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技術 表面被覆切削工具

出願人 三菱マテリアル株式会社
発明者 山口亮介近藤翔太羽富佳祐
出願日 2019年3月18日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-049736
公開日 2020年9月24日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-151775
状態 未査定
技術分野 バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット CVD
主要キーワード アルミナイズ処理 平均自由行路 被膜形成処理 弱酸性水溶液 損耗状況 出現温度 本発明工具 微小亀裂
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年9月24日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (3)

課題

解決手段

WC粒子結合相成分としてCoを含むWC基超硬合金を工具基体とする表面被覆切削工具において、(1)工具基体表面には、微小亀裂が存在し、この微小亀裂は硬質被覆層側に開口連通するとともに、微小亀裂には硬質被覆層構成成分が充填され、(2)工具基体表面と硬質被覆層との界面の工具基体側には、微小亀裂に充填された硬質被覆層構成成分と、工具基体の硬質相成分と結合相成分とからなる平均深さ0.5〜5.0μmの密着層が形成され、(3)硬質被覆層構成成分からなる結晶粒が、前記密着層に占める面積割合は3%以上20%以下であり、(4)前記密着層における平均Co含有量は、密着層におけるWC成分とCo成分と微小亀裂に充填されている硬質被覆層構成成分のうちの金属成分との合計量に対して、2.5質量%以上5質量%以下である。

概要

背景

従来、炭化タングステン基超硬合金(以下、「WC基超硬合金」という)からなる工具基体の表面に、TiC、TiN、TiCN等の硬質被覆層蒸着形成した表面被覆切削工具(以下、「被覆工具」という)が知られているが、工具基体表面と硬質被覆層の密着性を向上させることによって、被覆工具の寿命延命化を図るための種々の提案がなされている。

例えば、特許文献1には、WC基超硬合金からなる工具基体に化学蒸着法により硬質被覆層を形成するに際し、化学蒸着前に、工具基体表面を硝酸硫酸等の酸でエッチングし、工具基体表面からWC基超硬合金の結合相成分を除去することによって、硬質被覆層の付着強度を向上させることが提案されており、この被覆工具によれば、切削加工時の耐剥離性が向上するとされている。

また、特許文献2には、WC基超硬合金等からなる工具基体に、アルミナイズ処理を施した後、被膜形成処理を施すことで被覆工具を作製するにあたり、工具基体の表面から内部へ向って少なくとも0.1μmの厚さの表面層に、(例えば、AlCoからなる)金属間化合物を混在させ、その表面に、例えば、Al2O3からなる5μmの厚さの被膜を形成することによって、工具基体と被膜との密着性を高めることができ、これによって、化学蒸着法または物理蒸着法で形成した被膜の耐剥離性,耐摩耗性及び強度に優れる被覆工具が得られるとされている。

さらに、例えば、特許文献3には、WC基超硬合金を工具基体とする被覆工具において、工具基体の表面から内部に向かって3〜20μmの深さにわたり、有機酸弱酸性水溶液を使用した電解処理によって結合相を除去し、結合相が除去されてできた微細な連続孔に硬質膜成分を注入し、結合相と硬質膜成分が置換された硬質複合層を工具基体表面に形成することが提案されており、この被覆工具によれば、化学蒸着法で形成した硬質膜の耐摩耗性,耐塑性変形性,密着性を改善して被覆工具の寿命を向上させることができるとされている。

概要

工具基体と硬質被覆層の界面強度、密着性に優れる表面被覆切削工具を提供する。WC粒子と結合相成分としてCoを含むWC基超硬合金を工具基体とする表面被覆切削工具において、(1)工具基体表面には、微小亀裂が存在し、この微小亀裂は硬質被覆層側に開口連通するとともに、微小亀裂には硬質被覆層構成成分が充填され、(2)工具基体表面と硬質被覆層との界面の工具基体側には、微小亀裂に充填された硬質被覆層構成成分と、工具基体の硬質相成分と結合相成分とからなる平均深さ0.5〜5.0μmの密着層が形成され、(3)硬質被覆層構成成分からなる結晶粒が、前記密着層に占める面積割合は3%以上20%以下であり、(4)前記密着層における平均Co含有量は、密着層におけるWC成分とCo成分と微小亀裂に充填されている硬質被覆層構成成分のうちの金属成分との合計量に対して、2.5質量%以上5質量%以下である。

