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課題
解決手段
概要
背景
一般に、米糠は、玄米を精米する過程で得られる果皮、種皮、胚芽等が集合した組成物であり、古くから米糠油の原料、糠漬けの糠床等として用いられてきた。また、米糠には、抗腫瘍作用、抗酸化作用等を有するフィチン酸及びフェルラ酸、コレステロールの吸収抑制作用、更年期障害改善作用、紫外線吸収作用等を有するγ−オリザノール等の有用な成分が含まれていることが知られている。したがって、従来より米糠は、栄養価の高い健康食品の他、医薬品、化粧料等の原料にも用いられてきた。
また、近年、例えば特許文献1,2に開示されるように、米糠に特定のプロテアーゼを作用させることにより、ACE阻害活性等の生体に有用な作用の向上効果が見出されるようになった。
概要
脳機能の改善作用に優れる脳機能改善用組成物を提供する。本発明の脳機能改善用組成物は、米糠のサーモリシン処理物を含むことを特徴とする。前記サーモリシン処理物は、配列番号1及びLeu−Arg−Alaから選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。前記サーモリシン処理物は、圧搾脱脂米糠をサーモリシン処理したものであって、水溶性画分であってもよい。前記脳機能改善は、認知機能改善であってもよい。なし
目的
本発明の目的とする
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
背景技術
0002
一般に、米糠は、玄米を精米する過程で得られる果皮、種皮、胚芽等が集合した組成物であり、古くから米糠油の原料、糠漬けの糠床等として用いられてきた。また、米糠には、抗腫瘍作用、抗酸化作用等を有するフィチン酸及びフェルラ酸、コレステロールの吸収抑制作用、更年期障害改善作用、紫外線吸収作用等を有するγ−オリザノール等の有用な成分が含まれていることが知られている。したがって、従来より米糠は、栄養価の高い健康食品の他、医薬品、化粧料等の原料にも用いられてきた。
先行技術
0004
特許第6296722号公報
特許第6462100号公報
発明が解決しようとする課題
0005
本発明の目的とするところは、脳機能の改善作用に優れる脳機能改善用組成物を提供することにある。
課題を解決するための手段
0006
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、米糠のサーモリシン処理物が優れた脳機能の改善作用を発揮することを見出したことに基づく発明である。
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、米糠のサーモリシン処理物を含むことを特徴とする。
0007
前記サーモリシン処理物は、配列番号1及びLeu−Arg−Alaから選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。前記サーモリシン処理物は、圧搾脱脂米糠をサーモリシン処理したものであって、水溶性画分であってもよい。前記脳機能改善は、認知機能改善であってもよい。
発明の効果
0009
本発明によれば、優れた脳機能改善作用を発揮できる。
図面の簡単な説明
0010
第1試験グループ(米糠サーモリシン処理物+高脂肪食)の個体群の新規物体探索割合(%)を示すグラフ。
第2試験グループ(圧搾脱脂米糠(ハイブレフ)+高脂肪食)の個体群の新規物体探索割合(%)を示すグラフ。
0011
以下、本発明の脳機能改善用組成物を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態の脳機能改善用組成物に含まれる米糠のサーモリシン処理物の原料に用いられる米糠は、特に限定されないが、例えば米糠そのものであってもよく、脱脂米糠が適用されてもよい。脱脂米糠としては、例えば圧搾により脱脂された圧搾脱脂米糠、有機溶媒を用いて抽出処理された抽出脱脂米糠等が挙げられる。これらの原料の中で圧搾脱脂米糠が好ましい。圧搾脱脂米糠の製造方法としては、例えばまず搗精後に得られた米糠(生米糠)を加熱することでリパーゼを失活させ(リパーゼ失活処理)、さらに圧搾処理する方法が挙げられる。
0012
