図面 (/)

技術 電極材料、並びに電極、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池

出願人 国立大学法人九州大学
発明者 殿迫徹也野田志云松田潤子林灯佐々木一成
出願日 2019年3月26日 (1年11ヶ月経過) 出願番号 2019-057841
公開日 2020年10月1日 (4ヶ月経過) 公開番号 2020-161272
状態 未査定
技術分野 触媒 無消耗性電極
主要キーワード ドープ種 短形波 母体酸化物 三電極式セル 電気化学的触媒 コンポジット構造 固定電源 電子伝導性酸化物
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年10月1日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (13)

課題

電極触媒粒子凝集による肥大化が抑制され、優れた耐久性電子伝導性を併せ持つ電極材料を提供する。

解決手段

炭素導電補助材と、前記炭素系導電補助材に担持された電極触媒複合体とを含み、前記電極触媒複合体は、電極触媒粒子と、電子伝導性酸化物とを含み、前記電子伝導性酸化物は、前記電極触媒粒子の間に存在する電極材料。

概要

背景

電解質に固体高分子膜を使用した固体高分子形燃料電池PEFC)は、作動温度が80℃付近と比較的低温であるため、例えば、車載用電源家庭用等の小規模固定電源として導入されている。PEFCでは、以下の電気化学反応によって電力を取り出すことができる。
アノード反応:2H2 → 4H++4e- (反応1)
カソード反応:O2+4H++4e-→2H2O (反応2)
全反応 :2H2+O2→2H2O

PEFCは、電解質膜と前記電解質膜の両面に積層された電極アノード及びカソード)とを含む膜電極接合体MEA)と、前記膜電極接合体の両面に積層されたガス拡散層GDL)とからなる発電モジュールを、ガス流路が形成された2つのセパレータで挟んだ構造のセル基本単位として構成されている。PEFCの構成部材は、一般的に、セパレータは金属材料で形成されており、ガス拡散層は多孔質炭素材料が使用されている。また、電極触媒層(アノード及びカソード)は、担体の表面にPt等の貴金属からなる電極触媒粒子担持された構造を有し、担体には一般的に炭素材料が使用されている(例えば、特許文献1,2)。

一方、PEFCの膜電極接合体(MEA)の電解質膜で使用されるナフィオン(Nafion)は酸性(pH=0〜3)であるため、PEFCの電極材料超強酸性条件で使用されることになる。また、通常運転しているときのセル電圧は0.4〜1.0Vであるが、起動停止時にはセル電圧が1.5Vまで上昇するため、カソードでは、炭素系担体電気化学的に酸化されてCO2に分解する反応が起こり、炭素系担体が腐食されて触媒活性成分である電極触媒粒子が脱落するという問題があり、アノードにおいても運転初期などに燃料ガス不足すると、その部分での電圧低下、あるいは濃度分極が生じて局部的に通常と反対の電位となり、炭素系担体の電気化学的酸化分解反応が起こることがある。

上述した炭素系担体の腐食の問題に対し、特許文献3において、PEFC作動条件強酸性高電位)で熱力学的に安定な電子伝導性酸化物である酸化チタン(TiO2)を担体として利用した電極材料が報告されている。この電極材料は、酸化チタン担体に起因する電気抵抗を低減させるために、繊維状炭素材料表面上に微粒子状の酸化チタン担体を高分散に担持し、当該粒子状の酸化チタン担体に電極触媒粒子が選択的に担持された構造を有している。

概要

電極触媒粒子の凝集による肥大化が抑制され、優れた耐久性電子伝導性を併せ持つ電極材料を提供する。炭素導電補助材と、前記炭素系導電補助材に担持された電極触媒複合体とを含み、前記電極触媒複合体は、電極触媒粒子と、電子伝導性酸化物とを含み、前記電子伝導性酸化物は、前記電極触媒粒子の間に存在する電極材料。

目的

本発明の目的は、電極触媒粒子の凝集による肥大化が抑制され、電子伝導性酸化物に起因する電気化学的酸化への優れた耐久性と、炭素系材料に起因する優れた電子伝導性を併せ持つ電極材料、及びこれを利用した応用技術を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

炭素導電補助材と、前記炭素系導電補助材に担持された電極触媒複合体とを含み、前記電極触媒複合体は、電極触媒粒子と、電子伝導性酸化物とを含み、前記電子伝導性酸化物は、前記電極触媒粒子の間に存在することを特徴とする電極材料

請求項2

前記電極触媒粒子が、粒径1nm以上10nm以下の貴金属からなる粒子である請求項1に記載の電極材料。

請求項3

前記電極触媒粒子が、PtまたはPtを含む合金からなる粒子である請求項1または2に記載の電極材料。

請求項4

前記電子伝導性酸化物が、Ti酸化物である請求項1から3のいずれかに記載の電極材料。

請求項5

前記Ti酸化物が、粒子状である請求項4に記載の電極材料。

請求項6

前記電極触媒複合体が、前記炭素系導電補助材の表面の少なくとも一部が露出するように前記炭素系導電補助材に担持されてなる請求項1から5のいずれかに記載の電極材料。

請求項7

前記炭素系導電補助材が、高黒鉛化カーボンブラックである請求項1から6のいずれかに記載の電極材料。

請求項8

請求項1から7のいずれかに記載の電極材料とプロトン伝導性電解質材料を含み、前記導電補助材が互いに接触して導電パスを形成している電極

請求項9

固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記アノードまたはカソードのいずれか一方又は両方が、請求項8に記載の電極である膜電極接合体。

請求項10

請求項9に記載の膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池

技術分野

0001

本発明は、固体高分子形燃料電池電極に好適な電極材料及びこれを使用した電極、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池に関する。

背景技術

0002

電解質に固体高分子膜を使用した固体高分子形燃料電池(PEFC)は、作動温度が80℃付近と比較的低温であるため、例えば、車載用電源家庭用等の小規模固定電源として導入されている。PEFCでは、以下の電気化学反応によって電力を取り出すことができる。
アノード反応:2H2 → 4H++4e- (反応1)
カソード反応:O2+4H++4e-→2H2O (反応2)
全反応 :2H2+O2→2H2O

