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図面 (20)

課題

電気化学的に人工合成樹脂を有効利用可能な電気化学装置を提供する。

解決手段

電気化学装置1は、プロトン伝導性を有する電解質2と、電解質2の一方面に設けられたアノード3と、電解質2の他方面に設けられたカソード4とを備える電気化学セル10を有している。電気化学装置1は、アノード3に、水と人工合成樹脂と酸とを含む溶液Sが供給されるように構成されている。電気化学装置1は、カソード4に酸素含有ガスを供給するように構成し、アノード3とカソード4との間に負荷51を接続することにより、人工合成樹脂を燃料とする燃料電池として機能することができる。一方、電気化学装置1は、カソード4に不活性ガスを供給するように構成し、アノード3とカソード4との間に電圧印加部52を接続することにより、人工合成樹脂を燃料として電気分解によってカソード4側にて水素を生成する水素生成装置として機能することができる。

概要

背景

電気化学装置は、一般に、電解質と、電解質の一方面に設けられたアノードと、電解質の他方面に設けられたカソードとを備える電気化学セルを有している。例えば、先行する非特許文献1には、アノード、プロトン伝導性を有する電解質、カソードにて構成される電気化学セルを備え、アノードに供給した糖類を直接電気分解してカソードにて水素を生成させる電気化学装置としての水素生成装置が開示されている。

概要

電気化学的に人工合成樹脂を有効利用可能な電気化学装置を提供する。電気化学装置1は、プロトン伝導性を有する電解質2と、電解質2の一方面に設けられたアノード3と、電解質2の他方面に設けられたカソード4とを備える電気化学セル10を有している。電気化学装置1は、アノード3に、水と人工合成樹脂と酸とを含む溶液Sが供給されるように構成されている。電気化学装置1は、カソード4に酸素含有ガスを供給するように構成し、アノード3とカソード4との間に負荷51を接続することにより、人工合成樹脂を燃料とする燃料電池として機能することができる。一方、電気化学装置1は、カソード4に不活性ガスを供給するように構成し、アノード3とカソード4との間に電圧印加部52を接続することにより、人工合成樹脂を燃料として電気分解によってカソード4側にて水素を生成する水素生成装置として機能することができる。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

プロトン伝導性を有する電解質(2)と、上記電解質の一方面に設けられたアノード(3)と、上記電解質の他方面に設けられたカソード(4)とを備える電気化学セル(10)を有しており、上記アノードに、水と人工合成樹脂と酸とを含む溶液が供給されるように構成されている、電気化学装置(1)。

請求項2

上記酸は、リン酸を含む、請求項1に記載の電気化学装置。

請求項3

上記酸は、さらに硫酸を含む、請求項2に記載の電気化学装置。

請求項4

上記酸におけるリン酸と硫酸との質量比が、90:10〜20:80の範囲にある、請求項3に記載の電気化学装置。

請求項5

上記溶液は、上記アノードに供給される前に180度以上に曝されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気化学装置。

請求項6

上記アノードが配置され、上記溶液を上記アノードに接触させる溶液接触流路(32)を有しており、上記アノードにおける上記溶液の供給側の端部を原点とし、上記アノードにおける上記溶液の排出側の端部をXとした場合に、X/2となる中央部よりも上記溶液の供給側の上記溶液接触流路における上記溶液の温度を調節する調温部(6)を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気化学装置。

請求項7

上記調温部は、上記中央部よりも上記溶液の供給側の上記溶液接触流路における上記溶液の温度を160度以上に調節する、請求項6に記載の電気化学装置。

請求項8

上記アノードに上記溶液を供給する前に上記溶液を撹拌する撹拌機構(7)を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気化学装置。

請求項9

上記アノードは、カルボニル基を有するカーボン粒子を含み、上記カーボン粒子の細孔容積分布は、細孔径2nm以上200nm以下の範囲にピーク細孔径を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学装置。

請求項10

上記溶液の供給圧を変化させて上記アノードに上記溶液を供給する供給圧調整機構(81)を有する、または、上記溶液の供給速度を変化させて上記アノードに上記溶液を供給する供給速度調整機構(82)を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気化学装置。

請求項11

上記アノードで使用されなかった上記溶液を再び上記アノードへ循環させる溶液循環流路(34)を有し、上記溶液循環流路に、冷却により上記溶液中の上記人工合成樹脂を析出させて固着させる冷却部(341)と、上記冷却部の下流側に設けられ、上記冷却された上記溶液を再加熱する再加熱部(342)と、を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電気化学装置。

請求項12

上記溶液の供給経路内壁面に、上記人工合成樹脂の付着を防止するコート層を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電気化学装置。

技術分野

0001

本発明は、電気化学装置に関する。

背景技術

0002

電気化学装置は、一般に、電解質と、電解質の一方面に設けられたアノードと、電解質の他方面に設けられたカソードとを備える電気化学セルを有している。例えば、先行する非特許文献1には、アノード、プロトン伝導性を有する電解質、カソードにて構成される電気化学セルを備え、アノードに供給した糖類を直接電気分解してカソードにて水素を生成させる電気化学装置としての水素生成装置が開示されている。

先行技術

0003

ChemElectroChem2017,4,3032-3036

発明が解決しようとする課題

0004

従来、種々の分野において人工合成樹脂が使用されている。人工合成樹脂は、一般に、分解され難い固形物である。そのため、人工合成樹脂が廃棄されると、埋め立て地海洋における人工合成樹脂による汚染を含む様々な環境問題を引き起こす。使用済みの人工合成樹脂の利用方法としては、人工合成樹脂の焼却による熱利用が広く知られている。しかしながら、この方法は、大気中に有害物質を排出するおそれがある。そのため、従来とは異なる人工合成樹脂の有効利用法の開発が望まれている。

0005

本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、電気化学的に人工合成樹脂を有効利用可能な電気化学装置を提供しようとするものである。

課題を解決するための手段

0006

本発明の一態様は、プロトン伝導性を有する電解質(2)と、上記電解質の一方面に設けられたアノード(3)と、上記電解質の他方面に設けられたカソード(4)とを備える電気化学セル(10)を有しており、
上記アノードに、水と人工合成樹脂と酸とを含む溶液が供給されるように構成されている、電気化学装置(1)にある。

