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技術 真核細胞において発現されるタンパク質変異体のライブラリーの調製、及び結合性分子の選択に向けた使用

出願人 イオンタスリミテッド
発明者 マッカファティ,ジョンダイソン,マイケルパールティバン,コタイ
出願日 2020年7月17日 (7ヶ月経過) 出願番号 2020-122485
公開日 2020年10月22日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-171319
状態 未査定
技術分野 突然変異または遺伝子工学 微生物による化合物の製造 酵素・酵素の調製 ペプチド又は蛋白質 微生物、その培養処理
主要キーワード 切断指 修復指示 再構造化 組込み段 影響無し 制御特徴 代替形式 隣接要素
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図面 (20)

課題

本発明は、結合性分子(「結合体(binder)」)のレパートリーをコードする真核細胞ライブラリー産生方法に関する。

解決手段

当該方法は、細胞DNAの標的切断に向けて部位特異的ヌクレアーゼを使用することで、内在性の細胞修復機構を介した結合体遺伝子の部位特異的組込みを増進する。産生される真核細胞集団に、結合体をコードする遺伝子のレパートリーが細胞DNAの所望の遺伝子座(例えば、ゲノム遺伝子座)へと組込まれることで、コードされる結合性分子の発現が可能であり、それによって、異なる結合体を発現する細胞集団創出する。

概要

背景

タンパク質工学の手法によって、関連分子(例えば、抗体、タンパク質ペプチド)の広く多様な集団創出が可能であり、そこから結合特性または触媒特性新規であるか、または改善した個々の変異体を単離することができる。それぞれの細胞が、個々の抗体、ペプチド、または操作されたタンパク質を発現する真核細胞、具体的には、哺乳類細胞の大集団を構築する能力があれば、所望の特性を有した結合体の同定において有する価値は大きいであろう。

ディスプレイ技術の基礎原理は、結合性分子の、その分子をコードする遺伝子情報への結びつきに依存するものである。結合性分子の結合特性を使用して、結合性分子をコードする遺伝子を単離する。根底に存在するこの同一原理は、すべての形態のディスプレイ技術に適用されており、当該ディスプレイ技術には、バクテリオファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、バキュロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ酵母ディスプレイ、及び哺乳類細胞などの高等真核生物上でのディスプレイが含まれる[1、2、3、4]。

ディスプレイ技術は、糸状バクテリオファージ上での抗体ディスプレイ(抗体ファージディスプレイ)によって例示されており、過去24年間にわたって、ヒト治療抗体の生成を含む、新規結合性分子の発見及び操作に向けた重要なツールを提供してきた。ファージディスプレイを使用し、抗体または抗体断片をコードする遺伝子をインフレームに、ファージ被覆タンパク質をコードする遺伝子と共にクローン化することによって、抗体分子が糸状バクテリオファージの粒子表面に提示される。抗体遺伝子は、最初は、E.coliへとクローン化され、その結果、それぞれの細菌が単一抗体をコードする。標準法を使用して、細菌からバクテリオファージを生成させると、その表面に抗体断片をディスプレイするバクテリオファージ粒子を生成すると共に、コードしている抗体遺伝子がバクテリオファージ内に被包化される。細菌またはそれに由来するバクテリオファージの集合体(collection)は、「抗体ライブラリー」と称される。抗体ファージディスプレイを使用して、抗体を提示するバクテリオファージを標的関心分子に対して曝露することによって、集団内の抗体及びその関連遺伝子を濃縮することができる。

関心標的を認識する結合体をディスプレイするバクテリオファージの回収を可能にするために、標的分子は、選択用容器表面固定化されているか、または二次試薬によって溶液から回収可能である必要があり、例えば、ビオチン化標的タンパク質の場合は、ストレプトアビジン被覆ビーズを使用して溶液から回収される。結合体をディスプレイするバクテリオファージのライブラリーは、標的分子と共にインキュベートされ、その後、未結合のファージは除去される。未結合のバクテリオファージを除去するために、これには、標的(及び関連バクテリオファージ)が結合しているマトリックス洗浄を伴う。結合したバクテリオファージは、その関連抗体遺伝子を有しており、回収及び/または宿主細菌細胞へと感染させることができる。上に概要を記載した手法を使用することで、選択標的分子に結合可能なバクテリオファージクローンサブセットを濃縮することが可能になる。ファージディスプレイライブラリーは、抗体多様性豊富供給源を提供することが示されており、単一標的に対して何百もの特有の抗体を提供するものである[5、6、7]。

歴史的に、新規の抗体結合特異性の単離に向けたディスプレイシステムは、原核生物ステム、具体的には、単鎖Fv(scFv)のディスプレイに基づいてきており、バクテリオファージ上でのFabとしてのディスプレイの程度は少ない。細菌表面での結合体のディスプレイについては、説明されてはいるが、広くは使用されておらず、応用は、ペプチドのディスプレイ、または免疫化を介して結合体に向けて事前濃縮された抗体断片のディスプレイ、に大部分が制限されている[8]。ファージディスプレイを含む、原核生物のディスプレイシステムは、能力を有しているにもかかわらず、制限が存在する。ファージディスプレイまたはリボソームディスプレイによる選択の後に、細菌への選択遺伝子集団の導入、細菌集団播種コロニー選定上清またはペリプラズムへの結合性分子の発現、及び酵素結合免疫吸着測定法または蛍光結合免疫吸着測定法(ELISA)などの結合アッセイにおける陽性クローンの同定によって、個々の結合性分子をコードするが同定される。結合性分子は同定されるものの、この手法は、結果として得られるクローンの発現の程度及び結合親和性に関する情報を分離して与えるものではない。従って、何千もの結合体を生成させることは潜在的に可能ではあるものの、相対的な発現レベル及び親和性に関する一次情報が限定されることに加え、アウトプット選別する能力は、コロニー選定、液体操作等が必要となることで限定されるものである。

真核細胞表面での結合性分子のディスプレイは、こうした問題のいくつかを克服する可能性を有している。フローサイトメトリーと併せることで、真核生物ディスプレイは、迅速かつハイスループットな選択を可能にするものである。その表面に異なる結合性分子を発現する数百万もの細胞クローンを調べることが可能となる。細胞表面ディスプレイは、scFvとして編成された抗体断片の、酵母細胞表面でのディスプレイで最もよく例示されてきた。酵母表面ディスプレイに向けて一般に使用される様式は、酵母凝集素タンパク質(Aga1p及びAga2p)を利用するものである。Chaoら[9]によって説明されるように、scFvのレパートリーをコードする遺伝子は、酵母凝集素タンパク質Aga2pのサブユニット遺伝子学的に融合している。そして、Aga2pサブユニットは、細胞壁に存在するAga1pサブユニットに、ジスルフィド結合を介して結合する。標的特異的結合性分子を発現する酵母細胞は、直接的または間接的に標識された標的分子を使用して、フローサイトメトリーによって同定することができる。例えば、細胞に対してビオチン化標的を添加でき、ストレプトアビジン−フィコエリトリンで細胞表面に対する結合を検出することができる。標的濃度を限定して使用することで、親和性が上昇した結合性分子を発現するクローンを集団内で区別することが可能になり、これは、こうしたクローンが、より多くの標的分子を捕捉し、それによって、より明るい蛍光を示すことになるためである。典型的には、それぞれの酵母細胞は、細胞表面に、単一scFvの10,000〜100,000個のコピーをディスプレイすることになる。異なる細胞において、scFvの表面発現の多様性を制御するために、Chaoらは、蛍光標識された抗タグ抗体を使用して、それぞれの細胞表面の抗体発現レベルを測定することで、発現レベルの多様性を標準化することを可能にした。したがって、この手法は、親和性が低下した抗体を高レベルで発現する細胞から、高親和性結合性分子をディスプレイしている酵母細胞を区別することを可能にするものである。したがって、蛍光標識細胞分取FACS)を使用することで、コードされる結合性分子の親和性及び/または発現レベルによる細胞クローンの分離が可能である。

原核生物システムと比較して、真核生物システムは、複数鎖の抗体断片のディスプレイに、より有効であることも証明されており、具体的には、完全IgGFAb、またはscFvとFcドメインとの融合体(scFv−Fc融合体)などの、より大きな断片に関して有効である。上記のような、酵母細胞に向けた、ビーズに基づく方法または流動選別に基づく方法を使用して、哺乳類細胞などの高等真核生物に基づくディスプレイライブラリーから抗体を選択することもできる。哺乳類細胞において、ディスプレイライブラリーの編成し、IgG、Fab、またはscFv−Fc融合体として直接的に選択する能力があれば、酵母ディスプレイに勝るさらなる有意性があるであろう。細菌細胞及び酵母細胞のグリコシル化、発現、及び分泌機構は、高等真核生物とは異なっており、これによって、哺乳類細胞において産生するものと比較した際に、異なる翻訳後修飾を有した抗体が生じる。研究、診断、及び治療の用途に向けた抗体の製造は、典型的には、哺乳類細胞において実施されるため、哺乳類細胞(または無脊椎動物トリ、もしくは植物の細胞株などの他の高等真核細胞)上でのディスプレイは、例えば、最適な発現特性を有するクローンの同定といった、製造の下流で生じる潜在的な問題または優位性を、より良く示すことができるものである。さらに、高等真核生物、及び具体的には哺乳類細胞上でのディスプレイの関連内で発見される抗体であれば、広範な精製をすること無く、細菌及び酵母の細胞に由来する混入物の複雑な影響無しに、細胞に基づくレポーターアッセイに直接適用することができる。さらに、結合体ライブラリーを哺乳類細胞などの真核生物レポーター細胞において直接的に発現して、細胞表現型に直接的に影響を与えるクローンを同定することができる。

真核生物ディスプレイライブラリーによって約束される上記の優位性が存在するにもかかわらず、真核細胞、特に高等真核細胞における結合体ライブラリーの創出には、依然としてかなりの問題が存在する。高等真核生物における発現に向けた、外来性遺伝子(「導入遺伝子」)のレパートリーの導入は、酵母及び細菌におけるものと比較して、難易度が高い。高等真核生物の細胞は、取り扱い及びスケールアップの難易度が高く、形質転換効率が低いものである。達成される典型的なライブラリーサイズは、はるかに小さい。さらに、導入されたDNAは、ゲノム内に無作為に組込まれ、斑入り位置効果を引き起こす。さらに、標準的な遺伝子導入法または電気穿孔法によって哺乳類細胞へと導入されたドナーDNAは、遺伝子導入された導入遺伝子のコピー数可変である直鎖アレイとして組込まれる。したがって、抗体遺伝子のレパートリーをコードするDNAを導入すると、複数の抗体遺伝子がそれぞれの細胞へと導入され、その結果、1つの細胞が複数の異なる抗体を発現する可能性がある。さらに、複数の抗体遺伝子が存在すれば、任意の所与の抗体の相対的な発現量を減少させることになると共に、多くのパッセンジャー抗体遺伝子の単離につながり、特定クローンの濃縮率が低下することになる。

高等真核生物表面での結合体ライブラリーのディスプレイは、より挑戦的ではあるが、これまでに説明された例がいくつかある。初期論文では、ヒト免疫化から得られたIgGの哺乳類ディスプレイを使用しており、抗原特異的な細胞の450倍濃縮を達成するために、選択(一過性の遺伝子導入、細胞選別、DNA回収、及び再遺伝子導入を伴う)を3ラウンド実施する必要であり、これは、1ラウンド当たり、平均7.6倍の濃縮にあたるものであった[10]。同様に、エピソーム的に複製するベクター内で発現された免疫化ライブラリーからの一過性発現が、scFv[11、12]またはIgG[13]として編成された抗体に関して説明された。

単一または限定数の抗体遺伝子をそれぞれの細胞へと導入するために、数多くの手法が説明されてきた。これには、DNAの希釈または担体DNAとの混合[13]が含まれるが、これは、導入遺伝子のコピー数を相対的に制御しない管理方法であり、DNAインプットの減少が、ライブラリーサイズに対して不利な影響を与えることになる。1つの細胞に複数の抗体遺伝子が導入されることを制御するための別の解決策が、ウイルスベクターによる抗体遺伝子の導入によって提供された。この方法で、免疫化によって生成した数百ものヒトBリンパ球から細胞表面ディスプレイライブラリーが生成され、抗原特異的B細胞の流動選別によってさらに濃縮された[14]。この濃縮プールに由来する抗体遺伝子は、scFvとして編成されたものであり、シンドビスアルファウイルス発現システムへとクローン化され、低い感染多重度を使用して、BHK細胞へと導入された。

Breous−Nystromら[15]は、連続的なレトロウイルス感染を使用して、マウスプレB細胞株(1624−5)へ、91Vカッパ抗体遺伝子のレパートリーを限定して導入した後、6人の健康なドナーに由来する重鎖遺伝子レパートリーを導入した。感染性レトロウイルスは、モロニーマウス白血病ウイルス(Stratagene)に基づくV−Packシステムを使用して生成された。単一コピーの挿入に偏らせるために、細胞の約5%に感染を引き起こす感染多重度が選択された。こうした手法の主要な不利益は、ゲノム内での組込みが無作為であるため、転写レベル組込み部位転写活性に基づき、変動が生じる可能性に繋がることである。こうした場合のすべてに生じる別の不利益は、抗体遺伝子の組込みが、感染または遺伝子導入を限定することによって制御されており、これは、ライブラリーサイズに影響を与えるということである。

リコンビナーゼによって指示される導入遺伝子の部位特異的組込みについて、これまでに説明されている。リコンビナーゼは、酵素特異的認識配列を含むDNA分子間の交換反応触媒する酵素である。例えば、Creリコンビナーゼ(E.coliの部位特異的組換えシステムから得られた)またはFlpリコンビナーゼ(Saccharomyces cerevisiaeの組換えシステムを利用している)は、その特異的な、34bpのloxP認識部位及び34bpのFlp組換え標的(Flp Recombination Target)(FRT)部位に対して、それぞれ働く[16]。リコンビナーゼは、部位特異的組込みを触媒するために、細胞工学において主に使用されてきた。Chen Zhouの仕事による数多くの研究[17、18、US7,884,054]によって、「Flp−In」システム(http://tools.lifetechnologies.com/content/sfs/manuals/flpinsystem_man.pdf)内のFlpリコンビナーゼを使用した、哺乳類細胞ゲノムへの、リコンビナーゼ媒介性である、抗体遺伝子の部位特異的組込みに対する説明がなされた。Flp−Inシステムは、多様な細胞株を利用し、当該細胞株は、そのゲノム内に予め導入された単一のFRT部位を有するものである。酵素であるFlpリコンビナーゼを発現することによって、標的細胞に存在するこの事前組込みFRT部位への、発現プラスミドの組込みを指示することが可能であり、当該発現プラスミドには、FRT組換え部位が組込まれている。

Flp−lnシステムを使用して、Zhouら[17]は、FRT部位が組込まれたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(CHOF細胞)へ、FRT部位を含む、新規の抗体発現プラスミドを導入した。その研究では、ディプレイライブラリーの構築について説明されており、存在する抗OX40リガンド体内の4残基が変異誘発されたものである。ライブラリーは、FACSを使用して選別され、細胞表面で抗リガンド親和性を有する抗体が同定された。改善抗体の産生における全体的な成功は、単一の改善抗体の単離に限られたものであった。達成した特有哺乳類細胞クローンの数は、報告されなかった。

2012年のLiらによる後続の論文[18]では、B型肝炎患者に由来するリンパ球を利用し、抗体ディスプレイライブラリーが構築された。HBsAgで免疫化されたドナーから得られた重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子を有する別々のライブラリーが産生され、ライブラリーのサイズは、それぞれ1.02x106及び1.78x105であったと個々に報告された。その後、重鎖及び軽鎖の両方を含む二次ライブラリーが産生され、報告によれば、4.32x105のサイズを有していた。報告によれば、FACS分析によって、細胞の約40%が細胞表面に検出可能な全長抗体をディスプレイしたことが示された。ライブラリーのFACS選別によって、HBsAgに結合する抗体が同定された。抗原に結合した、ライブラリーから選択された8つのメンバー試料の内の6つが、同一抗体を有することが明らかとなったため、同定された特有な抗HBsAgクローンは、全部で3つであった。

この研究の成功が、幾分か限定されたことは、Flp−Inシステムが、大きなライブラリーの構築というよりは、むしろクローン数を限定した正確な組込みに向けて設計されたという事実に起因し得るものである。したがって、組込み忠実度の達成と、最大ライブラリーサイズの達成と、の間に潜在的な相反が存在する。Flp−Inシステムは、プラスミドpOG44における変異体Flpリコンビナーゼを利用しており、当該リコンビナーゼは、天然Flpリコンビナーゼの37℃での活性の僅か10%しか有さないものである[19]。野生型と比較して、熱安定性が向上すると共に活性が上昇したFlpリコンビナーゼの変異体(Flpe)が同定された[19、20]。これは、コドンの最適化によってさらに改善し、プラスミドcCAGGS−Flpo内にコードされたFlpoが創出された(Genebridgesカタログ番号A203)。しかしながら、Flp−Inマニュアルによると、
「Flp−In(商標発現細胞株を産生する際は、相対的に稀な組換え事象を選択していることを記することが重要あり、これは、ご自身のpcDNA(商標)5/FRT構築物の組換え及び組込みが、FRT部位のみを介して、限られた時間で生じることを意図されているためです。この場合、高度に非効率的なFlpリコンビナーゼを使用することが有利であり、これにより、他の望ましくない組換え事象の発生を低減することができます。。。
。。。単一の組込み体を得る可能性を上げるために、ご自身が遺伝子導入するプラスミドDNAの量を限定することによって、遺伝子導入効率を低下させることが必要となります」
これは、Buchholzら1996[19]によって、繰り返し述べられている。
FLPは、効率に依存せず、厳格な制御に依存する用途向けに、特に有用であり得る」

モデル実験において、「マニュアルに記載の説明」を使用し、Zhouら(2010)[17]は、クローンの>90%において、単一コピーの挿入が生じたことを実際に示した。しかしながら、ライブラリー構築では、相対的に高い量の発現プラスミド(106個細胞当たり2.5〜3.2μg)と、pOG44リコンビナーゼをコードするプラスミドを超える過剰量のドナーと、が使用された[17、18]。Flp−Inシステムは、リコンビナーゼをコードするプラスミドと、発現プラスミドと、の比を少なくとも9:1にして使用することが有利であると推奨している。しかしながら、より多くの量のDNAを遺伝子導入することによって、ライブラリーのサイズを増加させようとすると、新規プラスミドの無作為組換えが生じる可能性がある[21]。すべての研究において、「ライブラリー構築」条件下での、組込みの正確性及び細胞当たりの組込み体の数に関する報告は無かった。

ヌクレアーゼ指向型の遺伝子組込みでは、部位特異的ヌクレアーゼは、特定位置で細胞DNAを切断するために使用される。これは、相同組換えの速度を少なくとも40,000倍増進し、非相同末端結合機構による修復も可能にすることがこれまでに報告された。この部位特異的組込みの増進が、結合体ライブラリーの創出に関連した問題の解決に、使用またはそれが企図されたことは、これまで無かった。

