図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
概要
より優れた吸放湿応答性を有する不燃シートを提供する。本実施形態に係る不燃シート10は、熱可塑性樹脂と、無機質材料と、無機多孔質体と、を含む原反層1を備えた不燃シート10であって、少なくとも一方の面に開口した針エンボス部7を有し、針エンボス部7は原反層1を貫通するか、または針エンボス部7の底部が原反層1内に位置する。少なくとも原反層1の一部に、開口した針エンボス部7が形成されるため、その分、不燃シート10の表面積が増加する。そのため、不燃シート10の吸放湿量が増加し、結果的に吸放湿応答性が向上する。
目的
特開2018−48229号公報
不燃シートを用いることで、壁や床等といった不燃シートが張り付けられた箇所に不燃性を持たせることができるが、不燃シートが張り付けられた空間における環境改善等の付加価値を有する不燃シートが望まれており、特に、優れた吸放湿応答性を有する不燃シートが望まれていた
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
熱可塑性樹脂と、無機質材料と、無機多孔質体と、を含む原反層を備えた不燃シートであって、少なくとも一方の面に開口した孔部を有し、当該孔部は前記原反層を貫通するか、または前記孔部の底部が前記原反層内に位置することを特徴とする不燃シート。
請求項2
前記原反層は、平均細孔径の異なる複数の前記無機多孔質体を含むことを特徴とする請求項1に記載の不燃シート。
請求項3
前記原反層は、非多孔性材料を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の不燃シート。
請求項4
前記無機多孔質体は、多孔質シリカ、アルミナ−シリカキセロゲル多孔質体、シリカゲル、活性アルミナ、メソポーラスゼオライト、メソポーラスシリカ、多孔質ガラス、アパタイト、珪藻土、及びセピオライトのうちの少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の不燃シート。
請求項5
前記孔部は、前記一方の面側が底面側となる錐体状であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の不燃シート。
請求項6
前記原反層の厚みは、70μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の不燃シート。
請求項7
請求項8
請求項9
請求項10
前記原反層の、少なくとも一方の面にアンカー層を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の不燃シート。
請求項11
前記原反層と、当該原反層の一方の面に形成された前記アンカー層と、絵柄模様層と、をこの順に備えたことを特徴とする請求項10に記載の不燃シート。
請求項12
前記絵柄模様層の上に、さらにトップコート層を備えることを特徴とする請求項11に記載の不燃シート。
請求項13
前記トップコート層は、抗菌剤及び防カビ剤の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項12に記載の不燃シート。
技術分野
0001
本発明は、不燃シートに関する。
背景技術
0002
不燃性または難燃性を備えたシートである不燃シートには、基材となる層である原反層に無機質材料を含んだものがある。そして、このシートに関する技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
先行技術
0003
特開2018−48229号公報
発明が解決しようとする課題
0004
不燃シートを用いることで、壁や床等といった不燃シートが張り付けられた箇所に不燃性を持たせることができるが、不燃シートが張り付けられた空間における環境改善等の付加価値を有する不燃シートが望まれており、特に、優れた吸放湿応答性を有する不燃シートが望まれていた。
そこで、本発明は、より優れた吸放湿応答性を有する不燃シートを提供することを目的としている。
課題を解決するための手段
0005
上記目的を達成するべく、本発明の一態様に係る不燃シートは、熱可塑性樹脂と、無機質材料と、無機多孔質体と、を含む原反層を備えた不燃シートであって、少なくとも一方の面に開口した孔部を有し、当該孔部は前記原反層を貫通するか、または前記孔部の底部が前記原反層内に位置することを特徴としている。
発明の効果
0006
本発明によれば、より優れた吸放湿応答性を有する不燃シートを提供することができる。
図面の簡単な説明
実施例
0008
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
0009
〔不燃シートの構成〕
不燃シート10は、図1に示すように、最背面側から最表面側に向かって、裏面アンカー層5と、原反層1と、表面アンカー層2と、絵柄模様層3と、トップコート層4とを備え、さらに、トップコート層4、絵柄模様層3、表面アンカー層2及び原反層1に亙って形成される針エンボス部(孔部)7を備える。
以下、不燃シート10を構成する各層について説明する。なお、後述する各種材料の含有量は、乾燥状態における対応する層全体の質量に対する含有比率(質量%)を意味する。例えば、後述する本実施形態の無機質材料の含有量は、乾燥状態における原反層1全体の質量に対する含有比率(質量%)を意味する。また、後述する表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、乾燥状態における表面アンカー層2全体の質量に対する含有比率(質量%)を意味する。また、後述する裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、乾燥状態における裏面アンカー層5全体の質量に対する含有比率(質量%)を意味する。
0010
(原反層)
