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課題
解決手段
概要
背景
アミノ酸残基の酸化的分解反応は、プロテイン薬剤において一般的に観察される現象である。複数のアミノ酸残基、特にメチオニン(Met)、システイン(Cys)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、及びチロシン(Tyr)は、酸化の影響を受けやすい(Li et al., Biotechnology and Bioengineering 48:490-500 (1995))。酸化は、典型的には、様々な処理工程の間に、タンパク質が過酸化水素、光、金属イオン、又はこれらの組合せに暴露されるとき観察される(Li et al., Biotechnology and Bioengineering 48:490-500 (1995))。特に、光(Wei, et al., Analytical Chemistry 79(7):2797-2805 (2007))、AAPH又はフェントン試薬(Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009))に暴露されたタンパク質は、トリプトファン残基に酸化レベルの上昇を示しており、過酸化水素に暴露されたタンパク質は典型的にメチオニンの酸化のみを示している(Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009))。光暴露は、一重項酸素、過酸化水素及び超酸化物を含む活性酸素種(ROS)の形成によりタンパク質の酸化を引き起こすことができ(Li et al., Biotechnology and Bioengineering 48:490-500 (1995); Wei, et al., Analytical Chemistry 79(7):2797-2805 (2007); Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009); Frokjaer et al., Nat Rev Drug Discov 4(4):298-306 (2005))、タンパク質の酸化は、典型的には、フェントン媒介性反応においてヒドロキシルラジカルを介して(Prousek et al., Pure and Applied Chemistry 79(12):2325-2338 (2007))、及びAAPH媒介性反応においてアルコキシル過酸化物を介して(Werber et al., J Pharm Sci 100(8):3307-15 (2011))起こる。トリプトファンの酸化は、ヒドロキシトリプトファン、キヌレニン、及びN−ホルミルキヌレニンを含む無数の酸化生成物を生み、安全性及び有効性に影響を与える可能性を有する(Li et al., Biotechnology and Bioengineering 48:490-500 (1995); Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009); Frokjaer et al., Nat Rev Drug Discov 4(4):298-306 (2005))。生物学的機能の欠失と相関するモノクローナル抗体の重鎖相補性決定領域(CDR)における特定のトリプトファン残基の酸化が報告されている(Wei, et al., Analytical Chemistry 79(7):2797-2805 (2007))。ヒスチジン配位金属イオンによって媒介されたTrp酸化が、Fab分子について最近報告されている(Lam et al., Pharm Res 28(10):2543-55 (2011))。Fab製剤中におけるポリソルベート20の自動酸化は、様々な過酸化物を生成するもので、これも同じレポートにおいて言及されている。また、タンパク質中のMet残基は内的抗酸化剤として作用し(Levine et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 93(26):15036-15040 (1996))、過酸化物によって容易に酸化することが示されているため、自動酸化により誘導されるこのような過酸化物の生成は、製剤の長期貯蔵中にタンパク質中のメチオニンの酸化を引き起こしうる。アミノ酸残基の酸化は、タンパク質の生物活性に影響を与える可能性を有する。これは、モノクローナル抗体(mAb)に特に当てはまる。IgG1 mAb中のMet254及びMet430におけるメチオニンの酸化は、トランスジェニックマウスの血清半減期に影響する可能性があり(Wang et al., 分子 Immunology 48(6-7):860-866 (2011))、また、ヒトIgG1のFcRn及びFc−γ受容体への結合に影響を与える(Bertolotti-Ciarlet et al., Molecular Immunology 46(8-9)1878-82 (2009))。
タンパク質の安定性は、特に液体状態において、製剤の製造及び貯蔵の間に評価される必要がある。薬学的製剤の開発は、時として活性成分の酸化を防ぐための抗酸化剤の添加を含む。製剤に対するL−メチオニンの添加は、タンパク質及びペプチド中においてメチオニン残基の酸化を減少させた(Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009); Lam et al., Journal of Pharmaceutical Sciences 86(11):1250-1255 (1997))。同様に、L−トリプトファンの添加は、トリプトファン残基の酸化を減少させることを示した(Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009); Lam et al., Pharm Res 28(10):2543-55 (2011))。しかしながら、L−Trpは、UV領域(260〜290nm)において高い吸光度を有し、したがって光酸化の間の主要な標的である(Creed, D., Photochemistry and Photobiology 39(4):537-562 (1984))。Trpは、酸素依存性のチロシン(Babu et al., Indian J Biochem Biophys 29(3):296-8 (1992))及び他のアミノ酸(Bent et al., Journal of the American Chemical Society 97(10):2612-2619 (1975))の光酸化を亢進させる内因性の光増感剤と仮定された。L−Trpは光に暴露されると過酸化水素を生成できること、及びL−TrpはUV光下においてスーパーオキシドアニオンを介して過酸化水素を生成することが実証された(McCormick et al., Science 191(4226):468-9 (1976); Wentworth et al., Science 293(5536):1806-11 (2001); McCormick et al., Journal of the American Chemical Society 100:312-313 (1978))。加えて、トリプトファンは、光への暴露により一重項酸素を生じさせることが知られている(Davies, M.J., Biochem Biophys Res Commun 305(3):761-70 (2003))。ポリソルベート20の自動酸化により誘導されるタンパク質の酸化と同様に、正常な取扱い条件下において、タンパク質製剤中における他の添加剤(例えばL−Trp)によるROS発生時にタンパク質の酸化が起こることがありうる。
最近の研究から、タンパク質を安定化させるための標準の添加剤、例えばL−Trp及びポリソルベートの、タンパク質組成物への添加により、ROSによって誘導されるタンパク質の酸化といった予測不能の望ましくない結果を生じる可能性があることが明らかになっている。したがって、タンパク質組成物中において使用される代替的添加剤の同定、及びそのような組成物の開発に対する需要が依然として存在する。
概要
タンパク質を含み、更には前記タンパク質の酸化を防止する化合物を含む液体製剤、そのような液体製剤の製造及び使用方法の提供。タンパク質と、液体製剤中のタンパク質の酸化を防止する化合物とを含む液体製剤であって、化合物が、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−トリプトファンアミド及びメラトニン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、製剤。
目的
効果
実績
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請求項1
タンパク質と、液体製剤中のタンパク質の酸化を防止する化合物とを含む液体製剤であって、化合物が、5−ヒドロキシ−トリプトファン、5−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシインドール、及びセロトニンからなる群より選択される、製剤。
請求項2
請求項3
水性である、請求項1又は2に記載の製剤。
請求項4
製剤中の化合物が約0.3mMから約5mMである、請求項1から3のいずれか一項に記載の製剤。
請求項5
製剤中の化合物が約1mMである、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
請求項6
化合物が、タンパク質中のトリプトファン及び/又はメチオニンの酸化を防止する、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
請求項7
化合物が、活性酸素種によるタンパク質の酸化を防止する、請求項1から6のいずれか一項に記載の製剤。
請求項8
請求項9
タンパク質が酸化の影響を受けやすい、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。
請求項10
タンパク質中のトリプトファンが酸化の影響を受けやすい、請求項1から9のいずれか一項に記載の製剤。
請求項11
タンパク質が抗体である、請求項1から10のいずれか一項に記載の製剤。
請求項12
請求項13
製剤中のタンパク質濃度が約1mg/mLから約250mg/mLである、請求項1から12のいずれか一項に記載の製剤。
請求項14
請求項15
製剤が約4.5から約7.0のpHを有する、請求項3から14のいずれか一項に記載の製剤。
請求項16
タンパク質の酸化を防ぐ化合物の量を液体製剤に加えることを含む、液体製剤の製造方法であって、化合物が、5−ヒドロキシ−トリプトファン、5−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシインドール、及びセロトニンからなる群より選択される、方法。
請求項17
タンパク質の酸化を防ぐ化合物の量を液体製剤に加えることを含む、液体製剤中のタンパク質の酸化を防止する方法であって、化合物が、5−ヒドロキシ−トリプトファン、5−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシインドール、及びセロトニンからなる群より選択される、方法。
請求項18
製剤が、対象に対する投与のために適切な薬学的製剤である、請求項16又は17に記載の方法。
請求項19
製剤が水性である、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
請求項20
製剤中の化合物が約0.3mMから約5mMである、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
請求項21
製剤中の化合物が約1mMである、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
請求項22
化合物が、タンパク質中のトリプトファン及び/又はメチオニンの酸化を防止する、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
請求項23
化合物が、活性酸素種によるタンパク質の酸化を防止する、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法。
請求項24
活性酸素種が、一重項酸素、超酸化物(O2−)、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、及びアルキル過酸化物からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
請求項25
タンパク質が酸化の影響を受けやすい、請求項16から24のいずれか一項に記載の方法。
請求項26
タンパク質中のトリプトファンが酸化の影響を受けやすい、請求項16から25のいずれか一項に記載の方法。
請求項27
タンパク質が抗体である、請求項16から26のいずれか一項に記載の方法。
請求項28
抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、又は抗体断片である、請求項27に記載の方法。
請求項29
製剤中のタンパク質濃度が約1mg/mLから約250mg/mLである、請求項16から28のいずれか一項に記載の方法。
請求項30
製剤が、安定剤、バッファー、界面活性剤、及び等張化剤からなる群より選択される一又は複数の添加剤を更に含む、請求項16から29のいずれか一項に記載の方法。
請求項31
製剤が約4.5から約7.0のpHを有する、請求項16から30のいずれか一項に記載の方法。
請求項32
タンパク質組成物中のタンパク質の酸化を防止する化合物のスクリーニング方法であって、L−トリプトファンに比べて酸化電位及び光感受性が低い化合物を選択すること、並びに選択された化合物の、タンパク質の酸化を防止する効果を試験することを含む方法。
請求項33
光感受性が、光暴露時に化合物によって生成されるH2O2の量に基づいて測定される、請求項32に記載の方法。
請求項34
L−トリプトファンによって生成されるH2O2の量の約20%未満を生成する化合物が選択される、請求項33に記載の方法。
請求項35
酸化電位がサイクリックボルタンメトリーによって測定される、請求項32に記載の方法。
請求項36
技術分野
0001
関連出願
本出願は、どちらも参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる、2013年3月13日出願の米国仮特許出願第61/780845号、及び2013年11月27日出願の同第61/909813号の利益を請求する。
0002
本発明は、タンパク質を含み、更には前記タンパク質の酸化を防止する化合物を含む液体製剤、そのような液体製剤の製造及び使用方法、並びにタンパク質組成中のタンパク質の酸化を防止する化合物のスクリーニング方法に関するものである。
背景技術
0003
アミノ酸残基の酸化的分解反応は、プロテイン薬剤において一般的に観察される現象である。複数のアミノ酸残基、特にメチオニン(Met)、システイン(Cys)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、及びチロシン(Tyr)は、酸化の影響を受けやすい(Li et al., Biotechnology and Bioengineering 48:490-500 (1995))。酸化は、典型的には、様々な処理工程の間に、タンパク質が過酸化水素、光、金属イオン、又はこれらの組合せに暴露されるとき観察される(Li et al., Biotechnology and Bioengineering 48:490-500 (1995))。特に、光(Wei, et al., Analytical Chemistry 79(7):2797-2805 (2007))、AAPH又はフェントン試薬(Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009))に暴露されたタンパク質は、トリプトファン残基に酸化レベルの上昇を示しており、過酸化水素に暴露されたタンパク質は典型的にメチオニンの酸化のみを示している(Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009))。光暴露は、一重項酸素、過酸化水素及び超酸化物を含む活性酸素種(ROS)の形成によりタンパク質の酸化を引き起こすことができ(Li et al., Biotechnology and Bioengineering 48:490-500 (1995); Wei, et al., Analytical Chemistry 79(7):2797-2805 (2007); Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009); Frokjaer et al., Nat Rev Drug Discov 4(4):298-306 (2005))、タンパク質の酸化は、典型的には、フェントン媒介性反応においてヒドロキシルラジカルを介して(Prousek et al., Pure and Applied Chemistry 79(12):2325-2338 (2007))、及びAAPH媒介性反応においてアルコキシル過酸化物を介して(Werber et al., J Pharm Sci 100(8):3307-15 (2011))起こる。トリプトファンの酸化は、ヒドロキシトリプトファン、キヌレニン、及びN−ホルミルキヌレニンを含む無数の酸化生成物を生み、安全性及び有効性に影響を与える可能性を有する(Li et al., Biotechnology and Bioengineering 48:490-500 (1995); Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009); Frokjaer et al., Nat Rev Drug Discov 4(4):298-306 (2005))。生物学的機能の欠失と相関するモノクローナル抗体の重鎖相補性決定領域(CDR)における特定のトリプトファン残基の酸化が報告されている(Wei, et al., Analytical Chemistry 79(7):2797-2805 (2007))。ヒスチジン配位金属イオンによって媒介されたTrp酸化が、Fab分子について最近報告されている(Lam et al., Pharm Res 28(10):2543-55 (2011))。Fab製剤中におけるポリソルベート20の自動酸化は、様々な過酸化物を生成するもので、これも同じレポートにおいて言及されている。また、タンパク質中のMet残基は内的抗酸化剤として作用し(Levine et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 93(26):15036-15040 (1996))、過酸化物によって容易に酸化することが示されているため、自動酸化により誘導されるこのような過酸化物の生成は、製剤の長期貯蔵中にタンパク質中のメチオニンの酸化を引き起こしうる。アミノ酸残基の酸化は、タンパク質の生物活性に影響を与える可能性を有する。これは、モノクローナル抗体(mAb)に特に当てはまる。IgG1 mAb中のMet254及びMet430におけるメチオニンの酸化は、トランスジェニックマウスの血清半減期に影響する可能性があり(Wang et al., 分子 Immunology 48(6-7):860-866 (2011))、また、ヒトIgG1のFcRn及びFc−γ受容体への結合に影響を与える(Bertolotti-Ciarlet et al., Molecular Immunology 46(8-9)1878-82 (2009))。