0003

PEFCは、電解質膜と前記電解質膜の両面に積層された電極(アノード及びカソード)とを含む膜電極接合体(MEA)と、前記膜電極接合体の両面に積層されたガス拡散層GDL)とからなる発電モジュールを、ガス流路が形成された2つのセパレータで挟んだ構造のセル基本単位として構成されている。PEFCの構成部材は、一般的に、セパレータは金属材料で形成されており、ガス拡散層は多孔質炭素材料が使用されている。また、電極触媒層(アノード及びカソード)は、担体の表面にPt等の貴金属からなる電極触媒粒子担持された構造を有し、担体には一般的に炭素材料が使用されている(例えば、特許文献1,2)。

0004

一方、PEFCの膜電極接合体(MEA)の電解質膜で使用されるナフィオン(Nafion)は酸性(pH=0〜3)であるため、PEFCの電極材料は超強酸性条件で使用されることになる。また、通常運転しているときのセル電圧は0.4〜1.0Vであるが、起動停止時にはセル電圧が1.5Vまで上昇するため、カソードでは、炭素系担体電気化学的に酸化されてCO2に分解する反応が起こり、炭素系担体が腐食されて触媒活性成分である電極触媒粒子が脱落するという問題があり、アノードにおいても運転初期などに燃料ガス不足すると、その部分での電圧低下、あるいは濃度分極が生じて局部的に通常と反対の電位となり、炭素系担体の電気化学的酸化分解反応が起こることがある。

0005

上述した炭素系担体の腐食の問題に対し、特許文献3において、PEFC作動条件強酸性高電位)で熱力学的に安定な電子伝導性酸化物である酸化チタン(TiO2)を担体として利用した電極材料が報告されている。この電極材料は、酸化チタン担体に起因する電気抵抗を低減させるために、繊維状炭素材料表面上に微粒子状の酸化チタン担体を高分散に担持し、当該粒子状の酸化チタン担体に電極触媒粒子が選択的に担持された構造を有している。

先行技術

0006

特開2005−87993号公報
特許第368364号公報
特開2015−8195193号公報

発明が解決しようとする課題

0007

上述の通り、特許文献3の電極材料は、酸化チタン担体がPEFC作動条件(強酸性、高電位)で熱力学的に安定であるため酸化腐食されることなく長期間安定であり、酸化チタン担体に担持された電極触媒粒子は実質的に炭素導電補助材直接接触しないため、上述した炭素腐食によって電極触媒粒子が脱落することが回避されるという利点がある。
しかしながら、PEFC作動条件で長期間使用されると酸化チタン担体に担持させた電極触媒粒子が凝集し、肥大化する場合があるという課題があり、この点においては改善の余地があった。

0008

かかる状況下、本発明の目的は、電極触媒粒子の凝集による肥大化が抑制され、電子伝導性酸化物に起因する電気化学的酸化への優れた耐久性と、炭素系材料に起因する優れた電子伝導性を併せ持つ電極材料、及びこれを利用した応用技術を提供することである。

課題を解決するための手段

0009

本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。

0010

すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1>炭素系導電補助材と、前記炭素系導電補助材に担持された電極触媒複合体とを含み、
前記電極触媒複合体は、電極触媒粒子と、電子伝導性酸化物とを含み、
前記電子伝導性酸化物は、前記電極触媒粒子の間に存在する電極材料。
<2> 前記電極触媒粒子が、粒径1nm以上10nm以下の貴金属からなる粒子である<1>に記載の電極材料。
<3> 前記電極触媒粒子が、PtまたはPtを含む合金からなる粒子である<1>または<2>に記載の電極材料。
<4> 前記電子伝導性酸化物が、Ti酸化物である<1>から<3>のいずれかに記載の電極材料。
<5> 前記Ti酸化物が、粒子状である<4>に記載の電極材料。
<6> 前記電極触媒複合体が、前記炭素系導電補助材の表面の少なくとも一部が露出するように前記炭素系導電補助材に担持されてなる<1>から<5>のいずれかに記載の電極材料。
<7> 前記炭素系導電補助材が、高黒鉛化カーボンブラックである<1>から<6>のいずれかに記載の電極材料。

0011

また、本発明は、上記本発明の電極材料を利用した以下の発明に係るものである。
<8> <1>から<7>のいずれかに記載の電極材料とプロトン伝導性電解質材料を含み、前記導電補助材が互いに接触して導電パスを形成している電極。
<9>固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記アノードまたはカソードのいずれか一方又は両方が、<8>に記載の電極である膜電極接合体。
<10> <9>に記載の膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池。
<11> <9>に記載の膜電極接合体を備えてなる固体高分子形水電解装置

0012

また、本発明は、以下の上記本発明の電極材料の製造方法に係るものである。
<A1> <1>から<7>に記載の電極材料の製造方法であって、以下の工程(1)及び(2)を含む製造方法。
工程(1):疎水性有機溶媒に、炭素系導電補助材を分散させた分散液に、電極触媒粒子前駆体のアセチルアセトナート化合物と、電子伝導性酸化物前駆体のアセチルアセトナート化合物とを溶解させ、撹拌及び溶媒の留去を行うことにより、電極触媒粒子前駆体と電子伝導性酸化物前駆体とが担持された炭素系導電補助材を得る工程
工程(2):工程(1)で得らえた電極触媒粒子前駆体と電子伝導性酸化物前駆体とが担持された炭素系導電補助材を、不活性ガス雰囲気熱処理することによって、電極触媒複合体を形成する工程
<A2> 前記炭素系導電補助材が、高黒鉛化カーボンブラックである<A1>に記載の製造方法。
<A3> 工程(2)において、熱処理を異なる温度で2段階に分けて行う<A1>または<A2>に記載の製造方法。
<A4> 工程(2)において、水蒸気共存下で熱処理を行う工程を含む<A1>から<A3>のいずれかに記載の製造方法。

発明の効果

0013

本発明によれば、電極触媒粒子の凝集による肥大化が抑制され、電子伝導性酸化物に起因する電気化学的酸化への優れた耐久性と、炭素系材料に起因する優れた電子伝導性を併せ持つ電極材料が提供される。

