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課題
解決手段
概要
背景
珪酸を含むガラスからなる被研磨物をCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により研磨するガラス体研磨方法が特許文献1〜5に開示されている。
特許文献1に開示されたガラス体研磨方法では、ガラス体としてのガラス基板を研磨するため、被研磨物としてのガラス基板と研磨パッドとの間に研磨粒子を分散させたスラリーを研磨液として介在させ、所定の面圧の下で被研磨物と研磨パッドとを相対移動させる。研磨パッドとしては発泡ウレタン等が採用され、研磨液に分散された研磨粒子としてはセリア(酸化セリウム、CeO2)が採用されている。
特許文献2〜5に開示されたガラス体研磨方法では、ガラス基板、ガラスディスク、フラットパネルディスプレイ等のガラス体を研磨するため、研磨粒子が固定された研磨パッドを採用し、かつ研磨粒子を含むスラリーを研磨液として介在させている。研磨パッドに固定された研磨粒子や研磨液に分散された研磨粒子としては、CeO2や酸化チタニウム(TiO2)等が採用されている。
これらのガラス体研磨方法によれば、ガラス体を所定の表面粗さまで研磨可能である。
概要
研磨コストの低廉化を実現可能なガラス体研磨方法及びガラス体研磨装置を提供する。被研磨物Wと研磨パッド7、9との間に研磨液を介在させ、所定の面圧の下で被研磨物Wと研磨パッド7、9とを相対移動させることにより、CMP法によって被研磨物Wを研磨する。被研磨物Wは珪酸を含むガラスからなる。研磨パッド7、9は、樹脂からなり、複数の気泡が形成された母材と、CeO2からなり、気泡内に保持された研磨粒子とを有している。研磨液は水のみである。
目的
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、研磨コストの低廉化を実現可能なガラス体研磨方法及びガラス体研磨装置を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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技術分野
背景技術
0003
特許文献1に開示されたガラス体研磨方法では、ガラス体としてのガラス基板を研磨するため、被研磨物としてのガラス基板と研磨パッドとの間に研磨粒子を分散させたスラリーを研磨液として介在させ、所定の面圧の下で被研磨物と研磨パッドとを相対移動させる。研磨パッドとしては発泡ウレタン等が採用され、研磨液に分散された研磨粒子としてはセリア(酸化セリウム、CeO2)が採用されている。
0004
特許文献2〜5に開示されたガラス体研磨方法では、ガラス基板、ガラスディスク、フラットパネルディスプレイ等のガラス体を研磨するため、研磨粒子が固定された研磨パッドを採用し、かつ研磨粒子を含むスラリーを研磨液として介在させている。研磨パッドに固定された研磨粒子や研磨液に分散された研磨粒子としては、CeO2や酸化チタニウム(TiO2)等が採用されている。
0005
これらのガラス体研磨方法によれば、ガラス体を所定の表面粗さまで研磨可能である。
先行技術
0006
特許第3531906号公報
特開2000−153453号公報
特開2000−345143号公報
特許第4849590号公報
特許第5336387号公報
発明が解決しようとする課題
0007
しかし、上記従来のガラス体研磨方法では、研磨液が研磨粒子を含んでいる。このため、研磨液の管理が必要であるとともに、研磨後のガラス体に対して洗浄を行なうことが必要になる。また、研磨液が高価なものとなるため、研磨後の研磨液を回収し、所定の状態に再調整した後で再利用する必要もある。さらに、研磨後の研磨液や洗浄液を廃棄する場合には、それらが環境を犯さないように複雑な処理を行なわなければならない。このため、従来のガラス体研磨方法では、研磨工程以外に複雑な工程が必要になり、研磨コストの高騰化を生じてしまう。
0008
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、研磨コストの低廉化を実現可能なガラス体研磨方法及びガラス体研磨装置を提供することを解決すべき課題としている。
課題を解決するための手段
0009
本発明のガラス体研磨方法は、被研磨物と研磨パッドとの間に研磨液を介在させ、所定の面圧の下で前記被研磨物と前記研磨パッドとを相対移動させることにより、CMP法によって前記被研磨物を研磨する研磨方法において、
