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課題
解決手段
概要
背景
リチウムイオン電池(以下、「電池」と略記する場合がある)は、携帯電話、携帯型音楽プレーヤー、ノート型パーソナルコンピューター等の携帯型電気機器の電源として広く利用されてきた。また近年は、電気自動車等の大型機器での利用が急速に拡大している。リチウムイオン電池利用機器の進展に伴い、電池に求められる保証寿命は従来の2年程度から10年以上と、5倍以上に拡大している。
従来、リチウムイオン電池用セパレータ(以下、「セパレータ」と略記する場合がある)としては、貫通した微細孔を有するポリオレフィン多孔フィルムが用いられてきた。しかし、ポリオレフィン多孔フィルムでは充放電を繰り返す内に充放電容量が低下する課題があった。このような課題に対し、セパレータの変形性を高め、充放電時の電極の膨張収縮に対する追随性を高めるセパレータが提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、特許文献1では、変形荷重として50kg/cm2もの高圧を付与しており、電極の膨張収縮による低圧力で速やかに変形追随可能かは疑問が残る。
また、自動車用途向け電池では、電極及びセパレータを積層した後にロール状に捲回する円筒型、円筒型を押し潰して、2面の平面と曲線状の両端部を形成させた扁平型、九十九折(zigzag)にしたセパレータの間に、枚葉に切り出した電極を挿入した九十九折型、枚葉に切り出したセパレータと、枚葉に切り出した電極を積層した枚葉積層型等の巻回体又は積層体を缶又はラミネート式の電池セルに収納している。複数の電池セルが定型の外装缶・パック内に収納されるため、電池セルのサイズが厳密に定められている。電極及びセパレータの巻回体又は積層体の厚みが設計許容差(公差)の範囲を超えると、電池の外装缶・パックに納まらなくなるため、セパレータ及び電極には厳密な厚み制御が求められ、これがセパレータの生産性を落とす一因となっている。
概要
電池のサイクル寿命及び生産性向上が期待できるセパレータを提供することである。測定面圧189kPaにおける厚み弾性率が、測定面圧63kPaを基準として6.3MPa以下であり、無機粒子が担持されている不織布基材であるリチウムイオン電池用セパレータ。なし
目的
本発明の課題は、リチウムイオン電池用セパレータに関し、電池のサイクル寿命に優れ、且つ生産性向上が期待できるセパレータを提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
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技術分野
0001
本発明は、リチウムイオン電池用セパレータに関する。
背景技術
0002
リチウムイオン電池(以下、「電池」と略記する場合がある)は、携帯電話、携帯型音楽プレーヤー、ノート型パーソナルコンピューター等の携帯型電気機器の電源として広く利用されてきた。また近年は、電気自動車等の大型機器での利用が急速に拡大している。リチウムイオン電池利用機器の進展に伴い、電池に求められる保証寿命は従来の2年程度から10年以上と、5倍以上に拡大している。
0003
従来、リチウムイオン電池用セパレータ(以下、「セパレータ」と略記する場合がある)としては、貫通した微細孔を有するポリオレフィン多孔フィルムが用いられてきた。しかし、ポリオレフィン多孔フィルムでは充放電を繰り返す内に充放電容量が低下する課題があった。このような課題に対し、セパレータの変形性を高め、充放電時の電極の膨張収縮に対する追随性を高めるセパレータが提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、特許文献1では、変形荷重として50kg/cm2もの高圧を付与しており、電極の膨張収縮による低圧力で速やかに変形追随可能かは疑問が残る。
0004
また、自動車用途向け電池では、電極及びセパレータを積層した後にロール状に捲回する円筒型、円筒型を押し潰して、2面の平面と曲線状の両端部を形成させた扁平型、九十九折(zigzag)にしたセパレータの間に、枚葉に切り出した電極を挿入した九十九折型、枚葉に切り出したセパレータと、枚葉に切り出した電極を積層した枚葉積層型等の巻回体又は積層体を缶又はラミネート式の電池セルに収納している。複数の電池セルが定型の外装缶・パック内に収納されるため、電池セルのサイズが厳密に定められている。電極及びセパレータの巻回体又は積層体の厚みが設計許容差(公差)の範囲を超えると、電池の外装缶・パックに納まらなくなるため、セパレータ及び電極には厳密な厚み制御が求められ、これがセパレータの生産性を落とす一因となっている。
