図面 (/)

技術 浸炭用鋼およびその製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 木村勇希一宮克行岩本隆西村公宏
出願日 2019年3月29日 (1年10ヶ月経過) 出願番号 2019-067243
公開日 2020年10月8日 (4ヶ月経過) 公開番号 2020-164936
状態 未査定
技術分野 鋼の加工熱処理 物品の熱処理 熱処理
主要キーワード 円相当半径 歯車類 直動軸受け 拡散期 疲労強度低下 疲労限度 風力発電機用 Ti硫化物
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年10月8日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (2)

課題

浸炭時の結晶粒の粗大化を確実に抑制可能とする浸炭用鋼を提供する

解決手段

質量%で、C:0.10%以上0.30%以下、Si:0.05%以上0.30%以下、Mn:0.2%以上2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.050%以下、Al:0.005%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.100%以下、O:0.0030%以下およびN:0.0060%以上0.0250%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物成分組成と、円相当半径が20nm以下のTi系化物を20個/μm2以上含有する組織と、を有する。

概要

背景

建産機や自動車などに使用される機械構造部品は、鍛造切削にて部品形状を付与した後、疲労強度を向上させる目的で浸炭焼入れ焼戻し処理(以下、単に浸炭処理ともいう)が施される。特に、建機歯車に代表される大型部品においては、数mm程度の浸炭硬化深さが要求される。

上記のような深い硬化深さを得るために、従来は900〜950℃の温度で数十時間の浸炭処理を実施する必要があった。しかしながら、このような長時間処理は製品生産性を著しく悪化させる点が課題であった。

浸炭処理時間の短縮を図る手法として、浸炭処理を1000℃以上の高温で行う、いわゆる高温浸炭が適用されるケースが増加している。一方、浸炭温度を高温化することでオーステナイト結晶粒の粗大化が生じやすくなる点が課題である。オーステナイト結晶粒が粗大化した鋼材では、粗大化が生じていない鋼材と比較して疲労強度が低下したり、浸炭時の焼入れによって生じる熱歪みが大きくなったりする。

このような背景から、高温浸炭を行っても結晶粒粗大化を防止可能な鋼の提供が要求されている。浸炭時の結晶粒粗大化を防止する手法として、Al、Nb、Tiといった炭化物または窒化物形成元素を添加することでAlN、NbCやTiCといった析出物を鋼中に微細分散させる技術が一般的に用いられている。

例えば、特許文献1ではAlNを活用した鋼において、熱間圧延前ソーキング処理を行うことで熱間加工後AlN析出量を0.004%以下に抑制するとともに、熱間圧延方向に平行な断面組織フェライトバンドの発生を抑制し、粗大粒の発生抑制を図った肌焼鋼が開示されている。

また、特許文献2では、Nbを0.01〜0.05%添加した鋼材を分塊圧延する際の加熱温度および加熱時間を規定して粗大なNb析出物の生成を低減することで、結晶粒の粗大化を防止可能な肌焼鋼について開示されている。

さらに、特許文献3では、Tiを0.1〜0.3%添加して鋼中にTi炭化物を微細分散させることで、浸炭中の結晶粒粗大化を抑制可能であり、かつ疲労強度に優れた鋼材が開示されている。

概要

浸炭時の結晶粒の粗大化を確実に抑制可能とする浸炭用鋼を提供する質量%で、C:0.10%以上0.30%以下、Si:0.05%以上0.30%以下、Mn:0.2%以上2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.050%以下、Al:0.005%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.100%以下、O:0.0030%以下およびN:0.0060%以上0.0250%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物成分組成と、円相当半径が20nm以下のTi系化物を20個/μm2以上含有する組織と、を有する。なし

目的

一方、浸炭温度を高温化することでオーステナイト結晶粒の粗大化が生じやすくなる点が課題である

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

質量%で、C:0.10%以上0.30%以下、Si:0.05%以上0.30%以下、Mn:0.2%以上2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.050%以下、Al:0.005%以上0.050%以下、Ti:0.005%以上0.100%以下、O:0.0030%以下およびN:0.0060%以上0.0250%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物成分組成と、円相当半径が20nm以下のTi系化物を20個/μm2以上含有する組織と、を有する浸炭用鋼

