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技術 養子細胞療法のための改良型細胞培養方法

出願人 ウィルソンウォルフマニュファクチャリングコーポレイション
発明者 ジョン・アール・ウィルソン
出願日 2020年8月7日 (1年0ヶ月経過) 出願番号 2020-134448
公開日 2020年10月29日 (10ヶ月経過) 公開番号 2020-174685
状態 未査定
技術分野 微生物、その培養処理 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 無撹拌状態 貯蔵場 供給頻度 対抗手段 気体透過性材料 負荷物 例示的実施 試験器具
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年10月29日)のものです。
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図面 (20)

課題

ドナーレシピエントとの間でHLA適合があるか否かに関係なく使用可能な治療細胞生産する。

解決手段

抗原でドナーPBMC又はドナー臍帯血刺激して、抗原に対する天然抗原特異性を有するT細胞成長活性化させ、抗原に対する抗原特異性を有する天然抗原受容体からなる抗原特異的T細胞群を得る。そして、抗原特異的T細胞群を、天然抗原受容体の抗原特異性とは無関係な治療属性を有するよう改変する。

概要

背景

細胞培養は、細胞療法費用及び複雑性の主要な要因である。現在の方法では、細胞培養プロセスは時間がかかり高価である。典型的には、多数の細胞生産するために、in vitroでの培養プロセスが段階的に進行するように行われる。最も早い段階で、目的の細胞は、細胞培養器具内に置かれる細胞集団中で比較的小さな個体群となっている。この段階では、細胞集団は、典型的には目的の細胞の供給源末梢血単核細胞など)、目的細胞成長刺激するフィーダー細胞、及び/又は抗原提示が含まれる。細胞が存在する培地をおおむね無撹拌状態とすることのできる培養器具及び方法は、細胞が比較的無撹拌のままであるので好ましい。このような器具は、標準的な組織培養プレートフラスコ及びバッグを含む。培養は段階的に進行し、一般に、細胞集団にグルコースなどの成長基質の培地を枯渇させ、使用済みの培地を取り除き、使用済みの培地を新鮮培地と交換し、所望量の目的の細胞が得られるまでプロセスを繰り返すことからなる。多くの場合、目的細胞群の個体数が増大して更なる生育面が必要となると、新たな生産段階を開始するために、細胞集団を他の器具へ移す。しかしながら、従来の方法では、目的細胞群の成長速度は、生育面上の細胞群の個体数が増大するにつれて遅くなる。最終的に、目的細胞のかなり大きな個体群を生産するには非常に時間がかかり、かつ、複雑であるという結果になる。

エプスタイン・バーウイルスに対する抗原特異性を有するTリンパ球EBV−CTL)を生成するための最先端生産方法は、生産の複雑さを示す一例である。EBV−CTLの最適な増殖のための従来の方法は、標準24ウェル組織培養プレートを使用する。各ウェルの細胞が載置される表面積は2cm2であり、その培地容量気体移動の必要性に起因して1ml/cm2に制限されている。培養プロセスは、照射された抗原提示細胞系統の存在下にPBMC(末梢血単核細胞)からなる細胞集団を入れることによって開始するが、リンパ芽球様細胞系統(LCL)であってもよく、約40:1の表面密度(すなわち生育面1cm2あたりの細胞数)比で、PBMC1×106個/cm2及び照射抗原提示細胞2.5×104個/cm2である。これによって細胞集団中のEBV−CTL群の個体数の増殖が促進する。9日後、EBV−CTLは、照射抗原提示LCLの存在下、4:1の新たな表面密度比で、EBV−CTL約2.5×105個/cm2の最小表面密度で再び選択的に増殖する。酸素が細胞に達することができるように、培地容量は、生育面面積の最大比1ml/cm2に制限されるが、これはグルコースなどの成長溶質を制限する。結果として、達成可能な最大表面密度は、EBV−CTL約2×106個/cm2である。よって、1週当たりの最大細胞増殖は約8倍(すなわち、EBV−CTL2×106個/cm2をEBV−CTL2.5×105個/cm2で割る)以下である。EBV−CTLの継続的な増殖には、抗原再刺激を有する追加の24ウェルプレートにEBV−CTLを毎週移動させ、24ウェルプレートの各ウェル内の培地及び成長因子を週に2回交換することが必要である。従来の方法によると、EBV−CTL表面密度がウェル1つ当たりの可能な最大量に近づくにつれて、EBV−CTL群の増殖速度が遅くなるため、細胞注入、並び無菌性アッセイ同一性アッセイ及び効力アッセイなどの品質管理手段に十分な量のEBV−CTLを得るには、これらの操作をしばしば4〜8週間もの長い生産期間にわたって繰り返さなければならない。

EBV−CTLの培養は、細胞療法に固有の複雑な細胞生産プロセスの一例にすぎない。生産時間を短縮し、同時に生産コスト及び複雑さを低減し得る細胞療法のための細胞を培養する、より実用的な方法が必要とされる。

我々は、生産の全体を通して個体群の成長速度を増大し、また、そうすることによって細胞生産に必要な複雑さ及び時間を低減する新規方法を生み出した。

養子細胞療法において、天然抗原特異性を有するT細胞(すなわち、特定のヒト白血球抗原HLA対立遺伝子との関連において提示される際、特定の標的抗原由来の特定のペプチドに対するT細胞)は、ウイルス感染及び標的腫瘍治療するために、自己セッティング及び部分的にHLA適合したセッティングにおいて投与される。これらの場合はいずれも、(i)天然のT細胞受容体が目的の抗原を認識した、及び(ii)標的化ペプチドを提示するのに必要なHLA対立遺伝子発現したレシピエントにT細胞が投与されたという事実から治療的利点が得られた。

同種造血幹細胞移植(HSCT)のセッティングにおける最初の養子T細胞移送プロトコールは、ドナー末梢血が、HSCTレシピエントにおける抗腫瘍及び/又は抗ウイルス活性を調節し得るT細胞を含有するという前提に基づくものであった。従って、抗腫瘍免疫を付与し、かつ、より少ない程度で抗ウイルス免疫を付与するべく、ドナーリンパ球注入(DLI)が広範に使用されている。DLIは、腫瘍特異的な記憶T細胞並びに広範なウイルスを含有するべきである。しかしながら、アデノウイルス及びEBVに感染した個体群の治療に効果的である一方で、この療法の効能は、多くの一般的な急性ウイルス(ロタウイルス(RSV)及びパラインフルエンザなど)に特異的な低頻度のT細胞及び比較的高頻度同種反応性T細胞によって制限される。ウイルス特異的T細胞に対する同種反応性T細胞の比率が高いことは、移植片対宿主病(GVDH)のより高い発生率が、許容可能なDLI用量を制限し、受容されたウイルス特異的T細胞の用量を制限する、半合致移植のレシピエントにおいて特に問題である。

利点を保つと共にDLIの安全性を向上させるために、レシピエント特異的な同種反応性T細胞の選択的な不活性化又は除去のための方策が評価され、このような方策としては、アネルギー誘導、レシピエントに投与される同種反応性T細胞数を最小にする選択的同種枯渇、及び標的から外れた同種反応性T細胞を生体内破壊するための自殺遺伝子の使用が挙げられる。

HSCT後の特定のウイルス感染を予防・治療するための代替方策は、抗ウイルス活性を有する生体外で増殖されたT細胞の養子細胞移入である。ウイルス反応性T細胞の特定の増殖は、同種反応性T細胞を増大させることなく注入可能なウイルス特異的T細胞の数を増大させるという利点を有する。特定の抗原に対する反応性を有する富化された抗原特異的T細胞の注入は、潜在的にGVHDなどの望ましくないオフターゲット効果を低減しつつ治療有効性を増大させ、この治療様式は、血液悪性腫瘍並びに黒色腫などの固形腫瘍及びホジキンリンパ腫及び鼻咽頭がんなどのEBV関連悪性腫瘍の治療に対して効果的かつ安全であることが証明されている。

注目すべきは、全ての療法では、天然T細胞受容体(TCR)を介した主要組織適合遺伝子複合体MHC分子との関連において、抗原を認識するために天然T細胞受容体の特異性を使用することが必要とされる。故に、治療的利点自体が、HLA適合したT細胞又は部分的に適合したT細胞の使用/投与に依存する。例えば、黒色腫細胞を標的とするために、GP100(がん細胞に発現する腫瘍関連抗原)に対するHLAハプロタイプ(a)を発現するドナー由来の抗原特異的な黒色腫指向性T細胞を増殖することができる。この状況において、治療的利点は、標的抗原を有する天然T細胞受容体の特異的相互作用によってもたらされる。しかしながら、この相互作用は、適合可能なHLAのセッティングにおいて(つまり、自己セッティングにおいて、又はHLAも発現する別の個人との関連において)のみ生じ得る。この手法は、様々なHLAハプロタイプを有する系統を含む細胞バンクの生成によって複数の患者を治療するために拡張することができるだけで、ここでは、患者は最も適するT細胞系統に適合される。

要するに、現在の養子細胞療法の全適用では、その治療目的を付与するT細胞の治療属性は、ドナーT細胞の天然抗原特異性である。この固有の特徴は、ドナーとレシピエントとの少なくとも部分的なHLA適合を必要とし、同種セッティングにおいて、GVHDなどのオフターゲット効果の可能性を生み出す。他のものは、複雑な遺伝子操作によってドナーT細胞抗原受容体を完全に排除すること、及びキメラ抗原受容体担持するようにT細胞の遺伝子再操作を行うことにより、T細胞の固有の認識能力を全て排除することを提案している。しかしながら、これはT細胞生産方法を更に複雑にし、このことは既に養子細胞療法の主要な問題の1つとなっている。

メインストリーム社会におけるより広範な用途を可能にするために、既存の問題を克服する養子細胞療法に対する全く新しい手法が必要とされている。我々は、ドナーT細胞の抗原特異性を損なわずに、しかし、ドナーT細胞の天然抗原特異性をその治療目的と無関係にする治療属性でドナーT細胞を改変する新たなパラダイムを開示する。本質的に、このパラダイムシフトは、ドナーとレシピエントとの間でHLA適合があるか否かに関係なく、これまでには想定されていなかった方法でT細胞の治療用途への扉を開けるものである。

概要

ドナーとレシピエントとの間でHLA適合があるか否かに関係なく使用可能な治療細胞を生産する。抗原でドナーPBMC又はドナー臍帯血を刺激して、抗原に対する天然抗原特異性を有するT細胞の成長を活性化させ、抗原に対する抗原特異性を有する天然抗原受容体からなる抗原特異的T細胞群を得る。そして、抗原特異的T細胞群を、天然抗原受容体の抗原特異性とは無関係な治療属性を有するよう改変する。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

養子細胞療法用の遺伝子改変されたT細胞であって、前記T細胞は、真菌由来抗原又はウイルス由来の抗原を認識する天然T細胞受容体を有するヒトT細胞由来であり、前記T細胞は、前記T細胞のHLA適合しないHLAを有する患者注入される。

技術分野

0001

関連出願
本出願は、2009年12月8日に出願された「養子細胞療法のための改良型細胞培養方法」という名称の特許文献1の利点を請求する2010年12月8日に出願された「養子細胞療法のための改良型細胞培養方法」という名称の特許文献2(以下、「親出願」)(その全体を参照により本出願に援用する)の一部継続出願である。

0002

本発明は概して細胞培養方法に関するものであり、より詳細には細胞療法のための細胞培養に関するものである。更に、本発明は、養子細胞療法で使用するための治療属性を有するT細胞生産に関するものである。

背景技術

0003

細胞培養は、細胞療法の費用及び複雑性の主要な要因である。現在の方法では、細胞培養プロセスは時間がかかり高価である。典型的には、多数の細胞を生産するために、in vitroでの培養プロセスが段階的に進行するように行われる。最も早い段階で、目的の細胞は、細胞培養器具内に置かれる細胞集団中で比較的小さな個体群となっている。この段階では、細胞集団は、典型的には目的の細胞の供給源末梢血単核細胞など)、目的細胞成長刺激するフィーダー細胞、及び/又は抗原提示が含まれる。細胞が存在する培地をおおむね無撹拌状態とすることのできる培養器具及び方法は、細胞が比較的無撹拌のままであるので好ましい。このような器具は、標準的な組織培養プレートフラスコ及びバッグを含む。培養は段階的に進行し、一般に、細胞集団にグルコースなどの成長基質の培地を枯渇させ、使用済みの培地を取り除き、使用済みの培地を新鮮培地と交換し、所望量の目的の細胞が得られるまでプロセスを繰り返すことからなる。多くの場合、目的細胞群の個体数が増大して更なる生育面が必要となると、新たな生産段階を開始するために、細胞集団を他の器具へ移す。しかしながら、従来の方法では、目的細胞群の成長速度は、生育面上の細胞群の個体数が増大するにつれて遅くなる。最終的に、目的細胞のかなり大きな個体群を生産するには非常に時間がかかり、かつ、複雑であるという結果になる。

0004

エプスタイン・バーウイルスに対する抗原特異性を有するTリンパ球EBV−CTL)を生成するための最先端生産方法は、生産の複雑さを示す一例である。EBV−CTLの最適な増殖のための従来の方法は、標準24ウェル組織培養プレートを使用する。各ウェルの細胞が載置される表面積は2cm2であり、その培地容量気体移動の必要性に起因して1ml/cm2に制限されている。培養プロセスは、照射された抗原提示細胞系統の存在下にPBMC(末梢血単核細胞)からなる細胞集団を入れることによって開始するが、リンパ芽球様細胞系統(LCL)であってもよく、約40:1の表面密度(すなわち生育面1cm2あたりの細胞数)比で、PBMC1×106個/cm2及び照射抗原提示細胞2.5×104個/cm2である。これによって細胞集団中のEBV−CTL群の個体数の増殖が促進する。9日後、EBV−CTLは、照射抗原提示LCLの存在下、4:1の新たな表面密度比で、EBV−CTL約2.5×105個/cm2の最小表面密度で再び選択的に増殖する。酸素が細胞に達することができるように、培地容量は、生育面面積の最大比1ml/cm2に制限されるが、これはグルコースなどの成長溶質を制限する。結果として、達成可能な最大表面密度は、EBV−CTL約2×106個/cm2である。よって、1週当たりの最大細胞増殖は約8倍(すなわち、EBV−CTL2×106個/cm2をEBV−CTL2.5×105個/cm2で割る)以下である。EBV−CTLの継続的な増殖には、抗原再刺激を有する追加の24ウェルプレートにEBV−CTLを毎週移動させ、24ウェルプレートの各ウェル内の培地及び成長因子を週に2回交換することが必要である。従来の方法によると、EBV−CTL表面密度がウェル1つ当たりの可能な最大量に近づくにつれて、EBV−CTL群の増殖速度が遅くなるため、細胞注入、並び無菌性アッセイ同一性アッセイ及び効力アッセイなどの品質管理手段に十分な量のEBV−CTLを得るには、これらの操作をしばしば4〜8週間もの長い生産期間にわたって繰り返さなければならない。

