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課題
解決手段
概要
背景
概要
履物用部材の熱による損傷を防止しつつ、高い強度で履物用部材を接合できる履物用高周波誘電加熱接着シートを提供すること。高周波誘電接着剤層を有し、前記高周波誘電接着剤層は、熱可塑性樹脂(A)と、誘電フィラー(B)と、を含有し、前記高周波誘電接着剤層は、前記誘電フィラー(B)を、10体積%以上、50体積%以下含有し、履物を構成する履物用部材を接合することに用いられる、履物用高周波誘電加熱接着シート1。
目的
本発明の目的は、履物用部材の熱による損傷を防止しつつ、高い強度で履物用部材を接合できる履物用高周波誘電加熱接着シートを提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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請求項1
高周波誘電接着剤層を有し、前記高周波誘電接着剤層は、熱可塑性樹脂(A)と、誘電フィラー(B)と、を含有し、前記高周波誘電接着剤層は、前記誘電フィラー(B)を、10体積%以上、50体積%以下含有し、履物を構成する履物用部材を接合することに用いられる、履物用高周波誘電加熱接着シート。
請求項2
請求項3
請求項1又は請求項2に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記熱可塑性樹脂(A)は、極性部位を有するポリオレフィン系樹脂である、履物用高周波誘電加熱接着シート。
請求項4
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記履物用高周波誘電加熱接着シートのヤング率は、40MPa以上、600MPa以下である、履物用高周波誘電加熱接着シート。
請求項5
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記履物用高周波誘電加熱接着シートのJISK7196:2012に準拠して測定される軟化温度は、50℃以上、210℃以下である、履物用高周波誘電加熱接着シート。
請求項6
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記高周波誘電接着剤層のメルトフローレートは、1g/10分以上、80g/10分以下である、履物用高周波誘電加熱接着シート。
請求項7
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記高周波誘電接着剤層の1Hzにおける損失正接ピーク温度が、0℃以下である、履物用高周波誘電加熱接着シート。
請求項8
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記履物用部材は、天然皮革、合成皮革、天然繊維、化学繊維、樹脂成形体、ゴム成形体からなる群から選択される少なくとも一種である、履物用高周波誘電加熱接着シート。
請求項9
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記履物用部材の少なくとも一つが発泡体である、履物用高周波誘電加熱接着シート。
請求項10
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、湿熱試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力の変化率R1が、80%以上、120%以下である、履物用高周波誘電加熱接着シート。変化率R1={(湿熱試験後の引張破壊応力)/(湿熱試験前の引張破壊応力)}×100(前記湿熱試験は、前記履物用高周波誘電加熱接着シートを、7日間、温度85℃及び湿度85%RHの条件下に置く試験である。前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力は、JISK7161−1:2014及びJISK7127:1999に準拠して測定される。)
請求項11
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、動的屈曲性試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力の変化率R2が、80%以上、120%以下である、履物用高周波誘電加熱接着シート。変化率R2={(動的屈曲性試験後の引張破壊応力)/(動的屈曲性試験前の引張破壊応力)}×100(前記動的屈曲性試験は、前記履物用高周波誘電加熱接着シートから、150mm(MD方向)×15mm(TD方向)サイズのサンプルを作成し、屈曲条件が、最小屈曲径10mmφ、屈曲回数が、3万回、屈曲速度が、30rpmの条件で実施する試験である。前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力は、JISK7161−1:2014及びJISK7127:1999に準拠して測定される。
請求項12
前記履物用部材としての第1履物用部材と第2履物用部材とが、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートにより接合されている履物。
請求項13
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の履物用高周波誘電加熱接着シートを用いて前記履物用部材を接合する工程を有する、履物の製造方法。
請求項14
請求項13に記載の履物の製造方法であって、前記履物用部材は、第1履物用部材と第2履物用部材とを含み、前記第1履物用部材と前記第2履物用部材との間に、前記履物用高周波誘電加熱接着シートを配置する工程と、前記第1履物用部材と前記第2履物用部材との間に配置した、前記履物用高周波誘電加熱接着シートに対して、周波数が1MHz以上、100MHz以下の条件で、誘電加熱処理を行う工程と、を含む、履物の製造方法。
請求項15
技術分野
背景技術
先行技術
0004
特開2010−273695号公報
発明が解決しようとする課題
0005
特許文献1に係る接合技術においては、甲被を構成する表地の材料及び熱可塑性樹脂製下面シートの材料として、高周波溶着が可能な熱可塑性樹脂である熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を使用する旨が記載されている。特許文献1によれば、このような材質の熱可塑性樹脂製下面シートと甲被とをウェルダーにて高周波溶着することで接合して靴本体が組み立てられ、この靴本体と本底とが接着剤により接合されて防水靴が得られる。
そのため、特許文献1に記載の接合技術を採用する場合、甲被が高周波溶着可能な材料で構成されているため、甲被が高周波溶着時に加熱されて、熱による損傷が生じるおそれがある。また、靴本体と本底とは、高周波溶着ではなく接着剤により接合されているため、溶剤の問題又は接合強度の問題が生じるおそれがある。
0006
さらに、縫合無しでも、様々な履物用部材同士をより強固に接合できる高周波誘電加熱接着シートが求められている。
0007
本発明の目的は、履物用部材の熱による損傷を防止しつつ、高い強度で履物用部材を接合できる履物用高周波誘電加熱接着シートを提供することである。
また、本発明の別の目的は、当該履物用高周波誘電加熱接着シートを用いた履物、及び履物の製造方法を提供することでもある。
課題を解決するための手段
0008
本発明の一態様によれば、高周波誘電接着剤層を有し、前記高周波誘電接着剤層は、熱可塑性樹脂(A)と、誘電フィラー(B)と、を含有し、前記高周波誘電接着剤層は、前記誘電フィラー(B)を、10体積%以上、50体積%以下含有し、履物を構成する履物用部材を接合することに用いられる、履物用高周波誘電加熱接着シートが提供される。
0010
本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記熱可塑性樹脂(A)は、極性部位を有するポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
0011
本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記履物用高周波誘電加熱接着シートのヤング率は、40MPa以上、600MPa以下であることが好ましい。
0012
本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記履物用高周波誘電加熱接着シートのJIS K 7196:2012に準拠して測定される軟化温度は、50℃以上、210℃以下であることが好ましい。
0013
本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記高周波誘電接着剤層のメルトフローレートは、1g/10分以上、80g/10分以下であることが好ましい。
0014
本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記高周波誘電接着剤層の1Hzにおける損失正接ピーク温度が、0℃以下であることが好ましい。
0015
本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記履物用部材は、天然皮革、合成皮革、天然繊維、化学繊維、樹脂成形体、ゴム成形体からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
0016
本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記履物用部材の少なくとも一つが発泡体であることが好ましい。
0017
本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、湿熱試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力の変化率R1が、80%以上、120%以下であることが好ましい。
変化率R1={(湿熱試験後の引張破壊応力)/(湿熱試験前の引張破壊応力)}×100
(前記湿熱試験は、前記履物用高周波誘電加熱接着シートを、7日間、温度85℃及び湿度85%RHの条件下に置く試験である。
前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力は、JIS K 7161−1:2014及びJIS K 7127:1999に準拠して測定される。)
0018
本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにおいて、動的屈曲性試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力の変化率R2が、80%以上、120%以下であることが好ましい。
変化率R2={(動的屈曲性試験後の引張破壊応力)/(動的屈曲性試験前の引張破壊応力)}×100
(前記動的屈曲性試験は、前記履物用高周波誘電加熱接着シートから、150mm(MD方向)×15mm(TD方向)サイズのサンプルを作成し、屈曲条件が、最小屈曲径10mmφ、屈曲回数が、3万回、屈曲速度が、30rpmの条件で実施する試験である。
前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力は、JIS K 7161−1:2014及びJIS K 7127:1999に準拠して測定される。
0019
本発明の一態様によれば、前記履物用部材としての第1履物用部材と第2履物用部材とが、前述の本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにより接合されている履物が提供される。