先行技術
0005
特開2000−212322号公報
発明が解決しようとする課題
0006
本発明の課題は、リチウムイオン電池用セパレータに関し、電池のサイクル寿命に優れ、且つ生産性向上が期待できるセパレータを提供することである。
課題を解決するための手段
0007
本発明者らは鋭意研究した結果、課題を解決できるリチウムイオン電池用セパレータを発明するに至った。
0008
(1)測定面圧189kPaにおける厚み弾性率が、測定面圧63kPaを基準として6.3MPa以下であることを特徴とするリチウムイオン電池用セパレータ。
(2)測定面圧316kPaにおける厚み弾性率が、測定面圧63kPaを基準として7.0MPa以下であることを特徴とする上記(1)記載のリチウムイオン電池用セパレータ。
(3)リチウムイオン電池用セパレータが、無機粒子が担持されている不織布基材である上記(1)又は(2)記載のリチウムイオン電池用セパレータ。
(4)不織布基材の片面のみに無機粒子が担持されている上記(3)記載のリチウムイオン電池用セパレータ。
発明の効果
0009
本発明によれば、リチウムイオン電池用セパレータにおいて、圧力による変形性が高いリチウムイオン電池用セパレータが得られ、該リチウムイオン電池用セパレータを用いたリチウムイオン電池がサイクル寿命に優れるという効果が得られる。また、生産性の向上が期待できるリチウムイオン電池用セパレータが得られる。
0010
本発明のリチウムイオン電池用セパレータは、測定面圧189kPaにおける厚み弾性率が、測定面圧63kPaを基準として6.3MPa以下であり、より好ましくは5.3MPa以下であり、さらに好ましくは5.0MPa以下である。
0011
また、該セパレータの測定面圧316kPaにおける厚み弾性率が、測定面圧63kPaを基準として7.0MPa以下であることが好ましく、6.5MPa以下であることがより好ましく、6.0MPa以下であることがさらに好ましい。
0012
本発明において、厚み弾性率は、以下のようにして定義される。即ち、セパレータを10枚重ね、測定圧力が任意調整可能な外側マイクロメーターを用いて、該セパレータ積層体の厚みを測定する。測定面圧63kPaにおける積層体の厚みをTa、測定面圧189kPaにおける積層体の厚みをTb、測定面圧316kPaにおける積層体の厚みをTcとし、63kPaにおける厚みからの各測定面圧での厚み変化量を下式によって算出し、各測定面圧をその厚み変化量で除すことで各測定面圧における厚み弾性率を算出する。厚み弾性率の算出は下式による。
0013
(式1)
測定面圧189kPaにおける厚み変化量=(Ta−Tb)/Ta
(式2)
測定面圧316kPaにおける厚み変化量=(Ta−Tc)/Ta
0014
(式3)
測定面圧189kPaにおける厚み弾性率=189/{(Ta−Tb)/Ta}
(式4)
測定面圧316kPaにおける厚み弾性率=316/{(Ta−Tc)/Ta}
0015
本発明において、各厚み弾性率を調節する方法として、例えば、不織布基材に無機粒子を担持させたセパレータを用い、不織布基材や無機粒子の種類、サイズ等、及び/あるいは製造工程を調整する方法が挙げられる。
0016
オレフィン樹脂を溶融延伸し製造するポリオレフィン多孔フィルムに対し、繊維の積層構造体である不織布基材は圧力に対する応答性が高く、比較的弱い圧力であっても容易に変形するため、電極の膨張収縮に対する追随性に優れる。また、吸液・保液性に優れる三次元多孔構造により、セパレータの圧縮・開放時に電解液が速やかに追随し、局所的な電解液不足が生じ難いため、電流密度の不均一による電極劣化を抑制可能である。一方で、不織布基材は一般的に孔径が大きく、Liデンドライトによる短絡を防止し難いため、単独ではセパレータとして機能し難い。不織布基材の孔径を調整し、且つ、セパレータの耐熱性を向上することで電池の安全性を向上させるため、不織布基材に無機粒子を担持させたセパレータが知られている。しかし、弾性率の高い無機粒子を担持することによって、セパレータ全体の弾性率も高くなってしまい、電極の膨張収縮に対する追随性が損なわれてしまっていた。本発明のセパレータによれば、電極の膨張収縮に対する追従性を有し、圧力による変形性が高いことから、本発明のセパレータを用いた電池がサイクル寿命に優れるという効果が得られる。また、生産性向上が期待できるセパレータが得られる。
0017
不織布基材に無機粒子を担持させたセパレータの厚み弾性率を調節する方法を説明する。
0018
