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技術 硬質被覆層が優れた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

出願人 三菱マテリアル株式会社
発明者 近藤翔太山口亮介羽富佳祐
出願日 2019年3月20日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-052352
公開日 2020年9月24日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-151805
状態 未査定
技術分野 バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット 穴あけ工具 金属の他の加工と複合作業 CVD フライス加工
主要キーワード 被覆層部分 被覆外層 難切削材 カッタ径 TiN粒子 線強度比 合計層厚 炭化物層
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この項目の情報は公開日時点(2020年9月24日)のものです。
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課題

ステンレス鋼等の高速連続切削加工に供した場合であっても、その被覆層が優れた靭性を備え、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供する。

解決手段

工具基体の表面に、第1層とその上部に第2層を含む複数の層が積層された硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具であって、前記硬質被覆層のうち、前記工具基材と接する前記第1層はTiN層であり、前記工具基体と前記TiN層との界面から0.1μmの範囲内の界面領域における前記TiN層を構成するTiN結晶粒子の平均粒径が30nm以下であり、該界面領域には5.0〜35.0原子%のCを含むことを特徴とする、表面被覆切削工具。

概要

背景

切削工具切削性能の改善を目的として、従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金等で構成された工具基体(以下、これらを総称して工具基体ということがある)の表面に、硬質被覆層を形成した被覆工具があり、これらは、優れた耐摩耗性を発揮することが知られている。
前記従来の硬質被覆層を形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速切削条件で用いた場合に、高温強度不足し、チッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の高温強度の改善について、工具基体からの元素拡散によりTiNやTiCN皮膜に他の元素を添加する提案がなされている。

例えば、特許文献1には、工具基体表面より2層以上被覆し、1層目の厚さを1.0〜5μm、2層目以降の厚さを0.5〜10μmとする被覆工具において、前記工具基体表面より被覆外層に向かって前記工具基体中の主成分であるW、Coの拡散がx線強度比に於いて、W強度比:0≦W/(4a+5a+6a+Fe族)≦0.04、Co強度比:0≦Co/(4a+5a+6a+Fe族)≦0.02の範囲内であることを特徴とする被覆工具が記載されている。

また、例えば、特許文献2には、工具基体と該工具基体上に形成された1または2以上の層を有する被覆層とを含み、前記層のうち前記工具基体と接する層は、TiN層であり、前記TiN層は、TiNとともにCを含み、前記Cは、前記TiN層の厚み方向に濃度分布を有しており、前記濃度分布は、前記Cの濃度が前記工具基体側から前記被覆層の表面側にかけて減少する領域を含み、前記濃度分布において、前記Cの最大濃度最小濃度の差は、10原子%以上である、被覆工具が記載されている。

概要

ステンレス鋼等の高速連続切削加工に供した場合であっても、その被覆層が優れた靭性を備え、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供する。工具基体の表面に、第1層とその上部に第2層を含む複数の層が積層された硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具であって、前記硬質被覆層のうち、前記工具基材と接する前記第1層はTiN層であり、前記工具基体と前記TiN層との界面から0.1μmの範囲内の界面領域における前記TiN層を構成するTiN結晶粒子の平均粒径が30nm以下であり、該界面領域には5.0〜35.0原子%のCを含むことを特徴とする、表面被覆切削工具。なし

目的

本発明は、ステンレス鋼等の高速連続切削加工に供した場合であっても、その被覆層が優れた靭性を備え、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

工具基体の表面に、第1層とその上部に第2層を含む複数の層が積層された硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具であって、前記硬質被覆層のうち、前記工具基材と接する前記第1層はTiN層であり、前記工具基体と前記TiN層との界面から0.1μmの範囲内の界面領域における前記TiN層を構成するTiN結晶粒子の平均粒径が30nm以下であり、該界面領域には5.0〜35.0原子%のCを含むことを特徴とする、表面被覆切削工具。

請求項2

前記界面領域には、工具基体との界面から0.1μmの範囲内で、前記TiN結晶粒子の粒界に、3.0〜15.0原子%のCo、3.0〜15.0原子%のWの少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面被覆切削工具。

請求項3

前記界面領域では、前記TiN結晶粒の粒界におけるCの含有割合がその粒内における含有割合よりも3.0〜10.0原子%高いことを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。

請求項4

前記TiN層は、0.1〜1.0μmの平均層厚であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。

請求項5

前記第2層として、周期表の4〜6族元素およびAlからなる群より選ばれた1または2以上の元素からなる炭化物層窒化物層酸化物層炭窒化物層炭酸化物層、炭窒酸化物層のいずれか1層または2以上の層が、1.0〜20.0μmの合計層厚で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。