目的

本発明は、高熱発生を伴うステンレス鋼等の難削材の高速切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐チッピング性を発揮する被覆工具を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

WC粒子を含む硬質相成分とCoを含む結合相成分からなるWC基超硬合金工具基体とする表面被覆切削工具において、(a)前記工具基体表面には、微小亀裂が存在し、(b)前記工具基体表面には硬質被覆層が形成され、(c)前記工具基体表面の微小亀裂は、前記硬質被覆層側に開口連通するとともに、前記微小亀裂には硬質被覆層構成成分が充填され、(d)前記工具基体表面と前記硬質被覆層との界面の前記工具基体側には、前記硬質被覆層構成成分と、前記工具基体の硬質相成分と結合相成分とからなる密着層が形成され、前記密着層の平均深さは、0.5μm以上5.0μm以下であり、(e)前記密着層の縦断面を観察した場合、前記硬質被覆層構成成分からなる結晶粒が、前記密着層に占める面積割合は、3%以上20%以下であることを特徴とする表面被覆切削工具。

請求項2

前記密着層における平均自由行路λを(ただし、NLは密着層の縦断面研磨面上の任意の直線によって分断される単位長当りのWC粒子の個数、NSは密着層の縦断面研磨面上の任意の領域における単位面積当たりのWC粒子の個数)と定義したときに、λが0.2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。

請求項3

前記密着層における平均Co含有量は、前記密着層におけるW成分とCo成分と前記微小亀裂に充填されている硬質被覆層構成成分のうちの金属成分との合計量に対して、2.5質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。

請求項4

前記硬質被覆層は、周期表の4a、5a、6a族の金属およびAlのうちから選ばれた1種または2種以上の元素炭化物層窒化物層酸化物層炭窒化物層炭窒酸化物層の単層または複層からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。

請求項5

前記工具基体表面の直上に第1層として形成される硬質被覆層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層および炭窒酸化物層のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。

技術分野

0001

本発明は、WC基超硬合金工具基体とし、工具基体表面に硬質被覆層蒸着形成した表面被覆切削工具に関し、特に、硬質被覆層の耐剥離性および耐チッピング性を向上させた表面被覆切削工具に関する。

背景技術

0002

従来、炭化タングステン基超硬合金(以下、「WC基超硬合金」という)からなる工具基体の表面に、TiC、TiN、TiCN等の硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具(以下、「被覆工具」という)が知られているが、工具基体表面と硬質被覆層の密着性を向上させることによって、被覆工具の寿命延命化を図るための種々の提案がなされている。

0003

例えば、特許文献1には、WC基超硬合金からなる工具基体に化学蒸着法により硬質被覆層を形成するに際し、化学蒸着前に、工具基体表面を硝酸硫酸等の酸でエッチングし、工具基体表面からWC基超硬合金の結合相成分を除去することによって、硬質被覆層の付着強度を向上させることが提案されており、この被覆工具によれば、切削加工時の耐剥離性が向上するとされている。

0004

また、特許文献2には、WC基超硬合金等からなる工具基体に、アルミナイズ処理を施した後、被膜形成処理を施すことで被覆工具を作製するにあたり、工具基体の表面から内部へ向って少なくとも0.1μmの厚さの表面層に、(例えば、AlCoからなる)金属間化合物を混在させ、その表面に、例えば、Al2O3からなる5μmの厚さの被膜を形成することによって、工具基体と被膜との密着性を高めることができ、これによって、化学蒸着法または物理蒸着法で形成した被膜の耐剥離性,耐摩耗性及び強度に優れる被覆工具が得られるとされている。

