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※この項目の情報は公開日時点(2020年9月24日)のものです。
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概要
背景
近年、ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒の発生が一年を通じて多発しており、特に11月から3月が発生のピークとなっている。ノロウイルスは、カリシウイルス科、ノロウイルス属に分類されるエンベローブを持たないRNAウイルスであり、アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、逆性石鹸、熱、酸性(胃酸等)、乾燥等に対して強い抵抗力を有する。ノロウイルスの潜伏期間は1〜2日であると考えられており、嘔気、嘔吐、下痢の主症状が出るが、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛、倦怠感等を伴うこともある。
ノロウイルスの感染経路の一つとして経口感染が知られており、ノロウイルスに汚染された食物や水等を経口摂取することにより感染が成立する。そのため、飲食店、給食施設、工場など食品を調理加工する場においては、食物や水、設備等がノロウイルスに汚染されないようにすることが求められている。
ノロウイルスは、10個から100個程度という少量を摂取することによっても発症するほど高い感染力を有する。そのため、ノロウイルスに対して直接的に作用し、ノロウイルスの感染能力を低下又は消失させる、抗ノロウイルス剤が望まれる。
厚生労働省によると、ノロウイルスを不活化するには、調理器具等に対して、85℃で1分間の加熱、200ppmの次亜塩素酸ナトリウムでの消毒を推奨している(非特許文献1参照)。しかしながら、加熱によるノロウイルスの不活性化には、対象物の耐熱性の問題があり、また、次亜塩素酸ナトリウムは強い金属腐食性を有するために使用が制限される場合がある。さらに、調理場など有機物汚れの多い場所では、次亜塩素酸ナトリウムが分解し、十分な効果の得られないことも想定される。
さらに、次亜塩素酸ナトリウムは、皮膚や粘膜を侵す危険性があることから、人体への適用は難しく、さらに、酸と反応して有毒ガスが発生するなど、取り扱いや使用に際し注意が必要である。かかる状況下において、取り扱いが簡便で、次亜塩素酸ナトリウムが使用できない場合でも、十分な不活化効果を発揮し得る抗ノロウイルス剤が強く求められている。
人体に対し安全にノロウイルス等を不活性化する方法として、食物由来のウイルス不活性化物質を使用する方法が検討されている。
例えば特許文献1には、タンニンを含有するカキノキ属の植物の抽出物を、エタノールと混合した組成物とし、この組成物を用いることによりノロウイルス等を不活性化できることが示されている。
また、例えば特許文献2には、ブドウ種子抽出物のプロアントシアニジンを所定量含む殺ノロウイルス剤が記載されている。
概要
優れた抗ノロウイルス効果を有しており、かつ、淡色であり対象物の外観を損ねにくい、抗ノロウイルス剤の提供。リンゴポリフェノールを0.005質量%以上含む、抗ノロウイルス剤。なし
目的
本発明は、優れた抗ノロウイルス効果を有しており、かつ、淡色であり対象物の外観を損ねにくい抗ノロウイルス剤を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
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請求項1
リンゴポリフェノールを0.005質量%以上含む、抗ノロウイルス剤。
請求項2
前記リンゴポリフェノールの濃度が、0.005質量%以上0.4質量%以下の範囲である、請求項1に記載の抗ノロウイルス剤。
請求項3
濃度30質量%以上のエタノール水溶液中に前記リンゴポリフェノールが含まれている、請求項1又は2に記載の抗ノロウイルス剤。
請求項4
請求項5
前記リンゴポリフェノールが、リンゴエキスとして含有されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗ノロウイルス剤。
請求項6
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗ノロウイルス剤を含む、消毒剤。
請求項7
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗ノロウイルス剤を含む、洗浄剤。
技術分野
背景技術
0002
