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技術 防火複層ガラス、防火ガラスユニット及び加熱調理機の窓

出願人 中島硝子工業株式会社
発明者 勇木健勇木徳仁舩尾真充
出願日 2019年4月5日 (1年10ヶ月経過) 出願番号 2019-073159
公開日 2020年10月15日 (4ヶ月経過) 公開番号 2020-169114
状態 未査定
技術分野 ガラスの接着 ストーブまたはレンジの細部1
主要キーワード 防火効果 Eガラス 除去面積 熱反射膜 火炎放射 放射条件 ガラス板中央 除去幅
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年10月15日)のものです。
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図面 (9)

課題

高価なガラス板を用いず、外観が良好で防火性能に優れた防火複層ガラスを提供する。

解決手段

2枚のガラス板がそれらの外周部に配されたスペーサを介して積層されてなる防火複層ガラスであって;火炎反対側から順に第1ガラス板及び第2ガラス板が配置され、第1ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、スペーサ近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板の火炎反対側の表面の全体にLOW−E膜が形成されている、防火複層ガラスとする。

概要

背景

都市防火の観点から、防火地域又は準防火地域においては、建物外壁の開口部であって延焼のおそれのある部分に準遮炎性能が要求される。したがって、建物の周囲で発生する火災の延焼を防ぎ、建物の内部に火炎侵入させない防火性能を有するガラスユニットが求められている。

これまで、そのような防火性能を有するガラスユニットに用いられるガラス板としては、網入りガラス板低膨張ガラス板結晶化ガラス板表面圧縮応力が190MPa以上の耐熱強化ガラス板などの防火ガラス板が用いられていた。また、ガラスユニットが複層ガラスを用いる場合には、その中に用いられるガラス板の少なくとも1枚が上記防火ガラス板であった。

しかしながら、網入りガラス板は、網による外観上の問題を有していた。また、低膨張ガラス板や結晶化ガラス板は高価であった。さらに、表面圧縮応力が190MPa以上の耐熱強化ガラス板は、表面の平坦性が悪く、外観上の問題を有していた。

近年、省エネルギーの観点から建物の断熱性能が重要視されており、赤外線を効率良く反射するためのLOW−E(Low-Emissivity:低放射)膜が形成されたガラス板が、窓やドアなど建物の開口部に広く用いられている。そして多くの場合、LOW−Eガラス板を含む複層ガラスユニットとして用いられている。

非特許文献1には、強化されたLOW−Eガラス板の防火性能についての実験的研究報告されている。それによれば、火炎によってLOW−E膜側から加熱された場合には、LOW−E膜を有さないガラスを加熱した場合や、LOW−E膜の反対側から加熱した場合に比べて、ガラス板の中心部と周辺部の温度差を小さくすることができ、熱割れを抑制できたことが示されている。しかしながら、それでも熱割れの抑制効果は不十分であった。

特許文献1には、倍強度ガラスまたは倍強度ガラスを超える熱強化処理を施したガラスからなるガラス板の少なくとも片面に低放射率熱反射膜を設けた防火戸用単板ガラスが記載されている。また、当該単板ガラス板と、倍強度ガラスまたは倍強度ガラスを超える熱強化処理を施したガラスからなる第2のガラス板とを、前記熱反射膜の少なくとも一層が両ガラス板の間に介装されるように間隔を空けて対向配置した防火戸用複層ガラスが記載されていている。しかしながら、その防火性能は不十分であった。

特許文献2には、複数枚のガラス板がスペーサを介して隔置され、周縁部がシーリング材シールされて構成される複層ガラスであって、複数枚のガラス板は、少なくとも一枚の防火ガラス板と少なくとも一枚の防火ガラス板ではないガラス板とを含み、最外層に配置される二枚のガラス板のうち一方のガラス板の外側の面に非銀系低放射膜が備えられることを特徴とする防火用複層ガラスが記載されている。外側に傷つきにくい低放射膜を配置することによって、ガラスの昇温速度を低下させることができるとされている。また、安価なガラスを1枚使用することによってコスト上昇を抑制することもできるとされている。しかしながら高価な防火ガラスを1枚は使用しなければならずコスト面の問題を有していた。

概要

高価なガラス板を用いず、外観が良好で防火性能に優れた防火複層ガラスを提供する。2枚のガラス板がそれらの外周部に配されたスペーサを介して積層されてなる防火複層ガラスであって;火炎反対側から順に第1ガラス板及び第2ガラス板が配置され、第1ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、スペーサ近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板の火炎反対側の表面の全体にLOW−E膜が形成されている、防火複層ガラスとする。

