図面 (/)

技術 有機溶媒中の金属イオンの電解還元回収法

出願人 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構国立大学法人横浜国立大学
発明者 佐々木祐二松宮正彦
出願日 2019年3月18日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-049671
公開日 2020年9月24日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-152931
状態 未査定
技術分野 金属の製造または精製 抽出、液体の置換 金属の電解製造
主要キーワード 擬似参照電極 ジクロロエタン相 非抽出性 基板重量 電析物 質量付加 水晶表面 電解電位
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年9月24日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (6)

課題

酸溶液中から目的の金属のみを分離回収し、利用する逆抽出溶液をなくすことで作業を簡略化し、有機相中金属イオンをより高純度の金属として回収する方法を開発すること。

解決手段

一例として、パラジウム有機溶媒中(アセトフェノンジクロロエタンオクタノール)に抽出剤としてMIDOAを用いて有機相に抽出後、支持電解質を溶解し、過電圧-2.5Vで電解し、電極表面に金属として析出させ、回収する。

概要

背景

従来、金属元素の分離技術として、溶媒抽出法クロマト分離法、沈殿法等が存在する。その中で、溶媒抽出法は多量の試料溶液の取り扱いが可能で、反応も早く、工業的に広く行われている。この方法では、抽出後の金属は水相に戻す「逆抽出」の操作を行い、取り扱いの容易な水溶液として処理する。即ち、正抽出で実施される水相と有機相、さらに逆抽出では別の水相が利用される。このように、溶媒抽出法は多くの水溶液や有機溶媒を利用することになり、2次廃棄物発生など問題視される場合がある。また、有用金属の再利用やコスト削減の観点から、所謂通常の産業界でも廃液中の金属を高純度化して回収するための研究開発が精力的に行われている。このように、目的元素を金属として回収する技術の開発が強く求められている。

特許文献1や非特許文献1及び2に示されているように、溶媒抽出法と電解法を組み合わせることで、水溶液中の金属イオンを金属として単離し、回収することが可能となる。塩酸硝酸溶液中貴金属元素を容易に抽出でき、分配比の高いこれら金属(Pd,Ag,Os,Ir,Pt,Au,Hg)を対象元素とすることができる。

概要

酸溶液中から目的の金属のみを分離回収し、利用する逆抽出の溶液をなくすことで作業を簡略化し、有機相中の金属イオンをより高純度の金属として回収する方法を開発すること。一例として、パラジウムを有機溶媒中(アセトフェノンジクロロエタンオクタノール)に抽出剤としてMIDOAを用いて有機相に抽出後、支持電解質を溶解し、過電圧-2.5Vで電解し、電極表面に金属として析出させ、回収する。

目的

本発明の目的は、産業上排出される廃液中の金属を、従来技術よりも簡単なやり方で、高純度化して回収する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

溶媒抽出法で金属を有機相に抽出した後、前記有機相に電極を浸漬して、目的金属に対応する標準電極電位に基づいて前記電極への印加電圧を調整して電解反応を行い、前記目的金属を選択的に還元させて前記電極の表面に析出させる段階から成る、有機溶媒中の金属イオン電解還元回収法

請求項2

請求項1において、前記溶媒抽出法で金属を有機相に抽出する段階が、硝酸塩酸溶液中のパラジウムオスミウムイリジウム白金、金、水銀を、窒素系MIDOA(メチルイミノジオクチルアセトアミド抽出剤を用いて、有機相に定量的に抽出することを特徴とする有機溶媒中の金属イオンの電解還元回収法。

請求項3

請求項1において、前記溶媒抽出法で金属を有機相に抽出する段階が、硝酸、塩酸溶液中の金、銀、水銀を、イオウ系抽出剤のTDGA(チオジグリコールアミド)を用いて、有機相に定量的に抽出することを特徴とする有機溶媒中の金属イオンの電解還元回収法。

請求項4

請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記電極が、ニッケルまたは白金から成る作用電極と、白金からなる参照電極から構成されていることを特徴とする有機溶媒中の金属イオンの電解還元回収法。

請求項5

溶媒抽出法で貴金属を有機相に抽出した後、前記有機相に電極を浸漬して、目的金属に対応する標準電極電位に基づいて前記電極への印加電圧を調整して電解反応を行い、前記目的金属を選択的に還元させて前記電極の表面に析出させ、析出した前記目的金属を電極から脱離させ回収する段階から成る、貴金属の製造方法。

