図面 (/)

技術 誘導多能性幹細胞を製造する方法、誘導多能性幹細胞樹立過程における点変異を抑制する方法、及び誘導多能性幹細胞

出願人 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
発明者 荒木良子小原千寿香藤森ゆう子安倍真澄
出願日 2019年12月20日 (1年1ヶ月経過) 出願番号 2019-230940
公開日 2020年9月24日 (4ヶ月経過) 公開番号 2020-150935
状態 未査定
技術分野 微生物、その培養処理
主要キーワード エクスパンド パッセージ アライメントエラー 偽陽性候補 相互置換 SOX エピソーマルベクター ジヒドロローダミン
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年9月24日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (6)

課題

ゲノム中の点変異数が少ないiPS細胞を製造する方法、iPS細胞樹立過程における点変異を抑制する方法、及び全ゲノム中の点変異数が抑制されたiPS細胞を提供すること。

解決手段

全ゲノム中の点変異数200以下及び全点変異におけるトランスバージョン点変異の存在比率20〜50%の誘導多能性幹細胞の製造方法であって、ヒト急性細胞性白血病細胞由来細胞株(RCB3052)と比較して細胞中活性酸素種の量が1/4以下の体細胞赤血球前駆細胞巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を前記誘導多能性幹細胞に誘導する工程を含む方法。

概要

背景

iPS細胞は、特定の3種又は4種の遺伝子(OCT3/4、SOX2、KLF4、及びc−MYC)を体細胞に導入し、ヒトの場合bFGFの存在下で培養することにより製造することができる旨が開示されている(例えば、特許文献1、2等)。
最近、iPS細胞において、点変異等の「ゲノム変異」が将来の癌化等の原因となる可能性が指摘されている。

非特許文献1には、iPS細胞誘導過程において、デノボコピー数変異及び点変異が生じる旨、及び、抗酸化剤の添加によりデノボコピー数変異の発生は抑制し得る一方、点変異の発生は抗酸化剤の添加では抑制し得ない旨、開示されている。即ち、iPS細胞誘導過程におけるデノボコピー数変異は酸化ストレスが原因であるものの、点変異の原因は酸化ストレスではない旨の仮説が開示されている。
なお、酸化ストレスとは、細胞内における活性酸素種による酸化作用と、抗酸化物質等による抗酸化作用とのバランスとして定義され、例えば、酸化ストレスが小さいことは、活性酸素種による酸化作用に対して抗酸化作用が強く、酸化反応を防止ないし還元反応亢進することと知られている。

概要

全ゲノム中の点変異数が少ないiPS細胞を製造する方法、iPS細胞樹立過程における点変異を抑制する方法、及び全ゲノム中の点変異数が抑制されたiPS細胞を提供すること。全ゲノム中の点変異数200以下及び全点変異におけるトランスバージョン点変異の存在比率20〜50%の誘導多能性幹細胞の製造方法であって、ヒト急性細胞性白血病細胞由来細胞株(RCB3052)と比較して細胞中の活性酸素種の量が1/4以下の体細胞、赤血球前駆細胞巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を前記誘導多能性幹細胞に誘導する工程を含む方法。

目的

本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、全ゲノム中の点変異数が少ないiPS細胞を製造する方法、iPS細胞樹立過程における点変異を抑制する方法、及び全ゲノム中の点変異数が抑制されたiPS細胞の提供を目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

ゲノム中の点変異数200以下及び全点変異におけるトランスバージョン点変異の存在比率20〜50%の誘導多能性幹細胞の製造方法であって、ヒト急性細胞性白血病細胞由来細胞株(RCB3052)と比較して細胞中活性酸素種の量が1/4以下の体細胞赤血球前駆細胞巨核球血小板)の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を前記誘導多能性幹細胞に誘導する工程を含む方法。

請求項2

前記誘導多能性幹細胞が、全ゲノム中のトランスバージョン点変異数及びトランジション点変異数がいずれも80個以下の誘導多能性幹細胞である、請求項1に記載の製造方法。

請求項3

ヒト急性T細胞性白血病細胞由来細胞株(RCB3052)と比較して細胞中の活性酸素種の量が1/4以下の細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの細胞を末梢血液よりも含有比率が高い状態で含有する試料を前記末梢血液から調製する工程、及び前記試料における前記細胞を誘導多能性幹細胞に誘導する工程を含む誘導多能性幹細胞を製造する方法。

請求項4

前記体細胞又は前記調製された細胞が自家細胞であり、前記誘導多能性幹細胞が自家移植用である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。

請求項5

誘導多能性幹細胞の点変異を抑制する方法であって、ヒト急性T細胞性白血病細胞由来細胞株(RCB3052)と比較して細胞中の活性酸素種の量が1/4以下の体細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を用いる方法。

請求項6

全ゲノム中のトランスバージョン点変異数及びトランジション点変異数をいずれも80個以下に抑制する、請求項5に記載の方法。

請求項7

全ゲノム中の点変異数200以下及び全点変異におけるトランスバージョン点変異の存在比率20〜50%の誘導多能性幹細胞。

請求項8

全ゲノム中のトランスバージョン点変異数及びトランジション点変異数がいずれも80個以下の誘導多能性幹細胞である、請求項7に記載の誘導多能性幹細胞。

請求項9

請求項7又は8に記載の誘導多能性幹細胞を、全細胞数のうち15%以上の存在比率で含有する細胞集団

技術分野

0001

本発明は、全ゲノム中の点変異数が少ない誘導多能性幹細胞(以下、「iPS細胞」ともいう。)を製造する方法、iPS細胞樹立過程における点変異を抑制する方法、及び全ゲノム中の点変異数が抑制されたiPS細胞に関する。