US20100212035では、ドナーDNAの組込みを指示するために、メガヌクレアーゼを使用して、哺乳類免疫グロブリン遺伝子座を標的とすることによって、外来性抗体の発現を可能にするげっ歯類を生成する方法について説明されている。新しいDNA切断特異性を創出するための、メガヌクレアーゼの変異体ライブラリーの創出の可能性については説明されたが、メガヌクレアーゼの、結合体ライブラリーの生成に対する使用は、企図されていない。

WO2013/190032A1では、リコンビナーゼ媒介性の部位特異的遺伝子導入に向けたloxP部位及びFRT部位などのリコンビナーゼ部位組込むための、外来性DNAで事前修飾された特定遺伝子座(Fer1L4)への遺伝子組込み(「部位特異的組込み」SSI宿主細胞)について説明されている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

WO2012/167192A2では、遺伝子座に対する遺伝子の標的化について説明されており、当該遺伝子は、増幅で後に選択することができる。ヌクレアーゼ指向型の方法は、遺伝子座を標的とするために用いられている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

US2009/0263900A1では、ホモロジーアームを含むDNA分子、及び相同組換えの方法におけるその使用について説明されている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

WO2011/100058では、ゲノムへの核酸組込み方法について説明されており、当該組み込みは、長いホモロジーアームを必要とせず、代わりに、ゲノム及びドナー上のマイクロホモロジーまたは「粘着末端(sticky−end)」に依存して、直接的な組込みに役立てるものである。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

WO20122/090804では、連続ラウンドにおいて、異なるジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を使用する、複数遺伝子または同一遺伝子の複数のコピーの組込み方法について説明されている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

WO2014/039872では、部位指向型ヌクレアーゼを使用して、ドナーDNAが相同組換えまたは非相同末端結合によって組込まれる「ランディング部位(landing site)」が組込まれた植物細胞操作方法について説明されている。細菌人工染色体(BAC)ライブラリーが、ドナーDNAの初期クローン化に使用されている。ライブラリーについては、Illumina配列決定方法に関連して言及されている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

WO2007/047859A2では、メガヌクレアーゼ特異性の操作方法、及びゲノム遺伝子座を標的とするためのその使用について説明されている。新規のヌクレアーゼ特異性を有したメガヌクレアーゼを含み得る変異体メガヌクレアーゼライブラリーについて説明されている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

US2014/0113375A1では、標的ゲノム配列に対して相同性を有する一本鎖DNA配列の生成に向けた一過性発現システムについて説明されており、当該一本鎖DNAは、核に運ばれ、DNA修復経路または相同組換えを介して標的ゲノム配列の遺伝子情報を変えることができるものである。変異の「ライブラリー」が、導入された(非ライブラリー)DNAの、忠実性が低い逆転写によって産生できることが示唆されている。哺乳類ディスプレイ及び結合活性を有する分子の選択については、説明されていない。

US2012/0277120では、複数の外来性である核酸の同時組込みに向けた方法及び組成物について説明されており、当該組み込みは、酵母における天然の相同組換え機構を使用した単一の形質転換反応におけるものであり、当該組換えは、宿主細胞のゲノムにおいて、意図する組込み部位に標的二本鎖切断を含めることによって、さらに増進し得るものである。方法では、例えば、酵母などの産業微生物における機能性代謝経路の構築といった、複数のDNA集合の組み込みに、複数ラウンドが必要となることを打開することが意図されている。結合性分子ライブラリーのディスプレイまたは発現、高等真核生物の使用、及び結合活性を有する分子の選択については、説明されていない。

哺乳類細胞及び他の高等真核生物上での抗体ディスプレイの可能性を完全に実現するために、大きなライブラリーの構築を可能にする効率と、前定義部位への正確な組込みと、を兼ね備える大きなライブラリーを創出するシステムが必要である。

概要

本発明は、結合性分子(「結合体(binder)」)のレパートリーをコードする真核細胞ライブラリーの産生方法に関する。当該方法は、細胞DNAの標的切断に向けて部位特異的ヌクレアーゼを使用することで、内在性の細胞修復機構を介した結合体遺伝子の部位特異的組込みを増進する。産生される真核細胞集団に、結合体をコードする遺伝子のレパートリーが細胞DNAの所望の遺伝子座(例えば、ゲノム遺伝子座)へと組込まれることで、コードされる結合性分子の発現が可能であり、それによって、異なる結合体を発現する細胞集団を創出する。なし

目的

本発明は、特に、所望の数のドナーDNA分子が、細胞における1つまたは複数の所望の遺伝子座に正確に組込まれた細胞ライブラリーを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

多様な結合体レパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンライブラリー産生方法であって、前記結合体をコードするドナーDNA分子、及び真核細胞の提供と、前記細胞への前記ドナーDNAの導入、及び前記細胞内での部位特異的なヌクレアーゼの提供であって、前記ヌクレアーゼが細胞DNAの認識配列を切断することで、前記ドナーDNAが前記細胞DNAへと組込まれる組込み部位創出され、組込みが、前記細胞に対して内在性であるDNA修復機構を介して生じ、それによって前記細胞DNAに組込まれたドナーDNAを含む組換え細胞を創出する前記導入及び提供と、クローン産生のための前記組換え細胞の培養と、それによる、前記結合体レパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーの提供と、を含む前記方法。

請求項2

前記結合体が、抗体分子である、請求項1に記載の方法。

請求項3

前記抗体分子が、全長免疫グロブリンIgGFab、scFv−Fc、またはscFvである、請求項2に記載の方法。

請求項4

前記結合体が、少なくとも第1サブユニット及び第2サブユニットを含む多量体である、請求項1または請求項2に記載の方法。

請求項5

多量体である結合体の多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーの産生方法であって、それぞれの結合体が、第1サブユニット及び第2サブユニットを含み、前記方法が、前記第1サブユニットをコードするDNAを含む真核細胞の提供、及び前記第2結合体サブユニットをコードするドナーDNA分子の提供と、前記細胞への前記ドナーDNAの導入、及び前記細胞内での部位特異的ヌクレアーゼの提供であって、前記ヌクレアーゼが細胞DNAの認識配列を切断することで、前記ドナーDNAが前記細胞DNAへと組込まれる組込み部位が創出され、組込みが、前記細胞に対して内在性であるDNA修復機構を介して生じ、それによって、前記細胞DNAに組込まれたドナーDNAを含む組換え細胞を創出する前記導入及び提供と、前記多量体である結合体の前記第1サブユニット及び前記第2サブユニットをコードするDNAを含むクローンを産生するための前記組換え細胞の培養と、それによる、前記多量体である結合体のレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーの提供と、を含む前記方法。

請求項6

多量体である結合体の多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーの産生方法であって、それぞれの結合体が、少なくとも第1サブユニット及び第2サブユニットを含み、前記方法が、前記第1サブユニットをコードする第1ドナーDNA分子の提供、及び真核細胞の提供と、前記細胞への前記第1ドナーDNAの導入、及び前記細胞内での部位特異的ヌクレアーゼの提供であって、前記ヌクレアーゼが細胞DNAの認識配列を切断することで、前記ドナーDNAが前記細胞DNAへと組込まれる組込み部位が創出され、組込みが、前記細胞に対して内在性であるDNA修復機構を介して生じ、それによって、前記細胞DNAに組込まれた第1ドナーDNAを含む、第1セットの組換え細胞を創出する前記導入及び提供と、前記第1サブユニットをコードするDNAを含む、第1セットのクローンを産生するための前記第1セットの組換え細胞の培養と、前記第1セットのクローンの細胞への、前記第2サブユニットをコードする第2ドナーDNA分子を導入であって、前記第1セットのクローンの細胞DNAへと前記第2ドナーDNAを組込み、それによって、前記細胞DNAへと組込まれた第1ドナーDNA及び第2ドナーDNAを含む、第2セットの組換え細胞を創出する前記導入と、第2セットのクローンを産生するための、第2セットの組換え細胞の培養であって、こうしたクローンが、前記多量体である結合体の前記第1サブユニット及び前記第2サブユニットをコードするDNAを含む前記培養と、それによる、前記多量体である結合体のレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーの提供と、を含む前記方法。

請求項7

前記細胞内での部位特異的ヌクレアーゼの提供であって、前記ヌクレアーゼが細胞DNAの認識配列を切断することで、前記ドナーDNAが前記細胞DNAへと組込まれる組込み部位が創出され、組込みが、前記細胞に対して内在性であるDNA修復機構を介して生じる前記提供を含む方法によって、前記第2ドナーDNA分子が組込まれる、請求項6に記載の方法。

請求項8

前記結合体レパートリーが、共通構造共有し、かつ1つまたは複数のアミノ酸配列多様性領域を有する複数のポリペプチドである、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項9

前記結合体レパートリーが、1つまたは複数の相補性決定領域が異なる抗体分子のレパートリーである、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項10

前記多量体である結合体が、別々のサブユニットとして、重鎖可変(VH)ドメインと、軽鎖可変(VL)ドメインと、を含む抗体分子である、請求項3〜9のいずれかに記載の方法。

請求項11

前記多量体である結合体が、全免疫グロブリンである、請求項10に記載の方法。

請求項12

前記多量体である結合体が、IgGである、請求項10に記載の方法。

請求項13

前記多量体である結合体が、Fabである、請求項10に記載の方法。

請求項14

前記第1サブユニットが、前記VHドメインを含み、前記第2サブユニットが、前記VLドメインを含む、請求項10〜13のいずれかに記載の方法。

請求項15

前記第1サブユニットが、前記VLドメインを含み、前記第2サブユニットが、前記VHドメインを含む、請求項10〜13のいずれかに記載の方法。

請求項16

前記抗体分子が、1つまたは複数の追加サブユニットをさらに含み、前記1つまたは複数の追加サブユニットが、前記第1サブユニットもしくは前記第2サブユニットと同一のドナーDNA上に導入され得るか、または前記細胞DNAの別々の部位に組込まれ得る、請求項10〜15のいずれかに記載の方法。

請求項17

前記細胞が、2x107塩基対を超えるサイズのゲノムを有する高等真核細胞である、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項18

前記細胞が、哺乳類細胞トリ細胞昆虫細胞、または植物細胞である、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項19

前記細胞が、哺乳類のものである、請求項18に記載の方法。

請求項20

前記細胞が、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Tリンパ球系譜細胞もしくはBリンパ球系譜細胞、または「CancerCellLineEncyclopedia」もしくは「COSMICcatalogueofsomaticmutationsincancer」に記載の細胞株のいずれかである、請求項19に記載の方法。

請求項21

前記細胞が、初代T細胞またはT細胞株である、請求項20に記載の方法。

請求項22

前記細胞が、初代B細胞、B細胞株、プレB細胞株、またはプロB細胞株である、請求項20に記載の方法。

請求項23

前記細胞が、マウスプレB細胞株1624−5、IL−3依存性プロB細胞株Ba/F3、またはニワトリDT40B細胞である、請求項22に記載の方法。

請求項24

前記認識配列が、前記細胞のゲノムDNAに存在する、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項25

前記認識配列が、前記細胞内のエピソームDNAに存在する、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。

請求項26

前記部位特異的ヌクレアーゼに向けた前記認識配列が、前記細胞DNAにおいて1回または2回のみ生じる、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項27

前記部位特異的ヌクレアーゼが、細胞DNAを切断し、組込み部位として働く二本鎖切断を創出する、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項28

前記ヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼである、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項29

前記ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である、請求項1〜27のいずれかに記載の方法。

請求項30

前記ヌクレアーゼが、TALEヌクレアーゼである、請求項1〜27のいずれかに記載の方法。

請求項31

前記ヌクレアーゼが、核酸によってガイドされるヌクレアーゼである、請求項1〜27のいずれかに記載の方法。

請求項32

DNA切断が、CRISPR/Casシステムによって指示される、請求項31に記載の方法。

請求項33

前記ドナーDNAが、相同組換えによって前記細胞DNAへと組込まれる、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項34

前記ドナーDNAが、非相同末端結合またはマイクロホモロジー指向型末端結合によって、前記ゲノムDNAへと組込まれる、請求項1〜32のいずれかに記載の方法。

請求項35

前記ドナーDNAが、前記ドナーDNAが組込まれた細胞の選択に向けた遺伝子要素を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項36

前記細胞DNAへの前記ドナーDNAの組込みが、前記細胞DNA内に存在するプロモーター制御下での、前記結合体の発現及び/または遺伝子選択要素の発現を引き起こす、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項37

前記ドナーDNAが、動作可能な形でプロモーターに連結された結合体をコードする配列を含む、請求項1〜34のいずれかに記載の方法。

請求項38

前記ライブラリーが、少なくとも、100、103、104、105、または106個のクローンを含み、それぞれのクローンが、ドナーDNAの組込みによって産生した個々の組換え細胞から得られる、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項39

前記ライブラリーが、少なくとも100、103、104、105、または106個の異なる結合体をコードする、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項40

それぞれのクローンが、前記結合体レパートリーの1つまたは2つのメンバーのみをコードする組込みドナーDNAを含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項41

前記真核細胞が、二倍体であり、前記細胞DNAにおける二重の固定遺伝子座に、前記部位特異的ヌクレアーゼに向けた認識配列を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項42

それぞれのクローンが、前記結合体レパートリーの単一メンバーをコードする組込みドナーDNAを含む、請求項1〜39のいずれかに記載の方法。

請求項43

前記ドナーDNA分子のそれぞれが、単一の結合体または結合体サブユニットをコードする、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項44

前記結合体が、前記細胞表面にディスプレイされる、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項45

前記結合体が、前記細胞から分泌される、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項46

前記結合体を発現させるための、前記ライブラリーの培養と、関心結合体を発現する1つまたは複数のクローンの回収と、前記1つまたは複数の回収クローンからの派生ライブラリーの生成であって、前記派生ライブラリーが、第2の結合体レパートリーをコードするDNAを含む前記生成と、をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。

請求項47

前記派生ライブラリーの生成が、前記1つまたは複数の回収クローンからのドナーDNAの単離と、第2の結合体レパートリーをコードするドナーDNA分子の派生集団を提供するための、前記DNAへの変異導入と、前記第2の結合体レパートリーをコードするDNAを含む細胞の派生ライブラリーを創出するための、細胞へのドナーDNA分子の前記派生集団の導入と、を含む、請求項46に記載の方法。

請求項48

前記派生ライブラリーの生成が、前記クローン内の前記DNAの変異導入による、前記1つまたは複数の回収クローンの前記ドナーDNAへの変異導入を含む、請求項46に記載の方法。

請求項49

多様な結合体レパートリーの産生方法であって、請求項1〜48のいずれかに記載の方法によるライブラリー産生と、前記結合体を発現させるための、前記ライブラリー細胞の培養と、を含む前記産生方法。

請求項50

所望の表現型の細胞の選別方法であって、前記表現型が、前記細胞による結合体の発現に起因し、前記選別方法が、請求項1〜48のいずれかに記載の方法によるライブラリーの産生と、前記結合体を発現させるための、前記ライブラリー細胞の培養と、前記所望の表現型が示されているかどうかの検出と、を含む前記選別方法。

請求項51

前記表現型が、前記結合体を発現する細胞におけるレポーター遺伝子の発現である、請求項50に記載の方法。

請求項52

前記所望の表現型を産生する結合体を発現するクローンの細胞の回収をさらに含む、請求項50または請求項51に記載の方法。

請求項53

前記回収クローンからの、前記結合体をコードするDNAの単離と、それによる前記所望の表現型を産生する結合体をコードするDNAの取得と、をさらに含む、請求項52に記載の方法。

請求項54

標的を認識する結合体の選別方法であって、請求項1〜48のいずれかに記載の方法によるライブラリーの産生と、前記結合体を発現させるための、前記ライブラリーの細胞の培養と、前記標的に対する前記結合体の曝露であって、存在するのであれば、1つまたは複数の同種結合体による前記標的の認識が可能になる前記曝露と、前記標的が同種結合体によって認識されたかどうかの検出と、を含む、前記選別方法。

請求項55

前記標的が、可溶性形態において提供される、請求項50または請求項54に記載の方法。

請求項56

前記標的が、標的細胞集団の表面でディスプレイされ、かつ前記結合体が、前記ライブラリー細胞の表面でディスプレイされ、前記方法が、前記ライブラリー細胞の、前記標的細胞への接触による、前記標的に対する前記結合体の曝露を含む、請求項50または請求項54に記載の方法。

請求項57

前記結合体が、抗体分子であり、前記標的が、抗原である、請求項50〜56のいずれかに記載の方法。

請求項58

前記結合体が、TCRであり、前記標的が、MHCペプチド複合体である、請求項50〜56のいずれかに記載の方法。

請求項59

同種結合体による標的認識の検出と、前記同種結合体をコードするDNAを含むクローン細胞の回収と、をさらに含む、請求項54〜58のいずれかに記載の方法。

請求項60

前記回収クローンからの、前記結合体をコードするDNAの単離と、それによる前記標的を認識する結合体をコードするDNAの取得と、をさらに含む、請求項59に記載の方法。

請求項61

変異導入または前記DNAの、再構造化された結合体をコードする修飾DNAへの変換を含む、請求項53または請求項60に記載の方法。

請求項62

前記結合体が、scFvであり、前記方法が、前記scFvをコードするDNAの、Igまたはその断片をコードするDNAへの変換であって、可変VH鎖及び可変VL鎖の元のペアが維持される前記変換を含む、請求項61に記載の方法。

請求項63

宿主細胞への、前記DNAの導入をさらに含む、請求項53、60、61、または62に記載の方法。

請求項64

前記細胞の培養と、細胞ペレットまたは濃縮細胞懸濁液の提供のための、前記細胞の濃縮と、をさらに含む、請求項52、59、または63に記載の方法。

請求項65

前記結合体の発現のための前記細胞の培養と、前記結合体の精製と、をさらに含む、請求項52、59、または63に記載の方法。

請求項66

請求項1〜48のいずれかに記載の方法によって産生するライブラリー。

請求項67

少なくとも103、104、105、106、107、108、または109個の異なる結合体の多様なレパートリーを発現する真核細胞クローンの試験管内ライブラリーであって、それぞれの細胞が、組換えDNAを含み、結合体または結合体のサブユニットをコードするドナーDNAが、前記細胞DNAの少なくとも第1固定遺伝子座及び/または第2固定遺伝子座に組込まれている、前記ライブラリー。

