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課題
解決手段
Ca、La、Fe、Co及びZnの金属元素の原子比を示す一般式:Ca1−xLaxFe2n−y−zCoyZnzにおいて、前記x、y及びz、並びにn(2nはモル比であって、2n=(Fe+Co+Zn)/(Ca+La)で表される)が、0.55<x<0.75、0.15≦y<0.4、0.11≦z<0.4、及び4≦n≦6、を満足し、M型を50〜80質量%、ヘマタイト相を12〜30質量%、Laオルソフェライト相を3〜10質量%、スピネル相を5〜10質量%含有する粉末を準備する工程、0.05質量%以上0.15質量%未満のSiO2及びCaO換算で0.2質量%未満(0質量%を含む)のCaCO3を添加する工程、粉末を成形、焼結する工程を含む。
概要
背景
フェライト焼結磁石は最大エネルギー積が希土類系焼結磁石(例えばNdFeB系焼結磁石)の1/10にすぎないが、主原料が安価な酸化鉄であることからコストパフォーマンスに優れており、化学的に極めて安定であるという特長を有している。そのため、世界的な生産重量は現在でも磁石材料の中で最大である。
モータやスピーカなどフェライト焼結磁石が用いられている様々な用途の中で高性能材の要望が強いのは自動車電装用モータや家電用モータなどである。近年、希土類原料の価格高騰や調達リスクの顕在化を背景に、これまで希土類系焼結磁石しか用いられていなかった産業用モータや電気自動車用(EV、HV、PHVなど)駆動モータ・発電機などにもフェライト焼結磁石の応用が検討されている。
代表的なフェライト焼結磁石は、マグネトプランバイト構造を有するSrフェライトであり、基本組成はSrFe12O19で表される。1990年代後半にSrFe12O19のSr2+の一部をLa3+で置換し、Fe3+の一部をCo2+で置換したSr−La−Co系フェライト焼結磁石が実用化されたことによりフェライト磁石の磁石特性は大きく向上した。また、2007年には、磁石特性をさらに向上させたCa−La−Co系フェライト焼結磁石が実用化されたが、前記用途に供するためには、Ca−La−Co系フェライト焼結磁石においてもさらなる高性能化が必要であり、特定の用途(例えば家電用モータ)において、モータ出力向上のために、残留磁束密度(以下「Br」という)の向上が望まれている。
本発明者らは、先に、Znを添加することによりBrを向上させたCa−La−Co系フェライト焼結磁石を提案した(特許文献1)。
概要
高Br化のためにZnを添加したCa−La−Co系フェライト焼結磁石の製造方法における仮焼条件を緩和し、当該磁石を安価にして提供することを可能にする。Ca、La、Fe、Co及びZnの金属元素の原子比を示す一般式:Ca1−xLaxFe2n−y−zCoyZnzにおいて、前記x、y及びz、並びにn(2nはモル比であって、2n=(Fe+Co+Zn)/(Ca+La)で表される)が、0.55<x<0.75、0.15≦y<0.4、0.11≦z<0.4、及び4≦n≦6、を満足し、M型を50〜80質量%、ヘマタイト相を12〜30質量%、Laオルソフェライト相を3〜10質量%、スピネル相を5〜10質量%含有する粉末を準備する工程、0.05質量%以上0.15質量%未満のSiO2及びCaO換算で0.2質量%未満(0質量%を含む)のCaCO3を添加する工程、粉末を成形、焼結する工程を含む。なし
目的
また、2007年には、磁石特性をさらに向上させたCa−La−Co系フェライト焼結磁石が実用化されたが、前記用途に供するためには、Ca−La−Co系フェライト焼結磁石においてもさらなる高性能化が必要であり、特定の用途(例えば家電用モータ)において、モータ出力向上のために、残留磁束密度(以下「Br」という)の向上が望まれている
効果
実績
- 技術文献被引用数
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この技術が所属する分野
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請求項1