請求項2

前記成分組成は、鋼中のTi含有量(質量%)およびN含有量(質量%)をそれぞれ[Ti]および[N]で表すとき、[Ti]および[N]の比[Ti]/[N]が3.4以下である請求項1に記載の浸炭用鋼。

請求項3

前記成分組成は、さらに、質量%で、Sb:0.0010%以上0.0300%以下を含む請求項1または2に記載の浸炭用鋼。

請求項4

前記成分組成は、さらに、質量%で、Cr:1.5%以下、Mo:0.50%以下Ni:2.0%以下、Cu:2.0%以下およびB:0.0050%以下のうちから選ばれる1種以上を含む請求項1から3のいずれかに記載の浸炭用鋼。

請求項5

前記成分組成は、さらに、質量%で、V:0.10%以下およびNb:0.10%以下のうちから選ばれる1種以上を含む請求項1から4のいずれかに記載の浸炭用鋼。

請求項6

前記成分組成は、さらに、質量%で、Ca:0.0050%以下、Zr:0.0050%以下、Pb:0.0050%以下およびBi:0.0050%以下のうちから選ばれる1種以上を含む請求項1から5のいずれかに記載の浸炭用鋼。

請求項7

請求項1から6のいずれかに記載の浸炭用鋼を製造するに当たり、鋼素材棒鋼または線材熱間加工する工程における、最高加熱温度を1150℃以下とする浸炭用鋼の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、建産機や自動車分野で用いられる機械構造用部品に供する、特に高温浸炭時結晶粒粗大化抑制能に優れた浸炭用鋼およびその製造方法に関する。本発明の浸炭用鋼が用いられる部品として、建産機分野では、例えば、走行減速機ギアプラネタリーギアおよびサンギア等の歯車)、大型減速機のギア、油圧ポンプバルブプレートボールねじナットサイクロン減速機の曲線板およびピン、並びに、直動軸受けブロック等が挙げられ、同様に、自動車分野では、各種軸受エンジンピストンピンカムシャフトおよびタイミングギア変速機歯車類ミッシングギア、リングギア、サンギアおよびプラネリタギア等)、並びに、駆動系のデフベベルギアトリポートインナおよびボール等が挙げられる。また、建産機や自動車分野以外では、電気機器分野の風力発電機用の軸受や減速ギア等である。

背景技術

0002

建産機や自動車などに使用される機械構造部品は、鍛造切削にて部品形状を付与した後、疲労強度を向上させる目的で浸炭焼入れ焼戻し処理(以下、単に浸炭処理ともいう)が施される。特に、建機用歯車に代表される大型部品においては、数mm程度の浸炭硬化深さが要求される。

0003

上記のような深い硬化深さを得るために、従来は900〜950℃の温度で数十時間の浸炭処理を実施する必要があった。しかしながら、このような長時間処理は製品生産性を著しく悪化させる点が課題であった。

0004

浸炭処理時間の短縮を図る手法として、浸炭処理を1000℃以上の高温で行う、いわゆる高温浸炭が適用されるケースが増加している。一方、浸炭温度を高温化することでオーステナイト結晶粒の粗大化が生じやすくなる点が課題である。オーステナイト結晶粒が粗大化した鋼材では、粗大化が生じていない鋼材と比較して疲労強度が低下したり、浸炭時の焼入れによって生じる熱歪みが大きくなったりする。

0005

このような背景から、高温浸炭を行っても結晶粒粗大化を防止可能な鋼の提供が要求されている。浸炭時の結晶粒粗大化を防止する手法として、Al、Nb、Tiといった炭化物または窒化物形成元素を添加することでAlN、NbCやTiCといった析出物を鋼中に微細分散させる技術が一般的に用いられている。

0006

例えば、特許文献1ではAlNを活用した鋼において、熱間圧延前ソーキング処理を行うことで熱間加工後AlN析出量を0.004%以下に抑制するとともに、熱間圧延方向に平行な断面組織フェライトバンドの発生を抑制し、粗大粒の発生抑制を図った肌焼鋼が開示されている。