発明の効果

0007

上記電気化学装置は、上記構成を有する。アノードに供給される溶液中の人工合成樹脂は、酸により溶解する。溶解した人工合成樹脂は、アノード分極によって酸化生成物プロトン(H+)、および、電子酸化される。電気化学セルは、プロトン伝導性を有する電解質を備えるため、生じたプロトンを引き抜くことができる。ここで、カソードに酸素含有ガスを供給するように構成し、アノードとカソードとの間に負荷を接続することにより、上記電気化学装置は、人工合成樹脂を燃料とする燃料電池として機能することが可能になる。一方、カソードに不活性ガスを供給するように構成し、アノードとカソードとの間に電圧印加部を接続することにより、上記電気化学装置は、人工合成樹脂を燃料として電気分解によってカソード側にて水素を生成する水素生成装置として機能することが可能になる。
よって、上記電気化学装置によれば、電気化学的に人工合成樹脂を燃料として有効利用することができる。

0008

なお、特許請求の範囲および課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。

図面の簡単な説明

0009

図1は、実施形態1の電気化学装置の構成を模式的に示した図である。
図2は、実施形態1の電気化学装置を燃料電池として機能させる場合について説明するための図である。
図3は、実施形態1の電気化学装置を水素生成装置として機能させる場合について説明するための図である。
図4は、実施形態2の電気化学装置の構成を模式的に示した図である。
図5は、実施形態3の電気化学装置の構成を模式的に示した図である。
図6は、実施形態4の電気化学装置の構成を模式的に示した図である。
図7は、実施形態5の電気化学装置の構成を模式的に示した図である。
図8は、実施形態5の電気化学装置における冷却部周辺の構成を模式的に示した図である。
図9は、実験例における、85%H3PO4とスポンジ由来ポリウレタンとの混合物加熱温度による形態変化を示した図である。
図10は、実験例における、二室セルを模式的に示した説明図である。
図11は、実験例における、フローセルを模式的に示した説明図である。
図12は、実験例1において、人工合成樹脂としてスポンジ由来のポリウレタンを適用した電気化学セルのセル電圧電流密度との関係を示した図である。
図13は、実験例1において、人工合成樹脂としてスポンジ由来のポリウレタンを適用した電気化学セルのカソードにArを供給したときにおける、水素の生成を示した図である。
図14は、実験例1において、人工合成樹脂としてロープ由来のビニロンを適用した電気化学セルのセル電圧と電流密度との関係を示した図である。
図15は、実験例1において、人工合成樹脂として結束バンド由来のナイロン6,6を適用した電気化学セルのセル電圧と電流密度との関係を示した図である。
図16は、実験例1において、人工合成樹脂としてストッキング由来のナイロン/ポリウレタンを適用した電気化学セルのセル電圧と電流密度との関係を示した図である。
図17は、実験例1において、人工合成樹脂としてPVAを適用した電気化学セルのセル電圧と電流密度との関係を示した図である。
図18は、実験例2において、フローセルタイプの電気化学セルを用い、人工合成樹脂の種類を変えて、燃料電池モード連続運転させた際の発電特性を示した図である。
図19は、実験例3において、アノードに供給される溶液中のリン酸硫酸との質量比セル抵抗に及ぼす影響について示した図である。
図20は、実験例4において、原点0から中央部X/2までの上流側溶液接触流路における溶液の加熱の有無による作動時間と電流密度との関係を示した図である。
図21は、実験例5において測定した、種々のカーボンについての細孔容積分布を示した図である。
図22は、実験例5において、人工合成樹脂としてロープ由来のビニロンを適用した、カーボン種の異なるアノードを有する各電気化学セルのセル電圧と電流密度との関係を示した図である。
図23は、実験例5において、アノードに適用したカーボン種の違いによる電気化学セルの性能を比較するための図である。
図24は、実験例6において、アノードに供給する溶液を撹拌する撹拌機構の有無と出力密度との関係を示した図である。
図25は、実験例7において、溶液供給速度および溶液供給圧力の変化のさせ方について説明するための図である。
図26は、実験例7において、溶液供給速度または溶液供給圧力の変化の有無と出力密度との関係を示した図である。
図27は、実験例8において、循環させる溶液を冷却、再加熱した場合と、冷却、再加熱をしなかった場合について、運転温度抵抗増加率との関係を示した図である。
図28は、実験例9において、溶液の供給経路内壁面コート層を設けた場合と、コート層を設けなかった場合について、供給経路の内壁面に付着する人工合成樹脂の量を比較するための図である。

実施例

0010

(実施形態1)
実施形態1の電気化学装置について、図1図3を用いて説明する。図1に例示されるように、本実施形態の電気化学装置1は、プロトン伝導性を有する電解質2と、電解質2の一方面に設けられたアノード3と、電解質2の他方面に設けられたカソード4とを備える電気化学セル10を有している。電気化学装置1は、アノード3に、水と人工合成樹脂と酸とを含む溶液Sが供給されるように構成されている。以下、これを詳説する。

0011

電解質2は、具体的には、プロトン伝導体を含んで構成されることができる。電解質2は、より具体的には、プロトン伝導体より構成されていてもよいし、プロトン伝導体と非プロトン伝導体とによって構成されていてもよい。非プロトン伝導体は、例えば、プロトン伝導体とともに用いて電解質2を膜状に形成する役割などを有することができる。プロトン伝導体としては、例えば、SnP2O7、Sn1−XInXP2O7、リン酸ドープポリベンズイミダゾール等のプロトン伝導性固体酸などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。非プロトン伝導体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンPTFE)等のフッ素樹脂などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。

0012

アノード3およびカソード4は、具体的には、電解質2に接合されていてもよいし、電解質2に接触されていてもよい。好ましくは、オーミック抵抗の低減等の観点から、前者であるとよい。

0013

アノード3およびカソード4は、いずれも、電極材料としてカーボンを含む構成とすることができる。カーボンとしては、具体的には、電極反応性の向上等の観点から、メソポーラス構造を有するメソポーラスカーボンなどを好適に用いることができる。メソポーラスカーボンのメソ細孔は、透過型電子顕微鏡TEM)にて確認することができる。カーボンには、貴金属担持されていてもよい。貴金属としては、例えば、Pt(白金)族、Au(金)、Ag(銀)、これらの合金などを例示することができる。Pt族は、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)である。貴金属としては、高い触媒活性を有するなどの観点から、好ましくは、Pt、Pt−Feなどを用いることができる。なお、アノード3、カソード4における電極材料の組み合わせは、特に限定されない。アノード3、カソード4における電極材料の組み合わせは、同じ電極材料による組み合わせであってもよいし、異なる電極材料による組み合わせであってもよい。