背景技術

0002

iPS細胞は、特定の3種又は4種の遺伝子(OCT3/4、SOX2、KLF4、及びc−MYC)を体細胞に導入し、ヒトの場合bFGFの存在下で培養することにより製造することができる旨が開示されている(例えば、特許文献1、2等)。
最近、iPS細胞において、点変異等の「ゲノム変異」が将来の癌化等の原因となる可能性が指摘されている。

0003

非特許文献1には、iPS細胞誘導過程において、デノボコピー数変異及び点変異が生じる旨、及び、抗酸化剤の添加によりデノボコピー数変異の発生は抑制し得る一方、点変異の発生は抗酸化剤の添加では抑制し得ない旨、開示されている。即ち、iPS細胞誘導過程におけるデノボコピー数変異は酸化ストレスが原因であるものの、点変異の原因は酸化ストレスではない旨の仮説が開示されている。
なお、酸化ストレスとは、細胞内における活性酸素種による酸化作用と、抗酸化物質等による抗酸化作用とのバランスとして定義され、例えば、酸化ストレスが小さいことは、活性酸素種による酸化作用に対して抗酸化作用が強く、酸化反応を防止ないし還元反応亢進することと知られている。

0004

特許第4411363号公報
特許第5098028号公報

先行技術

0005

Junfeng Jiら.Antioxidant Supplementation Reduces Genomic Aberrations in Human Induced Pluripotent Stem Cells.;Stem Cell Reports;Vol.2;44−51;January 14,2014

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、全ゲノム中の点変異数が少ないiPS細胞を製造する方法、iPS細胞樹立過程における点変異を抑制する方法、及び全ゲノム中の点変異数が抑制されたiPS細胞の提供を目的とするものである。

課題を解決するための手段

0007

上述のように、非特許文献1では、iPS細胞誘導過程における点変異の発生は抗酸化剤の添加では抑制し得ず、点変異の原因は活性酸素種による酸化ストレスではない旨の仮説が開示されている。
この仮説に反し、本発明者らは、iPS細胞に誘導される原料細胞である体細胞として酸化ストレスが小さい体細胞(具体的には、活性酸素種発生が少ない体細胞及び活性酸素種除去活性が高い体細胞よりなる群から選択される少なくとも一方の体細胞)を用いることでiPS細胞誘導過程の点変異を抑制し得ることを見出した。また、本発明者らは、抑制される点変異がトランスバージョン点変異(プリン塩基ピリミジン塩基との相互置換)とトランジション点変異(プリン塩基同士又はピリミジン塩基同士の相互置換)の双方であることを確認した。以上の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
非特許文献1に記載のように、iPS細胞誘導過程及びその後の数パッセージにおいて抗酸化剤を添加する方法では、iPS細胞誘導過程の点変異を抑制するほどに十分な酸化ストレスの低減には至らなかったものと、本発明者らは、推測する。

0008

すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)全ゲノム中の点変異数200以下及び全点変異におけるトランスバージョン点変異の存在比率20〜50%の誘導多能性幹細胞の製造方法であって、ヒト急性細胞性白血病細胞由来細胞株(RCB3052)と比較して細胞中の活性酸素種の量が1/4以下の体細胞、赤血球前駆細胞巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を前記誘導多能性幹細胞に誘導する工程を含む方法。
(2)前記誘導多能性幹細胞が、全ゲノム中のトランスバージョン点変異数及びトランジション点変異数がいずれも80個以下の誘導多能性幹細胞である、(1)に記載の製造方法。
(3)ヒト急性T細胞性白血病細胞由来細胞株(RCB3052)と比較して細胞中の活性酸素種の量が1/4以下の細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの細胞を末梢血液よりも含有比率が高い状態で含有する試料を前記末梢血液から調製する工程、及び前記試料における前記細胞を誘導多能性幹細胞に誘導する工程を含む誘導多能性幹細胞を製造する方法。
(4)前記体細胞又は前記調製された細胞が自家細胞であり、前記誘導多能性幹細胞が自家移植用である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の製造方法。
(5)誘導多能性幹細胞の点変異を抑制する方法であって、ヒト急性T細胞性白血病細胞由来細胞株(RCB3052)と比較して細胞中の活性酸素種の量が1/4以下の体細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を用いる方法。
(6)全ゲノム中のトランスバージョン点変異数及びトランジション点変異数をいずれも80個以下に抑制する、(5)に記載の方法。
(7)全ゲノム中の点変異数200以下及び全点変異におけるトランスバージョン点変異の存在比率20〜50%の誘導多能性幹細胞。
(8)全ゲノム中のトランスバージョン点変異数及びトランジション点変異数がいずれも80個以下の誘導多能性幹細胞である、(7)に記載の誘導多能性幹細胞。
(9)上記(7)又は(8)に記載の誘導多能性幹細胞を、全細胞数のうち15%以上の存在比率で含有する細胞集団