請求項6

請求項5において、前記貴金属が、パラジウム、白金、金のいずれかであることを特徴とする貴金属の製造方法。

請求項7

請求項5乃至6のいずれかにおいて、前記電極が、ニッケルまたは白金から成る作用電極と、白金からなる参照電極から構成されていることを特徴とする貴金属の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、例えば、産業界で生ずる廃酸溶液中の金属(特に、貴金属高純度回収する方法に関する。さらに詳細には、本発明は、酸溶液から抽出剤を使って有機相に貴金属を抽出した後、有機相に抽出された金属を電解還元し、金属として回収する技術に関する。

背景技術

0002

従来、金属元素の分離技術として、溶媒抽出法クロマト分離法、沈殿法等が存在する。その中で、溶媒抽出法は多量の試料溶液の取り扱いが可能で、反応も早く、工業的に広く行われている。この方法では、抽出後の金属は水相に戻す「逆抽出」の操作を行い、取り扱いの容易な水溶液として処理する。即ち、正抽出で実施される水相と有機相、さらに逆抽出では別の水相が利用される。このように、溶媒抽出法は多くの水溶液や有機溶媒を利用することになり、2次廃棄物発生など問題視される場合がある。また、有用金属の再利用やコスト削減の観点から、所謂通常の産業界でも廃液中の金属を高純度化して回収するための研究開発が精力的に行われている。このように、目的元素を金属として回収する技術の開発が強く求められている。

0003

特許文献1や非特許文献1及び2に示されているように、溶媒抽出法と電解法を組み合わせることで、水溶液中の金属イオンを金属として単離し、回収することが可能となる。塩酸硝酸溶液中貴金属元素を容易に抽出でき、分配比の高いこれら金属(Pd,Ag,Os,Ir,Pt,Au,Hg)を対象元素とすることができる。

0004

特開2015−227780

先行技術

0005

Y. Sasaki, Y. Tsubata, Y. Kitatsuji, Y. Sugo, N. Shirasu, Y. Morita, T. Kimura, Solvent Extr. Ion Exch., 31, 401−415 (2013).
Y. Sasaki, K. Morita, M. Saeki, S. Hisamatsu and K. Yoshizuka, Hydrometallurgy 169 (2017) 576?584

発明が解決しようとする課題

0006

本発明の目的は、産業上排出される廃液中の金属を、従来技術よりも簡単なやり方で、高純度化して回収する方法を提供することにある。

0007

より具体的には、酸溶液中から目的の金属のみを分離回収し、利用する逆抽出の溶液をなくすことで、作業を簡略化し、有機相中の金属イオンをより高純度の金属として回収する方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0008

本発明の方法は、溶媒抽出法で金属を有機相に回収した後、前記有機相に電極を浸漬して、目的金属に対応する標準電極電位に基づいて前記電極への印加電圧を調整して電解反応を行い、前記目的金属を選択的に還元させて前記電極の表面に析出させる段階から成る。

発明の効果

0009

本発明によれば、まず溶媒抽出法で金属イオンを選択的に回収し、非抽出性元素と分離することができ、さらに電解還元により共抽出した金属イオンの中でも、還元可能な金属イオンのみを金属として回収することができる。また、有機溶媒は通常水を殆ど含んでおらず、水系電解での電位幅を規制する水素酸素発生が殆ど生じない。そのため、有機溶媒系電解は幅広い電位幅での電解が可能となる。

図面の簡単な説明

0010

溶媒抽出−有機相電解の概念図。
MIDOAによる塩酸溶液中のPd,Au,Ptをジクロロエタン相へ抽出した結果(分配比(D)の塩酸濃度依存性)を示す図。
MIDOAによる塩酸溶液中のPd,Au,Ptをジクロロエタン相へ抽出した結果(分配比(D)のMIOD濃度依存性)を示す図。
0.1M MIDOA/APにより抽出したPd(II)有機相のEQCM測定結果を示す図。
金属回収のフロー図。