図面の簡単な説明

0014

本発明の電極材料の模式図である。
実施例1の電極材料(Pt:Ti=1:1(mol比)、加湿なし)のXRDパターンである。
実施例3の電極材料(Pt:Ti=1:1(mol比)、3%加湿)のXRDパターンである。
実施例4の電極材料(Pt:Ti=3:1(mol比)、3%加湿)のXRDパターンである。
実施例3の電極材料の電子顕微鏡像である((a)FE−SEM像、(b)TEM像)。
実施例3の電極材料のSTEM像及びEDS分析である。
実施例4の電極材料のTEM像である((a)倍率50万倍、(b)倍率100万倍)。
実施例1〜4及び比較例1の電極材料の電気化学的有効表面積(ECSA)を示す図である。
実施例1〜3及び比較例1の電極材料のリニアスイープボルタモグラム(1600rpm)である。
実施例1〜4及び比較例1のMass Activity(0.9VRHE) を示す図である。
負荷変動サイクル試験の条件を示す図である。
負荷変動サイクル試験(400,000 cycles)における実施例3及び比較例1の電極材料のECSA変化を示す図である。

0015

以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「〜」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として
用いるものとする。

0016

<1.本発明の電極材料>
本発明は、炭素系導電補助材と、前記炭素系導電補助材に担持された電極触媒複合体とを含み、前記電極触媒複合体は、電極触媒粒子と、電子伝導性酸化物とを含み、前記電子伝導性酸化物は、前記電極触媒粒子の間に存在する電極材料(本明細書において、単に「本発明の電極材料」と記載する場合がある)に関する。

0017

図1に本発明の電極材料の模式図(好適な一形態)を示す。図1に示す本発明の電極材料は、炭素系導電補助材と、これに担持された電極触媒複合体とからなる。電極触媒複合体は、微細な電極触媒粒子と、当該電極触媒粒子の間に存在する電子伝導性酸化物とからなる。このように電極触媒粒子の間の間隙を埋めるように電子伝導性酸化物が存在することによって、電極触媒粒子が凝集して肥大化することを抑制することができる。電極触媒複合体の粒子は分散して炭素系導電補助材に担持されており、炭素系導電補助材の表面の一部は露出してため、当該電極材料を用いて電極を構成した際に、前導電補助材が互いに接触して低抵抗の導電パスが形成され、電子伝導性に優れた電極となる。

0018

なお、図1においては、電極触媒粒子の間に存在する電子伝導性酸化物の形態は粒子であるが、電子伝導性酸化物の形態は電極触媒粒子の間に存在するのであれば粒子に限定されず、不定形であってもよい。また、電子伝導性酸化物は、結晶であっても非晶質体であってもよい。

0019

本発明の電極材料では、電極の骨格としての役割を、炭素系導電補助材が担うため、電極触媒複合体の粒径を小さくすることができる。そのため、本発明の電極材料を用いて形成した電極では、電極触媒複合体に含まれる電子伝導性酸化物に起因する電気抵抗を低減できる。

0020

このように、本発明の電極材料は、電極触媒粒子の間に存在する電子伝導性酸化物によって電極触媒粒子の凝集が抑制され、電子伝導性酸化物に起因する電気化学的酸化への優れた耐久性を有し、かつ、炭素系導電補助材に起因する優れた電子伝導性を併せ持つ。そのため、当該電極材料で形成された電極は、優れた電極性能を示すと共に、耐久性が高く、長期間発電することができる。

0021

本発明の電極材料の用途は限定されないが、固体高分子形燃料電池用電極固体高分子水電解用電極に用いる電極材料として好適である。

0022

以下、本発明の電極材料の構成要素について詳細に説明する。なお、以下において、本発明の電極材料を固定高分子形燃料電池(PEFC)用電極に使用することを想定して説明するが、本発明の電極材料はこの用途に限定されない。

0023

[炭素系導電補助材]
本発明の電極材料において、炭素系導電補助材(以下、単に「導電補助材」と記載する場合がある。)は、本発明の電極材料に含まれ、電極を形成した際に電子伝導性を向上させる役割を有し、かつ、電極の骨格としての役割を有する。

0024

本発明の電極材料における炭素系導電補助材は、二次電池燃料電池に使用される任意の炭素系導電補助材を使用することができる。その形状や大きさは、電極の使用目的等を考慮して適宜選択できるが、燃料電池用電極等のガス拡散電極用途では、電極を形成した際の電極内の電気伝導性ガス拡散性が求められる。そのため、電気伝導性とガス拡散性とを両立させるために、炭素系導電補助材が粒子状である場合には、粒径0.03〜500μmであり、繊維状である場合、直径2nm〜20μm、全長0.03〜500μm程度であることが好適である。

0025

炭素系導電補助材は、特に結晶性の高い炭素材料を好適に使用することができる。当該導電補助材は、結晶性の高い炭素材料は、結晶性が低い炭素材料と比較して疎水性有機溶媒に対する分散性がよく、電極触媒複合体の前駆体化合物を固着しやすい傾向にある。

0026

結晶性の高い炭素材料として、カーボンナノチューブ気相成長炭素繊維等の繊維状炭素も使用できるが、特に高黒鉛化カーボンブラック(Graphitized Carbon Black,GCB)を好適に使用できる。

0027

高黒鉛化カーボンブラックは、カーボンブラック高温黒鉛化炉で熱処理(例えば、2500℃以上)して黒鉛化(結晶化)したものである。黒鉛化の程度は、例えば、ラマン分光法で評価することができ、例えば、ラマン分光法により求めたR値が1.10以下であるものが好適に使用される。R値は、黒鉛結晶化度を示す指標であり、1360cm-1及び1580cm-1のラマンバンド相対強度比(I1360/I1580)である。

0028

高黒鉛化カーボンブラックは、二次粒子の粒径で0.03〜500μm(一次粒子径10nm〜100nm程度)である。

0029

高黒鉛化カーボンブラックは自作品、市販品のいずれでも使用できる。好適な市販品を例示すると、キャボット社の「GCB」シリーズ品番:GCB200等)や、東海カーボン社製の「トーカブラック」シリーズ(品番:トーカブラック#3800等)などが挙げられる。