請求項68

前記クローンが、前記コードされる結合体を発現する細胞の選択に向けた遺伝子要素を含むDNAも含む、請求項67に記載のライブラリー。

請求項69

前記結合体が、抗体分子である、請求項67または請求項68に記載のライブラリー。

請求項70

前記抗体分子が、全長免疫グロブリン、IgG、Fab、scFv、またはscFv−Fcである、請求項69に記載のライブラリー。

請求項71

請求項66〜70のいずれかに記載のライブラリーを含む真核細胞を含む容器

請求項72

前記ライブラリーが、前記容器において、前記真核細胞の少なくとも75%、80%、85%、または90%を構成する、請求項71に記載の容器。

請求項73

前記容器が、培養培地に懸濁された前記ライブラリーの細胞を含む細胞培養フラスコである、請求項71または請求項72に記載の容器。

請求項74

前記ライブラリーを含む真核細胞のペレットまたは濃縮懸濁液を含む、請求項71または請求項72に記載の容器。

請求項75

結合体のレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞のライブラリー構築における、細胞DNAの標的切断に向けた部位特異的ヌクレアーゼの使用であって、ヌクレアーゼ媒介性DNA切断が、内在性の細胞DNA修復機構を介する結合体遺伝子の部位特異的組込みを増進する前記使用。

請求項76

所望の標的に対する結合体の選択に向けたディスプレイライブラリーとしての、請求項66〜70のいずれかに記載のライブラリーの使用。

請求項77

所望の細胞表現型をディスプレイする細胞の選別であって、前記表現型が、細胞による結合体の発現に起因する前記選別に向けた、請求項66〜70のいずれかに記載のライブラリーの使用。

請求項78

単鎖抗体(scFv)集団の、免疫グロブリン(Ig)形式または断片形式、抗原結合(Fab)形式への変換方法であって、その結果、可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖の元のペアが維持される前記方法。

請求項79

非複製「小環(mini−circle)」DNAを介して進行する、請求項78に記載の、scFvからIgまたはFabへの変換方法。

請求項80

IgまたはFabのDNAをコードするプラスミドを保有する細菌形質転換体の直接的な生成に向けた、E.coliの単回の形質転換を必要とする、請求項78に記載の、scFvからのIgまたはFabへの変換方法。

請求項81

モノクローナルクローンの再編成オリゴクローナルクローンの再編成、またはポリクローナルクローンの再編成のいずれかに使用することができる、請求項78〜80のいずれかに記載の、scFvからのIgまたはFabへの変換方法。

請求項82

ファージディスプレイ酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイを含む、一般に使用されるディスプレイ技術のいずれかに由来する全体アウトプット集団の「一斉(enmasse)」変換に使用することができる、請求項78〜80に記載の、scFvからのIgまたはFabへの変換方法。

請求項83

任意の2つの結合したDNA要素の、ベクターへの再編成を可能にする方法であって、前記DNA要素が、別々のプロモーターの制御下にクローン化されるか、または代替制御要素によって分離されるが、元のDNAペアは維持される前記方法。

請求項84

非複製「小環(mini−circle)」DNAを介して進行する、請求項83に記載の、2つの結合したDNA要素の再編成方法。

請求項85

別々のプロモーターの制御下であるか、または代替の制御要素によって分離されたDNA要素をコードするプラスミドを保有する細菌形質転換体の直接的な生成に向けた、E.coliの単回の形質転換を必要とする、請求項83に記載の、2つの結合したDNA要素の再編成方法。

請求項86

モノクローナルクローンの再編成、オリゴクローナルクローンの再編成、またはポリクローナルクローンの再編成のいずれかに使用することができる、請求項83〜85のいずれかに記載の、2つの結合したDNA要素の再編成方法。

請求項87

ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、またはリボソームディスプレイを含む、一般に使用されるディスプレイ技術のいずれかに由来する全体アウトプット集団の「一斉(enmasse)」変換に使用することができる、請求項83〜85に記載の、2つの結合したDNA要素の再編成方法。

技術分野

0001

本発明は、抗体などの結合性分子選別及び/または選択にむけた、真核(例えば、哺乳類細胞ライブラリー産生方法に関する。ライブラリーを使用することで、結合体の多様なレパートリーを含有及びディスプレイすることができ、標的分子に向けた特異性などの所望の特性を有する1つまたは複数の結合体を選択するための、結合体の選別が可能になる。本発明は、特に、所望の数のドナーDNA分子が、細胞における1つまたは複数の所望の遺伝子座に正確に組込まれた細胞ライブラリーを提供するための、結合体をコードするドナーDNAの、真核細胞への導入方法に関する。

背景技術

0002

タンパク質工学の手法によって、関連分子(例えば、抗体、タンパク質ペプチド)の広く多様な集団創出が可能であり、そこから結合特性または触媒特性新規であるか、または改善した個々の変異体を単離することができる。それぞれの細胞が、個々の抗体、ペプチド、または操作されたタンパク質を発現する真核細胞、具体的には、哺乳類細胞の大集団を構築する能力があれば、所望の特性を有した結合体の同定において有する価値は大きいであろう。

0003

ディスプレイ技術の基礎原理は、結合性分子の、その分子をコードする遺伝子情報への結びつきに依存するものである。結合性分子の結合特性を使用して、結合性分子をコードする遺伝子を単離する。根底に存在するこの同一原理は、すべての形態のディスプレイ技術に適用されており、当該ディスプレイ技術には、バクテリオファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、バキュロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ酵母ディスプレイ、及び哺乳類細胞などの高等真核生物上でのディスプレイが含まれる[1、2、3、4]。

0004

ディスプレイ技術は、糸状バクテリオファージ上での抗体ディスプレイ(抗体ファージディスプレイ)によって例示されており、過去24年間にわたって、ヒト治療抗体の生成を含む、新規結合性分子の発見及び操作に向けた重要なツールを提供してきた。ファージディスプレイを使用し、抗体または抗体断片をコードする遺伝子をインフレームに、ファージ被覆タンパク質をコードする遺伝子と共にクローン化することによって、抗体分子が糸状バクテリオファージの粒子表面に提示される。抗体遺伝子は、最初は、E.coliへとクローン化され、その結果、それぞれの細菌が単一抗体をコードする。標準法を使用して、細菌からバクテリオファージを生成させると、その表面に抗体断片をディスプレイするバクテリオファージ粒子を生成すると共に、コードしている抗体遺伝子がバクテリオファージ内に被包化される。細菌またはそれに由来するバクテリオファージの集合体(collection)は、「抗体ライブラリー」と称される。抗体ファージディスプレイを使用して、抗体を提示するバクテリオファージを標的関心分子に対して曝露することによって、集団内の抗体及びその関連遺伝子を濃縮することができる。

0005

関心標的を認識する結合体をディスプレイするバクテリオファージの回収を可能にするために、標的分子は、選択用容器表面固定化されているか、または二次試薬によって溶液から回収可能である必要があり、例えば、ビオチン化標的タンパク質の場合は、ストレプトアビジン被覆ビーズを使用して溶液から回収される。結合体をディスプレイするバクテリオファージのライブラリーは、標的分子と共にインキュベートされ、その後、未結合のファージは除去される。未結合のバクテリオファージを除去するために、これには、標的(及び関連バクテリオファージ)が結合しているマトリックス洗浄を伴う。結合したバクテリオファージは、その関連抗体遺伝子を有しており、回収及び/または宿主細菌細胞へと感染させることができる。上に概要を記載した手法を使用することで、選択標的分子に結合可能なバクテリオファージクローンサブセットを濃縮することが可能になる。ファージディスプレイライブラリーは、抗体多様性豊富供給源を提供することが示されており、単一標的に対して何百もの特有の抗体を提供するものである[5、6、7]。

0006

歴史的に、新規の抗体結合特異性の単離に向けたディスプレイシステムは、原核生物ステム、具体的には、単鎖Fv(scFv)のディスプレイに基づいてきており、バクテリオファージ上でのFabとしてのディスプレイの程度は少ない。細菌表面での結合体のディスプレイについては、説明されてはいるが、広くは使用されておらず、応用は、ペプチドのディスプレイ、または免疫化を介して結合体に向けて事前濃縮された抗体断片のディスプレイ、に大部分が制限されている[8]。ファージディスプレイを含む、原核生物のディスプレイシステムは、能力を有しているにもかかわらず、制限が存在する。ファージディスプレイまたはリボソームディスプレイによる選択の後に、細菌への選択遺伝子集団の導入、細菌集団播種コロニー選定上清またはペリプラズムへの結合性分子の発現、及び酵素結合免疫吸着測定法または蛍光結合免疫吸着測定法(ELISA)などの結合アッセイにおける陽性クローンの同定によって、個々の結合性分子をコードするが同定される。結合性分子は同定されるものの、この手法は、結果として得られるクローンの発現の程度及び結合親和性に関する情報を分離して与えるものではない。従って、何千もの結合体を生成させることは潜在的に可能ではあるものの、相対的な発現レベル及び親和性に関する一次情報が限定されることに加え、アウトプットを選別する能力は、コロニー選定、液体操作等が必要となることで限定されるものである。

0007

真核細胞表面での結合性分子のディスプレイは、こうした問題のいくつかを克服する可能性を有している。フローサイトメトリーと併せることで、真核生物ディスプレイは、迅速かつハイスループットな選択を可能にするものである。その表面に異なる結合性分子を発現する数百万もの細胞クローンを調べることが可能となる。細胞表面ディスプレイは、scFvとして編成された抗体断片の、酵母細胞表面でのディスプレイで最もよく例示されてきた。酵母表面ディスプレイに向けて一般に使用される様式は、酵母凝集素タンパク質(Aga1p及びAga2p)を利用するものである。Chaoら[9]によって説明されるように、scFvのレパートリーをコードする遺伝子は、酵母凝集素タンパク質Aga2pのサブユニット遺伝子学的に融合している。そして、Aga2pサブユニットは、細胞壁に存在するAga1pサブユニットに、ジスルフィド結合を介して結合する。標的特異的結合性分子を発現する酵母細胞は、直接的または間接的に標識された標的分子を使用して、フローサイトメトリーによって同定することができる。例えば、細胞に対してビオチン化標的を添加でき、ストレプトアビジン−フィコエリトリンで細胞表面に対する結合を検出することができる。標的濃度を限定して使用することで、親和性が上昇した結合性分子を発現するクローンを集団内で区別することが可能になり、これは、こうしたクローンが、より多くの標的分子を捕捉し、それによって、より明るい蛍光を示すことになるためである。典型的には、それぞれの酵母細胞は、細胞表面に、単一scFvの10,000〜100,000個のコピーをディスプレイすることになる。異なる細胞において、scFvの表面発現の多様性を制御するために、Chaoらは、蛍光標識された抗タグ抗体を使用して、それぞれの細胞表面の抗体発現レベルを測定することで、発現レベルの多様性を標準化することを可能にした。したがって、この手法は、親和性が低下した抗体を高レベルで発現する細胞から、高親和性結合性分子をディスプレイしている酵母細胞を区別することを可能にするものである。したがって、蛍光標識細胞分取FACS)を使用することで、コードされる結合性分子の親和性及び/または発現レベルによる細胞クローンの分離が可能である。

0008

原核生物システムと比較して、真核生物システムは、複数鎖の抗体断片のディスプレイに、より有効であることも証明されており、具体的には、完全IgGFAb、またはscFvとFcドメインとの融合体(scFv−Fc融合体)などの、より大きな断片に関して有効である。上記のような、酵母細胞に向けた、ビーズに基づく方法または流動選別に基づく方法を使用して、哺乳類細胞などの高等真核生物に基づくディスプレイライブラリーから抗体を選択することもできる。哺乳類細胞において、ディスプレイライブラリーの編成し、IgG、Fab、またはscFv−Fc融合体として直接的に選択する能力があれば、酵母ディスプレイに勝るさらなる有意性があるであろう。細菌細胞及び酵母細胞のグリコシル化、発現、及び分泌機構は、高等真核生物とは異なっており、これによって、哺乳類細胞において産生するものと比較した際に、異なる翻訳後修飾を有した抗体が生じる。研究、診断、及び治療の用途に向けた抗体の製造は、典型的には、哺乳類細胞において実施されるため、哺乳類細胞(または無脊椎動物トリ、もしくは植物の細胞株などの他の高等真核細胞)上でのディスプレイは、例えば、最適な発現特性を有するクローンの同定といった、製造の下流で生じる潜在的な問題または優位性を、より良く示すことができるものである。さらに、高等真核生物、及び具体的には哺乳類細胞上でのディスプレイの関連内で発見される抗体であれば、広範な精製をすること無く、細菌及び酵母の細胞に由来する混入物の複雑な影響無しに、細胞に基づくレポーターアッセイに直接適用することができる。さらに、結合体ライブラリーを哺乳類細胞などの真核生物レポーター細胞において直接的に発現して、細胞表現型に直接的に影響を与えるクローンを同定することができる。

0009

真核生物ディスプレイライブラリーによって約束される上記の優位性が存在するにもかかわらず、真核細胞、特に高等真核細胞における結合体ライブラリーの創出には、依然としてかなりの問題が存在する。高等真核生物における発現に向けた、外来性遺伝子(「導入遺伝子」)のレパートリーの導入は、酵母及び細菌におけるものと比較して、難易度が高い。高等真核生物の細胞は、取り扱い及びスケールアップの難易度が高く、形質転換効率が低いものである。達成される典型的なライブラリーサイズは、はるかに小さい。さらに、導入されたDNAは、ゲノム内に無作為に組込まれ、斑入り位置効果を引き起こす。さらに、標準的な遺伝子導入法または電気穿孔法によって哺乳類細胞へと導入されたドナーDNAは、遺伝子導入された導入遺伝子のコピー数可変である直鎖アレイとして組込まれる。したがって、抗体遺伝子のレパートリーをコードするDNAを導入すると、複数の抗体遺伝子がそれぞれの細胞へと導入され、その結果、1つの細胞が複数の異なる抗体を発現する可能性がある。さらに、複数の抗体遺伝子が存在すれば、任意の所与の抗体の相対的な発現量を減少させることになると共に、多くのパッセンジャー抗体遺伝子の単離につながり、特定クローンの濃縮率が低下することになる。

0010

高等真核生物表面での結合体ライブラリーのディスプレイは、より挑戦的ではあるが、これまでに説明された例がいくつかある。初期論文では、ヒト免疫化から得られたIgGの哺乳類ディスプレイを使用しており、抗原特異的な細胞の450倍濃縮を達成するために、選択(一過性の遺伝子導入、細胞選別、DNA回収、及び再遺伝子導入を伴う)を3ラウンド実施する必要であり、これは、1ラウンド当たり、平均7.6倍の濃縮にあたるものであった[10]。同様に、エピソーム的に複製するベクター内で発現された免疫化ライブラリーからの一過性発現が、scFv[11、12]またはIgG[13]として編成された抗体に関して説明された。

0011

単一または限定数の抗体遺伝子をそれぞれの細胞へと導入するために、数多くの手法が説明されてきた。これには、DNAの希釈または担体DNAとの混合[13]が含まれるが、これは、導入遺伝子のコピー数を相対的に制御しない管理方法であり、DNAインプットの減少が、ライブラリーサイズに対して不利な影響を与えることになる。1つの細胞に複数の抗体遺伝子が導入されることを制御するための別の解決策が、ウイルスベクターによる抗体遺伝子の導入によって提供された。この方法で、免疫化によって生成した数百ものヒトBリンパ球から細胞表面ディスプレイライブラリーが生成され、抗原特異的B細胞の流動選別によってさらに濃縮された[14]。この濃縮プールに由来する抗体遺伝子は、scFvとして編成されたものであり、シンドビスアルファウイルス発現システムへとクローン化され、低い感染多重度を使用して、BHK細胞へと導入された。

0012

Breous−Nystromら[15]は、連続的なレトロウイルス感染を使用して、マウスプレB細胞株(1624−5)へ、91Vカッパ抗体遺伝子のレパートリーを限定して導入した後、6人の健康なドナーに由来する重鎖遺伝子レパートリーを導入した。感染性レトロウイルスは、モロニーマウス白血病ウイルス(Stratagene)に基づくV−Packシステムを使用して生成された。単一コピーの挿入に偏らせるために、細胞の約5%に感染を引き起こす感染多重度が選択された。こうした手法の主要な不利益は、ゲノム内での組込みが無作為であるため、転写レベル組込み部位転写活性に基づき、変動が生じる可能性に繋がることである。こうした場合のすべてに生じる別の不利益は、抗体遺伝子の組込みが、感染または遺伝子導入を限定することによって制御されており、これは、ライブラリーサイズに影響を与えるということである。

0013

リコンビナーゼによって指示される導入遺伝子の部位特異的組込みについて、これまでに説明されている。リコンビナーゼは、酵素特異的認識配列を含むDNA分子間の交換反応触媒する酵素である。例えば、Creリコンビナーゼ(E.coliの部位特異的組換えシステムから得られた)またはFlpリコンビナーゼ(Saccharomyces cerevisiaeの組換えシステムを利用している)は、その特異的な、34bpのloxP認識部位及び34bpのFlp組換え標的(Flp Recombination Target)(FRT)部位に対して、それぞれ働く[16]。リコンビナーゼは、部位特異的組込みを触媒するために、細胞工学において主に使用されてきた。Chen Zhouの仕事による数多くの研究[17、18、US7,884,054]によって、「Flp−In」システム(http://tools.lifetechnologies.com/content/sfs/manuals/flpinsystem_man.pdf)内のFlpリコンビナーゼを使用した、哺乳類細胞ゲノムへの、リコンビナーゼ媒介性である、抗体遺伝子の部位特異的組込みに対する説明がなされた。Flp−Inシステムは、多様な細胞株を利用し、当該細胞株は、そのゲノム内に予め導入された単一のFRT部位を有するものである。酵素であるFlpリコンビナーゼを発現することによって、標的細胞に存在するこの事前組込みFRT部位への、発現プラスミドの組込みを指示することが可能であり、当該発現プラスミドには、FRT組換え部位が組込まれている。

0014

Flp−lnシステムを使用して、Zhouら[17]は、FRT部位が組込まれたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(CHOF細胞)へ、FRT部位を含む、新規の抗体発現プラスミドを導入した。その研究では、ディプレイライブラリーの構築について説明されており、存在する抗OX40リガンド体内の4残基が変異誘発されたものである。ライブラリーは、FACSを使用して選別され、細胞表面で抗リガンド親和性を有する抗体が同定された。改善抗体の産生における全体的な成功は、単一の改善抗体の単離に限られたものであった。達成した特有哺乳類細胞クローンの数は、報告されなかった。

0015

2012年のLiらによる後続の論文[18]では、B型肝炎患者に由来するリンパ球を利用し、抗体ディスプレイライブラリーが構築された。HBsAgで免疫化されたドナーから得られた重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子を有する別々のライブラリーが産生され、ライブラリーのサイズは、それぞれ1.02x106及び1.78x105であったと個々に報告された。その後、重鎖及び軽鎖の両方を含む二次ライブラリーが産生され、報告によれば、4.32x105のサイズを有していた。報告によれば、FACS分析によって、細胞の約40%が細胞表面に検出可能な全長抗体をディスプレイしたことが示された。ライブラリーのFACS選別によって、HBsAgに結合する抗体が同定された。抗原に結合した、ライブラリーから選択された8つのメンバー試料の内の6つが、同一抗体を有することが明らかとなったため、同定された特有な抗HBsAgクローンは、全部で3つであった。

