Pp1、Pr1に沿って、投射範囲内に円錐面部の幅が収まる投射距離且つ上記投射速度で鋼球粒子を夫々投射した。尚、#320は平均直径40μm、#500は平均直径25μm、及び#800は平均直径14μmの砥粒であり、砥粒径以外の処理条件は同じである。

0040

図8の検証結果に示すように、#320及び#500の砥粒を用いたラッピング加工を行った場合、第4中間ギヤに形成された加工痕が大きいため、何れの粒径の鋼球粒子であっても、加工痕を除去することは困難であった。一方、#800の砥粒を用いたラッピング加工を行った場合、平均直径50μm及び160μmの鋼球粒子を用いた第2ショットピーニング工程により#320及び#500の砥粒による加工痕よりも除去が容易であった。

0041

以上により、少なくとも、#800の平均直径14μmの砥粒を用いたラッピング加工を行った場合、平均直径が160μm以下の鋼球粒子を用いたショットピーニングによって筋目状の加工痕を除去可能であることが確認された。尚、製造公差等の生産性の観点から、平均直径160μmの鋼球粒子は、平均直径50μmの鋼球粒子よりも供給安定性が高い。

0042

第2の検証は、製造方法及び製造工程が異なる3種類のハイポイドギヤA〜Cを製造し、各々の噛合摩擦損失(%)を比較した。ハイポイドギヤAは、歯切り工程S1〜第1ショットピーニング工程S3まで本実施例と同じ加工がなされ、ラッピング工程S4で#320の砥粒(平均直径40μm)を使用し、第2ショットピーニング工程S5を省略してリューブライト処理工程を行った。ハイポイドギヤBは、歯切り工程S1〜ラッピング工程S4まで本実施例と同じ加工がなされ、第2ショットピーニング工程S5で平均直径が50μmの鋼球粒子を使用し、第4中間ギヤに対して図6(a),(b)、図7(a),(b)のように軸心Ap,Arに交差し且つ円錐台面の母線に直交する投射軸Pp1、Pr1に沿って、投射範囲内に円錐面部の幅が収まる投射距離且つ上記投射速度で鋼球粒子を夫々投射した。ハイポイドギヤCは、歯切り工程S1〜ラッピング工程S4まで本実施例と同じ加工がなされ、第2ショットピーニング工程S5で平均直径が160μmの鋼球粒子を使用し、第4中間ギヤに対して図6(a),(b)、図7(a),(b)のように軸心Ap,Arに交差し且つ円錐台面の母線に直交する投射軸Pp1、Pr1に沿って、投射範囲内に円錐面部の幅が収まる投射距離且つ上記投射速度で鋼球粒子を夫々投射した。この第2ショットピーニング工程S5では、第1の検証の結果から加工痕除去可能と見積もられた投射時間で鋼球粒子を投射した。

0043

図9に示す第2の検証の結果によれば、ハイポイドギヤAの歯面粗さが0.98μmであり、噛合摩擦損失が4.4%であった。このハイポイドギヤAには、筋目状の加工痕が確認された。ハイポイドギヤB,Cは、共に歯面粗さが0.8μm以下であり、噛合摩擦損失が夫々2.2%,3.4%であった。また、ハイポイドギヤB,Cには、共に筋目状の加工痕が確認されなかった。これにより、第2ショットピーニング工程S5の鋼球粒子の平均直径が160μm以下の場合、噛合摩擦損失が改善されることが確認された。しかも、平均直径が小さい程、噛合摩擦損失の改善効果が高いことが判明した。

0044

第3の検証は、歯切り工程S1〜ラッピング工程S4まで本実施例と同じ加工がなされた第4中間ギヤに対し、第2ショットピーニング工程S5の条件を変えて行った。具体的には供給安定性が高い平均直径160μmの鋼球粒子を用いて、射範囲内に円錐面部の幅が収まる投射距離且つ上記投射速度で、生産性の観点から第2の検証の投射時間よりも短く設定された投射時間で、投射軸の設定を条件1〜条件3にして投射し、歯面粗さ等を比較した。

0045

条件1は、図6(a),(b)、図7(a),(b)に示すように、第4中間ギヤに対して、軸心Ap,Arに交差し且つ円錐面部の母線に直交する投射軸Pp1,Pr1に沿って夫々投射した。条件2は、図10(a),(b)、図11(a),(b)に示すように、円錐面部の幅の中央で第4中間ギヤの正回転時に噛合う歯面、即ちピニオンギヤ11の凹歯面11b、リングギヤ12の凸歯面12bに直交するように設定した投射軸Pp2,Pr2に沿って夫々投射した。条件3は、図4(a),(b)、図5(a),(b)に示す投射軸Pp,Prに沿って夫々投射した本実施例の製造方法に相当する。尚、条件3は、条件1の投射軸の投射装置20を、姿勢を維持したまま円錐台の軸心に直交する平面に平行に平行移動させたものと言うことができる。また、条件3は、条件1の投射軸の投射装置20を、その投射軸と円錐面部の交点を中心に円錐台の軸心に直交する平面に平行に所定角度(30°〜45°の範囲内の角度)回転するように移動させたものと言うこともできる。