0007

また、特許文献2では、Nbを0.01〜0.05%添加した鋼材を分塊圧延する際の加熱温度および加熱時間を規定して粗大なNb析出物の生成を低減することで、結晶粒の粗大化を防止可能な肌焼鋼について開示されている。

0008

さらに、特許文献3では、Tiを0.1〜0.3%添加して鋼中にTi炭化物を微細分散させることで、浸炭中の結晶粒粗大化を抑制可能であり、かつ疲労強度に優れた鋼材が開示されている。

先行技術

0009

特開2001-234284号公報
特開2010-222634号公報
特許第3469443号公報

発明が解決しようとする課題

0010

しかしながら、特許文献1や2に記載のように、AlNやNbC析出物を使用する場合、これらの析出物は高温浸炭温度で凝集・粗大化が顕著となることから、結晶粒粗大化を抑制することが不可能である。また、特許文献3に記載のようにTiC析出物を使用する場合は、TiC析出物が高温浸炭温度でも安定に存在可能であるため結晶粒粗大化を抑制可能である。一方、0.1%以上という多量のTiを添加する必要があるため、材料コストの上昇を招くばかりでなく、硬質のTiC析出物が多量に存在することで鋼材の被削性が悪化するという課題もあった。

0011

本発明は、上記の実情に鑑み開発されたものであり、浸炭時の結晶粒の粗大化を確実に抑制可能とする浸炭用鋼およびその製造方法について提案することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

本発明は、上記の課題を解決するため、TiCより更に高温まで安定に存在するTi系化物の利用に着目した。すなわち、TiおよびN添加量を調整することにより、Ti系窒化物を鋼中に微細かつ多量に分散させ、高温浸炭時の結晶粒粗大化抑制能を付与したものである。
すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。

0013

1.質量%で、
C:0.10%以上0.30%以下、
Si:0.05%以上0.30%以下、
Mn:0.2%以上2.0%以下、
P:0.030%以下、
S:0.050%以下、
Al:0.005%以上0.050%以下、
Ti:0.005%以上0.100%以下、
O:0.0030%以下および
N:0.0060%以上0.0250%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物成分組成と、円相当半径が20nm以下のTi系窒化物を20個/μm2以上含有する組織と、を有する浸炭用鋼。

0014

2.前記成分組成は、鋼中のTi含有量(質量%)およびN含有量(質量%)をそれぞれ[Ti]および[N]で表すとき、[Ti]および[N]の比[Ti]/[N]が3.4以下である前記1に記載の浸炭用鋼。

0015

3.前記成分組成は、さらに、質量%で、
Sb:0.0010%以上0.0300%以下
を含む前記1または2に記載の浸炭用鋼。

0016

4.前記成分組成は、さらに、質量%で、
Cr:1.5%以下、
Mo:0.50%以下
Ni:2.0%以下
Cu:2.0%以下
B:0.0050%以下
のうちから選ばれる1種以上を含む前記1から3のいずれかに記載の浸炭用鋼。

0017

5.前記成分組成は、さらに、質量%で、
V:0.10%以下および
Nb:0.10%以下
のうちから選ばれる1種以上を含む前記1から4のいずれかに記載の浸炭用鋼。

0018

6.前記成分組成は、さらに、質量%で、
Ca:0.0050%以下、
Zr:0.0050%以下、
Pb:0.0050%以下および
Bi:0.0050%以下
のうちから選ばれる1種以上を含む前記1から5のいずれかに記載の浸炭用鋼。

0019

7.前記1から6のいずれかに記載の浸炭用鋼を製造するに当たり、鋼素材棒鋼または線材熱間加工する工程における、最高加熱温度を1150℃以下とする浸炭用鋼の製造方法。

発明の効果

0020

本発明では、微細なTi系窒化物を利用することにより、特に高温の浸炭処理を施した際の結晶粒粗大化を抑制することができる。また、Ti系窒化物はTi炭化物より高温まで安定に存在し、析出物の凝集・粗大化を生じにくいため、Ti炭化物を利用する場合と比較してTiの添加量は少なくて済む。したがって、従来Ti炭化物を利用する場合に課題であった、材料コストや鋼材の製造性を改善することが可能になる。

