図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
近年、燃費向上による二酸化炭素排出量の削減要請を受けて、例えばドライブシャフトやプロペラシャフトなどの動力伝達軸等の車両部品をFRP(Fiber Reinforced Plastics)円筒体で構成して、車両部品ひいては車両全体を軽量化する研究が盛んに行なわれており、一部では実用化もされている。また、ドライブシャフトやプロペラシャフトなどの動力伝達軸等の車両部品をFRP円筒体で構成することで、車両の低振動化や静寂性の向上といった付加価値も期待できる。
FRP円筒体の製造方法として、強化繊維(例えば炭素繊維)を樹脂に含浸させながらマンドレルに巻いてゆくフィラメントワインディング法、および、強化繊維(例えば炭素繊維)を熱硬化性樹脂シート中に含浸させてなる複数のプリプレグを筒状に巻回して熱硬化させ複数のFRP層とするシートワインディング(プリプレグ)法が知られている。フィラメントワインディング法によるFRP製円筒体は、所定量以上の樹脂を必要とし、かつ強化繊維の体積含有率に上限があるので、軽量化と高強度化の要望に充分に応えることができない。
これに対し、シートワインディング法によるFRP製円筒体は、必要最小限の樹脂量でも強化繊維の体積含有率を高くできるという特徴があり、軽量化と高強度化を同時に図る上で有利である。また、形状精度の良い小型品が製造可能であり、積層構成の自由度が高い。しかし、シートワインディング法によるFRP製円筒体でも、まだ、捩り強度には満足できていない。また、捩り強度を向上することにより、FRP製円筒体の肉厚を薄くすることができ、更なる軽量化や、コスト的にも有利となる。
この問題を解決するべく、特許文献1において、FRP円筒体の複数のFRP層中に、円筒軸線方向に斜交する繊維層を有する捩り剛性保持プリプレグと、円筒軸線方向に直交する繊維層を有する座屈防止プリプレグを重ねたセットプリプレグを複数回連続して巻回して熱硬化させた同時多層巻回層を含ませることを提案されている(特許文献1)。
概要
FRP製円筒体に加わる捩り負荷に対する捩り強度の長期信頼性を確立してその破壊を確実に防止することができるFRP製円筒体およびその円筒体を使用した動力伝達軸を提供する。補強繊維を熱硬化性樹脂シート中に含浸させたプリプレグを円筒状に巻回して熱硬化させてなるFRP製円筒体であり、この円筒体は、上記補強繊維が上記熱硬化性樹脂シート中において円筒軸方向に対して角度θとなるように配向され、巻回された上記プリプレグの継目の位置がFRP製円筒体の全体厚さに対してこの円筒体表面から20%未満の厚さに存在しない。
目的
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、FRP製円筒体に加わる捩り負荷に対する捩り強度の長期信頼性を確立してその破壊を確実に防止することができるFRP製円筒体およびその円筒体を使用した動力伝達軸の提供を目的とする
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
補強繊維を熱硬化性樹脂シート中に含浸させたプリプレグを円筒状に巻回して熱硬化させてなる繊維強化プラスチック製円筒体であって、前記補強繊維は前記熱硬化性樹脂シート中において円筒軸方向に対して角度θとなるように配向され、巻回された前記プリプレグの継目の位置が円筒体全体の厚さに対して円筒体表面から20%未満の厚さに存在しないことを特徴とする繊維強化プラスチック製円筒体。
請求項2