0014

電気化学装置1において、アノード3は、カルボニル基を有するカーボン粒子を含み、カーボン粒子の細孔容積分布は、細孔径2nm以上200nm以下の範囲にピーク細孔径を有する構成とすることができる。ピーク細孔径は、細孔容積分布がピークを示すときの細孔径(直径)である。アノード3に供給される人工合成樹脂は、比較的流動性が悪く、アノード3内における拡散性が低い。この構成によれば、アノード3内における人工合成樹脂の流動性および拡散性が改善されるため、電極抵抗を低減させることが可能となり、電気化学装置1の性能を向上させることができる。上記効果を確実なものとするなどの観点から、カーボン粒子の細孔容積分布は、好ましくは、ピーク細孔径が3nm以上20nm以下、より好ましくは、4nm以上18nm以下、さらに好ましくは、5nm以上15nm以下の範囲にある構成とすることができる。また、ピーク細孔径における微分細孔容積は、細孔容積分布の確保等の観点から、0.02(cm3/g)以上とすることができる。

0015

カーボン粒子へのカルボニル基の導入は、カーボン粒子の酸化還元処理などによって実施することができる。酸化還元処理としては、例えば、硝酸処理後水素還元する方法などを例示することができる。また、カーボン粒子の細孔容積分布は、自動ガス蒸気吸着量測定装置(日本ベル社製、BELSORP−28SA、またはその後継機)を用いて、吸着−脱着等温線を作成し(吸着物質:N2)し、GCMC(Grand Canonical Monte Carlo)法にて解析することによって得ることができる。

0016

ここで、電気化学装置1は、アノード3に、水と人工合成樹脂と酸とを含む溶液Sが供給されるように構成されている。

0017

人工合成樹脂としては、具体的には、酸可溶性のものを用いることができる。ここにいう酸可溶には、酸とともに加熱されることによって溶解するものも含まれる。人工合成樹脂としては、例えば、ナイロン等のポリアミド、ポリウレタン、ビニロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルポリカーボネートポリビニルアルコール(PVA)などを例示することができる。溶液Sは、例えば、水と酸とを含む酸溶液粉末状の人工合成樹脂を添加し、混合することなどによって調製することができる。溶液Sの調製時には、適宜加熱を行ってもよい。

0018

酸としては、具体的には、リン酸、酢酸、硫酸などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。リン酸は、プロトン伝導性を有するため、人工合成樹脂の溶解だけでなく、電気化学反応にも寄与することができる。酸は、プロトン伝導性、熱安定性などの観点から、好ましくは、リン酸を含んでいるとよい。この場合、酸は、リン酸から構成されていてもよいし、リン酸と、上述したその他の酸とを含んでいてもよい。

0019

酸は、より具体的には、リン酸と硫酸とを含んでいるとよい。この構成によれば、酸がリン酸より構成される場合に比べ、多種類の人工合成樹脂を溶解させやすくなる。つまり、リン酸だけでは溶け難い人工合成樹脂を用いた場合であっても、強酸である硫酸を添加することによって人工合成樹脂の溶解性を向上させることができる。その結果、アノードにおける人工合成樹脂の電気分解反応が促進され、セル抵抗を小さくすることが可能になる。この場合、酸におけるリン酸と硫酸との質量比は、90:10〜20:80の範囲とすることができる。この構成によれば、電気化学セル10のセル抵抗を小さく維持しやすくなる。硫酸の質量比が20より小さくなると、リン酸に硫酸を添加したことによるセル抵抗の低減効果が小さくなる傾向がある。一方、硫酸の質量比が90を超えると、硫酸が過剰になり、かえってセル抵抗が大きくなってリン酸に硫酸を添加したことによるセル抵抗の低減効果が小さくなる傾向がある。酸におけるリン酸と硫酸との質量比は、好ましくは、80:20〜25:75、より好ましくは、70:30〜30:70とすることができる。

0020

溶液Sは、pHが7より低いことが好ましい。この構成によれば、人工合成樹脂の溶解性が向上し、溶解した人工合成樹脂の析出を抑制しやすくなる。

0021

溶液Sは、アノード3に供給される前に180度以上に曝されていることが好ましい。この構成によれば、加熱された酸によって人工合成樹脂が分解されやすくなるため、人工合成樹脂の電気分解反応が生じやすくなる。アノード3に供給する前に溶液Sを180度以上に曝す方法としては、例えば、アノード3に供給する前段階にて溶液Sを加熱する熱源(不図示)を電気化学装置1に設け、当該熱源にて溶液Sを180度以上に加熱する方法などが挙げられる。この方法によれば、電気化学装置1を連続運転させやすい。熱源としては、例えば、通電加熱によるヒータなどを例示することができる。他にも例えば、電気化学装置1の系外にて180度以上に加熱された溶液をアノード3に供給する方法などが挙げられる。この方法によれば、電気化学装置1の作動温度を180度以下とすることが可能になる。なお、上記構成において、溶液Sは、アノード3に供給される前に1回だけ180度以上に曝されていてもよいし、複数回180度以上に曝されていてもよい。なお、アノード3に供給する前に溶液Sを曝す際の温度は、電気化学装置1の耐久性などの観点から、好ましくは、200度以下とすることができる。

0022

本実施形態において、電気化学装置1は、具体的には、図1に例示されるように、アノード3が配置され、溶液Sをアノード3に接触させる溶液接触流路32と、溶液接触流路32と連通しており、溶液接触流路32に溶液Sを供給する溶液供給流路31と、溶液接触流路32と連通しており、溶液接触流路32から溶液Sを排出する溶液排出流路33と、を有している。また、電気化学装置1は、具体的には、図1に例示されるように、カソード4が配置され、ガスをカソード4に接触させるガス接触流路42と、ガス接触流路42と連通しており、ガス接触流路42にガスを供給するガス供給流路41と、ガス接触流路42と連通しており、ガス接触流路42からガスを排出するガス排出流路43と、を有している。

0023

電気化学装置1を燃料電池として機能させる場合、電気化学装置1は、カソード4に酸素含有ガスを供給するように構成される。酸素含有ガスとしては、例えば、酸素、空気などを例示することができる。また、この場合、電気化学装置1において、アノード3とカソード4との間には、図2に例示されるように、負荷51が接続される。これにより、電気化学装置1は、人工合成樹脂を燃料として発電する燃料電池として機能することができる。

0024

一方、電気化学装置1を水素生成装置として機能させる場合、電気化学装置1は、カソード4に不活性ガスを供給するように構成される。不活性ガスとしては、例えば、例えば、Arガス、窒素ガスなどを例示することができる。このように低酸素ガスが用いられるのは、水素生成装置として機能させることを意図しているために燃料電池として機能してしまうことを抑制するためである。なお、水素生成装置として機能させることができれば、カソード4に供給されるガス中に微量の酸素が含まれていてもよい。また、この場合、電気化学装置1において、アノード3とカソード4との間には、図3に例示されるように、電圧印加部(電源)52が接続される。電圧印加部52は、アノード3およびカソード4間に電圧印加可能に構成される。これにより、電気化学装置1は、人工合成樹脂を燃料として水素を生成する水素生成装置として機能することができる。