1つ目の方法としては、不織布基材の繊維径を調節することが挙げられる。繊維径を細くすることで、不織布基材内の空隙が三次元的に分布しやすくなるため、局所的に弾性率が高い部分が発生することを抑制することが可能である。また、繊維径を細くすることで不織布基材の孔径が小さくなり、無機粒子が不織布基材内に入り込みにくくなるため、不織布基材内の空隙が維持され、圧力に対する高い応答性を維持することが可能である。また、不織布基材内のバインダ成分を減らすことで、空隙を増やすことも有効である。
0020
3つ目の方法としては、無機粒子の粒径を調節することが挙げられる。無機粒子の粒径を大きくすることで無機粒子が不織布基材の空隙に入り込みにくくなり、不織布基材内の空隙が維持される。また、粒子の一次構造、二次構造によっても、無機粒子の弾性率を調節し、セパレータの厚み弾性率を調節することが可能である。
0021
4つ目の方法としては、無機粒子の担持方法を調整することが挙げられる。無機粒子の不織布基材への浸透を抑制して担持することで、セパレータの厚み弾性率を低くすることが可能である。また、セパレータにカレンダーや熱プレスといった厚み調整処理を実施しないことでも、セパレータの厚み弾性率を低くすることが可能である。不織布基材の片面のみに無機粒子を担持させ、無機粒子を担持させる側の面のみ、無機粒子の不織布基材への浸透を抑制するために緻密な構成とし、不織布基材の反対側の面では、不織布基材の高い応答性を維持するために空隙の多い構造とし、不織布基材を傾斜構造とすることも有効である。
0022
これらの方法を適宜組み合わせることで、セパレータの厚み弾性率を調節することが可能である。
0023
本発明に係る、不織布基材に無機粒子を担持させたセパレータについて説明する。不織布基材の構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びそれらの誘導体、半芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどのポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、脂肪族ポリケトン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリ(パラフェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルなどの樹脂;セルロースなどが挙げられる。これらの繊維を単独で用いても、2種以上を併用していても構わない。耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。構成繊維に対するバインダ繊維の比率は50質量%以下であることが、不織布基材の弾性率の観点から好ましい。
0024
バインダ繊維とは、バインダ繊維の軟化点又は溶融温度(融点)以上まで温度を上げる工程を基材の製造工程に組み入れることによって、バインダ繊維が軟化又は溶融し、不織布基材の機械的強度を向上させる繊維である。例えば、不織布基材を湿式抄造法で製造し、その後の乾燥工程でバインダ繊維を軟化又は溶融させることができる。また、不織布基材に対して熱カレンダー処理を施すことによって、バインダ繊維を軟化又は溶融させることができる。この温度を上げる工程において、軟化又は溶融せずに、または、軟化又は溶融し難く、不織布基材の骨格を形成し、不織布基材の形状を維持する繊維を主体繊維と言う。主体繊維とバインダ繊維は、温度を上げる工程における温度を考慮して、上記不織布基材の構成材料から適宜選択することができる。主体繊維とバインダ繊維の組み合わせとしては、例えば、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)系繊維と未延伸PET系繊維の組み合わせ、PET系繊維とポリオレフィン系繊維の組み合わせ等が挙げられる。
0025
不織布基材としては、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法、乾式法、湿式法、エレクトロスピニング法などの方法によって製造した不織布基材を使用することができる。特に、湿式抄造法によって製造される湿式不織布であることが好ましい。湿式抄造法は、繊維を水に分散して均一な抄造用スラリーとし、この抄造スラリーを抄紙機で抄き上げて湿式不織布を製作する。
0026
抄紙方式としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー式等を用いることができる。これらの抄紙方式から選ばれる1種の抄紙方式を有する抄紙機を使用しても良いし、同種又は異種の2種以上の抄紙方式がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を使用しても良い。また、不織布基材が2層以上の多層構造の場合には、抄き合わせ法、流廷法等で製造することができる。抄き合わせ法とは、各々の抄紙方式で抄き上げた湿紙を積層する方法である。流廷法は、一方の層を形成した後に、該層の上に繊維を分散したスラリーを流延する方法である。流延法において、先に形成した一層は湿紙状態であっても良いし、乾燥状態であっても良い。このほかに、2枚以上の乾燥状態の層を熱融着させて、多層構造とすることもできる。
