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技術 金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ

出願人 日鉄ステンレス株式会社
発明者 高野光司吉岡優馬
出願日 2019年3月13日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-045695
公開日 2020年9月17日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-147785
状態 未査定
技術分野 アーク溶接一般 突合せ溶接及び特定物品の溶接 プラスチック等のその他の成形、複合成形(変更なし)
主要キーワード 溶着ビード 技術方式 焼結熱処理 系ワイヤ 積層造形用 積層造形 溶着条件 熱間押し出し
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題

金属の溶着、積層による3次元造形による金属部品10の製造に使用したとき、造形した部品熱変形内部割れ内部空隙を抑制して均一な材質金属組織が得られる金属3Dプリンタ用の素材として好適で安価なステンレス鋼系の金属ワイヤを提供する。

解決手段

質量%でC:0.35%以下、Si:3.0%以下、Mn:5.0%以下、S:0.0002〜0.4%、P:0.1%以下、Ni:0.05〜6,0%、Cr:5.0〜18.0%、Mo+W:0.05〜5.0%、N:0.1%以下、O:0.03%以下、Al:2.0%以下であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学成分を有し、(a)式で表されるMs点が50℃以上で、且つ、(b)式で表されるAc1点が800℃以下であることを特徴とする金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤである。

概要

背景

近年、金属3Dプリンタ革新的な生産技術として期待され、様々な技術が提案されている。主な技術方式として金属粉末を使用する場合と、金属ワイヤを使用する場合が提案されている。

金属粉末を使用する場合、例えば、SUS630の粉末を用いて電子ビーム照射して溶融固化させて3次元に積層する製造方法が開示されている(特許文献1)。また、SUS304,SUS316系の金属粉末とバインダーを3次元プリンティングし、その後、脱脂焼結熱処理を行って部品成型する製造方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら、金属粉末を使用する場合、素材の価格が高く、空隙率が高いため部品の信頼性が低くなる。更に、バインダーを使用する場合、脱脂、焼結工程が必要になるばかりか焼結により大きな体積変化を生じるため部品寸法精度に誤差を生じ易い。

一方、金属ワイヤを使用する場合、例えば、金属ワイヤによる溶着ビードを積層して3次元部品造形する方法が開示されている(特許文献3)。また、ステンレス鋼の金属ワイヤをアークプラズマを制御して溶着し、3次元に積層させる製造方法が開示されている(特許文献4)。更に、ステンレス鋼の金属ワイヤを2つの堆積装置で溶着・積層させて堆積時の高熱による熱変形応力内部割れを低減する製造方法が開示されている(特許文献5)。加えて、複数のマルチワイヤによるアーク溶接による高効率な3次元積層造形に関する製造方法が開示されている(特許文献6)。金属ワイヤを溶着して3次元に積層する場合、寸法変動は抑制されるが、方法制御のみでは熱変形、内部割れや内部空隙を十分には低減できない。更に、繰り返し積層による加熱・冷却により金属組織が変化し、材質が不均一になるという課題もある。特に、炭窒化物析出し、鋭敏化を生じて耐食性耐久性劣化を引き起こす。

このように従来の3次元積層技術では、部品の寸法変動,熱変形,内部割れ、空隙、材質の均一性、金属組織の安定性のすべてを抑制でき、耐久性・信頼性の高い部品を得ることは難しい。

概要

金属の溶着、積層による3次元造形による金属部品10の製造に使用したとき、造形した部品の熱変形,内部割れ、内部空隙を抑制して均一な材質・金属組織が得られる金属3Dプリンタ用の素材として好適で安価なステンレス鋼系の金属ワイヤを提供する。質量%でC:0.35%以下、Si:3.0%以下、Mn:5.0%以下、S:0.0002〜0.4%、P:0.1%以下、Ni:0.05〜6,0%、Cr:5.0〜18.0%、Mo+W:0.05〜5.0%、N:0.1%以下、O:0.03%以下、Al:2.0%以下であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学成分を有し、(a)式で表されるMs点が50℃以上で、且つ、(b)式で表されるAc1点が800℃以下であることを特徴とする金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤである。

