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課題
解決手段
冷凍機は、圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、圧縮機、凝縮器および蒸発器を接続する複数の配管と、複数の配管のうち、ガス流体が流れるガス流体配管としてのホットガスバイパス配管に設けられた音響ダンパ1とを備える。音響ダンパ1は、ホットガスバイパス配管で発生する空気振動を取り込む通路を形成するハウジング2(音響ダンパ本体)と、所定のばね定数を有し、通路3を閉塞する端部板52の内面に一端が取り付けられた振動部50と、振動部50の他端642に接続されるとともにハウジング2の内面と間隔を空けて配置された振動板58と、を有し、振動部50は、一端641と他端642との間で折れ曲がった曲折部68を含む複数の線状ばね64を有する。
概要
背景
概要
より簡易な構成で小型の音響ダンパにより、冷凍機における騒音を良好に減衰させる。冷凍機は、圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、圧縮機、凝縮器および蒸発器を接続する複数の配管と、複数の配管のうち、ガス流体が流れるガス流体配管としてのホットガスバイパス配管に設けられた音響ダンパ1とを備える。音響ダンパ1は、ホットガスバイパス配管で発生する空気振動を取り込む通路を形成するハウジング2(音響ダンパ本体)と、所定のばね定数を有し、通路3を閉塞する端部板52の内面に一端が取り付けられた振動部50と、振動部50の他端642に接続されるとともにハウジング2の内面と間隔を空けて配置された振動板58と、を有し、振動部50は、一端641と他端642との間で折れ曲がった曲折部68を含む複数の線状ばね64を有する。
目的
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、より簡易な構成で小型の音響ダンパにより、冷凍機における騒音を良好に減衰させることを目的とする
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
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この技術が所属する分野
請求項1
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機により圧縮された前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器により凝縮された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機、前記凝縮器および前記蒸発器を接続する複数の配管と、複数の前記配管のうち、ガス流体が流れるガス流体配管および前記圧縮機の吐出配管の少なくともいずれか一つに設けられた音響ダンパと、を備え、前記音響ダンパは、前記配管で発生する空気振動を取り込む通路を形成する音響ダンパ本体と、所定のばね定数を有し、前記通路を閉塞する端部板の内面に一端が取り付けられた振動部と、前記振動部の他端に接続されるとともに前記音響ダンパ本体の内面と間隔を空けて配置された振動板と、を有し、前記振動部は、前記一端と前記他端との間で折れ曲がった曲折部を含む複数の線状ばねを有することを特徴とする冷凍機。
請求項2
前記音響ダンパが設けられる前記ガス流体配管は、前記蒸発器から前記凝縮器へと前記冷媒をバイパスさせるホットガスバイパス配管であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍機。
請求項3
前記線状ばねは、前記一端が、前記端部板の面が向く方向に沿って延びるとともに、前記他端が、前記振動板の面が向く方向に沿って延びていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷凍機。
請求項4
前記線状ばねは、前記一端、前記他端及び前記曲折部のうち少なくとも一つがC字状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷凍機。
請求項5
前記所定のばね定数は、10N/mm以上100N/mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷凍機。
請求項6
前記振動部は、1種以上の材料からなる連続した堆積層を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の冷凍機。
技術分野
背景技術
0002