0027
抄造用スラリーには、繊維のほかに必要に応じて、分散剤、増粘剤、消泡剤などを適宜添加することができ、0.001〜5質量%程度の固形分濃度に抄造用スラリーを調成する。この抄造用スラリーをさらに所定濃度に希釈して抄紙し、乾燥する。湿式不織布を製造する工程において、必要に応じて水流交絡処理を施しても良い。
0028
湿式不織布には、必要に応じて、カレンダー処理、熱カレンダー処理、熱処理などが施される。不織布基材の表層でバインダ繊維を溶融して一部被膜化することによって、無機粒子の不織布基材への浸透を抑制することができるため、不織布基材には熱カレンダー処理が施されることが好ましい。また、この場合、熱カレンダー温度は、バインダ繊維の溶融程度の観点から、170℃以上であることが好ましい。また、必要以上に被膜化することによってセパレータの内部抵抗が上昇することを抑制するため、熱カレンダー温度は、230℃以下であることが好ましい。
0029
不織布基材の構成繊維の繊維径としては0.6dtex以下が好ましく、より好ましくは0.3dtex以下、さらに好ましくは0.2dtex以下である。繊維径が細いことで、不織布基材内の空隙が三次元的に分布しやすくなり、セパレータの厚み弾性率を小さくしやすくなる。一方で、不織布基材の生産性の観点から繊維径は0.02dtex以上であることが好ましい。
0030
不織布基材の目付は、好ましくは4〜30g/m2であり、より好ましくは5〜20g/m2である。目付が4g/m2以上であることで、不織布基材としての均一性を得やすくなり、また、30g/m2以下であることで、リチウムイオン電池用セパレータに適した厚みとなる。なお、目付はJIS P 8124:2011に規定された方法に基づく坪量を意味する。
0031
無機粒子としては、カオリン、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。これらを単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。なかでも熱安定性の点から、アルミナ、ベーマイト又は水酸化マグネシウムが好ましく用いられる。無機粒子は1種のみを使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、セパレータの厚み弾性率を小さくするために、セパレータに含有される無機粒子は、セパレータの全固形分中の70質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは、60質量%以下である。セパレータの短絡耐性の観点から、30質量%以上であることが好ましい。
0032
無機粒子の粒径としては0.1〜10μmが好ましく用いられ、より好ましくは0.3〜7.5μmである。粒径0.1μm以上とすることで、無機粒子を不織布基材に担持させる際に無機粒子が不織布基材内に浸透し難くなり、また、粒径10μm以下とすることでセパレータとして適当な厚みを維持することが可能である。なお、ここで言う粒径とはレーザー回折散乱法により測定されるメジアン径(D50)を指す。
0033
無機粒子が不織布基材に担持される際に、バインダを使用してもよい。バインダとしては、有機高分子が好ましく用いられる。具体例としては、例えばスチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン等の有機高分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの有機高分子は、ラテックス状であることが好ましい。本発明においては、セパレータのハイレート特性及び無機粒子の担持性の点から、無機粒子とバインダの総量に対するバインダ量は、固形分基準で2〜15質量%とするのが好ましい。
0035
無機粒子が不織布基材に担持される方法に特に制限はない。例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、含浸コーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、スプレーコーター等により、無機粒子を含む塗液を塗工し、乾燥することにより、無機粒子を不織布基材に担持させることができる。
0036