0030

本発明で使用される炭素系導電補助材は、1種類でもよいし、または大きさ(粒径、繊維径及び繊維長さ)や結晶性等の異なる2種以上の炭素材料を任意の割合で使用してもよい。

0031

[電極触媒複合体]
本発明の電極材料は、電極触媒粒子と、電子伝導性酸化物とを含む電極触媒複合体を含み、当該電極触媒複合体において、電子伝導性酸化物は、前記電極触媒粒子の間に存在することに特徴がある。

0032

上述の通り、従来の電子伝導性酸化物に貴金属触媒粒子が担持された電極材料では、電極として長期間使用した際に電極触媒である貴金属触媒粒子が凝集して肥大化する問題があるが、本発明の電極材料では、電極触媒粒子の間を埋めるように電子伝導性酸化物が存在する構造を有することによって電極として使用する際に電極触媒粒子が凝集して肥大化することを抑制することができる。

0033

炭素系導電補助材に担持される電極触媒複合体の形態は、本発明の目的を損なわない限り、任意であり、例えば、粒子状、島状、膜状等が挙げられる。
電極を形成した際の導電性の観点からは、電極触媒複合体が粒子状であって、当該粒子状の電極触媒複合体が導電補助材表面を完全に被覆せずに、導電補助材の表面の一部が露出され、導電補助材と他の導電補助材とが接触の直接的な接触を阻害しない程度に分散して担持されていることが好ましい。粒子状である場合の電極触媒複合体の大きさは特に限定はなく、好適には平均粒径10〜500nmである。「電極触媒複合体の平均粒径」は、電子顕微鏡像より調べられる任意の電極触媒複合体(20個)の粒子径平均値により得ることができる。

0034

また、電極触媒複合体の担持量は、電極として十分な量の電極触媒粒子が含まれるような範囲で適宜決定される。電極触媒粒子の活性は、電極触媒金属の種類、結晶性、粒径等及び複合化させる電子伝導性酸化物の種類、結晶性、粒径等に依存するため、この点を考慮して電極触媒複合体の担持量が決定される。
電極触媒複合体の担持量は、例えば、導電補助材と電極触媒複合体の合計を100重量%としたときに、通常、5〜50重量%であり、好ましくは10〜40重量%である。

0035

以下、電極触媒複合体を構成する電極触媒粒子及び電子伝導性酸化物について詳述する。

0036

(電極触媒粒子)
電極触媒粒子は、酸素還元(及び水素の酸化)に対する電気化学的触媒活性を有するものであれば、貴金属系触媒非貴金属系触媒のいずれでもよいが、好適には、Pt,Ru,Ir,Pd,Rh,Os,Au,Ag等の貴金属、及びこれらの貴金属を含む合金から選択される。なお、「貴金属を含む合金」とは「上記の貴金属のみからなる合金」と、「上記の貴金属とそれ以外の金属からなる合金で上記の貴金属を10質量%以上含む合金」を含む。貴金属と合金化させる上記「それ以外の金属」は、特に限定されないが、Co,Ni,W,Ta,Nb,Snを好適な例として挙げることができ、これらを1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。また、分相した状態で2種類以上の上記貴金属及び貴金属を含む合金を使用してもよい。なお、上記貴金属、及びこれらの貴金属を含む合金を以下、「電極触媒金属」と呼ぶ場合がある。

0037

電極触媒金属の中でも、Pt及びPtを含む合金は、固体高分子形燃料電池の作動温度である80℃付近の温度域において、酸素の還元(及び水素の酸化)に対する電気化学的触媒活性が高いため、特に好適に使用することができる。

0038

電極触媒粒子の形状は、特に制限されず公知の電極触媒粒子と同様の形状のものが使用できる。具体的な形状として球形、楕円形多面体コアシェル構造等が挙げられる。また、電極触媒粒子は結晶があることが好ましいが、結晶と非晶質の混合体であってもよい。

0039

電極触媒粒子の大きさは、小さいほど電気化学反応が進行する有効表面積が増加するため、電気化学的触媒活性が高くなる傾向がある。しかし、その大きさが小さすぎると、電気化学的反応活性が低下する。従って、電極触媒粒子の大きさは、平均粒径として、粒径1〜10nmであることが好ましく、より好ましくは1.5〜5nmである。
なお、本発明における「電極触媒粒子の平均粒径」は、電子顕微鏡像より調べられる電極触媒粒子(20個)の粒子径の平均値により得ることができる。電子顕微鏡像による平均粒径算出時は、微粒子の形状が、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。
すなわち、本発明の電極材料における電極触媒粒子の好適な態様の一つは、前記電極触媒粒子が、平均粒子径1〜10nmのPt及びPtを含む合金からなる電極触媒粒子である。

0040

電極触媒粒子の量は、目的とする電極触媒活性と、複合化させる電子伝導性酸化物の種類や量を考慮して決定される。なお、電極触媒粒子の担持量は、例えば、誘導結合プラズマ発光分析(ICP)によって調べることができる。

0041

電極触媒活性の観点からは、電極材料の全重量に対して、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは0.5〜30質量%とすると、単位質量あたりの触媒活性に優れ、担持量に応じた所望の電極反応活性を得ることができる。

0042

(電子伝導性酸化物)
電子伝導性酸化物としては、燃料電池(特には固体高分子形燃料電池)のアノード条件、カソード条件の少なくともいずれか一方で十分な耐久性と電子伝導性を併せ持つものであればよい。なお、PEFCのカソード条件とは、PEFCの通常運転時のカソードにおける条件であり、温度が室温〜150℃程度、空気等の酸素を含むガスが供給される条件(酸化雰囲気)を意味し、アノード条件とは、PEFCの通常運転時のアノードにおける条件であり、温度が室温〜150℃程度、水素を含む燃料ガスが供給される条件(還元雰囲気)を意味する。