0005

EBV−CTLの培養は、細胞療法に固有の複雑な細胞生産プロセスの一例にすぎない。生産時間を短縮し、同時に生産コスト及び複雑さを低減し得る細胞療法のための細胞を培養する、より実用的な方法が必要とされる。

0006

我々は、生産の全体を通して個体群の成長速度を増大し、また、そうすることによって細胞生産に必要な複雑さ及び時間を低減する新規方法を生み出した。

0007

養子細胞療法において、天然抗原特異性を有するT細胞(すなわち、特定のヒト白血球抗原HLA対立遺伝子との関連において提示される際、特定の標的抗原由来の特定のペプチドに対するT細胞)は、ウイルス感染及び標的腫瘍を治療するために、自己セッティング及び部分的にHLA適合したセッティングにおいて投与される。これらの場合はいずれも、(i)天然のT細胞受容体が目的の抗原を認識した、及び(ii)標的化ペプチドを提示するのに必要なHLA対立遺伝子発現したレシピエントにT細胞が投与されたという事実から治療的利点が得られた。

0008

同種造血幹細胞移植(HSCT)のセッティングにおける最初の養子T細胞移送プロトコールは、ドナー末梢血が、HSCTレシピエントにおける抗腫瘍及び/又は抗ウイルス活性を調節し得るT細胞を含有するという前提に基づくものであった。従って、抗腫瘍免疫を付与し、かつ、より少ない程度で抗ウイルス免疫を付与するべく、ドナーリンパ球注入(DLI)が広範に使用されている。DLIは、腫瘍特異的な記憶T細胞並びに広範なウイルスを含有するべきである。しかしながら、アデノウイルス及びEBVに感染した個体群の治療に効果的である一方で、この療法の効能は、多くの一般的な急性ウイルス(ロタウイルス(RSV)及びパラインフルエンザなど)に特異的な低頻度のT細胞及び比較的高頻度同種反応性T細胞によって制限される。ウイルス特異的T細胞に対する同種反応性T細胞の比率が高いことは、移植片対宿主病(GVDH)のより高い発生率が、許容可能なDLI用量を制限し、受容されたウイルス特異的T細胞の用量を制限する、半合致移植のレシピエントにおいて特に問題である。

0009

利点を保つと共にDLIの安全性を向上させるために、レシピエント特異的な同種反応性T細胞の選択的な不活性化又は除去のための方策が評価され、このような方策としては、アネルギー誘導、レシピエントに投与される同種反応性T細胞数を最小にする選択的同種枯渇、及び標的から外れた同種反応性T細胞を生体内破壊するための自殺遺伝子の使用が挙げられる。

0010

HSCT後の特定のウイルス感染を予防・治療するための代替方策は、抗ウイルス活性を有する生体外で増殖されたT細胞の養子細胞移入である。ウイルス反応性T細胞の特定の増殖は、同種反応性T細胞を増大させることなく注入可能なウイルス特異的T細胞の数を増大させるという利点を有する。特定の抗原に対する反応性を有する富化された抗原特異的T細胞の注入は、潜在的にGVHDなどの望ましくないオフターゲット効果を低減しつつ治療有効性を増大させ、この治療様式は、血液悪性腫瘍並びに黒色腫などの固形腫瘍及びホジキンリンパ腫及び鼻咽頭がんなどのEBV関連悪性腫瘍の治療に対して効果的かつ安全であることが証明されている。

0011

注目すべきは、全ての療法では、天然T細胞受容体(TCR)を介した主要組織適合遺伝子複合体MHC分子との関連において、抗原を認識するために天然T細胞受容体の特異性を使用することが必要とされる。故に、治療的利点自体が、HLA適合したT細胞又は部分的に適合したT細胞の使用/投与に依存する。例えば、黒色腫細胞を標的とするために、GP100(がん細胞に発現する腫瘍関連抗原)に対するHLAハプロタイプ(a)を発現するドナー由来の抗原特異的な黒色腫指向性T細胞を増殖することができる。この状況において、治療的利点は、標的抗原を有する天然T細胞受容体の特異的相互作用によってもたらされる。しかしながら、この相互作用は、適合可能なHLAのセッティングにおいて(つまり、自己セッティングにおいて、又はHLAも発現する別の個人との関連において)のみ生じ得る。この手法は、様々なHLAハプロタイプを有する系統を含む細胞バンクの生成によって複数の患者を治療するために拡張することができるだけで、ここでは、患者は最も適するT細胞系統に適合される。

0012

要するに、現在の養子細胞療法の全適用では、その治療目的を付与するT細胞の治療属性は、ドナーT細胞の天然抗原特異性である。この固有の特徴は、ドナーとレシピエントとの少なくとも部分的なHLA適合を必要とし、同種セッティングにおいて、GVHDなどのオフターゲット効果の可能性を生み出す。他のものは、複雑な遺伝子操作によってドナーT細胞抗原受容体を完全に排除すること、及びキメラ抗原受容体担持するようにT細胞の遺伝子再操作を行うことにより、T細胞の固有の認識能力を全て排除することを提案している。しかしながら、これはT細胞生産方法を更に複雑にし、このことは既に養子細胞療法の主要な問題の1つとなっている。

0013

メインストリーム社会におけるより広範な用途を可能にするために、既存の問題を克服する養子細胞療法に対する全く新しい手法が必要とされている。我々は、ドナーT細胞の抗原特異性を損なわずに、しかし、ドナーT細胞の天然抗原特異性をその治療目的と無関係にする治療属性でドナーT細胞を改変する新たなパラダイムを開示する。本質的に、このパラダイムシフトは、ドナーとレシピエントとの間でHLA適合があるか否かに関係なく、これまでには想定されていなかった方法でT細胞の治療用途への扉を開けるものである。

先行技術

0014

米国仮出願第61/267761号
米国特許出願第12/963597号

0015

生産プロセス全体を通して従来とは異なる条件を周期的に再確立することを可能にする段階的な生産プロセスを用いることによって、現在可能であるよりも短時間でより経済的な様式で細胞療法のための細胞の生産が可能であることが発見された。従来とは異なる条件とは、低減された目的細胞の表面密度(つまり細胞数/cm2)、抗原提示細胞及び/又はフィーダー細胞に対する目的細胞の新規な比、及び/又は培地容量:表面積比が増大された気体透過性材料からなる生育面の使用が挙げられる。

0016

本発明の実施形態は、細胞療法用途のための細胞を培養する改良型方法に関する。これらの実施形態は、生産プロセス全体にわたって目的細胞の個体群が従来方法と比べて高い成長速度を維持することを可能にする多様な新規方法の使用により、所望の数の目的細胞を生成するのに必要な時間、コスト及び複雑さを低減する方法を包含する。

0017

本発明の一態様は、培養プロセスを段階的に行い、目的細胞群の成長速度が現在可能であるものを超えるようにする1以上の段階の開始時に条件を確立することに依拠する。少なくとも1つの培養段階、好ましくはほぼ全ての培養段階において、従来とは異なる低い表面密度で、目的細胞に対する抗原提示細胞(及び/又はフィーダー細胞)の従来とは異なる比で、非気体透過性生育面又は気体透過性生育面のいずれかの上に目的細胞を静置することが含まれる初期条件が確立される。本発明の本態様の新規実施形態を使用することにより、目的細胞群は、従来方法が許容するよりも短い時間でより多くの回数倍増を受けるので、生産時間が短縮される。

0018

本発明の別の態様は、培養プロセスを段階的に行い、目的細胞群の成長速度が現在可能であるものを超えるような1以上の段階の開始時に条件を確立することに依拠する。少なくとも1つの培養段階、好ましくはほぼ全ての培養段階において、従来とは異なる高い培地容量:生育面面積比で、気体透過性材料からなる生育面上に目的細胞を静置することが含まれる条件が確立される。本発明の本態様の新規実施形態を使用することにより、目的細胞群は、従来方法が許容するよりも短い時間でより多くの回数の倍増を受けるので、生産時間が短縮される。

0019

本発明の別の態様は、培養プロセスを段階的に行い、目的細胞群の成長速度が現在可能であるものを超えるような各段階の条件を確立することに依拠する。少なくとも1つの培養段階、好ましくはほぼ全ての培養段階において、従来とは異なる低い表面密度(つまり細胞数/cm2)で、目的細胞に対する抗原提示細胞(及び/又はフィーダー細胞)の従来とは異なる比で、従来とは異なる高い培地容量:生育面面積比で、気体透過性材料からなる生育面上に目的細胞を静置することが含まれる初期条件が確立される。本発明の本態様の新規実施形態を使用することにより、目的細胞群は、従来方法が許容するよりも短い時間でより多くの回数の倍増を受けるので、生産時間が短縮される。

0020

本発明の実施形態において、移植片対宿主病(GVHD)にレシピエントを曝さないが、レシピエントの利益になる治療目的を有する治療属性を備えた同種Tビヒクルが作成される。

0021

本発明の一実施形態において、抗原でドナーPBMC又はドナー臍帯血を刺激して、1又は複数の抗原に対する天然抗原特異性を有するT細胞の成長を活性化することを含むプロセスによって作成されるTビヒクルを得ることによって治療が開始される。そうすることにより、それらの成長を刺激するために使用された1又は複数の抗原に対する抗原特異性を有する天然抗原受容体からなる抗原特異的T細胞群が生産される。抗原特異的T細胞群は、天然抗原受容体を包含せずに、天然抗原受容体の抗原特異性とは無関係な治療目的を有する少なくとも1つの治療属性を包含することにより、Tビヒクルの個体群を作成するように改変される。次いで、レシピエントの細胞がTビヒクルの1又は複数の天然抗原受容体により認識された抗原を提示するか否かに関係なく、及び/又はレシピエントの細胞がTビヒクルの1又は複数の天然抗原受容体により認識された抗原を提示しない場合に、Tビヒクルから治療的利点を引き出すことができるレシピエントにTビヒクルが送達される。

0022

本発明の別の実施形態において、抗原でドナーPBMC又はドナー臍帯血を刺激して、1又は複数の抗原に対する天然抗原特異性を有するT細胞の成長を活性化することを含むプロセスによって作成されるTビヒクルを得ることによって治療が開始される。そうすることにより、それらの成長を刺激するために使用された1又は複数の抗原に対する抗原特異性を有する天然抗原受容体からなる抗原特異的T細胞群が生産される。抗原特異的T細胞群は、天然抗原受容体を包含せずに、天然抗原受容体の抗原特異性とは無関係な治療目的を有する少なくとも1つの治療属性を包含することにより、Tビヒクルの個体群を作成するように改変される。次いでTビヒクルから治療的利点を引き出すことができ、Tビヒクルに対するHLA適合を持たないレシピエントにTビヒクルが送達される。

0023

本発明の多様な実施形態において、Tビヒクルは、免疫療法アジュバントとして投与される組換えタンパク質負荷されるように改変され、がんの標的療法用化学療法剤の治療属性で改変され、抗菌剤の治療属性で改変され、腫瘍特異性を細胞に与えるトランスジェニック分子を発現するという治療属性で改変され、自己免疫疾患を治療するための組換えタンパク質が負荷される又は当該組換えタンパク質で遺伝子操作されるという治療属性で改変され、生体内画像化のために負荷される及び/又は遺伝子操作されるという治療属性で改変される。

0024

本発明の別の実施形態において、目的の抗原認識を有する抗原特異的T細胞を生産する方法は、PBMC又は臍帯血を細胞培養器具内に入れ、細胞培養器具内に2以上の抗原を添加して、2以上の抗原特異的T細胞群の成長を活性化し(各個体群は抗原の1つを認識することができる)、抗原特異的T細胞が個体数の増殖を開始するための期間を許容し、少なくとも1つの抗原特異的T細胞群の存在及び/又は量を決定するべく培養物を評価し、いずれのT細胞群が継続増殖に適するのかを決定し、好適なT細胞群によって認識される抗原のみで培養物を再刺激することによって達成される。

0025

本発明の別の実施形態において、目的の抗原認識を有する抗原特異的T細胞を生産する方法は、PBMC又は臍帯血を細胞培養器具内に入れ、最初に細胞培養器具内に2以上の抗原を添加して、2以上の抗原特異的T細胞群の成長を活性化し(各群は抗原の1つを認識することができる)、抗原特異的T細胞が個体数の増殖を開始するための期間を許容し、2つ以上の器具内に培養物を分離し、初期抗原のうち1つだけを各器具内に添加し、どの器具が継続増殖に適する抗原特異的T細胞群を含有しているのかを判断し、継続増殖に適する抗原特異的T細胞群を含まない器具における培養を終了することによって達成される。

0026

本発明の多様な実施形態において、正常なヒト細胞上に存在せず、かつ、正常な哺乳動物細胞上にも存在しない抗原の単一エピトープのみを認識させることを可能にする天然抗原特異性を有するドナーT細胞が生産される。