無機粒子とバインダの塗工量(絶乾塗工量)としては、5〜30g/m2が好ましく、さらに好ましくは10〜20g/m2である。塗工量が5g/m2以上であることで、不織布基材表面を十分に被覆しやすくなり、微小短絡を防止しやすくなる。また、塗工量が30g/m2以下であることで、セパレータの厚み上昇を抑えやすくなる。
0037
本発明のリチウムイオン電池用セパレータにおいて、セパレータの坪量は10〜50g/m2が好ましく、より好ましくは17〜40g/m2である。また、セパレータの厚みは10〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜40μmである。セパレータの密度としては0.4〜1.2g/cm3が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0g/cm3である。なお、坪量はJIS P 8124:2011に規定された方法に基づく坪量を意味する。また、密度は坪量を厚みで除した値である。本段落における厚みは、JIS B 7502:2016に規定された外側マイクロメーターにより測定された値を意味し、測定面圧189kPaにおいて測定した厚みである。
0038
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において、%及び部は、特にことわりのない限り、すべて質量基準である。
0040
抄造用スラリーa
繊度0.3dtex(平均繊維径5.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維70部
繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダ用PET系短繊維(未延伸繊維、軟化点120℃、融点230℃) 30部
0041
抄造用スラリーb
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維60部
繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダ用PET系短繊維(未延伸繊維、軟化点120℃、融点230℃) 40部
0042
抄造用スラリーc
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維50部
繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダ用PET系短繊維(未延伸繊維、軟化点120℃、融点230℃) 50部
0043
[不織布基材Aの製造]
傾斜ワイヤー型抄紙機を用い、この抄造用スラリーaを湿式抄造法で抄き上げ、130℃のシリンダードライヤーによって、バインダ用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10g/m2の不織布とした。さらに、この不織布に、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダーを使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度60m/分の条件で熱カレンダー処理を施し、厚み18μmの不織布基材Aを製造した。
0044
[不織布基材Bの製造]
傾斜ワイヤー型抄紙機を用い、抄造用スラリーbを抄き上げ、130℃のシリンダードライヤーによって、バインダ用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10g/m2の不織布とした。さらに、この不織布に、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダーを使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度60m/分の条件で熱カレンダー処理を施し、厚み15μmの不織布基材Bを製造した。
0045
[不織布基材Cの製造]
傾斜ワイヤーと円網とのコンビネーションマシンを用いて、抄造用スラリーbを傾斜ワイヤー方式で、抄造用スラリーaを円網方式で、各層5g/m2にて抄き上げた湿紙を抄き合わせ法によって積層し、130℃のシリンダードライヤーによって、バインダ用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10g/m2の不織布とした。さらに、この不織布に、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダーを使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度60m/分の条件で熱カレンダー処理を施し、厚み17μmの不織布基材Cを製造した。
0046
[不織布基材Dの製造]