0025

電気化学装置1の作動温度は、具体的には、160℃以上250℃以下とすることができる。この構成によれば、人工合成樹脂の電気分解を確実なものとすることができるので、人工合成樹脂の燃料としての有効利用を図りやすくなる。作動温度は、人工合成樹脂の電気分解性などの観点から、好ましくは、170℃以上、より好ましくは、180℃以上、さらに好ましくは、190℃以上とすることができる。作動温度は、構成部材耐腐食性などの観点から、好ましくは、240℃以下、より好ましくは、230℃以下、さらに好ましくは、220℃以下とすることができる。

0026

電気化学装置1は、上記構成を有する。アノード3に供給される溶液S中の人工合成樹脂は、酸により溶解する。溶解した人工合成樹脂は、アノード分極によって酸化生成物、プロトン(H+)、および、電子に酸化される。電気化学セル10は、プロトン伝導性を有する電解質2を備えるため、生じたプロトンを引き抜くことができる。ここで、カソード4に酸素含有ガスを供給するように構成し、アノード3とカソード4との間に負荷51を接続することにより、電気化学装置1は、人工合成樹脂を燃料とする燃料電池として機能することが可能になる。一方、カソード4に不活性ガスを供給するように構成し、アノード3とカソード4との間に電圧印加部52を接続することにより、電気化学装置1は、人工合成樹脂を燃料として電気分解によってカソード4側にて水素を生成する水素生成装置として機能することが可能になる。なお、電気化学装置1は、燃料電池として機能させる燃料電池モードと、水素生成装置として機能させる水素生成モードとを交互に実施可能とされていてもよい。
よって、電気化学装置1によれば、電気化学的に人工合成樹脂を燃料として有効利用することができる。

0027

(実施形態2)
実施形態2の電気化学装置について、図4を用いて説明する。なお、実施形態2以降において用いられる符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。

0028

図4に例示されるように、本実施形態の電気化学装置1は、アノード3が配置され、溶液Sをアノード3に接触させる溶液接触流路32を有している。アノード3における溶液Sの供給側の端部を原点0とし、アノード3における溶液Sの排出側の端部をXとした場合に、電気化学装置1は、X/2となる中央部よりも溶液Sの供給側の溶液接触流路(以下、この部分を単に、上流側溶液接触流路321ということがある。)における溶液Sの温度を調節する調温部6を有している。

0029

人工合成樹脂は、溶け難くて流動性が悪く、アノード3に付着しやすい性質を有する。また、アノード3における人工合成樹脂の電気分解反応は吸熱反応である。そのため、電気化学装置1の作動温度が低い場合に、上記吸熱反応により上流側溶液接触流路321において溶液Sの温度が局所的に人工合成樹脂の溶解温度以下に低下するおそれがある。上流側溶液接触流路321の溶液Sの温度が低下すると、アノード3に人工合成樹脂が固着し、電気化学装置1の作動の妨げになるおそれがある。

0030

これに対し、電気化学装置1が調温部6を有する場合には、当該調温部6により、上記吸熱反応による溶液Sの温度低下を見込み、上流側溶液接触流路321における溶液Sの温度を、人工合成樹脂の溶解温度以上の温度に維持することが可能になる。そのため、本実施形態によれば、人工合成樹脂の溶解温度を下回らないように溶液Sの温度を制御することが可能になるため、人工合成樹脂を連続的に直接電気分解しやすい電気化学装置1が得られる。

0031

調温部6は、例えば、図4に例示されるように、上流側溶液接触流路321の外周側面等にヒータ等の熱源を設けることによって構成することができる。この構成によれば、調温部6が直接、溶液Sに接触しないため、調温部6への人工合成樹脂の付着を防止することができる。また、調温部6が溶液Sの流れを妨げることもない。

0032

調温部6は、上流側溶液接触流路321における溶液Sの温度を160度以上に調節するように構成することができる。この構成によれば、人工合成樹脂の固着によるアノード3の劣化抑制を確実なものとすることができ、安定して人工合成樹脂を電気分解することができる。その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。

0033

(実施形態3)
実施形態3の電気化学装置について、図5を用いて説明する。図5に例示されるように、本実施形態の電気化学装置1は、アノード3に溶液Sを供給する前に溶液Sを撹拌する撹拌機構7を有している。

0034

人工合成樹脂の種類によっては、一部溶液S中に溶けずに固形分の状態にて存在するものが生じるうる。このような固形分の人工合成樹脂は、分散性が悪く一部凝集し、アノード3の表面に付着してアノード3を劣化させるおそれがある。

0035

これに対し、電気化学装置1が撹拌機構7を有する場合には、溶液Sに含まれうる未溶解の人工合成樹脂の分散性を改善することができる。そのため、この構成によれば、アノード3表面への固形の人工合成樹脂の凝集、付着によるアノード3の劣化を抑制することができ、固形の人工合成樹脂も燃料としてアノード3の反応場へ供給されやすくなる。それ故、この構成によれば、供給した人工合成樹脂の利用率が高まり、電気化学装置1の性能向上に有利になる。

0036

撹拌機構7としては、具体的には、例えば、超音波、羽撹拌、ミキサー等を利用することができる。撹拌機構7が超音波を利用するものである場合には、撹拌機構7の構成部材が直接溶液Sに接触しないため、メンテナンス性に優れた電気化学装置1が得られる。撹拌機構7は、例えば、溶液供給流路31に設けられることができる。その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。

0037

(実施形態4)
実施形態4の電気化学装置について、図6を用いて説明する。図6に例示されるように、本実施形態の電気化学装置1は、溶液Sの供給圧を変化させてアノード3に溶液Sを供給する供給圧調整機構81を有する構成とすることができる。あるいは、電気化学装置1は、溶液Sの供給速度を変化させてアノード3に溶液Sを供給する供給速度調整機構82を有する構成とすることができる。

0038

酸にて溶解した人工合成樹脂がアノード3にて反応すると、生成した気体(CO2等)がアノード3表面に吸着し、アノード3への人工合成樹脂の供給が阻害され、時間の経過とともに電気化学装置1の性能が低下するおそれがある。

