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課題
解決手段
概要
背景
概要
本願は、弁の特性が製品毎にばらついていても、各弁に一律に用意された特性データを使ってフィードフォワード制御が可能な流量制御弁、流量制御弁の制御装置、流量制御弁の制御方法および流量制御弁の制御プログラムを開示する。本発明は、流量制御弁であって、流体の流路に設置される弁と、弁に流入する流体の流量を測定する流量計と、流量計の測定値を用いて弁を制御する制御部と、を備え、制御部は、弁前後の差圧と弁開度と流量との相関関係を規定した特性データに基づいて、流量計の測定値と弁の実開度から弁前後の差圧を推定する差圧推定処理と、差圧推定処理で推定した差圧において特性データから流体の流量が設定流量になると推定される弁開度へ弁の実開度を変更する弁開度変更処理と、を少なくとも一回ずつ実行する。
目的
効果
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請求項1
流体の流路に設置される弁と、前記弁に流入する流体の流量を測定する流量計と、前記流量計の測定値を用いて前記弁を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記弁前後の差圧と弁開度と流量との相関関係を規定した特性データに基づいて、前記流量計の測定値と前記弁の実開度から前記弁前後の差圧を推定する差圧推定処理と、前記差圧推定処理で推定した差圧において前記特性データから前記流体の流量が前記設定流量になると推定される弁開度へ前記弁の実開度を変更する弁開度変更処理と、を少なくとも一回ずつ実行する、流量制御弁。
請求項2
前記制御部は、前記弁開度変更処理において、前記差圧推定処理で推定した差圧が前記弁の開度変更前後で一定と仮定することによって前記特性データから特定される、前記流体の流量が前記設定流量になると推定される弁開度へ前記弁の実開度を変更する、請求項1に記載の流量制御弁。
請求項3
前記制御部は、前記差圧推定処理と前記弁開度変更処理を、前記流量計の測定値が前記設定流量から所定の許容範囲内になるまで繰り返し実行する、請求項1又は2に記載の流量制御弁。
請求項4
請求項5
請求項6
流体の流路に設置される弁を制御する制御装置であって、流体の流路に設置される弁前後の差圧と弁開度と流量との相関関係を規定した特性データを記憶する記憶部と、前記弁に流入する流体の流量を測定する流量計の測定値と前記弁の特性データを用いて前記弁を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記特性データに基づいて、前記流量計の測定値と前記弁の実開度から前記弁前後の差圧を推定する差圧推定処理と、前記差圧推定処理で推定した差圧において前記特性データから前記流体の流量が前記設定流量になると推定される弁開度へ前記弁の実開度を変更する弁開度変更処理と、を少なくとも一回ずつ実行する、流量制御弁の制御装置。
請求項7
流体の流路に設置される弁を制御する制御方法であって、前記弁に流入する流体の流量を測定する流量計の測定値を用いて前記弁を制御する制御工程を有し、前記制御工程では、前記弁前後の差圧と弁開度と流量との相関関係を規定した特性データに基づいて、前記流量計の測定値と前記弁の実開度から前記弁前後の差圧を推定する差圧推定処理と、前記差圧推定処理で推定した差圧において前記特性データから前記流体の流量が前記設定流量になると推定される弁開度へ前記弁の実開度を変更する弁開度変更処理と、を少なくとも一回ずつ実行する、流量制御弁の制御方法。
請求項8
流体の流路に設置される弁を制御する制御プログラムであって、制御装置に、前記弁に流入する流体の流量を測定する流量計の測定値を用いて前記弁を制御する制御工程を実行させ、前記制御工程では、前記弁前後の差圧と弁開度と流量との相関関係を規定した特性データに基づいて、前記流量計の測定値と前記弁の実開度から前記弁前後の差圧を推定する差圧推定処理と、前記差圧推定処理で推定した差圧において前記特性データから前記流体の流量が前記設定流量になると推定される弁開度へ前記弁の実開度を変更する弁開度変更処理と、を少なくとも一回ずつ実行させる、流量制御弁の制御プログラム。
技術分野
0001
本発明は、流量制御弁の制御技術に関する。
背景技術
先行技術
0003
特許第6342665号公報
特開2018−004167号公報
特開2018−004168号公報
特開2018−048975号公報
発明が解決しようとする課題
0004