前記プリプレグは、前記補強繊維が前記熱硬化性樹脂シートの幅よりも長い長さ方向に平行に配向された原反プリプレグより、平面視斜め方向に切断されたプリプレグであり、前記プリプレグの継目の位置が前記20%未満の厚さに存在しないように、前記切断されたプリプレグの長さaが式1および式2の関係を満足することを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスチック製円筒体。L≧acosθ+bsinθ・・・式1a≧(π(D−d)(9D+d))/100mt・・・式2ここで;L:原反プリプレグの幅a:巻き付けるプリプレグの長さb:成形する繊維強化プラスチック製円筒体の長さθ:繊維配向角D:繊維強化プラスチック製円筒体の外径d:繊維強化プラスチック製円筒体の内径m:円筒体表面から20%以上の肉厚となるように巻き付けるプリプレグの貼り合せ枚数t:円筒体表面から20%以上の肉厚となるように巻き付けるプリプレグ1枚の厚さ
請求項3
前記プリプレグは、前記補強繊維が前記熱硬化性樹脂シートの幅よりも長い長さ方向に平行に配向された原反プリプレグより、平面視斜め方向に切断されたプリプレグであり、前記プリプレグの継目の位置が前記20%未満の厚さに存在しないように、前記切断されたプリプレグの貼り合せ枚数mが式3の関係を満足することを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスチック製円筒体。m≧(π(D−d)(9D+d)cosθ)/100t(L−bsinθ)・・・式3ここで;m:円筒体表面から20%以上の肉厚となるように巻き付けるプリプレグの貼り合せ枚数t:円筒体表面から20%以上の肉厚となるように巻き付けるプリプレグ1枚の厚さD:繊維強化プラスチック製円筒体の外径d:繊維強化プラスチック製円筒体の内径θ:繊維配向角b:成形する繊維強化プラスチック製円筒体の長さL:原反プリプレグの幅
請求項4
前記プリプレグは、前記補強繊維が前記熱硬化性樹脂シートの幅よりも長い長さ方向に平行に配向された原反プリプレグより、平面視斜め方向に切断されたプリプレグであり、前記プリプレグの継目の位置が前記20%未満の厚さに存在しないように、前記切断されたプリプレグの厚さtが式4の関係を満足することを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスチック製円筒体。t≧(π(D−d)(9D+d)cosθ)/100m(L−bsinθ)・・・式4ここで;t:円筒体表面から20%以上の肉厚となるように巻き付けるプリプレグ1枚の厚さD:繊維強化プラスチック製円筒体の外径d:繊維強化プラスチック製円筒体の内径θ:繊維配向角b:成形する繊維強化プラスチック製円筒体の長さL:原反プリプレグの幅m:円筒体表面から20%以上の肉厚となるように巻き付けるプリプレグの貼り合せ枚数
請求項5
前記補強繊維がPAN系炭素繊維であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック製円筒体。
請求項6
技術分野
背景技術
0002
近年、燃費向上による二酸化炭素排出量の削減要請を受けて、例えばドライブシャフトやプロペラシャフトなどの動力伝達軸等の車両部品をFRP(Fiber Reinforced Plastics)円筒体で構成して、車両部品ひいては車両全体を軽量化する研究が盛んに行なわれており、一部では実用化もされている。また、ドライブシャフトやプロペラシャフトなどの動力伝達軸等の車両部品をFRP円筒体で構成することで、車両の低振動化や静寂性の向上といった付加価値も期待できる。
FRP円筒体の製造方法として、強化繊維(例えば炭素繊維)を樹脂に含浸させながらマンドレルに巻いてゆくフィラメントワインディング法、および、強化繊維(例えば炭素繊維)を熱硬化性樹脂シート中に含浸させてなる複数のプリプレグを筒状に巻回して熱硬化させ複数のFRP層とするシートワインディング(プリプレグ)法が知られている。フィラメントワインディング法によるFRP製円筒体は、所定量以上の樹脂を必要とし、かつ強化繊維の体積含有率に上限があるので、軽量化と高強度化の要望に充分に応えることができない。
0003