Ca、La、Fe、Co及びZnの金属元素の原子比を示す一般式:Ca1−xLaxFe2n−y−zCoyZnzにおいて、前記x、y及びz、並びにn(2nはモル比であって、2n=(Fe+Co+Zn)/(Ca+La)で表される)が、0.55<x<0.75、0.15≦y<0.4、0.11≦z<0.4、及び4≦n≦6、を満足し、六方晶のマグネトプランバイト(M型)構造のフェライト相を50質量%以上80質量%以下、ヘマタイト相を12質量%以上30質量%以下、Laオルソフェライト相を3質量%以上10質量%以下、スピネル相を5質量%以上10質量%以下含有する粉末を準備する工程、前記粉末100質量%に対して0.05質量%以上0.15質量%未満のSiO2及び前記粉末100質量%に対してCaO換算で0.2質量%未満(0質量%を含む)のCaCO3を添加する工程、SiO2またはSiO2及びCaCO3が添加された粉末を成形し、成形体を得る工程、前記成形体を焼成し、焼結体を得る工程、を含むフェライト焼結磁石の製造方法。
技術分野
0001
本開示は、フェライト焼結磁石の製造方法に関する。
背景技術
0002
フェライト焼結磁石は最大エネルギー積が希土類系焼結磁石(例えばNdFeB系焼結磁石)の1/10にすぎないが、主原料が安価な酸化鉄であることからコストパフォーマンスに優れており、化学的に極めて安定であるという特長を有している。そのため、世界的な生産重量は現在でも磁石材料の中で最大である。
0003
モータやスピーカなどフェライト焼結磁石が用いられている様々な用途の中で高性能材の要望が強いのは自動車電装用モータや家電用モータなどである。近年、希土類原料の価格高騰や調達リスクの顕在化を背景に、これまで希土類系焼結磁石しか用いられていなかった産業用モータや電気自動車用(EV、HV、PHVなど)駆動モータ・発電機などにもフェライト焼結磁石の応用が検討されている。
0004
代表的なフェライト焼結磁石は、マグネトプランバイト構造を有するSrフェライトであり、基本組成はSrFe12O19で表される。1990年代後半にSrFe12O19のSr2+の一部をLa3+で置換し、Fe3+の一部をCo2+で置換したSr−La−Co系フェライト焼結磁石が実用化されたことによりフェライト磁石の磁石特性は大きく向上した。また、2007年には、磁石特性をさらに向上させたCa−La−Co系フェライト焼結磁石が実用化されたが、前記用途に供するためには、Ca−La−Co系フェライト焼結磁石においてもさらなる高性能化が必要であり、特定の用途(例えば家電用モータ)において、モータ出力向上のために、残留磁束密度(以下「Br」という)の向上が望まれている。
0005
本発明者らは、先に、Znを添加することによりBrを向上させたCa−La−Co系フェライト焼結磁石を提案した(特許文献1)。
先行技術
0006
特許第6414372号公報
発明が解決しようとする課題
0007
フェライト焼結磁石は、大まかに、原料の混合、仮焼、粉砕、成形、焼成という工程を経て製造される。一般に「仮焼」とは、混合原料を加熱することで、固相反応により、六方晶のマグネトプランバイト(M型)構造を有するフェライト相(フェライト化合物、以下「M相」という場合がある)を形成するプロセスを指し、仮焼によって得られたものを「仮焼体」と呼ぶ。
0008
従来から、仮焼体の段階でM相の構成相比率(以下「相比率」という場合がある)を高める(好ましくは100質量%にする)ことが当たり前のように実施されてきた。そうすることによって、仮焼体を粉砕、成形、焼結することによって得られるフェライト焼結磁石においてもM相の相比率が高くなり、高い磁石特性が期待できるからである。
0009
前記特許文献1に記載の発明においては、Znの添加によりBrを向上させている。特許文献1の実験例から明らかなようにZnの含有量が増加するとBrが向上する傾向にある。しかし、2価のZn(Zn2+)を増加させると、電荷補償のバランスが崩れる(電気的中性が保てなくなる)ため、Znの増加とともに3価のLa(La3+)も増加させる必要がある。
0010