0043

電子伝導性酸化物の形態は、本発明の目的を損なわない限り、任意であり、例えば、粒子状、島状、膜状等が挙げられるが、粒子状であることが好ましい。また、電子伝導性酸化物は、結晶に限定されず、非晶質であってよく、結晶と非晶質の混合体であってもよいが、電子伝導性を高めるためには、電子伝導性酸化物は結晶であることが好ましい。
なお、本明細書において、「M酸化物」(但し、Mは金属元素である)と記載した場合には、M酸化物の形態は、結晶に限定されず、結晶、非晶質、結晶と非晶質の混合体のいずれも含まれる概念とする。例えば、Ti酸化物は、TiO2結晶、酸素不定比酸化物(「TiOx」と表記する)、及びこれらの混合物を含む。

0044

電子伝導性酸化物として具体的には、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)及びタングステン(W)から選択される1種の金属元素の酸化物を主体とする電子伝導性酸化物が挙げられる。ここで、本発明において「主体とする電子伝導性酸化物」とは、(A)母体酸化物のみからなるもの、及び(B)他元素をドープされた酸化物であって、母体酸化物が80mol%以上含まれるもの、を意味する。

0045

ドープされる元素として、具体的には、Sn,Ti,Sb,Nb,Ta,W,In,V,Cr,Mn,Moなどが挙げられる(但し、母体酸化物と異なる元素である。)。ドープされる元素は、母体酸化物より価数が高い元素であり、例えば、母体酸化物がTi酸化物の場合で例示すると、上記ドープ種元素のうち、Ti以外の元素(例えば、Sb,Nb,Ta,W,In,V,Cr,Mn,Moなど)が選択される。この中でも、酸化チタンの電子導電性を特に高めることができる点で、ニオブ(Nb)を0.1〜20mol%ドープしたニオブドープ酸化チタンが特に好ましい。

0046

なお、元素としてチタン(Ti)は、PEFCのアノード条件で、酸化物であるTiO2が熱力学的に安定であり還元が起こらない。さらにTi酸化物は、PEFCのアノード条件のみならず、カソード条件でも、酸化物であるTiO2が熱力学的に安定であるため、カソードとしても使用できる。

0047

上述の通り、電極触媒複合体において、電子伝導酸化物は電極触媒粒子の間を埋めるように存在することによって、電極触媒粒子の凝集を阻害するものであり、電子伝導酸化物は、この目的を達成できるように形態で含まれていればよい。特に本発明の電極材料において、電極の骨格としての役割は導電補助材が担うことから、電子伝導性が炭素系材料と比較して小さい電子伝導酸化物は、電極触媒複合体においてできる範囲内で少量であることが好ましい。
電極触媒複合体における電子伝導酸化物の割合は、電子伝導酸化物の種類や大きさ、結晶性、並びに複合化される電極触媒粒子の種類、量や大きさに応じて適宜決定される。例えば、電極触媒粒子がPt、電子伝導酸化物がTi酸化物の場合では、Pt:Ti=0.1〜10:1(モル比)である。

0048

なお、本発明の電極材料では、電子伝導性酸化物は、電極触媒複合体において電極触媒粒子の間を充填させるものであり電子伝導性酸化物を小さくできるので、これに起因する電気抵抗を小さくできる。そのため、電子伝導性酸化物が結晶である場合のみならず、非晶質体であってもよい。
但し、電気抵抗をより小さくするためには、電子伝導性酸化物は結晶であることが好ましい。Ti酸化物の場合では、より好適には平均粒径5〜40nmの結晶性のTi酸化物(TiO2)である。

0049

<本発明の電極材料の製造方法>
上述した本発明の電極材料の製造方法は特に限定されず、電極材料を構成する導電補助材、電子伝導性酸化物、電極触媒粒子の種類に応じて適宜好適な方法を選択すればよい。本発明の電極材料の製造方法の好適な一例は、以下に説明する製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称す。)である。

0050

すなわち、本発明の製造方法は、以下の工程(1)及び(2)を含む。
工程(1):疎水性有機溶媒に、炭素系導電補助材を分散させた分散液に、電極触媒粒子前駆体のアセチルアセトナート化合物と、電子伝導性酸化物前駆体のアセチルアセトナート化合物とを溶解させ、撹拌及び溶媒の留去を行うことにより、電極触媒粒子前駆体と電子伝導性酸化物前駆体とが担持された炭素系導電補助材を得る工程
工程(2):工程(1)で得らえた電極触媒粒子前駆体と電子伝導性酸化物前駆体とが担持された炭素系導電補助材を、不活性ガス雰囲気で熱処理することによって、電極触媒複合体を形成する工程

0051

本発明の電極材料の製造方法の具体的な一例は後述する実施例で説明する方法である。

0052

本発明の製造方法の特徴は、工程(1)において、疎水性有機溶媒を使用し、電極触媒粒子と電子伝導性酸化物の前駆体化合物としてそれぞれのアセチルアセトナート化合物を使用し、これを1ステップで炭素系導電補助材に担持することによって、電極触媒粒子と電子伝導性酸化物とが複合化(ナノコンポジット化)した電極触媒複合体前駆体を得ることができる。また、アセチルアセトナート化合物は、電極触媒の性能低下の一因となる塩素硫黄といった不純物を含まないという利点がある。

0053

本発明の製造方法において、上述した結晶性の高い疎水性の炭素系導電補助材とすると、疎水性有機溶媒中での分散性が高まると共に、アセチルアセトナート化合物が付着しやすいため、電極触媒複合体が高分散に均等に担持される傾向にある。表面がグラファイト構造である炭素系導電補助材の具体例は上述した通りである。

0054

工程(2)は、工程(1)で得らえた電極触媒粒子前駆体と電子伝導性酸化物前駆体とが担持された炭素系導電補助材を、不活性ガス雰囲気で熱処理することによって、電極触媒複合体を形成する工程である。
工程(2)において、窒素アルゴン等の不活性雰囲気で熱処理することで電極触媒前駆体や電子伝導性酸化物前駆体とからなる電極触媒複合体前駆体が分解され、電極触媒となる金属の有する電気化学触媒作用を活性化し、電子伝導性酸化物の結晶性を高め、電子伝導性を向上させる。