目的

本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高価なガラス板を用いず、外観が良好で防火性能に優れた防火複層ガラス及び防火ガラスユニットを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

2枚のガラス板がそれらの外周部に配されたスペーサを介して積層されてなる防火複層ガラスであって;火炎反対側から順に第1ガラス板及び第2ガラス板が配置され、第1ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、スペーサ近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板の火炎反対側の表面の全体にLOW−E膜が形成されている、防火複層ガラス。

請求項2

第1ガラス板の表面圧縮応力が60MPa以上190MPa未満であり、第2ガラス板の表面圧縮応力が60MPa未満である請求項1に記載の複層ガラス

請求項3

3枚のガラス板がそれらの外周部に配されたスペーサを介して積層されてなる防火複層ガラスであって;火炎反対側から順に第1ガラス板、第2ガラス板及び第3ガラス板が配置され、第1ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、スペーサ近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板及び第3ガラス板の火炎反対側の表面の全体にLOW−E膜が形成されている、防火複層ガラス。

請求項4

第1ガラス板の表面圧縮応力が60MPa以上190MPa未満であり、第2ガラス板及び第3ガラス板の表面圧縮応力が60MPa未満である請求項3に記載の複層ガラス。

請求項5

第1ガラス板におけるLOW−E膜の除去幅(W)がスペーサの端から2〜20mmである請求項1〜4のいずれかに記載の複層ガラス。

請求項6

請求項1〜5のいずれかに記載の複層ガラスと、該複層ガラスを保持する枠体と、該複層ガラスと該枠体の隙間を封じるシーリング材とを備える防火ガラスユニット

請求項7

第1ガラス板の呑み込み深さ(D)に対する除去幅(W)の比(W/D)が0.5〜2である請求項6に記載のガラスユニット

請求項8

単層のガラス板と、該ガラス板を保持する枠体と、該ガラス板と該枠体の隙間を封じるシーリング材とを備える防火ガラスユニットであって;前記ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、シーリング材近傍の当該LOW−E膜が除去されている、防火ガラスユニット。

請求項9

前記ガラス板の表面圧縮応力が60MPa以上190MPa未満である請求項8に記載のガラスユニット。

請求項10

前記ガラス板におけるLOW−E膜の除去幅(W)がシーリング材の端から2〜20mmである請求項8又は9に記載のガラスユニット。

請求項11

前記ガラス板の呑み込み深さ(D)に対する除去幅(W)の比(W/D)が0.5〜2である請求項8〜10のいずれかに記載のガラスユニット。

請求項12

2枚のガラス板が所定の間隔を空けて平行に固定されてなる加熱調理機の窓であって;調理機の外側から順に第1ガラス板及び第2ガラス板が配置され、第1ガラス板が枠体に保持され、第1ガラス板の内側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、前記枠体近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板が、低膨張ガラス板結晶化ガラス板、又は表面圧縮応力が190MPa以上の耐熱強化ガラス板である、加熱調理機の窓。

請求項13

第1ガラス板の表面圧縮応力が20MPa以上190MPa未満である請求項12に記載の窓。

請求項14

第1ガラス板における、LOW−E膜の除去幅(W)が、枠体の端から2〜20mmである請求項12又は13に記載の窓。

技術分野

0001

本発明は、火災時にガラス板熱割れしにくい防火複層ガラス及び防火ガラスユニットに関する。また、調理時にガラス板が熱割れしにくい加熱調理機の窓に関する。

背景技術

0002

都市防火の観点から、防火地域又は準防火地域においては、建物外壁の開口部であって延焼のおそれのある部分に準遮炎性能が要求される。したがって、建物の周囲で発生する火災の延焼を防ぎ、建物の内部に火炎侵入させない防火性能を有するガラスユニットが求められている。

0003

これまで、そのような防火性能を有するガラスユニットに用いられるガラス板としては、網入りガラス板低膨張ガラス板結晶化ガラス板表面圧縮応力が190MPa以上の耐熱強化ガラス板などの防火ガラス板が用いられていた。また、ガラスユニットが複層ガラスを用いる場合には、その中に用いられるガラス板の少なくとも1枚が上記防火ガラス板であった。

0004

しかしながら、網入りガラス板は、網による外観上の問題を有していた。また、低膨張ガラス板や結晶化ガラス板は高価であった。さらに、表面圧縮応力が190MPa以上の耐熱強化ガラス板は、表面の平坦性が悪く、外観上の問題を有していた。