0039

これに対し、電気化学装置1が供給圧調整機構81を有する場合には、溶液Sの供給圧を変化させることによってアノード3表面に吸着した気体の脱離を促すことが可能になる。一方、電気化学装置1が供給速度調整機構82を有する場合には、溶液Sの供給速度を変化させることによってアノード3表面に吸着した気体の脱離を促すことが可能になる。そのため、上記構成によれば、アノード3への人工合成樹脂の供給を律速させず、電気化学装置1の性能低下を抑制することが可能になる。なお、電気化学装置1は、供給圧調整機構81、および、供給速度調整機構82の両方を有していてもよい。

0040

供給圧調整機構81による溶液Sの供給圧、供給速度調整機構82による溶液Sの供給速度は、例えば、パルス状等に変化するよう制御されることができる。この構成によれば、アノード3表面に吸着した気体の脱離を確実なものとしやすく、電気化学装置1の性能低下の抑制に有利である。なお、図6には、溶液供給流路31に供給圧調整機構81または供給速度調整機構82が設けられている例が示されている。その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。

0041

(実施形態5)
実施形態5の電気化学装置について、図7および図8を用いて説明する。図7に例示されるように、本実施形態の電気化学装置1は、アノード3で使用されなかった溶液Sを再びアノード3へ循環させる溶液循環流路34を有している。本実施形態では、溶液循環流路34は、具体的には、溶液供給流路31と溶液排出流路33との間を接続している。つまり、溶液循環流路34の一端が溶液排出流路33に連通し、溶液循環流路34の他端が溶液供給流路31に連通している。これにより、溶液Sは、溶液供給流路31を通って溶液接触流路32に供給される。そして、アノード3で使用されなかった溶液Sやアノード反応による生成物等は、溶液排出流路33を通って回収され、溶液循環流路34を通って再び溶液供給流路31に供給される。なお、図7には、溶液供給流路31に外部から新しい溶液Sを追加投入したり、アノード反応により消費された水を添加したりするための供給管35が接続されている例が示されている。また、溶液Sの循環は、例えば、溶液循環流路34にポンプ343等を設けることにより実施することができる。

0042

ここで、電気化学装置1は、溶液循環流路34に、冷却部341と、冷却部341の下流側に設けられた再加熱部342とを有する構成とすることができる。冷却部341は、冷却により溶液S中の人工合成樹脂を析出させ、析出した人工合成樹脂を溶液循環流路34の内壁面に固着させる。再加熱部342は、冷却部341によって冷却された溶液Sを再加熱する。

0043

アノード3にて人工合成樹脂が使用されると水が消費されるため、溶液Sは、溶液S中の人工合成樹脂の濃度が高くなった状態にて溶液循環流路34に達することになる。冷却部341および再加熱部342を設けることなく溶液循環流路34にて溶液Sを循環させた場合において、例えば、電気化学装置1の出力を下げた際には、アノード3での人工合成樹脂の反応量が減少する。そのため、未使用の人工合成樹脂がアノード3の表面に固着するおそれが高くなる。なお、電気化学装置1の出力を下げる例としては、例えば、燃料電池モードでは、発電出力を下げる場合などが挙げられ、水素生成モードでは、水素生成量を少なくする場合などが挙げられる。

0044

これに対し、電気化学装置1が上記構成を有する場合には、図8に例示されるように、先ず、アノード3にて使用されなかった人工合成樹脂を含む溶液Sが冷却部341にて冷却される。冷却部341による冷却温度は、人工合成樹脂の種類に応じ、溶解した人工合成樹脂が析出する温度に適宜設定することができる。冷却により析出した人工合成樹脂Pは、冷却部341が設けられている溶液循環流路34部分の内壁面に固着する。これにより、循環させる溶液Sにおける人工合成樹脂の濃度を低下させることができる。次いで、冷却部341により溶液温度が低下した溶液Sを、再加熱部342にて再加熱する。再加熱温度は、例えば、電化化学装置1の作動温度とすることができる。より具体的には、再加熱温度は、例えば、160度以上とすることができる。

0045

上記構成によれば、溶液Sを循環させて人工合成樹脂の濃度を制御することが可能になり、人工合成樹脂の濃度が高濃度であるときのアノード3表面への人工合成樹脂の固着を抑制することが可能になる。なお、冷却部341が設けられている溶液循環流路34部分の内壁面に固着した人工合成樹脂を定期的に除去するため、冷却部341が設けられている溶液循環流路34部分は、交換可能に構成することができる。その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。

0046

(実施形態6)
実施形態6の電気化学装置について説明する。本実施形態の電気化学装置1は、溶液Sの供給経路の内壁面に、人工合成樹脂の付着を防止するコート層(不図示)を有している。この構成によれば、溶液S中に存在しうる未溶解の人工合成樹脂が溶液Sの供給経路の内壁面に付着するのを防止することができる。そのため、この構成によれば、溶液Sの供給経路内詰まりや、人工合成樹脂の濃度低下等を抑制することが可能になり、電気化学装置1の性能向上に有利になる。

0047

コート層としては、例えば、セラミック層などを好適に用いることができる。コート層がセラミック層である場合、セラミック層は、人工合成樹脂の付着抑制効果を確実なものにするなどの観点から、Al(アルミニウム)、Si(シリコン)等の元素を含むセラミックより構成することができる。なお、コート層が形成される溶液Sの供給経路は、具体的には、上述した溶液供給流路31、溶液接触流路32、溶液排出流路33、および、溶液循環流路34からなる群より選択される少なくとも1つとすることができる。

0048

(実験例)
以下、実験例について説明する。
−人工合成樹脂の準備−
人工合成樹脂の原材料として、市販のロープ(ビニロン製)、スポンジ(ポリウレタン)、結束バンド(ナイロン6,6)、ストッキング(ナイロン/ポリウレタン)を準備した。また、人工合成樹脂の原材料として、リサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル、ポリビニルアルコール(PVA:和光化学社製)を準備した。各原材料は、キッチンミキサー(象印社製、BM−RS08)を用い、断片サイズが長さ数mmに達するまで、3分間隔にて粉砕した。これにより、各人工合成樹脂を準備した。

0049

なお、85重量%H3PO4水溶液(和光化学工業社製、以下、85%H3PO4という。)を用い、各人工合成樹脂の溶解性を調べた。代表例として、スポンジ由来のポリウレタンを用いた際の結果を、図9に示す。図9(a)は室温での結果であり、図9(b)は100℃、図9(c)は150℃、図9(d)は200℃に加熱したときの結果である。この結果によれば、加熱によりポリウレタンが徐々に液化し、200℃では完全に液化していることがわかる。ロープ由来のビニロン、結束バンド由来のナイロン6,6、ストッキング由来のナイロン/ポリウレタン、リサイクルPETボトル由来のポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコールについても、上記と同様の酸可溶性が見られた。これらの結果から、アノードに供給される前に溶液を180度以上に曝すことにより、人工合成樹脂の電気分解反応を促進させることが可能になるといえる。