目的

本発明の解決すべき課題は、金属の溶着、積層による3次元造形による金属部品の製造方法において、寸法変動を抑制できる金属ワイヤによる造形をベースとして、部品の耐久性・信頼性を向上し、部品の熱変形,内部割れ、内部空隙を抑制して均一な材質・金属組織が得られる、金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤであって、金属3Dプリンタ用の素材として好適で安価なステンレス鋼系の金属ワイヤを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

質量%で、C:0.35%以下、Si:3.0%以下、Mn:5.0%以下、S:0.0002〜0.4%、P:0.1%以下、Ni:0.05〜6.0%、Cr:5.0〜18.0%、Mo、Wの1種又は2種を合計で0.05〜5.0%、N:0.1%以下、O:0.03%以下、Al:2.0%以下であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学成分を有し、(a)式で表されるMs点が50℃以上で、且つ、(b)式で表されるAc1点が800℃以下であることを特徴とする金属3Dプリンタによる溶着積層造形用金属ワイヤ。Ms(℃)=600−600C−600N−13Mn−30Ni−12Cr−54Cu−46Mo・・・(a)Ac1(℃)=700−70Ni−25Mn+10Cr+25Si+30Al・・・(b)上記式中の元素記号は、当該元素含有量(質量%)を意味する。

請求項2

更に質量%で、Cu:5.0%以下、Co:5.0%以下、B:1.0%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。

請求項3

更に質量%で、Sn:0.5%以下、Sb:0.5%以下、Au:0.5%以下、In:0.5%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。

請求項4

更に質量%で、Mg:0.02%以下、Ca:0.02%以下、Hf:0.02%以下、REM:0.02%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。

請求項5

更に質量%で、Ti:2.0%以下、Nb:2.0%以下、V:2.0%以下、Ta:2.0%以下、Zr:2.0%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。

請求項6

更に質量%で、Bi:0.4%以下、Pb:0.4%以下、Ag:0.4%以下、Se:0.4%以下、Te:0.4%以下、Zn:0.1%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。

技術分野

0001

本発明は、金属3Dプリンタによる溶着積層造形用金属ワイヤに関し、金属3Dプリンタ用素材として、積層による繰り返しの溶着・加熱・冷却においても十分な耐熱変形特性,均一な材料特性,耐内部割れ性に優れた信頼性の高い高耐久部品用とすることができる、ステンレス鋼系の金属ワイヤに関するものである。

背景技術

0002

近年、金属3Dプリンタは革新的な生産技術として期待され、様々な技術が提案されている。主な技術方式として金属粉末を使用する場合と、金属ワイヤを使用する場合が提案されている。

0003

金属粉末を使用する場合、例えば、SUS630の粉末を用いて電子ビーム照射して溶融固化させて3次元に積層する製造方法が開示されている(特許文献1)。また、SUS304,SUS316系の金属粉末とバインダーを3次元プリンティングし、その後、脱脂焼結熱処理を行って部品成型する製造方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら、金属粉末を使用する場合、素材の価格が高く、空隙率が高いため部品の信頼性が低くなる。更に、バインダーを使用する場合、脱脂、焼結工程が必要になるばかりか焼結により大きな体積変化を生じるため部品寸法精度に誤差を生じ易い。

0004

一方、金属ワイヤを使用する場合、例えば、金属ワイヤによる溶着ビードを積層して3次元部品造形する方法が開示されている(特許文献3)。また、ステンレス鋼の金属ワイヤをアークプラズマを制御して溶着し、3次元に積層させる製造方法が開示されている(特許文献4)。更に、ステンレス鋼の金属ワイヤを2つの堆積装置で溶着・積層させて堆積時の高熱による熱変形応力、内部割れを低減する製造方法が開示されている(特許文献5)。加えて、複数のマルチワイヤによるアーク溶接による高効率な3次元積層造形に関する製造方法が開示されている(特許文献6)。金属ワイヤを溶着して3次元に積層する場合、寸法変動は抑制されるが、方法制御のみでは熱変形、内部割れや内部空隙を十分には低減できない。更に、繰り返し積層による加熱・冷却により金属組織が変化し、材質が不均一になるという課題もある。特に、炭窒化物析出し、鋭敏化を生じて耐食性耐久性劣化を引き起こす。

