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課題
解決手段
概要
背景
炎症の治療薬として、ステロイド剤や非ステロイド性抗炎症剤が使用されている。しかし、これらを長期服用することで胃腸管潰瘍、腎機能不全、肝不全などの重篤な副作用を伴いQOLを大きく損なう場合がある。また、潰瘍性大腸炎などの治療法として、白血球除去療法があるが、侵襲性と時間的拘束を伴う欠点がある。そこで、副作用が少なく、かつ侵襲を伴わない炎症に対する治療・予防物質の探索が必要である。
消費者の健康志向は近年特に高まりを見せており、多種多様な健康食品が販売されている。ハーブを含む飲食物も多く出回っている。ハーブティーについては、鎮静効果、消化促進効果等の様々な効果が謳われている。例えばシソ科の植物には抗変異原性が認められているものがある(非特許文献1)。ハーブのさらなる効果についても研究が進められている。
概要
炎症抑制効果が大きく、かつ安全性の高い食品組成物、医薬組成物、化粧品および医薬部外品を得る。シソ科植物の葉の糸状菌発酵物またはその抽出物、それを含む食品組成物、医薬組成物、化粧品および医薬部外品。なし
目的
本発明は、1の態様において、シソ科植物の葉の糸状菌発酵物を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
背景技術
0002
炎症の治療薬として、ステロイド剤や非ステロイド性抗炎症剤が使用されている。しかし、これらを長期服用することで胃腸管潰瘍、腎機能不全、肝不全などの重篤な副作用を伴いQOLを大きく損なう場合がある。また、潰瘍性大腸炎などの治療法として、白血球除去療法があるが、侵襲性と時間的拘束を伴う欠点がある。そこで、副作用が少なく、かつ侵襲を伴わない炎症に対する治療・予防物質の探索が必要である。
0003
消費者の健康志向は近年特に高まりを見せており、多種多様な健康食品が販売されている。ハーブを含む飲食物も多く出回っている。ハーブティーについては、鎮静効果、消化促進効果等の様々な効果が謳われている。例えばシソ科の植物には抗変異原性が認められているものがある(非特許文献1)。ハーブのさらなる効果についても研究が進められている。
先行技術
発明が解決しようとする課題
課題を解決するための手段
0006
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、糸状菌を用いてシソ科植物の葉を発酵させたものが優れた炎症抑制効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
0007
すなわち本発明は以下のものを提供する:
(1)シソ科植物の葉の糸状菌発酵物。
(2)シソ科植物がシソまたはバジルである(1)または(2)記載の発酵物。
(3)糸状菌がテンペ菌である(1)記載の発酵物。
(4)(1)〜(3)のいずれか記載の発酵物の抽出物。
(5)糸状菌を用いてシソ科植物の葉を発酵させることを含む、シソ科植物の葉の発酵物の製造方法。
(6)発酵物が抗炎症活性を有するものである(5)記載の方法。
(7)シソ科植物がシソまたはバジルである(5)または(6)記載の方法。
(8)糸状菌がテンペ菌である(5)〜(7)のいずれか記載の方法。
(9)(1)〜(3)のいずれか記載の発酵物または(4)記載の抽出物を含む食品組成物。
(10)炎症を抑制するために用いられる(9)記載の食品組成物。
(11)(1)〜(3)のいずれか記載の発酵物または(4)記載の抽出物を含む医薬組成物。
(12)炎症を抑制するために用いられる(11)記載の医薬組成物。
(13)(1)〜(3)のいずれか記載の発酵物または(4)記載の抽出物を含む化粧品または医薬部外品。
(14)炎症を抑制するために用いられる(13)記載の化粧品または医薬部外品。
(15)(1)〜(3)のいずれか記載の発酵物または(4)記載の抽出物を含む、抗炎症剤の補助剤。
発明の効果
0008
