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技術 誘電膜およびその製造方法

出願人 住友理工株式会社国立大学法人九州大学
発明者 伊藤貴雅高松成亮松野亮介高原淳
出願日 2019年3月22日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-054240
公開日 2020年9月24日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-155676
状態 未査定
技術分野 絶縁物体 圧電、電歪、磁歪装置 有機絶縁材料 付加系(共)重合体、後処理、化学変成
主要キーワード 測定ジグ 伸び線図 行端子 動的応力 ポアッソン比 誘電エラストマー 電子部品冷却用 ハプティクス
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

低温特性に優れると共に、ゴム弾性を有しヒステリシスが小さい誘電膜、およびその製造方法を提供する。

解決手段

誘電膜は、トランスデューサにおいて一対の電極層間介装され、以下の(a)〜(c)を満足する水素化ニトリルゴムを有する。(a)アクリロニトリル量が15質量%以上25質量%以下である。(b)架橋基が導入されており、有機金属化合物を用いて、炭素二重結合以外の該架橋基により架橋されている。(c)架橋密度が1.1×10−3mol/cm3以下である。

概要

背景

トランスデューサとしては、機械エネルギー電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータセンサハプティクス素子など、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカマイクロフォンなどが知られている。柔軟性が高く、小型で軽量なトランスデューサを構成するためには、誘電エラストマーなどの高分子材料が有用である。例えば、誘電エラストマーからなる誘電膜の厚さ方向両面に一対の電極層を配置して、電歪型のトランスデューサを構成することができる。

誘電エラストマーとしては、比誘電率が大きいニトリルゴムアクリルゴムなどが用いられる。なかでも、アクチュエータにおいては、架橋密度を大きくし、弾性率を高めたニトリルゴムを用いて、発生力変位量を大きくしている(例えば、特許文献1参照)。

概要

低温特性に優れると共に、ゴム弾性を有しヒステリシスが小さい誘電膜、およびその製造方法を提供する。 誘電膜は、トランスデューサにおいて一対の電極層間介装され、以下の(a)〜(c)を満足する水素化ニトリルゴムを有する。(a)アクリロニトリル量が15質量%以上25質量%以下である。(b)架橋基が導入されており、有機金属化合物を用いて、炭素二重結合以外の該架橋基により架橋されている。(c)架橋密度が1.1×10−3mol/cm3以下である。 なし

目的

本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、低温特性に優れると共に、ゴム弾性を有しヒステリシスが小さい誘電膜、およびその製造方法を提供する

効果

実績

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請求項1

トランスデューサにおいて一対の電極層間介装される誘電膜であって、以下の(a)〜(c)を満足する水素化ニトリルゴムを有することを特徴とする誘電膜。(a)アクリロニトリル量が15質量%以上25質量%以下である。(b)架橋基が導入されており、有機金属化合物を用いて、炭素二重結合以外の該架橋基により架橋されている。(c)架橋密度が1.1×10−3mol/cm3以下である。

請求項2

前記架橋基は、カルボキシ基水酸基チオールアミノ基、エポキシ基酸無水物イソシアネートから選ばれる一種以上である請求項1に記載の誘電膜。

請求項3

前記有機金属化合物は、金属アルコキシドである請求項1または請求項2に記載の誘電膜。

請求項4

前記金属アルコキシドは、チタンアルコキシドである請求項3に記載の誘電膜。

請求項5

請求項1に記載の誘電膜の製造方法であって、水素化ニトリルゴムポリマーの炭素の二重結合と反応することにより該水素化ニトリルゴムポリマーに架橋基を導入可能な架橋基導入用化合物を準備して、該架橋基導入用化合物と、アクリロニトリル量が15質量%以上25質量%以下の水素化ニトリルゴムポリマーと、を反応させて、該水素化ニトリルゴムポリマーに該架橋基を導入する架橋基導入工程と、該架橋基が導入された該水素化ニトリルゴムポリマーに、有機金属化合物を加え、該架橋基と該有機金属化合物との反応により該水素化ニトリルゴムポリマーを架橋する架橋工程と、を有することを特徴とする誘電膜の製造方法。

請求項6

前記架橋基導入用化合物はチオール化合物であり、チオール−エン反応により前記架橋基を導入する請求項5に記載の誘電膜の製造方法。

請求項7

前記架橋基導入用化合物は無水マレイン酸であり、該無水マレイン酸の付加反応、または該付加反応に続く加水分解反応により前記架橋基を導入する請求項5に記載の誘電膜の製造方法。

請求項8

前記有機金属化合物の配合量は、前記水素化ニトリルゴムポリマーの100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の誘電膜の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、トランスデューサに用いられる誘電膜、およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

トランスデューサとしては、機械エネルギー電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータセンサハプティクス素子など、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカマイクロフォンなどが知られている。柔軟性が高く、小型で軽量なトランスデューサを構成するためには、誘電エラストマーなどの高分子材料が有用である。例えば、誘電エラストマーからなる誘電膜の厚さ方向両面に一対の電極層を配置して、電歪型のトランスデューサを構成することができる。