0016

この研究の成功が、幾分か限定されたことは、Flp−Inシステムが、大きなライブラリーの構築というよりは、むしろクローン数を限定した正確な組込みに向けて設計されたという事実に起因し得るものである。したがって、組込み忠実度の達成と、最大ライブラリーサイズの達成と、の間に潜在的な相反が存在する。Flp−Inシステムは、プラスミドpOG44における変異体Flpリコンビナーゼを利用しており、当該リコンビナーゼは、天然Flpリコンビナーゼの37℃での活性の僅か10%しか有さないものである[19]。野生型と比較して、熱安定性が向上すると共に活性が上昇したFlpリコンビナーゼの変異体(Flpe)が同定された[19、20]。これは、コドンの最適化によってさらに改善し、プラスミドcCAGGS−Flpo内にコードされたFlpoが創出された(Genebridgesカタログ番号A203)。しかしながら、Flp−Inマニュアルによると、
「Flp−In(商標発現細胞株を産生する際は、相対的に稀な組換え事象を選択していることを記することが重要あり、これは、ご自身のpcDNA(商標)5/FRT構築物の組換え及び組込みが、FRT部位のみを介して、限られた時間で生じることを意図されているためです。この場合、高度に非効率的なFlpリコンビナーゼを使用することが有利であり、これにより、他の望ましくない組換え事象の発生を低減することができます。。。
。。。単一の組込み体を得る可能性を上げるために、ご自身が遺伝子導入するプラスミドDNAの量を限定することによって、遺伝子導入効率を低下させることが必要となります」
これは、Buchholzら1996[19]によって、繰り返し述べられている。
FLPは、効率に依存せず、厳格な制御に依存する用途向けに、特に有用であり得る」

0017

モデル実験において、「マニュアルに記載の説明」を使用し、Zhouら(2010)[17]は、クローンの>90%において、単一コピーの挿入が生じたことを実際に示した。しかしながら、ライブラリー構築では、相対的に高い量の発現プラスミド(106個細胞当たり2.5〜3.2μg)と、pOG44リコンビナーゼをコードするプラスミドを超える過剰量のドナーと、が使用された[17、18]。Flp−Inシステムは、リコンビナーゼをコードするプラスミドと、発現プラスミドと、の比を少なくとも9:1にして使用することが有利であると推奨している。しかしながら、より多くの量のDNAを遺伝子導入することによって、ライブラリーのサイズを増加させようとすると、新規プラスミドの無作為組換えが生じる可能性がある[21]。すべての研究において、「ライブラリー構築」条件下での、組込みの正確性及び細胞当たりの組込み体の数に関する報告は無かった。

0018

ヌクレアーゼ指向型の遺伝子組込みでは、部位特異的ヌクレアーゼは、特定位置で細胞DNAを切断するために使用される。これは、相同組換えの速度を少なくとも40,000倍増進し、非相同末端結合機構による修復も可能にすることがこれまでに報告された。この部位特異的組込みの増進が、結合体ライブラリーの創出に関連した問題の解決に、使用またはそれが企図されたことは、これまで無かった。

0019

US20100212035では、ドナーDNAの組込みを指示するために、メガヌクレアーゼを使用して、哺乳類免疫グロブリンの遺伝子座を標的とすることによって、外来性抗体の発現を可能にするげっ歯類を生成する方法について説明されている。新しいDNA切断特異性を創出するための、メガヌクレアーゼの変異体ライブラリーの創出の可能性については説明されたが、メガヌクレアーゼの、結合体ライブラリーの生成に対する使用は、企図されていない。

0020

WO2013/190032A1では、リコンビナーゼ媒介性の部位特異的遺伝子導入に向けたloxP部位及びFRT部位などのリコンビナーゼ部位組込むための、外来性DNAで事前修飾された特定遺伝子座(Fer1L4)への遺伝子組込み(「部位特異的組込み」SSI宿主細胞)について説明されている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

0021

WO2012/167192A2では、遺伝子座に対する遺伝子の標的化について説明されており、当該遺伝子は、増幅で後に選択することができる。ヌクレアーゼ指向型の方法は、遺伝子座を標的とするために用いられている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

0022

US2009/0263900A1では、ホモロジーアームを含むDNA分子、及び相同組換えの方法におけるその使用について説明されている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

0023

WO2011/100058では、ゲノムへの核酸組込み方法について説明されており、当該組み込みは、長いホモロジーアームを必要とせず、代わりに、ゲノム及びドナー上のマイクロホモロジーまたは「粘着末端(sticky−end)」に依存して、直接的な組込みに役立てるものである。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

0024

WO20122/090804では、連続ラウンドにおいて、異なるジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を使用する、複数遺伝子または同一遺伝子の複数のコピーの組込み方法について説明されている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

0025

WO2014/039872では、部位指向型ヌクレアーゼを使用して、ドナーDNAが相同組換えまたは非相同末端結合によって組込まれる「ランディング部位(landing site)」が組込まれた植物細胞操作方法について説明されている。細菌人工染色体(BAC)ライブラリーが、ドナーDNAの初期クローン化に使用されている。ライブラリーについては、Illumina配列決定方法に関連して言及されている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

0026

WO2007/047859A2では、メガヌクレアーゼ特異性の操作方法、及びゲノム遺伝子座を標的とするためのその使用について説明されている。新規のヌクレアーゼ特異性を有したメガヌクレアーゼを含み得る変異体メガヌクレアーゼライブラリーについて説明されている。ヌクレアーゼ指向型のライブラリー生成については、説明されていない。

0027

US2014/0113375A1では、標的ゲノム配列に対して相同性を有する一本鎖DNA配列の生成に向けた一過性発現システムについて説明されており、当該一本鎖DNAは、核に運ばれ、DNA修復経路または相同組換えを介して標的ゲノム配列の遺伝子情報を変えることができるものである。変異の「ライブラリー」が、導入された(非ライブラリー)DNAの、忠実性が低い逆転写によって産生できることが示唆されている。哺乳類ディスプレイ及び結合活性を有する分子の選択については、説明されていない。

0028

US2012/0277120では、複数の外来性である核酸の同時組込みに向けた方法及び組成物について説明されており、当該組み込みは、酵母における天然の相同組換え機構を使用した単一の形質転換反応におけるものであり、当該組換えは、宿主細胞のゲノムにおいて、意図する組込み部位に標的二本鎖切断を含めることによって、さらに増進し得るものである。方法では、例えば、酵母などの産業微生物における機能性代謝経路の構築といった、複数のDNA集合の組み込みに、複数ラウンドが必要となることを打開することが意図されている。結合性分子ライブラリーのディスプレイまたは発現、高等真核生物の使用、及び結合活性を有する分子の選択については、説明されていない。

0029

哺乳類細胞及び他の高等真核生物上での抗体ディスプレイの可能性を完全に実現するために、大きなライブラリーの構築を可能にする効率と、前定義部位への正確な組込みと、を兼ね備える大きなライブラリーを創出するシステムが必要である。

0030

我々は、結合体をコードする遺伝子集団の、ヌクレアーゼ指向型組込みを使用することによって、細胞当たり1つまたは2つの結合体遺伝子を包含する大きな結合体ライブラリーを創出するという問題を克服した。したがって、本発明は、真核細胞集団の調製を可能にし、結合体をコードするレパートリーがゲノムにおける固定遺伝子座へと組込まれることで、コードされる結合性分子の発現を可能にし、それによって、異なる結合体を発現する細胞集団を創出する。

0031

本発明は、結合性分子(「結合体(binder)」)のレパートリーをコードする真核細胞ライブラリーの産生方法に関し、当該方法は、細胞DNAの標的切断に向けて部位特異的ヌクレアーゼを使用することで、内在性の細胞修復機構を介した、結合体遺伝子の部位特異的組込みを増進する。部位特異的ヌクレアーゼによって、真核生物ゲノムまたは他の真核細胞DNA内の1つまたは複数の定義遺伝子座への、結合体分子をコードするドナーDNAの正確な導入が可能になる。本発明は、結合体をコードする遺伝子のレパートリーが、細胞DNAの所望の遺伝子座(例えば、ゲノム遺伝子座)へと組込まれた真核細胞集団の調製方法を提供し、これにより、コードされる結合性分子の発現が可能になり、それによって、異なる結合体を発現する細胞集団が創出される。

0032

本発明による、真核細胞内での結合体のライブラリー構築は、発現構築物の部位指向型組込みに向けたリコンビナーゼ指向型の手法に勝る優位性を有する。本発明は、部位特異的ヌクレアーゼによる細胞DNAの切断を使用して、真核細胞細胞、及び具体的には高等真核生物における結合遺伝子の大きなレパートリーの構築に関して、これまで存在していた問題を解決するものである。本発明によって、細胞DNAにおける固定遺伝子座に組込まれた個々の結合体をそれぞれが発現する細胞クローンの大集団を効率的に創出することが可能である。細胞クローンのこうしたライブラリーから、新規の結合体または機能修飾タンパク質及び機能修飾ペプチドをコードする遺伝子を単離することが可能となる。

0033

本発明の手法は、リコンビナーゼ指向型のDNA交換ではなく、細胞(例えば、ゲノム)DNAの部位特異的切断を利用し、その後に天然の修復機構を使用して、結合体をコードするドナーDNAを組込むものである。部位特異的ヌクレアーゼによって認識される配列(「認識配列」)での細胞DNAの切断の後に、細胞DNAの切断は、相同組換えまた非相同末端結合(NHEJ)などの機構を使用して修復される。細胞DNAの部位特異的切断の創出が、外来性ドナーDNAの組込みを増進することで、固定遺伝子座に組込まれた結合体遺伝子を有した細胞の大集団の構築を可能にする。

0034

今日まで、メガヌクレアーゼ、ZFN、TALEヌクレアーゼ、及びCRISPR/Casシステムなどの部位特異的ヌクレアーゼは、内在性遺伝子に対する修飾、または細胞機能の研究向けのレポーター遺伝子の導入に向けた修飾、を有する細胞の効率的な創出を対象にしてきた。ヌクレアーゼ指向型のゲノム標的化が、抗体生産培養培地からの精製による)に向けて、単一の分泌抗体をコードする遺伝子を組込むために使用されたという実例も存在する[21、22、]。

0035

本発明は、単一または限定数の定義遺伝子座に対する組込みを指示しながら、大きなライブラリーの構築を単純化する。1つまたは複数の固定遺伝子座でのドナーDNAの組込みは、導入遺伝子数が可変である無作為組込みと比較して、転写を正常化し、結合体自体の転写特性及び安定特性に基づく抗体クローンの選択を可能にする。細胞DNAの1つの所定位置または複数の所定位置でのドナーDNAの忠実な組込みは、ライブラリーにおける相対的に均一なレベルの結合体転写と、高効率なドナーDNAの導入と、をもたらし、本発明の方法によって創出される細胞集団を、結合体のディスプレイ及び選択に向けたライブラリーとして、特に有用なものとする。したがって、本発明の方法は、真核細胞における結合体の高品質ライブラリーを提供し、当該ライブラリーを選別することで、関心標的に特異的な結合体をコード及び発現する細胞を同定することができる。

0036

様々な態様では、本発明は、結合性分子の発現及び選別、ならびに結合性分子の効果の選別などに向けた、真核細胞ライブラリーの調製、ライブラリー自体、ライブラリーからの所望の結合体の単離、所望のコード核酸の単離、及び所望の細胞の単離、ならびにライブラリーの使用、の新規かつ改善された方法に関する。試験管内でのライブラリーの産生、及び試験管内または生体内でのライブラリーの使用に向けて、様々な方法が説明されることになる。

0037

本発明は、多様な結合体レパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーの産生方法を提供し、当該方法は、真核細胞DNAの切断を標的とする部位特異的ヌクレアーゼを使用することで、内在性の細胞DNA修復機構を介した、細胞DNAへの結合体遺伝子の部位特異的組込みを増進する。

0038

多様な結合体レパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーの産生方法は、
結合体をコードするドナーDNA分子、及び真核細胞の提供と、
細胞へのドナーDNAの導入、及び細胞内での部位特異的なヌクレアーゼの提供であって、ヌクレアーゼが細胞DNAを切断することで、ドナーDNAが細胞DNAへと組込まれる組込み部位が創出され、組込みが、細胞に対して内在性であるDNA修復機構を介して生じる当該導入及び提供と、
を含んでよい。

0039

少なくとも第1及サブユニット及び第2サブユニット(すなわち、Fab形式またはIgG形式中に存在する抗体VHドメイン及び抗体VLドメインなどの別々のポリペプチド鎖)を含む、多量体である結合体に向けては、複数サブユニットは、ドナーDNAの同一分子上にコードされていてよい。しかしながら、別々の遺伝子座へ、異なるサブユニットを組込むことが望ましくあり得、その場合、サブユニットは、別々のドナーDNA分子上で供給することができる。こうしたものは、ヌクレアーゼ指向型組込みの同一サイクル内で組み込むか、または一方または両方の組込み段階で、ヌクレアーゼ指向型組込みを順次使用して組込んでよい。

0040

多量体である結合体をコードする真核細胞クローンのライブラリーの産生方法は、
第1サブユニットをコードするDNAを含む真核細胞の提供、及び第2結合体サブユニットをコードするドナーDNA分子の提供と、
細胞へのドナーDNAの導入、及び細胞内での部位特異的ヌクレアーゼの提供であって、ヌクレアーゼが細胞DNAの認識配列を切断することで、ドナーDNAが細胞DNAへと組込まれる組込み部位が創出され、組込みが、細胞に対して内在性であるDNA修復機構を介して生じ、それによって、細胞DNAに組込まれたドナーDNAを含む組換え細胞を創出する当該導入及び提供と、
を含んでよい。こうした組換え細胞は、多量体である結合体の第1サブユニット及び第2サブユニットをコードするDNAを含むことになり、培養されて、両方のサブユニットを発現し得る。多量体である結合体は、別々にコードされるサブユニットの発現及び会合によって得られる。

0041

上記実施例において、ヌクレアーゼ指向型組込みは、第1サブユニットをコードするDNAをすでに含む細胞へ、第2サブユニットをコードするDNAを組込むために使用される。第1サブユニットは、本発明の手法または他の適した任意のDNA組込み方法を使用して、予め導入しておくことができる。代替の手法は、ドナーDNAを導入する第1サイクルにおいてヌクレアーゼ指向型組込みを使用して第1サブユニットを組込み、その後、同一手法または他の適した任意の方法のいずれかによって、第2サブユニットを導入することである。ヌクレアーゼ指向型手法が、組込みの複数サイクルにおいて使用されるのであれば、異なる部位特異的ヌクレアーゼを任意選択で使用して、異なる認識部位での、ヌクレアーゼ指向型ドナーDNAの組込みを推進してもよい。ライブラリーの産生方法は、
第1サブユニットをコードする第1ドナーDNA分子の提供、及び真核細胞の提供と、
細胞への第1ドナーDNAの導入、及び細胞内での部位特異的ヌクレアーゼの提供であって、ヌクレアーゼが、細胞DNAの認識配列を切断することで、ドナーDNAが細胞DNAへと組込まれる組込み部位が創出され、組込みが、細胞に対して内在性であるDNA修復機構を介して生じ、それによって、細胞DNAに組み込まれた第1ドナーDNAを含む、第1セットの組換え細胞を創出する当該導入及び提供と、
第1サブユニットをコードするDNAを含む、第1セットのクローンを産生するための第1セットの組換え細胞の培養と、
第1セットのクローン細胞への、第2サブユニットをコードする第2ドナーDNA分子を導入であって、第1セットのクローンの細胞DNAへと第2ドナーDNAを組込み、それによって、細胞DNAへ組込まれた第1ドナーDNA及び第2ドナーDNAを含む、第2セットの組換え細胞を創出する当該導入と、
第2セットのクローンを産生するための第2セットの組換え細胞の培養であって、こうしたクローンが、多量体である結合体の第1サブユニット及び第2サブユニットをコードするDNAを含む当該培養と、
それによる、多量体である結合体のレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーの提供と、
を含んでよい。

0042

細胞DNAへの、ドナーDNAの部位特異的組込みは、培養してクローンを産生することができる組換え細胞を創出する。したがって、ドナーDNAが組込まれた個々の組換え細胞は、複製して細胞のクローン集団、すなわち「クローン」を生成し、それぞれのクローンは、1つの元の組換え細胞に由来するものである。したがって、方法によって、ドナーDNAの組込みに成功した細胞の数に対応する数多くのクローンが生成する。クローンの集合体は、結合体のレパートリーをコードするライブラリーを形成する(または結合体サブユニットが、別々のラウンドで組込まれる中間段階では、クローンは、1つのセットの結合体サブユニットをコードし得る)。したがって、本発明の方法は、結合体のレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを提供することができる。

0043

本発明の方法によって、細胞DNAにおける1つの固定遺伝子座または複数の固定遺伝子座に組込まれたドナーDNAを含むクローンのライブラリーを生成させることができる。「固定(fixed)」は、遺伝子座が、細胞間で同一であることを意味する。したがって、ライブラリーの創出に使用する細胞は、固定遺伝子座にヌクレアーゼ認識配列を含み得、当該認識部位は、そこにドナーDNAを組込むことができる、細胞DNAにおける普遍的なランディング部位に相当するものである。部位特異的ヌクレアーゼ向けの認識配列は、細胞DNAにおいて1つ以上の位置に存在し得る。

0044

本発明によって産生するライブラリーは、多様な形で用いてよい。ライブラリーは、培養して結合体を発現してよく、それによって、結合体の多様なレパートリーが産生する。ライブラリーにおいて所望の表現型の細胞を選別してよく、表現型は、細胞による結合体の発現からもたらされるものである。ライブラリーの細胞を培養して結合体を発現させ、その後、所望の表現型がライブラリーのクローンにおいて示されているかどうかを検出する表現型の選別が可能である。細胞の読出し情報は、内在性もしくは外来性のレポーター遺伝子の発現変化、分化状態、増殖、生存細胞サイズ、代謝、または他の細胞との相互作用変化などの細胞挙動の変化に基づき得る。所望の表現型が検出されると、その後、所望の表現型を示すクローンの細胞が回収される。任意選択で、その後、回収されたクローンから、結合体をコードするDNAが単離され、結合体をコードするDNAが得られる。当該DNAは、細胞において発現されると、所望の表現型を産生するものである。

0045

真核細胞ライブラリーが使用されてきた重要な目的は、関心標的を認識する結合体の選別方法にある。そのような方法では、ライブラリーを培養して結合体を発現させ、結合体を標的に対して曝露して、1つまたは複数の同種結合体による標的の認識を可能にし、もし存在するのであれば、標的が、同種結合体によって認識されたかが検出される。そのような方法では、結合体は、細胞表面にディスプレイされてよく、所望の特性を有する結合体をディスプレイする、ライブラリーのそうしたクローンを単離することができる。したがって、所望の機能特性または結合特性を有した結合体をコードする遺伝子が組込まれた細胞を、ライブラリー内で同定することができる。遺伝子を回収し、結合体の産生に使用するか、またはさらなる操作に使用して、特性が改善された結合体を得るために、結合体の派生ライブラリーを創出することができる。