0020
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る履物用高周波誘電加熱接着シートを用いて前記履物用部材を接合する工程を有する履物の製造方法が提供される。
0021
本発明の一態様に係る履物の製造方法において、
前記履物用部材は、第1履物用部材と第2履物用部材とを含み、
前記第1履物用部材と前記第2履物用部材との間に、前記履物用高周波誘電加熱接着シートを配置する工程と、
前記第1履物用部材と前記第2履物用部材との間に配置した、前記履物用高周波誘電加熱接着シートに対して、周波数が1MHz以上、100MHz以下の条件で、誘電加熱処理を行う工程と、を含む、ことが好ましい。
0022
本発明の一態様に係る履物の製造方法において、
前記誘電加熱処理を行う工程における高周波出力が0.01kW以上、20kW以下であり、高周波印加時間が1秒以上、60秒以下である、ことが好ましい。
発明の効果
0023
本発明の一態様によれば、履物用部材の熱による損傷を防止しつつ、高い強度で履物用部材を接合できる履物用高周波誘電加熱接着シートを提供できる。
また、本発明の別の一態様によれば、当該履物用高周波誘電加熱接着シートを用いた履物、及び履物の製造方法も提供できる。
図面の簡単な説明
0024
(A)は、第1実施形態に係る履物の側面図であり、(B)は、第1実施形態に係る履物を構成する履物用部材を分離して示す側面図である。
第1実施形態に係る履物の製造方法を説明する断面概略図である。
(A)は、第2実施形態に係る履物の側面図であり、(B)は、第2実施形態に係る履物を構成する履物用部材を分離して示す側面図である。
変形例に係る履物の製造方法を説明する断面概略図である。
0025
〔第1実施形態〕
[履物用高周波誘電加熱接着シート]
本実施形態に係る履物用高周波誘電加熱接着シートは、高周波誘電接着剤層を含む。高周波誘電接着剤層は、熱可塑性樹脂(A)及び誘電フィラー(B)を含有する。本実施形態に係る履物用高周波誘電加熱接着シートは、履物用部材を接合することに用いられる。本明細書において、熱可塑性樹脂(A)をA成分と称する場合もある。本明細書において、誘電フィラー(B)をB成分と称する場合もある。
履物用高周波誘電加熱接着シート及び高周波誘電接着剤層の詳細については後述する。
0026
(1)高周波誘電加熱接着シートの使用態様
本実施形態に係る履物用高周波誘電加熱接着シートは、履物用部材を接合することに用いられる。本実施形態に係る履物用高周波誘電加熱接着シートを用いて、履物用部材を接合することで、履物を製造できる。本実施形態に係る履物の一態様としては、例えば、履物用部材としての第1履物用部材と第2履物用部材とが、本実施形態に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにより接合されている履物が挙げられる。本明細書において、履物用高周波誘電加熱接着シートを、「高周波誘電加熱接着シート」と称する場合がある。
0027
(履物)
図1(A)には、第1実施形態に係る履物3の側面図が示されている。
図1(B)には、第1実施形態に係る履物3を構成する複数の履物用部材を互いに分離して示す側面図が示されている。
本実施形態に係る履物3は、靴である。履物3は、甲被11と、中底12と、本底21と、を有する。本実施形態に係る履物3においては、中底12を第1履物用部材とし、本底21を第2履物用部材として、中底12と本底21とが履物用高周波誘電加熱接着シート1で接合されている。また、本実施形態に係る履物3においては、甲被11を第3履物用部材とし、甲被11と本底21とが履物用高周波誘電加熱接着シート1で接合されている。このように、本実施形態に係る履物用部材は、少なくとも2つであり、3つ以上であってもよい。
また、履物用部材としては、甲被、中底及び本底に限定されず、その他の履物に使用される従来公知の部材(例えば、先芯、月型芯等)であってもよい。甲被はアッパーと称する場合がある。中底はインソールと称する場合がある。本底はアウトソールと称する場合がある。
0028
(履物用部材)
本実施形態に係る履物を構成する部材(履物用部材)は、特に限定されない。
履物用部材は、天然皮革、合成皮革、天然繊維、化学繊維、樹脂成形体及びゴム成形体からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
0029
合成皮革、化学繊維及び樹脂成形体における樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)及びポリスチレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネート(PC)等)、アクリル系、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ナイロン及びポリ乳酸等が挙げられる。履物用部材における合成皮革、化学繊維及び樹脂成形体における樹脂は、1種の樹脂でもよく、2種以上の樹脂の組合せでもよい。
0030
ゴム成形体におけるゴムとしては、例えば、天然ゴム及び合成ゴムが挙げられ、合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム、ニトリル・ブタジエンゴム、イソプレンゴム及びウレタンゴムが挙げられる。
0034
再生繊維としては、例えば、ビスコース繊維(レーヨン及びポリノジック)、銅アンモニア繊維(キュプラ)、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、アルギン繊維、キチン繊維及びカゼイン繊維等が挙げられる。
0036
合成繊維としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル系繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリクラール繊維及びポリ乳酸繊維等が挙げられる。
0040
動物繊維としては、獣毛(羊毛、アンゴラ、モヘア、カシミア、アルパカ、キャメル、ビキューナ)、絹(シルク)及び羽毛(ダウン、フェザー)が挙げられる。
履物用部材は、1種類の繊維から構成されていてもよいし、2種類以上の繊維から構成されていてもよい。
0041
甲被(アッパー)の材料としては、例えば、天然皮革、人工皮革、合成皮革、天然繊維、化学繊維、樹脂成形体及びゴム成形体等が挙げられる。
0042
中底の材料としては、例えば、樹脂成形体、天然繊維及び天然皮革等が挙げられる。
0043
本底の材料としては、例えば、天然皮革、ゴム成形体及び樹脂成形体等が挙げられる。本底は、発泡体で構成されていることも好ましい。本底が、ミッドソールとアウトソールとで構成される多層構造の場合、アウトソールの材質としては、例えば、天然皮革、ゴム成形体及び樹脂成形体が挙げられ、ミッドソールの材質としては、例えば、樹脂成形体等が挙げられる。
履物用部材は、1種類の材料から構成されていてもよいし、2種類以上の材料から構成されていてもよい。
0044
(2)履物の製造方法
本実施形態に係る履物の製造方法は、履物を構成する部材(履物用部材)を、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを用いて接合する工程(接合工程)を有する。
接合工程は、誘電加熱処理によって履物用部材同士を接合する接合方法を含むことが好ましい。この履物用部材の接合方法は、下記工程(P1)及び工程(P2)を含むことがより好ましい。
0045
工程(P1):第1履物用部材と第2履物用部材との間に、履物用高周波誘電加熱接着シートを配置する工程
0046
工程(P2):第1履物用部材と第2履物用部材との間に配置した、履物用高周波誘電加熱接着シートに対して、誘電加熱接着装置を用いて、誘電加熱処理を行う工程
0047
工程(P1)は、履物用高周波誘電加熱接着シートを、所定場所に配置する工程である。具体的には、工程(P1)は、第1履物用部材と第2履物用部材との間に、履物用高周波誘電加熱接着シートを挟持する工程である。
0048
履物用高周波誘電加熱接着シートは、第1履物用部材と第2履物用部材とを接合できるように、第1履物用部材と第2履物用部材との間に挟持すればよい。履物用高周波誘電加熱接着シートは、第1履物用部材と第2履物用部材との間の一部において、複数箇所において又は全面において挟持すればよい。第1履物用部材と第2履物用部材との接合強度を向上させる観点から、第1履物用部材と第2履物用部材との接合面全体に亘って履物用高周波誘電加熱接着シートを挟持することが好ましい。
0049
また、第1履物用部材と第2履物用部材との間の一部において履物用高周波誘電加熱接着シートを挟持する一態様としては、第1履物用部材と第2履物用部材との接合面の外周に沿って履物用高周波誘電加熱接着シートを枠状に配置して、第1履物用部材と第2履物用部材との間で挟持する態様が挙げられる。このように履物用高周波誘電加熱接着シートを枠状に配置することで、第1履物用部材と第2履物用部材との接合強度を得るとともに、接合面全体に亘って履物用高周波誘電加熱接着シートを配置した場合に比べて履物を軽量化できる。
0050
また、第1履物用部材と第2履物用部材との間の一部に履物用高周波誘電加熱接着シートを挟持する一態様によれば、用いる履物用高周波誘電加熱接着シートのサイズを小さくできるため、接合面全体に亘って履物用高周波誘電加熱接着シートを配置した場合に比べて高周波誘電加熱処理時間を短縮できる。
0051
工程(P2)は、第1履物用部材と第2履物用部材との間に配置した、履物用高周波誘電加熱接着シートに対して、誘電加熱接着装置を用いて、誘電加熱処理を行う工程である。
次に、工程(P2)において使用する誘電加熱接着装置及びその誘電加熱処理の条件について、説明する。ここでは、履物3を製造する例を挙げて説明する。
0052
(3)誘電加熱接着装置
図2には、履物の製造方法の一部の工程である履物用部材の接合方法(工程(P1)及び工程(P2))を説明するための断面概略図が示されている。また、図2には、本実施形態に係る履物用部材の接合方法に用いる誘電加熱接着装置100の概略図も示されている。
誘電加熱接着装置100は、第1高周波印加電極160と、第2高周波印加電極180と、高周波電源200と、を備えている。
第1高周波印加電極160と、第2高周波印加電極180とは、互いに対向配置されている。第1高周波印加電極160及び第2高周波印加電極180は、プレス機構を有している。このプレス機構により、中底12、履物用高周波誘電加熱接着シート1及び本底21を、第1高周波印加電極160と第2高周波印加電極180との間で加圧処理できる。
本実施形態に係る接合方法においては、甲被11と中底12とで構成される本体部10の内部に第1高周波印加電極160を配置し、本底21の下面側に第2高周波印加電極180を配置している。本体部10の内部に配置する第1高周波印加電極160は、図2に示すように、中底12の形状に追従する形状を有することが好ましい。第1高周波印加電極160の形状が中底12の形状に追従することで、第1高周波印加電極160を中底12に当接させ易くなる。その結果、第1高周波印加電極160と第2高周波印加電極180との間で中底12、履物用高周波誘電加熱接着シート1及び本底21を挟持し易い。
0053
第1高周波印加電極160と第2高周波印加電極180とが互いに平行な1対の平板電極を構成している場合、このような電極配置の形式を平行平板タイプと称する場合がある。
高周波の印加には平行平板タイプの高周波誘電加熱装置を用いることも好ましい。平行平板タイプの高周波誘電加熱装置であれば、高周波が電極間に位置する高周波誘電加熱接着シートを貫通するので、高周波誘電加熱接着シート全体を暖めることができ、被着体と高周波誘電加熱接着シートとを短時間で接着できる。