リパーゼ失活処理は、18〜20質量%程度の脂質を含有する米糠(生米糠)の酸化劣化を防ぐ目的で行われる。通常、生米糠を70〜130℃程度で加熱焙煎することにより行われる。圧搾処理は、公知の圧搾法、例えば加熱焙煎処理され100〜115℃程度になった米糠を低温連続圧搾機(例えばテクノシグマ社製の商品名:ミラクルチャンバー)により圧搾する方法を適用できる。圧搾は、圧搾後の脱脂米糠中の脂質が5〜20質量%程度となるまで行うことが好ましい。また、リパーゼ失活処理前の米糠や搾油後の脱脂米糠の水分含量を低減させる等の目的で乾燥処理を行ってもよい。更に、特に圧搾脱脂米糠は、公知の方法により粉砕、分級し、粉末状とすることが好ましい。この際、粉末の平均粒子径は、5〜200μmが好ましく、10〜150μmがより好ましく、40〜100μmが最も好ましい。平均粒子径は、篩法により測定できる。なお、脱脂米糠中の脂質含量は、特に限定されないが、5〜20質量%が好ましく、7〜15質量%がより好ましい。なお、脱脂米糠は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば商品名ハイブレフ(サンブラン社製)等が挙げられる。
0013
サーモリシンは、バチルス・サーモプロテオライティクス由来の中性金属プロテアーゼであり、EC番号は3.4.24.27である。サーモリシンは、上記微生物より抽出精製したものを使用してもよく、生化学的に合成したものを使用してもよく、また、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えばペプチド研究所社製、和光純薬工業社製等が挙げられる。
0014
サーモリシン処理物を得るための処理条件としては、サーモリシンの活性が得られる条件であれば、特に制限はされず、例えば温度、pH、時間等の諸条件を適宜設定できる。処理方法としては、例えば米糠原料に溶液として水を加え、必要によりpH調整を行った後、所定量のサーモリシンが添加される。サーモリシンの添加量は、処理条件、原料との比率、酵素の力価等を考慮し、適宜設定できる。サーモリシン処理時の米糠原料は、米糠原料としての米糠又は脱脂米糠をそのまま適用してもよく、米糠原料の水抽出物(水溶性画分)を適用してもよい。米糠原料の水抽出物は、米糠原料を水で抽出処理して得られた液体組成物(水及び抽出された米糠成分からなる)である。水抽出条件は、特に制限されないが、例えば10〜50℃程度の水に米糠原料を1〜24時間程度浸漬(又は撹拌)する方法が例示される。
0015
サーモリシンの処理条件としては、例えば米糠原料及びサーモリシンを水に混合したうえ、37℃前後で穏やかに撹拌しながら10〜30時間程度反応させることで処理を行うことができる。当該処理後、サーモリシンを失活させてもよい。サーモリシンの失活処理は、例えば加熱(例えば100℃、10〜20分程度の処理)等により行うことができる。
0016
サーモリシン処理物は、上述したように米糠をサーモリシンにより処理して得られた組成物であり、サーモリシンにより低分子化した米糠由来のタンパク質の分解物(特にペプチド)を含む組成物である。かかるペプチドとしては、約10kDa以下のものが含まれることが好ましい。より具体的には、配列番号1(Val−Tyr−Thr−Pro−Gly)及びLeu−Arg−Alaから選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。
0017
なお、サーモリシン処理後の処理液について、油分が含まれる場合には、さらに米糠タンパク質分解物が含まれる水溶性画分を取り出すことが好ましい。かかる水溶性画分には脳機能改善作用を発揮する成分が含まれている。水溶性画分は、サーモリシン処理後の処理液を例えば遠心分離することにより得られる。また、サーモリシン処理後の処理液は、濾過を行って不溶性画分を除いた濾液として回収することが好ましい。
0018
米糠のサーモリシン処理物の使用形態としては、特に限定されず、上記のように得られた処理液を液状の形態で脳機能改善用組成物としてそのまま適用してもよく、蒸留等により濃縮した濃縮液として適用してもよく、凍結乾燥等により乾燥させて固形物の形態で適用してもよい。
0019
米糠のサーモリシン処理物を含む脳機能改善用組成物は、特に経口摂取により優れた脳機能改善作用を発揮する。本実施形態の脳機能改善用組成物は、脳機能障害、特に記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害等の認知障害改善のために適用される。具体的には、認知障害を発症する認知症の治療、改善、予防のために用いられる。
0020
認知症としては、具体的にアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、アルコール性認知症等が挙げられる。認知症の改善とは、上述した記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害等の認知症の中核症状の改善の他、妄想、抑うつ、徘徊、不眠、幻覚、意欲の低下等の周辺症状の改善も含まれる。
0021