0005

近年、省エネルギーの観点から建物の断熱性能が重要視されており、赤外線を効率良く反射するためのLOW−E(Low-Emissivity:低放射)膜が形成されたガラス板が、窓やドアなど建物の開口部に広く用いられている。そして多くの場合、LOW−Eガラス板を含む複層ガラスユニットとして用いられている。

0006

非特許文献1には、強化されたLOW−Eガラス板の防火性能についての実験的研究報告されている。それによれば、火炎によってLOW−E膜側から加熱された場合には、LOW−E膜を有さないガラスを加熱した場合や、LOW−E膜の反対側から加熱した場合に比べて、ガラス板の中心部と周辺部の温度差を小さくすることができ、熱割れを抑制できたことが示されている。しかしながら、それでも熱割れの抑制効果は不十分であった。

0007

特許文献1には、倍強度ガラスまたは倍強度ガラスを超える熱強化処理を施したガラスからなるガラス板の少なくとも片面に低放射率熱反射膜を設けた防火戸用単板ガラスが記載されている。また、当該単板ガラス板と、倍強度ガラスまたは倍強度ガラスを超える熱強化処理を施したガラスからなる第2のガラス板とを、前記熱反射膜の少なくとも一層が両ガラス板の間に介装されるように間隔を空けて対向配置した防火戸用複層ガラスが記載されていている。しかしながら、その防火性能は不十分であった。

0008

特許文献2には、複数枚のガラス板がスペーサを介して隔置され、周縁部がシーリング材シールされて構成される複層ガラスであって、複数枚のガラス板は、少なくとも一枚の防火ガラス板と少なくとも一枚の防火ガラス板ではないガラス板とを含み、最外層に配置される二枚のガラス板のうち一方のガラス板の外側の面に非銀系低放射膜が備えられることを特徴とする防火用複層ガラスが記載されている。外側に傷つきにくい低放射膜を配置することによって、ガラスの昇温速度を低下させることができるとされている。また、安価なガラスを1枚使用することによってコスト上昇を抑制することもできるとされている。しかしながら高価な防火ガラスを1枚は使用しなければならずコスト面の問題を有していた。

0009

WO2013/065641A1
特開2014−97901号公報

先行技術

0010

耐火炉を用いたLow-Eガラスの防火性能に関する実験的研究」鈴木一幸ら、日本建築学会環境系論文集、第81巻、第727号、p739−747、2016年9月

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高価なガラス板を用いず、外観が良好で防火性能に優れた防火複層ガラス及び防火ガラスユニットを提供することを目的とするものである。また、高価なガラス板の枚数を抑制し、外観が良好で、遮熱性能に優れた加熱調理機の窓を提供するものである。

課題を解決するための手段

0012

上記課題は、2枚のガラス板がそれらの外周部に配されたスペーサを介して積層されてなる防火複層ガラスであって;火炎反対側から順に第1ガラス板及び第2ガラス板が配置され、第1ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、スペーサ近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板の火炎反対側の表面の全体にLOW−E膜が形成されている防火複層ガラスを提供することによって解決される。このとき、第1ガラス板の表面圧縮応力が60MPa以上190MPa未満であり、第2ガラス板の表面圧縮応力が60MPa未満であることが好ましい。また、第1ガラス板におけるLOW−E膜の除去幅(W)がスペーサの端から2〜20mmであることも好ましい。

0013

また上記課題は、3枚のガラス板がそれらの外周部に配されたスペーサを介して積層されてなる防火複層ガラスであって;火炎反対側から順に第1ガラス板、第2ガラス板及び第3ガラス板が配置され、第1ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、スペーサ近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板及び第3ガラス板の火炎反対側の表面の全体にLOW−E膜が形成されている、防火複層ガラスを提供することによっても解決される。このとき、第1ガラス板の表面圧縮応力が60MPa以上190MPa未満であり、第2ガラス板及び第3ガラス板の表面圧縮応力が60MPa未満であることが好ましい。また、第1ガラス板におけるLOW−E膜の除去幅(W)がスペーサの端から2〜20mmであることも好ましい。

0014

本発明の好適な実施態様は、前記いずれかの複層ガラスと、該複層ガラスを保持する枠体と、該複層ガラスと該枠体の隙間を封じるシーリング材とを備える防火ガラスユニットである。このとき、第1ガラス板の呑み込み深さ(D)に対する除去幅(W)の比(W/D)が0.5〜2であることが好ましい。