原反層1は、不燃シート10の基材となる層(シート)であって、熱可塑性樹脂と、無機質材料と、無機多孔質体と、を含んだ層である。なお、原反層1は、抗菌剤や防カビ剤の少なくともいずれか一つを含んでいてよい。原反層1は特に吸放湿性を有するため、必然的に常に水蒸気を含んだ状態にあり、細菌やカビが発生し易い。このため、原反層1に抗菌剤や防カビ剤等を含有することによって、細菌やカビの発生を抑制することができる。抗菌剤や防カビ剤としては、有機系および無機系のいずれもであってもよい。例えば、有機系の抗菌剤および防カビ剤としては、トリアゾール系、アルコール系等の抗歯剤および防カビ剤を適用することができる。
0011
本実施形態の無機質材料の含有量は、原反層1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内であればよく、20質量%以上80質量%以下の範囲内であればより好ましく、60質量%以上80質量%以下の範囲内であればさらに好ましい。無機質材料の含有量が原反層1の質量に対して、15質量%未満であると、相対的に熱可塑性樹脂の割合が多くなるため、不燃性または難燃性が得にくい傾向がある。また、原反層1の表面をホフマンスクラッチテスターを用いて引っ掻いた際に、視認できる程度の傷が付く、即ち十分な表面硬度が得られないことがある。一方、無機質材料の含有量が原反層1の質量に対して、90質量%を超えると、相対的に熱可塑性樹脂の割合が少なくなる。このため、原反層1表面にアンカー層塗工もしくは印刷等を行った際に原反層1表面に所謂「粉吹き」が発生することがある。ここで、「粉吹き」とは、原反層1に含まれた無機質材料が原反層1の表面に浮き出ることをいう。また、絵柄模様層3の形成時に、原反層1から浮き出た無機質材料によってインキが積層しにくくなる、即ち印刷適性が低下することがある。また、表面アンカー層2、裏面アンカー層5、絵柄模様層3、及びトップコート層4の少なくとも一つを形成したシートをロール状または枚葉で木質系基材及び石系基材にラミネートする際にラミネートしにくくなる、即ちラミネート適性が低下する傾向がある。また、表面アンカー層2、裏面アンカー層5、絵柄模様層3、及びトップコート層4の少なくとも一つを形成したシートを折り曲げて再び開いた際に、折り曲げた部分から割れが発生したり、無機質材料が落ちたりすることがある。また、絵柄模様層3を形成したシートの表面にセロハンテープを圧着した後、強く引き剥がし、絵柄模様層3内または原反層1(表面アンカー層2)と絵柄模様層3との間で剥離が生じる、即ちインキ密着性が低下することがある。
0012
このように、本実施形態の無機質材料の含有量が原反層1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以上80質量%以下の範囲内であれば、不燃性または難燃性を得つつ、粉吹きの発生を低減し、印刷適性を向上させ、ラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部における割れの発生を低減することができ、さらに十分な表面硬度を得ることができ、インキ密着性を向上させることできる。
0013
また、本実施形態の無機質材料は、粉末形状(粉体形状)であることが好ましく、その平均粒子径が1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ最大粒子径が50μm以下であることが好ましい。無機質材料の平均粒子径及び最大粒子径が上記数値範囲内であれば、熱可塑性樹脂に対する無機質材料の分散性を向上させつつ、原反層1表面の平坦性を維持することができる。無機質材料の平均粒子径が1μm未満であると、無機質材料同士の凝集力が高まり、後述する熱可塑性樹脂への分散性が低下することがある。また、無機質材料の平均粒子径が3μmを超えると、原反層1表面の平坦性が低下し、後述する表面アンカー層2または裏面アンカー層5の厚みが不均一となったり、ムラや欠けが発生したりすることがある。また、無機質材料の最大粒子径が50μmを超えると、原反層1表面の平坦性が低下し、後述する表面アンカー層2または裏面アンカー層5の厚みが不均一となったり、ムラや欠けが発生したりすることがある。なお、本実施形態において、「平均粒子径」とは、モード径を意味する。
0014
無機質材料は、例えば、炭酸カルシウムを含有した粉末である。無機質材料は、炭酸カルシウムを50質量%以上100質量%以下の範囲内で含むものが好ましい。炭酸カルシウム等の含有量が50質量%以上である無機質材料であれば、原反層1に、十分な不燃性または十分な難燃性を付与することができると共に、十分な機械強度を付与することができる。
なお、無機質材料としては、上記炭酸カルシウム以外に、例えば、炭酸カルシウム塩、シリカ(特に中空シリカ)、アルミナ、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコンなどのジルコニウム化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムの錯体など、三酸化アンチモンとシリカの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華の錯体、ジルコニウムのケイ酸、ジルコニウム化合物と三酸化アンチモンの錯体、並びにそれらの塩などの少なくとも一種が挙げられる。特に、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩は製造手法による粒径のコントロールや熱可塑性樹脂との相溶性の制御が容易であり、また、材料コストとしても安価であるため不燃シートの低廉化の観点からも好適である。
0015
また、無機質材料は、結晶性を有する粉末材料、所謂結晶粉末であってもよいし、結晶性を有さない粉末材料、所謂アモルファスタイプの粉末材料であってもよい。無機質材料が結晶性を有する粉末材料であれば、粉末自体が均質で等方性を備えるため、粉末自体の機械強度が向上し、不燃シートの耐傷性や耐久性が向上する傾向がある。また、無機質材料がアモルファスタイプの粉末材料であれば、粉末自体の電気伝導性や熱伝導性、あるいは光透過率や光吸収率を適宜調整することが可能となるため、触感や艶等のバリエーションが豊富な意匠性を付与することが可能となる。