近年、ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒の発生が一年を通じて多発しており、特に11月から3月が発生のピークとなっている。ノロウイルスは、カリシウイルス科、ノロウイルス属に分類されるエンベローブを持たないRNAウイルスであり、アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、逆性石鹸、熱、酸性(胃酸等)、乾燥等に対して強い抵抗力を有する。ノロウイルスの潜伏期間は1〜2日であると考えられており、嘔気、嘔吐、下痢の主症状が出るが、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛、倦怠感等を伴うこともある。
0003
ノロウイルスの感染経路の一つとして経口感染が知られており、ノロウイルスに汚染された食物や水等を経口摂取することにより感染が成立する。そのため、飲食店、給食施設、工場など食品を調理加工する場においては、食物や水、設備等がノロウイルスに汚染されないようにすることが求められている。
0004
ノロウイルスは、10個から100個程度という少量を摂取することによっても発症するほど高い感染力を有する。そのため、ノロウイルスに対して直接的に作用し、ノロウイルスの感染能力を低下又は消失させる、抗ノロウイルス剤が望まれる。
0005
厚生労働省によると、ノロウイルスを不活化するには、調理器具等に対して、85℃で1分間の加熱、200ppmの次亜塩素酸ナトリウムでの消毒を推奨している(非特許文献1参照)。しかしながら、加熱によるノロウイルスの不活性化には、対象物の耐熱性の問題があり、また、次亜塩素酸ナトリウムは強い金属腐食性を有するために使用が制限される場合がある。さらに、調理場など有機物汚れの多い場所では、次亜塩素酸ナトリウムが分解し、十分な効果の得られないことも想定される。
0006
さらに、次亜塩素酸ナトリウムは、皮膚や粘膜を侵す危険性があることから、人体への適用は難しく、さらに、酸と反応して有毒ガスが発生するなど、取り扱いや使用に際し注意が必要である。かかる状況下において、取り扱いが簡便で、次亜塩素酸ナトリウムが使用できない場合でも、十分な不活化効果を発揮し得る抗ノロウイルス剤が強く求められている。
0009
また、例えば特許文献2には、ブドウ種子抽出物のプロアントシアニジンを所定量含む殺ノロウイルス剤が記載されている。
先行技術
0011
厚生労働省ホームページ「ノロウイルスに対するQ&A」;https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html#04
発明が解決しようとする課題
0012
前記の通り、特許文献1には、タンニンを含有するカキノキ属の植物の抽出物と、エタノールとを含む組成物によって、ノロウイルス等を不活性化できることが示されている。しかしながら、この組成物は褐色を有しており、消毒対象物の外観を損ねるという問題を有している。
0013
特許文献2の殺ノロウイルス剤は、優れた殺ノロウイルス効果を有している。しかしながら、この殺ノロウイルス剤でも、使用態様によっては褐色を有しており、例えば白色や透明の消毒対象物(例えば、食器、調理器具、加工装置、コンベア、布類など)に適用すると、消毒対象物の外観を損ねる虞があるという問題があり、さらなる改善が求められる。
0014
このような状況下、本発明は、優れた抗ノロウイルス効果を有しており、かつ、淡色であり対象物の外観を損ねにくい抗ノロウイルス剤を提供することを主な目的とする。また、本発明は、当該抗ノロウイルス剤を用いた消毒剤及び洗浄剤を提供することも目的とする。
課題を解決するための手段
0015
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、リンゴポリフェノールを抗ノロウイルス剤に用いることにより、優れた抗ノロウイルス効果を示し、かつ、淡色であり対象物の外観を損ねにくいことを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成したものである。
0016
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.リンゴポリフェノールを0.005質量%以上含む、抗ノロウイルス剤。
項2. 前記リンゴポリフェノールの濃度が、0.005質量%以上0.4質量%以下の範囲である、項1に記載の抗ノロウイルス剤。
項3. 濃度30質量%以上のエタノール水溶液中に前記リンゴポリフェノールが含まれている、項1又は2に記載の抗ノロウイルス剤。
項4.CIE1976 L*a*b*色空間において、濃度95容量%エタノール水溶液との色差ΔEが、10.00未満である、項1〜3のいずれか1項に記載の抗ノロウイルス剤。
項5. 前記リンゴポリフェノールが、リンゴエキスとして含有されている、項1〜4のいずれか1項に記載の抗ノロウイルス剤。