しかし、Laを増加させると、仮焼工程において固相反応が進み難くなる傾向にあり、仮焼体においてM相の相比率が低下するおそれがある。特許文献1においては、La量が原子比で0.55までは主として1200℃で仮焼されている。これはLa量が原子比で0.55以下までであれば1200℃でも十分固相反応が進み、M相の相比率が高められるからである。一方、La量が原子比で0.55を超える組成では1300℃で仮焼が実施されている。これはLa量が原子比で0.55を超えると1200℃程度では固相反応が十分に進行せず、M相の相比率を高められないためである。つまり、La量が原子比で0.55を超える場合、十分な固相反応を行い、M相の相比率を高めるためには、仮焼温度を1300℃以上にする必要がある。
0011
しかし、仮焼温度が1300℃のように高くなると、仮焼体の緻密化が進行して粉砕し難くなり、粉砕工程に要する時間が増加し、リードタイムが増加するおそれがある。また、粉砕しきれなかった粗大な粉砕粉が残存して磁石特性に悪影響を与えることも懸念される。
課題を解決するための手段
0013
本発明者らは、特許文献1に記載の発明において、Ca、La、Fe、Co及びZnの金属元素の原子比を示す一般式:Ca1−xLaxFe2n−y−zCoyZnzにおいて、前記x、y及びz、並びにn(2nはモル比であって、2n=(Fe+Co+Zn)/(Ca+La)で表される)が、
0.4<x<0.75、
0.15≦y<0.4、
0.11≦z<0.4、
0.26≦(y+z)<0.65、及び
3≦n≦6、
を満足することによって、高いBrを有しかつHcJの低下が少ないフェライト焼結磁石が得られることを知見した。
そして、本発明者らは、鋭意研究を続けた結果、前記特許文献1に記載の発明において、特定の組成範囲で、特定の製造方法を採用することにより、仮焼体においてM相の相比率が80%以下であっても、特許文献1に記載のフェライト焼結磁石と同等の磁石特性が得られることを知見し、本開示の実施形態を提案するに至った。これによって、例えば仮焼温度の低下が可能になるなど、仮焼条件を緩和することができ、前記特許文献1に記載のフェライト焼結磁石と同等の磁石特性を有するフェライト焼結磁石を安価にして提供することが可能になる。
0014
すなわち、本開示の限定的ではない例示的なフェライト焼結磁石の製造方法は、
Ca、La、Fe、Co及びZnの金属元素の原子比を示す一般式:Ca1−xLaxFe2n−y−zCoyZnzにおいて、前記x、y及びz、並びにn(2nはモル比であって、2n=(Fe+Co+Zn)/(Ca+La)で表される)が、
0.55<x<0.75、
0.15≦y<0.4、
0.11≦z<0.4、及び
4≦n≦6、を満足し、
六方晶のマグネトプランバイト(M型)構造のフェライト相を50質量%以上80質量%以下、ヘマタイト相を12質量%以上30質量%以下、Laオルソフェライト相を3質量%以上10質量%以下、スピネル相を5質量%以上10質量%以下含有する粉末を準備する工程、
前記粉末100質量%に対して0.05質量%以上0.15質量%未満のSiO2及び前記粉末100質量%に対してCaO換算で0.2質量%未満(0質量%を含む)のCaCO3を添加する工程、
SiO2またはSiO2及びCaCO3が添加された粉末を成形し、成形体を得る工程、
前記成形体を焼成し、焼結体を得る工程、を含む。
発明の効果
0015
本開示の実施形態によれば、高Br化のためにZnを添加したCa−La−Co系フェライト焼結磁石の製造方法における仮焼条件を緩和し、当該磁石を安価にして提供することが可能になる。
0016
本開示の実施形態のフェライト焼結磁石の製造方法において、Ca、La、Fe、Co及びZnの金属元素の原子比を示す一般式:Ca1−xLaxFe2n−y−zCoyZnzにおいて、前記x、y及びz、並びにn(2nはモル比であって、2n=(Fe+Co+Zn)/(Ca+La)で表される)が、
0.55<x<0.75、
0.15≦y<0.4、
0.11≦z<0.4、及び
4≦n≦6、を満足し、
六方晶のマグネトプランバイト(M型)構造のフェライト相を50質量%以上80質量%以下、ヘマタイト相を12質量%以上30質量%以下、Laオルソフェライト相を3質量%以上10質量%以下、スピネル相を5質量%以上10質量%以下含有する粉末は、典型的には仮焼体を粉砕した粉末である。例えば、仮焼温度が低く、固相反応が不十分である仮焼体の粉末などである。しかし、粉末はこれに限らない。例えば、M相の粉末、ヘマタイト相の粉末、Laオルソフェライト相の粉末、スピネル相の粉末をそれぞれ準備し、混合後の粉末全体として、前記組成及び相比率になるように配合、混合した粉末であってもよい。以下においては、典型例として仮焼体を粉砕した粉末について、組成の限定理由などを説明する。