実施例

0011

図1に溶媒抽出-有機相電解の概念図を示す。貴金属イオンを含む1M程度の塩酸や硝酸を含む溶解液を用いてMIDOAによる溶媒抽出を行う(ステップ101、102)。貴金属イオンを含む有機相に支持電解質を加えて、有機相電解を行う(ステップ103)。貴金属は電極に析出しそれを回収する。また、有機相は再度貴金属イオンの回収に利用する。

0012

以下に、本発明に係る回収法の一例として、Pdの回収に関しての条件を記す。
1.Pd抽出条件
Pdは比較的容易に溶媒抽出法で有機相に抽出できる。一例として、MIDOA(メチルイミノ-N,N’-ジオクチルアセトアミド)を有機相(アセトフェノンジクロロエタンオクタノール)に溶解した抽出溶媒を用いて抽出を行う。Pdを溶解した硝酸溶液や塩酸溶液から、MIDOAを含む有機相と振り混ぜることでPdを有機相に回収できる。なお、この溶媒抽出法を用いることで、Pd以外にはOs, Pt, Au, Hg, Irを有機相に回収できる。さらに、硫黄系の抽出剤、TDGAを用いることで、硝酸溶液中のAg, Au, Hgを有機相に回収できる。
2.有機相の電解
有機相中の金属イオンを電解にて還元析出するためには、まず、支持電解質を加えて有機相を電解できる電解質溶液にしなければならない。まず、有機相自体は誘電率の高いものを選ぶ必要があり、ここではアセトフェノン、ジクロロエタン、オクタノールを選択した。これ以外にも誘電率の高い溶媒(一例としてニトロベンゼンベンゾニトリル等)を利用することができる。次に有機相中の金属濃度を高めておく必要がある。そのため、水相側を5回入れ替え連続抽出を行うことで回収対象のPd(II)金属濃度を高めた有機相を電解浴として使用した。十分に高いPd濃度にしておくことで、電解後電解析出についての情報を得やすくする。

0013

電解系は次のように通常用いられる電解系を使用した。作用電極Ni基板を使用、対極側の導電性維持のため、対極はバイコールガラス(Vycor glass)を介して電解浴と同じ溶媒であるアセトフェノン、ジクロロエタンに0.1M TBAP(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)を溶解させた溶液、オクタノール溶媒に0.1M TBABF4(テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート)を溶解させた溶液を用いた。擬似参照電極として白金線(Pt)を使用した。なお、作用電極にはNiやPtのように金属製の電極が好ましい。理由はPdが金属として析出しやすいためである。(白金電極以外の参照電極では、0.01M AgNO3及び0.1M TBAPを含むアセトニトリル溶媒中に銀線を浸漬させた構造の非水溶液系参照電極(Ag+/Ag)が好ましい)
3. Pd(II)の電気化学挙動
金属の電解析出の一例として、ここではPdの還元に注目した。有機相からPdを電解するためには、Pd(II)の酸化還元挙動を把握しておく必要がある。ここでは、電気化学水晶振動子マイクロバランス(Electrochemical Quartz Crystal Microbalance,EQCM)法」を適用した。EQCM法は作用極上の電析物の微量な重量変化を追跡することができる。この実験を行うことで、どの電位でPdを効率よく電解還元できるかを知ることができ、電解後のPd析出量を重量として把握することができる。

0014

単位面積当たり水晶表面への質量付加:mによって生じる周波数変化:Δfmは、質量変化:Δmに比例し、以下のSauerbreyの式によって表される。

0015

0016

ここでf0:共振周波数、A:電極の表面積(1.9635×10-5 m2)、μq:水晶剪断弾性率(2.947×1010 kg m-1 s-2)、ρq:水晶の密度(2.648×103 kg m-3)である。また、質量変化に伴う周波数変化:Δfm以外にも、電極近傍電解液の粘度:ηと密度:ρが寄与するΔfηρがあり、実際の周波数変化:ΔfはΔfmとれΔfηρの和で以下の様に表される。