0005

さらに、例えば、特許文献3には、WC基超硬合金を工具基体とする被覆工具において、工具基体の表面から内部に向かって3〜20μmの深さにわたり、有機酸弱酸性水溶液を使用した電解処理によって結合相を除去し、結合相が除去されてできた微細な連続孔に硬質膜成分を注入し、結合相と硬質膜成分が置換された硬質複合層を工具基体表面に形成することが提案されており、この被覆工具によれば、化学蒸着法で形成した硬質膜の耐摩耗性,耐塑性変形性,密着性を改善して被覆工具の寿命を向上させることができるとされている。

先行技術

0006

特開昭63−60280号公報
特許第3242133号公報
特開2002−38205号公報

発明が解決しようとする課題

0007

近年の切削加工の技術分野における省力化および省エネ化、さらに低コスト化に対する要求は強く、これに伴い、切削加工は益々高速化の傾向にあるが、従来の被覆工具を、高熱発生を伴うステンレス鋼等の難削材の高速切削に供した場合には、チッピング欠損剥離等の異常損傷が発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることがあった。

0008

例えば、特許文献1、3で提案されているようなエッチング、電解処理により工具基体表面から結合相成分を除去する被覆工具においては、硬質被覆層と工具基体表面の密着性はある程度改善されるものの、工具基体表面から結合相が除去されたことによって、工具基体と硬質被覆層との界面において、工具基体の強度が低下するため、切削時の負荷によってチッピングが発生しやすいという問題がある。
また、特許文献2で提案されている被覆工具においては、工具基体にアルミナイズ処理を施し、工具基体表面近傍に金属間化合物を混在させることによって、工具基体表面と硬質被膜の密着性を高めているが、高熱発生を伴う難削材の高速切削においては、硬質被膜が剥離を生じやすく、十分な密着性を備えているとは言い難い。

0009

そこで、本発明は、高熱発生を伴うステンレス鋼等の難削材の高速切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐剥離性と耐チッピング性を発揮する被覆工具を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、WC基超硬合金からなる工具基体と硬質被覆層がすぐれた密着性を備え、難削材の高速切削加工においても、剥離やチッピングを発生することのない工具基体と硬質被覆層の界面構造について鋭意検討したところ、次のような知見を得た。

0011

すなわち、前記特許文献1、3で提案された被覆工具では、工具基体表面から結合相成分を除去しており、これが工具基体表面と硬質被覆層との界面強度低下の一因となるが、工具基体表面の結合相成分の含有量を大きく低下させずに、工具基体と硬質被覆層との界面強度を確保し、しかも、硬質被覆層の密着性を向上させる界面構造について研究を進めたところ、工具基体表面に化学蒸着法で硬質被覆層を形成するに先立って、例えば、熱処理によって、工具基体表面の結合相成分の含有量を高めると同時に結合相成分を一部揮発させ、工具基体表面に空隙を形成し、次いで、例えば、ブラスト処理を施すことで、工具基体表面に微小亀裂を導入し、その後、化学蒸着することで、工具基体表面と硬質被覆層の界面から工具基体側の前記微小亀裂内に、硬質被覆層構成成分からなる高アスペクト比結晶粒を硬質被覆層に連通して生成させた密着層を形成した場合には、前記密着層を介して工具基体と硬質被覆層がすぐれた密着性を備えると同時に、前記密着層は、工具基体の構成成分であるWC粒子と結合相成分と硬質被覆層構成成分とからなり、しかも、密着層の微小亀裂内には、高アスペクト比の結晶粒が硬質被覆層に連通して生成していることで、硬質被覆層との界面強度の低下が向上することを見出したのである。
そして、工具基体表面と硬質被覆層の界面に、前記界面構造が形成された本発明の被覆工具は、高熱発生を伴うステンレス鋼等の難削材の高速切削加工において、すぐれた耐剥離性と耐チッピング性を発揮することを見出したのである。