0027

本発明は、添付図面と組み合わせて本発明の多様な実施形態に関する以下の詳細な説明を考慮すればより完全に理解される。

図面の簡単な説明

0028

実施例1における抗原特異的T細胞群が、最初の7日間にわたり、初期刺激の後に少なくとも7回の細胞倍増を受けることを示す。
実施例1についての四量体分析によって測定された、時間の経過につれて細胞集団中のT細胞群が増殖する大きさを実証するデータを示す。
実施例1において、23日の期間にわたり抗原特異的T細胞群の増殖速度が減少することを示す。
実施例1において、抗原特異的T細胞の予測される増殖と観察された増殖倍率との間の相違を例示する表である。
実施例2の刺激後の抗原特異的T細胞の存在を示す。
実施例2において、抗原特異的T細胞:抗原提示細胞の比を4:1に維持しながら、表面密度が1×l06/cm2から3.1×104/cm2まで減少するときの抗原特異的T細胞群の増殖を示す。
実施例2において、一定数の抗原提示細胞の存在下で、表面密度が1×106/cm2から3.1×104/cm2まで減少するときの抗原特異的T細胞群の増殖を示す。
図3に記載される研究を継続する際に得られた結果の例を示し、目的の細胞が他の細胞のサポートを必要とする際に、目的細胞がフィーダー細胞及び/又は抗原提示細胞の適切な供給の存在下にある限り、従来とは異なって低い目的細胞の表面密度で個体数の増殖を開始できることをさらに実証する。
3種の異なる細胞表面密度(CTL数/cm2)で培養を開始することによって、目的の細胞の個体数増殖の大きさを繰り返す能力を実証するヒストグラムを示す。
データを得るために使用した気体透過性試験器具の横断面図を示す。
本発明に従って生産された抗原特異的T細胞の成長曲線を、実施例5で行なったような従来の方法と比較して示す。
実施例5において、フローサイトメトリー前方散乱側方散乱分析によって測定したとき、細胞生存率は、本発明に従って生産された抗原特異的T細胞における方が従来の方法と比較して有意に高かったことを示す。
実施例5において、アネキシン−PI7AADによって測定したとき、細胞生存率が、本発明に従って生産された抗原特異的T細胞における方が従来の方法と比較して有意に高かったことを示す。
実施例5において、本発明の新規の方法において生産された細胞の優位な増殖が、毎日のCFS標識細胞のフローサイトメトリー分析によって測定されたとき、従来の方法を使用して培養された細胞と同じ細胞特異的増殖速度を示しており、これにより、細胞増殖速度の増加が細胞死の減少に起因したことを確認したことを示す。
培地を交換する必要のない従来の方法において可能であった範囲を超えて、EVB−CTLがどのように増殖することができたかを示す。
BERをQ−PCRによって評価したとき、実施例6の培養条件が最終細胞産物をどのように改変しなかったかを示す。
B細胞マーカーであるCD20をQ−PCRによって評価したとき、実施例6の培養条件が最終細胞産物をどのように改変しなかったかを示す。
目的の細胞及び抗原提示細胞の表面密度の累積が非常に低い(ここでは、AL−CTL細胞及びLCL細胞を組み合わせて、細胞表面密度30000個/cm2の細胞集団を作成している)ことによって、AL−CTL群が成長を開始することができなかったことを実験により実証した例示的実施例を示す。
細胞を培養する新規の2つの方法が、23日の期間にわたって、従来の方法より多くの細胞をどのように生産するかを示す実施例8のデータを提示する。
実施例8における試験器具の中で培養された細胞の写真を示す。
実施例8において、2つの新規の培養方法及び従来の方法が全て同じ表現型を有する細胞を生産することを示す。
実施例8で、LMP1、LMP2、BZLF1由来のEBVペプチドエピトープ及びEBVのEBNA1で刺激され、HLA−A2−LMP2ペプチド五量体染色法で染色されたT細胞がペプチド特異的T細胞と同様の発生頻度を示した代表的な培養を示す。
51Cr放出アッセイによって評価したとき、細胞が細胞溶解活性及び細胞特異性を維持し、自己EBV−LCLを死滅させたが、HLA不適合EBV−LCLの死滅は低かったことを実施例8の新規の方法及び従来の方法に関して示す。
本発明の一態様を使用した目的の細胞型の個体群の増殖と、従来のシナリオに基づく生育面上の目的細胞群の増殖とを比較したグラフ表示を示す。
気体透過性材料を含む生育面、及び、1又は2ml/cm2を超える、従来と異なって高い培地容量:生育面面積比を利用することにより得ることができる利点の一例を示す。
完了時の細胞表面密度が従来の表面密度より極めて大きい、本発明の一実施形態下における目的細胞型群の増殖と従来のシナリオに基づく生育面上の目的細胞群の増殖の新規の方法を比較したグラフ表示を示す。
従来の方法を超える別のさらなる利点を提供する細胞生産の別の新規な方法を示す。
新規方法の力を実証するべく図14に示した各生産方法の比較を示し、十分に効率を獲得するために、多様な段階で生産プロトコールを調節することが有用である理由を示す。
生産が進むにつれて効率を獲得するために、新規な方法では生産プロトコールをどのように調節することができるのかの一例を示す。
Tビヒクルが不適合同種ドナー由来の細胞を認識できないことを実証する試験結果を示す。
フロー分析によって測定されるとき、CD34Δ−ILサイトカイン発現の治療属性を有するTビヒクルを作成するようにドナーT細胞を改変可能であることを示す試験結果を示す。
IL7サイトカインの全身送達により、マウス腎臓では腫瘍部位より多くのサイトカインが検出されたことを示す試験結果を示す。
IL7サイトカインのTビヒクル送達により、他の臓器と比べてマウスの腫瘍部位でのサイトカイン濃度が高いことを示す試験結果を示し、かつ、Tビヒクル投与後から少なくとも2週間、どのようにサイトカイン生産が腫瘍で持続されたかを示す。
フロー分析により測定されるとき、CAR−PSCAの治療属性を有するTビヒクルを作成するようにドナーT細胞を改変可能であることを示す試験結果を示す。
CAR−PSCAの治療属性を有するTビヒクルが、腫瘍細胞を全滅させることができることを示す試験結果を示す。
IL4を結合することができる受容体を含むTビヒクルが、IL4サイトカインを発現する腫瘍細胞に近接していることを示す。
どのように、TビヒクルにIL4サイトカインが結合され、腫瘍細胞を保護するIL4サイトカインの量が大きく低減され得るかを示す。
細胞外組換えサイトイン受容体IL4R/7を発現するという治療属性を有するTビヒクルが、IL4サイトカインを枯渇させることができることを実証する試験結果を示す。
化学療法剤が負荷されたTビヒクルが、どのように炎症部位へ向かって移動するのかを示す。
レシピエントの免疫系が、どのように腫瘍細胞の部位に配置されたTビヒクルを標的とするかを示す。
レシピエントの免疫系による攻撃下で、Tビヒクルが、どのように腫瘍細胞の部位で負荷物(この場合には、化学療法剤)を放出するのかを示す。

実施例

0029

定義
抗原提示細胞(APC):特定の抗原に応答するように目的細胞を惹起するために作用する細胞。
CTL:細胞傷害性T細胞
目的細胞:生産プロセスにおいて量を増やすことを目標とする特異的な型の細胞。一般に、目的細胞は非接着性であり、例としては制御性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー細胞(NK)、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、初代Tリンパ球及び多様な抗原特異的細胞、及び他の多くのもの(これらはすべて、機能、生体内での残留性又は安全性を改良するように遺伝子改変することもできる)が挙げられる。臨床的使用に必要な細胞は、フィーダー細胞及び/又は抗原提示細胞を用いて増殖させることができるが、これらの細胞としては、PBMC、PHAblast、OKT3 T、B blast、LCL及びK562(天然又は発現するように遺伝子改変されており、抗原及び/又はエピトープ、並びに41BBL、OX40、CD80、CD86、HLA及びその他多くのものなどの共刺激分子)を挙げることができ、これらはペプチド又は他の関連する抗原でパルスする場合もあれば、しない場合もある。
EBV:エプスタイン・バーウイルス。
EBV−CTL:EBV感染細胞又はEBV由来のペプチドを発現したり提示したりする細胞を、T細胞表面受容体により特異的に認識したT細胞。
EBV−LCL:エプスタイン・バーウイルスで形質転換されたBリンパ芽球様細胞系。
フィーダー細胞:目的細胞の量を増大させるように作用する細胞。状況によっては抗原提示細胞もフィーダー細胞として作用することができる。
生育面:細胞がその上に静置される、培養器具内の領域。
PBMC:末梢血由来の末梢血単核細胞で、いくつかの目的細胞の源となり、フィーダー細胞として作用することができる。
応答細胞(R):刺激細胞に反応する細胞。
静置細胞培養:常套的な操作のために培養器具の設定場所が移動される場合、及び/又は細胞に新鮮培地などが定期的に供給される場合以外は、撹拌されたり混合されたりしない培地中で細胞を培養する方法。一般に、静置培養中の培地は、通常、静止状態にある。本発明は静置細胞培養方法に関する。
刺激:抗原提示及び/又はフィーダー細胞が目的細胞上で有する作用。
刺激細胞(S):応答細胞に影響を及ぼす細胞。
表面密度:細胞が静置される器具内の表面の、単位面積当たり細胞量

0030

養子T細胞療法のための目的細胞群の生産を単純化する新規の方法を見つけようとしたとき、細胞療法適用のための細胞のより効率的な培養に門戸を開いた一連の実験が行なわれた。本発明の多数の例示的実施例及び多様な態様が、従来の方法と比較して、生産時間及び複雑さを低減する能力をどのように達成することができるかを示すべく記載される。

0031

実施例1:従来方法の限界の実証

0032

本実施例のデータは、ウェル1つ当たり2ml(つまり、培地の高さが1.0cmで、培地容量:表面積比が1ml/cm2)の培地容量を用いる標準24ウェル組織培養プレート(つまり、ウェル1つ当たりの表面積が2cm2)中でEBV−CTLを生産するための従来の培養方法の限界を実証する。

0033

培養段階1(0日目):1ml/cm2の培地容量:生育面比及び40:1の比(PBML:LCL)で、抗原提示γ照射(40Gy)自己EBV−LCLで、正常なドナー由来のPBMC(約1×106個/ml)細胞集団を培養し、45%のClick培地(カリフォルニアサンタアナのIrvine Scientific社)、2mMのGlutaMAX−I及び10%FBSを補充したRPMI1640中の細胞集団の表面密度を約1×106個/cm2とすることによって、EBV−CTL群の増殖を開始した。

0034

培養段階2(9〜16日目):9日目に、段階1で作成した細胞集団からEBV−CTLを回収し、0.5×106個/cm2の表面密度で新鮮培地に再懸濁し、4:1のCTL:LCL比(CTLの表面密度0.5×106個/cm2:LCL1.25×105個/cm2)の照射自己EBV−LCLで再刺激した。13日目に、24ウェルプレートの各ウェル中にある培地容量2mlのうち1mlを取り除き、組換えヒトIL−2(IL−2)(50U/mL)(Proleukin;カリフォルニア州エメリービルのChiron社)を含有する1mlの新鮮培地と取り換えた。

0035

培養段階3(17〜23日目):段階2の条件をIL−2の添加を週に2回行って反復し、23日目に培養を終了した。終了しても、段階2及び3の培養を模倣した更なる培養段階を伴って培養は継続することができた。

0036

細胞障害性アッセイにおける標的細胞として使用するための細胞系統及び腫瘍細胞:BJAB(B細胞リンパ腫)及びK562(慢性赤白血病)をアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関ATCC)(アメリカ合衆国メリーランド州ロックビル)から入手した。細胞は全て、10%の熱失活したウシ胎仔血清FCS)、2mMのL−グルタミン、25IU/mLのペニシリン及び25mg/mLのストレプトマイシン(全てBioWhittaker(メリーランド州ウォーカーズビル)から入手)を含有するRPMI1640培地(GIBCO−BRL、Gaithersburg、MD)で培養を維持した。細胞は、37℃で5%のCO2を含有する加湿環境に維持した。

0037

免疫表現型検査
細胞表面:Becton−Dickinson(アメリカ合衆国カリフォルニア州マウンテンビュー)からのフィコエリトリン(PE)、フルオレセインイソチオシアネートFITC)、ペリディン(periodin)クロロフィルタンパク質(PerCP)及びCD3、CD4、CD8、CD56、CD16、CD62L、CD45RO、CD45RA、CD27、CD28、CD25、CD44に対するアロフィコシアニン(APC)結合モノクローナル抗体(MAb)で細胞を染色した。PE結合四量体(Baylor College of Medicine)及びAPC結合五量体(イギリスオックスフォードのProimmune Ltd社)を使用してEBV−CTL前駆体頻度定量化した。細胞表面及び五量体染色のための、10000及び100000のライブイベントFACSCaliburフローサイトメーターでそれぞれ獲得し、Cell Questソフトフェア(Becton Dickinson)を用いてデータを分析した。

0038

細胞分裂を測定するためのCFSE標識:2×107の倍増速度を評価するために、PBMC又はEBV特異的CTL(EBV−CTL)を2回洗浄し、0.1%のウシ胎仔血清(FBS)(Sigma−Aldrich)を含有する1×リン酸緩衝生理食塩水PBS)850μlに再懸濁した。染色する前に、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)(ジメチルスルホキシド中10mM)(Celltrace(商標)CFSE細胞増殖キット(C34554)(Invitrogen))のアリコート解凍し、1×PBSで1:1000に希釈し、150μlの希釈物を細胞懸濁液に添加した(標識濃度は1μMであった)。細胞をCFSEと共に10分間室温インキュベートした。その後、1mlのFBSを細胞懸濁液に添加し、次いで10分間37℃でインキュベートした。その後、細胞を1×PBSで2回洗浄し、数を計測し、記載される抗原で刺激した。

0039

アネキシンV−7−AAD染色:培養中のアポトーシス細胞及び壊死細胞の割合を測定するために、製造者の指示(カリフォルニア州サンディエゴのBD Pharmingen(商標)#559763)通りにアネキシン−7−AAD染色を行った。簡潔に言うと、24ウェルプレート又はG−RexからのEBV−CTLを冷PBSで洗浄し、細胞1×106個/mlの濃度で1×結合緩衝液に再懸濁し、暗所にて室温(25℃)で15分間アネキシンV−PE及び7−AADで染色した。インキュベーション後、フローサイトメトリーによって細胞を直ちに分析した。

0040

クロム放出アッセイ:先に述べたように、標準4時間の51Cr放出アッセイにおいてEBV−CTLの細胞障害活性を評価した。目的の細胞として、自己並びにHLAクラスI及びII不適合EBV形質転換リンパ芽球様細胞系統(EBV−LCL)を使用してMHC拘束及び非拘束による死滅を測定し、K562細胞系統を使用してナチュラルキラー活性を測定した。培地のみで、又は1%のTritonX−100でインキュベートした、クロム標識した目的の細胞を使用して、自然発生及び最大51Cr放出をそれぞれ測定した。三連ウェルの特異的溶菌の平均の割合を以下のように計算した:[(試験数−自然発生数)/(最大数−自然発生数)]×100。

0041

酵素連結免疫スポット(ELIspot)アッセイ:ELIspot分析を用いて、抗原刺激に応答してIFNγを分泌したT細胞の頻度及び機能を定量化した。24ウェルプレート又はG−Rex中で増殖したCTL系統を、照射LCL(40Gy)若しくはLMP1、LMP2、BZLF1及びEBNA1 pepmix(1μg/mlに希釈)(ドイツ、ベルリンのJPT TechnologiesGmbH社)、又はEBVペプチドHLA−A2 GLCTLVAML=GLC、HLA−A2 CLGGLLTMV=CLG、HLA−A2−FLYALALLL=FLY及びHLA−A29ILLARLFLY=ILL(テキサス州サンアントニオのGenemed Synthesis, Inc.社)で刺激し、最終濃度2μMに希釈し、CTLのみがネガティブコントロールとして役立った。CTLは、ELIspot培地[5%のヒト血清(Human Serum)(バージニア州ウィンチスターのValley Biomedical, Inc.社)及び2mMのL−グルタミン(GlutaMAX−I)(カリフォルニア州カールスバッドのInvitrogen社)を補充したRPMI1640(ユタ州ローガンのHyclone社)]中に1×106/mlで再懸濁した。96ウェル濾過プレート(MultiScreen,#MAHAS4510)(マサチューセッツ州ベドフォードのMillipore社)は、10μg/mLの抗IFN−γ抗体(Catcher−mAB91−DIK)(オハイオシンシナティのMabtech社)で4℃で一晩コーティングし、次いで洗浄し、37℃で1時間ELIspot培地でブロックした。応答細胞及び刺激細胞をプレート上で20時間インキュベートし、次いでプレートを洗浄し、ビオチン結合抗IFN−γモノクローナル第2抗体(Detector−mAB(7−B6−1−Biotin))(Mabtech)を用いてインキュベートし、その後、アビジンビオチン化された西ワサビペルオキシダーゼ複合体(Vectastain Elite ABC Kit(標準)、#PK6100)(カリフォルニア州バーリンゲームのVector Laboratories社)を用いてインキュベートし、AE基質(ミズーリ州セントルイスのSigma社)で発色させた。各培養条件を3回実行した。評価のためにプレートをZellnet Consulting(ニューヨーク州ニューヨーク)へ送った。スポット形成単位(SFC)及び投入した細胞数をプロットした。