流量制御弁は、弁を通過する流体の流量に応じて開度を調整する。そして、流量の測定値が設定値となるように弁の開度を調整する方式として、弁の開度を適当に増減させて流量の測定値が設定値と一致する開度を探索するフィードバック方式や、予め用意された弁の特性データに基づいて開度を決定するフィードフォワード方式が挙げられる。フィードバック方式は、弁の特性データが不要で様々な弁に適用容易であるが、急峻な制御目標値の変動があると弁の開度が不安定になりやすい。よって、制御目標値が急に変更されるようなシステム構成に適用される場合は、開度の特性データに基づいて開度を決定するフィードフォワード方式が好ましい。ところが、フィードフォワード方式の場合には、弁の特性データが必要となるため、量産品の弁に一律の特性データを適用するには、弁を構成する部品の高精度化が求められる。しかし、例えば、市販の樹脂成型品を加工してバタフライ弁の弁体を製作したいような場合には、当該樹脂成型品の寸法精度や加工方法の影響により、金属板を工作機械で加工して弁体を製作するような場合に比べて寸法精度が低下する。
0005
そこで、本願は、弁の特性が製品毎にばらついていても、各弁に一律に用意された特性データを使ってフィードフォワード制御が可能な流量制御弁、流量制御弁の制御装置、流量制御弁の制御方法および流量制御弁の制御プログラムを開示する。
課題を解決するための手段
0006
上記課題を解決するため、本発明では、弁の特性データから弁前後の差圧を推定する処理と、差圧が一定との仮定において当該特性データから特定される流量変更後の弁開度へ弁の実開度を変更する処理と、を少なくとも一回ずつ実行することにした。
0007
詳細には、本発明は、流量制御弁であって、流体の流路に設置される弁と、弁に流入する流体の流量を測定する流量計と、流量計の測定値を用いて弁を制御する制御部と、を備え、制御部は、弁前後の差圧と弁開度と流量との相関関係を規定した特性データに基づいて、流量計の測定値と弁の実開度から弁前後の差圧を推定する差圧推定処理と、差圧推定処理で推定した差圧において特性データから流体の流量が設定流量になると推定される弁開度へ弁の実開度を変更する弁開度変更処理と、を少なくとも一回ずつ実行する。
0008
この流量制御弁は、流量の測定値を制御に用いているものの、基本的に推定の弁前後の差圧に基づく弁開度の制御を基調としており、流量の測定値は弁前後の差圧の推定値の修正に用いている。よって、この流量制御弁は、急峻な設定流量の変更が行われても、弁開度の速やかな変更が可能であり、且つ、流量の測定値を用いているので器差があっても実流量を設定流量に合わせることが可能である。したがって、この流量制御弁であれば、仮に弁の特性が製品毎にばらついていても、各弁に一律に用意された特性データを使ったフィードフォワード制御によって弁開度の速やかな変更が可能であるにも関わらず、製品毎の弁の特性のばらつきによる実流量の設定流量からの差分が生じることもない。
0009
なお、制御部は、弁開度変更処理において、差圧推定処理で推定した差圧が弁の開度変更前後で一定と仮定することによって特性データから特定される、流体の流量が設定流量になると推定される弁開度へ前記弁の実開度を変更するものであってもよい。これによれば、弁開度が特性データから容易に特定可能である。
0010
また、制御部は、差圧推定処理と弁開度変更処理を、流量計の測定値が設定流量から所定の許容範囲内になるまで繰り返し実行するものであってもよい。これによれば、実流量が設定流量に一致する。
0011
また、制御部は、差圧推定処理および弁開度変更処理における特性データの参照において、抵抗係数を用いた当該特性データの補間処理を行うものであってもよい。これによれば、弁をより高精度に制御することができる。
0013
また、本発明は、制御装置、制御方法、或いは制御プログラムの側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、流体の流路に設置される弁を制御する制御装置であって、流体の流路に設置される弁前後の差圧と弁開度と流量との相関関係を規定した特性データを記憶する記憶部と、弁に流入する流体の流量を測定する流量計の測定値と弁の特性データを用いて弁を制御する制御部と、を備え、制御部は、特性データに基づいて、流量計の測定値と弁の実開度から弁前後の差圧を推定する差圧推定処理と、差圧推定処理で推定した差圧において特性データから流体の流量が設定流量になると推定される弁開度へ弁の実開度を変更する弁開度変更処理と、を少なくとも一回ずつ実行するものであってもよい。
発明の効果
0014
上記の流量制御弁、流量制御弁の制御装置、流量制御弁の制御方法および流量制御弁の制御プログラムであれば、弁の特性が製品毎にばらついていても、各弁に一律に用意された特性データを使ってフィードフォワード制御が可能である。
図面の簡単な説明
0015
図1は、実施形態に係る制御弁装置の概略構成図である。