0046

図12に示す第3の検証の結果によれば、条件1〜3の何れも歯面粗さが0.8μm以下ではあるが、条件1ではラッピング工程S4の加工痕残り(ラップ加工痕残り)が確認され、条件2では、歯形崩れ偏摩耗)が確認された。一方、条件3では、ラップ加工痕残り及び歯形崩れは確認されなかった。

0047

第3の検証の結果を図13図15を参照して考察する。図中の破線で示す円は投射範囲、円の中央の十字は投射軸を表している。
条件1では、図13(a),(b)に示すように投射軸Pp1,Pr1から見たときに、ハイポイドギヤ10の噛合う歯面(ピニオンギヤ11の凹歯面11b及びリングギヤ12の凸歯面12b)に対して垂直に近い大きい角度で投射材が衝突する機会が投射範囲の左側部分に限られていることがラップ加工痕残りの原因と考えられる。

0048

条件2では、図14(a),(b)に示すように投射軸Pp2,Pr2から見たときに、ハイポイドギヤ10の噛合う歯面(ピニオンギヤ11の凹歯面11b及びリングギヤ12の凸歯面12b)に対して垂直に近い大きい角度で投射材が衝突する機会が多い。しかし、投射装置20に近い手前の歯に隠されてしまい投射材が衝突し難い部分ができてしまう。それ故、投射材が衝突する部分の加工が衝突し難い部分より進んで、結果的に噛合う歯面に偏摩耗が生じ、歯形が崩れたと考えられる。

0049

条件3では、図15(a),(b)のように投射軸Pp,Prから見たときに、投射範囲の大部分でハイポイドギヤ10の噛合う歯面(ピニオンギヤ11の凹歯面11b及びリングギヤ12の凸歯面12b)に対して垂直に近い大きい角度で投射材が衝突可能であり、その機会が条件1よりも多い。また、手前の歯に隠されて投射材が衝突し難い部分もない。それ故、ラップ加工痕残り及び歯形崩れがなかったと考えられる。

0050

以上のように、この製造方法によれば、第2ショットピーニング工程S5で、捩じれ形状の複数の歯を有するピニオンギヤ11とリングギヤ12の噛合う歯面(ピニオンギヤ11の凹歯面11b及びリングギヤ12の凸歯面12b)に効率的に投射材を衝突させてその表面平滑性を向上することができる。そして、表面平滑性の向上と形成されたディンプルの作用によってハイポイドギヤ10における機械抵抗が低減され、駆動力の伝達ロスが低減される。

0051

また、第2ショットピーニング工程S5で、ピニオンギヤ11及びリングギヤ12を夫々軸心周りに回転させて投射材を夫々投射することにより、全ての歯の噛合う歯面(ピニオンギヤ11の凹歯面11b及びリングギヤ12の凸歯面12b)に対して一様に投射材を投射することができ、効率的に表面平滑性の向上を図ることができる。

0052

ラッピング工程S4で平均の粒径が14μmの砥粒でピニオンギヤ11とリングギヤ12の噛合する歯面を研磨して、表面処理工程(熱処理工程S2と第1ショットピーニング工程S3)で生じた歯の形状歪を除去すると共に、噛合する歯面における歯面粗さを改善することができる。また、ラッピング工程S4で生じた筋目状の加工痕を直径が160μmの投射材を用いた第2ショットピーニング工程S5で除去して歯面粗さをさらに改善することができると共に、歯面上に潤滑油を保持可能なディンプルを形成し且つその圧縮残留応力による歯面強度の向上を図ることができる。

0053

ラッピング工程S4におけるピニオンギヤ11の回転速度を2400rpmとしたことによって、粒径が14μmの細かい砥粒であっても十分に研磨できる加工性と生産性を両立できる処理時間で、表面処理工程で生じた歯の形状歪を除去すると共に噛合する歯面における歯面粗さを改善することができる。

0054

上記の製造方法により製造されたハイポイドギヤが、車両の差動装置に組み込まれた場合には、車両の動力伝達損失を低減することができ、燃費改善を図ることができる。

実施例

0055

その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。

0056

10 :ハイポイドギヤ
11 :ピニオンギヤ
11a :円錐面部
11b :凹歯面
12 :リングギヤ
12a :円錐面部
12b :凸歯面
20 :投射装置
S1 :歯切り工程
S2 :熱処理工程
S3 :第1ショットピーニング工程
S4 :ラッピング工程
S5 :第2ショットピーニング工程(ショットピーニング工程)
Pp,Pr :投射軸
Rp,Rr :大径側半径
Ap,Ar :軸心
GLp,GLr :母線
Lp,Lr :投射距離

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