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技術 積層造形体および積層造形体の製造方法

出願人 日立金属株式会社
発明者 太期雄三
出願日 2019年3月4日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-038723
公開日 2020年9月10日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-143311
状態 未査定
技術分野 プラスチック等のその他の成形、複合成形(変更なし) 粉末冶金
主要キーワード 指向性エネルギー 隙間腐食試験 製造体 パウダーベッド 一軸走査 堆積方式 溶接組織 セル組織
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (7)

課題

耐食性に優れる積層造形体を提供すること。

解決手段

本発明の積層造形体1は、CrおよびMoを含み、質量比でNiの含有量が最も多いNi基合金からなり、表面の一部または全部に、Crを主体とする酸化膜が形成される。このCrを主体とする酸化膜は、内部に比べてO含有量が多く、かつCr含有量Ni含有量よりも多い領域を有している。この酸化膜は、表面からの厚さが1〜20nmであることが好ましく、また、腐食環境接触面に対応して形成されていることが好ましい。さらに、この酸化膜は、積層造形体1の積層造形の際に形成することができる。

概要

背景

付加製造方法は、例えば特許文献1に開示されるように、原料粉末熱源を供給して原料粉末を溶融凝固させることを繰り返して三次元形状の付加製造体を得る。付加製造方法によれば、ネットシェイプまたはニアネットシェイプで三次元形状の製品を得ることができる。なお、特許文献1に開示されるように、「付加製造」という用語は、ASTM(American Society for Testing and Materials) F2792で規定されるように、業界標準用語とされている。

概要

耐食性に優れる積層造形体を提供すること。本発明の積層造形体1は、CrおよびMoを含み、質量比でNiの含有量が最も多いNi基合金からなり、表面の一部または全部に、Crを主体とする酸化膜が形成される。このCrを主体とする酸化膜は、内部に比べてO含有量が多く、かつCr含有量Ni含有量よりも多い領域を有している。この酸化膜は、表面からの厚さが1〜20nmであることが好ましく、また、腐食環境接触面に対応して形成されていることが好ましい。さらに、この酸化膜は、積層造形体1の積層造形の際に形成することができる。

目的

本発明は、積層造形を利用することにより、ネットシェイプまたはニアネットシェイプで三次元形状の製品を得ることに加えて、耐食性に優れるNi基合金からなる積層造形体および積層造形体の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

CrおよびMoを含み、質量比でNiの含有量が最も多いNi基合金からなる積層造形体であって、表面の一部または全部に、Crを主体とする酸化膜が形成されている、積層造形体。

請求項2

前記Crを主体とする前記酸化膜は、内部に比べてO含有量が多く、かつCr含有量Ni含有量よりも多い領域を有している、請求項1に記載の積層造形体。

請求項3

前記酸化膜は、前記表面からの厚さが1〜20nmである、請求項1または請求項2に記載の積層造形体。

請求項4

前記酸化膜は、腐食環境接触面に対応して形成されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層造形体。

請求項5

半導体製造装置用部品である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の積層造形体。

請求項6

CrおよびMoを含み、質量比でNiの含有量が最も多いNi基合金からなる積層造形体を積層造形する工程を有し、前記積層造形の際に、前記積層造形体の表面の一部または全部に、Crを主体とする酸化膜を形成する、積層造形体の製造方法。

請求項7

前記積層造形体は、レーザビームまたは電子ビームを用いた粉末床溶融結合方式により積層造形され、前記積層造形は、酸素濃度が10〜2000ppmの雰囲気で行われる、請求項6に記載の積層造形体の製造方法。

請求項8

前記積層造形体は、レーザビームまたは電子ビームを用いた粉末床溶融結合方式により積層造形され、前記酸化膜が形成される前記積層造形体の表面は、レーザビームまたは電子ビームの照射を2回以上繰り返す、請求項6または7に記載の積層造形体の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、Ni基合金からなる積層造形体および積層造形体の製造方法に関する。

背景技術

0002

付加製造方法は、例えば特許文献1に開示されるように、原料粉末熱源を供給して原料粉末を溶融凝固させることを繰り返して三次元形状の付加製造体を得る。付加製造方法によれば、ネットシェイプまたはニアネットシェイプで三次元形状の製品を得ることができる。なお、特許文献1に開示されるように、「付加製造」という用語は、ASTM(American Society for Testing and Materials) F2792で規定されるように、業界標準用語とされている。

先行技術

0003

特表2016−502596号公報

発明が解決しようとする課題

0004

付加製造方法は、ネットシェイプまたはニアネットシェイプで三次元形状の製品を得ることができるところに大きな利点がある。付加製造方法は、金属材料の分野において、溶解・鋳造鍛造圧延、または、金属粉末焼結といった、これまでのプロセスとは異なるプロセスを経て造形体が製造される。
そこで本発明は、積層造形を利用することにより、ネットシェイプまたはニアネットシェイプで三次元形状の製品を得ることに加えて、耐食性に優れるNi基合金からなる積層造形体および積層造形体の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0005