これに対し、シートワインディング法によるFRP製円筒体は、必要最小限の樹脂量でも強化繊維の体積含有率を高くできるという特徴があり、軽量化と高強度化を同時に図る上で有利である。また、形状精度の良い小型品が製造可能であり、積層構成の自由度が高い。しかし、シートワインディング法によるFRP製円筒体でも、まだ、捩り強度には満足できていない。また、捩り強度を向上することにより、FRP製円筒体の肉厚を薄くすることができ、更なる軽量化や、コスト的にも有利となる。
この問題を解決するべく、特許文献1において、FRP円筒体の複数のFRP層中に、円筒軸線方向に斜交する繊維層を有する捩り剛性保持プリプレグと、円筒軸線方向に直交する繊維層を有する座屈防止プリプレグを重ねたセットプリプレグを複数回連続して巻回して熱硬化させた同時多層巻回層を含ませることを提案されている(特許文献1)。
先行技術
発明が解決しようとする課題
0005
特許文献1に記載されているFRP製円筒体は、これを動力伝達軸であるドライブシャフトやプロペラシャフトなどの車両部品に適用した場合、円筒体の軸線方向に斜交する方向に加わる捩り負荷(捩り力)を受けて破損するおそれがあり、この点において改良の余地があることが判明した。FRP製円筒体において、円筒体の捩り強度の向上は重要な問題である。つまり、FRP製円筒体に加わる捩り負荷に対する捩り強度(捩り剛性)の長期信頼性の確立が求められている。また、捩り強度を向上することによりシャフトを細くすることができ、車両への取り付け時の自由度が上り、肉厚を薄くすることで、材料費や加工費が抑えられ、低コストなシャフトの製造が可能となる。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、FRP製円筒体に加わる捩り負荷に対する捩り強度の長期信頼性を確立してその破壊を確実に防止することができるFRP製円筒体およびその円筒体を使用した動力伝達軸の提供を目的とする。
課題を解決するための手段
0006
本発明のFRP製円筒体は、補強繊維を熱硬化性樹脂シート中に含浸させたプリプレグを円筒状に巻回して熱硬化させてなるFRP製円筒体である。この円筒体は、上記補強繊維が上記熱硬化性樹脂シート中において円筒軸方向に対して角度θとなるように配向され、巻回された上記プリプレグの継目の位置が円筒体全体の厚さに対してこの円筒体表面から20%未満の厚さに存在しないことを特徴とする。
0007
プリプレグの継目の位置を20%未満の厚さに存在しないようにする好ましい方法として、補強繊維が熱硬化性樹脂シートの幅よりも長い長さ方向に平行に配向された原反プリプレグより、平面視斜め方向に切断されたプリプレグが(1)〜(3)に示す、以下の3つの関係のいずれかを満足するように作製する方法が挙げられる。
(1)プリプレグの長さaが以下に示す式1および式2の関係を満足する。
L≧acosθ+bsinθ・・・式1
a≧(π(D−d)(9D+d))/100mt・・・式2
(2)プリプレグの貼り合せ枚数mが以下に示す式3の関係を満足する。
m≧(π(D−d)(9D+d)cosθ)/100t(L−bsinθ)・・・式3
(3)プリプレグの厚さtが以下に示す式4の関係を満足する。
t≧(π(D−d)(9D+d)cosθ)/100m(L−bsinθ)・・・式4
上記式1から式4において、L、a、b、θ、D、d、m、tの意味をそれぞれ以下に示す。
L:原反プリプレグの幅
a:巻き付けるプリプレグの長さ
b:成形するFRP製円筒体の長さ
θ:繊維配向角
D:FRP製円筒体の外径
d:FRP製円筒体の内径
m:円筒体表面から20%以上の肉厚となるように巻き付けるプリプレグの貼り合せ枚数
t:円筒体表面から20%以上の肉厚となるように巻き付けるプリプレグ1枚の厚さ
0008
FRP製円筒体に使用されている補強繊維がPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維であることを特徴とする。
0009
本発明の動力伝達軸は、捩り作用を受けながら回転することで動力を伝達するものであって、この動力伝達軸が本発明のFRP製円筒体であることを特徴とする。
発明の効果
0010