0015

上記課題は、単層のガラス板と、該ガラス板を保持する枠体と、該ガラス板と該枠体の隙間を封じるシーリング材とを備える防火ガラスユニットであって;前記ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、シーリング材近傍の当該LOW−E膜が除去されている、防火ガラスユニットを提供することによっても解決される。このとき、前記ガラス板の表面圧縮応力が60MPa以上190MPa未満であることが好ましい。前記ガラス板におけるLOW−E膜の除去幅(W)がシーリング材の端から2〜20mmであることも好ましい。また、前記ガラス板の呑み込み深さ(D)に対する除去幅(W)の比(W/D)が0.5〜2であることも好ましい。

0016

また上記課題は、2枚のガラス板が所定の間隔を空けて平行に固定されてなる加熱調理機の窓であって;調理機の外側から順に第1ガラス板及び第2ガラス板が配置され、第1ガラス板が枠体に保持され、第1ガラス板の内側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、前記枠体近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板が、低膨張ガラス板、結晶化ガラス板、又は表面圧縮応力が190MPa以上の耐熱強化ガラス板である、加熱調理機の窓を提供することによっても解決される。このとき、第1ガラス板の表面圧縮応力が20MPa以上190MPa未満であることが好ましい。また、第1ガラス板における、LOW−E膜の除去幅(W)が、枠体の端から2〜20mmであることも好ましい。

発明の効果

0017

本発明の防火複層ガラス及び防火ガラスユニットは、高価なガラス板を用いないにもかかわらず、外観が良好で防火性能にも優れている。したがって、建物の周囲で発生する火災の延焼を防ぎ、建物の内部への火炎の侵入を防止することができる。また、本発明の加熱調理機の窓は、高価なガラス板の枚数を抑制し、外観が良好で、遮熱性能に優れている。

図面の簡単な説明

0018

1枚のガラス板を含む本発明の防火ガラスユニットの一例の模式断面図である。
ガラス板の中央部の温度変化を示したグラフである。
シーリング材の端の位置のガラス板の温度変化を示したグラフである。
枠体に呑み込まれたガラス板のエッジの温度変化を示したグラフである。
2枚のガラス板が積層されてなる本発明の防火複層ガラスの一例の模式断面図である。
2枚のガラス板が積層されてなる複層ガラスを含む本発明の防火ガラスユニットの一例の模式断面図である。
3枚のガラス板が積層されてなる本発明の防火複層ガラスの一例の模式断面図である。
2枚のガラス板が積層されてなる本発明の加熱調理機の窓の一例の模式断面図である。

実施例

0019

本発明の第1の態様は、単層のガラス板と、該ガラス板を保持する枠体と、該ガラス板と該枠体の隙間を封じるシーリング材とを備える防火ガラスユニットであって;前記ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、シーリング材近傍の当該LOW−E膜が除去されている、防火ガラスユニットである。以下、図1を参照しながら説明する。

0020

図1に示される防火ガラスユニット1は、単層のガラス板10と、該ガラス板10を保持する枠体31と、該ガラス板10と該枠体31の隙間を封じるシーリング材32とを備える。図1では、防火ガラスユニット1の下辺のみを示しているが、4辺ともに同様の構成を有している。火炎2の存在する側から反対側への延焼を防ぐことが本発明の防火ガラスユニット1の目的である。通常、火炎2の存在するところが屋外であり、そこから建物内への延焼を防ぐ。

0021

ガラス板10の材質は特に限定されるものではないが、通常、ソーダライムガラスが用いられる。ガラス板10の表面圧縮応力は、60MPa以上190MPa未満であることが好ましい。表面圧縮応力が60MPa以上であることによって、火炎に晒された時の熱割れの発生を抑制することができる。ここで、熱割れとは1枚のガラス板の中での温度差によって生じる割れのことをいう。火災発生時には、ガラス板の中央部が速やかに高温になるのに対し、枠体31に呑み込まれた周辺部の温度は低いままである。このとき、ガラス板中央部が周辺部に比べて膨張して発生する応力によって、ガラス板のエッジに引っ張り応力が発生し、熱割れが発生する。表面圧縮応力は、より好適には80MPa以上であり、さらに好適には90MPa以上である。一方、表面圧縮応力が高すぎると、ガラス板にたわみが生じ、外観が悪化する。表面圧縮応力が190MPa未満であることによって、ガラス板の表面が平滑になる。表面圧縮応力は、より好適には150MP未満であり、さらに好適には130MPa未満である。ガラス板の厚さは特に限定されないが、通常2〜10mmである。