本発明の積層造形体は、CrおよびMoを含み、質量比でNiの含有量が最も多いNi基合金からなり、その表面の一部または全部に、Crを主体とする酸化膜が形成されている。
本発明の積層造形体において、Crを主体とする酸化膜は、好ましくは、内部に比べてO含有量が多く、かつCr含有量Ni含有量よりも多い領域を有している。

0006

本発明における酸化膜は、好ましくは、積層造形体の表面からの厚さが1〜20nmである。
また、本発明における酸化膜は、好ましくは、腐食環境接触面に対応して形成されている。

0007

本発明の積層造形体は、好ましくは、半導体製造装置用部品として用いられる。

0008

本発明は、積層造形体の製造方法をも提供する。この製造方法は、CrおよびMoを含み、質量比でNiの含有量が最も多いNi基合金からなる積層造形体を積層造形する工程を有し、積層造形の際に、積層造形体の表面の一部または全部に、Crを主体とする酸化膜を形成する。

0009

本発明の積層造形体の製造方法において、好ましくは、積層造形体は、レーザビームまたは電子ビームを用いた粉末床溶融結合方式により積層造形され、この積層造形は、酸素濃度が10〜2000ppmの雰囲気で行われる。
また、本発明の積層造形体の製造方法において、レーザビームまたは電子ビームを用いた粉末床溶融結合方式により積層造形され、好ましくは、酸化膜が形成される積層造形体の表面は、レーザビームまたは電子ビームの照射を2回以上繰り返される。

発明の効果

0010

本発明によれば、CrおよびMoを含み、質量比でNiの含有量が最も多いNi基合金からなる積層造形体の表面の一部または全部に、Crを主体とする酸化膜が形成されているので、耐食性を向上できる。

図面の簡単な説明

0011

本発明の実施形態に係る積層造形体を示す斜視図である。
本発明の実施例における腐食試験の結果を示すグラフである。
実施例における表層部の元素挙動を観察した結果を示し、(a)は研磨を行わない積層造形体についての観察結果であり、(b)は研磨を行った積層造形体についての観察結果である。
本実施例における積層造形体のエッチング後のミクロ組織写真を示し、(a)はXY面の光学顕微鏡により観察された組織、(b)はZ面の光学顕微鏡により観察された組織、(c)はZ面のSEMにより観察された組織を示し、(d)は(c)を参照して描いた模式図である。
(a)は鍛圧体(未エッチング)のSEMによる反射電子像を示し、(b)は造形体1(未エッチング)のSEMによる反射電子像を示し、(c)はSEM・EDXで観察した造形体1のMoの組成マップを示し、(d)は造形体1(エッチング後)の溶体化処理後のSEMによる反射電子像を示す。
Ni−Cr−Moの3元系計算状態図を示し、(a)が600℃における状態図、(b)が1250℃における状態図である。

実施例

0012

以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る積層造形体について説明する。本実施形態に係る積層造形体はCrおよびMoを含むNi基合金からなり、表層にCrを主体とする酸化膜を形成することにより、耐食性を向上できる。また、本実施形態に係る積層造形体はCrおよびMoを含むNi基合金からなり、鍛造および圧延を経た同じ組成のNi基合金と比べて、高い強度を得ることができる。

0013

[積層造形]
金属材料を対象とする積層造形(Additive Manufacturing:AM)としては、粉末床溶融結合方式(PBF:Powder Bed Fusion)と指向性エネルギー堆積方式(DED:Directed Energy Deposition)に区分することができるが、本実施形態の積層造形体はいずれの方式でも造形できる。

0014

上記粉末床溶融結合方式はパウダーベッド方式と呼ばれ、金属粉末を敷き詰め、熱源となるレーザビームや電子ビームで造形する部分を溶融・凝固させる方法である。金属粉末を敷き詰め、溶融・凝固を繰り返すことで造形する。パウダーベッド方式には、以下のレーザビーム熱源方式と電子ビーム熱源方式がある。
レーザビーム熱源方式は、敷き詰められた金属粉材料にレーザビームを照射して、溶融・凝固または溶融・焼結させて積層造形するものであり、粉末レーザ溶融法(Selective Laser Melting:SLM)と粉末レーザ焼結法(Selective Laser Sintering:SLS)が知られている。レーザビーム熱源方式は窒素などの不活性雰囲気中で溶融・凝固、溶融・焼結がなされる。
電子ビーム熱源方式は、敷き詰められた金属粉末に電子ビームを高真空中で照射し衝突させることで、運動エネルギーを熱に変換し粉末を溶融させる。電子ビーム方式真空中で溶融・凝固がなされる。電子ビーム熱源方式は、粉末電子ビーム溶融法(Selective Electron Beam Melting:SEBM)と称される。