0055

本発明の製造方法において、工程(2)における熱処理温度は、使用する原料アセチルアセトナート化合物の分解温度を考慮して適宜決定される。この際に、熱処理を異なる温度で2段階に分けて行うことが好ましい。
例えば、Ti酸化物の場合には、熱処理温度は電極触媒がPtやPt合金の場合、通常、180〜400℃、好適には200〜250℃である。温度が低すぎると電極触媒となる金属の活性化が不十分となり、温度が高すぎると電極触媒粒子が凝集し、有効反応表面積が小さくなりすぎる問題がある。

0056

また、Ti酸化物等の水素を含有する還元性雰囲気中でも安定な電子伝導性酸化物の場合には、水素の存在下で熱処理を行うことができる。水素は窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性気体で0.1〜50%(好適には1〜10%)に希釈されて用いられる。

0057

また、工程(2)において、水蒸気共存下で熱処理を行う工程を含むことが好ましい。水蒸気共存下(加湿雰囲気)における熱処理によって、電子伝導性酸化物前駆体が十分に分解・酸化されるため、電極性能が向上する傾向にある。

0058

<2.本発明の電極材料の用途>
(電極)
本発明の電極材料の用途は限定されないが、固体高分子形燃料電池用電極や、固体高分子形水電解装置用電極の構成材料として好適に使用できる。
本発明の電極材料のPEFCにおける電極として用いたケースについて説明すると、本発明の電極は、上述の電極材料とプロトン伝導性電解質材料を含み、前記導電補助材が互いに接触して導電パスを形成していることを特徴とする。

0059

本発明の電極は、上述の電極材料のみから構成されていてもよいが、通常、燃料電池の電解質に使用されるプロトン伝導性電解質材料(以下、「プロトン伝導性電解質材料」、または単に「電解質材料」と記載する場合がある。)を含む。電極材料と共に燃料電池の電極に含まれる電解質材料は、燃料電池用電解質膜に使用される電解質材料と同じであってもよく、異なってもよい。電極と電解質膜の密着性を向上させる観点から、同じものを用いることが好ましい。

0060

PEFCの電極と電解質膜とに使用される電解質材料としては、プロトン伝導性電解質材料が挙げられる。このプロトン伝導性電解質材料は、ポリマー骨格の全部または一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質材料と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質材料に大別され、この両者を電解質材料として使用することができる。

0061

フッ素系電解質材料としては、具体的には、ナフィオン(登録商標デュポン社製)、アシプレクス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などが好適な一例として挙げられる。

0062

炭化水素系電解質材料としては、具体的には、ポリスルホン酸ポリスチレンスルホン酸ポリアリールエーテルケトンスルホン酸ポリフェニルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールスルホン酸、ポリベンズイミダゾールホスホン酸ポリイミドスルホン酸等のポリマーや、これらにアルキル基等の側鎖を有するポリマーが好適な一例として挙げられる。

0063

上記電極材料と電解質材料との質量比は、これらの材料を用いて形成される電極内の良好なプロトン伝導性を付与し、かつ電極内のガス拡散及び水蒸気の排出をスムーズに行えるように適宜決定すればよい。ただし、電極材料に混合する電解質材料の量が多すぎるとプロトン伝導性はよくなるが、ガスの拡散性は低下する。逆に混合する電解質材料の量が少なすぎるとガス拡散性はよくなるが、プロトン伝導性は低下する。そのため、上記電極材料に対する電解質材料の質量比率は、10〜50質量%が好適な範囲である。この質量比率が10質量%より小さい場合は、プロトン伝導性を有する材料の連続性が悪くなり、燃料電池用電極として十分なプロトン伝導性が確保できない。逆に50質量%より大きい場合は電極材料の連続性が悪くなり、燃料電池用電極として十分な電子伝導性を有することができなくなる場合がある。さらには電極内部でのガス(酸素、水素、水蒸気)の拡散性が低下する場合がある。

0064

本発明の燃料電池用電極は、上述の電極材料やプロトン伝導性材料以外の成分を含んでいてもよい。例えば、上述の電極材料に含まれる導電補助材以外の導電補助材(以下、「他の導電補助材」と記載する。)を含んでいてもよい。他の導電補助材を含むことにより、電極材料をつなぐ導電パスが増加し、電極全体としての導電性が向上する場合がある。他の導電補助材としては、上述した導電補助材である繊維状炭素及び鎖状結炭素粒子でもよいし(但し、電子伝導性酸化物や電極触媒粒子は担持されていないもの)、カーボンブラック、活性炭など通常の粒子状炭素でもよい。

0065

なお、本発明の電極材料を含む燃料電池用電極として、PEFC用電極について説明したが、PEFC以外にもアルカリ形燃料電池リン酸形燃料電池などの各種燃料電池における電極として用いることができる。また、PEFCと同様な高分子電解質膜を使用した水の電解装置用の電極としても好適に使用することができる。

0066

(膜電極接合体)
本発明の電極材料を用いた電極は、固体高分子形燃料電池や固体高分子形水電解装置に用いる膜電極接合体(MEA)に好適に使用することができる。
すなわち、本発明の膜電極接合体は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記カソードとアノードの少なくとも一方が、上記本発明の電極であることを特徴とする。
本発明の膜電極接合体における本発明の電極以外の構成は、従来公知の構成を適用させることができる。

0067

(固体高分子形燃料電池)
本発明の固体高分子形燃料電池(単セル)は、本発明の膜電極接合体を備えてなり、通常、膜電極接合体をガス流路が形成されたセパレータで挟持した構造を有する。
本発明の固体高分子形燃料電池において、本発明の膜電極接合体以外の構成要素は、公知の固体高分子形燃料電池と同様であるため、詳細な説明を省略する。
実際には、本発明の固体高分子形燃料電池(単セル)が発電性能に応じた基数だけ積層された燃料電池スタックが形成され、ガス供給装置冷却装置などその他付随する装置を組み立てることにより使用される。

0068

以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定される
ものではない。なお、以下の実施例の説明において、高黒鉛化カーボンブラックを「GCB」と表記し、Ti酸化物を「TiOx」と表記し、PtとTi酸化物とからなる電極触媒複合体を「Pt−TiOx」、Pt−TiOxを担持したGCBを「Pt−TiOx/GCB」と記載する場合がある。