図面の簡単な説明

0021

浸炭処理の条件を示す図である。
回転曲げ疲労試験片を示す図である。

0022

以下、本発明の浸炭用鋼を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について、成分毎に順に説明する。なお、以下に示す%表示は、特に断らない限り質量%を意味する。
C:0.10%以上0.30%以下
Cは、鋼材の強度を確保するために必要な元素であり、0.10%未満の添加では強度が不足する。一方、過剰な添加は鋼材の硬度を上昇させて被削性を悪化させるとともに、浸炭処理後の部品の芯部の靭性を低下させることから、C量は0.30%以下にする必要がある。以上の理由から、C量の下限は0.10%および上限は0.30%とする。好ましくは0.15%以上0.25%以下、さらに好ましくは0.17%以上0.23%以下である。

0023

Si:0.05%以上0.30%以下
Siは、鋼の精錬時に脱酸剤として用いられる元素であり、そのためには0.05%以上の添加が必要である。一方、過剰な添加は固溶強化によってフェライト相の硬度を上昇させ、鋼材の加工性や被削性を悪化させるため、Si量は0.30%以下とする必要がある。以上より、Si量の下限は0.05%、上限は0.30%とする。好ましくは0.10%以上0.28%以下の範囲である。

0024

Mn:0.2%以上2.0%以下
Mnは、鋼材の焼入性および強度を向上させる元素である。さらに、Sと結合してMnSを形成することにより、鋼材の被削性を向上させるとともに、Ti硫化物の生成を抑制する効果を通して微細なTi系窒化物の数密度を増加させる作用も有する。Mnの添加量が0.2%未満では、鋼材の焼入れ性が不足するとともに、Mnに対して過剰となったSがTiと結合してTi硫化物となり、浸炭処理を施した際の結晶粒粗大化抑制に有効なTi系窒化物を形成するための、Ti量が減少して浸炭処理時の粗粒化を防止できない。また、添加量が2.0%を超えると、鋼材の硬度が高くなりすぎるため、かえって鋼材の被削性に悪影響を及ぼすことになる。以上の理由から、Mn量の下限は0.2%および上限は2.0%とする。好ましくは0.60%以上0.90%以下の範囲である。

0025

P:0.030%以下
Pは、結晶粒界偏析し易く、鋼材の靱性を低下させる元素である。したがって、P量は0.030%以下に抑制する。好ましくは、0.015%以下とする。なお、下限については特に限定せずとも問題はないが、無駄な低P化は精錬時間の増長や精錬コストを上昇させてしまうため、コストの観点からは0.003%以上とするとよい。

0026

S:0.050%以下
Sは、鋼中のMnと硫化物を形成し、鋼材の被削性を向上させる元素であり、そのためには0.010%以上の添加が好ましい。しかしながら、過剰な添加はTi硫化物の生成を促進させ、結晶粒粗大化抑制に有効なTi系窒化物量が低下する。したがって、S量は0.050%以下、より好ましくは0.030%以下とする。

0027

Al:0.005%以上0.050%以下
Alは、鋼の脱酸剤として用いられる元素であり、そのためには0.005%以上の添加が必要である。一方、0.050%を超えて添加すると、Al酸化物量が増加して鋼材の疲労強度を低下させる場合がある。従って、Al量は0.005%以上0.050%以下、好ましくは0.010%以上0.035%以下とする。

0028

Ti:0.005%以上0.100%以下
Tiは、Nと結合して微細なTi系窒化物を形成する元素であり、高温浸炭時の結晶粒粗大化を防止する上で重要な元素である。Ti量が0.005%未満では、生成するTi系窒化物量が不足して結晶粒粗大化を抑制できない。一方、0.100%超のTiを添加すると、粗大なTi系介在物が生成して鋼材の疲労強度を低下させるとともに、結晶粒粗大化抑制に有効な微細Ti系窒化物の数密度も減少する。このことから、Ti量の範囲は0.005%以上0.100%以下とする。好ましくは、0.02%以上0.05%以下の範囲である。