0017

0018

0019

式(1)〜(3)より、質量変化に伴う周波数変化:Δfmは、全体の周波数変化:Δfから分離できる。最終的にΔfmを算出した後、式(1)よりΔmに変換して、電極界面における微量の重量変化からPd(II) + 2e− → Pd(0)の還元反応に必要な過電圧を評価できる。
4.Pdの電解析出
有機相中のPdイオンの電解析出を行った。過電圧は-2.5 V、電解時間は12時間である。総電気量はアセトフェノン(AP)系で39.47,ジクロロエタン(DCE)系で16.10,オクタノール(OC)系で27.93クーロンである。析出量は理論析出量に対して、94.2% (AP)、87.8%(DCE)、72.7%(OC)であった。よりよい電解条件として、高電流密度にて確実な電析を実施する観点から過電圧は-2.0 V以下、電解時間は10時間以上、である。以上、本技術で有機相中のPdイオンの電解析出が可能であることが分かった。
5.その他の金属
電解析出しやすい金属は標準電極電位があまり卑な金属でないものが該当する。前述の金属の中では、Au(標準電極電位 1.68 V)、Pt (1.2V)、Ir (1.00 V)、Ag (0.8 V)、Hg (0.789 V), Os (0.687 V)がPdの電位(0.83 V)に近く、電解還元析出しやすいと言える。
<実施例1>(Pd, Pt, Auの溶媒抽出)
水相に金属を含んだ塩酸、有機相に0.1MMIDOAを溶解したジクロロエタンを用いて、Pd, Pt, Auの抽出実験を行った。結果を図2図3に示す。図は各金属の分配比と塩酸(図2)、又はMIDOA(図3)濃度の関係を示している。なお、分配比(D)は有機相中の金属濃度を水相中のそれで割った比を表す。図2よりPd, Pt, Auの分配比は実験に使ったいずれの濃度条件でおよそ100に近い数字である。このことは一度の抽出で99%程度の金属を回収できることを示す。図3より、抽出のされやすさは、Au > Pd > Ptであることがわかる。またこの結果から、分配比およそ100を示すMIDOA濃度条件はAuで1mM、Pd: 10mM, Ptで100mM程度である(塩酸濃度は1M)。

0020

以上の結果から、抽出の条件として、0.01M 以上の濃度のMIDOAを溶解したジクロロエタンで、0.2から6.4Mまでの塩酸溶液の条件で、有機相への金属抽出が可能である。より好ましい条件としては、0.01-1Mの濃度のMIDOAを溶解するジクロロエタンを代表とする極性の高い溶媒(例えば、アセトフェノン、ニトロベンゼン、オクタノール、ベンゾニトリル等)に溶解した抽出溶媒で、酸濃度は塩酸0.5-5Mが望ましい。
<実施例2> (連続抽出によるPd電解用有機相の調製)
水相には1000ppmの濃度(酸濃度:1.0mol/L HCl)で[PdCl4]2-を含有する溶液9.0mLを使用した。有機相に0.1M MIDOAの抽出剤を含む3種類の希釈剤(アセトフェノン:APと略記、1,2-ジクロロエタン:DCEと略記、1-オクタノール:OCと略記)を各3.0mL使用した。連続抽出は水相側を5回入れ替える方法とした。各回の抽出条件はdirect mixerにより3000rpm, 5min, 25℃の条件下で行った。各回の水相濃度をICP-AESにより定量分析を行うことで分配比、抽出率を算出し、有機相中のPd(II)濃度、Pd金属量を決定した。3種類の希釈剤に対する抽出率、Pd(II)濃度、Pd金属量の結果を表1及び表2に示す。

0021

0022

表1より、0.1MMIDOAを用いて、1000 ppmのPdを有機相に定量的に抽出可能であることを示す。OCには80%程度の回収であるが、抽出回数を重ねることで、より多くのPdを有機相に取り込むことができる。表1中の結果から、抽出の回数を重ねることで、一度の抽出による抽出量は減少するが、これは有機相への飽和金属量に近くなるためである。