無機多孔質体は、水蒸気の吸脱着により吸放湿を素早く行うことができる材料からなる。無機多孔質体の含有量は、原反層1の質量に対して1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。
0016
無機多孔質体は、多孔質シリカ、アルミナ−シリカキセロゲル多孔質体、シリカゲル、活性アルミナ、メソポーラスゼオライト、メソポーラスシリカ、多孔質ガラス、アパタイト、珪藻土、及びセピオライトのうちの少なくともいずれか一つまたは複数の混合物である。無機多孔質体の細孔径は、例えば、調湿性能という観点では、吸放湿には、細孔の直径が2nm以上50nm以下程度のメソポーラス材料が好ましい。メソポーラス材料には、二酸化ケイ素(メソポーラスシリカ)、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、ジルコニウム酸化物等も挙げられる。無機多孔質体は、平均細孔径が異なる2種またはそれ以上の種類の無機多孔質体を含んでいてもよい。つまり、無機多孔質体は、細孔径が比較的小さい方が、比較的低湿度域において、吸放湿機能が高くなる。また、低湿度体における吸放湿機能が比較的高い無機多孔質体であっても、より孔径が小さい方が、空気中への水分の放出が促進されると考えられる。逆に細孔径がより大きい方が空気中への保持する水分の拡散は抑制されると考えられる。そのため、細孔径の大きな粒子と小さな粒子とを混合して用いることにより、低湿度体における吸放湿機能と、放湿速度を適切に制御することができる。また、細孔径の大きな粒子と小さな粒子との添加量比は、目的とする湿度帯における吸放湿機能と放湿速度とのバランスを考慮して調整すればよい。
0017
このように、細孔径の異なる複数の粒子を混合することによって、例えば、冬場の低湿度環境だけでなく、夏場の高湿度環境においても吸放湿させたい場合等、吸放湿させたい温度帯が複数あり且つ広い場合にも適切に吸放湿を行うことができる。
なお、原反層1には、無機多孔質体と共に、非多孔性材料を含んでいてもよい。非多孔性材料とは、全細孔容積が0.05ml/g未満の材料をいう。非多孔性材料の形状は、球状、多面体、薄片状、針状などの いずれであってもよいが、繊維状、具体的には針状(ウィスカー状)または紡錘状であることが好ましい。ウィスカー状または紡錘状の非多孔性材料を用いることにより、これら材料つまり繊維材が無機多孔質体粒子間に効果的に分散し、吸放湿層の多孔質化を実現することができる。このため、吸放湿速度をより高めることができる。非多孔性材料は吸水することが無いため、原反層1におけるクラックの発生を抑制することができる。
0018
非多孔性材料の好ましい例としては、シリカ、アルミナ、チタエア、ジルコエア、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、ウォラストナイト、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維、チタン酸カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、単結品繊維、具体的にはアスペクト比(結晶長さ/結晶幅)が1〜50のウィスカー状炭酸カルシウムがより好ましく、さらにより好ましくはアスペク卜比が1.5〜 30、最も好ましくはアスペクト比が3〜20のウィスカー状炭酸カルシウムである。
0019
なお、原反層1が、無機多孔質体と共に非多孔性材料を含む場合には、無機多孔質体の細孔直径が2.7nm以上6.4nm以下程度であることが好ましく、また、細孔容積が0.28cm3/g以上0.96cm3/g以下程度の範囲内の値であることが好ましい。これにより、優れた吸放湿応答性が得られると共に、乾燥後の表面にタック感が残りにくく、可撓性にも優れる。
本実施形態の熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン及びポリメチルペンテンの少なくとも1種を含んでいれば好ましく、ポリプロピレンを含んでいればより好ましい。熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン及びポリメチルペンテンの少なくとも1種を使用することで、無機質材料の分散性が向上する。また、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンを使用することで、無機質材料の分散性がさらに向上する。
0020
また、熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量は、原反層1の質量に対して、90質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量が上記数値範囲内であれば、十分な不燃性または十分な難燃性を得つつ、印刷適性やラミネート適性を向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを低減することができる。熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量が原反層1の質量に対して、90質量%未満であると、十分な不燃性または十分な難燃性が得られないことがある。また、印刷適性やラミネート適性が低下したり、シートの折り曲げ部に割れが発生したりすることがある。
0021
なお、熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量は、原反層1の質量に対して、100質量%である場合には、熱可塑性樹脂の含有量を10質量%以上85質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を15質量%以上90質量%以下の範囲内とすることが好ましい。また、熱可塑性樹脂の含有量を20質量%以上80質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を20質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂の含有量を20質量%以上40質量%以下の範囲内とし、無機質材料の含有量を60質量%以上80質量%以下の範囲内とすることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂と無機質材料との合計含有量が上記数値範囲内であれば、十分な不燃性または十分な難燃性を確実に得つつ、印刷適性やラミネート適性を確実に向上させ、且つシートの折り曲げ部に発生する割れを確実に低減することができる。