0046

本発明は、高等真核生物におけるライブラリー構築に向けて、これまでの手法に勝る優位性を提供する。いくつかの研究では、レンチウイルスの感染を使用して、哺乳類レポーター細胞へ抗体遺伝子が導入された[106]。これは、大きなライブラリーを生成できるという優位性を有するが、組込み部位の制御が存在せず、コピー数は、低感染多重度を使用することによって制御されている(上記のとおり)。代替の手法では、抗体遺伝子は、ヌクレアーゼ指向型組込みを利用せず、10kbのホモロジーアームを使用して、相同組換えを介して導入されたが、標的効率は、相対的に低く、これは、潜在的なライブラリーサイズが限定されていたことを示している[105]。対照的に、配列指向型ヌクレアーゼの使用は、大きなライブラリーの効率的な構築を可能にしながら、1つまたは少数の選択遺伝子座を標的にして組込むという優位性を保持するものである。ヌクレアーゼ指向型組込みは、導入遺伝子の標的が、細胞DNA内の1つの遺伝子座または複数の遺伝子座であるという優位性を有している。これは、すべてのクローンにおいて、結合体遺伝子の転写を推進するプロモーター活性が同一であることになり、それぞれの結合体の機能性が、組込み部位に関連する変動に起因するものではなく、むしろその固有効力翻訳効率、及び安定性を反映するであろうことを意味する。単一または限定数の遺伝子座を標的とすることによって、必要であれば、例えば、誘導性プロモーターを使用した、より良い発現制御も可能となるであろう。

0047

以下に、本発明の様々な特徴を記載する。本明細書にわたって使用される表題は、ナビゲーション支援のみが目的であり、限定的なものであると解釈されるべきはなく、異なるセクションに記載の実施例は、必要に応じて組み合わせてもよいことに留意されたい。

0048

詳細な説明
真核細胞
多様な結合体レパートリーを発現する真核細胞集団の可能性が、本明細書の実施例において、哺乳類細胞表面での抗体レパートリーの発現に関連して、例示及び考察される。本発明の優位性は、哺乳類細胞に限定されず、すべての真核生物を含むものである。

0049

酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae)は、哺乳類細胞と比較して、小さなゲノムを有していると共に、(ヌクレアーゼ指向型の切断無しに)ホモロジーアームによって指示される相同組換えは、高等真核生物と比較して、外来性DNAを導入する有効な方法である。したがって、本発明のヌクレアーゼ指向型組込みの特定の優位性の1つは、ヌクレアーゼによる切断無しでは相同組換えの効率が低い、より大きなゲノムを有した高等真核細胞への結合体遺伝子の組込みに関するものである。ヌクレアーゼ指向型の組込みは、酵母細胞において使用されており、個々の酵母細胞へ複数遺伝子を効率的に組込むという問題を解決するものであり、例えば、代謝経路の操作に向けて使用されたが(US2012/0277120)、この研究は、結合体ライブラリーの導入を実施しておらず、高等真核生物におけるライブラリー構築の問題にも対処していないものである。

0050

本発明による真核細胞ライブラリーは、好ましくは高等真核細胞であり、本明細書で、12x106塩基対(bp)のゲノムサイズを有するSaccharomyces cerevisiaeのもの超えるゲノムを有する細胞であると定義される。例えば、高等真核細胞は、2x107塩基対を超えるゲノムサイズを有していてよい。これには、例えば、哺乳類、トリ、昆虫、または植物の細胞が含まれる。好ましくは、細胞は、例えば、マウスまたはヒトの哺乳類細胞である。細胞は、初代細胞であるか、または細胞株であってよい。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、一般に、抗体及びタンパク質の発現に使用されるが、本発明では、任意の代替安定細胞株を使用してよい。本明細書の実施例では、HEK293細胞を使用している。方法は、外来性DNAの、初代細胞への効率的な導入に利用可能であり、これにより、こうした細胞が使用可能となる(例えば、電気穿孔によってであり、最大で95%の効率及び生存率が達成された。http://www.maxcyte.com/technology/primary−cells−stem−cells.php)。

0051

好ましい細胞型には、Tリンパ球系譜の細胞(例えば、初代T細胞もしくはT細胞株)またはBリンパ球系譜の細胞が含まれる。TCR発現を欠いた細胞株を含む、TCRライブラリーにおいて使用する初代T細胞またはT細胞に由来する細胞株は、特に興味深いものである[23、24、25]。Bリンパ球系譜の細胞の例には、B細胞、プレB細胞またはプロB細胞、及びこうした細胞のいずれかから得られる細胞が含まれる。

0052

初代B細胞またはB細胞株におけるライブラリーの構築は、抗体ライブラリーの構築に特に有用性があるであろう。Breous−Nystromら[15]は、マウスのプレB細胞株(1624−5)においてライブラリーを生成させた。ニワトリB細胞に由来する細胞株であるDT40(ATCCCRL−2111)は、結合体のライブラリー構築に特に有望である。DT40は、細胞増殖速度が相対的に速い小さな細胞株である。内在性配列を標的とするZFN、TALEヌクレアーゼ、もしくはCRISPR/Cas9を使用するか、またはメガヌクレアーゼ認識部位を含めることができる、事前に組込まれた異種性部位を標的とすることによって、結合体レパートリーの標的を特定遺伝子座にすることができる。DT40細胞は、抗体を発現しているため、内在性のニワトリ抗体可変ドメイン破壊して、または破壊せずに、抗体遺伝子座内の抗体遺伝子を標的とするために有利であろう。DT40細胞は、ニワトリ抗体遺伝子座で生じる内因性多様化を利用した自律多様化ライブラリーシステム(ADLibシステム)と命名された、試験管内でのニワトリIgM生成システムの基礎としても使用されてきた。この内在性の多様化の結果として、新規の特異性を生成することが可能である。本明細書に記載のヌクレアーゼ指向型の手法は、ADLibと組み合わせて使用することで、異種性供給源(例えば、ヒト抗体可変領域レパートリーまたは合成的に得られた代替骨格)に由来する結合体の多様なライブラリーと、ニワトリIgG遺伝子座のさらなる多様化に向けた潜在力と、を組み合わせることができる。類似の優位性をNalm6[26]などのヒトB細胞株に適用することができる。他のB細胞系譜の関心細胞株には、マウスのプレB細胞株1624−5及びプロB細胞株Ba/F3などの株が含まれる。Ba/F3は、IL−3依存性であり[27]、その使用については、本明細書の他の箇所において考察されている。最終的に、「Cancer Cell Line Encyclopaedia」[28]、または「COSMIC catalogue of somatic mutations in cancer」[29]において記載されているものを含む、数多くのヒト細胞株を使用することができる。

0053

典型的には、ライブラリーは、例えば、ドナーDNAの、特定細胞株の細胞への導入といった、ドナーDNAの、クローン真核細胞集団への導入によって産生した単一型の細胞からなることになる。異なるライブラリークローン間で主要かつ顕著な差異があれば、ドナーDNAの組込みに起因するものであることになる。

0054

真核生物ウイルスシステム
真核細胞での結合体ライブラリーの創出におけるシステムの優位性は、例えば、バキュロウイルスディスプレイまたはレトロウイルスディスプレイ[1、2、3、4]といった、真核生物発現システムに基づくウイルスディスプレイシステムに適用することができる。この手法では、それぞれの細胞は、ウイルス粒子へと組込むことが可能な結合体をコードすることになる。レトロウイルスシステムの場合では、コードするmRNAは、内包されるであろうし、コードされる結合体は、細胞表面に提示されるであろう。バキュロウイルスシステムの場合では、結合体をコードする遺伝子は、遺伝子と、コードされるタンパク質と、の関連性を維持するために、バキュロウイルス粒子へと被包される必要があるであろう。これは、バキュロウイルスゲノムのエピソームコピーを保有する宿主細胞を使用して達成することができる。あるいは、組込まれたコピーは、特異的ヌクレアーゼ(部位特異的組込みを推進するために使用されるものとは異なる)の作用を経て遊離させることができる。多量体である結合体分子の場合では、ウイルスに内包されている1つまたは複数のパートナーの遺伝子と共に、細胞DNA内にパートナーをいくつかコードさせることができる。

0055

部位特異的ヌクレアーゼ
本発明は、結合体のレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞ライブラリーの構築における、細胞DNAの標的切断に向けた、部位特異的ヌクレアーゼの使用を含み、ヌクレアーゼ媒介性のDNA切断は、内在性の細胞DNA修復機構を介して、結合体遺伝子の部位特異的組込みを増進する。部位特異的ヌクレアーゼは、認識配列に対して特異的に結合した後に細胞DNAを切断し、それによって、ドナーDNA向けの組込み部位が創出される。ヌクレアーゼによって、二本鎖切断または一本鎖切断切れ目)が生じてよい。ライブラリーの創出に使用する細胞は、部位特異的ヌクレアーゼによって認識される内在性配列を含んでよく、または認識配列は、細胞DNAへと操作導入されてよい。

0056

部位特異的ヌクレアーゼは、細胞に対して外来性であってよい。すなわち、選択した型の細胞において自然発生しなくてよい。

0057

部位特異的ヌクレアーゼは、結合体をコードするドナーDNAの導入の前、後、または同時に導入することができる。ドナーDNAは、結合体に加えてヌクレアーゼをコードするか、または別々の核酸上に存在するものが同時導入されるか、もしくはそうでなければドナーDNAとして同時に導入されることが、簡便であり得る。ライブラリーのクローンは、部位特異的ヌクレアーゼをコードする核酸を任意選択で保持してよく、またはそのような核酸は、細胞へと一過性に遺伝子導入されるだけであってよい。

0058

本発明では、任意の適した部位特異的ヌクレアーゼを使用してよい。天然起源の酵素、または操作された変異体であってよい。細胞DNAにおいて稀にしか生じない配列を認識または認識するように操作することができるヌクレアーゼなどの、特に適したヌクレアーゼが、数多く知られている。ヌクレアーゼは、1つまたは2つの部位のみを切断することが有利であり、これは、細胞当たり、1つまたは2つのドナーDNA分子のみが組込まれることを保証することになるためである。認識配列が、相対的に長ければ、部位特異的ヌクレアーゼによって認識される配列が稀にしか存在しない可能性が高い。ヌクレアーゼによって特異的に認識される配列特異性は、例えば、少なくとも10、15、20、25、または30個のヌクレオチドの配列であってよい。

0059

適したヌクレアーゼの例には、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEヌクレアーゼ、及びCRISPR/Casシステムなどの核酸でガイドされる(例えば、RNAでガイドされる)ヌクレアーゼが含まれる。操作された形態では、一本鎖切断を生成することが知られているものの、こうしたヌクレアーゼのそれぞれが、二本鎖切断を生成するものである。

0060

メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼとしても知られる)は、すべての生命界にわたって生じるヌクレアーゼであり、相対的に長い配列(12〜40bp)を認識する。認識配列が長いことを考慮すれば、当該認識配列は、真核生物ゲノムにおいて、存在しないか、または生じることは相対的に稀である。メガヌクレアーゼは、配列/構造に基づいて5つのファミリーへと分類される。(LAGLIDADG、GIY−YIG、HNH、His−Cys box、及びPD−(D/E)XK)。最も研究されたファミリーは、LAGLIDADGファミリーであり、当該ファミリーは、Saccharomyces cerevisiaeに由来する、よく特徴づけられたI−SceIメガヌクレアーゼを含む。I−SceIは、4bpの3’突出部を残し、18bpの認識配列(5’TAGGGATAACAGGGTAAT)を認識して切断する。一般に使用される別の例は、Chlamydomonas reinhardtiiの単細胞緑藻葉緑体起源とするI−Cre1であり、22bpの配列を認識する[30]。認識配列が変化するように操作され、数多くの変異体が創出された[31]。メガヌクレアーゼは、ゲノム工学において、部位特異的ヌクレアーゼが使用された最初の例である[49、50]。リコンビナーゼに基づく手法と同様に、I−Sce1及び他のメガヌクレアーゼを使用する場合は、ゲノム内に、標的となる適切な認識部位を事前に挿入するか、または内在性部位を認識するように、メガヌクレアーゼを操作する必要がある[30]。HEK293細胞における、この手法による標的化効率(組込まれた不完全GFP遺伝子の相同性指向型「修復(repair)」によって判断)は、細胞の10〜20%であり、I−Sce1の使用を介して達成されたものである[32]。

0061

本発明における使用に好ましいメガヌクレアーゼのクラスは、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼである。こうしたものには、I−Sce I、I−Chu I、I−Cre I、Csm I、PI−Sce I、PI−Tli I、PI−Mtu I、I−Ceu I、I−Sce II、I−Sce III、HO、Pi−Civ I、PI−Ctr I、PI−Aae I、PI−Bsu I、PI−Dha I、PI−Dra I、PI−Mav I、PI−Mch I、PI−Mfu PI−Mfl I、PI−Mga I、PI−Mgo I、PI−Min I、PI−Mka I、PI−Mle I、PI−Mma I、PI−Msh I、PI−Msm I、PI−Mth I、PI−Mtu PI−Mxe I、PI−Npu I、PI−Pfu I、PI−Rma I、PI−Spb I、PI−Ssp I、PI−Fac I、PI−Mja I、PI−Pho I、Pi−Tag I、PI−Thy I、PI−Tko I、I−Mso I、及びPI−Tsp Iが含まれ、好ましくは、I−Sce I、I−Cre I、I−Chu I、I−Dmo I、I−Csm I、PI−Sce I、 PI−Pfu I、PI−Tli I、PI−Mtu I、及びI−Ceu Iである。

0062

近年、数多くの方法が開発されたことで、新規の配列特異的ヌクレアーゼを設計することが可能であり、これは、非特異的ヌクレアーゼに対して配列特異的DNA結合ドメインを融合することによって実施され、これにより、特別に作成されたDNA結合ドメインを介して指示される、設計された配列特異的ヌクレアーゼが創出される。結合特異性は、ジンクフィンガードメインなどの結合ドメインを操作することによって指示することができる。こうしたものは、亜鉛イオンによって安定化された小さなモジュラードメインであり、当該ドメインは、分子認識関与し、DNA配列を認識する性質において使用される。ジンクフィンガードメインのアレイは、配列特異的な結合に向けて操作され、II型制限酵素であるFok1の非特異的DNA切断ドメインに対して連結されることで、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)が創出された。ZFNは、ゲノム内の特異的部位に、二本鎖切断を創出するために使用することができる。Fok1は、偏性量体であり、切断を起こすために、2つのZFNが、近接して結合する必要がある。操作されたヌクレアーゼの特異性は、増進しており、お互いのヘテロ2量体のみを形成するように操作された2つの異なるFok1変異体を創出することによって、その毒性は低減された[33]。そのような偏性ヘテロ2量体であるZFNは、薬物での選択を必要とせずに、標的細胞の5〜18%において、相同性指向型組込みを達成することが明らかとなった[21、34、35]。選択を実施すること無く、>5%の頻度で最大8kbの挿入断片の組込みが示された。

0063

ZFNなどのヌクレアーゼによって創出される一本鎖の5’突出部が、切断部位への導入遺伝子の効率的な組込みの推進に役立つことが、最近示された[45]。これはさらに拡張され、ドナーDNAの生体内での切断(ドナープラスミド内に特異的なヌクレアーゼ認識部位を含めることを介して)が、非相同組込みの際の効率を増進することが示された。当該機構は、完全に明らかでないが、生体内での直鎖化を介したことで、細胞ヌクレアーゼに対する曝露が減少したことが、増進に寄与し得た可能性がある[45]と共に、ヌクレアーゼによって生成したドナーDNA及びアクセプターDNAの5’突出部が適合することにより、ライゲーションを推進した可能性もある。しかしながら、接合部の配列を調べると、欠失が生じていることが明らかとなった。完全に適合した結合部は、認識配列の欠失が生じるまで、部位指向型ヌクレアーゼの基質として働き続ける可能性がある。この潜在的な問題を克服するために、Marescaら[36]は、ゲノム遺伝子座へドナーDNAがライゲーションすると、一方の組込み隣接位置での2つの左側ZFNによる重複と、もう一方の隣接位置での2つの右側ZFNによる重複と、が引き起こされるように、ドナーDNA内の左右のZFNの認識部位を反転させた。偏性ヘテロ2量体ヌクレアーゼを使用することは(Fok1向けに記載したように)、こうした新しく創出された隣接配列のどちらも、標的ヌクレアーゼによって切断できないことを意味している。

0064

定義された特異性を有するDNA結合ドメインの操作能力は、Xanathomonas細菌において、転写活性化因子エフェクター(TALE)分子が発見されたことによって、さらに単純化された。こうしたTALE分子は、33〜35個のアミノ酸である単量体のアレイからなり、それぞれの単量体が、標的配列内の単一塩基を認識する[37]。1:1であるこのモジュラー関係性が、任意の関心DNA標的に結合する、操作されたTALE分子の設計を相対的に容易なものとした。こうした設計TALEと、Fok1とを結合させることによって、新規の配列特異的TALEヌクレアーゼを創出することが可能となった。TALEヌクレアーゼは、TALENとしても知られ、今日までに、非常に多くの部位に対して設計されており、高い成功率で、効率的な遺伝子修飾活性を示すものである[38]。本明細書の実施例では、我々は、TALEヌクレアーゼの使用を介して、ドナーDNAの組込みが増進することを示している。その他にも、TALEヌクレアーゼ技術を変更したもの及び強化したものが開発されており、ヌクレアーゼ指向型組込みを介した、結合体ライブラリーの生成に使用することができる。こうしたものには、TALEヌクレアーゼ結合ドメインが、メガヌクレアーゼに融合した「メガTALEN(mega−TALEN)」[39]、及び単一TALEヌクレアーゼ認識ドメインが、切断を引き起こすために使用される「コンパクトTALEN(compact TALEN)」[40]が含まれる。

0065

近年、ゲノム内の特定配列に対する二本鎖切断または一本鎖切断の指示に向けた別のシステムについて、説明された。このシステムは、「クラスター化して規則的な間隙を含む短い回文配列の繰り返し(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)(CRISPR)及びCRISPR関連(CRISPR Associated)(Cas)」システムと呼ばれ、細菌の防衛機構に基づくものである[41]。CRISPR/Casシステムは、短い回文配列の繰り返しと隣接する、短い相補一本鎖RNA(CRISPR RNAまたはcrRNA)を介した切断に向けて、DNAを標的としている。一般に使用される「II型」システムでは、標的RNAのプロセシングは、回文配列の繰り返しに相補的な配列を有するトランス活性化crRNA(tracrRNA)の存在に依存している。回文繰り返し配列に対するtracrRNAのハイブリッド形成が、プロセシングを引き起こす。プロセシングされたRNAは、Cas9ドメインを活性化し、DNA内の相補的な配列に対してその活性を指示する。システムは、単一RNA転写物に由来するCas9による切断を指示するために単純化されており、ゲノム内の多くの異なる配列を対象としてきた[42、43]。ゲノム切断に対するこの手法は、短いRNA配列を介して指示されるという優位性を有し、これによって、切断特異性の操作が相対的に単純化されている。このように、ゲノムDNAの部位特異的切断を達成する方法は、様々であり、数多く存在する。上記のとおり、これは、内在性である細胞のDNA修復機構を介した、ドナープラスミドの組込み率を増進するものである。