本発明によれば、経口摂取した場合に優れた炎症抑制効果を有し、しかも副作用がないか、あっても少ないシソ科植物の葉の発酵物およびその抽出物が得られる。本発明の発酵物またはその抽出物を用いることにより、炎症抑制効果に優れ、かつ安全な食品組成物を簡単に得ることができる。本発明の発酵物またはその抽出物、およびそれを含む飲食物は風味がよく、継続的に摂取することが容易である。本発明の飲食物を用いて、ぜんそく、気管支炎、リウマチ、関節痛、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、胃腸痛、外傷などの炎症に関連した状態を抑制することができる。
図面の簡単な説明
0009
図1は、本発明の発酵物の抽出物の抗炎症活性を、in vitroにて調べた結果を示すグラフである。
図2は、本発明の発酵物の抽出物の抗炎症活性を、in vivoにて調べた結果を示すグラフである。
0010
本発明は、1の態様において、シソ科植物の葉の糸状菌発酵物を提供する。
0011
本発明は、もう1つの態様において、糸状菌を用いてシソ科植物の葉を発酵させることを含む、シソ科植物の葉の発酵物の製造方法を提供する。本発明の発酵物は抗炎症活性を有しているので、炎症を抑制するために用いることができる。
0012
シソ科植物の葉の糸状菌発酵物は糸状菌により発酵されたシソ科植物の葉をいう。本発明におけるシソ科植物の葉は、葉以外の部分を除去したものであってもよく、茎、花、根などの葉以外の部分が混入したものであってもよい。
0013
シソ科(Lamiaceae)は、シソ目に属する植物の科の1つである。シソ科植物はシソ科に属する植物をいう。本発明において用いられるシソ科植物はいずれの種類であってもよいが、シソ、バジル、ミント、ローズマリー、ラベンダー、セージ、マジョラム、オレガノ、タイム、レモンバームなどの食用あるいはハーブとして用いられるものが好ましい。本発明において用いられるシソ科植物の産地はいずれの産地であってもよい。本発明において、より好ましく用いられるシソ科植物はシソおよびバジルである。シソはいずれの種類のものであってもよく、例えば青ジソおよび赤ジソが挙げられるがそれらに限定されない。バジルについてもいずれの種類のものであってもよく、例えばホーリーバジル、スイートバジル、タイバジル、シナモンバジルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
0014
糸状菌は、菌糸と呼ばれる管状の細胞から構成されている菌類で、一般的に「カビ」と呼ばれている生物である。本発明において用いられる糸状菌は、人体に害のないものであればいずれのものであってもよいが、テンペ菌、麹菌、ケカビ、チーズカビなどの食品や酒類の製造に用いられるものが好ましい。本発明において、より好ましく用いられる糸状菌はテンペ菌である。テンペ菌はクモノスカビ(Rhizopus属)に属するカビで、インドネシアの伝統的な大豆発酵食品であるテンペの製造に用いられる。テンペ菌としては、Rhizopus oligosporus、Rhizopus stolonifer、Rhizopus oryzae、Rhizopus arrhizusなどが挙げられるが、これらに限定されない。市販のテンペ菌の種菌を用いてもよい。
0015
原料であるシソ科植物の葉は、発酵前に乾燥、細断、および/または滅菌しておくことが好ましい。乾燥方法および手段は公知であり、自然乾燥、熱風乾燥、流動層乾燥、低温乾燥などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば調湿された部屋にて約30℃〜約40℃で数日置くいてもよく、約40℃〜約60℃で約1〜約6時間熱風乾燥を行ってもよい。細断方法および手段も公知であり、様々なタイプの裁断機やカッターミルなどが知られているが、これらに限定されない。例えば葉を約2mm〜約5mm四方のサイズに細断できる装置を用いてもよい。滅菌方法および手段も公知であり、加熱、電磁波照射などが挙げられるが、これらに限定されない。例えばオートクレーブや電子レンジを用いて滅菌を行ってもよい。
0016