図2は、制御弁の特性データの一例を図式化したグラフである。
図3は、設定流量が減少した際に制御ユニットが行う算出処理を解説した第1の図である。
図4は、設定流量が減少した際に制御ユニットが行う算出処理を解説した第2の図である。
図5は、実施形態に係る制御弁装置の効果を示した図である。
図6は、補間処理を解説する第1の図である。
図7は、弁開度と抵抗係数との関係の一例をグラフで示したものである。
図8は、弁開度と抵抗係数との関係の一例を片対数グラフで示したものである。
図9は、補間処理を解説する第2の図である。
図10は、補間処理を解説する第3の図である。
図11は、補間処理を解説する第4の図である。
図12は、各補間方法における算出開度を示した図である。
図13は、弁開度の真値からの誤差を示した第1の図である。
図14は、弁開度の真値からの誤差を示した第2の図である。
図15は、弁開度の真値からの誤差を示した第3の図である。
図16は、各補間方法における算出流速を示した図である。
図17は、流速の真値からの誤差を示した第1の図である。
図18は、流速の真値からの誤差を示した第2の図である。
図19は、流速の真値からの誤差を示した第3の図である。
図20は、特性データが離散的なデータであることを示した図である。
図21は、特性データの補間が必要となる場合の一例を示した第1の図である。
図22は、特性データの補間が必要となる場合の一例を示した第2の図である。
図23は、制御弁の特性データ列の片対数グラフである。
実施例
0016
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の形態に限定するものではない。
0017
<装置構成>
図1は、本実施形態に係る流量制御弁10の概略構成図である。図1に示すように、流量制御弁10は、制御弁1と制御ユニット2とを有し、空調システムのダクト等に接続され、制御ユニット2が制御弁1の開閉を制御して、制御弁1内を通過する空気の流量(流速)を制御する。本実施形態では、流体の一例として空気の場合を例に説明するが、流体は空気以外のガスであってもよいし、或いは、液体であってもよい。
0018
制御弁1は、本体11や、弁体12、流量検出管131を備えている。
0020
弁体12は、制御ユニット2の制御によって開閉させられ、開状態で本体11内の開口面積を最大とし、閉状態で本体11内の開口面積を最小(開口を無くし、空気の通過を止めることも含む)とする絞り機構である。弁体12は、開閉により流量を制御できれば、どのような形式であっても良いが、本実施形態では、回動軸121と絞り羽122とを有するバタフライ弁である。絞り羽122は、本体11内を通過する空気の流通方向19と直交する面における本体内の断面形状と略同じ外形とした平板状の部材であり、回動軸121を中心に回動可能に保持されている。
0021
流量検出管131は、本体11内において上流側へ向かうように形成されるピトー管である。流量検出管131は、制御ユニット2に接続されており、弁体12に流入する空気の全圧と静圧を弁体12の上流側で検知し、制御ユニット2に伝える。
0022
制御ユニット2は、記憶部21や、流量検出部22、処理部23、駆動部24を備えている。
0023
記憶部21は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、PROM(Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)など、データを記憶し、電気的に読み出し可能な記憶装置である。記憶部21は、制御弁1の開度と流量と弁前後の差圧との関係を示す理論値の特性データを記憶している。この特性データは、制御弁の型式毎に異なるものであるが、同一の形式(設計)の制御弁については共通で用意されるデータであり、開発段階等において予め試験(実測)を行って求めたものである。なお、特性データは、実測したデータに限らず、実測したデータを補正したデータや、類似した制御弁の特性データから換算したデータ、制御弁の仕様から推定したデータ、シミュレーションによって算出したデータ等であっても良い。
0024