傾斜ワイヤーと円網とのコンビネーションマシンを用いて、抄造用スラリーcを傾斜ワイヤー方式で、抄造用スラリーbを円網方式で、各層5g/m2にて抄き上げた湿紙を抄き合わせ法によって積層し、130℃のシリンダードライヤーによって、バインダ用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10g/m2の不織布とした。さらに、この不織布に、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダーを使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度60m/分の条件で熱カレンダー処理を施し、厚み14μmの不織布基材Dを製造した。
0047
塗液αの調製
無機粒子として、粒径0.7μmの水酸化マグネシウム100部を、その1%水溶液の25℃における粘度が200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.3%水溶液120部に分散し、よく撹拌して水酸化マグネシウム分散液を作製した。次いで、その1%水溶液の25℃における粘度が7000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.5%水溶液3000部を混合、撹拌し、さらに、バインダとして45%のスチレン/ブタジエン共重合体のラテックス高分子12部を混合、撹拌して、塗液αを調製した。
0048
塗液βの調製
無機粒子として、粒径0.7μmの水酸化マグネシウム100部の代わりに、粒径3.0μmの水酸化マグネシウム100部を用いた以外は、塗液αと同様にして、塗液βを調製した。
0049
塗液γの調製
無機粒子として、粒径0.7μmの水酸化マグネシウム100部の代わりに、粒径0.7μmの一次粒子が凝集してなる平均粒径2.3μmのベーマイトの二次粒子を用いた以外は、塗液αと同様にして、塗液γを調製した。
0050
塗液δの作製
その1%水溶液の25℃における粘度が7000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.5%水溶液を60部とした以外は、塗液αと同様にして、塗液δを作製した。
0051
[セパレータの製造]
実施例1
不織布基材A上に、塗液αを絶乾塗工量が12g/m2となるようにグラビアコーターを用いて、塗工、乾燥してセパレータを製造した。セパレータの測定面圧189kPaにおける厚み弾性率は6.3MPa、測定面圧316kPaにおける厚み弾性率は9.6MPaであった。
0052
実施例2
厚み25μmのPETフィルム上に塗液αを絶乾塗工量が12g/m2となるように、グラビアコーターを用いて塗工し、その後、不織布基材Aを塗工面に貼り合わせてそのまま乾燥させ、乾燥後PETフィルムを剥離し、セパレータを製造した。セパレータの測定面圧189kPaにおける厚み弾性率は5.9MPa、測定面圧316kPaにおける厚み弾性率は7.5MPaであった。
0053
実施例3
不織布基材Cの抄造用スラリーbから製造した層側に、塗液αを絶乾塗工量が12g/m2となるようにグラビアコーターを用いて、塗工、乾燥してセパレータを製造した。セパレータの測定面圧189kPaにおける厚み弾性率は5.4MPa、測定面圧316kPaにおける厚み弾性率は6.9MPaであった。
0054
実施例4
不織布基材B上に、塗液βを絶乾塗工量が5g/m2となるようにグラビアコーターを用いて塗工、乾燥した後、さらに同じ塗工面に塗液αを絶乾塗工量が7g/m2となるようにグラビアコーターを用いて塗工、乾燥してセパレータを製造した。セパレータの測定面圧189kPaにおける厚み弾性率は4.7MPa、測定面圧316kPaにおける厚み弾性率は5.3MPaであった。
0055
実施例5
不織布基材B上に、塗液γを絶乾塗工量が5g/m2となるようにグラビアコーターを用いて塗工、乾燥した後、さらに同じ塗工面に塗液γを絶乾塗工量が7g/m2となるようにグラビアコーターを用いて塗工、乾燥してセパレータを製造した。セパレータの測定面圧189kPaにおける厚み弾性率は4.2MPa、測定面圧316kPaにおける厚み弾性率は4.2MPaであった。
0056
実施例6
不織布基材Dの抄造用スラリーcから製造した層側に、塗液γを絶乾塗工量が5g/m2となるようにグラビアコーターを用いて塗工、乾燥した後、さらに同じ塗工面に塗液γを絶乾塗工量が7g/m2となるようにグラビアコーターを用いて塗工、乾燥してセパレータを製造した。セパレータの測定面圧189kPaにおける厚み弾性率は4.0MPa、測定面圧316kPaにおける厚み弾性率は4.2MPaであった。
0057
比較例1