0005

このように従来の3次元積層技術では、部品の寸法変動,熱変形,内部割れ、空隙、材質の均一性、金属組織の安定性のすべてを抑制でき、耐久性・信頼性の高い部品を得ることは難しい。

先行技術

0006

特開2018−176269号公報
特開2018−536770号公報
特開2003−266174号公報
特開2018−507317号公報
特開2018−87379号公報
特開2018−187679号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明の解決すべき課題は、金属の溶着、積層による3次元造形による金属部品の製造方法において、寸法変動を抑制できる金属ワイヤによる造形をベースとして、部品の耐久性・信頼性を向上し、部品の熱変形,内部割れ、内部空隙を抑制して均一な材質・金属組織が得られる、金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤであって、金属3Dプリンタ用の素材として好適で安価なステンレス鋼系の金属ワイヤを提供することである。

課題を解決するための手段

0008

本発明者等は、上記課題を解決するために種々検討した結果、金属ワイヤによる溶着、積層で3次元造形する3Dプリンタの製造方法において、金属組織の変態温度を制御して低C,Nのマルテンサイト組織が常に現れるように成分調整され、耐熱性耐熱変形性)、材質・金属組織均一性,耐内部割れ性、耐内部空隙性に優れたステンレス鋼系の金属ワイヤを使用することで上記課題を解決する知見を得た。本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。

0009

(1)質量%で、
C:0.35%以下、
Si:3.0%以下、
Mn:5.0%以下、
S:0.0002〜0.4%、
P:0.1%以下、
Ni:0.05〜6.0%、
Cr:5.0〜18.0%、
Mo、Wの1種又は2種を合計で0.05〜5.0%、
N:0.1%以下、
O:0.03%以下、
Al:2.0%以下
であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学成分を有し、(a)式で表されるMs点が50℃以上で、且つ、(b)式で表されるAc1点が800℃以下であることを特徴とする金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。
Ms(℃)=600−600C−600N−13Mn−30Ni−12Cr−54Cu−46Mo・・(a)
Ac1(℃)=700−70Ni−25Mn+10Cr+25Si+30Al ・・・(b)
上記式中の元素記号は、当該元素含有量(質量%)を意味する。
(2)更に質量%で、
Cu:5.0%以下、
Co:5.0%以下、
B:1.0%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする前記(1)に記載の金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。
(3)更に質量%で、
Sn:0.5%以下、
Sb:0.5%以下、
Au:0.5%以下、
In:0.5%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。
(4)更に質量%で、
Mg:0.02%以下、
Ca:0.02%以下、
Hf:0.02%以下、
REM:0.02%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。
(5)更に質量%で、
Ti:2.0%以下、
Nb:2.0%以下、
V:2.0%以下、
Ta:2.0%以下、
Zr:2.0%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。
(6)更に質量%で、
Bi:0.4%以下、
Pb:0.4%以下、
Ag:0.4%以下、
Se:0.4%以下、
Te:0.4%以下、
Zn:0.1%以下の内、1種類以上を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤ。

発明の効果

0010

本発明によれば、金属3Dプリンタの成型において、熱変形、内部割れの抑制が可能で、材質・金属組織均一性に優れ、部品の信頼性を向上させてコストを大幅に低減できる効果を発揮できる、金属3Dプリンタによる溶着積層造形用のステンレス鋼系の金属ワイヤを提供できる。