本発明のFRP製円筒体は、原反プリプレグより、平面視斜め方向に切断されたプリプレグが上記(1)〜(3)の関係のいずれかを満足するので、巻回されるプリプレグの継目の位置がFRP製円筒体表面から20%未満の厚さに存在しないようにすることができる。その結果、捩り強度が大幅に向上したFRP製円筒体が得られる。また、これにより、自動車用ドライブシャフト等、特定の捩り方向に捩り負荷の掛かりやすい部材に本発明のFRP製円筒体を適用することにより、部材の破壊を抑制することができる。
0011
本発明の動力伝達軸は、本発明の繊維強化プラスチック製円筒体を使用するので、特定の捩り方向に捩り負荷の掛かりやすい部材の破壊を抑制することができる。
図面の簡単な説明
0012
FRP製円筒体を説明する図である。
原反プリプレグと裁断されるプリプレグとの関係を示す図である。
0013
本発明者はFRP製円筒体の捩り強度を向上する目的で鋭意検討を行なった。その結果、FRP製円筒体を製作するときに用いるプリプレグの継目の位置によって、捩り強度が大きく変わることを見い出した。さらに、プリプレグの継目の位置が全体の肉厚に対してFRP製円筒体表面から20%未満に存在しないように、原反プリプレグを裁断・巻回し、熱硬化させたFRP円筒体とすることで、捩り強度が大きく向上されることを見い出した。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
0015
FRP製円筒体1は、外径D、内径dおよび軸方向長さbを有し、両端1aおよび1bが開口した円筒体である(図1(a))。この円筒体1は、原反より裁断されたプリプレグ2をマンドレル4に巻き付けることで製造される(図1(c))。マンドレル4は、矢印Aの方向に回転し、プリプレグ2は矢印Bの方向に進行する。プリプレグが巻き付けられた本発明の円筒体は、長さbが300〜500mmの範囲、外径Dが30〜60mmの範囲、全体の肉厚さ(t1+t2)が2〜10mmの範囲にあることが伝達駆動軸の強度を担保できるため、好ましい。
0016
原反プリプレグ3とこの原反プリプレグ3から裁断されるプリプレグ2との関係を図2に示す。図2(a)は原反プリプレグ3の斜視図であり、図2(b)は裁断されたプリプレグ2の斜視図である。
プリプレグ2は配向角θを有するように原反プリプレグ3より裁断され、この裁断されたプリプレグ2の幅面2bが円筒軸と平行になるように、複数回巻き付ける必要がある。例えば、幅1メートルの一方向材の原反プリプレグより配向角45°の正方形プリプレグに裁断する場合、最大で裁断できる一辺の長さは1/√2メートルである。成形するのに1/√2メートル以上の長さのプリプレグが必要な場合、裁断したプリプレグを複数回巻き付ける必要がある。このプリプレグ同士の継目は繊維が断裂されている箇所であり、継目を起点として、FRP製円筒体が破損するおそれがあることが判明した。捩りによってFRP製円筒体に加わるせん断応力は最内径から最外径に向かって大きくなる。プリプレグの継目が最外層付近にある場合、繊維が不連続となっている継目に応力が集中し、早期破損に繋がる。プリプレグの継目が最外層付近にない場合は、繊維が連続であるプリプレグが強度を受け持つため、FRP製円筒体の本来の強度を発揮し、バラツキが小さい高品質なFRP製円筒体とすることができる。本発明は、この継目の位置が円筒体表面から20%未満の厚さに存在しない場合、FRP製円筒体の捩り強度がより向上することを見い出したものである。
0017
プリプレグの継目を20%未満に存在しないようにする第1の方法は、切断されるプリプレグ2の長さaが以下に示す式1および式2の関係を満足するように、原反プリプレグ3を切断する方法である。
L≧acosθ+bsinθ・・・式1
a≧(π(D−d)(9D+d))/100mt・・・式2
ここで、L、a、b、θ、D、d、m、tの意味はそれぞれ以下の通りである。
L:原反プリプレグの幅
a:巻き付けるプリプレグの長さ