0054
第1高周波印加電極160及び第2高周波印加電極180のそれぞれに、例えば、周波数27.12MHz程度又は周波数40.68MHz程度の高周波を印加するための高周波電源200が接続されている。
誘電加熱接着装置100は、図2に示すように、中底12と本底21との間に挟持した履物用高周波誘電加熱接着シート1を介して、誘電加熱処理する。さらに、誘電加熱接着装置100は、誘電加熱処理に加えて、第1高周波印加電極160及び第2高周波印加電極180による加圧処理によって、中底12と本底21とを接着する。
0055
第1高周波印加電極160及び第2高周波印加電極180の間に、高周波電界を印加すると、中底12及び本底21の重ね合わせ部分において、履物用高周波誘電加熱接着シート1における接着剤成分中に分散された誘電フィラー(図示せず)が、高周波エネルギーを吸収する。
そして、B成分としての誘電フィラーは、発熱源として機能し、その発熱によって、A成分としての熱可塑性樹脂成分を溶融させ、短時間処理であっても、最終的には、中底12と本底21とを強固に接着できる。
0056
第1高周波印加電極160及び第2高周波印加電極180は、プレス機構を有することから、プレス装置としても機能する。そのため、第1高周波印加電極160及び第2高周波印加電極180による圧縮方向への加圧及び履物用高周波誘電加熱接着シート1の加熱溶融によって、中底12と本底21とをより強固に接着できる。
0057
(4)高周波誘電加熱接着条件
高周波誘電加熱接着条件は、適宜変更できるが、以下の条件であることが好ましい。
0058
高周波出力は、10W以上であることが好ましく、50W以上であることがより好ましく、100kW以上であることがさらに好ましい。
高周波出力は、50kW以下であることが好ましく、20kW以下であることが好ましく、15kW以下であることがより好ましく、10kW以下であることがさらに好ましく、1kW以下であることがよりさらに好ましい。
高周波出力が10W以上であれば、誘電加熱処理によって、温度が上昇し難く、良好な接着力が得られないという不具合を防ぎ易い。
高周波出力が50kW以下であれば、誘電加熱処理による温度制御が困難となる不具合を防ぎ易い。消費電力の観点からは、小さい高周波出力であることが好ましいが、接着力とのバランスも考慮して、適宜、高周波出力を設定することが好ましい。
0059
高周波の印加時間は、1秒以上であることが好ましい。
高周波の印加時間は、60秒以下が好ましく、45秒以下が好ましく、35秒以下であることが好ましく、25秒以下であることがより好ましく、10秒以下であることがさらに好ましい。
高周波の印加時間が1秒以上であれば、誘電加熱処理によって、温度が上昇し難く、良好な接着力が得られないという不具合を防ぎ易い。
高周波の印加時間が60秒以下であれば、履物3の製造効率が低下したり、製造コストが高くなったり、さらには、履物用部材(甲被11、中底12及び本底21)並びに履物3が熱劣化するといった不具合を防ぎ易い。
0060
高周波の周波数は、1kHz以上であることが好ましく、1MHz以上であることがより好ましく、5MHz以上であることがさらに好ましく、10MHz以上であることがよりさらに好ましい。
高周波の周波数は、300MHz以下であることが好ましく、100MHz以下であることがより好ましく、80MHz以下であることがさらに好ましく、50MHz以下であることがよりさらに好ましい。具体的には、国際電気通信連合により割り当てられた工業用周波数帯13.56MHz、27.12MHz又は40.68MHzが、本実施形態の高周波誘電加熱接着方法にも利用される。
0061
(5)高周波誘電加熱接着シート及び高周波誘電接着剤層
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、一態様としては高周波誘電接着剤層の一層のみからなる。なお、本発明に係る高周波誘電加熱接着シートは、高周波誘電接着剤層の一層のみからなる態様に限定されず、高周波誘電加熱接着シートの変形例としては、高周波誘電接着剤層以外の層が積層されている態様も挙げられる。
このように、高周波誘電加熱接着シートは、高周波誘電接着剤層の一層のみからなる場合があるため、本明細書において、「高周波誘電加熱接着シート」という用語と、「高周波誘電接着剤層」という用語は、場合によっては、互いに入れ替えることが可能である。
0062
高周波誘電加熱接着シートの組成(例えば、熱可塑性樹脂(A)及び誘電フィラー(B))を適宜変更することで、様々な材質の履物用部材に対して強固に接合できる。
0063
(5.1)熱可塑性樹脂(A)
熱可塑性樹脂(A)の種類は、特に制限されない。
熱可塑性樹脂(A)は、例えば、融解し易いとともに、所定の耐熱性を有する等の観点から、ポリオレフィン系樹脂、極性部位を有するポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、フェノキシ系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
0064
熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂又は極性部位を有するポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
0065
熱可塑性樹脂(A)としてのポリオレフィン系樹脂は、極性部位を有さないポリオレフィン系樹脂でもよい。
0066
(ポリオレフィン系樹脂)
熱可塑性樹脂(A)としてのポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のホモポリマーからなる樹脂、並びにエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン及び4−メチルペンテン等からなる群から選択されるモノマーの共重合体からなるα−オレフィン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂(A)としてのポリオレフィン系樹脂は、一種単独の樹脂でもよいし、二種以上の樹脂の組み合わせでもよい。
0067
(極性部位を有するポリオレフィン系樹脂)
極性部位を有するポリオレフィン系樹脂における極性部位は、ポリオレフィン系樹脂に対して極性を付与できる部位であれば特に限定されない。極性部位を有するポリオレフィン系樹脂は、履物用部材に対して高い接着力を示すので好ましい。
熱可塑性樹脂(A)は、オレフィン系モノマーと極性部位を有するモノマーとの共重合体であってもよい。また、熱可塑性樹脂(A)は、オレフィン系モノマーの重合によって得られたオレフィン系ポリマーに極性部位を付加反応等の変性により導入させた樹脂でもよい。
0068
熱可塑性樹脂(A)としての極性部位を有するポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィン系モノマーの種類については、特に制限されない。オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン及び4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。オレフィン系モノマーは、これらの一種単独で用いられてもよく、二種以上の組み合わせで用いられてもよい。
オレフィン系モノマーは、機械的強度に優れ、安定した接着特性が得られるという観点から、エチレン及びポリプロピレンが好ましい。
極性部位を有するポリオレフィン系樹脂におけるオレフィン由来の構成単位は、エチレン又はプロピレンに由来する構成単位であることが好ましい。
0070
極性部位としての酸変性構造は、ポリオレフィン系樹脂を酸変性することによって導入される部位である。ポリオレフィン系樹脂をグラフト変性する際に用いる化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物及び不飽和カルボン酸のエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分が挙げられる。
0073
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、シトラコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル及びテトラヒドロ無水フタル酸ジメチル等の不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
0074
熱可塑性樹脂(A)がオレフィン系モノマーと極性部位を有するモノマーとの共重合体である場合、当該共重合体は、極性部位を有するモノマー由来の構成単位を2質量%以上含むことが好ましく、4質量%以上含むことがより好ましく、5質量%以上含むことがさらに好ましく、6質量%以上含むことがよりさらに好ましい。また、当該共重合体は、極性部位を有するモノマー由来の構成単位を30質量%以下含むことが好ましく、25質量%以下含むことがより好ましく、20質量%以下含むことがさらに好ましく、15質量%以下含むことがよりさらに好ましい。
当該共重合体が極性部位を有するモノマー由来の構成単位を2質量%以上含むことで、高周波誘電加熱接着シートの接着強度が向上する。接着強度が向上することで、履物3における中底と本底とを強固に接合できる。その結果、履物3を履いて歩行している際、走行している際、登山をしている際など、中底と本底との界面に大きな応力が加わる使用時でも、本底が中底から剥れる不具合を防止できる。
また、当該共重合体が極性部位を有するモノマー由来の構成単位を30質量%以下含むことで、熱可塑性樹脂(A)のタックが強くなり過ぎることを抑制できる。その結果、高周波誘電加熱接着シートの成形加工が困難になるのを防止できる。また、当該共重合体が極性部位を有するモノマー由来の構成単位を30質量%以下含むことで、高周波誘電接着剤層の耐水性及び耐溶剤性が低下することを抑制できる。
0075
熱可塑性樹脂(A)としてのポリオレフィン系樹脂が酸変性構造を有する場合、酸による変性率は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(A)としてのポリオレフィン系樹脂が酸変性構造を有する場合、酸による変性率は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(A)が酸変性構造を有する場合、酸による変性率が、0.01質量%以上であることで、高周波誘電加熱接着シートの接着強度が向上する。また、酸による変性率が30質量%以下であることで、熱可塑性樹脂(A)のタックが強くなり過ぎることを抑制できる。その結果、高周波誘電加熱接着シートの成形加工が困難になるのを防止できる。また、当該共重合体における酸による変性率が30質量%以下であれば、高周波誘電接着剤層の耐水性及び耐熱性が低下することを抑制できる。
本明細書において、変性率は、酸変性ポリオレフィンの総質量に対する酸に由来する部分の質量の百分率である。
0076
(無水マレイン酸変性ポリオレフィン)
熱可塑性樹脂(A)としてのポリオレフィン系樹脂は、酸変性構造として、酸無水物構造を有することがより好ましい。酸無水物構造は、無水マレイン酸によってポリオレフィン系樹脂を変性した際に導入される構造であることが好ましい。
A成分としての無水マレイン酸変性ポリオレフィンにおいて、無水マレイン酸による変性率は、熱可塑性樹脂(A)としてのポリオレフィン系樹脂が酸変性構造を有する場合の変性率と同様の範囲であることが好ましく、当該範囲内であることで得られる効果も、熱可塑性樹脂(A)としてのポリオレフィン系樹脂が酸変性構造を有する場合と同様である。