0015

指向性エネルギー堆積方式はメタルデポジッション方式と呼ばれ、レーザビームまたは電子ビームを移動させる方向の前方位置に金属粉末を連続的に噴射し、供給された金属粉末にレーザビーム又は電子ビームを照射して溶融凝固させて造形する。

0016

パウダーベッド方式は積層造形体の形状精度が高いという利点があるのに対して、メタルデポジッション方式は高速造形が可能であるという利点がある。パウダーベッド方式の中でSLMは、積層厚さが数十μm単位の粉末床に対して、微細なレーザビームを用いて選択的に溶融・凝固させ、その凝固層を積層させることで造形する方法であり、他の積層造形法と比較して精密部品が造形可能であるという特徴を有している。したがって、本実施形態において、精密部品を造形する場合には、SLMを採用することが好ましい。

0017

パウダーベッド方式およびメタルデポジッション方式におけるレーザビームまたは電子ビームの走査経路は任意である。例えば、図1(a)に示される積層造形体1において、所定の軸方向、例えば図1(b−1)に示すようにX軸方向に平行にかつ往復して走査することができるし、例えば図1(b−2)に示すようにY軸方向に平行にかつ往復して走査することができる。前者はX走査方式と称し、後者はY走査方式と称することができる。なお、ここではX軸に平行、Y軸に平行の例を示しているが、図1(b−3)に示すように、所定の軸方向がX軸、Y軸に交差する方向に平行であってもよい。これらは、一軸走査方式と称することができる。
また、図1(b−4)に示すように、X走査方式で先の層を造形し、次いで、Y走査方式で次の層を造形するという、XY走査方式と称する走査経路を採用することができる。一軸走査方式を互いに交差する方向で造形する場合には、交差走査方式と称することができ、XY走査方式は交差走査方式の一形態ということができる。
さらに、図示を省略するが、本実施形態においては、渦巻き状の走査経路を採用することができる。
さらにまた、本実施形態は、これらの走査方式を組み合わせることもできる。つまり、図1に示される積層造形体1は、直方体状の単純な構造を有しているが、ネットシェイプまたはニアネットシェイプで三次元形状の部材を造形する場合には、当該部材の構造に適した走査方式を採用することが肝要である。つまり、本発明における積層造形体とは最も広義解釈されるべきであって、その形状、寸法および具体的な部品物品などの用途は限定されない。

0018

積層造形体1は、図1(a)に示すように、Z軸方向、通常は鉛直方向に積層され、その上端面がXY面と称され、側面のそれぞれがZ面と称される。さらに、図1(a)に示すように、積層造形体1が立方体の場合には積層造形体1を対角線において2分割する面を45°面と称される。
また、図1に示される積層造形体1において、上端面であるXY面および側面であるZ面は、レーザビーム等の熱源の走査が2回以上、例えば2回行われることが寸法精度や表面精度を向上する上で好ましい。なお、2回目以降の走査では金属粉末は供給せずに、レーザビーム等の走査だけが行われる。XY面およびZ面は、積層造形体1の外表面を構成する。この複数回のレーザビーム等の走査は、後述する積層造形体1の耐食性向上に寄与しうる。

0019

[耐食性]
本実施形態に係る積層造形体は、Crを構成元素とする酸化物(Cr2O3)からなる膜を表層に備えることにより、耐食性を向上させることができる。この酸化膜は、積層造形体の表面から、1nm〜20nmの範囲で形成されており、好ましくは1nm〜10nmの厚さを有する。酸化膜の厚さは、より好ましくは2〜8nmであり、さらに好ましくは3〜5nmまでの厚さに形成される。

0020

本実施形態に係る酸化膜は、高温環境下であってかつ低酸素雰囲気下における酸化処理により形成されるのが好ましい。この酸化処理は、積層造形の際に行うことができる。酸化膜は積層造形体の外表面に形成されるものであるから、積層造形の際に行われる酸化処理は外表面を造形する際に行われる。
パウダーベッド方式のレーザビーム熱源式において、前述したように、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気で積層造形が行われるが、この不活性ガス中に微量の酸素を含有させれば、原料合金粉末が溶融・凝固する積層造形法の過程で酸化処理を行うことができる。

0021

本実施形態における酸化処理における酸素濃度は、100ppm〜20%の範囲とすることが好ましく、100ppm〜1%の範囲とすることがより好ましく、100〜2000ppmの範囲とすることがさらに好ましい。酸素濃度は、体積を基準にして定められる。
また、本実施形態における酸化処理における温度は、300〜1000℃の範囲とすることが好ましく、400〜800℃の範囲とすることがより好ましく、500〜600℃の範囲とすることがさらに好ましい。
以上の酸素濃度の範囲において、低酸素濃度で酸化処理することが緻密な酸化膜を得る上で好ましいが、例えば酸素濃度が20%であっても、300℃近傍の低い温度を選択すれば、緻密な酸化膜を生成することができる。