b:成形するFRP製円筒体の長さ
θ:繊維配向角
D:FRP製円筒体の外径
d:FRP製円筒体の内径
m:円筒体表面から20%以上の肉厚となるように巻き付けるプリプレグの貼り合せ枚数
t:円筒体表面から20%以上の肉厚となるように巻き付けるプリプレグの1枚の厚さ
0018
図1および図2に示すように、直径dのマンドレル4に、繊維の配向等を考慮しない任意のプリプレグ層1dを肉厚が最内層から全体肉厚の80%未満の厚さt2となるよう巻き付ける。その後、図2に示すように裁断し、貼り合せ枚数がm枚としたプリプレグ2をマンドレル4の回転中心軸に対して辺2aが垂直になるように、辺2bが平行になるように巻き付けて外層1cを形成し、外径D、内径d、長さbとなるFRP製円筒体1を成形する。ここで、補強繊維の配向角度θのみ傾けて裁断して巻き付けているため、図1(a)に示すようにFRP円筒の中心軸方向を0°とした場合、FRP円筒体に対する補強繊維の配向角がθとなる積層構成にすることができる。
以上のように、式1と式2を満たすようなプリプレグの長さaとなるように原反プリプレグの幅Lを設定することで、図1(b)に示すようにプリプレグの継目の位置が全体の肉厚に対して最外層から20%未満の厚さに存在しないため、捩り強度が従来の巻回法よりも大幅に向上できる。
0019
プリプレグの継目を20%未満に存在しないようにする第2の方法は、プリプレグの貼り合せ枚数mを以下の式3の関係を満足するようにする方法である。
m≧(π(D−d)(9D+d)cosθ)/100t(L−bsinθ)・・・式3
ここで、L、a、b、θ、D、d、m、tの意味はそれぞれ式1および式2と同じである。
式3を満たすようなプリプレグの貼り合せ枚数mに設定することで、図1(b)に示すようにプリプレグの継目の位置が全体の肉厚に対して最外層から20%未満に存在しないため、捩り強度が従来の巻回法よりも大幅に向上できる。また、プリプレグ2は補強繊維2dが交互に斜交する構造となるように貼り付けることが好ましい。
0020
プリプレグの継目を20%未満に存在しないようにする第3の方法は、プリプレグ2の1枚の厚さtを以下の式4の関係を満足するようにする方法である。
t≧(π(D−d)(9D+d)cosθ)/100m(L−bsinθ)・・・式4
ここで、L、a、b、θ、D、d、m、tの意味はそれぞれ式1および式2と同じである。
式4を満たすようなプリプレグの厚さtに設定することで、図1(b)に示すようにプリプレグの継目の位置が全体の肉厚に対して最外層から20%未満に存在しないため、捩り強度が従来の巻回法よりも大幅に向上できる。
0021
プリプレグ2は補強繊維2dがシート状のマトリクス樹脂2cにそれぞれ含浸されている熱硬化性樹脂シートである。プリプレグ2の1枚の厚さtは0.06mm〜0.16mmである。好ましくは0.08mm〜0.12mmである。厚さが0.06mm未満では、FRP製円筒体1を製造するためにマンドレルへ巻きつけする時に、テンションをかけながら巻きつけるため、プリプレグに微小なクラックや欠陥が発生し、所定の捩り強度が発生せず、0.16mmより厚いと本発明の効果が得られず捩り強度が低下する。
0022
円筒体1を構成する外層1cに巻回されるプリプレグは、捩り強度を向上させるために、補強繊維2dが熱硬化性樹脂シート2c中において円筒軸方向に対して角度θとなるように配向していることが必要である。角度の範囲は30°≦θ≦60°、好ましくは40°≦θ≦50°である。捩り強度を考慮すると、より好ましい角度θは大略45゜である。また、内層1dに巻回されるプリプレグは、補強繊維が任意の配向方向を有するプリプレグであっても使用できる。
0023