0003

誘電エラストマーとしては、比誘電率が大きいニトリルゴムアクリルゴムなどが用いられる。なかでも、アクチュエータにおいては、架橋密度を大きくし、弾性率を高めたニトリルゴムを用いて、発生力変位量を大きくしている(例えば、特許文献1参照)。

先行技術

0004

特開2009−124839号公報
特開2011−072112号公報

発明が解決しようとする課題

0005

しかしながら、ゴムの架橋密度を大きくすると、耐絶縁破壊性機械的強度は高くなるが、ガラス転移温度も高くなる。このため、0℃以下の低温下で使用した場合には、誘電膜が硬くなり、アクチュエータの性能が低下してしまうという問題があった。また、ニトリルゴムとしては、比誘電率が高い、引張強さが大きいなどの観点から、アクリロニトリル量が多いものが用いられる。アクリロニトリル量が多いと、ガラス転移温度が高くなるため、低温下で硬くなる。よって、アクリロニトリル量が多いニトリルゴムは、低温下で使用されるアクチュエータの誘電膜には適さない。

0006

一方、アクリロニトリル量を少なくし、ブタジエンユニット二重結合水素化して、耐寒性を改善した水素化ニトリルゴムが知られている。しかしながら、当該水素化ニトリルゴムは、炭素二重結合量が少なく、他の架橋基も有しないため、架橋構造を充分に形成することができない。このため、ゴム弾性に乏しく機械的強度も充分ではない。すなわち、当該水素化ニトリルゴムは、ヒステリシスが大きく、変形後に元の形状に戻りにくいため、伸縮を繰り返すアクチュエータには適用できない。

0007

本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、低温特性に優れると共に、ゴム弾性を有しヒステリシスが小さい誘電膜、およびその製造方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0008

(1)上記課題を解決するため、本発明の誘電膜は、トランスデューサにおいて一対の電極層間介装される誘電膜であって、以下の(a)〜(c)を満足する水素化ニトリルゴムを有することを特徴とする。
(a)アクリロニトリル量が15質量%以上25質量%以下である。
(b)架橋基が導入されており、有機金属化合物を用いて、炭素の二重結合以外の該架橋基により架橋されている。
(c)架橋密度が1.1×10−3mol/cm3以下である。

0009

(2)本発明の誘電膜の製造方法は、上記本発明の誘電膜の製造方法であって、水素化ニトリルゴムポリマーの炭素の二重結合と反応することにより該水素化ニトリルゴムポリマーに架橋基を導入可能な架橋基導入用化合物を準備して、該架橋基導入用化合物と、アクリロニトリル量が15質量%以上25質量%以下の水素化ニトリルゴムポリマーと、を反応させて、該水素化ニトリルゴムポリマーに該架橋基を導入する架橋基導入工程と、該架橋基が導入された該水素化ニトリルゴムポリマーに、有機金属化合物を加え、該架橋基と該有機金属化合物との反応により該水素化ニトリルゴムポリマーを架橋する架橋工程と、を有することを特徴とする。

発明の効果

0010

(1)本発明の誘電膜を構成する水素化ニトリルゴムのアクリロニトリル量は、15質量%以上25質量%以下である。前述したように、アクリロニトリル量が多いと、ガラス転移温度が高くなるため、低温下で硬くなる(つまり、低温特性が悪い)。一方、アクリロニトリル量が少ないと、比誘電率が低下する。本発明の誘電膜においては、アクリルニトリル量を上記(a)の範囲にすることにより、所望の比誘電率の維持と低温特性の向上とを両立させている。

0011

水素化ニトリルゴムは、ポリマー主鎖における炭素の二重結合の一部または全部が水素化されている。このため、ニトリルゴムと比較して炭素の二重結合が少なく、それ以外に架橋基も有しない。例えば上記特許文献1、2に記載されているように、架橋剤として硫黄または有機過酸化物を用いる場合には、炭素の二重結合の反応により架橋が進行する。よって、炭素の二重結合が少ない水素化ニトリルゴムを硫黄や有機過酸化物で架橋すると、架橋構造が形成されにくく架橋密度が大きくなりにくい。結果、ゴム弾性が発現せず、ヒステリシスが大きくなる。加えて、硫黄や有機過酸化物を用いると、未反応の硫黄や架橋助剤などの反応残渣が生じやすい。反応残渣は誘電膜中の不純物になり、耐絶縁破壊性を低下させる一因になる。すなわち、反応残渣がイオン化して誘電膜中を移動することにより、電気抵抗が小さくなり、誘電膜中に電流が流れやすくなる。

0012

この点、本発明の誘電膜においては、水素化ニトリルゴムの架橋前ポリマー(水素化ニトリルゴムポリマー)に予め架橋基を導入しておき、有機金属化合物と当該架橋基とを反応させることにより架橋する(上記(b))。このため、架橋構造を充分に形成する一方で、架橋基の導入量を調整することにより架橋密度が大きくなりすぎないようにすることができる。そして、架橋密度を1.1×10−3mol/cm3以下にすることで(上記(c))、ガラス転移温度の上昇を抑制し、ゴム弾性を有しながら低温下における柔軟性を実現している。架橋密度を1.1×10−3mol/cm3以下にすると、主鎖の架橋点と架橋点との距離が長くなる。これにより、セグメントの自由度が大きくなり、ミクロブラウン運動が生じやすくなるため、ガラス転移温度が低くなり、低温下でも柔軟性が維持されやすい。また、架橋剤として有機金属化合物を用いるため、反応残渣や副反応によるイオン性の不純物が生じにくく、体積抵抗率の低下を抑制することができる。これにより、誘電膜として高い絶縁性を維持することができる。以上より、本発明の誘電膜は、低温特性に優れ、低温下での使用が想定されるトランスデューサに好適である。