密度0.96g/cm3の高密度ポリエチレン40部及び流動パラフィン60部を二軸押出機に投入し200℃で溶融混練した。溶融物を冷却固化した後、金属板に挟み、200℃の熱プレス機にて圧縮し、厚み1mmのシートを得た。二軸延伸機を用いて120℃で7×7倍に得られたシートを延伸後、塩化メチレン中に浸漬して流動パラフィンを除去し、その後乾燥して、ポリオレフィン多孔フィルムFからなるセパレータを製造した。セパレータの測定面圧189kPaにおける厚み弾性率は9.4MPa、測定面圧316kPaにおける厚み弾性率は14.4MPaであった。
0058
比較例2
ポリオレフィン多孔フィルムF上に、塗液αを絶乾塗工量が3.5g/m2となるように塗工、乾燥してセパレータを製造した。セパレータの測定面圧189kPaにおける厚み弾性率は7.6MPa、測定面圧316kPaにおける厚み弾性率は10.5MPaであった。
0059
比較例3
不織布基材A上に、塗液δを絶乾塗工量が12g/m2となるように含浸コーターを用いて、塗工、乾燥してセパレータを製造した。セパレータの測定面圧189kPaにおける厚み弾性率は7.0MPa、測定面圧316kPaにおける厚み弾性率は10.2MPaであった。
0060
<評価>
[電極箔/セパレータ積層体の厚み変化]
各セパレータから50mm×50mmのサンプル10枚を切り出し、同サイズの銅箔11枚と交互に積層して積層体を作製した。マイクロメーターで該積層体の厚みを測定した。測定面圧63kPaにおける厚みをTd、測定面圧189kPaにおける厚みをTe、測定面圧316kPaにおける厚みをTfとし、測定面圧63kPaにおける厚みからの各測定面圧での厚み変化率を下式によって算出した。該積層体は、電極とセパレータの積層体を模したものであり、電池外装材挿入前の電極とセパレータの積層体に圧力を掛けた際の厚み変化を模式的に示している。
0061
(式5)
測定面圧189kPaにおける積層体の厚み変化率=(1−Te/Td)×100[%]
(式6)
測定面圧316kPaにおける積層体の厚み変化率=(1−Tf/Td)×100[%]
0062
[サイクル寿命]
各セパレータを用い、正極活物質がLiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、負極活物質が人造黒鉛、電解液がリチウムヘキサフルオロフォスフェート(LiPF6)のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの1/1/1(容量比)混合溶媒溶液(1mol/L)である設計容量が100mAhのラミネート型リチウムイオン電池を作製した。
0063
その後、作製した各リチウムイオン電池について、室温条件下で、100mA定電流充電→4.2V定電圧充電→充電電流10mAになったら100mAで定電流放電→2.8Vになったら次のサイクルのシーケンスにて、500サイクルの充放電を行い、[1−(500サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)]×100(%)として容量低下率を求めた。評価は以下に従った。
0064
◎(Excellent):容量低下率が10%未満。
○(Good):容量低下率が10%以上15%未満である。
△(Average):容量低下率が15%以上25%未満である。長期使用時に容量が低下する懸念がある。
×(Poor):容量低下率が25%以上である。比較的短期での容量低下が懸念される。
0065
0066
表1から明らかなように、比較例1〜3のセパレータと比較して、実施例1〜6のセパレータは、銅箔と積層した際における圧力に応じた厚み変化率が大きい。厚み変化率が大きいほど、電極とセパレータの積層体の厚みが圧力次第で調整容易なことを示しており、積層体製造時の圧力調整次第で、電池の外装缶・パックに積層体を収めやすくなることが期待できる。その結果、セパレータを製造する時に厚み制御の自由度(許容範囲)が広くなり、生産性向上が期待できる。また、実施例1〜6のセパレータを用いたリチウムイオン電池は、サイクル寿命に優れていた。
実施例
0067
実施例1〜6の比較から、測定面圧316kPaにおける厚み弾性率が、測定面圧63kPaを基準として7.0MPa以下である場合、厚み変化率がより大きいため、好ましく、さらに、6.0MPa以下である場合、厚み変化率がさらに大きく、サイクル寿命もより優れている。
0068
本発明のリチウムイオン電池用セパレータは、リチウムイオン電池用途以外にも、リチウムイオンポリマー電池、リチウムイオンキャパシター等にも利用でき、さらに、リチウム以外の金属を用いた金属イオン電池、金属イオンポリマー電池、金属イオンキャパシター等にも利用できる。
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