0022

機械的特性
本実施形態に係る積層造形体は、同じ化学組成を有するNi基合金であって、鍛造および圧延を経た材料である鍛圧体に比べて、後掲する実施例に示されるように、耐力、引張強さ、硬さが向上する。これらの機械的特性が向上した積層造形体は、その組織においてMoの偏析、つまり周囲に比べてMoの濃度が高い領域がある。このMo偏析が、転移ピン止め効果として機能することにより、機械的特性を向上させているものと解される。なお、Mo偏析が形成されることにより、周囲にはMoの濃度の低いMo欠乏領域が生じる。

0023

本実施形態におけるMo偏析は、他の主構成元素であるCrおよびNiの含有量からすると、Mo、CrおよびNiを構成元素として含む金属間化合物であるμ相であると解される。μ相は、TCP相(Topologically Close-Packed phase)であり、μ相の析出は、これまで機械的特性にとって有害相として認識され、鍛圧材では特に延性の低下により割れ等の問題があった。また、鍛圧材において、偏析発生によるMo欠乏領域発生により耐食性の低下も問題になることがあった。ところが、積層造形ではそもそもニアネット仕上げられるため、塑性加工性の低下が問題にならない。さらに、偏析の程度が極めて微細かつ微量であるために、耐食性の低下も問題とならない程度で収まる。積層造形体に形成されるMo偏析は有害相として機能することなく、機械的特性の向上に寄与できる。

0024

Mo偏析は、結晶粒の内部に形成される。Mo偏析が形成されるのは、全ての結晶粒に形成されることもあれば、一部の結晶粒に形成される場合もある。好ましくは全ての結晶粒の個数の70%以上、より好ましくは全ての結晶粒の個数の80%以上の結晶粒、さらに好ましくは全ての結晶粒の個数の90%以上の結晶粒にMo偏析が形成される。

0025

Mo偏析が形成される結晶粒は柱状の形態をなしており、積層造形体の組織はこの柱状の結晶粒が寄り集まったセルが連続するセル構造を有している。セル構造に含まれる柱状の結晶粒と結晶粒の間、つまり粒界にはMo欠乏領域が形成される。

0026

積層造形体は、熱処理、具体的には溶体化処理を施すことにより、後述する実施例に示すように機械的特性を調節できる。この熱処理は、大気中、1100〜1300℃、より好ましくは1150〜1250℃で行われる。熱処理は、積層造形体のサイズに応じて、上記温度範囲で0.5時間以上保持すればよい。
また、溶体化処理に代えてまたは加えて、600〜700℃の温度範囲で24時間程度保持する時効処理を行うことにより、積層造形体の強度、特に硬さをさらに向上できる。

0027

合金組成
積層造形体1は、CrおよびMoを含み、質量比でNiの含有量が最も多いNi基合金から構成される。このNi基合金は、Niに次いで含有量が多いのがCrおよびMoであり、本実施形態におけるNi基合金においてCr、MoおよびNiを主構成元素という。主構成元素のなかで、CrおよびMoは、質量%で、Cr:14.5%〜24.5%、Mo:12.0%〜23.0%の範囲で含有されるのが好ましい。なお、Niの含有量はCrおよびMoに加えて他の元素に対して残部として特定される。また、金属元素の含有量を示す%は質量%を意味するものとする。
本発明は、CrおよびMoを含むNi基合金であれば、その合金組成は限定されないが、例えば、過酷な腐食環境で使用される半導体製造装置構成部材に好適な組成の例を以下に述べる。

0028

[Cr:14.5%〜24.5%]
Crは、半導体製造装置に用いられるHCl,Cl2,HF,F2,NF3,ClF3およびHBrなどのハロゲン系ガスに対して、耐食性を向上させる効果がある。特に、半導体製造装置の構成部材が、開放時に一旦外気に触れた際に、金属表面に大気起源の水分が吸着し、吸着した水分とハロゲン系プロセスガス水和すると、電気化学的腐食が発生する。水和した酸に対して、Crは特に比較的濃度が希薄な領域でその耐食性を発揮する。その場合、Crは14.5%以上含有することが必要であるが、24.5%を超えて含有するとMoとの組み合わせにおいて、積層造形時に相安定性を損ない単一相維持が困難となる。そうすると、粗大なμ相が形成されてしまい耐食性劣化をもたらすので、その含有量を14.5%〜24.5%とするのが好ましい。
より好ましいCrの上限は、22.5%であり、さらに好ましくは20.5%である。また、より好ましいCrの下限は、15.0%であり、さらに好ましくは18.0%である。

0029

[Mo:12.0%〜23.0%]
Moは、Crと同様に、HCl,Cl2,HF,F2,NF3,ClF3およびHBrなどのハロゲン系ガスに対して、耐食性を向上させる効果がある。特に、Moは水和した酸に対して中〜高濃度領域でその耐食性を発揮する。これに対応するために、Moは12.0%以上含有することが好ましい。ただし、23.0%を超えて含有すると、Moは高温における酸化性が劣る。そのため、ガスアトマイズ法によって粉末を製造すると、個々の粉末表面に形成される酸化膜が厚くなり、この粉末を用いて製造された積層造形品に酸化物起因の欠陥顕在化するおそれがある。そのため、その含有量を12.0%〜23.0%とすることが好ましい。
好ましいMoの上限は、20.5%であり、さらに好ましくは19.5%である。また、好ましいMoの下限は、14.0%であり、さらに好ましくは16.0%である。