0013

(2)本発明の誘電膜の製造方法によると、まず架橋基導入工程において、架橋基導入用化合物を用いて、有機金属化合物と反応可能な架橋基を水素化ニトリルゴムポリマーに導入する。次に架橋工程において、有機金属化合物を用いて水素化ニトリルゴムポリマーを架橋する。炭素の二重結合ではなく、導入した架橋基の反応により架橋させることで、架橋構造を充分に形成しつつ、架橋密度が高くなりすぎないように調整することができる。これにより、得られる水素化ニトリルゴムのガラス転移温度の上昇を抑制して、低温下でも柔軟性の高い誘電膜を製造することができる。そして、架橋基導入用化合物の種類や配合量により、導入する架橋基の種類や量の調整が容易であり、これにより、水素化ニトリルゴムの低温特性や機械的強度などを調整することができる。また、架橋剤として有機金属化合物を用いるため、得られる水素化ニトリルゴム中にイオン性の不純物が生じにくく、体積抵抗率の低下を抑制することができる。これにより、絶縁性の高い誘電膜を製造することができる。また、使用する水素化ニトリルゴムポリマーのアクリルニトリル量は、15質量%以上25質量%以下である。これにより、低温特性に優れ、かつ所望の比誘電率を有する誘電膜を製造することができる。

0014

以下、本発明の誘電膜およびその製造方法の実施の形態について説明する。なお、本発明の誘電膜およびその製造方法は、以下の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良などを施した種々の形態にて実施することができる。

0015

<誘電膜>
本発明の誘電膜は、先の(a)〜(c)を満足する水素化ニトリルゴムを有する。

0016

(a)水素化ニトリルゴムのアクリロニトリル量は、15質量%以上25質量%以下である。アクリロニトリル量は、ゴム全体の質量を100質量%とした場合の、含有されるアクリロニトリル質量割合である。アクリロニトリル量が少ないと、比誘電率が低下し、機械的強度が小さくなる。このため、トランスデューサを構成した場合に、所望の変位量および出力を得られない。より好適なアクリロニトリル量は、18質量%以上である。一方、アクリロニトリル量が多いと、ガラス転移温度が高くなるため、低温下で硬くなる。より好適なアクリロニトリル量は、23質量%以下である。アクリロニトリル量は、例えば、水素化ニトリルゴムを濃硫酸で分解した後、水酸化ナトリウム溶液を添加して、発生するアンモニアを定量することにより求めることができる。

0017

(b)水素化ニトリルゴムは、有機金属化合物を用いて、炭素の二重結合以外の架橋基により架橋されている。水素化ニトリルゴムは、ポリマー主鎖における炭素の二重結合の一部または全部が水素化されているため、ニトリルゴムと比較して炭素の二重結合が少ない。残存する炭素の二重結合の割合を示す指標としては、例えば赤外分光法(IR分光法)により測定される残存二重結合(RDB:Residual double bond)含有率がある。水素化ニトリルゴムポリマーに対する架橋基の導入については後述するが、残存する炭素の二重結合が多いほど、架橋基が導入されやすい。よって、架橋基の量を最適化して架橋密度が上がりすぎないようにするという観点から、残存する炭素の二重結合が少ない、例えばRDB含有率が5.5%以下の水素化ニトリルゴムポリマーを用いることが望ましい。

0018

水素化ニトリルゴムポリマーには、有機金属化合物と反応して架橋する官能基、すなわち架橋基が導入されている。架橋基としては、カルボキシ基水酸基チオールアミノ基、エポキシ基酸無水物イソシアネートなどが挙げられる。これらのうちの一種以上が導入されているとよい。

0019

架橋剤としては、有機金属化合物が用いられる。有機金属化合物は、炭素の二重結合ではなく、導入された架橋基と反応する。有機金属化合物としては、金属アルコキシド、金属アシレートなどが挙げられる。これらのうち一種または二種以上を用いればよい。金属アルコキシドとしては、テトラn−ブトキシチタン、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトラn−ブトキシシラン、テトラi−プロポキシチタン、テトラエトキシシランテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタンブトキシドダイマーなどが挙げられる。なかでも、加水分解性が高く、エステル交換反応しやすいという理由から、チタンアルコキシドが好適である。また、金属アシレートとしては、ポリヒドロキシチタンステアレート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレートなどが挙げられる。有機金属化合物を用いると、反応残渣や副反応によるイオン性の不純物が生じにくく、体積抵抗率の低下を抑制することができるだけでなく、反応時に生成した金属酸化物粒子がゴム中に分散されるため、絶縁破壊強度をより大きくすることができる。