プリプレグに使用されるマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、その他の熱硬化性樹脂を使用することができる。なかでも、耐熱性、耐水性、接着性に優れたエポキシ樹脂が好ましい。また、補強繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、その他の高強度、高弾性率繊維を使用することができる。なかでも、比強度、比弾性率に優れた炭素繊維が好ましく、炭素繊維のなかでもPAN系炭素繊維が好ましい。なお、これらの補強繊維は、異なる種類のものを併用することができる。また、同じ種類のものであっても、特性の異なるものを併用することができる。
0024
プリプレグに含まれる繊維含有率は、各層の特性、特に機械的特性を考慮すれば、好ましくは、プリプレグ全体に対して、30体積%〜85体積%、より好ましくは50体積%〜80体積%であり、さらに薄肉軽量を指向する場合には、65体積%〜75体積%であるのが好ましい。
0025
本発明のFRP製円筒体は、捩り強度に著しく優れるため、具体的には、たとえば、航空機、自動車、自転車等における各種フレーム、パイプとして、またプロペラシャフト、ドライブシャフトなどの動力伝達軸として、さらに釣竿、ゴルフクラブ用シャフト、スキーポール、テントの支柱等の各種レジャー用品としてのFRP製円筒体に使用できる。
0026
実施例および比較例に用いた原反プリプレグは、東レ(株)製PAN系炭素繊維商品名「トレカ」T700Sを互いに並行かつシート状に引き揃えたものにBステージのエポキシ樹脂を含浸した一方向性プリプレグを用意した。プリプレグの厚さ、幅、貼り合わせ枚数を表1〜表3に表す。
0027
実施例1および2、比較例1〜3
外径22mm、長さ1,000mmのマンドレルに、表1に示す幅の原反プリプレグ2枚を繊維の配向方向が直角に交わるように貼り合わせ、その貼り合わせたプリプレグを繊維の配向方向がマンドレル軸方向に対して±45°になるように裁断し、表1に示す肉厚さ(t2)になるように巻き付ける。その後、表1に示す長さa、θ=45°、b=500mmとなるように裁断したプリプレグ2枚を繊維方向が直角に交わるように貼り合わせ、その貼り合わせたプリプレグを繊維方向がマンドレル軸方向に対して±45°になるように巻き付け、130℃で120分間加熱して成形し、内径22mm、外径30mm、長さ500mmの円筒体を得た。得られた円筒体におけるプリプレグの継目の位置を全体の肉厚に対して表した結果を表1に示す。
この円筒体について、試料長200mm、捩り速度0.5゜/sの条件で試料数3個で捩り試験した。評価結果等を表1にまとめた。
0028
0029
実施例1および2に示すように、巻回されるプリプレグの継目の位置が円筒体表面から20%未満の厚さに存在しないようにすることで、捩り強度を1,800N・m以上とすることができる。また、原反プリプレグの幅Lを長くすることで切断プリプレグの長さaが長くなることで巻回数が増加し、上層プリプレクの厚さt1が増加する。そのため、捩り強度を向上させることができる。一方、原反プリプレグの幅が大きすぎると、裁断する際に不要なプリプレグが増加し、歩留まりが悪くなる。さらに、市販品の原反プリプレグの幅以上の寸法は特注となり、大幅なコストアップとなる。そのため、原反プリプレグの幅をある程度に留めつつ、捩り強度が向上したFRP製円筒体が求められる。そこで、上記の結果から、巻回されるプリプレグの継目の位置が全体の肉厚に対して円筒体表面から20%未満に存在しないように作製できるプリプレグの幅にすれば、最小の歩留まりで所望のコスト、および捩り強度が得られる。原反プリプレグの好ましい幅Lの範囲は400〜1200mmである。その理由は、一般的に販売されているプリプレグの幅が上記範囲内のものであり、安価で入手性に優れるためである。
0030
実施例3および4、比較例4および5