テンペ菌を接種する前に、シソ科植物の葉を焙煎してもよい。焙煎することにより発酵物およびその抽出物の風味を良好なものとすることができる。焙煎温度、焙煎時間などの焙煎条件は、シソ科植物の葉の種類、状態、望まれる風味などに応じて適宜決定しうる。焙煎温度を例えば約65℃〜約130℃としてもよく、焙煎時間を例えば約5分〜約60分としてもよい。焙煎条件はこれらの条件に限定されない。
0017
シソ科植物の葉にテンペ菌を接種することにより発酵を開始する。テンペ菌の接種量は適宜決定しうる。市販のテンペ菌の種菌を用いる場合は、シソ科植物の葉の重量に対して約0.1重量%〜約5重量%、好ましくは約0.2重量%〜約3重量%、例えば約0.5重量%〜約2重量%の割合で種菌を接種する。テンペ菌の接種量はこれらの量に限定されるものではない。
0018
発酵条件は適宜定めうる。発酵温度はテンペ菌の増殖に適した温度範囲が好ましく、約25℃〜約37℃、好ましくは約26℃〜約32℃、例えば約27℃〜約30℃で発酵を行う。発酵時間は、発酵物の抗炎症活性が十分高く、風味が好ましいものとなるように選択することができる。発酵時間は、例えば約24時間〜約72時間、好ましくは約30時間〜約60時間、例えば約40時間〜約50時間である。発酵条件は、これらの条件に限定されるものではない。
0019
発酵は、テンペ菌増殖促進物質の存在下で行ってもよい。テンペ菌増殖促進物質は、シソ科植物の葉の存在下でテンペ菌の増殖を促進する物質であればいずれの物質であってもよい。増殖が促進されることにより発酵が促進される。好ましくは、テンペ菌増殖促進物質は、人体に害がなく、発酵物の風味を損なわない物質である。このような物質の例として、コメ、ムギ、トウモロコシ、キビ、ヒエ、アワ、大豆、小豆などの種子またはその一部が挙げられるが、これらに限定されない。テンペ菌増殖促進物質の好ましい具体例として、玄米(焙煎玄米、発芽玄米、籾付き玄米など)、ヌカ(米ヌカ、小麦ふすま、麦ヌカなど)、白米、小麦、大麦、ハト麦、トウモロコシ、脱脂加工大豆などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの甲類は、そのまま、すり潰して、あるいは粉にして用いてもよい。テンペ菌増殖促進物質は1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
0020
テンペ菌増殖促進物質の使用量は適宜決定しうる。シソ科植物の重量に対して、約5重量%〜約50重量%、好ましくは約10重量%〜約40重量%、例えば約15重量%〜約30重量%のテンペ菌増殖促進物質を使用する。テンペ菌増殖促進物質の使用量は、これらの量に限定されるものではない。
0021
発酵を効率的に進行させるために、適切な量の水を加えて発酵を行うことが好ましい。シソ科植物の葉の重量に対して、約0.5倍〜約3倍、好ましくは約1倍〜約2倍、例えば約1.2倍〜約1.8倍の水を添加してもよい。水の添加量は、これらの量に限定されるものではない。
0022
さらに、テンペ菌の増殖を促進し、発酵を効率的に進行させるために、テンペ菌増殖促進物質以外の物質を添加してもよい。このような物質は、人体に害がなく、発酵物の風味を損なわないものであることが好ましい。このような物質の例としては、澱粉、デキストリン、麦芽糖、ぶどう糖、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、ビタミン、ミネラルなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような物質の添加量は、テンペ菌の増殖を促進し、発酵を効率的に進行させ、しかも発酵物の風味を損なわない量とすることができる。
0023
発酵中の雑菌の繁殖を抑制するために、雑菌抑制剤を適量添加して発酵を行ってもよい。雑菌抑制剤は、人体に有害でなく、発酵物の風味を損なわないものであることが好ましい。雑菌抑制剤の例としては安息香酸、ソルビン酸、プロピオン酸カルシウム、デヒドロ酢酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。雑菌抑制剤の添加量は、雑菌抑制剤の種類、抑制すべき雑菌の種類や量などに応じて適宜決定できるが、例えばシソ科植物の葉の重量に対して約1%〜約10%、例えば約3%〜約7%であってもよい。雑菌抑制剤の添加量は、これらの量に限定されない。