0012

本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WC粒子を含む硬質相成分とCoを含む結合相成分からなるWC基超硬合金を工具基体とする表面被覆切削工具において、
(a)前記工具基体表面には、微小亀裂が存在し、
(b)前記工具基体表面には硬質被覆層が形成され、
(c)前記工具基体表面の微小亀裂は、前記硬質被覆層側に開口連通するとともに、前記微小亀裂には硬質被覆層構成成分が充填され、
(d)前記工具基体表面と前記硬質被覆層との界面の前記工具基体側には、前記硬質被覆層構成成分と、前記工具基体の硬質相成分と結合相成分とからなる密着層が形成され、前記密着層の平均深さは、0.5μm以上5.0μm以下であり、
(e)前記密着層の縦断面を観察した場合、前記硬質被覆層構成成分からなる結晶粒が、前記密着層に占める面積割合は、3%以上20%以下であることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記密着層における平均自由行路λを、



(ただし、NLは密着層の縦断面研磨面上の任意の直線によって分断される単位長当りのWC粒子の個数、NSは密着層の縦断面研磨面上の任意の領域における単位面積当たりのWC粒子の個数)と定義したときに、λが0.2μm以下であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記密着層における平均Co含有量は、前記密着層におけるWC成分とCo成分と前記微小亀裂に充填されている硬質被覆層構成成分のうちの金属成分との合計量に対して、2.5質量%以上5質量%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記硬質被覆層は、周期表の4a、5a、6a族の金属およびAlのうちから選ばれた1種または2種以上の元素炭化物層窒化物層酸化物層炭窒化物層炭窒酸化物層の単層または複層からなることを特徴とする(1)乃至(3)に記載の表面被覆切削工具。
(5)前記工具基体表面の直上に第1層として形成される硬質被覆層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層および炭窒酸化物層のいずれかであることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。

発明の効果

0013

本発明の被覆工具は、工具基体と硬質被覆層の界面の工具基体側に、硬質被覆層構成成分と、工具基体の硬質相成分と結合相成分とからなる密着層が形成され、該密着層は、エッチング等による結合相成分の除去手段に比して、結合相成分の除去割合が少ないため界面強度の低下はなく、また、密着層に形成された硬質被覆層側に開口連通する微小亀裂から、硬質被覆層構成成分が該微小亀裂内に入り込み該微小亀裂が硬質被覆層構成成分で充填され、さらに、硬質被覆層構成成分からなる結晶粒が、前記密着層に占める面積割合は、3%以上20%以下であることによって、工具基体と硬質被覆層の密着性、界面強度がより向上する。
したがって、本発明の被覆工具を、高熱発生を伴うステンレス鋼等の難削材の高速切削加工に供した場合、すぐれた耐剥離性と耐チッピング性が発揮される。

図面の簡単な説明

0014

本発明の表面被覆切削工具の縦断面概略模式図を示す。
本発明の表面被覆切削工具の密着層の縦断面拡大模式図を示す。

0015

以下、本発明について、図面とともに詳細に説明する。

0016

図1の概略模式図に示すように、本発明の被覆工具は、WC基超硬合金からなる工具基体の上部に化学蒸着法により成膜された硬質被覆層が被覆形成されている。
図2には、工具基体と硬質被覆層の界面近傍の拡大模式図を示すが、WC基超硬合金からなる工具基体と硬質被覆層との界面の工具基体側には、0.5μm以上5.0μm以下の平均厚さの密着層が形成されているから、正確に言えば、硬質被覆層は、工具基体表面に形成されている密着層を介して、工具基体表面に形成されているといえる。
ここで、前記密着層は、その平均厚さが0.5μm未満では、工具基体と硬質被覆層の密着性向上効果が得られず、一方、その平均層厚が5μmを超えると硬質被覆層の耐チッピング性が低下傾向を示すことから、密着層の平均厚さを0.5μm以上5.0μm以下とする。
密着層の平均厚さは、以下の方法により測定することができる。
工具基体と硬質被覆層を含む縦断面を研磨面とし、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて研磨面の組織写真撮影し、さらに撮影された走査電子顕微鏡写真画像解析ソフトを用いて三値化処理を行うことで、硬質被覆層、WCおよび金属結合相三相に分離した。
次いで、走査電子顕微鏡写真上に硬質被覆層/工具基体界面に平行方向に直線を引き、該直線上に接触する硬質被覆層、WCおよび金属結合相の比率計測し、硬質被覆層と接触する比率が50%以上の位置を密着層上層界面、硬質被覆層との接触が無くなる位置を密着層下層界面とし、上層界面と下層界面との距離を密着層の平均厚さと定義した。