0077
無水マレイン酸変性ポリオレフィンにおけるオレフィン由来の構成単位は、エチレン又はプロピレンに由来する構成単位であることが好ましい。すなわち、無水マレイン酸変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂又は無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
0078
(オレフィン−酢酸ビニル共重合樹脂)
本実施形態に係る熱可塑性樹脂(A)は、オレフィン由来の構成単位と、酢酸ビニル由来の構成単位とを含む共重合体(オレフィン−酢酸ビニル共重合樹脂)であることも好ましい。
熱可塑性樹脂(A)としてのオレフィン−酢酸ビニル共重合樹脂は、酢酸ビニル由来の構成単位を、熱可塑性樹脂(A)がオレフィン系モノマーと極性部位を有するモノマーとの共重合体における極性部位を有するモノマー由来の構成単位と同様の範囲で有することが好ましく、当該範囲内で得られる効果も、熱可塑性樹脂(A)がオレフィン系モノマーと極性部位を有するモノマーとの共重合体である場合と同様である。
0079
オレフィン−酢酸ビニル共重合樹脂におけるオレフィン由来の構成単位は、機械的強度に優れ、安定した接着性を得られるという観点から、エチレン又はプロピレンに由来する構成単位であることが好ましい。
したがって、熱可塑性樹脂(A)は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂及びプロピレン−酢酸ビニル共重合樹脂の少なくとも一種であることが好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂であることがより好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂及びプロピレン−酢酸ビニル共重合樹脂における酢酸ビニル由来の構成単位についても、オレフィン−酢酸ビニル共重合樹脂について説明した百分率(質量%)と同様の範囲であることが好ましい。
0080
(軟化温度)
熱可塑性樹脂(A)のJIS K 7196:2012に準拠して測定される軟化温度は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(A)のJIS K 7196:2012に準拠して測定される軟化温度は、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(A)の軟化温度が、40℃以上であれば、高周波誘電接着剤層の耐熱性を向上させることができる。本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを用いて履物用部材を接合させて得た履物3が高温環境(例えば、真夏のような高温環境)の下に置かれても、履物用部材間(例えば、中底12と本底21との間)の接合状態を確保できる。
熱可塑性樹脂(A)の軟化温度が、200℃以下であれば、短時間で安定した接合強度が得られ易くなる。短時間で安定した接合強度が得られれば、履物用部材に対する熱の影響を抑制できる。
0081
(平均分子量)
熱可塑性樹脂(A)の平均分子量(質量平均分子量)は、通常、5000以上であることが好ましく、1万以上であることがより好ましく、2万以上であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(A)の平均分子量(質量平均分子量)は、30万以下であることが好ましく、20万以下であることがより好ましく、10万以下であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(A)の質量平均分子量が、5000以上であれば、耐熱性及び接着力が著しく低下することを防止できる。
熱可塑性樹脂(A)の質量平均分子量が、30万以下であれば、誘電加熱処理を実施した際の溶着性等が著しく低下することを防止できる。
熱可塑性樹脂(A)の質量平均分子量は、例えば、JIS K 7252-4:2016に準拠してSEC法により測定できる。
0082
(メルトフローレート)
熱可塑性樹脂(A)のメルトフローレート(Melt flow rate,MFR)は、通常、次のような範囲であることが好ましい。
熱可塑性樹脂(A)のMFRは、後述の条件下で、0.5g/10分以上であることが好ましく、2g/10分以上であることがより好ましく、5g/10分以上であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(A)のMFRは、後述の条件下で、50g/10分以下であることが好ましく、40g/10分以下であることがより好ましく、30g/10分以下であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(A)のMFRが0.5g/10分以上であれば、流動性が維持でき、膜厚精度が得られ易い。また、熱可塑性樹脂(A)のMFRが0.5g/10分以上であれば、表面に凹凸を有する履物用部材に対する高周波誘電加熱接着シートの追従性が向上する。また、履物用部材表面の凹凸に溶融した高周波誘電接着剤層が侵入し、その後、高周波誘電接着剤層が固化することで、いわゆるアンカー効果が生じ、履物用部材に対する高周波誘電接着剤層の接合強度がさらに向上する。
熱可塑性樹脂(A)のMFRが50g/10分以下であれば、造膜性を得易い。
熱可塑性樹脂(A)のMFRは、後述する実施例の項目において説明する方法により測定できる。
なお、試験温度は、JIS K 7210−1:2014に準拠する。例えば、熱可塑性樹脂(A)におけるオレフィン由来の構成単位がポリエチレンの場合、試験温度は、190℃である。熱可塑性樹脂(A)におけるオレフィン由来の構成単位がポリプロピレンの場合、試験温度は、230℃である。
0083
(5.2)誘電フィラー(B)
誘電フィラー(B)は、1kHz以上、300MHz以下の高周波の印加により発熱することが好ましい。さらに、誘電フィラー(B)は、例えば、周波数27.12MHz又は40.68MHz等の高周波の印加により、発熱可能な誘電特性を有する高周波吸収性充填剤であることが好ましい。
0084
(体積含有率)
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層は、誘電フィラー(B)を、10体積%以上、50体積%以下含有する。
本実施形態に係る履物用高周波誘電加熱接着シートは、誘電フィラー(B)を、高周波誘電接着剤層中に11体積%以上含有することがより好ましく、13体積%以上含有することがさらに好ましく、15体積%以上含有することがよりさらに好ましい。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、誘電フィラー(B)を、高周波誘電接着剤層中に45体積%以下含有することがより好ましく、35体積%以下含有することがさらに好ましく、25体積%以下含有することがよりさらに好ましい。
誘電フィラー(B)の体積含有率が、10体積%以上であれば、誘電加熱処理の際に発熱性が乏しくなることを防止できる。その結果、高周波誘電加熱接着層が発熱し難く履物用部材が発熱するという不具合を防止できる。さらに、熱可塑性樹脂(A)の溶融性が過度に低下して強固な接着力が得られないという不具合も防止できる。
誘電フィラー(B)の体積含有率が、50体積%以下であれば、誘電加熱処理の際に、高周波誘電加熱接着シートの流動性が低下したり、高周波を印加した際に電極間で通電したりすることを防止できる。また、誘電フィラー(B)の体積含有率が、50体積%以下であれば、高周波誘電加熱接着シートの製膜性、フレキシブル性及び靭性の低下を防止できる。高周波誘電加熱接着層がフレキシブル性を有することで、例えば、履物3が屈曲した場合に、高周波誘電加熱接着層もその屈曲に追従できる。誘電フィラー(B)の体積含有率が、50体積%以下であれば、高周波誘電接着剤層の重量が高くなることを防止でき、履物3を軽量化できる。
なお、誘電フィラー(B)の体積含有率が、50体積%を越えると、高周波誘電接着剤層が脆くなるため、高周波誘電加熱接着シートは、履物用途に適さない場合がある。
0085
なお、本実施形態に係る高周波誘電接着剤層は、熱可塑性樹脂(A)及び誘電フィラー(B)を含んでいるため、熱可塑性樹脂(A)及び誘電フィラー(B)の合計体積に対して、誘電フィラー(B)を10体積%以上含有していることが好ましく、11体積%以上含有していることがより好ましく、13体積%以上含有していることがさらに好ましく、15体積%以上含有していることがよりさらに好ましい。
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層は、熱可塑性樹脂(A)及び誘電フィラー(B)の合計体積に対して、誘電フィラー(B)を50体積%以下含有していることが好ましく、45体積%以下含有していることがより好ましく、35体積%以下含有していることがさらに好ましく、25体積%以下含有していることがよりさらに好ましい。
0086
(質量部数)
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層は、誘電フィラー(B)を、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、50質量部以上含有することが好ましく、60質量部以上含有することが好ましく、80質量部以上含有することがより好ましく、100質量部以上含有することがより好ましい。
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層は、誘電フィラー(B)を、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、600質量部以下含有することが好ましく、400質量部以下含有することが好ましく、300質量部以下含有することがより好ましく、200質量部以下含有することがさらに好ましい。
誘電フィラー(B)の質量部数が、50質量部以上であれば、誘電加熱処理の際に発熱性が乏しくなることを防止し易い。その結果、熱可塑性樹脂(A)の溶融性が過度に低下して強固な接着力が得られないという不具合を防止し易い。
誘電フィラー(B)の質量部数が、600質量部以下であれば、誘電加熱処理の際に、高周波誘電加熱接着シートの流動性が低下したり、高周波を印加した際に電極間で通電したりすることを防止し易い。また、誘電フィラー(B)の質量部数が、800質量部以下であれば、高周波誘電加熱接着シートの製膜性、フレキシブル性及び靭性の低下を防止し易い。
0087
本実施形態に係る履物用高周波誘電加熱接着シートにおいては、高周波誘電接着剤層の全体質量に対して、熱可塑性樹脂(A)及び誘電フィラー(B)の合計質量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。
0088
(種類)
誘電フィラー(B)は、酸化亜鉛、炭化ケイ素(SiC)、アナターゼ型酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ルチル型酸化チタン、水和ケイ酸アルミニウム、アルカリ金属の水和アルミノケイ酸塩等の結晶水を有する無機材料又はアルカリ土類金属の水和アルミノケイ酸塩等の結晶水を有する無機材料等の一種単独又は二種以上の組み合わせが好適である。
0089
本実施形態の一態様においては、誘電フィラー(B)は、酸化亜鉛、炭化ケイ素、又はチタン酸バリウムであることがより好ましい。
0090