0066

メガヌクレアーゼ、ZFN、TALEヌクレアーゼ、またはCRISPR/Cas9システムなどの核酸ガイドシステムを使用することで、ゲノム内の内在性遺伝子座を標的とすることが可能になるであろう。本明細書の実施例では、我々は、AAVS遺伝子座を標的とすることを示しているが、代替の遺伝子座を標的とすることができる。例えば、導入遺伝子を効率的に発現するために、I型コラーゲンの遺伝子座が使用された[44]。

0067

あるいは、その後のライブラリー標的化に向けて、メガヌクレアーゼ、ZFN、及びTALEヌクレアーゼを含む標的ヌクレアーゼの異種性の認識部位を事前に導入することができる。本明細書の実施例では、我々は、相同組換えによる導入のための、AAVS遺伝子座内のTALEヌクレアーゼ認識配列、AAVS遺伝子座内のI−Sce1メガヌクレアーゼ認識配列、及び異種性のTALEヌクレアーゼ認識部位の使用について説明している。ヌクレアーゼ指向型標的化は、ベクターDNAまたは二本鎖オリゴヌクレオチドさえも使用して、相同組換えまたはNHEJによる、標的配列の挿入を推進するために使用することができる[45]。代替として、非特異的標的化方法を使用することで、トランスポゾン指向型組込み[46]の使用を介して、標的化部位を導入して、部位特異的ヌクレアーゼの認識部位を導入することができる。低力価で適用される、レンチウイルスなどのウイルスに基づくシステムも標的化部位の導入に使用することができる。単一コピーの挿入に向けた選別と組み合わせた、DNAの遺伝子導入も特有の組込み部位の同定に使用することができる[17]。そのような非特異的手法は、細胞が、標的とするための明白な部位を有さない場合、またはゲノム配列が決定されていない場合、またはゲノムに対してTALEヌクレアーゼ、ZFN、もしくはCas9/CRISPRシステムが利用できない場合、に特に有用であろう。ヌクレアーゼ認識部位を無作為に挿入した後に、細胞株が一旦確立すると、続いて細胞株は、ヌクレアーゼ指向型組込みを使用した結合体ライブラリーの創出に使用することができ、当該結合体ライブラリーは、ライブラリーのすべてのクローンが、固定遺伝子座に導入遺伝子を含むものである。

0068

記載の実施例では、ドナーDNA向けの別のプラスミドと共に使用する個々のプラスミド上に存在するTALEヌクレアーゼまたはZFNのペアを含む、3種の異なるプラスミドを使用している。メガヌクレアーゼの場合は、部位特異的ヌクレアーゼは、単一遺伝子によってコードされ、これは、1つのプラスミド上に導入されており、ドナーDNAは、第2のプラスミド上に存在する。当然のことながら、同一プラスミド上に2つ以上のこうした要素を組込んで、組み合わせて使用することができ、これは、導入することになるプラスミド数を低減することによって標的化効率を増進することができる。さらに、トランスポサーゼで示されたように[46]、ヌクレアーゼ活性時間的制御を可能にするために、誘導性でもあり得るヌクレアーゼを事前に組み込むことが可能であり得る。最終的には、ヌクレアーゼは、組換えタンパク質またはタンパク質:RNA複合体(例えば、CRISPR:Cas9などのRNA指向型ヌクレアーゼの場合)として導入することができる。

0069

遺伝子座
部位特異的ヌクレアーゼに向けた認識配列は、ゲノムDNA、または細胞において安定的に受け継がれているエピソームDNAに存在していてもよい。したがって、ドナーDNAは、細胞DNAのゲノムまたはエピソームの遺伝子座に組込まれてよい。

0070

その最も単純な形態では、結合体をコードする単一遺伝子(結合体の遺伝子)は、真核生物ゲノム内の単一部位を標的とする。特定の結合活性または細胞表現型を示す細胞を同定すれば、所望の特性をコードする遺伝子の直接的な単離が可能となるであろう(例えば、mRNAまたはゲノムDNAからのPCRによって)。これは、部位特異的ヌクレアーゼに向けた特有の認識配列であって、細胞DNAに1度しか生じない特有の認識配列を使用することによって促進される。したがって、ライブラリーの創出に使用される細胞は、単一の固定遺伝子座、すなわち、すべての細胞において同一である1つの遺伝子座、に1つのヌクレアーゼ認識配列を含んでよい。そのような細胞から産生するライブラリーは、固定遺伝子座に組込まれたドナーDNAを含むことになり、すなわち、これが、ライブラリー中のすべてのクローンの細胞DNAにおける同一遺伝子座で起こるということである。

0071

任意選択で、認識配列は、細胞DNAにおいて複数回生じてよく、その結果、細胞は、複数の潜在的な、ドナーDNAの組込み部位を有する。これは、認識配列が、染色体のペア、すなわち、反復遺伝子座、における対応する位置に存在する二倍体または倍数体の細胞では典型的な状況であろう。そのような細胞から産生するライブラリーは、反復固定遺伝子座に組込まれたドナーDNAを含み得る。たとえば、二倍体細胞から産生したライブラリーは、二重の固定遺伝子座に組込まれたドナーDNAを有し得、三倍体細胞から産生したライブラリーは、三重の固定遺伝子座に組込まれたドナーDNAを有し得る。適した哺乳類細胞の多くは、二倍体であり、本発明による哺乳類細胞ライブラリーのクローンは、二重の固定遺伝子座に組込まれたドナーDNAを有し得る。

0072

部位特異的ヌクレアーゼによる認識配列は、細胞DNAにおける複数の独立した遺伝子座に生じ得る。したがって、ドナーDNAは、複数の独立した遺伝子座に組込まれ得る。二倍体または倍数体の細胞のライブラリーは、複数の独立した固定遺伝子座及び/または反復固定遺伝子座に組込まれたドナーDNAを含み得る。

0073

複数の遺伝子座(反復遺伝子座または独立遺伝子座を問わず)に認識配列を含む細胞では、それぞれの遺伝子座は、ドナーDNA分子に向けた潜在的な組込み部位に相当するものである。細胞へのドナーDNAの導入は、細胞に存在するすべての数のヌクレアーゼ認識配列での組込みをもたらし得るか、またはドナーDNAは、いくつかのヌクレアーゼ認識配列では組込まれ得るが、こうした潜在的な部位のすべてにではない。例えば、第1遺伝子座及び第2遺伝子座(例えば、二重の固定遺伝子座)に認識配列を含む二倍体細胞に由来するライブラリーを産生すると、得られるライブラリーは、ドナーDNAが第1固定遺伝子座に組込まれたクローンと、ドナーDNAが第2固定遺伝子座に組込まれたクローンと、ドナーDNAが第1固定遺伝子座及び第2固定遺伝子座の両方に組込まれたクローンと、を含み得る。

0074

したがって、ライブラリーの産生方法は、1つの細胞における複数の遺伝子座の、部位特異的ヌクレアーゼによる切断と、複数の固定遺伝子座へのドナーDNAの組込みと、を伴い得る。上記のとおり、同一認識配列の複数コピーが存在する場合(例えば、二倍体または倍数体の細胞における内在性遺伝子座を標的とするときに生じる)であり、特に、効率的な標的化機構を使用すると、2つの結合体遺伝子が組込まれることになり、その際、1つの遺伝子のみが、標的に対して特異的である可能性がある。これは、結合体遺伝子が単離されると、その後の選別の間に解決することができる。

0075

いくつかの実例では、細胞当たり、複数の結合体を導入することが望ましくあり得る。例えば、一体となる異なる2つの抗体から二重特異性である結合体を生成することができ、こうしたものは、個々の結合体には無い特性を有し得る[47]。これは、二重の固定遺伝子座の両方の対立遺伝子へ異なる抗体遺伝子を導入するか、または本明細書に記載の方法を使用して、独立した固定遺伝子座へ、標的とする異なる抗体集団を導入することによって達成できる。さらに、結合体自体が、複数鎖からなってよい(例えば、Fab形式またはIgG形式内に存在する抗体のVHドメイン及びVLドメイン)。この場合、異なる遺伝子座へ異なるサブユニットを組込むことが望ましくあり得る。こうしたものは、ヌクレアーゼ指向型組込みの同一サイクル内で組込むことができ、そうしたものは、一方または両方の組込み段階で、ヌクレアーゼ指向型組込みを使用して順次組込むことができる。

0076

ドナーDNAの導入
遺伝子導入、感染、または電気穿孔を含む、多数の方法が、真核細胞へのドナーDNAの導入に向けて説明されてきた。本明細書に記載のポリエチレンイミン媒介性の遺伝子導入を含む、標準方法による遺伝子導入が可能な細胞の数は非常に多い。さらに、方法は、5分間で1010個の細胞を処理する高効率な電気穿孔に利用可能であり、例えば、http://www.maxcyte.comである。

0077

コンビナトリアルライブラリーを創出することができ、ここで、多量体の結合ペアのメンバー(例えば、抗体遺伝子のVH遺伝子及びVL遺伝子)は、異なるプラスミドに導入されるか、または同一結合体分子の異なる部分でさえも、異なるプラスミドに導入される。別々の結合体または結合体サブユニットをコードする別々のドナーDNA分子の導入を同時または順次実施してよい。例えば、抗体軽鎖を遺伝子導入または感染によって導入し、必要であれば、細胞を増殖させて選択することができる。そして、その後の感染または遺伝子導入の段階で、他の成分を導入することができる。一方または両方の段階が、特定ゲノム遺伝子座に対するヌクレアーゼ指向型の組込みを伴い得る。

0078

ドナーDNAの組込み
ドナーDNAは、細胞DNAへと組込まれて、組込み部位にドナーDNAが挿入された近接DNA配列を有する組換えDNAを形成する。本発明では、組込みは、細胞に対して内在性である天然のDNA修復機構によって媒介される。したがって、細胞へのドナーDNAの導入によって、組込みを簡単に生じさせることが可能となり得、これにより、部位特異的ヌクレアーゼによる組込み部位の創出が可能になると共に、ドナーDNAの組込みが可能となる。細胞は、DNAが組込まれる間、十分な時間、培養で保持してよい。これは、通常、細胞集団の混合をもたらし、当該細胞には、(i)部位特異的ヌクレアーゼによって創出された組込み部位に、ドナーDNAが組込まれた組換え細胞、ならびに任意選択で、(ii)ドナーDNAが、所望の組込み部位以外の部位に組込まれた細胞、及び/または任意選択で、(iii)ドナーDNAが、組込まれなかった細胞、が含まれる。したがって、ライブラリーの所望の組換え細胞及び得られるクローンは、他の真核細胞との混合集団において提供されてよい。ライブラリーの細胞を濃縮するために、本明細書の他の箇所に記載の選択方法を使用してよい。

0079

真核細胞における内在性のDNA修復機構には、相同組換え、非相同末端結合(NHEJ)、及びマイクロホモロジー指向型末端結合(microhomology−directed end joining)が含まれる。そのようなプロセスによるDNA修飾の効率は、DNAに二本鎖切断(DSB)を導入することによって増加させることができ、I−Sce1などのレアカッターエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を使用することで、効率が、40,000倍に上昇することが報告された[48、49、50]。

0080

Flp−Inシステムなどのシステムで生じる部位特異的組換え[16]とは異なり、本発明は、外来性リコンビナーゼまたは操作されたリコンビナーゼ認識部位を必要とするものではない。したがって、任意選択で、本発明は、ライブラリーの創出において、リコンビナーゼ媒介性のDNA組込みの段階を含まず、及び/または任意選択で、ドナーDNAが導入される真核細胞は、部位特異的リコンビナーゼ向けの組換え部位を欠いている。リコンビナーゼと、ヌクレアーゼとが、細胞DNAへとドナーDNAを指示して挿入する機構及び実用性は、非常に異なるものである。これは、Jasin 1996[50]によって、以下に考察されているとおりである。

0081

「。。。部位特異的リコンビナーゼによって触媒される反応は、DSBの細胞修復とは完全に異なるものである。creなどの部位特異的リコンビナーゼは、2つの認識部位を対合させ、部位内に一本鎖切断を創出することで、ホリデイ(Holiday)中間体を形成する。この中間体は、解消され、欠失、反転、及び挿入(同時組込み体(cointegrant))を産生し、これらのすべてで、2つの認識部位は回復される。反応は、絶対的に正確であり、それ故に可逆的である。切断が細胞修復機構に対して曝露されることは決してない。」

0082

対照的に、部位特異的ヌクレアーゼは、細胞DNA(例えば、ゲノムまたはエピソーム)内に切断または切れ目を生じさせるために働き、当該切断または切れ目は、相同組換えまたはNHEJなどの内在性の細胞修復機構に曝露されて修復される。リコンビナーゼに基づく手法では、その認識部位を事前に組込むことが絶対要件であるため、そのような方法は、予備段階として、「ホットスポット」組込み部位の細胞DNAへの導入操作が必要になる。ヌクレアーゼ指向型の組込みでは、ヌクレアーゼを操作するか、またはCRISPR:Cas9の場合は、ガイドRNAを介して指示し、内在性遺伝子座、すなわち、細胞DNAにおいて自然発生する核酸配列を認識させることが可能である。最終的に、ヌクレアーゼ指向型の手法は、結合体の大きなライブラリーを作成するために必要なレベルで、導入遺伝子を直接組込むために、実践的なレベルにおいて、より効率的なものである。

0083

本発明の方法において、ドナーDNAが組込まれるDNA修復機構は、ドナーDNAの設計及び/または部位特異的ヌクレアーゼの選択によって、事前に決定、または幾分か偏らせることができる。

0084

相同組換えは、修復用鋳型として相同配列(例えば、別の対立遺伝子由来)を使用する、二本鎖切断修復のための、細胞が使用する天然の機構である。相同組換えは、ゲノムへの、挿入(導入遺伝子を含む)、欠失、及び点変異の導入のために、細胞工学において利用されてきた。相同組換えは、ドナーDNA上にホモロジーアームを与えることによって促進される。高等真核生物を操作するための元の手法では、典型的には、ドナープラスミド内の5〜10kbのホモロジーアームを使用して、関心部位への標的組込みの効率を増加させるものであった。これにもかかわらず、長いホモロジーアームによって純粋に推進される相同組換えは、Flp及びCre指向型の組換えと比較して、特に大きなゲノムを有する高等真核性物において、効率が低いものである。相同組換えは、ゲノムサイズが僅か12.5x106bpである酵母などの真核生物に特に適しており、例えば、3000x106bpを有する哺乳類細胞といった、より大きなゲノムを有する高等真核生物と比較して、より効率的である。

0085

相同組換えは、ゲノムDNAの切れ目を介して指示することもでき[52]、これは、ゲノムDNAへの、ヌクレアーゼ指向型の組込みに向けた経路としても働くことができる。2つの異なる経路が、切れ目の入ったDNAにおける相同組換えを促進することが示された。一方は、Rad51/Brca2を利用した、二本鎖切断の修復に本質的に類似しているが、もう一方は、Rad51/Brca2によって阻害され、一本鎖DNAまたは切れ目の入った二本鎖ドナーDNAを優先的に使用するものである[51]。

0086

非相同末端結合(NHEJ)は、ゲノムにおける二本鎖切断を修復する代替の機構であり、DNAの末端は、相同性の鋳型を必要とすることなく、直接的に再連結される。ゲノムDNAのヌクレアーゼ指向型の切断は、非相同性に基づく機構を介した導入遺伝子の組込みを増進することもできる。DNA修復に対するこの手法は、正確性が低く、挿入または欠失を引き起こし得る。それにもかかわらず、NHEJは、インフレームエクソンイントロンへと組込む簡便な手段を提供するか、またはプロモーター遺伝子カセットの、ゲノムへの組込みを可能にするものである。非相同性の方法を使用することで、ホモロジーアームを欠いたドナーベクターを使用することが可能になり、それによって、ドナーDNAの構築が単純化される。

0087

DNA末端の再連結に、短い末端相同性領域が使用されることが指摘されており、二本鎖切断の修復指示に、4bpのマイクロホモロジーを利用し得るとの仮説が立てられ、これは、マイクロホモロジー指向型末端結合と称される[50]。

0088

ドナーDNA
ドナーDNAは、通常は、環状化DNAであり、プラスミドまたはベクターとして提供してよい。別の可能性としては、直鎖状DNAである。ドナーDNA分子は、細胞DNAへと組込まれる1つまたは複数のドナーDNA配列に加えて、細胞DNAへと組込まれない領域を含んでよい。DNAは、典型的には二本鎖であるが、場合によっては、一本鎖DNAを使用してよい。ドナーDNAは、結合体をコードする1つまたは複数の導入遺伝子を含み、例えば、プロモーター:遺伝子カセットを含んでよい。

0089

最も単純な形式の二本鎖では、相同組換えを推進するために、環状プラスミドDNAを使用することができる。これには、導入遺伝子と隣接するDNA領域が必要であり、当該隣接DNA領域は、ゲノムDNAの切断部位と隣接するDNA配列に対して相同性を有するものである。直鎖化された二本鎖プラスミドDNAまたはPCR産物または合成遺伝子を使用して、相同組換え経路及びNHEJ修復経路の両方を推進することができる。二本鎖DNAに対する代替として、一本鎖DNAを使用して、相同組換えを推進することが可能である[52]。一本鎖DNAを生成するための一般的な手法は、糸状バクテリオファージに由来する一本鎖の複製起点をプラスミドへと含めるものである。

0090

アデノ随伴ウイルス(AAV)などの一本鎖DNAのウイルスは、効率的な相同組換えを推進するために使用され、効率が桁違いに改善することが示された[53、54]。AAVシステムなどのシステムは、大きな結合体ライブラリーの構築に向けて、ヌクレアーゼ指向型の切断と併せて使用することができる。両システムの優位性は、結合体ライブラリーの標的化に適用することができる。AAVベクターパッケージング限界は、4.7kbであるが、標的ゲノムDNAのヌクレアーゼ消化を使用すれば、この制限を減らすことになり、より大きな導入遺伝子構築物を組込むことが可能となる。

0091

ドナーDNA分子は、単一の結合体または複数の結合体をコードしてよい。任意選択で、ドナーDNA分子当たり、結合体の複数サブユニットをコードしてよい。いくつかの実施形態では、ドナーDNAは、多量体である結合体の1つのサブユニットをコードする。