0020

(c)水素化ニトリルゴムの架橋密度は、1.1×10−3mol/cm3以下である。ガラス転移温度を低くして、低温特性をより向上させるという観点から、架橋密度は、1.0×10−3mol/cm3以下、さらには、9.0×10−4mol/cm3以下であるとよい。また、ゴム弾性を発現させてヒステリシスを小さくするという観点から、架橋密度は、2.7×10−4mol/cm3より大きいとよい。

0021

架橋密度の測定方法としては、以下の膨潤法が一般的である。まず、水素化ニトリルゴムの試料(厚さ1.0±0.1mm)を80℃で15時間ソックスレー抽出し、冷風にて風乾後、常温にて15時間真空乾燥する。次に、処理後の試料を縦2.0±0.1mm×横2.0±0.1mm×厚さ1.0±0.1mmの大きさに成形し、トルエンテトラヒドロフラン体積比1:1)溶液2mlにて膨潤させる(常温下15時間)。膨潤前後の寸法変化、荷重を加えた際の寸法変化を測定し、Flory−Rhenerの理論式を用いて架橋密度を算出する。

0022

しかしながら、試料としての水素化ニトリルゴムの厚さが規定に満たない場合には、積層しても層間に溶媒が浸入し正しい値が得られないため、後の実施例に示すように、水素化ニトリルゴムの動的粘弾性を測定し、貯蔵弾性率の値から次式(Ib)により架橋密度を算出してもよい。
古典ゴム論によると、ゴムの貯蔵弾性率は次式で表される。
Mc={2(1+μ)ρRT}/E’ ・・・(Ia)
ゴムのポアッソン比μを0.5と仮定して代入すると、
n=ρ/Mc=E’/(3RT) ・・・(Ib)
[Mc:架橋点間分子量(g/mol)、μ:ポアッソン比(=0.5)、ρ:密度(g/cm3)、R:気体定数(=8.31J/mol・K)、T:絶対温度(K)、E’:貯蔵弾性率(Pa)、n:架橋密度(mol/cm3)]
水素化ニトリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、低温下でも柔軟性を有するという観点から−10℃以下であるとよい。より好適には−15℃以下である。ガラス転移温度は、示差走査熱量計DSC)を用いて測定してもよいが、後の実施例に示すように、動的粘弾性を測定して得られるtanδのピーク温度を指標にしてもよい。なお、DSCによる測定値とtanδのピーク温度とは、相関はあるが同じ値ではない。ここに示した好適なTg値は、tanδのピーク温度としての値である。同様に、低温下でも柔軟性を有するという観点から、水素化ニトリルゴムの−10℃における貯蔵弾性率は、21MPa以下であることが望ましい。10MPa以下であるとより好適である。

0023

水素化ニトリルゴムの比誘電率は、10以上であるとよい。比誘電率は、例えば水素化ニトリルゴムのサンプルをサンプルホルダーソーラトロン社製、12962A型)に設置し、誘電率測定インターフェイス同社製、1296型)および周波数応答アナライザー(同社製、1255B型)を併用して測定すればよい(測定周波数100Hz)。

0024

本発明の誘電膜は、水素化ニトリルゴムに加えて他の成分を含んでいてもよい。例えば、電気絶縁性を有する絶縁フィラーを含む場合には、誘電膜の絶縁破壊強度が大きくなる。絶縁フィラーとしては、体積抵抗率が108Ω・cm以上の無機粒子が好適である。例えば、酸化チタンシリカ酸化ジルコニウムチタン酸バリウム炭酸カルシウムクレー焼成クレータルクなどの粒子が挙げられる。絶縁フィラーとしては、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。

0025

また、圧電フィラーを含む場合には、本発明の誘電膜を、圧電機能を有するトランスデューサの圧電層として用いることができる。圧電フィラーとしては、圧電性を有する化合物を用いればよい。圧電性を有する化合物としては、有機物無機物の制限はなく、例えばペロブスカイト型結晶構造を有する強誘電体が望ましい。例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムニオブ酸カリウムニオブ酸ナトリウムニオブ酸リチウムニオブ酸カリウムナトリウムチタン酸ジルコン酸鉛PZT)、チタン酸バリウムストロンチウムBST)、チタン酸ビスマスランタンBLT)、タンタル酸ビスマスストロンチウム(SBT)などが挙げられる。圧電フィラーとしては、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。

0026

また、水素化ニトリルゴムの性能を損なわない程度に、他のポリマーをブレンドしても構わない。さらに、可塑剤加工助剤老化防止剤軟化剤着色剤などを配合してもよい。

0027

<誘電膜の製造方法>
本発明の誘電膜の製造方法は、架橋基導入工程と、架橋工程と、を有する。以下、各工程を説明する。

0028

[架橋基導入工程]
本工程は、水素化ニトリルゴムポリマーの炭素の二重結合と反応することにより該水素化ニトリルゴムポリマーに架橋基を導入可能な架橋基導入用化合物を準備して、該架橋基導入用化合物と、アクリロニトリル量が15質量%以上25質量%以下の水素化ニトリルゴムポリマーと、を反応させて、該水素化ニトリルゴムポリマーに該架橋基を導入する工程である。