0024
発酵終了後、必要に応じて発酵物を滅菌してもよい。滅菌方法および手段は公知であり、例えば加熱、電磁波照射などが挙げられるが、これらに限らない。
0025
本発明の糸状菌発酵物の形態はいずれの形態であってもよく、特に限定されない。本発明の糸状菌発酵物は、上記のようにして得られた糸状菌発酵物そのままの形態で提供されてもよく、乾燥、細断、破砕、粉末化等の公知の方法にて加工して提供されてもよい。例えば発酵物を公知の方法にて乾燥、細断して茶葉様に加工してもよい。あるいは発酵物を粉末、フレーク、ブロック、ペレット、顆粒等の形状に加工してもよい。
0026
本発明は、さらなる態様において、上記糸状菌発酵物の抽出物を提供する。抽出は、典型的には、糸状菌発酵物と適量の抽出溶媒を混合することによって行うことができる。糸状菌発酵物と抽出溶媒の割合は適宜決定することができる。抽出溶媒としては、飲食物、医薬品、または化粧品もしくは医薬部外品の製造に使用されているものであればいずれのものであってもよく、適宜選択することができる。抽出溶媒の例として、水、エタノールおよび水とエタノールの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。抽出温度や抽出時間についても適宜決定することができる。例えば、糸状菌発酵物を沸騰水にて数分間抽出してもよい。抽出物を公知の方法にて濃縮してもよい。
0027
本発明の糸状菌発酵物の抽出物の形態は特に限定されず、液体、固体、半固体のいずれであってもよい。液体の抽出物を蒸発乾固や凍結乾燥等の公知の方法にて処理して、粉末、顆粒、フレーク、ブロック、ペレット等に加工してもよい。
0028
本発明の発酵物およびその抽出物は抗炎症活性を示すので、炎症および炎症関連症状を抑制するために用いることができる。本発明の発酵物やその抽出物は経口摂取することができる。シソやバジルの葉をテンペ菌で発酵させて得られた本発明の発酵物およびその抽出物は、原料および使用菌ともに食用であるため安全性が極めて高く、しかも風味がよい。抗炎症活性は、例えば実施例に記載の方法にて確認することができる。
0029
炎症を抑制する、炎症抑制、または抗炎症とは、炎症を治療することおよび予防することを包含する、具体的には、炎症を緩和すること、炎症を無くすことのほか、炎症を未然の防ぐこと、炎症が生じた際にその程度を軽くすることを包含する。
0030
本発明は、さらなる態様において、本発明の糸状菌発酵物またはその抽出物を含む食品組成物を提供する。本発明の食品組成物は抗炎症活性を有するので、炎症を抑制するために用いることができる。食品組成物という場合、特定保健用食品、機能性表示食品および栄養機能食品などのいわゆる健康食品を包含する。
0031
本発明の食品組成物はあらゆる形態の飲食物であってよい。本発明の食品組成物は、茶飲料、ジュースなどの液体であってもよく、粉末、顆粒、塊状、棒状、板状のごとき固体であってもよく、ペースト、クリームなどの半固体であってもよい。本発明の食品組成物を液体、固体または半固体として調製する方法は公知である。
0032
本発明の発酵物またはその抽出物をそのまま食品組成物として提供してもよく、あるいは本発明の発酵物またはその抽出物を既存の飲食物、例えば清涼飲料水、茶、スープ、菓子、惣菜、麺類、調味料などに含ませた食品組成物を製造してもよい。
0035
本発明の発酵物またはその抽出物を含む食品組成物の好ましい形態として、茶および茶飲料が挙げられる。本発明の発酵物を乾燥、細断したものを、いわゆる「茶」として提供してもよい。本発明の発酵物を乾燥、細断したものを、布袋または不織布の袋に入れてティーバッグとして提供してもよい。
0036
本発明の発酵物、その抽出物および食品組成物はサプリメントの形態であってもよい。サプリメントの製造方法は公知であり、製薬分野で公知の担体や賦形剤を用いてサプリメントを製造してもよい。サプリメントは、ジュース、茶飲料、ドリンク剤、エキス剤などの液剤;錠剤、粉末、顆粒、ドロップ、トローチなどの固形剤;ペースト、ゼリーなどの半固形剤;あるいはカプセル剤などとして提供してもよい。