技術分野

0001

この発明は、ステンレス鋼等を、高熱発生を伴い、刃先に高負荷が作用する高速連続切削加工した場合に、硬質被覆層が優れた耐チッピング性を備え、長期の使用にわって優れた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関するものである。

背景技術

0002

切削工具切削性能の改善を目的として、従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金等で構成された工具基体(以下、これらを総称して工具基体ということがある)の表面に、硬質被覆層を形成した被覆工具があり、これらは、優れた耐摩耗性を発揮することが知られている。
前記従来の硬質被覆層を形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速切削条件で用いた場合に、高温強度不足し、チッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の高温強度の改善について、工具基体からの元素拡散によりTiNやTiCN皮膜に他の元素を添加する提案がなされている。

0003

例えば、特許文献1には、工具基体表面より2層以上被覆し、1層目の厚さを1.0〜5μm、2層目以降の厚さを0.5〜10μmとする被覆工具において、前記工具基体表面より被覆外層に向かって前記工具基体中の主成分であるW、Coの拡散がx線強度比に於いて、W強度比:0≦W/(4a+5a+6a+Fe族)≦0.04、Co強度比:0≦Co/(4a+5a+6a+Fe族)≦0.02の範囲内であることを特徴とする被覆工具が記載されている。

0004

また、例えば、特許文献2には、工具基体と該工具基体上に形成された1または2以上の層を有する被覆層とを含み、前記層のうち前記工具基体と接する層は、TiN層であり、前記TiN層は、TiNとともにCを含み、前記Cは、前記TiN層の厚み方向に濃度分布を有しており、前記濃度分布は、前記Cの濃度が前記工具基体側から前記被覆層の表面側にかけて減少する領域を含み、前記濃度分布において、前記Cの最大濃度最小濃度の差は、10原子%以上である、被覆工具が記載されている。

先行技術

0005

特開平5−237707号公報
特許第6041160号公報

発明が解決しようとする課題

0006

近年の切削加工では、ステンレス鋼等の難切削材に対しても省力化および省エネ化の要求は強く、被覆工具に対する加工時の負荷が一段と高まっており、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性耐剥離性等の耐異常損傷性が求められるとともに、長期の使用にわって優れた耐摩耗性が求められている。

0007

しかし、前記特許文献1に記載された被覆工具は、ステンレス鋼等の難切削材の高速連続切削加工に供した場合には、早期に寿命に至っていた。

0008

また、前記特許文献2に記載された被覆工具も、ステンレス鋼等の難切削材の高速連続切削加工に供した場合、満足する耐チッピング性、耐摩耗性を有していなかった。

0009

そこで、本発明は、ステンレス鋼等の高速連続切削加工に供した場合であっても、その被覆層が優れた靭性を備え、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者は、前記特許文献1〜2に記載された被覆工具がステンレス鋼等の高速断続切削加工に供した場合に、早期に寿命に至るのかを鋭意検討したところ、工具基体と被覆層との間の密着性が十分でないことを発見し、工具基体と被覆層の密着性は、工具基体に接する被覆層部分特定部分にのみ所定量のCを拡散させることによりなし得るという新規な知見を得た。

0011

本発明は、この知見に基づくものであって、
「(1)工具基体の表面に、第1層とその上部に第2層を含む複数の層が積層された硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具であって、
前記硬質被覆層のうち、前記工具基材と接する前記第1層はTiN層であり、前記工具基体と前記TiN層との界面から0.1μmの範囲内の界面領域における前記TiN層を構成するTiN結晶粒子の平均粒径が30nm以下であり、該界面領域には5.0〜35.0原子%のCを含むことを特徴とする、表面被覆切削工具。
(2)前記界面領域には、工具基体との界面から0.1μmの範囲内で、前記TiN結晶粒子の粒界に、3.0〜15.0原子%のCo、3.0〜15.0原子%のWの少なくとも一方を含むことを特徴とする、前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記界面領域では、前記TiN結晶粒の粒界におけるCの含有割合がその粒内における含有割合よりも3.0〜10.0原子%高いことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記TiN層は、0.1〜1.0μmの平均層厚であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(5)前記第2層として、周期表の4〜6族元素およびAlからなる群より選ばれた1または2以上の元素からなる炭化物層窒化物層酸化物層炭窒化物層炭酸化物層、炭窒酸化物層のいずれか1層または2以上の層が、1.0〜20.0μmの合計層厚で形成されていることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
である。

発明の効果

0012

本発明は、ステンレス鋼等の高速連続切削加工に供した場合であっても、その被覆層が優れた靭性を備え、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する。

0013

以下、本発明について詳述する。本明細書、特許請求の範囲で「X〜Y」と表記して範囲を記載する場合は、範囲の上限と下限を含むこと(すなわち、X以上Y以下)を表しており、Xに単位の記載がなくYにのみ単位の記載がされているときは、Xの単位はYの単位と同じである。