0004
タンパク質の安定性は、特に液体状態において、製剤の製造及び貯蔵の間に評価される必要がある。薬学的製剤の開発は、時として活性成分の酸化を防ぐための抗酸化剤の添加を含む。製剤に対するL−メチオニンの添加は、タンパク質及びペプチド中においてメチオニン残基の酸化を減少させた(Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009); Lam et al., Journal of Pharmaceutical Sciences 86(11):1250-1255 (1997))。同様に、L−トリプトファンの添加は、トリプトファン残基の酸化を減少させることを示した(Ji et al., J Pharm Sci 98(12):4485-500 (2009); Lam et al., Pharm Res 28(10):2543-55 (2011))。しかしながら、L−Trpは、UV領域(260〜290nm)において高い吸光度を有し、したがって光酸化の間の主要な標的である(Creed, D., Photochemistry and Photobiology 39(4):537-562 (1984))。Trpは、酸素依存性のチロシン(Babu et al., Indian J Biochem Biophys 29(3):296-8 (1992))及び他のアミノ酸(Bent et al., Journal of the American Chemical Society 97(10):2612-2619 (1975))の光酸化を亢進させる内因性の光増感剤と仮定された。L−Trpは光に暴露されると過酸化水素を生成できること、及びL−TrpはUV光下においてスーパーオキシドアニオンを介して過酸化水素を生成することが実証された(McCormick et al., Science 191(4226):468-9 (1976); Wentworth et al., Science 293(5536):1806-11 (2001); McCormick et al., Journal of the American Chemical Society 100:312-313 (1978))。加えて、トリプトファンは、光への暴露により一重項酸素を生じさせることが知られている(Davies, M.J., Biochem Biophys Res Commun 305(3):761-70 (2003))。ポリソルベート20の自動酸化により誘導されるタンパク質の酸化と同様に、正常な取扱い条件下において、タンパク質製剤中における他の添加剤(例えばL−Trp)によるROS発生時にタンパク質の酸化が起こることがありうる。
0005
最近の研究から、タンパク質を安定化させるための標準の添加剤、例えばL−Trp及びポリソルベートの、タンパク質組成物への添加により、ROSによって誘導されるタンパク質の酸化といった予測不能の望ましくない結果を生じる可能性があることが明らかになっている。したがって、タンパク質組成物中において使用される代替的添加剤の同定、及びそのような組成物の開発に対する需要が依然として存在する。
0006
本明細書においては、タンパク質と、製剤中におけるタンパク質の酸化を防止する化合物とを含む製剤、前記製剤の作製方法、及びタンパク質組成物中におけるタンパク質の酸化を防止する化合物のスクリーニング方法が提供される。
0007
本明細書において、一態様では、タンパク質と、液体製剤中におけるタンパク質の酸化を防止する化合物とを含む液体製剤であって、化合物は、5−ヒドロキシ−トリプトファン、5−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシ インドール、及びセロトニンからなる群より選択される、製剤が提供される。
0009
いくつかの実施態様では、製剤中のタンパク質の酸化を防止する化合物は、製剤中において、約0.3mM〜約10mM、又は多くとも化合物が可溶である最大濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中のタンパク質の酸化を防止する化合物は、約0.3mM〜約9mM、約0.3mM〜約8mM、約0.3mM〜約7mM、約0.3mM〜約6mM、約0.3mM〜約5mM、約0.3mM〜約4mM、約0.3mM〜約3mM、約0.3mM〜約2mM、約0.5mM〜約2mM、約0.6mM〜約1.5mM、又は約0.8mM〜約1.25mMである。いくつかの実施態様では、製剤中のタンパク質の酸化を防止する化合物は、約0.3mM〜約1mMである。いくつかの実施態様では、製剤中のタンパク質の酸化を防止する化合物は約0.3mM〜約5mMである。いくつかの実施態様では、製剤中のタンパク質の酸化を防止する化合物は約1mMである。いくつかの実施態様では、化合物は、タンパク質中のトリプトファン及び/又はメチオニンの酸化を防止する。いくつかの実施態様では、化合物は、活性酸素種によるタンパク質の酸化を防止する。いくつかの実施態様では、活性酸素種は、一重項酸素、超酸化物(O2−)、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、及びアルキル過酸化物からなる群より選択される。
0010
いくつかの実施態様では、製剤中のタンパク質は酸化の影響を受けやすい。いくつかの実施態様では、タンパク質中のトリプトファンは、酸化の影響を受けやすい。いくつかの実施態様では、タンパク質は、抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、又は抗体断片)である。いくつかの実施態様では、製剤中のタンパク質濃度は、約1mg/mL〜約250mg/mLである。
0011
いくつかの実施態様では、製剤は更に、安定剤、バッファー、界面活性剤、及び等張化剤からなる群より選択される一又は複数の添加剤を含む。いくつかの実施態様では、製剤のpHは約4.5〜約7.0である。
0012
本明細書において、別の態様では、タンパク質の酸化を防止する量の化合物を液体製剤に添加することを含む、液体製剤の作製方法であって、化合物が、5−ヒドロキシ−トリプトファン、5−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシ インドール、及びセロトニンからなる群より選択される、方法が提供される。本明細書において、別の態様では、タンパク質の酸化を防止する量の化合物を液体製剤に付加することを含む、液体製剤中のタンパク質の酸化を防止する方法であって、化合物が、5−ヒドロキシ−トリプトファン、5−ヒドロキシ インドール、7−ヒドロキシ インドール、及びセロトニンからなる群より選択される、方法が提供される。
0013
本明細書に記載される方法のいくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与するために適した薬学的製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は水性である。本明細書に記載される方法のいくつかの実施態様では、製剤中の化合物は、製剤中において、約0.3mM〜約10mM、又は多くとも化合物が可溶である最大濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の化合物は、約0.3mM〜約9mM、約0.3mM〜約8mM、約0.3mM〜約7mM、約0.3mM〜約6mM、約0.3mM〜約5mM、約0.3mM〜約4mM、約0.3mM〜約3mM、約0.3mM〜約2mM、約0.5mM〜約2mM、約0.6mM〜約1.5mM、又は約0.8mM〜約1.25mMの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の化合物は、約0.3mM〜約1mMである。いくつかの実施態様では、製剤中の化合物は、約0.3mM〜約5mMである。いくつかの実施態様では、製剤中の化合物は約1mM〜である。
0014
いくつかの実施態様では、化合物は、タンパク質中のトリプトファン、及び/又はメチオニンの酸化を防止する。いくつかの実施態様では、化合物は、活性酸素種によるタンパク質の酸化を防止する。いくつかの実施態様では、活性酸素種は、一重項酸素、超酸化物(O2−)、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、及びアルキル過酸化物からなる群より選択される。
0015
いくつかの実施態様では、タンパク質は酸化の影響を受けやすい。いくつかの実施態様では、タンパク質中のトリプトファンは、酸化の影響を受けやすい。いくつかの実施態様では、タンパク質は、抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、又は抗体断片)である。いくつかの実施態様では、製剤中のタンパク質濃度は約1mg/mL〜約250mg/mLである。
0016
いくつかの実施態様では、安定剤、バッファー、界面活性剤、及び等張化剤からなる群より選択される一又は複数の添加剤が、製剤中に添加される。いくつかの実施態様では、製剤のpHは約4.5〜約7.0である。
0017
本明細書において、別の態様では、タンパク質組成物中におけるタンパク質の酸化を防止する化合物のスクリーニング方法であって、L−トリプトファンより酸化電位及び光感受性が共に低い化合物を選択すること、並びに選択された化合物の、タンパク質の酸化を防止する効果を試験することを含む方法が提供される。
0018
本方法のいくつかの実施態様では、光感受性は、光暴露時に化合物によって生成されるH2O2の量に基づいて測定される。いくつかの実施態様では、L−トリプトファンによって生成されるH2O2の量の約20%未満を生成する化合物が選択される。いくつかの実施態様では、酸化電位は、サイクリックボルタンメトリーによって測定される。いくつかの実施態様では、選択された化合物は、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH)、光、及び/又はフェントン試薬によって生成された活性酸素種によるタンパク質の酸化を防止する効果について試験される。
0019
本明細書に記載される種々の実施態様の一つ、一部、又は全部を組み合わせて本発明の他の実施態様を形成することができることを理解されたい。本発明の上記態様及び他の態様は、当業者には明らかであろう。本発明の上記実施態様及び他の実施態様について、以下の「発明を実施するための形態」で更に記載する。
図面の簡単な説明
0020
250W/m2での光暴露の八時間後における、A)mAb1中のFab、及びB)mAb1中のFcの酸化を示す一連のグラフである。mAb1は、20mMのヒスチジンアセテート、250mMのトレハロース、0.02%のポリソルベート20中に5mg/mLで存在した。mAb1参照試料を除くすべてのバイアルは光照射装置内に配置された。ホイルコントロールのバイアルは、光照射装置内に配置する前にホイルで覆った。各試料について、三つの別個の実験バイアルの平均値を求めた。但し、「10mM Met、1mM Trp」(*)は、二つの実験バイアルの平均であり、mAb1参照試料は、HPLCに三回の独立した注入を行った一つの実験バイアルであった。エラーバーは、一つの標準偏差を表している。
L−Trpによる用量依存H2O2生成を示すグラフである。ひし形は、L−Trpのみを;三角形はL−Trp+SODを;円及び四角形はL−Trp+NaN3+SODを示す。すべての試験は20mMのL−His HCl(pH5.5)中で行った。
A)1、3及び7日間にわたって周囲光条件に暴露されたときの、3.2mMのL−Trpを含有する50mg/mLのmAb1製剤中における過酸化水素(H2O2)の生成、及びB)周囲光条件への暴露の10日後の、3.2mMのL−Trpを含有するmAb1製剤中におけるパーセント(%)Fab酸性化を示す一連のグラフである。
250W/m2で4時間にわたる光ストレス下における、トリプトファン誘導体及びインドール誘導体による過酸化水素生成を示す一連のグラフである。A)20mMのHisAc(pH5.5)製剤中における過酸化水素(μM)生成のためのリプトファン誘導体(1mM)のスクリーニング。B)20mMのHisAc(pH5.5)製剤中における過酸化水素(μM)生成のためのインドール誘導体(1mM)のスクリーニング。
光暴露時の、様々なTrp誘導体によるH2O2生成に対するNaN3の影響を示すグラフである。データは、L−Trpによって生成された過酸化物に対する比率として示されている。
酸化電位と光誘導過酸化物形成との相関を示すグラフである。四角形の枠内の領域は、候補抗酸化剤化合物を示している。
AAPHインキュベーション後の、A)mAb1中のFab、及びB)mAb1中のFcの酸化を示す一連のグラフである。mAb1参照試料及びAAPHなしの場合を除き、すべての試料はAAPHと共にインキュベートした。mAb1参照試料を除くすべての試料は、40℃でインキュベートした。示されたデータは、三つの実験試料の平均±1SDである。但し、mAb1参照試料は六回のHPLC注入の平均であり、エラーバーを有していない。
250W/m2での光暴露の十六時間後の、A)mAb1中のFab、及びB)mAb1中のFcの酸化を示す一連のグラフである。mAb1参照試料を除くすべてのバイアルは光照射装置内に配置された。ホイルコントロールのバイアルは、光照射装置内に配置する前にホイルで覆った。各試料について、三つの別個の実験バイアルの平均値を求めた。但し、L−トリプタオファンアミド(*)は、二つの実験バイアルの平均であり、mAb1参照試料は、HPLCに三回の独立した注入を行った一つのバイアルであった。エラーバーは、一つの標準偏差を表している。
10ppmのH2O2及び0.2mMのFe(III)を用いたフェントン反応後の、A)3mg/mLのmAb1中のFabの、及びB)3mg/mLのmAb1中のFcの酸化を示す一連のグラフである。反応は、40oCで3時間インキュベートし、100mMのL−Metでクエンチし、パパイン消化後にRP−HPLCを用いて分析した。すべての試料は三つの別個のバイアルの平均であり、mAb1コントロール(参照試料)は、HPLCに五回の独立した注入を行った一つのバイアルであった。エラーバーは、一つの標準偏差を表している。
A)L−Trp及びB)5−ヒドロキシ−L−トリプトファン励起の、1O2の生成及びクエンチにおける推定機構を示す一連の略図である。k25Cは、1O2のクエンチの二次速度定数を表し(Dad et al., J Photochem Photobiol B, 78(3):245-51 (2005))、Eoxは分子の酸化電位対Ag/AgClである。
0021
I.定義
発明を詳細に記載する前に、本発明が、特定の組成物又は生体系に限定されるものではなく、言うまでもなく様々に変形可能であることを理解されたい。また、本明細書で用いる用語は、特定の実施態様を説明するためのものであり、限定することを目的としていないことを理解されたい。
0024
「安定な」製剤は、それに含有されるタンパク質が、貯蔵時にその物理的安定性及び/又は化学安定性及び/又は生物活性を実質的に保持するものである。好ましくは、製剤は、貯蔵時に、その物理的及び化学安定性、並びにその生物活性を実質的に保持する。貯蔵期間は、通常、製剤の目的の有効期間に基づいて選択される。タンパク質の安定性を測定するための種々の分析技術が当技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Pubs. (1991)及びJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993)に概説がある。安定性は、選択された期間にわたり、選択された量の光暴露及び/又は温度で測定される。安定性は、様々な方法で定性的に及び/又は定量的に評価することができ、そのような方法には、凝集体形成の評価(例えば分子ふるいクロマトグラフィーを用いて、濁度を測定することにより、及び/又は目視検査により);ROS形成の評価(例えば光ストレスアッセイ又は2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH)ストレスアッセイを用いることにより);タンパク質の特定のアミノ酸残基の酸化(例えばモノクローナル抗体のTrp残基及び/又はMet残基);陽イオン交換クロマトグラフィー、イメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)又はキャピラリーゾーン電気泳動を用いて電荷不均一性を評価することにより;アミノ末端又はカルボキシ末端配列分析;質量分光分析;還元されたインタクトな抗体を比較するSDS−PAGE分析;ペプチドマップ(例えばトリプシン又はLYS−C)分析;生物活性又はタンパク質の標的結合機能(例えば、抗体の抗原結合機能)を評価すること;などが含まれる。不安定性は、凝集、アミド分解(例えばAsnアミド分解)、酸化(例えばMet酸化及び/又はTrp酸化)、異性化(例えばAsp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えばヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン、N末端延長、C末端処理、グリコシル化差異などのうちのいずれか一つ又は複数を伴う。
0025
タンパク質は、色及び/又は透明性の目視検査時に又はUV光散乱により若しくは分子ふるいクロマトグラフィーにより測定した時に、凝集、沈殿及び/又は変性をまったく又はほとんど示さないのであれば、薬学的製剤中において「その物理的安定性を保持している」。
0026
タンパク質は、タンパク質が下記に定義するその生物活性を依然として保持していると考えられるような、所与の時点の化学安定性を有する場合、薬学的製剤中において「その化学安定性を保持している」。化学安定性は、タンパク質の化学変性した形態を検出して定量化することにより、評価することができる。化学変成は、例えば、トリプシンペプチドマッピング、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び液体クロマトグラフィー−質量分析(LC/MS)を用いて評価可能なタンパク質の酸化を伴う。他の種類の化学変成には、例えば、イオン交換クロマトグラフィー又はicIEFにより評価可能なタンパク質の荷電変化が含まれる。
0027
タンパク質は、所与の時点のタンパク質の生物活性が、例えばモノクローナル抗体の抗原結合アッセイにおいて決定したとき、薬学的製剤が調製された時点で呈示された生物活性の約10%以内(アッセイの誤差内)であれば、薬学的製剤中において「その生物活性を保持している」。
0028