前記被研磨物は、珪酸を含むガラスからなり、
前記研磨パッドは、樹脂からなり、複数の気泡が形成された母材と、CeO2からなり、前記気泡内に保持された研磨粒子とを有し、
前記研磨液は水のみであることを特徴とする。
0010
また、本発明のガラス体研磨装置は、被研磨物を保持する第1保持部と、前記被研磨物に当接するように研磨パッドを保持する第2保持部と、前記被研磨物と前記研磨パッドとの間に研磨液を供給する研磨液供給部と、前記被研磨物と前記研磨パッドとが相対移動するように前記第1保持部及び前記第2保持部の少なくとも一方を駆動する駆動装置とを備え、
前記被研磨物は、珪酸を含むガラスであり、
前記研磨パッドは、樹脂からなり、複数の気泡が形成された母材と、CeO2からなり、前記気泡内に保持された研磨粒子とを有し、
前記研磨液は水のみであることを特徴とする。
0011
本発明のガラス体研磨方法及びガラス体研磨装置では、CeO2からなる研磨粒子を母材の気泡内に保持した研磨パッドを採用し、研磨液が水のみであるため、研磨液の管理が不要である。また、研磨後のガラス体が研磨液で既に洗浄されたものとなり、別個の洗浄工程を省略又は簡素化できる。また、研磨液が安価なものとなるため、研磨後の研磨液を必ずしも回収して再利用する必要がない。さらに、研磨後の研磨液を廃棄する場合にも、さほどの処理が必要ではない。このため、このガラス体研磨方法及びガラス体研磨装置では、研磨工程以外に複雑な工程が不要になる。
0012
したがって、本発明のガラス体研磨方法及びガラス体研磨装置では、研磨コストの低廉化を実現することができる。
発明の効果
0015
本発明のガラス体研磨方法及びガラス体研磨装置では、研磨コストの低廉化を実現することができる。
図面の簡単な説明
0016
図1は、試験に用いたガラス体研磨装置の要部側面図である。
実施例
0018
第1定盤1の上面には第1研磨パッド7が設けられ、第2定盤3の下面には第2研磨パッド9が設けられている。第1定盤1には第1回転軸1aが設けられ、第2定盤3には第2回転軸3aが設けられている。第1回転軸1a及び第2回転軸3aは第1軸心O1方向に延び、第1駆動装置11によって第1軸心O1周りで所定速度で回転されるようになっている。また、第1定盤1と第2定盤3とは接近と離間とが可能になっている。第1、2研磨パッド7、9は第1軸心O1と直交する方向に延びている。具体的には、第1軸心O1は垂直に延び、第1、2研磨パッド7、9は水平に延びている。第1定盤1及び第2定盤3が第2保持部に相当する。
0019
キャリヤ5は第1研磨パッド7と第2研磨パッド9との間に設けられている。キャリヤ5には複数枚のガラス体としてのガラス基板Wが装着されるようになっている。キャリヤ5は、第1定盤1と第2定盤3とが接近することにより、各ガラス基板Wと第1、2研磨パッド7、9とが所定の面圧になるように加圧される。キャリヤ5には図示しない駆動力伝達機構が設けられており、第2駆動装置13によって第2軸心O2周りで所定速度で回転されるようになっている。第2軸心O2は第1軸心O1と平行である。キャリヤ5が第1保持部に相当する。
0020
第1定盤1及び第2定盤3の側方にはノズル15が配置されており、ノズル15は研磨液を貯留する図示しないタンクと接続されている。ノズル15によって第1研磨パッド7と第2研磨パッド9との間にタンクに貯留された研磨液を供給可能である。ノズル15が研磨液供給部に相当する。
0021
0022
実施例1では、表1に示すように、第1研磨パッド7と第2研磨パッド9とにLHA(Loosely Held Abrasive)パッドを採用した。このLHAパッドは、ポリエーテル製の母材と、母材の気泡内に保持されたCeO2の研磨粒子とからなる研磨砥粒遊離型のものである。研磨粒子の平均粒径300nmであり、パッド全体に対する体積割合は25体積%(母材樹脂25体積%、砥粒25体積%、空隙50体積%)である。また、実施例1では、研磨液としては、常温の水道水を採用した。
0023
一方、比較例1、2では、第1研磨パッド7と第2研磨パッド9とに市販の硬質ウレタンパッドを採用し、比較例3、4では、第1研磨パッド7と第2研磨パッド9とに市販の不織布パッドを採用した。比較例1、3では、研磨液として、平均粒径200nmのCeO2からなる研磨粒子を含む常温のスラリーを採用した。このスラリーは、分散媒としての水にCeO2が3.125質量%の割合で分散されたものである。比較例2、4では、研磨液として、常温の水道水を採用した。