0017

工具基体と硬質被覆層との界面の工具基体側に形成された前記密着層は、工具基体表面に形成された硬質被覆層側に開口連通する微小亀裂を含み、かつ、前記微小亀裂には、硬質被覆層成膜時の硬質被覆層構成成分が充填されている。
そして、前記密着層の微小亀裂には、微小亀裂の内面から硬質被覆層側へ、連続的な結晶成長をしている硬質被覆層構成成分からなる結晶粒が存在する。
硬質被覆層構成成分からなる結晶粒の存在は、密着層の縦断面を、エネルギー分散X線分析装置(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡を用いた成分分析により、硬質被覆層構成成分からなる結晶粒の存在を確認することができ、さらに、硬質被覆層構成成分からなる結晶粒が、硬質被覆層側へ連続的な結晶成長をしているか否かは、密着層縦断面研磨面の走査型電子顕微鏡を用いた組織観察によって確認することができる。

0018

前記硬質被覆層構成成分からなる前記結晶粒が、前記密着層に占める面積割合は、3%以上20%以下とする。
これは、前記結晶粒の面積割合が3%未満であると、密着性向上効果、界面強度向上効果が十分ではなく、一方、その面積割合が20%を超えると、結晶粒の粗大化により耐チッピング性が低下するからである。
前記結晶粒の面積割合については、密着層縦断面研磨面の走査型電子顕微鏡像の画像解析によって求めることができる。

0019

また、密着層における硬質相成分であるWC−WC粒子間の平均自由行路λについて、



と定義したときに(ただし、NLは密着層の縦断面研磨面上の任意の直線によって分断される単位長さ当りのWC粒子の個数、NSは密着層の縦断面研磨面上の任意の領域における単位面積当たりのWC粒子の個数)、λが0.2μm以下であることが好ましい。
これは、前記硬質被覆層構成成分からなる前記結晶粒が、前記密着層内に微細に分散することにより、前記密着層の強度を損ねることなく工具基体と硬質被覆層の密着性、界面強度を向上させることが出来るという理由による。
また、WC−WC粒子間の平均自由行路λは、この出願の前から既に良く知られている方法によって測定することができ、その測定法特段の特徴はない。

0020

また、0.5μm以上5.0μm以下の平均厚さの密着層における平均Co含有量は、該密着層の領域におけるWC基超硬合金の構成成分であるW成分とCo成分と、前記密着層の微小亀裂に充填されている硬質被覆層構成成分のうちの金属成分との合計量に対して、2.5質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
これは、平均Co含有量が2.5質量%未満では、耐欠損性が低下し、一方、平均Co含有量が5質量%を超えると硬質被覆層との十分な密着性が得られなくなるからである。
密着層における平均Co含有量は、密着層の縦断面についてエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡によって測定し、複数個所の測定値を平均することによって求めることができる。