0014

硬質被覆層:
硬質被覆層は、第1層とその上部(工具表面側)の第2層からなり、工具基体に接する第1層はCを含むTiN層であり、第2層は、周期表の4〜6族元素およびAlからなる群より選ばれた1または2以上の元素からなる炭化物層、窒化物層、酸化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、炭窒酸化物層のいずれか1層または2以上の層である。

0015

(1)第1層:
第1層は、TiN層であり(ここでいうTiNとは、化学量論的にTiとNが化合しているものに限らない)、工具基体と硬質被覆層との密着性を向上させる目的のために設けるものである。その平均層厚は0.1〜1.0μmである。この平均層厚の範囲とした理由は、0.1μm未満であると第1層を設ける前記目的が達成できず、1.0μmを超えると上部層を薄くせざるを得ず、耐摩耗性が低下するためである。

0016

第1層であるTiN層は、前記目的を達成するために、工具基体の界面から0.1μmまでの界面領域では、C含有量が5.0〜35.0原子%となるようにCが存在し、前記界面領域におけるTiN結晶粒の平均粒径が30nm以下であることが好ましい。この理由は、前記界面領域にCが存在することにより、TiN結晶粒の粒径が小さくなって、工具基体中成分が拡散する経路が増加して、工具基体とTiN層との密着性が向上するためである。

0017

すなわち、前記界面領域を工具基体の界面から0.1μmまでの領域とする理由は、0.1μm未満であると第1層を設ける前記目的が達成できないためである。そして、拡散させるCを含有量が5.0〜35.0原子%とする理由は、5.0原子%未満では、後述する前記目的を達成するために必要なTiN結晶粒の結晶粒を30nm以下とすることができず、また、35.0原子%超えるとCの含有量が過剰となり、TiN層の靱性が損なわれるため工具寿命の低下につながるためである。

0018

ここで、前記界面領域のTiN粒子において、その結晶粒界におけるCの含有割合が粒内における含有割合よりも3〜10原子%高いことがより好ましい。その理由は、3原子%未満である場合はCの拡散量が少ないため、付着強度向上の効果が十分ではなく、一方で10原子%を超える場合は、C原子が過剰に粒界に存在することにより、破壊の起点となり得るためである。

0019

また、前記界面領域には、TiN粒子の粒界に、3〜15原子%のCo、または、3〜15原子%のWの少なくとも一方を含むことがより好ましい。その理由は、CoおよびWの含有量がそれぞれ3原子%未満である場合は母材からの拡散量が少ないため、付着強度向上の効果が十分ではなく、一方で、CoおよびWの含有量がそれぞれ15原子%を超えると、これらの原子が過剰に粒界に存在することにより、破壊の起点となり得るためである。

0020

粒界は、硬質被覆層の縦断面(工具基体に垂直な断面)を電界放出型電子顕微鏡で観察し、EsB検出器を用いた組成像により判断し、TiN粒子の粒界および粒内におけるCの含有量、および粒界のCo、Wの含有量は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて観察し、エネルギー分散型X線分光法により測定する。

0021

TiN結晶粒の粒径は30nmを超えると、工具基体中のCo、W等の成分が拡散する経路の増加が十分ではなく、第1層を設ける前記目的が達成できない。なお、TiN結晶粒の粒径の下限値は特に制約がないが、1.0nmとすることが好ましい。

0022

そして、TiNの結晶粒の粒径は、TiN層領域に工具基体に平行な0.5μmの長さの直線を横切る粒界の数を数え、0.75/(横切る粒界の数)μmとして求める。

0023

(2)第2層
第1層(TiN層)の上部(工具表面側)の第2層は、耐摩耗性、耐チッピング性を与えるものであり、周期表の4〜6族元素およびAlからなる群より選ばれた1または2以上の元素からなる炭化物層、窒化物層、酸化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、炭窒酸化物層のいずれか1層または2以上を適宜選択したものであり、その合計層厚は1.0〜20.0μmであることが好ましい。合計層厚をこの範囲とする理由は、1.0μm未満では第2層の効果が十分に発揮されず、20.0μmを超えると第2層の結晶粒が粗大化しやすくなって、チッピングが発生しやすくなるためである。

0024

なお、各層の平均層厚は、工具基体に垂直な方向の断面(層厚方向の断面、縦断面)を、走査型電子顕微鏡を用いて、適切な倍率、例えば、倍率5000倍で観察し、刃先稜線部近傍の観察視野内5点の層厚を測定し、平均して求めた。

0025

工具基体
工具基体は、この種の工具基体として従来公知の基材であれば、本発明の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。一例を挙げるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはTi、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの等)、セラミックス炭化チタン炭化珪素窒化珪素窒化アルミニウム酸化アルミニウムなど)、cBN焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかであることが好ましい。