本明細書で使用されるタンパク質の「生物活性」は、タンパク質のその標的に対する結合能、例えばモノクローナル抗体の抗原に対する結合能を指す。「生物活性」は、インビトロ又はインビボで測定可能な生物学的応答を更に含むことができる。このような活性は、拮抗性でも作動性でもよい。
0029
「酸化しやすい」タンパク質は、限定されないが、メチオニン(Met)、システイン(Cys)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、及びチロシン(Tyr)といった、酸化しやすいことが判明している一又は複数の残基を含むものである。例えば、モノクローナル抗体のFab部分中のトリプトファンアミノ酸又はモノクローナル抗体のFc部分中のメチオニンアミノ酸は酸化しやすい。
0030
「等張性」とは、対象の製剤がヒトの血液と実質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張性製剤は、通常、約250〜350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧又は氷凍結型浸透圧計を用いて測定することができる。
0031
本明細書で使用される、「バッファー」は、その酸塩基コンジュゲート成分の作用によりpHの変化に抵抗する緩衝液を指す。本発明のバッファーのpHは、好ましくは約4.5〜約8.0の範囲内である。例えば、ヒスチジンアセテートは、この範囲内でpHを制御するバッファーの一例である。
0032
「防腐剤」は、製剤中の細菌作用を実質的に低減し、したがって例えば多用途製剤の生産を容易にするために、任意選択的に製剤に含めることができる化合物である。可能な防腐剤の例には、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドの混合物)、及び塩化ベンゼトニウムが含まれる。他の種類の防腐剤には、フェノール、ブチル、及びベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾールが含まれる。一実施態様では、本明細書の防腐剤はベンジルアルコールである。
0033
本明細書において使用される「界面活性剤」は、表面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を指す。本明細書における界面活性剤の例には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及び、ポリソルベート80);ポロキサマー(例えばポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;ナトリウムオクチルグルコシド;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−、又はステアリル−スルホベタイン;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−又はステアリル−サルコシン;リノレイル−、ミリスチル−、又はセチル−ベタイン;ラウロアミドプロピル−、コカミドプロピル−、リノールアミドプロピル−、ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、又はイソステアラミドプロピル−ベタイン(例えばラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、又はイソステアラミドプロピル−ジメチルアミン;メチルココイルナトリウム(sodium methyl cocoyl)−、又はメチルオレイル−タウレート二ナトリウム塩;及びMONAQUATTMシリーズ(Mona Industries、Inc.、ニュージャージー州パターソン);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、並びにエチレン及びプロピレングリコールのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68など);などが含まれる。一実施態様では、本明細書における界面活性剤はポリソルベート20である。
0034
本明細書で使用される「薬学的に許容される」添加剤又は担体には、薬学的に許容される担体、安定剤、バッファー、酸、塩基、糖類、防腐剤、界面活性剤、等張化剤などが含まれ、これらは当技術分野において周知である(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 22ndEd., Pharmaceutical Press, 2012)。薬学的に許容される添加剤の例はバッファーを含み、それは例えば、リン酸塩(phosphate)、クエン酸塩(citrate)、酢酸塩(acetate)、及び他の有機酸;アスコルビン酸、L−トリプトファン及びメチオニンを含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;金属錯体、例えばZn−タンパク質複合体;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート、ポロキサマー、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTMである。「薬学的に許容される」添加剤又は担体は、使用される活性成分の有効用量を提供するために対象に合理的に投与することができ、且つ使用される投与量及び濃度でそれに暴露される対象にとって非毒性のものである。
0035
製剤化されるタンパク質は、好ましくは実質的に純粋で望ましくは実質的に均一である(例えば、夾雑タンパク質などを含まない)。「実質的に純粋な」タンパク質とは、組成物の総重量に基づいて、少なくとも約90重量%のタンパク質(例えば、モノクローナル抗体)、好ましくは少なくとも約95重量%のタンパク質を含む組成を意味する。「実質的に均一な」タンパク質とは、組成物の総重量に基づいて、少なくとも約99重量%のタンパク質(例えば、モノクローナル抗体)を含む組成を意味する。
0036
用語「タンパク質」「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、本明細書においては、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために互換的に使用される。ポリマーは、直鎖状でも分枝状でもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸が割り込んでいてもよい。この用語はまた、自然に又は介入により改変されているアミノ酸ポリマーを包含しており;その例として、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは改変、例えば、標識化成分とのコンジュゲーションが挙げられる。この定義には、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の一又は複数の類似体を含むタンパク質、並びに、当技術分野において既知の他の修飾も含まれる。本明細書の定義に包含されるタンパク質の例には、例えばレニンといった哺乳動物のタンパク質;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポ蛋白;α1アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体ホルモン;グルカゴン;レプチン;因子VIIIC、因子IX、組織因子、及びヴォンヴィレブランド因子といった凝固因子;プロテインCのような抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼ又はヒトの尿といったプラスミノーゲン活性因子又は組織型プラスミノーゲン活性因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子−α及び−β;デスレセプター5及びCD120といった腫瘍壊死因子受容体;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL);B細胞成熟抗原(BCMA);Bリンパ球刺激因子(BLyS);増殖誘導リガンド(APRIL);エンケファリナーゼ;RANTES(正常なT細胞の発現及び分泌活性化制御);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;レラキシンA鎖;レラキシンB鎖;プロレラキシン(prorelaxin);マウスゴナドトロピン関連ペプチド;βラクタマーゼといった微生物タンパク;デオキシリボヌクレアーゼ;IgE;CTLA−4といった細胞傷害性T−リンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF);血管内皮増殖因子ファミリータンパク質(例えば、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、及びP1GF);血小板由来増殖因子(PDGF)ファミリータンパク質(例えば、PDGF−A、PDGF−B、PDGF−C、PDGF−D、及びそれらのダイマー);aFGF、bFGF、FGF4、及びFGF9といった繊維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリー;上皮増殖因子(EGF);VEGF受容体(例えばVEGFR1、VEGFR2、及びVEGFR3)、上皮増殖因子(EGF)受容体(例えば、ErbB1、ErbB2、ErbB3、及びErbB4 受容体)、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体(例えば、PDGFR−α及びPDGFR−β)、及び繊維芽細胞増殖因子受容体といった、増殖因子又はホルモンの受容体;TIEリガンド(アンジオポエチン、ANGPT1、ANGPT2);TIE1及びTIE2といったアンジオポエチン受容体;プロテインA又はD;リウマトイド因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、又は−6(NT−3、NT−4、NT−5、又はNT−6)といったニューロトロフィン因子、又はNGF−bなどの神経成長因子;TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、又はTGF−β5を含む、TGF−α及びTGF−βといったトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子−I及び−II(IGF−I及びIGF−II);脱(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP);CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;抗毒素;骨形成タンパク質(BMP);CXCL12及びCXCR4などのケモカイン;インターフェロン−α、−β、及び−γといったインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えばM−CSF、GM−CSF、及びG−CSF;インターロイキン(IL)のようなサイトカイン、例えば、IL−1〜IL−10;ミッドカイン;超酸化物ジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;分解促進因子;例えば、AIDSエンベロープの一部分といった、ウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4及びVCAMといったインテグリン;エフリン;Bv8;デルタ様リガンド4(DLL4);Del−1;BMP9;BMP10;フォリスタチン;肝細胞増殖因子(HGF)/散乱係数(SF);Alk1;Robo4;ESM1;パールカン;EGF様ドメイン、マルチプル(multiple)7(EGFL7);CTGF及びそのファミリーのメンバー;トロンボスポンジン1及びトロンボスポンジン2などのトロンボスポンジン;コラーゲンIV及びコラーゲンXVIIIなどのコラーゲン;NRP1及びNRP2などのニューロピリン;プレイオトロフィン(PTN);プログラニュリン;プロリフェリン;Notch1及びNotch4などのNotchタンパク質;Sema3A、Sema3C、及びSema3Fなどのセマフォリン;CA125(卵巣がん抗原)のような腫瘍関連抗原;イムノアドヘシン;並びに上記タンパク質のいずれかの断片及び/又は変異体、更には、抗体断片を含む、例えば上記タンパク質のいずれかを含む一又は複数のタンパク質に結合する抗体が含まれる。
0037
本明細書における用語「抗体」とは、本明細書で最も広い意味で用いられ、具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、所望の生物活性を示す限り、抗体断片を含む。
0038
「単離された」タンパク質(例えば、単離された抗体)は、その自然環境の成分から同定及び分離及び/又は回収されたものである。その自然環境の夾雑物成分は、タンパク質の研究、診断、又は治療の用途に干渉しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様の溶質を含みうる。単離されたタンパク質には、タンパク質の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないであろうことから、組み換え細胞内のin situのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常、単離されたタンパク質は、少なくとも一つの精製工程により調製される。
0039
「天然抗体」は、通常、二つの同一の軽(L)鎖及び二つの同一の重(H)鎖からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有している。各重鎖は、複数の定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられる。
0040
用語「定常ドメイン」は、免疫グロブリンの他の部分、即ち抗原結合部位を含む可変ドメインより多くの保存アミノ酸配列を有する免疫グロブリンの部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2及びCH3ドメイン(まとめてCHという)、及び軽鎖のCHL(又はCL)ドメインを含む。
0041
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のN末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインを「VH」と称する。軽鎖の可変ドメインは「VL」と称する。これらドメインは、通常、抗体の最も変わり易い部分であり、抗原結合部位を含んでいる。
0042
「可変」なる用語は、可変ドメインのある部分が、抗体間で配列が広範囲に相違しているという事実を指し、それぞれの特定の抗体のその特定の抗原への結合及び特異性に使用される。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメインにわたって均一に分布しているのではない。それは、軽鎖及び重鎖可変ドメインの双方において、超可変領域(HVR)と称される三つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ四つのFR領域を含み、大部分がβシート立体配置をとって三つのHVRにより繋がっており、これはβシート構造と繋がり、場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖のHVRは、FR領域により互いに極めて近接した状態で保持され、他の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原との抗体の結合には直接関わっていないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与など、多様なエフェクター機能を呈する。
0043
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる二つの明確に区別される型の一つに割り当てることができる。
0044
本明細書において使用されるIgGの「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、これらの定常領域の化学特性及び抗原特性により定義される免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は異なるクラスに割り当てられる。免疫グロブリンには五つの主要なクラス、即ちIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IGA1、及びIgA2に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位は周知であり、その概説は、例えばCellular and Mol. Immunology, 4th ed., W.B. Saunders, Co., 2000に記載されている。抗体は、抗体の、一又は複数の他のタンパク質又はペプチドとの共有結合又は非共有結合により形成される大きな融合分子の一部であってもよい。
0045
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「抗体全体」は、本明細書では互換可能に使用されて、その実質的にインタクトな形態の抗体を指し、後述するような抗体断片を指すのではない。この用語は、特にFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
0046
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies);直鎖状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
0047
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる二つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。パパイン処置は、2つの抗原結合部位を有し、なお抗原を架橋することが可能なF(ab’)2断片を産む。「Fab」断片は、重鎖及び軽鎖可変ドメインを含み、更に軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されている点でFab断片とは異なる。Fab’−SHは、本明細書において、Fab’の一般名称であり、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を持つ。F(ab’)2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学結合も知られている。抗体断片の他の化学結合も知られている。
0048