0029

水素化ニトリルゴムポリマーとしては、アクリロニトリル量が15質量%以上25質量%以下のものを使用する。加えて、導入される架橋基の量を最適化して架橋密度が上がりすぎないようにするという観点から、水素化ニトリルゴムポリマーは、残存する炭素の二重結合が少ない、例えばRDB含有率が5.5%以下のものが望ましい。

0030

架橋基導入用化合物は、水素化ニトリルゴムポリマーの炭素の二重結合と反応して、水素化ニトリルゴムポリマーに架橋基を導入できる化合物であれば特に限定されない。導入する架橋基は、有機金属化合物と反応して架橋可能な官能基として、カルボキシ基、水酸基、チオール、アミノ基、エポキシ基、酸無水物、イソシアネートなどが挙げられる。例えば、カルボキシ基を導入する場合には、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸システィンなどのチオール化合物無水マレイン酸などが挙げられる。また、水酸基を導入する場合には、3−メルカプト1−プロパノール2−メルカプトエタノールなどが挙げられる。

0031

第一例として、チオグリコール酸と水素化ニトリルゴムポリマーとの反応式を次式(1)に示す。式(1)に示すように、架橋基導入用化合物がチオール化合物の場合、反応開始剤としてアゾビスイソブチルニトリルAIBN)を用いたチオール−エン反応により、水素化ニトリルゴムポリマーにカルボキシ基を付与することができる。チオール−エン反応によると、酸素による反応阻害が無い、副反応が生じにくい、収率が高いという利点がある。

0032

第二例として、無水マレイン酸と水素化ニトリルゴムポリマーとの反応式を次式(2)に示す。式(2)に示すように、架橋基導入用化合物が無水マレイン酸の場合、反応開始剤としてAIBNを用いた付加反応により、水素化ニトリルゴムポリマーに酸無水物を付与することができる。そして、酸無水物を付与した後に加水分解することにより、二つのカルボキシ基を付与することができる。

0033

架橋基導入用化合物の配合量は、水素化ニトリルゴムポリマーにおける炭素の二重結合の量を考慮して、適宜決定すればよい。炭素の二重結合の量と比較して、架橋基導入用化合物の配合量が多すぎると、未反応物が誘電膜中に残存し、誘電膜が電極層から剥離しやすくなるなどの不具合が生じるおそれがある。反対に、架橋基導入用化合物の配合量が少なすぎると、架橋基を充分に導入できない。その結果、水素化ニトリルゴムの架橋密度が小さくなり、ゴム弾性の低下を招く。架橋基導入用化合物の種類、配合量、反応開始剤の種類、配合量、および反応条件などを適宜選択することにより、架橋基の導入量を調整すればよい。

0034

[架橋工程]
本工程は、架橋基導入工程で架橋基を導入した水素化ニトリルゴムポリマーに、有機金属化合物を加え、該架橋基と該有機金属化合物との反応により該水素化ニトリルゴムポリマーを架橋する工程である。

0035

有機金属化合物の種類については、先に説明したとおりである。有機金属化合物の配合量は、水素化ニトリルゴムポリマーの架橋基量に応じて適宜決定すればよい。例えば、水素化ニトリルゴムポリマーの100質量部に対して1質量部以上30質量部以下にするとよい。1質量部未満の場合には、架橋が充分に進行しないおそれがある。反対に、30質量部を超えると、架橋密度が大きくなり、特に低温下での柔軟性が損なわれるおそれがある。また、水素化ニトリルゴムポリマーの架橋基量に対して過剰になるおそれがあり、反応しきれない有機金属化合物が析出して、機械的強度、絶縁破壊強度を低下させるおそれがある。25質量部以下がより好適である。

0036

本工程は、例えば次のようにして行えばよい。まず、架橋基が導入された水素化ニトリルゴムポリマーを溶剤に溶解したポリマー溶液を調製する。次に、ポリマー溶液に、有機金属化合物をそのまま、あるいは溶剤に溶解した状態で混合し、混合液を調製する。それから、混合液を基材上に塗布して乾燥し、所定の条件下で加熱して、架橋反応を進行させる。混合液には、必要に応じて絶縁フィラー、圧電フィラー、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤などを添加してもよい。架橋反応の条件は、用いた溶剤の種類や反応速度を考慮して適宜決定すればよく、例えば溶剤の沸点以上で加熱することが望ましい。このようにして、所定の水素化ニトリルゴムを有する誘電膜が製造される。

0037

ここで、水素化ニトリルゴムポリマーを溶解する溶剤と、有機金属化合物を溶解する溶剤とは、同じでも異なっていてもよい。有機金属化合物は、空気中や反応系(ゴムポリマー、溶液)中の水分と反応し、加水分解して重縮合する(ゾルゲル反応)。したがって、水との急激な反応を抑制し、均質な膜を形成するためには、有機金属化合物をキレート剤によりキレート化して用いることが望ましい。例えば、有機金属化合物を溶解する溶剤として、キレート剤を用いることが望ましい。キレート剤としては、アセチルアセトンベンゾイルアセトンジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトンアセト酢酸エチルベンゾイル酢酸エチルなどのβ−ケト酸エステルトリエタノールアミン乳酸、2-エチルヘキサンー1,3ジオール、1,3へキサンジオールなどが挙げられる。