0022
また、原反層1の厚みは、70μm以上500μm以下の範囲内であることが好ましい。原反層1の厚みが上記数値範囲内であれば、針エンボス部7を形成したとしても、原反層1の強度を確保することができる。また、十分な吸放湿性を得ることができる。つまり、吸放湿層として動作する原反層1の膜厚が薄いほど加工性はよいが、膜厚が厚いほど、また、針エンボス部7の個数が多いほど、表面積が増加し、吸放湿量が増加し、吸放湿応答性を向上させることができる。
0023
また、原反層1は、1軸延伸または2軸延伸の原反層であることが好ましい。原反層1が1軸延伸または2軸延伸の原反層であれば、不燃シート10の汎用性を高めることができる。
なお、原反層1の表面及び裏面の少なくとも一方に、例えば、表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を形成する前に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。原反層1の表面及び裏面の少なくとも一方に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことで、表面アンカー層2及び裏面アンカー層5と、原反層1との接着性(密着性)が向上する。
0024
なお、表面アンカー層2及び裏面アンカー層5は、使用用途によっては、設けなくともよい。例えば、絵柄模様層3を印刷しない場合には、仮に粉落ちが生じたとしても印刷設備等に粉落ちが生じることはなく、また、絵柄模様層3と原反層1との層間密着強度も不要であるからである。
また、表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を形成する前に、例えば、原反層1の表面及び裏面の少なくとも一方をブラッシングして、粉吹きした無機質材料を事前に落とすようにしてもよい。
0025
(表面アンカー層)
表面アンカー層2は、原反層1の表面全体を覆うように形成された層であって、原反層1に含まれる無機質材料の粉落ちを防止するための層である。印刷時や樹脂塗工時に原反層1に含まれる無機質材料が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、その印刷系内を汚染することがある。また、原反層1に含まれる無機質材料が粉落ちすると、インキ抜け等の不具合が発生する可能性がある。ここで、「インキ抜け」とは、インキが部分的に印刷されないことをいう。
0026
また、表面アンカー層2は、原反層1と、後述する絵柄模様層3を形成するインキとの密着性を向上させるための機能も備えている。表面アンカー層2を備えない場合には、絵柄模様層3を形成するインキが原反層1に密着せずに剥離してしまうことがある。
表面アンカー層2は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有していることが好ましい。ここで、「塩酢ビ」とは、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を意味する。また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」とは、塩酢ビとウレタン系樹脂とを含んだ組成物であり、塩酢ビの含有量とウレタン系樹脂の含有量との比(塩酢ビの含有量(質量)/ウレタン系樹脂の含有量(質量))は80/20〜1/99の範囲内であればよく、50/50〜5/95の範囲内であれば好ましく、20/80〜10/90の範囲内であればさらに好ましい。
0027
また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」は、前述の塩酢ビ及びウレタン系樹脂以外に硬化剤を含んでいてもよい。この硬化剤は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂を確実に硬化させるために添加されるものであり、その含有量については特に限定されない。例えば、塩酢ビを含むウレタン系樹脂の含有量と、硬化剤の含有量との比(塩酢ビを含むウレタン系樹脂の含有量(質量)/硬化剤の含有量(質量))は99/1〜1/99の範囲内であればよく、99/1〜50/50の範囲内であれば好ましく、95/5〜90/10の範囲内であればさらに好ましい。
0028
表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、表面アンカー層2の質量に対し、15質量%以上100質量%以下の範囲内が好ましく、80質量%以上100質量%以下の範囲内がより好ましく、85質量%以上95質量%以下の範囲内がさらに好ましい。表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が上記数値範囲内であれば、表面アンカー層2と絵柄模様層3との層間強度を十分なものにしつつ、均一でムラや欠けのない表面アンカー層2を形成することができる。表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が表面アンカー層2の質量に対し、15質量%未満であると、表面アンカー層2と絵柄模様層3との層間強度が不十分となることがある。また、表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が表面アンカー層2の質量に対し、乾燥状態で80質量%未満であると、使用上何ら問題はないが、表面アンカー層2の原反層1への食い込み比率が低下し、表面アンカー層2と原反層1との層間強度が低下することが僅かながらある。なお、表面アンカー層2における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が表面アンカー層2の質量に対し、100質量%以下であれば使用上何ら問題はないが、95質量%、より正確には98質量%を超えると、硬化不足で表面アンカー層2に欠けが生じたり、表面アンカー層2と原反層1、もしくは表面アンカー層2と絵柄模様層3との層間強度が低下したりすることがある。