0030

[他の元素]
本実施形態の積層造形体におけるNi基合金は、Cr:14.5%〜24.5%、Mo:12.0%〜23.0%および残部Niおよび不可避的不純物基本組成とする。本実施形態に係るNi基合金はCr、MoおよびNiからなる場合、及び、主構成元素以外に他の任意元素を必要に応じて含むことができる。以下、この任意元素について説明する。

0031

[Fe:0.01%〜7.00%]
[Co:0.001%〜2.500%]
FeおよびCoは、Niよりも融点が高く、溶湯粘度を高める効果があり、粉末を製造する際に、粒径制御が容易になるとともに、積層造形が困難となりやすい粒径5μm未満の微粉の生成を抑制できる。

0032

[N:0.001%〜0.040%]
[Mn:0.001%〜0.50%]
[Mg:0.0001%〜0.010%]
N、MnおよびMgを共存させることにより、ミクロ偏析を抑制する効果がある。積層造形する際、個々の粉末は熱源の照射により瞬間的に溶湯となる一方、比較的急冷で凝固することにより造形される。N、MnおよびMgは母相であるNi−fcc相を安定化させ、CrおよびMoの固溶化を促進する効果があるため、結果として、急冷凝固時のミクロ偏析の発生を抑制する。

0033

[Si:0.001%〜0.200%]
[Al:0.001%〜0.500%]
[Ti:0.001%〜0.500%]
Si,AlおよびTiは、それぞれ脱酸剤として添加することにより、合金内の清浄度を高める効果がある。これにより、積層造形時に粉と粉の接合が滑らかとなり、結果、積層造形品の欠陥が抑制される。

0034

[Cu:0.001%〜0.250%]
Cuは、塩酸やフッ酸などの還元性の湿潤腐食環境で耐食性を向上させる効果がある。そのため、プロセスガスと金属表面に吸着した水分にて形成される電気化学腐食に対して有効となる。

0035

[V:0.001%〜0.300%]
Vは、粉末を溶湯から霧吹き状に製造する際に粗大な径の粉末が生成されることを抑制する効果がある。大き過ぎる径の粉末は、積層造形の際に粒子間の隙間が大きくなることで、欠陥が顕在化してしまうため好ましくない。

0036

[B:0.0001%〜0.0050%]
[Zr:0.0001%〜0.0200%]
BおよびZrは、それぞれ凝固過程で核となり引け巣発生防止に効果がある。積層造形物成形する際に、個々の粉末が溶解凝固していく過程が繰り返されるが、凝固過程で引け巣が発生すると、それら欠陥がパーティクル発生源となるために半導体製造装置用の部材や部品として用いる積層造形物としては不適となってしまう。

0037

[O:0.0010%〜0.0300%]
Oは、粉末製造時の溶湯の噴霧工程で凝固直後高温状態で、主にCrと瞬時に結びつき、粉末表面に極薄く強固な酸化皮膜を形成することで、それ以上の酸化の進行が抑制される効果がある。これにより、積層造形体に異物として混入してしまう粉末起源の酸化物の量は極めて低く抑制される。Oを0.0010%以上含有することで、その効果を示すが、0.0300%を超えて含有すると粉末表面の酸化物が積層造形体の欠陥を顕在化させてしまうこととなるため、Oの含有量を0.0010%〜0.0300%とした。
以上の通りであり、健全な積層造形体を得る上で、好ましいOの上限は、0.0200%であり、さらに好ましくは0.0100%である。また、好ましいOの下限は、0.0020%であり、さらに好ましくは0.0050%である。

0038

[Ta:1.0%〜2.5%]
Taは、還元性酸酸化性酸での耐食性や、孔食すきま腐食に対する耐食性を改善する効果があるため、必要に応じて添加される。

0039

[W:2%〜5%]
Wは、Moと同様に還元性酸に対する耐食性を向上させる効果があると同時に、融点を高めることで溶湯の粘度を高め粉末を製造する際に、粒径制御が容易になるとともに、積層造形が困難となりやすい微粉(粒径5μm未満)の生成を抑制できる。そのため、必要に応じて2%〜5%の範囲で含有される。

0040

不可避不純物
不可避不純物として、Cは、結晶粒界近傍でCrと炭化物を形成し、耐食性の劣化を増大させる。そのため、C;0.05%未満とするのが好ましい。また、SやPは粒界に偏析し、高温割れの原因となるため、0.01%未満に抑制することが好ましい。
また、これら不可避不純物の含有量は少ないほうが好ましく、0%であっても良い。