0021

本発明の被覆工具においては、硬質被覆層として、既に知られている硬質被覆層、例えば、周期表の4a、5a、6a族の金属およびAlのうちから選ばれた1種または2種以上の元素の炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭窒酸化物層の単層または複層、を蒸着法によって形成することができる。
本発明では、工具基体表面の密着層に微小亀裂が存在しており、硬質被覆層の構成成分を該微小亀裂内へと十分に充填するという観点から、化学蒸着法を採用することが好ましい。
特に、工具基体表面との密着性を高め、界面強度の向上を図るという観点からは、工具基体表面の直上に形成する第1番目の層は、化学蒸着法により成膜したTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層および炭窒酸化物層のいずれかとすることが好ましいが、第2番目以降の層については、化学蒸着法以外の蒸着法で形成することを妨げるものではない。

0022

本発明の被覆工具は、例えば、以下の工程によって作製することができる。
(a)まず、硬質相成分としてのWC粉末及び結合相成分としての少なくともCo粉末を含む原料粉末を、所定の組成となるように配合し、これにバインダー溶剤を加えて湿式混合し、減圧乾燥後、圧粉成形体を作製し、次いでこれを、例えば、1370〜1500℃で15〜60分焼結することでWC基超硬合金焼結体を作製した後、工具形状に加工することで、WC基超硬合金製の工具基体を作製する。
(b)ついで、前記工具基体を、真空中で液相出現温度以上の温度(例えば、1350〜1480℃に一定時間(例えば、30〜120分)保持し、工具基体表面の結合相成分であるCoを一部揮発させることで、工具基体表面に空隙を生成させる。
(c)ついで、工具基体表面にブラスト処理を施して、前記空隙を主たる起点として所定の深さの微小亀裂を工具基体表面に形成する。
(d)ついで、前記工具基体に対して、例えば、化学蒸着法で硬質被覆層を蒸着形成する。
この際、反応ガスが前記微小亀裂内に侵入して微小亀裂内に硬質被覆層構成成分からなる結晶粒が形成され、この結晶粒構成成分と、工具基体の硬質相成分と結合相成分とにより、工具基体表面から所定の深さに密着層が形成される。
微小亀裂内への反応ガスの侵入を促進し、硬質被覆層構成成分からなる結晶粒を微小亀裂内に密に形成するためには、前記化学蒸着法の成膜温度は、通常の成膜温度より高くすることが望ましい。
前記工程(a)〜(d)によって、本発明の被覆工具を作製することができる。

0023

本発明の実施例について、以下に、詳細に説明する。

0024

≪本発明の被覆工具≫
(a)原料粉末として、平均粒径が0.5〜3.0μmの範囲内のWC粉末及び平均粒径がいずれも0.5〜3.0μmの範囲内のCo粉末、TaC粉末、NbC粉末あるいはCr3C2粉末を、表1に示される割合に配合して原料粉末を作製し、バインダーと溶剤を加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、プレス成形により圧粉成形体を作製し、次いでこれを、焼結温度:1370〜1500℃で15〜60分という範囲内の焼結条件で焼結することでWC基超硬合金焼結体を作製し、ついで該焼結体を工具形状に加工することで、WC基超硬合金製の工具基体を作製した。

0025

(b)ついで、前記WC基超硬合金製の工具基体を、高真空中で、液相出現温度以上の温度で所定時間保持するという表2に示す条件の熱処理を施すことにより、工具基体の表面から、結合相成分であるCoを揮発させることで、工具基体表面に空隙を形成した。
なお、表1に示すWC基超硬合金の液相出現温度は、ほぼ1290〜1350℃である。

0026

(c)次いで、工具基体表面に、表3に示す条件でブラスト処理を施して、工具基体表面に形成されている前記空隙を主たる起点として、所定の深さの微小亀裂を工具基体表面に形成した。

0027

(d)ついで、前記工具基体に対して、表4に示す条件で化学蒸着を行い、表5に示す層種別層構造層厚からなる硬質被覆層を蒸着形成することで、表5に示す本発明の被覆工具(以下、「本発明工具」という)1〜9を作製した。

0028

≪比較例の被覆工具≫
比較のため、前記工程(a)でWC基超硬合金製の工具基体を作製し、次いで前記工程(d)の表4に示す条件で化学蒸着を行い、表6に示す層種別、層構造、層厚からなる硬質被覆層を蒸着形成した比較例の被覆工具(以下、「比較例工具」という)1〜3を作製した。