0029
また、表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、後述する裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量と同じであってもよい。即ち、表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量の1.0倍(0.95倍以上1.04倍以下の範囲内)であってもよい。表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が、裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量と同じである場合には、表面アンカー層2の物性と裏面アンカー層5の物性がほぼ同じになるため、原反層1が表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を備えた状態において、歪みや反り等の発生を低減することができる。そのため、不燃シート全体の歪みや反り等の発生を低減することができる。また、表面アンカー層2を形成するための塗工液と、裏面アンカー層5を形成するための塗工液とを共通化することができるため、製造コストを低減するとともに、作業効率を向上させることができる。
0030
また、表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量よりも多くてもよいし、少なくてもよい。表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が、裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量よりも多い、または少ない場合には、表面アンカー層2の物性と裏面アンカー層5の物性が異なるため、表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を備えた原反層1に、歪みや反り等を付与することができる。このように、表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を備えた原反層1に歪みや反り等を付与することで、その原反層1を湾曲した表面を備える基材等に隙間なく貼り合せることができる。例えば、表面アンカー層2における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、裏面アンカー層5における塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量の1.1倍以上10倍以下であってもよく、0.1倍以上0.9倍以下であってもよい。
0031
表面アンカー層2の厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下の範囲内であり、好ましくは、0.5μm以上10μm以下の範囲内である。また、表面アンカー層2の厚みは、裏面アンカー層5の厚みと同じであってもよい。表面アンカー層2の厚みが裏面アンカー層5の厚みと同じである場合には、表面アンカー層2の物性と裏面アンカー層5の物性がほぼ同じになるため、原反層1が表面アンカー層2及び裏面アンカー層5を備えた状態において、歪みや反り等の発生を低減することができる。
0032
また、表面アンカー層2の厚みは、裏面アンカー層5の厚みよりも厚くてもよいし、薄くてもよい。表面アンカー層2の厚みと裏面アンカー層5の厚みを異なるものとすることで、光沢差が生じるため、原反層1の表面側と裏面側とを容易に視認することができる。そうすることで、原反層1の表面に、例えば印刷面であることを表示する識別マーク等を形成することなく、絵柄模様層3を印刷することができる。その結果、原反層1の裏面(非印刷面)側に絵柄模様層3を形成することで生ずる製品ロスを低減することができる。
0033
(絵柄模様層)
絵柄模様層3は、不燃シート10に絵柄を付与する層であり、表面アンカー層2上に形成されている。
絵柄模様層3が形成する絵柄模様の種類には、特に制約はなく、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学図形、文字、記号等を単独で、または、2種類以上を組み合わせて形成してもよい。
絵柄模様層3は、アクリル系樹脂をバインダーとして含むインキ(以下、絵柄模様層形成用インキとも称する)を、表面アンカー層2の一方の面に塗布して形成した層である。絵柄模様層形成用インキにバインダーとして含まれるアクリル系樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体樹脂(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂(EAA)、アイオノマー樹脂、またはそれらの混合物等のアクリレート系共重合体樹脂を主成分とするものを使用することができる。ここで、「主成分」とは、絵柄模様層3を構成する成分のうち、最も含有量が多い成分をいう。
0034
なお、絵柄模様層3は、ウレタン系樹脂をバインダーとして含むインキを、表面アンカー層2の一方の面に塗布して形成した層であってもよい。そのウレタン系樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートとを反応させて得られるウレタン系のものを用いてもよい。イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などから適宜選択することができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を用いることが好ましい。