本実施形態の一態様においては、誘電フィラー(B)は、金属酸化物であることが好ましく、酸化亜鉛であることがより好ましい。誘電フィラー(B)としての酸化亜鉛は、誘電特性が高く、熱可塑性樹脂(A)に及ぼす影響が少ない。また、酸化亜鉛は、種類が豊富であり、様々な形状及びサイズから選択できる。さらに、誘電フィラー(B)が酸化亜鉛であれば、高周波誘電加熱接着シートの接着特性及び機械特性を用途に合わせて改良できる。
誘電フィラー(B)としての酸化亜鉛は、接着剤成分である熱可塑性樹脂(A)中へ均一に配合し易い。そのため、高周波誘電接着剤層中の酸化亜鉛の配合量が、比較的、少量であっても、所定の誘電加熱処理において、他の誘電フィラーを配合した高周波誘電加熱接着シートと比較して、優れた発熱効果を発揮できる。
したがって、高周波誘電接着剤層が、誘電フィラー(B)として酸化亜鉛を含んでいることで、履物用部材間を接合するための誘電加熱処理において、優れた溶着性が得られる。誘電フィラー(B)として酸化亜鉛を含む高周波誘電接着剤層によれば、被着体としての履物用部材の材質及び履物の用途のバリエーションに応じた接着特性及び機械特性を発現できる。
0091
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層は、導電性物質を含有しないことが好ましい。導電性物質としては、炭素又は炭素を主成分とする炭素化合物(例えば、カーボンブラック等)及び金属等が挙げられる。導電性物質の含有量は、高周波誘電接着剤層の全体量基準で、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることがよりさらに好ましい。高周波誘電接着剤層中の導電性物質の含有量が5質量%以下であれば、誘電加熱処理した際に電気絶縁破壊して接着部及び履物用部材の炭化という不具合を防止し易い。
0092
(平均粒子径)
誘電フィラー(B)のJIS Z 8819−2:2001に準拠し測定される平均粒子径(メディアン径、D50)は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることがよりさらに好ましい。
誘電フィラー(B)のJIS Z 8819−2:2001に準拠し測定される平均粒子径(メディアン径、D50)は、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましく、15μm以下であることがよりさらに好ましい。
誘電フィラー(B)の平均粒子径が小さ過ぎると、高周波印加した際の反転運動が低下するため、誘電加熱接着性が過度に低下し、履物用部材間の強固な接着が困難となる場合がある。
一方、誘電フィラー(B)の平均粒子径が増大するにつれて、フィラー内部で分極できる距離が大きくなる。そのため、分極の度合いが大きくなり、高周波印加した際の反転運動が激しくなり、誘電加熱接着性が向上する。
したがって、誘電フィラー(B)の平均粒子径が1μm以上であれば、フィラーの種類にもよるが、フィラー内部で分極できる距離が小さくなり過ぎず、分極の度合いが小さくなることを防ぐことができる。
誘電フィラー(B)の平均粒子径が大き過ぎると、周囲の誘電フィラーとの距離が短いため、その電荷の影響を受けて高周波印加した際の反転運動が低下し、誘電加熱接着性が過度に低下したり、あるいは、履物用部材間の強固な接着が困難となったりする場合がある。
そのため、誘電フィラー(B)の平均粒子径が30μm以下であれば、誘電加熱接着性が過度に低下すること、並びに履物用部材間の強固な接着が困難となることを防止できる。
誘電フィラー(B)としての酸化亜鉛のJIS Z 8819−2:2001に準拠し測定される平均粒子径(メディアン径、D50)は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることがよりさらに好ましい。
誘電フィラー(B)としての酸化亜鉛のJIS Z 8819−2:2001に準拠し測定される平均粒子径(メディアン径、D50)は、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましく、15μm以下であることがよりさらに好ましい。
なお、誘電フィラー(B)の平均粒子径は、高周波誘電接着剤層の厚さよりも小さい値であることが好ましい。
0093
(5.3)添加剤
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層は、添加剤を含んでいてもよいし、添加剤を含んでいなくてもよい。
0094
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層が添加剤を含む場合、添加剤としては、例えば、粘着付与剤、可塑剤、ワックス、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防臭剤、香料、調湿材、カップリング剤、粘度調整剤、有機充填剤及び無機充填剤等が挙げられる。添加剤としての有機充填剤及び無機充填剤は、B成分としての誘電フィラーとは異なる。
0095
粘着付与剤及び可塑剤は、高周波誘電接着剤層の溶融特性及び接着特性を改良することができる。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂の水素化物、テルペンフェノール樹脂、クマロン・インデン樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂及び芳香族石油樹脂の水素化物が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、石油系プロセスオイル、天然油、二塩基酸ジアルキル及び低分子量液状ポリマーが挙げられる。石油系プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。天然油としては、例えば、ひまし油及びトール油等が挙げられる。二塩基酸ジアルキルとしては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルへキシル及びアジピン酸ジブチル等が挙げられる。低分子量液状ポリマーとしては、例えば、液状ポリブテン及び液状ポリイソプレン等が挙げられる。
0096
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層が添加剤を含む場合、高周波誘電接着剤層は、通常、高周波誘電接着剤層の全体量基準で、添加剤を0.01質量%以上含有することが好ましく、0.05質量%以上含有することがより好ましく、0.1質量%以上含有することがさらに好ましい。また、本実施形態に係る高周波誘電接着剤層が添加剤を含む場合、高周波誘電接着剤層は、高周波誘電接着剤層の全体量基準で、添加剤を20質量%以下含有することが好ましく、15質量%以下含有することがより好ましく、10質量%以下含有することがさらに好ましい。
0097
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層は、前述の各成分(熱可塑性樹脂(A)及び誘電フィラー(B)。必要に応じてさらに添加剤)を予備混合し、公知の混練装置を用いて混練し、公知の成形方法により製造できる。混練装置としては、例えば、押出機及び熱ロール等が挙げられる。成形方法としては、例えば、押出成形、カレンダー成形、インジェクション成形及びキャスティング成形等が挙げられる。
0098
(6)高周波誘電加熱接着シートの形態及び特性
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートが、高周波誘電接着剤層の一層のみからなる場合は、高周波誘電加熱接着シートの形態及び特性は、高周波誘電接着剤層の形態及び特性に相当する。
0099
(ヤング率)
高周波誘電加熱接着シートのヤング率は、40MPa以上であることが好ましく、60MPa以上であることがより好ましく、80MPa以上であることがさらに好ましく、100MPa以上であることがよりさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートのヤング率は、600MPa以下であることが好ましく、400MPa以下であることがより好ましく、300MPa以下であることがさらに好ましく、200MPa以下であることがよりさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートのヤング率が40MPa以上であれば、シートの自立性が小さくならず、履物の製造時においてシートを取り扱い易い。
高周波誘電加熱接着シートのヤング率が600MPa以下であれば、高周波誘電加熱接着シートは、履物3の中底12又は本底21の屈曲に追従し易い。その結果、履物3の履き心地が向上する。
高周波誘電加熱接着シートのヤング率は、JIS K 7161−1:2014およびJIS K 7127:1999により測定できる。
0100
(軟化温度)
高周波誘電加熱接着シートのJIS K 7196:2012に準拠して測定される軟化温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートのJIS K 7196:2012に準拠して測定される軟化温度は、210℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましく、110℃以下であることがよりさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの軟化温度が、50℃以上であれば、高周波誘電接着剤層の耐熱性を向上させることができる。本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを用いて履物用部材を接合させて得た履物3が高温環境(例えば、真夏のような高温環境)の下に置かれても、履物用部材間(例えば、中底12と本底21との間)の接合状態を確保できる。また、履物3を履いている際に、中底12と足との摩擦熱によって接合強度が低下することも防止できる。
高周波誘電加熱接着シートの軟化温度が、210℃以下であれば、短時間で安定した接合強度が得られ易くなる。短時間で安定した接合強度が得られれば、履物用部材に対する熱の影響を抑制できる。
0101
(メルトフローレート)
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層のメルトフローレート(Melt flow rate,MFR)が1g/10分以上であることが好ましく、3g/10分以上であることがより好ましく、5g/10分以上であることがさらに好ましく、10g/10分以上であることが特に好ましい。
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層のメルトフローレートは、80g/10分以下であることが好ましく、60g/10分以下であることがより好ましく、45g/10分以下であることがさらに好ましく、35g/10分以下であることが特に好ましい。
本明細書において、高周波誘電接着剤層のMFRを測定する際の試験温度は、230℃であり、荷重は、5kgである。
高周波誘電接着剤層のMFRが1g/10分以上であれば、流動性が維持でき、膜厚精度が得られ易い。また、高周波誘電接着剤層のMFRが1g/10分以上であれば、履物用部材(例えば、中底12又は本底21)の表面の凹凸に溶融した高周波誘電接着剤層が侵入し、その後、高周波誘電接着剤層が固化することで、いわゆるアンカー効果が生じ、履物用部材に対する高周波誘電接着剤層の接合強度がさらに向上する。
高周波誘電接着剤層のMFRが80g/10分以下であれば、造膜性が得られ易い。
高周波誘電接着剤層のMFRは、後述する実施例の項目において説明する方法により測定できる。