従来、振動発生源で発生する振動を減衰させる装置に関する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ガスタービンの燃焼器における燃焼振動を減衰させるために、燃焼器よりも上流側において空気供給部、燃料供給部および希釈剤供給部に結合された複数の4分の1波長共振器と、共振器を調整する制御装置とを備えたガスタービンシステムが開示されている。このガスタービンシステムでは、4分の1波長共振器が可変形状共振器とされており、燃焼器内の圧力振動を圧力センサによって検出し、検出した圧力に基づいて、可変形状共振器の形状を調整することで、所望の周波数の振動を減衰させている。
先行技術
0003
特開2011−52954号公報
発明が解決しようとする課題
0004
ところで、振動発生源としては、上記特許文献1に記載されたガスタービンの燃焼器以外に、圧縮機、凝縮器および蒸発器を備えた冷凍機がある。冷凍機では、圧縮機が作動するとき、ブレードの動きやディフューザの羽根の枚数等に応じて周期的な流量変動が生じ、圧力脈動による騒音、いわゆるNZ音が発生する。NZ音の発生は、特定の周波数特性となる性質がある。そして、NZ音が冷凍機の配管における流体音と共鳴し、騒音が増幅されることがある。そのため、NZ音と配管における流体音との共鳴を抑制することが求められる。
0005
そこで、冷凍機の配管に、上記特許文献1に記載のような減衰装置、すなわち音響ダンパを取り付け、所望の周波数の振動を減衰させることが考えられる。しかしながら、所望の周波数の振動について減衰を狙うためには、音響ダンパの波長管の長さでチューニング周波数が決定されることから、上記特許文献1に記載のガスタービンシステムのように、可変形状型の音響ダンパを採用する等、音響ダンパの構造が複雑になりがちである。さらに、振動を良好に減衰させるためには、音響ダンパの体積が大きくなりやすい。その結果、音響ダンパを取り付けるためのスペースが不足しがちとなる。したがって、より簡易な構成で小型の音響ダンパが求められる。
0006
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、より簡易な構成で小型の音響ダンパにより、冷凍機における騒音を良好に減衰させることを目的とする。
課題を解決するための手段
0007
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機により圧縮された前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器により凝縮された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機、前記凝縮器および前記蒸発器を接続する複数の配管と、複数の前記配管のうち、ガス流体が流れるガス流体配管および前記圧縮機の吐出配管の少なくともいずれか一つに設けられた音響ダンパと、を備え、前記音響ダンパは、前記配管で発生する空気振動を取り込む通路を形成する音響ダンパ本体と、所定のばね定数を有し、前記通路を閉塞する端部板の内面に一端が取り付けられた振動部と、前記振動部の他端に接続されるとともに前記音響ダンパ本体の内面と間隔を空けて配置された振動板と、を有し、前記振動部は、前記一端と前記他端との間で折れ曲がった曲折部を含む複数の線状ばねを有することを特徴とする。
0008
この構成により、振動板に音響ダンパ本体の通路で空気振動に起因した荷重が作用することで、振動板が所定のばね定数を有する振動部と共に振動する。それにより、音響ダンパの振動を吸収し、音響ダンパの音響の境界条件を変化させることができる。すなわち、音響ダンパで空気振動が共鳴する際に、振動部が振動し、振動板が音響のインピーダンス境界となることで、音響ダンパの音響境界条件を変化させることができる。その結果、冷凍機のガス流体が流れるガス流体配管、圧縮機の吐出配管における所望の周波数の流体音を音響ダンパで良好に減衰させることが可能となる。したがって、ガス流体配管、圧縮機の吐出配管における流体音と圧縮機で発生するNZ音との共振を抑制することができる。また、音響ダンパの共鳴周波数の固有値を変化させることで、音圧レベルを低減させることができるため、同じ共鳴周波数の振動減衰を狙う音響ダンパについて小型化を図ることが可能となる。したがって、本発明によれば、より簡易な構成で小型の音響ダンパにより、冷凍機における騒音を良好に減衰させることができる。
0009
また、前記音響ダンパが設けられる前記ガス流体配管は、前記蒸発器から前記凝縮器へと前記冷媒をバイパスさせるホットガスバイパス配管であることが好ましい。この構成により、蒸発器と凝縮器との間のホットガスバイパス配管における流体音を、良好に減衰させることができる。