発明の効果

0009

本発明によれば、全ゲノム中の点変異(特に、トランスバージョン点変異数及びトランジション点変異数の両方)数が少ないiPS細胞を製造する方法、iPS細胞樹立過程における点変異を抑制する方法、及び全ゲノム中の点変異数が抑制されたiPS細胞を提供することができる。
また、本発明によれば、全ゲノム中、挿入、欠失及び置換の総変異数が少ないiPS細胞を製造する方法、iPS細胞樹立過程における、挿入、欠失及び置換の総変異を抑制する方法、及び全ゲノム中の、挿入、欠失及び置換の総変異が抑制されたiPS細胞を提供することができる。

図面の簡単な説明

0010

フローサイトメトリーによるコントロール細胞であるJurkat細胞と、赤芽球との活性酸素種量の比較を示す図である。
赤芽球から誘導した実施例のiPS細胞クローン1〜4における点変異数を示す図である。
赤芽球から誘導した実施例のiPS細胞クローン1〜14における点変異数を示す図である。
実施例のiPS細胞クローン1〜4における点変異組成を示す図である。
赤芽球から誘導した実施例のiPS細胞クローン1〜14における挿入、欠失及び置換の変異総数を示す図である。

0011

以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
また、本明細書において、「〜」は特に断りがなければ以上から以下を表す。

0012

≪iPS細胞を製造する方法≫
本発明の第1の態様は、全ゲノム中の点変異数200以下及び全点変異におけるトランスバージョン点変異の存在比率20〜50%のiPS細胞の製造方法であって、ヒト急性T細胞性白血病細胞由来細胞株(RCB3052)(以下、単に「Jurkat細胞」ともいう。)と比較して細胞中の活性酸素種の量が1/4以下の体細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞(megakaryocyte−erythrocyte progenitors(MEPs);赤血球及び巨核球に共通の前駆細胞)よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を前記iPS細胞に誘導する工程を含むiPS細胞を製造する方法である。
本発明の第2の態様は、Jurkat細胞と比較して細胞中の活性酸素種の量が1/4以下の細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの細胞を末梢血液よりも含有比率が高い状態で含有する試料を前記末梢血液から調製する工程、及び前記試料における前記細胞をiPS細胞に誘導する工程を含むiPS細胞を製造する方法である。

0013

Jurkat細胞は、一般的なT細胞としての性質を保持することから、T細胞関連の研究用細胞としてよく使用され得、一般的な体細胞の1つのモデル細胞となり得る。
本発明においては、Jurkat細胞は、原料細胞となる細胞ないし細胞集団における個々の細胞中の活性酸素種の量を相対的に定量化するための対照コントロール)として使用する。

0014

本発明において、細胞中の活性酸素種の量は、ジヒドロローダミン123を上記細胞を含む溶液中に予め添加し、フローサイトメトリーにより個々の細胞の標識量を定量して算出した量である。

0015

本発明は、一般的な体細胞(例えば、Jurkat細胞)と比較して、細胞中の活性酸素種の量が少ない(具体的には、1/4以下)体細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を原料細胞として用いてiPS細胞に誘導することにより、全ゲノム中の点変異数が少ない(具体的には、点変異数200以下及びトランスバージョン点変異の存在比率20〜50%)iPS細胞を製造することができる。その理由は、iPS細胞樹立過程における、トランスバージョン点変異及びトランジション点変異の両方の点変異の原因が活性酸素種等の酸化ストレスによるDNA損傷であるとの本発明者らの推定に基づいている。

0016

本発明によれば、好ましくは全ゲノム中の点変異数180以下(より好ましくは点変異数160以下、更に好ましくは点変異数150以下)のiPS細胞を製造することができる。
また、本発明によれば、全点変異におけるトランスバージョン点変異の存在比率が、20〜50%(好ましくは25〜45%)のiPS細胞を製造することができる。
また、本発明によれば、全ゲノム中、本手法にて測定した挿入変異欠失変異及び置換変異の総数を10以下(好ましくは9以下、より好ましくは8以下)のiPS細胞を製造することができる。

0017

上記体細胞中の活性酸素種の量としては、Jurkat細胞に対して1/5以下が好ましく、1/6以下がより好ましい。
上記体細胞中の活性酸素種の量の下限値としては、特に制限はないが、Jurkat細胞に対して、例えば、1/100以上が挙げられ、1/50以上であってもよく、1/20以上であってもよく、理想的には、体細胞中に活性酸素種を含まないことが好ましい。

0018

本発明において、Jurkat細胞に対して細胞中の活性酸素種の量が少ない(例えば、1/4以下)体細胞としては、例えば、Jurkat細胞と比べて酸化ストレスが小さい体細胞、すなわちJurkat細胞と比べて活性酸素種発生が少ない体細胞及び活性酸素種除去活性が高い体細胞よりなる群から選択される少なくとも一方の体細胞が挙げられ、上記体細胞は任意の組織の細胞(例えば、骨髄細胞血液細胞リンパ細胞等)であってもよく、具体的には、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、巨核球赤芽系前駆細胞等が挙げられるが(Shinohara A,Imai Y,Nakagawa M,Takahashi T,Ichikawa M,Kurokawa M.Intracellular reactive oxygen species mark and influence the megakaryocyte−erythrocyte progenitor fate of common myeloid progenitors. Stem Cells.2014 Feb;32(2):548−57.doi:10.1002/stem.1588.)、本発明はこれらに限定されるものではない。
上記活性酸素種の量が少ない体細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞としては、ヒトを含む任意の哺乳類動物(例えば、ヒト、マウスラットウシヒツジウマサルなど)に由来してよく、ヒト由来が好ましい。