項6. 項1〜5のいずれか1項に記載の抗ノロウイルス剤を含む、消毒剤。
項7. 項1〜5のいずれか1項に記載の抗ノロウイルス剤を含む、洗浄剤。
発明の効果
0017
本発明によれば、優れた抗ノロウイルス効果を示し、かつ、淡色であり対象物の外観を損ねにくい抗ノロウイルス剤を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該抗ノロウイルス剤を用いた消毒剤及び洗浄剤を提供することもできる。
0018
以下、本発明の抗ノロウイルス剤、及びこれを用いた消毒剤、洗浄剤について、詳述する。なお、本明細書において、「〜」で結ばれた数値は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「〜」で結ぶことができるものとする。
0019
本発明の抗ノロウイルス剤は、リンゴポリフェノールを0.005質量%以上含むことを特徴としている。本発明の抗ノロウイルス剤は、リンゴポリフェノールを所定量含んでいることにより、優れた抗ノロウイルス効果を示し、かつ、淡色であり対象物の外観を損ねにくいという優れた効果を発揮する。
0020
本発明の抗ノロウイルス剤においては、リンゴポリフェノールが有効成分として含まれている。本発明の抗ノロウイルス剤においては、リンゴポリフェノールはリンゴ由来であり、ノロウイルスの不活性化作用が高く、人体に対して安全にノロウイルスを不活性化し得る。
0021
リンゴポリフェノールは、リンゴエキスであり、例えばリンゴの果皮、果実、又はこれらの混合物の抽出物(ポリフェノール画分)である。本発明の抗ノロウイルス剤において、リンゴポリフェノールは、リンゴエキスとして好適に含有することができる。
0022
リンゴエキスの抽出溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ピリジン類等の有機溶媒が挙げられる。これらの抽出溶媒は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、水、アルコール(例えばエタノール)、含水アルコール(例えば含水エタノール)などが有効である。すなわち、リンゴエキスは、リンゴの水抽出物、アルコール抽出物、又は含水アルコール抽出物であることが好ましい。リンゴエキスは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
0023
本発明の抗ノロウイルス剤は、リンゴポリフェノールを所定量含んでいればよく、リンゴポリフェノールは市販品が容易に入手可能である。市販品としては、フロンティアフーズ株式会社の商品名「リンゴポリフェノール粉末」、BGG Japan株式会社の商品名「ApplePhenon(登録商標)アップルフェノンSH」、「ApplePhenon(登録商標)アップルプロシアニジン」、「ApplePhenon(登録商標)アップルフェノンC−100」、株式会社アクセスワンの商品名「リンゴポリフェノール」、ヴィディヤジャパン株式会社「アップルエキス末」などが挙げられる。
0024
リンゴポリフェノールとして、色のより薄いものを使用すると、本発明の抗ノロウイルス剤をより淡色にすることができる。本発明の抗ノロウイルス剤をより淡色にする観点からは、リンゴポリフェノールは、リンゴの未熟果実や青リンゴの果皮、果実、又はこれらの混合物の抽出物であることが好ましい。
0025
リンゴポリフェノールに含まれる成分としては、プロシアニジン類(縮合型タンニン類)、(+)−カテキンや(−)エピカテキン等の単純カテキン類、フロリジン系(カルコン)のフラボノイド類、クロロゲン酸を主体とするフェノール酸類等が挙げられ、これらの中でも、プロシアニジン類が主成分(例えば、総ポリフェノールの50質量%以上)であることが知られている。
0026
本発明の抗ノロウイルス剤は、リンゴポリフェノールを0.005質量%以上含めばよいが、抗ノロウイルス効果と淡色とを好適にさせる観点から、好ましくは0.005〜0.4質量%、より好ましくは0.008〜0.3質量%、さらに好ましくは0.01〜0.2質量%、とくに好ましくは0.015〜0.15質量%である。
0027
本発明の抗ノロウイルス剤は、抗ノロウイルス効果と淡色とを好適にさせる観点から、CIE1976 L*a*b*色空間において、濃度95容量%エタノール水溶液との色差ΔEが、10.00未満であることが好ましく、5.00未満であることが特に好ましい。濃度95容量%エタノール水溶液との色差ΔEが5.00≦ΔE<10.00であると、薄く色がついているが淡色であり、対象物が白色や無色であっても外観を損ねにくく、ΔE<5.00であると、抗ノロウイルス剤は極めて淡色であり、肉眼ではほぼ無色透明と認識されるため、対象物が白色や無色であっても外観を損ねる虞はほぼない。