0102
(1Hzにおける損失正接ピーク温度)
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層の1Hzにおける損失正接ピーク温度は、0℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることがさらに好ましい。また、高周波誘電接着剤層の1Hzにおける損失正接ピーク温度は、通常、−60℃以上である。
高周波誘電接着剤層の1Hzにおける損失正接ピーク温度が0℃以下であれば、履物3が低温環境下に置かれても、接合強度を確保し易い。例えば、履物3を履いて寒冷地で過ごしたり、冷凍庫内で作業したりする際も、中底12と本底21とが剥がれるのを防止し易い。
高周波誘電接着剤層の1Hzにおける損失正接ピーク温度は、後述する実施例の項目において説明する方法により測定できる。
0103
(引張破壊応力の変化率R1)
湿熱試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力の変化率R1は、下記式で算出される。
変化率R1={(湿熱試験後の引張破壊応力)/(湿熱試験前の引張破壊応力)}×100
0104
湿熱試験は、前記履物用高周波誘電加熱接着シートを、7日間、温度85℃及び湿度85%RHの条件下に置く試験である。
履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力は、JIS K 7161−1:2014及びJIS K 7127:1999に準拠して測定される。
0105
上記湿熱試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力の変化率R1は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがよりさらに好ましい。
上記湿熱試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力の変化率R1は、120%以下であることが好ましく、115%以下であることがより好ましく、110%以下であることがさらに好ましく、105%以下であることがよりさらに好ましい。
変化率R1が80%以上であれば、中底12と本底21との接合部位が、履物3を履いて高温多湿な地域を歩行又は走行している際に、シートが脆くなり難い。
変化率R1が120%以下であれば、シートの組成物に変化が生じている可能性が低いため、履物を長期間保存しておいても品質安定性が得られやすい。
0106
高周波誘電加熱接着シートの湿熱試験後の引張破壊応力は、3MPa以上であることが好ましく、4MPa以上であることがより好ましく、5MPa以上であることがさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの湿熱試験後の引張破壊応力が3MPa以上であれば、中底12と本底21との接合部位が、履物3を履いて高温多湿な地域を歩行又は走行している際に、シートが破損し難い。
また、高周波誘電加熱接着シートの湿熱試験後の引張破壊応力は、40MPa以下であることが好ましく、25MPa以下であることがより好ましく、15MPa以下であることがさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの湿熱試験後の引張破壊応力が40MPa以下であれば、履物用部材を接合して長期間経過後であっても、加工性が得られすい。例えば、磨耗又は損傷したアウトソール等の履物用部材を新しい履物用部材に交換する場合に、交換作業を行い易くなる。
0107
(引張破壊応力の変化率R2)
動的屈曲性試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力の変化率R2は、下記式で算出される
変化率R2={(動的屈曲性試験後の引張破壊応力)/(動的屈曲性試験前の引張破壊応力)}×100
0108
動的屈曲性試験は、履物用高周波誘電加熱接着シート1から、15mm(TD)×150mm(MD)サイズのサンプルを作成し、屈曲条件が、最小屈曲径10mmφ、屈曲回数が、3万回、屈曲速度が、30rpmの条件で実施する試験である。
履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力は、JIS K 7161−1:2014及びJIS K 7127:1999に準拠して測定される。
0109
上記動的屈曲性試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの破断強度引張破壊応力の変化率R2は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがよりさらに好ましい。
上記動的屈曲性試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの破断強度引張破壊応力の変化率R2は、120%以下であることが好ましく、115%以下であることがより好ましく、110%以下であることがさらに好ましく、105%以下であることがよりさらに好ましい。
変化率R2が80%以上であれば、中底12と本底21との接合部位が、履物3を履いて歩行又は走行している際に、複数回、折り曲げられても、シートが脆くなり難い。
変化率R2が120%以下であれば、シートの組成物に変化が生じている可能性が低いため、歩行後であっても品質安定性が得られ易い。
0110
高周波誘電加熱接着シートの動的屈曲性試験後の引張破壊応力は、3MPa以上であることが好ましく、4MPa以上であることがより好ましく、5MPa以上であることがさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの動的屈曲性試験後の引張破壊応力が3MPa以上であれば、中底12と本底21との接合部位が、履物3を履いて歩行又は走行している際に、複数回、折り曲げられても、シートが破損し難い。
また、高周波誘電加熱接着シートの動的屈曲性試験後の引張破壊応力は、40MPa以下であることが好ましく、25MPa以下であることがより好ましく、15MPa以下であることがさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの動的屈曲性試験後の引張破壊応力が40MPa以下であれば、履物を長期間使用した後であっても、加工性が得られすい。例えば、磨耗又は損傷したアウトソール等の履物用部材を新しい履物用部材に交換する場合に、交換作業を行い易くなる。
0111
(接合強度試験)
履物用高周波誘電加熱接着シート1は、次に示す接合強度試験を行った場合に、評価結果が合格であることが好ましい。
・接合強度試験
一対の履物用部材(本実施形態においては、第1履物用部材及び第2履物用部材)を本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートにて接合して試験片を作製し、当該試験片についてJIS K 6850:1999に準拠して測定される引張せん断力が、3MPa以上であるか、一対の履物用部材の少なくとも一方が破壊されるかの少なくともいずれか一方に該当すれば合格と判定する。
0112
前述の接合強度を満たす履物3を製造するための方法としては、例えば、前述の高周波誘電加熱接着シート及び誘電加熱接着装置を用いて、前述の高周波誘電加熱接着条件により、履物3を作製する方法が挙げられる。
0113
(厚さ)
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層の厚さは、通常、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る高周波誘電接着剤層の厚さは、2,000μm以下であることが好ましく、1,000μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることがさらに好ましい。
高周波誘電接着剤層の厚さが10μm以上であれば、中底12と本底21との間の接着力が急激に低下することを防止できる。また、高周波誘電接着剤層の厚さが10μm以上であれば、中底12と本底21との少なくともいずれかの接着面に凹凸がある場合、高周波誘電接着剤層が当該凹凸に追従可能になり、接着強度が発現し易くなる。
高周波誘電接着剤層の厚さが2,000μm以下であれば、長尺物として、ロール状に巻いたり、ロール・ツー・ロール方式に適用したりすることもできる。また、抜き加工などの次工程で高周波誘電加熱接着シートの取り扱いが容易となる。また、高周波誘電接着剤層の厚さが増すほど履物3の重量も増加するため、使用上問題の生じない範囲の厚さであることが好ましい。
0114
(誘電特性(tanδ/ε’))
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの誘電特性としての誘電正接(tanδ)及び誘電率(ε’)は、JIS C 2138:2007に準拠して測定することもできるが、インピーダンスマテリアル法に準じて、簡便かつ正確に測定することができる。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの誘電特性(tanδ/ε’)は、0.005以上であることが好ましく、0.008以上であることがより好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの誘電特性(tanδ/ε’)は、0.06以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.04以下であることがさらに好ましい。誘電特性(tanδ/ε’)は、インピーダンスマテリアル装置等を用いて測定される誘電正接(tanδ)を、インピーダンスマテリアル装置等を用いて測定される誘電率(ε’)で除した値である。
高周波誘電加熱接着シートの誘電特性が、0.005以上であれば、誘電加熱処理をした際に、所定の発熱をせずに、中底12と本底21とを強固に接着することが困難となるという不具合を防止し易い。
高周波誘電加熱接着シートの誘電特性が、0.06以下であれば、高周波を印加する接合時に、履物用部材(甲被11、中底12及び本底21)並びに履物3の損傷を防ぎ易い。
なお、高周波誘電加熱接着シートの誘電特性の測定方法の詳細は、次の通りである。所定大きさに切断した高周波誘電加熱接着シートについて、インピーダンスマテリアルアナライザE4991(Agilent社製)を用いて、23℃における周波数40.68MHzの条件下、誘電率(ε’)及び誘電正接(tanδ)をそれぞれ測定し、誘電特性(tanδ/ε’)の値を算出する。
0115
(密度)
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの密度は、3g/cm3以下であることが好ましく、2.5g/cm3以下であることがより好ましく、2g/cm3以下であることがさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの密度は、1.00g/cm3以上であることが好ましく、1.20g/cm3以上であることがより好ましく、1.40g/cm3以上、1.5以上であることがさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの密度が3g/cm3以下であれば、履物3を軽量化できる。その結果、本実施形態によれば、より快適な履き心地の履物を提供できる。
また、高周波誘電加熱接着シートの密度が1.00g/cm3以上であれば、ロール・ツー・ロール方式でシート成形を行う際に、ばたつきを抑制し易くなる。
高周波誘電加熱接着シートの密度は、JIS K 7112:1999のA法(水中置換法)に準じて測定できる。