0038

<トランスデューサ>
本発明の誘電膜は、トランスデューサにおいて一対の電極層間に介装される。誘電膜の厚さは、成膜精度を確保して膜の欠陥を低減するという観点から、5μm以上であることが望ましい。一方、誘電膜の厚さが大きくなると、駆動に大きな電圧が必要になりコスト高になる。このため、誘電膜の厚さは、200μm以下であることが望ましい。

0039

電極層は、誘電膜に追従して変形可能であることが望ましい。このような電極層は、バインダーおよび導電材を用いて形成することができる。伸縮しても電気抵抗が増加しにくい電極層を形成するという観点から、バインダーとしては、エラストマーが好適である。エラストマーとしては、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)、シリコーンゴム天然ゴムスチレンブタジエンゴムSBR)、アクリルゴム、ウレタンゴムエピクロロヒドリンゴムクロロスルホン化ポリエチレン塩素化ポリエチレンなどの架橋ゴム、およびスチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマーが挙げられる。また、エポキシ基含有アクリルゴム、カルボキシ基含有水素化ニトリルゴムなどのように、官能基を導入するなどして変性したエラストマーを用いてもよい。

0040

導電材の種類は、特に限定されない。カーボンブラックカーボンナノチューブ黒鉛薄層黒鉛、グラフェンなどの導電性炭素粉末、銀、金、銅、ニッケルロジウムパラジウムクロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金などの金属粉末などから、適宜選択すればよい。また、銀被覆銅粉末など、金属で被覆された粒子からなる粉末を用いてもよい。また、π電子を共役させた構造の導電性ポリマーを用いてもよい。これらの一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。

0041

電極層は、バインダーおよび導電材に加えて、必要に応じて分散剤補強剤、可塑剤、老化防止剤、着色剤などの添加剤を含んでいてもよい。例えば、バインダーとしてエラストマーを用いる場合、当該エラストマー分のポリマーを溶剤に溶解したポリマー溶液に、導電材、必要に応じて添加剤を添加して、攪拌、混合することにより、導電塗料を調製することができる。調製した導電塗料を、誘電膜の一面に直接塗布することにより、電極層を形成すればよい。あるいは、離型性フィルムに導電塗料を塗布して電極層を形成し、形成した電極層を、誘電膜の一面に転写してもよい。

0042

複数の誘電膜と電極層とを交互に積層させた積層構造にすると、より出力が大きなトランスデューサを構成することができる。また、電荷増幅の機能を有するイオン層などを誘電膜に積層させてもよい。また、電極層の外側に保護層を配置してもよい。保護層を配置することにより、絶縁性を確保したり、外部からの機械的応力に対してトランスデューサを保護することができる。保護層は、柔軟で伸縮性を有するという観点から、ウレタンゴム、シリコーンゴム、NBR、HNBR、エチレン−プロピレン共重合ゴム、EPDM、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴムなどを含んで形成するとよい。

0043

次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。

0044

<誘電膜の製造>
[実施例1]
(1)架橋基導入工程
架橋基導入用化合物としてチオグリコール酸を使用し、チオール−エン反応により、水素化ニトリルゴム(HNBR)ポリマーにカルボキシ基を導入した(先の式(1)参照)。水素化ニトリルゴムポリマーとしては、アランセオ社製「テルバン登録商標LT2057」、アクリロニトリル量(AN量)21質量%、RDB含有率5.5%)を用いた。そして、水素化ニトリルゴムポリマー10gをテトラヒドロフラン(THF)250mLに溶解し、チオグリコール酸2gおよびAIBN300mgを加えて、窒素雰囲気、70℃下で6時間加熱還流した。それから、メタノール精製水再沈殿させた後、100℃で3時間減圧乾燥した。

0045

(2)架橋工程
カルボキシ基が導入された水素化ニトリルゴムポリマーを、アセチルアセトンに溶解して、固形分濃度が12質量%のポリマー溶液を調製した。また、架橋剤のチタンアルコキシドとして、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタンをアセチルアセトンに溶解したチタンアルコキシド溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。次に、ポリマー溶液の100質量部にチタンアルコキシド溶液を3質量部添加して、混合液を調製した。それから、混合液を基材上に塗布し、乾燥させた後、150℃で60分間加熱して、厚さ15μmの水素化ニトリルゴムシートを製造した。製造した水素化ニトリルゴムシートを、実施例1の誘電膜とした。

0046

[実施例2]
(1)架橋基導入工程
架橋基導入用化合物として無水マレイン酸を使用し、付加反応により水素化ニトリルゴムポリマー(同上)に酸無水物を導入した後、加水分解して二つのカルボキシ基を導入した(先の式(2)参照)。まず、水素化ニトリルゴムポリマー10gを酢酸エチル150mLに溶解し、無水マレイン酸5gおよびAIBN840mgを加えて、窒素雰囲気、90℃下で6時間加熱還流した。それから、精製水に再沈殿させた後、100℃で3時間減圧乾燥した。