流量検出部22は、弁に流入する空気の全圧と静圧を検出し、当該空気の流量を算出する。本実施形態の流量検出部22は、ピトー管式の流量計であり、入力ポート(口金)221に流量検出管131が接続されている。流量検出部22は、この入力ポート221に伝達される全圧と静圧の圧力差によって受圧素子(例えばダイアフラム)を変位させ、この変位量を半導体歪みゲージの抵抗値変化や電極間の静電容量変化等によって電気信号に変換し、差圧信号として出力する構成としている。なお、流量を計測する方法としてはこれに限らず、差圧式(オリフィス式やピトー式、ベンチュリ式)、熱式、軸流羽根車(プロペラ)式、電磁式、超音波式などの各種計測方式が適用可能である。ダイアフラム式は、圧力検出に用いられる受圧素子が流体に直接接触しない(あるいは、接触が抑制された)構造であるので、流体が腐食性のあるガスの場合でも好適に用いられる。一方、特に腐食性のない流体である場合は、流量を制限する部位をバイパスする経路に熱式の流量計を設置したバイパス式(熱式)など比較的安価な方式を用いると良い。腐食性のあるガスとしては、例えば、酸やアルカリを含むガス、有機溶媒(エタノールやクロロホルム、ベンゼン、アセトンなど)を含むガスが挙げられる。酸やアルカリを含むガスの場合には、金属を腐食させるので、流量制御弁10を構成する材料としては、樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂など)または、ポリ塩化ビニルでコーティングした鋼板が好適である。また、有機溶媒を含むガスの場合には、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂を溶かすので、流量制御弁10を構成する材料としては、有機溶媒が低濃度であれば亜鉛めっき鋼板、有機溶媒が高濃度の場合はステンレスやガルバリウム鋼板(「ガルバリウム」は登録商標)が好適である。
0025
処理部23は、流量検出部22で認識した流量及び要求流量に対応する制御弁1の開度を前記特性データに基づいて求め、当該開度に基づく開度信号を出力する等、所定の処理を行うデバイスである。このような処理部23としては、例えばプログラムに基づいて前記処理を行う汎用のプロセッサー(CPU、MPU等)や、前記処理を行う特定用途向け集積回路(ASIC)、前記処理を行う論理回路を設定可能なプログラマブルロジックデバイス等を例示できる。
0026
駆動部24は、ステッピングモータ等の駆動源241や、駆動源241の駆動力を弁体12の回動軸121に伝達する動力伝達機構242を有している。また、駆動部24は、弁体12の角度や位置、移動量等、弁体12の開度を検出するためのセンサー(例えばエンコーダ)を有してもよい。処理部23は、駆動部24のセンサーから得られる弁体12の角度を開度に変換する。駆動部24は、パルス駆動方式のステッピングモータを用いて目標弁開度と現在の弁開度の差分に応じたパルス列を出力したり、或いは、ロータリエンコーダとサーボモータを用いてロータリエンコーダの検出開度(角度)が目標開度(角度)となるようにサーボモータを駆動させて弁を目標開度(角度)へと動作させることにより、弁の開度変更を行う。
0027
<特性データ>
図2は、制御弁1の特性データの一例を図式化したグラフである。弁体12の開閉によって制御弁1を通過する空気の流量が調整される際に、例えば弁体12が閉じた状態、即ち弁体12による抵抗が高い状態であると、動圧により弁体12の前側で圧力が高くなり、弁体12前後の圧力差は大きくなる。一方、弁体12が開いた状態、即ち弁体12による抵抗が低い状態であると、動圧による弁体12前側での圧力の上昇が少なく、弁体12前後の圧力差は小さくなる。よって、弁体12の前後における弁前後の差圧ΔPと弁開度θと流量との関係を測定すると、制御弁1は、例えば、図2に示すような弁固有の特性を表す。
0028
<動作の概要>
制御ユニット2は、このような特性データを使って弁体12の開度を調整する。すなわち、制御ユニット2は、特性データを参照し、実流量と現在の弁開度(実開度)を基に弁前後の差圧ΔPを推定する(S1:本願でいう「差圧推定処理」の一例である)。そして、制御ユニット2は、流量検出部22で得られる流量(実流量)と設定流量との間に所定範囲外の差分が生じた場合、弁開度の変更前後で弁前後の差圧ΔPが一定と仮定した条件の下、特性データにおいて変更後の流量に対応する弁開度を目標弁開度と設定し、実開度が当該目標弁開度となるように駆動部24で弁体12の開度(角度)を変更する(S2:本願でいう「弁開度変更処理」の一例である)。そして、制御ユニット2は、実流量の増加または減少に伴って変化する実際の弁前後の差圧ΔPと推定の弁前後の差圧ΔPとの差分を修正するため、特性データにおいて開度変更後の実流量と実開度から推定される弁開度を、修正後の新たな目標弁開度に設定し、実開度が当該修正後の目標弁開度となるように駆動部24で弁体12の開度(角度)を変更する。制御ユニット2は、上述の実流量と設定流量との間の差分の検出を定期的(例えば、200msec毎)に実行する。制御ユニット2は、当該差分が所定範囲外になると弁開度の変更を行う。
0029
なお、制御基礎値は流速であってもよい。この場合、制御ユニット2は、取得した流速と予め取得しておいた流路断面積とを用い、「流速=流量/流路断面積」の式により、流量を流速に置き換えて制御を行う。