0037
本発明は、さらなる態様において、本発明の糸状菌発酵物またはその抽出物を食品または食品原料に配合することを含む、食品組成物の製造方法を提供する。上述のとおり、本発明の食品組成物は抗炎症活性を有する。本発明の発酵物またはその抽出物を、食品原料に配合してもよく、食品組成物の製造過程で配合してもよく、製造された飲食物に配合してもよい。あるいは本発明の発酵物またはその抽出物を担体または賦形剤に配合してもよい。
0038
本発明の発酵物またはその抽出物を含有させる食品および食品原料は、いかなる種類の食品であってもよく、またいかなる種類の飲料であってもよく、特に限定されない。本発明の発酵物またはその抽出物を含有させる担体または賦形剤は生体に有害でないものであればいずれのものであってもよいが、食品への使用が許容されるもの、または医薬への使用が許容されるものであることが好ましい。
0039
本発明の発酵物またはその抽出物を食品または食品素材、あるいは担体または賦形剤に含有させる方法は公知であり、撹拌、混合、混練などが例示されるが、これらに限定されず、適宜選択することができる。また、混合等のための手段も公知であり、適宜選択して用いることができる。
0040
本発明は、さらなる態様において、本発明の糸状菌発酵物またはその抽出物を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物を、炎症を抑制するために用いることができる。本発明の糸状菌発酵物またはその抽出物を医薬上許容される担体または賦形剤と混合することにより、本発明の医薬組成物を得ることができる。医薬組成物の製造方法および手段は公知である。医薬組成物の剤形や投与経路についても公知であり、当業者は適宜選択することができる。本発明の医薬組成物の典型的な投与経路は経口投与および経皮投与であるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物の剤形も特に限定されないが、錠剤、顆粒、粉末、ドリンク、ドロップ、トローチなどの経口剤、パッチ、クリーム、ローション、ゲル、乳液、パスタ、軟膏などの経皮剤などが例示される。
0041
本発明は、さらなる態様において、本発明の発酵物またはその抽出物を含む化粧品および医薬部外品を提供する。本発明の化粧品および医薬部外品を、炎症を抑制するために用いることができる。本発明の化粧品や医薬部外品を、例えば肌や歯茎などの炎症を抑制するために、肌の赤みを抑制するために、あるいは日焼け止めとして用いてもよいが、これらの用途に限定されない。本発明の化粧品や医薬部外品はいずれの形態であってもよく、例えばローション、クリーム、ゲル、乳液、パスタ、軟膏、パッチ、歯磨き、入浴剤、洗顔剤、セッケン、シャンプーなどであってもよい。本発明の糸状菌発酵物またはその抽出物を、化粧品や医薬部外品における使用が許容されている担体または賦形剤と混合することにより、本発明の化粧品や医薬部外品を製造することができる。化粧品や医薬部外品の製造方法および手段は公知である。
0042
本発明の発酵物またはその抽出物の投与量、適用量または摂取量については、医師や需要者が適宜定めうる。例えば、本発明の医薬組成物の場合、所望の抗炎症効果が見られるまで徐々に投与量を増加させていくことにより、投与量を決定してもよい。本発明の食品組成物、化粧品または医薬部外品の摂取量または適用量についても、医薬組成物に準じた量、あるいはそれよりも少ない量としてもよい。
0043