0029

また、前記工程(a)でWC基超硬合金製の工具基体を作製し、次いで、前記工程(b)の表2に示す条件で熱処理を施した後、前記工程(d)の表4に示す条件で化学蒸着を行い、表6に示す層種別、層構造、層厚からなる硬質被覆層を蒸着形成した比較例の被覆工具(以下、「比較例工具」という)4〜6を作製した。

0030

さらに、前記工程(a)でWC基超硬合金製の工具基体を作製し、次いで、前記工程(c)の表3に示す条件でブラスト処理を施した後、前記工程(d)の表4に示す条件で化学蒸着を行い、表6に示す層種別、層構造、層厚からなる硬質被覆層を蒸着形成した比較例の被覆工具(以下、「比較例工具」という)7〜9を作製した。

0031

前記で作製した本発明工具1〜9及び比較例工具1〜9について、被覆工具の工具基体と硬質被覆層の界面近傍の縦断面研磨面について取得した走査型顕微鏡像について、画像解析ソフトを用いて密着層の深さを測定し、10箇所における測定値の平均を、密着層の平均深さとした。
前記密着層の深さ測定は、具体的には、次のような手法で行った。
工具基体と硬質被覆層を含む縦断面を研磨面とし、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて研磨面の組織写真を撮影し、さらに撮影された走査電子顕微鏡写真を画像解析ソフトを用いて三値化処理を行うことで、硬質被覆層、WCおよび金属結合相の三相に分離した。次いで、走査電子顕微鏡写真上に硬質被覆層/工具基体界面に平行方向に直線を引き、該直線上に接触する硬質被覆層、WCおよび金属結合相の比率を計測し、硬質被覆層と接触する比率が50%以上の位置を密着層上層界面、硬質被覆層との接触が無くなる位置を密着層下層界面とし、上層界面と下層界面との距離を密着層の厚さとして測定し、10箇所における測定値の平均を求め、この値を、密着層の平均厚さと定義した。

0032

また、密着層のCo含有量を、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡により測定し、10箇所における測定値を平均して密着層の平均Co含有量とした。
なお、密着層における平均Co含有量とは、「密着層の領域におけるWC基超硬合金の構成成分であるW成分とCo成分と、前記密着層の微小亀裂に充填されている硬質被覆層構成成分のうちの金属成分との合計量に対するCo含有量の割合」であると定義する。
表5、表6に、前記の各測定値を示す。

0033

0034

0035

0036

0037

0038

0039

つぎに、前記本発明工具1〜9および比較例工具1〜9を用いて、以下の条件で、ステンレス鋼の高速連続切削試験を行った。
被削材:JIS・SUS304の丸棒
切削速度:250m/min,
切込み:1.5mm,
送り:0.25mm/rev,
切削時間:10min,
前記切削試験において、逃げ面摩耗幅を測定するとともに、刃先損耗状況を観察した。また、切削途中で、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷の発生により寿命に至った工具については、寿命に達した切削時間を測定し、同時に、刃先の損耗状況を観察した。
表7に、試験結果を示す。

0040

0041

表7の結果からも明らかなように、本発明工具は、工具基体と硬質被覆層の界面強度が高く、また、密着性にもすぐれることから、難削材であるステンレス鋼の高速切削加工において、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生することはなく、すぐれた耐摩耗性を示した。

0042

これに対して、比較例工具1〜9には、いずれも、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷の発生がみられ、これを原因として短時間で工具寿命に至った。

0043

本発明の被覆工具は、工具基体と硬質被覆層の界面強度、密着性にすぐれることから、ステンレス鋼等の難削材の高速連続切削加工、高速断続切削加工のいずれの加工条件にも供することが可能であり、切削加工の省エネ化、低コスト化に十分満足に対応できるものである。

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