0022

前記ガラス板10の火炎2側の表面にLOW−E膜20が形成されている。LOW−E膜20が火炎2側の表面に形成されることによって、火炎2から発生した赤外線がLOW−E膜20で反射される。これによって、ガラス板10内に入射する赤外線の量を抑制して、ガラス板10の温度上昇速度を低下させることができる。

0023

LOW−E膜20は、可視光を透過し、赤外線を反射する被膜である。その被膜の組成は特に限定されない。代表的なものの一つが、酸化スズ(SnO2)を主成分とするものであり、フッ素などの他の原子がドープされていてもよい。このような酸化スズ系のLOW−E膜は、放射率がそれほど低くないが、膜の強度が高く、酸化劣化することもないので、図1に示されるような単板ガラスの場合や、複層ガラスであってもその最外層に設けられる場合に好適に用いられる。また、代表的な他の一つは、銀などの低放射率の金属層を含むものである。例えば、銀層亜鉛層を交互に積層した被膜などが挙げられる。このような低放射率金属系、特に銀系のLOW−E膜は、放射率が低いので、防火効果断熱効果も優れている。しかしながら、膜が酸化されやすく、しかも傷つきやすいので、最外層に使用することは難しく、複層ガラスの内面に用いられることが多い。LOW−E膜20の放射率は、好適には0.3以下であり、より好適には0.2以下であり、さらに好適には0.1以下である。

0024

本発明の防火ガラスユニット1では、シーリング材32近傍のLOW−E膜20が除去されていることが最大の特徴である。LOW−E膜20が除去された部分では、火炎2から発生した赤外線の多くをガラス板10内に入射させることができる。これによって、除去された部分のガラス板10の温度を上昇させることができる。この部分の温度を上昇させることによって、枠体31に呑み込まれた部分に伝熱して、ガラス板10のエッジの温度を伝熱によって上昇させることができる。すなわち、ガラス板10の中心部の温度上昇をLOW−E膜20によって抑制するとともに、シーリング材32近傍の当該LOW−E膜20を除去することによって枠体31に呑み込まれたガラス板10のエッジの温度を上昇させることができ、その結果、両者の温度差を小さくすることができ、熱割れを効果的に抑制することができる。シーリング材32の材質は特に限定されないが、シリコーンシーラントなどが好適に用いられる。

0025

シーリング材32近傍のLOW−E膜20を除去する方法は特に限定されない。研削装置を用いて機械的に除去することもできるし、レーザ光照射して熱的に除去することもできるし、化学薬品を用いて除去することもできる。なお、シーリング材とガラス板の接着性を向上させるために、シーリング材と接触する位置のLOW−E膜を除去することは、従来から行われていた。しかしながら、断熱性能や外観上のデメリットにもかかわらず、敢えてシーリング材と接触しない位置のLOW−E膜まで除去することはされていなかった。

0026

この効果を定量的に把握するために、図1に示される構成の防火ガラスユニット1の構成で、温度のシミュレーションを行った。厚さ3mmのガラス板を10mmの呑み込み深さ(D)でシーリング材32中に埋めた解析モデルとした。モデリングは、Autodesk Inventorにて実施し、ソルバとしてNastran InCADを用いた。境界条件は、ISO 15099をベースに、放射および対流条件を設定することにより設定した。火炎側の対流条件はISO_834の燃焼カーブを用いた。火炎側の放射条件は、著者上川大輔、第2回(2005年)記念研究助成、「耐火加熱炉熱収支特性解明木質系耐火構造試験における火災減衰期の再現法の提案報告書」(2006年3月発行)の記載データ(図2.11、図3.4、図3.9、図3.14、図3.19)を参照して、ガラス近傍の温度と、そこから900mm離れた位置のバーナー付近の温度差を推定し、ISO_834に100℃をプラスする調整を行った。

0027

前記解析に用いた物性パラメータは以下の通りである。
低放射膜の放射率(ε):0.05
低放射膜のないガラスの放射率(ε):0.4
シーリング材の熱伝導率:0.4W/m・K
空気の熱伝達率:0.07W/m・K
ガラスの熱伝導率:1.0W/m・K

0028

シミュレーションの結果を図2〜4に示す。図2はガラス板10の中央部の温度変化を示したものであり、黒丸がLOW−E膜20面の温度であり、白丸がその裏面のガラス板10面の温度である。ガラス板10の中央部の温度は、シーリング材32の端からの除去幅(W)を変化させても大きな変化はない。図3は、シーリング材32の端の位置のガラス板10の温度変化を示したものである。また図4は、枠体31に呑み込まれたガラス板10のエッジの温度変化を示したものである。図3及び4では、LOW−E膜20の除去幅Wを変化させたときのガラスの温度変化を示した。