0092

選択に向けたプロモーター及び遺伝子要素
コードするドナーDNAからの、結合体の転写は、通常、プロモーター及び任意選択で、1つまたは複数の転写促進因子である要素の制御下に、結合体をコードする配列を設置することによって達成されることになる。ドナーDNA分子自体に、プロモーター(及び任意選択で、他の遺伝子制御要素)を含めてよい。あるいは、結合体をコードする配列は、ドナーDNA上でプロモーターを欠いていてよく、代わりに、細胞DNA上のプロモーターと動作可能な結合で設置してもよく、当該プロモーターは、例えば、内在性プロモーター、または部位特異的ヌクレアーゼによって創出された組込み部位での、その挿入の結果として事前に組込まれた外来性プロモーターである。

0093

ドナーDNAを含む細胞、またはドナーDNAを発現する細胞、の選択を可能にする遺伝子要素などの、1つまたは複数のさらなるコード配列を、ドナーDNAはさらに含んでよい。上で考察した、結合体をコードする配列と同様に、そのような要素は、ドナーDNA上のプロモーターと関連させてよく、または固定遺伝子座でのドナーDNAの組込みの結果として、プロモーターの制御下に設置してよい。後者の配置は、特に、所望の部位に組込まれたドナーDNAを有する細胞の簡便な選択手段を提供し、これは、こうした細胞が、選択に向けた遺伝子的要素を発現することになるためである。これは、例えば、ブラストサイジンまたはピューロマイシンなどの、陰性選択剤に対する耐性を与える遺伝子であってよい。1つまたは複数の選択段階を適用して、ドナーDNAを欠いている細胞、または正しい位置にドナーDNAが組込まれなかった細胞などの、不必要な細胞を除去してよい。あるいは、こうした細胞は、ライブラリーのクローンと混ざったままにしておいてよい。

0094

膜に繋留された結合体の発現は、それ自体を選択可能マーカーの形態として使用することができる。例えば、IgGまたはscFv−Fc融合体として編成された抗体遺伝子のライブラリーが導入されるのであれば、抗体を発現する細胞は、本明細書に記載の方法を使用して表面に発現したFcを認識する二次試薬を使用して選択することができる。外来性プロモーターの制御下にある導入遺伝子をコードするドナーDNAの初回遺伝子導入の際は、結合体の一過性発現(及び細胞表面発現)が生じることになり、(例えば、1〜2個の抗体遺伝子/細胞の標的組込みを達成するために)一過性発現の減少を待つことが必要となるであろう。

0095

代替として、膜繋留要素(例えば、PDGF受容体膜貫通ドメインに融合した、本発明の実施例のFcドメイン)をコードする構築物を、結合体のライブラリーを導入する前に、事前に組込むことができる。この膜繋留要素が、プロモーターを欠いているか、またはフレームの外にあるエクソン内に、当該エクソンと共にコードされているのであれば、表面発現は損なわれることになる。新規ドナー分子の標的組込みを実施すれば、この欠損修正することができる(例えば、プロモーター、または「インフレーム」エクソンの、欠損膜繋留要素の上流にあるイントロンへの標的化導入によって)。フレーム「修正エクソン」が、結合体もコードしているのであれば、結合体と、膜繋留要素と、の融合体が産生することになり、両方の表面発現がもたらされる。したがって、正しく標的化された組込みは、膜繋留要素単独のインフレーム発現、または新規結合体との融合体の一部としての膜繋留要素のインフレーム発現をもたらすことになる。さらに、新規結合体のライブラリーが、膜繋留要素を欠いており、こうしたものが誤って組込まれているのであれば、それは、選択されないことになる。したがって、細胞表面での結合体自体の発現は、正しく標的化されて組込まれた細胞集団を選択するために使用することができる。

0096

クローン数及びライブラリーの多様性
107〜1010の酵母ディスプレイライブラリーが、これまでに構築され、集団の免疫化または事前選択無しで結合体が得られることが示された[9、55、56、57]。これまでに発表された哺乳類ディスプレイライブラリーの多くが、免疫化ドナーから得られた抗体遺伝子を使用したものか、または濃縮された抗原特異的Bリンパ球から得られた抗体遺伝子でさえも使用したものであり、高等真核生物に由来する細胞を使用すると、ライブラリーのサイズ及び可変性が限定されるものであった。本発明において説明される遺伝子標的化の効率の結果、哺乳類細胞などの高等真核生物において、大きなナイーブライブラリーを構築することができ、これは、酵母などの、より単純な真核生物に向けて説明されるものに適合するものである。

0097

ドナーDNAを細胞DNAへ組込んだ後、得られる組換え細胞を培養することで、その複製が可能になり、初期に産生したそれぞれの組換え細胞に由来して、細胞のクローンを生成する。したがって、それぞれのクローンは、部位特異的ヌクレアーゼによって創出された組込み部位に、ドナーDNAが組込まれた元の1つの細胞に由来するものである。本発明による方法は、ドナーDNAの高効率かつ高忠実度である組込みと関連しており、本発明によるライブラリーは、少なくとも100、103、104、105、106、107、108、109、または1010個のクローンを含み得る。

0098

ヌクレアーゼ指向型組込みを使用することで、遺伝子導入された哺乳類細胞の10%またはそれより多くの細胞を標的とすることが可能である。細胞を増殖させ、>1010個の細胞(例えば、2x106個の細胞/mlで増殖している5リットル細胞由来)を形質転換することも実用的である。そのような大きな数の細胞の遺伝子導入は、本明細書に記載のようなポリエチレンイミン媒介性の遺伝子導入を含む標準方法を使用して実施することができる。さらに、方法は、5分間で1010個の細胞を処理する高効率な電気穿孔に利用可能であり、例えば、http://www.maxcyte.comである。したがって、本発明の手法を使用することで、109個のクローンを超えるライブラリーの創出が可能である。

0099

ライブラリーの創出に使用されるドナーDNA分子の集団が、同一配列の複数のコピーを含んでいると、同一の結合体をコードするDNAを含む2つ以上のクローンを取得し得る。例えば、本明細書の他の箇所に詳細に記載されるように、部位特異的ヌクレアーゼ向けの、複数の認識配列が存在するのであれば、クローンが、複数の異なる結合体をコードするドナーDNAを含み得る場合もあり得る。したがって、ライブラリーの多様性は、コードまたは発現する異なる結合体の数に関して、得られるクローンの数とは異なり得る。

0100

ライブラリーのクローンは、好ましくは、結合体レパートリーの1つまたは2つのメンバーをコードするドナーDNAを含み、及び/または好ましくは、結合体レパートリーの1つまたは2つのメンバーのみを発現する。所与の標的に対するライブラリーの選別時に同定される特定の結合体をコードするクローン及び/またはDNAの同定となれば、異なる結合体の数が細胞当たりで限定されていることは利点である。これは、クローンが、結合体レパートリーの単一メンバーをコードしていると、最も単純である。しかしながら、ライブラリーから選択されたクローンが、少数の異なる結合体をコードするのであれば、所望の結合体をコードする関連DNAを同定することも直接的であり、例えば、クローンが、結合体レパートリーの2つメンバーをコードし得る場合である。本明細書の他の箇所で考察されているように、1つまたは2つの結合体をコードするクローンは、二倍体ゲノムにおいて染色体コピー当たりに1度生じる、部位特異的ヌクレアーゼ向けの認識配列を選択することよって生成させることが特に簡便であり、これは、二倍体細胞は、1つの固定遺伝子座がそれぞれの染色体コピー上に存在する二重の固定遺伝子座を含み、ドナーDNAが、一方または両方の固定遺伝子座に組込まれ得るためである。したがって、ライブラリーのクローンは、それぞれが、結合体レパートリーの1つまたは2つメンバーのみを発現し得る。

0101

ライブラリーの細胞表面でディスプレイされる結合体は、同一細胞上でディスプレイされる他の結合体と同一(他の結合体と同一のアミノ酸配列を有する)であり得る。ライブラリーは、それぞれが、結合体レパートリーの単一メンバーをディスプレイする細胞のクローンからなり得るか、または細胞当たり、結合体レパートリーの複数メンバーをディスプレイするクローンからなり得る。あるいは、ライブラリーは、結合体レパートリーの単一メンバーをディスプレイするいくつかのクローン、及び結合体レパートリーの複数メンバー(例えば、2つ)をディスプレイするいくつかのクローンを含んでいてよい。

0102

したがって、本発明によるライブラリーは、結合体レパートリーの複数メンバーをコードするクローンを含み得、ドナーDNAは、二重の固定遺伝子座または複数の独立した固定遺伝子座に組込まれる。

0103

上に記載したとおり、対応するクローンが、1つの結合体のみを発現するのであれば、対応する結合体コード遺伝子を同定することは、最も簡単なことである。典型的には、ドナーDNA分子は、単一の結合体をコードすることになる。結合体は、多量体であってよく、その結果、ドナーDNA分子は、複数遺伝子を含むか、または多量体である結合体の多様なサブユニットに対応する翻訳領域を含む。

0104

本発明によるライブラリーは、少なくとも100、103、104、105、または106、107、108、109、もしくは1010個の異なる結合体をコードし得る。結合体が、多量体である場合、多様性は、結合体の1つまたは複数のサブユニットによって提供され得る。多量体である結合体は、1つまたは複数の可変サブユニットと、1つまたは複数の定常サブユニットと、を組み合わせていてよく、ここで、定常サブユニットは、ライブラリーのすべてのクローンにわたって同一(または多様性が、より限定されている)である。多量体である結合体のライブラリー生成において、組み合わせによる多様性が可能であり、結合体サブユニットの第1レパートリーは、結合体サブユニットの第2レパートリーのいずれともペアになり得る。

0105

結合体
本発明による「結合体(binder)」は、結合性分子であり、別の分子に向けた特異的結合性パートナーに相当する。特異的結合性パートナーの典型的な例は、抗体−抗原及び受容体−リガンドである。

0106

ライブラリーによってコードされる結合体のレパートリーは、通常、共通構造共有し、1つまたは複数の多様性領域を有することになる。したがって、ライブラリーによって、ペプチドまたはscFv抗体分子などの、分子の所望の構造クラスのメンバーを選択することが可能となる。例えば、結合体は、共通構造を共有し、かつ1つまたは複数のアミノ酸配列多様性領域を有するポリペプチドであってよい。

0107

これは、抗体分子のレパートリーについて考えることによって例証することができる。こうしたものは、一般的な構造クラスの抗体分子であってよく、例えば、その配列の1つまたは複数の領域が異なるIgG、Fab、scFv−Fc、またはscFvである。抗体分子は、典型的には、その相補性決定領域(CDR)において、配列可変性を有し、相補性決定領域は、抗原認識に第1に関与する領域である。本発明における結合体のレパートリーは、1つまたは複数のCDRが異なる抗体分子のレパートリーであってよく、例えば、6つすべてのCDRに配列多様性が存在してよく、または重鎖CDR3及び/もしくは軽鎖CDR3などの1つもしくは複数の特定のCDRに配列多様性が存在してよい。

0108

抗体分子及び他の結合体については、本明細書の他の箇所に、より詳細に記載されている。しかしながら、本発明の可能性は、抗体ディスプレイを超えて広がり、受容体、リガンド、個々のタンパク質ドメイン、及び代替のタンパク質骨格[58、59]を含むペプチドまたは操作されたタンパク質のライブラリーのディスプレイを含むものである。ヌクレアーゼ指向型の部位特異的組込みは、他のディスプレイシステムを使用して、予め操作された他の型の結合体のライブラリーを作成するために使用することができる。こうしたものの多くが、DARPin及びリポカリン、affibody及びadhiron[58、59、152]などの単量体結合ドメインを含む。真核生物上、特に哺乳類細胞上でのディスプレイも、より複雑かつ多量体である標的が関与する、結合体または標的の単離及び操作の可能性を広げるものである。例えば、T細胞受容体(TCR)は、T細胞上に発現し、抗原提示細胞上のMHC分子との複合体において提示されるペプチドを認識するために進化してきた。TCRのレパートリーをコード及び発現するライブラリーを生成させてよく、本明細書の他の箇所にさらに記載されるように、MHCペプチド複合体に対する結合を同定するために選別してよい。

0109

多量体である結合体に向けては、結合体をコードするドナーDNAは、1つまたは複数のDNA分子として提供されてよい。例えば、個々の抗体のVHドメイン及びVLドメインが、別々に発現されることになる場合、こうしたものは、ドナーDNAの別々の分子上にコードされていてよい。ドナーDNAは、複数の組込み部位で、細胞DNAへと組込まれ、例えば、1つの遺伝子座で、VH向けの結合体遺伝子が組込まれ、第2の遺伝子座で、VL向けの結合体遺伝子が組込まれる。別々の結合体サブユニットをコードするドナーDNAの導入方法は、本明細書の他の箇所に、より詳細に記載されている。あるいは、多量体である結合体のサブユニットまたは部分の両方が、固定遺伝子座に組込まれる同一ドナーDNA分子上にコードされていてよい。

0110

結合体は、抗体分子または抗原結合部位を含む非抗体タンパク質であってよい。抗原結合部位は、フィブロネクチンまたはチトクロム等などの非抗体タンパク質骨格上のペプチドループを配置することによって提供されてよく、またはタンパク質骨格内のループのアミノ酸残基無作為化またはそれに変異導入して、所望の標的に対する結合性を付与する[60、61、62]ことによって提供されてよい。抗体模倣物向けのタンパク質骨格については、WO/0034784において開示されており、その中で、発明者らは、少なくとも1つの無作為化ループを有するフィブロネクチンIII型ドメインを含むタンパク質(抗体模倣物)について説明している。例えば、抗体VHのCDRループのセットといった、1つまたは複数のペプチドループの移植に適した骨格は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの任意のドメインメンバーによって提供されてよい。骨格は、ヒトタンパク質または非ヒトタンパク質であってよい。

0111

非抗体タンパク質骨格における抗原結合部位の使用については、以前に概説されている[63]。典型的には、タンパク質は、安定骨格及び1つまたは複数の可変ループを有し、当該タンパク質においては、1つまたは複数のループのアミノ酸配列に、特異的または無作為に変異が導入され、標的抗原に向けた結合性を有する抗原結合部位が創出されている。そのようなタンパク質には、S.aureusに由来するプロテインAIgG結合ドメイントランスフェリンテトラネクチン、フィブロネクチン(例えば、第10フィブロネクチンIII型ドメイン)、及びリポカリンが含まれる。他の手法には、例えば、「ノッチン」骨格及びサイクロチド骨格を基礎とする小さな拘束ペプチド(constrained peptide)が含まれる[64]。特にジスルフィド結合の正確な形成に関して、そのサイズの小ささ及び複雑性を考慮すれば、こうした骨格に基づく新規結合体の選択に真核細胞を使用することに対して優位性が存在し得る。天然におけるこうしたペプチドの一般的な機能を考慮すれば、こうした骨格に基づく結合体のライブラリーは、イオンチャネル及びプロテアーゼ遮断における特定用途を有した小さな高親和性の結合体の産生において有利であり得る。

0112

抗体配列及び/または抗原結合部位に加えて、結合体は、他のアミノ酸を含んでいてよく、これによって、例えば、折り畳まれたドメインなどのペプチドもしくはポリペプチドが形成されるか、または当該分子に対して、抗原結合能に加えて別の機能特性が付与される。結合体は、検出可能な標識を保有してよく、あるいは毒素または標的化部分もしくは標的化酵素と複合化していてよい(例えば、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して)。例えば、結合体は、触媒部位(例えば、酵素ドメイン中)ならびに抗原結合部位を含んでよく、抗原結合部位は、抗原に結合し、それによって、抗原を触媒部位の標的とする。触媒部位は、例えば、切断によって、抗原の生物学的機能を阻害してよい。

0113

抗体分子
抗体分子は、望ましい結合体である。抗体分子は、4つのポリペプチド鎖を有する全抗体または全免疫グロブリンIg)であってよく、当該4つのポリペプチド鎖は、すなわち、2つの同一重鎖及び2つの同一軽鎖である。重鎖及び軽鎖は、ペアを形成し、それぞれが、抗原結合部位を含むVH−VLドメインのペアを含む。重鎖及び軽鎖は、定常領域も含む。定常領域は、すなわち、軽鎖のCL、ならびに重鎖のCH1、CH2、CH3、及び場合によってはCH4(第5ドメインであるCH4は、ヒトのIgM及びIgEに存在する)である。2つの重鎖は、可動性ヒンジ領域で、ジスルフィド架橋によって結合する。抗体分子は、VHドメイン及び/またはVLドメインを含んでよい。

0114

抗体分子の最も一般的な天然の形式は、IgGであり、IgGは、2つの同一重鎖及び2つの同一軽鎖からなるヘテロ4量体である。重鎖及び軽鎖は、四本鎖逆並行ベータシート及び三本鎖逆並行ベータシートからなる保存された二次構造を有するモジュラードメインから構成されており、単一のジスルフィド結合によって安定化されている。抗体重鎖のそれぞれが、N末端可変ドメイン(VH)及び3つの相対的に保存された「定常」免疫グロブリンドメイン(CH1、CH2、CH3)を有し、一方、軽鎖は、1つのN末端可変ドメイン(VL)及び1つの定常ドメイン(CL)を有する。安定複合体において、ジスルフィド結合は、個々のドメインを安定化し、共有結合を形成して、4つの鎖を結合している。軽鎖のVL及びCLは、重鎖のVH及びCH1と結びついていると共に、こうした要素は、単独で発現させて、Fab断片を形成することができる。CH2ドメイン及びCH3ドメイン(「Fcドメイン」とも呼ばれる)は、別のCH2:CH3のペアと結びついて、4量体であるY字の分子を与え、当該分子は、「Y」の先端に、重鎖及び軽鎖に由来する可変ドメインを有する。CH2ドメイン及びCH3ドメインは、免疫システム内での、エフェクター細胞と、補体成分との相互作用に関与している。組換え抗体は、IgG形式においてか、またはFab(VH:CH1と、軽鎖との2量体からなる)としてこれまで発現されてきた。さらに、可変性のリンカーをコードするDNAと遺伝子学的に融合したVH断片及びVL断片をコードするDNAからなる、単鎖Fv(scFv)と呼ばれる人工構築物を使用することができる。

0115

結合体は、ヒト抗体分子であってよい。したがって、定常ドメインが存在する場合は、好ましくは、ヒト定常ドメインである。

0116

結合体は、単鎖抗体分子などの抗体断片、またはより小さな分子形式であってよい。例えば、抗体分子は、リンカーペプチドによって結合されたVHドメイン及びVLドメインからなるscFv分子であってよい。scFv分子では、VHドメイン及びVLドメインは、VH−VLのペアを形成し、当該ペアにおいて、VH及びVLの相補性決定領域が一緒になって、抗原結合部位を形成する。