0041

積層造形体1の組成分析は、主構成元素については高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法を用い、不純物元素には燃焼-赤外線吸収法(炭素)、不活性ガス融解熱伝導度法(窒素)、不活性ガス融解—赤外線吸収法(酸素)の各手法を用いることができる。

0042

[原料合金粉末]
本実施形態に係るNi基合金は以上の組成を有するが、積層造形体を造形するために以上の組成を有する原料合金粉末が用意される。原料合金粉末の化学組成は基本的に積層造形体の化学組成と同じであるが、積層造形体が耐食性に優れる酸化膜を表層に備える場合には、積層造形体の酸素含有量が原料合金粉末よりも多い。酸化膜については後述する。
原料合金粉末の化学組成は、適切な水溶液中で溶解し、この水溶液を高周波誘導結合プラズマ(ICP)分析することにより、測定できる。また、C、S、N、Oについては、燃焼法によるガス分析を行って、その含有量を求めることができる。

0043

積層造形法は、個々の粉末について溶融・凝固を繰り返すことにより所望する形状に得る造形法であるが、原料合金粉末の粒径が小さすぎると1回の溶融・凝固に必要な容積が得にくくなるため、健全な積層造形体を得にくい。逆に、原料合金粉末の粒径が大きすぎると、1回の溶融凝固に必要な容積が大きくなり、健全な積層造形品が得にくい。したがって、原料合金粉末の粒径は、およそ5〜500μmの範囲で用いられるが、パウダーベッド方式とメタルデポジッション方式とでは求められる粒度分布が異なる。レーザ回折法によって求められる、粒子径小粒子径側からの体積積算との関係を示す積算分布曲線において、パウダーベッド方式では粉末の積算頻度50体積%に対応する粒子径d50が10〜60μmとするのが好ましい。また、メタルデポジッション方式では粒子径d50が30〜250μmとするのが好ましい。粉末の粒径については、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定できる。

0044

原料合金粉末の製造は、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法ジェットアトマイズ法などを用いることができる。ただし、原料合金粉末は球状であることが好ましい。したがって、原料合金粉末は、ガスアトマイズ法で作製することが好ましい。

0045

[用途]
本実施形態に係る積層造形体の用途は任意であり、また、溶体化熱処理を行うか行わないかによって用途に応じた機械的特性を得ることができる。
用途の一例として、HCl,Cl2,HF,F2,NF3,ClF3およびHBrなどに代表される強い腐食性を有するハロゲン系ガスを扱う半導体製造装置に、本実施形態に係る積層造形体を適用できる。特に、これらのガスが直接接触する半導体製造装置の部材に適用されるのが好ましい。また、本実施形態に係る積層造形体は、他の用途として、腐食性流体が流れる化学プラントバルブ継手熱交換機ポンプ発電機などのタービンホール圧縮機のインペラ等に適用されるのが好ましい。

0046

本実施形態に係る酸化膜を有する積層造形体の表面は、適用される用途の部材に応じて、設けられる部位が選択される。つまり、当該部材の全体が腐食性の気体液体などの腐食環境に接触する場合には、当該部材の全体に本実施形態に係る酸化膜を形成するのが好ましい。また、当該部材の一部だけが腐食性の気体、液体などの腐食環境に接触する場合には、その一部だけに本実施形態に係る酸化膜を形成するのが好ましい。このように酸化膜は、腐食環境接触面に対応して形成され得る。もちろん、当該部材の一部だけが腐食性の気体、液体などの腐食環境接触面となる場合であっても、当該部材の全体に本実施形態に係る酸化膜を形成してもよい。また、他の部材との接合面を構成するために、一部に研磨、研削等の機械加工を施してもよく、この場合は加工によって酸化膜が一部だけになってもよい。
本実施形態において、酸化膜が形成された表面は、研磨・切削等の機械加工が施されていない積層造形のままの面(as built面)である。

0047

[実施例]
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
表1に示される化学組成を有する付加製造用の原料合金粉末を用意した。この原料合金粉末は、溶解原料を準備し、通常の高周波真空溶解炉を用いて溶解して母合金を作製し、アルゴン雰囲気中、ガスアトマイズ法により作製された。なお、アトマイズ粉末から粒径20〜80μmの粉末を分級して付加製造に供した。分級された粉末のd10、d50、d90は、それぞれd10:15.6μm、d50:25.3μm、d90:50.2μmである。

0048

0049

以下の条件で積層造形を行って、造形体1(30×30×5mm)を作製した。積層造形におけるシールドガスアルゴンガス)に540ppmの酸素が含まれている。
積層造形装置:EOS M290(SLM方式)
積層造形条件
エネルギー密度:20〜200J/mm3
エネルギー密度
レーザパワー(W)/(走査速度(mm/s)×走査ピッチ(mm)×層厚(mm))
雰囲気:Ar(O2<0.10%)
走査方式:交差走査方式(XY面およびZ面は、レーザビームを2回走査)