脳機能改善用組成物の適用形態としては、特に限定されず、例えば飲食品、医薬品、医薬部外品として適用される。米糠のサーモリシン処理物は、そのまま飲食品又は医薬品素材として用いてもよいし、薬学上又は食品衛生学上許容される担体、添加物等を適宜配合したうえで、製品としてもよい。
0022
本実施形態の脳機能改善用組成物を、食品、飲料等の飲食品に適用する場合、例えば食品添加用組成物、各種菓子類、ガム類、錠剤、カプセル(ソフトカプセル、ハードカプセル)、各種加工食品、各種飲料等に適用できる。形態としては、適用する素材に応じて適宜設計することができ、例えば粉末状、顆粒状等の固体状、ペースト状、液状等として構成できる。
0023
飲食品の用途としては、特に限定されず、いわゆる一般食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、病者用食品、特定用途食品、保健機能食品、栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品等として適用できる。飲食品において用途の表示を付す場合、各種法律、施行規則、ガイドライン等によって定められた表示が挙げられる。飲食品において用途の表示には、包装、容器等のパッケージへの表示の他、パンフレット等の広告媒体への表示も含まれる。
0024
本実施形態の脳機能改善用組成物の用途の表示内容としては、脳機能改善又は予防の表示の他、上述した中核症状及び周辺症状の改善又は予防の表示が挙げられる。また、これらの改善又は予防を示唆する表示も含まれる。例えば、認知機能の一部である記憶力、注意力、判断力、空間認識力を維持、サポート、又は向上等の表示が挙げられる。さらに具体的には、言葉、数、図形、色、位置情報、顔等の見聞きした物事の情報の記憶し、思い出す力(記憶力)を維持又はサポート、情報の記憶を助ける又は精度の向上、短期記憶(短時間で情報を保持し、同時に処理する能力)を維持又はサポート、注意力(事務作業の速度と正確さ)の維持、計算作業の効率維持等の表現が挙げられる。
0025
本実施形態の脳機能改善用組成物を、医薬品又は医薬部外品として使用する場合は、服用(経口摂取)により投与する場合の他、経腸投与等を採用することが可能である。剤形としては、特に限定されないが、例えば散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤等として構成してもよい。また、添加物として賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等を配合してもよい。
0026
本実施形態の脳機能改善用組成物の効果について説明する。
(1)本実施形態では、米糠のサーモリシン処理物を含むよう構成した。したがって、優れた脳機能の改善作用を発揮できる。特に認知機能の改善に優れた効果を発揮する。さらには、高脂肪食等の生活習慣由来の認知機能の低下においては、短期間の摂取で認知機能の回復に寄与できる。
0027
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の脳機能改善用組成物は、脳機能に関する症状の改善を目的として患者への適用のみならず、症状の悪化の防止、症状の低下の遅延、健常者が脳機能の低下の予防を目的とした摂取も含むものとする。また、ヒト以外の飼養動物に適用してもよい。
0028
・上記実施形態の脳機能改善用組成物において、医薬品、医薬部外品、又は飲食品に含まれる米糠のサーモリシン処理物の量は、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、固形分中において例えば0.1〜100質量%、好ましくは1〜90質量%含むよう構成できる。また、一日の摂取量、摂取期間も目的・容態等に応じて適宜設定できる。
0029
・上記実施形態の脳機能改善用組成物に配合した米糠のサーモリシン処理物中において、圧搾脱脂米糠を原料して調製した場合、米糠原料中の油性成分であるγ−オリザノールは、例えば50mg/100g(固形分)以下、好ましくは25mg/100g(固形分)以下、フェルラ酸は、例えば100mg/100g(固形分)以下に調製されてもよい。
0030
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(米糠のサーモリシン処理物の調製)
原料米糠としては、サンブラン社製の商品名ハイブレフを用いた。ハイブレフは、米糠を圧搾することより脱脂を行った圧搾脱脂米糠である。また、サーモリシンは、ペプチド研究所社製のもの(Code3504)を用いた。
0031