0023

0024

表2より、それぞれ抽出後の有機相中の金属量を示す。5回の抽出を重ねることで、AP中に97.6mM、DCE中に84.4mM、OC中に58.9mMのPdを取り込むことができる。
<実施例3> (過電圧評価のための電気化学水晶振動子マイクロバランス測定)
作用極に基準周波数:9.000MHzのPt水晶振動子を使用した。対極及び擬似参照極には白金線を使用した。擬似参照極の電位はFc/Fc+の電位で校正した。電解浴は<実施例2>で行った5回のPd連続抽出を行った有機相の中でアセトフェノンを対象とした。アセトフェノンがニュートン流体に準じた挙動を示す場合、25℃でのアセトフェノンの密度:1.617×10-3 [kg m-1 s-1] と粘度:1.03×103 [kg m-3]から共振周波数:Δfと共振抵抗:ΔRの理論値はΔf=-2460[Hz],ΔR=395.2[Hz]と計算される。本実験系でのEQCM測定ではΔf=-2895[Hz], ΔR=469.2[Hz]であり、理論値から想定できる範囲内であることを確認した。また、電気機械結合定数:k[-]=0.022±0.004の範囲内であり、有機溶媒系でEQCM測定する際に適切であることを確認した。電位走査初期電位:0Vから掃引を行い、電位:-3.0〜+2.5Vの範囲内において、走査速度:0.05V s-1の条件にて6サイクル実施した。希釈剤としてAPを用いた場合の電流−電位曲線、電極界面での重量変化及びηρの変化を図4の(a)-(c)に示す。

0025

図4の(a)から明らかなように初期電位0Vから陰極側に掃引した時、-1.0〜-1.5V付近で緩やかな還元ピークを生じた後、還元電流の更なる増加が観測された。ここで、図4の(b)から明らかなように-1.0V付近からΔmの上昇が観測された。また、図4の(c)から明らかなように-1.0V付近からΔηρの減少が観測された。すなわち、電極界面においてPd(II)+2e−→Pd(0)の還元反応に基づいて、Pd(0)金属が析出したことを示唆している。また、電極界面での局所的なPd(II)の濃度減少により、Δηρの低下も観測された。電位をさらに還元側に掃引することで、Δmの更なる上昇とΔηρの低下が観測されており、電極界面におけるPd(0)金属の析出量増加と局所的なPd(II)の濃度減少が見受けられた。以上のことから、本実験において有機相のPdの電解還元が可能であること、及びPdの還元電位について、Pd(II)+2e−→Pd(0)の還元反応では過電圧:-1.0V以下が必要であることが明らかとなった。
<実施例4> (有機相からのPd電解及び電析物評価)
<実施例2>により5回連続抽出した有機相を電解浴として使用した。作用極にNi基板(電極面積:12.0cm2)を使用した。対極はVycor glassを介して所定の電解質を溶解させた溶液に白金線を浸漬させた構造とした。対極側の導電性維持のため、電解浴と同じ溶媒であるAP,DCEに0.1M TBAPを溶解させた溶液、OCに0.1M TBABF4(アセトニトリル1.0mL含む)を溶解させた溶液を用いた。擬似参照電極として白金線を使用した。電解手法は定電位電解として過電圧:-2.5Vに設定した。希釈剤としてAPを使用した場合は、Pd(II)が拡散律速過程で進行する理想的な電流曲線が得られた。各電析媒体に対する平均電流密度は76.2μA cm-2(AP), 31.1μA cm-2(DCE), 53.9μA cm-2(OC)であった。また、電解時間は12時間であり、各電流曲線から算出した総電気量は39.47C (AP), 16.10C (DCE), 27.93C (OC)であった。電析前後での基板重量の変化から算出した電流効率を表3に示す。

0026

0027

APを用いた場合のPd回収量は20.5 mgで電流効率としては、94.2%になる。DCEを用いた場合はPd回収量 7.87 mg、電流効率は87.8%、OCの場合はPd回収率11.2 mg、電流効率は72.7%となった。電析物はSEM/EDX, XPS及びXRDによりPd金属であることを確認した。OCを用いた場合は電析物の落下が見られ、これが効率を減少させた原因と思われる。APを電析媒体として使用した場合、高電流効率であり、理想的な電解が可能であった。いずれの溶媒を用いてもPdの電析は可能であるが、最も良い条件はAPを用いた場合になる。さらに今回は電解電位を-2.5Vに設定したが、<実施例3>の結果から-1.0から-3.0 Vで電解還元は可能である。電解時間は今回は12時間としたが、1時間〜42時間が好ましい電解時間である。比誘電率が10.0以上、粘性7.288mPa・s以下の有機相媒体に対して、-1.0V以下の電解条件ではPdを電解析出可能である。より好ましい条件としては比誘電率10.5〜17.4、粘性0.840〜1.681mPa・sの有機相媒体に対して、-1.0V以下の電解条件である。
<実施例5> (連続抽出によるPt電解用有機相の調製)
水相には1000ppmの濃度(酸濃度:1.0mol/L HCl)で[PtCl6]2-を含有する溶液16.0mLを使用した。有機相に0.1MMIDOAの抽出剤を含む3種類の希釈剤を各4.0mL使用した。連続抽出は水相側を5回入れ替える方法とした。各回の抽出条件はdirect mixerにより3000rpm, 5min, 25℃の条件下で行った。各回の水相濃度をICP-AESにより定量分析を行うことで分配比、抽出率を算出し、有機相中のPt(IV)濃度、Pt金属量を決定した。3種類の希釈剤に対する抽出率、Pt(IV)濃度、Pt金属量の結果を表4及び表5に示す。