図面の簡単な説明

0011

金属3Dプリンタによ3次元造形した金属部品の斜視図である。

0012

以下に本発明の各要件について説明する。なお、以下の説明における(%)は特に断りがない限り、質量(%)である。

0013

本発明は、金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤを対象とする。金属3Dプリンタにより溶着積層造形を行って3次元造形を行う際、耐寸法変動と基本的な耐熱性(耐熱変形性)を確保することが必要である。金属ワイヤとしてステンレス鋼系ワイヤを用い、当該ワイヤによる溶着、積層造形をベースに考え、空隙を抑制するために適度な湯流れ性を制御し、内部割れ、材質均一性の確保のため変態点やC,N等の成分を調整して、繰り返し溶着、加熱、冷却されても安定的なマルテンサイト組織が得られるように成分設計されたものであり、金属3Dプリンタ用の素材として好適である。

0014

まず、本発明の金属ワイヤの必須成分組成について説明する。
C、Nは、内部割れを抑制し、材質均一性を確保するためにCは0.35%以下、Nは0.1%以下に限定する。Cが0.35%を超え、あるいはNが0.1%を超えると、繰り返しの溶着、加熱、冷却工程で内部割れが発生し易く、また、炭窒化物系析出物を析出促進させ硬さや金属組織がばらつき、鋭敏化により耐食性も劣化する。好ましくは、Cは0.20%以下、Nは0.05%以下である。更に、好ましくは、Cは0.08%以下、Nは0.03%以下である。C、Nは低いほど好ましく、下限を設けない。

0015

Siは、溶着時の脱酸に有効であるが、過剰に添加すると繰り返しの溶着、加熱、冷却工程で炭窒化物等の金属間化合物の析出を促進して内部割れを助長し、材質均一性や金属組織均一性が劣化する。そのため、3.0%以下に限定する。好ましくは、0.05%以上、2.0%以下である。

0016

Mnは、溶着時の脱酸に有効であるが、過剰に添加すると繰り返しの溶着、加熱、冷却工程でマルテンサイト組織が安定的に得られない。そのため、5.0%以下に限定する。好ましくは、0.05%以上、3.0%以下である。

0017

Sは、溶着時の湯流れ性を適度に確保して空隙率を低減させ、また、必要に応じてその後の機械加工時切削加工性を向上させるため、0.0002%以上添加する。しかしながら、0.4%を超えて添加すると逆に湯流れ性が加速されて溶着時に変形し易いばかりか、内部割れが発生しやすくなるため、上限を0.4%とする。好ましくは、0.0004〜0.10%である。

0018

Pは、溶着時の内部割れを抑制するため0.1%以下に限定する。好ましくは、0.05%以下である。Pは低いほど好ましく、下限を設けない。

0019

Niは、繰り返しの溶着、加熱、冷却工程でマルテンサイト組織を安定的に得て材質・金属組織の均一性を確保するために0.05%以上添加する。しかしながら、6.0%を超えて添加するとオーステナイト組織主体となり、主にマルテンサイト組織が得られなくなり、材質が不均一となる。そのため、上限を6.0%とする。好ましくは、0.2〜5.0%である。

0020

Crは、マトリックスに固溶することで耐熱性(耐熱変形)と耐食性(耐久性)を確保するために5.0%以上添加する。しかしながら、18.0%を超えて添加するとフェライト組織が主体となり、主にマルテンサイト組織が得られなくなり、材質・金属組織が不均一となる。そのため、上限を18.0%に限定する。好ましくは、6.0〜16.5%である。

0021

Mo、Wは、マトリックスに固溶することで耐熱性(耐熱変形)を確保するために、Mo、Wの1種又は2種を合計で0.05%以上添加する。しかしながら、合計で5.0%を超えて添加するとフェライト組織が主体となり、主にマルテンサイトが得られなくなり、材質・金属組織が不均一となる。そのため、上限を4.0%に限定する。好ましくは、Mo、Wの1種又は2種の合計が0.1〜3.0%である。

0022

Oは、溶着時の湯流れ性を適度に確保して空隙率を低減させるため、0.03%以下で含有させる。0.03%を超えて添加すると空隙率が高く、また、内部割れが発生しやすくなるため、上限を0.03%にする。好ましくは、0.001〜0.02%である。

0023

Alは、溶着時の脱酸に有効であるが、過剰に添加すると繰り返しの溶着、加熱、冷却工程でマルテンサイト組織が安定的に得られず、材質均一性が劣化するばかりか、粗大な酸化物を形成して内部割れを助長する。そのため、上限を2.0%にする。好ましくは、0.001〜1.2%である。