0042

統計分析:in vitroでのデータは、平均値±1SDとして示される。ステューデントt検定を使用してサンプル間の差異統計的有意差を測定し、P<0.05は有意差を示すものとして許容された。

0043

これら培養条件下では、図1Aに示すように、初期刺激の後、抗原特異的T細胞群は、最初の7日間にわたって少なくとも7回の細胞倍増を受ける。したがって、T細胞は一週間で128倍に増殖すると予測される(抗原特異的T細胞の頻度に細胞集団中の総細胞数を乗じて得られる)。1回目、2回目及び3回目の刺激後の四量体陽性細胞の頻度を図1Bに示す。0日目には、2種のEBV四量体、RAK及びQAKに対して反応性であるT細胞の頻度はそれぞれ0.02%及び0.01%であった。0日目の一回だけ刺激した後、9日目までに、細胞集団中の四量体陽性T細胞の頻度は0.02%及び0.01%から2.7%及び1.25%までそれぞれ増加していた。よって、細胞集団中に存在する抗原特異的四量体陽性T細胞の割合は、RAK及びQAKによって測定するとき、それぞれ135倍及び125倍の増大を達成した。また、培養段階1の0日目に一回だけ刺激した後、9日目までに細胞集団中の細胞の表面密度において1.1倍の増大(データは示さず)が認められた(およそ1.1×106個/cm2が存在していた)。PBMC集団中の細胞の大半は刺激抗原に特異的ではないので、総細胞数の全体的な増大はほとんど認められないが、図1Cに示すように、集団中の抗原特異的細胞群の増殖倍率は、培養の第1段階中約280であった。不運にも、CSFEによって測定するとき、第2及び第3培養段階の間、細胞倍増回数は同じであったが、第2及び第3培養段階の間、この抗原特異的T細胞増殖速度は持続せず、第2段階ではわずか5.7、第3段階では4.3であった。図2は、抗原特異的T細胞(n=3)の、予想される増殖と、観察した増殖倍率との相違を例証する表を示している。

0044

実施例1は、目的細胞群の増殖速度が後続の培養段階において低下するため、目的細胞を生産するのにかかる時間が、典型的に、ほぼ生産の第1週の後に遅くなることを実証する。

0045

実施例2:目的細胞群を増大させるのに必要な時間の短縮は、培養の任意の所与の1又は複数の段階の開始時に、目的細胞群の細胞表面密度を低減することによって達成可能である。

0046

1回目の刺激と比べて2回目のT細胞刺激後に目的細胞群の増殖速度が低下したのは、活性化誘導細胞死(AICD)をもたらす細胞培養条件に限定したためと仮定した。例えば、図3Aを参照すると、1回目の刺激では、PBMCのEBV抗原特異的T細胞成分は最大でも個体数の2%であるため、抗原特異的応答T細胞の播種密度は、1cm2当たり2×104未満である。残りのPBMCは、非増殖フィーダー細胞(図3AにおいてはCFSE陽性細胞として示されている)として作用し、抗原特異的CTLの増殖を可能にする最適な細胞間接触を維持する。それに反して、9日目の2回目の刺激では、T細胞の大半が抗原特異的であり、集団の総細胞密度はほぼ同じであるが、増殖細胞密度は50〜100倍高い。結果として、再刺激で大半の細胞が増殖し、故に、急速にそれらの栄養素及びO2供給を消費して使い果たす可能性がある。

0047

培養条件の限定が最適以下のT細胞成長速度関与していたかどうかを判断するために、より低い細胞密度でプレーティングした活性化T細胞の増殖を測定した。方法は前述の実施例1の通りである。

0048

図3Bに示すように、各ウェルが2cm2の生育面面積を有する標準24ウェルプレートのウェル内に、応答細胞:刺激細胞比(R:S)を4:1に維持しつつ、1×106/cm2〜3.1×104/cm2の範囲で低下する表面密度を生み出す倍々の希釈で、活性化EBV特異的T細胞を播種した。1cm2当たり1.25×105の出発CTL表面密度で、最大のCTL増殖(4.7±1.1倍)が達成されたが、図3Bに示すように、更なる希釈によって増殖速度は低下した。この限定的な希釈効果おそらく細胞間接触の欠如によるものであると推測されるので、一定数のフィーダー細胞(1.25×105/cm2の表面密度でプレーティングされたEBV−LCL)と共に、1×106から3.1×104までの表面密度でのEBV−CTLの倍々の希釈を培養し、7日間にわたって細胞増殖を評価した。図3Cに示すように、CTL増殖は、表面密度1×106/cm2でのEBV−CTLによるわずか2.9±0.8倍の増殖から、表面密度3.1×104/cm2でのEBV−CTLによる34.7±11倍の増殖に至るまで劇的に増大したことが観察された。重要なことに、培養条件のこの変更は、細胞の機能や抗原特異性を変えるものではなかった(データは示さず)。故に、活性化された抗原特異的T細胞群は、従来の培養方法が許容するよりも大きく増殖することができる。注意すべきは、刺激後に達成された最大表面密度(1.7〜2.5×106/cm2)は、出発表面密度に関わらず同じであった。

0049

よって、従来の培養条件は限定的であり、目的の細胞群が従来方法の表面密度の限界を超えるためには、培地容量:生育面面積比を従来の1ml/cm2よりも高くしなければならないことを示している。更に、任意の培養段階の開始時に、目的細胞群の表面密度を従来方法よりも低減することによって、抗原特異的CTLの増殖を約34倍まで向上することができる。これは、生産開始時の細胞量がしばしばかなり限定されている細胞療法においてかなりの派生効果を有する。例えば、限られた量の目的細胞を、増大された表面積上に、低下された表面密度で分配することによって、個体群の成長速度が従来の表面密度と比べて劇的に高くなるため、より短い時間でより大きな目的細胞群を達成することができる。

0050

実施例3:目的細胞及び/又は抗原提示細胞を含む細胞群の最小表面密度は、非常に低い表面密度で播種される目的細胞群の成長を可能にする。

0051

図4は、図3に記載される研究を継続して得られた結果の一例を示しており、更に、目的細胞が他の細胞のサポートを必要とする際に、目的細胞がフィーダー細胞及び/又は抗原提示細胞の十分な供給の存在下にある限り、従来とは異なって低い目的細胞表面密度で個体数の増殖を開始し得ることを実証した。これらの実験において、R:S比が8:1で目的細胞約1.0×106個/cm2とR:S比が1:32で単に目的細胞約3900個/cm2との間の表面密度及びR:S比を有する細胞集団全体が、どのようにして出発表面密度の50倍を超えるまで目的細胞を大幅に増殖し得るのかを継続して実証し、その時点で試験を中断した。

0052

実施例4:従来とは異なって低い目的細胞表面密度で段階を開始し、個体数を増殖させ、段階を終了し、条件を反復することにより生産プロセスの段階的な反復を可能にする能力が、反復可能な結果を生むことが実証された。

0053

図5に示すように、3種の目的細胞表面密度(CTL数/cm2)で、実施例3に記載される評価を継続した。各特定の播種密度は、同じ増殖倍率を一貫して達成することができた。この示唆については、目的細胞群の生産時間を劇的に短縮する能力に関連して、より詳細に記載する。

0054

実施例5:気体透過性材料からなる生育面上で目的細胞を培養しつつ、同時に培地容量:生育面面積比を増大させることは、従来方法と比べて、所与の培養段階において目的細胞群が倍増し得る回数を増やし、かつ、達成可能な表面密度を増大させる。

0055

細胞系統及び腫瘍細胞、免疫表現型検査、CFSE標識、アネキシンV−7−AAD染色、クロム放出アッセイ、酵素連結免疫スポット(ELIspot)アッセイ、Tリンパ球のレトロウイルス生産及び形質導入、並びに統計分析については実施例1に記載した通りであった。

0056

試験器具(以下、一般的に「G−Rex」と呼ぶ)を図6に示すように構築した。各G−Rex10の底部20は気体透過性シリコーン膜からなるものであり、この膜の厚さはおよそ0.005〜0.007インチであった。同時係属中の米国特許公開公報2005/0106717号(以下、Wilson‘717と呼ぶ)は、代替気体透過性材料の使用に関する多くの他の情報源の中の1つであり、当業者はここから本発明の実施形態の多くにとって有益である気体透過性培養器具の形状、特性及び他の有用な特徴についての知識を得ることができる。本実施例3において、G−Rex(「G−Rex40」と呼ぶ)の生育面面積は10cm2であり、その上に細胞集団(要素30として示す)を静置した。細胞集団の特徴は本明細書に記載されるように実験を通して様々であった。培地容量(要素40として示す)は、特記しない限り、30mLであり、3ml/cm2の培地容量:生育面面積比を生み出した。

0057

活性化EBV特異的CTL及び照射自己EBV−LCLは、CTL:LCL比を従来の4:1にしてG−Rex40器具内で培養された。G−Rex40内でEBV−CTLを表面密度5×105個/cm2で播種し、EBV−CTL群の増殖速度を、生育面面積に対する培地容量が1ml/cm2の標準24ウェルプレート中に同一表面密度で播種したEBV−CTLと比較した。3日後、図7A(p=0.005)に示すように、G−Rex40内のEBV−CTLは、培地を交換することなく、5×105/cm2から7.9×106/cm2の中央値(範囲5.7〜8.1×106/cm2)まで増加していた。対照的に、従来の24ウェルプレート内で3日間培養したEBV−CTLは、3日目までに表面密度5×105/cm2から1.8×106/cm2の中央値(範囲1.7〜2.5×106/cm2)までしか増加しなかった。G−Rex40において培地を補充することによって表面密度を更に増大させることができたが、24ウェルプレート内に培地又はIL2を補充しても細胞表面密度を増大させることはできなかった。例えば、EBV−CTL表面密度は、7日目に培地及びIL−2を補充した後、G−Rex40において9.5×106個/cm2(範囲8.5×106〜11.0×106/cm2)まで更に増加した(データは示さず)。

0058

G−Rex器具における優位な細胞増殖の背後にあるメカニズムを理解すべく、培養5日目に、フローサイトメトリーの前方対側方散乱分析を用いて、OKT3に刺激された末梢血T細胞生存率を評価した。分析を妨げる残留照射EBV−LCLが培養物中に存在していたために、本アッセイではEBV−CTLを評価できなかった。図7Bに示すように、細胞生存率は、G−Rex40の培養における方が有意に高かった(G−Rex40中での生存率は89.2%であり、24ウェルプレートでは49.9%であった)。次いで、生細胞アポトーシス/壊死細胞とを識別するためにアネキシン−PI 7AADを使用して7日間毎日培養物を分析し、図7Cに示すように、G−Rexにおいて増殖するT細胞の生存率と比べて24ウェルプレート内で増殖するT細胞の生存率の方が一貫してより低いことが観察された。これらのデータは、増殖細胞の生存が累積的に向上したことが、24ウェルプレートと比較したG−Rex器具内での細胞数の増加に寄与したことを示している。

0059

G−Rex対24ウェルプレート内での細胞分裂数の増加からも寄与が存在するかどうかを判断するために、0日目にT細胞をCFSEで標識し、培地容量40mlであるG−Rex40と、各ウェル内の培地容量が2mlである24ウェルプレートに分けた。毎日フローサイトメトリー分析を行った結果、1日目から3日目までは細胞分裂数に差異はないことが実証された。しかしながら、3日目以降、図7Dに示すように、G−Rex40で培養した目的細胞の個体群は、2mlウェルの低下率を上回る比率で増加し続けた。このことは、培養条件が限定的になっていたことを示している。よって、G−Rex40試験器具における目的細胞の大きな個体群は、従来方法と比べて、細胞死が低下したことと増殖が持続されたこととの組み合わせから得られたものであった。

0060

実施例6:従来とは異なって高い培地容量:生育面面積比及び気体透過性材料からなる生育面を用いることにより、生産中に培養物に栄養供給する必要性を低減しつつ、同時に従来とは異なって高い目的細胞表面密度を得ることができる。

0061

これは、EBV:LCLの開始及び増殖のためにG−Rex試験器具を使用することによって実証された。本実施例では、G−Rex2000は、図8に記載されるような器具を指すが、底部が100cm2の生育面面積からなり、使用可能な培地容量が2000mlであることを除外する。G−Rex2000内でEBV−LCLを培養し、細胞表現型を変化させることなく増殖した。1000mlの完全RPMI培地と共に、表面密度1×105個/cm2でG−Rex2000内にEBV−LCLをプレーティングして、培地容量:表面積比を10ml/cm2とした。比較のために、30mlの完全RPMI培地と共に、表面密度5×105個/cm2でT175フラスコ内にEBV−LCLをプレーティングして培地容量:表面積比を0.18ml/cm2とした。図8Aに示すように、G−Rex2000内で培養したEBV−LCLは、いかなる操作又は培地変更をも必要とすることなく、T175フラスコ内で培養したものよりも大きく増殖した。図8B及び図8Cに示すように、EBER及びB細胞マーカーのCD20をQ−PCRによって評価すると、この培養条件では最終的な細胞生成物は改変されなかった。

0062

実施例7:培養開始時に十分なフィーダー及び/又は抗原細胞が存在しないと、目的細胞は増殖しない場合がある。しかしながら、細胞集団は、増殖させるために、フィーダー細胞及び/又は抗原提示細胞として作用する更なる細胞型を包含するように改変することができる。

0063

図9は、目的細胞及び抗原提示細胞の累積表面密度が非常に低い(この場合、AL−CTL及びLCL細胞を組み合わせて、表面密度30000個/cm2の細胞集団を作成している)ために、AL−CTL群の成長を開始することができなかったことを、実験により実証した例示的実施例を示している。しかしながら、フィーダー細胞として機能する他の細胞型を包含するように当該集団を改変することによって、これと同じ細胞集団を成長させることができた。この場合、表面密度が約0.5×106個/cm2である3種の様々な形態の照射K562細胞のフィーダー層を評価した。いずれの場合も、AL−CTL群がヒストグラムの最初のカラムに示された初期細胞集団から増殖し、わずか15000個/cm2の表面密度から4.0×106個/cm2の表面密度まで14日間にわたって変化した。また、第3の細胞型の添加とは対照的に、LCL群の増大により同様の好ましい結果が得られたことを実証した。細胞集団が十分な数のフィーダー及び/又は抗原特異的細胞を包含する際に、成長を開始するために非常に低い目的細胞群を使用することができることを実証するために、LCL又はK562に使用される高い表面密度を任意に選択した。フィーダー細胞が供給不足であったり、その費用が高かったり、又は調製するのが煩雑である場合、それらの表面密度を0.5×106個/cm2未満に低減することが推奨される。一般に、及び実証してきたように、抗原提示細胞及び/又はフィーダー細胞が細胞集団中に存在する場合、抗原提示細胞及び/又はフィーダー細胞及び目的細胞の付加的な表面密度は、目的細胞群の増殖を開始するのに十分な細胞集団における表面密度を生み出すために、好ましくは少なくとも約0.125×106個/cm2であるべきである。また、標準的な表面密度の限界を超える継続増殖を達成するために、本実施例では、4ml/cm2の培地容量:表面積比と共に気体透過性材料からなる生育面を使用した。