0028
本発明の抗ノロウイルス剤が不活性化の対象とするノロウイルスは、ヒトノロウイルス(HNV)、ネコカリシウイルス(FCV)、及びマウスノロウイルス(MNV)の少なくとも1種であり、ヒトノロウイルスを特に好適な不活性化の対象とすることができる。
0029
本発明の抗ノロウイルス剤は、リンゴポリフェノールに加えて、水及び極性有機溶媒の少なくとも一方をさらに含むことが好ましい。
0030
極性有機溶媒としては、本発明の効果を阻害しないものであれば、特に制限されないが、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。また、本発明の抗ノロウイルス剤は、特にエタノール水溶液を含んでいることが好ましい。すなわち、本発明の抗ノロウイルス剤は、リンゴポリフェノールがエタノール水溶液に含まれるものであることが特に好ましい。
0031
例えば、本発明の抗ノロウイルス剤を消毒剤や洗浄剤として用いる場合であれば、エタノール水溶液におけるエタノールの濃度は、下限については約30質量%以上、範囲としては約30質量%〜約60質量%が最適である。
0032
ノロウイルスに対する不活性化作用を高める観点から、本発明の抗ノロウイルス剤のpHは、2.0〜10.0の範囲であることが好ましく、2.5〜7.0の範囲であることがより好ましい。
0033
本発明の抗ノロウイルス剤におけるpHの調整は、公知のpH調整剤や緩衝液により行うことができる。pH調整剤としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;酢酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、りん酸、安息香酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ソルビン酸、アジピン酸、けい皮酸、イタコン酸、フェルラ酸、フィチン酸等の有機酸およびこれらの塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩などが挙げられる。また、緩衝液としては、リン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、乳酸緩衝液などが挙げられる。
0034
また、本発明の抗ノロウイルス剤には、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、特に制限されず、公知の抗ウイルス剤で使用され得る添加剤を本発明でも使用することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、アミノ酸などが挙げられる。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、本発明の抗ノロウイルス剤に添加剤が含まれる場合、その濃度としては、本発明の効果を阻害しないことを限度として、特に制限されず、例えば0.001〜4.0質量%程度が挙げられる。
0035
酸化防止剤としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸りん酸エステルマグネシウム塩、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビン酸ナトリウム、D−アスコルビン酸、D−アスコルビン酸ナトリウム、L−システイン、N−アセチルL−システイン、シスチン、グルタチオン(酸化型)、グルタチオン(還元型)、L−エルゴチオネイン、チオクト酸、フェルラ酸、エデト酸塩、没食子酸プロピル、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、二酸化硫黄、コーヒー豆抽出物(クロロゲン酸)、緑茶抽出物(カテキン)、ローズマリー抽出物、ヤマモモ抽出物、アムラ抽出物、酵母エキスなどが挙げられる。酸化防止剤が含まれることにより、本発明の抗ノロウイルス剤の酸化による着色を抑制することができる。
0036
アミノ酸としては、L−フェニルアラニン、L−メチオニン、L−イソロイシン、L−アラニン、DL−アラニン、L−セリン、L−システイン、L−アルギニン、L−リシン、L−バリン、L−グリシン、L−テアニン、L−トレオニン、L−プロリン、L−ヒスチジン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−ロイシン、L−トリプトファン、L−オルニチン、L−シトルリン、L−チロシン、L−カルニチンおよびこれらの塩などが挙げられる。アミノ酸が含まれることにより、本発明の抗ノロウイルス剤のpH調整を行うことができ、また、酸化による着色を抑制することができる。