0116
(実施形態の効果)
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートによれば、高周波誘電接着剤層に誘電フィラーを含むため、低電力かつ短時間の高周波誘電加熱処理であっても、高い強度で第1履物用部材と第2履物用部材とを接合できる。さらに、熱による履物用部材の損傷も防止できる。また、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、従来使用されているホットメルト系接着剤と比較しても、短時間かつ高強度で履物用部材を接合できる。
0118
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、高周波誘電加熱により加熱されるため、高周波誘電加熱接着シートと接する履物用部材の表面側が局所的に加熱されるだけである。それゆえ、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートによれば、履物用部材との接合時に履物用部材が溶融するという問題も解消できる。
0119
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、高周波誘電加熱により、第1履物用部材及び第2履物用部材から剥離可能である。これにより、例えば、履物3を構成する甲被11、中底12及び本底21を他の履物用部材に貼り替えることもできる。そのため、履物3に傷又は汚れ等が生じた場合、当該傷又は汚れが生じた履物用部材(甲被11、中底12又は本底21)を剥離して、別の履物用部材を高周波誘電加熱により接合することができる。また、本底21が磨り減った場合には、磨り減った本底21を中底12から剥離して新しい本底を中底12に高周波誘電加熱接着すれば、履物3の寿命を延ばすことができる。特に、履物用部材が縫合無しで接合されている場合は、履物用部材の履物からの分離が容易である。
0120
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートによれば、縫製のような不連続な縫合構造とは異なり、第1履物用部材と第2履物用部材との間で、連続的に接合した接合構造を得ることができる。そのため、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを用いて製造した履物は、縫合構造に生じ得る隙間が生じず、異物(例えば、ゴミ、水又は薬品等)が履物用部材間に侵入することを防止できる。
0121
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、高周波誘電加熱により、短時間で第1履物用部材と第2履物用部材とを接合できる。そのため、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、履物の製造効率の観点でも好ましい。
0122
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、一般的な粘着剤に比べて、耐水性及び耐湿性が優れる。本実施形態に係る履物は、風雨に曝されたり、日光に曝されて高温になる環境で使用されたりする用途にも適しており、経年劣化による接合強度の低下も生じ難い。
0123
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、溶剤を含有しないため、履物用部材の接合時に用いる接着剤に起因するVOC(Volatile Organic Compounds)の問題が発生し難い。
0124
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態においては、履物の構造が、第1実施形態と異なる。
以下の説明では、第1実施形態との相違に係る部分を主に説明し、重複する説明については省略又は簡略化する。第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
0125
図3(A)には、第2実施形態に係る履物3Aの側面図が示されている。
図3(B)には、第2実施形態に係る履物3Aを構成する複数の履物用部材を互いに分離して示す側面図が示されている。
本実施形態に係る履物3Aも、靴である。履物3Aは、甲被13と、中底14と、本底22と、を有する。履物3Aの本体部10Aは、甲被13と中底14とで構成される。本実施形態に係る履物3Aにおいては、中底14を第1履物用部材とし、本底22を第2履物用部材として、中底14と本底22とが履物用高周波誘電加熱接着シート1で接合されている。また、本実施形態に係る履物3Aにおいては、甲被13を第3履物用部材とし、甲被13と本底22とが履物用高周波誘電加熱接着シート1で接合されている。このように、本実施形態に係る履物用部材は、少なくとも2つであり、3つ以上であってもよい。
0126
本実施形態においては、履物用部材の少なくとも一つが発泡体であることが好ましい。本実施形態における履物用部材としての本底22が発泡体である。発泡体は、耐衝撃性に優れる材質であるため、履物としての靴(特に、スポーツシューズ)における本底の材質として注目されている。
履物用部材としての発泡体は、樹脂発泡体であることが好ましい。樹脂発泡体としては、例えば、発泡スチロール、発泡ウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン及び発泡フェノール等が挙げられる。
0127
履物用高周波誘電加熱接着シート1によれば、発泡体である本底22と、中底14とを、短時間で強固に接合できる。そのため、履物用高周波誘電加熱接着シート1は、発泡体のように熱に弱い履物用部材であっても、熱による影響(例えば、変形又は変質)を抑制しつつ、他の履物用部材へ強固に接合できる。また、発泡体の表面は、多数の孔を有するため、溶融した高周波誘電加熱接着シートが孔に入り込んでアンカー効果が生じて、接合強度がより強固になる。
履物3Aにおいては、縫合構造が無くとも、発泡体である本底22と中底14とが、熱による影響なく、強固に接合されている。
そのため、本実施形態によれば、外観及び耐衝撃性に優れた履物3Aを提供できる。
0128
〔実施形態の変形〕
本発明は、前記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良等を含むことができる。
0129
高周波誘電加熱接着シートは、粘着部を有していてもよい。粘着部を有することで、高周波誘電加熱接着シートを履物用部材に貼り合わせる際に、位置ずれを防止して、正確な位置に配置できる。粘着部は、高周波誘電接着剤層の一方の面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。また、粘着部は、高周波誘電接着剤層の面に対して、全面に設けられていても良いし、部分的に設けられていてもよい。
0130
また、仮固定用の孔及び突起等が、高周波誘電加熱接着シートの一部に設けられていてもよい。仮固定用の孔及び突起等を有することで、高周波誘電加熱接着シートを履物用部材に貼り合わせる際に、位置ずれを防止して、正確な位置に配置できる。
0132
第1実施形態においては、中底12と本底21とを接合する態様を例に挙げて説明したが、本発明は、このような態様に限定されない。
例えば、甲被11と本底21との接触部分においても履物用高周波誘電加熱接着シート1を介して、前記実施形態に係る接合方法と同様にして接合してもよい。
0133
また、例えば、甲被11及び中底12の一方を第1履物用部材とし、他方を第2履物用部材として、甲被11と中底12とを履物用高周波誘電加熱接着シート1を介して、前記実施形態に係る接合方法と同様にして接合してもよい。
0134
また、例えば、本底が多層構造である場合、複数の本底用部材同士を、高周波誘電加熱接着シートを用いて前記実施形態に係る接合方法と同様にして接合してもよい。例えば、本底が、アウトソール及びミッドソールで構成される場合、アウトソールとミッドソールとを高周波誘電加熱接着シートを用いて前記実施形態に係る接合方法と同様にして接合して、多層構造の本底を得てもよい。さらに、中底と、多層構造の本底におけるミッドソールとを高周波誘電加熱接着シートを用いて前記実施形態に係る接合方法と同様にして接合してもよい。
0135
高周波誘電加熱接着シートを用いた接合方法に使用される履物用部材の数は、それぞれ、特に制限されない。
例えば、中底を第1履物用部材とし、本底を第2履物用部材とし、甲被を第3履物用部材とし、このように3つの履物用部材(甲被、中底及び本底)を接合してもよい。
また、例えば、数字、文字、記号又は図形等が表されたラベル状の履物用部材(装飾部材)を、高周波誘電加熱接着シートを介して甲被の側面に接合してもよい。この場合、ラベル状の履物用部材及び甲被の一方が、第1履物用部材に相当し、他方が第2履物用部材相当する。
0136
高周波誘電加熱処理は、前記実施形態で説明した電極を対向配置させた誘電加熱接着装置に限定されず、格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置を用いてもよい。格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置は、一定間隔ごとに第1の電極と、第1の電極とは反対極性の第2の電極とを同一平面上に交互に配列した格子電極を有する。
0137
例えば、図4には、格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置100Aを用いて履物を製造する方法を説明する断面概略図が示されている。
高周波誘電加熱接着装置100Aは、格子電極タイプとも称される高周波誘電加熱接着装置である。格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置100Aは、一定間隔ごとに第1の高周波印加電極161と、第1の高周波印加電極161とは反対の極性の第2の高周波印加電極181とを同一平面上に交互に配列した格子電極を有する。
0138
高周波誘電加熱接着装置100Aは、一方の極性となる第1の高周波印加電極161と、他方の極性となる第2の高周波印加電極181と、高周波電源200と、を備えている。図4では、3つの第1の高周波印加電極161と、3つの第2の高周波印加電極181とを備えた高周波誘電加熱接着装置100Aを例に挙げたが、履物3の製造に用いる誘導加熱接着装置(格子電極タイプ)における電極の数は、3つずつに限定されず、1つずつでもよいし、2つずつでもよいし、4つ以上ずつでもよい。第1の高周波印加電極161及び第2の高周波印加電極181には、互いに異なった極性が印加され、所定の周波数で入れ替わるようになっている。第1の高周波印加電極161及び第2の高周波印加電極181は、交互に配置されている。第1の高周波印加電極161と、第2の高周波印加電極181とは、互いに離間して配置されている。第1の高周波印加電極161及び第2の高周波印加電極181は、棒状の電極であることが好ましい。
0139
図4では、第1の高周波印加電極161及び第2の高周波印加電極の長手方向が、甲被11の爪先部から踵部に向かう方向と交差する方向に沿って配置された態様が図示されているが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、第1の高周波印加電極161及び第2の高周波印加電極の長手方向が、甲被11の爪先部から踵部に向かう方向に沿って配置される態様も本発明に含み得る。
0140
格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置100Aを用いる履物用部材の接合方法は、例えば、次の工程(PX1)及び工程(PX2)を含む。