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施態様において、二本鎖「Fv」種は、一本の重鎖と一本の軽鎖の可変ドメインが、堅固な非共有結合をなした二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、柔軟なペプチドリンカーによって一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインが共有結合性に連結することができ、よって軽鎖及び重鎖は、二本鎖Fv種と類似の「二量体」構造に結合することができる。この配置において、各可変ドメインの三つのHVRは相互作用し、VH−VL二量体の表面に抗原結合部位を規定する。集合的に、六つのHVRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な三つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低下するものの、抗原を認識して結合する能力を有している。
0049
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドはVHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成することを可能にする。scFvの総説については、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315, 1994を参照のこと。
0050
用語「ダイアボディ」は、二つの抗原結合部位を持つ抗体断片を指し、その断片は、同一ポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成ができないリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは二価でも二特異性でもよい。ダイアボディは、例えば、EP404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); 及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
0051
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、例えば、少量で存在しうる可能な変異体、例えば天然発生変異体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、個別抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。特定の実施態様では、このようなモノクローナル抗体は、通常、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、この場合、標的に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスにより得られた。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールといった複数のクローンからの特有のクローンの選択とすることができる。重要なのは、選択された標的結合配列を更に変化させることにより、例えば標的に対する親和性の向上、標的結合配列のヒト化、細胞培養物中におけるその生成の向上、インビボでの免疫原性の低減、多重特異性抗体の生成などが可能になること、並びに、変化させた標的結合配列を含む抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体の調製物は、他の免疫グロブリンで通常汚染されていないという点で有利である。
0052
修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で作製しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明にしたがって使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495-97 (1975); Hongo et al., Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995), Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988); Hammerling et al., in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号参照)、ファージ−ディスプレイ技術(例えば、Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004); and Lee et al., J. Immunol. Methods284(1-2): 119-132 (2004)参照)、並びに、動物において、ヒト免疫グロブリン座位の一部若しくは全部又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有するヒト又はヒト様抗体を生成する技術(例えば、国際公開第1998/24893号;同第1996/34096号;同第1996/33735号;同第1991/10741号;Jakobovits et al., Nature 362: 255-258 (1993); Bruggemann et al., Year in Immunol. 7:33 (1993);米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;及び同第5661016;Marks et al., Bio/Technology 10: 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994); Morrison, Nature 368: 812-813 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnol. 14: 845-851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnol. 14: 826 (1996); and Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)参照)を含む様々な技術により作製することができる。
0053
本明細書においては、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分は特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一若しくは相同であるが、鎖(複数可)の残りの部分は別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一若しくは相同である、「キメラ」抗体、並びに、所望の生物学的活性を呈するものである限りそのような抗体の断片を、特に含む(例えば、米国特許第4816567号;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。キメラ抗体は、抗体の抗原結合領域が、例えば、対象とする抗原を含むマカクザルを免疫化することにより生成される抗体に由来する、PRIMATTZED(登録商標)抗体を含む。
0054
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのFRの残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体はレシピエント抗体又はドナー抗体において見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能を更に改良するためになされうる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインのすべてを実質的に含み、超可変ループのすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRのすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである。また、ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン、通常はヒト免疫グロブリン、の定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。更なる詳細については、例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); and Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992). See also, e.g., Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);及び米国特許第6982321号及び同第7087409号を参照されたい。
0055
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するもの、及び/又は本明細書に記載の、ヒト抗体を製造するための任意の技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で既知の様々な技術を用いて生産することができる。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。ヒトモノクローナル抗体の調製にやはり利用可能であるのは、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)に記載の方法である。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を生成するように修飾されているが、内在性の座位が無効にされたトランスジェニック動物、例えば免疫化キセノマウスに、抗原を投与することにより調製することができる(例えば、XENOMOUSETM技術について米国特許第6075181号及び同第6150584号を参照)。更には、例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関してLi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)を参照されたい。
0056
本明細書で使用される用語「超可変領域」、「HVR」又は「HV」は、配列が超可変である、及び/又は構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、VHに三つ(H1、H2、H3)、及びVLに三つ(L1、L2、L3)の計六つのHVRを含む。天然抗体において、H3及びL3は六つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3は抗体に高度な特異性を付与するのに独特の役割を果たすと考えられている。例として、Xu et al., Immunity 13:37-45 (2000); Johnson and Wu, in Methodsin Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, N.J., 2003)を参照のこと。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は、軽鎖の非存在下で機能的で安定である。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993); Sheriff et al., Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照されたい。
0057
複数のHVRの描写が使用されており、本明細書に含まれる。Kabat相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。Chothiaは、代わりに、構造ループの位置を参照する(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の解析に基づく。これらの各HVRからの残基は以下に記される。
0058
0059
HVRは、以下のような「拡大HVR」を含むことができる:VLの24〜36又は24〜34(L1)、46〜56又は50〜56及び89〜97又は89〜96(L3)、並びにVHの26〜35(H1)、50〜65又は49〜65(H2)及び93〜102、94〜102、又は95〜102(H3)。可変ドメイン残基には、これら各々を定義するために、上掲のKabatらに従って番号を付した。
0060
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義しているHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
0061
用語「Kabatの可変ドメイン残基番号付け」又は「Kabatのアミノ酸位置の番号付け」及びそれらの変形は、上掲のKabat等の抗体の編集の軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインに対して用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の線状のアミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVRの短縮物又はそれらへの挿入物に相当する、より少ないアミノ酸又は付加的なアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatによれば残基52a)及び重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatによれば残基82a、82b及び82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、「標準的な」Kabat番号付けされた配列と、抗体の配列相同性がある領域において配列比較することによって、所与の抗体について決定されうる。
0062
Kabat番号付けシステムは一般に、可変ドメイン内の残基(およそ軽鎖の残基1〜107及び重鎖の残基1〜113)を指す場合に用いられる(例えば、Kabat et al., Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合には、一般に「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」を用いる(参照例:上掲のKabatらに記載のEUインデックス)。「KabatのEUインデックス」はヒトIgG1EU抗体の残基番号を指す。
0063
「線形抗体」という表現は、Zapata et al. (1995 Protein Eng, 8(10):1057-1062)に記載の抗体を指す。簡潔には、これら抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデム型Fdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。線形抗体は、二重特異性又は単一特異性とすることができる。
0064
本明細書において使用される用語「約」は、当業者が決定するそれぞれの値の許容される誤差範囲を指し、部分的に測定又は決定の方法、即ち測定システムの限界に依存する。例えば、「約」は、技術分野毎に、1以内の標準偏差又は1を上回る標準偏差を意味することができる。本明細書中の「およそ」の値又はパラメーターへの言及は、その値又はパラメーター自体に対する実施態様を含む(記載する)。例えば、「約X」との記載には「X」の記載が含まれる。
0065
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかに他を指さない限り複数系を含む。したがって、例えば、「一の化合物」への言及は、そのような化合物の二つ以上の組合せなども含むことがある。
0066
本明細書に記載される本発明の態様及び実施態様は、態様及び実施態様を「含む」、「からなる」及び/又は「から本質的になる」を含む。
0067
II.タンパク質製剤及び調製物
本発明は、ここでは、タンパク質と、液体製剤中のタンパク質の酸化を防止する化合物とを含む液体製剤であって、化合物が、5−ヒドロキシ−トリプトファン、5−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシ インドール、及びセロトニンからなる群より選択される、液体製剤に関する。いくつかの実施態様では、製剤中の化合物は、製剤中において、約0.3mM〜約10mM、又は多くとも化合物が可溶である最大濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の化合物は、約1mMである。いくつかの実施態様では、化合物は、トリプトファン、及びメチオニンからなる群より選択されるタンパク質中において一又は複数のアミノ酸の酸化を防止する。いくつかの実施態様では、化合物は、活性酸素種(ROS)によるタンパク質の酸化を防止する。更なる実施態様では、活性酸素種は、一重項酸素、超酸化物(O2−)、アルコキシルラジカル、ペルオキシルラジカル、過酸化水素(H2O2)、二水素三酸化物(H2O3)、ヒドロトリオキシラジカル(HO3・)、オゾン(O3)、ヒドロキシルラジカル、及びアルキルペルオキシドからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載のタンパク質は酸化の影響を受けやすい。いくつかの実施態様では、タンパク質中のメチオニン、システイン、ヒスチジン、トリプトファン、及び/又はチロシンは、酸化の影響を受けやすい。いくつかの実施態様では、タンパク質中のトリプトファン及び/又はメチオニンは、酸化の影響を受けやすい。例えば、モノクローナル抗体のFab部分中のトリプトファンアミノ酸及び/又はモノクローナル抗体のFc部分中のメチオニンアミノ酸は、酸化の影響を受けやすいことがある。いくつかの実施態様では、タンパク質は治療用タンパク質である。本明細書のいくつかの実施態様では、タンパク質は抗体である。いくつかの実施態様では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、又は抗体断片である。更なる実施態様では、化合物は、抗体のFab部分中の一又は複数のアミノ酸の酸化を防止する。更に別の実施態様では、化合物は、抗体のFc部分中の一又は複数のアミノ酸の酸化を防止する。いくつかの実施態様では、本明細書において提供される製剤は、対象に投与するために適した薬学的製剤である。本明細書で使用される、治療又は投与の目的のための「対象」又は「個体」は、哺乳動物に分類されるいずれかの動物を指し、それには、ヒト、家畜、動物園の動物、スポーツ用の動物、又は愛玩用の動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどが含まれる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。いくつかの実施態様では、製剤は水性である。本明細書のいくつかの実施態様では、製剤中のタンパク質(例えば、抗体)の濃度は、約1mg/mL〜約250mg/mLである。いくつかの実施態様では、製剤は更に、安定剤、バッファー、界面活性剤、及び等張化剤からなる群より選択される一又は複数の添加剤を含む。例えば、本発明の製剤は、モノクローナル抗体、タンパク質の酸化を防止する本明細書に提供される化合物(例えば、5−ヒドロキシインドール)と、製剤のpHを所望のレベルに維持するバッファーとを含むことができる。いくつかの実施態様では、本明細書に提供される製剤のpHは約4.5〜約7.0である。