0047

(2)架橋工程
二つのカルボキシ基が導入された水素化ニトリルゴムポリマーを、アセチルアセトンに溶解して、固形分濃度が12質量%のポリマー溶液を調製した。次に、ポリマー溶液の100質量部に実施例1で使用したチタンアルコキシド溶液(固形分濃度20質量%)を3質量部添加して、混合液を調製した。それから、混合液を基材上に塗布し、乾燥させた後、150℃で60分間加熱して、厚さ15μmの水素化ニトリルゴムシートを製造した。製造した水素化ニトリルゴムシートを、実施例2の誘電膜とした。

0048

[実施例3〜5]
架橋剤(チタンアルコキシド)の配合量を変えた点以外は、実施例1と同様にして、さらに三種類の水素化ニトリルゴムシートを製造した。チタンアルコキシド溶液(固形分濃度20質量%)を12質量部添加して製造した水素化ニトリルゴムシートを実施例3の誘電膜、15質量部添加して製造した水素化ニトリルゴムシートを実施例4の誘電膜、18質量部添加して製造した水素化ニトリルゴムシートを実施例5の誘電膜とした。

0049

[比較例1]
カルボキシ基含有水素化ニトリルゴムポリマー(アランセオ社製「テルバンXT VP KA8889」、AN量33質量%、RDB含有率3.5%)をアセチルアセトンに溶解して、固形分濃度12質量%のポリマー溶液を調製した。次に、ポリマー溶液の100質量部に実施例1で使用したチタンアルコキシド溶液(固形分濃度20質量%)を3質量部添加して、混合液を調製した。それから、混合液を基材上に塗布し、乾燥させた後、150℃で60分間加熱して、厚さ15μmの水素化ニトリルゴムシートを製造した。製造した水素化ニトリルゴムシートを、比較例1の誘電膜とした。

0050

[比較例2]
実施例1で使用した水素化ニトリルゴムポリマー(AN量21質量%、RDB含有率5.5%)を架橋基を導入せずにそのまま使用した点以外は、実施例1と同様にして水素化ニトリルゴムシートを製造し、比較例2の誘電膜とした。

0051

[比較例3]
実施例1で使用した水素化ニトリルゴムポリマーを架橋基を導入せずにそのまま使用し、さらに架橋剤をチタンアルコキシドから硫黄に変更して、水素化ニトリルゴムシートを製造した。まず、水素化ニトリルゴムポリマー(AN量21質量%、RDB含有率5.5%)100質量部と、架橋助剤の酸化亜鉛二種(堺化学工業社製)5質量部と、をロール練り機にて混練りした。次に、架橋剤の硫黄(鶴見化学工業社製「サルファクスT−10」)0.44質量部と、加工助剤のステアリン酸(日油(株)製「ステアリン酸さくら(登録商標)」)1質量部と、加硫促進剤テトラエチルチウラムジスルフィド(三新化学社製「サンセラーTET−G」)2.1質量部、およびN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアルスルフェンアミド(同社製「サンセラーCZ−G」)1質量部と、を添加して、ロール練り機にて混合して、組成物を調製した。調製した組成物を薄いシート状に成形した後、金型充填し、150℃で18分間プレス架橋することにより、厚さ200μmの水素化ニトリルゴムシートを製造した。製造した水素化ニトリルゴムシートを比較例3の誘電膜とした。

0052

[比較例4]
実施例1で使用した水素化ニトリルゴムポリマーを架橋基を導入せずにそのまま使用し、さらに架橋剤をチタンアルコキシドから有機過酸化物に変更して、水素化ニトリルゴムシートを製造した。まず、水素化ニトリルゴムポリマー(AN量21質量%、RDB含有率5.5%)100質量部と、架橋助剤のトリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル(株)製「TAIC(登録商標) M−60」)1.2質量部と、をロール練り機にて混練りした。次に、架橋剤のジクミルパーオキサイド(日油(株)製「パークミル(登録商標)D−40」、有機過酸化物成分40%)6.4質量部と、加工助剤のステアリン酸(同上)2質量部と、を添加して、ロール練り機にて混合して、組成物を調製した。調製した組成物を薄いシート状に成形した後、金型に充填し、150℃で35分間プレス架橋することにより、厚さ200μmの水素化ニトリルゴムシートを製造した。製造した水素化ニトリルゴムシートを比較例4の誘電膜とした。

0053

<誘電膜の物性測定
製造した誘電膜の体積抵抗率、引張強さ、ヒステリシス損失率、動的粘弾性を測定し、貯蔵弾性率の値から架橋密度を算出した。測定方法は以下のとおりである。

0054

[体積抵抗率]
体積抵抗率については、JIS K6271−2:2015に規定される平行端子電極法に準じて測定した。測定は、直流電圧100Vを印加して行った。

0055

[引張強さ]
JIS K6251:2017に規定される引張試験を行い、引張強さを測定した。引張試験は、厚さ200μmのダンベル状2形の試験片を用い、室温下、引張速度を100mm/minとして行った。
[ヒステリシス損失率]
引張強さを測定した引張試験と同様の試験片および条件で、試験片を伸び50%まで伸長した後に元の状態に戻すというサイクルを3回繰り返した。そして、サイクルごとに引張応力伸び線図を作成し、得られた曲線からJIS K6400−2:2012の6.8.3に規定される式(2)に準じてヒステリシス損失率を算出し、3回の平均値を採用した。