0037
本発明の抗ノロウイルス剤には、本発明の特徴を損なわない範囲で、アシクロビル等の一般的な抗ウイルス成分、フェノキシエタノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール等の一般的な抗菌成分を含有させることもできる。
0038
また、一般細菌に対する除菌力を増強するため、グリセリン脂肪酸エステルを加えても、ノロウイルスに対する不活性化作用には影響しないため、問題はない。グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノカプリン酸エステル、グリセリンモノラウリン酸エステル、グリセリンモノミリスチン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノイソステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、グリセリンモノベヘン酸エステル等のグリセリンモノ脂肪酸エステル;グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンジイソステアリン酸エステル、グリセリンジオレイン酸エステル等のグリセリンジ脂肪酸エステル;酢酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド等のモノグリセリド誘導体などが挙げられる。本発明においては、これらより1種または2種以上を選択して用いることができる。一般細菌に対する除菌力増強効果からは、グリセリンモノカプリル酸エステル、グリセリンモノカプリン酸エステル、グリセリンモノラウリン酸エステル等、炭素数8〜12の脂肪酸のグリセリンモノ脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
0039
さらに本発明の抗ノロウイルス剤には、ノロウイルスの不活性化や組成物の安定性等に影響を与えない範囲において、洗浄性や起泡性の付与を目的として、上記グリセリン脂肪酸エステル以外の界面活性剤を添加することができる。かかる界面活性剤としては、第1級〜第3級の脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン等のアルキルベタイン型、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸等のアミノカルボン酸型、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン等のアルキルスルホベタイン型、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型両性界面活性剤などを用いることができる。また、増泡、製剤安定性の向上、着香等を目的として、アラビアゴム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸塩等の金属イオン封鎖剤;塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩;香料などを添加してもよい。
0040
本発明の抗ノロウイルス剤は、そのまま、または各種担体、他の界面活性剤、殺菌剤等の添加成分などを加えて、消毒剤または洗浄剤(殺菌洗浄剤)とすることができる。すなわち、本発明の消毒剤及び洗浄剤は、それぞれ、本発明の抗ノロウイルス剤を含む。
0041
本発明の消毒剤または洗浄剤は、液状、ゲル状、粉末状等の種々の形態で提供することができるが、短時間に広範囲の消毒対象物に作用させる上で、液状とすることが好ましい。液状の消毒剤または洗浄剤は、ローション剤、スプレー剤等として提供することができ、計量キャップ付きボトル、トリガータイプのスプレー容器、スクイズタイプもしくはディスペンサータイプのポンプスプレー容器等に充填し、散布または噴霧等して用いることができる。
0042
本発明の消毒剤または洗浄剤は、病室、居室、調理室、浴室、洗面所、トイレ等の施設内の消毒、殺菌洗浄、テーブル、椅子、寝具等の家具類、食器、調理器具、医療用品等の器具または機器、装置などの消毒、殺菌洗浄など、ノロウイルスが存在する可能性のある場所、またはノロウイルスに汚染されている可能性のある物の消毒、殺菌洗浄などに幅広く用いることができる。
0043
本発明の消毒剤または洗浄剤は、消毒対象物の表面がまんべんなく濡れる程度の量を用いればよい。また、消毒対象物に対する本発明の消毒剤または洗浄剤の作用時間は短時間でよく、1分〜5分で十分な消毒または殺菌洗浄効果を得ることができる。
0044
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。なお、表1中の各成分の「%」は特に記載のない限り、質量%を意味する。実施例及び比較例で使用した各成分の詳細は以下の通りである。