0064

実施例8:目的細胞の表面密度を低減し、応答細胞:刺激細胞比を改変し、培地:生育面面積比を増大させ、かつ、気体透過性材料からなる生育面上へ表面密度の低い培養で細胞を周期的に分配することによって、他の方法と比べて、より短い時間でより多くの目的細胞が生産可能となり、生産プロセスが簡略化される。

0065

目的細胞の生産を簡略化・短期化する能力を更に評価するために、G−Rex試験器具を使用してEBV−CTLの開始及び増殖を行った。本実施例では、G−Rex500は、図6に記載されるような器具を指すが、底部が100cm2の生育面面積からなり、使用可能な培地容量が500mlであることを除外する。

0066

EBV−CTL生産の初期段階として、G−Rex40内に表面密度1×106/cm2(合計=G−Rex40の生育面面積10cm2に分配された107個のPBMC)でPBMCを播種し、PBMC:EBV−LCL比40:1にてEBV−LCLでそれらを刺激した。CTLの生産にとって、応答T細胞の抗原特異性を維持するために、この40:1の比が1回目の刺激においては好ましい。初期培養段階の後、9日目に第2段階を開始した。ここでは、1×107個の応答T細胞をG−Rex40からG−Rex500試験器具へと移した。第2培養段階を開始するために、200mLのCTL培地をG−Rex500内に置くと、第2段階開始時の培地容量:表面積比は2ml/cm2となり、培地の高さは生育面の領域よりも2.0cm高くなった。第2段階開始時の目的細胞の表面密度は、CTL1×105個/cm2であり、抗原提示細胞の表面密度はLCL5×105個/cm2であるため、目的細胞:抗原提示細胞比は従来とは異なる1:5であった。この第2段階の細胞表面密度及びR:S比は、スクリーニングした全てのドナーにおいて一貫したEBV−CTL増殖を生じた。4日後(13日目)、IL−2(50U/ml−最終濃度)を培養物に直接添加し、同様に200mlの新鮮培地を添加すると、培地容量:表面積比は4ml/cm2となった。16日目、細胞を回収して計測した。得られたCTLの表面密度中央値は、1cm2当たり6.5×106(2.4×106〜3.5×107の範囲)であった。

0067

気体透過性材料からなる生育面を使用することにより、従来のプロトコールと比較して、培地容量:表面積比の増大(すなわち、1ml/cm2よりも大きい)、細胞表面密度の低下(つまり、0.5×106/cm2未満)及び応答細胞:刺激細胞比の改変(4:1未満)が可能となり、生産時間が短縮される。図10Aは、実施例8の当該G−Rex手法と、実施例1の従来方法の使用及び実施例5に記載されるG−Rex手法との比較を示している。示すように、従来方法は、いずれのG−Rex法においても約10日で付与することができるのと同数の目的細胞を付与するのに23日を要した。23日後、実施例8のG−Rex手法は、実施例5のG−Rex法よりも23.7倍多い目的細胞を生産することができ、そして、実施例1の従来方法よりも68.4倍多い目的細胞を生産することができた。更に、細胞表面密度が7×106/cm2を超えたときに培養物を分割したところ、目的細胞は、更なる抗原提示細胞刺激を必要とすることなく27〜30日目まで分裂し続けた。

0068

光学顕微鏡を用いてG−Rex中のCTLを明確に見ることはできなかったが、CTLクラスターは目で又は倒立顕微鏡によって見ることができた。培養の9、16及び23日目の細胞の外観図10Bに示す。図10Cに示すように、G−Rexにおける培養は、増殖された細胞の表現型を変化させず、細胞集団の90%超過がCD3+細胞であり(G−Rex対24ウェルが96.7±1.7対92.8±5.6)、これらは主にCD8+であった(62.2%±38.3対75%±21.7)。活性化マーカーCD25及びCD27並びに記憶マーカーCD45RO、CD45RA及びCD62Lの評価により、各培養条件下で増殖したEBV−CTL間に実質的な差異はないことが実証された。ELIspot及び五量体分析により測定したところ、抗原特異性も培養条件には影響されなかった。図10Dは、LMP1、LMP2、BZLF1及びEBNA1由来のEBVペプチドエピトープで刺激され、HLA−A2−LMP2ペプチド五量体染色で染色されたT細胞がペプチド特異的T細胞と同様の頻度を示す代表的な培養を示している。更に、図10Eに示すように、51Cr放出アッセイにより評価すると、増殖した細胞は、それらの細胞溶解活性及び特異性を維持し、自己EBV−LCLを死滅させ(G−Rex対24ウェルプレートが、E:T比20:1で62%±12対57%±8)、HLA不適合EBV−LCLの死滅は少なかった(20:1の比で、15%±5対12%±7)。

0069

細胞療法のための改良型細胞生産のための様々な新規方法についての検討:生産サイクルの開始時における目的細胞群の表面密度の低下、応答細胞と刺激細胞との間の表面密度比の低下、気体透過性材料からなる生育面及び/又は培地容量:生育面面積比の増大などの様々な条件を用いて、どのようにして細胞療法の研究及び臨床応用のための細胞の生産を促進し簡略化することができるかを当業者に実証するために実施例1〜8を提示してきた。実施例1〜8は抗原特異的T細胞の生産に関するものであるが、これらの新規培養条件は、臨床的関連性のある(又は概念マウスモデル前臨床証拠に必要とされる)多くの重要な浮遊細胞型、例えば、制御性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー細胞(NK)、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、初代Tリンパ球、広範な抗原特異的細胞及びその他多くのもの(これらは全て、機能、生体内での残留性又は安全性を向上させるために遺伝子改変することもできる)に適用可能である。細胞は、フィーダー細胞及び/又は抗原提示細胞を用いて増殖させることができるが、これらの細胞は、PBMC、PHAblast、OKT3 T、B blast、LCL及びK562(天然又は発現するように遺伝子改変されており、抗原及び/又はエピトープ、並びに41BBL、OX40L、CD80、CD86、HLA及びその他多くのものなどの共刺激分子)を包含することができ、これらはペプチド及び/又は関連する抗原でパルスする場合もあれば、しない場合もある。

0070

従来とは異なる低い初期表面密度:本発明の一態様は、より低い目的細胞表面密度によって、従来方法と比べて生産時間を短縮できるという発見である。このように、目的細胞は、従来方法が許容するよりも、最大細胞表面密度と最小細胞表面密度との間に大きな差を有することができる。目的細胞群の成長速度は低下し始めたが、目的細胞の量がまだ生産を終了するには十分でない場合、気体透過性材料からなる追加の生育面上に再び低い出発表面密度で目的細胞を再分配するのが好ましい。

0071

任意の所与の培養段階の開始時に、より低い表面密度に依存する新規の細胞生産方法がどのように適用可能であるのかを説明するために、ここで一例を記載する。図11は、本発明の一態様を用いた目的細胞型の個体数増殖と比較した、従来のシナリオに基づく生育面上での目的細胞群の増殖に関するグラフ表示を示している。この新規方法において、生産段階開始時の目的細胞の表面密度は、従来の表面密度より小さい。この新規方法の利点に焦点を合わせるために、本説明では、目的細胞群を最初に得るプロセスについては触れない。当業者がこの新規方法の相対的な時間の利点をより確認しやすいように、培養「日(Day)」は「0」から始まる。本実施例において、従来方法の各生産サイクルは、従来の目的細胞の表面密度0.5×106個/cm2で始まるが、本実施例の各生産サイクルは、従来と異なるはるかに低い目的細胞の表面密度0.125×106個/cm2で始まる。よって、本実施例においては、従来方法が要する表面積よりも4倍大きい表面積(すなわち、500000/125000)が、培養を開始するのに必要となる。本実施例において、従来方法の目的細胞は14日で最大表面密度2×106個/cm2に達する。よって、1cm2の成長面積は2×106個/cm2を付与し、それらの細胞は次いで4cm2の成長面積上に再分配されて、従来の出発密度0.5×106個/cm2(すなわち、4cm2×0.5×106細胞=2×106細胞)を用いて生産を継続することができる。このサイクルを更に14日間繰り返し、その時点で再び最大細胞表面密度に到達し、4cm2の生育面面積の各々が2.0×106細胞、つまり、合計で8.0×106細胞を付与し、次いでそれら細胞を16cm2の成長面積上に分配し、成長サイクルを繰り返して42日間で合計32×106細胞が付与される。

0072

図11に示す新規方法は、生産開始時に1cm2上に500000個の目的細胞を堆積させる従来方法を使用する代わりに、4cm2の成長面積上に500000個の細胞を等しく分配して、0日目に目的細胞125000個/cm2の従来とは異なる低い出発表面密度を生み出す。例において、新規方法は、従来方法と同様、まさに7日目に低下し始める成長速度を有する。新規方法における細胞は、表面密度が1×106個/cm2である。よって、成長速度が低下し始めた時点で、この培養段階は4×106細胞を生じ、次いでそれらの細胞が32cm2の成長面積上に再分配されることにより、出発表面密度0.125×106個/cm2(すなわち、32cm2×0.125×106細胞=4×106細胞)を用いて段階2における生産を継続することができる。生産サイクル又は段階を更に7日間、14日目まで繰り返し、その時点で、1.0×106個の目的細胞を含有する32cm2の各生育面面積により再び細胞表面密度が最大に達し、わずか14日間で合計32×106個の細胞を生じる。留意すべきは、従来方法と同様、各生産サイクルの終了時に、新規方法がどのようにして最終表面密度を出発表面密度で除した倍数を付与するのかということである。しかしながら、細胞が成長生産に入る前に出発細胞表面密度を低減し、かつ、各生産段階を終えることによって、時間が劇的に短縮される。本実施例では、目的細胞表面密度を低減する(この場合には、0.125×106個/cm2まで)ことによって、従来の細胞表面密度と比べて、従来方法でかかる時間のわずか33%(14日対42日)で同量の目的細胞がどのようにして付与されるかについて記載している。

0073

0.125×106個/cm2の出発表面密度を用いて利点を定量化したが、当業者は、本発明のこの例が、従来の細胞表面密度を下回る任意の減少により生産時間が短縮されることを実証することに気付くはずである。更に、当業者は、本明細書に提示された本方法及びその他の新規の方法に記載される細胞成長速度及び細胞成長の低下が起きる時点は、例証目的のためにのみ記載され、実際の比率は培地の組成、細胞型などの広範な条件に基づく各用途において様々であることを認識するであろう。更に、当業者は、本発明の本態様の利点が、任意の特定の用途において細胞表面密度を従来の細胞表面密度よりも低くすることから生じる生産時間の短縮であり、本例示的実施例において使用される特定の従来の表面密度は用途ごとに異なる場合があることを、所与の用途のために認識するであろう。

0074

したがって、低減された細胞表面密度を使用することによって細胞集団中に存在する所与量の目的細胞の生産時間を最小にする要望がある場合の本発明の方法の一態様についてここで説明する。目的細胞は、以下を満たすように、従来とは異なる低い細胞表面密度で生育面上に堆積されるべきである:
a.目的細胞は、抗原提示細胞及び/又はフィーダー細胞の存在下、生育面が気体透過性材料からなるものではない場合には最大で1ml/cm2の培地容量:表面積比であり、生育面が気体透過性材料からなる場合には最大で2ml/cm2の培地容量:表面積比であり、
b.生産サイクル開始時の好ましい表面密度条件は、標的細胞表面密度が好ましくは0.5×106個/cm2未満であり、より好ましくは図4に記載されるように低下しており、
c.目的細胞の表面密度+抗原提示細胞及び/又はフィーダー細胞の表面密度は、好ましくは少なくとも約1.25×105個/cm2である。

0075

抗原提示細胞及び/又はフィーダー細胞の表面密度を1.25×105個/cm2よりも更に低くしようとする場合、目的細胞群の増殖が限定的にならないことを、上記実施例に基づき立証するのが良い。抗原提示細胞及び/又はフィーダー細胞を十分に供給することによって増大させるとき、従来とは異なる低い密度で目的細胞群の成長が達成可能であることを実証するという目的に基づき、1.25×105個/cm2を選択した。

0076

気体透過性材料からなる生育面及びより高い培地容量:生育面面積比の使用により生産が簡略化かつ短縮され得る。本発明の別の態様は、気体透過性材料からなる生育面及び従来の比率を超える培地容量:生育面面積比を使用し、かつ、生育面面積の使用量を経時的に増大させる生産サイクルを繰り返すことによって生産時間が短縮されるという発見である。

0077

ここで、これらの条件が、生産時間をどのように短縮し得るのかを示す例示的実施例を提示する。図12は、気体透過性材料からなる生育面と、1又は2ml/cm2を超える従来とは異なる高い培地容量:生育面面積比を利用することによって得られる利点の一例を示すために考察を補強するものである。以下の考察は、このような方法を用いることによって、生産時間の短縮、生育面面積の使用量の低減並びに/又は労力及び汚染リスクの低減を含む幾つかの選択肢がどのように利用可能であるかを当業者に実証することを意図している。当業者は、図12及び関連する考察が単なる例であり、本発明の範囲を限定するものではないことを認識するであろう。

0078

本例示的実施例における目的細胞群を含有する細胞集団は、「X」時間当たり約1ml消費するものと考える。図12は、「従来方法」及び「新規方法」と名付けられた2つの生産プロセスを示している。成長開始時、各プロセスは0.5×106/cm2の表面密度の目的細胞から始まる。しかしながら、新規方法の生育面は気体透過性材料からなり、また、その培地容量:表面積比は、従来方法が1ml/cm2であるのに対して、2ml/cm2である。時間「X」において、従来方法の目的細胞群は2×106/cm2の表面密度プラトーに達して栄養素を枯渇させるが、新規方法の追加の培地容量は成長を継続させ、目的細胞表面密度は3×106/cm2となる。新規方法が継続する場合、4×106/cm2の表面密度に達する。よって、多くの有利な選択肢が生じる。新規方法は、従来方法よりも多くの細胞を生産して時間「X」の前に終了してもよく、従来方法の約1.5倍の細胞を生産して時間「X」で終了してもよく、又は、2倍の時間がかかるが、供給用の器具を操作する必要がなく、従来方法の2倍の目的細胞を生産して、栄養素が枯渇するまで継続してもよい。従来方法が同数の細胞を収集するためには、細胞を回収しなければならず、プロセスを再開すると、労力及び起こり得る汚染リスクが加わる。細胞療法の用途は典型的には一定数の細胞を用いないと始めることができないので、従来方法では、生産開始時に単純に表面積を増大させるという選択肢は許容されない。