0030
<動作例>
以下、制御弁1の動作内容の一例を説明する。図3は、設定流量が減少した際に制御ユニット2が行う算出処理を解説した第1の図である。また、図4は、設定流量が減少した際に制御ユニット2が行う算出処理を解説した第2の図である。
0031
例えば、実流量が設定流量に一致しており、実流量がV4であったと仮定する。そして、制御ユニット2は、実流量と実開度を基に弁前後の差圧の推定を行い、弁前後の差圧をΔP4と推定している(S1:図3(1)を参照)。ここで、設定流量がV4からV2へ変更されたものと仮定する。設定流量がV4からV2へ変更されると、流量検出部22で得られる実流量と設定流量との間に差分が生じる。そこで、制御ユニット2は、弁開度の変更前後で弁前後の差圧がΔP2で一定と仮定した条件の下、特性データにおいて変更後の流量V2に対応する弁開度であるθ2を目標弁開度と設定し、実開度がθ2となるように駆動部24で弁体12の開度(角度)を変更する(S2:図3(2)を参照)。しかし、弁開度を閉じると、弁前後の差圧は実際にはΔP2からΔP2’へ増加するため、弁開度をθ2にした場合の実流量はV2ではなくV2’となる(図4(3)を参照)。
0032
設定流量がV2’であるにも関わらず実流量がV2であるため、流量検出部22で得られる実流量と設定流量との間に差分が生じる。このため、制御ユニット2は、上述したステップS1の処理を再び実行することになる。すなわち、制御ユニット2は、特性データを参照し、弁開度をθ2に変更した後に流量検出部22で得られた実流量V2’と現在の弁開度θ2を基に、実際の弁前後の差圧をΔP2’と推定する(S1)。そして、制御ユ
ニット2は、弁開度の変更前後で弁前後の差圧がΔP2’で一定と仮定した条件の下、特性データにおいて変更後の流量V2に対応する弁開度であるθ2’を目標弁開度と設定し、実開度がθ2’となるように駆動部24で弁体12の開度(角度)を変更する(S2:図4(4)を参照)。
0033
制御ユニット2は、実流量と設定流量との間の差分が所定の許容誤差(例えば、±5%)の範囲内に収まるまで、ステップS1とステップS2の処理を繰り返し実行することになる。
0034
図5は、本実施形態に係る流量制御弁10の効果を示した図である。図5において「実施例」として記載しているグラフが、本実施形態に係る流量制御弁10において実現される流量の時系列データの一例をグラフ表示したものである。
0035
一方、図5にある「比較例1」とは、本実施形態に係る流量制御弁10と同様に特性データを使って弁開度を制御するものであるが、本実施形態に係る流量制御弁10のように弁を通過する流体の流量を検出して弁開度を制御する代わりに、当該弁の前後の差圧を検出して弁開度を制御するものである。また、図5にある「比較例2」とは、弁を通過する流体の流量を検出して弁開度をフィードバック制御するものである。
0036
図5のグラフに示されるように、制御弁1の上位装置から送られる制御信号等により設定流量が変更されると、本実施形態に係る流量制御弁10では、上述したように、実流量がV4からV2’へ変化した後、V2’からV2へ、すなわち、V2’から設定流量へ変化する。図5のグラフの例では、ステップS1からステップS2までの一連の処理が2回繰り返された場合を例示しているが、図5のグラフは一例に過ぎず、本実施形態に係る流量制御弁10はこのような挙動を示すものに限定されない。
0037
本実施形態に係る流量制御弁10は、流量の測定値を制御に用いているものの、基本的にフィードフォワード制御となっている。すなわち、推定の弁前後の差圧に基づく弁開度の制御を基調としており、流量の測定値は弁前後の差圧の推定値の修正に用いている。よって、本実施形態に係る流量制御弁10は、急峻な設定流量の変更が行われても、弁開度の速やかな変更(高速応答)が可能であり、また、ステップS1からステップS2までの一連の処理を繰り返せば、実流量が設定流量に近づいていき、やがて差分がゼロに収束する。そして、本実施形態の制御弁1は、流量の測定値を制御に用いているため、仮に弁の特性が製品毎にばらついていても、各弁に一律に用意された特性データを使ったフィードフォワード制御によって弁開度の速やかな変更が可能であるにも関わらず、製品毎の弁の特性のばらつきによる実流量の設定流量からの差分が生じることもない。また、本実施形態に係る流量制御弁10は、ロータリエンコーダ等の不調により、制御ユニット2に入力される実開度と実際の弁開度との間に差分が生じている場合であっても、実流量を設定流量に合わせることが可能である。
0038