0010
また、前記線状ばねは、前記一端が、前記端部板の面が向く方向に沿って延びるとともに、前記他端が、前記振動板の面が向く方向に沿って延びていることが好ましい。この構成により、線状ばねの一端と他端における応力集中を緩和することができる。
0011
また、前記線状ばねは、前記一端、前記他端及び前記曲折部のうち少なくとも一つがC字状に形成されていることが好ましい。この構成により、一端、他端及び曲折部における応力集中を緩和することができる。
0012
また、前記所定のばね定数は、10N/mm以上100N/mm以下であることが好ましい。この構成により、比較的小さな負荷の作用により、振動部を変形させることができる。すなわち、微小な振動に対応して振動部を変形させて振動を吸収させることができる。
0013
また、前記振動部は、1種以上の材料からなる連続した堆積層を有することが好ましい。この構成により、振動部を積層造形によって形成することで、所定のばね定数を有する振動部を容易に得ることができる。
図面の簡単な説明
0014
図1は、実施形態にかかる冷凍機を示す概略構成図である。
図2は、音響ダンパを模式的に示す説明図である。
図3は、振動部の荷重変位特性の一例を示す説明図である。
図4は、実施形態にかかる音響ダンパにおける共鳴周波数と音圧レベルとの関係の解析結果の一例を示す説明図である。
図5は、音響ダンパの具体例を示す説明図である。
図6は、振動部および振動板を示す説明図である。
図7は、振動部の第1の変形例を示す説明図である。
図8は、振動部の第2の変形例を示す説明図である。
図9は、図6から図8に示した各振動部の荷重変位特性の一例を示す説明図である。
図10は、図6から図8に示した各振動部において、各線状ばねの変形量と最大応力との関係を示す説明図である。
実施例
0015
以下に、本発明にかかる冷凍機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
0016
図1は、実施形態にかかる冷凍機を示す概略構成図である。実施形態にかかる冷凍機100は、例えばビルや工場等の温度、湿度などを調整する空調設備、あるいは、冷凍室を冷却する空調設備の一部である。冷凍機100は、設置されているビルや工場、冷凍室に冷たい水または空気を供給し、設置されているビルや工場、冷凍室を冷却する装置である。冷凍機100は、圧縮機101と、凝縮器102と、蒸発器103と、中間冷却器104とを有する。
0017
圧縮機101と凝縮器102とは、冷媒が流通される冷媒配管106a(吐出配管)により連通されている。また、凝縮器102と蒸発器103とは、冷媒が流通される冷媒配管106bにより連通されている。中間冷却器104は、冷媒配管106bに介在されている。また、蒸発器103と圧縮機101とは、冷媒が流通される冷媒配管106cにより連通されている。すなわち、圧縮機101、凝縮器102、蒸発器103、および中間冷却器104は、冷媒配管106a、106b、106cを介して冷媒を循環させる循環経路106に設けられている。また、冷媒配管106bの経路中には、中間冷却器104の上流側にホットガスバイパス弁107が設けられ、下流側にホットガスバイパス弁108が設けられている。さらに、凝縮器102と蒸発器103とは、循環経路106を介さず蒸発器103から凝縮器102へと高温の冷媒ガスをバイパスして供給するホットガスバイパス配管109が設けられている。また、ホットガスバイパス配管109には、冷媒ガスの流量を調整するための調整弁110が設けられている。
0018
圧縮機101は、羽根車の回転運動によって冷媒を圧縮するターボ圧縮機として構成されている。すなわち、冷凍機100は、いわゆるターボ冷凍機である。ターボ圧縮機としての圧縮機101は、電動機111によって駆動される圧縮部112を有している。圧縮部112には、電動機111により回転駆動される羽根車を同軸上に2つ備えた2段圧縮や、電動機111により回転駆動される羽根車を1つ備えた単段圧縮の方式がある。圧縮部112が2段圧縮の場合、蒸発器103から圧縮機101へ送られる気相の冷媒は、1段目の圧縮部で圧縮された後、2段目の圧縮部でさらに圧縮され、圧力と温度とが上昇しつつ冷媒配管106aを介して凝縮器102へ送られる(吐出される)。一方、圧縮部112が単段圧縮の場合、蒸発器103から圧縮機101へ送られる気相の冷媒は、圧縮部112にて圧縮され、圧力と温度とが上昇しつつ冷媒配管106aを介して凝縮器102へ送られる。
0019