0028

0029

表4より、0.1MMIDOAを用いて、1000 ppmのPtを有機相に定量的に抽出可能であることを示す。OCには80%程度の回収であるが、抽出回数を重ねることで、より多くのPtを有機相に取り込むことができる。表4中の結果から、抽出の回数を重ねることで、一度の抽出による抽出量は減少するが、これは有機相への飽和金属量に近くなるためである。

0030

0031

表5より、それぞれ抽出後の有機相中のPt金属量を示す。5回の抽出を重ねることで、AP中に46.9mM、DCE中に50.1mM、OC中に27.6mMのPtを取り込むことができる。
<実施例6> (有機相からのPt電解及び電析物評価)
<実施例5>により5回連続抽出した有機相を電解浴として使用した。作用極にCu基板(電極面積:12.0cm2)を使用した。対極はVycor glassを介して所定の電解質を溶解させた溶液に白金線を浸漬させた構造とした。対極側の導電性維持のため、電解浴と同じ溶媒であるAP, DCEに0.1M TBAPを溶解させた溶液を用いた。擬似参照電極として白金線を使用した。電解手法は定電位電解として過電圧:-2.5Vに設定した。希釈剤としてDCEを使用した場合は、拡散律速過程で進行する比較的理想的な電流曲線が得られた。また、電解時間は12時間であり、各電流曲線から算出した総電気量は10.56C (AP), 15.26C (DCE)であった。電析前後での基板重量の変化から算出した電流効率を表6に示す。

0032

0033

APを用いた場合、Pt回収量は4.2 mgで電流効率は78.7%になる。Pt(IV)の還元過程は、電気化学測定により、Pt(IV)+2e−→Pt(II),Pt(II)+2e−→Pt(0)の二段階で進行することが判明しているため、電流効率は4電子反応で計算した。DCEを用いた場合はPt回収量 6.5 mg、電流効率は84.3%、DCEを電析媒体として使用した場合、比較的高い電流効率であり、理想的な電解が可能であった。いずれの溶媒を用いてもPtの電析は可能であるが、最も良い条件はDCEを用いた場合になる。電析物はSEM/EDX及びXRDによりPt金属であることを確認した。比誘電率が10.0以上、粘性7.288mPa・s以下の有機相媒体に対して、-1.5V以下の電解条件ではPtを電解析出可能である。より好ましい条件としては比誘電率10.5〜17.4、粘性0.840〜1.681mPa・sの有機相媒体に対して、-1.5V以下の電解条件である。
<実施例7> (連続抽出によるAu電解用有機相の調製)
水相には1000ppmの濃度(酸濃度:1.0mol/L HCl)で[AuCl4]-を含有する溶液16.0mLを使用した。有機相に0.1MMIDOAの抽出剤を含む3種類の希釈剤を各4.0mL使用した。連続抽出は水相側を5回入れ替える方法とした。各回の抽出条件はdirect mixerにより3000rpm, 5min, 25℃の条件下で行った。各回の水相濃度をICP-AESにより定量分析を行うことで分配比、抽出率を算出し、有機相中のAu(III)濃度、Au金属量を決定した。3種類の希釈剤に対する抽出率、Au(III)濃度、Au金属量の結果を表7及び表8に示す。

0034

0035

表7より、0.1MMIDOAを用いて、1000 ppmのAuを有機相に定量的に抽出可能であることを示す。AP,DCE, OCいずれにおいても97%以上の回収ができ、抽出回数を増加させることで、より多くのAuを有機相に取り込むことができる。