0056

[動的粘弾性および架橋密度]
動的粘弾性測定装置((株)UBM製「Rheogel−E4000」)を用いて、動的応力および動的歪みを測定し、貯蔵弾性率E’、損失弾性率E”、tanδ(E”/E’)のピーク温度を求めた。tanδのピーク温度は、ガラス転移温度を示す指標になる。測定条件は以下のとおりである。
試験片:幅5mm、厚さ0.1mm、チャック間長さ20mm。
温度範囲:−60℃〜100℃。
昇温速度:3℃/分。
測定ジグ:引っ張り
周波数:11Hz。

0057

22℃における貯蔵弾性率の値から、先の式(Ib)により架橋密度を算出した。
n=E’/3RT・・・(Ib)
[n:架橋密度(mol/cm3)、E’:貯蔵弾性率(Pa)、R:気体定数(=8.31J/mol・K)、T:絶対温度(295K)]
表1に、各誘電膜の原料および物性の測定結果を示す。なお、表1に示す原料の質量部は、ゴムポリマー(固形分)100質量部に対する各成分の固形分の質量部である。

0058

表1に示すように、実施例1〜5の誘電膜においては、体積抵抗率が大きく、ヒステリシス損失率は20%以下と小さかった。また、−10℃における貯蔵弾性率は21MPa以下であり、tanδピーク温度も−13℃以下であった。このように、本発明における(a)〜(c)を満足する水素化ニトリルゴムを有する実施例1〜5の誘電膜は、ゴム弾性を有し、かつ低温特性に優れることから、トランスデューサの誘電膜として好適であることが確認された。このうち、架橋剤の配合量が多い実施例3〜5の誘電膜においては、実施例1、2の誘電膜と比較して、−10℃における貯蔵弾性率が大きくなり、tanδピーク温度が上昇した。これは、架橋密度が大きくなったためと考えられる。低温特性に着目すると、−10℃における貯蔵弾性率が10MPa以下の実施例1〜4の誘電膜が特に優れるといえる。また、架橋剤の配合量が最も多い実施例5の誘電膜においては、実施例1〜4の誘電膜と比較して、体積抵抗率および引張強さが小さくなった。これは、架橋反応に使われなかった過剰な架橋剤が粒子状に析出したことにより、当該粒子とゴムとの界面に電流が流れたり、当該粒子を起点として破断しやすくなったためと考えられる。

0059

次に、実施例1〜5の誘電膜と、AN量が33質量%の水素化ニトリルゴムを有する比較例1の誘電膜とを比較する。比較例1の誘電膜においては、−10℃における貯蔵弾性率が大きく、tanδピーク温度も高い。つまり、比較例1の誘電膜は、低温下で硬く変形しにくいため、低温下での使用が想定されるトランスデューサの誘電膜には適していない。これに対して、AN量が25質量%以下の実施例1〜5の誘電膜によると、−10℃における貯蔵弾性率が小さく、tanδピーク温度も低いことから、低温特性が向上していることがわかる。

0060

次に、実施例1〜5の誘電膜と、架橋基が無い水素化ニトリルゴムを有する比較例2の誘電膜とを比較する。比較例2の誘電膜においては、低温特性は良好だが、引張強さが小さくヒステリシス損失率は大きい。つまり、比較例2の誘電膜は、ゴム弾性に乏しく変形後に元の形状に戻りにくいため、伸縮を繰り返すトランスデューサの誘電膜には適していない。これに対して、架橋基が導入された水素化ニトリルゴムを有する実施例1〜5の誘電膜によると、引張強さは大きく、ヒステリシス損失率は小さいことから、優れた低温特性に加えて所望のゴム弾性を有していることがわかる。

実施例

0061

比較例3、4の誘電膜は、炭素の二重結合を反応させて架橋する硫黄または有機過酸化物を用いたため、炭素の二重結合以外の架橋基と反応する有機金属化合物を用いた比較例2の誘電膜と比較して、架橋密度が若干大きくなり、引張強さおよびヒシテリシス損失率に改善が見られた。しかしながら、実施例1〜5の誘電膜と比較すると、それらは充分ではなく、体積抵抗率も小さい。体積抵抗率が小さい理由は、架橋剤の反応残渣がイオン化して誘電膜中を移動することにより、電気抵抗が小さくなるからである。このように、比較例3、4の誘電膜は絶縁性が低いため、トランスデューサの誘電膜には適していない。これに対して、有機金属化合物を用いて架橋した実施例1〜5の誘電膜によると、体積抵抗率が大きく、絶縁性が高いことがわかる。

0062

本発明の誘電膜を備えるトランスデューサは、産業医療福祉ロボットアシストスーツなどに用いられる人工筋肉電子部品冷却用医療用などの小型ポンプ、力や振動により触覚フィードバックを得るためのハプティクス用素子、および医療用器具などに用いられる柔軟なアクチュエータとして好適である。また、ウエアラブルな生体情報センサや、ロボットの人工皮膚、医療用、介護用などのマットレス車椅子のシートなどに配置される圧力センサとして好適である。

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