0050

電解質膜の準備−
電解質膜を以下の方法にて作製した。具体的には、Sn0.9In0.1P2O7粉末1.0gと、PTFE粉末0.04gとを混合し、得らえた混合物を、圧延機を用いて200μmの厚さの膜形状冷間圧延した。次いで、得らえた膜から後述するセルサイズに合わせて所定の直径を有するディスク状に切り取った。これにより、電解質膜を準備した。

0051

−アノードおよびカソードの準備−
アノードおよびカソードを以下の方法で作製した。カーボンとして、Ketjen Black EC−600JDK(以下、Ketjen)、活性炭(MAXSORB、BEAPS)、および、メソポーラスカーボン(MH、MJ010、MJ030、MJ150)を準備した。これらカーボンは、それぞれ、アクゾノーベル社、関西熱化学社、旭有機材社、東洋炭素社から購入した。カーボン粉末1.00gを150mLの脱イオン水に懸濁し、30分間超音波処理した。H2PtCl6・6H2OとNaBH4との溶液(モル比で1:5)を、撹拌しながら懸濁液に同時に滴下した。次いで、混合物をろ過し、ろ液のpHが7になるまで脱イオン水にて洗浄した。次いで、90℃にて一晩真空乾燥した後、触媒を、10体積%の水素−Ar混合物で200℃にて1時間処理した。得られた電極粉末0.01gと85%H3PO4とをミキサーにて混合、分散させた。次いで、得られたスラリーカーボンクロスの表面に塗布した。この際、電極の重量および厚さを制御することにより、Pt担持カーボン(以下、Pt/Cということがある。)におけるPt担持量を約1.7mg/cm2に調整した。これにより、アノードとして、Pt/C(Ketjen)、Pt/C(MAXSORB)、Pt/C(BEAPS)、Pt/C(MH)、Pt/C(MJ010)、Pt/C(MJ030)、Pt/C(MJ150)を準備した。また、別途、アノードとして、Pt/C(エレクトロケム社、カーボン担体:Vulcan XC72、カーボンペーパー:東レ社、TGP−H−090、Pt担持量:2mg/cm2)を準備した。これをPt/C(Vulcan)とする。なお、各アノードは、使用前に120℃にて85%H3PO4を含侵させた。一方、カソードとして、上述したPt/C(Vulcan)を準備した。なお、本実験例では、Pt/C(Vulcan)をカソードに用いることにしたが、カソードには、上記のアノードに用いられる各Pt/Cを適用することが可能である。

0052

<電気化学セルの作製および電気化学的測定
二室セル、フローセルの2つのタイプの電気化学セルを作製した。電解質膜およびアノードの直径は、セルサイズ(電解質膜:2室セルの場合は13mm、フローセルの場合は31mm、アノード:2室セルの場合は12mm、フローセルの場合は15mm)に従って調整した。2つのタイプのセル全てに、直径8mm、面積0.5cm2のカソードを使用した。電解質膜の一方面にアノード、他方面にカソードが接合された膜電極接合体を構成し、電気化学セルとした。二室セルについては、その周りPTFEテープにて覆い、フローセルについては、エラストマー製のOリングを用いて気密封止した。図10に、二室セルの模式的な説明図を示す。図11に、フローセルの模式的な説明図を示す。

0053

二室セルについては、所定の人工合成樹脂(85mg)と85%H3PO4(約225mg)とのゲル化混合物アノード表面に予め堆積させた。なお、二室セルは、アノードに対して水と人工合成樹脂と酸とを含む溶液を連続的に供給するように構成されていないため、アノードに上記のゲル化混合物を付与したものである。フローセルについては、所定の人工合成樹脂と85%H3PO4との溶液(人工合成樹脂の濃度:1.42重量%)を、シリンジポンプを用いて0.13mL/分の注入速度でアノードに供給した。なお、二室セルでは、アノードにAr、カソードに空気またはArを、それぞれ、50mL/分の流速で供給した。フローセルにおいては、空気またはArを二室セルの場合と同様の方法でカソードに供給した。各出口ガス分析には、オンライン質量分析計(Pfeiffer Vacuum ThermoStar)を使用した。また、全ての測定は、電位ガルバノスタット(Solartron1287)および周波数応答分析装置(Solartron1260)を使用して実施した。二室セルでは、2.5、5.0、および、10.0mV/s、フローセルでは、2.5mV/sの走査速度にてI−V曲線を記録した。電圧−時間曲線は、フローセルについては10mA/cm3の電流密度にて得た。電流−時間曲線は、フローセルでは、0.55Vのセル電圧にて測定した。インピーダンススペクトルは、0.1−106Hzの周波数範囲燃料電池用開回路セル電圧、水素生成装置用の0.4Vのバイアス電圧にて取得した。

0054

(実験例1)
スポンジ由来のポリウレタンと85%H3PO4とを室温にて混合することにより、ゲルペーストを調製した。このペーストをPt/C(Vulcan)の表面に堆積させ、Sn0.9In0.1P2O7とPTFEとから構成される電解質膜の一方面に付着させ、アノードを形成した。一方、電解質膜の他方面に上記と同じPt/C(Vulcan)を積層し、カソードとした。得られた膜電極接合体を二室セルにセットし、アノードにAr、カソードに空気またはArを供給した。アノードからの出口ガスでは、室温から200℃まで温度が上昇すると、Arに加えて水蒸気とごくわずかな二酸化炭素が検出された。

0055

本実験例における電気化学セルのセル電圧と電流密度との関係を図12に示す。カソードに空気が供給されたとき、電気化学セルは、開回路条件下にてカソードに対してほぼ負のアノード電位を生じ、これを以下セル電圧と定義したとき、燃料電池のような電流−電圧(IV)特性を示した。これは、163℃に加熱された電気化学セルをモータと接続することによってモータ軸に取り付けたプロペラが回転したことからも裏付けられた。