0024

前記(a)式で表されるMs点は、高温から冷却した時にオーステナイトからマルテンサイトに変態する開始温度を表し、前記(b)式で表されるAc1点は、低温から高温に加熱された時のマルテンサイトがオーステナイトに変態する開始温度を表す。繰り返し高温に加熱される際に材質・金属組織の均一性を確保するためには常にマルテンサイト変態して焼きが入り、低温で加熱される際にはマルテンサイト組織が軽微に焼き戻されて軟化が進まないことが必要となる。後述の実施例で記載するように種々検討した結果、低C,低Nと合わせてMs点が50℃以上、且つ、Ac1点が800℃以下となるように成分調整することで硬さのばらつきΔHvが80以下となり、鋭敏化もなく金属組織の均一性が得られることがわかった。Ms点が50℃未満の場合、マルテンサイト変態による焼きが進行せずにオーステナイトが残留し易くなり硬さがばらつく。一方、Ac1点が800℃を超える場合、800℃直下に加熱された部位の軟化が著しくなり、硬さがばらつくばかりか、炭窒化物が析出して鋭敏化特性も劣化する。そのため、Ms点を50℃以上、且つ、Ac1点を800℃以下に限定する。好ましくは、Ms点が80℃以上、Ac1点が760℃以下である。更に、好ましくはMs点が100℃以上、Ac1点が700℃以下である。

0025

本発明の金属ワイヤは、選択的に以下の成分を含有すると好ましい。
Cu、Co、Bは、マトリックスの靭性を向上させるため、必要に応じて添加してもよい。しかしながら、CuやCoがそれぞれ5.0%を超えて含有すると、繰り返しの溶着、加熱、冷却工程でマルテンサイト組織が安定的に得られず、材質均一性が劣化する。そのため、CuやCoの上限を5.0%にする。また、Bが1.0%を超えて含有すると内部割れが発生し易くなる。そのため、Bの上限を1.0%に限定する。好ましくは、Cu:4.0%以下、Co:4.0%以下、B:0.3%以下である。

0026

Sn,Sb、Au、Inは、マトリックスの耐食性を向上させるため、必要に応じて添加してもよい。しかしながら、それぞれ0.5%を超えて添加すると内部割れが発生し易くなる。そのため、上限を0.5%にする。好ましくは、0.4%以下である。

0027

Mg、Ca,Hf、REMは、溶着時の脱酸に有効であるため、必要に応じて添加してもよい。しかしながら、過剰に添加すると繰り返しの溶着工程で粗大な酸化物が形成して内部割れが発生し易くなる。そのため、それぞれ0.02%以下に限定する。好ましくは、0.01%以下である。

0028

Ti,Nb,V,Ta、Zrは、繰り返しの溶着、加熱、冷却工程でマトリクス微細な析出物を形成して耐熱性(耐熱変形性)を高めるため、必要に応じて添加してもよい。しかしながら、それぞれ2.0%を超えて添加すると粗大な析出物を形成して、内部割れを助長する。そのため、上限を2.0%にする。好ましくは、1.0%以下である。

0029

Bi、Pb、Ag,Se、TeやZnは、3D造形後の切削加工性を付与するために、必要に応じて添加してもよい。しかしながら、Bi,Pb,Ag,Se,Teはそれぞれ0.4%を超えて、Znは0.1%を超えて含有すると、内部割れを助長する。そのため、Bi、Pb、Ag,Se、Teの上限を0.4%、Znの上限を0.1%にする。好ましくは、Bi,Pb,Ag,Se,Teは0.3%以下、Zeは0.1%以下である。

0030

本発明の金属ワイヤの成分組成は、上述してきた元素以外は、Feおよび不可避的不純物からなる化学成分から構成される。即ち、本発明の金属ワイヤはステンレス鋼系の金属ワイヤである。
代表的な不可避的不純物としては、Ge,Na、Be、F、Ga等が挙げられ、通常、鉄鋼の製造プロセスで不可避的不純物として、0.01%以下の範囲で混入する場合がある。
また、任意添加元素について、代表的なものを上記(2)〜(6)で規定しているが、本明細書中に記載されていない元素であっても、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。