0035
絵柄模様層形成用インキは、上記アクリル系樹脂とともに、そのアクリル系樹脂を架橋する架橋剤を含んでいてもよい。この架橋剤は、アクリル系樹脂を架橋して絵柄模様層3全体に機械強度を付与する機能を有することから、一般に「硬化剤」とも称される。絵柄模様層形成用インキに添加可能な架橋剤(硬化剤)としては、例えばウレタン硬化剤が挙げられる。より詳しくは、絵柄模様層形成用インキに添加可能なウレタン硬化剤としては、例えばIPDA(イソフオロンジアミン)やHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)が挙げられる。本実施形態では、これらを単体またはそれらを混合して用いることができる。
0036
絵柄模様層形成用インキが架橋剤を含む場合、その架橋剤の含有量は、絵柄模様層3におけるアクリル系樹脂の含有量を100質量部とした場合、0質量部超10質量部以下の範囲内であることが好ましい。架橋剤の含有量が上記数値範囲内であれば、絵柄模様層形成用インキの塗工性が向上する。なお、好ましくは、架橋剤の含有量は、絵柄模様層3におけるアクリル系樹脂の含有量を100質量部とした場合、3質量部である。
絵柄模様層形成用インキは、上記バインダー以外に、例えば、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加してもよい。また、絵柄模様層形成用インキは、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整されている。
0037
絵柄模様層3の形成方法には、特に制約はなく、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、インクジェット印刷法等の任意の印刷方法を用いることが可能である。
また、下地着色を目的として、表面アンカー層2と絵柄模様層3との間にベタインキ層(図示せず)を設ける場合には、ベタインキ層の形成方法として、上記各種の印刷方法の他に、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、スプレーコート法、リップコート法、ダイコート法等、任意のコーティング方法を用いることが可能である。
0038
また、絵柄模様層3を、発泡印刷により形成するようにしてもよい。これにより、原反層1の汚染防止層として作用させることができる。発泡印刷は、例えば樹脂と発泡剤とが混合された塗料が挙げられる。発泡剤としては、分解ガス発生性発泡剤、膨張性カプセル発泡等を用いることができる。分解ガス発生性発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソベンタメチレンテトラミン等を適用することができる。膨張性カプセル発泡剤としては、アクリル酸エステル、塩化ビエリデン等の熱可塑性樹脂を被膜とする微小粒子中にエタン、プタン、ペンタン等の炭化水素系の揮発性膨張成分が内包されたものを適用することができる。
0039
(トップコート層)
不燃シート10の最表面には、表面の保護や艶の調整としての役割を果たすトップコート層4が設けられている。トップコート層4の厚みは、2μm以上10μm以下が好ましい。トップコート層4の厚みが上記範囲内であれば、耐摩耗性や表面の硬さなどの機械特性を十分に得つつ、柔軟性を維持することができる。トップコート層4の厚みが2μm未満であると、耐摩耗性や表面の硬さなどの機械特性を十分に得られないことがある。また、トップコート層4の厚みが10μmを超えると、柔軟性が低下することがある。
0040
トップコート層4の主成分となる樹脂材料としては、ポリオール主剤とイソシアネート硬化剤との混合系からなる2液硬化型ウレタン系樹脂が好ましい。例えば、アクリルポリオール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂、ポリエーテルポリオール系樹脂等も適用することができる。なお、トップコート層4は、不燃シート10の用途によっては設けなくともよい。
なお、トップコート層4は、不燃シート10の耐候性を向上させるために紫外線吸収剤および光安定化剤を適宜添加してもよい。また抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行える。さらに、表面の意匠性から艶の調整のため、あるいはさらに耐摩耗性を付与するために、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等の添加も任意に行える。
0041
(裏面アンカー層)
裏面アンカー層5は、原反層1の裏面全体を覆うように形成された層であって、原反層1に含まれる無機質材料の粉落ちを防止するための層である。印刷時や樹脂塗工時に原反層1に含まれる無機質材料が印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちすると、その印刷系内を汚染することがある。裏面アンカー層5は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有していることが好ましい。
0042
裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量は、例えば、裏面アンカー層5の質量に対し、15質量%以上100質量%以下の範囲内が好ましく、80質量%以上100質量%以下の範囲内がより好ましく、85質量%以上95質量%以下の範囲内がさらに好ましい。裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が上記数値範囲内であれば、裏面アンカー層5とプライマー層6との層間強度を十分なものにしつつ、均一でムラや欠けのない裏面アンカー層5を形成することができる。裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が裏面アンカー層5の質量に対し、15質量%未満であると、裏面アンカー層5とプライマー層6との層間強度が不十分となることがある。また、裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が裏面アンカー層5の質量に対し、80質量%未満であると、使用上何ら問題はないが、裏面アンカー層5の原反層1への食い込み比率が低下し、裏面アンカー層5と原反層1との層間強度が低下することが僅かながらある。なお、裏面アンカー層5における、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量が裏面アンカー層5の質量に対し、100質量%以下であれば使用上何ら問題はないが、95質量%、より正確には98質量%を超えると、硬化不足で裏面アンカー層5に欠けが生じたり、裏面アンカー層5と原反層1、もしくは裏面アンカー層5と絵柄模様層3との層間強度が低下したりすることがある。
また、裏面アンカー層5の厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下の範囲内であり、好ましくは、0.5μm以上10μm以下の範囲内である。
0043
(接着性樹脂層)
本実施形態の不燃シート10は、絵柄模様層3と、トップコート層4との間に、接着性樹脂層(図示せず)を備えてもよい。接着性樹脂層を設けることによって、絵柄模様層3とトップコート層4との密着性を向上させることができる。接着性樹脂層の材質は特に限定されるものではないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などから適宜選択して用いることができる。塗工方法は接着剤の粘度などに応じて適宜選択することができるが、一般的には、グラビアコートが用いられ、絵柄模様層3上にグラビアコートによって塗布された後、トップコート層4とラミネートするようにして形成される。
0044
(針エンボス部)
針エンボス部7は、図1に示すように、トップコート層4が形成された側の面に形成される。図1に示すように、原反層1と表面アンカー層2と絵柄模様層3とトップコート層4との積層体の、トップコート層4側から原反層1の一部に到達するように孔部が形成されてなる。なお、表面アンカー層2、絵柄模様層3及びトップコート層4のいずれか一つまたは複数、これら全てを備えない場合には針エンボス部7は、表面アンカー層2の一方の面側の、最表面の層から、原反層1に亙って孔部が形成される。
0045
なお、針エンボス部7は、図1に示すように少なくとも原反層1内に含んで形成されていればよく、原反層1を貫通していてもよい。
針エンボス部7は、例えば錐体状に形成され定面の直径が10μm以上100μm以下程度の円錐型に形成される。なお、針エンボス部7の形状は円錐に限るものではなく、四角錐等多角錘形状であってもよく、その形状は限定されるものではないが、表面積を増加させる観点と、針エンボス部7を設けることによる不燃シート10の強度の観点から、針エンボス部7の形状や形成する数を決定すればよい。
0046
針エンボス部7の長さは、原反層1の厚み及び目的の孔の深度に応じて設定すればよい。また、針エンボス部7は、トップコート層4に複数形成されていればよく、その配置間隔は任意に設定することができ、目的とする吸放湿特性を得ることができる数また間隔で針エンボス部7を設ければよい。
針エンボス部7は、目的とする針エンボス部7の形状に応じた針、例えば図2に示すようなエンボス針を用い、トップコート層4を作成した後、エンボス針によって孔をあけることで形成すればよい。具体的には、エンボスロールに、図2に示すようなエンボス針を設け、トップコート層4を形成した後の積層体を、エンボスロールに通すことにより針エンボス部7を形成する。
0047
〔不燃シートの製造方法〕
不燃シート10の製造方法の一例について、簡単に説明する。
まず、原反層1の一方の面である表面に、表面アンカー層2を形成するための表面アンカー層形成用インキを塗工して、表面アンカー層2を形成する。
次に、表面アンカー層2の表面上に、絵柄模様層3を形成するための絵柄模様層形成用インキを塗工して、絵柄模様層3を形成する。
次に、絵柄模様層3の表面上に、トップコート層4を形成するためのトップコート層形成用インキを塗工して、トップコート層4を形成する。
次に、原反層1の他方の面である裏面に、裏面アンカー層5を形成するための裏面アンカー層形成用インキを塗工して、裏面アンカー層5を形成する。
最後に、エンボス針を用いて、トップコート層4側から原反層1に到達する針エンボス部7を形成する。
こうして、本実施形態に係る不燃シート10を製造する。
なお、裏面アンカー層5は、表面アンカー層2と同時に形成してもよい。
0048
ここで、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準においては、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において下記の要件を満たしている必要がある(建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号)。本実施形態の不燃シート10が不燃材料として認定されるためには、不燃性基材と貼り合わせた状態で50kW/m2の輻射熱による加熱にて20分間の加熱時間において下記の1〜3の要求項目をすべて満たす必要がある。
1.総発熱量が8MJ/m2以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
なお、不燃性基材としては、石こうボード、繊維混入ケイ酸カルシウム板または亜鉛メッキ鋼板から選択して用いることができる。
そして、前述の原反層1を具備する本実施形態の不燃シート10は、前述の不燃性基材と貼り合わせた状態でのISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、前述の施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件をともに満たす不燃材料を実現している。
0049
〔効果〕