0029

図2に示されるように、ガラス板10の中央部の温度は、火炎放射開始後に直線的に温度が上昇し、その後時間の経過とともに上昇速度は低下する。このとき、ガラス板10の裏表の温度差はほとんどない。一方、図3に示されるように、シーリング材32の端の位置では最初の温度上昇速度が少し低くなるが、その後少し遅れて温度上昇速度が高くなる。また図4に示されるように、ガラス板10のエッジでは最初の温度上昇速度がさらに低くなり、その後さらに少し遅れて温度上昇速度が高くなる。

0030

先にガラス板10の中央の温度が高くなり、それをガラス板10のエッジの温度が追随している。したがって、中央部と周辺部の温度差を小さくするためには、ガラス板10の周辺部の温度を早く上昇させることが重要である。ここで、図3及び図4をみればわかるように、シーリング材32近傍のLOW−E膜20を除去することで、温度上昇速度を効果的に向上させられることがわかった。しかも、驚くべきことに、僅かな除去幅であっても有効であることがわかった。図3及び4に示されるように、5mmの幅で除去しただけで、40mmの幅で除去したのと比べて大きな差がないのは驚きである。断熱効果を考えると除去面積は小さいほど良いので、小面積の除去であっても、ガラス板10のエッジの十分な加熱効果が認められることは極めて有用である。

0031

LOW−E膜20の除去幅(W)がシーリング材の端から2〜20mmであることが好ましい。除去幅(W)を2mm以上とすることによって、ガラス板10のエッジの温度を速やかに上昇させることができる。除去幅(W)は、より好適には3mm以上であり、さらに好適には4mm以上である。一方、除去幅(W)が20mmを超えると、防火ガラスユニット1の断熱性が低下する上に、LOW−E膜20の有無の境界が目立ちやすくなる。除去幅(W)は、より好適には15mm以下であり、さらに好適には10mm以下である。

0032

ガラス板10の呑み込み深さ(D)は、防火ガラスユニット1の設計によって調整されるが、通常3〜25mmである。呑み込み深さ(D)が小さすぎると、外力や熱によって、ガラス板10が枠体31から外れるおそれがある。呑み込み深さ(D)は、より好適には5mm以上であり、さらに好適には7mm以上である。一方、呑み込み深さ(D)が大きすぎると、ガラス板10のエッジの加熱が困難になり、熱割れをしやすくなるおそれがある。呑み込み深さ(D)は、より好適には20mm以下であり、さらに好適には15mm以下である。

0033

また、ガラス板10の呑み込み深さ(D)に対する除去幅(W)の比(W/D)が0.5〜2であることも好ましい。除去幅(W)は赤外線を吸収する面積に比例するものであり、呑み込み深さ(D)は、伝熱により加熱すべき熱容量に比例するものである。したがって、これらの値が適当にバランスされていることが好ましい。比(W/D)は、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましい。一方、比(W/D)は、1.8以下であることがより好ましく、1.6以下であることがさらに好ましい。

0034

本発明の第2の態様は、2枚のガラス板がそれらの外周部に配されたスペーサを介して積層されてなる防火複層ガラスであって;火炎反対側から順に第1ガラス板及び第2ガラス板とした場合に、第1ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、スペーサ近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板の火炎反対側の表面の全体にLOW−E膜が形成されている、防火複層ガラスである。以下、図5を参照しながら説明する。

0035

図5に示される防火複層ガラス3は、第1ガラス板11及び第2ガラス板12がそれらの外周部に配されたスペーサ33を介して積層されてなる。スペーサ33の外周側にはシーリング材34が配置されている。図5では、防火複層ガラス3の下辺のみを示しているが、4辺ともに同様の構成を有している。ここで、火炎2から遠い方から順に、第1ガラス板11、第2ガラス板12が配置されている。火炎2の存在する側から反対側への延焼を防ぐことが本発明の防火複層ガラス3の目的である。スペーサ33の材質は特に限定されないが、ステンレスなどの金属が好適に用いられる。また、シーリング材34の材質も特に限定されないが、シリコーンシーラントなどが好適に用いられる。

0036

第1ガラス板11及び第2ガラス板12の材質は、第1の態様のガラス板10と同様である。また、第1ガラス板11の表面圧縮応力も、ガラス板10と同様である。第2ガラス板12の表面圧縮応力は、60MPa未満であることが好ましい。第2ガラス板12は火炎に晒された時に最初に割れるので、割れた時に破片が飛び散って第1ガラス板11を破損することがないように表面圧縮応力が大きすぎないほうがよい。第2ガラス板の表面圧縮応力はより好適には50MPa未満である。一方、第2ガラス板の強度を上昇させるために、第2ガラス板の表面圧縮応力は、より好適には20MPa以上である。