0036

0037

表8より、それぞれ抽出後の有機相中のAu金属量を示す。5回の抽出を重ねることで、AP中に76.1mM、DCE中に76.2mM、OC中に75.4mMのAuを取り込むことができる。
<実施例8> (有機相からのAu電解及び電析物評価)
<実施例7>により5回連続抽出した有機相を電解浴として使用した。作用極にCu基板(電極面積:12.0cm2)を使用した。対極はVycor glassを介して所定の電解質を溶解させた溶液に白金線を浸漬させた構造とした。対極側の導電性維持のため、電解浴と同じ溶媒であるAP, DCEに0.1M TBAPを溶解させた溶液を用いた。擬似参照電極として白金線を使用した。電解手法は定電位電解として過電圧:-2.5Vに設定した。希釈剤としてDCEを使用した場合は、拡散律速過程で進行する比較的理想的な電流曲線が得られた。また、電解時間は12時間であり、各電流曲線から算出した総電気量は7.68C (AP), 9.85C (DCE)であった。電析前後での基板重量の変化から算出した電流効率を表9に示す。

0038

0039

APを用いた場合、Au回収量は3.9 mgで電流効率は74.6%になる。DCEを用いた場合はAu回収量 5.6 mg、電流効率は83.5%、DCEを電析媒体として使用した場合、比較的高い電流効率であり、理想的な電解が可能であった。いずれの溶媒を用いてもAuの電析は可能であるが、最も良い条件はDCEを用いた場合になる。電析物はSEM/EDX及びXRDによりAu金属であることを確認した。比誘電率が10.0以上、粘性7.288mPa・s以下の有機相媒体に対して、-1.0V以下の電解条件ではAuを電解析出可能である。より好ましい条件としては比誘電率10.5〜17.4、粘性0.840〜1.681mPa・sの有機相媒体に対して、-1.0V以下の電解条件である。

0040

最後に本方法を利用して金属を回収するためのフローを図5に示す。

0041

最初に、貴金属などの金属イオンを含む塩酸系液(水相)か塩酸+硝酸の混酸系液(水相)を準備する(ステップ501)。また、MIDOAを溶解したジクロロエタン、アセトフェノンなどの有機溶媒液(有機相)を準備する(ステップ502)。次に、水相と有機相を振り混ぜ、溶媒抽出を行う(ステップ503)。次に、水相と有機相を相分離させ、貴金属の無い酸は再び貴金属の溶解液として利用し(ステップ504)、残った有機相に支持電解質を加えて電解溶液として利用する(ステップ505、506)。そして、有機相電解を実施する(ステップ507)。その後、電極に析出した貴金属を回収する(ステップ508)。回収は、例えば電極上の生成物を電極から脱離させ、洗浄後乾燥処理して行うことができる。必要な場合には、着脱可能な電極を使用して、電極ごと外部に取り出してから、適切な手段で生成物を電極から脱離させても良い。貴金属の無くなった有機相は再び溶媒抽出に利用する(ステップ509)。

0042

101…溶解液の準備段階
102…溶媒抽出の段階
103…有機相の電解段階

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • アサヒプリテック株式会社の「 フレーム及び電解装置」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】カソードの両端部における金属の異常析出を抑制可能な、アノード用のフレーム、及び、該フレームを備える電解装置を提供する。【解決手段】フレームは、下面部と、第1側面部と、第2側面部とを備えている。... 詳細

  • 日本製鉄株式会社の「 焼結鉱の製造方法」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】焼結鉱の歩留の向上を目的とする。【解決手段】鉄鉱石、石灰石、MgO含有副原料、炭材および返鉱を配合した焼結原料を造粒処理して下方吸引式焼結機のパレットに偏析装入し、焼成する焼結鉱の製造方法にお... 詳細

  • 住友金属鉱山株式会社の「 ニッケル酸化鉱石の湿式製錬において発生する貧液の中和処理方法」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】 ニッケル酸化鉱石の湿式製錬において発生する貧液の量が多くなっても中和剤の消費量を抑えつつ該貧液を効率よく中和処理する方法を提供する。【解決手段】 鉄、マグネシウム、及びマンガンのうちのい... 詳細

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