0045
・リンゴポリフェノールA:フロンティアフーズ株式会社の商品名「リンゴポリフェノール粉末」(総ポリフェノール量98質量%以上)
・リンゴポリフェノールB:株式会社アクセスワンの商品名「リンゴポリフェノール」(総ポリフェノール量70質量%以上)
・リンゴポリフェノールC:ヴィディヤジャパン株式会社の商品名「アップルエキス末」(ポリフェノール75%)
・ブドウ種子抽出物:キッコーマンバイオケミファ株式会社の商品名「グラヴィノールT」(プロアントシアニジン含有量29質量%)
・カキエキス:株式会社トミヤマの商品名「柿タンニン」
・硫酸マグネシウム:富士フイルム和光純薬株式会社の商品名「硫酸マグネシウム(無水)」
0046
<実施例1〜6及び比較例1〜5>
表1に示す組成となるようにして、各成分を混合して、混合して抗ノロウイルス剤を調製した。
0047
<ノロウイルスの不活性化評価>
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた各ノロウイルス剤を用いて、それぞれ、ヒトノロウィルス(HNV)遺伝子の消失を以下の手順で確認し、ノロウイルスの不活性化評価を行った。結果を表1に示す。ノロウイルスに対する本発明の組成物の効果を、下記の通りRT−PCR法により検討した。ノロウイルスは実験室的に培養することができないため、ノロウイルス患者の糞便から粗精製されたノロウイルスサンプル(ウイルス力価はおよそ8.0と推定される)をPBSで10倍希釈して供試ノロウイルス液とし、試料液900μLとウイルス液100μLとを混合して1分間ローテーターで作用させた。その後、直ちに前記作用液140μLを採取し、QIAGEN社のQIAamp(登録商標)Viral RNA Miniキットを用いてウイルスRNAの抽出を行った。抽出したウイルスRNAに対し、ランダムヘキサマーおよび逆転写酵素を用いて、cDNAを得た。得られたcDNAを鋳型として、G2−SKF(CNTGGGAGGGCGATCGCAA:配列番号3)、G2−SKR(CCRCCNGCATRHCCRTTRTACAT:配列番号4)をプライマーとして用いてPCRを行った。前記プライマーについては、平成19年5月14日食安監発第0514004号「ノロウイルスの検出法について」の別添の図3および表11を参考とした。なお、ノロウイルス遺伝子が検出できるならば、別のプライマーを用いても構わない。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で泳動分離し、ウイルス遺伝子の検出を行った。
〇:ヒトノロウィルス(HNV)遺伝子由来のバンドが消失しており、HNVに対する不活性効果を有する。
×:ヒトノロウィルス(HNV)遺伝子由来のバンドが消失しておらず、HNVに対する不活性効果を有していない。
0048
<色の評価>
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた各ノロウイルス剤について、それぞれ、色差計(コニカミノルタ製の色彩色差計CR−5)を用いて色度(CIE1976 L*a*b*色空間)を測定した。なお、ガラス2枚の透明セル(高さ45mm、板厚1.25mm、幅10mm)に各ノロウイルス剤を挟み、光路長10mmの条件で測定を行った。それぞれ、濃度95質量%エタノール水溶液の色度(100,0,0)との色差ΔEを表1に示す。
なお、色差ΔE=√((L0−L)2+(a0−a)2+(b0−b)2)で表される。
また、淡色の評価は、色差ΔEを用いて以下の評価基準とした。
ΔE<5.00:抗ノロウイルス剤は極めて淡色であり、肉眼ではほぼ無色透明と認識されるため、対象物が白色や無色であっても外観を損ねる虞はほぼない。
5.00≦ΔE<10.00:薄く色がついているが淡色であり、対象物が白色や無色であっても外観を損ねにくい。
10.00≦ΔE:色が目立つため、白色や無色の対象物の外観を損ねる虞がある。
0049
[総合評価]
前記の<ノロウイルスの不活性評価>と<色の評価>とを合わせて、以下の規準により総合評価を行った。結果を表1に示す。なお、2以上を合格とした。
3:HNVに対する不活性効果を有しており、かつ、ΔE<5.00
2:HNVに対する不活性効果を有しており、かつ、5.00≦ΔE<10.00
1:HNVに対する不活性効果を有しており、かつ、10.00≦ΔE
0:HNVに対する不活性効果を有していない
0050
実施例
0051
表1に示される結果から明らかなとおり、リンゴポリフェノールを0.005質量%以上含む抗ノロウイルス剤は、優れた抗ノロウイルス効果を有しており、かつ、淡色であり対象物の外観を損ねにくいことが分かる。