0019

第1の態様において、原料細胞として、Jurkat細胞と比較して細胞中の活性酸素種の量が少ない(例えば、1/4以下)体細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を全細胞数のうち、好ましくは15%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上の存在比率で含有する、理想的には上記細胞のみを含有する細胞集団を使用することができる。
全細胞数のうちの上記細胞の存在比率の上限値としては特に制限はないが、例えば、100%以下、99%以下、95%以下、90%以下等が挙げられる。

0020

第2の態様は、上記活性酸素種の量が1/4以下の細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの細胞を末梢血液よりも含有比率が高い状態で含有する試料を末梢血液から調製することを特徴とする。
第2の態様における活性酸素種量の測定方法としては、第1の態様と同様である。
末梢血液は、骨髄液に比べると採取侵襲性が低い点で好ましい一方、活性酸素種の量が1/4以下の細胞の含有量が必ずしも多くはない。しかし、本態様では、末梢血液を原料としつつ、活性酸素種の量が1/4以下の細胞の含有量を高めた試料を誘導工程に用いるので、低侵襲性および点変異の少ないiPS細胞の高収量のバランスを図りやすい。この利点は、自家移植において特に好ましい。
第2の態様における活性酸素種の量が少ない(例えば、1/4以下)上記細胞としては、第1の態様において例示した細胞と同様の細胞が挙げられる。
末梢血液よりも含有比率が高い状態としては、上記細胞の含有比率が末梢血液よりも1.5倍以上高い状態が好ましく、末梢血液よりも2倍以上高い状態がより好ましく、末梢血液よりも7倍以上高い状態が更に好ましい。上記細胞の含有比率の上限値としては特に制限はないが、末梢血液に対して、1万倍以下、1千倍以下、100倍以下、50倍以下等が挙げられる。
具体的には、末梢血液よりも含有比率が高い状態において、上記試料は上記細胞を全細胞数のうち、好ましくは15%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上の存在比率で含有してよい。
上記試料における上記細胞の含有比率の上限値としては特に制限はないが、例えば、全細胞数のうち100%以下、95%以下、90%以下、85%以下等が挙げられる。

0021

第2の態様において、末梢血液から調製される、上記活性酸素種の量が少ない(例えば、1/4以下)細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの細胞を末梢血液よりも含有比率が高い状態で含有する試料としては、末梢血液中に存在していた上記細胞そのものを含有する試料であっても、末梢血液中に存在していた上記細胞から増殖(好ましくは、適切な培養液ないし培地にて選択的に増殖(エクスパンド)、より好ましくは、分化させることなくエクスパンド)させた細胞(つまり、それ自体は末梢血液に存在していなかった細胞)を含有する試料であってもよい。
上記活性酸素種の量が少ない(例えば、1/4以下)細胞を末梢血液よりも含有比率が高い状態で含有する試料を調製する方法としては特に制限はなく、分取せずに適切な培養液ないし培地にて目的の細胞(例えば、上記活性酸素種の量が少ない細胞)のみを選択的に増殖(いわゆるエクスパンド、好ましくは分化させることなくエクスパンド)させる方法、フローサイトメトリー、エルトリエーション、抗体/ビーズ分離等の任意の方法、又はそれら方法の組み合わせによる分取が挙げられる。

0022

例えば、上記活性酸素種の量が少ない(例えば、1/4以下)細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの細胞を、セルソーター機能を有するフローサイトメーターにより、分取して調製することが好ましい。これによりリアルタイムに目的の細胞集団(本発明においては、上記活性酸素種の量が少ない(例えば、1/4以下)細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの細胞を末梢血液よりも含有比率が高い状態で含む領域)を分取することができる。
より具体的には、上述のように細胞内の活性酸素種に反応して標識及び定量し得る試薬を上記細胞を含む溶液中に予め添加し、フローサイトメトリーにより個々の細胞の標識量を定量して算出した1細胞毎の活性酸素種量と、同様の方法により算出したJurkat細胞の活性酸素種量の平均値とを比較してJurkat細胞の活性酸素種量の平均値の1/4以下の細胞を、セルソーター機能を有するフローサイトメーター等により分取して調製することができる。
本発明において、実施の都度、上記方法により定量された細胞中の活性酸素種の量(上記細胞が細胞集団である場合には、活性酸素種量の平均値)と、同様の方法により定量されたJurkat細胞中の活性酸素種の量(上記Jurkat細胞がJurkat細胞集団である場合には、活性酸素種量の平均値)とを比較して活性酸素種の量が少ない(例えば、1/4以下)細胞を調製してもよい。
また、活性酸素種の量(上記細胞が細胞集団である場合には、活性酸素種量の平均値)が小さいことと直接または間接相関性を有することが既知パラメータ(例えばバイオマーカー)に基づき、活性酸素種の量が少ない(例えば、1/4以下)細胞を分取してもよい。

0023

フローサイトメトリーに使用するフローサイトメーターとしてはFACS(fluorescence activated cell sorter;Becton Dickinson社製)、より具体的には、FACSAriaII、FACSAria III(Becton Dickinson社製)等を用いることができる。
ソーティング(FACS)データの解析は、FACSDiva(Becton Dickinson社製)、FlowJo(ツリースター社製)等を用いて行い得る。
エルトリエーションとは、持続的な逆流のエルトリエーションが、細胞を複数の画分に分割する技術である。
抗体/ビーズ分離は、(免疫)磁性活性化細胞分類(MACS)によって行われる。MACSは、細胞を血液等から選択的に分離するための広く利用される技術である。
例えば、特定のマーカーについて陽性の細胞は、AutoMACSで上記特定のマーカーのMACSビーズを用いてソートすることができる。