0141
工程(PX1):第1履物用部材(中底12)と第2履物用部材(本底21)との間に、履物用高周波誘電加熱接着シート1を配置する工程
0142
工程(PX2):第1の高周波印加電極161及び第2の高周波印加電極181を本底21の底面に当接させて、第1履物用部材(中底12)と第2履物用部材(本底21)との間に配置されている履物用高周波誘電加熱接着シート1に対して高周波誘電加熱処理を行う工程
0143
工程(PX1)及び工程(PX2)を含む履物用部材の接合方法によっても、中底12と本底21とを強固に接合できる。格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置100Aを用いる高周波誘電加熱処理の条件は、第1実施形態と同様の条件を適用できる。なお、高周波誘電加熱接着装置100Aを用いて、第1実施形態、第2実施形態、並びにその他の実施形態及びその他の変形例を実施してもよい。
0144
格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置100Aを用いることで、甲被11と中底12とで構成される本体部10の内部に電極を配置しなくとも、高周波誘電加熱処理を実施できるため、履物の製造工程を簡略化できる。
なお、本体部10の内部に第1の高周波印加電極161及び第2の高周波印加電極181を配置してもよいし、本体部10の内部に第1の高周波印加電極161及び第2の高周波印加電極181の一方を配置して中底12と当接させ、他方を本底21の底面に当接させてもよい。
また、第1履物用部材(中底12)側に第1の格子電極を配置し、第2履物用部材(本底21)側に第2の格子電極を配置し、両面側から同時に高周波を印加してもよい。
また、第1履物用部材(中底12)及び第2履物用部材(本底21)の一方の面側に格子電極を配置し、高周波を印加し、その後、他方の面側に格子電極を配置し、高周波を印加してもよい。
0145
高周波の印加には、上述のような格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置を用いることも好ましい。格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置を用いることで、履物用部材の厚さの影響を受けず、履物用部材の表層側、例えば、高周波誘電加熱接着シートまでの距離が近い表層側から誘電加熱したり、電極を配置し易い面側から誘導加熱したりすることにより、履物用部材を強固に接合できる。また、格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置を用いることで、履物の製造時の省エネルギー化を実現できる。
0146
格子電極タイプの高周波誘電加熱接着装置を用いる場合でも、高周波誘電加熱接着シートは、第1実施形態及び第2実施形態で説明した効果と同様の効果を奏する。
0147
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
0148
[高周波誘電加熱接着シートの作製]
[実施例1]
A成分として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三菱ケミカル株式会社製、製品名「モディックL504」、軟化温度:84℃、メルトフローレート:20g/10min、密度:0.92g/cm3)80.0体積%と、B成分として酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、製品名「LPZINC11」,平均粒子径:11μm、表1中、ZnOと記載する。)20.0体積%と、をそれぞれ容器内に秤量した。表1に各成分の配合割合を示す。表1において各成分の配合割合は、体積%で表示した値である。
秤量したA成分及びB成分を容器内で予備混合した。各成分を予備混合した後、30mmΦ二軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー設定温度を180℃以上200℃以下、ダイス温度を200℃に設定し、溶融混練した後、ペレタイザーにてペレット状に加工した。
次いで、得られたペレットを、Tダイを設置した単軸押出機のホッパーに投入し、シリンダー温度を200℃、ダイス温度を200℃の条件として、Tダイからシート状溶融混練物を押出し、冷却ロールにて冷却させることにより、厚さ400μmの高周波誘電加熱接着シートを作製した。第1履物用部材としての合成繊維製シートと、第2履物用部材としての発泡ポリウレタンシートとを準備し、この2枚のシートの間に得られた高周波誘電加熱接着シートを貼付した。そして、下記の高周波印加条件にて、接着させて、実施例1の履物用接合体を得た。
0149
<高周波印加条件>
JIS K 6850:1999に準拠してサンプルを作製した。すなわち、第1履物用部材としての合成繊維製シート(25mm×100mm)と、第2履物用部材としての発泡ポリウレタンシート(25mm×100mm)とを準備した。次に、この2枚のシートの間に、貼付面が、25mm×12.5mmとなるように、得られた高周波誘電加熱接着シートを貼付した。その後、高周波誘電加熱装置(山本ビニター株式会社製、YRP−400t−RC)の電極間に固定した状態で、周波数40.68MHz、出力200Wの条件下で、高周波を10秒印加した。
0150
[実施例2〜10]
A成分及び履物用部材の種類、並びに高周波誘電加熱接着層の組成を下記表1に記載の通り変更し、混練及び製膜時の温度を適宜調整したこと以外、実施例1と同様にして、実施例2〜10に係る高周波誘電加熱接着シート及び履物用接合体を得た。
実施例5のA成分としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(東ソー株式会社製、製品名「ウルトラセン626」、軟化温度:65℃、メルトフローレート:12g/10min、密度:0.936g/cm3、酢酸ビニル含有率:15質量%。)を用いた。
0151
下記材料を履物用部材として用いた。
・合成繊維:染色堅ろう度試験用添付白布ナイロン
サイズ:25mm×100mm
・天然繊維:染色堅ろう度試験用添付白布 綿
サイズ:25mm×100mm
・発泡ポリウレタン:ビブラム社製2021型アウトソール
サイズ:20mm×100mm×2.0mm
・ゴム:ビブラム社製4014型アウトソール
サイズ:20mm×100mm×2.0mm
・天然皮革:牛革
サイズ:25mm×100mm×1.5mm
0152
[高周波誘電加熱接着シートの評価]
高周波誘電加熱接着シートの評価結果を表1に示す。
0153
(誘電特性)
作製した高周波誘電加熱接着シートを、30mm×30mmの大きさに切断した。切断した高周波誘電加熱接着シートについて、インピーダンスマテリアルアナライザE4991(Agilent社製)を用いて、23℃における周波数40.68MHzの条件下、誘電率(ε’)及び誘電正接(tanδ)をそれぞれ測定した。測定結果に基づき、誘電特性(tanδ/ε’)の値を算出した。
0154
(軟化温度)
JIS K 7196:2012に則り、高周波誘電加熱接着シートの軟化温度を測定した。
0155
(密度)
JIS K 7112:1999のA法(水中置換法)に準じて、高周波誘電加熱接着シートの密度(g/cm3)を測定した。
0156
(メルトフローレート)
測定試料のMFRは、JIS K 7210−1:2014に記載の試験条件を下記のとおり変更して測定した。
・試験温度:230℃
・荷重:5kg
・ダイ:穴形状φ2.0mm、長さ5.0mm
・シリンダー径:11.329mm
なお、実施例の熱可塑性樹脂(A)においては、オレフィン由来の構成単位がポリエチレンであるため、A成分のMFR測定時の試験温度は、190℃とした。
0157
(1Hzにおける損失正接ピーク温度)
1Hzにおける損失正接ピーク温度は、動的粘弾性自動測定器(オリエンテック社製、バイブロンDDV−01FP)を使用し、周波数1Hz、昇温4℃/分で−100℃〜100℃の範囲で引張モードによる高周波誘電接着剤層の粘弾性を測定し、得られたtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の最大点における温度とした。
0158
(ヤング率)
上記実施例および比較例で製造した高周波誘電加熱接着シートを15mm(TD方向)×150mm(MD方向)の試験片に裁断し、JIS K 7161−1:2014及びJIS K 7127:1999に準拠して、23℃におけるヤング率(MPa)を測定した。具体的には、上記試験片を、引張試験機(島津製作所製,オートグラフAG−IS 500N)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/分の速度で引張試験を行い、ヤング率(MPa)を測定した。
0159
(接合強度試験)
作製した履物用接合体についてJIS K 6850:1999に準拠して引張せん断力を測定した。測定された引張せん断力が、3MPa以上であるか、一対の履物用部材の少なくとも一方の履物用部材が破壊されるかの少なくともいずれか一方に該当すれば合格と判定した。表1中、合格の場合「A」と示し、不合格の場合「F」と示す。一方の履物用部材と他方の履物用部材との貼付面のサイズは、25mm×12.5mmとした。
0160
(引張破壊応力の変化率R1)
下記の湿熱試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力を測定し、引張破壊応力の変化率R1を下記式に基づいて算出した。
変化率R1={(湿熱試験後の引張破壊応力)/(湿熱試験前の引張破壊応力)}×100
0161
履物用高周波誘電加熱接着シートから、150mm(MD方向)×15mm(TD方向)サイズのサンプルを作成し、下記条件で湿熱試験を実施した。
湿熱試験として、作製した高周波誘電加熱接着シートを、7日間、温度85℃及び湿度85%RHの条件下に置く試験を実施した。
湿熱試験を終えた後、25℃、50%RHの環境下に24時間静置し、その後、履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力を、JIS K 7161−1:2014及びJIS K 7127:1999に準拠して測定した。
0162
(引張破壊応力の変化率R2)
下記の動的屈曲性試験の実施前後における前記履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力を測定し、引張破壊応力を下記式に基づいて算出した。
変化率R2={(動的屈曲性試験後の引張破壊応力)/(動的屈曲性試験前の引張破壊応力)}×100
0163
履物用高周波誘電加熱接着シートから、150mm(MD方向)×15mm(TD方向)サイズのサンプルを作成し、下記屈曲条件で動的屈曲性試験を実施した。
<屈曲条件>
試験温度:23℃
最小屈曲径:10mmφ
屈曲回数:3万回
屈曲速度 :30rpm
動的屈曲性試験には、面状体無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器株式会社製)を用いた。
屈曲性試験を終えた後、25℃、50%RHの環境下に24時間静置し、その後、ヤング率の測定方法と同様に引張試験を行い、引張破壊応力を求めた。履物用高周波誘電加熱接着シートの引張破壊応力は、JIS K 7161−1:2014及びJIS K 7127:1999に準拠して測定した。
実施例
0164
0165
1、1A…履物用高周波誘電加熱接着シート、3、3A…履物。
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