本発明の発酵物、その抽出物、およびそれら含む食品組成物、医薬組成物、あるいは化粧品または医薬部外品を、抗炎症剤、例えばプレドニゾロンやベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルチカゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾンなどのステロイド系抗炎症剤、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ジクロフェナクなどの非ステロイド性抗炎症剤などと併用してもよい。このような併用によって、炎症抑制剤の効果を補助することができる。またこのような併用によって、抗炎症剤の投与量を減らすことができ、これらの薬の副作用を減じることができる。したがって、本発明は、さらなる態様において、本発明の発酵物またはその抽出物を含む、抗炎症剤の補助剤を提供する。本発明の補助剤の剤形は医薬品と同様のものであってもよく、食品組成物、化粧品または医薬部外品の形態であってもよい。
0044
本明細書中の用語は、特に断らない限り、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、医学、薬学、化学、生物学等の分野において通常に理解されている意味に解される。本明細書において数値の前に付される「約」は、その数値の±30%、好ましくは±20%、より好ましくは±10%の範囲を意味する。
0045
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものと解すべきでない。
0046
(A)シソ科植物の葉の発酵物の調製
(A−1)ホーリーバジルの葉の発酵物の調製
ホーリーバジルの葉を洗浄し、除湿した部屋(湿度40〜50%、室温30〜35℃)に5〜7日間置いた。その後、温度55℃で5時間〜7時間機械乾燥を行って、水分値を6〜8%とした。乾燥した葉を、68℃〜75℃で10分〜15分焙煎した。焙煎した葉を2〜3mmに裁断した。裁断した葉100重量部、テンペ種菌1重量部、雑菌抑制剤5重量部、水130重量部を混合し、27℃〜30℃で44時間〜50時間発酵を行った。発酵後、電磁波殺菌装置にて800秒間殺菌を行い、発酵物を得た。
0047
(A−2)ソシの葉の発酵物の調製
乾燥、刻み済みのシソの葉を、115℃〜120℃で21分〜30分焙煎した。焙煎した葉100重量部、テンペ種菌1重量部、雑菌抑制剤5重量部、水180重量部を混合し、27℃〜30℃で44時間〜50時間発酵を行った。発酵後、電磁波殺菌装置にて800秒間殺菌を行い、発酵物を得た。
0048
比較のため、発酵させていないホーリーバジルの葉、発酵させていないシソの葉、発酵させていない桑の葉、上記(A−1)または(A−2)と同様にして調製した桑の葉の発酵物、緑茶、および紅茶も用意した。
0049
(B)試験試料の調製
ホーリーバジルの葉の発酵物、シソの葉の発酵物、桑の葉の発酵物、発酵させていないホーリーバジルの葉、発酵させていないシソの葉、発酵させていない桑の葉、緑茶および紅茶それぞれ2.3グラムあたり1リットルの熱湯を加え、3分間煮沸抽出した水溶液を試料とした。発酵させていないシソ葉、ホーリーバジルの葉、桑の葉、および上記と同様にして得た桑の葉の発酵物についても、それぞれ2.3グラムあたり1リットルの熱湯を加え、3分間煮沸抽出した水溶液を試料とした。
0050
(C)試験方法
以下に述べる材料および方法を用いて、試料の抗炎症活性について調べた。
(C−1)細胞培養
マウス血管内皮細胞(MBE)は、北海道医療大学の浜田淳一教授より提供を受けた。予め1%ゼラチン(富士フィルム和光純薬、071−06291、大阪)溶液で1昼夜コーティングした10cmディッシュ(Corning 430167、NY)のゼラチン溶液をPBSで洗い流したディッシュを使用した。培地は、DMEM培地(日水製薬株式会社、05919、東京)とF−12 Ham培地(Sigma 05910、東京)を等量混和したものに10%のウシ胎児血清(FBSフナコシ、S1780、東京)を加えて使用した。MBE細胞は、37℃、5%CO2インキュベーター内で維持した。
0051
(C−2)炎症細胞の血管内皮細胞への接着アッセイ(in vitroアッセイ)