一方、比較例1は、設定流量となる場合の弁開度を、弁前後の差圧と特性データから推定するものであるため、例えば、特性データが量産品の弁に一律に適用されるものであった場合、製品毎の器差等により、実際の特性が特性データと異なる場合がある。よって、比較例1は、急峻な設定流量の変更が行われても、弁開度の速やかな変更(高速応答)が可能であり、また、実際の特性が特性データに合っていれば実流量を設定流量に合わせることができる。しかし、比較例1は、実流量ではなく弁前後の差圧を取得するものであるため、実際の特性が特性データと異なっている場合、図5のグラフに示すように、器差による誤差があると、実流量を設定流量に合わせることができない。例えば、流体に含まれる成分が金属を腐食するなどの理由により、市販の樹脂成型品を加工してバタフライ弁の弁体を製作したいような場合には、当該樹脂成型品の寸法精度や加工方法の影響により、
金属板を工作機械で加工して弁体を製作するような場合に比べて寸法精度が低下するため、器差が生じやすい。よって、このような製作方法の弁の量産品に比較例1の制御方式を適用することは難しい。
0039
また、比較例2は、実流量が設定流量に合うように弁開度を調整するフィードバック制御を行うものであるため、急峻な設定流量の変更が行われると、流量の一時的な変動が生じる(ハンチング)。よって、このような流量の変動を防ぐには、設定流量を緩やかに変更するか、或いは、時定数を大きくすることが考えられる。しかし、何れの方法も設定流量の急峻な変更を不可能にするものであるから、適用可能な箇所が限られる。
0040
この点、実施形態の制御弁1は、弁の特性が製品毎にばらついていても、各弁に一律に用意された特性データを使ってフィードフォワード制御が可能なため、比較例1と比較例2に比べて優れていると言える。なお、本動作例の説明においては、設定流量をV4からV2へ減少させた場合について例示したが、設定流量を増加させた場合も同様である。
0041
<補間処理>
ところで、図2に例示したように、制御弁1の特性データは、弁体12の前後における弁前後の差圧ΔPと弁開度θとの関係を流量毎に規定しているため、例えば、流量がV1とV2との間にあるV2’のように、特性データで規定されている流量(以下、「流量基準値」という)同士の間に流量がある場合における弁前後の差圧ΔPを当該特性データから直接得ることはできない。そこで、制御ユニット2は、このような場合、現在の弁開度と流量基準値との関係に基づいて特性データから特定できる弁前後の差圧を使い、流量基準値同士の間にある流量における弁前後の差圧を推定する。具体的には、以下のような補間処理を行っている。
0042
図6は、補間処理を解説する第1の図である。制御ユニット2は、流量検出部22で得た実流量Vから弁前後の差圧ΔPの推定を行う際に、例えば、図6に示されるように、当該実流量Vが特性データで規定されている流量V2と流量V3との間にある場合、現在の弁開度θにおける現在の流量V前後の流量基準値線上の点A、Bを検出し、その点における弁前後の差圧を得る。点A、Bにおける流量、弁前後の差圧をそれぞれA(VA,ΔPA)、B(VB,ΔPB)とする。この場合、VAはV2であり、VBはV3である。
0043
流体の流量V、弁前後の差圧ΔPおよび弁開度θの関係は、以下の式で表される。
ここで、ξ(θ)は抵抗係数であり、弁開度θによって決まる。また、ρは流体の密度である。
0044
すなわち、式(1)より、弁開度θが一定のとき、弁前後の差圧ΔPは流量Vの2乗に比例する。そのため、特性データで求める弁前後の差圧ΔPは、点A、Bにおける弁前後の差圧ΔPA、ΔPBを流量の2乗で按分(比例配分)した値となり、次式で表される。
0045
流量が特性データで規定されている流量基準値同士の間にある場合、制御ユニット2は
、式(2)を用いて補間処理を行うことにより、弁前後の差圧ΔPの推定を行う。
0046
<補間処理の補足>
図7は、弁開度と抵抗係数との関係の一例をグラフで示したものである。また、図8は、弁開度と抵抗係数との関係の一例を片対数グラフで示したものである。図2を見ると判るように、上述の特性データでは、流量を変更する際に必要な弁開度の動作量が流量の大きさによって異なる。これは、図7に示すように、弁開度によって抵抗係数が変化するためである。そのため、特性データにおいて流量基準値間の補間を行う際に抵抗係数を使うと、より精度の高い補間が可能となる。また、ある種類の弁体(例えば、バタフライ式など)では、抵抗係数は、図7に示すように、弁開度によってリニア(直線)性がないため、単純な按分(線形補間)では誤差が大きくなる。一方、このような弁体であっても、抵抗係数は、図8に示すように、片対数グラフで表すとリニア(直線)性があるものもある。そこで、このような弁体については、抵抗係数を使った特性データの補間において、対数を使うことにより、精度の高い補間が可能となる。
0047