0056

一方、図12に示されるように、開回路セル電圧は、空気の代わりにArをカソードに供給することによってかなり低下した。特に、200℃でのI−V勾配は、上述した燃料電池モードについて観察されたものと非常に類似していた。これは、同じアノード反応が2つのプロセスにおいて生じたことを示唆している。図13に示されるように、2.5から5.0および10.0mV/secの200℃でのI−V測定の間に、カソードから水素の生成が確認された。この結果から、電気化学セルは、ポリウレタンの電気分解により水素を生成させることできることが実証された。図14図17に示されるように、人工合成樹脂として、ロープ由来のビニロン、結束バンド由来のナイロン6,6、ストッキング由来のナイロン/ポリウレタン、PVAを適用した場合についても、上記と同様の結果が得られた。これらの結果から、本実験例の電気化学セルは、燃料電池または水素生成装置の燃料として人工合成樹脂を有効利用することができることが確認された。

0057

(実験例2)
フローセルタイプの電気化学セルを用い、燃料電池モードで連続運転させた際の発電特性を調査した。具体的には、電気化学セルの構成は、以下の通りとした。
アノード:Pt/C(MJ010)
電解質膜:Sn0.9In0.1P2O7とPTFEとの混合物、膜厚200μm
カソード:Pt/C(Vulcan)
使用した人工合成樹脂は、スポンジ由来のポリウレタン、ロープ由来のビニロン、結束バンド由来のナイロン6,6、ストッキング由来のナイロン/ポリウレタン、PETである。なお、用いた酸溶液は、上述したように85%H3PO4である。

0058

図18にその結果を示す。なお、図18は、印加電圧速度が2.5mV/secのときの発電特性を示したものである。図18に示されるように、本実験例の電気化学セルは、ピーク電力密度が異なるものの、いずれの人工合成樹脂を用いた場合でも発電可能であることが確認された。また、実験例1の結果を考慮すれば、カソードにAr等の不活性ガスを供給し、アノードおよびカソード間に電圧を印加することにより、いずれの人工合成樹脂を用いた場合でもカソード側にて水素を生成可能であることが理解される。

0059

(実験例3)
実験例2と同様の電気化学セルを用い、水とポリビニルアルコールとリン酸と硫酸とを含む溶液をアノードに供給し、リン酸と硫酸との質量比がセル抵抗に及ぼす影響について調査した。具体的には、ポリビニルアルコールと85%H3PO4とから構成される酸溶液に濃硫酸を添加し、この溶液をアノードに供給した。その結果を、図19に示す。

0060

図19に示されるように、アノードに供給される溶液に硫酸を添加することにより、セル抵抗を小さくすることができる。これは、リン酸だけでは溶け難い人工合成樹脂であっても強酸である硫酸を添加することによって人工合成樹脂の溶解性が向上し、アノードにおける人工合成樹脂の電気分解反応が促進されたためであると考えられる。この結果によれば、電気化学セルを燃料電池モードで使用したときには、セル抵抗が小さくなることによって発電性能が向上し、電気化学セルを水素生成モードで使用したときには、セル抵抗が小さくなることによって、水素生成量を増加させることが可能になるといえる。但し、図19に示されるように、溶液に含まれる酸において硫酸比率過度に増加すると、かえってセル抵抗が上昇し、硫酸添加の効果が小さくなる。この結果から、溶液に含まれるリン酸と硫酸との質量比が90:10から20:80の範囲にある場合には、セル抵抗を小さくしやすいことがわかる。

0061

(実験例4)
実験例2と同様の電気化学セルを用い、セル全体を200℃にて加熱運転した。使用した人工合成樹脂は、結束バンド由来のナイロン6,6である。この際、アノードにおける溶液の供給側の端部を原点0とし、アノードにおける溶液の排出側の端部をXとした場合に、X/2となる中央部よりも溶液の供給側の溶液接触流路における溶液の温度が160℃を下回らないようにヒータにより加熱した。なお、ヒータは、溶液接触流路の流路側面に設置した。また、上記ヒータによる加熱をすることなく、電気化学セルを作動させた。その結果を、図20に示す。

0062

図20に示されるように、原点0から中央部X/2までの上流側溶液接触流路における溶液を加熱しなかった場合には、作動時間が増加するにつれて、発電による電流密度が低下した。これに対し、原点0から中央部X/2までの上流側溶液接触における溶液を加熱した場合には、作動時間が増加しても、電流密度の低下は見られず、安定した発電を行うことができた。これは、人工合成樹脂の吸熱反応よる溶液の温度低下の影響が大きい上流側溶液接触流路の温度を160℃以上に局所的に制御することにより、人工合成樹脂を連続的に直接電気分解することができたためである。

0063

(実験例5)
溶解した人工合成樹脂は、依然として高分子の形をしているため、比較的流動性が悪く、アノード内における拡散性が低い。アノードにカーボン粒子を用いる場合、カーボン粒子の空間構造が人工合成樹脂の反応に重要になると考えられる。そこで、上記にて準備した各種カーボンについて、細孔容積分布を測定した。細孔容積分布の測定方法については、上述した通りである。図21に、実験例にて準備した各種カーボンの微分細孔容積分布を示す。

0064

図21に示されるように、Vulcan、MJ150のカーボンは、顕著な細孔容積分布は見られなかった。これらに対し、Vulcan、MJ150以外のカーボンは、Vulcan、MJ150のカーボンとは異なる特徴的な(顕著な)細孔容積分布を有していることが確認された。具体的には、Ketjen、MH、MJ010、MJ030のカーボンは、細孔径2nm以上200nm以下の範囲にピーク細孔径を有する細孔容積分布を有しており、MAXSORB、BEAPSのカーボンに比べ、ピーク細孔径が大きかった。なお、Ketjen、MH、MJ010、MJ030のカーボンは、ピーク細孔径における微分細孔容積が0.02(cm3/g)以上であった。

0065

次に、アノードのカーボン種が異なる、実験例1と同様の電気化学セルを準備した。アノードのカーボン種は、上述した図21に示される、Ketjen、MH、MJ010、MJ030、MJ150、MAXSORB、BEAPS、または、Vulcanとした。運転温度:200℃、アノードに適用する人工合成樹脂:ロープ由来のビニロンの条件にて、電気化学セルを作動させ、セル電圧と電流密度との関係を測定した。その結果を、図22に示す。図22に示されるように、より大きいピーク細孔径を有するカーボンを用いるほど、電流密度が大きくなった。

0066

これらの結果から、細孔径2nm以上200nm以下の範囲にピーク細孔径を有するカーボン粒子をアノードに適用することにより、電気化学セルの性能を向上させることが可能になるといえる。これは、アノード内における人工合成樹脂の流動性および拡散性が改善されるため、電極抵抗を低減させることが可能になるためであると考えられる。ピーク細孔径が3nm以上20nm以下の範囲にあれば、上記効果を確実なものとすることができる。