凝縮器102は、冷媒冷却流体(例えば、水)が供給される冷却水配管121が接続されている。圧縮機101から凝縮器102に送られる気相の冷媒は、冷却水配管121により供給される冷媒冷却流体と熱交換して凝縮し、すなわち、冷媒冷却流体に熱を捨てて液化し、冷媒配管106bを介して蒸発器103へ送られる。冷却水配管121には、ポンプ122と冷却水供給部123が設けられている。ポンプ122は、冷却水配管121内の冷却水を循環させる。冷却水供給部123は、冷却水配管121に冷却水を供給し、冷媒と熱交換した冷却水を回収する。
0020
蒸発器103は、冷却媒体(本実施形態では水)が供給される冷水配管131が接続されている。凝縮器102から蒸発器103に送られる液相の冷媒は、冷水配管131により供給される冷却媒体と熱交換して蒸発する。この過程で、水は、液相の冷媒に熱を捨てて温度が低下する。これにより水は、冷水となる。そして、水と熱交換した液相の冷媒は、蒸発して気相の冷媒となり、冷媒配管106cを介して圧縮機101へ送られる。冷水配管131には、ポンプ132と冷水消費部134が設けられている。ポンプ132は、冷水配管131内の水(冷水)を循環させる。冷水消費部134は、冷水配管131に冷水を供給し、冷媒と熱交換し冷却された冷水を回収する。冷水消費部134は、回収した冷水を利用し、図示しない空調設備が設置されている設備の空気を冷却する。なお、冷却媒体には、水以外の流体も用いることができる。
0021
中間冷却器104は、凝縮器102において液化された後、ホットガスバイパス弁107を通過した冷媒を液相とガス相とに分離するものである。さらに、中間冷却器104は、凝縮器102と蒸発器103との間に一定の圧力差を保持すると共に、液相の冷媒の一部を蒸発させて蒸発器103での潜熱の増大を図るものである。また、中間冷却器104は、凝縮器102にて凝縮し切れなかった気相の冷媒と、液相の冷媒とが気液二相流流体として導入され、この気相の冷媒と液相の冷媒とを分離する気液分離器として機能するものであり、分離された気相の冷媒は圧縮機101へ送られ、液相の冷媒はホットガスバイパス弁108へ送られる。ホットガスバイパス弁108を通過した冷媒は蒸発器103に送られる。
0022
ホットガスバイパス弁107は、凝縮器102で液化された冷媒を膨張させる機構である。具体的には、冷媒を凝縮圧から中間圧まで減圧させる。ホットガスバイパス弁107で減圧された冷媒は、中間冷却器104に供給される。
0023
ホットガスバイパス弁108は、中間冷却器104を通過した液体の冷媒(飽和液冷媒)を膨張させる機構である。具体的には、冷媒を中間圧から蒸発圧まで減圧させる。ホットガスバイパス弁107で減圧された冷媒は、中間冷却器104に供給される。
0024
冷凍機100は、以上のような構成である。なお、冷凍機100は、上記構成に限定されない。冷凍機100は、圧縮機101と、凝縮器102と、蒸発器103とを備えていればよく、その配管構成、ポンプの配置、ホットガスバイパス弁の配置等は、種々の配置とすることができる。
0025
次に、実施形態にかかる冷凍機100の要部について説明する。冷凍機100では、圧縮機101が作動するとき、ブレードの動きやディフューザの羽根の枚数等に応じて、周期的な流量変動が生じ、圧力脈動による騒音、いわゆるNZ音が発生する。NZ音の発生は、特定の周波数特性となる性質がある。そして、NZ音が冷凍機100の循環経路106に含まれる各配管における流体音と共鳴し、騒音が増幅されることがある。そのため、NZ音と各配管における流体音との共鳴を抑制することが求められる。
0026
そこで、冷凍機100は、上記構成に加えて、循環経路106に含まれる各配管のうち、冷媒ガス(ガス流体)が流れるものに設けられた音響ダンパ1を備えている。音響ダンパ1は、サイドブランチ型の音響ダンパである。
0027
図2は、音響ダンパを模式的に示す説明図である。本実施形態において、音響ダンパ1は、図1および図2に示すように、ホットガスバイパス配管109の外面に取り付けられている。音響ダンパ1は、振動発生源としてのホットガスバイパス配管109の外側において、ホットガスバイパス配管109の延在方向である軸方向に沿って延びる音響ダンパ本体としてのハウジング2を有している。ハウジング2は、直管型に形成されてホットガスバイパス配管109の外面に接着される。音響ダンパ本体としてのハウジング2は、いわゆる4分の1波長管である。
0028
音響ダンパ1は、ハウジング2の内部に音響部を構成する通路3が形成されている。通路3は、一連に繋がって形成され、一端が振動発生源で発生する空気振動を取り込む入口(図示省略)として構成されている。入口は、ホットガスバイパス配管109の外面に向けて開口して設けられている。そして、ホットガスバイパス配管109は、入口が向く位置において、内側を流れる冷媒ガスによる空気振動(圧力波)を外側に通過させる複数の小孔からなる貫通孔(図示せず)が形成されており、この貫通孔を介して入口から通路3内に空気振動が取り込まれる。