0117

抗体の抗原結合部位を含む他の抗体断片には、限定はされないが、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインからなるFab断片と、(ii)VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片と、(iii)単一抗体のVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片と、(iv)VHドメインまたはVLドメインからなるdAb断片[65、66、67]と、(v)単離されたCDR領域と、(vi)2つが連結されたFab断片を含む2価断片であるF(ab’)2断片と、(vii)2つのドメインを結び付けて抗原結合部位の形成を可能にするペプチドリンカーによって、VHドメイン及びVLドメインが連結されているscFv[68、69]と、(viii)二重特異性単鎖Fv2量体(PCT/US92/09965)と、(ix)遺伝子融合によって構築された多価断片または多特異性断片である「ダイアボディ(diabody)」(WO94/13804、[70])と、が含まれる。Fv分子、scFv分子、またはダイアボディ分子は、VHドメイン及びVLドメインを連結するジスルフィド架橋を組込むことによって安定化してよい[71]。

0118

1つまたは複数の抗体抗原結合部位を含む、様々な他の抗体分子が、操作されており、例えば、Fab2、Fab3、ダイアボディ、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、及びミニボディ(minibody)(小さな免疫タンパク質)が含まれる。抗体分子及びその構築及び使用に向けた方法は、説明されている[72]。

0119

結合断片の他の例は、Fab’であり、Fab’は、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に、抗体ヒンジ領域に由来する1つまたは複数のシステインを含む数残基が付加していることによって、Fab断片とは異なるものであり、Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が、遊離のチオール基を有しているFab’断片である。

0120

dAb(ドメイン抗体)は、小さな単量体である、抗体の抗原結合断片であり、すなわち、抗体重鎖または抗体軽鎖の可変領域である。VH dAbは、ラクダ科動物(例えば、ラクダラマ)において、自然に生じ、標的抗原でラクダ科の動物を免疫化し、抗原特異的B細胞を単離して、個々のB細胞に由来するdAb遺伝子を直接クローン化することによって産生させてよい。dAbは、細胞培養において産生させることも可能である。そのサイズの小ささ、溶解性及び温度安定性の良さによって、dAbは、選択及び親和性成熟に向けて、特に生理学的に有用かつ適したものとなっている。ラクダ科の動物のVH dAbは、「nanobody(商標)」という名前で、治療用途に向けて開発されているところである。

0121

例えば、Knappikら[73]またはKrebsら[74]によって説明されるように、合成して、適した発現ベクター内に組み入れオリゴヌクレオチドを用いて生成させた遺伝子から発現させることによって、合成抗体分子を創出してよい。

0122

二重特異性または二機能性である抗体は、2つの異なる可変領域が同一分子内で結合した第2世代のモノクローナル抗体を形成するものである[75]。新しいエフェクター機能を補充するその能力、または腫瘍細胞表面の数個の分子を標的とする能力から、診断分野及び治療分野の両方においてそうしたものが使用されてきた。二重特異性抗体が使用されることになる場合、こうしたものは、例えば、化学的な調製もしくはハイブリッドハイブリドーマからの調製といった多様な方法[76]で製造することができる通常の二重特異性抗体であってよく、または上記の二重特異性抗体断片のいずれかであってよい。こうした抗体は、化学的な方法[77、78]、または体細胞による方法[79、80]によって得ることができるが、強制ヘテロ2量体形成を可能し、それによって、探索対象である抗体の精製プロセスを促進する遺伝子工学手法によって同様かつ選択的に得ることができる[81]。二重特異性抗体の例には、BiTE(商標)技術のものが含まれ、当該技術では、異なる特異性を有する2つの抗体の結合ドメインを使用し、短い可動性ペプチドを介して直接連結することができる。これにより、短い単一ポリペプチド鎖上で、2つの抗体が結合される。ダイアボディ及びscFvは、可変ドメインのみを使用して、Fc領域無しで構築することができ、これによって、抗イディオタイプ反応の影響を潜在的に低減されている。

0123

二重特異性抗体は、全IgG、二重特異性Fab’2、Fab’PEG、ダイアボディ、あるいは二重特異性scFvとして構築することができる。さらに、当該技術領域において知られる日常的な方法を使用して、2つの二重特異性抗体を連結して、四価の抗体を形成することができる。

0124

二重特異性である全抗体とは対照的に、二重特異性ダイアボディも特に有用であり得る。適切な特異性を有するダイアボディ(及び抗体断片などの多くの他のポリペプチド)を容易に選択することができる。抗体の一方のアームが、例えば、関心抗原を対象にした特異性と共に、定常性を保持することになるのであれば、もう一方のアームが多様であるライブラリーを作成することができ、適切な特異性を有する抗体が選択される。二重特異性である全抗体は、Ridgewayら1996[82]によって説明されるように、代替の操作方法を使用して作成してよい。

0125

本発明によるライブラリーは、1つまたは複数の関心抗原に結合する抗体分子を選択するために使用してよい。ライブラリーからの選択は、以下に詳細に記載されている。選択の後、抗体分子を操作して、異なる形式とし、及び/または追加の特徴を含めてよい。例えば、選択した抗体分子を、上記の抗体形式の内の1つなどの、異なる形式に変換してよい。選択した抗体分子、ならびに選択した抗体分子のVH及び/またはVLのCDRを含む抗体分子は、本発明の態様である。抗体分子及びそれをコードする核酸は、単離された形態で提供されてよい。

0126

抗体断片は、抗体分子を出発物質として、例えばペプシンもしくはパパインといった酵素による消化などの方法によって、及び/または化学的な還元によるジスルフィド架橋の切断によって得ることができる。別の様式では、抗体断片は、当業者によく知られる遺伝子組換え手法によって、あるいは例えば、自動ペプチド合成機を用いたペプチド合成によって、または核酸を合成して発現させることによって得ることができる。

0127

モノクローナル抗体及び他の抗体を利用し、組換えDNA技術の手法を使用して、標的抗原に結合する他の抗体またはキメラ分子を産生することが可能である。そのような手法は、異なる免疫グロブリンの定常領域または異なる免疫グロブリンの定常領域に異なる免疫グロブリンのフレームワーク領域が加わったものに対する、抗体の免疫グロブリン可変領域または抗体のCDRをコードするDNAの導入を伴うものであってよい。例えば、EP−A−184187、GB2188638A、またはEP−A−239400、及び数ある後続文献を参照のこと。

0128

抗体分子をライブラリーから選択し、その後に修飾してよく、例えば、生体内での抗体分子の半減期を、例えば、PEG化といった化学的修飾、またはリポソーム内への封入によって延長することができる。

0129

結合体遺伝子の供給源
モノクローナル抗体の生成に向けた伝統的な経路は、マウス及びウサギのような実験動物の免疫システムを利用して、高親和性抗体のプールを生成させてから、当該高親和性抗体を、ハイブリドーマ技術を使用することによって単離するものである。本発明は、免疫化から生じた抗体を特定するための代替経路を提供する。VH及びVLの遺伝子を、免疫化動物のB細胞から増幅し、真核生物ライブラリーへの導入に向けた適切なベクターへとクローン化した後、こうしたライブラリーから選択することができる。ファージディスプレイ及びリボソームディスプレイによって、非常に大きなライブラリー(>109クローン)を構築することが可能であり、これによって、免疫化無しにヒト抗体を単離することが可能となる。本発明は、そのような方法と併せて使用することもできる。ファージディスプレイでの選択ラウンドの後に、本明細書に記載のように、ヌクレアーゼ指向型の組込みによって、選択した結合体集団を真核細胞へと導入することができる。これによって、他のシステム(例えば、ファージディスプレイ)に基づく非常に大きなライブラリーを最初に使用して、結合体集団を濃縮することが可能になると同時に、上記のように真核細胞を使用したその効率的な選別が可能になるであろう。したがって、本発明は、ファージディスプレイ及び真核生物ディスプレイの両方の最良の特徴を組み合わせて、定量的スクリーニング及びソーティングが可能な高処理システムを提供することができる。

0130

十分なサイズのディスプレイライブリーが使用されることを条件であるが、ファージディスプレイ及び酵母ディスプレイを使用して、免疫化に頼ることなく、結合体を生成させることも可能であることをこれまでに示した。例えば、複数の結合体を>107個のクローンを有する非免疫の抗体ライブラリーから生成させた[83]。同様にして、これにより、伝統的な免疫化経路によっては標的とすることが困難である標的に対する結合体を生成させることが可能となり、例えば、「自己抗原(self−antigen)」または種間で保存されているエピトープに対する抗体を生成させることが可能になる。例えば、ヒト/マウス交差反応性である結合体を、ヒトで連続的に選択してから、同一標的のマウス版で選択することによって濃縮することができる。関心標識のほとんどに対して、ヒトを特異的に免疫化することは不可能であるので、治療手法に好ましいヒト抗体の生成を可能にすることにおいて、この容易さは、特に重要である。

0131

今日までの哺乳類ディスプレイの例では、ライブラリーのサイズ及び質が限定されている場合、結合体は、例えば、免疫化、または既存結合体を操作して得られる結合体を事前に濃縮したレパートリーを使用して生成されたにすぎなかった。真核細胞、及び具体的には高等真核生物において大きなライブラリーを作成する能力は、非免疫結合体、または別のシステム内でこれまで選択されたことのない結合体、から出発するこうしたライブラリーから結合体を直接単離する可能性を創出するものである。本発明により、非免疫源から結合体を生成させることが可能である。次いでは、これにより、複数の供給源に由来する結合体遺伝子の使用に向けた可能性が開かれる。結合体遺伝子は、抗体遺伝子などの天然源を使用したPCRから得ることができる。結合体の遺伝子は、抗体のファージディスプレイライブラリーなどの現存ライブラリーから再クローン化し、標的細胞へのヌクレアーゼ指向型の組込みに向けた最適なドナーベクターへとクローン化することもできる。結合体の起源は、完全合成または部分合成のものであってよい。さらに、多様な型の結合体が、本明細書の他の箇所に記載されており、例えば、結合体遺伝子は、抗体をコードするか、あるいは代替骨格[58、59]、ペプチド、または操作されたタンパク質もしくはタンパク質ドメインをコードすることができる。

0132

結合体ディスプレイ
関心標的に対する選別に向けて、結合体レパートリーを提供するために、ライブラリーを培養し、可溶性の分泌形態または膜貫通形態のいずれかにおいて、結合体を発現させてよい。細胞表面ディスプレイに向けては、結合体をコードする細胞の表面に、発現した結合体を保定する必要がある。結合体は、細胞表面での結合体の細胞外ディスプレイに向けて、膜貫通ドメインなどの膜アンカーを含むか、またはそれに連結されていてよい。これには、GPI認識配列などの膜局在シグナルに対する結合体の直接的な融合、またはPDGF受容体[84]の膜貫通ドメインなどの膜貫通ドメインに対する結合体の直接的な融合が伴ってよい。細胞表面での結合体の保定は、同一細胞内で発現される別の細胞表面保定分子との会合によって間接的に実施することもできる。この結合される分子は、それ自体がヘテロ2量体である結合体の一部となることができ、当該結合される分子は、例えば、直接的に繋留されていない軽鎖パートナーと会合状態にある、繋留された抗体重鎖などである。

0133

細胞表面への固定化は、結合体の選択を促進するものの、多くの用途において、細胞を含まない分泌結合体を調製する必要がある。分泌結合体を細胞表面受容体に結合する再捕捉方法を使用して、膜繋留と、可溶性分泌とを組み合わせることが可能となる。1つの手法は、分泌結合体を捕捉するために機能できる、同一細胞内で発現する膜繋留分子と結合することができる分泌分子として、結合体ライブラリーを編成するものである。例えば、抗体または抗体Fc領域に融合した結合体分子の場合は、膜に繋留されたFcが、同一細胞において発現している分泌結合体分子を「試料採取(sample)」できることで、発現している結合体分子の単量体画分のディスプレイをもたらすと同時に、残りは2価の形態として分泌される(US8,551,715)。代替手法としては、プロテインAなどのIgG結合ドメインを繋留して使用することである。

0134

分泌抗体を、その産生細胞に保定する他の方法[85]は、Kumer et al.(2012)において概説されており、微小滴内への細胞封入、マトリックスに支援される捕捉、親和性捕捉表面ディスプレイ(affinity capture surface display)(ACSD)、分泌及び捕捉技術(secretion and capture technology)(SECANT)、ならびに「コールド捕捉(cold capture)」[85]が含まれる。ACSD及びSECANT[85]の例では、ビオチン化を使用して、細胞上での、ストレプトアビジンの固体化または抗体捕捉を促進する。捕捉された分子は、次に、分泌抗体を捕捉する。SECANTの例では、分泌分子のビオチン化が生体内で起こる。「コールド捕捉」手法を使用することで、分泌分子を対象とする抗体を使用して、産生細胞上で、分泌抗体を検出することができる。これは、分泌抗体と、細胞の多糖外被との結合に起因するものであると提唱されている[86]。あるいは、分泌産物が、形質膜陥入する前に、細胞表面で、染色抗体によって捕捉されることが示唆されている[87]。上記の方法は、集団内の高発現クローンの同定に使用されてきたが、細胞表面での会合が十分に長寿命であることを条件として、結合特異性の同定に適応させることができる可能性がある。

0135

結合体が、細胞表面に直接的に繋留されるときでさえ、可溶性産物を生成させることが可能である。例えば、分泌結合体をコードする遺伝子を回収し、膜繋留配列を欠いた発現ベクターへとクローン化することができる。あるいは、実施例において示されているように、リコンビナーゼ部位と隣接するエクソン内に膜貫通ドメインをコードする発現用構築物を使用することができ、当該リコンビナーゼ部位は、例えば、Dreリコンビナーゼ向けのROX認識部位である[88]。この例では、Dreリコンビナーゼをコードする遺伝子を遺伝子導入することによって、膜貫通ドメインをコードするエクソンを除去して、発現を分泌型切り替えることができる。本明細書で示されるように、リコンビナーゼの作用を必要とすることなく、分泌抗体をこの方法によって産生させた。これは、選択的スプライシングの結果であると推定される[89]。

0136

上記方法のいずれかまたは他の適した手法を使用して、ライブラリーのクローンが発現する結合体を、その発現細胞の表面に確実にディスプレイすることができる。

0137

関心標的に対する結合体を同定するための選別
記載のように、標的を認識する結合体の選別方法において、真核細胞ライブラリーを使用してよい。そのような方法は、
本明細書に記載のライブラリーの提供と、
結合体を発現させるための、ライブラリーの細胞の培養と、
標的に対する結合体の曝露であって、それによって、存在するのであれば1つまたは複数の同種結合体による標的の認識が可能になる当該曝露と、
標的が、同種結合体によって認識されたかどうかの検出と、
を含んでよい。

0138

選択は、広範な標的分子クラスを使用して実施することができ、標的分子クラスは、例えば、タンパク質、核酸、糖質、脂質、小分子である。標的は、可溶性の形態において提供されてよい。標的は、検出を容易にするために標識されていてよく、例えば、標的は、蛍光標識を有するか、またはビオチン化されていてよい。結合体が、標識された分子を捕捉するものである場合、直接的または間接的に標識された標的分子を使用して、標的に特異的な結合体を発現する細胞を単離してよい。例えば、結合体:標的の相互作用を介して、蛍光標識された標的に結合する細胞を検出し、フローサイトメトリーまたはFACSによって選別して、所望の細胞を単離することができる。サイトメトリーを伴う選択には、標的分子が、直接的に蛍光標識されているか、または二次試薬で検出することができる分子で標識されている必要があり、例えば、ビオチン化標的を細胞に添加して、細胞表面に対する結合をストレプトアビジン−フィコエリトリンなどの蛍光標識されたストレプトアビジンで検出することができる。さらなる可能性は、標的分子を固定化するか、または磁気ビーズもしくはアガロースビーズなどの個体表面で標的に結合する二次試薬を固定化し、標的に結合する細胞の濃縮を可能にすることである。例えば、結合体:標的の相互作用を介して、ビオチン化標的に結合する細胞は、ストレプトアビジン被覆ビーズなどの、ストレプトアビジンで被覆された基質で単離することができる。

0139

ライブラリーの選別では、ライブラリーの効果的な提示を確実なものとするために、過剰な試料採取、すなわち、ライブラリー内に存在する独立クローンの数を超えるクローンを選別することが好ましい。流動選別によって、本発明が提供する非常に大きなライブラリーに由来する結合体を同定することができるが、これは、数日を要するであろうし、ライブラリーから過剰な試料採取を行うのであれば、特にそうである。代替として、回収可能な抗原の使用に基づいて、最初の選択を実施することができ、当該回収可能な抗原は、例えば、ストレプトアビジンで被覆された磁気ビーズで回収されるビオチン化抗原である。したがって、ストレプトアビジンで被覆された磁気ビーズを使用して、ビオチン化抗原に結合した細胞を捕捉することができる。磁気ビーズでの選択は、選択のみを実施する方法として使用するか、またはフローサイトメトリーと併用して実施することができ、この場合、より良い分離を達成することができ、例えば、発現レベルが上昇しているクローンの識別、及び親和性が上昇しているクローンの識別である[56、57]。

0140

ディスプレイ技術を使用した手法の試験管内での性質は、免疫化では不可能な方法での選択制御を可能にするものであり、例えば、標的の特定の立体構造状態での選択が可能である[90、91]。化学的修飾(フルオレセインビオチン)を介するか、あるいは遺伝子融合(例えば、FLAGタグなどのエピトープタグ、または別のタンパク質ドメインもしくは全タンパク質に融合したタンパク質)によって、標的にタグを付加することが可能である。タグは、核酸(例えば、DNA、RNA、または非生物学的な核酸)であり得、この場合、タグは、標的核酸分子の一部として融合されるか、またはタンパク質などの別の型の分子に化学的に付加することができる。これは、化学的結合または酵素的な付加を介するものであり得る[92]。リボソームディスプレイなどの翻訳プロセスを介して、核酸を標的に融合させることもできる。「タグ(tag)」は、細胞内で生じる別の修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化ユビキチン化アルキル化PAS化、SUMO化、及びhttp://dbptm.mbc.nctu.edu.tw/statistics.phpの翻訳後修飾データベース(Post−translational Database)(db−PTM)において説明されている他のもの)であってよく、当該修飾は、二次試薬を介して検出することができる。これによって、特定の修飾に基づいて、未知の標的タンパク質に結合する結合体が得られるであろう。

0141

例えば、標的に対して特異的な抗体といった、その標的分子に結合する現存の結合体を使用して、標的分子を検出することができる。検出に現存の結合体を使用することで、検出に使用する結合体とは異なるエピトープを認識する結合体のライブラリー内の結合体の同定がさらに有利なものとなるであろう。この方法では、サンドイッチELISAなどの用途における使用に向けて、結合体のペアを同定することができる。可能な場合、精製された標的分子が好ましいであろう。あるいは、標的は、標的細胞集団の表面にディスプレイされてよく、結合体は、ライブラリー細胞の表面にディスプレイされ、この方法は、ライブラリー細胞を標的細胞へと接触させることによって、標的に対して結合体を曝露することを含むものである。標的を発現する細胞を回収(例えば、標的を発現するビオチン化細胞を使用して)することによって、標的を発現する細胞に対する結合体を発現する細胞の濃縮が可能となる。この手法であれば、強い結合力効果が発生する可能性があるため、低親和性相互作用が関与している場合に有効であろう。

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