0029

O:0.0030%以下
Oは、鋼中に不可避的に混入する元素である。O量が多い場合には、粗大な酸化物系介在物が多量に生成し疲労強度や靱性の低下を招くことから、極力低減することが望ましい。したがって、O量は0.0030%以下とした。好ましくは0.0020%以下、さらに好ましくは0.0015%以下とする。なお、下限については特に限定せずとも問題はないが、無駄な低O化は精錬時間の増長や精錬コストを上昇させてしまうため、コストの観点からは0.0005%以上とするとよい。

0030

N:0.0060%以上0.0250%以下
Nは、Tiと結合してTi系窒化物を形成する元素である。N量が0.0060%未満ではTi系窒化物量が不足するため、特に高温の浸炭処理を施した際の結晶粒粗大化を抑制できなくなる。一方、N量が0.0250%より過剰な場合はブローホールを形成し、鋼材の特性が劣化する。したがって、N量は0.0060%以上0.0250%以下の範囲とする。好ましくは0.0060%以上0.0160%以下の範囲である。
以上の基本成分の残部は、Fe及び不可避的不純物である。

0031

ここで、以上の基本成分において、鋼中のTi含有量およびN含有量の関係を、鋼中のTi含有量(質量%)およびN含有量(質量%)をそれぞれ[Ti]および[N]で表すとき、[Ti]および[N]の比[Ti]/[N]が3.4以下を満足することが好ましい。
すなわち、TiとNが原子比1:1で結合した際の質量比[Ti]/[N]は3.4である。この質量比3.4を上回るTi量およびN量の関係では、N量に対してTi量が不足するために、析出するTi系窒化物の量が少なくなる上、Ti系窒化物の成長が早まるため、浸炭時の結晶粒粗大化が生じやすくなる。従って、後述する円相当半径が20nm以下のTi系窒化物を20個/μm2以上含有する組織に制御するに当たり、[Ti]/[N]を3.4以下とすることが有利である。

0032

また、以上の基本成分に加えて、必要に応じて、Sbを0.0010%以上0.0300%以下の範囲で添加することができる。すなわち、Sbは、粒界への偏析傾向が強く、浸炭処理浸炭処理を施した際に焼入れ性の向上に寄与する、Si、MnおよびCr等の粒界酸化を抑制し、鋼表層における浸炭異常層の発生を低減する効果を通じて鋼材の疲労強度を向上させる元素である。この粒界酸化を抑制する効果を得るには、0.0010%以上の添加が必要である。一方、Sbを過剰に添加してもその効果は飽和する。したがって、Sb量の上限は0.0300%とした。好ましくは、0.0030%〜0.0100%の範囲である。

0033

同様に、必要に応じて、以下に示す各成分を適宜添加することが可能である。
Cr:1.5%以下、
Mo:0.50%以下
Ni:2.0%以下、
Cu:2.0%以下および
B:0.0050%以下
のうちから選ばれる1種以上
Cr:1.5%以下
Crは、鋼材の焼入れ性を向上させる元素であり、添加することができる。一方で、1.5%を超える過剰な添加は鋼材硬度を上昇させ、鋼材の加工性や被削性が低下する。したがって、Cr量は1.5%以下とすることが望ましい。より好ましくは、0.9%以上1.3%以下の範囲である。

0034

Mo:0.50%以下
Moは、少量の添加で鋼材の焼入れ性を大きく向上させる元素であり、添加することができる。一方で、Moは高価な元素であり、過剰な添加は合金コストの上昇を招く。したがって、Mo量は0.50%以下とするのが望ましい。より好ましくは0.05%以上0.40%以下、さらに好ましくは0.10%以上0.30%以下の範囲である。

0035

Ni:2.0%以下
Niは、鋼材の焼入性および靱性を向上させる有用元素であり、添加することができる。しかしながら、Niは高価な元素であり、過剰な添加は合金コストの上昇を招く。したがって、Niは2.0%以下の添加とする。より好ましくは、0.05%以上1.0%以下とする。