0029
実施形態において、音響ダンパ1は、振動部50と、端部板52と、振動板58とを備えている。端部板52は、所定の剛性を有する素材により形成され、ハウジング2のホットガスバイパス配管109に接する側とは反対側の面に取り付けられる。言い換えると、端部板52は、ハウジング2の外面である。端部板52は、通路3に取り込まれた空気振動の伝搬経路の下流側を閉塞する。振動部50および振動板58は、ハウジング2の通路3内に配置される。振動板58は、振動部50を介して端部板52に取り付けられており、通路3内で振動自在とされている。
0030
図3は、振動部の荷重変位特性の一例を示す説明図である。振動部50は、弾性変形可能な素材により形成される。振動部50のばね定数は、図3に示すように、少なくとも荷重が作用し始める領域Aにおいて、比較的に小さな値となるように、すなわち小さな荷重で弾性変形するように設定されている。それにより、振動部50は、ホットガスバイパス配管109から空気振動が伝達されると、微小な振動による小さな荷重で変形することになる。その結果、微小振動に対応して振動部50を変形させ、振動を良好に吸収し、後述するように共鳴周波数における音圧レベルを低減させることが可能となる。領域Aにおける振動部50のばね定数は、10N/mm以上100N/mm以下である。なお、図3では、振動部50は、領域Aよりもさらに大きな荷重が作用する領域Bにおいては、領域Aよりも大きなばね定数を有する例を示しているが、これに限られるものではなく、領域Aと同程度であってもよい。振動部50のばね定数は、例えば、振動部50のヤング率、密度、大きさ(ばね径)等によって調整することができる。また、図3においては、領域A、Bの荷重変位特性を線形特性で描いているが、領域A、Bともに、非線形特性であってもよい。
0031
以上より、音響ダンパ1は、ホットガスバイパス配管109において冷媒ガスが流通する際、この冷媒ガスによる空気振動(圧力波)が、ホットガスバイパス配管109の貫通孔を通過して音響部を構成する通路3内に取り込まれる。そして、通路3において、その入口と終端との間で伝搬した空気振動が共鳴し、ホットガスバイパス配管109内の圧力変動が減衰される。
0032
また、振動部50および振動板58が通路3内に設けられることにより、図2に示すように、振動部50および振動板58がばねとダンパとを有する仮想的な振動吸収構造を形成する。これにより、音響ダンパ1でホットガスバイパス配管109からの空気振動が共鳴する際に、振動部50が振動し、振動板58が音響のインピーダンス境界となることで、音響ダンパ1の音響境界条件を変化させることができる。すなわち、振動部50及び振動板58により振動が吸収されることで、音響ダンパ1の共鳴周波数の固有値を変化させることができ、共鳴周波数における音圧レベルを低減させることができる。
0033
図4は、実施形態にかかる音響ダンパにおける共鳴周波数と音圧レベルとの関係の解析結果の一例を示す説明図である。図4において、実線は、音響ダンパ1の共鳴周波数と音圧レベルとの関係を示し、破線は、比較例として振動部50を有さない音響ダンパの共鳴周波数と音圧レベルとの関係を示している。図示するように、比較例の音響ダンパでは、共鳴周波数である点P1において音圧レベルがピークとなる。一方、実施形態の音響ダンパ1では、振動部50及び振動板58による振動吸収構造により、2つの点P2、P3が共鳴周波数となり、この点P2、P3では、点P1に比べて音圧レベルのピークが小さくなる。このように、音響ダンパ1は、比較例の音響ダンパに比べて、共鳴周波数における音響レベルを低下させることができる。言い換えると、同じ周波数帯の振動を減衰させる際に、音響ダンパ1のサイズをより小さく、すなわちハウジング2で形成される4分の1波長管の長さを短くすることができる。本実施形態では、比較例に対して、音響ダンパ1のサイズ(4分の1波長管の長さ)を概ね半分程度とすることが可能である。
0035
図5に示すように、振動部50は、複数の線状ばね64で構成されている。本実施形態では、振動部50が4本の線状ばね64を有するが、5本以上の線状ばねを有していてもよい。個々の線状ばね64は、一端641(図6参照)と他端642との間で折れ曲がった曲折部68を含み、一端641が端部板52の内面に取り付けられ、他端642が、振動板58に固定されている。より詳細には、個々の線状ばね64は、図6に示すように、他端642が振動板58の四隅近傍に取り付けられている。個々の線状ばね64は、一端641から曲折部68に向かうにつれて互いに接近しあい、曲折部68から他端642に向かうにつれて互いに離間するように折れ曲がっている。それにより、振動部50は、個々の線状ばね64の曲折部68を基点として端部板52と振動板58との間で弾性変形することができる。