0017
本開示の実施形態のフェライト焼結磁石の製造方法における粉末において、原子比x(Laの含有量)は、0.55<x<0.75である。xが0.55以下又は0.75以上になると高いBrを得ることができない。Laは、Laを除く希土類元素の少なくとも一種でその一部を置換してもよい。置換量はモル比でLaの50%以下であるのが好ましい。
0018
原子比y(Coの含有量)は、0.15≦y<0.4である。yが0.15未満では得られるフェライト焼結磁石のHcJが低下傾向を示す。yが0.4以上になるとBrが低下傾向を示す。
0019
原子比z(Znの含有量)は、0.11≦z<0.4である。zが0.11未満ではBrが低下傾向を示す。zが0.4以上になるとHcJが低下傾向を示す。
0020
前記一般式において、2nはモル比であって、2n=(Fe+Co+Zn)/(Ca+La)で表される。nは4≦n≦6である。nが4未満又は6を超えると高いBrを得ることができない。
0021
本開示の実施形態のフェライト焼結磁石の製造方法における粉末において、単位質量あたりの粉末に対するM相の相比率は50質量%以上80質量%以下、同様に、ヘマタイト相の相比率は12質量%以上30質量%以下、Laオルソフェライト相の相比率は3質量%以上10質量%以下、スピネル相の相比率は5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。M相の相比率が50質量%未満、並びに、ヘマタイト相、Laオルソフェライト相及びスピネル相の相比率が上限を超えると高いBrを得ることが困難になる。M相の相比率が80質量を超える、並びにヘマタイト相、Laオルソフェライト相及びスピネル相の相比率が下限未満になると、本開示の実施形態のフェライト焼結磁石の製造方法を適用しなくても高いBrが得られる。
0022
本開示の実施形態において、「六方晶のマグネトプランバイト(M型)構造を有する」とは、フェライト仮焼体の粉末のX線回折を一般的な条件で測定した場合に、六方晶のマグネトプランバイト(M型)構造のX線回折パターンが主として観察されることを言う。また、ヘマタイト相とはα−Fe2O3相である。Laオルソフェライト相とはLaFeO3((Ca,La)FeO3の場合も含む)で表されるペロブスカイト構造を有する相である。スピネル相とは(Co,Zn)Fe2O4で表されるスピネル型結晶構造を有する相である。
0023
前記一般式は、金属元素の原子比で示したが、酸素(O)を含む組成は、一般式:Ca1−xLaxFe2n−y−zCoyZnzOαで表される。酸素のモル数αは基本的にはα=19であるが、Fe及びCoの価数、x、y及びzやnの値などによって異なってくる。また、還元性雰囲気で焼成した場合の酸素の空孔(ベイカンシー)、フェライト相におけるFeの価数の変化、Coの価数の変化等により金属元素に対する酸素の比率が変化する。従って、実際の酸素のモル数αは19からずれる場合がある。そのため、本開示の実施形態においては、最も組成が特定し易い金属元素の原子比で組成を表記している。
0024
原料粉末としては、価数にかかわらず、それぞれの金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、塩化物等の化合物を使用することができる。原料粉末を溶解した溶液であってもよい。Caの化合物としては、Caの炭酸塩、酸化物、塩化物等が挙げられる。Laの化合物としては、La2O3等の酸化物、La(OH)3等の水酸化物、La2(CO3)3・8H2O等の炭酸塩等が挙げられる。Feの化合物としては、酸化鉄、水酸化鉄、塩化鉄、ミルスケール等が挙げられる。Coの化合物としては、CoO、Co3O4等の酸化物、CoOOH、Co(OH)2等の水酸化物、CoCO3等の炭酸塩、及びm2CoCO3・m3Co(OH)2・m4H2O等の塩基性炭酸塩(m2、m3、m4は正の数である)が挙げられる。Znの化合物としてはZnOが挙げられる