0068
製剤中のタンパク質及び抗体は、当技術分野で既知の方法を使用して調製される。液体製剤中の抗体(例えば、完全長抗体、抗体断片及び多重特異性抗体)は、当技術分野で利用可能な技術を使用して調製される。その非限定的且つ例示的な方法について、以下のセクションにおいて更に詳細に記載する。本明細書における方法は、ペプチドに基づく阻害剤などの他のタンパク質を含む製剤を調製するために、当業者によって採用されうる。治療用タンパク質の製造のために、一般によく理解され、共通に用いられる技術及び手順について、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook et al., 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 2012); Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., 2003); Short Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., J. Wiley and Sons, 2002); Current Protocols in Protein Science, (Horswill et al., 2006); Antibodies, A Laboratory Manual (Harlow and Lane, eds., 1988); Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique and Specialized Applications (R.I. Freshney, 6thed., J. Wiley and Sons, 2010)を参照されたい。これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に包含される。
0069
A.抗体調製物
本明細書に提供される液体製剤中の抗体は、対象の抗原に対するものである。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害を有する哺乳動物に対する抗体の投与は、その哺乳動物に治療的利益を提供することができる。しかしながら、非ポリペプチド抗原に対する抗体も考慮される。
0070
抗原は、ポリペプチドである場合、膜貫通分子(例えば、受容体)又は増殖因子といったリガンドである。例示的抗原には、血管内皮増殖因子(VEGF)などの分子;CD20;ox−LDL;ox−ApoB100;レニン;ヒト増殖ホルモン及びウシ増殖ホルモンを含む増殖ホルモン;増殖ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1−抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体ホルモン;グルカゴン;因子VIIIC、因子IX、組織因子、及びヴォンヴィレブランド因子といった凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼ又はヒトの尿といったプラスミノーゲン活性因子又は組織型プラスミノーゲン活性因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;デスレセプター5及びCD120といった腫瘍壊死因子受容体;腫瘍壊死因子−α及び−β;エンケファリナーゼ;RANTES(正常なT細胞の発現及び分泌活性化制御);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;レラキシンA鎖;レラキシンB鎖;プロレラキシン(prorelaxin);マウスゴナドトロピン関連ペプチド;βラクタマーゼといった微生物タンパク;デオキシリボヌクレアーゼ;IgE;CTLA−4といった細胞傷害性T−リンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;ホルモン又は増殖因子の受容体;プロテインA又はD;リウマトイド因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、又は−6(NT−3、NT−4、NT−5、又はNT−6)といったニューロトロフィン因子、又はNGF−bなどの神経成長因子;血小板由来成長因子(PDGF);aFGF及びbFGFといった繊維芽細胞増殖因子;上皮細胞増殖因子(EGF);TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、又はTGF−β5を含む、TGF−α及びTGF−βといったトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子−I及び−II(IGF−I及びIGF−II);脱(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP);CD3、CD4、CD8、CD19 及びCD20などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;抗毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン−α、−β、及び−γといったインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えばM−CSF、GM−CSF、及びG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1〜IL−10;超酸化物ジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;分解促進因子;例えば、AIDSエンベロープの一部分といった、ウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4及びVCAMといったインテグリン;HER2、HER3又はHER4受容体のような腫瘍関連抗原;並びに上記ポリペプチドのいずれかの断片が含まれる。
0071
(i)抗原調製物
任意選択的に他の分子にコンジュゲートされる、可溶型抗原又はその断片は、抗体を生成するためのイムノゲンとして使用することができる。受容体といった膜貫通分子のために、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)をイムノゲンとして使用することができる。代替的に、膜貫通分子を発現する細胞をイムノゲンとして使用することができる。このような細胞は、自然源(例えば、がん細胞株)に由来するものとすることができるか、又は膜貫通分子を発現するように組み換え技術によって形質転換された細胞でもよい。抗体の調製に有用な他の抗原及びその形態は、当業者には自明である。
0072
(ii)特定の抗体に基づく方法
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原及びアジュバントの複数回にわたる皮下(sc)又は腹腔内(ip)注入により動物内で生成される。関連抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又はダイズトリプシン阻害因子に、二機能性剤又は誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基によるコンジュゲート)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はR1N=C=NR(RとR1は異なるアルキル基)にコンジュゲートすることが有益である。
0073
動物は、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して、例えば100μg又は5μgのタンパク質又はコンジュゲート(それぞれ、ウサギ又はマウスの場合)を3体積のフロイントの完全アジュバントと混合し、その溶液を複数の部位に皮内注入することにより、免疫化される。一ヶ月後、動物は、複数部位への皮下注入により、フロイントの完全アジュバント中において、ペプチド又はコンジュゲートの初期量の1/5〜1/10を用いて追加免疫される。7日〜14日後、動物を出血させ、血清を、抗体力価についてアッセイする。動物は、力価が水平状態に達するまで追加免疫される。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートを用いて追加免疫されるが、異なるタンパク質に、及び/又は異なる架橋結合剤により、コンジュゲートされる。また、コンジュゲートは、タンパク質融合として組み換え細胞培養物内で作製することができる。また、ミョウバンのような凝集剤が、免疫応答を亢進するために適切に使用される。
0074
対象のモノクローナル抗体は、最初にKohler et al., Nature, 256:495 (1975)により記載され、更に例えば、Hongo et al., Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995), Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988); Hammerling et al., in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981), and Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)に記載された、ヒト−ヒトハイブリドーマに関するハイブリドーマ法を用いて作製することができる。更なる方法には、例えば、ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒト自然IgM抗体の生成に関する米国特許第7189826号に記載されているものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)が、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) 及びVollmers and Brandlein, Methodsand Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
0075
様々な他のハイブリドーマ技術については、例えば、米国特許出願公開第2006/258841号;同第2006/183887号(完全ヒト抗体)、同第2006/059575号;同第2005/287149号;同第2005/100546号;同第2005/026229号;及び米国特許第7078492及び同第7153507号を参照されたい。ハイブリドーマ法を用いたモノクローナル抗体を生成するための例示的プロトコールについて、以下のように記載する。一実施態様では、マウス、又はハムスターなどの他の適切な宿主動物は、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を生成する、又は生成することができるリンパ球を引き出すために、免疫化される。抗体は、対象のポリペプチド又はその断片、及びモノホスホリルリピドA(MPL)/トレハロースジコリノミコラート(TDM)(Ribi Immunochem. Research, Inc., Hamilton, Mont.)の複数回にわたる皮下(sc)若しくは腹腔内(ip)注入により、動物内において生成される。対象のポリペプチド(例えば、抗原)又はその断片は、当技術分野で周知の方法、例えば組み換え法を用いて調製される。このような方法の一部について更に以下で記載する。免疫化された動物の血清は、抗抗原抗体についてアッセイされ、任意選択的に追加免疫が投与される。抗抗原抗体を生成する動物のリンパ球が単離される。或いは、リンパ球はインビトロで免疫を与えられてもよい。
0076
次いで、リンパ球を、ポリエチレングリコールといった適切な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する。例えば、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986)を参照のこと。効率よく融合し、選択された抗体生成細胞により抗体の安定した高レベル生成をサポートし、HAT培地等の培地に対して感受性である骨髄腫細胞が、使用される。例示的な骨髄腫細胞株には、限定されないが、マウス骨髄種株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif. USAから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍から誘導されるもの及びAmerican Type Culture Collection, Rockville, Md. USAから入手可能なSP−2又はX63−Ag8−653細胞である。ヒトモノクローナル抗体の生成のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も記載されている(Kozbor, J. Immunol. 133:3001 (1984); Brodeur et al.,モノクローナル抗体Production Techniques and Applications pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
0077
このように調製されたハイブリドーマ細胞は、適切な培地中、例えば、非融合の親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する一又は複数の物質を含む培地中で播種され、培養される。例えば、親骨髄腫細胞に酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)がない場合、ハイブリドーマの培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含むことになり、この物質はHGPRT欠損細胞の成長を妨げる。好ましくは、例えば、Even et al., Trendsin Biotechnology, 24(3), 105-108 (2006)に記載されるように、無血清ハイブリドーマ細胞培養方法が、ウシ胎児血清などの動物由来の血清の使用を低減するために使用される。
0078
ハイブリドーマ細胞培養物の生産性を向上させるツールとしてのオリゴペプチドが、Franek, Trendsin Monoclonal Antibody Research, 111-122 (2005)に記載されている。具体的には、標準の培地が、特定のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)で、又はタンパク質加水分解物の画分で濃縮され、アポトーシスは、三〜六個のアミノ酸残基からなる合成オリゴペプチドにより有意に抑制される。ペプチドは、ミリモル又はそれより高い濃度で存在する。
0079
ハイブリドーマ細胞が成長する培地は、本明細書に記載される抗体に対して結合するモノクローナル抗体の生成についてアッセイされる。ハイブリドーマ細胞により生成されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降により又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により決定される。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード分析により決定することができる。例えば、Munson et al., Anal. Biochem., 107:220 (1980)を参照のこと。
0080
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を生成するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンが、希釈手順を制限することによりサブクローニングされ、標準的方法により成長させられる。例えば、Goding(上掲)を参照。この目的のための好適な培地は、例えば、D−MEM又はRPMI−1640培地を含む。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで成長させてもよい。サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーなどにより、培地、腹水又は血清から適切に分離される。ハイブリドーマ細胞からタンパク質を単離するための一手順が、米国特許出願公開第2005/176122号及び米国特許第6919436に記載されている。本方法は、結合工程において離液性塩などの最小の塩を使用することと、好ましくは更に溶出工程において少量の有機溶媒を使用することとを含む。
0081
(iii)特定のライブラリースクリーニング法
本明細書に記載される製剤及び組成物中の抗体は、コンビナトリアルライブラリーを使用して一又は複数の所望の活性を有する抗体をスクリーニングすることにより作製することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするために、様々な方法が当技術分野で知られている。このような方法の概要は、Hoogenboom et al. in Methodsin Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, N.J., 2001)に記載されている。例えば、対象の抗体を生成する一つの方法は、Lee et al., J. Mol. Biol. (2004), 340(5):1073-93に記載されている、ファージ抗体ライブラリーの使用によるものである。
0082
原則として、合成抗体クローンは、ファージコートタンパク質に融合した抗体可変領域(Fv)の様々な断片を表示するファージを含むファージライブラリーをスクリーニングすることにより選択される。このようなファージライブラリーは、所望の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによりパニングされる。所望の抗原に結合できるFv断片を発現するクローンは、抗原に吸着され、よってライブラリーの非結合クローンから分離される。次いで、結合クローンは抗原から溶出され、抗原吸着/溶出のサイクルを追加することにより更に濃縮されうる。いずれの抗体も、対象のファージクローンを選択するための適切な抗原スクリーニング手順を設計し、続いて対象のファージクローン由来のFv配列と、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda Md. (1991), vols. 1-3に記載される適切な定常領域(Fc)配列を用いて完全長抗体クローンを構築することにより、得ることができる。