0024

(上記iPS細胞に誘導する工程)
上記細胞を上記iPS細胞に誘導する方法としては、核初期化因子を上記細胞に導入して上記細胞を初期化して上記iPS細胞に誘導する方法が挙げられる。
上記核初期化因子としては、OCTファミリー遺伝子、KLFファミリー遺伝子、及びMYCファミリー遺伝子の各遺伝子産物の組み合わせが挙げられ、上記の3種の遺伝子に加えてSOXファミリー遺伝子の遺伝子産物をも更に含むことが万能性の獲得のために好ましい。
OCTファミリー遺伝子としては、例えば、OCT3/4(POU5F1)、OCT1A、及びOCT6などを挙げることができる。KLFファミリー遺伝子としては、KLF1、KLF2、KLF4、及びKLF5などを挙げることができる。MYCファミリー遺伝子としては、c−MYC、N−MYC、及びL−MYCなどを挙げることができる。
また、MYCファミリー遺伝子の遺伝子産物はサイトカインで置き換えることができる場合がある。サイトカインとしては、例えば、SCF又はbFGFなどが好ましいが、これらに限定されることはない。

0025

SOXファミリー遺伝子としては、例えば、SOX1、SOX3、SOX7、SOX15、SOX17、及びSOX18、好ましくはSOX2を挙げることができる。少なくともOCTファミリー遺伝子(例えばOCT3/4)、KLFファミリー遺伝子(例えばKLF4)、MYCファミリー遺伝子(例えばc−MYC)、及びSOXファミリー遺伝子(例えばSOX2)の4種の遺伝子の遺伝子産物の組み合わせを含む核初期化因子は初期化の効率の観点から好ましい。
核初期化因子は、例えば、ECAT1、ESG1、DNMT3L、ECAT8、GDF3、SOX15、ECAT15−1、FTHL17、SALL4、REX1、UTF1、STELLA、STAT3、及びGRB2からなる群から選ばれる1種以上の遺伝子の遺伝子産物を含んでいてもよい。
これらの遺伝子はいずれもヒトを含む哺乳類動物において共通して存在する遺伝子であり、上記遺伝子産物を利用するためには、任意の哺乳類動物由来(例えばマウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ウマ、サルなどの哺乳類動物由来)の遺伝子を用いることが可能である。また、野生型の遺伝子産物のほか、数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1又は2個)のアミノ酸が置換、挿入、及び/又は欠失した変異遺伝子産物であって、野生型の遺伝子産物と同様の機能を有する遺伝子産物も利用可能である。例えば、c−MYCの遺伝子産物としては野生型のほか安定型(T58A)などを用いてもよい。他の遺伝子産物についても同様である。
核初期化因子に含まれる遺伝子産物は、例えば上記遺伝子から産生されるタンパク質自体のほか、該タンパク質とその他のタンパク質又はペプチドなどとの融合遺伝子産物の形態であってもよい。
なお、核初期化因子を確認する手段としては、例えば、国際公開WO2005/80598に記載された核初期化因子のスクリーニング方法を利用することができる。当業者は上記刊行物を参照することにより核初期化因子をスクリーニングし、核初期化因子の存在及び作用を確認することができる。

0026

核初期化因子を用いて体細胞からiPS細胞を調製する方法は特に限定されず、体細胞及びiPS細胞が増殖可能な環境において核初期化因子が体細胞と接触可能であれば、いかなる方法を採用してもよい。例えば、核初期化因子に含まれる遺伝子産物を培地中に添加してもよく、あるいは核初期化因子を発現可能な遺伝子を含むベクターを用いて該遺伝子を体細胞に導入するなどの手段を採用してもよい。このようなベクターを用いる場合には、ベクターに2種以上の遺伝子を組み込んでそれぞれの遺伝子産物を体細胞において同時に発現させてもよい。
ベクターとしては、エピソーマルベクターセンダイウイルスベクターレトロウイルスベクター等が挙げられ、エピソーマルベクターが好ましい。
初期化すべき体細胞において核初期化因子に含まれる遺伝子産物の1種又は2種以上がすでに発現されている場合には、核初期化因子から該遺伝子産物を除くこともできるが、このような態様も本発明の範囲に包含されることは言うまでもない。

0027

本発明によれば、好ましくは全ゲノム中のトランジション点変異数が80個以下のiPS細胞を製造することができる。
本発明によれば、好ましくは全ゲノム中のトランスバージョン点変異数が80個以下(より好ましくは70個以下)のiPS細胞を製造することができる。
第1の態様及び第2の態様は、点変異が少ないiPS細胞を取得しやすいことから、iPS細胞バンク構築に寄与し得る。
また、第1の態様及び第2の態様は、必要に応じてエクスパンド等を行なうことにより、少量の少ない原料細胞からでも点変異が少ないiPS細胞を取得しやすいことから、他家移植に依らない患者本人由来iPS細胞の自家移植に利用し得る。つまり上記体細胞又は上記調製された細胞を自家細胞とし、製造されるiPS細胞を自家移植用とすることができる。