0025
仮焼時の反応を制御するため、必要に応じてB2O3、H3BO3等のB(硼素)を含む化合物を1質量%程度まで添加してもよい。特にH3BO3の添加は、磁石特性の向上に有効である。H3BO3の添加量は0.3質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%程度が最も好ましい。H3BO3は、焼成時に結晶粒の形状やサイズを制御する効果も有するため、仮焼後(微粉砕前や焼成前)に添加してもよく、仮焼前及び仮焼後の両方で添加してもよい。
0026
準備したそれぞれの原料粉末を配合、混合し、混合原料粉末とする。原料粉末の配合、混合は、湿式及び乾式のいずれで行ってもよい。スチールボール等の媒体とともに撹拌すると原料粉末をより均一に混合することができる。湿式の場合は、分散媒に水を用いるのが好ましい。原料粉末の分散性を高める目的でポリカルボン酸アンモニウム、グルコン酸カルシウム等の公知の分散剤を用いてもよい。混合した原料スラリーはそのまま仮焼してもよいし、原料スラリーを脱水した後、仮焼してもよい。
0027
乾式混合又は湿式混合することによって得られた混合原料粉末は、電気炉、ガス炉等を用いて加熱することで、固相反応により、六方晶のマグネトプランバイト(M型)構造のフェライト化合物を形成する。このプロセスを「仮焼」と呼び、得られた化合物を「仮焼体」と呼ぶ。
0029
前記の通り、仮焼工程では、一般的に、固相反応を十分に進行させ、仮焼体の段階でM相の相比率をできるだけ高める(好ましくは100質量%にする)ことが当たり前のように実施されてきた。しかし、本開示の実施形態によれば、固相反応が完全に終了していない(固相反応の進行途中の)、M相の相比率が80%質量以下で、M相以外の異相を含有する仮焼体であっても、前記特許文献1に記載のフェライト焼結磁石と同等の磁石特性を有するフェライト焼結磁石を得ることが可能である。従って、一般的に実施されている仮焼温度よりも低温で仮焼を実施することができる。例えば、前記特許文献1では仮焼温度が1300℃以上でないと固相反応が十分に進行せず、M相の相比率を高められなかったLaの含有量(x)が原子比で0.55を超える組成を有する場合であっても、本開示の実施形態によれば1200℃以下で仮焼することができる。すなわち、仮焼温度や仮焼時間などの仮焼条件を緩和することができ、それによって、製造コストの削減を図ることができる。
0030
仮焼工程によって得られた仮焼体は、必要に応じてハンマーミルなどによって粗粉砕した後、振動ミル、ジェットミル、ボールミル、アトライター等によって粉砕(微粉砕)し、粉末(微粉砕粉末)とする。これら粗粉砕後の粉末、微粉砕途中の粉末あるいは微粉砕後の粉末が、本開示の実施形態のフェライト焼結磁石の製造方法における「粉末」の典型例であり、「仮焼体を粉砕した粉末」に該当する。
0031
この粉末に、粉末100質量%に対して0.05質量%以上0.15質量%未満のSiO2及び粉末100質量%に対してCaO換算で0.2質量%未満(0質量%を含む)のCaCO3を添加する。このように、ごく少量のSiO2またはSiO2とCaCO3を添加することにより、M相の相比率が80質量%以下で、M相以外の異相を含有する粉末であっても、前記特許文献1に記載のフェライト焼結磁石と同等の磁石特性を有するフェライト焼結磁石を得ることが可能となる。また、SiO2またはSiO2とCaCO3の添加量がごく少量であるため、これら添加物(焼結助剤)に要するコストも削減可能である。
0032
SiO2の添加量は、0.05質量%未満又は0.15質量%以上であると得られるフェライト焼結磁石のBrが低下傾向を示すため好ましくない。CaCO3の添加は必須ではない。つまり0質量%(SiO2のみ添加)であっても本開示の実施形態の効果を奏することができる。添加する場合は0.2質量%未満が好ましい。0.2質量%以上になるとBrが低下傾向を示すため好ましくない。
0033
なお、本開示においては、CaCO3の添加量は全てCaO換算で表記する。CaO換算での添加量からCaCO3の添加量は、
式:(CaCO3の分子量×CaO換算での添加量)/CaOの分子量