0036
また、振動板58は、ハウジング2の内面と隙間を空けて配置されている。すなわち、振動板58は、通路3の内面と接触しないように配置され、複数の線状ばね64(振動部50)を介して端部板52に取り付けられる。その結果、振動板58は、複数の線状ばね64の曲折部68を基点とした弾性変形に伴って、通路3内で振動自在となる。なお、個々の線状ばね64の形成方法は特に制限されないが、一例には、1種以上の材料からなる連続層を堆積する所謂積層造形によって形成されることが望ましい。この場合、個々の線状ばね64は、1種以上の材料からなる連続した堆積層を有する。
0037
音響ダンパ1は、以上のような構成である。ホットガスバイパス配管109からハウジング2の通路3へ空気振動が伝搬されると、空気振動は、通路3内を伝搬し、伝搬経路の下流側を閉塞する端部板52に至る。その過程で、振動板58には、空気振動に起因した荷重が作用し、複数の線状ばね64を有する振動部50に伝達される。その結果、振動部50に荷重が作用することで振動部50が振動して弾性変形し、振動部50がハウジング2の図5中の上下方向に変位する(弾性変形を繰り返す)。これに伴い、振動部50に固定された振動板58もハウジング2の図5中の上下方向に変位する。つまり、空気振動によって振動板58と振動部50とが共に振動する。本実施形態では、振動部50を複数の線状ばねで形成することで、振動部50のばね定数を小さくし、小さな荷重で変形させることができる。
0038
以上説明したように、実施形態にかかる冷凍機100は、冷媒を圧縮する圧縮機101と、圧縮機101により圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器102と、凝縮器102により凝縮された冷媒を蒸発させる蒸発器103と、圧縮機101、凝縮器102および蒸発器103を接続する複数の配管(冷媒配管106a、106b、106cおよびホットガスバイパス配管109)と、複数の配管のうち、ガス流体が流れるガス流体配管としてのホットガスバイパス配管109に設けられた音響ダンパ1と、を備え、音響ダンパ1は、ホットガスバイパス配管109で発生する空気振動を取り込む通路3を形成するハウジング2(音響ダンパ本体)と、所定のばね定数を有し、通路3を閉塞する端部板52の内面に一端641が取り付けられた振動部50と、振動部50の他端642に接続されるとともにハウジング2の内面と間隔を空けて配置された振動板58と、を有し、振動部50は、一端641と他端642との間で折れ曲がった曲折部68を含む複数の線状ばね64を有する。
0039
この構成により、振動板58にハウジング2の通路3で空気振動に起因した荷重が作用することで、振動板58が所定のばね定数を有する振動部50と共に振動する。それにより、音響ダンパ1の振動を吸収し、音響ダンパ1の音響の境界条件を変化させることができる。すなわち、音響ダンパ1で空気振動が共鳴する際に、振動部50が振動し、振動板58が音響のインピーダンス境界となることで、音響ダンパ1の音響境界条件を変化させることができる。その結果、冷凍機100のホットガスバイパス配管109における所望の周波数の流体音を音響ダンパ1で良好に減衰させることが可能となる。したがって、ホットガスバイパス配管109における流体音と圧縮機で発生するNZ音との共振を抑制することができる。また、音響ダンパ1の共鳴周波数の固有値を変化させることで、音圧レベルを低減させることができるため、同じ共鳴周波数の振動減衰を狙う音響ダンパ1について小型化を図ることが可能となる。したがって、実施形態によれば、より簡易な構成で小型の音響ダンパ1により、冷凍機100における騒音を良好に減衰させることができる。
0040
また、本実施形態では、振動部50が複数の線状ばね64を有する。これにより、振動部50を簡易な構成とし、かつ、所定のばね定数に容易に調整することができる。
0041
さらに、振動部50すなわち複数の線状ばね64は、ハウジング2の内部に配置される。振動部50をハウジング2の内部に設けることにより、振動部50をハウジング2の外面に設ける場合に比べて、音響ダンパ1の小型化を図ることが可能となる。
0042