炎症細胞の回収は以下の手順に従い回収した。麻酔をした雌性C57BL/6マウスの腹腔内に10mm×5mm×3mmの止血用ゼラチンスポンジ(スポンゼル:アステラス製薬、東京)を移入した後、ミッヘル針(夏目製作所、C−21−M、東京)にて閉腹した。スポンジ移入5日目にマウスを犠牲死させ、500mLのPBSに5mLのヘパリン溶液(20units/mL、持田製薬 873334、東京)を加えた氷冷溶液を10mLシリンジ(テルモ株式会社、SS−10EZS、東京)に22G針(株式会社トップ、00811、東京)を装着させた注射筒を用いて腹腔内に5mL注入し、腹腔浸出細胞を回収した。この腹腔浸出細胞の回収操作は3回繰り返した。腹腔浸出細胞は1500rpm、5分間の遠心後,細胞ペレットに37℃の溶血バッファー(NH4Cl:Tris−HCl=9:1、pH=7.65)10mLを加えて1分間作用させ赤血球を除去した。さらに1500rpm、5分間遠心して回収した細胞は、次にPKH67(Sigma AldrichMIDI67−1KT、東京)で蛍光標識し、炎症細胞として用いた。
1%ゼラチンで1昼夜コーティングした96−wellプレートにMBE細胞を5×103個/well播種し、単層コンフルエントになるまで数日間培養した。培地を捨て、PKH67標識炎症細胞を5×105個/well重層した。そこに上記(B)で調製した試料を添加した。なお、試料の添加量は最終濃度3%となるように調整した。試料は培養液に添加する直前に0.45μmのフィルターを通して滅菌した。対照は抽出に用いた水を同様に煮沸したものを用いた。
16時間後に血管内皮細胞と接着しなかった炎症細胞を生理食塩水で洗い流し、接着した炎症細胞は、蛍光プレートリーダー485/535nm(励起/測定)を用いて、蛍光量として測定した。
0052
(C−3)炎症細胞の滲出アッセイ(in vivoアッセイ)
麻酔したマウスの背部皮膚を1cm程切開し、皮下組織内に10mm×5mm×3mmのゼラチンスポンジを移入し、切開傷をミッヘル針にて閉じた。移入5日目にゼラチンスポンジ毎に取り出し、ハサミで細切後に37℃に保った0.2%コラゲナーゼ(富士フィルム和光純薬、034−10533、大阪)を溶かした無血清MEM培地5mLを含む15mLチューブ中で約30分間処理して完全にゼラチンを溶解した。その後スポンジ内に滲出した細胞は、1500rpm、5分間で遠心後、3mLの上記同様の溶血バッファーを加えて37℃で1分間作用させ赤血球を除去した。その後、再度遠心して回収した細胞を炎症細胞として血球計算盤にて細胞数を計測した。なお、マウスにはゼラチンスポンジ移入2日前から上記(B)の方法で調製した試料を飲料水として実験終了時まで自由摂取させた。
0053
(D)試験結果
(D−1)滲出性炎症細胞の接着性を指標とした抗炎症活性の測定(in vitroアッセイ)の結果
上記(C−2)の方法に従って測定した蛍光量に基づいて、細胞の接着率を計算した。接着率が低いほど、試料の抗炎症活性が高いと判断した。結果を図1に示す。発酵シソ葉抽出物および発酵ホーリーバジル葉抽出物はいずれも炎症細胞の接着率を大幅に減少させた。発酵させていないシソの葉および発酵させていないホーリーバジルの葉も炎症細胞の接着率をある程度減少させた。発酵させていない桑の葉、発酵させた桑の葉、緑茶、および紅茶は、炎症細胞の接着率を有意に低下させないか、あるいはわずかしか低下させなかった。これらの結果は、シソ科植物の糸状菌による発酵物が強力な抗炎症活性を有することを示すものである。
実施例
0054
(D−2)動物実験による抗炎症活性の測定(in vivoアッセイ)の結果
上記(C−3)の方法に従って回収した炎症細胞数が少ないほど、試料の抗炎症活性が高いと判断した。結果を図2に示す。発酵シソ葉抽出物および発酵ホーリーバジル葉抽出物はいずれも炎症細胞の数を大幅に減少させた。発酵させていないシソの葉も炎症細胞の数を減少させた。発酵させていない桑の葉、発酵させた桑の葉、緑茶、および紅茶は、炎症細胞の数を有意に減少させなかった。これらの結果は、シソ科植物の糸状菌による発酵物が、動物に経口投与された場合に、強力な抗炎症活性を有することを示すものである。
0055
本発明は、食品分野、特に健康食品の製造において有用である。
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