0050

造形体1についても化学組成を分析した。結果を表1に示すが、酸素(O)の含有量が顕著に高くなっている。これは積層造形におけるシールドガス(アルゴンガス)に540ppmの酸素が含まれていることに基づいていると解される。
なお、Mo、CrおよびTaについての組成分析は、蛍光X線分析装置であるSimultix10(株式会社リガク製)によって行われた。また、O(酸素)についての組成分析は、酸素窒素分析装置であるON−836(LECOジャパン合同会社製)によって行われた。

0051

[耐食性]
次に、造形体1および鍛圧体を用いて耐食性の評価を行った。
耐食性の評価は、塩酸水溶液へ浸漬することによる耐食性試験と孔食試験の2種類で行った。なお、耐食性の評価試験において、XY面、45°面およびZ面とは、図1の積層造形体に示されるXY面、45°面およびZ面のことをいう。
(1)塩酸浸漬試験
2種類の腐食溶液(1%塩酸水溶液(沸騰)、5%塩酸水溶液(沸騰))に24時間浸漬して、腐食速度(mm/year)を求めた。結果を図2に示す。なお、1000番の研磨紙を用いて、いずれの試験片についても研磨を行ったうえで腐食溶液に浸漬した。
図2(a)に示すように、造形体1と鍛圧体とで腐食速度に有意な差異はない。また、図2(b)より、耐食性について積層方向依存性はない。
(2)孔食試験
JIS G0578に準拠し、塩化第二鉄水溶液に試験片を浸漬して、孔食が発生する臨界温度を求めた。結果を表2に示すが、研磨をしないほうの臨界温度が5〜10℃程度高くなる。なお、研磨をしない造形体1を造形体1Aといい、研磨をした造形体1を造形体1Bというものとする。
また、同様に隙間腐食試験を行ったが、表2と同様の結果が得られた。

0052

0053

[機械的特性]
次に、造形体1および、造形体1の他に、造形体1に溶体化熱処理を施した造形体2および造形体1と同じ化学組成の鍛造および圧延を経た鍛圧体を用意して、機械的特性を測定した。その結果を表3に示す。なお、溶体化熱処理の条件は、1180℃で30分だけ大気中で保持するというものである。また、機械的特性はJISに準拠して測定した。また、表3におけるXY面、Z面は図1を用いて説明した定義による。以下も同様である。

0054

表3に示すように、積層造形による造形体1は、鍛圧体を凌駕する機械的特性が得られることがわかる。また、造形体2の結果より、溶体化熱処理を施すことにより、伸びを鍛圧体に近づけることができる。つまり、溶体化熱処理の有無を選択すれば、必要とされる機械的特性を満たすことができる。
また、溶体化熱処理の後に前述した条件の時効処理を施すことにより、HV10(荷重10Kg)で400程度の硬さが得られることを確認している。

0055

0056

以上の評価結果をまとめると以下の通りである。
(1)耐食性
同じ化学組成、積層条件による積層造形体であっても、研磨をしない方の耐食性が優れる。
(2)機械的特性
鍛圧体に比べて積層造形体は耐力、引張強さおよび硬さが顕著に向上する。
以下では、この評価結果が得られる要因を明らかにすべく行った観察を説明する。

0057

[表層の元素挙動観察]
造形体1A(研磨なし)と造形体1B(研磨あり)について、表層部の元素の挙動を観察した。それぞれの結果を図3(a)、(b)に示す。この観察は主に耐食性が向上する理由を認識するために行われた。なお、観察条件は以下の通りである。
装置:アルバックファイ社製ESCA−5400R(3057カスタマイズ)
X−Ray(Mgkα) :15.0kV 26.7mA (400W)
検出深さ:20nm(取り出し角45°)
分析領域:800μmφ
スパッタ条件(Ar+):加速電圧;2kV,ラスターサイズ;3×3mm
スパッタ速度:約2.0nm/min(SiO2換算値)

0058

図3(a)に示すように、造形体1Aは、表層部に酸化物からなる薄膜が形成されているものと推察される。この表層部におけるCrとOの濃度比から、この酸化物は酸化クロム(Cr2O3)と認められる。酸化クロムは、表層部における酸素とCrの含有量から深さ方向に3nm程度までの範囲で形成されており、3nmを超えても相当の酸素濃度が観察されるので、この造形体A1については、6nm程度までの厚さを有しているものと認められる。
この表層部におけるCrとNiの含有量について着目すると、表面から3nm程度の範囲まではCr含有量がNi含有量よりも多い。この領域にはNiの酸化物(NiO)が含まれているものと推察されるが、CrとNiの含有量からすると、酸化Crの生成量が多く、この領域において酸化Crと酸化Niを含むが、Crを主体とする酸化膜が形成さていると解される。