0079

図13は、2回以上の生産サイクルがどのように更に有利であり得るかを示すために図12の例を継続する。図13は、本発明の1つの新規方法により目的細胞型の個体群を増殖した場合と比較した、従来方法による生育面上での目的細胞群の増殖に関するグラフ表示を示しており、新規方法の表面密度は従来方法の表面密度よりも高い。本実施形態に焦点を合わせるために、本説明では、目的細胞群を得るプロセスについては触れない。当業者が本発明の当該態様の相対的な時間の利点をより確認しやすいように、培養「日」は「0」から始まる。本実施例では、「0日目」に従来の目的細胞表面密度0.5×105個/cm2を使用して両培養を開始する。本例示的実施例は、従来方法の生育面も気体透過性材料からなる。しかしながら、従来方法の培地容量:生育面比は、新規方法の4ml/cm2に対して、1ml/cm2である。図13に示すように、従来方法の目的細胞群は、表面密度が約4日間で約1.5×106個/cm2のときに成長速度が低下し始め、14日間で最大表面密度2×106個/cm2に達する。その時点で、目的細胞群は、1.0ml/cm2の新鮮培地において0.5×106/cm2の表面密度で4cm2の成長面積に分配され、生産サイクルが再び始まり、更に14日間で表面密度2×106個/cm2に達し、28日間で8×106の目的細胞を付与する。比較すると、新規方法の目的細胞群は、およそ約10〜11日間で表面密度が約3.6×106個/cm2のときに成長速度が低下し始め、28日間で最大表面密度4×106個/cm2に達することができた。しかしながら、生産を加速するために、目的細胞群の成長速度がまだ高いうちにサイクルを終了する。よって、約10〜11日間で、3×106の細胞が、4.0ml/cm2の新鮮培地中に0.5×106/cm2の表面密度で6cm2の成長面積に再分配され、生産サイクルが再び始まり、目的細胞群は、更におよそ10〜11日間で表面密度が約3×106個/cm2となり、およそ21日で18×106の目的細胞を付与する。よって、新規方法は、従来方法と比べて約75%の時間で2倍を超える数の目的細胞を生産した。

0080

気体透過性材料からなる生育面上に10×106個/cm2を超える細胞表面密度を得ることができた。このことは、本発明の高表面密度の態様の使用が、本実施例に記載される密度に限定されないことを実証する。

0081

したがって、低減された細胞表面密度を使用することによって、細胞集団中に存在する所与量の目的細胞を生産するための時間を最小にする要望がある場合の、本発明の方法の別の例を以下に記載する:
a.抗原提示細胞及び/又はフィーダー細胞の存在下で、少なくとも2ml/cm2の培地容量:表面積比で、気体透過性材料からなる生育面面積上に目的細胞を播種すること、
b.標的細胞表面密度が約0.5×106個/cm2の従来密度以内になるような好ましい表面密度条件を生産サイクル開始時に確立すること、
c.従来の表面密度約2×106個/cm2を超えて目的細胞群が増殖することができるようにすること、及び
d.より多くの目的細胞が求められる場合には、気体透過性材料からなる追加の生育面に目的細胞を再分配し、十分な目的細胞が得られるまで工程a〜dを繰り返すこと。

0082

これら新規方法を用いると、以下の培養を開始する属性を組み合わせることによって更なる利点を達成することができる。すなわち、従来とは異なる低表面積を使用すること、目的細胞及び/又はフィーダー細胞の新規表面密度比を使用すること、気体透過性材料からなる生育面面積を利用すること、従来とは異なる高い培地容量:生育面面積比を利用すること、及びサイクルで生産を行うことである。当該条件は、生産時間の短縮、表面積の利用、供給頻度などのバランスを取るなど、目的の結果を達成するべく任意の生産サイクルで変更可能である。

0083

図14は、従来方法と比べて更なる利点が得られる別の新規方法を示している。当業者は、本明細書に記載する他の例示的実施形態と同様、本明細書の記載が本発明の範囲を限定せず、代わりに、生産効率の向上という利点を得るための方法について説明する役割を果たすことを認識するであろう。

0084

本実施例では、目的細胞は、従来の条件下では毎週倍増している。当業者がこの実施形態の相対的な時間の利点を確認しやすいように、培養「日(Day)」は「0」から始まる。また、本実施例を簡略化するために、フィーダー及び/又は抗原提示細胞表面密度比に関して先に記載した事項は繰り返さない。例証のために、生産の「0日目」には、従来の条件において7日間の倍増時間で500000個の出発目的細胞群が存在すると仮定する。従来方法は、0.5×106個/cm2の表面密度及び1ml/cm2の培地容量:表面積比から始まる。示すように、目的細胞群が表面密度2×106個/cm2に達すると、細胞を0.5×106個/cm2の表面密度で追加の表面域上に分配し、生産サイクルを新たに始める。本実施例の新規方法は、0.06×106個/cm2の表面密度、気体透過性材料からなる生育面域及び6ml/cm2の培地容量:表面積比から始まる。図示したように、当該個体群が成長プラトーの開始に近づくと、細胞をより多くの生育面域に再分配する。この場合、従来方法では、細胞表面密度が培地容量:表面積比の1.5倍に近づく(すなわち、1.5×106個/ml)とプラトーが開始されることから、当該個体群はプラトーに達していると判定する。よって、約9日目に、約4.5×106個/cm2の表面密度で細胞を36cm2の生育面域上に分配し、生産サイクルを新たに始める。

0085

図15は、図14に示した各生産方法の比較を表にし、新規方法の力、及びその効果を十分に得るために様々な段階で生産プロトコールを調節するのが賢明である理由を実証するべく段階に増殖する。新規方法は、生産サイクルのわずか第2段階が完了しただけで従来方法を圧倒し、たった半分ほどの時間でわずか61%の必要表面積でほぼ1.37倍多くの細胞を付与することに留意すべきである。しかしながら、生産サイクルの第3段階において、どのようにして細胞が量的に増大し、相当して表面積も増大するのかにも留意すべきである。よって、任意の所与プロセスに最適な効果レベルを達成するために、プロセスの各サイクル全体での、初期の細胞表面密度及び/又は最終の細胞表面密度の調節方法を予測するために、生産サイクルをモデル化すべきである。

0086

一例として、図16は、生産が進行するにつれ効率を獲得するために、新規方法においてどのように可変量を変更することができるのかという例を示している。例えば、サイクル3の出発表面密度は0.06から0.70個/cm2へと増大し、最終表面密度は4.5から7.5個/cm2へと変化し得る。最終表面密度の増大は、培地容量:表面積比が最初の6ml/cm2よりも大きな数となるということである。培地容量:表面積比が大きくなるにつれ、サイクルが急速な成長相(すなわち、横ばい区間の前の個体群増殖)にとどまる時間が長くなる。この場合、更に5日かけて急速成長相を完了させて、培地容量:表面積比を約8ml/cm2に増大させた。そうすることによって、本実施例では、34日間で妥当な表面積にて3兆を超える細胞を生産することができる。例えば、器具を作製し、気体透過性材料からなる約625cm2の生育面で試験した。これは明らかに、従来方法よりも優れた細胞生産手法である。

0087

よって、低減された細胞表面密度を使用することによって細胞集団中に存在する所与量の目的細胞を生産するための時間を最小にする要望がある場合の、本発明の方法の別の好ましい実施形態をここで説明する:
a.抗原提示細胞及び/又はフィーダー細胞の存在下で、少なくとも2ml/cm2の培地容量:表面積比で、気体透過性材料からなる生育面面積上に目的細胞を播種すること、
b.標的細胞表面密度が従来の密度未満、好ましくは目的細胞約0.5×106個/cm2〜約3900個/cm2の範囲内であり、かつ、目的細胞及び抗原提示細胞及び/又はフィーダー細胞の合計が少なくとも約1.25×105個/cm2であるような好ましい表面密度条件を生産サイクル開始時に確立すること、
c.約2×106個/cm2の従来の表面密度を超えて目的細胞群が増殖することを可能にすること、
d.より多くの目的細胞が求められる場合には、気体透過性材料からなる追加の生育面に目的細胞を再分配し、十分な目的細胞が得られるまで工程a〜dを繰り返すこと。

0088

本発明の開示は、Tビヒクルと呼ばれる新規クラスの治療用細胞を作成することによって養子細胞療法の分野を前進させる。Tビヒクルは、GVHDの固有のリスクを持たないT細胞群からなり、更に治療のために作用することができる1以上の治療属性を包含するように更に改変され、治療的利点をレシピエントに与える。TビヒクルはGVHD疾患を引き起こす天然の能力を持たないため、広範な病状及び疾患と闘うことができる任意数対抗手段を備える理想的な生物学的輸送ビヒクルとなる。本発明は、最先端の方法に存在するGVHDの固有のリスクを有することなく養子細胞療法の健康上の利点をレシピエントに付与するために、治療属性を備えたTビヒクルを生産かつ使用する方法を開示する。重要なことに、Tビヒクルの治療目的は天然のT細胞受容体の抗原特異性とは全く無関係であるため、Tビヒクルは最先端の養子細胞療法とは逆に機能する。当業者は、本開示や提示された例示的実施形態の全体を通して、Tビヒクルの治療属性にはTビヒクルの天然抗原受容体が含まれないことを認識すべきである。

0089

Tビヒクルは、ドナーPBMC又はドナー臍帯血を抗原で刺激して、抗原に対する天然抗原特異性を有するドナーT細胞の成長を活性化させ、それにより抗原に対する抗原特異性を有する抗原受容体を含む抗原特異的T細胞群を生産することによって生産される。正常細胞上には存在しない抗原を選択することによって、正常細胞を認識できない抗原受容体を有するT細胞群を作成することができる。天然T細胞の抗原特異性から得られるであろう治療的利点を無視し、天然の抗原受容体認識能力を包含しない、1以上の治療属性を有する天然T細胞を改変することによって、それらの抗原特異的認識とは無関係の目的を有し、かつ、GVHDを本質的に引き起こす傾向がない又は引き起こすことができないTビヒクル群を作成することができる。

0090

Tビヒクルは2以上の天然抗原特異的T細胞群を包含し得るが、Tビヒクルはその治療目的のためにそれらの天然抗原特異性に依存していないため、Tビヒクルはレシピエントの血清型がTビヒクルの1以上の天然抗原受容体に対して陽性適合を呈するか否かに関係なく、レシピエントに注入することができる。また、Tビヒクルが得られる1以上の天然T細胞群はGVHDの固有のリスクを持たないため、Tビヒクルの重要な属性としては、HLA不適合の場において使用されるそれらの能力が挙げられる。これは、最先端の方法で必要とされるHLA適合の制限なく、広範な社会に役立ち得るTビヒクルの同種バンクを確立させることができる。Tビヒクルがレシピエントに対してHLA不適合である天然の抗原特異性を有する場合、Tビヒクルの天然T細胞受容体は、レシピエントの細胞を認識し、GVHD引き起こすことができない。にもかかわらず、Tビヒクルは、その治療目的を達成するために天然抗原受容体に依存しない治療属性を有するように改変されているため、完全にHLA不適合の場においてそれらの治療活性を開始する。しかしながら、TビヒクルはHLA不適合の場での使用に限定されない。通常細胞では発現しない抗原に対する高度に制限された抗原特異性を伴う天然抗原受容体を有するT細胞からなるTビヒクルを作成することによって、レシピエントとTビヒクルの天然抗原特異性との間の部分的なHLA適合にもかかわらず、GVHD疾患の発症を回避することができる。TビヒクルをHLA適合又はHLA不適合の場で使用させるためには、Tビヒクルの天然抗原特異性が、通常細胞好ましくは通常のヒト細胞には存在しない抗原をTビヒクルに認識させることが好ましく、通常の哺乳類細胞には存在しない抗原の単一エピトープのみを認識できることが更により好ましい。

0091

Tビヒクルがレシピエントに対してHLA不適合である場合、レシピエントは、最終的にはTビヒクルを排除することになる激しい免疫応答を開始すると予想される。故に、1以上の追加のTビヒクル用量を付与することによって、Tビヒクルの治療目的を継続することができる。このプロセスは、所望の治療目的を得るために、必要に応じて継続することができる。好ましい方法において、Tビヒクルの各用量はHLAの点で異なるため、患者の免疫系は、Tビヒクルの新たな用量を攻撃しようとするたびに、それ自体準備し直さなければならず、それにより、Tビヒクルの各用量の間隔をおおよそ等しく保つ。

0092

高度に制限された抗原特異性を有する天然抗原受容体を有するT細胞を生産する方法:歴史的に見て、養子細胞療法での広範な使用に必要なスケールでT細胞群を生産することは実際には不可能であった。T細胞群を好ましいサイズの治療用量へと増殖するための最先端の生産方法はあまりに実用的ではなく扱いにくいため、少数の非常に専門的な機関で扱わねばならない極めて小さな個体群に細胞療法を限定する。Tビヒクルの基本的な属性は、それらの天然T細胞の特性が本質的にはレシピエントをGVHDに暴露しないということである。Tビヒクルの天然抗原特異性は正常細胞、より好ましくは正常なヒト細胞には存在しない抗原をそれらに認識させるだけであるのが好ましく、正常な哺乳類細胞には存在しない抗原の単一エピトープのみを認識できるのが更により好ましいため、これら細胞の効果的な生産は、Tビヒクルを包含する方法の広範な使用の基礎となる。このようなT細胞は、ドナーPBMC又は臍帯血中に非常に低い、時に検出不能な頻度で存在するにすぎない。よって、最先端のT細胞生産方法に固有の問題は、Tビヒクルでの使用に最も適するT細胞群を生成しようとすると悪化する。

0093

我々は、2012年5月18日に「養子細胞療法のための改良型細胞培養方法」という名称で出願された米国特許出願第13/475700号(以下、Vera’700と呼ぶ)(参照により本明細書に援用する)に記載されるような方法及び器具を発見した。これは、最先端の方法と相反し、本質的にレシピエントをGVHDに暴露しない天然の特性を有するT細胞を効率的に生産するものである。そのように行う際、ドナーPBMC又は臍帯血中に低頻度で見られるT細胞の実用的な生産に必要な長い期間が満たされる。更に、T細胞の天然抗原特異性に固有ではない治療属性を所有するT細胞の新規概念と組み合わせたとき、生物学的担体として機能するTビヒクルの生産が可能になり、実用的になる。