0026

製造方法
本発明に係る硬質被覆層は、第1層の成膜後に第2層を成膜するものであって、それぞれの成膜は、例えば、以下のようにして成膜することができる。ここで、第2層の成膜は、特に制約がなく、公知の成膜方法を適用することができるが、一例として、TiCN層を示す。

0027

1.第1層成膜工程
次の2工程を有する。
(1)TiN成膜前の工程
反応ガス組成(容量%):N2:40.0〜60.0%、H2:残
反応雰囲気温度:900〜1100℃
反応雰囲気圧力:5.0〜20.0kPa
反応時間:120分〜180分
(2)TiN成膜工程
反応ガス組成(容量%):TiCl4:3.5〜5.0%、
N2:15.0〜35.0%、H2:残
反応雰囲気温度:900〜1100℃
反応雰囲気圧力:5.0〜20.0kPa

0028

2.第2層成膜工程(TiCN層を成膜する場合)
反応ガス組成(容量%):TiCl4:1.0〜5.0%、
CH3CN:0.5〜1.5%、N2:8.0〜25.0%、
H2:残
反応雰囲気温度:850〜920℃
反応雰囲気圧力:5.0〜9.0kPa

0029

次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明被覆工具の実施例として、工具基体としてWC基超硬合金を用いたインサート切削工具に適用したものについて述べるが、工具基体として、前述のものを用いた場合であっても同様であるし、ドリルエンドミルに適用した場合も同様である。

0030

原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体プレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格CNMG120412のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Cをそれぞれ製造した。

0031

次に、これら工具基体A〜Cの表面に、CVD装置を用いて、順に第1層、第2層を形成し、表4に示される本発明被覆工具1〜12を得た。
成膜条件は、表2〜3に記載したとおりであるが、第1層の成膜工程は、概ね、次のとおりであった。

0032

第1層成膜工程
(1)TiN成膜前の工程
反応ガス組成(容量%):N2:40.0〜60.0%、H2:残
反応雰囲気温度:900〜1100℃
反応雰囲気圧力:5.0〜20.0kPa
反応時間:120分〜180分
(2)TiN成膜工程
反応ガス組成(容量%):TiCl4:3.5〜5.0%、
N2:15.0〜35.0%、H2:残
反応雰囲気温度:900〜1100℃
反応雰囲気圧力:5.0〜20.0kPa
2.第2層成膜工程
第2層の成膜工程は、表3に示したとおりであった。

0033

また、比較の目的で、工具基体A〜Cの表面に、表2〜3に示される条件によりCVDを行うことにより、表4に示す比較被覆工具1〜12を製造した。

0034

表4において、平均層厚は、本発明被覆工具1〜12、比較被覆工具1〜12の各構成層の縦断面(工具基体表面に垂直な方向の断面)を、走査型電子顕微鏡を用いて適切な倍率(倍率5000倍)を選択して観察し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して求めた。また、前記界面領域におけるC、Co、Wの含有量は前述の方法により求めた。

0035

0036

0037

0038

0039

続いて、前記本発明被覆工具1〜12および比較被覆工具1〜12について、いずれもカッタ径125mmの工具鋼カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、以下に示す、ステンレス鋼の湿式切削加工試験を実施し、切刃逃げ面摩耗幅を測定した。表5に、切削試験の結果を示す。なお、比較被覆工具1〜12については、チッピング発生が原因で切削時間終了前に寿命に至ったため、寿命に至るまでの時間を示す。

0040

切削試験1
被削材:JIS・SUS304外径100mmの丸棒
切削速度:200m/秒
切り込み:1.5mm
1回転当たりの送り:0.3mm
切削時間:15分

0041

切削試験2
被削材:JIS・SUS316外径100mmの丸棒
切削速度:150m/秒
切り込み:2.0mm
1回転当たりの送り:0.2mm
切削時間:15分

0042

切削試験3
被削材:JIS・SUS630外径100mmの丸棒
切削速度:120m/秒
切り込み:2.0mm
1回転当たりの送り:0.15mm
切削時間:8分

0043

実施例

0044

表5に示される結果から、本発明被覆工具は、ステンレス鋼等の高速連続切削において、優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮しているが、これに対して、本発明に規定する界面領域におけるTiN層を構成するTiN結晶粒子の平均粒径、該領域に含まれているC含有量を満足しない比較被覆工具は、チッピングを発生し短時間で工具寿命に至っていることが明らかである。

0045

この発明の被覆工具は、ステンレス鋼の高速連続切削加工ばかりでなく、各種の被削材の被覆工具として使用することができ、しかも、長期の使用にわたって耐チッピング性を有するものであるから、切削装置高性能化並びに切削加工の省力化および省エネルギー化、さらには、低コスト化にも十分満足に対応できるものである。

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