0059

表面から3nm程度の領域を越えると、Cr含有量とNi含有量が逆転する。そして、表面からおよそ6nmの深さを超えると、Cr含有量およびNi含有量ともに安定する金属成分領域になる。Cr含有量とNi含有量が逆転するところからCrおよびNiの金属成分領域までの間は、Ni含有量がCr含有量より多いので、当該領域は酸化Crと酸化NiあるいはNiCr酸化物を含むが、Crを主体とする酸化膜が形成されているものと解される。

0060

図3(b)に示すように、造形体1Bにおいても、表層部に酸化物からなる薄膜が形成されているものと推察されるが、Cr含有量よりもNi含有量が多い。したがって、造形体1Bにおいては、表層部に酸化Crが存在していないか、存在していたとしても酸化Niの量が多く、Niを主体とする酸化膜が形成されているものと認められる。なお、造形体1Bは表面が研磨されているが、研磨中または研磨後に大気と接触することにより、自然に酸化されたために表層部に酸素(O2)が含まれる。

0061

[耐食性についての考察]
積層造形の後に研磨をしない造形体1が研磨をした造形体2よりも高い耐食性を示し、造形体1は表層のごく浅い範囲に酸化物が形成されている。
この酸化物は、積層造形の差異に形成されたものと解されるが、これはシールドガスであるアルゴンガス(Arガス)に酸素(O2)が含まれていることに起因する。このアルゴンガスにおける酸素の含有量は、前述したように10〜2000ppm程度と、例えば大気中の酸素量である20%程度と比べると微量である。この微量に含まれる酸素が、積層造形時には合金粉末が溶融する1300℃〜1800℃の高温な雰囲気に曝されることで、緻密な酸化物が形成される。しかも、耐食性が評価された積層造形体のXY面およびZ面、つまり表面は同じ走査パスについてレーザビームの走査が2回行われる。この2回繰り返されるレーザビームの走査が、より緻密な酸化物の生成に寄与しているものと解される。

0062

[造形体1の組織観察
次に、造形体1の組織を観察した結果を説明する。この観察は主に機械的な強度が向上する理由を認識するために行われた。
図4(a)、(b)に光学顕微鏡で観察した研磨およびエッチング後の造形体1のXY面およびZ面の観察結果を示す。
XY面には、図4(a)に示すように、およそ100μmの間隔の直線状の境界が観察された。これはXY面をレーザビームが走査した際の他の走査パスとの境界に相当すると解される。図4(a)において、直線状の境界は破線で示され、レーザビームの走査の向きを矢印で示してある。
次に、Z面には、図4(b)に示すように、半円状の境界が観察された。この境界はレーザビームの走査時に形成された溶融池の底面側の境界に相当すると解される。半円状の境界は破線で示されている。

0063

図4(c)は、研磨、エッチング後の造形体1のZ面におけるSEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)像を示し、図4(d)は図4(c)を参照して描いた組織の模式図である。図4(c),(d)に示すように、ナノオーダーのセルCLが観察された。図4(d)において、細長い柱状のものがセルCLであり、図4(b)で観察された結晶粒はこの柱状のセルCLが集合して形成されていると推測される。図4(d)において、円形に観えるのもセルCLであるが、このセルCLは図の紙面の奥の方向に延びているために、円形に観える。また、図4(c),(d)に示される組織の形態としては、一般的に溶接で形成される組織に似ているものの、単体のセルの厚みはおよそ1μm以下、長さは数100μm程度であり、溶接組織と比較すれば3〜6桁程度小さいセルで構成されている。

0064

[組織に基づく機械的強度の考察]
図5(a)に鍛圧体のSEMによる反射電子像を、また、図5(b)に造形体1のSEMによる反射電子像を示す。鍛圧体(図5(a))では観察されない微細な白色領域が造形体1(図5(b))において観察された。また、図5(c)にSEM・EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光法)で観察した造形体1のMoの組成マップを示す。図5(b)と図5(c)を照合することにより、図5(b)で観察される白色領域は、他の領域よりもMoが富化されたMo偏析であることが確認される。このMo偏析は、隣接するセル組織の間に形成されているものと推測される。

0065

図5(d)に溶体化処理された造形体2のSEMによる反射電子像を示すが、溶体化処理することにより白色領域、つまりMo偏析が基地に固溶して消失したであろうことがわかる。ただし、上述したように造形体2の機械的特性(耐力、引張強さ)が鍛圧体よりも高いことから、Mo偏析が消失しきれずに残っている可能性がある。

0066

ここで、図6にNi−Cr−Moの3元系計算状態図を示す。造形体1の化学組成は、図5TP1に該当する。600℃の状態図(図6(a))から理解されるように、造形体1の化学組成において、低温ではP相が析出する。このP相やμ相はMo富化相であり、この相が析出すると逆にMoが貧な領域が形成される。

0067

造形体1におけるMo偏析は、Mo、CrおよびNiを構成元素として含む金属間化合物であるμ相であると解される。μ相は機械的特性に対する有害相として認識されているが、造形体1におけるMo偏析は微細なために、有害相としてではなく、機械的特性の向上に寄与できると推察している。

0068

1 積層造形体

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