0083
特定の実施態様では、抗体の抗原結合ドメインは、約110のアミノ酸の二つの可変(V)領域から形成されるもので、これら可変領域は、軽鎖可変(Vl)及び重鎖可変(VH)の一つずつからなり、共に三つの超可変ループ(HVR)又は相補性決定領域(CDR)を呈する。可変ドメインは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994)に記載のように、ファージ上に、VHとVLとが短い可動性のペプチドにより共有的に結合している単鎖Fv(scFv)断片として、又はそれらの各々が定常ドメインに融合して非共有的に相互作用するFab断片として、機能的に表示することができる。本明細書で使用する場合、scFvコード化ファージクローンとFabコード化ファージクローンとは、まとめて「Fvファージクローン」又は「Fvクローン」と称される。
0084
VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングし、ファージライブラリー内でランダムに組み換えることができ、次いでこれは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994)に記載のように、抗原結合クローンについて検索することができる。免疫化起源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なく免疫原に対して高親和性抗体を提供する。代替的に、Griffiths et al.,EMBO J, 12: 725-734 (1993)に記載されるように、ナイーブなレパートリーを、どのような免疫化もすることなく、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対してヒト抗体の単一起源を提供するために、クローンニングすることができる。最後に、ナイーブなライブラリーは、幹細胞由来の再配置されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを用いて、高度に可変のCDR3領域をコードし、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)により記載されるようにインビトロでの再配置を達成することにより、合成的に作製することもできる。
0085
特定の実施態様では、線状ファージが、マイナーコートタンパク質pIIIへの融合により抗体断片を表示するために使用される。抗体断片は、例えば、Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)により記載されているように、VHとVLドメインが同じポリペプチド鎖上において可動性ポリペプチドスペーサーにより接続されている単鎖Fv断片として、又は、一の鎖がpIIIに融合し、他の鎖が細菌性宿主細胞ペリプラズム中に分泌されるFab断片として、表示させることができ、この場合、例えばHoogenboom et al., Nucl. AcidsRes., 19: 4133-4137 (1991)に記載されているように、Fabコートタンパク質構造のアセンブリが、野生型コートタンパク質の一部を表示することにより、ファージ表面上に表示される。
0086
一般に、抗体遺伝子断片をコードする核酸は、ヒト又は動物から収集される免疫細胞から得られる。抗抗原クローンにバイアスしたライブラリーが望まれる場合、対象を抗原で免疫化して抗体応答を生じさせ、脾臓細胞及び/又は循環B細胞、他の末梢血リンパ球(PBL)をライブラリー構築のために回収する。一実施態様では、抗抗原クローンにバイアスされたヒト抗体遺伝子断片ライブラリーは、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを有する(且つ機能的な内因性の抗体生成系を欠く)トランスジェニックマウスにおいて抗抗原抗体応答を生成し、抗原免疫化により抗原に対するヒト抗体を生成するB細胞が生じさせることにより、得られる。ヒト抗体を生成するトランスジェニックマウスの生成について後述する。
0087
抗抗原反応性細胞集団は、抗原特異的膜結合抗体を発現するB細胞を単離するための適切なスクリーニング手順を用いることにより、例えば、抗原アフィニティークロマトグラフィーを用いた細胞分離又は蛍光色素標識された抗原への細胞の吸着と、それに続くフローサイトメトリーセルソーティング(FACS)により、更に濃縮することができる。
0088
代替的に、免疫化されていないドナー由来の脾臓細胞及び/又はB細胞又は他のPBLの使用は、可能な抗体レパートリーをよりよく表し、更には抗原が抗原性でない任意の動物(ヒト又は非ヒト)種を用いる抗体ライブラリーの構築を可能にする。インビトロ抗体遺伝子構築を取り込んだライブラリーの場合、再配置されていない抗体遺伝子セグメントをコードする核酸を提供するために、幹細胞が対象から回収される。対象の免疫細胞は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ目、ルプリン(luprine)、イヌ、ネコ科、ブタ、ウシ、ウマ、及びトリ種などの様々な動物種から得ることができる。
0089
抗体可変遺伝子セグメント(VH及びVLセグメントを含む)をコードする核酸は、対象の細胞から回収されて、増殖される。再配置されたVH及びVL遺伝子ライブラリーの場合、所望のDNAは、Orlandi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 86: 3833-3837 (1989)に記載のように、リンパ球からゲノムDNA又はmRNAを単離し、続いて、再配置されたVH及びVL遺伝子の5’及び3’末端と一致するプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことにより得ることができ、これにより発現のための多様なV遺伝子レパートリーを作製することができる。このV遺伝子は、Orlandi et al. (1989) and in Ward et al., Nature, 341: 544-546 (1989)に記載のように、成熟Vドメインをコードするエクソンの5’末端のバックプライマーと、Jセグメント内部に位置するフォワードプライマーとを用いて、cDNA及びゲノムDNAから増幅することができる。しかしながら、cDNAから増幅するために、バックプライマーは、Jones et al., Biotechnol., 9: 88-89 (1991)に記載のようにリーダーエクソン内に位置するもので、フォワードプライマーはSastry et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 86: 5728-5732 (1989)に記載のように定常領域内部に位置するものでもよい。相補性を最大にするために、Orlandi et al. (1989)又はSastry et al. 1989に記載のように、プライマーに縮重を組み込んでもよい。特定の実施態様では、ライブラリーの多様性は、例えばMarks et al., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)の方法に記載されるように、又はOrum et al., Nucleic AcidsRes., 21: 4491-4498 (1993)の方法に記載されるように、各V遺伝子ファミリーを標的にしたPCRプライマーを用いて免疫細胞の核酸試料中に存在するすべての利用可能なVH及びVL構成を増幅することにより、最大化される。増幅されたDNAの、発現ベクターへのクローニングのために、Orlandi et al. (1989)に記載のように、希少な制限部位を、一端におけるタグとして、又はClackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)に記載のように、タグ付けしたプライマーを用いたさらなるPCR増幅により、PCRプライマー内部に導入することができる。
0090
合成的に再配置されたV遺伝子のレパートリーは、V遺伝子セグメントからインビトロで誘導することができる。ヒトVH遺伝子断片の大部分は、クローニング及び配列決定されて(Tomlinson et al., J. Mol. Biol., 227: 776-798 (1992)に報告)、マッピングされる(Matsuda et al., Nature Genet., 3: 88-94 (1993)に報告); これらのクローニングされたセグメント(H1及びH2ループのすべての主要な立体構造を含む)を使用し、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)に記載のように、多様な配列及び長さのH3ループをコードするPCRプライマーを用いて多様なVH遺伝子レパートリーを生成することができる。また、VHレパートリーは、Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457-4461 (1992)に記載のように、単一長の長いH3ループに焦点を合わせたすべての配列多様性を伴うように作製することができる。ヒトVκ及びVλセグメントは、クローニング及び配列決定されて(Williams and Winter, Eur. J. Immunol., 23: 1456-1461 (1993)に報告)、合成軽鎖レパートリーを作製するために使用することができる。合成V遺伝子レパートリーは、VH及びVL折り畳みの範囲と、L3及びH3の長さとに基づいており、大きな構造多様性を有する抗体をコードする。DNAをコードするV遺伝子の増幅に続いて、生殖系列V遺伝子セグメントを、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)の方法に従ってインビトロで再構成することができる。
0091
抗体断片のレパートリーを、複数の方法でVH及びVL遺伝子レパートリーを組み合わせることにより、構築することができる。各レパートリーは、様々なベクター中においてつくり出すことができ、そのベクターは、例えばHogrefe et al., Gene, 128: 119-126 (1993)に記載されているようにインビトロで、又はコンビナトリアルインフェクション、例えば、Waterhouse et al., Nucl. AcidsRes., 21: 2265-2266 (1993)に記載されているloxP系によりインビボで、組み換えられる。インビボでの組換え法は、大腸菌の形質転換効率により強いられるラブラリーサイズの限界を克服するために、二本鎖種のFab断片を利用する。ナイーブVH及びVLレパートリーは、一方はファージミドに、他方はファージベクターに、別々にクローニングされる。次いでこれら二つのライブラリーは、ファージミド含有細菌のファージ感染により、各細胞が異なる組み合わせを含み、ライブラリーサイズが存在する細胞の数(約1012個のクローン)によってのみ制限されるように、組合せられる。両方のベクターは、VH及びVL遺伝子が単一のレプリコン上に組み換えられ、ファージビリオン中に共にパッケージされるように、インビボでの組換えシグナルを含む。これら巨大なライブラリーは、良好な親和性(Kd−1=約10−8M)を有する多様な抗体を多数提供する。
0092
代替的に、レパートリーは、例えば、Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 7978-7982 (1991)に記載のように、同じベクターに連続してクローニングされるか、又は例えば、Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)に記載のように、PCRによってアセンブルされた後でクローニングされる。また、PCRアセンブリーは、可動性ペプチドスペーサーをコードするDNAと、VH及びVLのDNAとを結合させて単鎖Fv(scFv)レパートリーを形成するために使用することができる。また別の技術では、Embleton et al., Nucl. AcidsRes., 20: 3831-3837 (1992)に記載のように、「細胞内PCRアセンブリー」が、PCRによりリンパ球内部でVH及びVL遺伝子を混合し、次いで連結した遺伝子のレパートリーをクローニングするために使用される。
0093
ナイーブライブラリー(天然又は合成)によって生成された抗体は、中低度の親和性(約106〜107M−1のKd−1)を有しうるが、上掲のWinter et al. (1994)に記載のように、親和性成熟を、二次ライブラリーから構築及び選択することによりインビトロで模倣することもできる。例えば、Hawkins et al., J. Mol. Biol., 226: 889-896 (1992)の方法において、又はGram et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89: 3576-3580 (1992)の方法において、エラープローンポリメラーゼ(Leung et al., Technique 1: 11-15 (1989)に報告)を使用することにより、突然変異をインビトロでランダムに導入することができる。加えて、一又は複数のCDRをランダムに変異させることによって、例えば、選択した個々のクローンにおいて、対象のCDRに及ぶランダム配列を有するプライマーによりPCRを使用し、より親和性の高いクローンをスクリーニングすることにより、親和性成熟を行うことができる。国際公開第9607754号(1996年3月14日)には、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域に突然変異を誘導し、軽鎖遺伝子のライブラリーを生成するための方法が記載されている。別の有効な手法は、Marks et al., Biotechnol., 10: 779-783 (1992)に記載のように、免疫化されていないドナーから得られた天然に存在するVドメイン変異体のレパートリーによるファージディスプレイを用いて選択されたVH又はVLドメインを組み換え、複数回のチェーンリシャッフリングにおいてより高い親和性についてスクリーニングすることである。この技術により、約10−9M以下の親和性を有する抗体及び抗体断片の生成が可能である。
0094
ライブラリーのスクリーニングは、当技術分野で既知の様々な技術によって達成することができる。例えば、抗原は、吸着プレートのウェルのコーティングに使用して、吸着プレートに付着させた宿主細胞上で発現させる又はセルソーティングに使用するか、又はストレプトアビジンコーティングされたビーズにより捕獲するためにビオチンにコンジュゲートさせるか、又はファージディスプレイライブラリーのパニングのための他のいずれかの方法において使用することができる。
0095
ファージライブラリー試料は、ファージ粒子の少なくとも一部を吸着剤に結合させるために適した条件下で、固定化されている抗原と接触させる。通常、pH、イオン強度、温度などを含む条件は、生理的条件を模倣するために選択される。固体相に結合したファージは、洗浄された後で、例えばBarbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 88: 7978-7982 (1991)に記載のように酸により、又は例えばMarks et al., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)に記載のようにアルカリにより、又は例えばClackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)の抗原競合法に類似の手順において、抗原競合により、溶出される。ファージは、一回の選択で、20〜1,000倍に濃縮することができる。更に、濃縮されたファージは、細菌培養物中で成長させ、更なる回の選択に供することが可能である。
0096
選択の効率は、洗浄の間の解離の動態、及び単一のファージ上の複数の抗体断片が同時に抗原と結合するかどうかを含む複数の要因に依存する。速い解離動態(及び弱い結合親和性)は、短い洗浄、多価のファージディスプレイ、及び固体相の抗原の高いコーティング密度を用いることにより保持することができる。高密度は、多価の相互作用によりファージを安定化させるだけでなく、解離したファージの再結合に有利である。遅い解離動態(及び良好な結合親和性)を有する抗体の選択は、Bass et al., Proteins, 8: 309-314 (1990)及び国際公開第92/09690号に記載のような長い洗浄及び一価のファージディスプレイと、Marks et al., Biotechnol., 10: 779-783 (1992)に記載のような抗原の低いコーティング密度を用いることによって促進することができる。
0097
たとえわずかな違いであったとしても、抗原に対する異なる親和性のファージ抗体の中で選択することが可能である。しかしながら、選択された抗体のランダム異変(例えば、いくつかの親和性成熟技術において実行される)は、多くの変異体を生じやすく、その多くは抗原への結合であり、一部は親和性の向上である。抗原を限定すると、稀な高い親和性のファージが競合して除かれる場合がある。親和性の高い変異体をすべて保持するために、ファージを、余分なビオチン化抗原、但し抗原に対する標的モル親和定数より低いモル濃度のビオチン化抗原と共にインキュベートすることができる。次いで、高い親和性結合ファージをストレプトアビジンでコーティングした常磁性体ビーズによって捕獲することができる。このような「平衡捕獲」は、親和性の低い過剰なファージから、二倍という小さな親和性で変異体の単離を可能にする感度で、抗体がその結合親和性に従って選択されることを可能にする。また、解離動態に基づいて区別するために、固体相に結合したファージの洗浄に使用される条件を操作することができる。
0098
抗抗原クローンは、活性に基づいて選択される。特定の実施態様では、本発明は、自然に抗原を発現するか又は遊離する浮遊抗原若しくは他の細胞構造に結合する抗原抗抗原抗体を提供する。このような抗抗原抗体に対応するFvクローンは、(1)上記のようなファージライブラリーから抗抗原クローンを単離し、任意選択的に、適切な細菌宿主中において成長させることによりファージクローンの単離された集団を増殖させること;(2)それぞれブロッキング活性及び非ブロッキング活性を有することが望ましい、抗原及び二次タンパク質を選択すること;(3)固定化されている抗原に対して抗抗原ファージクローンを吸着させること;(4)過剰な二次タンパク質を使用して、二次タンパク質の結合決定要因と重複する又は二次タンパク質の結合決定要因に共有される抗原結合決定要因を認識する望ましくないクローンをすべて溶出すること;並びに(5)工程(4)の後吸着されたまま保持されるクローンを溶出することによって選択することができる。任意選択的に、所望のブロッキング/非ブロッキング特性を有するクローンは、本明細書に記載の選択手順を一又は複数回繰り返すことにより更に濃縮することができる。
0099
ハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体又はファージディスプレイFvクローンをコードするDNAは、容易に単離され、一般的な手順を用いて配列決定される(例えば、ハイブリドーマ又はファージDNA鋳型から対象の重鎖及び軽鎖コード化領域を特異的に増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより)。DNAは、単離されると、発現ベクター中に配置され、次いで、これは、他の形では免疫グロブリンタンパク質を生成しない宿主細胞中、例えば、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞中にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞中の所望のモノクローナル抗体の合成を得ることができる。抗体をコードするDNAの細菌中における組み換え発現に関する総説には、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol., 5: 256 (1993) and Pluckthun, Immunol. Revs, 130: 151 (1992)が含まれる。
0100
FvクローンをコードするDNAは、重鎖及び/又は軽鎖定常領域をコードする既知のDNA配列(例えば、適切なDNA配列は上掲のKabat et al.から得ることができる)と組み合わされて、完全長又は不完全長の重鎖及び/又は軽鎖を形成することができる。IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE定常領域を含む、あらゆるアイソタイプの定常領域がこの目的のために使用できること、並びにそのような定常領域は任意のヒト又は動物種から得ることができることを理解されたい。一の動物(例えばヒト)種の可変ドメインDNAから得られ、次いで別の動物種の定常領域DNAに融合されて「ハイブリッド」、完全長重鎖及び/又は軽鎖のコード配列を形成するFvクローンは、本明細書において使用される「キメラ」及び「ハイブリッド」抗体の定義に含まれる。特定の実施態様では、ヒト可変DNAに由来するFvクローンは、ヒト定常領域DNAに融合して、完全長又は不完全長ヒト重鎖及び/又は軽鎖のコード配列を形成する。
0101
また、ハイブリドーマから誘導される抗抗原抗体をコードするDNAは、例えば、ハイブリドーマクローンから誘導される相同なマウスの配列に代えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換すること(例えばMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 (1984)の方法で)により、修飾することができる。ハイブリドーマ由来又はFvクローン由来の抗体又は断片をコードするDNAは、免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることによって、更に修飾することができる。このようにして、Fvクローン又はハイブリドーマクローン由来の抗体の結合特異性を有する「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体が調製される。
0102
(iv)ヒト化及びヒト抗体
非ヒト抗体をヒト化するための種々の方法が当技術分野で既知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトであるソースから導入された一又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、典型的には「インポート」可変ドメインから取得される。ヒト化は、基本的には、Winter and co-workers (Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988))の方法に従って、げっ歯類のDCR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することにより、実施されうる。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ないドメインが、非ヒト種由来の対応する配列により置換されている、キメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基及び可能であればいくつかのFR残基がげっ歯動物抗体における相似部位由来の残基により置換されているヒト抗体である。
0103
ヒト化抗体を作製する際に使用されるヒト可変ドメイン(軽鎖と重鎖の両方)の選定は、抗原性を低下させることが非常に重要である。いわゆる「最も適した」方法によれば、げっ歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメインの配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次いで、そのげっ歯動物の配列と最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として採択する(Sims et al., J. Immunol. 151:2296 (1993); Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901 (1987))。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループである、すべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体について使用してもよい(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285 (1992); Presta et al., J. Immunol. 151:2623 (1993))。
0104
抗体が、抗原に対する高親和性及び他の望ましい生物学的特性を保持した状態でヒト化されることは、更に重要である。この目標を達成するために、本方法の一実施態様によれば、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用した、親配列及び多様な概念的ヒト化産物の分析のプロセスにより調製される。三次元の免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者にはなじみがある。選択された候補免疫グロブリン配列の推定される三次元立体配座構造を図示及び表示するコンピュータープログラムが入手可能である。これらの表示を精査することにより、候補免疫グロブリン配列が機能する際に残基が果たすと考えられる役割の分析、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析が可能になる。この方式では、FR残基が、レシピエント配列及びインポート配列から選択され、組み合わされることで、所望の抗体特徴(例えば、一又は複数の標的抗原に対する親和性の向上)が達成される。一般に、超可変領域残基は、抗原結合への影響を及ぼすことに直接かつ最も実質的に関わっている。
0105
本明細書に記載される製剤及び組成物中のヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を、上述のように既知のヒト定常ドメイン配列と組合わせることにより構築することができる。別法では、ヒトモノクローナル抗体はハイブリドーマ法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の生成のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株は、例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987); and Boerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991)によって記載されている。
0106
免疫化の際に、内因性の免疫グロブリンが生成されなくてもヒト抗体の完全なレパートリーを生成する能力があるトランスジェニック動物(例えばマウス)を作製することが可能である。例えば、キメラマウス及び生殖細胞系突然変異マウスにおいて、抗体の重鎖接合領域(JH)遺伝子のホモ接合性が欠失していると、内因性抗体生成は完全に阻害されることが記載されている。そのような生殖細胞系突然変異マウスにおいてヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイを移入することにより、抗原による攻撃を行った際にヒト抗体が産生されるであろう。例えば、Jakobovits et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993); Bruggermann et al., Year in Immuno., 7:33 (1993);及びDuchosal et al. Nature 355:258 (1992)を参照のこと。
0107
また、非ヒト抗体、例えばげっ歯類の抗体からヒト抗体を誘導するために、遺伝子シャフリングを使用することができ、この場合ヒト抗体は、出発非ヒト抗体と同様の親和性と特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法によれば、本明細書に記載のようなファージディスプレイ技術により得られる非ヒト抗体断片の重鎖又は軽鎖可変領域は、ヒトVドメイン遺伝子の一のレパートリーで置き換えられて、非ヒト鎖/ヒト鎖scFv又はFabキメラ鎖の集団を形成する。抗原による選択の結果、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFv又はFabが単離され、ここで、ヒト鎖は、初代ファージディスプレイクローン中の対応する非ヒト鎖の除去時に破壊される抗原結合部位を回復させ、即ち、エピトープがヒト鎖パートナーの選択を支配(インプリント)する。残りの非ヒト鎖を置き換えるために工程が繰り返されると、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日発行の国際公開第93/06213号)。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の常套的なヒト化とは異なり、この技術は、非ヒト起源のFR又はCDR残基をまったく有さない完全なるヒト抗体を提供する。
0108
(v)抗体断片
抗体断片は、酵素消化などの常套的手段によって、又は組み換え技術によって生成される。特定の状況では、抗体全体ではなく抗体断片を使用することが有利である。小さい断片は、迅速なクリアランスを可能にし、固形腫瘍へのアクセスの改善に繋がりうる。特定の抗体断片の総説について、Hudson et al. (2003) Nat. Med. 9:129-134を参照されたい。
0109
様々な技術が抗体断片の生成のために開発されてきた。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク分解性消化を介して誘導された(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods24:107-117 (1992)及びBrennan et al., Science 229:81 (1985)を参照のこと)。しかしながら、これらの断片は、今では組換え宿主細胞により直接産生され得る。Fab、Fv及びScFv抗体断片はすべて、大腸菌中に発現され且つ大腸菌から分泌されるので、大量のこれら断片を容易に生成することが可能である。抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリーから単離することができる。或いは、Fab’−SH断片は、大腸菌から直接回収され、化学的に結合してF(ab’)2断片を形成しうる(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。F(ab’)2断片は、別の方法によって、組換え宿主細胞培養物から直接単離されうる。サルベージレセプター結合エピトープ残基を含む、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)2断片が、米国特許第5869046に記載されている。抗体断片の生成のためのその他の技術は当業者にとって明らかであろう。特定の実施態様では、抗体は一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5571894号;及び同第5587458号を参照されたい。Fv及びscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種である;したがって、それらはインビボでの使用中に非特異的結合を低減させるために適していると思われる。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ又はカルボキシ末端におけるエフェクタータンパク質の融合を生じさせるように構築される。上掲のAntibody Engineering, ed. Borrebaeckを参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5641870号に記載されるように「直線抗体」であってもよい。そのような直線抗体は、単一特異的であっても、又は二重特異的であってもよい。
0110
(vi)多重特異性抗体
多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なるエピトープについて結合特異性を有し、この場合これらエピトープは通常異なる抗原に由来している。このような分子は通常二つの異なるエピトープにのみ結合するが(即ち二重特異性抗体、BsAbs)、この表現を本発明で使用する場合、更なる特異性を有する三重特異性抗体のような抗体も包含される。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab’)2二重特性抗体)として調製することができる。
0111
二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野において既知である。完全長の二重特異性抗体の常套的な生成は、二つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づいており、この場合の二本の鎖は、異なる特異性を有する(Millstein et al., Nature 305:537-539 (1983))。免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖はランダムに取り合わされるため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を生成し、そのうち1個のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常はアフィニティークロマトグラフィー工程により行われるが、相当に面倒であり、生成の収率は低い。類似の手順は、国際公開第93/08829号、及びTraunecker et al.,EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
0112
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原合体部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖の定常ドメインとの間で行われる。典型的には、軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)が、融合体のうち少なくとも一つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合体と、所望により免疫グロブリン軽鎖とをコードしているDNAを別々の発現ベクター中に挿入し、適切な宿主生物中に共にトランスフェクトする。これは、不均等な比率の三本のポリペプチド鎖が構造中で使用された場合に最適な収率が得られる実施態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合を調節する際に大きな柔軟性を提供する。ただし、少なくとも二本のポリペプチド鎖が等しい比率で発現することにより収率が高まるとき、又はその比率が特に重要性をもたないときは、一つの発現ベクター中の二本又は全三本のポリペプチド鎖のコード配列を挿入することが可能である。
0113
このアプローチの一の実施態様において、二重特異性抗体は、第1の結合特異性を一方のアームに、複合免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)を他方のアームに有する、ハイブリッド複合免疫グロブリン重鎖から構成される。この非対称構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を容易にすることが見出されたが、これは、二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することが容易な分離方式を提供するからである。このアプローチは、国際公開第94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成の更なる詳細については、例えば、Suresh et al., Methodsin Enzymology 121:210 (1986)を参照のこと。
0114
国際公開第96/27011号に記載されている別のアプローチによれば、抗体分子対の間の接触面を工学操作することにより、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の比率(%)が最大化することが可能である。一つの接触面は、抗体の定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子の接触面由来の一又は複数の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換えられる。大きい側鎖と同一又は類似の大きさを有する相補的な「空洞」は、大きいアミノ酸側鎖を小さい側鎖(例えばアラニン又はトレオニン)で置き換えることにより、第2の抗体分子の接点上に形成される。これは、ヘテロ二量体の収率をホモ二量体等の他の望ましくない最終生成物より高めるメカニズムを提供する。
0115
二重特異性抗体は、架橋抗体又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体のうち一方はアビジンと、他方はビオチンと、カップリングされ得る。そのような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対して免疫系細胞を標的化すること(米国特許第4676980号)、及びHIV感染症の治療に用いること(国際公開第91/00360号、国際公開第92/200373号及びEP03089)が提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製され得る。好適な架橋剤は当技術分野において周知であり、米国特許第4676980号において、いくつかの架橋技術と共に開示されている。