0028

≪iPS細胞の点変異を抑制する方法≫
本発明の第3の態様は、iPS細胞の点変異を抑制する方法であって、Jurkat細胞と比較して細胞中の活性酸素種の量が1/4以下の体細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を用いる方法である。
Jurkat細胞と比較して細胞中の活性酸素種の量が1/4以下の体細胞、赤血球の前駆細胞、巨核球の前駆細胞、及び巨核球赤芽系前駆細胞よりなる群から選択される少なくとも1つの体細胞を調製する方法については上述の通りである。
第3の態様によれば、全ゲノム中のトランジション点変異数を80個以下に抑制することができる。
第3の態様によれば、全ゲノム中のトランスバージョン点変異数を80個以下(より好ましくは70個以下)に抑制することができる。

0029

≪iPS細胞及び細胞集団≫
本発明の第4の態様は、全ゲノム中の点変異数200以下及び全点変異におけるトランスバージョン点変異の存在比率20〜50%のiPS細胞である。
第4の態様において、「全ゲノム中の点変異数200以下及び全点変異におけるトランスバージョン点変異の存在比率20〜50%のiPS細胞」を、造腫瘍性細胞の存在比を低減する観点から、全細胞数のうち15%以上の存在比率で含有する細胞集団が好ましい。上記細胞を30%以上の存在比率で含有する細胞集団がより好ましく、上記細胞を60%以上の存在比率で含有する細胞集団が更に好ましく、上記細胞を70%以上の存在比率で含有する細胞集団が特に好ましい。
全細胞数のうちの上記細胞の存在比率の上限値としては特に制限はないが、例えば、100%以下、99%以下、95%以下、90%以下等が挙げられる。
第4の態様において、全ゲノム中のトランジション点変異数が80個以下であることが好ましい。
全ゲノム中のトランスバージョン点変異数も80個以下(より好ましくは70個以下)であることが好ましい。
第4の態様に係るiPS細胞の製造方法としては特に制限はないが、第1又は第2の態様に係る製造方法により製造することができる。
第4の態様に係るiPS細胞は、他家移植用であってもよいが、変異が少ない高品質のiPS細胞として、iPS細胞バンクの細胞を用いない自家移植用として期待され得る。

0030

以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。

0031

以下、ある1名(以下、「ドナー1」ともいう。)のヒト臍帯血からエクスパンド(赤芽球を優先的に増殖させる培地にて培養)した赤芽球(赤血球の前駆細胞)を使用した。

0032

<コントロール細胞であるJurkat細胞と、赤芽球との活性酸素種量の比較>
ヒト臍帯血からエクスパンドした赤芽球を1μMのジヒドロローダミン123を含有するPBSにて染色し、細胞内活性酸素種量をFACSを用いて測定した。
また、コントロール細胞としてのJurkat細胞についても細胞内活性酸素種量をFACSを用いて測定した。結果を図1(a)に示す。図1(b)は、(a)における細胞内活性酸素種量の平均値をグラフ化した図である。
図1に示した結果から明らかなように、Jurkat細胞と比べて、赤芽球中の細胞内活性酸素種量は1/4以下であることが分かる。

0033

<赤芽球のiPS細胞への誘導>
OCT4、SOX2、KLF4、c−MYC、LIN28発現用エピソーマルベクターとして、米国非営利団体Addgene(http://www.addgene.org/Linzhao Cheng)より入手可能なpEB−C5を使用した。
2×106個の赤芽球に10μgのpEB−C5をエレクトロポレーション法(T−016プログラム;NucleofectorIIb Amaxa社製)で細胞に導入し、幹細胞因子(SCF;Peprotech社製)50ng/ml、インターロイキン3(IL−3;Peprotech社製)10ng/ml、エリスロポエチンヒトエリスロポエチン製剤エスポー;協和発酵キリン社製)2U/ml、インスリン様成長因子(IGF−1;Peprotech社製)40ng/ml、デキサメサゾン(Dexamethasone;SIGMA社製)1μM、ホロトランスフェリン(holo−transferrin;R&D社製)100μg/mlを補充した無血清培地(50%IMDM;Thermofisher社製、50%Ham’sF−12;Thermofisher社製、1%Insulin−transferrin−selenium−X supplement;Thermofisher社製、1%Chemically defined lipid concentrate;Thermofisher社製、4.45mM L−Glutamine;Thermofisher社製、50μg/mlL−ascorbic acid;SIGMA社製、5mg/mlウシ血清アルブミンナカライテスク社製、200μM 1−thioglycerol;SIGMA社製)で12ウェルプレートウェル播種した。遺伝子導入細胞は、培養後2日目に回収し、10%ウシ血清;Hyclone社製、50U/mlペニシリン・50μg/mlストレプトマイシン;Thermofisher社製を添加したDMEMフィーダー細胞上へ播種(実施例のiPS細胞クローン5のみフィーダー細胞上ではなく、ビトロネクチン上へ播種)、24時間培養を行った後、0.25mM酪酸ナトリウム(NaB;Merk Millipore社製)を含むE8培地(ヒト胚性幹細胞培地;Thermofisher社製)に換えた。遺伝子を導入して9日目から、MEFをE8培地で培養したコンディションド培地に0.25mM NaB、ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;Reprocell社製)10ng/mlを補充した培地で培養を継続した。遺伝子を導入してから2〜3週間後にESCコロニー形態を呈する新しく形成されたコロニーを採取し、それぞれ、iPS細胞のクローン1〜5とした(以下、「実施例のiPS細胞クローン1〜5」ともいう。)。
上記ドナー1とは異なる3名(以下、それぞれ、「ドナー2」、「ドナー3」、「ドナー4」ともいう。)由来の臍帯血からエクスパンドした赤芽球を使用し、上記ドナー1の場合と同様に、iPS細胞への誘導を行い、ドナー2由来のiPS細胞のクローン6〜8、ドナー3由来のiPS細胞のクローン9〜11、ドナー3由来のiPS細胞のクローン12〜14をそれぞれ得た。(以下、「実施例のiPS細胞クローン6〜14」ともいう。)。