0036

Cu:2.0%以下
Cuは、鋼材の焼入性を向上させる有用元素であり、添加することができる。添加量が2.0%を超えると熱間加工時割れが発生し易くなり、鋼材の製造性を低下させるため、添加量は2.0%以下とするのが望ましい。より好ましくは、0.05%以上1.0%以下とする。

0037

B:0.0050%以下
Bは、結晶粒界を強化するとともに、少量の添加でも鋼材の焼入れ性を向上させる元素であり、添加することができる。しかしながら、過剰に添加しても焼入れ性の向上効果は飽和するうえ、Nと結合してBNを形成することで浸炭処理時の結晶粒粗大化防止に有効なTi系窒化物量を低下させる。このことから、添加量は0.0050%以下とするのが望ましい。より好ましくは、0.0005%以上0.0030%以下とする。

0038

同様に、必要に応じて、以下に示す各成分を適宜添加することが可能である。
V:0.10%以下および
Nb:0.10%以下
のうちから選ばれる1種以上
V:0.10%以下
Vは、鋼中のCやNと結びついて微細な炭窒化物を形成することにより、鋼の強度向上および浸炭処理時の結晶粒粗大化抑制に効果のある元素である。一方、過剰に添加した場合は鋼材の硬度が高くなりすぎて被削性が低下するため、添加量は0.10%以下とするのが望ましい。好ましくは、0.02%以上0.07%以下とする。

0039

Nb:0.10%以下
Nbは、鋼中のCと結びついてNbCを形成し、浸炭処理時の結晶粒粗大化の抑制に寄与する元素である。一方、0.10%を超えて添加しても結晶粒粗大化抑制の効果が飽和するため、Nb添加量は0.10%以下とするのが望ましい。好ましくは、0.02%以上0.05%以下とする。

0040

Ca:0.0050%以下
Caは、介在物球状化して鋼材の疲労特性を向上させる元素であり、添加することができる。一方、添加量が0.0050%を超えると、介在物が粗大化し、かえって疲労特性が低下するため、Ca添加量は0.0050%以下とするのが望ましい。好ましくは、0.0010%以上0.0030%の範囲とする。

0041

Zr:0.0050%以下
Zrは、CやNとの親和力が強い元素であり、微細な炭化物や窒化物を形成して浸炭処理時の結晶粒粗大化抑制に寄与する元素である。しかしながら、Zrは高価な元素であり、過剰な添加は合金コストの上昇を招くため、0.0050%以下の添加が望ましい。好ましくは、 0.0010%以上0.0030%以下とする。

0042

Pb:0.0050%以下
Pbは、鋼材の被削性を向上させる元素であり、必要に応じて添加することができる。しかしながら、過剰な添加は鋼材の強度を低下させるため、0.0050%以下の添加とすることが望ましい。好ましくは、0.0010%以上0.0030%以下とする。

0043

Bi:0.0050%以下
BiはPb同様、鋼材の被削性を向上させる元素である。しかしながら、過剰な添加は鋼材の強度を低下させるため、0.0050%以下の添加とすることが望ましい。好ましくは、0.0010%以上0.0030%以下とする。

0044

以上説明した選択元素を添加する場合、基本成分並びに添加元素以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。

0045

さらに、本発明の浸炭用鋼では、組織におけるTi系窒化物のサイズおよび数密度を規定することが肝要である。
円相当半径が20nm以下のTi系窒化物を20個/μm2以上含有する組織
さて、析出物の体積分率が一定、すなわち析出物形成元素の添加量が一定の条件下では、浸炭用鋼における析出物が微細であるほど、浸炭用鋼を浸炭処理した際の結晶粒の粗大化を抑制する効果が高い。さらに、高温の浸炭処理における温度保持中には、析出物の凝集並びに粗大化が生じ、それに応じて結晶粒の粗大化抑制効果が低下していく。そこで、浸炭処理前の浸炭用鋼の段階にて析出物を微細かつ多量に分散させておくことによって、浸炭処理後においても微細な析出物を残存させる必要がある。