以下、対数を使った補間について例示する。
0048
(1)流量と弁前後の差圧から弁開度を算出する場合
流量の制御目標値(設定流量)と現在の弁前後の差圧から弁開度の制御目標値を算出したい場合、以下の手順により、算出結果を得ることができる。図9は、補間処理を解説する第2の図である。また、図10は、補間処理を解説する第3の図である。
0049
まず、図9に示すように、現在の弁前後の差圧ΔPにおける設定流量Vの前後の流量基準値線上の点A、Bを検出して、その点における特性データを得る。図9では、設定流量が流量V2と流量V3との間に場合を例示している。点A、Bにおける流量、弁開度をそれぞれA(VA,θA)、B(VB,θB)とする。この場合、VAはV2であり、VBはV3である。
0050
制御目標の弁開度θは、図10に示すように、点A、Bの間を対数補間した位置となる。よって、点A、Bにおける抵抗係数をそれぞれξA、ξBとすると、制御目標の弁開度θにおける抵抗係数ξは次式で表される。
0051
そして、式(3)を変形すると、次式のように表される。
0052
また、抵抗係数は、式(1)から次式のように表される。
0053
ここで、弁前後の差圧ΔPおよび流体の密度ρは、ステップS1の処理では一定と仮定しているため、式(4)、式(5)より次式が導出される。
0054
式(6)におけるVA、VB、θA、θBは、図2の特性データにおいて流量基準値から特定できる値であり、Vは流量の制御目標値であるため、この式(6)を用いることにより、流量と弁前後の差圧から弁開度の算出が可能となる。
0055
(2)弁前後の差圧と弁開度から流量を算出する場合
弁前後の差圧と現在の弁開度から現在の流量を算出したい場合、以下の手順により、算出結果を得ることができる。図11は、補間処理を解説する第4の図である。
0056
まず、図11に示すように、弁前後の差圧ΔPにおける現在の弁開度θの前後の流量基準線上の点A、Bを検出して、その点における特性データを得る。図11では、弁前後の差圧ΔPにおける現在の弁開度θが流量V2と流量V3との間に場合を例示している。点A、Bにおける流量、弁開度をそれぞれA(VA,θA)、B(VB,θB)とする。この場合、VAはV2であり、VBはV3である。
0058
そして、式(6)、式(7)より次式が導出される。
0059
式(8)におけるVA、VB、θA、θBは、図2の特性データにおいて流量基準値から特定できる値であり、θは現在の弁開度(実開度)であるため、この式(8)を用いることにより、弁前後の差圧と弁開度から現在の流量の算出が可能となる。
0060
本補間処理の補足を行うことによる効果について説明する。
0061
まず、上述した「(1)流量と弁前後の差圧から弁開度を算出する場合」を適用した場合の効果について説明する。図2の特性データを用いて、ある流量VNに対して、ある弁前後の差圧ΔP1、ΔP2、ΔP3におけるその前後の流量基準値VN−1、VN+1および弁開度基準値θN−1、θN+1からそれぞれの補間方法を用いた弁開度を算出した。さらには、真値である流量VNにおける弁開度の基準値θNとの誤差を算出した。例えば、ある弁前後の差圧ΔP1、ΔP2、ΔP3における特性データの流量基準値V1、V3およびその点における弁開度θ1、θ3から流量V2における弁開度の値をそれぞれの補間方法で算出して、特性データにおける流量基準値V2の弁開度の値との誤差を算出した。図12は、各補間方法における算出開度を示した図である。また、図13は、弁開度の真値からの誤差を示した第1の図である。また、図14は、弁開度の真値からの誤差を示した第2の図である。また、図15は、弁開度の真値からの誤差を示した第3の図である。
0062
図12では、ある弁前後の差圧ΔP1、ΔP2、ΔP3において、真値である流量基準値V2〜V9の特性線に対して、それぞれの補間方法で算出された弁開度のプロットがなされている。それぞれの条件における誤差は図13〜16に示す通りである。これを見ると、全ての条件において、抵抗係数の対数補間を用いた方が弁開度の線形補間を行った場合より算出誤差が小さいことがわかる。
0063
次に、上述した「(2)弁前後の差圧と弁開度から流量を算出する場合」を適用した場合の効果について説明する。図2の特性データを用いて、各流量基準値VNにおける弁開度θNに対して、ある弁前後の差圧条件ΔP1、ΔP2、ΔP3におけるその前後の流量基準値VN−1、VN+1および弁開度基準値θN−1、θN+1からそれぞれの補間を用いた流量を算出した。さらには、真値である流量基準値VNとの誤差を算出した。例えば、ある弁前後の差圧条件ΔP1、ΔP2、ΔP3における特性データの流量基準値V1、V3およびその点における弁開度θ1、θ3から、特性データの流量基準値V2における弁開度θ2における流量の値をそれぞれの補間方法で算出して、特性データの流量基準値V2の値との誤差を算出した。図16は、各補間方法における算出流速を示した図である。また、図17は、流速の真値からの誤差を示した第1の図である。また、図18は、流速の真値からの誤差を示した第2の図である。また、図19は、流速の真値からの誤差を示した第3の図である。