0094

1つの例示的方法において、培養開始時に、2以上の選択された抗原が、2以上の独特の抗原特異的T細胞群(各群は提示される抗原の1つに対する抗原受容体を発現する)の成長を刺激するために、PBMC又は臍帯血(すなわち、抗原特異的T細胞の元来の貯蔵場)に提示される。その意図は、生産のために最も豊富及び/又は望ましい天然T細胞群を後に選択して、その他のものを終結させることである。開始後に培養が進行するにつれ、様々な抗原に反応する様々なT細胞群は、それらの元の個体群の大きさに応じて、様々な個体数増殖レベルを呈する可能性がある。更に、それらの一部又は全ては検出不能であり続ける場合がある。しばらくしたら、選択された抗原のいずれかに反応するT細胞群の許容可能な成長に関して培養を評価する。このような評価は、1つの抗原に特異的なたった1つの個体群又は更なる抗原に特異的な更なる個体群に関するものである可能性がある。1つの抗原特異的T細胞群が許容可能な増殖を実証しているとき、それが認識する抗原を器具内に加えるだけで当該特定のT細胞群を再刺激して残りのT細胞を最終的に死滅させ、一方で、特定の目的のT細胞群は増殖し続ける。しかしながら、2以上のT細胞群が許容可能な増殖を実証しているときには2つの選択肢がある:1)培養物を、特定のT細胞群が反応している抗原のみで再刺激することができる(それによって、豊富ではないT細胞群の増殖を終結させる)、又は2)培養物を2つ以上の培養器具に分ける。各器具は他の全ての器具の抗原とは異なる単一の抗原を受容してたった1つのT細胞群を各器具内で増殖させ、最も豊富な培養物以外は全て最終的に終結される。好ましくは、全ての培養器具は気体透過性であり、同時係属米国特許公開公報2005/0106717A1(Wilsonら)(以下、Wilson‘717と呼ぶ)及び2008/0227176A1(Wilsonら)(以下、Wilson‘176と呼ぶ)(これらはいずれも参照により本明細書に援用する)に記載され、Vera‘700の方法に依拠する種類である。

0095

更なる例により、培養器具内に存在するPBMC群は、抗原A、抗原B及び抗原Cを提示することができる。しばらくすると、抗原A、B又はCに反応性である個体群の存在及び/又は増殖に関して培養物を評価することができる。抗原Aに反応性の抗原特異的群が、許容可能な頻度及び/又は個体数増殖を呈さない唯一の個体群である場合、抗原B及び抗原Cのみで再刺激することによってその個体群を終結させることができる。あるいは、抗原B及び抗原Cに反応性の抗原特異的群がほぼ等しく増殖しているが、いずれが最良の比率で増殖し続けるか不明である場合、最終的に1つの器具での生産を続け、他方の器具の生産は終結することを意図して、培養物を2つの器具に分けることができる。第1の器具は抗原Bを受容し、第2の器具は抗原Cを受容する。抗原Bに対する抗原特異性を呈するT細胞が第1器具内で増殖するが、抗原Cに対する抗原特異性を呈するT細胞は最終的には絶滅する。第2器具内では反対のことが起こる。やがて第1及び第2器具内での培養開始後のある時点で、目的のT細胞群の増殖が最も効率的でない培養物を終結させる目的で、頻度及び/又は個体群サイズの検討が開始され得る。当業者は、培養開始時にたった1つの抗原ではなく複数の抗原を用いることの主要な利点は、好適な抗原特異性及び成長速度を有するT細胞群を見つける可能性を増やすことであると認識すべきである。更に、1つの抗原を伴う複数の器具の代わりに1つの器具において複数の抗原を使用することにより、PBMC又は臍帯血、培地、サイトカイン、実験室スペース、労力及び生体有害廃棄スペースがより効率的に使用される。

0096

Tビヒクルの好ましい天然抗原特異性の選択についてここで説明する:Tビヒクルの天然抗原特異性のみが正常細胞、より好ましくは正常なヒト細胞には存在しない抗原をそれらに認識させるのが好ましく、正常な哺乳類細胞には存在しない抗原の単一エピトープのみを認識できるのが更により好ましいが、これは非限定的であり、当業者が考慮すべき天然抗原受容体の多くの好適な属性がある。多くの選択肢及び特性が好適である。例として、Tビヒクルの天然抗原特異性は、天然抗原特異性を有する2以上のT細胞群からなるものであり得る。Tビヒクルの天然抗原特異性は、自己又は非自己抗原爬虫類両生類魚類又は鳥類海綿動物腔腸動物蠕虫節足動物軟体動物又は棘皮動物などの無脊椎動物細菌類真菌類寄生虫及び海綿動物;アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロ・ウイルス(CMV)、アデノウイルス(Adv)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)、BKウイルスJCウイルスインフルエンザ、H1N1、パラインフルエンザ、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、パルボウイルスB19、コロナウイルスメタニューモウイルス、ボカウイルス又はK1ウイルス/WUウイルスなどを含むがこれらに限定されないウイルス;又はサバイビン、gp100、チロシナーゼSSX2、SSX4、CEA、NY−ESO−1、PRAME、MAGE−A1、MAGE−A3、MAGE−A4、クローディン−6、サイクリン−B1、Her2/neu−ErbB2、ヒストンH1.2、ヒストンH4、マンマグロビン−A、メラン−A/MART−1、Myc、p53、ras、PSA、PSMA、PSCA、Sox2、ストロリシン−3、Trp2、WT1、プロテイナーゼ3、Muc1、αフェトプロテイン、CA−125、bcr−abl、hTERT又は前立腺酸性フォスファターゼ−3の全抗原又は単一エピトープに対するものである可能性がある。

0097

ドナー細胞の適切な天然T細胞群の成長を促進するために、当業者は、米国特許公開公報第2011/0182870A1号(以下、Leen‘870と呼ぶ)(参照により本明細書に援用する)を精査し、樹状細胞単球マクロファージ、B細胞、T細胞、PBMC又は人工抗原提示細胞、例えば改変k562(これらはいずれも目的の抗原を提示して天然ドナーT細胞群の目的の抗原特異性及び故にTビヒクルの天然抗原特異性を生じることができる)を使用した刺激;目的の抗原を含有する細胞溶解物、目的の抗原を含有する精製タンパク質、目的の抗原を含有する組換えタンパク質、目的の抗原をコードするプラスミドDNA、目的の抗原をコードするプラスミドRNA、及び/若しくは目的の抗原を含有するペプチドライブラリー並びに/又は目的の抗原を含有する1以上の単一合成ペプチドによりドナー細胞において目的の免疫応答を誘導するための抗原の使用についても考慮すべきである。

0098

T細胞群の生産は、好ましくはVera‘700の方法及び/又は本明細書に提示されるものを用いて開始され、より好ましくはWilson‘717及びWilson‘176に記載される種類の気体透過性培養器具を利用して開始される。当業者は、記載された一連の実施例における多様な方法が各用途の特定の目的に応じて多かれ少なかれ適切であると認識すべきである。例えば、多様な表面密度、培地の高さ、培地容量:生育面面積比などが利用可能であり、同様に、IL2、IL15、IL21、IL12、IL7、IL27、IL6、IL18及び/又はIL4などのサイトカインによる様々な頻度や濃度での刺激、及び抗原提示方法のいずれかと組み合わせたいずれかの抗原供給源を用いた反復的なin vitroでの刺激の使用も可能であり、γ線捕獲磁気分離単一細胞クローニング及び/又はフローサイトメトリーなどを含むがこれらに限定されない方法により、細胞を選別して又は選別することなく開始され得る。

0099

実施例9:CMVエピトープNLVを認識する天然T細胞受容体を有するTビヒクルは非自己細胞標的を認識することができない。

0100

NLV−CMVに対する天然抗原特異性を有する抗原特異的T細胞を、先に記載した方法により12日間でPBMC中0.03%から87%の頻度に増殖させた。次いで、これらの細胞を、標的CMV抗原のNLVペプチドを提示する3体のHLA不適合ドナーから得られた細胞を有する培養物中に置いた。

0101

図17は、どのようにTビヒクルが不適合同種ドナー由来の細胞を認識できないか、NLVペプチド(「Auto4 pep」)を提示する自己細胞を認識しかつ死滅させる能力及びNLVペプチド(Auto4)を提示しない自己細胞の死滅を回避する能力によって実証されるように完全な機能性を有しているにもかかわらず、それらがNLVペプチド(「allo1」及び「allo1 pep」、「allo2」及び「allo2 pep」、「allo3」及び「allo3 pep」)を発現したか否かを示している。

0102

目的とする1以上の治療属性の選択及び作成:少なくとも1つの治療属性を包含するように抗原特異的T細胞群を改変するための広範な選択肢がある。以下の例は、非限定的であるが、治療属性の選択がどのようにして治療目的によって決まるのか、何故治療属性及びその治療目的がTビヒクル天然抗原受容体の抗原特異性とは無関係であるのかを当業者に認識させることを意図している。

0103

実施例10:免疫療法のアジュバントとして投与した、組換えタンパク質が負荷されたTビヒクル。

0104

免疫療法は、患者の免疫応答を引き出す又は増幅するように設計される治療クラスである。例としては、がん細胞上に発現した腫瘍抗原に対する免疫応答を活性化するように設計されるワクチンの投与又は生体外で増殖されたT細胞又はNK細胞の送達が挙げられる。IL2、IL7、GM−CSFのようなサイトカインなどの組換えタンパク質が全身に投与され、これら細胞の成長、増殖、持続及び/又は機能を生体内で促進するものであるが、一部のサイトカイン(例えば、IL2)の全身投与は、深刻な粘膜炎吐き気下痢浮腫呼吸困難、肝及び腎機能障害並びに誘導/注入されたT細胞の機能を損なう制御性T細胞の増殖を含む生体内での毒性と関連している。サイトカインを含む組換えタンパク質が負荷されたTビヒクルの投与は、炎症部位に移動し、これらの組換えタンパク質を免疫療法によって誘発された炎症部位に直接送達することによって、このような毒性を克服し得る。

0105

当業者は、Tビヒクルを使用して、伝統的な非特異的全身投与の代わりにこのようなサイトカインの送達を目的とし得ることを認識すべきである。例えば、サイトカインIL7を生産し、切断型CD34Δを発現することができるTビヒクルを作成すべく実験に着手した。この切断型CD34Δは、形質導入細胞の割合を検出し、トランスジェニック個体群を選択するのに使用することができる。この場合、図18に示すように、フロー分析によって測定されるとき、CMVウイルスのNLVエピトープに対して98%の天然抗原特異性を有するドナーT細胞を、CD34Δ−IL7サイトカイン発現の治療属性を有するTビヒクルを作成するように首尾よく改変した。更に、試験により、レトロウイルスベクター(CD34Δ−IL7サイトカイン)で修飾したTビヒクルのみが、ELISAで検出されるように、IL7を生産できることが実証された。

0106

IL7サイトカインの生体内での効果及び生体内での分配に関して、レトロウイルスベクター(CD34Δ−IL7サイトカイン)で修飾した治療的Tビヒクルを評価するために、マウスを2つのグループに分けた(1グループにつき5匹)。グループ1では、静脈注射によって全身投与された2000ngのIL7サイトカインで担腫瘍マウス処置した。グループ2では、10E+06Tビヒクルの単回静脈注射でマウスを処置した。次いで、各グループから無作為に選んだ被検体を1週目及び2週目に犠牲にし、心臓肝臓、腎臓、脾臓腹膜、腫瘍及び血液などの様々な位置でのIL7サイトカイン濃度をELISAによって評価した。

0107

図19Aは、グループ1について、様々な位置でのIL7サイトカイン蓄積を示している。IL7サイトカインのELISA分析により、より高いサイトカインレベルが腎臓で検出され、それらが腫瘍部位で検出限界未満であったことが実証されている。

0108

図19Bは、グループ2について、様々な位置でのIL7サイトカイン蓄積を示している。IL7サイトカインのELISA分析により、他の臓器と比較して腫瘍部位におけるサイトカイン濃度がより高く、Tビヒクル投与後から少なくとも2週間、サイトカイン生産が腫瘍で持続されたことを実証している。故に、Tビヒクルは、腫瘍部位に移動して、長時間サイトカインIL7を優先的に送達することができた。これは明らかに、サイトカインを送達することができる治療属性を有するTビヒクルの能力により、全身投与されるサイトカインの最先端の送達方法と比べて優れた治療的利点が得られることを実証している。予想されるように、1週目から2週目の間のサイトカイン濃度の低下によって示されるように、Tビヒクルの生体内での存在は制限されている。Tビヒクルがレシピエント内にとどまらないため、これはTビヒクルの更なる利点と見なすことができる。好ましくは、治療結果が満たされるまで、更なる用量のTビヒクルが必要に応じて投与され、更なる用量を投与しない場合、Tビヒクルはレシピエントから除去される。

0109

実施例11:治療属性が特定抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)であるTビヒクルを作成するようにドナーT細胞を修飾することができる。

0110

ウイルスCMVのエピトープNLVに対する天然抗原特異性を有するT細胞の98%を有するドナーT細胞(五量体分析によって評価される)を、前立腺幹細胞抗原(PSCA)を認識することができるCARを発現するという治療属性を有するTビヒクルを作成するように形質導入することができる。Tビヒクルの治療目的は、前立腺腫瘍細胞の破壊である。図20に示すように、四分割部分E2では、ドナーT細胞の57.23%が、フロー分析により測定されるとき、CAR−PSCAの治療属性を有するTビヒクルを作成するように首尾よく改変された。CAR−PSCAの治療属性を含むTビヒクルの死滅有効性を試験するために、未改変ドナーT細胞及びドナーT細胞をCAR−PSCAで修飾することによって作成されたTビヒクルを、抗原PSCA陽性(GFP+)又はPSCA陰性(mOrange+)である標的細胞と共に1:1の比で培養した。72時間の培養後、残留PSCA陽性腫瘍細胞数をフロー分析で測定した。図21は、72時間での実験結果を示しており、四分割部分A1は、PSCA陰性細胞数を表し、四分割部分A3は、Tビヒクル数を表し、四分割部分A4は、PSCA陽性腫瘍細胞数を表す。予想するように、72時間後、未改変ドナーT細胞は元の培養集団を改変しなかった。しかしながら、それとは逆に、CAR−PSCAを発現するTビヒクルは、PSCA陽性腫瘍細胞群全体をほぼ全滅させることができ、同時に、PSCA陰性細胞を無傷のままにしておくことによってPSCA抗原に対する優れた選択を実証した。これは明らかに、その天然抗原特異性とは無関係に治療的利点を生じるTビヒクルの能力を実証している。

0111

実施例12:治療属性がレシピエントにおいて望ましくないサイトカインを枯渇させることができる受容体であるTビヒクルを作成するように、ドナーT細胞を改変することができる。