0046

ここで、本発明では、浸炭用鋼に1050℃で20hの条件にて浸炭焼入れ焼戻し処理(浸炭処理)を施した後の、鋼材表面から30μm深さ位置までの領域における旧オーステナイト粒度番号が6番以上であることを、鋼材が優れた浸炭粗粒化抑制能を有することの指標とした。次いで、この指標を満足するための条件を究明したところ、浸炭用鋼の段階にて円相当半径が20nm以下のTi系窒化物を20個/μm2以上含有していれば、高温の浸炭処理を経ても旧オーステナイト粒度番号が6番以上となり、上記した指標を満足できることを見出した。

0047

また、浸炭用鋼において上記したTi系窒化物の粒径分布を得るためには、上記した成分組成の規定に加えて、浸炭用鋼の製造工程における加熱温度が重要であり、以下に述べる条件とする必要がある。
すなわち、鋼塊およびブルーム等の鋼素材を、棒鋼または線材に熱間加工する工程における、最高加熱温度を1150℃以下とする。すなわち、浸炭時の結晶粒粗大化抑制に有効な微細Ti窒化物は、鋼素材を鋳造時の凝固中に析出し、その後の工程、すなわち鋼素材を鋼片圧延する工程および鋼片を棒鋼や線材へ圧延する工程における、加熱処理によって成長する。上述のとおり、Ti系窒化物が微細であるほど浸炭時の結晶粒粗大化抑制効果が高いことから、前述した熱間加工前再加熱温度を極力低下させ、該加熱中の析出物成長を可能な限り抑制することが、前記結晶粒粗大化抑制に有効である。したがって、本発明では、鋼塊またはブルームの鋼素材を、棒鋼または線材に熱間加工する工程における最高加熱温度を1150℃以下と規定する。好ましくは、最高加熱温度を1100℃以下とすることが望ましい。

0048

なお、加熱時間は特に限定する必要はないが、Ti系窒化物の成長を抑制する観点および、経済性の観点からは、3時間以下とすることが好ましい。

0049

さらに、本発明の浸炭用鋼は、芯部におけるビッカース硬度が230HV以下であることが好ましい。なぜなら、この硬度が過度に高い鋼材は、被削性が低いためである。

0050

以下、実施例に従って、本発明の構成および作用効果をより具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲内にて適宜変更することも可能であり、これらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。

0051

表1に示す化学成分(残部はFeおよび不可避的不純物)の鋼を溶製しブルームとしたのち、該ブルームを種々の加熱温度に加熱した後、熱間鍛造を行って直径50mmの棒鋼を作製した。

0052

得られた棒鋼の芯部の硬度をビッカース硬さ試験機にて測定した。また、棒鋼の表面から直径の1/4の深さ位置より、疲労特性調査に用いる回転曲げ疲労試験片、および析出物観察・結晶粒度測定に使用する試験片をそれぞれ採取し、後述する高温浸炭処理に供した。

0053

すなわち、棒鋼より採取した各種試験片を真空浸炭炉に入れ、温度1050℃にて均熱浸炭期並びに拡散期の合計が20hの真空浸炭処理を行った。その後、850℃まで30分で冷却し、850℃で30分の温度保持を行ってから70℃の油中に試験片を入れて急冷し、続けて150℃で2hの焼戻し処理を行った。以上の浸炭処理の条件を図1に示す。

0054

高温浸炭処理を施した鋼材の結晶粒度判定は、JIS G 0552に規定された方法に準じて実施し、結晶粒度番号を算出した。

0055

Ti系窒化物の大きさと数密度については、以下のように測定した。棒鋼およびそれを前記条件の高温浸炭処理した後の試験片の各々から抽出レプリカ試料を採取し、透過型電子顕微鏡法(TEM)にて倍率20万倍、30視野を観察した。観察された析出物の組成を、TEM付属エネルギー分散X線分光装置(TEM-EDX)にて確認し、TiおよびNが検出された析出物をTi系窒化物と判定して、それらの円相当半径を画像解析により算出した。棒鋼および高温浸炭処理後のサンプルについて、円相当半径20nm以下のTi系窒化物の個数計数し、観察総面積で除することでTi系窒化物の数密度を算出した。