0037

第1ガラス板11の火炎2側の表面にLOW−E膜21が形成されている。LOW−E膜21の役割及び構成は、第1の態様のガラス板10に形成されるLOW−E膜20と同様である。また、第2ガラス板12の火炎2の反対側の表面全体にLOW−E膜22が形成されている。表面全体にLOW−E膜22を形成することによって、断熱性の良好な複層ガラスにすることができる。LOW−E膜22の種類も、第1の態様のガラス板10に形成されるLOW−E膜20と同様である。ただし、第1の態様とは異なり、LOW−E膜21、22は最外層には配置されないので、防火性能や断熱性能を考慮すれば、低放射率金属系、特に銀系のLOW−E膜を用いることが好ましい。

0038

第2の態様の防火複層ガラス3は、スペーサ33近傍のLOW−E膜21が除去されていることが最大の特徴である。この点は、第1の態様で、シーリング材32近傍のLOW−E膜20が除去されているのと同様である。その効果も、第1の態様のモデルでシミュレーションしたのと同様である。そして、好適な除去幅(W)も第1の態様と同様である。また、ガラス板11の好適な呑み込み深さ(D)も、呑み込み深さ(D)に対する除去幅(W)の好適な比(W/D)も、第1の態様と同様である。

0039

好適な実施態様は、図6に示されるように、防火複層ガラス3と、該複層ガラス3を保持する枠体31と、該複層ガラス3と該枠体31の隙間を封じるシーリング材32とを備える防火ガラスユニット1である。防火ガラスユニット1の4辺のうちの下辺には、シーリング材32の位置にセッティングブロックを配置して、防火複層ガラス3を支えてもよい。この場合には、セッティングブロックの周囲がシーリング材32で封止される。セッティングブロックの材質は特に限定されないが、EPDMなどのエラストマーが好適に用いられる。

0040

第2の態様の防火ガラスユニット1においては、LOW−E膜が2層設けられる上に、LOW−E膜22はガラス板12の表面全体に形成される。しかも、LOW−E膜21、22ともに最外層に配置されないので、放射率の低い低放射率金属系、特に銀系のLOW−E膜を用いることができる。したがって、防火性能、断熱性能ともに第1の態様よりも優れたものになる。

0041

本発明の第3の態様は、3枚のガラス板がそれらの外周部に配されたスペーサを介して積層されてなる防火複層ガラスであって;火炎反対側から順に第1ガラス板、第2ガラス板及び第3ガラス板が配置され、第1ガラス板の火炎側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、スペーサ近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板及び第3ガラス板の火炎反対側の表面の全体にLOW−E膜が形成されている、防火複層ガラスである。以下、図7を参照しながら説明する。

0042

図7に示される防火複層ガラス3は、第2ガラス板12の火炎2側に、さらに第3ガラス板13を追加した点を除けば、2枚のガラス板11、12を含む図5の防火複層ガラス3と同様である。第3ガラス板13には、火炎2の反対側の表面の全体にLOW−E膜23が形成されている。第2ガラス板12と第3ガラス板13の間には、スペーサ33とシーリング材34が配置されている。図6と同様に、防火複層ガラス3と、該複層ガラス3を保持する枠体31と、該複層ガラス3と該枠体31の隙間を封じるシーリング材32とを備える防火ガラスユニット1が好適な実施態様である。

0043

第3の態様の防火ガラスユニット1においては、LOW−E膜が3層設けられる上に、そのうちの2枚のLOW−E膜22、23はガラス板12、13の表面全体に形成される。しかも、LOW−E膜21、22、23ともに最外層に配置されないので、放射率の低い低放射率金属系、特に銀系のLOW−E膜を用いることができる。したがって、防火性能、断熱性能ともに第2の態様よりもより優れたものになる。

0044

上記第1、2及び3の態様の防火ガラスユニット1は、ガラス板10又は第1ガラス板11が、熱割れしにくいとともに平坦であるので、防火性能に優れるとともに、外観にも優れる。そして、第2の態様や第3の態様のように複層ガラスを含む構成にすれば、断熱性にも優れた防火ガラスユニット1とすることができる。したがって、家屋ビルの窓やドアなどにおいて、外部からの延焼を防ごうとする用途を中心に広く用いることができる。