0034

<iPS細胞における点変異の同定>
上記得られた実施例のiPS細胞クローン1〜4について、HiSeq(登録商標)X(イルミナ社製)を用いたペアエンド法(−)による全ゲノムシークエンス解析によって全ゲノムにおける点変異を同定した。
具体的には、赤芽球から誘導して上記得られたiPS細胞クローン1〜4及び親体細胞についてヒトのリファレンス配列(hg19)にCLC Genomics Workbench(Filgen)を用いてマッピングを行い、Single Nucleotide Variants(SNVs)を同定後、下記の条件で候補を絞り込んだ(Sugiura M.ら,Induced pluripotent stem cell generation−associated point mutations arise during the initial stages of the conversion of these cells.;Stem Cell Reports.2014 January 2;2(1):52−63.doi:10.1016/j.stemcr.2013.11.006.)。
1)親体細胞に検出されたSNVsを除外、2)dbSNP130;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/を除外、3)ホモポリマーシンプルリピート配列アライメントエラーを生じる可能性が高い箇所を除外、4)兄弟クローン(クローン1〜14のこと)に検出されたSNVsを除外、5)点変異アリ頻度が35%未満、65%より大きいものを除外。
結果を図2に示す。

0035

図2は、赤芽球から誘導した実施例のiPS細胞クローン1〜4における全ゲノム点変異数を示す図である。
図2において、比較として、Cheng,L.ら(Low incidence of DNA sequence variation in human induced pluripotent stem cells generated by nonintegrating plasmid expression.Cell Stem Cell(2012)Mar 2;10(3),337−344.)の方法により造血幹細胞からエピソーマルベクターを用いて誘導して得られたiPS細胞BC1、BCT1、E1における全ゲノム点変異数も示す。

0036

上記iPS細胞BC1、BCT1及びE1について、より詳細には、1種類の成人骨髄細胞集団から骨髄CD34(+)細胞集団と骨髄CD34(−)接着細胞集団(間葉系幹細胞集団)とを採取後、それぞれ、下記(i)〜(iii)のようにして樹立したiPS細胞である。
(i)iPS細胞BC1は、上記得られた骨髄CD34(+)細胞集団を5つの核初期化因子を発現する単一のエピソーマルベクター(pEB−C5)とともに4日培養することにより樹立したiPS細胞である(Chou,B.K.,Mali,P.,Huang,X.,Ye,Z.,Dowey,S.N.,Resar,L.M.S.,Zou,C.,Zhang,Y.A.,Tong,J.,and Cheng,L.(2011).Efficient human iPS cell derivation by a non−integrating plasmid from blood cells with unique epigenetic and gene expression signatures.Cell Res.21,518−529.)。
(ii)iPS細胞BCT1は、エピソーマルベクター(pEB−C5)とともに、SV40ラージT抗原(SV40−LT)を一時的に発現する追加のエピソーマルベクター(pEB−C5)を加えること以外はiPS細胞BC1と同様の操作により上記骨髄CD34(+)細胞集団から樹立したiPS細胞である。
(iii)iPS細胞E1は、上記得られた骨髄CD34(−)接着細胞集団をMali,P.,Chou,B.K.,Yen,J.,Ye,Z.,Zou,J.,Dowey,S.,Brodsky,R.A.,Ohm,J.E.,Yu,W.,Baylin,S.B.,et al.(2010).Butyrate greatly enhances derivation of human induced pluripotent stem cells by promoting epigenetic remodeling and the expression of pluripotency−associated genes. Stem Cells 28,713−720.及び上記Chou,B.K.らに記載の方法によりエピソーマルベクターとともに培養することにより樹立したiPS細胞である。なお、後述するiPS細胞E2についても同様である。

0037

同様に、比較として、Bhutaniら(Whole−genome mutational burden analysis of three pluripotency induction methods. Nat Commun. 2016 Feb 19;7:10536.)の方法により得られた下記(i)及び(ii)のiPS細胞における全ゲノム点変異数も示す。
(i)ヒト皮膚線維芽細胞(Science cell Catalog number 2300)からmRNAを用いて「The Stemgent mRNA Reprogramming Kit catalog number 00−0071」の製造者説明書に従って誘導したiPS細胞M1〜M3
(ii)ヒト皮膚線維芽細胞(Science cell Catalog number 2300)から複数の核初期化因子を含有するセンダイウイルスベクターを用いて「CytoTune−iPS 2.0 Sendai Reprogramming Kit,Life technology catalog number A1378001」の製造者説明書に従って誘導したiPS細胞S1〜S3

0038

図2に示した結果から明らかなように、Cheng,L.ら、Bhutaniらに記載の従来法によるiPS細胞製造方法では、エピソーマルベクター、mRNA又はセンダイウイルスベクターを用いても全ゲノムにおける点変異数が300個を超えることが分かる。
一方、特定の細胞から本発明の方法により誘導したiPS細胞クローン1〜4では、全ゲノムにおける点変異数が200個以下であることが分かる。