0112

腫瘍細胞は、内因性T細胞の抗腫瘍効果を抑制する免疫抑制サイトカインを生産することによって免疫系から保護される。ドナーT細胞は、望ましくない特定サイトカインを腫瘍から吸引するという治療目的を付与するために特定のサイトカイン受容体が必要とされるものなら何でも発現するという治療属性を有するTビヒクルを作成するように改変され、それにより、免疫療法の戦略に対して腫瘍環境をより寛容なものにするという治療的利点を有することができる。図22A及び図22Bは、このようなプロセスを描写する図である。図22Aの描写では、IL4を結合することができる受容体の治療属性を含むTビヒクルが、IL4サイトカインを発現する腫瘍細胞に近接している。図22Bの描写では、TビヒクルにはIL4サイトカインが結合され、腫瘍細胞を保護するIL4サイトカインの量は、大きく低減されている。留意すべきは、Tビヒクルの治療属性、治療目的及び治療的利点がいかにTビヒクルの天然抗原受容体を包含せず、かつ、それとは無関係であるかということである。細胞外組換えサイトカイン受容体IL4R/7を発現するという治療属性を有するTビヒクルの能力を評価し、IL4サイトカインを枯渇させるために実験を行った。CMVウイルスのNLVエピトープに対する天然特異性を有するドナーT細胞を改変することによって、Tビヒクルを調整した。5E+05Tビヒクルを、24ウェルプレート内で、2000pg/mlのIL4の存在下、用量2mlの培地中で培養し、ドナーT細胞と比較した。次いで、サイトカインIL4の濃度を、24、48及び72時間目にELISAにより評価した。結果を図23に示す。72時間での免疫抑制腫瘍成長因子IL4サイトカインの低下が著しかったため、Tビヒクルは明らかにそれらの治療目的を達成することができた。逆に、ドナーT細胞(すなわち、「未修飾Tビヒクル」と名付けられたヒストグラム)は、IL4の存在を低減する能力を全く示さなかった。

0113

当業者は、Tビヒクルが多くの治療属性を備えることにより、レシピエントに治療的利点を付与することを意図した治療目的を達成することができるようになることを認識すべきである。ここで、開示された可能性を幾つかの更なる例により増補する。

0114

がんの標的治療のための化学療法剤の治療属性で改変されたTビヒクル:様々な化学療法剤又は抗腫瘍薬を使用して、乳がん前立腺がん膵臓がん肝臓がん肺がん脳腫瘍白血病、リンパ腫、黒色腫及び骨髄腫などの様々な種類のがんを治療する。ほとんどの化学療法静脈内に送達されるが、多くの薬剤経口投与され、その後体中を循環する。化学療法剤は、急速に分裂する(ほとんどのがん細胞の主要な特性の1つである)細胞を死滅させることによって作用する。これは、化学療法が正常な状況下で急速に分裂する細胞(例えば、骨髄消化管及び毛嚢における細胞)も傷付けてしまうことを意味する。この結果、化学療法の最も一般的な副作用骨髄抑制血液細胞生産の低下、故に免疫抑制)、粘膜炎(消化管粘膜の炎症)及び脱毛症毛髪損失)である。化学療法に誘発される吐き気及び嘔吐も、よく見られる治療の副作用である。これらの薬剤が負荷されたTビヒクルの投与は、これらの毒性を相殺する可能性を有する。これは、Tビヒクルに化学療法剤を含有させて、それらをレシピエントに注入することによって起こり得る。これにより、Tビヒクルは炎症(がん)部位に移動して走化性勾配下げる。このように、化学療法剤は、レシピエントに全身投与される場合とは対照的に、腫瘍細胞に近接して配置される。HLA不適合の場合、レシピエントの免疫系は、Tビヒクルに対する攻撃を開始することにより、それらは破壊されるが、腫瘍細胞部位では化学療法剤は放出されない。よって、負荷物(すなわち、化学療法剤)は、全身投与とは異なり、標的部位に直接堆積され、それにより、化学療法に関連するオフターゲット毒性を低減させる。

0115

このプロセスは、図24A図24B及び図24Cに示される通りである。図24Aに示すように、化学療法剤が負荷されたTビヒクルは、炎症部位(すなわち、腫瘍細胞)へ向かって移動し、Tビヒクルとレシピエント細胞とのHLA不適合に起因して、Tビヒクルの天然抗原受容体は、レシピエント細胞を認識せず、GVHDを引き起こすことなく腫瘍細胞へ到達する。図24Bに示すように、レシピエントの免疫系は、腫瘍細胞の部位に配置されたTビヒクルを標的とする。図24Cに示すように、レシピエントの免疫系による攻撃下で、Tビヒクルは腫瘍細胞の部位で化学療法剤を放出し、それにより、最先端の化学療法送達方法に固有のオフターゲット毒性を回避する。

0116

抗菌剤の治療属性で改変されたTビヒクル:抗菌剤は、細菌類、真菌類又は原生動物などの微生物を死滅させる又はその成長を阻害する物質である。これらの薬剤は、典型的には全身に投与され、それらの負荷物を送達するために炎症部位に戻る能力を有するTビヒクル上に負荷される場合には、より標的を絞って送達され得る。

0117

免疫療法のアジュバントとして投与される組換えタンパク質を生産するという治療属性で改変されたTビヒクル:外因性組換えタンパク質が負荷されるのと同様、Tビヒクルは、ウイルス(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスなど)又は非ウイルストランスフェクション手法を用いて遺伝子改変し、サイトカイン、ケモカイン、酵素、腫瘍抗原及びサイトカイン受容体を含む組換えタンパク質をトランスジェニック的に発現することができ、これらはまた、例えば、T細胞持続性を向上する、増殖を促進する、ホーミングを誘発するために他の免疫療法介入に対するアジュバントとして作用するように設計することもできる。

0118

腫瘍特異性を有する細胞を与えるトランスジェニック分子を発現するという治療属性で改変されたTビヒクル:同様に、サイトカインなどの組換えタンパク質でTビヒクルを修飾することができ、Tビヒクルはまた、ウイルス(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスなど)又は非ウイルストランスフェクション手法を用いて遺伝子改変し、キメラT細胞受容体(CAR)をトランスジェニック的に発現することもできる。

0119

自己免疫疾患治療のための組換えタンパク質が負荷される又は当該タンパク質で遺伝子改変されるという治療属性で改変されたTビヒクル:自己免疫疾患は、身体内に通常存在する物質及び組織に対する身体の不適切な免疫応答から生じる。換言すると、免疫系は、身体の一部を病原体と間違って、それ自身の細胞を攻撃する。これは一部の臓器に限定され得る。炎症を抑制するIL10、TGFB、IL13サイトカインなどの組換えタンパク質が負荷されたTビヒクルの投与は、これらの組換えタンパク質を無差別に分配するのではなく、必要とされる場合に組換えタンパク質を炎症部位に直接送達することによって、このような自己免疫作用を克服し得る。

0120

Tビヒクルは自殺遺伝子を発現するように遺伝子改変可能である:注入された細胞を迅速かつ完全に排除するために、Tビヒクルを安全スイッチ又は自殺遺伝子と共に組み込むことができ、これらの安全スイッチ又は自殺遺伝子は、万一毒性が生じた場合に作動し得る。自殺遺伝子の最も有効なものは、単純ヘルペスI型(HSV−tk)からのチミジンキナーゼである。この酵素は、非毒性プロドラッグであるガンシクロビルリン酸化し、次いでこのガンシクロビルは、内因性キナーゼによりリン酸化されてGCV−三リン酸塩となって、DNAに組み込まれると連鎖停止及び単鎖切断を引き起こし、それにより分裂中の細胞を死滅させる。幾つかの段階I−IIの研究は、ガンシクロビルの投与が移植HSV−tk−修飾細胞を生体内で安全に排除し得ることを示している。より最近になって、誘導性Fas、Fas関連死ドメイン含有タンパク質FADD)及びカスパーゼ9が、代替の非免疫原性自殺遺伝子として考えられている。これら分子の各々は、健康なボランディアにおいて安全性が証明された合成剤である二量化化学誘導物質CID)AP1903を結合するFK結合タンパク質(FKBP)変異体と融合されると、自殺スイッチとして作用し得る。この小分子を投与すると、プロアポトーシス標的分子架橋及び活性化が起こる。誘導性Fas又はFADDを形質導入されたT細胞の最大90%が、CIDへの曝露後にアポトーシスを受ける。有望ではあるが、形質導入細胞の90%を排除することは、遺伝子改変された細胞の安全性を生体内で確保するには不十分な場合がある。通常はB細胞上で発現されるCD20分子のトランスジェニック発現も、T細胞療法のための自殺遺伝子と仮定される。この戦略は、CD20抗原を発現する腫瘍性B細胞及び正常なB細胞の両方を排除するのに広く使用されるヒト化抗CD20抗体(リツキシマブ)の臨床利用可能性に依存している。よって、ヒトCD20をトランスジェニック的に発現するT細胞を注入し、次いでリツキシマブを生体内で投与することによって、注入されたT細胞群は効果的に排除されるが、正常なB細胞もやはり排除されてしまう。よって、Tビヒクルは、これら異なる自殺遺伝子の1つ又はそれらの組み合わせを発現して負荷物の排除及び送達を制御するように修飾可能である。

0121

生体内画像化に対して遺伝子改変された及び/又は負荷された治療属性で改変されたTビヒクル:ポジトロン放出断層撮影法(PET)は、身体内の機能的プロセスの三次元画像又は写真を生み出す核医学画像法である。このシステムは、身体内の生物学的活性分子上に導入されるポジトロン放出放射性核種トレーサー)によって間接的に放出されるγ線対を検出する。次いで、身体内のトレーサー濃度の三次元画像がコンピューター分析によって構築される。腫瘍部位まで移動するTビヒクルの能力に起因して、Tビヒクルは、腫瘍部位の位置を生体内で検出し、決定することを可能にする放射性同位体を負荷し得る。

0122

同様に、ヨウ素123(123I又はI−123)は、単光子放出コンピューター断層撮影法SPECT)などの核医学画像法で使用されるヨウ素の放射性同位体である。これは、甲状腺疾患診断検査に最も適する同位体である。およそ13.3h(時間)の半減期が24h(時間)ヨウ素摂取試験にとって理想的であり、123Iは、甲状腺組織及び甲状腺がん転移画像診断するための他の利点を有する。ヨウ素は、酵素甲状腺ペルオキシダーゼTPO)により生成される過酸化水素による「ヨウ素捕集」において選択的に捕獲されるため、甲状腺腫瘍の画像化又は処置のために安全に使用することができる。このように、Tビヒクルは、ヨウ素を捕集した後にTビヒクルを画像化/死滅させるために使用できる甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)で修飾可能である。

0123

当業者は、Tビヒクルの任意の所与の治療目的に関する治療属性が、以下の技術を含むがこれらに限定されない多くの技術によって作成可能であることを認識すべきである:
a)レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス又はレンチウイルスなどのウイルスベクターでの遺伝的修飾、及び/又は
b)トランスポゾン及びトランスポーゼース(例えば、SleepingBeauty)を使用するエレクトロポレーション及び/又はリポフェクション法、及び/又はピギーバック(Piggybac)技術などの物理的及び/又は化学的技術により組み込まれるDNA及び/又はRNAベクターの使用を含む、非ウイルスベクターによる遺伝的修飾、及び/又は
c)Tビヒクル移動を改変する、自殺遺伝子を組み込む、レシピエントの免疫再構築(例えば、サイトカイン生産)を改善する、及び/又は直接的な抗ウイルス又は抗腫瘍効果を導く(例えば、キメラ抗原受容体)又は自己免疫疾患治療のために免疫応答を抑制する1以上のトランスジーンを包含させるための遺伝的修飾、及び/又は
d)Tビヒクルの移動を改善するCCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3−A、CXCR5、CXCR6、CX3CR1及び/又はXCR1などの1以上のケモカイン受容体の発現によりTビヒクルの移動を改善するための遺伝的修飾、及び/又は
e)GM−CSF、TNFα、INFγ、IL2、IL8、IL15、IL7、IL12、IL21又はIL26などの1以上のサイトカインのTビヒクル発現により、又は、共刺激分子CD80、CD86、41BBL、OX40Lの発現又は過剰発現により、レシピエントの免疫再構築を改善するための遺伝的修飾、及び/又は
f)チミジンキナーゼTK遺伝子、CD20、CD19、iカスパーゼ9などの1以上の自殺遺伝子の発現によりTビヒクルの死を誘導するための遺伝的修飾、及び/又は
g)i)IgG−FC領域由来のCH2CH3配列を使用する細胞外スペーサーと、又はii)CD28、CD4、CD3又はCD8の配列を含むがこれらに限定されない膜貫通成分と、iii)CD3(エンドドメイン(endodomain)と連結された、又はiv)CD3(エンドドメインをコードするサイトカイン受容体又はサイトカインなどの天然リガンドの発現により連結された特定の抗体から単離された単鎖可変断片(scFv)を介して腫瘍標的を認識するキメラ抗原受容体(CAR)などの1以上のトランスジーンの発現、を含むがこれらに限定されない、直接的な抗ウイルス又は抗腫瘍効果を導くための遺伝的修飾、及び/又は
h)例えば、IL4、IL6、IL10、IL13、TFGβなどの1以上の免疫抑制サイトカインを生産するトランスジーンの発現により又はCTLA−4、PD1などの競合リガンドの発現により、自己免疫疾患治療のために免疫応答を抑制するための遺伝的修飾。

0124

当業者は、Tビヒクルの治療目的が以下のいずれかを含むがこれらに限定されない広範な範囲であり得ることを認識すべきである:
a)DNA、RNA、組換えタンパク質、ペプチド又はアプタマーを担持するための生物学的ビヒクルとして、
b)化学化合物を担持するための生物学的ビヒクルとして、
c)化学療法剤、小分子、ナノ粒子ホルモン作動薬又は拮抗薬抗ウイルス剤抗真菌剤抗寄生虫剤を含むがこれらに限定されない治療目的を有する化学化合物の担持を許容する生物学的ビヒクルとして、及び/又は
d)治療目的は持たないが、転移性疾患部位の同定を可能にする生体内での同定及び画像化を含むがこれらに限定されない副次的利点を有する1以上の化学化合物を担持するための生物学的ビヒクルとして。

0125

本明細書に引用される各々の出願、特許、及び論文、更にこれらの出願、特許、及び論文の各々に引用される各々の文書又は参考文献(各々の発行された特許の審査の間を含む;「出願引用文書」)、係属中の米国特許公開公報第2005/0106717号と第2008/0227176号、これらの出願及び特許の何れかからの優先権に対応するか及び/又は優先権を主張する各々のPCT及び外国出願又は特許、更に各々の出願引用文書に引用又は言及された各々の文書は、参照により本明細書中に明確に援用する。

0126

上記参照により援用した文書はいずれも、本明細書中の明確な開示に反する主題を援用しないように制限される。上記参照により援用した文書はいずれも、当該文書に包含されるクレームが本明細書中に参照により援用しないように更に制限される。上記参照により援用した文書はいずれも、当該文書中に付与された定義がいずれも明らかに本明細書中に包含されない限り、参照により本明細書中に援用しないように更に制限される。

0127

本発明のクレームを解釈するにあたり、特定の用語「〜ための手段」又は「〜ための工程」がクレーム中に記載されない限り、米国特許法第112条第6段落の規定を行使すべきではないことが明らかに意図される。

0128

当業者は、本明細書中に記載される発明の趣旨を逸脱しない限り、本開示に対して多くの変更を行うことができることを認識するであろう。故に、本発明範囲を記載される実施形態及び実施例に限定する意図はない。むしろ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物により解釈されるべきである。

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