によって求めることができる。例えば、CaO換算で0.1質量%のCaCO3を添加する場合、
{(40.08[Caの原子量]+12.01[Cの原子量]+48.00[Oの原子量×3]=100.09[CaCO3の分子量])×0.1質量%[CaO換算での添加量]}/(40.08[Caの原子量]+16.00[Oの原子量]=56.08[CaOの分子量])=0.178質量%[CaCO3の添加量]、となる。
0034
粉末が粗粉砕後の粉末(粗粉砕粉末)の場合は、前記SiO2またはSiO2とCaCO3を添加した後、微粉砕を実施する。微粉砕後の粉末の平均粒径は0.4μm〜0.8μm程度であるのが好ましい。なお、本開示においては、粉体比表面積測定装置(例えば島津製作所製SS−100)などを用いて空気透過法によって測定した値を粉末の平均粒径(平均粒度)という。粉砕工程は、乾式粉砕及び湿式粉砕のいずれでもよく、双方を組み合わせてもよい。湿式粉砕の場合は、分散媒として水及び/又は非水系溶剤(アセトン、エタノール、キシレン等の有機溶剤)を用いて行う。典型的には、水(分散媒)と粉末とを含むスラリーを生成する。スラリーには公知の分散剤及び/又は界面活性剤を固形分比率で0.1質量%〜2質量%を添加してもよい。湿式粉砕後は、スラリーを濃縮してもよい。
0035
粉末が微粉砕途中の粉末である場合は、前記微粉砕の途中で前記SiO2またはSiO2とCaCO3を添加すればよい。粉末が微粉砕後の粉末である場合は、微粉砕後の粉末に前記SiO2またはSiO2とCaCO3を添加すればよいが、この場合は、添加後、混合することが好ましい。前記粉末に、前記SiO2またはSiO2とCaCO3の他に、Cr2O3、Al2O3等を添加してもよい。これらの添加量は、それぞれ1質量%以下であってよい。
0036
SiO2またはSiO2とCaCO3が添加された粉末を、成形、焼成することによってフェライト焼結磁石を得ることができる。成形工程、焼成工程は公知のCa−La−Co系フェライト焼結磁石において採用されている方法で実施することができる。方法の一例を以下に説明する。
0037
成形工程は、粉砕工程後のスラリーを、分散媒を除去しながら磁界中又は無磁界中でプレス成形する。磁界中でプレス成形することにより、粉末粒子の結晶方位を整列(配向)させることができ、磁石特性を飛躍的に向上させることができる。さらに、配向を向上させるために、成形前のスラリーに分散剤及び潤滑剤をそれぞれ0.1質量%〜2質量%添加してもよい。また成形前にスラリーを必要に応じて濃縮してもよい。濃縮は遠心分離、フィルタープレス等により行うのが好ましい。
0038
プレス成形により得られた成形体を、必要に応じて脱脂した後、焼成(焼結)する。 焼成は電気炉、ガス炉等を用いて行う。焼成は酸素濃度が10体積%以上の雰囲気中で行うことが好ましい。より好ましくは20体積%以上であり、最も好ましくは100体積%である。焼成温度は1150℃〜1250℃が好ましい。焼成時間は0時間(焼成温度での保持無し)〜2時間が好ましい。
0039
本開示の実施形態のフェライト焼結磁石の製造方法により、Ca、La、Fe、Co及びZnの金属元素の原子比を示す一般式:Ca1−xLaxFe2n−y−zCoyZnzにおいて、前記x、y及びz、並びにn(2nはモル比であって、2n=(Fe+Co+Zn)/(Ca+La)で表される)が、0.55<x<0.75、0.15≦y<0.4、0.11≦z<0.4、4≦n≦6、を満足するフェライト焼結磁石が得られる。
0040
本開示の実施形態によって得られたフェライト焼結磁石を構成する主相は、六方晶のマグネトプランバイト(M型)構造を有する化合物相(フェライト相)である。一般に、磁性材料、特に焼結磁石は、複数の化合物から構成されており、その磁性材料の特性(物性、磁石特性など)を決定づけている化合物が「主相」と定義される。
0041