0024
各ガラス基板Wは合成石英からなる。以下の条件の下、実施例1及び比較例1〜4で比較試験を行ない、研磨能率(μm/分)及び表面粗さRa(nm)を求めた。試験品数は、各回において、実施例1及び比較例1〜4で1つである。結果も表1に示す。
0025
第1定盤及び第2定盤の回転数:60(rpm)
第1、2研磨パッドの大きさ:直径300(mm)
キャリヤの回転数:60(rpm)
加工面圧:20.5(kPa)
研磨液の供給タイミング:10ml/分
研磨時間:10分×3回
0026
表1に示されるように、実施例1では、高い研磨能率の下、表面粗さRa=0.35までガラス基板Wを研磨できている。これに対し、比較例2、4では研磨が不能である。また、比較例1、3では、実施例1より劣る表面粗さまででも、実施例1よりも低い研磨効率となっている。このため、実施例1の研磨方法及び研磨装置によれば、ガラス基板を高い研磨能率で所定の表面粗さまで研磨可能であることがわかる。
0027
また、実施例1の研磨方法及び研磨装置では、第1、2研磨パッド7、9として研磨粒子がCeO2であるLHAパッドを採用し、研磨液が水のみであるため、研磨液の管理が不要である。また、研磨後のガラス基板は研磨液で既に洗浄されたものとなり、別個の洗浄工程を省略又は簡素化できる。また、研磨液が安価なものとなるため、研磨後の研磨液を必ずしも回収して再利用する必要がない。さらに、研磨後の研磨液を廃棄する場合にも、さほどの処理が必要ではない。このため、この研磨方法及び研磨装置では、研磨工程以外に複雑な工程が不要になる。
0028
したがって、実施例1の研磨方法及び研磨装置では、研磨コストの低廉化を実現することができることが明らかである。
0029
また、実施例1の研磨方法及び研磨装置では、研磨粒子がLHAパッドにおける母材の気泡内に弾性的に保持されるため、気泡から脱落し難く、スクラッチを生じ難い。
0030
次に、LHAパッドにおけるCeO2の含有率を異ならせ、LHAパッドがどの程度CeO2を含有しておれば、実用的な研磨能率を実現できるかを確認した。
0031
表2に示すように、CeO2のパッド全体に占める含有率を1〜60体積%で異ならせたLHAパッドを製造し、上記実施例1と同様の条件下で試験1〜6を行なった。研磨能率及び表面粗さ(Ra)の結果も表2に示す。
0032
0033
表2でわかるように、LHAパッドは、研磨粒子が研磨パッド100体積%のうちで5〜45体積%の割合で気泡内に保持されておれば、実用的な研磨能率を発揮できる。
0034
以上において、本発明を実施例1及び試験に即して説明したが、本発明は上記実施例及び試験に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
0035
例えば、実施例1及び試験では水として水道水を採用したが、研磨粒子や有害な金属イオンを含まなければ、水道水以外の水であってもよい。
0036
また、上記実施例1及び試験では、第1、2研磨パッド7、9の母材をポリエーテルとしたが、母材はこれに限られない。例えば、母材としては、硬質発泡ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂の他、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニル・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系合成樹脂や、ポリエチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等を採用することが可能である。
0037
また、第1、2研磨パッド7、9は、CeO2以外の研磨砥粒として、ダイヤモンド、CBN(立方晶窒化ホウ素)、B4C(炭化ホウ素)、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マンガン酸化物、炭酸バリウム、酸化クロム、酸化鉄等を含んでいてもよい。
0038
さらに、実施例1及び試験ではガラス基板Wの両面を同時に研磨したが、一面ずつを研磨してもよい。
0041
W…被研磨物(ガラス基板)
7、9…研磨パッド(7…第1研磨パッド、9…第2研磨パッド)
5…第1保持部(キャリヤ)
1、3…第2保持部(1…第1定盤、3…第2定盤)
15…研磨液供給部(ノズル)
11、13…駆動装置(11…第1駆動装置、13…第2駆動装置)