0064
ある弁前後の差圧条件ΔP1、ΔP2、ΔP3において、真値である流量基準値V2〜V9に対して、それぞれの補間方法で算出された流量のプロットがなされている。それぞれの条件における誤差は図17〜20に示す。これを見ると、全ての条件において、抵抗係数の対数補間を用いた方が弁開度の線形補間を行った場合より算出誤差が小さいことがわかる。
0065
<応用>
図20は、特性データが離散的なデータであることを示した図である。相関性のある流体の流量、弁前後の差圧および弁開度の特性データを用いて制御弁を制御する際に、制御ユニット2の記憶部21に記憶される特性データ(基準値)は、実用上、図20に示したように離散的である。そのため、流量が、図2において流量基準値V1〜V10として示される何れかの流量に一致する場合であっても、当該流量における弁開度を特性データから特定するには、特性データを補間する必要がある。
0066
図21は、特性データの補間が必要となる場合の一例を示した第1の図である。また、図22は、特性データの補間が必要となる場合の一例を示した第2の図である。例えば、図21に示されるように、上述の「(1)流量と弁前後の差圧から弁開度を算出する場合」や「(2)弁前後の差圧と弁開度から流量を算出する場合」における弁前後の差圧ΔP上の点A、Bや、図22に示されるように、ある弁開度θにおける流量基準値の点A、Bを検出する際には、流量基準値を補間して点A、Bにおける特性データを得る必要がある。
0067
点A(VA、ΔPA、θA)は、その等流量(基準値)線上の前後の特性基準値Aα(Vα、ΔPα、θα)、Aβ(Vβ、ΔPβ、θβ)から補間して求める(図21、23においては等流量線上のため、VA=Vα=Vβ=V2)。図23は、制御弁の特性データ列の片対数グラフである。図23のグラフに示すように、弁開度θ−弁前後の差圧ΔPの特性線図を片対数グラフにすると、特性データのデータ列が概ね直線的な形で表れる。そのため、与えられる弁前後の差圧ΔPAから弁開度θAを求める際に、与えられる弁前後の差圧ΔPAとその前後の弁前後の差圧基準値ΔPα、ΔPβの比で前後の弁開度基準値θα、θβを按分(線形補間)するのではなく、対数補間を行った方がより高精度に弁開度θAを算出できる。また、同様に、与えられる弁開度θAから弁前後の差圧ΔPAを
求める際にも、与えらえる弁開度θAとその前後の弁開度基準値θα、θβから前後の弁前後の差圧基準値ΔPα、ΔPβに対して対数補間を行った方が高精度に弁前後の差圧を算出できる。
0068
離散する特性データ(基準値)から等流量(基準値)線上の任意の弁前後の差圧における点A(VA、ΔPA、θA)または任意の弁開度における点A(VA、ΔPA、θA)を算出する方法を以下に示す。
0069
(1)等弁前後の差圧ΔP線上の点Aにおける弁開度θを算出する場合
この場合、まず、等流量線上の弁前後の差圧ΔP前後の特性データ(基準値)Aα(Vα、ΔPα、θα)、Aβ(Vβ、ΔPβ、θβ)を検出する(等流量線上のため、VA=Vα=Vβ=V2)。点Aは等弁前後の差圧ΔP線上にあるため、点Aにおける弁前後の差圧ΔPAはΔPと同じである。よって、点Aにおける弁開度θAは次式より求められる。
0070
(2)等弁開度θ線上の点Aにおける弁前後の差圧ΔPAを算出する場合
この場合、まず、等流量線上の弁開度θ前後の特性データ(基準値)Aα(Vα、ΔPα、θα)、Aβ(Vβ、ΔPβ、θβ)を検出する(等流量線上のため、VA=Vα=Vβ=V2)。点Aは等弁開度θ線上にあるため、点Aにおける弁開度θAはθと同じである。
0071
そして、点A、B間における弁開度θの点Aからの割合(変化率)をκAとすると、κAは次式で表される。
0072
そして、式(6)、式(7)より次式が導出される。
0073
以上に述べた補間処理の補足を行えば、上記実施形態に係る流量制御弁10をより高精度に制御することが可能となる。もっとも、上記補間処理や補間処理の補足は、上記実施形態に係る流量制御弁10に必須のものでなく、特性データのデータ構成次第では省略可能である。
0074
1・・制御弁
2・・制御ユニット
10・・流量制御弁
11・・本体
12・・弁体
19・・流通方向
21・・記憶部
22・・流量検出部
23・・処理部
24・・駆動部
121・・回転軸
122・・絞り羽
131・・流量検出管
221・・入力ポート