0116
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技術も、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。Brennan et al., Science 229: 81 (1985)には、インタクト抗体をタンパク質分解的に開裂してF(ab’)2断片を生成する手順が記載されている。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元され、隣接するジチオールを安定化し、分子間のジスルフィド形成を防止する。次いで、生成されたFab’断片をチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に変換する。次いで、Fab’−TNB誘導体のうち一方を、メルカプトエチルアミンを用いた還元によりFab’−チオールに再変換し、等モル量の他方のFab’−TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成する。生成された二重特異性抗体は、酵素の選択的な固定化のための作用剤として使用することができる。
0117
最近の進歩により、Fab’−SH断片を大腸菌から直接回収することが容易になっており、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成しうる。Shalaby et al., J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)には、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の生成が記載されている。各Fab’断片は、大腸菌から別々に分泌されたもので、インビトロで定方向化学カップリングを受けて二重特異性抗体を形成した。
0118
組換え細胞培養物から直接、二重特異性抗体断片を作製し単離するための様々な技術も記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて生成された。Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合により、二つの異なる抗体のFab’部分と連結された。抗体ホモ二量体は、ヒンジ領域で還元されて単量体を形成し、次いで、再酸化されて抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の生成にも利用することができる。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)により記載された「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的メカニズムを提供した。この断片は、きわめて短いために同一鎖上の二つのドメイン間の対形成を可能にするリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)と繋がっている重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、一つの断片のVH及びVLドメインは、もう一つの断片の相補的なVL及びVHドメインとの対形成を強いられ、それにより、二つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略も報告されている。Gruber et al, J. Immunol, 152:5368 (1994)参照。
0120
(vii)単一ドメイン抗体
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の、重鎖可変ドメインの全部又は一部、又は軽鎖可変ドメインの全部又は一部を含む単一ポリペプチド鎖である。特定の実施態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, Mass.;例えば、米国特許第6248516B1参照)。一実施態様では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部又は一部からなる。
0121
(viii)抗体変異体
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列修飾を考慮する。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することにより、又はペプチド合成によって調製することができる。このような改変は、例えば、抗体のアミノ酸配列内における、残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。最終コンストラクトが所望の特性を有していることを条件として、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせが、最終構築物に到達させるために作成されうる。アミノ酸の改変は、配列が作成されるときに、対象抗体のアミノ酸配列中に導入されうる。
0122
(ix)抗体誘導体
本発明の製剤及び組成物中の抗体は、当技術分野で既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含めるために、更に修飾することができる。特定の実施態様では、抗体の誘導体化に適切な部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例は、限定しないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキソラン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(単独重合体又はランダム共重合体)及びデキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコール単独重合体、プロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール及びこれらの混合物を包含する。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドはその水中での安定性のために製造上の利点を有し得る。ポリマーはいずれかの分子量のものであってよく、分枝鎖又は未分枝鎖であってよい。抗体に結合するポリマーの数は変動し、複数のポリマーが結合する場合、それらは同じ分子又は異なる分子でありうる。一般的に、誘導体化に使用するポリマーの数及び/又は種類は、限定されないが、向上させるべき抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が特定の条件下で治療に使用されるのかなどを含む検討事項に基づいて決定することができる。
0123
(x)ベクター、宿主細胞、及び組換え法
抗体は、組換え法を使用して生成することもできる。抗抗原抗体の組換え生産の場合、抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を用いて (例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定されうる。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分は、通常、限定しないが、以下のうち一又は複数を含む:シグナル配列、複製源、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
0124
(a)シグナル配列成分
本明細書に記載される製剤及び組成物中の抗体は、直接組換え的に生成されるだけでなく、好ましくは成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列又は他のポリペプチドである、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとして生成することもできる。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識及びプロセシングされる(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断)されるものである。天然抗体 シグナル配列を認識及びプロセシングしない原核生物宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、又は熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置き換えられる。酵母分泌の場合、天然シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、因子リーダー(サッカロミセス及びクルイベロミセスα因子リーダー)、又は酸ホスファターゼリーダー、カンジダアルビカンスグルコアミラーゼリーダー、又は国際公開第90/13646号に記載のシグナルによって置き換えられる。哺乳動物の細胞発現では、哺乳動物シグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
0125
(b)複製開始点
発現ベクター及びクローニングベクターの両方は、一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターが複製することを可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクター中において、この配列は、宿主の染色体DNAから独立してベクターが複製することを可能にするものであり、複製の開始点又は自己複製配列を含む。このような配列は、種々の細菌、酵母、及びウイルスについてよく知られている。プラスミドpBR322からの複製の開始点は、大部分のグラム陰性細菌に適しており、2μ、プラスミド開始点は酵母に適しており、種々のウイルスの開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞中におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製開始点の成分は哺乳動物の発現ベクターには不要である(SV40開始点は、早期プロモーターを含むという理由のみで典型的に使用される。)
0126
(c)選択遺伝子成分
発現ベクター及びクローニングべクターは、選択可能マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含みうる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質又は他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、又はテトラサイクリンに耐性を付与する、(b)栄養要求性欠陥を補う、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素、例えば、バシリに対する遺伝子コードD−アラニンラセマーゼを供給するタンパク質をコードする。
0127
選択スキームの一例は、宿主細胞の増殖を停止させる薬物を利用する。異種遺伝子により成功裏に形質転換される細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生成し、したがって選択レジメを生き延びる。このようなドメイン選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸及びヒグロマイシンを使用する。
0128
哺乳動物細胞の適切な選択可能マーカーの別の例は、DHFR、グルタミンシンセターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−I及び−II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどの抗体コード核酸を取り込む細胞成分の同定を可能にするものである。
0129
例えば、DHFR遺伝子を用いて形質転換された細胞は、メトトレキサート(Mtx)、DHFRの競合アンタゴニストを含む培地において形質転換体を培養することにより同定される。このような条件下において、DHFR遺伝子を、いずれかの他の共形質転換核酸と共に増幅させる。内因性のDHFR活性を欠くチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(例えば、ATCCCRL−9096)を使用することができる。
0130
代替的に、GS遺伝子を用いて形質転換された細胞は、GSの阻害剤であるL−メチオニンスルホキシイミン(Msx)を含む培地で形質転換体を培養することにより同定される。このような条件下において、GS遺伝子を、いずれかの他の共形質転換された核酸と共に増幅させる。GS選択/増殖系を、上述のDHFR選択/増殖系と組み合わせて使用してもよい。
0131
代替的に、対象の抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR遺伝子、及びアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような別の選択可能マーカーを用いて形質転換又は共形質転換された宿主細胞(特に内因性DHFRを含む野生型宿主)は、例えばカナマイシン、ネオマイシン、又はG418などのアミノグリコシド抗生物質のような選択可能なマーカーの選択剤を含む培地における細胞増殖により選択することができる。米国特許第4965199参照。
0132
酵母における使用に適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb et al., Nature, 282:39 (1979))。trp1遺伝子は、ATCC番号44076又はPEP4−1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母の突然変異株の選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977)。次いで、酵母宿主細胞ゲノムにおけるtrp1損傷の存在により、トリプトファンの非存在下における増殖による形質転換の検出に効果的な環境が提供される。同様に、Leu2欠乏酵母株(ATCC20622又は38626)が、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドにより補完される。
0133
加えて、1.6μmの円形プラスミドpKD1から誘導されるベクターを、クリベロマイシス酵母の形質転換に使用することができる。代替的に、組換え仔ウシキモシン大規模生産用の発現系が、クルイベロマイシスラクチスについて報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。クルイベロマイシスの工業用菌株による成熟した組換えヒト血清アルブミンの分泌のための適切なマルチコピー発現ベクターも開示されている。Fleer et al., Bio/Technology, 9:968-975 (1991)。
0134
(d)プロモーター成分
発現ベクター及びクローニングベクターは、一般に、宿主生物体によって認識され、抗体をコードする核酸に動作可能に連結されたプロモーターを含む。原核生物宿主との使用に適したプロモーターには、phoAプロモーター、β−ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びtacプロモーターのようなハイブリッドプロモーターが含まれる。しかしながら、他の既知の細菌プロモーターも適している。細菌系に使用されるプロモーターも、抗体をコードするDNAに動作可能に連結されたシャイン−ダルガーノ(S.D.)配列を含むであろう。
0135
プロモーター配列が真核生物について知られている。事実上、すべての真核生物遺伝子は、転写開始部位から約25〜30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に見られる別の配列は、CNCAAT領域であり、この領域ではNはいずれかのヌクレオチドでよい。大部分の真核生物遺伝子の3’末端は、コード配列の3’末端へのポリA末尾の付加のためのシグナルでありうるAATAAA配列である。これら配列のすべては、真核生物の発現ベクター中に適切に挿入される。
0136
酵母宿主と共に使用するための適切なプロモーター配列の例には、3−ホスホグリセラートキナーゼ、又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼのプロモーターが含まれる。
0137
増殖条件によって転写が制御されるという更なる利点を有するプロモーターを誘導できる他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、並びにマルトース及びガラクトースを利用するための酵素のプロモーター領域である。酵母発現に用いられる適切なベクター及びプロモーターは、EP73657に更に記載されている。酵母エンハンサーも、酵母プロモーターと共に有利に使用される。
0138
哺乳動物の宿主細胞中のベクターからの抗体転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えばアドノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、サルウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノム、又はアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーターなどの異種哺乳動物プロモーターから得られるプロモーター、又は熱衝撃プロモーターにより、そのようなプロモーターが宿主細胞系と適合する限り、制御することができる。
0139
SV40ウイルスの早期及び後期プロモーターは、やはりSV40ウイルスの複製開始点を含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウイルスを用いた哺乳動物宿主においてDNAを発現する系は、米国特許第4419446号に開示されている。この系の修飾は、米国特許第4601978号に記載されている。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞中におけるヒトβ−インターフェロンcDNAの発現について、Reyes et al., Nature 297:598-601 (1982)も参照されたい。代替的に、ラウス肉腫ウイルスの長い末端リピートをプロモーターとして使用することができる。
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