0067

次に、MJ030、Vulcanのカーボンに酸化還元処理を施し、CO基を付与した。酸化処理は、具体的には、24%硝酸20mLと水30mLとを混ぜ合わせた水溶液に所定のカーボン1.0gを入れ、ホットプレート上で室温、300rpmで72時間撹拌することにより行った。また、還元処理は、上記酸化処理後のカーボンを水素雰囲気下、600℃で熱処理することにより行った。

0068

次いで、CO基が付与されていないVulcan、MJ030と、CO基が付与されたVulcan、MJ030とを用いて、実験例2と同様の電気化学セルを準備した。つまり、準備した電気化学セルにおけるアノードのカーボン種は、CO基が付与されていないVulcan、CO基が付与されていないMJ030、CO基が付与されたVulcan(以下、Vulcan+CO)、または、CO基が付与されたMJ030(以下、MJ030+CO)とした。なお、各カーボンには実験例2と同様にPtが担持されている。そして、運転温度:200℃、アノードに適用する人工合成樹脂:ロープ由来のビニロンの条件にて、電気化学セルを作動させ、電力密度および開回路電圧を測定した。その結果を、図23に示す。

0069

図23に示されるように、ピーク細孔径が大きいカーボンを用いることにより、電力密度および開回路電圧が大きくなることがわかる。また、カーボン表面にCO基を付与することにより、電力密度および開回路電圧が大きくなることがわかる。これらの結果から、アノードが、カルボニル基を有するカーボン粒子を含み、カーボン粒子の細孔容積分布が、細孔径2nm以上200nm以下の範囲にピーク細孔径を有する構成とすることにより、電極抵抗を低減させることが可能となり、電気化学セルの性能を向上させることができるといえる。

0070

(実験例6)
実験例2と同様のフローセルタイプの電気化学セルを準備し、アノードに溶液を供給する前に溶液を撹拌し、撹拌された溶液をアノードに供給するように構成した。撹拌機構は、超音波撹拌、ミキサー撹拌のいずれかとした。超音波撹拌時の超音波は20kHzとした。ミキサー撹拌時の回転数は300rpmとした。また、比較のため、撹拌機構を設けず、撹拌されていない溶液をアノードに供給した。これらの場合について、電気化学セルの出力密度を測定した。なお、使用した人工合成樹脂は、結束バンド由来のナイロン6,6である。その結果を、図24に示す。

0071

図24に示されるように、アノードに溶液を供給する前に溶液の撹拌機構を有する場合には、撹拌機構を有さない場合に比べ、電気化学セルの出力密度が向上した。これは、撹拌機構による溶液の撹拌により、溶液に含まれうる未溶解の人工合成樹脂の分散性が改善され、アノード表面への固形の人工合成樹脂の凝集、付着によるアノードの劣化を抑制することができ、固形の人工合成樹脂も燃料としてアノードの反応場へ供給されやすくなったためであると考えられる。

0072

(実験例7)
実験例2と同様のフローセルタイプの電気化学セルを用い、シリンジポンプによる溶液供給速度を、図25(a)に示すようにパルス状に変化させ、出力密度を測定した。また、シリンジポンプによる溶液供給圧力を、図25(b)に示すようにパルス状に変化させ、出力密度を測定した。また、比較のため、シリンジポンプによる溶液供給速度および溶液供給圧力を変化させず、いずれも一定とし、出力密度を測定した。なお、使用した人工合成樹脂は、ポリビニルアルコールである。その結果を、図26に示す。

0073

図26に示されるように、溶液供給速度または溶液供給圧力を変化させた場合には、溶液供給速度および溶液供給圧力をともに変化させなかった場合に比べ、電気化学セルの出力密度が向上した。これは、溶液供給速度または溶液供給圧力を変化させることによってアノード表面に吸着した気体の脱離を促すことが可能になり、アノードへの人工合成樹脂の供給を律速させず、電気化学セルの出力低下を抑制することができたためである。

0074

(実験例8)
実験例2と同様のフローセルタイプの電気化学セルを準備し、溶液供給流路と溶液排出流路との間を溶液循環流路にて接続した。そして、溶液循環流路に、冷却部と、冷却部の下流側に再加熱部を設けた。冷却部は、溶液循環流路の側壁面に取り付けられた水冷装置より構成されている。再加熱部は、溶液循環流路の側壁面に取り付けられたヒータより構成されている。冷却部による溶液の冷却温度は、5℃とした。再加熱部による溶液の再加熱温度は、電気化学セルの運転温度とした。電気化学セルの運転温度を種々変化させ、循環させる溶液を冷却、再加熱した場合と、冷却、再加熱しなかった場合とにおける抵抗増加率を測定した。なお、使用した人工合成樹脂は、ポリビニルアルコールである。その結果を、図27に示す。

0075

図27に示されるように、循環させる溶液を冷却、再加熱した場合には、冷却、再加熱をしなかった場合に比べ、抵抗増加率が低くなった。また、冷却部を設けた溶液循環流路の内壁面を観察したところ、析出した人工合成樹脂の固着が確認された。この結果によれば、循環させる溶液を冷却、再加熱可能な構成を採用することにより、溶液を循環させて人工合成樹脂の濃度を制御することが可能になり、人工合成樹脂の濃度が高濃度であるときのアノード表面への人工合成樹脂の固着を抑制することが可能になるといえる。

0076

(実験例9)
実験例2と同様のフローセルタイプの電気化学セルを準備し、溶液供給流路と溶液排出流路との間を溶液循環流路にて接続した。溶液排出流路の内壁面には、セラミック層からなるコート層が形成されている。セラミック層は、AlおよびSiを含んでいる。セラミック層には、具体的には、シャイン工業社のセラアーマーを使用した。また、比較のため、上記セラミック層を形成しないものも準備した。これら電気化学セルを200℃の運転温度にて24時間運転した。そして、溶液排出流路の重量変化量を求め、人工合成樹脂の内壁面への固着量を測定した。なお、使用した人工合成樹脂は、ポリビニルアルコールである。その結果を、図28に示す。

0077

図28に示されるように、溶液の供給経路の内壁面にコート層を設けることにより、溶液中に存在する未溶解の人工合成樹脂が溶液の供給経路の内壁面に付着するのを防止することが可能になることが確認された。この結果によれば、溶液の供給経路内の詰まりや、人工合成樹脂の濃度低下等を抑制することが可能になり、電気化学セルの性能向上に有利になるといえる。

0078

本発明は、上記各実施形態、各実験例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、各実施形態、各実験例に示される各構成は、それぞれ任意に組み合わせることができる。

0079

1電気化学装置
10電気化学セル
2電解質
3アノード
4カソード
51負荷
52電圧印加部
S 溶液

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