0031

本発明の金属ワイヤは、金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の用途に用いられる。即ち、金属3Dプリンタにより、金属ワイヤの溶着ビードを積層して3次元部品に造形する際に材料として用いる金属ワイヤを意味する。

0032

以上説明した本発明によれば、寸法変動、熱変形、内部割れ、内部の空隙抑制を抑制し、材質・金属組織均一性に優れた金属3Dプリンタによる溶着積層造形用の金属ワイヤであってステンレス鋼系のワイヤを安価に提供できる。

0033

45kgの真空溶解炉にて表1〜表3に示す化学組成の鋼を溶解し、熱間鍛造熱間押し出しにより直径11mmの棒鋼に加工した。その後、伸線焼鈍を繰り返し、直径1.0mmの金属ワイヤに試作した。

0034

0035

0036

0037

そして、ロボットMIGのアーク溶接機を使用して、上記試作した金属ワイヤを渦巻き状に連続して積層しつつ繰り返し溶着し、図1に示す積層方向2に積層することにより3次元造形し、図1に示すような、中空四角柱1(金属部品10)(1辺;50mm、高さ50mm)を製造した。アークによる溶着条件として、Ar+3%酸素シールドガスを用い、溶接電流200A、アーク電圧30V、溶接速度:200cm/分とした。

0038

その後、製造した四角柱1について、熱変形(耐熱性)、内部割れ、内部空隙および材質・金属組織均一性を調査した。表4、表5に調査結果について示す。

0039

0040

0041

熱変形(耐熱性)は、繰り返し積層時の熱変形で発生する四角柱1の側面の最大凹凸量を測定した。最大凹凸量が5mm以下であれば◎、5mm超10mm以下であれば〇、10mmを超える場合は×とした。本発明の金属ワイヤを使用した場合、評価結果は◎および〇であり、耐熱変形性に優れていた。

0042

内部割れと内部空隙は、四角柱1の任意の10か所で積層方向に垂直な断面を検査対象面とし、切り出した試料樹脂に埋め込み、検査対象面を研磨し、光学顕微鏡観察にて内部割れおよび空隙を観察した。検査対象面に内部割れ、空隙が存在する場合を×、存在しない場合を〇として評価した。本発明の金属ワイヤを使用した場合、評価結果は〇であり、耐内部割れ性や耐内部空隙性に優れていた。

0043

材質均一性は、前記埋め込み・研磨した試料のうち、積層造形の最下面、1/4、1/2、3/4高さ、最上面の5か所において、Hv硬さ(加重1kgf)を測定した。5か所のHVの最大と最小の差を硬さのばらつきΔHvとし、ΔHvが40以下であれば◎、40超80以下であれば〇とし、80を超える場合を×とした。
金属組織の均一性について、耐食性(耐久性)に悪影響を及ぼす炭窒化物および鋭敏化の存在を確認するため、前記埋め込み・研磨した試料について、JIS G 0571のエッチテストを行った。溝状組織が認められない場合を〇、溝状組織が認められる場合を×として評価した。
本発明の金属ワイヤを使用した場合、材料均一性、金属組織の均一性はともに評価結果は〇であり、材質・金属組織の均一性に優れていた。

実施例

0044

一方、比較鋼である実施例46〜84では、本発明の規定範囲を満たしておらず、所要の特性を満足していないことがわかる。

0045

耐寸法変動性に優れる金属ワイヤによる金属3Dプリンタを用いた3次元部品の成型において、以上の各実施例から明らかなように、金属ワイヤの溶着ビードを積層して3次元部品に造形する際に、材料として本発明の金属ワイヤを用いることにより、熱変形、内部割れ、内部空隙を安定的に抑制でき、材質・金属組織を均一化でき、部品の信頼性を高めることができ、産業上極めて有用である。

0046

1四角柱
2 積層方向
10 金属部品

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