0056

浸炭処理後の鋼材の疲労特性調査は、小野式回転曲げ疲労試験機を用いて実施した。棒鋼表面から直径の1/4の深さ位置より、図2に示す形状の回転曲げ疲労試験片を採取した後、前述の高温浸炭処理を施して回転曲げ疲労試験に供した。107回を疲労限度として疲労強度を調査した。ここで、400MPa以上の疲労強度を示した鋼を耐疲労性に優れるとした。

0057

0058

0059

表1中のNo.1から16は比較鋼(No.1はJISSCM420相当鋼、No.2はJIS SCr420相当鋼)、No.17から35は発明鋼である。

0060

本発明に従うNo.17から35の鋼では、棒鋼および浸炭処理後の鋼材の両方に微細なTi系窒化物が高い数密度で存在したことから、浸炭処理後のオーステナイト粒度番号が6番以上の細粒となり、それによって高い疲労強度が得られた。

0061

特に、No.30〜No.35の鋼では、Ti/Nが3.4以下となっていたため、棒鋼中に含まれる微細Ti系窒化物の数密度が高くなっており、浸炭処理後のオーステナイト粒度番号が7番以上の細粒が得られたことから、優れた疲労強度が得られた。

0062

比較鋼であるNo.1およびNo.2の鋼は、Tiを含有していない鋼であり、微細なTi系析出物が存在しないため高温浸炭処理時の結晶粒粗大化を防止できず、結果として疲労強度が低下した。

0063

No.3の鋼は、C量が発明範囲と比較して低く、浸炭処理後の芯部強度が不足したために浸炭処理後の鋼材の疲労強度が低い値となった。No.4鋼は、C量が発明範囲を超えており、棒鋼の硬度が230HV以上となった。

0064

No.5の鋼は、Si量が発明範囲と比較して低く、溶製時の脱酸不足で酸化物系介在物が多く残存したため、浸炭処理後の鋼材の疲労強度が低い値となった。No.6の鋼は、Si量が発明範囲を超えており、棒鋼の硬度が230HV以上となった。

0065

No.7の鋼は、Mn量が発明範囲と比較して低く、Mnに対して過剰に存在するSがTiと結合してTi硫化物となったために、Ti系窒化物の数密度が減少し、浸炭後の結晶粒粗大化、浸炭処理後の鋼材の疲労強度低下を招いた。No.8の鋼は、Mn量が発明範囲を超えており、棒鋼の硬度が230HV以上となった。

0066

No.9の鋼は、S量が発明範囲の上限を超えており、No.7の鋼と同様にTi硫化物が生成してTi系窒化物の数密度が減少し、浸炭後の結晶粒粗大化、浸炭処理後の鋼材の疲労強度低下を招いた。

0067

No.10の鋼は、Al量が発明範囲と比較して低い鋼、No.11の鋼はAl量が発明範囲を超えている鋼である。Al量が少ない場合には脱酸不足で酸化物系介在物が多く残存し、浸炭処理後の鋼材の疲労強度が低い値となった。一方でAl量が過剰な場合には、Al系酸化物量が増加して疲労破壊の起点として作用したため、浸炭処理後の鋼材の疲労強度が低い値となった。

0068

No.12の鋼は、Ti量が発明範囲を超えており、破壊の起点となる粗大なTi系介在物が生成する点、微細なTi系窒化物の数密度が減少して浸炭時に結晶粒が粗大化した点の両方が作用して疲労強度が低下した。

0069

No.13の鋼は、O量が発明範囲を超えている鋼であり、疲労破壊の起点となる酸化物系の介在物量が増加して浸炭処理後の鋼材の疲労強度が低い値となった。

0070

No.14の鋼は、N量が発明範囲を下回っており、微細なTi系窒化物の数密度が低いために浸炭時の結晶粒粗大化を防止できず、疲労強度が低い値となった。

実施例

0071

No.15およびNo.16の鋼は、化学組成は発明範囲内であるが、棒鋼鍛造時の再加熱温度が発明範囲の上限を超えているためにTi系窒化物が凝集・粗大化し、微細なTi系窒化物の数密度が低い。このため、浸炭時に結晶粒粗大化が生じ、浸炭処理後の鋼材の疲労強度も低い値であった。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