上記実施形態における不燃シート10は、原反層1に、無機多孔質体を含んでおり、さらに、針エンボス部7が形成されている。つまり、針エンボス部7が形成されることによって、原反層1に孔が形成され、その分原反層1の表面積が増加する。その結果、吸放湿量を増加させることができ、すなわち、吸放湿応答性を向上させることができる。そのため、より優れた吸放湿機能を実現することができる。すなわち、吸放湿応答性に優れた不燃シート10を実現することができる。
0050
したがって、高湿度時には湿気を吸収し、低湿度時には湿気を放出するため、例えば、冬期の低温な外気環境において、結露の発生を効果的に抑制することができ、結露を原因とする汚れやカビの発生を低減することができる。また、湿度が低下してきた場合には、吸湿プロセスにより無機多孔質体に蓄えた水分を速やかに放出することにより、湿度の急激な低下を抑制することができ、快適で健康的な屋内環境に保つことができる。このような不燃シート10は、壁紙として適用することも可能であり、さらに、天井或いは床用の不燃シート10等、建築物内装材として用いることも可能である。また、自動車、電車、船舶等の乗り物の内装に適用することができる。
0051
〔実施例〕
ここでは、まず比較例として、原反層に無機多孔質体を含有せずまた針エンボス部7を持たない不燃シートについて説明した後、実施例における不燃シート10について説明する。
比較例における不燃シートは以下の手順で作成した。すなわち、まず、無機質材料としての炭酸カルシウムと、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂と、で構成される原反層を形成した。原反層の組成比は、炭酸カルシウム60質量%とし、ポリプロピレン樹脂40質量%とした。原反層の厚みは、200μmとした。なお、無機質材料の純度は、炭酸カルシウムが90質量%のものを使用した。また、炭酸カルシウムとして、平均粒子径(モード径)が2μmであり、最大粒子径が50μm以下であるものを使用した。
0052
次に、原反層の表面及び裏面をコロナ処理した。
次に、コロナ処理した原反層の表面上及び裏面上に、塩酢ビを含むウレタン系アンカー層形成用インキを塗膜厚みが1μm以上2μm以下の範囲内となるように塗工し、乾燥温度40℃、乾燥時間30秒間の条件で乾燥させた。こうして、原反層の表面上及び裏面上にアンカー層を形成した。
次に、原反層の表面側のアンカー層上に、ウレタン系絵柄模様層形成用インキを塗膜厚みが1μm以上2μm以下の範囲内となるように塗工(印刷)し、乾燥温度40℃、乾燥時間30秒間の条件で乾燥させた。こうして、原反層の表面側のアンカー層上に絵柄模様層を形成した。
0053
その後、原反層、アンカー層及び絵柄模様層を備えた積層体(シート)を室温で1日エージングし、各評価を行うための比較例としての不燃シートのサンプルを作成した。
実施例における不燃シート10は、比較例において、無機質材料としての炭酸カルシウムと、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂と、さらに無機多孔質体としての多孔質シリカと、の混合物から原反層を形成し、針エンボス部7を設けたこと以外は、比較例における不燃シートと同一条件で作成した。無機質材料としての炭酸カルシウムと、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂と、無機多孔質体としての多孔質シリカと、の組成比は、原反層1の質量に対して、炭酸カルシウム60質量%、ポリプロピレン樹脂20質量%、無機多孔質体20質量%とした。
本実施例における評価項目は、以下の通りである。
0054
0055
<インキ密着性>
印刷後のシート表面にニチバン製セロハンテープを圧着した後、一定の力で強く引き剥がし、絵柄模様層内部または原反層と絵柄模様層との層間での剥離の有無を目視にて評価した。
<印刷適性>
印刷時に原反層から粉落ちせずに、インキが積層できているか否かを目視にて評価した。
<印刷後の表面粉吹き>
印刷後のシート表面を手やコットンでドライラビングし、粉吹きや炭酸カルシウムの脱落の有無を目視にて評価した。
<不燃性試験>
ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による、不燃シートに対する発熱性試験において下記の要件を満たしているか否か評価した。
1.総発熱量が8MJ/m2以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
なお、不燃性基材としては、石こうボードを用いた。また、評価基準は以下の通りである。
0056
<吸放湿性>
一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会が定める調湿建材判定基準にそって、所定時間後の吸湿量及び放湿量を測定し、単位時間当たりの変化量を求めた。この変化量が予め設定した変化量の目標値を上回るか否かを評価した。
(評価基準)
○:各項目に対し、シート作製時・シート加工時に何ら不具合を生じない。
×:各項目に対し、不具合を生じる。
なお、吸放湿性については、変化量の目標値を上回るとき「○」、変化量の目標値以下であるとき「×」とした。
実施例の積層体及び比較例の積層体における評価結果は、表1に示す通りである。実施例における不燃シートは、比較例における不燃シートに比較して、同等の特性を得ることができると共に、さらに吸放湿性が向上することが確認された。
0057
以上のように、熱可塑性樹脂と無機質材料と無機多孔質体とを含む原反層1を備えた不燃シート10であって、不燃シート10の少なくとも一方の面に針エンボス部7を有し、針エンボス部7は原反層1を貫通するか、または針エンボス部7の底部が原反層1内に位置するようにしたため、不燃性を備えると共に、吸放湿応答特性をより向上させることができる。
0058
1原反層
2 表面アンカー層
3絵柄模様層
4トップコート層
5 裏面アンカー層
7 針エンボス部
10 不燃シート
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成