外径22mm、長さ1,000mmのマンドレルに、厚さ0.1mm、幅1,000mmの原反プリプレグ2枚を繊維の配向方向が直角に交わるように貼り合わせ、その貼り合わせたプリプレグを繊維の配向方向がマンドレル軸方向に対して±45°になるように裁断し、表2に示す肉厚さ(t2)になるように巻き付ける。その後、図1における、a=915mm、θ=45°、b=500mmとなるように裁断したプリプレグを繊維方向が直角に交わるように貼り合わせ、その貼り合わせたプリプレグを繊維方向がマンドレル軸方向に対して±45°になるように巻き付け、130℃で120分間加熱して成形し、内径22mm、外径30mm、長さ500mmの円筒体を得た。裁断したプリプレグの貼り合わせ枚数を表2に示す。また、得られた円筒体におけるプリプレグの継目の位置を全体の肉厚に対して表した結果を表2に示す。
この円筒体について、試料長200mm、捩り速度0.5゜/sの条件で試料数3個で捩り試験した。評価結果等を表2にまとめた。
0031
0032
実施例3および4に示すように、巻回されるプリプレグの継目の位置が円筒体表面から20%未満の厚さに存在しないようにすることで、捩り強度を1,800N・m以上とすることができる。しかし、巻き付ける際、貼り合せ枚数が多くなるとプリプレグがたわみ、上手く巻きつけることができない場合がある。そのため、プリプレグの継目の位置が円筒体表面から20%以上となる最小の貼り合せ枚数にすることが望ましい。なお、厚さ0.1mmの原反プリプレグを用いた場合、比較例4において、内層の厚さt2を3.8mm以下にすることは可能だが、後に裁断したプリプレグを巻き付けたとしても望ましい円筒体の肉厚4.0mmにならないため、再度巻き付ける必要がある。プリプレグの継目の位置が全体の肉厚に対して円筒体表面から5%以内に存在してしまう。2枚を貼り合せたプリプレグを用いて、継目の位置が円筒体表面から最も遠くなる位置が5%であったため、肉厚3.8mmとしている。実施例3、4、および比較例5も同様に厚さt2を設定している。円筒体の好ましい肉厚さの範囲は2〜10mmである。その理由は、伝達駆動軸で必要な強度を担保するためである。
0033
実施例5および6、比較例6〜8
外径22mm、長さ1,000mmのマンドレルに、表3に示す厚さの原反プリプレグ2枚を繊維の配向方向が直角に交わるように貼り合わせ、その貼り合わせたプリプレグを繊維の配向方向がマンドレル軸方向に対して±45°になるように裁断し、表3に示す肉厚さ(t2)になるように巻き付ける。その後、図1における、長さa=208mm、θ=45°、b=500mmとなるように裁断したプリプレグ2枚を繊維方向が直角に交わるように貼り合わせ、その貼り合わせたプリプレグを繊維方向がマンドレル軸方向に対して±45°になるように巻き付け、130℃で120分間加熱して成形し、内径22mm、外径30mm、長さ500mmの円筒体を得た。得られた円筒体におけるプリプレグの継目の位置を全体の肉厚に対して表した結果を表3に示す。
この円筒体について、試料長200mm、捩り速度0.5゜/sの条件で試料数3個で捩り試験した。評価結果等を表3にまとめた。
0034
実施例
0035
実施例5および6に示すように、巻回されるプリプレグの継目の位置が円筒体表面から20%未満の厚さに存在しないようにすることで、捩り強度を1,800N・m以上とすることができる。なお、比較例6において、内層の厚さt2を3.8mm以下にすることは可能だが、後に裁断したプリプレグを巻き付けたとしても望ましい円筒体の肉厚4.0mmにならないため、再度巻き付ける必要がある。プリプレグの継目の位置が全体の肉厚に対して円筒体表面から5%以内に存在してしまう。2枚を貼り合せたプリプレグを用いて、継目の位置が円筒体表面から最も遠くなる位置が5%であったため、肉厚3.8mmとしている。実施例5および6、比較例7および8も同様に厚さt2を設定している。
0036
本発明の繊維強化プラスチック製円筒体および動力伝達軸は、捩り強度が大幅に向上するので、自動車用ドライブシャフト等、特定の捩り方向に捩り負荷の掛かりやすい部材に利用することができる。
0037
1FRP製円筒体
2裁断されたプリプレグ
3原反プリプレグ
4 マンドレル
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成