0069

1.電極材料の作製
実施例の電極材料として、以下の実施例1〜4の電極材料を製造した。

0070

使用した導電補助材、貴金属触媒前駆体、Ti前駆体は以下の通りである。
<導電補助材>
導電補助材として、高黒鉛化カーボンブラック(GCB)(キャボット社製、GCB200)を使用した。
<貴金属触媒前駆体>
貴金属触媒前駆体として、Ptアセチルアセトナート(Platinum(II) acetylacetonate,97%,Sigma Aldrich)(以下、「Pt(acac)2」と記載する場合がある。)を使用した。
<電子伝導性酸化物前駆体>
電子伝導性酸化物前駆体として、Tiアセチルアセトナート(Titanium diisopropoxide bis(acetylacetonate),75wt.% in isopropanol,Sigma Aldrich)(以下、「Ti(acac)2OiPr2」と記載する場合がある。)を使用した。

0071

<実施例1>
工程(1)
まず、導電補助材であるGCB(201.5mg)をナスフラスコに入れ、これにアセトン(30mL)を加え、超音波ホモジナイザーで撹拌し、GCBの分散液を得た。得られたGCB分散液に、Ptアセチルアセトナート(91.9mg)を加え、次いで、イソプロパノールに溶解されたTiアセチルアセトナート(114μL)とを加えて十分に撹拌し溶解させた。Pt前駆体とTi酸化物前駆体の仕込み量は、電極材料全体に対する担持量としてPtを17.7wt%、Tiを4.3wt%となるようにした。なお、当該仕込み量でPt:Ti(mol比)=1:1である。
次いで、試料が入ったナスフラスコを減圧機能回転機能が備わったロータリーエバポレータにセットし、氷冷しながら、溶媒が全て揮発するまで減圧しながら超音波撹拌を行い、粉末(Pt前駆体とTi酸化物前駆体とを含む電極触媒複合体前駆体を担持したGCB)を得た。

0072

工程(2)
工程(1)で得られた粉末を、N2雰囲気下で、昇温速度1℃/分、210℃で3時間保持、240℃で3時間保持の条件で熱処理(還元処理)を施すことで実施例1の電極材料を得た。

0073

<実施例2>
実施例1の電極材料の製造方法の工程(2)において、N2雰囲気下で、240℃で3時間保持したのちに、0.6%加湿N2で30分保持した以外は、実施例1と同様にして実施例2の電極材料を得た。

0074

<実施例3>
実施例1の電極材料の製造方法の工程(2)において、N2雰囲気下で、240℃で3時間保持したのちに、3%加湿N2で30分保持した以外は、実施例1と同様にして実施例3の電極材料を得た。

0075

<実施例4>
実施例1の電極材料の製造方法の工程(1)において、Pt前駆体とTi酸化物前駆体の仕込み量を、電極材料形成後の担持量としてPtを20.3wt%、Tiを1.7wt%となるようにし(Pt:Ti(mol比)=3:1)、工程(2)において、N2雰囲気下で、240℃で3時間保持したのちに、3%加湿N2で30分保持した以外は、実施例1と同様にして実施例4の電極材料を得た。

0076

また、実施例の電極材料と比較するための標準触媒として、田中貴金属工業株式会社製Pt担持カーボン(Pt/C、品番:TEC10E50E、Pt担持率46wt%)を使用した。

0077

実施例1〜4及び比較例1として使用したPt/C標準触媒の電極材料を表1にまとめて示す。なお、表1におけるPt担持率は、ICP測定での実測値括弧は仕込み値)である。

0078

0079

2.物性評価
2−1.X線回折(XRD)による解析
調製した各電極材料結晶構造をXRDによって評価した。図2に実施例1の電極材料、図3に実施例3の電極材料、図4に実施例4の電極材料のXRDパターンを示す。なお、2θが約27°のピークはGCBに起因するピークである。
いずれの電極材料においても、Ptピークが確認され、Ptが結晶として存在していることが認められた。一方、いずれの電極材料においても、TiO2のピークが確認できなかったことから、Tiは非常に微小なTiO2結晶あるいは非晶質のTi酸化物(TiOx)として存在していると判断できる。
また、PtTiやPt3Tiなどの合金の明確なピークは確認されないことから、PtとTiの合金はほとんど形成されていないと判断できる。

0080

また、Scherrer法により求めた実施例1,3,4の電極材料のPt微粒子結晶子径をそれぞれ表2に示す。いずれの条件で調製した電極材料についても、2nm程度の結晶子径を有するPt微粒子が形成されていることが明らかになった。

0081

0082

2−2.微細構造評価
実施例3の電極材料の微細構造評価を行った結果を図5及び図6に示す。
実施例3の電極材料のFE−SEM像(図5(a))及びTEM像(図5(b))から、GCBに粒径1〜2nmの粒子が高分散に担持されていることが確認された。
また、図6に実施例3の電極材料のSTEM像及びEDS分析を示す。図6のEDS分析からわかるように、粒径1〜2nmのPt粒子の間に入り込むようにTi酸化物が分布し、PtとTi酸化物とのコンポジット構造を形成していることがわかる。Pt粒子の間にTi酸化物が入り込むことでPtの粒成長が抑えられ、粒径1〜2nm程度の微小なPt粒子が保持できていると判断した。
上述の通り、XRD測定の結果からはTiO2のピークは検出されず、TiO2結晶の存在を確認できなかったが、EDS分析結果からはTiの存在は確認できたことから、Ti酸化物は存在していると判断した。

0083

実施例4の電極材料の微細構造評価を行った結果を図7に示す。
図3(b)で示したPt:Ti=1:1(mol比)で調製した実施例3の電極材料のTEM像と比較すると、Pt:Ti=3:1(mol比)で調製した実施例4の電極材料の方が、より微小な粒子が高分散に担持されていることが認められる一方で、一部で粒子が凝集している箇所も確認された。