0039

新たに得られた実施例のiPS細胞クローン5〜14についても点変異数を同定する観点から、実施例のiPS細胞クローン1〜14について上記<iPS細胞における点変異の同定>を追試した。結果を図3に示す。
図3は、赤芽球から誘導した実施例のiPS細胞クローン1〜14における全ゲノム点変異数を示す図である。
図3において、Cheng,L.らの方法により得られた上記iPS細胞BC1、BCT1、E1及びE2の塩基配列データ、並びに、Bhutaniらの方法により得られた上記iPS細胞M1〜M3及びS1〜S3の塩基配列データをそれぞれ公共データベースから取得し、上記<iPS細胞における点変異の同定>に記載の方法により上記各塩基配列データを解析し、全ゲノム点変異数を算出して得たiPS細胞BC1、BCT1、E1、E2、M1〜M3及びS1〜S3における全ゲノム点変異数も比較として示す。

0040

図3に示した結果から明らかなように、図2に示した結果と同様に、Cheng,L.ら、Bhutaniらに記載の従来法によるiPS細胞製造方法では、エピソーマルベクター、mRNA又はセンダイウイルスベクターを用いても全ゲノムにおける点変異数が300個を超えることが分かる。
一方、特定の細胞から本発明の方法により誘導したiPS細胞クローン1〜14では、全ゲノムにおける点変異数が200個以下であることが分かる。

0041

<点変異組成の決定>
赤芽球から誘導した実施例のiPS細胞クローン1〜4における点変異組成(トランジション点変異及びトランスバージョン点変異の存在割合)の決定を行なった。
図4(a)は、赤芽球から誘導した実施例のiPS細胞クローン1〜4における点変異組成を示す図である。
図4(b)において、比較として、Sugiura M.ら,Induced pluripotent stem cell generation−associated point mutations arise during the initial stages of the conversion of these cells.;Stem Cell Reports.2014 January 2;2(1):52−63.doi:10.1016/j.stemcr.2013.11.006.に記載の方法により線維芽細胞から誘導したiPS細胞118、119、136(以下、「比較例のiPS細胞クローン1〜3」ともいう。)における点変異組成も示す。
図4(b)に示した結果から明らかなように、比較例のiPS細胞クローン1〜3においていずれも、全点変異数(SNVs)が200個を超え、トランジション点変異(ts)が80個を超え、トランスバージョン点変異(tv)も130個以上であることが分かる。
一方、図4(a)に示した結果から明らかなように、特定の細胞から本発明の方法により誘導したiPS細胞クローン1〜4では、全点変異数が150個以下であり、トランジション点変異も80個以下であり、トランスバージョン点変異も70個以下であることが分かる。
したがって、本発明によれば、全点変異数を低減し、トランジション点変異も低減し、トランスバージョン点変異もバランスよく低減していることが分かる。

0042

<iPS細胞における挿入・欠失・置換の同定>
上記<iPS細胞における点変異の同定>に用いたHiSeq(登録商標)X(イルミナ社製)を用いたペアエンドリードを、ヒトのリファレンス配列(hg19)にCLC Genomics Workbench(Filgen)を用いて、点変異の際とは異なる条件にてマッピングを行い(Length Fraction,0.5;Similarity Fraction,0.97;Non−Specific Match Handling,Ignore.)、INDEL同定後、SNVsにおける絞り込み条件と同様の手法にて候補を絞り込んだ。最後に、アラインメント不良による偽陽性候補目視確認にて除外した。
結果を図5に示す。

0043

図5は、赤芽球から誘導した実施例のiPS細胞クローン1〜14における挿入、欠失及び置換の変異総数を示す図である。
図5において、比較として、Cheng,L.らの方法により造血幹細胞からエピソーマルベクターを用いて誘導して得られたiPS細胞BC1、BCT1における全ゲノム中の挿入、欠失及び置換の変異総数も示す。

実施例

0044

図5に示した結果から明らかなように、Cheng,L.らに記載の従来法によるiPS細胞製造方法では、エピソーマルベクターを用いても全ゲノムにおける全ゲノム中の挿入、欠失及び置換の変異総数が12個を超えることが分かる。
一方、特定の細胞から本発明の方法により誘導したiPS細胞クローン1〜14では、全ゲノム中の挿入、欠失及び置換の変異総数が10個以下であることが分かる。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 株式会社カネカの「 多能性幹細胞凝集抑制剤」が 公開されました。( 2020/12/17)

    【課題・解決手段】この出願は、細胞周期停止剤を含むことを特徴とする多能性幹細胞の浮遊培養に用いるための多能性幹細胞凝集抑制剤、その凝集抑制剤を含む培地中で多能性幹細胞を浮遊培養する工程を含む、多能性幹... 詳細

  • 株式会社カネカの「 細胞凝集促進剤」が 公開されました。( 2020/12/17)

    【課題・解決手段】本発明は、細胞凝集塊の大きさを機械学的/物理学的な手段に依らずに適切に制御するための手段を提供することを目的とし、具体的には、SRF阻害剤を含む、細胞の浮遊培養に用いるための細胞凝集... 詳細

  • 長瀬産業株式会社の「 エルゴチオネインの製造方法」が 公開されました。( 2020/12/17)

    【課題・解決手段】安価かつ大量にエルゴチオネインを製造する方法および該方法に使用する細菌を提供する。エルゴチオネインもしくはその関連物質、またはこれらの混合物の製造方法であって、エルゴチオネイン生産能... 詳細

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