まず、超純水に米糠原料を30g/Lとなるように混合し、これにサーモリシンを0.4g/Lとなるように加えた。そして、当該混合物を37℃インキュベータ内でスターラーを用いて250r.p.m.で攪拌しながら20時間インキュベートしながら酵素処理した。次に、沸騰水浴に浸漬して15分間処理し、酵素を失活させた。その後、15℃、7150r.p.m.(8000×g)で15分遠心分離処理を行い、固液分離を行った。得られた上清のpHをNaOHを用いて7.0に調整し、フィルターペーパーNo.2(アドバンテック社製)を用いて濾過して、得られた濾液を凍結乾燥した。当該凍結乾燥物を、米糠サーモリシン処理物として使用した。なお、米糠サーモリシン処理物中には、限外濾過により約10kDa以下のペプチドが含まれていることを確認している。また、アミノ酸配列分析により、配列番号1及びLeu−Arg−Alaのペプチドが含まれていることを確認している。
0032
(認知機能の測定)
試験方法は、マウスの物体認識試験法(Marianne. leger et al., Nature Protocols 8 (12), 2531-2537, 2013)に基づいて行った。
0033
第1試験グループにおいて、通常食(コントロール)、高脂肪食、及び上記米糠サーモリシン処理物を0.4質量%配合した高脂肪食をマウスの各個体群(n=5-8)に1週間それぞれ与えた。また、第2試験グループにおいて、通常食、高脂肪食、及びサーモリシン処理を行っていない圧搾脱脂米糠(ハイブレフ)を0.4質量%配合した高脂肪食をマウスの各個体群(n=5-8)に1週間それぞれ与えた。
0034
尚、試験に用いたマウスは、10週齢の雄ddYマウスを使用した。通常食としてはMF飼料(オリエンタルバイオ社製)、高脂肪食としては表1に示される成分からなるHFD-60(オリエンタルバイオ社製)を使用した。米糠成分を配合した高脂肪食としては、表1に示されるようにHFD-60の組成をベースとして調製した。また、高脂肪食に配合した米糠サーモリシン処理物及び圧搾脱脂米糠(ハイブレフ)について、それぞれ総フェルラ酸及びγ−オリザノールの含有量をHPLCを用いて測定した。結果を表2に示す。
0035
0036
飼育6日目に、各個体群中のマウス1匹を所定の大きさの箱の中に入れ、5分間環境に順応させた(馴化1)。24時間後、2個の物体が左右1箇所ずつ設置された箱の中にマウスを入れ、両方の物体探索時間の合計が20秒になるまで行動させた後にその箱から取り出し、ケージに戻した(馴化2)。この際、箱に入っている物体は2個とも同じもので積み木又はフラスコである。さらに1時間後に2個の物体のうち片方を別の形の物体で置き換えた箱の中にマウスを入れ、両方の探索時間の合計が20秒になるまでマウスを行動させ、そのうち置き換えた新規物体の方の探索時間の割合(%)を求めた。
0037
尚、新規物体が右側にあるか左側にあるかは完全にランダムになるように試験した。試験の箱は、パーテーションで区切られた区画に設置し、試験者は箱の上空に設置したビデオカメラを通じてパーテーション外から行動を観察し、マウスからは見え無いようにした。本試験は、全て12時間の明期及び12時間の暗期周期となるように設定された23℃に設定された施設で行っている。
0038
各試験グループの個体群において平均値±標準偏差を求めた。第1試験グループ(米糠サーモリシン処理物+高脂肪食)の個体群の結果を図1に示す。第2試験グループ(圧搾脱脂米糠(ハイブレフ)+高脂肪食)の個体群の結果を図2に示す。*は、p<0.05(tukey’s多重検定)を示す。
0039
図1,2に示されるように、通常食を与えたマウスでは、新規物体の探索時間の割合が多いことが確認される。そして、高脂肪食を与えた場合、新規物体の探索時間の割合が通常食の場合に比べて低下することが確認される。つまり、生活習慣、特に食生活の乱れにより認知機能の低下が生ずることが確認される。かかる認知機能が低下する環境下において、米糠サーモリシン処理物を高脂肪食に添加した個体群においては、有意に新規物体の探索時間の割合の上昇が認められた(図1)。つまり、米糠サーモリシン処理物の摂取により、認知機能の回復が認められた。一方、サーモリシン処理を行っていない圧搾脱脂米糠(ハイブレフ)を高脂肪食に添加した個体群においては、認知機能の回復が認められなかった(図2)。米糠をサーモリシン処理することにより生成する成分が認知機能の回復に寄与していることが示唆された。また、表2に示されるように、米糠サーモリシン処理物は、圧搾脱脂米糠と比べてフェルラ酸及びγ−オリザノールの含有量が著しく少ないため、認知機能の回復はこれら以外の成分の関与が示唆された。
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