ここで、図7は、振動部の第1の変形例を示す説明図であり、図8は、振動部の第2の変形例を示す説明図である。第1の変形例としての振動部50Aは、振動部50の複数の線状ばね64に代えて複数の線状ばね64Aを有する。振動部50Aの他の構成は、振動部50と同じであるため、説明を省略する。各線状ばね64は、図7に示すように、一端641Aと他端642Aが、端部板52と振動板58が向く方向に沿って延びるように形成される。すなわち、一端641Aは、図7に示すように、端部板52の内面に沿った方向と直交する方向に延びる。また、他端642Aは、図7に示すように、振動板58の端部板52側の面に沿った方向と直交する方向に延びる。つまり、線状ばね64Aは、端部板52および振動板58の面に対して直交するように接続される。
0043
第2の変形例としての振動部50Bは、振動部50の複数の線状ばね64に代えて複数の線状ばね64Bを有する。振動部50Bの他の構成は、振動部50と同じであるため、説明を省略する。各線状ばね64Bは、図8に示すように、一端641B、他端642Bおよび曲折部68BがC字状になるように形成される。すなわち、線状ばね64Bは、一端641B、他端642Bおよび曲折部68Bが湾曲した形状を呈しており、一端641Bから曲折部68Bまでの間および他端642Bから曲折部68Bまでの間は、直線状に形成される。
0044
図9は、図6から図8に示した各振動部の荷重変位特性の一例を示す説明図である。図示するように、第1の変形例としての振動部50Aは、振動部50と概ね同じような荷重変位特性を示す。また、第2の変形例としての振動部50Bは、振動部50よりも、やや荷重に対する変位量が小さくなる傾向にある。
0045
図10は、図6から図8に示した各振動部において、各線状ばねの変形量と最大応力との関係を示す説明図である。図10に示すように、第1の変形例としての振動部50Aは、振動部50に比べて線状ばね64Aに生じる最大応力の値が低下する。すなわち、線状ばね64Aが端部板52および振動板58の面に対して直交することで、個々の線状ばね64Aに加わる応力集中を緩和することができる。また、図10に示すように、第2の変形例としての振動部50Bは、振動部50、50Aに比べて、線状ばね64Bに生じる最大応力の値がさらに低下する。すなわち、一端641B、他端642Bおよび曲折部68Bが湾曲した形状を呈することで、個々の線状ばね64Aに加わる応力集中をさらに緩和することができる。
0046
以上より、線状ばね64の形状は、振動部50の製造容易性等を考慮しつつ、図9に例示する荷重変位特性および図10に例示する変形量と最大応力との関係を考慮して、図6から図8に示す構成から選択されればよい。また、線状ばね64の一端641、他端642および曲折部68の形状は、図6から図8に示すものを組み合わせてもよい。例えば、一端641および他端642を端部板52および振動板58の面に対して直交するように形成し、曲折部68をC字状に湾曲させる等、図6から図8に示す構成を適宜組み合わせてもよい。
0047
実施形態において、音響ダンパ1が設けられるガス流体配管は、蒸発器103から凝縮器102へと冷媒をバイパスさせるホットガスバイパス配管109とした。この構成により、蒸発器103と凝縮器102との間のホットガスバイパス配管109における流体音を、良好に減衰させることができる。ただし、音響ダンパ1は、ホットガスバイパス配管109のみならず、冷凍機100に含まれる複数の配管のうち、ガス流体が流れる配管および圧縮機101の吐出配管(冷媒配管106a)の少なくともいずれか1つに設けられてもよい。
0048
また、実施形態において、振動部50(50A、50B)の所定のばね定数は、10N/mm以上100N/mm以下である。この構成により、比較的小さな負荷の作用により、振動部50(50A、50B)を変形させることができる。すなわち、微小な振動に対応して振動部50(50A、50B)を変形させて振動を吸収させることができる。ただし、振動部50(50A、50B)の所定のばね定数は、これに限られない。
0049
また、実施形態において、振動部50(50A、50B)は、1種以上の材料からなる連続した堆積層を有することが好ましい。振動部50(50A、50B)を積層造形によって形成することで、所定のばね定数を有する振動部50(50A、50B)を容易に得ることができる。
0050
1音響ダンパ
2ハウジング
3通路
50,50A,50B振動部
52端部板
58振動板
64,64A,64B線状ばね
68,68B曲折部
100冷凍機
101圧縮機
102凝縮器
103蒸発器
106循環経路
106a,106b,106c冷媒配管
109ホットガスバイパス配管
641,641A,641B 一端
642,642A,642B 他端