0045

本発明の第4の態様は、2枚のガラス板が所定の間隔を空けて平行に固定されてなる加熱調理機の窓であって;調理機の外側から順に第1ガラス板及び第2ガラス板が配置され、第1ガラス板が枠体に保持され、第1ガラス板の内側の表面にLOW−E膜が形成されるとともに、前記枠体近傍の当該LOW−E膜が除去されており、かつ第2ガラス板が、低膨張ガラス板、結晶化ガラス板、又は表面圧縮応力が190MPa以上の耐熱強化ガラス板である、加熱調理機の窓である。以下、図8を参照しながら説明する。

0046

図8に示される加熱調理機の窓4においては、第1ガラス板11、第2ガラス板12が所定の間隔を空けて平行に固定されている。第2ガラス板12が、調理機内の熱源5側に配置され、第1ガラス板11が調理機の外側に配置される。本発明の加熱調理機の窓4によって、加熱調理機の外に熱線が放出されるのを抑制する。

0047

第1ガラス板11の材質及び表面圧縮応力は、第1の態様のガラス板10と同様である。一方、第2ガラス板12は、低膨張ガラス板、結晶化ガラス板、又は表面圧縮応力が190MPa以上の耐熱強化ガラス板である。第2ガラス板12は、熱源5に近く、表面圧縮応力が190MPa未満の強化ガラス板では、耐熱性が不十分である。低膨張ガラスは、線膨張係数の小さいガラスであり、合成石英ガラスホウケイ酸ガラスなどを用いることができる。結晶化ガラスは、結晶性を有しながら透明性も有するガラスであり、日本電気硝子株式会社製耐熱結晶化ガラスネオセラム」などを用いることができる。これらのガラスは、線膨張係数が小さいため、加熱によっても割れにくい。しかしながら、高価であるために使用枚数を抑制したいという要望がある。また、表面圧縮応力が190MPa以上の耐熱強化ガラス板は、ソーダライムガラスを用いることができるので、低膨張ガラスや結晶化ガラスよりも安価である。しかしながら、大きい表面圧縮応力を生じさせたことによって、平面精度の低下や光学的な歪みが生じやすい。

0048

第1ガラス板11の熱源5側の表面にLOW−E膜21が形成されている。LOW−E膜21の役割及び構成は、第1の態様のガラス板10に形成されるLOW−E膜20と同様である。第1ガラス板11と第2ガラス板12の間の空間が密封されている場合には、低放射率金属系、特に銀系のLOW−E膜を用いることが好ましく、それによって、遮熱性能が向上する。一方、第1ガラス板11と第2ガラス板12の間の空間が密封されておらず、外気と繋がっている場合には、酸化スズ系のLOW−E膜を用いることが好ましい。

0049

本発明の加熱調理機の窓4は、枠体31近傍のLOW−E膜21が除去されていることが最大の特徴である。この点は、第1の態様で、シーリング材32近傍のLOW−E膜20が除去されているのと同様である。その効果も、第1の態様のモデルでシミュレーションしたのと同様である。そして、好適な除去幅(W)も第1の態様と同様である。また、ガラス板11の好適な呑み込み深さ(D)も、呑み込み深さ(D)に対する除去幅(W)の好適な比(W/D)も、第1の態様と同様である。

0050

本発明の加熱調理機の窓4は、第1ガラス板11を保持する枠体31が外枠35に固定されている。第1ガラス板11と第2ガラス板12の間の空間を密封する場合には、枠体31が全周にわたって設けられ、第1ガラス板11と枠体31の間にシーリング材が挿入される。一方、第1ガラス板11と第2ガラス板12の間の空間を密封しない場合には、第1ガラス板11と枠体31の間にシーリング材が挿入される必要はなく、枠体31が間欠的に配置されていてもよい。このような場合であっても、除去幅(W)は、枠体31の端からの幅のことをいう。

0051

本発明の加熱調理機4の窓は、第1ガラス板11が平坦であり外観が良好であるとともに、熱割れしにくく、しかも遮熱性に優れている。したがって、オーブンなどの各種の加熱調理機のドアなどとして好適に使用される。加熱調理機のドアとして用いる場合には、第1ガラス板11を保持する枠体31がドア本体に固定され、第2ガラス板12もドア本体に固定されることになる。

0052

1防火ガラスユニット
2火炎
3防火複層ガラス
4加熱調理機の窓
5熱源
10ガラス板
11 第1ガラス板
12 第2ガラス板
13 第3ガラス板
20、21、22、23 LOW−E膜
31枠体
32、34シーリング材
33スペーサ
35 外枠

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