本開示の実施形態によって得られたフェライト焼結磁石は、前記の通り、製造過程においてSiO2が添加されている。添加されたSiO2は焼成(焼結)時に液相成分となり、フェライト焼結磁石において粒界相の一成分として存在することとなる。従って、SiO2を添加した場合は、本開示の実施形態によって得られるフェライト焼結磁石は0.05質量%以上0.15質量%未満のSiO2を含有している。フェライト焼結磁石におけるSiO2の含有量は、フェライト焼結磁石の成分分析結果(例えば、ICP発光分光分析装置による結果)におけるCa、La、Fe、Co、Zn及びSiの各組成(質量%)から、CaCO3、La(OH)3、Fe2O3、Co3O4、ZnO及びSiO2の質量に換算し、それらの合計100質量に対する含有比率(質量%)である。
0042
本開示の実施形態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示の実施形態はそれらに限定されるものではない。
0043
一般式Ca0.325La0.675・Fe10.57Co0.35Zn0.15・O19−αとなるようにCaCO3粉末、La(OH)3粉末、Fe2O3粉末、Co3O4粉末及びZnO粉末を配合、混合し、混合原料粉末を得た。混合原料粉末100質量%に対してH3BO3粉末を0.1質量%添加し、混合した。得られた混合原料粉末を湿式ボールミルで4時間混合し、乾燥して整粒した。次いで、大気中において、1200℃で3時間(仮焼体A)と1300℃で3時間(仮焼体B)仮焼し、2種類の仮焼体を得た。前記各仮焼体をハンマーミルで粗粉砕して2種類の仮焼体の粗粉砕粉末を得た。
各仮焼体の粗粉砕粉末における構成相の相比率(質量%)を求めた。その結果を表1に示す。構成相の相比率は、X線回折装置(Bruker AXS製D8 ADVANCE TXS)を用いてX線回折を行い、得られたX線回折パターンをリートベルト解析して求めた。
0044
前記各仮焼体の粗粉砕粉末100質量%に対して、表1に示すSiO2及びCaCO3(添加量はCaO換算)を添加し、水を分散媒とした湿式ボールミルで、平均粒度が0.65μm(粉体比表面積測定装置(島津製作所製SS−100)を用いて空気透過法により測定)になるまで微粉砕し、14種類の微粉砕スラリーを得た。
0045
粉砕工程により得られた各微粉砕スラリーを、分散媒を除去しながら、加圧方向と磁界方向とが平行である平行磁界成形機(縦磁界成形機)を用い、約1Tの磁界を印加しながら約50MPaの圧力で成形し、14種類の成形体を得た。
0046
前記各成形体を表1に示す焼成温度で、大気中で1時間焼成した。得られた14種類のフェライト焼結磁石のBr、HcJの測定結果を表1に示す。表1において試料No.の横に*印を付していない試料No.1〜6が本開示の実施形態に基づく実験例であり、前記1200℃で仮焼した仮焼体Aの粉末を用いている。*印を付した試料No.7〜10は本開示の実施形態を満足しない実験例(比較例)であり、前記1200℃で仮焼した仮焼体Aの粉末を用いている。*印を付した試料No.11〜14は前記特許文献1に記載された発明の再現実験例であり、前記1300℃で仮焼した仮焼体Bの粉末を用いている。
0047
0048
表1に示すように、本開示の実施形態に基づく実験例である試料No,1〜6のフェライト焼結磁石は、粉末(仮焼体の粗粉砕粉末)におけるM相の相比率が80質量%以下(69.5質量%)、ヘマタイト相が20.0質量%、Laオルソフェライト相が5.1質量%、スピネル相が5.4%であっても、特許文献1に記載のフェライト焼結磁石と同等の磁石特性が得られている。一方、本開示の実施形態を満足しない実験例(比較例)である試料No.7〜10のフェライト焼結磁石では、Br及び/又はHcJが特許文献1に記載のフェライト焼結磁石と同等とは言えない磁石特性となった。
実施例
0049
試料No.1のフェライト焼結磁石の構成相の相比率(質量%)を前記仮焼体の粗粉砕粉末の場合と同様な方法で求めたところ、M相の相比率が98.8質量%、ヘマタイト相は0質量%、Laオルソフェライト相は0質量%、スピネル相が1.2質量%であった。また、試料No.11〜14のフェライト焼結磁石の構成相の相比率(質量%)についても同様に求めた結果、M相の相比率が98%質量%以上であり、その他の相はほとんど存在しなかった。
0050
本開示の実施形態によれば、高Br化のためにZnを添加したCa−La−Co系フェライト焼結磁石の製造方法における仮焼条件を緩和し、当該磁石を安価にして提供することが可能となるので、家電用モータなどに好適に利用することができる。