0084

3.電気化学的評価(ハーフセル
3−1.電気化学的表面積(ECSA)の評価
実施例1〜4及び比較例1の電極材料について、サイクリックボルタンメトリーCV)を行い、CVから求めた水素吸着量から電気化学的表面積(ECSA)を算出した。なお、ECSAは、電極材料に含まれるPtの有効表面積に相当する。

0085

CVの測定条件は以下の通りである。なお、1原子のPtに付き 1原子のHが吸着すると仮定すると210μC/cm2の電気量となる。

測定:三電極式セル作用極:電極材料/GC、対極:Pt、参照極:Ag/AgCl)
電解液:0.1M HClO4(pH:約1)
測定電位範囲:0.05〜1.2V(可逆水素電極基準)
走査速度 :50mV/s
水素吸着量:0.05〜0.4Vの水素吸着を示すピーク面積から算出
電気化学的表面積(ECSA):下記式より算出

ECSA=(水素吸着量)[μC] / 210[μC/cm2]

0086

実施例1〜4及び比較例1の電極材料のCVにおいて水素の吸脱着に由来するピークが観察された(図示せず)。CVから求めた実施例1〜4及び比較例1の電極材料の電気化学的表面積(ECSA)の評価結果を図8に示す。
図8に示されるように、実施例1〜4の電極材料は、比較例1の電極材料(Pt/C、標準触媒)と比較していずれもECSAが大きいことが分かる。この結果は、上述の通り、実施例の電極材料におけるPt粒子の粒径は1〜2nm程度と非常に小さく、高分散担持され、Pt有効表面積が増大したことに起因していると判断した。
また、加湿処理を行っていない実施例1の電極材料よりも、加湿熱処理を行った実施例2(0.6%加湿)の方がECSAが大きく、さらに水蒸気濃度を高めた実施例3(3%加湿)の方がECSAがより大きいことが分かる。加湿雰囲気における熱処理によって、Ti前駆体(Ti(acac)2OiPr2)が十分に分解・酸化され、電極触媒複合体に含まれるPt及びTiが、金属PtとTi酸化物(TiOx)に明確に相分離したことに起因していると判断した。
Pt:Ti=3:1(mol比)で調製した実施例4の電極材料の方が、Pt:Ti=1:1(mol比)で調製した実施例3の電極材料よりもECSAが小さいが、上記微細構造評価の通り、実施例4の電極材料は、微小なPt粒子が高分散に担持されているものの、一部で凝集している粒子が存在しているためと判断した。

0087

3−2.ORR活性の評価
実施例1〜4及び比較例1の電極材料について、ORR活性を評価した。
ORR活性は、回転ディスク電極法RDE法)でリニアスイープボルタンメトリー(LSV)を行い、得られる活性化支配電流(ik)を基に算出するMass activity(単位Pt質量当たりの活性)を指標とした。

Mass activity = ik /電極上のPt質量

活性化支配電流(ik)は、回転電極測定によって得られた電流−電位曲線について、任意の電位においてi-1とω-1/2でプロットして得られるKoutecky-Levichプロットを作成し、得られた直線を外挿することによって切片から求めた。
具体的な手順として、まず、O2を50mL/分で30分間バブリングした後、0.2VRHEから貴な方向に向けて10mV/sで1.20VRHEまで電位を走査し、測定を行なった。なお、測定中は常にO2を50mL/分でパージした。なお、VRHEは可逆水素電極(RHE)基準の電位である

0088

図9に実施例1〜3及び比較例1の電極材料のリニアスイープボルタモグラム(1600rpm)を示す。図9において、実施例1〜3の対比から、熱処理における水蒸気濃度を高くするほど酸素還元電位がポジティブシフトしていることから、水蒸気共存下での熱処理により電極性能が向上していることが示された。
図10に、実施例1〜4及び比較例1の電極材料のMass activityの評価結果を示す。
図10からわかるように、加湿なしの実施例1、または0.6%加湿の実施例2の電極材料は、比較例1の電極材料(P/C標準触媒)よりもMass activityが小さかった。一方、3%加湿の実施例3及び実施例4の電極材料は、比較例1の電極材料よりもMass activityが大きな値を示していた。3%加湿の実施例3の電極材料はではMass activityがはるかに大きくなっていることが確認された。これら結果から、Pt−TiOx/GCBからなる電極材料は、水蒸気共存下での熱処理により、Mass activityが増加すると判断した。なお、加湿なしの実施例1又は0.6%加湿の実施例2の電極材料はほとんどMass activityの値に差が見られなかったが、0.6%加湿窒素雰囲気での熱処理では不十分であったと判断した。

0089

3−3.負荷変動サイクル試験
ORR活性が最大となった実施例3の電極材料について、負荷変動サイクル耐久性試験を行った。負荷変動サイクル試験は、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)が推奨する方法(固体高分子形燃料電池の目標研究開発課題と評価方法の提案、平成23年1月発行)にて、負荷変動を模擬した電位サイクル負荷することによって行った。図11に示す負荷変動サイクルは,触媒自体の溶解・再析出などを伴う劣化を促進させるサイクルであり、0.6〜1.0VRHEの短形波を用いて1サイクル当たり3秒ずつの6秒負荷することで実験を行い、40万サイクル後のECSAを測定した。

実施例

0090

図12に負荷変動サイクル試験(40万サイクル)における実施例3及び比較例1の電極材料のECSA変化を示す。
図12からわかるように、ECSAが初期値の50%を切ったのは、比較例1の電極材料(Pt/C)で4万サイクルであり、実施例3の電極材料で6万サイクルであった。また、40万サイクル後のECSA保持率は、比較例1の電極材料で14.9%、実施例3の電極材料で23.7 %であった。また、負荷変動サイクル試験のORR活性を評価したところ(図示せず)、負荷変動サイクル印加による酸素還元電位のネガティブシフトが小さいことが確認されたことから、実施例3の電極材料はECSAとORR活性の両面で、標準触媒である比較例1の電極材料(Pt/C)より高い負荷変動サイクル耐久性を有していることが確認された。

0091

本発明の電極材料によれば、優れた電極触媒活性、電子伝導性、ガス拡散性、及び優れた耐久性を有する電極を供することができる。当該電極は、長期運転が必要である固体高分子形燃料電池用の電極に好適である。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